JP2015190001A - 高炉の操業方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弾塑性理論に基づいて炉内から壁面への垂直応力を求め、高炉内で前記垂直応力が最も大きい箇所を特定する工程と、高炉内の原料の物流、反応、伝熱を用いる数学的モデルと高炉の上部ゾンデで測定した炉頂ガス温度分布とガス組成から、高炉内の融着帯の形状を計算する工程と、前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする高炉操業方法。
【選択図】図5
Description
特許文献2に記載の発明は、焼結鉱の室温ビッカース硬度の測定値は略HV700、コークスは、ほぼHV250であるため、NI−CrやNb−Cから成る硬化肉盛よりも高い。また、例えば900℃でのビッカース硬度でさえも、焼結鉱はHV264と高い値を維持する。従って、特許文献2に記載の肉盛層では焼結鉱による摩耗が進行する恐れがある。
特許文献3に記載の発明は、この材料の高温硬度を測定したところ、炉内充填物である焼結鉱よりも低下することを見出した。そのため、高温では炉内で摩耗してしまう恐れがある。
特許文献4に記載の発明は、炉内側に突出する突起物により基準面に沿って停滞層を形成させ、ステーブ母材である銅の摩耗を抑制する発明であるが、安定した停滞層の形成は困難であり、停滞層の形状が変動し、高炉操業に影響するという問題がある。
特許文献5に記載の発明は、超音波探触子により、ステーブの残存厚を測定することができる。しかし、多くのステーブに設置するには、設備費がかさむという問題がある。
本発明の目的は、高炉の銅ステーブの損耗を軽減させる高炉の操業方法の提供である。
(1)弾塑性理論に基づいて炉内から壁面への垂直応力を求め、高炉内で前記垂直応力が最も大きい箇所を特定する工程と、
高炉内の原料の物流、反応、伝熱を用いる数学的モデルと高炉の上部ゾンデで測定した炉頂ガス温度分布とガス組成から、高炉内の融着帯の形状を計算する工程と、
前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする高炉操業方法。
(2)(1)に記載の高炉操業方法において、炉壁近傍の位置に装入するO/Cを減少することにより、前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする(1)に記載の高炉操業方法。
(3)(1)に記載の高炉操業方法において、還元材比を増加することにより、前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする(1)に記載の高炉操業方法。
図1により、高炉の銅ステーブと炉内装入物を説明する。高炉には、鉱石とコークスが交互に層状に装入される。炉内では、鉱石層は、炉熱により軟化・融着し、融着帯を形成する。融着帯の下部では、鉱石層は消滅し、コークス層のみになる。これに対し、融着帯の上部では、鉱石とコークスが交互に層状に形成されているため、銅ステーブは、硬度が高い焼結鉱により損傷を受けると考えられる。
摩耗材による銅ステーブの摩耗試験を実施した。
図2に銅ステーブの摩耗試験の概略を示す。試験片(銅片)に摩耗材(焼結鉱等)を所定の荷重で押し付けコンベア上の試験片を往復することにより、鉱石等の炉内の降下を模擬し、試験片の摩耗を測定した。
105mmΦの円筒容器に焼結鉱又はコークスを入れ荷重をかけ、片道1回毎に粒子を新しい物に入れ替えた。
ここで、図3(B)は、内容積5000m3級高炉に置いて、表1に示す操業条件で計算したものである。また、計算の前提となる物性値は、コークス質量密度500kg/m3、鉱石質量密度1700kg/m3を用いて、前記(鉄と鋼、vol.83(1997)No.2)の図12(質量分布)を計算し、ヤング率5.0、ポアソン比0.3、壁面との摩擦角20度、内部摩擦角32度で設定し、計算を行った。
図3(C)に、内容積5000m3高炉の火入れ5.7年目における銅ステーブの損耗を示す。図3(B)に示す銅ステーブにかかる壁面垂直応力に対応して、銅ステーブの損耗が進行したことを示している。ここで、図3(C)に示す銅ステーブの損耗量は、実際に休風時にステーブを取り外し、設置前の形状から実測したものである。
高炉炉頂から交互に、層状に装入された鉱石層とコークス層は、高炉内で加熱・還元され、炉下部で、融着帯を形成する。融着帯の上面は、鉱石の軟化が開始する面であり、融着帯の下面は、融着帯の銑鉄とスラグが解け落ち完了した面である。従って、融着帯の上面より上部は、鉱石層が残っており、鉱石層中の焼結鉱が垂直応力により銅ステーブに押し付けられ銅ステーブを損耗する。これに対し、融着帯の下面より下部は、鉱石層は存在せず、コークス層のみであるので、銅ステーブの損耗は少ない。
炉壁に接する融着帯部及び炉壁近傍の融着帯部を融着帯根という。本発明者は、図3(B)に示す壁面垂直応力が最も大きな箇所の位置よりも融着帯根の下面の位置を高くすることができれば、壁面垂直応力が大きなステーブ前面はコークスのみであることから、銅ステーブの損耗は少ないと考えた。
まず応力分布を計算する準備として、高炉の形状、操業諸元データを使用し、高炉内部の充填構成、炉内のガス圧力損失分布を炉頂の装入物分布を考慮した高炉3次元数学モデル(鉄と鋼、vol.81(1995) p.1031)で推測した。炉内の充填構成、ガス圧力損失分布を基に、高炉内充填層の応力場を連続体として、充填層を弾塑性体とみなして、応力分布の解析を行う。応力計算は弾塑性理論に基づく、運動方程式、構成方程式、Drucker-Pragerの降伏条件を基に境界条件を代入して、有限要素法により、炉内からの壁面への垂直応力推定を行う(非特許文献 鉄と鋼、vol.83(1997)No.2参照)。これにより、炉内の応力の高い箇所を特定することが可能となる。
次に、高炉内部の1200−1400℃の領域である融着帯部の位置を特定する。高炉を1次元と考え、炉の半径方向を無視し、高さ方向のみを考慮し、高炉内の原料の物流、反応、伝熱を高炉1次元定常数学モデル(ISIJ p1601-1608 1991)で融着帯部の位置を推定した。この融着帯部の位置は炉の半径方向の考慮されていない平均位置であるため、高炉の上部ゾンデから検出可能な炉頂ガス温度分布と鉱石還元率分布(ガス成分)を用いた融着帯形状推定モデル(ISIJ S52 1979)で解析することで、半径方向の融着帯の位置を推定する。これにより、高炉内の融着帯根部の下部位置の特定が可能となる。
ステップ1から得られるステーブへの垂直応力分布によって、最も応力の高い位置が最も損傷しやすい位置であると特定する(以下、「特定位置」と記す。)。ステップ2の融着帯根部位置が、特定位置より上部にある場合はステーブ前面にはコークスのみが存在するため、ステーブの摩耗は少ないと推定できる。融着帯根部位置が、特定位置より下部にある場合はステーブ前面には鉱石層が存在するためステーブの摩耗は大きいと推定できる。
(1)融着帯根部の位置が低く、特定位置より下部にある場合は還元材比の上げる操業を実施する。これにより、高炉内部の熱量が増加し、高炉内の温度分布が全体的に上昇し、融着帯位置を平均的に上昇させる効果が得られ、融着帯根部の位置が上昇する。融着帯根部位置が、特定位置より上昇すれば、ステーブの摩耗を軽減することができる。
(2)融着帯根部の位置が低く、特定位置より下部にある場合は、炉壁の鉱石層とコークス層の比(以下、O/Cと記す。)を下げる操業を実施する。これにより、壁側のコークス割合が増加し、壁側の熱レベルをあげることにより、融着帯根部の位置を上昇させる効果が得られる。融着帯根部位置が、特定位置より上昇すれば、ステーブの摩耗を軽減することができる。
破損発覚より、この発明に基づく診断の基、還元材比を20kg/tp上げ、融着帯を上げる操業を行った結果、壁側融着帯根下部は4.5mとなり、その結果、図3に示すように損耗量の大幅な減少となった。
破損発覚より、この発明に基づく診断の基、壁側のO/Cを3.92に下げ、融着帯を上げる操業を行った結果、壁側融着帯根下部は4.5mとなり、その結果、図3に示すように損耗量の大幅な減少となった。
Claims (3)
- 弾塑性理論に基づいて炉内から壁面への垂直応力を求め、高炉内で前記垂直応力が最も大きい箇所を特定する工程と、
高炉内の原料の物流、反応、伝熱を用いる数学的モデルと高炉の上部ゾンデで測定した炉頂ガス温度分布とガス組成から、高炉内の融着帯の形状を計算する工程と、
前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする高炉操業方法。 - 請求項1に記載の高炉操業方法において、炉壁近傍の位置に装入するO/Cを減少することにより、前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする高炉操業方法。
- 請求項1に記載の高炉操業方法において、還元材比を増加することにより、前記融着帯の根下部の位置を、前記垂直応力が最も大きい箇所よりも上の位置にする工程を実施することを特徴とする高炉操業方法。
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