以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水装置100の側面図を示す。図2は、本発明の第1実施形態に係る清掃装置10の要部の側面図を示す。図1には、清掃装置10が排水装置100に取り付けられた状態を示し、図2には、排水装置100に取り付ける前の清掃装置10の初期形状を示す。図1においては清掃装置10の全体を図示するために、排水トラップ104は断面を示す。また、図3(a)及び図3(b)は、図2に示す清掃装置10の第1清掃ワイヤ12の変形を例示する概略図である。図4(a)及び図4(b)は、図2に示す清掃装置10の第2清掃ワイヤ22の変形を例示する概略図である。
図1に示されるように、排水装置100は、キッチンのシンク等の槽体(図示せず)の底部に設けられる排水ボウル102と、排水ボウル102の底部に設けられる排水トラップ104と、を備える。排水ボウル102は、槽体の底部から下向きに凹んだ凹部であり、その底部には排水口106が形成されている。排水トラップ104は、排水ボウル102の下側に設置されており、排水口106に接続されている。排水トラップ104には、封水108が貯留されている。
排水トラップ104は、内筒110及び外筒112を有する。封水108は、内筒110と外筒112とによって保持されている。したがって、排水トラップ104は、4つの排水面、すなわち、内筒内周面114、内筒外周面116、外筒内周面118、及び外筒底面120を有する。これら4つの排水面のうち3つ、すなわち内筒内周面114、内筒外周面116、及び外筒内周面118は、各々が封水108の喫水面109に接する。
内筒110及び外筒112はそれぞれ概ね円筒形状に形成されており、内筒110と外筒112とは同軸に配設されている。外筒112の側部上方には、排水トラップ104から外部に排水を流すための排水管(図示せず)が接続される出口部122が設けられている。外筒112の上端は接続部124により内筒110の上端に固定されている。内筒110の上端は排水口106に取り付けられており、そこから内筒110は軸方向下方へと出口部122を越えて外筒底面120に向けて延在する。
排水トラップ104には、水車ユニット126が付設されている。水車ユニット126は外筒112の外側下部に設置されている。水車ユニット126は、水車(図示せず)を回転自在に収納する水車ハウジング128を備える。水車ハウジング128は給水管130から給水を受ける。水車ユニット126は、給水の水流によって水車が回転軸線140まわりに一定方向に回転するよう構成されている。水車ユニット126は、槽体への給水経路上にある。よって、槽体に設けられている水栓(図示せず)の吐水操作がなされると、水車が回転されるとともに、槽体に水が供給される。
また、排水装置100は、羽根車ユニット132を備える。羽根車ユニット132は、羽根車134、回転軸136、及び駆動部138を備える。羽根車134は、排水口106の僅かに上方に配置されており、回転軸136の上端に取り外し可能に固定されている。羽根車134の外周部には回転羽根142が設けられており、羽根車134の中心部には通水孔144が形成されている。回転軸136の回転軸線140は、内筒110及び外筒112の中心軸に一致する。
駆動部138は、回転軸136の下端に固定されている。駆動部138は、回転軸136から径方向外側に拡径された略円錐形状の部分である。駆動部138は、略円錐面状の駆動部側部146と、平坦な駆動部底部148と、を備える。駆動部138は、内筒110の下端と外筒底面120との間に配置され、内筒110とは非接触にかつ外筒底面120に回転自在に支持されている。
駆動部138の内部には、磁石(図示せず)が納められている。この磁石に対応する磁石が水車ユニット126の水車に納められており、駆動部138は水車ユニット126の水車と磁気カップリングを形成する。従って、水車が回転するとき駆動部138も回転軸線140まわりに回転する。
水栓の吐水操作がなされると、上述のように、水車が回転されるとともに、槽体に水が供給される。槽体からの排水は排水口106へと流入する。このとき、水車の回転により羽根車ユニット132も回転している。排水口106に流入する水は回転羽根142の回転により径方向外側に押し出され、排水口106の周囲に渦流が生じる。この渦流は、排水ボウル102の底面に付着したヌメリ等の汚れを除去する洗浄作用を提供する。このようにして、羽根車ユニット132は、排水ボウル102の底面を清掃する。よって、羽根車ユニット132は、清掃装置10の一部を構成する。
回転羽根142により押し出された排水は主として通水孔144を通じて排水トラップ104に流入する。排水は、内筒110の内側に流入し、内筒110の下側から内筒外周面116と外筒内周面118との間へと流入し、さらに、出口部122から排水管へと流出する。このようにして、排水装置100は、槽体から排水トラップ104を経由して排水管へと排水を導く排水路を形成する。
清掃装置10は、排水トラップ104を清掃する清掃部と、清掃部を駆動する回転機構部と、を備える。詳しくは後述するが、清掃部は、複数の紐状部材、例えば複数の清掃ワイヤを備える。回転機構部は、水車ユニット126及び羽根車ユニット132を備える。
図1及び図2に示されるように、清掃装置10は、複数の第1清掃ワイヤ12を備える。第1清掃ワイヤ12の初期形状は図2に示されるように直線的であるが、排水トラップ104に設置された状態では図1に示されるように、対応する排水面によって湾曲される。
第1清掃ワイヤ12の素材は、排水トラップ104の素材とは異なることが望ましい。後述する第2清掃ワイヤ22についても同様である。一般に、同素材どうしの摩擦においては分子間力が強く働くので、摩耗が促進される。したがって、清掃ワイヤと排水トラップ104とを異素材で形成することにより、摩耗の進行を抑制することができる。また、排水トラップ104の保護をより確実にするためには、清掃ワイヤの素材は、排水トラップ104の素材に対してワイヤ側が摩耗するよう選定されることが望ましい。
複数の第1清掃ワイヤ12は、具体的には、それぞれ異なる長さを有する4本のワイヤからなる。以下では説明の便宜上、これら4本のワイヤを長い方から順に、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、第3ワイヤ12c、第4ワイヤ12dと称する。
複数の第1清掃ワイヤ12は、それぞれ対応する排水面を清掃するために設けられている。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、外筒内周面118に対応づけられており、第4ワイヤ12dは外筒底面120に対応づけられている。つまり、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、外筒内周面118を清掃し、第4ワイヤ12dは、外筒底面120を清掃する。
第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、内筒110と外筒112との間において、外筒内周面118に沿って概ね回転軸方向に延在するよう配置されている。第4ワイヤ12dは、羽根車ユニット132の駆動部138と外筒112との間において、外筒底面120に沿って概ね径方向に延在するよう配置されている。
第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cはそれぞれ、駆動部側部146に取り付けられているワイヤ取付端14a、14b、14cを有する。第4ワイヤ12dは、駆動部底部148に取り付けられているワイヤ取付端14dを有する。また、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、第3ワイヤ12c、及び第4ワイヤ12dはそれぞれ、ワイヤ取付端14a、14b、14c、14dと反対側にワイヤ先端16a、16b、16c、16dを有する。ワイヤ先端16は固定されておらず、自由端である。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、一端のみが駆動部138に取り付けられている。よって、第1清掃ワイヤ12は、駆動部138の回転により回転軸線140まわりに回転する。
第1清掃ワイヤ12は、その初期形状におけるワイヤ取付端14からワイヤ先端16までの距離が、排水トラップ104に設置したときのワイヤ取付端14から対応する排水面までの距離よりも長くなるように、設計されている。言い換えれば、そうした距離関係が得られるように、第1清掃ワイヤ12の駆動部138への取付位置または取付角度が定められ、及び/または、第1清掃ワイヤ12の寸法(例えば長さ)または形状が定められている。
図3(a)には、第1ワイヤ12aの初期形状を例示する。図示されるように、第1ワイヤ12aの長さLは、ワイヤ取付端14aからワイヤ先端16aまでの距離Hがワイヤ取付端14aから外筒内周面118までの距離Kより長くなるよう十分に長い。ここで、距離H及び距離Kはいずれも回転軸線140に直交する径方向の距離である。図3(a)においては外筒内周面118を破線で示す。第1ワイヤ12aは、ワイヤ先端16aを斜め上方に向けるように取り付けられている。よって、回転軸線140からワイヤ先端16aまでの距離R1は、回転軸線140からワイヤ取付端14aまでの距離R2より長い。
第2ワイヤ12b及び第3ワイヤ12cについても同様である。ただし、第2ワイヤ12bの取付位置は第1ワイヤ12aと比べて軸方向に僅かに下方にあり、第2ワイヤ12bと回転軸線140とのなす角度は第1ワイヤ12aと回転軸線140とのなす角度より大きい。また、第3ワイヤ12cの取付位置は第2ワイヤ12bと比べて軸方向に僅かに下方にあり、第3ワイヤ12cと回転軸線140とのなす角度は第2ワイヤ12bと回転軸線140とのなす角度より大きい。第3ワイヤ12cはワイヤ先端16cを概ね水平方向に向けるように取り付けられている。
第4ワイヤ12dは、ワイヤ先端16dを斜め下方に向けるように取り付けられている。第4ワイヤ12dの長さは、ワイヤ取付端14dからワイヤ先端16dまでの軸方向距離がワイヤ取付端14dから外筒底面120までの軸方向距離より長くなるよう十分に長い。
このような距離関係のもとでは、図3(a)から理解されるように、第1清掃ワイヤ12が初期形状を保持したまま清掃装置10を排水トラップ104に収容することはできない。そこで、第1清掃ワイヤ12は、弾性、例えば曲げ弾性を有する。第1清掃ワイヤ12は、その長手方向に垂直な方向に弾性的に曲げ変形可能であるよう構成されている。
これにより、図1及び図3(b)に示されるように、第1清掃ワイヤ12は、排水面に接触する接触部位18をワイヤ先端16側に有する。また、第1清掃ワイヤ12は、接触部位18とワイヤ取付端14とを接続する撓み部位20を有する。図3(b)には接触部位18及び部位20を第1ワイヤ12aについて例示する。
接触部位18においては、第1清掃ワイヤ12の側面が排水面に接触する。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cについてはそれらの側面が外筒内周面118に接触する。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cはそれぞれ、異なる軸方向位置にて外筒内周面118に接触する。第1ワイヤ12aが最も上方で外筒内周面118に接触し、第2ワイヤ12bは第1ワイヤ12aより下方で外筒内周面118に接触し、第3ワイヤ12cは第2ワイヤ12bより下方で外筒内周面118に接触する。特に、第1ワイヤ12aは、外筒内周面118に沿って喫水面109を跨ぐように配設されている。第4ワイヤ12dは外筒底面120に接触する。
また、撓み部位20においては、図3(b)において矢印21で図示するように、第1清掃ワイヤ12の曲げ弾性により曲げ変形が生じている。そのため第1清掃ワイヤ12には径方向外向きの弾性力が作用する。この弾性力によって、接触部位18が排水面に押し付けられる。図3(b)においては第1ワイヤ12aの初期形状を破線で示す。また、第1清掃ワイヤ12が回転するときに生じる遠心力も、接触部位18の排水面への押し付けに寄与する。
したがって、駆動部138の回転により第1清掃ワイヤ12が回転軸線140まわりに回転するとき、第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、排水面に押し付けられながら周方向に移動する。こうして、第1清掃ワイヤ12はその側面により排水面を擦りながら回転する。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、排水面に付着した汚れを除去し、排水面を清掃することができる。
また、第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、ワイヤ取付端14とは回転軸方向に異なる位置にある。そのため、第1清掃ワイヤ12は、ワイヤ取付端14から回転軸方向に離れた場所を清掃することができる。例えば、第1ワイヤ12aは、ワイヤ取付端14aが回転軸方向において下方にあり、そこから上方に向けて内筒外周面116と外筒内周面118との隙間の深部(即ち上部)へと進入している。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、比較的狭い隙間に面する排水面を容易に清掃することができる。
第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、回転軸方向に延在しており、駆動部138の回転により外筒内周面118に沿って周方向に移動する。接触部位18の延在方向と接触部位18の移動方向とは直交する。よって、第1清掃ワイヤ12は、接触部位18の長さに応じた幅をもつ帯状の比較的広い領域を清掃することができる。
更に、図1に示されるように、清掃装置10は、内筒外周面116を清掃する第2清掃ワイヤ22を備える。第2清掃ワイヤ22は、取付の態様が第1清掃ワイヤ12と異なるが、その余については同様である。冗長を避けるため、相違点を中心に説明する。
第2清掃ワイヤ22は、その両端部がそれぞれ駆動部側部146に取り付けられている。これら2つの取付部24は、回転軸136に対し一方側に位置しており互いにごく近接している。第2清掃ワイヤ22の中央部26は回転軸136に対し取付部24とは反対側に位置する。中央部26は取付部24に比べて軸方向に上方に位置するので、第2清掃ワイヤ22は、回転軸線140に対し斜めに配置されている。第2清掃ワイヤ22は内筒外周面116を囲う環を形成する。この環は略楕円形状を有する。なお、中央部26は、湾曲していてもよいし、折り返されていてもよい。
第2清掃ワイヤ22は、中央部26と取付部24との間においてワイヤ側面が内筒外周面116に接触する。第2清掃ワイヤ22は、この接触部位28が内筒外周面116に沿って喫水面109を跨ぐように配設されている。第2清掃ワイヤ22は、弾性、例えば曲げ弾性及びねじれ弾性を有しており、第2清掃ワイヤ22に作用する弾性力によって接触部位28が外周面に押し付けられる。
仮に、第2清掃ワイヤ22を単に湾曲させて環状に取り付けたとすると、その曲げ変形による弾性的な復元力は、径方向に外向きに作用することになる。この場合、第2清掃ワイヤ22を弾性力によって充分に内筒外周面116に内向きに押し付けるのは難しい。そこで、第2清掃ワイヤ22には取付上の工夫がなされている。これを次に説明する。
取付前の第2清掃ワイヤ22は第1清掃ワイヤ12と同様に直線状である。取付に際して第2清掃ワイヤ22は湾曲され、上述のように略楕円形の環を形成する。しかし、図4(a)に示されるように、第2清掃ワイヤ22の初期形状において楕円環は回転軸136の外側にあり、従って第2清掃ワイヤ22は回転軸136を囲んでいない。
清掃装置10の取付に際し予め、第2清掃ワイヤ22は、図4(a)に矢印30で図示するように、取付部24を中心として回転される。そうして第2清掃ワイヤ22は、図4(b)に示すように、楕円環が回転軸136を囲う角度位置に達するまでねじられる。よって、第2清掃ワイヤ22には、曲げだけでなく、ねじれ変形も生じている。この変形状態で、第2清掃ワイヤ22は、図1に示されるように、内筒外周面116を囲う環を形成するよう排水トラップ104に取り付けられる。このようにして、第2清掃ワイヤ22に曲げ及びねじれの連成変形を生じさせることにより、第2清掃ワイヤ22の長手方向に沿って局所的に弾性力を径方向内向きに作用させることができる。こうして径方向内向きに弾性力が作用する領域が上述の接触部位28に相当する。
駆動部138の回転により第2清掃ワイヤ22が回転軸線140まわりに回転するとき、第2清掃ワイヤ22の接触部位28は、内筒外周面116に押し付けられながら周方向に移動する。こうして、第2清掃ワイヤ22はその側面により内筒外周面116を擦りながら回転する。したがって、第2清掃ワイヤ22は、内筒外周面116に付着した汚れを除去し、内筒外周面116を清掃することができる。
第2清掃ワイヤ22の接触部位28は、回転軸方向に対し斜めに延在しており、駆動部138の回転により内筒外周面116に沿って周方向に移動する。接触部位28の延在方向と接触部位28の移動方向とは斜めに交差する。よって、第2清掃ワイヤ22は、接触部位28の長さに応じた幅をもつ帯状の比較的広い領域を清掃することができる。
以上説明したように、本実施形態によると、清掃装置10は、多数の毛材を有する典型的なブラシ等に比べて、顕著に少数の清掃ワイヤを有する。そのため、回転に伴う水の抵抗や摩擦抵抗が低減され、小さい駆動力で容易に清掃装置10を駆動することができる。また、汚れの絡まりや付着も軽減されるので、汚れにくい清掃装置10及び排水装置100を提供することができる。
また、清掃装置10は、排水トラップ104の複数の排水面を清掃することができる。特に、経験的に汚れやすいことがわかっている封水108の喫水面109に接する領域を清掃することができる。よって、人手による清掃の手間を軽減することができる。好ましくは、人手による清掃が不要となる。
清掃装置10においては複数の清掃ワイヤが共通の回転体、即ち駆動部138に取り付けられている。そのため、清掃ワイヤごとに回転体を設ける場合に比べて、回転機構部の構成を簡略にすることができる。
なお、清掃ワイヤの配置は上述のものに限られず、追加の清掃ワイヤが設けられていてもよい。例えば、図5に示されるように、内筒内周面114を清掃する第5ワイヤ12eが設けられていてもよい。第5ワイヤ12eは、既述の他の第1清掃ワイヤ12と同様に駆動部138に取り付けられている。第5ワイヤ12eは、内筒内周面114に沿って喫水面109を跨ぐように配設されていてもよい。
また、内筒外周面116を清掃する第1清掃ワイヤ12が設けられていてもよい。この場合、初期形状におけるワイヤ取付端からワイヤ先端までの径方向距離Hがワイヤ取付端から内筒外周面116までの距離Kより長くてもよい。回転軸線140からワイヤ先端までの距離R1が回転軸線140からワイヤ取付端までの距離R2より短くてもよい。こうした距離関係で第1清掃ワイヤ12を取り付けるために、図示される駆動部138よりも大径の駆動部が用いられてもよい。
あるいは、排水ボウル102の底面を清掃する第1清掃ワイヤ12が羽根車134に取り付けられていてもよい。
2本またはそれ以上の清掃ワイヤが、ある排水面の同じ領域を清掃してもよい。例えば、同じ寸法及び形状を有する複数の清掃ワイヤが同じ取付位置及び取付角度で駆動部138に取り付けられていてもよい。あるいは、同じ寸法及び形状を有する複数の清掃ワイヤが同じ取付角度で周方向に等角度間隔で駆動部138に取り付けられていてもよい。
(第2実施形態)
第1実施形態において清掃装置10はキッチンのシンクの排水トラップ104に設けられているが、本発明の実施の形態に係る清掃装置は、その他の水回り設備の排水トラップに設けられてもよい。また、第1実施形態において清掃装置10は給水の流れによって駆動されているが、本発明の実施の形態に係る清掃装置は、排水の流れによって駆動されてもよい。
図6は、本発明の第2実施形態に係る排水装置200及び清掃装置230の側断面図を概略的に示す。排水装置200は、浴室用または洗濯機用の防水パンに設けられている。
図6に示されるように、床スラブ201の上側に、床スラブ201の上面から離隔して下地板202が配設されている。下地板202の下面からは、複数本の足ボルト(アジャスタボルト)203が下方に向って突設されており、この足ボルト203によって下地板202が所定の高さに支持されている。各足ボルト203は、下地板202の下面に設けられたナット203aに螺着されており、各足ボルト203のナット203aへのねじ込み量を調節することにより、下地板202の高さの調整や水平出しが行われる。下地板202の上側に防水シート206が敷設されている。防水シート206の上側にセメント板207が敷設され、このセメント板207の上にタイル208が貼り付けられている。
床スラブ201の所定位置から排水管209が立ち上げられており、この排水管209の上側に配置された下地板202には、排水トラップ設置用の開口210が設けられている。この開口210に排水トラップ211が設置され、排水管209に接続されている。
排水トラップ211は、上部が開放した容器形状のトラップ本体212と、トラップ本体212の底部に設けられた流出口213と、流出口213を取り囲むようにトラップ本体212の底部上面から立設された周回壁状の溢流壁214と、溢流壁214に対し上方から被さった封水椀215と、トラップ本体212の底部下面から下方へ突設された、流出口213と排水管209とを接続するための排水管接続筒216と、トラップ本体212の上縁外周から全周にわたって側方へ突設された鍔部217と、鍔部217に対し上方から重ね合わされる押えリング218とを有している。
開口210は、このトラップ本体212の通過は許容するが、鍔部217の通過は許容しない大きさである。下地板202の上面は、開口210の周縁部が周囲よりも一段低い段部219となっている。この段部219は、鍔部217が上方から係合可能であり、その深さは、鍔部217の厚みと同等か又はそれよりも若干大きなものとなっている。
排水トラップ211の上側に排水ユニット本体221が装着される。この排水ユニット本体221は、トラップ本体212に内嵌する筒部221aと、筒部221aの上縁外周から放射状に形成された水受け皿221bとを有している。水受け皿221bは、押えリング218の上面をすっぽりと覆いうる大きさ及び形状となっている。水受け皿221bの周縁部には土手部221cが形成されている。
この排水ユニット本体221を排水トラップ211に装着するに当っては、上方から筒部221aをトラップ本体212内に挿入し、水受け皿221bを押えリング218の上側に重ね合わせる。なお、筒部221aの外周にはOリング221dが装着されており、筒部221aとトラップ本体212の内周面との間はこのOリング221dによって封止される。
清掃装置230は、回転機構部232と、回転機構部232により回転駆動される複数の第1清掃ワイヤ234と、を備える。回転機構部232は、封水椀215の頂部下面に設けられている軸受部236と、軸受部236に回転自在に支持されている回転軸238と、を備える。軸受部236は例えば滑り軸受けであり、回転軸238の上端を回転可能に支持する。回転軸238は、溢流壁214の内側にて、封水椀215及び溢流壁214と同軸に延在する。回転軸238の下端には羽根部240またはプロペラ部材が設けられている。羽根部240またはプロペラ部材は、溢流壁214に流入する排水の水流を受けて回転するよう構成されている。
第1清掃ワイヤ234は、回転軸238と一体に回転するよう回転軸238の上端部に取り付けられている。第1清掃ワイヤ234は、3本のワイヤからなる。外側から順に、1本目のワイヤは、回転軸238の上端部から封水椀215の内面に沿って封水椀215の下端へと延びている。2本目のワイヤは、回転軸238の上端部から溢流壁214の外面に沿って溢流壁214の下部へと延びている。3本目のワイヤは、回転軸238の上端部から溢流壁214の内面に沿って溢流壁214の下部へと延びている。
第1清掃ワイヤ234の側面が対応する排水面に接触している。第1清掃ワイヤ234に作用する弾性力によって、第1清掃ワイヤ234は対応する排水面に押し付けられている。また、第1清掃ワイヤ234は、それぞれ対応する排水面に沿って、封水242の喫水面244を跨ぐようにして、配設されている。封水242は、封水椀215と溢流壁214とにより保持されている。
溢流壁214の内側に排水が流入すると、羽根部240の回転により回転軸238及び第1清掃ワイヤ234が回転する。第1清掃ワイヤ234は、その側面により排水面を擦りながら周方向に移動する。こうして、1本目のワイヤは封水椀215の内面を清掃し、2本目のワイヤは溢流壁214の外面を清掃し、3本目のワイヤは溢流壁214の内面を清掃する。
(第3実施形態)
上述の実施形態において清掃装置は排水トラップに設けられているが、本発明の実施の形態に係る清掃装置は、その他の水回り設備の排水装置において任意の場所に設けられてもよい。
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係る排水装置300の概略側面図であり、図7(b)は、本発明の第3実施形態に係る清掃装置310の概略側面図である。排水装置300は、洗面器301に設けられている。
図7(a)には洗面器301からの排水路が示されている。洗面器底部302の排水口303には排水器具304が取り付けられており、排水路は排水器具304から横引管部305を介してキャビネット306の内壁面306a側へ導入されている。横引管部305はL字状に折曲形成されて縦引管部307となり、縦引管部307に排水トラップ308が接続されている。
図7(b)に示されるように、清掃装置310は、排水器具304に設けられている。清掃装置310は、回転機構部312と、回転機構部312により回転駆動される第1清掃ワイヤ314と、を備える。
回転機構部312は、第2実施形態の回転機構部232と類似の構成を有する。回転機構部312は、排水器具304の底部に設けられている軸受部316と、軸受部316に回転自在に支持されている回転軸318と、を備える。回転軸318には、排水口303から流入する排水の水流を受けて回転する羽根部320またはプロペラ部材が設けられている。
第1清掃ワイヤ314は、回転軸318と一体に回転するよう回転軸318の下端部に取り付けられている。第1清掃ワイヤ314に作用する弾性力によって、第1清掃ワイヤ314の側面が第1清掃ワイヤ314は排水器具304の内面に押し付けられている。
排水器具304に排水が流入すると、羽根部320の回転により回転軸318及び第1清掃ワイヤ314が回転する。第1清掃ワイヤ314は、その側面により排水面を擦りながら周方向に移動する。こうして、第1清掃ワイヤ314は、排水器具304の内面を清掃する。
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
上述の実施形態においては、第1清掃ワイヤ12等の紐状部材は、その長手方向の全体にわたって弾性を有する。しかし、紐状部材が弾性を有する場合においては、その一部だけが弾性を有してもよい。例えば、紐状部材は、取付端またはその近傍に弾性部を有してもよい。この場合、紐状部材は、その長手方向において中間部から弾性部と反対側の先端部にかけて剛体部を有してもよい。剛体部は、排水面に接触するよう適合された湾曲形状または屈曲形状を有してもよい。このようにしても、紐状部材を排水面に弾性的に押し付けることが可能である。
また、本発明の実施形態は以下のように表現することもできる。
前記回転機構部は、前記排水路を形成する排水装置に回転自在に支持される回転体を備えてもよい。前記紐状部材の端部は、前記回転体の回転軸方向に関して前記接触部位とは異なる位置で、前記回転体に取り付けられていてもよい。
この態様によると、紐状部材の接触部位と取付端とが回転軸方向に異なる位置にある。これは、比較的狭い隙間を容易に清掃することに役立つ。例えば、紐状部材の一端を軸方向下方にて取り付け、軸方向上方に設けられている隙間に紐状部材の他端を進入させ、そうした隙間に面する排水面を清掃することが可能となる。これに対し、上述のような刷子は、その基部から多数の毛材が垂直に植設されており、従って基部を軸として刷子を回転させるとき個々の毛材の毛先と根本とは回転軸方向に同じ高さに位置する。また、刷子を設置するには基部及び毛材を受け入れる比較的広い空間を要するので、刷子は狭い隙間の清掃には適しない。
前記接触部位は、前記回転機構部の駆動による前記紐状部材の移動方向とは異なる方向に延在してもよい。
この態様によると、紐状部材は排水面との接触部位において、排水面に対する移動方向と交差する(例えば直交する)方向に延在する。そのため、紐状部材が排水面に沿って移動するとき、紐状部材の接触部位の軌跡は排水面上である幅をもつ帯状の領域となる。したがって、排水面に対する紐状部材の移動により、紐状部材は排水面上で帯状に広がる領域を清掃することができる。これに対し、上述のような刷子は、毛材の先端が封水筒内面に接触するにすぎないので、個々の毛材の回転移動により清掃されるのは円周状、つまり線状の領域であり、狭い。
前記排水路を形成する排水装置は、封水を貯留する排水トラップを備えてもよく、排水トラップは、各々が前記封水の喫水面に接する複数のトラップ表面を有してもよい。前記清掃部は、複数の紐状部材を備え、前記複数の紐状部材の各々は前記複数のトラップ表面のうち対応するトラップ表面を清掃するために設けられていてもよい。
この態様によると、排水トラップの複数の排水面、とりわけ喫水面に接する複数の面を清掃することができる。
前記紐状部材は、前記接触部位が前記封水の喫水面を跨ぐように前記回転機構部に取り付けられていてもよい。なお、前記紐状部材は、前記封水の中または外(すなわち、前記喫水面の下方または上方)において、前記回転機構部に取り付けられていてもよい。
封水の水位にあたる喫水面は、排水トラップにおいて最も汚れやすい部分の1つである。喫水面を跨ぐように紐状部材を排水面と接触させることにより、そうした汚れやすい部分を狙って清掃することができる。