JP2015180180A - 回転電機用絶縁シート及び絶縁シート製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄肉化への対応が容易でありながら絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れた回転電機用絶縁シートを提供すること。
【解決手段】スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シートであって、絶縁性樹脂フィルムからなる基材層を含んだ積層構造を有し、少なくとも一方の最表面側に位置する表面層がバインダー樹脂に球状ビーズを分散させて形成されており、該表面層の表面には前記球状ビーズによる球状突起が形成されていることを特徴とする回転電機用絶縁シートを提供する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、回転電機用絶縁シート及び絶縁シート製造方法に関し、より詳しくは、スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シート及び当該回転電機用絶縁シートを作製するための絶縁シート製造方法に関する。
従来、電力によって回転動力を発生させるモータや回転動力を電力に変換するジェネレータなどの回転電機が広く用いられており、通常、この種の回転電機には、固定配置されたステータと、該ステータに対して回転可能に設けられたロータとが備えられている。
このステータやロータとしては、永久磁石によって形成されているものの他にエナメル線などの巻線が巻回されて輪状に形成された導体コイルと該導体コイルを収容させるためのスロット溝を有するコアとによって形成されたものが知られている。
前記スロット溝は、通常、モータやジェネレータの回転軸方向と平行な方向に沿って延在されており、前記回転軸周りに略均等な間隔でステータコアやロータコアに複数条形成されている。
そして、スロット溝は、通常、ステータコアやロータコアの全長にわたる長さに形成され、ステータコアやロータコアの両端面に開口された状態となるように形成されている。
前記導体コイルは、通常、一対の並行する直線状部と該直線状部の両端を結ぶターン部により前記輪状に形成されており、前記一対の直線状部の内の一方が一つのスロット溝に収容されるとともに他方の直線状部が前記スロット溝とは周方向に離間した別のスロット溝に収容されてステータやロータの形成に用いられている。
前記コアは、高い透磁率を有する鋼材などの金属材料が用いられているため、前記スロット溝に前記導体コイルを直接収容させると、回転電機の駆動時の振動によって導体コイルを形成しているエナメル線の絶縁被膜を傷付けてしまうおそれを有する。
このことから導体コイルとスロット溝の内壁面との間に介在させて当該導体コイルを保護するためのスロットライナと呼ばれる絶縁シートが従来ステータやロータの形成に用いられている。
また、従来のステータやロータには、スロット溝から導体が飛び出すことを防止すべく、ウェッジと呼ばれる短冊状の絶縁シートがさらに備えられたりしており、該ウェッジは、その幅方向両端部をコイルとスロット溝の内壁面との間に介在させて前記スロット溝に内側から蓋をするようにして用いられている。
なお、このようにして導体コイルや絶縁シートをスロット溝に収容させた従来のステータやロータに対しては、下記特許文献1に示されているようにワニスがスロット溝に充填され、該ワニスが導体間や導体コイルとコアとの間に含浸・固化されることによってその絶縁信頼性の向上が図られたりしている。
ところで、従来、回転電機用絶縁シートには芳香族ポリアミド繊維が用いられてなる紙状のシートが用いられる場合が多く、前記スロットライナや前記ウェッジについては、スロット紙、ウエッジ紙などと称されたりしている(下記特許文献1参照)。
なお、紙状シートは、通常、細い繊維によって形成されているために表面に繊維による微小な凹凸を有し一般的な樹脂フィルムに比べて滑り性に優れている。
そのために紙状シートは、良好なる表面滑り性を有するスロットライナやウェッジの形成に利用されている。
一方で、紙状シートは、繊維どうしを互いに絡まり合わせた状態となって形成されているために、局所的に厚みの薄い部分が形成されやすく、場合によっては同じ厚みの樹脂フィルムなどに比べてピンホールなどが形成されやすい状態となっている。
このようなことから、従来の回転電機用絶縁シートにおいては、例えば、2枚の紙状のシートの間に絶縁性樹脂フィルムを挟み込んだ構成が採用されて表面滑り性と絶縁信頼性との確保が図られたりしている。
近年の電気自動車やハイブリッド自動車の普及により、車載用のモータやジェネレータとしてコンパクトで高出力のものが要望されるようになってきており、スロット内における導体コイルの占有割合(占積率)を向上させるべく絶縁シートの薄肉化が求められるようになってきている。
しかし、前記のように2枚の紙状のシートの間に絶縁性樹脂フィルムを挟み込んだ構成の絶縁シートでは、紙状のシートが、通常、一定以上の厚みを必要とするために薄肉化しようとすると絶縁性樹脂フィルムの厚みを薄くせざるを得ず、その場合には絶縁信頼性を低下させるおそれを有する。
特開2009−278851号公報
上記のような問題に対し、紙状のシートを用いずに、電気絶縁性への寄与率の高い絶縁性樹脂フィルムだけを回転電機用絶縁シートとして利用することが考えられる。
しかし、樹脂フィルムは、通常、紙状シートに比べて滑り性が悪いために、上記のように絶縁性樹脂フィルムだけを回転電機用絶縁シートとして利用しようとするとスロット溝への挿入作業性を低下させるおそれを有する。
即ち、従来の回転電機用絶縁シートは、薄肉化への対応が容易で、且つ、絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れたものとはなっていない。
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、薄肉化への対応が容易でありながら絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れた回転電機用絶縁シートを提供することを課題としている。
上記課題を解決するための回転電機用絶縁シートに係る本発明は、スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シートであって、絶縁性樹脂フィルムからなる基材層を含んだ積層構造を有し、少なくとも一方の最表面側に位置する表面層がバインダー樹脂に球状ビーズを分散させて形成されており、該表面層の表面には前記球状ビーズによる球状突起が形成されていることを特徴としている。
また、回転電機用絶縁シートを製造するための絶縁シート製造方法に係る本発明は、スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シートを製造するための絶縁シート製造方法であって、球状ビーズと、バインダー樹脂又は反応してバインダー樹脂となる反応性成分とを含有するコーティング液を回転電機用絶縁シートの基材となる絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布、乾燥させることにより前記バインダー樹脂に前記球状ビーズが分散された被膜を前記絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成させ、該被膜の表面に前記球状ビーズによる球状突起を有する回転電機用絶縁シートを製造することを特徴としている。
本発明によれば、紙状シートが繊維による凹凸を表面に形成させているのと同様に球状ビーズを含有する表面層による凹凸が回転電機用絶縁シートの表面に形成されるため、当該回転電機用絶縁シートを表面滑り性に優れ、スロットへの挿入作業性に優れたものとすることができる。
また、本発明においては、従来の回転電機用絶縁シートに用いられている紙状シートの表面凹凸と同程度の粒径(直径)を有する球状ビーズを表面層に含有させることで紙状シートの表面において繊維によって形成される凹凸と同程度の凹凸を表面層に形成させることができる。
そして、紙状シートは、少なくともその形成に用いられる繊維の太さの数倍以上の厚みを必要とし、薄肉化に限界があるのに対して、本発明における前記表面層は、その厚みを薄く形成させることが容易である。
従って、本発明の回転電機用絶縁シートは、表面層を薄く形成させることができる分だけ従来の回転電機用絶縁シートに比べて薄肉化させることができ、例えば、絶縁性樹脂フィルムの厚みを減少させることなく薄肉化への対応が可能となる。
即ち、本発明によれば、薄肉化への対応が容易でありながら絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れた回転電機用絶縁シートを提供することができる。
誘導モータの断面を示した概略断面図。 図1の記号「A」で示されている領域を拡大した概略断面図。 一実施形態の回転電気用絶縁シート(スロットライナ)の積層構造を模擬的に示した概略断面図。 回転電機用の絶縁シート製造方法の一態様を示した概略図。
以下に、回転電機としてインナーロータ型の誘導モータのステータコアに設けられたスロット溝において導体コイルとスロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シート(以下、単に「絶縁シート」ともいう)を例示しつつ本発明の好ましい実施の形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、回転軸に垂直な平面で誘導モータを切断した場合の断面の様子を示した概略断面図であり、図2は、図1の記号「A」で示されている破線で囲まれた領域におけるステータの様子を拡大した概略断面図である。
図中にも示されているように、本実施形態の誘導モータは、その略中心部に配設された細長い円柱形状を有する回転軸10と、前記回転軸10を挿通させ得る貫通孔を一端側から他端側に貫通させた略円筒形状のロータコア20とを備えたロータを有している。
本実施形態の前記ロータコア20は、前記回転軸10の外周側に周設されており、当該ロータコア20と前記回転軸10とは、固定一体化されて軸周りに回転可能な状態で誘導モータに備えられている。
本実施形態の誘導モータは、当該誘導モータ内に固定されて配設されているステータを備え、該ステータは、ステータコア30と巻線が巻き束ねられてなる導体コイルとが用いられて構成されている。
本実施形態の誘導モータにおいては、このステータコア30が、前記ロータコア20の円筒形状の外径よりも僅かに大きな内径を有する全体略円筒形状に形成されており、前記ロータは、このステータコア30の内側に収容されている。
前記ステータコア30の内周面側には複数のスロット溝31が形成されており、この複数のスロット溝31は、前記回転軸10の延在方向に向けて延在されており、しかも、周方向において隣接するスロット溝31が互いに略平行するように配設されている。
そして、ステータコア30の内周面側には、このスロット溝31によって、ステータコア30の一端側から他端側にいたる長さ(テータコア30の全長)を有する直線状の開口部31aが互いに略平行して複数形成されている。
また、スロット溝31は、ステータコア30を長さ方向に貫通する状態で形成されており、ステータコア30の一方の端面と他方の端面には、図1に示されているようなスロット溝31の断面形状と同形状の開口部が形成されている。
該ステータコア30の内周面側には、隣接するスロット溝31の間に挟まれた部分を板状に突出させてティース32が形成されている。
該ティース32は、突出方向先端部(径方向最内側)に周方向における形成幅が他部よりも広幅に形成された広幅部32aを有しており、スロット溝31の延在方向(回転軸10の延在方向)に垂直な平面による断面が略T字状となる形状を有している。
このロータコア20やステータコア30の形成には、特に限定されるものではないが、例えば、電磁鋼板を前記回転軸10の軸方向に積層させた積層体などを用いることができる。
前記スロット溝31には、前記のように巻線40が巻き束ねられてなる導体コイルが収容されている。
そして、前記巻線40によって形成された導体コイルとスロット溝31の内壁面との間には、本実施形態の絶縁シートたるスロットライナ51が介在されている。
該スロットライナ51は、スロット溝31の延在方向(回転軸10の延在方向)に垂直な平面による断面が誘導モータの中心方向に向けて開口された略U字状となる状態でスロット溝内に配設されている。
また、スロットライナ51は、スロット溝31の長さよりも僅かに長く形成されており、ステータコア30の一方の端面と他方の端面とに形成されたスロット溝31の開口部のエッジ部分と巻線40とが直接接触して、巻線40の絶縁被膜が傷ついたりすることを防止し得るように、その両端部を、ステータコア30の端面に形成されたスロット溝31の開口部からそれぞれ突出させて配設されている。
本実施形態においては、前記スロットライナ51とともに前記絶縁シートとしてウェッジ52が用いられており、該ウェッジ52は、ステータコアの内周側におけるスロット溝31の開口部31aをスロット溝の内側から塞いで巻線40の飛び出しを防止すべく用いられている。
より具体的には、前記ウェッジ52は、スロットライナ51と略同じ長さを有する短冊状のシートが幅方向両端部を僅かに折り曲げてスロットライナ51よりも浅いU字状の断面形状となるように形成されており、スロットライナ51とU字の向きを対向させるようにし、且つ、スロットライナ51のU字に対してウェッジ52のU字が外嵌された状態となるようにしてスロット溝31内に配設されている。
即ち、本実施形態における前記ウェッジ52は、導体コイルが前記スロットライナ51によって覆われていない内側部分を覆うようにスロット溝31に配されており、前記ティース32の広幅部32aと導体コイルとの間に介在されて用いられている。
該スロットライナ51は、本実施形態においては、その断面構造を図3に示すように、絶縁性樹脂フィルムからなる基材層510の両面に、バインダー樹脂511bに球状ビーズ511aを分散させた表面層511,512を有し、第一の表面層511/基材層510/第二の表面層512の3層構造を有している。
即ち、本実施形態においては、前記絶縁性樹脂フィルムがスロットライナ51の基材として採用されている。
また、前記第一の表面層511、及び、前記第二の表面層512のそれぞれは、前記球状ビーズによって表面に球状突起511x,512xが形成されて優れた表面滑り性が付与されている。
前記基材層510は、スロットライナ51を絶縁性に優れたものとする上において重要な構成部分であり、その形成には電気絶縁性に優れた絶縁性樹脂フィルムを用いることが好ましい。
より詳しくは、前記基材層510は、JIS C2139に基づく体積抵抗率を測定した際に、1×1013Ω・cm以上の体積抵抗率を示す絶縁性樹脂フィルムを用いて形成させることが好ましく、1×1014Ω・cm以上の体積抵抗率を示す絶縁性樹脂フィルムを用いて形成させることがより好ましく、1×1015Ω・cm以上の体積抵抗率を示す絶縁性樹脂フィルムを用いて形成させることが特に好ましい。
前記基材層510を形成させるために絶縁性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂;ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などのエンジニアリングプラスチックス、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などの塩素系樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、テトラフロロエチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂;ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂などといった樹脂からなるフィルムを採用することができる。
該絶縁性樹脂フィルムは、要すれば、サンドブラスト処理などの物理的表面粗化処理、プラズマ処理などの電気化学的表面粗化処理、プライマー処理などの化学的表面処理、及び、これらの複合処理といった表面処理を施して基材層510の形成に用いることができ、その場合には、上記のような表面処理を片面のみに施しても両面に施しても良く、両面に施す場合には、一面側に施す表面処理と他面側に施す表面処理とを共通させる必要はなく、それぞれ異なる表面処理を施すようにしてもよい。
本実施形態において基材層510を形成させるための樹脂フィルムの厚みは、通常、10μm以上500μm以下とすることができる。
該基材層510は、本実施形態の絶縁シートをスロットライナとして用いる場合であれば厚みが25μm以上300μm以下の樹脂フィルムで形成させることが好ましく、絶縁シートをウェッジとして用いる場合であれば厚みが100μm以上400μm以下の樹脂フィルムで形成させることが好ましい。
また、用いる樹脂フィルムとしては、前記に例示の種類のもののなかでも、機械強度と耐熱性と耐トラッキング性とに優れるとともに汎用品として安価に入手が可能である点においてエンジニアプラスチックス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどからなる樹脂フイルムが好ましい。
一方で、前記表面層511,512は、それぞれの厚み(基材層表面から球状突起の先端までの厚み)を、通常、1μm以上75μm以下とすることができ、15μm以上55μm以下であることが好ましい。
該前記表面層511,512は、絶縁シートを表面滑り性に優れたものとする上において重要な構成部分であり、芳香族ポリアミド繊維が用いられてなる紙状シートが表面層の形成に用いられている従来の絶縁シートに匹敵する表面滑り性を発揮させる上において、ある程度以上の大きさの球状ビーズを含有させることが好ましい。
その一方で、過度に大きな球状ビーズを分散させようとすると当該表面層511,512の厚みを厚くさせる必要性が向上し、その結果絶縁シートの薄肉化が十分に行われなくなるおそれを有する。
このような観点から前記球状ビーズ511a,512aは、例えば、レーザ回折式粒度分布測定機によってメジアン径(D50)を測定することによって求められる平均粒子径が5μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。
また、前記のような観点から前記球状ビーズ511a,512aは、平均粒子径が100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
なお、前記球状ビーズは、必ずしも真球度に優れたものでなくても良く、ある程度歪みを有するものも採用が可能である。
該球状ビーズは、輪郭形状における面積をS(mm)、周囲長をL(mm)とした際に、下記式で表される円形度が0.9以上の値を示すことが好ましく、0.95以上の円形度を有することが好ましい。

円形度=4πS/(L
また、前記球状ビーズは、材質が特に限定されるものではなく、ガラスビーズ、セラミックスビーズなどの無機ビーズであっても樹脂ビーズであってもよい。
ただし、無機ビーズを用いると、絶縁シートの製造過程において不用意に当該ビーズに割れを生じるなどした際にその破片によって表面層の表面に先端鋭利な突起を形成させて巻線40の絶縁被覆を傷付けてしまうおそれを有する。
このことから、前記球状ビーズ511a,512aとしては、仮に破片が鋭利な形状となるような破損を生じたとしても巻線40の絶縁被覆を傷付けてしまうおそれが低い樹脂ビーズを採用することが好ましい。
該樹脂ビーズとしては、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリプロピレン樹脂ビーズ、スチレン系樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ポリウレタン樹脂ビーズなど各種のものを一種単独で、又は、複数混合して前記表面層511,512の形成に用いることができる。
上記例示の中でも、適度な硬さを有するポリウレタン樹脂ビーズは、前記表面層に対して球状突起を形成させるための球状ビーズとして好適なものであり、平均粒子径5μm以上60μm以下のポリウレタン樹脂ビーズを前記球状ビーズとして採用することが好ましく、平均粒子径15μm以上55μm以下のポリウレタン樹脂ビーズを前記球状ビーズとして採用することがより好ましい。
絶縁シートを滑り性に優れたものとする上においては、前記ポリウレタン樹脂ビーズの平均粒子径は25μm以上であることが特に好ましく、30μm以上であることが最も好ましい。
また、前記ポリウレタン樹脂ビーズの平均粒子径は、45μm以下であることが特に好ましく、40μm以下であることが最も好ましい。
前記樹脂ビーズは、表面層511,512に優れた滑り性を発揮させる上において適度な硬度と反発弾性とを有することが好ましい。
具体的には、前記樹脂ビーズは、タイプDデュロメータ硬さ(HsD(瞬時値))が75以上100以下であることが好ましい。
樹脂ビーズの硬さ(HsD(瞬時値))は、80以上であることがより好ましく、82以上であることが特に好ましく、85以上であることが最も好ましい。
また、前記樹脂ビーズは、反発弾性率が70%以上100%以下であることが好ましい。
樹脂ビーズの反発弾性率は、73以上であることがより好ましく、78以上であることが特に好ましく、81以上であることが最も好ましい。
なお、前記デュロメータ硬さ及び前記反発弾性率は、前記樹脂ビーズに使用されているものと同じ樹脂で10mm厚みの試料を作製し、該試料に対してJIS K 7312に規定の測定を実施して求めることができる。
前記第一の表面層511と前記第二の表面層512とは、用いる球状ビーズの量や種類を共通させる必要はなく、それぞれ異ならせていてもよい。
また、球状ビーズに対しても、後述するバインダー樹脂に対する分散性やバインダー樹脂との濡れ性を調整すべく表面処理を施しても良い。
前記バインダー樹脂511b,512bは、特に限定されるものではないが、表面層511,512から球状ビーズ511a,512aが脱落したり、基材層510と表面層511,512との間で層間剥離が生じたりすることは好ましいことではないので、前記基材層510を形成する絶縁性樹脂フィルムと球状ビーズとの両方に対して優れた接着性を示すものを採用することが好ましい。
例えば、前記のように球状ビーズとしてポリウレタン樹脂ビーズを採用するのであれば、前記バインダー樹脂としてもポリウレタン樹脂を採用することが好ましい。
バインダー樹脂511b,512bにポリウレタン樹脂を採用する場合には、熱可塑性ポリウレタン樹脂を採用しても良く、ポリイソシアネート系化合物、ポリオール系化合物といった互いに反応してポリウレタン樹脂となる反応性成分どうしを反応させて得られる反応硬化性ポリウレタン樹脂を採用してもよい。
後者の反応硬化性ポリウレタン樹脂を採用する場合には、熱硬化、常温硬化、光硬化といった硬化方法に特に限定されるものではなく、採用する前記反応性成分も特に限定されるものではない。
前記ポリウレタン樹脂を形成させる反応性成分の内、前記ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを採用することができ、これらは1種単独で用いても良く、複数混合して用いても良い。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが採用可能である。
また、前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが採用可能である。
また、前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどが採用可能である。
さらに、前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが採用可能である。
また、前記ポリイソシアネート系化合物としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
前記イソシアネート系化合物と反応させてポリウレタン樹脂を形成させるための前記ポリオール系化合物としては、特に制限されず、例えば、多価アルコール等の低分子量タイプのポリオール系化合物であってもよく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール等の高分子量タイプのポリオール系化合物であってもよい。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA等のジオール類の他、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが採用可能である。
前記ポリエステルポリオールとしては、分子内に(特に、末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2個有しているポリエステル系重合体であれば特に制限されない。
なお、通常、ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多価カルボン酸とを重縮合により重合させる方法や、環状エステル(ラクトン)を開環重合させる方法の他、これらの方法を組み合わせた方法などにより調製される。
このポリエステルポリオールを調製する際の重合の条件等は、公知の条件等を適宜利用することができる。
前記多価アルコールとしては、低分子量タイプのポリオール系化合物として例示の多価アルコールや、ダイマージオールから適宜選択することができる。
また、前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ヘキサトリアコンタン二酸[HOOC−(CH34−COOH]、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸などから適宜選択することができる。
前記環状エステルとしては、例えば、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
具体的には、ポリエステルポリオールとしては、例えば、ダイマー酸と1,6−ヘキサメチレンジオールとによるポリエステルポリオール、ヘキサトリアコンタン二酸とダイマージオールとによるポリエステルポリオール、ダイマー酸とダイマージオールとによるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、分子内に(特に、末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2個有しているポリエーテル系重合体であれば特に制限されない。
なお、ポリエーテルポリオールは、通常、アルキレングリコールを縮合により重合させる方法や、環状エーテルを開環重合させる方法の他、これらの方法を組み合わせた方法などにより調製される。
このポリエーテルポリオールを調製する際の重合の条件等は、公知の条件等を適宜利用することができる。
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどが挙げられる。
具体的には、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)共重合体等のポリアルキレングリコールなどを採用することができる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、分子内に(特に、末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2個有しているポリカーボネート系重合体であれば特に制限されない。
なお、ポリカーボネートポリオールは、通常、多価アルコールとホスゲンとを反応させる方法、多価アルコールとジフェニルカーボネートとをエステル交換により反応させる方法、環状炭酸エステル(エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートなど)を開環重合させる方法の他、これらの方法を組み合わせた方法などにより調製される。
前記ポリオレフィンポリオールや前記ポリアクリルポリオールとしては、それぞれ、分子内に(特に、末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2個有しているオレフィン系重合体や、分子内に(特に、末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2個有しているアクリル系重合体であれば特に制限されない。
なお、前記ポリオレフィンポリオールや前記ポリアクリルポリオールとしては、オレフィン系重合体やアクリル系重合体にヒドロキシル基を導入させたものを採用することができ、このヒドロキシル基を導入させるための成分としては、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど]が挙げられる。
本実施形態において前記表面層を形成させるためバインダーとしては、耐熱性と耐加水分解性において優れる点においてポリエステルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂が好ましい。
なお、前記基材層がポリエステル樹脂フィルムで、前記球状ビーズがポリウレタン製であるような場合、これらに対して良好なる親和性を示す点において前記バインダー樹脂は、非晶性ポリエステルであることが好ましく、有機溶媒で可溶な非晶性ポリエステルが好ましい。
また、非晶性ポリエステルは表面層を形成させる際に、イソシアネートなどによって架橋させることが好ましい。
この非晶性ポリエステルとしては、東洋紡社から、「バイロン」のシリーズ名で市販されているものを採用することができる。
なお、前記表面層511,512は、前記球状ビーズ511a,512aと前記バインダー樹脂511b,512bとが、55:45〜65:35(球状粒子:バインダー樹脂)の質量割合となるように形成させることが好ましい。
即ち、前記表面層511,512に占める球状粒子の割合は55質量%以上であることが好ましく、65質量%以下であること好ましい。
なお、前記表面層511,512に占める球状粒子の割合は55質量%を超える割合であることがより好ましく、56質量%以上であることが特に好ましく、57質量%以上であることが最も好ましい。
また、前記表面層511,512に占める球状粒子の割合は62質量%以下であることが特に好ましく、59質量%以下であることが最も好ましい。
なお、上記においては絶縁シートとしてスロットライナ51を例に説明したが、ウェッジ52についても上記例示のスロットライナ51と同様の構成を採用させることができる。
また、上記においては基材層の両面に表面層を形成させる態様を例示しているが、本実施形態の回転電機用絶縁シートは、表面層が片面にしか形成されていないようなものであっても良い。
さらに、本実施形態の回転電機用絶縁シートは、要すれば、基材層と表面層との間に他の層を介在させたような態様とすることもできる。
前記スロットライナ51や、ウェッジ52を作製する絶縁シート製造方法としては、一般的なコーティング方法によりシート状基材の上に被膜形成させる方法を採用することが作業を煩雑にさせず良質なる絶縁シートを手軽に得られる上において好適である。
このような方法により絶縁シートを製造する方法としては、例えば、以下の工程を実施する方法が挙げられる。
(a)前記表面層を形成させるためのコーティング液を調整するコーティング液作製工程。
(b)前記基材層を形成させるための絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に前記コーティング液を塗布、乾燥させることにより前記バインダー樹脂に前記球状ビーズが分散された被膜を前記絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成させるコーティング工程。
(c)前記コーティング工程で絶縁性樹脂フィルムからなる基材層の表面に前記被膜からなる表面層の形成された積層シートをスロットライナ51や、ウェッジ52の形状に外形加工する加工工程。
前記コーティング液作製工程は、プラネタリーミキサーなどの一般的な混練機を用いて実施することができ、当該コーティング液作製工程では、前記コーティング工程において所望の被膜を形成させるのに適したコーティング液を作製することが好ましい。
例えば、前記のようにポリウレタン樹脂ビーズを球状ビーズとして採用し、バインダー樹脂としてもポリウレタン樹脂を採用する場合を例にすると、バインダー樹脂として用いる熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶解可能でポリウレタン樹脂ビーズを溶解しない溶媒を前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とともに攪拌容器に入れ、これをミキサーで十分に攪拌して熱可塑性ポリウレタン樹脂を十分に溶媒に溶解させた後、この熱可塑性ポリウレタン溶液にポリウレタン樹脂ビーズを入れてさらにミキサーで攪拌してコーティング液を作製する方法などが挙げられる。
このとき、溶媒の使用量や、増粘剤のさらなる添加によってコーティング液の流動性を調整することができる。
また、バインダー樹脂として反応硬化性ポリウレタン樹脂を採用する場合には、一方の反応性成分(例えば、ポリオール系化合物)に球状ビーズを十分に分散させて分散液を作製した後、前記コーティング工程の直前に前記分散液と他方の反応性成分(例えば、ポリイソシアネート化合物)とを混合してコーティング液を作製する方法などが挙げられる。
前記コーティング工程においては、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法等の一般的な塗工方法と、熱風循環式ヒーターや輻射加熱式ヒーター等を使った一般的な加熱乾燥方法とを採用することができる。
このとき、例えば、図4に示すように、前記塗付した直後(上図)のコーティング液511b’の厚み(ウェット厚み)に比べて前記乾燥させた後(下図)のバインダー樹脂511bの厚み(ドライ厚み)が薄くなるようにすることで球状ビーズ511aの一部をバインダー樹脂511bよりも突出させて球状突起を自動的に形成させることができる。
前記絶縁性樹脂フィルムの両面に球状ビーズを含んだ被膜を形成させて基材層の一面側に第一の表面層を形成させるとともに他面側にも第二の表面層を形成させるのであれば、これらの表面層を一度に形成させるようにしてもよく、片面に表面層を形成させた後に反対面に改めて表面層を形成させるようにして2回に分けて表面層を形成させるようにしてもよい。
前記加工工程は、例えば、コーティング工程において絶縁性樹脂フィルムからなる基材上に被膜形成させて得られた積層シートをスロットライナなどの製品と同幅にスリット加工し、得られたリボン状の積層シートを幅方向両端部において折り曲げ加工して断面U字状となるようにし、この折り曲げ加工したものを製品長さごとに切断するような方法を採用することができる。
或いは、スロットライナを平坦にした場合の形状と同じ形状になるように積層シートを打抜き加工し、これを折り曲げ加工して製品とすることも可能である。
このようにして得られるスロットライナやウェッジは、従来のスロットライナやウェッジと同じ厚みの絶縁性樹脂フィルムを用いながらも全体の厚みを薄く形成させることができる。
しかも、球状ビーズにより球状突起が形成されていることで、スロット溝31に収容させる際の作業性も良好なものとなる。
特に、本実施形態のスロットライナやウェッジは、球状突起が表面に形成されていることでスロット溝の内壁面と導体コイルとの間に介在させた後に、該スロット溝の内壁面と導体コイルとの間にさらに含浸ワニスが充填されるような場合に優れた効果を発揮させることができる。
即ち、紙状シートが表面層の形成に利用されている従来のスロットライナやウェッジは、通常、表面の凹凸が紙状シートを構成している繊維によって形成されているため、凸部が平面視において線状となっており、凹部は、多くの場合周囲が線状の凸部に囲まれた独立状態となっている。
そして、紙状シートの表面には、このように周囲から独立した凹部が多く形成されており、この種の凹部には含浸ワニスが入り込みにくく、ワニス含浸後に気泡を存在させるおそれがある。
また、この凹部に含浸ワニスが進入するかどうかが僅かな要因で変化するために従来のスロットライナやウェッジを導体コイルとともに収容させたスロット溝には、どの程度含浸ワニスが含浸されるのかが事前に予測困難となっている。
そのため、従来は、含浸ワニスのスロットへの注入を停止させるタイミングを把握することが困難で、含浸ワニスを多量に溢れさせる場合があり、この溢れた含浸ワニスをふき取るために多大な手間を生じさせたりしている。
しかし、本実施形態のスロットライナやウェッジは球状突起が表面に形成されているためにこの球状突起に対して相対的に凹入している部分はスロットライナやウェッジの表面全体に連続している。
従って、本実施形態のスロットライナやウェッジは、上記のような工程を実施するのに際して全面的に含浸ワニスを行き渡らせ易くすることができ、含浸ワニスの必要量が予測容易となるとともに内部に気泡が残存することを抑制させることができる。
この内部気泡は部分放電の起点となるおそれもあることから、この点においても本実施形態のスロットライナやウェッジを用いることで本実施形態の誘導モータに優れた絶縁信頼性を与えることができるといえる。
なお、本実施形態においては、回転電機として広く一般的に用いられていることから誘導モータに用いる絶縁シートを例示しているが、本実施形態の絶縁シートは、その他の回転電機に利用可能であることは説明するまでもなく当然の事柄である。
例えば、オルタネータと呼ばれる整流子付のジェネレータは、コンパクトで高出力であることが強く求められており、薄肉化が容易な本実施形態の絶縁シートの用途として好ましいものであるといえる。
また、用途以外についても、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価実験1>
絶縁シートを形成させるための材料として、以下のようなものを準備した。
(基材層形成用の樹脂フィルム)
・基材層を形成させるための樹脂フィルムとして、ポリエステル樹脂フィルム(東レ社製、厚み125μm)を用意した。
(表面層形成用の球状ビーズとバインダー樹脂)
・球状ビーズとしては、大日精化社製、ポリウレタン樹脂ビーズ、商品名「ダイミックビーズ、カタログ値:円形度0.96、真比重1.15(JISK7112)、硬度JIS−A 74(JISK7215)」を用いた。
なお、球状ビーズは、平均粒子径7μm、15μm、35μm、及び、56μmの4種類を用意した。
・バインダー樹脂を形成させるべく、非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製「バイロン240」)とブロックイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)とを用意した。
水酸基とイソシアネート基とが略等量となる割合で前記非晶性ポリエステルと前記ポリイソシアネートとを用意し、前記非晶性ポリエステルを溶媒に溶解した樹脂溶液に予め乾燥処理を施しておいた前記樹脂ビーズを加え、十分に混合して得られた混合物に前記ポリイソシアネートを加え表面層を形成させるためのコーティング液を調整した。
該コーティング液を、バーコーターを用いてPET樹脂フィルムの片面に塗布した後、加熱して前記非晶性ポリエステルを前記イソシアネートで架橋させるとともに塗膜を乾燥させ、乾燥後の厚みが10μmで表面に前記球状ビーズによる球状突起を多数有する表面層を形成させた。
同様に樹脂フィルムの反対側にも表面層を形成させて評価用の絶縁シートを作製した。
この評価用絶縁シートについて、JISK 7125に従って、滑り片(SUS製、63mm角(接触面積40cm)質量200g)との間に作用する静止摩擦係数と、動摩擦係数とを測定した。
具体的には、評価用絶縁シートから幅80mm×長さ200mmの試料を切り出し、該試料の長さ方向が移動方向となるように移動ステージ上に試料を固定し、さらにこの試料の上に滑り片をセットし、該移動ステージを100mm/分の速度で移動させて静止摩擦係数と、動摩擦係数とを測定した。
なお、その際の最初の最大荷重から静摩擦係数を算出し、最初の最大荷重を過ぎて最低を示した所から70mm移動するまでの間の荷重の平均値から動摩擦係数を算出した。
なお、この摩擦係数の評価については、表面層に占める球状粒子の質量割合を、49質量%、55質量%、及び、60質量%に変化させて実施した。
結果を下記表1に示す。
表にはそれぞれ2回の測定結果と、その算術平均値を記載している。
Figure 2015180180
上記の結果からも、本発明によれば薄肉化への対応が容易でありながら絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れた回転電機用絶縁シートを提供しうることがわかる。
なお、芳香族ポリアミド繊維が用いられてなる紙状シートについて静止摩擦係数の測定を実施すると、通常、0.2以下の値が得られ、概ね1.5程度の値が得られることから、平均粒子径15μm以上55μm以下のポリウレタン樹脂ビーズを55質量%以上の割合で表面層に含有させることで従来の回転電機用絶縁シートの中でも滑り性に特に優れたものに匹敵する回転電機用絶縁シートが得られることも上記の結果から理解することができる。
<評価実験2>
タイプDデュロメータ硬さ70、反発弾性率53のポリウレタン樹脂で出来た平均粒子径の異なる2種類の樹脂ビーズ(1−1,1−2)、タイプDデュロメータ硬さ80、反発弾性率73のポリウレタン樹脂で出来た平均粒子径の異なる2種類の樹脂ビーズ(2−1,2−2)、タイプDデュロメータ硬さ85、反発弾性率81のポリウレタン樹脂で出来た平均粒子径の異なる3種類の樹脂ビーズ(3−1,3−2,3−3)を用い、前記の評価実験1と同様に評価用の絶縁シート(試料No.A〜U)を作製して摩擦係数の測定を行った。
コーティング液の塗布方向(MD)及び該塗布方向と直交する方向(TD)のそれぞれについて摩擦係数の測定を行った。
結果を下記表2に示す。
Figure 2015180180
この結果からは、本発明によれば薄肉化への対応が容易でありながら絶縁性とスロットへの挿入作業性に優れた回転電機用絶縁シートが得られることを確認することができ、且つ、用いられる樹脂ビーズのタイプDデュロメータ硬さが80以上で反発弾性率が70%以上である場合においては表面滑り性に特に優れた回転電機用絶縁シートが得られることを確認することができた。
10:回転軸、20:ロータコア、30:ステータコア、31:スロット溝、32:ティース、32a:広幅部、40:巻線、51:スロットライナ、52:ウェッジ、510:基材層、511,512:表面層、511a,512a:球状ビーズ、511b,512b:バインダー

Claims (6)

  1. スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シートであって、
    絶縁性樹脂フィルムからなる基材層を含んだ積層構造を有し、少なくとも一方の最表面側に位置する表面層がバインダー樹脂に球状ビーズを分散させて形成されており、該表面層の表面には前記球状ビーズによる球状突起が形成されていることを特徴とする回転電機用絶縁シート。
  2. 前記介在された後に、前記スロット溝の内壁面と前記導体コイルとの間にさらに含浸ワニスが充填される回転電機に用いられる請求項1記載の回転電機用絶縁シート。
  3. 前記表面層には、前記球状ビーズが55質量%を超える割合で含有されており、且つ前記球状ビーズが平均粒子径15μm以上55μm以下のポリウレタン樹脂ビーズである請求項1または2記載の回転電機用絶縁シート。
  4. 前記球状ビーズが樹脂ビーズで、該樹脂ビーズのタイプDデュロメータ硬さが80以上で反発弾性率が70%以上である請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転電機用絶縁シート。
  5. 用いられる前記回転電機がオルタネータである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機用絶縁シート。
  6. スロット溝を有するコアと該スロット溝に収容された導体コイルとを有する回転電機に用いられ、前記導体コイルと前記スロット溝の内壁面との間に介在させて用いられる回転電機用絶縁シートを製造するための絶縁シート製造方法であって、
    球状ビーズと、バインダー樹脂又は反応してバインダー樹脂となる反応性成分と、を含有するコーティング液を回転電機用絶縁シートの基材となる絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布、乾燥させることにより前記バインダー樹脂に前記球状ビーズが分散された被膜を前記絶縁性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成させ、該被膜の表面に前記球状ビーズによる球状突起を有する回転電機用絶縁シートを製造することを特徴とする絶縁シート製造方法。
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