以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における医療情報提供システムSの全体構成を示す模式図である。医療情報提供システムSは、医用画像診断装置1及び患者が身に付ける通信機器T、マーカーM等によって構成されている。医療情報提供システムSは、それ自体独立したシステムとして構成されても良いが、例えば、病院情報管理システム(HIS:Hospital
Information System)、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving Communication System)といった医療機関内に構築された各種管理システムの全て、或いは、その一部を構成するようにされていても良い。
医用画像診断装置1は、患者Hの内部情報を取得し、医用画像を生成する装置である。例えば、上述したX線CT装置、或いは、MRIといったモダリティである。医用画像診断装置1は、大きく患者Hが臥位の体勢を取る寝台装置Bと、寝台装置B上の患者Hの内部情報を撮影するガントリGとから構成される。医用画像診断装置1は、処置室Rの内部に設置されている。図1に示す処置室Rにおいては、右側にドアDが設けられており、患者HはこのドアDを開けて処置室Rに入室する。入室すると、患者Hは、室内中央に設置されている医用画像診断装置1が目に入る。ここでは、手前に寝台装置Bがあり、奥にガントリGが設置されている。
なお、医療従事者が操作する入力部や表示部については、図1には示されていないが、同じく医用画像診断装置1を構成する要素である。従って、例えば、処置室Rとは別の部屋に設けられている。
医用画像診断装置1を使用した処置を受ける患者Hは、通信機器Tを身に付けている。通信機器Tは、医用画像診断装置1が患者Hの位置を把握する際必要となる情報を収集するとともに、患者Hに対して、例えば次にどのような行動を取れば良いのかを報せるためのガイド情報等の医療情報を提供する機器である。そのためこのような機能が盛り込まれていれば、通信機器Tはどのような形態を採用していても良い。本発明の実施の形態においては、例えば、患者Hが眼鏡のように顔に装着して使用する通信機器Tが採用されている。なお、図1において処置室Rを上方から俯瞰した全体図では、患者Hは眼鏡の形態の通信機器Tを装着しており、図1では破線で示している。
また、処置室Rの壁面や医用画像診断装置1の各部には、マーカーMが設けられている。このマーカーM1ないしM6は、入室した患者Hの位置を算出する際の情報として用いられる。すなわち、患者Hが身に付ける通信機器TによってマーカーMが読み取られることによって処置室R内における患者Hの位置が算出される。また、患者Hの位置が算出されるということは、これらのマーカーM1ないしM6の画像が患者Hに対して医療情報を提供する際のきっかけとなるものである。なお、当該位置算出の詳細な処理の流れについては後述する。
図1に示す処置室Rにおいては、壁面に4つのマーカー、マーカーM1ないしM4が設置されており、ガントリGに1つ(マーカーM5)、寝台装置Bに1つ(マーカーM6)が設置されている。なお、以下マーカーM1ないしM6をまとめて示す場合には、適宜「マーカーM」と表わす。
図2は、第1の実施の形態において医療情報提供システムSを構成する医用画像診断装置1及び通信機器Tの内部構成を示すブロック図である。
まず医用画像診断装置1は、CPU(Central Processing Unit)1aと、ROM(Read
Only Memory)1bと、RAM(Random Access Memory)1c及び入出力インターフェイス1dがバス1eを介して接続されている。入出力インターフェイス1dには、入力部1
fと、表示部1gと、通信制御部1hと、記憶部1iと、駆動部制御部1jと、医療情報提供部10とが接続されている。
CPU1aは、例えば医療従事者による入力部1fからの入力信号に基づいてROM1bから医用画像診断装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶部1iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。
またCPU1aは、入力部1fや入出力インターフェイス1dを介して、図2において図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPU1aは、RAM1cや記憶部1i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM1cにロードするとともに、RAM1cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、画像生成のための処理やデータの計算、加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
入力部1fは、医用画像診断装置1の操作者(医療従事者)が各種の操作を入力するキーボード、ダイヤル等の入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成しバス1eを介してCPU1aに送信される。
表示部1gは、例えば液晶ディスプレイである。この表示部1gは、CPU1aからバス1eを介して出力信号を受信し、例えばある医用画像を撮影するに当たっての条件設定に必要な画像等、或いはCPU1aの処理結果等を表示する。
通信制御部1hは、LANカードやモデム等の手段であり、医用画像診断装置1をインターネットやLAN等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御部1hを介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
記憶部1iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU1aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。その他、患者に関する情報等の各種情報も記憶されている。
図3は、実施の形態における記憶部1iの内部構成を示すブロック図である。記憶部1i内には、後述するガイド情報を格納するガイド情報データベースi1と、患者に関する情報を格納する患者情報データベースi2と、後述する背景情報を格納する背景情報データベースi3と、マーカーMに関する情報を格納するマーカーデータベースi4とを備えている。なお、図3に示す記憶部1iにおいては、説明の都合上、上述した4種類のデータベースのみを示しているが、その他必要な情報、データを記憶している。また、図3においては、データベースを「DB」と示している。
駆動部制御部1jは、医用画像診断装置1を構成する各駆動部、例えば、ガントリGや寝台装置Bの駆動を制御する。駆動部制御部1jは、医療従事者が入力部1fを介して入力した駆動の条件に沿って各部の駆動を制御する。
医療情報提供部10は、処置室Rにおいて医用画像診断装置1を利用して検査等(以下、「処置」と表わす)を受診する患者Hに対して医療情報を提供する。ここで「医療情報」には、少なくとも、処置室R内において患者Hを誘導するためのガイド情報と処置中の患者Hの心理的な負担を軽減するために通信機器Tに表示させる背景情報とが含まれる。
医療情報提供部10は、患者Hが身に付ける通信機器Tからのマーカーに関する情報を取得して患者Hの位置を算出することで、患者Hの位置に応じた適切なガイド情報を提供
する。また、背景情報を提供して、例えば、通信機器Tに医用画像診断装置1以外の画像を背景として表示させることで、患者Hが処置中に抱く心理的負担を少しでも軽減させることができる。
図4は、第1の実施の形態における医療情報提供部10の内部構成を示すブロック図である。医療情報提供部10は、受信部11と、マーカー認識部12と、閲覧位置算出部13と、医療情報選択部14と、検査ステータス管理部15と、嗜好性解析部16と、医療情報収集部17と、送信部18とから構成されている。
患者Hに対して医療情報を提供するに当たっては、通信機器Tが撮影したマーカーMをマーカー認識部12が認識する。閲覧位置算出部13は当該認識されたマーカーに関する情報から、患者Hが処置室R内においていずれの位置にいるかを算出する。医療情報選択部14は、算出された患者Hの位置において提供するに適切な医療情報を選択し、送信部18を介して通信機器Tに医療情報を患者Hに提供する。なお、医療情報選択部14が提供する医療情報を選択する場合、適宜実施されている検査のステータスに関する情報を検査ステータス管理部15から入手し、嗜好性解析部16から医療情報を提供する患者Hの嗜好を把握する。
また、医療情報収集部17は、患者Hに対してより適切な背景情報を提供するための情報を収集する際に利用される。そしてここでの収集結果を基に、患者Hに対して背景情報が選択され、提供される。
なお、医療情報提供部10の各部の詳細な機能、働きについては、患者Hに医療情報を提供する流れを説明する中で説明する。
通信機器Tは、医用画像診断装置1から提供される医療情報を患者Hに伝達する機器である。通信機器Tは、図2に示されているように、撮影部T1と、医療情報表示部T2と、及び送受信部T3とから構成されている。
撮影部T1は、患者Hが入室した処置室Rの内部を画像として撮影する機器である。具体的には、処置室R内に設けられているマーカーMを撮影する。撮影部T1は、撮影したマーカーMに関する情報を患者Hの位置を把握するための情報としての利用に供するために医用画像診断装置1へと送信する。医用画像診断装置1では、受信したマーカーMに関する情報を用いて処置室R内のいずれの位置に患者Hがいるかを把握する。なお、本発明の実施の形態においては、通信機器Tは眼鏡の形態を採用していることから、患者Hが見たものと撮影部T1が撮影する対象とは略同じ画像となる。
医療情報表示部T2は、医用画像診断装置1から提供される様々な医療情報を表示する役割を担っている。本発明の実施の形態においては、通信機器Tは眼鏡の形態を採用していることから、レンズに該当する領域に提供された医療情報が表示される。但し、通信機器Tを装着する患者Hの行動を制限することのないように、単なる眼鏡のように患者Hは医療情報表示部T2を通して外界の状況が見えるようにされている。なお、いずれの領域に医療情報を表示させるのか、或いは、医療情報を表示させる領域の大きさ等については、任意に設定することが可能である。
送受信部T3は、医用画像診断装置1との間で情報をやり取りする。情報のやり取りに当たっては、通信機器Tと医用画像診断装置1との間が有線で接続されていても良いが、患者H等の利便性を考慮すると、好適には無線で情報がやり取りされることになる。従って、例えば、送受信部T3は、TCP/IP内蔵802.11b/g/nモジュール等が組み込まれて構成されている。本発明の実施の形態における医療情報提供システムSにお
いても、図2に示すように、例えば、医療情報が医用画像診断装置1から通信機器Tに対して無線で送られる。
なお、本発明の実施の形態における通信機器Tの構成は上述の通りであるが、例えば、さらにイヤフォン等の、視覚以外の感覚に対して医療情報を提供するような機器が設けられていても良い。
次に、処置室Rにて医用画像診断装置1を利用した処置が行われる患者に対して、その入室から退室までの間になされる医療情報の提供の流れについて説明する。
図5及び図6は、実施の形態における医療情報を患者Hに提供する流れを示すフローチャートである。
まず医用画像診断装置1は、検査オーダーを受信する(ST1)。当該検査オーダーは、例えば、医療従事者が診察中に検査が必要となった場合に、検査を行うに必要な情報を入力することで発生する。或いは、例えば医療機関内に構築されている予約システムを利用して事前に入力されていても良い。
次に医用画像診断装置1は、受信した検査オーダーの中から、実際に検査対象となる患者Hの検査オーダーを確認する(ST2)。これは、処置室Rに入室してこれから検査等を行う患者Hと検査オーダーとを紐付けるために行われる。医用画像診断装置1は、複数の検査オーダーを受信する一方、検査オーダーは患者ごとに異なるからである。
ここで医用画像診断装置1を利用した検査(処置)を受診する患者Hは、処置室Rに入室する。ここで事前に通信機器Tを身に付ける。医用画像診断装置1から適宜医療情報の提供を受けるためである。
患者Hが装着する通信機器Tには、上述したように撮影部T1が設けられている。また本発明の実施の形態においては、通信機器Tは眼鏡の形態が採用されている。そして撮影部T1が患者Hの視線と同一方向を撮影するように設けられていることから、患者Hが顔を向けた方向の画像が撮影されることになる。
患者Hが処置室Rに入室すると、処置室Rの内部が見え、併せて処置室R内に設けられているマーカーMも目に入る。従って撮影部T1もマーカーMを撮影することになる。図1を用いて説明すると、患者Hが処置室Rに入室した直後は、患者Hの左側壁面に設けられているマーカーM1、処置室Rの奥に見えるマーカーM2、そして、ガントリGの寝台装置Bと対向する位置に設けられているマーカーM5が目に入る。従って、マーカーM2については、その正面を見ることができる。一方、マーカーM1は患者Hの視界には入るが、マーカーの正面を見ることはできない。また、マーカーM5については、視界に入っておりその正面も見ることができるが、患者Hの位置からすればマーカーM2のようにマーカーに正対しているわけではないので、患者Hからは角度を持って見えていることになる。
一方、例えば患者Hが処置室Rに入室して90度右側を向いた場合、寝台装置Bに正対することになる。この場合、患者Hの左側にガントリGがある。図1を見ても明らかなように、寝台装置Bの奥、患者Hの正面左側にマーカーM3が、正面右側にマーカーM4が見える。また、患者Hが下を向くと、寝台装置Bを構成する天板上に設けられているマーカーM6を見ることができる。以上のように、患者HとマーカーMとの位置関係によって患者Hにおいて見えるマーカーMとその角度が異なることになる。
このように通信機器Tの撮影部T1は、患者Hの視線方向の映像を撮影することになる。従って患者HがマーカーMを見るとそのマーカーMも撮影される。撮影された画像は、送受信部T3を介して医用画像診断装置1に送信される。医用画像診断装置1では、通信機器Tからの送信された画像情報を医療情報提供部10において受信する(ST3)。
受信した画像情報の中には、患者Hが見たマーカーMについての画像情報もある。医療情報提供部10において通信機器Tから受信した画像情報は、まず受信部11を介してマーカー認識部12に入る。マーカー認識部12では、患者Hが見たマーカーMを認識する(ST4)。マーカー認識部12がマーカーMを認識する方法については、既知の技術を利用することができるが、以下、具体的にマーカー認識部12がマーカーMを認識する方法の一例について、図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態におけるマーカーMの説明を行うための説明図である。本発明の実施の形態においては、例えば、図7に示されているマーカーMが使用されている。マーカーMは矩形の形状をしており、周囲が黒色であり、真ん中が白色とされている。つまり、白色の領域を囲むように黒色の領域が設けられている。そこで、この黒色の領域を便宜上水平方向に3つの領域に分ける。すなわち、マーカーMに正対した場合に、左側の領域が「Frame Left」であり、右側の領域が「Frame Right」である。また、黒色の領域のうち「Frame Left」と「Frame Right」との間に挟まれる領域を「Center」とする。
この「Center」の領域には白色の領域が存在する。白色の領域は、さらに4分割され、4つの領域に分けられる。それぞれ左上、右上、左下、右下の領域である。図7に示されているマーカーMには、左上、左下を含む白色の領域の左側の領域に「○」の文字が、右上、右下を含む白色の領域の右側の領域に「△」の文字が示されている。さらに「○」、「△」のいずれの文字も上下に隣接する領域にわかれ、4つの領域それぞれに文字の一部が示されている。ここでは以下、便宜上左上の領域において示される図形パターンを「pattern1」と表わす。また、右上、左下、右下のそれぞれの領域において示される図形パターンを「pattern2」、「pattern3」、「pattern4」と表す。
マーカー認識部12は、撮影されたマーカーに関して4つの白色の領域のそれぞれに示されている図形パターンを、「pattern1」ないし「pattern4」ごとに予め登録されている図形パターンと比較する。比較の結果、4つの領域に関する全ての図形パターンが既に登録されている図形パターンと一致した場合に、マーカー認識部12は患者Hが見て、撮影部T1によって撮影されて送信されてきたマーカーMを認識したことになる。
なお、マーカー認識部12は、4つの領域に関する全ての図形パターンが既に登録されている図形パターンと一致するまで比較を行い、マーカーMを認識する。また、マーカー認識部12は、4つの領域に関する全ての図形パターンが既に登録されている図形パターンと一致することをもってマーカーMを認識するが、併せて「Frame Left」、「Center」、「Frame Right」といったマーカーM1の幅に関する情報も利用してマーカーMを認識することとしても良い。
次にマーカー認識部12は、認識したマーカーMに関する情報、すなわち、送信されてきたマーカーMが処置室R内におけるいずれの位置に設けられたものであるかとの情報を取得するべく、記憶部1i内のマーカーデータベースi4にアクセスする。
図8は、実施の形態におけるマーカーデータベースi4内に記憶されているマーカーM
に関する情報の一例を示すテーブルである。このテーブルには、「マーカーID」、マーカーMにおける黒色の領域と白色の領域との位置関係を示す情報、及び、白色の4つの領域における「pattern1」ないし「pattern4」の図形パターンが示されている。
マーカーMにおける黒色の領域と白色の領域との位置関係を示す情報としては、上述した、「Frame Left」、「Center」、「Frame Right」の幅を示す数値が記憶されている。例えば、「マーカーID」が「2341」のマーカーMは、「Frame Left」、「Center」、「Frame Right」の幅がそれぞれ、「25」、「50」、「25」であると規定されている。また、「pattern1」ないし「pattern4」の図形パターンは、それぞれ「2341−1.data」ないし「2341−4.data」として記憶されている。
なお、ここでの幅を示す数値は、マーカーMにおける実際の長さであっても「Frame Left」、「Center」、「Frame Right」の幅の割合を示す数値であっても良い。
マーカー認識部12は、比較して一致した図形パターンを備えるマーカーIDを持つマーカーに関する情報を、マーカーデータベースi4に記憶されているテーブルを参照して特定する。その上で、当該マーカーに関する情報を取得する(ST5)。図8に示すテーブルでは、マーカーIDとそれぞれマーカーIDで特定されるマーカーMの位置とが紐付けられている。従って、マーカーIDを特定することで、当該マーカーIDを持つマーカーMの位置情報を把握することができる。
マーカー認識部12では、このようにして患者Hが見たマーカーMに関する情報を取得し、この情報を閲覧位置算出部13へと送信する。閲覧位置算出部13では、受信したマーカーMに関する情報や当該マーカーMを撮影した際の角度に関する情報、当該マーカーMが撮影された際の大きさに関する情報等を基に、どのような位置に立てば通信機器Tの撮影部T1において撮影された画像通りのマーカーの画像を取得できるか、その位置を算出する(ST6)。
算出される位置は、撮影部T1による撮影位置であるが、この位置はすなわち、処置室R内において患者Hがいる位置に他ならない。よって、マーカー認識部12が、撮影されたマーカーMを特定し、特定されたマーカーMの位置の情報及び、当該マーカーMの見え方も加味することで、患者Hの位置を把握することができる。算出された患者Hの位置情報は、医療情報選択部14へと送信される。
医療情報選択部14は、処置室Rにおける患者Hの立ち位置の情報を基に、そのような位置にいる患者Hに対して提供する医療情報の選択を行う。そこで、さらに検査ステータス管理部15にアクセスして、当該患者Hが受診する検査の現在の状況を示す情報(検査ステータス)を取得する(ST7)。なお、ここでは検査ステータスを取得するための基となる情報の1つとして、医療従事者による操作情報も利用することができる。
ここで「検査ステータス」の取得を行うのは、例えば、図1に示すように、患者Hが寝台装置Bの前に立っている場合であって、特に寝台装置Bを視界に収めている場合に、患者Hの位置情報のみだと、患者Hはこれから寝台装置Bに横臥するのか、医用画像診断装置1による撮影が終了して寝台装置Bから降りたのか、不明である。そこで、患者Hの位置情報に検査ステータスの情報も加味することで、患者Hに対してより適切な医療情報を提供することができる。また、検査ステータスの情報を利用することで、患者Hに対して提供した医療情報とは異なる行動を患者Hが取った場合に、当該行動を修正するためのガ
イド情報を提供することも可能となる。
医療情報選択部14は、次に患者Hに対してガイド情報の提供(ガイド表示)を行うか否か、判断する(ST8)。ステップST7において現在処置室R内にいる患者Hがどのような検査ステータスの状態にあるかが把握されている。そこで、この検査ステータスを勘案して、現在の患者Hに対してガイド表示を行うのが適切であるのか、或いは、背景情報を提供する方が適切であるのかを判断する。
この判断によって、患者Hに対してはガイド情報の提供を行う場合には(ST8のYES)、医療情報選択部14は、ガイド情報データベースi1にアクセスして検査ステータスに合致したガイド情報を取得する(ST9)。
図9は、実施の形態におけるガイド情報データベースi1内に記憶されているガイド情報に関する情報の一例を示すテーブルである。すなわちマーカーIDとこのマーカーIDが認識された場合に患者Hに対して提供するガイド情報とを紐付けるテーブルである。図9に示すテーブルでは、「マーカーID」、「X軸条件」、「Y軸条件」、「Z軸条件」、「ガイドID」、「ステータスID」の6つの項目が設定されている。
「マーカーID」は、マーカー認識部12が認識したマーカーMに付与されているIDである。マーカーMごとの「X軸条件」、「Y軸条件」、「Z軸条件」は、ガイド情報を患者Hに提供する際の各軸における条件を示している。
さらに、マーカーMごとにこのマーカーMが認識された場合に患者Hに対して提供するガイド情報が規定されている。図9に示すテーブルでは、マーカーMを「マーカーID」で特定し、ガイド情報を「ガイドID」で特定している。そして、このガイド情報が提供される場合の検査ステータスに関する「ステータスID」も規定されている。ステータスIDでは、検査開始から検査終了までのそれぞれの段階を数字で規定し示している。例えば、検査ステータスが異なっても患者Hが目にするマーカーMが重複する場合があり、その場合には、同じガイド情報が提供されることになる。
例えば、「マーカーID」が「2341」である場合には、「X軸条件」が「−800<x<800」、「Y軸条件」が「100<y<1000」と設定されており、一方、「Z軸」に関する条件は設定されていない。そして、この場合のガイド情報は、「寝台.mp3」で規定されている情報である。これは、例えば、患者Hが寝台装置Bに接近した場合に、患者Hに対して提供されるガイド情報である。
また、このときの患者Hに対して行われている検査のステータスは、「1、3、4」である。すなわち、検査ステータスが「1、3、4」である場合に、患者Hが「マーカーID」が「2341」であるマーカーMを見た場合には、いずれも同じ「寝台.mp3」のガイド情報が提供されることになる。
このようにマーカー認識部12によって患者Hが見たマーカーMが認識され、認識されたマーカーMに付与されているマーカーIDごとに規定されているガイド情報が患者Hに提供されることになる。
その上で、取得したガイド情報を送信部18を介して患者Hが装着している通信機器Tに送信する(ST10)。通信機器Tの送受信部T3は、受信したガイド情報を医療情報表示部T2に送り、医療情報表示部T2において提供された医療情報(ここではガイド情報)を表示する(ST11)。患者Hは表示されるガイド情報に従うことで、次に求められる位置、或いは、姿勢等へと誘導される。
例えば、上述した「寝台.mp3」で規定されているガイド情報は、例えば、患者Hが寝台装置Bを見た場合に、仮想的な患者が寝台装置B上に今回の処置で取るべき体位を投影するものである。このようなガイド情報が提供された患者Hは、寝台装置B上でガイドされた通りの体位を取ることになる。
なお、患者Hが寝台装置B上に横臥して動かない状態にあると、視界に入るマーカーMも限定される。また一方で、寝台装置B上に横臥等しなければ、患者Hはガイド情報に基づいて誘導されていると考えられる。この間、患者Hは処置室R内の様々なところを見ており、撮影部T1も患者Hの動きに合わせて撮影を継続している。そのため、また新たに別のマーカーMを撮影することもある。
このように患者Hが別のマーカーMを見、撮影部T1が当該マーカーMを撮影した場合には、医療情報提供部10は、再度別のマーカーMを認識し(ST12のYES)、上述したようなガイド情報の提供が行われる(ST5ないしST11)。
一方、例えば、患者Hが処置室Rを退室するような場合には、別のマーカーMを見ることもなくなるため、医療情報提供部10も新たなマーカーMを認識することもない。この場合には(ST12のNO)、患者Hに対する医療情報、すなわちガイド情報の提供は終了する。
患者Hに対して提供される医療情報としては、上述したガイド情報の他、背景情報もある。この背景情報は、検査等の処置を受診する際、患者Hが医用画像診断装置1を見ることで引き起こされる心理的負担を軽減するために提供される情報である。すなわち、例えば、ガントリGを見せないようにしたり、或いは、患者Hが見ているガントリGに何らかの画像を重複して表示させる等の処理を行う。そこで、ガイド情報の提供がされない場合には(ST8のNO)、患者Hに対して背景情報が提供される。
患者Hに背景情報が提供されるに当たって、まず、医療情報選択部14は背景情報の提供が何度目であるかを確認する(図6のST13)。ここで背景情報の提供が何度目であるかを確認するのは、最初のうちは患者Hに対してより適切な背景情報を提供するための情報を収集する必要があるからである。当該情報収集の流れについては後述する。
なお、ここで何度目をもって情報の収集を行うのか、そのまま背景情報を患者Hに提供するかは任意に設定することができる。また、回数を数え始める時点についても、例えば、医用画像診断装置1を設置した時等、任意に設定できる。
医療情報選択部14がn回目以降の背景情報の提供であると判断した場合(ST13のYES)、背景情報を提供する対象である患者Hが現在どのような検査ステータスにあるのか、そして患者の嗜好性を基に背景情報データベースi3にアクセスして背景情報を取得する(ST14)。
図10は、実施の形態における背景情報データベースi3内に記憶されている背景情報に関する情報の一例を示すテーブルである。このテーブルには、左から「マーカーID」、「嗜好性」、「検査ステータスID」、「背景ID」、「背景ファイル」、「X軸」、「Y軸」、「Z軸」の8つの項目が規定されている。
「マーカーID」は、上述したように、処置室R内に設けられている各マーカーM1ないしM6に付与されたIDである。「嗜好性」とは、患者の嗜好性である。或いは、患者の病名を含むものであっても良い。この「嗜好性」の項目は、例えば、後述するように、
適切な背景情報取得のための情報収集を行い、背景情報データベースi3に格納する際に、医療従事者が情報収集の対象となった患者の嗜好性を入力することで把握される。または、カルテ上の所見等を構文解析することで、或いは、患者が利用しているSNS等の情報を入手することで、患者の嗜好性に関する情報を取得しても良い。
「検査ステータスID」は、検査ステータスごとに付与されるIDである。また同様に、「背景ID」は、背景情報ごとに付与されるIDである。「背景ファイル」は、背景IDごとの背景情報をわかりやすく示したものであり、例えば、図10に示されているように、「花」や「森」といった、患者Hに対して提供される背景情報の内容が直感的に理解できるようにファイル名が定められている。「X軸」、「Y軸」、「Z軸」は、処置室R内において患者Hに対して背景情報を提供する際の範囲を示している。
図10のテーブルにおいて、例えば、マーカーIDが「1568」のマーカーMについては、嗜好性が「備考=閉所恐怖症」とされている。上述したように、この嗜好性の欄には、患者Hの好み等の他、医用画像診断装置1を利用して検査を受診する際に注意を要する病名等も規定されている場合も考えられる。特に、例えば、ガントリGを備える医用画像診断装置1を利用する場合、患者Hが閉所恐怖症であるか否かは非常に大きなポイントとなる。処置中に寝台装置Bが移動してガントリGに入る際、入って撮影が行われている最中の患者Hに対して何らかの背景情報を提供することで、処置中の患者Hの心理的負担を少しでも軽減することが可能となる。
マーカーIDが「1568」のマーカーMに関する検査ステータスIDは、「2、3」とされており、例えば、実際に医用画像診断装置1を利用した検査が開始されるステータスを示している。すなわち、このような検査ステータスの際にあるマーカーIDを備えるマーカーMを患者Hが見た場合、背景IDが「3212」の背景情報が、医療情報として通信機器Tを介して患者Hに提供される。ここで提供される背景情報は、「ガントリ透過.md2」である。
この「ガントリ透過.md2」という背景情報は、いわば機器としてのガントリGを透過させてあたかも存在しないかのように患者Hに見せる、というものである。つまり、ガントリGが設置されていない処置室Rの景色が背景として映し出されることになる。医用画像診断装置1を利用した検査等に心理的負担を感じる患者Hというのは、上述したようにガントリG内に入って撮影を行う際、息苦しさ等を覚えることが多い。これが閉所恐怖症の場合はなおさらである。このような患者Hに対してガントリGを透過させて見えなくするような背景情報を提供すれば、ガントリGが見えない分、その心理的負担は軽減できるものと考えられる。
なお、ガントリGを透過させて見えなくする他、図10のテーブル「背景ファイル」にも示されているように、「森」、「太陽」といったガントリGや検査等を想起させない背景情報を患者Hに提供し見せることで、その心理的負担を軽減させることも可能である。
医療情報選択部14は、背景情報データベースi3にアクセスして取得した背景情報を患者Hの通信機器に送信する(ST15)。通信機器Tの送受信部T3において受信した背景情報は医療情報表示部T2に送られて表示される(ST16)。これによって、患者Hは何らかの背景情報を見ることができ、この背景によって医用画像診断装置1を利用した処置の最中における心理的負担を少しでも軽減させることができる。
また、背景情報を患者Hに提供するだけではなく、併せてイヤフォンから患者Hが好む音楽等を流すことによって、さらに心理的負担を軽減させることができると考えられる。
以上、患者Hに対して医療情報を提供する流れについて説明した。但し、例えば、新たな医用画像診断装置1の利用開始当初は、患者Hに提供するに適切な背景情報が十分に背景情報データベースi3に格納されているとは言い難い場合もある。当然のことながら、定型となる背景情報については、予め背景情報データベースi3に格納されてはいるものの、これら定型の背景情報のみでは様々な患者Hに提供する背景情報としては不十分である。これは、個々の患者Hに合った背景情報を提供することでよりその患者Hの心理的負担を軽減させることができるからであり、そのためには多種多様な背景情報をデータベースに格納しておく必要があると考えられる。
そこで、医用画像診断装置1が設置されてから所望の数の背景情報が背景情報データベースi3に格納されるまで、適切な背景情報取得のための情報収集が行われる(ST13のNO、ST20)。
図11は、実施の形態における背景情報の収集の流れを示すフローチャートである。まず、医療情報選択部14から指示を受けた医療情報収集部17が背景情報データベースi3からランダムに選択した背景情報を取得する(ST21)。上述したように、背景情報データベースi3には事前に定型となる背景情報が記憶されている。従って背景情報データベースi3内に記憶される背景情報が少ない場合には、当該定型の背景情報を患者Hに対して提供し、患者Hの反応を把握する。このような医療情報の収集が行われ、背景情報が蓄積されてくることで、様々な患者Hごとに適切な背景情報を提供することができるようになる。
なお、定型の背景情報としては、予め様々なパターンを用意しておくことが望ましい。ここでは今後患者Hが検査等を受診する際にその心理的負担を軽減できるような背景情報を提供するためには、様々なパターンの背景情報を提供して、その反応を見ることが大切である。そのためには、ある傾向をもった背景情報ではなく様々なパターンを用意しておくと、それだけ有効なサンプルを収集することができる。
医療情報収集部17は、様々なパターンを用意しておく背景情報データベースi3内に記憶される特定の背景情報を取得し、患者Hの通信機器Tに当該背景情報を送信する(ST22)。医用画像診断装置1からの背景情報の送信を受けた通信機器Tの送受信部T3は、受信した背景情報を医療情報表示部T2に表示させる(ST23)。
表示の結果、患者Hがどのような反応を示したかについて、例えば、撮影部T1が撮影した音声を含む画像に関する情報等が通信機器Tを介して医用画像診断装置1に送信される。医用画像診断装置1の医療情報収集部17では、受信した患者Hの反応を保存しておく。
ここでは、患者Hの反応として、視界がぶれているか否か(ST24)、患者Hが処置中に行う各種工程について、各工程は所定時間内に完了したか否か(ST26)、泣き声等は聞こえるか否か(ST28)、患者Hの行為について、エラーとなる回数(エラー表示の回数)は複数回であるか否か(ST30)について確認される。なお、患者Hの反応を見るための項目は、これら4つに限られるものではなく、より少なく、或いは、より多くの項目を設けることも可能である。
それぞれの確認事項については、患者Hの反応を数値化する。例えば、反応がある場合は、所定値に係数を乗じてスコアを算出し、その算出結果を医療情報収集部17内に保存しておく(ST25、 ST27、ST29、ST31)。また、特段の反応が見られない場合には、スコアを「0」とする。なおここでは、算出結果を医療情報収集部17内に保存しておくこととしたが、例えば、医用画像診断装置1の記憶部1i内に記憶させてお
くこととしても良い。
医療情報収集部17は、算出された各確認事項のスコアを加算して総スコアを算出する(ST32)。
図12は、実施の形態における収集された背景情報に関するスコアの情報の一例を示すテーブルである。ここではある患者Xに提供された、ある背景情報に対する患者Xの反応を示すスコアが示されている。「項目」としては、上述したフローチャートに示されている通り、「視界のぶれ」、「工程完了に要した時間」、「泣き声等が聞こえた時間」、及び「エラー表示の回数」である。各項目ごとに「値」、「係数」、「スコア」の3つの欄が設けられている。
ここで「値」は、いわゆる計測値であり、前三者は「分」、後者は「回数」で表わされる。「係数」は項目ごとに設定されている値であり、この値は任意に設定することができる。ここでは「視界のぶれ」と「泣き声等が聞こえた時間」については係数が「2」と設定され、「工程完了に要した時間」及び「エラー表示の回数」については係数が「4」と設定されている。そして計測値である「値」に「係数」を乗じた値が「スコア」である。図12に示すテーブルでは、「値」と「係数」とを乗じて「スコア」を算出しているが、スコアの算出方法はどのように設定されていても良い。この各項目ごとに算出されたスコアをステップST32において全て加算して総スコアが算出される。ここでは、「総スコア」は「50」とされる。
算出された総スコアの値は、選択、表示された背景情報と紐付けた上で背景情報データベースi3に保存される(ST33)。もちろんこの総スコアを情報収集が行われた患者Xの情報とともに記憶することで、どの背景情報をどの患者に提供するとどのような反応を示すかを把握することができる。
図13は、実施の形態における収集された背景情報に関するスコアの情報の一例を示すテーブルである。このテーブルにおいては、「背景情報ID」、「性別」、「年齢」、「総スコア」の4つの項目が設けられている。図12のテーブルには示されていないが、テーブルには、総スコアのみならず、例えば、上述した各項目の詳細な値を併せて示しても良い。
例えば、テーブルの最上段、背景情報IDが「A21548」の場合、この背景情報を「3歳」の「男性」に提供すると(見せると)、総スコアは「50」となる。また、背景情報に関する情報収集に当たっては、1つの背景情報が複数の患者に提供されているケースもある。これは提供される背景情報がいずれの患者に対して有効であるかを確認する上で必要である。例えば、上述した背景情報IDが「A21548」の場合、テーブルに示されているように、3歳の男性を含む6名の患者に対して提供されている。男性、女性、それぞれ3名ずつである。また、提供された患者の年齢を見ると、3歳から12歳までの子供に提供されていることがわかる。総スコアは、1人非常に値が低い患者がいるが、その他の5名については、平均して「38.25」との値が導き出せる。
このように、最初は患者と提供される背景情報との関係性を調べるために、予め背景情報データベースi3に格納されている背景情報をランダムに提供にするが、収集される情報が蓄積していけば、患者ごとにより適切な背景情報を提供することができるようになる。なお、情報収集が行われた場合に、情報収集が完了した後は、これまで蓄積されている背景情報の中から、現時点で当該患者に最適な背景情報が選択され、表示されることになる(ST34)。
以上説明した通り、医用画像診断装置1を利用した検査等を受診するために処置室に入室した患者に対して、ガイド情報や最適な背景情報といった医療情報を提供することによって、受診中に患者が感じるストレスを可能な限り低減しつつスムーズに処置を行うことのできる医用画像診断装置、医療情報提供方法、及び医療情報提供システムを提供することができる。
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
これまでの第1の実施の形態においては、医用画像診断装置1が医療情報を提供する装置である場合を説明してきた。すなわち、医用画像診断装置1がマーカーMの画像情報を通信機器Tから取得し、患者Hの位置を把握した上で、当該位置において適切なガイド情報や背景情報といった医療情報を提供している。そのため実際に患者Hにどのような医療情報を提供するか否かについては、医用画像診断装置1が判断をしている。
一方、第2の実施の形態においては、患者Hに対してどのような医療情報を提供するかの判断を、医用画像診断装置1ではなく、実際に患者Hに医療情報を提供する装置が行う点、第1の実施の形態における医療情報提供システムSと異なる。
図14は、第2の実施の形態における医療情報提供システムS1の全体構成を示すブロック図である。医療情報提供システムS1は、主に、患者Hの検査等を行う医用画像診断装置2と、医用画像診断装置2を利用して検査等を受診する患者Hが装着する医療情報提供装置20とから構成される。なお、図14では示していないが、処置室R内には、マーカーM1ないしM6が設けられており、医用画像診断装置2は、寝台装置BとガントリGとから構成されている点は、第1の実施の形態と同様である(図1参照)。
第2の実施の形態における医用画像診断装置2の内部構成は、図14に示す通り、第1の実施の形態における医用画像診断装置1の内部構成と略同じである。異なるのは、医用画像診断装置1内には医療情報提供部10が設けられているのに対して、医用画像診断装置2には当該医療情報提供部は設けられていない点である。
これは上述したように、第2の実施の形態において実際に患者Hに医療情報を提供するのは、医療情報提供装置20であって、医用画像診断装置2ではないからである。すなわち、医用画像診断装置1内に設けられていた医療情報提供部10の機能を医療情報提供装置20に設けている。そのため、医療情報提供部10以外の各部の機能、働きについては、第1の実施の形態において説明した通りであることから、ここでは説明を省略する。
次に医療情報提供装置20について説明する。図15は、第2の実施の形態において医療情報提供システムS1を構成する医療情報提供装置20の内部構成を示すブロック図である。医療情報提供装置20は、受信部21と、マーカー認識部22と、閲覧位置算出部23と、医療情報選択部24と、検査ステータス管理部25と、嗜好性解析部26と、医療情報表示部27と、撮影部28と、医療情報情報収集部29と、送信部30と、から構成される。
第1の実施の形態における通信機器Tでは、撮影部T1と医療情報表示部T2と送受信部T3とを備えていた。上述の医療情報表示部27と撮影部28、及び受信部21並びに送信部30は、それぞれ医療情報表示部T2、撮影部T1、及び送受信部T3に該当し、機能も同じである。一方、医療情報提供装置20におけるその余の各部は、医療情報提供
部10として医用画像診断装置1内に設けられていたものであり、同じく機能、働きは同じである。従って、ここでは説明を省略する。
医用画像診断装置2を利用した処置が行われる際、患者Hは医療情報提供装置20を装着する。当該医療情報提供装置20からは、処置室R内における患者Hの位置、処置の進み具合等に応じて、適宜、ガイド情報、或いは、背景情報の医療情報が提供される。この医療情報の提供の流れについては、提供される医療情報を選択するための情報を通信装置から医用画像診断装置へと送信するステップがなくなる以外、これまで説明した通りの流れとなる。また、背景情報を収集するための流れも同様である。
以上の医療情報提供システムS1を用いることで、医用画像診断装置1を利用した検査等を受診するために処置室に入室した患者に対して、ガイド情報や最適な背景情報といった医療情報を提供することによって、受診中に患者が感じるストレスを可能な限り低減しつつスムーズに処置を行うことのできる医用画像診断装置、医療情報提供方法、及び医療情報提供システムを提供することができる。
特に、第1の実施の形態における通信機器Tは、医療情報の提供に関する判断等を行わず、あくまでも判断の材料となるマーカーMの情報を医用画像診断装置1に提供し、実際に提供される医療情報を患者Hに対して表示させるに止まっていた。一方、第2の実施の形態においては、患者Hに対してどのような医療情報を提供するかの判断を患者Hが装着する医療情報提供装置20において行っている。ガイド情報や背景情報等については、医用画像診断装置2の記憶部2iに記憶されており、適宜当該記憶部2i内のデータベースにアクセスする必要があるが、それ以外では医療情報提供装置20内で処理が完結する。従って、患者Hに対してより迅速な医療情報の提供を行うことができる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。