JP2015163616A - Ncamに結合する線維芽細胞増殖因子レセプター由来ペプチド - Google Patents

Ncamに結合する線維芽細胞増殖因子レセプター由来ペプチド Download PDF

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Abstract

【課題】NCAMに結合する線維芽細胞増殖因子レセプター由来ペプチドの提供。
【解決手段】本発明は、NCAMに結合し、かつその活性を調節し得るペプチドの使用に関する。このペプチドは、FGFRのペプチドフラグメントである。それらは、NCAM F3モジュール1−2に対するFGFRの免疫グロブリン様モジュール2の結合のための2つの別個の結合部位に由来する。本発明はさらに、異なる病理学的状態の処置のための医薬の生産のための該ペプチドの使用に関し、ここではNCAMおよび/またはFGFRが顕著な役割を果たす。
【選択図】なし

Description

(発明の分野)
本発明は、NCAMに結合し、かつその活性を調節し得るペプチドの使用に関する。このペプチドは、FGFRのペプチドフラグメントである。それらは、NCAM F3モジュール1−2に対してFGFR 免疫グロブリン様モジュール2が結合する2つの別個の結合部位に由来するものである。本発明はさらに、異なる病理学的状態の処置のための医薬を生産するためのこのペプチドの使用に関し、ここでNCAMおよび/またはFGFRは、顕著な役割を果たす。
(発明の背景)
線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)は、4つの密接に関連するレセプター型タンパク質チロシンキナーゼのファミリーである。細胞外では、それらは、3つのIg様モジュールからなり、そして細胞内では分割チロシン−キナーゼモジュールからなる(Powersら、2000)。このレセプターは、形態形成、発生、新脈管形成および創傷治癒の重要な調節因子として公知である。
線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR1−4)は、種々の線維芽細胞増殖因子(FGF1−23)(McKeehanら、1998;ItohおよびOrnitz、2004)ならびに細胞接着分子(CAM)例えば、神経細胞接着分子(NCAM)、CAM L1およびN−カドヘリン(DohertyおよびWalsh,1996;Kiselyovら、2003および2005)によって活性化され得る。FGFR活性化およびシグナル伝達は、そのリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)の高親和性結合によって誘導されるレセプターの二量体化に依存し、そしてそれはまた細胞表面ヘパリンまたはヘパラン硫酸プロテオグリカンの関与も必要とする。
プロトタイプのFGFRの細胞外部分は、中間サブタイプ(intermediate subtype)の3つのIgモジュールから構成される(Plotnikovら、1999;Pellegriniら、2000;Kiselyovら、2006a)。Ig2およびIg3モジュールは、FGFおよびヘパリンに対する結合を媒介するが、Ig1モジュールは、Ig2に対する直接の結合によって(Kiselyovら、2006b)、自己阻害性の機能を有する(Wangら、1995;Olsenら、2004)。
NCAMは、CAMのIgスーパーファミリーに属する細胞表面糖タンパク質である(概説については、Kiselyovら、2005を参照のこと)。NCAMは、細胞質ドメインに相違がある、3つの主要なアイソフォーム(A、BおよびC)として発現され得る。NCAMの細胞外部分は、3つのアイソフォームについて同一であり、かつ5つのIg様モジュールおよび2つのフィブロネクチン型III(F3)モジュールからなる。NCAMは、胚発生の間に広く発現されるが、成体の生物体では、神経起源の組織で主に見出される。NCAMは、神経系の発達の間に主要な役割を果たし、神経細胞の間の接着を媒介し、ならびに神経突起の成長および線維束性収縮を刺激し、細胞生存およびシナプス可塑性を促進する(Cremerら、1997;Berezinら、2000;BrusesおよびRutishauser,2001;RougonおよびHobert,2003;Walmodら、2004)。NCAMは、同種親和性結合を通じて細胞間接着を媒介し、かつFGFRを介して神経突起成長を調節する(DohertyおよびWalsh,1996;Kiselyovら、2003および2005)。NCAMに対する結合に関与するFGFR部位は、Ig3モジュールに対してマッピングされ、NCAM中の対応する部位は、第二のF3モジュールに対してマッピングされた(Kiselyovら、2003)。NCAM同種親和性結合の機構は広く研究されているが、いくらか議論の余地があり、利用可能な構造的データの概説については、Kiselyovら、2005を参照のこと。NCAMのIg1およびIg2モジュールは、お互いに結合することが表面プラズモン共鳴(SPR)によって示され、このことは、これらのモジュールが、対称二重逆数相互作用(symmetrical double reciprocal interaction)に関与することを示唆した(Kiselyovら、1997)。これらのデータは、核磁気共鳴(NMR)分析およびX線結晶学のような種々の方法を用いていくつかの研究グループによって後に確認された(Jensenら、1999;Atkinsら、1999;Kasperら、2000)。最近では、NCAMの最初の3つのN末端モジュールの結晶構造が決定されており(Sorokaら、2003)、そしてこの構造に基づいて、NCAM同種親和性結合のモデルが示唆されている。このモデルによれば、Ig1モジュールとIg2モジュールとの間の相互作用が、同じ細胞の表面上にcis−二量体の形成をもたらす。2つの向かい合う細胞(opposing cells)由来のcis−二量体は、2種類の一次元「ジッパー」の形成に関与し得る。組み合わせた場合、2つの「ジッパー」は、2次元の「ジッパー」を形成し得る。
NCAMの異なるモジュールは、別個の機能を行うことが示された。従って、NCAM同種親和性結合は、最初の3つのIgモジュールに依存すると考えられる。ヘパリン結合配列は、Ig2モジュールに局在する。FGFR結合は、NCAMの2つの膜近位のF3モジュール中に存在することが示唆された。
NCAMによるFGFR活性化の機構は、十分には理解されていない。FGFR分子のほとんどが、NCAMとの一過性の相互作用に関与すると考えられる(Kiselyovら、2003)。NCAMが、細胞−細胞接着に関与しない場合、NCAM分子は、細胞表面に均一に広がると推定される。しかし、NCAMが細胞−細胞接着に関与する場合(同種親和性結合を介して)、NCAM分子は、それ自体をいわゆる「ジッパー」形成物へと配置し得(Sorokaら、2003)、これが、NCAM分子のクラスタリングをもたらし、結果として、FGFR分子のクラスタリングをもたらす。FGFR分子の局所濃度の増大は、直接のFGFR−FGFR相互作用に関与するFGFR分子の数を増大すると予想され、これは、バックグラウンドのFGFR活性化の増大を生じる(Kiselyovら、2005)。
NCAMのF3モジュール1−2の二重モジュール構築物は、10μMという解離定数(Kd)で二重モジュールFGFRIg2−Ig3構築物に結合することがSPRによって以前に示された(Kiselyovら、2003)。しかし、個々のモジュール間の相互作用は、SPRではほとんど検出できない。これによって、NCAM構築物およびFGFR構築物の両方のモジュールが、結合に関与するか、または全強結合(full−strength binding)に必要であることが示される。より高感度の方法(NMR)を用いて、NCAM F3モジュール2とFGFRのIg3モジュールとの間の相互作用を検出した(NCAMのF3モジュール1とFGFRのIg2モジュールとの間の結合は試験しなかった)。NCAMのF3モジュール2における結合部分は、このモジュールのN末端に配置される、このモジュールのFG−ループ領域にマッピングされた(Kiselyovら、2003)。これによって、NCAMのF3モジュール1のC末端がNCAMのF3モジュール2のN末端部分と一緒になって、FGFRについての単一の結合部位(これはこのモジュールが分離される場合に破壊され得る)を形成し得るということが示される。
(発明の要旨)
本発明は、FGFRのIg2の2つの新規な別個のNCAM結合部位を記載しており、かつNCAMに対して結合し得、それによってNCAMシグナル伝達を調節し得るこのFGFRのIg2の結合部位に由来するペプチド配列の使用を開示する。
本発明によれば、NCAMに結合し得るFGFRのIg2の結合部位に由来するペプチド配列は、約25アミノ酸残基を含み、かつFGFRのIg2のフラグメントを含む。
本発明による使用は、細胞の分化の誘導、増殖の調節、再生の刺激、神経可塑性および生存に関する。
本発明は、FGFRおよび/またはNCAMが疾患からの病態および/または疾患からの回復において役割を果たす、種々の病理学的状態の処置、例えば、
a)術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の障害性髄鞘形成、虚血後障害(例えば、発作から生じる)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、多発梗塞性認知症などの認知症、硬化症、糖尿病に関連する神経変性、体内時計または神経−筋伝達に影響する障害、ならびに統合失調症、気分障害、例えば、躁うつ病に関連する中枢および末梢神経系の状態の処置;
b)臓器移植後のような、または遺伝性もしくは外傷性の萎縮性筋障害のような、神経−筋接続の機能障害を伴う状態を含む、筋肉の疾患もしくは状態の処置;あるいは生殖腺の変性状態、I型およびII型糖尿病のような膵臓の変性状態、ネフローゼのような腎臓の変性状態、ならびに心臓、肝臓および腸の変性状態などの、種々の臓器の疾患もしくは状態の処置;
c)創傷治癒の促進;
d)急性心筋梗塞後のような心筋細胞の死の予防;
e)脈管再生の促進;
f)学習する能力ならびに/または短期記憶および/もしくは長期記憶の刺激
g)がんの処置、
のためのペプチドの使用に関する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
NCAMシグナル伝達を調節するための、NCAM分子に結合し得るペプチドの使用であって、該ペプチドは、FGFレセプターのIg2 NCAM結合部位に相当するアミノ酸配列を含み、該配列は、FGFR Ig2に相当するFGFRのアミノ酸140〜251の領域またはそのフラグメント、改変体もしくは相同体由来であり、該配列は、該結合部位または該フラグメントもしくは相同体もしくは改変体に対して少なくとも70%同一である、使用。
(項目2)
前記ペプチドが、NCAMフィブロネクチン3、モジュール1または2に結合し得る、項目1に記載の使用。
(項目3)
前記ペプチドが、5〜10個のアミノ酸を含む、項目1または2に記載の使用。
(項目4)
前記ペプチドが、11〜15個のアミノ酸を含む、項目1または2に記載の使用。
(項目5)
前記ペプチドが、以下の配列:
TSPEKMEKKL(配列番号1)
AKTVKFK(配列番号2)
RWLKNGKEFK(配列番号3)
TWSIIMDSV(配列番号4)
SDKGNYTCIVEN(配列番号5)
TYQLDVVERS(配列番号6)
またはそのフラグメント、相同体もしくは改変体のうちの1つ以上を含む、
項目1〜4のいずれかに記載の使用。
(項目6)
前記フラグメントが、配列番号1〜6から選択される配列の少なくとも3個の連続アミノ酸残基を含む、項目1〜5のいずれかに記載の使用。
(項目7)
前記フラグメントが、配列番号1〜6から選択される配列の5個のアミノ酸残基を含む、項目8に記載の使用。
(項目8)
前記改変体配列が、前記結合部位または前記フラグメントに対して少なくとも75%同一であり、例えば、該改変体配列が、該結合部位または該フラグメントに対して少なくとも80%同一であり、例えば、該改変体配列が、該結合部位または該フラグメントに対して少なくとも90%同一である、項目1〜7のいずれかに記載の使用。
(項目9)
前記ペプチドが、NCAMシグナル伝達を調節し得る、項目1〜8のいずれかに記載の使用。
(項目10)
前記ペプチドが、NCAMシグナル伝達を活性化し得る、項目1〜9のいずれかに記載の使用。
(項目11)
前記ペプチドが、NCAMシグナル伝達を阻害し得る、項目1〜10のいずれかに記載の使用。
(項目12)
前記ペプチドが、神経突起成長を刺激し得る、項目1〜11のいずれかに記載の使用。
(項目13)
前記ペプチドが、細胞生存を刺激し得る、項目1〜12のいずれかに記載の使用。
(項目14)
前記ペプチドが、シナプス可塑性を刺激し得る、項目1〜13のいずれかに記載の使用。
(項目15)
前記ペプチドが、幹細胞の分化を刺激し得る、項目1〜14のいずれかに記載の使用。
(項目16)
前記ペプチドが、学習および/または記憶を刺激し得る、項目1〜15のいずれかに記載の使用。
(項目17)
前記ペプチドが、NCAMシグナル伝達の調節が必須である疾患または状態の処置のための医薬の生産のために用いられる、項目1〜16のいずれかに記載の使用。
(項目18)
前記ペプチドが、中枢神経系または末梢神経系の疾患または状態の処置のための医薬の生産のために用いられる、項目1〜17のいずれかに記載の使用。
(項目19)
前記ペプチドが、疾患または状態の処置のための医薬の生産のために用いられ、ここで神経細胞分化、神経細胞生存、神経形成、幹細胞増殖、幹細胞分化ならびに/または学習および記憶の刺激が、該疾患または状態からの回復に有益である、項目1〜18のいずれかに記載の使用。
(項目20)
前記ペプチドが、術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の障害性髄鞘形成、虚血後障害、多発梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に関連する神経変性、神経−筋変性、統合失調症、気分障害、躁うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病の処置のための医薬の生産に用いられる、項目1〜19のいずれかに記載の使用。
(項目21)
前記ペプチドが、神経−筋接続の機能障害を有する状態を含む筋肉の疾患もしくは状態の処置のため、または生殖腺、膵臓もしくは腎臓の疾患もしくは変性状態の処置のための医薬の生産のために用いられる、項目1〜20のいずれかに記載の使用。
(項目22)
前記ペプチドが、心筋細胞の細胞死を予防し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜21のいずれかに記載の使用。
(項目23)
前記ペプチドが、脈管再生を刺激し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜22のいずれかに記載の使用。
(項目24)
前記ペプチドが、創傷治癒を促進し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜23のいずれかに記載の使用。
(項目25)
前記ペプチドが、新脈管形成を阻害し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜24のいずれかに記載の使用。
(項目26)
前記ペプチドが、がんの処置のための医薬の生産のために用いられる、項目1〜25のいずれかに記載の使用。
(項目27)
前記ペプチドが、学習の能力ならびに/または短期記憶および/もしくは長期記憶を刺激し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜26のいずれかに記載の使用。
(項目28)
前記ペプチドが、細胞の増殖および/または分化および/または再生および/または形態的可塑性を調節し得る医薬の生産のために用いられる、項目1〜27のいずれかに記載の使用。
(項目29)
項目13〜24のいずれかに記載の医薬を含む薬学的組成物。
(項目30)
前記ペプチドが、抗体の産生のために用いられる、項目1〜29のいずれかに記載の使用。
(項目31)
FGFレセプターのIg2 NCAM結合部位に相当する配列またはそのフラグメントもしくは改変体を含むエピトープに結合し得る、抗体。
(項目32)
以下の配列:
TSPEKMEKKL(配列番号1)
AKTVKFK(配列番号2)
RWLKNGKEFK(配列番号3)
TWSIIMDSV(配列番号4)
SDKGNYTCIVEN(配列番号5)
TYQLDVVERS(配列番号6)
のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合し得る、抗体。
(項目33)
前記抗体がNCAMおよび/またはFGFRによって媒介される生物学的活性を調節し得る、項目31に記載の抗体。
(項目34)
項目17〜28に記載の状態の処置のための医薬の製造のための項目31〜33に記載の抗体の使用。
(項目35)
項目31〜33のいずれかに記載の抗体を含む薬学的組成物。
図1は、FGFRのIg2モジュールとNCAMのF3モジュール1−2との間の結合のSPR分析を示す。A)固定されたNCAMのF3モジュールに対する可溶性FGFRのIg2モジュールの結合B)固定されたFGFRのIg2モジュールに対する可溶性NCAMのF3モジュールの結合。この実験は9回繰り返した。 図2は、NCAMに対する結合に関与するIg2モジュールの残基のマッピングを示す。13μM(A)、25μM(B)および40μM(C)の未標識NCAMのF3モジュール1−2添加後の10μM 15N標識Ig1モジュールの化学シフトにおける変化、ならびにFGFRのIg2モジュールの構造物に対する顕著に摂動する残基のマッピング(右側のパネル)。化学シフトの変化は、以下の式を用いて算出した:((5ΔH)^2+(ΔN)^2)^0.5、ここでΔHは、Hの化学シフトの変化であり、ΔNは、15Nの化学シフトの変化である。 図3は、モジュールの構造物に対するFGFR Ig2モジュールの種々の結合部位のマッピングを示す。 図4は、FGFRのIg2−NCAMのF3(1−2)結合に対するスクロース八硫酸塩(sucrose octasulphate)(SOS)の阻害性効果のSPR分析を示す。固定されたNCAMのF3モジュール1−2に対する20μM FGFRのIg2モジュールの結合を、SOSの示された濃度を用いて行った。この実験を9回繰り返した。 図5は、固定されたNCAMのフィブロネクチンモジュール(F3(1−2))に対するFGFR1−Ig2由来ペプチドAKTVKFK(アミノ酸171−177)の結合を示す。 図6は、固定されたNCAMのフィブロネクチンモジュール(F3(1−2))に対するFGFR1−Ig2由来ペプチドRWLKNGKEFK(アミノ酸189−198)の結合を示す。
(発明の詳細な説明)
本発明による使用のためのペプチドは、任意のFGFR、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4およびFGFR5に由来してもよいし、または任意のFGFR1−5の改変体、例えば、天然または組み換えFGFR改変体、例えば、選択的スプライシングによって産生されるFGFR改変体、例えば、FGFR1bもしくはFGFR2b、または遺伝的多型、または任意の種類の組み換えFGFRに由来してもよい。本発明のFGFRおよびその改変体は、本明細書に記載されるNCAMのF3モジュール1−2結合部位を含むか、またはこの結合部位の少なくとも一部を含むことが理解されるべきである。本発明のNCAMのF3モジュール1−2結合部位を含む本発明のFGFRの例は、以下のAss.番号としてGenBankデータベースで特定されるFGFRポリペプチドであり得る:P11362(ヒトFGFR1に相当する)、P16092(マウスFGFR1に相当する)、P21802(ヒトFGFR2に相当する)、P21803(マウスFGFR2に相当する)、P22607(ヒトFGFR3に相当する)、Q61861(マウスFGFR3に相当する)、P22455(ヒトFGFR4に相当する)、Q03142(マウスFGFR4に相当する)またはAAK26742(ヒトFGFR5に相当する)。
本発明による使用のためのペプチドは、NCAMの活性を調節し得るペプチドである。一実施形態では、このペプチドは、NCAMを活性化し得る。別の実施形態では、このペプチドは、NCAMを阻害し得る。「調節(modulation)」または「調節する(modulating)」という用語は、阻害または刺激のような変化を意味する。
(1.アミノ酸配列)
本発明による使用のためのペプチドは、2つの別個のNCAM F3モジュール1−2の結合部位に由来する連続アミノ酸配列またはそのフラグメント、相同体もしくは改変体を含むFGFR Ig2のフラグメントを含む。この第一の結合部位は、FGFR Ig2に相当するFGFRのアミノ酸140〜251の領域由来の残基T156、S157、E159、A171、T173、V174、K175、S181、S214、M217、D218、S219およびV220を含むクラスターを含み、第二の結合部位は、FGFR Ig2に相当するFGFRのアミノ酸140〜251の領域由来の残基M161、L191、K192、N193、F197、V221、T229、C230、D246およびV248を含むクラスターを含む。
好ましい実施形態では、本発明による使用のためのペプチドは、FGFR Ig2に由来する連続アミノ酸配列を含んでもよい。従って、この実施態様では、本発明による使用のためのアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列から選択され得る:
TSPEKMEKKL(配列番号1)
AKTVKFK(配列番号2)
RWLKNGKEFK(配列番号3)
TWSIIMDSV(配列番号4)
SDKGNYTCIVEN(配列番号5)
TYQLDVVERS(配列番号6)、
またはそのフラグメント、改変体もしくは相同体。
一実施形態では、本発明による使用のための相同体は、モチーフX1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−x13およびそのフラグメントまたは改変体を含み、
ここで
X1は、Tであるかまたはアミノ酸はなく、
X3は、荷電したアミノ酸であり、
X4は、Wであり、
X6は、Kであり、
X5、X7およびX8は任意のアミノ酸であり、
X2、X9、X10、X11、X12、およびX13は、任意のアミノ酸であるか、またはアミノ酸はなく、
X9は、任意のアミノ酸であるかまたはアミノ酸はなく、
X10は、任意のアミノ酸であるかまたはアミノ酸はなく、
X11は、任意のアミノ酸であるかまたはアミノ酸はなく、
X12は、任意のアミノ酸であるかまたはアミノ酸はなく、
X13は、任意のアミノ酸であるかまたはアミノ酸はない。
相同体の例は以下であってもよい:
TIRWLKNG(配列番号7)(CNTN1、SwissProt ID:Q12860)
KWLKNGKE(配列番号8)(プロ−ニューロレグリン(pro−neuroregulin)、SwissProt ID:Q05199)
TLRWFKNGQ(配列番号9)(ニューロファシン(neurofascin)、SwissProt ID:Q9QVN5、O94856)
TIRWFKGNKELK(配列番号10)(ネクチン様(nectin−like)−2、SwissProt ID:Q1WIL9、Q6AYP5)
IRWFKNDKEIK(配列番号11)(ネクチン様(nectin−like)−3、SwissProt ID:Q1WIM2)
RWTKDGIHFKP(配列番号12)(L1、SwissProt ID:Q9QyQ7)、
TYRWLKNGVPLSP(配列番号13)(CNTN5、SwissProt ID:Q49AF3)。
別の実施形態では、本発明による使用のための相同体は、モチーフX1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12およびそのフラグメントまたは改変体を含み、
ここで、
X1は、Sであり、
X2は、Dであり、
X4は、Gであり、
X6は、Yであり、
X8は、Cであり、
X3、X5、X7、X9、X10、X11、およびX12は任意のアミノ酸である。
相同体の例は以下であってもよい:
SDVGNYTCVVTN(配列番号7)(CNTN4、SwissProt ID:Q14BL8、Q8IWV2)
SDVGNYTCFVTN(配列番号7)(CNTN6、SwissProt ID:P97528)
SDEGKYTCFAEN(配列番号7)(CNTN2、SwissProt ID:Q02246)
SDKGNYSCFVSS(配列番号7)(CNTN1、SwissProt ID:Q12860、Q28106)
SDSGNYTCMAAN(配列番号7)(ネトリンレセプターUNC5D前駆体、SwissProt ID:Q8K1S2)。
本発明の状況では、アミノ酸残基の標準的な一文字コード、および標準的な三文字コードが適用される。アミノ酸の略号は、Biochemical Nomenclature Eur.J.Biochem、1984、第184巻、9−37頁のIUPAC−IUB連合委員会(Joint Commission)の推奨に従う。本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、天然のアミノ酸の三文字コードまたは一文字コードのいずれかを用いる。L型またはD型は特定されていないが、該当のアミノ酸は天然のL型(Pure & Appl.Chem.Vol.(56(5)595−624頁(1984)を参照のこと)、またはD型を有し、その結果、形成されるペプチドは、L型、D型または混合されたL型およびD型の配列のアミノ酸から構築され得ることが理解されるべきである。
特定しない限り、本発明による使用のためのペプチドのC末端アミノ酸は、遊離のカルボン酸として存在し、これはまた「−OH」として特定され得ることが理解されるべきである。しかし、本発明による使用のためのペプチドのC末端アミノ酸は、「−NH」と示されるアミド化誘導体であってもよい。何も言及しない場合、ポリペプチドのN末端アミノ酸は、「H−」としても特定され得る、遊離のアミノ基を含む。
本発明による使用のためのペプチド、フラグメント、相同体または改変体はまた、1つまたはいくつかの非天然のアミノ酸を含んでもよい。
本発明による使用のための好ましいペプチドは、多くて25アミノ酸残基を含む、単離された連続ペプチド配列である。一実施形態では、ペプチドのアミノ酸配列の長さは、3〜10アミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8または9アミノ酸残基などであってもよい。別の実施形態では、ペプチドのアミノ酸配列の長さは、11〜25アミノ酸残基、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24アミノ酸残基などであってもよい。アミノ酸配列が5〜15アミノ酸残基という範囲の長さ、例えば、6〜13、例えば、7、8、9、10、11または12の長さを有するペプチドが好ましい。本発明による使用のための全てのペプチドは、配列番号1〜6の配列またはそれらのフラグメント、改変体もしくは相同体のすべてから選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。
従って、本発明のいくつかの実施形態は、配列番号1〜6から選択される配列のフラグメントを含むペプチドの使用に関連し得る。別の実施形態は、配列番号1〜6の改変体の使用に関連し得る。さらなる実施形態は、配列番号1〜6の相同体の使用に関連し得る。
本発明による使用のために、配列番号1〜6のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の改変体は、以下であってもよい:
i)選択された配列と少なくとも75%の同一性、例えば、76〜80%の同一性、例えば、81〜85%の同一性、例えば、86〜90%の同一性、例えば、91〜95%の同一性、例えば、96〜99%の同一性、を有するアミノ酸配列であって、ここでこの同一性は、該配列を選択された配列と照合した場合、該配列中の同一のアミノ酸の割合として規定される、アミノ酸配列。アミノ酸配列の間の同一性は、周知のアルゴリズム、例えば、BLOSUM 30、BLOSUM 40、BLOSUM 45、BLOSUM 50、BLOSUM 55、BLOSUM 60、BLOSUM 62、BLOSUM 65、BLOSUM 70、BLOSUM 75、BLOSUM 80、BLOSUM 85、またはBLOSUM 9を用いて算出され得る;
ii)選択された配列と少なくとも75%の正のアミノ酸マッチ、例えば、76〜80%の正のアミノ酸マッチ、例えば、81〜85%の正のアミノ酸マッチ、例えば、86〜90%の正のアミノ酸マッチ、例えば、91〜95%の正のアミノ酸マッチ、例えば、96〜99%の正のアミノ酸マッチを有するアミノ酸配列であって、ここでこの正のアミノ酸マッチは、比較する2つの配列中の同じ位置における、類似の物理的特性および/または化学的特性を有するアミノ酸残基の存在として規定される。本発明の好ましい正のアミノ酸マッチは、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対SおよびQ対Rである;
iii)選択された配列と同一であるアミノ酸配列であるか、またはこの配列は、選択された配列と少なくとも75%の同一性、例えば、76〜80%の同一性、例えば、81〜85%の同一性、例えば、86〜90%の同一性、例えば、91〜95%の同一性、例えば、96〜99%の同一性を有するか、あるいは、選択された配列と少なくとも75%の正のアミノ酸マッチ、例えば、76〜80%の正のアミノ酸マッチ、例えば、81〜85%の正のアミノ酸マッチ、例えば、86〜90%の正のアミノ酸マッチ、例えば、91〜95%の正のアミノ酸マッチ、例えば、96〜99%の正のアミノ酸マッチを有し、かつ他の化学部分、例えば、ホスホリル部分、イオウ部分、アセチル部分、グリコシル部分を含む。
「ペプチド配列の改変体」という用語はまた、このペプチド配列が、例えば、アミノ酸残基の1つ以上の置換によって、改変され得ることを意味する。Lアミノ酸およびDアミノ酸の両方とも、用いられ得る。他の改変は、誘導体、例えば、エステル、糖、など、例えば、メチルエステルおよびアセチルエステルを含んでもよい。
別の局面では、本発明によって用いられるアミノ酸配列の改変体は、同じ改変体、またはそのフラグメントの中に、もしくは異なる改変体、またはそのフラグメントの間で、少なくとも1つの置換、例えば、お互いと独立して導入された複数の置換を含んでもよい。従って、複合体の改変体、またはそのフラグメントは、、この改変体またはそのフラグメントの少なくとも1つのグリシン(Gly)が、Ala、Val、Leu、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアラニン(Ala)がGly、Val、LeuおよびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントが、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのバリン(Val)がGly、Ala、Leu、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのロイシン(Leu)がGly、Ala、Val、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのイソロイシン(Ile)がGly、Ala、Val、およびLeuからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)がGlu、AsnおよびGlnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン(Asn)がAsp、GluおよびGlnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのグルタミン(Gln)がAsp、GluおよびAsnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、かつここでこの改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのフェニルアラニン(Phe)がTyr、Trp、His、Proからなるアミノ酸の群から選択され、ならびに好ましくはTyrおよびTrpからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのチロシン(Tyr)がPhe、Trp、His、Proからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、好ましくはPheおよびTrpからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、このフラグメントの少なくとも1つのアルギニン(Arg)がLysおよびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのリジン(Lys)がArgおよびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメント、ならびにその独立した改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのプロリン(Pro)がPhe、Tyr、TrpおよびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、ならびにそれから独立して、改変体、もしくはそのフラグメントは、この改変体、もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのシステイン(Cys)がAsp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、ThrおよびTyrからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される、お互いに独立した保存的置換を含んでもよい。
従って、上記によれば、ペプチドフラグメントの同じ機能的な等価物、またはこの機能的な等価物のフラグメントは、本明細書において上記に定義されるような保存的なアミノ酸の2つ以上の群由来の2つ以上の保存的なアミノ酸置換を含んでもよいことになる。「保存的アミノ酸置換」という用語は、本明細書において「相同なアミノ酸置換」という用語と同義で用いられる。
保存的アミノ酸の群は、以下のとおりである:
A、G(中性、弱疎水性)、
Q、N、S、T(親水性、非荷電)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
L、P、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族)
C(架橋形成)。
保存的置換は、本発明による使用のための好ましい所定のペプチド、またはそのフラグメントの任意の位置に導入されてもよい。しかし、非保存的置換、特に、限定するものではないが、非保存的置換を任意の1つ以上の位置に導入することもまた所望され得る。
本発明による使用のためのペプチドの機能的に等価なフラグメントの形成をもたらす非保存的置換は、例えば、極性を実質的に異にするものであり、例えば、極性側鎖を有する残基、例えば、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnもしくはGlnまたは荷電したアミノ酸、例えば、Asp、Glu、ArgもしくはLysに代えて置換した非極性側鎖を有する残基(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、PheまたはMet)、または非極性の残基に代えての荷電残基もしくは極性残基の置換であり;ならびに/あるいはii)ペプチド骨格の配向に対するその効果を実質的に異にするものであり、例えば、ProもしくはGlyの置換あるいは別の残基によるProもしくはGlyに代えての置換であり;ならびに/あるいはiii)電荷を実質的に異にするものであり、例えば、正に荷電した残基、例えばLys、HisもしくはArgに代えての負に荷電した残基、例えば、GluもしくはAspの置換(および逆もまた同様)であり;ならびに/あるいはiv)立体容積(steric bulk)を実質的に異にするものであり、例えば、小さい側鎖を有する残基、例えば、Ala、GlyもしくはSerに代えての嵩高い残基、例えば、His、Trp、PheもしくはTyrの置換(および逆もまた同様)である。
アミノ酸の置換は、一実施形態では、それらの疎水性および親水性の値、ならびに電荷、サイズなどを含むアミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性に基づいて行われてもよい。
本発明による使用のためのアミノ酸配列のフラグメントおよび改変体の両方とも、この配列の機能的な等価物である。
アミノ酸配列の「機能的な等価物」という用語は、本発明の状況では、上記のアミノ酸配列の改変体もしくはフラグメントについての基準を満たし、かつ上記配列もしくは上記配列を含む化合物の1つ以上の機能的な活性を果たし得る分子を意味する。好ましい実施形態では、本発明による使用のためのアミノ酸配列の機能的な等価物は、NCAMに結合しかつその活性を調節し得る。
本発明は、本発明による使用のための単離されたペプチド、および本発明による使用のためのペプチドを含む融合タンパク質の両方に関する。
一実施形態では、本発明による使用のためのペプチドは、単離されたペプチドである。「単離されたペプチド」という用語は、本発明による使用のためのペプチドが、個々の化合物であり、かつ別の化合物、例えば、25個を超えるアミノ酸残基を含むポリペプチドなどの一部ではないことを意味する。この単離されたペプチドは、任意の組み換え技術方法もしくは化学合成の使用によって産生されて、他の化合物から分離されてもよく、またはこのペプチドは、酵素的もしくは化学的な切断の方法によってより長いポリペプチドもしくはタンパク質から分離されて、さらに他のタンパク質フラグメントから分離されてもよい。
本発明による使用のための単離されたペプチドは、一実施形態では、2つの異なるNCAM F3モジュール1−2の結合部位に由来する連続アミノ酸配列を含むFGFR Ig2のフラグメントを含む。配列番号1を有するペプチドは、第一の結合部位由来の3アミノ酸、および第二の結合部位由来の1アミノ酸を含む。配列番号2を有するペプチドは、第一の結合部位由来の4アミノ酸を含む。配列番号3を有するペプチドは、第二の結合部位由来の4アミノ酸を含む。配列番号4を有するペプチドは、第一の結合部位由来の4アミノ酸を含む。配列番号5を有するペプチドは、第二の結合部位由来の2アミノ酸を含む。配列番号6を有するペプチドは、第二の結合部位由来の2アミノ酸を含む。本発明による使用のための単離されたペプチドは、一実施形態では、配列番号1〜6から選択される、2つの別個のNCAM F3モジュール1−2の結合部位に由来する連続アミノ酸配列またはそのフラグメントもしくは相同体を含むFGFR Ig2のフラグメントを含んでもよい。別の実施形態では、この単離されたペプチドは、配列番号1〜6の配列の1つ以上から構成され得る。
(ペプチド配列の産生)
本発明のペプチド配列は、任意の従来の合成方法、組み換えDNA技術、全長タンパク質(このペプチド配列が由来する)の酵素的切断、または上記方法の組み合わせによって調製されてもよい。
(組み換え調製)
従って、一実施形態では、本発明のペプチドは、組み換えDNA技術の使用によって産生される。
ペプチドまたはこのペプチドが由来する対応する全長タンパク質をコードするDNA配列は、確立された標準的な方法、例えば、BeaucageおよびCaruthers、1981、Tetrahedron Lett.22:1859−1869に記載されるホスホアミジン(phosphoamidine)方法、またはMatthesら、1984,EMBO J.3:801−805に記載の方法によって合成的に調製されてもよい。ホスホアミジン法によれば、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNAシンセサイザーで合成され、精製され、アニーリングされ、ライゲーションされそして適切なベクター中にクローニングされる。
ペプチドをコードするDNA配列はまた、標準的なプロトコールに従ってDNAaseIを用いて、ペプチド由来の対応する全長タンパク質をコードするDNA配列の断片化によって調製されてもよい(Sambrookら、Molecular cloning:A Laboratory manual.第2版、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)。本発明は、上記で特定されるタンパク質の群から選択される全長タンパク質に関する。本発明の全長タンパク質をコードするDNAは別法では、特定の制限エンドヌクレアーゼを用いて断片化されてもよい。DNAのフラグメントはさらに、Sambrookら、Molecular cloning:A Laboratory manual.第2版、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載の標準的な手順を用いて精製される。
全長タンパク質をコードするDNA配列はまた、ゲノム由来であってもまたはcDNA由来であってもよく、例えば、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーを調製すること、および標準的な技術によって合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるハイブリダイゼーションによって全長タンパク質の全てもしくは一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることによって得てもよい(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、1989を参照のこと)。DNA配列は、また例えば、米国特許第4,683,202号またはSaikiら、1988,Science 239:487−491に記載のような特定のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応によって調製されてもよい。
次いで、DNA配列を組み換え発現ベクター(好都合には組み換えDNA手順に供され得る、任意のベクターであってもよい)に挿入する。ベクターの選択は、このベクターが導入されるべき宿主細胞に依存する場合が多い。従って、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、染色体外実体として存在するベクター(その複製は、染色体の複製とは独立している)、例えば、プラスミドであってもよい。あるいは、このベクターは、宿主細胞に導入された場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体(単数または複数)と一緒に複製されるベクターであってもよい。
ベクターでは、ペプチドまたは全長タンパク質をコードするDNA配列は、適切なプロモーター配列に対して作動可能に接続されるべきである。プロモーターは、選り抜きの宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であってもよく、そして宿主細胞に対して同種または異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子由来であってもよい。哺乳動物細胞におけるコードDNA配列の転写を誘導するための適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramaniら、1981、Mol.Cell Biol.1:854−864)、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiterら、1983、Science 222:809−814)またはアデノウイルス2主要後期プロモーターである。昆虫細胞での使用のための適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーターである(Vasuvedanら、1992、FEBS Lett.311:7−11)。酵母宿主細胞における使用のための適切なプロモーターとしては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモーター(Hitzemanら、1980、J.Biol.Chem.255:12073−12080;AlberおよびKawasaki、1982、J.Mol.Appl.Gen.1:419−434)またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Youngら、1982、Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals,Hollaenderら編集、Plenum Press、New York)、またはTPI1(米国特許第4,599,311号)またはADH2−4c(Russellら、1983、Nature 304:652−654)プロモーターが挙げられる。糸状菌宿主細胞における使用のために適切なプロモーターは、例えば、ADH3プロモーター(McKnightら、1985、EMBO J.4:2093−2099)またはtpiAプロモーターである。
コードDNA配列はまた、適切なターミネーター、例えば、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiterら、前掲)または(真菌宿主に対して)TPI1(AlberおよびKawasaki、前掲)またはADH3(McKnightら、前掲)プロモーターに対して作動可能に接続されてもよい。このベクターはさらに、エレメント、例えば、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40またはアデノウイルス5 Elb領域由来)、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)および翻訳エンハンサー配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードする配列)を含んでもよい。
組み換え発現ベクターはさらに、該当の宿主細胞においてベクターを複製できるDNA配列を含んでもよい。上記配列の例(宿主細胞が哺乳動物細胞である場合)は、SV40複製起点である。このベクターはまた、選択マーカー、例えば、生成物が宿主細胞における欠損を補完する遺伝子、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子、または薬物、例えば、ネオマイシン、ヒドロマイシンもしくはメトトレキセートに対する耐性を付与する遺伝子を含んでもよい。
ペプチドまたは全長タンパク質をコードするDNA配列、プロモーターおよびターミネーターをそれぞれ連結するために、ならびにそれらを複製に必要な情報を含む適切なベクターに挿入するために用いられる手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrookら、前掲を参照のこと)。
本発明の組み換えペプチドを得るために、コードDNA配列は、第二のペプチドコード配列およびプロテアーゼ切断部位コード配列と有用に融合されてもよく、これによって、融合タンパク質をコードするDNA構築物が得られ、ここでこのプロテアーゼ切断部位コード配列は、HBPフラグメントと第二のペプチドコードDNAとの間に位置し、組み換え発現ベクターに挿入され、組み換え宿主細胞中で発現される。一実施形態では、この第二のペプチドは、限定するものではないがグルタチオン(glutathion)−S−リダクターゼ、仔ウシチモシン、細菌チオレドキシンまたはヒトユビキチンの天然もしくは合成の改変体、またはそれらのペプチドを含む群から選択される。別の実施形態では、プロテアーゼ切断部位を含むペプチド配列は、第Xa因子(アミノ酸配列IEGRを有する)、エンテロキナーゼ(アミノ酸配列DDDDKを有する)、トロンビン(アミノ酸配列LVPR/GSを有する)、またはAcharombacter lyticus(アミノ酸配列XKX切断部位を有する)であってもよい。
発現ベクターが導入される宿主細胞は、ペプチドまたは全長タンパク質を発現し得る任意の細胞であってもよく、好ましくは、真核生物細胞、例えば、無脊椎動物(昆虫)細胞または脊椎動物細胞、例えば、Xenopus laevis卵母細胞または哺乳動物細胞、詳細には昆虫細胞および哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞系の例は、HEK293(ATCC CRL−1573)、COS(ATCC CRL−1650)、BHK(ATCC CRL−1632,ATCC CCL−10)またはCHO(ATCC CCL−61)細胞系である。哺乳動物細胞をトランスフェクトし、該細胞に導入されたDNA配列を発現する方法は、例えば、KaufmanおよびSharp、J.Mol.Biol.159、1982、pp.601−621;SouthernおよびBerg、1982、J.Mol.Appl.Genet.1:327−341;Loyterら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:422−426;Wiglerら、1978,Cell 14:725;CorsaroおよびPearson、1981、Somatic Cell Genetics 7、p.603;Grahamおよびvan der Eb、1973、Virol.52:456;ならびにNeumannら、1982、EMBO J.1:841−845に記載される。
あるいは、真菌細胞(酵母細胞を含む)は、宿主細胞として用いられてもよい。適切な酵母細胞の例としては、Saccharomyces spp.またはSchizosaccharomyces spp.、詳細には、Saccharomyces cerevisiaeの株の細胞が挙げられる。他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えば、Aspergillus spp.またはNeurospora spp.、詳細には、Aspergillus oryzaeまたはAspergillus nigerの株の細胞である。タンパク質の発現のためのAspergillus spp.の使用は、例えば、欧州特許第238023号に記載される。
細胞を培養するために用いられる培地は、哺乳動物細胞を増殖させるために適切な任意の従来の培地、例えば、血清含有培地もしくは適切な補充物を含む無血清培地、または昆虫、酵母もしくは真菌細胞を増殖させるために適切な培地であり得る。適切な培地は、商業的な供給業者から入手可能であり、または公開されたレシピ(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)のカタログにある)によって調製されてもよい。
細胞によって組み換え産生されるペプチドまたは全長タンパク質は、次に、従来の手順、例としては、遠心分離もしくは濾過によって培養培地から宿主細胞を分離すること、塩、例えば、硫酸アンモニウムによって上清もしくは濾液のタンパク質成分を沈殿させること、種々のクロマトグラフィー手順、例えば、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどによる精製によって培養培地から回収され得る。
(合成による調製)
ペプチドの合成産生のための方法は、当該分野で周知である。合成ペプチドを産生するための詳細な記載および実践的なアドバイスは、Synthetic Peptides:A User’s Guide(Advances in Molecular Biology)、Grant G.A.編集、Oxford University Press、2002に、または:Pharmaceutical Formulation:Development of Peptides and Proteins、FrokjaerおよびHovgaard編集,TaylorおよびFrancis、1999に見出され得る。
ペプチドは、例えば、Fmoc化学を用いることによって、Acm−保護システインを用いて合成されてもよい。逆相HPLCによる精製後、ペプチドをさらに処理して、例えば、環状またはC末端もしくはN末端修飾されたアイソフォームを得てもよい。環化および末端修飾のための方法は、当該分野で周知であり、かつ上で引用されるマニュアルに詳細に記載されている。
好ましい実施形態では、本発明のペプチド配列は、合成的に、詳細には、Sequence Assisted Peptide Synthesis(SAPS)方法によって産生される。
ペプチドは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)またはtert.−ブチルオキシカルボニル、(Boc)を、N−a−アミノ保護基および側鎖官能性のための適切な共通の保護基として用いて、完全自動ペプチドシンセザイザーにおいて、濾過のためのポリプロピレンフィルターを装備したポリエチレン容器中でバッチ方式で、または連続フローバージョンのポリアミド固相方法(Dryland,A.およびSheppard,R.C.,(1986)J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,125−137.)で合成してもよい。
(医薬)
NCAMの活性を調節し得る化合物を提供することが本発明の目的であって、本発明による該化合物は、疾患の処置のための医薬として考えられており、ここではNCAMシグナル伝達の調節を治癒の必須条件として考慮することが可能である。
従って、本発明は、医薬の製造のための、FGFレセプターのIg2 NCAM結合部位に対応する配列またはそのフラグメントもしくは改変体を含む1つ以上のペプチドの使用に関する。
一実施形態では、本発明の医薬は、配列番号1〜6に示されるアミノ酸配列、または上記配列のフラグメントもしくは改変体もしくは相同体、または上記相同体のフラグメントもしくは改変体のうちの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、本発明の医薬は、本発明の結合部分を含むエピトープに結合し得る抗体、または上記抗体のフラグメントもしくは改変体を含む。
この医薬は、一局面では、細胞死をインビトロまたはインビボで防止し得、ここでこの組成物は、被験体に対して、インビトロまたはインビボで、上記の化合物または下に記載されるような組成物のうちの1つ以上の有効量で投与され、それによって、本明細書に考察されるようにいくつかの組織および臓器においてNCAM提示細胞の細胞死を防ぐ。
本発明の医薬は、上記で定義されるとおり、有効量の1つ以上の化合物、または上記のような化合物を含む組成物を、薬学的に許容され得る添加物と組み合わせて含む。このような医薬は適切には、経口投与、経皮投与、筋肉内投与、静脈内投与、頭蓋内投与、くも膜下腔内投与、脳室内投与、鼻腔内投与または肺投与のために処方され得る。
本発明のペプチドに基づく医薬および組成物の処方物開発におけるストラテジーは一般には、任意の他のタンパク質に基づく薬物製品についての処方ストラテジーに相当する。これらの問題を克服するために必要な潜在的な問題およびガイダンスは、いくつかの教科書、例えば、「Therapeutic Peptides and Protein Formulation.Processing and Delivery Systems」、編集.A.K.Banga,Technomic Publishing AG,Basel,1995に取り扱われる。
注射剤は一般には、液体溶液もしくは懸濁液、注射の前に液体状態になる、溶液に適した固体形態または、注射の前に液体状態になる懸濁液のいずれかとして調製される。この調製物はまた、乳化されてもよい。活性成分は、薬学的に許容され得、活性成分と適合性である賦形剤と混合される場合が多い。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望の場合、調製物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または調製物の有効性もしくは輸送を増強する補助物質を含んでもよい。
本発明の化合物の処方物は、当業者に公知の技術によって調製され得る。この処方物は、薬学的に許容され得るキャリアおよび賦形剤を含んでもよく、これにはマイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などが挙げられる。
この調製物は、注射によって、必要に応じて活性成分がその効果を及ぼす場所に、適切に投与されてもよい。他の様式の投与に適切なさらなる処方物としては、坐剤、経鼻処方物、肺内(plumonal)処方物および、ある場合には、経口処方物が挙げられる。坐剤に関して、伝統的な結合剤およびキャリアとしては、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられる。上記坐剤は、0.5%から10%、好ましくは、1〜2%の範囲内での活性成分(単数または複数)を含む混合物から形成してもよい。経口処方物としては、そのような通常使用される賦形剤を、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬等級として含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性処方物または粉末の形態をとり、一般には、10〜95%の活性成分(単数または複数)、好ましくは、25〜70%の活性成分を含む。
他の処方物は、経鼻および肺内投与などに、例えば、吸入器およびエアロゾルでの投与に適切である。
活性化合物は、中性形態または塩形態として処方され得る。薬学的に許容され得る塩としては、酸付加塩(ペプチド化合物の遊離アミノ基で形成される)が挙げられ、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などで形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、また無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄など、および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来してもよい。
調製物は、投薬型の処方物に適合する方式で、かつ治療上有効であるような量で投与される。投与される量は、例えば、被験体の体重および年齢、処置される疾患および疾患のステージを含めて、処置される被験体に依存する。適切な投薬量の範囲は、1投与につき、通常は、体重1キロあたり数百μgのオーダーの活性成分であり、好ましい範囲は、体重1キロあたり約0.1μg〜5000μgである。化合物の単量体形態を用いて、適切な投薬量は、体重1キロあたり0.1μg〜5000μgの範囲内、例えば、体重1キロあたり約0.1μg〜3000μgの範囲内、とりわけ、体重1キロあたり約0.1μg〜1000μgの範囲内にある場合が多い。化合物の多量体形態を用いて、適切な投薬量は、体重1キロあたり0.1μg〜1000μgの範囲内、例えば、体重1キロあたり約0.1μg〜750μgの範囲内、とりわけ、体重1キロあたり約0.1μg〜500μgの範囲内、例えば、体重1キロあたり約0.1μg〜250μgの範囲内にあることが多い。特に、経鼻的に投与する場合、他の経路で投与するときよりもより少ない投薬量が用いられる。投与は、1度に行われてもよいし、またはその後に投与が続いてもよい。投薬量はまた、投与の経路に依存し、処置される被験体の年齢および体重と共に変化する。多量体形態の好ましい投薬量は、体重70kgあたり1mg〜70mgの範囲内にある。
ほとんどの適応症について、局所または実質的に局所の適用が好ましい。
本発明の化合物のいくつかは、十分に活性であるが、他のいくつかについては、調製物がさらに薬学的に許容され得る添加物および/またはキャリアを含む場合、その効果が増強される。そのような添加物およびキャリアは、当該分野で公知である。いくつかの場合には、活性物質の標的への送達を促進する化合物を含むことが、有利である。
多くの場合、処方物を複数回投与することが必要である。投与は、脳室内注入などの持続注入、またはより多い投与量で、例えば、1日により多い投与回数、毎日、1週間により多い回数、毎週などでの投与であってもよい。医薬の投与は、個体が、細胞死を生じ得る要因(単数または複数)に曝される前か、または直後に開始することが好ましい。好ましくは、医薬は、要因発生から8時間以内、例えば、要因発生から5時間以内に投与される。化合物の多くは、長期の効果を示し、それにより、化合物の投与は、1週間または2週間のような長期の間隔で行ってもよい。
神経ガイドにおける使用と関連して、投与は、継続してもよいし、または活性化合物(単数または複数)の制御された放出に基づいて小分けされてもよい。さらに、前駆体を用いて、放出速度および/または放出部位を制御してもよい。他の種類のインプラントならびに経口投与は、同様に、前駆体の制御された放出および/または使用に基づき得る。
上記で考察されるとおり、本発明は、分化を誘導し、増殖を調節するための個体の処置に関しており、再生、神経可塑性およびNCAM提示細胞の生存(インビトロまたはインビボでの)を刺激し、この処置は、上記で規定したような1つ以上の化合物の有効量を投与することを包含する。
投与のための別のストラテジーは、該当の化合物を発現および分泌し得る細胞を移植するかまたは注射することである。それによって、その化合物は、それが作用することになる位置で産生され得る。
(処置)
本発明による処置は、一実施形態において、分化を誘導し、増殖を調節し、再生、神経可塑性および細胞(例えば、細胞は、移植された(implanted)または移植された(transplanted)ものである)の生存を刺激するために有用である。
さらなる実施形態では、処置は、種々の要因、例えば、外傷および損傷、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に、通常は細胞死を生じる変性疾患、他の外部要因、例えば、フリーラジカルの形成を生じ得るか、そうでなければX線および化学療法のような細胞毒性効果を有する、内科的および/または外科的処置および/または診断法に起因して死亡のリスクがある細胞の生存の刺激のためのものであり得る。化学療法に関連して、本発明によって用いられるNCAM結合ペプチドは、がんの処置に有用である。
したがって、処置は、中枢神経系および末梢神経系の疾患または状態、例えば、術後神経損傷、外傷性神経損傷(例えば、脊髄損傷から生じる)、障害された神経線維の髄鞘形成、虚血後損傷(例えば、発作から生じる)、多発梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に付随する神経変性、神経−筋変性、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病に関連する細胞死の処置および/または予防を含む。
また、遺伝性または外傷性萎縮性筋障害のような神経−筋結合の障害された機能を有する状態を含む筋肉の疾患または状態と関連するか;または種々の器官の疾患または状態、例えば、生殖腺の変性状態、膵臓の変性状態(例えば、I型およびII型糖尿病)、腎臓の変性状態(例えば、ネフローゼ)の処置のための本明細書による化合物は、分化を誘導し、増殖を調節し、再生、神経可塑性および生存を刺激する、すなわち、生存を刺激するために用いられてもよい。
さらに、処置は、新脈管形成を誘導するために、急性心筋梗塞後のような心筋細胞の細胞死を予防するためのものであってもよい。さらに、1つの実施形態では、処置は、心筋細胞の生存、例えば、急性心筋梗塞後の生存の刺激のためのものである。他の局面では、処置は、損傷後のような脈管再生のためでのものある。
創傷治癒の促進のためのペプチドの使用は、また、本発明の範囲内である。本発明のペプチドは、新脈管形成を刺激することができ、それにより、それらのペプチドは、創傷治癒過程を促進することができる。
本発明はさらに、がんの処置におけるペプチドの使用を開示する。NCAMの活性化の制御は、腫瘍の新脈管形成、増殖および拡張のために重要である。
なおさらなる実施形態では、NCAM活性が神経細胞の分化のために重要であるので、このペプチドの使用は、学習する能力ならびに/または短期および/もしくは長期記憶の刺激のためのものである。
さらに別の実施形態では、本発明による使用のためのペプチドは、アルコール消費に起因する身体損傷の処置のためのものである。胎児の発生奇形、長期神経行動学的変化、アルコール性肝臓疾患が、特に重要である。
ペプチドを用いることを含むプリオン疾患の治療的処置は、また、本発明のさらに別の実施形態である。
詳細には、ペプチドの本発明による使用は、臨床的状態の処置、例えば、腫瘍、例えば、悪性新生物、良性新生物、上皮内癌および不確定挙動の新生物、乳がん、甲状腺がん、膵臓がん、脳のがん、肺がん、腎臓がん、前立腺がん、肝臓がん、心臓のがん、皮膚がん、血液のがん 臓器のがん、筋肉(肉腫)のがん、機能不全のがんおよび/または特異的レセプターの過剰もしくは過少発現のがんおよび/または変異したレセプターの発現を有するがん、または可溶性レセプター(例えば、限定するものではないが、Erb−レセプターおよびFGF−レセプター)と関連するがん、内分泌腺の疾患、例えば、I型およびII型糖尿病、脳下垂体腫瘍、精神病、例えば、老年期および初老期器質性精神病状態、アルコール性精神病、薬剤精神病、一過性器質性精神病状態、アルツハイマー病、脳リピドーシス、癲癇、全身性不全麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルトヤコブ病、多発性硬化症、脳のピック病、結節性多発性動脈炎(polyareriti nodosa)、梅毒、統合失調症、情動的精神病、神経症性障害、性格神経症を含む人格障害、器質脳症候群と関連する非精神病性人格障害、妄想性人格障害、熱狂的人格、偏執的人格(障害)、偏執的形質、性的倒錯および障害または機能異常(いかなる理由であれ、減少した性欲)、精神遅滞、神経系および感覚器官における疾患、例えば、視覚、聴覚、嗅覚、感覚、味覚に影響を与える疾患、疾患後の認知異常、損傷(例えば、外傷、外科手術、および暴力の後)、中枢神経系の炎症性疾患、例えば、髄膜炎、脳炎、脳変性、例えば、アルツハイマー病、ピック病、脳の老人性変性、老化NOS、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路疾患および異常な行動障害を含むパーキンソン病、脊髄小脳疾患、小脳性運動失調症、マリー・サンガー−ブラウン、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害(Dyssynergia cerebellaris myoclonica)、原発性小脳変性(primary cerebellar degeneration)、例えば、脊髄性筋萎縮症、家族性、若年性、成人の脊髄性筋萎縮症、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、進行性球麻痺、偽球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、不特定の他の脊髄疾患、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管性ミエロパチー、脊髄の急性梗塞(塞栓性)(非塞栓性)、脊髄の動脈血栓症、脊髄の浮腫、脊髄出血、亜急性壊死ミエロパシー、他の場所に分類される疾患での脊髄亜急性連合性変性、ミエロパシー、薬剤誘導、放射線誘導脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律神経系、交感神経、副交感神経、または植物機能系(vegetative system)の障害、家族性自律神経失調症[ライリー−デイ症候群]、特発性末梢自律神経ニューロパシー、頸動脈洞性失神または症候群、頸部交感神経性ジストロフィーまたは麻痺、他の場所に分類される障害での末梢自律神経系ニューロパシー、アミロイドーシス、末梢神経系の疾患、腕神経叢の病変、頸肋症候群、肋骨鎖骨症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、腕神経炎または神経根炎NOS(新生児を含む)、急性感染性多発性神経炎を含む炎症性および中毒性ニューロパシー、ギランバレー症候群、感染後多発性神経炎、膠原血管病での多発性ニューロパシー、複数の眼の構造物に影響を与える障害を含む眼球の障害、例えば、化膿性内眼球炎、耳および乳様突起の疾患、慢性リウマチ性心臓疾患、虚血性心疾患、不整脈、肺系、呼吸器系、感覚器(例えば、酸素)の疾患、喘息、神経系を含む新生児の臓器および軟組織の異常、陣痛および分娩での麻酔薬または他の鎮静剤の投与による合併症、感染を含む皮膚疾患、不十分な循環問題、やけど損傷および他の機械的および/または物理的損傷、術後を含む損傷、圧挫損傷、やけど、神経の切断を含む神経および脊髄の損傷、連続性の損傷(開放性損傷を有するか、または有しない);外傷性神経腫(開放性損傷を有するか、または有しない)、外傷性一過性麻痺(開放性損傷を有するか、または有しない)、医療処置中の偶発的な穿刺または裂傷、視神経および経路の損傷、視神経損傷、第二脳神経、視交叉の損傷、視覚経路の損傷、視覚野の損傷、不特定の失明(unspecified blindness)、他の脳神経(単数または複数)の損傷、他のおよび不特定の神経の損傷、薬物による中毒、医学的物質および生物学的物質、遺伝的または外傷性萎縮性筋障害のため;または、種々の臓器の疾患または状態、例えば、生殖腺の変性状態、膵臓の変性状態(例えば、I型およびII型糖尿病)、腎臓の変性状態(例えば、ネフローゼ)、スクレイピー、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルスマン・ストロイスラー・シャインカー(GSS)病の処置のため;疼痛症候群、脳炎、薬物/アルコール中毒、不安、術後神経損傷、術中虚血、感染因子に影響を与えるか、または組織を保護することによる組織損傷を伴う炎症性障害、HIV、肝炎、および下記の症状、自己免疫性障害、例えば、関節リウマチ、SLE、ALS、およびMSの処置のため、抗炎症性効果、喘息および他のアレルギー性反応、急性心筋梗塞、およびAMIからの他の関連する障害または続発症、代謝障害、例えば、肥満脂質障害(例えば、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症)、アミノ酸輸送および代謝の障害、プリンおよびピリミジン代謝の障害および痛風、骨障害、例えば、骨折、骨粗鬆症、変形性関節症(OA)、萎縮性皮膚炎、乾癬、感染性障害(infection cased disorder)、インビボまたはインビトロでの幹細胞保護または成熟のためであってもよい。
本発明により用いられるペプチドはまた、軟骨形成不全症、低軟骨形成症、扁平椎致死性骨異形成症(platyspondylic lethal skeletal dysplasia)、致死性骨異形成、アントレー・ビクスラー症候群、アペール症候群、ベーレ・スティーブンソン症候群、クルゾン症候群、ジャクソンワイス症候群、パイフェル症候群、およびセートレ・ヒョツェン症候群の予防および処置のために用いられ得る。
(抗体)
本発明の目的は、2つの別個のFGFR Ig2−NCAM F3モジュール1−2結合部位由来の連続アミノ酸配列またはそのフラグメント、相同体もしくは改変体を含むエピトープに選択的に結合し得る、抗体、その抗原結合フラグメントまたは組み換えタンパク質の使用を提供することである。配列番号1を有するペプチドは、第一の結合部位に由来する3つのアミノ酸および第二の結合部位に由来する1つのアミノ酸を含む。配列番号2を有するペプチドは、第一の結合部位に由来する4つのアミノ酸を含む。配列番号3を有するペプチドは、第二の結合部位に由来する4つのアミノ酸を含む。配列番号4を有するペプチドは、第一の結合部位に由来する4つのアミノ酸を含む。配列番号5を有するペプチドは、第二の結合部位に由来する2つのアミノ酸を含む。配列番号6を有するペプチドは、第二の結合部位に由来する2つのアミノ酸を含む。本発明は、配列番号1〜6に示される任意の配列から選択される、2つの別個のFGFR Ig2−NCAM F3モジュール1−2結合部位由来の連続アミノ酸配列、または該配列のフラグメントもしくは改変体を含むエピトープに選択的に結合し得る、任意の抗体に関する。
「エピトープ」という用語は、(その抗原の)抗体によって認識される(抗原分子上の)原子の特定のグループを意味する。「エピトープ」という用語は、「抗原決定基」という用語と等価物である。エピトープは、連続アミノ酸配列内のように近接して位置するか、または抗原のアミノ酸配列の遠位部分に位置するが、タンパク質フォールディングに起因して互いに接近している3つ以上のアミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8個などのアミノ酸残基を含んでもよい。
抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質のファミリーに属し、その基本要素である免疫グロブリンの折り畳みまたはドメインは、免疫系および他の生物学的認識系の多くの分子において種々の形態で用いられる。典型的な免疫グロブリンは、可変領域として公知の抗原結合領域および定常領域として公知の非可変領域を含有する4つのポリペプチド鎖を有する。
天然の抗体および免疫グロブリンは、通常、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合により重鎖に連結され、一方でジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なっている。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの端部に可変ドメイン(VH)を有し、その後に、一群の定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端部に可変ドメイン(VL)およびその他方の端部に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列されている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖の可変ドメインの間の境界を形成すると考えられる(Novotny J,およびHaber E.Proc Natl Acad Sci USA.82(14):4592−6,1985)。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、少なくとも5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、そしてこれらのうちのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる。抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる明確に異なる2つのタイプのうちの1つに割り当てることができる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造については周知である。
抗体の可変ドメインに関する「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が、抗体間で広範に異なるという事実を指す。可変ドメインは、結合するためのものであり、そしてその特定の抗原に対してそれぞれ特定の抗体の特異性を決定する。しかし、可変性は、抗体の可変ドメインを通して均一に分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方で超可変領域として公知である相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。
可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々が、4つのFR領域を含み、その大部分は、3つのCDRが接続したβシート配置をとっており、このCDRは、βシート構造に接続するループを形成し、場合により、βシート構造の一部を形成する。各々の鎖中のCDRは、FR領域の直近でまとまっており、そして他の鎖由来のCDRと共に、抗体の抗原−結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与のような種々のエフェクター機能を示す。
従って、本発明での使用抗体は、免疫グロブリン全体、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、および同様のフラグメント、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)を含む単鎖抗体などの形態を含む多様な形態のいずれであってもよく、これらは全て、本明細書において用いられる広義での用語「抗体」に当てはまる。本発明は、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)の任意の特異性の使用を意図しており、そして本発明は特異的抗原を認識し、特異的抗原と免疫反応する抗体に限定されない。以下に記載の治療およびスクリーニング方法の両方に関して、好適な実施形態は、本発明の抗原またはエピトープに免疫特異的である抗体またはそのフラグメントの使用である。
「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体の一部、一般的には、抗原結合領域または可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが挙げられる。抗体のパパイン消化により、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメント(各々が、単一の抗原結合部位を有する)および残りの「Fc」フラグメント(容易に結晶化する能力からそのように呼ばれる)が生成される。ペプシン処理では、抗原に架橋することが可能な2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメント、および残りの他のフラグメント(pFc’と呼ばれる)が得られる。さらなるフラグメントとしては、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成される多特異的抗体を挙げることができる。本明細書において使用する場合、抗体に関して「機能的フラグメント」とは、Fv、F(ab)およびF(ab’)フラグメントを指す。
「抗体フラグメント」という用語は、本明細書において、用語「抗原結合フラグメント」と交換可能に用いられる。
抗体フラグメントは、約4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、約12アミノ酸、約15アミノ酸、約17アミノ酸、約18アミノ酸、約20アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸以上と同じ程度に小さくてもよい。一般に、本発明の抗体フラグメントは、配列番号1〜6として本明細書において特定される配列、または該配列のフラグメントのうちのすべてから選択されるペプチド配列を含むエピトープに特異的に結合する抗体に対して類似の免疫学的特性を有する限り、いかなる上限のサイズを有してもよい。従って、本発明に関して、「抗体フラグメント」という用語は、「抗原結合フラグメント」という用語と同一である。
抗体フラグメントは、その抗原またはレセプターに選択的に結合するある程度の能力を保持する。いくつかのタイプの抗体フラグメントが、以下のとおり定義される:
(1)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むフラグメントである。Fabフラグメントは、酵素パパインで抗体全体を消化して、インタクトな軽鎖および1つの重鎖の一部を生じさせることによって、生成することができる。
(2)Fab’は、抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖および重鎖の一部を生じさせることによって、得ることができる抗体分子のフラグメントである。1抗体分子あたり2つのFab’フラグメントが得られる。
Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されていることによって、Fabフラグメントとは異なる。
(3)(Fab’)とは、その後の還元を伴わずに、抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである。
(4)F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によってまとめられた2つのFab’フラグメントのダイマーである。
Fvは、完全な抗原認識部位および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが緊密に非共有結合したダイマー(V−Vダイマー)からなる。この構造において、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−Vダイマーの表面に抗原結合部位を確定する。纏まって、6つのCDRが、抗原結合特異性を抗体に対して付与する。しかし、なお単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)は、抗原を認識して結合する能力を有するが、完全な結合部位より親和性が低い。
(5)遺伝子的に融合された単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含んでいる、遺伝子操作された分子として定義された単鎖抗体(「SCA」)。そのような単鎖抗体はまた、「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントとも称される。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、sFvが抗原結合に所望される構造物を形成することを可能にしている。sFvの概説については、Pluckthun The Pharmacology of Monoclonal Antibodies 113:269−315 RosenburgおよびMoore編集.Springer−Verlag、NY、1994を参照のこと。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原−結合部位を有する小さい抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することが可能でないほど短いリンカーを用いることによって、ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、そして2つの抗原−結合部位を作製させる。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;WO 93/11161、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448(1993)により詳細に記載されている。
本発明はまた、少なくとも2つの結合ドメインを有する多価抗体も意図する。結合ドメインは、同じリガンドに対して特異性を有してもよく、または異なるリガンドに対して特異性を有してもよい。一実施形態では、多特異的分子とは、少なくとも2つの異なる結合ドメイン(それらのうち少なくとも1つは抗体由来である)を担持する二特異的抗体(BsAb)である。多価抗体は、多くの方法によって生成することができる。二価または多価の抗体を調製するための種々の方法については、例えば、米国特許第5,260,203号;同第5,455,030号;同第4,881,175号;同第5,132,405号;同第5,091,513号;同第5,476,786号;同第5,013,653号;同第5,258,498号;および同第5,482,858号に記載されている。
本発明は、本発明によるエピトープに結合することが可能なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、それらの抗原結合フラグメントおよび組み換えタンパク質を意図している。
ポリクローナル抗体の調製については、当業者に周知である。例えば、Greenら、1992.Production of Polyclonal Antisera,:Immunochemical Protocols(Manson,編集)、1〜5頁(Humana Press);Coligan,ら、Production of Polyclonal Antisera in Rabbits、Rats Mice and Hamsters,:Current Protocols in Immunology、section 2.4.1(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
同様に、モノクローナル抗体の調製も慣習的である。例えば、Kohler & Milstein、Nature,256:495−7(1975);Coligan,ら、sections 2.5.1−2.6.7;およびHarlowら、:Antibodies:A Laboratory Manual、726頁、Cold Spring Harbor Pub.(1988)を参照のこと。モノクローナル抗体は、種々の十分に確立された技術によってハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。上記単離技術としては、プロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan,ら、セクション2.7.1−2.7.12およびセクション2.9.1−2.9.3;Barnes,ら、Purification of Immunoglobulin G(IgG):Methods in Molecular Biology、1992、10:79−104、Humana Press、NYを参照のこと。
モノクローナル抗体のインビトロおよびインビボでの操作方法は、当業者に周知である。例えば、本発明に従って用いられるべきモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature 256、495−7によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製してもよいし、または、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の組み換え方法によって作製してもよい。本発明に使用されるモノクローナル抗体はまた、Clacksonら、1991、Nature 352:624−628に、およびMarksら、1991,J Mol Biol 222:581−597に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。別の方法は、組み換え手段によりモノクローナル抗体をヒト化して、ヒト特異的および認識可能配列を含む抗体を作製することに関与するものであある。概説に関しては、Holmes,ら、1997、J Immunol 158:2192〜2201およびVaswani,ら、1998、Annals Allergy,Asthma & Immunol 81:105〜115を参照のこと。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において用いる場合、実質的に均質の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る可能性としては天然に存在する変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して誘導されている。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来のポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して誘導される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンが混入しないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、任意の特定の方法による抗体の産生を要すると解釈すべきではない。
本明細書におけるモノクローナル抗体として、具体的には、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(ここで、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種から誘導されるかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に対して同一もしくは相同である一方、その鎖(単数または複数)の残りの部分は、別の種から誘導されるかまたは別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に対して同一もしくは相同である)、ならびにそのような抗体のフラグメントが、それらが所望される生物活性を示す限り、挙げられる(米国特許第4,816,567号);Morrisonら、1984、Proc Natl Acad Sci 81:6851〜6855。
抗体フラグメントを作製する方法はまた、当該分野において公知である(例えば、参照により本明細書に援用される、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1988を参照のこと)。本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解またはそのフラグメントをコードするDNAのE.coliでの発現によって調製してもよい。抗体フラグメントは、抗体全体をペプシンまたはパパインで消化する従来の方法によって得てもよい。例えば、抗体フラグメントは、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)と示される5Sフラグメントを提供することによって生成してもよい。チオール還元剤、および必要に応じて、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基のブロック基を用いて、このフラグメントをさらに切断し、一価の3.5S Fab’フラグメントを生成してもよい。あるいは、ペプシンを用いる酵素切断により、2つの一価のFab’フラグメントおよびFcフラグメントを直接生成する。これらの方法は、例えば、米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号、ならびにそれらに含まれている引用文献に記載されている。これらの特許は、それらの全体が参照により本明細書によって援用されている。
抗体を切断して、例えば、重鎖を分離して、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成し、フラグメントをさらに切断する他の方法、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝学的技術もまた、そのフラグメントが、インタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り、用いてもよい。例えば、Fvフラグメントは、VおよびV鎖の結合を含む。この結合は、非共有結合性であってもよく、または可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結されてもよいし、またはグルタルアルデヒドのような化学物質によって架橋されてもよい。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって接続されたVおよびV鎖を含む。これらの単鎖の抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって、調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、その後に、E.coliのような宿主細胞に導入される。組み換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvを生成する方法については、例えば、Whitlowら、1991:Methods:A Companion to Methods in Enzymology、2:97;Birdら、1988、Science 242:423〜426;米国特許第4,946,778号;およびPack,ら、1993、BioTechnology 11:1271〜77に記載されている。
抗体フラグメントのもう1つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、抗原認識および結合に関与する場合が多い。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子をクローニングまたは構築することによって、得てもよい。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製される。例えば、Larrick,ら、Methods:a Companion to Methods in Enzymology、2巻、106頁(1991)を参照のこと。
本発明は、ヒト抗体および非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型を意図している。上記ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小配列、例えば、エピトープ認識配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)である。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望される特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。本発明の抗体(単数または複数)の最小配列(単数または複数)、例えば、本明細書に記載のエピトープ(単数または複数)を認識する配列(単数または複数)を含むヒト化抗体(単数または複数)は、本発明の好適な実施形態の1つである。
ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてFR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的に、ヒト免疫グロブリンの一部分を含む。さらなる詳細については、Jonesら、1986,Nature 321、522〜525;Reichmannら、1988、Nature 332、323〜329;Presta、1992、Curr Op Struct Biol 2:593〜596;Holmesら、1997、J Immunol 158:2192〜2201およびVaswani,ら、1998、Annals Allergy、Asthma & Immunol 81:105〜115を参照のこと。
抗体の生成は、配列番号1〜6として同定される配列のうち任意のものから選択される配列の天然または組み換えフラグメントを抗原として用いて、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生させるための当該分野における任意の標準的な方法によって達成され得る。そのような抗体はまた、配列番号1〜6の改変体またはフラグメントを用いて生成してもよい。
抗体はまた、例えば、本発明による免疫原性フラグメントを、治療すべき個体に対して投与することによって、該個体がインビボで産生してもよい。従って、本発明は、さらに、上記の免疫原性フラグメントを含むワクチンに関する。
本出願はまた、本発明の抗体を産生させるための方法に関するものであって、この方法は、上記の免疫原性フラグメントを提供する工程を包含する。
本発明は、NCAMの生物学的機能、特に、神経細胞の増殖および生存に関する機能を調節する、例えば、増強または減弱することが可能な抗体、ならびにその生物活性を調節することなく、NCAMを認識し、かつNCAMに特異的に結合することができる抗体の両方に関する。
本発明は、NCAMの活性の調節に関与する治療用途のための上記抗体の使用に関する。
一局面において、本発明は、上記の抗体を含む薬学的組成物の使用に関する。
(1.FGFR Ig2とNCAM F3モジュール1−2との間の結合)
(方法)
FGFR Ig2モジュールとNCAMとの間の結合特性を研究するために、本発明者らは、NCAM F3モジュール1−2およびFGFR1 Ig2モジュールの組み換えタンパク質を用いた。両方のタンパク質とも、一次元のNMRで判定されるとおり適切に折り畳まれた。
(組み換えタンパク質の産生)
マウスFGFR1のIg2モジュール(IIIcアイソフォーム)およびラットNCAM F3モジュール1−2を産生させた。両方のタンパク質とも、P.pastorisの酵母発現系(Invitrogen,USA)のKM71株で発現された。それぞれ、FGFR Igモジュール2は、AGHHHHHHおよびFGFRのアミノ酸140〜251(SwissProt p16092)からなり、組み合わせたF3モジュール1および2は、AGHHHHHHならびにNCAMのアミノ酸507〜611および507〜705(SwissProt p13596)からなる。タンパク質発現に関して、以下の培地を用いた:BMGH(0.1Mのリン酸カリウムpH6.0、3.4g/L酵母窒素ベース(アミノ酸および硫酸アンモニウムなし)、10g/Lの硫酸アンモニウム、400μg/LのD−ビオチン、60mg/LのL−ヒスチジン、2%グリセロール)およびBMMH(0.1Mのリン酸カリウム pH6.0、3.4g/L酵母窒素ベース(アミノ酸および硫酸アンモニウムなし)、10g/Lの硫酸アンモニウム、400μg/LのD−ビオチン、60mg/LのL−ヒスチジン、1%のメタノール)。15N標識したタンパク質の産生のために、15N標識した硫酸アンモニウムを、培地中で以下の濃度で用いた:BMGH中で3.5g/LおよびBMMH中で1.5g/L。全てのタンパク質は、Ni2+−NTA樹脂(Qiagen)を用いるアフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製した。
(NMR分析)
以下のサンプルが、NMRスペクトルの記録に用いられた:10μMの15N FGFR Ig2モジュール(NCAM F3モジュール1−2は、ないか、または13、25、40μM)。その緩衝液は、150mMのNaClを含む10mMのリン酸ナトリウム、pH7.4であった。このサンプルは、ProteinPackによって提供される標準的な設定を用いて15N−異種核単一量子相関(HSQC)スペクトルを記録することによって分析した。15N−標識タンパク質のHSQCスペクトルは、H−N結合の1本の結合カップリングを記録し、従って、部位特異的な摂動をモニタリングするための有用なツールである。シグナルの化学シフト変化によって、アミノ酸残基(そのNMRシグナルが別の分子の結合によって摂動される)を特定する手段が得られる。F3 NCAMモジュールの追加は、線幅拡大、化学シフト変化、または特定の残基については、NMRシグナルの消失をもたらした。顕著な化学シフト変化を受けている(13μM F3モジュールに関しては0.03ppmより大きく、かつ25および40μMのF3モジュールに関しては0.05ppm)かまたは完全に消失するNMRシグナルを有する残基は、結合によって特異的に摂動されると考えられる。このスペクトルは、NMRPipeによって処理して(Delaglioら、1995)、Pronto3Dによって分析した(Kjaerら、1994)。NMR実験は、Varian Unity Inova 750および800MHz分光計を用いて行った。全てのスペクトルは、298Kで記録した。
(SPR分析)
NCAMモジュールおよびFGFRモジュールの固定ならびに結合分析は、BIAcore2000装置(Biosensor AB,Sweden)を25℃で用い、150mMのNaClを含有する10mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)をランニング緩衝液として用いて行った。データは、製造業者のソフトウェアを用いて非線形カーブフィッティングによって分析した。FGFR Igモジュール2およびNCAM F3モジュール1−2を、以下のとおりアミンカップリングキット(Biosensor AB)を用いてセンサーチップCM5に固定した:チップは、20μlの活性化溶液によって活性化した;タンパク質は、10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中の12μlの20μg/mlのタンパク質を用いて固定した;このチップを35μlのブロッキング溶液によってブロッキングした。リガンドに対する結合(固定された分子)とブランクのチップとの間の相違に対応する曲線を分析のために用いた。
(結果および考察)
(NCAMに対するFGFR Ig2の結合)
NCAM F3モジュール1−2の二重モジュール構築物は、二重−モジュールFGFR Ig2−Ig3構築物に対して、10μMという解離定数(Kd)で結合することがSPRによって以前に示されている(Kiselyovら、2003)。しかし、個々のモジュールの間の相互作用は、SPRではほとんど検出できない。これによって、NCAMおよびFGFR構築物の両方のモジュールとも、結合に関与するか、または全強結合に必要であることが示される。さらに感度の高い方法(NMR)を用いて、NCAM F3モジュール2とFGFR Ig3モジュールとの間の相互作用が検出されている(NCAM F3モジュール1とFGFR Ig2モジュールとの間の結合は、試験されなかった)。NCAM F3モジュール2における結合部位は、このモジュールのFG−ループ領域(このモジュールのN末端に位置する)にマッピングされた(Kiselyovら、2003)。このことは、NCAM F3モジュール1のC末端が、NCAM F3モジュール2のN末端部分と一緒になって、FGFRの単一の結合部位(これは、モジュールが分離される場合、破壊され得る)を形成し得ることを示す。
合わせたNCAM F3モジュール1−2に対するFGFR Ig2モジュールの結合を試験した。SPRを用いて、固定されたNCAM F3モジュール1−2に対する可溶性Ig2の結合は、35μMという推定KD値で検出された(図1Aを参照のこと)。Ig2モジュールが固定された場合、可溶性F3モジュール1−2の結合についてのKD値は、12μMであると推定された(図1B)。これらのデータによって、FGFR Ig2モジュールはまた、NCAM F3モジュールに対する結合に関与し得ることが示される。
(NCAMに対する結合に関与するFGFR Ig2残基の特定)
FGFRのIg2モジュールは、NCAM F3モジュール1−2に結合するので、この結合に関与するIg2モジュールの残基を決定することは重要であった。この目的のために、本発明者らは、NMR分析を用いた。15N標識したタンパク質の15N−HSQCスペクトルでは、窒素およびプロトンの両方を有する全てのアミノ酸についてのシグナルが観察され得る。このシグナルの化学シフトにおける変化によって、別の分子の結合により摂動されるアミノ酸残基のタンパク質中での特定のための方法が得られる。10μMのIg2モジュールのスペクトルを、0、13、25または40μMのF3モジュール1−2の存在下で記録した。NCAM F3モジュールの追加によって、共鳴線の広幅化、化学シフトの変化、およびその残基のいくつかに関するNMRシグナルの消失がもたらされた。化学シフトの顕著な変化(13μMについて0.03ppmより大きく、ならびに25および40μMのF3モジュールについて0.05ppmより大きい)を伴うか、またはNMRシグナルの完全な消失を伴う残基は、結合によって顕著に摂動されるとみなされた。化学シフトの記録された変化、およびIg2モジュールの構造に対する顕著に摂動された残基のマッピング(Plotnikovら、1999)を、図2に示す。図2Cからわかるとおり、40μMのF3モジュールの追加によって、Ig2モジュールの残基のほとんどが摂動され、これらの残基のほとんどは、シグナルが消失した残基である。これによって、結合型のIg2モジュールと非結合型のIg2モジュールとの間の交換が、NMR時間スケールで中間であることが示される。13μMのF3モジュールの追加によって、2〜3の残基の摂動がもたらされた(図2A)が、25μMのF3モジュールは、モジュールの反対「側」で2つのクラスターを形成する28の残基を摂動させた(図2B)。この最初の結合部位は、FGFR Ig2に対応するFGFRのアミノ酸領域140〜251由来の残基T156、S157、E159、A171、T173、V174、K175、S181、S214、M217、D218、S219およびV220を含むクラスターを含み、そして第二の結合部位は、FGFR Ig2に対応するFGFRのアミノ酸領域140〜251由来の残基M161、L191、K192、N193、F197、V221、T229、C230、D246およびV248を含むクラスターを含む。これらの残基の摂動によって、FGFR Ig2モジュールに近いNCAM F3モジュールの存在は、摂動した残基で化学環境を変化することが示され、このことは、この摂動した残基が、NCAMとFGFRとの間の相互作用のための結合部位の一部であるかまたは近傍であることを示す。
特定されたクラスターの一つ(第一のもの)は、FGF、ヘパリンおよびIg2の結合のためにIg2中の部位のごく近傍に位置する(図3)(Plotnikovら、1999;Pellegriniら、2000)。図3からわかるとおり、ヘパリンは、NCAMに対するIg2モジュールの結合を阻害すると予想される。この推定を確認するために、本発明者らは、周知のヘパリンアナログであるオクタ硫酸スクロース(SOS)を、固定されたNCAM F3モジュールに対する可溶性Ig2の結合をそれが阻害する能力について試験した。図4からわかるとおり、SOSは、実際に、第一のクラスターがIg2モジュールのヘパリン結合部位近くに位置することを考慮して予想されるとおり、Ig2−NCAM結合を阻害できた。
本発明者らは、NCAM媒介性の細胞間の接着が存在しい場合、すなわちNCAMが同種親和性結合に関与しない場合、FGFR分子は、NCAMに実質的に結合しないということを示唆する。しかし、NCAMが、同種親和性結合に関与する場合、NCAM分子は、ジッパー様構造物の形成に起因してクラスターになる。これによって、FGFR分子が、個々のNCAM分子に対してよりもかなり高い親和性でもって、2つの近接するNCAM分子に対して同時に結合することが可能になり、効率的なNCAM−FGFR相互作用が確実になることが想定される。従って、FGFRは、NCAMが同種親和性結合機構を通じてクラスター化される場合のみ、NCAMに結合し、かつNCAMによって活性化されると予想される。
(引用文献)
Figure 2015163616
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  1. 明細書に記載された発明。
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