JP2008504236A - Fgfr結合性ペプチド - Google Patents

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Abstract

本発明は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)と直接結合でき、該受容体を活性化できる新規ペプチド化合物に関する。本発明の化合物は、NCAMのフィブロネクチン・タイプ−IIIモジュール1(F3,1)由来の神経細胞接着分子(NCAM)のペプチドフラグメントを含む。本発明のペプチド配列は、学習および記憶および/または神経突起伸長および/または神経細胞生存の刺激ができる。ペプチド配列およびそれを含む化合物は、本発明によって、FGFRおよび/またはNCAMが疾患の病理学および/またはそこからの回復に役割を有する異なる病状の処置および/または予防に使用するのに有益であり得る。従って、本発明のペプチド配列および化合物を含む医薬組成物は、また保護の範囲内である。

Description

本発明は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)に結合できる、神経細胞接着分子(NCAM)のフィブロネクチン・タイプ−IIIモジュール1(F3,1)の配列に由来する新規ペプチド化合物に関する。本発明はまた、該化合物を含む医薬組成物ならびに疾患の病理学および/または疾患からの回復にFGFRおよび/またはNCAMが役割を有する異なる病状の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。
脳可塑性および可塑性を制御する機構は、学習および記憶ならびに脳傷害後の機能回復の中心である。神経栄養因子は、成体中枢神経系(CNS)における脳可塑性の制御を継続させる分子クラスの一つであることは明らかであるが、評価は低いが等しく奥深いのは、長期増強、ニューロンの保護および再生のような可塑性機構における細胞接着分子(CAM)の役割である。皮肉にも、しかしながら、CAMはまた細胞外空間で再編成され、アルツハイマー病および多発性硬化症のような状態における脳病理学の発生を駆動する混乱の原因となる。候補分子は、古典的CAMおよびベータ−アミロイドの多くの特性を共有するアミロイド前駆体タンパク質であり、これは、偽CAMとして変装できる。ベータ−アミロイドは、アルツハイマー病における老人斑の病巣として働き、CAMと同様、神経栄養因子および他のCAMの組織化のための環境を提供する。炎症性応答はこの環境で発症し、ミクログリア、補体および他の因子により介在される永続する神経障害悪循環を開始し得る(Cotman et al. (1998) Prog Neurobiol. 55: 659-69)。
免疫グロブリンスーパーファミリーの神経細胞接着分子(CAM)は、発生初期間および成体における重要な部位の細胞の群の核をなし、維持する。それらの接着特性に加えて、CAMの同種親和性(homophylic)および異種親和性(heterophylic)相互作用は、細胞内シグナル伝達に影響し得る。細胞移動、増殖、および分化を含む発生事象に影響するそれらの能力は、故にそれらの接着ならびにそれらのシグナル伝達特性の両方に由来し得る。
神経細胞接着分子、NCAMは、初めて神経CAMとして発見された。この発見以来、NCAMは集中的に試験され、現在、十分に特徴付けされている(Ronn et al. (2000) Int J Dev Neurosci 18: 193-9)。NCAMは、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。その細胞外部分は、5個のIg様および2個のフィブロネクチン・タイプIII(F3)モジュールから成る。NCAMは、細胞−細胞および細胞−基層相互作用の両方を助ける。NCAMは、ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、および種々のタイプのコラーゲンのような種々の細胞外マトリックス成分に結合する。細胞−細胞相互作用は、ほとんどNCAM同種親和性相互作用により助けられる。NCAMの異なるモジュールが異なる機能を実行することが示されている。故に、NCAM同種親和性結合は、現在、最初の3個のIgモジュールに依存すると考えられている。ヘパリン結合配列はIg2モジュールに局在する。NCAMはまた神経細胞接着分子L1に結合する。この相互作用は、NCAMの4番目のIgモジュールと、L1上に発現されたオリゴマンノース状(oligomannosidic)部分の間で起こると考えられている。NCAMの2個の膜隣接F3モジュールが線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)結合に関与することが示されている。
多くの研究グループが、NCAM介在軸索伸長の根底をなす細胞内シグナル伝達カスケードが、FGFRの刺激により活性化するシグナル伝達カスケードと類似していることを示す広い一連の証拠を、現在蓄積している(Povlsen et al. (2003)Neurochem Res 1: 127-41)。
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、細胞外の3個のIg様モジュールおよび細胞内の分離したチロシン−キナーゼモジュールから成る4個の密接に関連した受容体タンパク質チロシンキナーゼのファミリーである(Powers et al. (2000)Endocr Relat Cancer 7: 165-97)。本受容体は、形態形成、発育、血管形成、および創傷治癒の重要なレギュレーターとして知られている。FGFR活性化およびシグナル伝達は、そのリガンドである線維芽細胞増殖因子(FGF)への高親和性結合により誘発される受容体の二量体化に依存し、また、細胞表面ヘパリンまたはヘパラン硫酸プロテオグリカンの関与も必要とする。線維芽細胞増殖受容体は、末梢および中枢神経系の機能化に顕著な役割を有する((Jungnickel et al, (2004) Mol Cell Neurosci. 25: 21-9; Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell Tissue Res. 313: 139-57)。
NCAMは、FGFRの別のリガンドと推定され、近年NCAMと該受容体の間の直接相互作用の証拠が得られている(Kiselyov et al. (2003)Structure(Camb)11: 691-701; WO 04/056865)。FGFRとの相互作用に直接関与する同定されたNCAMフラグメントは、配列EVYVVAENQQGKSKAを有し、NCAMの第二のフィブロネクチン(finronectin)タイプ−III(F3,2)モジュールに由来する。
近年、NCAMの他のフラグメントが、NCAM−FGFR相互作用に同様に関与している可能性が示唆されている。ペプチドフラグメントのこの群は、NCAMの第一のフィブロネクチン・タイプ−III(F3,1)モジュールに由来する。故に、WO01/96364は、13個のアミノ酸残基配列IDRVEPYSSTAQを記載し、この中でモチーフDRVEは、神経突起伸長の刺激に必須であり、モチーフPYSSTAは、細胞生存を刺激するための配列の能力を担うと主張されている。本配列および後者のモチーフを含むそのペプチドフラグメントは、外傷または疾患による神経細胞損失が関与する疾患の処置のために、および神経細胞分化および生存の刺激用医薬として示唆されている。最近、他の特許出願WO05/014623が、配列TIMGLKPETRYAVRを有するNCAM F3I,1の14個のアミノ酸残基フラグメントを記載している。本配列は、神経突起伸長刺激因子であることが示されている。これら2個の出願のいずれも、これらの配列とFGFRの直接結合および該受容体の活性化を証明していない。
本発明の著者らは、17個のアミノ酸残基まで伸長されたWO01/96364の13個のアミノ酸残基配列(ここで、4個の付加的アミノ酸残基は該配列のC末端に添加されている)が、もはや神経突起伸長または神経細胞生存を刺激できないが、しかしながら、驚くべきことに、本17個のアミノ酸残基配列が学習および記憶を刺激できることを、本発明により証明した。さらに、本17個のアミノ酸配列はまたFGFRとの直接結合および活性化が可能である。本発明の著者らは、後者の配列のこれらの新規特徴と、アミノ酸モチーフK/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x(式中、xは任意の疎水性アミノ酸残基であり、xはK、RまたはYであり、そしてx、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である)の必須アミノ酸残基から成る付加的C末端アミノ酸残基の存在と相関させている。本発明の著者らは、ここで、このモチーフが、ペプチド配列が学習および記憶と関連する神経可塑性を刺激する能力に必須であると主張する。
故に、第一の局面において、本発明は、式(I)
K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
は任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
のアミノ酸モチーフを含む、連続11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列の使用に関する。
本モチーフを含む配列は、学習および記憶の刺激用医薬の製造に使用できる。
式(I)のモチーフはまた、ペプチド配列のFGFRへの直接結合および該受容体の活性化に重要であるが、しかしながら、驚くべきことに、本発明の著者らは、本モチーフの疎水性残基の選択が、本モチーフを含むペプチド配列が有する生物学的活性のアレイを規定することを発見した。故に、本モチーフのx位置のいずれかへのプロリン(P)残基の存在は、配列が学習および記憶の刺激する能力のみを制限するが、一方、位置xの他の任意の疎水性残基は、配列が学習および記憶を刺激する能力、神経突起伸長する能力および神経細胞生存を刺激する能力の両方を付与する。従って、他の局面において、本発明は、式(II)
K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
はP以外の任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
のアミノ酸モチーフを含む、連続11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列を含む化合物に関する。
本発明によって、後者のモチーフを含むペプチド配列は神経突起伸長の刺激、神経細胞生存の刺激ならびに学習および記憶に関連する神経可塑性の刺激ができ、そして、それはFGFRと結合し、活性化できる。本発明に従うこのような配列は、NCAMおよび/またはFGFRが重要な役割を揺する多くの疾患の処置用医薬の製造に有利に使用できる。
本発明は、本発明のペプチド配列を含む医薬組成物および医薬にも関する。さらに、本発明は、本発明のペプチド配列および/または医薬組成物および/または医薬を投与する工程を含む、処置法に関する。加えて、本発明は、ここに記載の式のアミノ酸配列を含むエピトープを認識し、結合できる抗体およびNCAMおよび/またはFGFRが介在する生物学的活性の調整用の該抗体の使用に関する。
図面の記載
図1Aは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロン(CGN)の神経突起伸長に対するCDL(配列番号1)、ABL(配列番号2)およびEFL(配列番号5)ペプチドの効果を示す。本CDLおよびEFLペプチドは、CGNからの神経突起伸長を刺激する。B. EFLにより刺激される神経突起伸長は、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)の阻害剤であるSU5402により阻害される。4個の独立した実験からの結果を、全例で、未処置コントロール細胞を100%と設定して、パーセント±SEMとして示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、コントロールとの比較。対応スチューデントのt検定。実験のために、7日齢ラットからのCGNを、本ペプチドで24時間処理した。培養物を4%パラホルムアルデヒドで固定し、続いて1%BSAでブロックし、次いでウサギ抗ラットGAP−43一次抗体、その後二次Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ウサギ抗体で免疫染色した。
図2Aは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロンの生存に対するデンドリマー形態のCDL(配列番号1)(CDLd)およびABL(配列番号2)(ABLd)ペプチドの効果を示す。本ペプチドの効果を、グリア由来神経栄養因子(GDNF)およびデンドリマー形態のC3ペプチド(C3d)の効果と比較する。Bは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロンの生存に対するEFL(配列番号5)デンドリマー(EFLd)の効果を証明する。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、コントロールとの比較。対応スチューデントのt検定。
図3は、培地中低濃度のKCl(5mM)および高濃度のKCl(40mM)での、ラット小脳顆粒状ニューロンの培養におけるカスパーゼ3様活性に対する単量体バージョンのCDL(配列番号1)(A)(CDループ)およびEFL(配列番号5)(B)(EFループ)の効果を示す。本ペプチドの効果を、高濃度のKClの効果と比較する。*P<0.05、**P<0.01、対応スチューデントのt検定。
図4は、表面プラズモン共鳴(SPR)分析の手段による、“鎖−ループ−鎖”構造を有するNCAM Fn−III,1モジュールの4個の異なるフラグメントの試験した組み換えFGFR1への結合を証明する。本結合は、センサーチップと固定化FGFR1モジュールとの結合、およびブランクセンサーチップ(非特異的結合)の間の応答差(Resp. Diff.)として示す。略語:AB − A鎖−ループ−B鎖(配列番号2のABLペプチドに対応);CD − C鎖−ループ−D鎖(配列番号1のCDLペプチドに対応);EF − E鎖−ループ−F鎖(配列番号5のEFLペプチドに対応);BC − NCAMのF3,1モジュールのB鎖−ループ−C鎖;DE − NCAMのF3,1モジュールのD鎖−ループ−E鎖;FG − NCAMのF3,1モジュールのF鎖−ループ−G鎖。
図5は、ABL、CDLおよびEFLペプチドによる、FGFR−1リン酸化の定量的分析の結果を証明する。少なくとも4個の独立した実験から得られた結果を、FGFR1リン酸化パーセント±SEMとして示す。実験のために、C末端StrepIIタグを含むFGFRでトンラスフェクトしたTREX−293細胞を、異なる濃度の本ペプチドで30分刺激した。刺激後、活性化FGFRを、抗ホスホチロシン抗体により免疫精製し、次いでStrepIIタグに対して抗体をウェスタン・ブロットすることにより分析した。処置細胞からのデータを、未処置細胞(コントロール、100%と設定)の結果と比較する。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、対応スチューデントのt検定。
図6は、ラット社会的行動に対するインビボでのCDL(Cdl)、およびEFLペプチドの投与の効果を示す(社会認識試験):A 最初の会合(T)およびペプチド/媒体投与1時間後の2回目の会合(T)の、社会調査に費やす時間。8−9匹の動物の結果をパーセント±SEMとして示す。対応t検定(*P<0.05および***P<0.001);B 最初の会合(T)およびペプチド/媒体投与24時間後2回目の会合(T)の、社会調査に費やす時間。9匹の動物の結果をパーセント±SEMとして示す。対応t検定(*P<0.05)。
発明の詳細な記載
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)および/または神経細胞接着分子(NCAM)の機能を調整できる化合物は、種々の疾患および病状の治療的処置のための有効な薬剤の開発の観点で、非常に重要である。故に、FGFRと結合し、それによりFGFRを活性できる、新規化合物の提供が本発明の目的である。
1. ペプチド配列
本明細書において、アミノ酸残基の標準的1文字表記ならびに標準的3文字表記を適用する。アミノ酸の略語は、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature Eur. J. Biochem, 1984, vol. 184, pp 9-37の推奨に従う。本明細書および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸の3文字表記または1文字表記を使用する。LまたはD形態を特に記載していないとき、当該アミノ酸は天然L形態を有するか(Pure & Appl. Chem. Vol. (56(5)pp 595-624(1984)参照)またはD形態を有し、そのため、形成されたペプチドはL形態、D形態、または混合されたL形態およびD形態の配列のアミノ酸を有し得る。
特記されていない限り、本発明のペプチドのC末端アミノ酸は遊離カルボン酸として存在すると理解され、これはまた“−OH”と特記できる。しかしながら、本発明の化合物のC末端アミノ酸は、アミド化誘導体であってよく、これは“−NH”と示される。他に記載がない限り、ポリペプチドのN末端アミノ酸は遊離アノ基を含み、これはまた“H−”と特記できる。
他に記載がない限り、アミノ酸は、アルファアミノ酸、ベータアミノ酸、および/またはガンマアミノ酸のような、天然に存在するものであってもなくても任意のアミノ酸から選択できる。従って、本基は:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Aib、Nal、Sar、Orn、リシン類似体、DAP、DAPAおよび4Hypを含むが、これらに限定されない。
また、本発明によって、アミノ酸のグリコシル化および/またはアセチル化のような、化合物/ペプチドの修飾を行うことができる。
塩基性アミノ酸残基は、本発明によって、アミノ酸Arg、Lys、およびHisの残基に相当し、酸性アミノ酸残基は、アミノ酸残基GluおよびAspに相当し、疎水性アミノ酸残基はアミノ酸Leu、Ile、Val、Phe、Trp、ProおよびAlaの残基に相当し、そして極性非荷電アミノ酸残基は、アミノ酸Tyr、The、Ser、GlnおよびAsnの残基に相当する。
第一の局面において、本発明は式(I)
K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
は任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
のアミノ酸モチーフを含む、11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列を提供する。
用語“任意の疎水性残基”は、残基が、アミノ酸A、I、L、P、V、FまたはWの残基から選択されることを意味する。
故に、一つの態様において、残基xは、任意の疎水性残基から独立して選択できる。他の態様において、残基xはA、P、VまたはWから独立して選択できる。この文脈における用語“独立して”は、任意の特定の位置でのアミノ酸残基の選択について、何ら特別な要求がないことを意味する。
さらに、他の態様において、xアミノ酸残基は、A、VまたはWから選択でき、本アミノ酸モチーフは、好ましくは
K/R−V/A−D/E/N/Q−W−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
〔式中、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
である。
他の態様において、xアミノ酸残基はA、VまたはPから選択でき、該アミノ酸モチーフは、好ましくは
K/R−V/A−D/E/N/Q−P−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
〔式中、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
である
本発明によって、上記の任意のモチーフの残基x、x、xは、上記のモチーフを含むペプチド配列の生物学的活性にあまり重要ではなく、故に該残基は、独立して任意のアミノ酸残基から選択できる。しかしながら、残基A、G、L、I、S、T、およびEは、ある態様において好ましいことがある。配列x−x−xは、例えば配列I−G−L、L−G−I、A−G−L、A−T−L、L−G−E、I−G−E、A−G−I、S−T−AまたはS−G−Aのいずれかのように、互いに連続して結合した後者の残基から成る任意の配列であり得る。ある態様において、配列S−T−AおよびL−G−Eが好ましいことがある。
故に、本発明のペプチド配列は、上記のモチーフのいずれかとしてモチーフを含む、11〜18個のアミノ酸残基の連続配列である。本発明は、単離されたペプチド配列である配列に関する。この文脈におけるこれは、独立した化学的物体(chemical entity)として存在し、かつ本発明の目的において独立した化学的物体として使用されるペプチド配列を意味する。本発明は、例えば神経細胞接着分子(NCAM)のポリペプチドまたはフラグメントの統合された一部のような、天然または組み換えポリペプチドの統合された一部である、上記のモチーフ(複数もある)を含むペプチド配列には関連しない。
一つの態様において、ペプチド配列は、11〜14個のアミノ酸残基長を有し得る;他の態様において、配列は15〜18個のアミノ酸残基長を有し得る。11、12、13、14、15、16、17または18アミノ酸残基のような長さの配列が、態様に依存して好ましいことがある。
本発明は、ペプチド配列がFGFRと結合し、活性化する、学習および記憶、神経突起伸長および/または神経細胞生存を刺激する能力を伴う、上記の通りの構造特性に関連する。
本発明は、ここでは、特に記憶および学習の刺激ができるペプチド配列、すなわち配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)、SIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)およびSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)を開示する。
ある態様において、配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)が好ましいことがあり、他方、他の態様において、配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)または配列IDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)が好ましいことがある。
配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)、SIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)およびSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)は全てFGFRと直接結合し、該受容体を活性化でき、それらは全て学習および記憶の刺激が可能であるが、しかしながら、配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)は、配列SIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)およびSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)と比較してある付加的生物学的活性が可能であり、すなわちそれは神経突起伸長および神経細胞生存が可能であり、それは配列SIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)および配列IDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)は不可能である。本発明者らは、ここで、配列に、FGFRとの結合および活性化、学習および記憶の刺激、神経突起伸長および神経細胞生存の刺激の両方の能力を与える構造特性を同定した。この特性は、FGFRとの結合および活性化、学習および記憶の刺激、神経突起伸長および神経細胞生存の刺激ができるペプチド配列が、式(II):K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x(式中、位置xのP(プロリン残基)は、疎水性アミノ酸残基の選択から除外される)のアミノ酸モチーフを含むことである。
故に、K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
は、P以外の任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
として定義される式(II)のモチーフが、該モチーフを含むペプチド配列に、FGFRとの結合および活性化、学習および記憶の刺激、神経突起伸長および神経細胞生存の刺激の能力を付与する構造的モチーフである。ある態様において、このような配列は、位置xに残基Yを有し得る。しかしながら、残基KまたはRがこの位置で好ましい。残基x、x、xに関する異なる態様は上記である。位置x、xおよびxの残基についての好ましい態様は、残基G、V、L、またはEであり、ここで、位置xでLまたはVが、位置xでGがおよび位置xでEがより好ましい。
本発明による、位置xでの残基Pの存在は、例えば配列SIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)およびSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)の能力のような、上記のモチーフを含むペプチド配列のFGFRとの結合および活性化ならびに学習および記憶の刺激の能力を制限し得る。
本発明は、上に詳述した式(II)
K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
はP以外の任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
のモチーフを含むペプチド配列のフラグメント、変異体および相同体に関する。
この内容において、本発明は
i)上記モチーフを含む配列、特に配列番号1の配列の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の長さを有する配列としてのフラグメント;
ii)上記モチーフを含む配列、特に配列番号1の配列に少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%相同性を有するアミノ酸配列としての、または上記モチーフを含む配列、特に配列番号1の配列と比較して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%陽性アミノ酸調和を有するアミノ酸配列としての変異体。陽性アミノ酸調和は、2個の比較配列中の同じ位置を有するアミノ酸残基の物理的および/または化学的特性の同一性または類似性として定義される。本発明の好ましい陽性アミノ酸調和は、KとR、EとD、LとM、QとE、IとV、IとL、AとS、YとW、KとQ、SとT、NとSおよびQとRである。1個のアミノ酸配列と他のアミノ酸の相同性は、2個の対照配列中の同一アミノ酸のパーセントとして定義される。配列の相同性は、BLOSUM 30、BLOSUM 40、BLOSUM 45、BLOSUM 50、BLOSUM 55、BLOSUM 60、BLOSUM 62、BLOSUM 65、BLOSUM 70、BLOSUM 75、BLOSUM 80、BLOSUM 85、またはBLOSUM 90のような既知のアルゴリズムを使用して計算できる;
iii)上記モチーフを含む配列、特に配列番号1の配列に対して、60%未満であるが、30%を超える、例えば50−59%、例えば55%、例えば40−49%、例えば45%、例えば30−39%、例えば35%相同性を有するアミノ酸配列としての相同体。
上記で定義のフラグメント、変異体および相同体が、元の配列の少なくとも幾分かの生物学的活性、例えば神経細胞分化、記憶および学習、神経細胞生存を刺激する能力および/またはFGFRとの結合および活性化の能力を維持することは当然である。
本発明の好ましい相同体は、配列番号1の配列に対して少なくとも40%相同性、例えば40−44%相同性、より好ましくは少なくとも45%相同性、例えば45−49%相同性、さらにより好ましくは少なくとも50%、例えば51−54%相同性、さらにより好ましくは少なくとも55%相同性、例えば56%−59%を有する相同体である。本発明の好ましいフラグメントは、配列番号1の配列の少なくとも3個の連続アミノ酸残基、より好ましくは4個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは5個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは6個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは7個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは8〜11個のアミノ酸残基から成るフラグメントである。本発明の好ましい変異体は、配列番号1の配列に少なくとも70%相同性、例えば71−74%相同性、より好ましくは少なくとも75%相同性、例えば76−79%相同性、より好ましくは少なくとも80%相同性、例えば81−84%相同性、さらにより好ましくは少なくとも85%相同性、例えば86−89%相同性、さらにより好ましくは90%相同性、例えば例えば91−94%相同性、さらにより好ましくは少なくとも95%相同性、例えば例えば96−99%相同性を有するペプチド配列である。
本発明によって、上記の単離されたペプチド配列は、化合物として構築(formulated)できる。
化合物は、上記のいずれかから選択された個々のアミノ酸配列の一コピーを含み得るか、またはそれはこのようなアミノ酸配列の2個以上のコピーを含み得る。これは、本発明の化合物が、1個の個々のペプチドを含むようなペプチド配列の単量体として構築できるか(単量体化合物)、またはそれをペプチド配列の多量体として、すなわち2個以上の個々のペプチド配列(ここで、該個々のペプチド配列は、2個以上の同じ配列のコピー配列または2個以上の異なる個々のペプチド配列を示し得る)を含んで、構築できる(多量体化合物)。多量体はまた完全長配列および1個以上のそのフラグメントの組合せを含み得る。一つの態様において、化合物は2個のアミノ酸配列を含み得、このような化合物はここでは二量体として定義し、他の態様において、化合物は2個を超えるアミノ酸配列、例えば3個、4個またはそれ以上の配列を含み得る。本発明は、好ましくは2個または4個のペプチド配列を含む化合物に関する。しかしながら、3個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上の配列を含む化合物も本発明の範囲内である。
上記の通り、多量体化合物は同一ペプチド配列を含み得るか、または配列は異なり得る。配列が異なる化合物の一例は、配列番号1および配列番号2を含む化合物であり得て、他の例は、配列番号1および配列番号3を含む化合物であり得る。本発明の配列の任意の組合せを、本発明の異なる態様に依存して製造し得る。配列は、互いに結合、例えばペプチド結合を介して結合してよく、または互いにリンカー分子またはグループ化(grouping)を介して結合してよい。ペプチド配列がリンカー分子またはグループ化を介して結合している化合物が好ましい。他の態様において、化合物は、例えば配列番号1、2または3から選択された配列の2個のコピーのような、2個以上の同じ配列のコピーを含み得、ここで、該2個の配列は互いにリンカー分子またはグループ化を介して結合している。配列がリンカーグループ化(linker grouping)を介している化合物が好ましい。このような連結グループ化(linking grouping)の一例は、非キラルのジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である。適当な非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸およびこのような化合物の製造法、リガンド提示アセンブリー法(LPA)は、本発明の明細書中にさらに詳細に記載する。可能性のあるリンカーの他の例は、アミノ酸リシンであり得る。個々のペプチド配列をリシンのようなコア分子に結合させ、それにより個々のペプチド配列(複数もある)の樹状多量体(デンドリマー)を形成させる。デンドリマーの製造は当分野で既知であり(PCT/US90/02039, Lu et al., (1991)Mol Immunol. 28: 623-630; Defoort et al., (1992)Int J Pept Prot Res. 40: 214-221; Drijfhout et al. (1991)Int J Pept Prot Res. 37: 27-32)、デンドリマーは現在研究および医学適応において広く使用されている。リシンコア分子に結合した4個の個々のアミノ酸配列を含むデンドリマー化合物の提供が、本発明の好ましい態様である。4個の個々のアミノ酸配列の少なくとも1個が上記で定義の式のアミノ酸配列を含むことも好ましい。デンドリマー化合物の4個の個々のアミノ酸配列の各々が、独立して上記で定義のモチーフから選択されるアミノ酸モチーフを含むならば、さらにより好ましい。
LPA−二量体またはリシン−デンドリマーのような本発明の多量体化合物は、本発明の好ましい化合物である。しかしながら、2個以上の本発明の個々の配列を含む他のタイプの多量体化合物が、態様に依存して好ましいことがある。
本発明の個々の配列の1個以上のコピーを含む多量体化合物、またはフラグメント、それらの変異体もしくは相同体、および他の生物学的に活性な物、例えば他のペプチド配列も本発明の範囲内である。このような化合物の中で、最も好ましいのは、少なくとも1個の本発明のペプチド配列と、例えばペプチド配列EVYVVAENQQGKSKA(配列番号4)またはペプチド配列TIMGLKPETRYAVR(配列番号5)のような線維芽細胞増殖因子受容体を刺激できるペプチド配列を含むものである。
故に、一つの好ましい態様において、本発明の多量体化合物は、本発明のモチーフを含む個々のペプチド配列の2個の同じコピーを含む、二量体である。他の好ましい態様において、本発明の多量体化合物は、本発明のモチーフを含む個々のペプチド配列の2個の同じコピーを含む二量体である。さらに、他の好ましい態様において、本多量体化合物は、本発明のモチーフを含む2個の異なるペプチド配列を含む二量体である。好ましい多量体化合物はまた、本発明のモチーフを含む配列と、TIMGLKPETRYAVR(配列番号5)またはEVYVVAENQQGKSKA(配列番号4)から選択される配列を含む化合物である。さらに、3個のリシン残基の骨格構造に連結した、本発明のモチーフを含むペプチド配列の4個の同じコピーを含むデンドリマーである多量体化合物もまたとりわけ好ましい本発明の多量体化合物である。
多量体化合物中のペプチド配列の配向は、NからCでも、CからNでも、または混合していてもよい。用語“NからC配向”は、(COOH)ペプチド配列(NH)−リンカー−(NH)ペプチド配列(COOH)のタイプの化合物のように、2個の予め決定された配列が、リンカーにそれらのN末端アミノ酸残基を介して結合していることを意味する。用語“CからN配向”は、(NH)ペプチド配列(COOH)−リンカー−(COOH)ペプチド配列(NH)のタイプの化合物のように、2個の予め決定された配列が、リンカーにそれらのC末端アミノ酸残基を介して結合していることを意味する。用語“混合した配向”は、例えば(NH)ペプチド配列(COOH)−リンカー−(NH)ペプチド配列(COOH)のように、1個のペプチド配列がそのN末端アミノ酸残基を介して、そして他方がC末端アミノ酸残基を介してのように、2個の予め決定された配列が、リンカーにそのC末端アミノ酸残基またはN末端のいずれかを介して結合していることを意味する。
本発明によって、上記で定義のペプチド配列および該配列を含む化合物は、FGFRと結合し、活性化できる。
2. 生物学的活性
故に、本発明のペプチド配列は、線維芽細胞増殖因子受容体−1(FGFR−1)、線維芽細胞増殖因子受容体−2(FGFR−2)、線維芽細胞増殖因子受容体−3(FGFR−3)、線維芽細胞増殖因子受容体−4(FGFR−4)および線維芽細胞増殖因子受容体−5(FGFR−5)を含む線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーの受容体、好ましくは、FGFR−1である機能的細胞表面受容体と結合し、活性化できる。
リガンドの受容体への細胞外結合は受容体活性化に至り、これは、該受容体が、1個のまたは他の細胞性応答をもたらす少なくとも1個の細胞内シグナル伝達経路を活性化できるようになることを意味する。
該当
用語“結合”は、ここでは、本発明のペプチド配列とFGFRの直接相互作用を意味する。用語“相互作用”は、ペプチド配列がFGFRと一過性または永久の直接接触をすることを意味する。表現“受容体の活性化”は、受容体が、細胞の生理学的応答をもたらす、細胞内の、まとめて“受容体シグナル伝達”または“シグナル変換”と呼ばれる生化学的反応のカスケードに“リガンド結合”の効果を伝達できるようになることを意味する。
細胞受容体と結合し、活性化できる本発明のペプチド配列が、結果として天然受容体リガンドの作用を摸倣でき、この文脈において、それらは受容体リガンド、特にFGFRのリガンドの摸倣物として理解すべきである。受容体が多くのリガンドを有し、その受容体への結合が異なるシグナル伝達経路を活性化し、異なる細胞性応答をもたらすことは知られている。
本発明は、好ましくはFGFR−1関連シグナル伝達経路に関する。FGFR−1の活性化は、ここでは、FGFR−1チロシンリン酸化の程度により定義され、これは、本発明によって、本発明の配列の結合により増加する。FGFR−1関連細胞内シグナル伝達経路の活性化は、ここでは、例えばタンパク質STAT1、JNK、PLCγ、ERK、STAT5、PI3K、PKC、FRS2および/またはGRB2の活性化分子のような、FGFR−1関連シグナル伝達経路に含まれる1個以上の細胞内タンパク質の活性化分子の存在と定義する。FGFR−1関連シグナル伝達経路に含まれる1個以上の細胞内タンパク質の分子の活性化状態は、ここでは、該分子のリン酸化の程度として定義され、これは、本発明によって、本発明の配列のFGFRへの結合のために増加または減少する。リン酸化の程度は、コントロール値より、少なくとも20−200%、例えば少なくとも50−200%のように少なくとも20%高い/低いと概算される。本コントロール値は、細胞環境において、FGFRと結合し、活性化できる化合物が存在しないときの、目的のタンパク質のリン酸化の程度として概算される。FGFR−1シグナル伝達依存性細胞性応答を考慮するとき、本発明は、特に下記から選択されるが、これらに限定されない細胞性応答に関する
i)例えば神経細胞、幹細胞もしくは癌細胞の分化、神経再生、神経突起伸長および分岐、細胞増殖の阻害のような細胞分化の誘導;
ii)例えば身体の外傷性損傷もしくは疾患による神経細胞生存、アポトーシスの阻害のような増加した細胞生存;
iii)例えば記憶および学習に関連する神経細胞可塑性のような、増加した細胞可塑性、例えば形態学的可塑性。
本発明のペプチド配列は、神経細胞接着分子(NCAM)、例えばSwiss-Prot Ass Nos.: P13591, P13592, P13596またはP13595の下にGenBankデータベースで同定されているNCAMポリペプチドに由来し得る。このようなペプチド配列の例は、配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)、または配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)であり得る。これらのペプチド配列は、NCAMポリペプチドの不可欠な(integral)配列であり、単離されたペプチド配列として取ったとき、それらは、本発明によって、NCAM−FGFR依存性神経細胞分化、生存および可塑性の刺激のようなFGFR機能と関連するNCAMの活性を摸倣できる。しかしながら、本発明は、本発明のペプチド配列をNCAMの機能を摸倣する能力に限定しない。近年、受容体に、NCAM結合と同様の親和性で、かつ、受容体分子上のNCAMと同じ結合部位に結合できる、FGFRの低親和性リガンドの新しいグループが記載されている(WO04/056865)。本発明によって、ここに記載のNCAMのペプチド配列およびWO04/056865に記載のNCAMのペプチド配列は、FGFRに関して異なるNCAM結合部位を意味する。この結合部位を介して、NCAMは、WO04/056865に記載の低親和性FGFRリガンドと共通した、FGFR上の結合部位と相互作用する。故に、本発明のペプチド配列は、FGFRリガンドのFGFRへの後者のグループからの低親和性リガンドの結合の摸倣が、故に、該リガンドの生物学的活性の摸倣が可能である。故に、本発明は、その範囲内に、FGFR機能と関連する下記タンパク質の全ての生物学的活性を含む:
− 神経細胞接着分子L1(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9QYQ7, Q9QY38, P11627, Q05695, またはP32004の)、
− 神経細胞接着分子−2(NCAM−2)(Swiss-Prot Ass. No: P36335の)
− ニューロン−グリア細胞接着分子(Ng−CAM)(Swiss-Prot Ass. No: Q03696またはQ90933の)、
− 神経細胞接着分子CALL(Swiss-Prot Ass. No: O00533の)、
− ニューログリアン(Swiss-Prot Ass. No: P91767またはP20241の)、
− Nr−CAM(HBRAVO、NRCAM、NR−CAM 12)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q92823, O15179またはQ9QVN3の)、
− アキソニン−1/TAG−1(Swiss-Prot Ass. Nos: Q02246, P22063またはP28685の)、
− 軸索関連細胞接着分子(AxCAM)(Swiss-Prot Ass. No: Q8TC35またはNP_031544.1の)、
− ミエリン関連糖タンパク質(MAG)(Swiss-Prot Ass. No: P20917の)、
− 神経細胞接着分子BIG−1(Swiss-Prot Ass. No: Q62682の)、
− 神経細胞接着分子BIG−2(Swiss-Prot Ass. No: Q62845の)、
− ファシクリン(FAS−2)(Swiss-Prot Ass. No: P22648の)、
− 神経細胞接着分子HNB−3/NB−3(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9UQ52, P97528またはQ9JMB8の)
− 神経細胞接着分子HNB−2/NB−2(Swiss-Prot Ass. Nos: O94779, P07409またはP97527の)、
− カドヘリン(Swiss-Prot Ass. No: Q9VW71)、
− 接合部接着分子−1(JAM−1)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9JKD5またはO88792の)、
− 神経細胞接着F3/F11(コンタクチン)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q63198, P1260, Q12860, Q28106, P14781またはO93250の)、
− ニューロファシン(Swiss-Prot Ass. Nos: Q90924, Q91Z60またはO42414の)、
− Bリンパ球細胞接着分子CD22(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9R094またはP20273の)、
− ネオゲニン(NEO1)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q92859, P97603, Q90610またはP97798の)、
− 細胞内細胞接着分子−5(ICAM−5/テレンセファリン)(Swiss-Prot Ass. No: Q8TAM9, Q60625の)、
− ガラクトース結合レクチン−12(ガレクチン−12)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q91VD1, Q9JKX2またはQ9NZ03の)、
− ガラクトース結合レクチン−4(ガレクチン−4)(Swiss-Prot Ass. No: Q8K419; P38552の)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9QZM7, Q99AVV7, Q9UD50またはQ63827の)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q96KM2, P21802またはQ63241の)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q95M13, AF487554またはQ99052の)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)(Swiss-Prot Ass. No: Q91742)、
− ニューロトロフィンチロシンキナーゼタイプ−2(NTRKT−2)(Swiss-Prot Ass. No: Q8WXJ5の)、
− 白血球抗原関連タンパク質−チロシンホスファターゼ(LAR−PTPRF)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9EQ17, Q64605, Q64604, Q9QW67, Q9VIS8またはP10586の)、
− ネフリン(Swiss-Prot Ass. Nos: Q925S5, Q9JIX2, Q9ET59, Q9R044, またはQ9QZS7, Q06500の)、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプ(PTPRS)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q64699, Q13332またはO75870の)、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプカッパ(R−PTP−カッパ)(Swiss-Prot Ass. No: Q15262の)、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプD(PTPRD)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q8WX65, Q9IAJ1, P23468またはQ64487の)、
− エフリンタイプ−A受容体8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ受容体EEK)(Swiss-Prot Ass. Nos: O09127またはP29322の)、
− エフリンタイプ−A受容体3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ受容体ETK−1/CEK4)(Swiss-Prot Ass. No: P29318の)、
− エフリンタイプ−A受容体2(Swiss-Prot Ass. No: Q8N3Z2の)
− インシュリン受容体(IR)(Swiss-Prot Ass. No: Q9PWN6の)
− インシュリン様増殖因子−1受容体(IGF−1)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9QVW4, P08069, P24062, Q60751, P15127またはP15208の)
− インシュリン関連受容体(IRR)(Swiss-Prot Ass. No: P14616の)、
−チロシン−タンパク質キナーゼ受容体Tie−1(Swiss-Prot Ass. Nos: 06805, P35590またはQ06806の)、
− ラウンドアバウト受容体−1(robo−1)(Swiss-Prot Ass. Nos: O44924, AF041082またはQ9Y6N7の)、
− ニューロンニコチンアセチルコリン受容体アルファ3サブユニット(CHRNA3)(Swiss- Prot Ass. Nos: Q8VHH6, P04757, Q8R4G9またはP32297の)
− ニューロンアセチルコリン受容体アルファ6サブユニット(Swiss-Prot Ass. Nos: Q15825またはQ9R0W9の)
− 血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFRB)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q8R406またはQ05030の)、
− インターロイキン−6受容体(IL−6R)(Swiss-Prot Ass. No: Q00560の)、
− インターロイキン−23受容体(IL−23R)(Swiss-Prot Ass. No: AF461422の)、
− IL−3、IL5およびGmCsfのベータ−共通サイトカイン受容体(Swiss-Prot Ass. No: P32927の)
− サイトカイン受容体様分子3(CRLF1)(Swiss-Prot Ass. No: Q9JM58の)、
− クラスIサイトカイン受容体(ZCYTOR5)(Swiss-Prot Ass. No: Q9UHH5の)
− ネトリン−1受容体DCC(Swiss-Prot Ass. No: P43146の)、
− 白血球Fc受容体様タンパク質(IFGP2)(Swiss-Prot Ass. Nos: Q96PJ6またはQ96KM2の)、
− マクロファージスカベンジャー受容体2(MSR2)(Swiss-Prot Ass. No: Q91YK7の)、
− 顆粒球コロニー刺激因子受容体(G−CSF−R)(Swiss-Prot Ass. No: Q99062の)、
− パールカン(Swiss-Prot Ass. No: P98160の)、
− ADAM−8(Swiss-Prot Ass. No: Q05910の)、
− ADAM−19(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9H013またはO35674の)、
− ADAM−8(Swiss-Prot Ass. No: P78325の)、
− ADAM−12(Swiss-Prot Ass. Nos: O43184またはQ61824の)、
− ADAM−28(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9JLN6, Q61824, Q9XSL6またはQ9UKQ2の)、
− ADAM−33前駆体(Swiss-Prot Ass. Nos: Q8R533またはQ923W9の)、
− ADAM−9(Swiss-Prot Ass. Nos: Q13433またはQ61072の)、
− ADAM−7(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9H2U9, O35227またはQ63180の)、
− ADAM−1Aファーティリンアルファ(Swiss-Prot Ass. No: Q8R533の)、
− ADAM−15(Swiss-Prot Ass. Nos: Q9QYV0, O88839またはQ13444の)、
− メタロプロテイナーゼ−デスインテグリンドメイン含有タンパク質(TECAM)(Swiss-Prot Ass. No: AF163291の)、
− メタロプロテイナーゼ1(Swiss-Prot Ass. Nos: O95204またはQ9BSI6の)、
− コラーゲンタイプVII(Swiss-Prot Ass. No: Q63870の)、
− フィブロネクチン(Swiss-Prot Ass. Nos: Q95KV4, Q95KV5, P07589, Q28377, U42594, O95609またはP11276)、
− テネイシン−R(Swiss-Prot Ass. Nos: Q15568, O00531, Q90995またはP10039の)、
− サイトカイン様因子−1(CLF−1)(Swiss-Prot Ass. No: O75462の)
2個の分子間の全ての相互作用を、相互作用の親和性により特徴付けることができ、これは、2個の分子間の誘引の強さを意味する。相互作用の親和性は、一般に解離平衡定数であるKd値により表される。Kdは、2個の分子間の解離の速度と結合の速度の間の比率を反映し、故に2個の分子間の結合の強度の指標を示す。強い結合は低いKd値により反映される。
上記FGFRリガンドは、FGFRに相対的に低い親和性結合を有する。本発明の低い親和性相互作用は、例えば10−4から10−8Mの範囲のような10−3から10−10Mの範囲の値を有するKdにより特徴付けられる。故に、本発明は、10−3から10−10Mの範囲、好ましくは10−4から10−8Mの範囲の、ペプチド配列とFGFRの間の相互作用の親和性に関する。
異なる態様において、本発明は本発明のペプチド配列の異なる生物学的活性に関し得る。故に一つの態様において、本発明は、ペプチド配列が学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激する能力に関し得る。本発明によって、このようなペプチド配列は、ここに記載の任意のペプチド配列から選択し得る。好ましい配列は、配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)、または配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)であり得る。
他の態様において、本発明は、ペプチド配列が、神経前駆体細胞の分化または神経突起伸長および/または該突起の分岐を含むニューロンの分化のようなニューロンの分化を刺激する能力に関し得る。本発明によって、この活性は、モチーフK/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
〔式中、
はP以外の任意の疎水性アミノ酸残基であり、
はK、RまたはYであり、そして
、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
を有するペプチド配列に関連する。
従って、このような態様の好ましい配列は配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)であり得る。上記モチーフを含むペプチド配列はまた細胞生存、好ましくは神経細胞生存を刺激でき、故に本発明のある好ましい態様は、ペプチド配列が細胞生存、好ましくは神経細胞生存を刺激する能力に関し得る。このような態様の好ましい配列はまた配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)であり得る。上記モチーフを含む配列はまた本発明が
i)学習および記憶の刺激、
ii)神経細胞生存の刺激、
iii)神経細胞分化の刺激
から選択される2個以上の生物学的活性が可能である配列に関するとき、好ましい。
このような態様の好ましい配列はまた、配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)である。
3. ペプチドフラグメントの製造
本発明のペプチドは、任意の慣用の合成法、組み換えDNA技術、本ペプチド配列が由来する完全長タンパク質の酵素的開裂、または該方法の組合せにより製造できる。
組み換え製造
故に、一つの態様において、本発明のペプチドは、組み換えDNA技術を使用して製造する。
ペプチドまたは該ペプチドが由来する対応する完全長タンパク質をコードするDNA配列を、確立された方法により、例えばBeaucage and Caruthers, 1981, Tetrahedron Lett. 22: 1859-1869により記載のホスホアミジン法により、またMatthes et al., 1984, EMBO J. 3: 801-805により記載の方法により合成により製造できる。ホスホアミジン法によって、オリゴヌクレオチドを、例えば自動DNA合成装置により合成し、精製し、アニールし、ライゲートし、適当なベクターにクローン化する。
ペプチドをコードするDNA配列はまた、標準プロトコールに従ったDNAase Iを使用した、ペプチド起源の対応する完全長タンパク質をコードするDNA配列の断片化により製造できる(Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。完全長タンパク質をコードするDNAは、あるいは、特異的制限エンドヌクレアーゼの使用により断片かできる。DNAの本フラグメントを、さらにSambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989により記載の標準法を使用して精製する。
完全長タンパク質をコードするDNA配列はまたゲノムまたはcDNA起源であり、例えばゲノムまたはcDNAライブラリーを製造し、標準法に従った合成オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーションにより、完全長タンパク質の全てまたは一部をコードするDNA配列についてスクリーニングし得る(Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989参照)。本DNA配列はまた、例えばUS4,683,202またはSaiki et al., 1988, Science 239: 487-491に記載の通り、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応により製造できる。
本DNA配列を次いで組み換え発現ベクターに挿入し、これは任意のベクターであってよく、組み換えDNA法に便利に付され得る。ベクターの選択は、しばしばそれを挿入すべき宿主細胞に依存する。故に、ベクターは、自律性に複製するベクター、すなわち染色体外物として存在するベクターであって、その複製が染色体複製と無関係のもの、例えばプラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に挿入されたとき、宿主細胞ゲノムに統合され、それが統合されている染色体(複数もある)と一緒に複製されるものであり得る。
ベクターにおいて、ペプチドをコードするDNA配列または完全長タンパク質は、適当なプロモーター配列に作動可能に結合している。本プロモーターは、選択した宿主細胞中で転写活性を示す任意のDNA配列であり得、宿主細胞に同種または異種のタンパク質をコードする遺伝子に由来し得る。哺乳動物細胞におけるコードDNA配列の転写を指示するための適当なプロモーターの例は、SV 40プロモーター(Subramani et al., 1981, Mol. Cell Biol. 1: 854-864)、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., 1983, Science 222: 809-814)またはアデノウイルス2主後期プロモーターである。昆虫細胞での使用に適当なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーター(Vasuvedan et al., 1992, FEBS Lett. 311: 7-11)である。酵母宿主細胞での使用に適当なプロモーターは、酵母解糖遺伝子(Hitzeman et al., 1980, J. Biol. Chem. 255: 12073-12080; AlberおよびKawasaki, 1982, J. Mol. Appl. Gen. 1: 419-434)もしくはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young et al., 1982, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals, Hollaender et al, eds., Plenum Press, New York)由来のプロモーター、またはTPI1(US4,599,311)もしくはADH2−4c(Russell et al., 1983, Nature 304: 652-654)プロモーターを含む。糸状菌宿主細胞での使用に適当なプロモーターは、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., 1985, EMBO J. 4: 2093-2099)またはtpiAプロモーターである。
本DNA配列をコードするはまた、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., op. cit.)または(真菌宿主について)TPI1(AlberおよびKawasaki, op. cit.)またはADH3(McKnight et al., op. cit.)プロモーターのような適当なターミネーターに作動可能に結合している。本ベクターは、さらにポリアデニル化シグナル(例えばSV 40またはアデノウイルス5 Elb領域由来)、転写エンハンサー配列(例えばSV 40エンハンサー)および翻訳エンハンサー配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードするもの)のような要素を含み得る。
本組み換え発現ベクターは、さらにベクターを当該宿主細胞中で複製可能にするDNA配列を含み得る。このような配列の例は、(宿主細胞が哺乳動物細胞であるとき)SV 40複製起点である。本ベクターはまた選択可能マーカー、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子のようなその生成物が宿主細胞における欠損を補うような遺伝子、または薬剤、例えばネオマイシン、ヒドロマイシンもしくはメトトレキサートに対する耐性を付与するものを含み得る。
ペプチドまたは完全長タンパク質、プロモーターおよびターミネーターを各々コードするDNA配列のライゲート、およびそれらの複製に必要な情報を含む適当なベクターへの挿入に使用する方法は、当業者に既知である(例えば、Sambrook et al., op.cit.参照)。
本発明の組み換えペプチドを得るために、本コードDNA配列を、第二のペプチドコード配列およびプロテアーゼ開裂部位コード配列と有用に融合させ、融合タンパク質をコードするDNA構築物を得て(ここで、該プロテアーゼ開裂部位コード配列は、HBPフラグメントと第二のペプチドコードDNAの間に位置する)、組み換え発現ベクターに挿入し、組み換え宿主細胞中で発現させ得る。一つの態様において、該第二のペプチドは、グルタチオン−S−レダクターゼ、子牛チモシン、細菌チオレドキシンまたはヒトユビキチンの天然物または合成変異体、またはそれらのペプチドを含む群から選択されるが、これらに限定されない。他の態様において、プロテアーゼ開裂部位含有ペプチド配列は、アミノ酸配列IEGR開裂部位を有する第Xa因子、アミノ酸配列DDDDK開裂部位を有するエンテロキナーゼ、アミノ酸配列LVPR/GS開裂部位を有するトロンビン、またはアミノ酸配列XKX開裂部位を有するAcharombacter lyticusであり得る。
発現ベクターを挿入する宿主細胞は、ペプチドまたは完全長タンパク質を発現できる任意の細胞であってよく、好ましくは無脊椎動物(昆虫)細胞または脊椎動物細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞または哺乳動物細胞、特に昆虫および哺乳動物細胞のような真核細胞である。適当な哺乳動物細胞系の例は、HEK293(ATCC CRL−1573)、COS(ATCC CRL−1650)、BHK(ATCC CRL−1632、ATCC CCL−10)またはCHO(ATCC CCL−61)細胞系である。哺乳動物細胞をトランスフェクトする方法および細胞に挿入させたDNA配列を発現させる方法は、例えばKaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159, 1982, pp. 601-621; Southern and Berg, 1982, J. Mol. Appl. Genet. 1: 327-341; Loyter et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 422-426; Wigler et al., 1978, Cell 14: 725; Corsaro and Pearson, 1981, in Somatic Cell Genetics 7, p. 603; Graham and van der Eb, 1973, Virol. 52: 456; およびNeumann et al., 1982, EMBO J. 1: 841-845に記載されている。
あるいは、真菌細胞(酵母細胞を含む)を宿主細胞として使用できる。適当な酵母細胞の例は、Saccharomyces spp.またはSchizosaccharomyces spp.、特にSaccharomyces cerevisiae株の細胞を含む。他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばAspergillus spp.またはNeurospora spp.、特にAspergillus oryzaeまたはAspergillus niger株の細胞である。タンパク質発現のためのAspergillus spp.の使用は、例えば、EP238023に記載されている。
細胞の培養のために使用する培地は、適当な添加物を含む血清含有または無血清培地のような哺乳動物細胞の増殖に適当な慣用の培地、または昆虫、酵母または真菌細胞の増殖に適当な培地であり得る。適当な培地は、商業的供給社から入手可能であるか、または公開された手順に従い製造できる(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログ)。
細胞により組み換えにより製造したペプチドまたは完全長タンパク質を、次いで培養培地から、遠心分離または濾過、塩、例えば硫酸アンモニウムの手段による上清または濾液のタンパク質性成分の沈殿、種々のクロマトグラフィー法、例えばHPLC、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーによる精製などにより、宿主細胞を培地から分離することを含む慣用法により、培養培地から回収できる。
合成製造
ペプチドの合成製造のための方法は当分野で既知である。合成ペプチドの製造のための詳細な記載ならびに実際的アドバイスは、Synthetic Peptides: A User's Guide (Advances in Molecular Biology), Grant G. A. ed., Oxford University Press, 2002, or in: Pharmaceutical Formulation: Devel-opment of Peptides and Proteins, Frokjaer and Hovgaard eds., Taylor and Francis, 1999に見ることができる。
ペプチドは、例えばFmoc化学を使用して、およびAcm保護されたシステインにより合成できる。逆相HPLCによる精製後、ペプチドは、さらに例えば環状またはC−もしくはN末端修飾アイソフォームを得るために処理し得る。環化および末端修飾の方法は当分野で既知であり、上記引用のマニュアルに詳細に記載されている。
好ましい態様において、本発明のペプチド配列は合成により、特に、上記マニュアルに記載の配列利用ペプチド合成(sequence assisted peptide synthesis)(SAPS)により製造する。
その他、個々の本発明のペプチド配列の個々の合成は、例えばSigma-Genosys(USA)のような商業的製造者に注文し、そこから購入できる。
LPA法による個々のペプチド配列の多量体の製造
LPA法はWO00/18791に記載されている。この方法は本質的に下記工程を含む:
(a)固相合成またはフラグメントカップリングにより、所望の配列(複数もある)を含むペプチドフラグメント(複数もある)を提供し、該ペプチドフラグメント(複数もある)は固相に結合している;
(b)必要であれば、任意のN末端アミノ基を脱保護し、全てのペプチドフラグメント(複数もある)はまた固相に結合している、
(c)保護されていないN末端基を有するペプチドフラグメント(複数もある)と、非キラルジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸を反応させ、環構造を有する構築物を得る、そして
(d)構築物を固相から開裂させて、遊離C末端基を有するペプチドフラグメント(複数もある)を含むLPAを得る。
上記方法において、工程(d)の前に、下記工程を行い得る:
(c1)存在すれば、工程(c)で使用したカルボン酸に由来する任意のN保護基を脱保護し、
(c2)固相合成またはフラグメントカップリングを続け、少なくとも1個のN保護されたN末端アミノ酸基および/または結合した化学的部分を含む所望の配列(複数もある)を含むペプチドフラグメント(複数もある)を提供し、そして
(c3)存在すれば、任意のN末端アミノ基を脱保護する(工程(d)の前または後で)。
本方法は、とりわけ、NからC配向の所望の本発明の配列を提示するLPAを提供する(工程(c))。そしてまた同時にCからN配向の配列も提供する(工程(c2))。
故に、本発明の化合物を得るために、固相に結合した2個のペプチド鎖を、非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸の手段により組み立てるべきである。本方法において使用するのに適当な非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸は、一般式
X[(A)COOH][(B)COOH]
〔式中、nおよびmは独立して1から20の整数であり、XはHNであり、AおよびBは独立して置換または非置換C1−10アルキル、置換または非置換C2−10アルケニル、置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBは一緒になって置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分を形成する。〕
を有する。
他の態様において、本方法において使用する適当な非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸は、一般式
X[(A)COOH][(B)COOH]
〔式中、nおよびmは0または1から20の整数であり、XはHN(CR)CR、またはRHN(CR)CRであり、ここでpは0または1から20の整数であり、ここで、各RはH、置換または非置換C1−10アルキル、置換または非置換C2−10アルケニル、置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBは一体となって置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分を形成する。〕
を有する。
さらに他の態様において、本方法で使用する適当な非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸は、一般式
X[(A)COOH][(B)COOH]
〔式中、nおよびmは0または1から20の整数であり、XはHO(CR)CR、HS(CR)CR、ハロゲン−(CR)CR、HOOC(CR)CR、ROOC(CR)CR、HCO(CR)CR、RCO(CR)CR、または[HOOC(A)][HOOC(B)]CR(CR)CRであり、ここでpは0または1から20の整数であり、各Rは独立してHまたは置換または非置換C1−10アルキル、置換または非置換C2−10アルケニル、置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBは一体となって置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分を形成する。〕
を有する。
また他の態様において、本方法で使用する適当な非キラルジ−、トリ−またはテトラカルボン酸は、一般式
X[(A)COOH][(B)COOH]
〔式中、nおよびmは0または1から20の整数であり、XはHN(CR)、RHN(CR)、HO(CR)、HS(CR)、ハロゲン−(CR)、HOOC(CR)、ROOC(CR)、HCO(CR)、RCO(CR)、または[HOOC(A)][HOOC(B)](CR)であり、ここで、pは0または1から20の整数であり、各Rは独立してHまたは置換または非置換C1−10アルキル、置換または非置換C2−10アルケニル、置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBは一体となって置換または非置換環状部分、置換または非置換ヘテロ環式部分、置換または非置換芳香族部分を形成する。〕
を有する。
用語C1−10アルキルは、1−10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、およびtert−ブチルを意味する。
用語C2−10アルケニルは、2−10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル基、例えばエチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、およびtert−ブテニルを意味する。
用語環状部分は、シクロヘキサン、およびシクロペンタンを意味する。
用語芳香族部分は、フェニルを意味する。
表現“AおよびBは環状、ヘテロ環式または芳香族部分を形成する”は、シクロヘキサン、ピペリジン、ベンゼン、およびピリジンを意味する。
カルボン酸との反応により、
X(CO−配列)−固相(式中、Xは上記の通りである)
のタイプの構築物が得られる。
用語“配列”は、この文脈内で、天然に存在するおよび/または天然に存在しないアミノ酸、PNA−配列、またはペプチド摸倣物を含むペプチドを意味する。“天然に存在するアミノ酸”は、天然で見られる20種のアミノ酸のL−およびD−形態を意味する。天然に存在しないアミノ酸は、例えば修飾された天然に存在するアミノ酸である。用語配列は、さらにこのような配列を1個以上含むことを意図する。適当なペプチド摸倣物の例は、Marshall G.R.,(1993)Tetrahedron, 49: 3547-3558も記載されている。用語“化学的部分”は、LPAの可溶性または生物学的活性を促進させる物、およびLPAをその標的またはマーカーに向ける物を意味する。配列についての好ましい態様は上記の通りである。
基Xは、同じ配列の、または1個以上の異なる配列および/または部分の、直接的にまたは間接的に連続した段階的合成またはフラグメントカップリングを可能にする。LPA中のペプチドフラグメントの配向(NからCまたはCからN)は望むとおりに定義される。一つの態様において、本発明は、NからC配向のLPAに関し、他の態様において、それは同時に配列のNからCおよびCからN提示を有する化合物に関し、そしてさらに他の態様において、配列はCからN配向を有する。
Xが一時的に保護されたアミノ官能性を有する場合、合成またはカップリングは、保護後に直接行うことができる。環系の効率的な形成を提供する全カルボキシル含有基の適当な活性化は(工程(c)における、上記参照)、等量の半分のカルボン酸の使用により確実にできる。トリ−またはテトラカルボン酸の場合、活性化カルボキシ基は、さらにエチレンジアミンのようなジアミンで、またはアミンで誘導体化して、メルカプト−、オキシ−、オキソまたはカルボキシル基のようにさらなる反応のために適当に官能化され得る。ジアミンの場合、ペプチド合成またはフラグメントカップリングは、直接所望の配列または化学的部分に従って続け得る。好ましい態様において、Fmoc保護法を使用するが、任意のアミノ保護基を合成またはカップリング法に依存して使用できる。例は、Boc保護基法である。
連続的段階的合成またはフラグメントカップリングを、1個のアミノ酸基またはリシンのような二官能性部分の場合2個のアミノ酸基と行うため、驚くべきことにMAP合成により得た慣用の四量体リシンデンドリマー(dendimer)と比較して、よりよい結果を得ることができることが判明した。さらに、最適ペプチド合成法またはカップリング法を固相に結合した一本鎖について使用でき、それらの等質性をLPA形成前に確認できる。固相からの開裂および同時の側鎖脱保護は、標準ペプチド合成法により行うことができる(上記)。最終生成物を、故に最適で十分定義された組成を有して得ることができる。HPLCまたはゲル濾過のような標準クロマトグラフィー法による精製は、望むならばまたは必要であれば、容易に行い得る。
環構造の提供のために有利なジ−、トリ−およびテトラカルボン酸は、イミノ二酢酸、2−アミノマロン酸、3−アミノグルタル酸、3−メチルアミノグルタル酸、3−クロログルタミン酸、3−メトキシ−カルボニルグルタル酸、3−アセチルグルタル酸、グルタル酸、トリカルバリル酸、3,4−ビス−カルボキシメチルアジピン酸、4−(2−カルボキシエチル)−ピメリン酸、(3,5−ビス−カルボキシメチル−フェニル)−酢酸、3,4−ビス−カルボキシメチル−アジピン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、4−(3−カルボキシ−アリルアミノ)−ブト−2−エン酸、4,4−イミノ−ジ安息香酸、1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸、2−クロロマロン酸、3−ヒドロキシグルタル酸、およびベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸から選択し得る。
フラグメントカップリング(フラグメントカップリングまたはフラグメント縮合)は、例えばPeptide Synthesis protocols, Methods in Molecular Biology Vol. 35, Chapter 15, 303-316, Nyfeler R, Pennington MW and Dunne BM Eds.,Humana Press, 1994に記載の通りの標準法に従い行い得る。従って、フラグメントは、上記の通り固相上で合成され、該固相から保護基を完全に保存しながら開裂され、精製され、そして特徴付けされ得る。適当なフラグメントは、上記の他の技術により得ることができる。
上記のLPA法を、本発明の化合物の製造に使用するのは本発明の好ましい態様の一つである。
4. 抗体
上記のモチーフ、または該配列のフラグメント、変異体または相同体のいずれかとしてモチーフを含む、またはそれらから成るペプチド配列を含むエピトープを認識し、選択的に結合できる抗体、それらの抗原結合フラグメントまたは組み換えタンパク質の提供は本発明の目的の一つである。一つの好ましい態様において、本抗体は、モチーフK/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x(式中、xは任意の疎水性アミノ酸残基であり、xはK、RまたはYであり、そしてx、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である)を含むエピトープを認識し、結合する抗体である。
他の好ましい態様において、抗体は、NCAM上のエピトープを認識し、結合でき、該エピトープは、モチーフK/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x(式中、xはWまたはPであり、xはK、RまたはYであり、そしてx、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。)を含む。さらにより好ましい抗体は、NCAMの配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)および/または配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)を含む、またはこれらから成るエピトープを認識し、結合する。
用語“エピトープ”は、(その抗原の)抗体により認識される(それにより免疫応答をもたらす)、原子の特異的グループ(抗原分子上)を意味する。用語“エピトープ”は、用語“抗原決定基”と同義である。本エピトープは、連続的アミノ酸配列内のように近接して位置する、または抗原のアミノ酸配列からは離れて位置するが、タンパク質折りたたみにより互いに接近している、例えば4個、5個、6個、7個、8個のアミノ酸残基のような3個以上のアミノ酸残基から成る。
血漿タンパク質ファミリーに属する抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれ、それらの基本的構成要素、免疫グロブリン折りたたみまたはドメインは、免疫系および他の生物学的認識系における多くの分子に種々の形態で使用される。典型的免疫グロブリンは4個のポリペプチド鎖を有し、可変領域として知られる抗原結合領域および定常領域として知られる不変領域を含む。
ネーティブな抗体および免疫グロブリンは通常約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2個の同じ軽(L)鎖および2個の同じ重(H)鎖から成る。各軽は、重鎖に1個の共有ジスルフィド結合により結合し、一方ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖で異なる。各重および軽鎖はまた正規に配置された鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を有し、多くの定常ドメインが続く。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を、および定常ドメインを他端に有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の最初の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基は、軽および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる(Novotny J, & Haber E. Proc Natl Acad Sci U S A. 82(14): 4592-6, 1985)。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに振り分けられ得る。免疫グロブリンの少なくとも五(5)個:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの大きなクラスがあり、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2に分割できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインを、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と各々呼ぶ。抗体の軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる二つの明瞭に異なるタイプの一方に、それらの定常ドメインのアミノ配列に基づいて振り分け得る。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は既知である。
抗体の可変ドメインの文脈における用語“可変”は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が非常に異なるという事実を意味する。本可変ドメインは、結合およびその特定の抗原についての各特定の抗体の特異性の決定のためである。しかしながら、この可変性は、抗体の可変ドメインを通して均一に分散されていない。軽鎖および重鎖可変ドメインの両方の超可変領域としても知られる相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3セグメント中に凝集されている。
可変ドメイン中の、非常に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。ネーティブな重および軽鎖の可変ドメインは、各々4個のFR領域を含み、ほとんどβ−シート立体配置によって、3個のCDRにより結合され、それはループ連結を形成し、ある場合、β−シート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域により密接して保持され、そして他の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原−結合部位の形成に関与する。本定常ドメインは、直接抗体の抗原への結合には関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与のような種々のエフェクター機能を示す。
本発明での使用が意図される抗体は、故に全免疫グロブリン、Fv、Fab、および類似フラグメントのような抗体フラグメント、可変ドメイン相補性決定領域(CDR)を含む一本鎖抗体などの形を含む任意の種々の形態で使用でき、その全てが、ここで使用する広い用語“抗体”に入る。本発明は、ポリクローナルまたはモノクローナルの、抗体の全ての特性使用を意図し、特異的抗原を認識し、免疫応答する抗体に限定しない。好ましい態様において、下記の治療およびスクリーニング法の両方の文脈で、抗体またはそのフラグメントは、本発明の抗原またはエピトープに特異的であると使用する。
用語“抗体フラグメント”は、完全長抗体の一部、一般に抗原結合または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab'、F(ab')およびFvフラグメントを含む。抗体のパパイン消化は各々単一抗原結合部位を含むFabフラグメントと呼ばれる2個の同一の抗原結合フラグメント、および容易に結晶化する能力からそう呼ばれる残りの“Fc”フラグメントを産生する。ペプシン処理は、抗原と交差結合できる2個の抗原結合フラグメントを有するF(ab')フラグメント、および残りの他のフラグメント(それはpFc'と呼ばれる)を産生する。付加的フラグメントは、二重特異性抗体(diabody)、直線状抗体、一本鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成された多特異的抗体を含み得る。ここで使用する抗体に関連した“機能的フラグメント”はFv、F(ab)およびF(ab')フラグメントを意味する。
用語“抗体フラグメント”は、ここでは、用語“抗原結合フラグメント”と交換可能に使用する。
抗体フラグメントは約4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、約12アミノ酸、約15アミノ酸、約17個のアミノ酸、約18アミノ酸、約20アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸またはそれ以上ほど小さい。一般に、本発明の抗体フラグメントは、ここで配列番号1−3と同定された配列、または該配列のフラグメントのいずれかから選択されたペプチド配列を含むエピトープに特異的に結合する抗体に関連した類似のまたは免疫学的特性を有する限り、何らかの大きさの上限を有し得る。故に、本発明の文脈において、用語“抗体フラグメント”は用語“抗原結合フラグメント”と同義である。
抗体フラグメントは、その抗原または受容体と選択的に結合するある能力を維持する。抗体フラグメントのあるタイプは下記に定義の通りである:
(1)Fabは、抗体分子の一価抗原−結合フラグメントを含むフラグメントである。Fabフラグメントは、無傷の(intact)軽鎖および一方の重鎖の一部を産生するための、全抗体の酵素パパインでの消化により製造できる。
(2)Fab'は、無傷の軽鎖および重鎖の一部を得るための、全抗体のペプシンでの処理、続く還元により得ることができる抗体分子のフラグメントである。2個のFab'フラグメントが1抗体分子あたり得られる。
Fab'フラグメントはFabフラグメントと、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む、数残基付加されている点で異なる。
(3)(Fab')は、全抗体を酵素ペプシンで処理し、その後還元しないことにより得ることができる抗体のフラグメントである。
(4)F(ab')は、互いに2個のジスルフィド結合で保持されたFab'フラグメントの二量体である。
Fvは完全な抗原認識および結合部位を含む最少抗体フラグメントである。この領域は、1個の重鎖および1個の軽鎖可変ドメインの堅い、非共有結合的会合した二量体である(V−V二量体)。各可変ドメインの3個のCDRが定義の抗原結合部位と、V−V二量体の表面上で相互作用するのはこの式中である。まとめて、6個のCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、1個の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3個のCDRしか含まないFvの半分)は抗原を認識し、結合する能力を有するが、完全な結合部位より低い親和性である。
(5)適当なポリペプチドリンカーにより遺伝子的に融合した一本鎖分子として連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子として定義される、一本鎖抗体(“SCA”)。このような一本鎖抗体はまた“一本鎖Fv”または“sFv”抗体フラグメントと呼ばれる。一般に、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメイン間にさらにポリペプチドリンカーを含み、sFvが抗原結合について所望の構造を形成することを可能にする。sFvのレビューのために、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies 113: 269-315 Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, NY, 1994を参照のこと。
用語“二重特異性抗体”は、2個の抗原−結合部位の小抗体フラグメントを意味し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2個のドメインの間の追啓性を可能にするには短すぎるリンカーの使用により、本ドメインは、他の鎖の相補的ドメインと対形成するようになり、2個の抗原−結合部位を形成する。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 90: 6444-6448(1993)にさらに詳しく記載されている。
本発明は、本発明のエピトープと結合できるポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方、それらの抗原結合フラグメントおよび組み換えタンパク質を意図する。
ポリクローナル抗体の製造は、当業者に既知である。例えば、引用により本明細書に包含するGreen et al. 1992. Production of Polyclonal Antisera, in: Immunochemical Protocols (Manson, ed.), pages 1-5 (Humana Press); Coligan, et al., Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats Mice and Hamsters, in: Current Protocols in Immunology, section 2.4.1参照。
モノクローナル抗体の製造は同様に慣用的である。例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256: 495-7 (1975); Coligan, et al., sections 2.5.1-2.6.7; and Harlow, et al., in: Antibodies: A Laboratory Manual, page 726 ,Cold Spring Har-bor Pub. (1988)参照。モノクローナル抗体は、種々の十分確立された技術によりハイブリドーマ培養から単離および精製できる。このような単離技術は、プロテインAセファロースでの親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、Coligan, et al., sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3; Barnes, et al., Purification of Immunoglobulin G (IgG). In: Methods in Molecular Biology, 1992, 10: 79-104, Humana Press, NY参照。
モノクローナル抗体のインビトロおよびインビボ操作の方法は、当業者に既知である。例えば、本発明に従い使用するモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256, 495-7により最初に記載されたハイブリドーマ法により製造でき、または、例えば、US4,816,567に記載の通りの組み換え法により製造できる。本発明で使用するためのモノクローナル抗体はまた、Clackson et al., 1991, Nature 352: 624-628ならびにMarks et al., 1991, J Mol Biol 222: 581-597により記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。他の方法は、ヒト特異的および認識可能配列を含む抗体を産生するための、組み換え手段によるモノクローナル抗体のヒト化を含む。レビューのために、Holmes, et al., 1997, J Immunol 158: 2192-2201 and Vaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81: 105-115参照。
ここで使用する用語“モノクローナル抗体”は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体、すなわち、少量で存在するかもしれない天然に存在する可能性のある変異以外は同じである集団を含む、個々の抗体である。モノクローナル抗体は非常に特異性であり、1個の抗原性部位を指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を典型的に含む慣用のポリクローナル抗体製造とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1個の決定基を指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンで汚染されていないハイブリドーマ培養から製造できる点で遊離である。変更遺伝子“モノクローナル”は、抗体の実質的に均質な集団から得られたものとして特徴付けられる抗体を示す、抗体の特性を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を必要とするものと解釈してはならない。
ここで使用するモノクローナル抗体は、特異的に、重および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一か相同であるが、抗体の残りは他の種に由来するか他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一か相同である“キメラ”抗体(免疫グロブリン)、ならびに、それらが所望の生物学的活性を示す限り、このような抗体のフラグメントを含む(US4,816,567);Morrison et al., 1984, Proc Natl Acad Sci 81: 6851-6855。
抗体フラグメントの製造法も当分野で既知である(例えば、隠喩により本明細書に包含するHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1988参照)。本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解により、または該フラグメントをコードするDNAの大腸菌での発現により製造できる。抗体フラグメントは、全抗体の慣用法でのペプシンまたはパパイン消化により得ることができる。例えば、抗体フラグメントは、F(ab')と呼ばれる5Sフラグメントを提供するための、抗体のペプシンでの酵素的開裂により製造できる。このフラグメントは、3.5S Fab'一価フラグメントを製造するための、チオール還元剤、所望によりジスルフィド結合の開裂によりもたらされるスルフヒドリル基のブロッキング基を使用してさらに開裂される。あるいは、ペプシンを使用した酵素的開裂は、2個の一価Fab'フラグメントおよびFcフラグメントを直接産生する。これらの方法は、例えば、US4,036,945およびUS4,331,647、およびそれらの中の引用文献に記載されている。これらの特許はその全体を引用により本明細書に包含する。
一価軽−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離のような抗体の開裂、さらにフラグメントの開裂のための他の方法、または他の酵素的、化学的、または遺伝子的技術も、フラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り、使用できる。例えば、FvフラグメントはVとV鎖の会合を含む。この会合は非共有結合的であるか、または可変鎖は分子間ジスルフィド結合により連結できるか、またはグルタルデヒドのような化学物質により交差結合できる。好ましくは、VおよびV鎖を含むFvフラグメントは、ペプチドリンカーにより結合する。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドにより結合したVおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子の構築により製造する。本構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、それは続いて大腸菌のような宿主細胞に挿入される。本組み換え宿主細胞は、2個のVドメインのリンカーペプチド架橋を伴う単一ポリペプチド鎖を合成する。sFvsの製造法は、例えば、Whitlow, et al., 1991, In: Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 2: 97; Bird et al., 1988, Science 242: 423-426; US 4,946,778; およびPack, et al., 1993, BioTechnology 11: 1271-77により記載されている。
抗体フラグメントの他の形態は、単一相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(“最少認識単位”)は、しばしば抗原認識および結合に関与する。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子のクローニングまたは構築により得ることができる。このような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞からのRNAの可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応の使用により製造する。例えば、Larrick, et al., Methods: Companion to Methods in Enzymology, Vol. 2, page 106(1991)参照。
本発明は、ヒトおよび非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形態を意図する。このようなヒト化抗体は、エピトープ認識配列のような非ヒト免疫グロブリン由来の最少配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')または抗体の他の抗原−結合部分配列)である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、その中で、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性およびキャパシティを有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置換されている。ここで記載のエピトープ(複数もある)認識配列(複数もある)のような本発明の抗体(複数もある)の最少配列(複数もある)を含むヒト化抗体(複数もある)は、本発明の好ましい態様の一つである。
いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基に置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、さらに抗体性能を精密化および最適化する。一般に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1個、および典型的に2個の可変ドメインの全てを含み、その中で非ヒト免疫グロブリンのものに対応する全てまたは実質的に全てのCDR領域およびFR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。本ヒト化抗体は、最適にはまた、典型的にヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については:Jones et al., 1986, Nature 321, 522-525; Reichmann et al., 1988, Nature 332, 323-329; Presta, 1992, Curr Op Struct Biol 2: 593-596; Holmes et al., 1997, J Immunol 158: 2192-2201およびVaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81: 105-115参照。
抗体の産生は、例えば配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)および/または配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)のフラグメントのような、上記モチーフを含むペプチドフラグメントを使用して、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の製造の技術の標準法により達成できる。このような抗体はまた、配列番号1および2のペプチド配列の変異体または相同体を使用して製造できる。ある態様において、抗体の製造に配列番号1を使用することが好ましく、他の態様において、配列番号2を使用することが好ましいことがある。
本抗体はまた、個体を、本発明の免疫原性フラグメントを該個体に投与することにより処置して、インビボで製造できる。従って、本発明は、さらに上記免疫原性フラグメントを含むワクチンに関する。
本発明はまた本発明の抗体の製造法であって、上記免疫原性フラグメントを提供する工程を含む、方法に関する。
本発明は1)ここに記載のヒトNCAMおよび/またはFGFRおよび/またはFGFRリガンドの生物学的機能、特に細胞分化および生存、および/または学習および記憶に関連する神経可塑性に関連する機能を増強または減弱するような調整ができる、抗体、および2)その生物学的活性を調整することなく、NCAMを認識し、特異的に結合できる抗体の両方に関する。このような抗体を、上記免疫原性ペプチド配列を使用して製造することが好ましい。
本発明は、上記抗体の、1)ここに記載のFGFRおよび/またはNCAMおよび/またはFGFRリガンドの活性の調整が関与する治療的適用;2)インビトロおよび/またはインビボでの、診断/予後目的での、NCAMポリペプチドまたはそのフラグメントの検出および/またはモニタリング、4)研究目的のための使用に関する。
一つの態様において、本発明は、上記抗体を含む医薬組成物に関する。
5. 医薬
細胞死は、50%の発育中のニューロンがプログラム細胞死により排除される正常ニューロン発育において、およびアルツハイマーおよびパーキンソン病のような神経変性状態の病態生理において重要な役割を有する。FGFRおよびそれらのリガンドは、発育中および成熟期の両方でのニューロンの生存の重要な決定基であることが示されている(Reuss and von Bohlen und Halbach (2003) Cell tissue Res, 313: 139-57)。故に、神経細胞生存を、FGFRとの結合および活性化により促進できる化合物が非常に望まれている。故に、一つの局面において、本発明は、神経細胞の生存を促進でき、神経細胞死が関与する状態の処置用医薬として使用できる化合物に関する。しかしながら、本発明の化合物はまた、FGFRシグナル伝達が、筋肉および癌細胞両方の生存因子であることが示されているため、他のタイプの細胞、例えば異なるタイプの筋肉細胞の生存の促進用医薬として、あるいはさらに他のタイプの細胞、例えば癌細胞の細胞死促進用医薬として使用できる(Ozen et al. (2001) J Nat Cancer Inst. 93: 1783-90; Miyamoto et al. (1998) J Cell Physiol. 177: 58-67; Detilliux et al. (2003) Cardiovasc Res. 57: 8-19))。
機能的細胞損失の補填を達成することを目的とした戦略における他の試みは、例えば前駆(幹)細胞を、分化した細胞の新規集団に分化させることによる該機能的細胞の新規プールの創成、または損傷した細胞における再生工程の開始である。FGFRは、種々の前駆細胞タイプ(Eswarakumar et al. (2005) Cytokine Growth Factor Rev. 16(2): 139-49)、癌細胞(St Bernard et al. (2005)Endocrinology 146(3): 1145-53)および神経細胞(Sapieha et al. (2003) Mol Cell Neurosci. 24(3): 656-72)の分化を開始させる機構において、重要な役割を有する。
細胞−表面受容体の役割は、健康な生物においては厳重に制御されている。変異、異常発現または受容体のプロセシングまたは受容体リガンドは、受容体の活性異常に至り、故に受容体の機能不全に至る。受容体の機能不全は、次に、種々の細胞過程の維持のために受容体を使用する細胞の機能不全の原因となる。後者は疾患の発症である。FGFRシグナル伝達の減弱は、多くの種々の病状、例えば糖尿病の発症に至ることも示されている(Hart et al., Nature 2000, 408: 864-8)。FGF受容体の活性化は正常血管形成に、病的血管形成に含まれる(Slavin, Cell Biol Int 1995, 19: 431-44)。それは骨格筋細胞、心筋細胞およびニューロンの発育、増殖、機能発現および生存に重要である(Merle at al., J Biol Chem 1995, 270: 17361-7; Cheng and Mattson, Neuron 1991, 7: 1031-41; Zhu et al., Mech Ageing Dev 1999, 108: 77-85)。それは正常腎臓構造の維持に役割を有し(Cancilla et al., Kidney Int 2001, 60: 147-55)、そして創傷(mound)治癒および癌疾患に関与する(Powers et al., Endocr Relat Cancer. 2000, 7: 165-97)。
AGFRの活性はまた記憶および学習と関連する神経可塑性の刺激およびイオ時に重要であると報告されている(Reuss et al. (2003) Cell Tissue Res. 313(2): 139-57; Oomura et al. (1996) Ann N Y Acad Sci. 786: 337-47)。
本発明は、FGFRの活性を調節できる、特にFGFRの活性を刺激できる化合物を提供する。結果として、該化合物は、本発明により、FGFRの活性に依存する生物学的活性の刺激が処置に有益であると考えられる疾患の処置用医薬の製造用に考慮される。
故に、本発明の医薬は、下記状態の予防および/または処置に使用できる
1)中枢および末梢神経系、または筋肉もしくは種々の臓器の疾患および状態、および/または
2)術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維のミエリン形成障害、例えば卒中が原因の虚血後損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳血管性認知症のような認知症、硬化症、真性糖尿病に関連する神経変性、概日時計または神経−筋肉伝達に影響する障害、および統合失調症、躁鬱病のような気分障害のような中枢および末梢神経系の疾患または状態;臓器移植後、または遺伝性もしくは外傷性萎縮性筋障害のような神経−筋肉結合の機能障害を伴う状態を含む、筋肉の疾患または状態の処置;または生殖腺の退行状態、I型およびII型真性糖尿病のような膵臓の、ネフローゼのような腎臓のならびに心臓、肝臓および腸のような種々の臓器の疾患または状態の処置に、および/または
3)術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維のミエリン形成障害、例えば卒中が原因の虚血後に、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳血管性認知症のような認知症、硬化症、真性糖尿病に関連する神経変性、概日時計または神経−筋肉伝達に影響する障害、および統合失調症、躁鬱病のような気分障害、および/または
4)癌疾患、および/または
5)プリオン病。
本発明は、血管新生を必要とする全てのタイプの固形腫瘍である癌に関する。神経系の癌は、本発明の特定の関心事である。
本発明は、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ病から成る群から選択されるプリオン病に関する。FGFRは、プリオン病において明確な役割を有することが示されている(Castelnau et al. (1994) Exp Neurobiol. 130: 407-10; Ye and Carp (2002) J Mol Neurosci. 18: 179-88)。
他の態様において、本発明の化合物は、
1)創傷治癒促進、および/または
2)急性心筋梗塞後、または血管形成後のような、心臓筋肉細胞の細胞死の予防、および/または
3)血管再生、および/または
4)学習および/または短期および/または長期記憶能力の刺激
のための医薬の製造に使用できる。
さらに他の態様において、本発明の化合物は
1)虚血による細胞死の予防 of;
2)アルコール消費による身体の損傷の予防
のための医薬の製造に使用できる。
なおさらに他の態様において、本発明の化合物は、通常インビボで
− 神経細胞接着分子(NCAM)、
− 神経細胞接着分子L1、
− 神経細胞接着分子−2(NCAM−2)、
− ニューロン−グリア細胞接着分子(Ng−CAM)、
− 神経細胞接着分子CALL、
− ニューログリアン、
− Nr−CAM(HBRAVO、NRCAM、NR−CAM 12)、
− アキソニン−1/TAG−1、
− 軸索関連細胞接着分子(AxCAM)、
− ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、
− 神経細胞接着分子BIG−1、
− 神経細胞接着分子BIG−2、
− ファシクリン(FAS−2)、
− 神経細胞接着分子HNB−3/NB−3、
− 神経細胞接着分子HNB−2/NB−2、
− カドヘリン、
− 接合部接着分子−1(JAM−1)、
− 神経細胞接着F3/F11(コンタクチン)、
− ニューロファシン、
− Bリンパ球細胞接着分子CD22、
− ネオゲニン(NEO1)、
− 細胞内細胞接着分子−5(ICAM−5/テレンセファリン)、
− ガラクトース結合レクチン−12(ガレクチン−12)、
− ガラクトース結合レクチン−4(ガレクチン−4)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、
− 線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)、
− ニューロトロフィンチロシンキナーゼタイプ−2(NTRKT−2)、
− 白血球抗原関連タンパク質−チロシンホスファターゼ(LAR−PTPRF)、
− ネフリン、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプ(PTPRS)、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプカッパ(R−PTP−カッパ)、
− タンパク質−チロシンホスファターゼ受容体タイプD(PTPRD)、
− エフリンタイプ−A受容体8(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ受容体EEK)
− エフリンタイプ−A受容体3(EPHA8/チロシン−タンパク質キナーゼ受容体ETK−1/CEK4)、
− エフリンタイプ−A受容体2、
− インシュリン受容体(IR)、
− インシュリン様増殖因子−1受容体(IGF−1)、
− インシュリン関連受容体(IRR)、
− チロシン−タンパク質キナーゼ受容体Tie−1、
− ラウンドアバウト受容体−1(robo−1)、
− ニューロンニコチンアセチルコリン受容体アルファ3サブユニット(CHRNA3)、
− ニューロンアセチルコリン受容体アルファ6サブユニット、
− 血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFRB)、
− インターロイキン−6受容体(IL−6R)、
− インターロイキン−23受容体(IL−23R)、
− IL−3、IL5およびGmCsfのベータ−共通サイトカイン受容体、
− サイトカイン受容体様分子3(CRLF1)、
− クラスIサイトカイン受容体(ZCYTOR5)、
− ネトリン−1受容体DCC、
− 白血球Fc受容体様タンパク質(IFGP2)、
− マクロファージスカベンジャー受容体2(MSR2)、
− 顆粒球コロニー刺激因子受容体、
− パールカン、
− ADAM−19、
− ADAM−8、
− ADAM−12、
− ADAM−28、
− ADAM−33、
− ADAM−9、
− ADAM−7、
− ADAM−1Aファーティリンアルファ、
− ADAM−15、
− メタロプロテイナーゼ−デスインテグリンドメイン含有タンパク質(TECAM)、
− メタロプロテイナーゼ1、
− コラーゲンタイプVII、
− フィブロネクチン、
− テネイシン−R、
− サイトカイン様因子−1(CLF−1)
から成る群から選択される1個以上のFGFR低親和性リガンドを発現する正常の、変性したまたは損傷した細胞の処置用医薬の製造において使用できる。
本発明によって、上記のタンパク質は、FGFRの天然低親和性リガンドであり、FGFRと結合し、FGFRシグナル伝達を活性化できる本発明の少なくとも1個のペプチドフラグメントを含む本発明の化合物は、該タンパク質の機能が関与する状態における、上記タンパク質のいずれかの摸倣物として有利に使用できる。特に、このような化合物は正常な、変性したまたは損傷したNCAM提示細胞の処置に有用である。
本発明の医薬は、有効量の1個以上の上記で定義のペプチド配列もしくは化合物、または1個以上の本発明の化合物および薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を含む。
本発明のペプチド配列の特異的構造特性(上記)に関連した生物学的活性を、医薬の製造または医薬組成物の製造において考慮すべきである。ある態様において、医薬の製造のために配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)の使用が好ましいことがあり、他の態様において、配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)が好ましいことがあり、さらに他の態様において、両方の配列を含む化合物、または本明細書に記載の何らかの他のタイプの化合物の使用が好ましいことがある。従って、一つの好ましい態様において、本発明の医薬および/または医薬組成物は、学習および記憶の刺激用であり得て、他の態様において、医薬組成物はニューロン生存の刺激用であり得て、さらに他の態様において、医薬組成物は神経細胞分化の刺激用であり得て、さらに他の態様において医薬組成物はi)記憶および学習の刺激および細胞生存の刺激用、またはii)記憶および学習の刺激および神経突起伸長の刺激用、またはiii)神経突起伸長および細胞生存の刺激用であり得る。上記のFGFRリガンドが役割を有する状態または疾患の処置を考慮するとき、医薬組成物は、好ましくは、上記の生物学的活性とは異なり得る該リガンドの機能/生物学的活性の増強または減弱用に使用できる。
本発明はまた、上記の本発明の抗体を含む医薬および医薬組成物に関する。
本発明のさらなる局面は、有効量の1個以上の本発明の化合物、または本発明の医薬組成物と、1個以上の薬学的に許容される添加剤または担体の混合を含む、医薬組成物の製造法である。
上記の方法の一つの態様において、本化合物を人工補装具と組み合わせて使用し、該補装具は人工神経ガイド(prosthetic nerve guide)である。故に、さらなる局面において、本発明は、1個以上の上記で定義の化合物または医薬組成物を含むことを特徴とする、人工神経ガイドに関する。神経ガイドは当分野で既知である。
本発明は、下記に記載の疾患および状態のいずれかの処置または予防における、本発明の化合物を含む医薬および/または医薬組成物の使用に関する。
このような医薬および/または医薬組成物は、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、脳室内、鼻腔内または肺投与用に適当に製剤できる。
本発明の化合物を使用した医薬および組成物の製剤開発用の戦略は、他のタンパク質含有医薬製品の製剤戦略に一般的に対応する。可能性のある問題およびこれらの問題を解決するための指針は、いくつかの教科書、例えば“Therapeutic Peptides and Protein Formulation. Processing and Delivery Systems”, Ed. A.K. Banga, Technomic Publishing AG, Basel, 1995で扱われている。
注射製剤(injectables)は、通常液体の溶液または懸濁液、注射前に液体中に溶解または懸濁させるのに適当な固体形態のいずれかとして製造する。本製剤はまた乳化できる。活性成分を、しばしば薬学的に許容され、かつ活性成分と適合可能な賦形剤と混合する。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。加えて、望むならば、この製剤は、少量の湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤のような助剤、または該製剤の効果または輸送を促進するものを含み得る。
本発明の化合物の製剤は、当業者に既知の技術により製造できる。本製剤は、マイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む薬学的に許容される担体および賦形剤を含み得る。
本製剤は、適当には、所望により活性成分がその効果を発揮する場所への注射により投与できる。他の投与形式に適当な付加的製剤は、坐薬、鼻腔、肺および、ある場合、経口製剤を含む。坐薬について、伝統的結合剤および担体は、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含む。このような坐薬は、0.5%から10%、好ましくは1−2%の範囲で活性成分(複数もある)を含む混合物から形成できる。経口製剤は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、遅延放出製剤または粉末の形をとり、一般に10−95%、好ましくは25−70%の活性成分(複数もある)を含む。
他の製剤は、鼻腔および肺投与に適当な、例えば吸入剤(inhalator)およびエアロゾル剤である。
活性化合物は、中性または塩形態として製造できる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(ペプチド化合物の遊離アミノ基と形成)であり、それは例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または第二鉄の水酸化物のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
本製剤は、投与製剤に適合した方法で、そして治療的に有効である量で投与する。投与すべき量は、例えば対象の体重および年齢、処置すべき疾患および重症度を含み、処置する対象に依存する。適当な量の範囲は、体重キロあたり、投与あたり数百μg活性成分の桁の範囲であり、好ましい範囲は約0.1μgから5000μg/体重kgである。化合物の単量体形態を使用して、適当な投与量は、しばしば約0.1μgから3000μg/体重kgの範囲、およびとりわけ約0.1μgから1000μg/体重kgの範囲のような0.1μgから5000μg/体重kgの範囲である。化合物の多量体形態を使用して、適当な投与量は、しばしば約0.1μgから750μg/体重kg、およびとりわけ約0.1μgから250μg/体重kgの範囲のような約0.1μgから500μg/体重kgの範囲のような、0.1μgから1000μg/体重kgの範囲である。特に鼻腔内投与のとき、他の経路により投与するときより少ない投与量である。投与は1回であってよく、またはその後投与が続き得る。投与量はまた投与経路に依存し、そして処置すべき対象の年齢および体重により変化する。多量体形態の好ましい投与量は、体重70kgあたり、1mgから70mgの間である。
ある適用について、局所または実質的に局所的な投与が好ましい。
他の適用について、鼻腔内適用が好ましい。
本発明の化合物のいくつかは十分に活性であるが、他のもののいくつかについては、効果が製剤がさらに薬学的に許容される添加剤および/または担体を含むとき、増強される。このような添加剤および担体は当分野で既知である。いくつかの場合、活性物質の標的への送達を促進する化合物を含むことが有益である。
多くの例で、製剤を複数回投与する必要がある。投与は静脈内輸液のような連続輸液であってよく、または1日複数回、毎日、数に数回、毎週など投与する。医薬の投与を、個体が細胞死をもたらし得る因子(複数もある)に付される前または直後から開始することが好ましい。好ましくは本医薬を、因子攻撃から5時間以内のような、因子攻撃から8時間以内に投与する。多くの化合物は長期に効果を示し、それにより、化合物の投与は、1週間または2週間のような長い間隔で行い得る。
神経ガイドの使用と関連して、投与は連続的であるか、または、活性化合物(複数もある)の制御された放出に基づいて少しずつである。さらに、前駆体を放出速度および/または放出部位の制御のために使用し得る。他の種のインプラントおよび同様に経口投与は、制御放出および/または前駆体の使用を同様に利用し得る。
6. 処置
本発明の化合物/組成物の使用による処置は、一つの態様において、分化の誘導、増殖の調整、細胞の再生、ニューロン可塑性および生存の刺激に有用であり、例えば細胞はインプラントまたはトランスプラントされている。これは、長期効果を有する化合物を使用したとき、特に有用である。
さらなる態様において、本処置は、外傷および傷害、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に通常細胞死に至る変性疾患、医学的および/または外科的処置および/または遊離ラジカル形成をもたらし得る診断法またはX線および化学療法のような細胞毒性を有するその他のもののような他の外的因子のような種々の因子により死の危険がある細胞の生存の刺激のためであり得る。化学療法に関して、本発明のFGFR結合化合物は、FGFRを提示する全癌細胞の癌処置に有用である。
故に、処置は、術後神経損傷、例えば脊髄傷害が原因の外傷性神経損傷、神経線維のミエリン形成障害、例えば卒中が原因の虚血後損傷、脳血管性認知症、多発性硬化症、真性糖尿病に関連する神経変性、神経−筋肉変性、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、またはハンチントン病のような中枢および末梢神経系の疾患または状態に関連した細胞死の処置および/または予防を含む。
また、筋肉の疾患または状態に関して、遺伝性または外傷性萎縮性筋障害のような神経−筋肉結合の機能障害を伴う状態を含む;または、生殖腺の退行状態、I型およびII型真性糖尿病のような膵臓の、ネフローゼのような腎臓のような種々の臓器の疾患または状態の処置のために、本発明の化合物は、分化の誘導、増殖の調整、再生、ニューロン可塑性および生存の刺激、すなわち生存の刺激のために使用できる。
さらに、本化合物および/または医薬組成物は、血管形成を誘導するための、急性心筋梗塞後のような心臓筋肉細胞の細胞死の予防用であり得る。さらに、一つの態様において、本化合物および/または医薬組成物は、急性心筋梗塞後の生存のような、心臓筋肉細胞の生存の刺激用である。他の局面において、本化合物および/または医薬組成物は、傷害後のような、血管再生用である。
本化合物および/または医薬組成物を創傷治癒促進用に使用することも本発明の範囲内である。本化合物は血管形成を刺激でき、それにより創傷治癒工程を促進する。
本発明は、さらに本化合物および/または医薬組成物の癌の処置に置ける使用を開示する。FGFR活性化の制御は、腫瘍血管新生、増殖および拡散に重要である。
さらに別の態様において、本化合物および/または医薬組成物の使用は、FGFR活性が神経細胞分化に重要であるため、学習および/または短期および/または長期記憶の能力の刺激用である。
さらに他の態様において、本発明の化合物および/または医薬組成物は、アルコール消費による身体の損傷の処置用である。胎児の発育奇形、長期神経行動学的変化、アルコール性肝臓疾患が特に考慮される。
化合物および/または医薬組成物の使用を含むプリオン病の治療的処置は、さらに他の本発明の態様である。
特に本発明の化合物および/または医薬組成物は、臨床状態、例えば新生物、例えば悪性新生物、良性新生物、上皮内癌および不確実な行動の新生物、内分泌腺の疾患、例えば真性糖尿病、精神病、例えば老年期および初老期の器質性精神病、アルコール性精神病、薬物精神病、一過性器質性精神病、アルツハイマー病、脳類脂質沈着症、癲癇、進行性麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、脳のピック病、梅毒、統合失調症、感情精神病、神経症、性格神経症、器質脳症候群と関連する非精神病性人格障害、妄想性人格障害、狂信的人格、妄想性人格(障害)、妄想体質、性的倒錯および障害、精神遅滞を含む人格障害、神経系および感覚器の疾患、認知異常、中枢神経系の炎症性疾患、例えば髄膜炎、脳炎、中枢退行、例えばアルツハイマー病、ピック病、脳の老齢退行、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路疾患および異常運動障害を含むパーキンソン病、脊髄小脳疾患、小脳性運動失調症、マリエ(Marie's)、サンガー−ブラウン(Sanger-Blown)、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、原発性小脳変性、例えば脊髄性筋萎縮症、家族性、若年性、成人脊髄性筋萎縮症、運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、進行性球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、不特定の、脊髄の他の疾患、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管性ミエロパシー、脊髄の急性梗塞(塞栓性)(非塞栓性)、脊髄の動脈血栓症、脊髄の浮腫、亜急性壊死ミエロパシー、他の場所で分類されている疾患における脊髄の亜急性複合性退行、ミエロパシー、薬物誘発、放射線誘発脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律(autonomic)、交感、副交感、または自律神経(vegetative)系の障害、家族性自律神経障害[ライリー・デイ症候群]、特発性末梢自律神経障害、頸動脈洞性失神または症候群、頸部交感神経ジストロフィーまたは麻痺、他の場所で分類されている障害における末梢自律神経障害、アミロイドーシス、末梢神経系の疾患、腕神経叢病巣、頸肋症候群、肋骨鎖骨症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、腕神経叢炎または神経根炎(新生児におけるものを含む)、急性伝染性多発性神経炎を含む炎症性および毒性神経障害、ギランバレー症候群、感染後多発性神経炎、コラーゲン血管疾患における多発ニューロパシー、眼の複数の構造に影響する障害、粘膿性眼内炎、耳および乳様突起の疾患、慢性リウマチ性心臓疾患、虚血性心臓疾患、不整脈、肺系の疾患、新生児の臓器および神経系を含む軟組織の異常、分娩および出産時の麻酔剤または他の鎮静剤投与の合併症、感染を含む皮膚の疾患、不十分な循環の問題、手術、挫傷、熱傷後を含む傷害、神経の分裂を含む神経および脊髄の傷害、連続性の病変(開放傷ありまたはなし)、外傷性神経腫(開放傷ありまたはなし)、外傷性一過性麻痺(開放傷ありまたはなし)、医学的処置中の事故での穿刺または裂傷、視神経および経路の傷害、視神経傷害、第二脳神経の傷害、視交叉の傷害、視覚経路の傷害、視覚野の傷害、特定されていない盲、他の脳神経(複数もある)の傷害、他のおよび特定されていない神経の障害、薬剤、医学的および生物学的物質の毒、遺伝性または外傷性萎縮性筋障害の処置において;または生殖腺の退行状態、I型およびII型真性糖尿病のような膵臓の、ネフローゼのような腎臓のような種々の臓器の疾患または状態、スクレイピー、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー(GSS)病の処置に使用できる。
本発明により、上記状態および症状の処置および/または予防は、有効量の本発明の化合物および/または医薬組成物を、それを必要とする個体に投与する工程を含む。
NCAMのペプチドフラグメントTIMGLKPETRYAVR(配列番号5)(ここではEFLペプチドと呼ぶ)、およびEVYVVAENQQGKSKA(配列番号4)(ここではFGLペプチドと呼ぶ)を、下記実験でポジティブコントロールとして使用している。
配列KAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)はここではCDLペプチドと呼び、配列IDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)はここではABLペプチドと呼ぶ。
実施例1. 神経突起伸長の刺激
小脳顆粒ニューロン(CGN)を、生後7日のウィスター・ラットから、ほぼ以前に記載の通り調製した(Neiiendam et al, (2004)J Neurochem. 91(4): 920-35)。小脳組織を氷上に置いた改変クレブスリンガー液上で切開し、上記で海馬ニューロンについて記載の通り処置した。全細胞培養物を、37℃で5%CO含有湿潤雰囲気中でインキュベートした。全動物は動物保護のための国内ガイドラインに従って扱った。
解離させた細胞を10,000細胞/cmの密度で、0.4%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、2%(v/v)B27 Neurobasal添加剤、1%(v/v)glutamax、100U/mlペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンおよび2%1M HEPES(全てGibco, BRLから)添加Neurobasal培地中、非被覆8ウェルpermanox Lab-Tekチャンバースライド上に播いた。種々のシグナル伝達経路の阻害剤含有または不含有ペプチド溶液を、総容量300μl/cmまで添加し、スライドを37℃でインキュベートした。24時間後、ニューロンを4%(v/v)ホルムアルデヒドで20分固定し、その後GAP−43に対する一次ウサギ抗体およびAlexa Fluor二次ヤギ抗ウサギ抗体を使用して免疫染色した。各個々の実験における各群からの少なくとも200ニューロンの映像を、先に記載の通り(Ronn et al., 2000 op. cit.)コンピュータを利用した蛍光顕微鏡を使用して組織的に得た。簡単に言うと、ビデオカメラ(Grundig Electronics, Germany)に接続したNikon Diaphot倒立顕微鏡とNikon Plan 20x対物(Nikon, Tokyo, Japan)を記録のために使用した。ドーパミン神経突起伸長アッセイについて上記したのと同じソフトウエアパッケージを使用して、映像を処理した。
図1(AおよびB)から明らかな通り、NCAM F3,1のEFLおよびCDLペプチドは基質無しで培養における神経突起伸長ニューロン増殖の強い刺激因子であり、一方ABLペプチドはこれらの培養条件では不活性である。EFLペプチドの効果は、既知のFGFR阻害剤であるSU 5402添加によりなくなり、この刺激が該受容体の活性化に依存することを示す。
実施例2. ニューロン生存の刺激
生存アッセイ
CGNの初代培養を100,000細胞/cmの密度で、2%(v/v)B27、0.5%(v/v)glutamax、100U/mlペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンおよびKCl添加Neurobasal-A培地(Gibco, BRL)中、ポリ−L−リシン被覆8ウェルpermanox スライドで播き、培地中の最終KCl濃度を40mMとした。播種24時間後、シトシン−β−D−アラビノフラノシド(Ara−C;Sigma-Aldrich)を10μMの最終濃度まで添加し、グリア細胞の増殖を阻止し、その後ニューロンをさらに6日間、37℃で分化させた。アポトーシス細胞死を、2回の洗浄、および培地を、1%(v/v)グルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシン、3.5g D−グルコース/lおよび1%(v/v)ピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL)を種々の濃度のペプチドを添加した基本培地イーグル(BME;Gibco BRL)に変えることにより、誘発した。それにより、培養物中のカリウム濃度は5mM KClまで低下した。アポトーシス誘導2日後、海馬ニューロンを用いた生存アッセイについて記載した通り、細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、Hoechst 33258で染色した。
本アッセイはD'Mello et al., (1993)(Proc Natl Acad Sci USA. 90: 10989-93)に記載の通り行う。
カスパーゼ−3様活性アッセイ
CGNの初代培養を上記の通り調製し、細胞のアポトーシスを上記の通り誘発した。
カスパーゼ−3アッセイのために、培養したCGNを除去し、遠心分離により回収し、溶解した。溶解細胞のアリコートをアッセイに使用し、それは、製造者の指示に従って行った(Promega, USA)、
結果
図2(AおよびB)から、CDLおよびEFLペプチド(デンドリマー)(各々図2Aおよび2B)は、培養中のCGNの生存を有意に促進し、その効果はC3ペプチド(Berezin V and Bock E. (2004)J Mol Neurosci 22(1-2): 33-39)およびGDNF(Krieglstein K(2004)Cell Tissue Res 318(1): 73-80)のような既知の細胞生存プロモーターの効果より高い(図2A)。ABLペプチドは、培養におけるCGNニューロンの生存に影響しない。
図3は、CDLおよびEFLペプチドが、KClを涸渇させた培養培地に維持している細胞におけるアポトーシス関連カスパーゼ−3様活性を阻害し、その効果は高KCl(40mM)の効果と同等であることを証明する。
実施例4. NCAM F3,1のフラグメントのFGFR1への結合
NCAM F3,1の全ての“鎖−ループ−鎖”構造ドメイン(AB − A鎖−ループ−B鎖(ABLペプチド配列番号2に対応);CD − C鎖−ループ−D鎖(CDLペプチド配列番号1に対応);EF − E鎖−ループ−F鎖(EFLペプチド配列番号5に対応);BC − B鎖−ループ−C鎖;DE − D鎖−ループ−E鎖;FG − F鎖−ループ−G鎖)を示す異なるペプチドフラグメントは、合成的に製造されている。
FGFRIgモジュール3およびモジュール2、3を、製造者の指示に従い、ショウジョウバエS2細胞(Invitrogen, USA)で発現させた。全てのタンパク質を、Ni2+−NTA樹脂(Qiagen, USA)を使用した親和性クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過で精製した。
結合分析を、BIAcoreX装置(Biosensor AB)を25℃で使用して、10mM リン酸ナトリウムpH7.4、150mM NaClを移動相緩衝液として使用して行った。流速は5μl/分であった。データを、製造者のソフトウェアを使用して非線形曲線適合により分析した。FGFRIgモジュール2、3をセンサーチップ CM5上に、下記の通りアミンカップリングキット(Biosensor AB)を使用して固定化した:1)チップの二等分(Fc1およびFc2と命名)を、20μl活性化溶液により活性化した;2)タンパク質を、10mM リン酸ナトリウム緩衝液pH6.0中、12μl 20μg/ml タンパク質を使用して、Fc1上に固定化した;3)Fc1およびFc2を35μlブロッキング溶液の使用によりブロックした。種々の化合物の固定化FGFRモジュールへの結合を、下記の通り試験した:化合物を同時にFc1(固定化FGFRモジュール有り)およびFc2(何も固定化されていない)に注入した。Fc2の表面への化合物の非特異的結合を示す曲線を、該タンパク質の固定化FGFRモジュールおよびFc1の表面への結合を示す曲線から引いた。得られた曲線を分析に使用した。本結合実験の結果を図4に示す。図4から、NCAM F3,1のABL、CDLおよびEFLペプチドはFGFRに直接結合できることが明らかである。
実施例5. FGFRのリン酸化
TREX−293細胞(Invitrogen)を、Flp−Inシステム(Invitrogen)を使用して、C末端StrepIIタグ(IBA biotech)を有するヒトFGFR1で安定にトランスフェクトした。リン酸化試験のために:〜2×10細胞を、一晩欠乏させ、その後20分特異的化合物で刺激した。細胞を1%NP−40およびホスファターゼ阻害剤カクテルセットII(Calbiochem)含有PBS中に溶解した。浄化した細胞溶解物を50μl アガロース結合抗ホスホチロシン抗体(4G10-AC, Upstate Biotechnologies)と、3時間、4℃でインキュベートした。用いた細胞量の較正に注意し、リン酸化FGFRの相当な増加量を検出できるようにした。結合したタンパク質を洗浄し、150mMフェニルホスフェート(Sigma)を使用して溶出し、12%トリクロロ酢酸により沈殿させ、冷アセトンで洗浄し、SDS−PAGEサンプル緩衝液に溶解した。免疫ブロット法を、組み換えStrepIIタグに対する抗体(IBA biotech)を使用して行った。
図5から明らかな通り、ABL、CDLおよびEFLペプチドは、非刺激細胞と比較して、FGFRのリン酸化を増加(2−3倍)させた。
実施例6. 学習および記憶パラダイム
恐怖条件付け文脈学習(CFC)
ラットを、実験の最初の日の前3日間、毎日120秒手に持った。1日目(トレーニング)、ラットは2分間、毎分1秒のショック(非条件付け刺激)を受けた。動物に、トレーニング直後5μl EFL、ABL、CDLまたはコントロールペプチド、または媒体を注射した。各処置群は11−14匹のラットから成った。合計39匹の動物を評価した。動物を2日、7日および30日目に、8分間、条件付けに使用したが、ショック無しのチャンバーに移すことにより試験した。各ラットを2秒毎にタイム・サンプリング法を使用して、“すくむ”または“動く”のいずれかとみなした。
ペプチド投与後のすくみ時間の増加が、プラセボまたはコントロールを投与されたラットと比較して、動物を条件付け後1日目(40.0%から約50.3%(EFL))および8日目(32%から42.5%(CDLおよびEFL))に試験したときに観察された。これは、EFLおよびCDLペプチドが、成体雄ウィスター・ラットにトレーニング後投与したときに、条件付けされた恐怖応答の長期の維持の改善ができることを示す。
社会認識試験(SRT)
動物をSRTを使用して、ペプチドまたは媒体皮下注射1時間および24時間後に評価した。
馴化期間:社会認識試験(SRT)の前日、実験室、試験を行う時間、試験ケージ、および若いラットとの接触(異なる若いラットを馴化期間および社会認識試験中使用した)に適合させるために、馴化期間を試験期間と類似の条件下で行った。馴化期間についてのトライアル間の間隔は1時間であった。
実験期間:各実験期間は2時間の試験間(維持)間隔で分けられた初回および試験トライアルから成った。
初回トライアル。成熟動物を、試験ケージに、試験1時間前に独立して入れた。試験のために、若いラットをケージに入れ、成熟ラットによる社会調査を、累積的に4分測定した。嗅ぐ動作および体の一部の毛づくろい、肛門生殖器を嗅ぐ動作および後追い(close following)を採点した。行動記録を、デジタルビデオカメラで記録し、直接デジタルビデオディスク(dvd)に保存することにより得た。2時間の維持時間中、動物は1匹でケージに入れたままであった。若いラットは、同様に成熟ラットの試験前独立して1時間ケージに入れ、2時間の維持時間の間、1匹でケージに入れた。
試験トライアル。再試験を、2時間後、初回トライアルと実質的に同じ実験条件下で行った。本試験を見知らぬ若いラットで行い、故に各成熟ラットは、先に遭遇していない若いラットに遭遇した。
2回目に遭遇している間、成熟ラットが先に若いラットに遭遇したときよりも調査に費やす時間が著しく短いときに、若いラットの認識がされているとみなした。1回目および2回目の暴露中の調査に費やす時間の間に差がないことは、成熟ラットが知っている若いラットを認識できないことを示す。
さらに、認識比(RR):T/(T+T)(TおよびTは、1回目(初回)および2回目(試験)トライアル各々の若い動物の調査に費やした時間である)(Kogan et al., 2000)を社会認識記憶の指標として指標した。成熟ラットが若いラットに対して攻撃的、受動的(遭遇している時間全体の25%未満)または性的行動を示すとき、そのラットは採点しなかった。
データ分析および統計学的計算
得られたデータ(TおよびT)を、コンピュータ処理データベース(GRAPH PAD version 4)に注意深く入力した。下記パラメータを分析した:
1)TおよびTの時間:
a)同じ動物のTおよびTの有意差(対応t検定分析を使用して得た)を社会記憶の存在の指標として取った。
b)異なる処置群のTの有意差(2群の比較の場合は非対応t検定、または3群以上の比較の場合は、一元配置ANOVA、その後Neuman-Keuls post-hoc検定により得た)を、処置が動物の調査行動に影響する指標として取った。
2)社会認識比(RR):これはT/(T+T)(TおよびTは各々1回目および2回目の会合中に若い動物の調査に費やした時間である)として概算した。RRの評価は、異なる試験で得たデータの標準化の一方法として有用であった。
a)異なる処置群間のRRと理論値0.5の間の有意差(1サンプルt検定により得た)を社会記憶の存在の指標として取った。
b)異なる処置群のRPの有意差(2群の比較の場合は非対応t検定、または3群以上の比較の場合は、一元配置ANOVA、その後Neuman-Keuls post-hoc検定により得た)を処置が社会記憶に影響する指標として取った。
c)動物を知った若いラットに合わせたときに対する新しい若いラットに合わせたときの異なる処置群のRRの有意差(非対応t検定により得た)を、知った若いラットで見られる効果が認識に特異的であるとの指標として取った。
試験ペプチド(ABLおよびEFL)または媒体(水)を4mg/kg(2mg/ml)の濃度で皮下投与した。
SRTの結果を図6に示す。CDLおよびEFLペプチドは、同じ動物のTおよびTの間の有意差を示し(対応t検定分析を使用して得た)、社会記憶の存在を示す。
統計学的分析
得られた結果を算数上の平均±SEMとして示した。ペプチド効果の統計学的評価を、異なる3群のラットの、CFCまたはSRTにおける一元配置ANOVA、その後、ANOVAの値がP≦0.05に到達したとき、最小有意差(LSD)検定を使用して行った。反復したANOVAを、反復測定として既知の若いラット(JR)対見知らぬJR会合後のラット群の結果の比較により、STR法の特異性の評価に使用した。CFCまたは社会記憶に対するペプチド効果の評価を、一元配置ANOVAを使用して行った。
図1Aは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロン(CGN)の神経突起伸長に対するCDL(配列番号1)、ABL(配列番号2)およびEFL(配列番号5)ペプチドの効果を示す。本CDLおよびEFLペプチドは、CGNからの神経突起伸長を刺激する。B. EFLにより刺激される神経突起伸長は、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)の阻害剤であるSU5402により阻害される。4個の独立した実験からの結果を、全例で、未処置コントロール細胞を100%と設定して、パーセント±SEMとして示す。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、コントロールとの比較。対応スチューデントのt検定。実験のために、7日齢ラットからのCGNを、本ペプチドで24時間処理した。培養物を4%パラホルムアルデヒドで固定し、続いて1%BSAでブロックし、次いでウサギ抗ラットGAP−43一次抗体、その後二次Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ウサギ抗体で免疫染色した。
図2Aは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロンの生存に対するデンドリマー形態のCDL(配列番号1)(CDLd)およびABL(配列番号2)(ABLd)ペプチドの効果を示す。本ペプチドの効果を、グリア由来神経栄養因子(GDNF)およびデンドリマー形態のC3ペプチド(C3d)の効果と比較する。Bは、培養中のラット小脳顆粒状ニューロンの生存に対するEFL(配列番号5)デンドリマー(EFLd)の効果を証明する。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、コントロールとの比較。対応スチューデントのt検定。
図3は、培地中低濃度のKCl(5mM)および高濃度のKCl(40mM)での、ラット小脳顆粒状ニューロンの培養におけるカスパーゼ3様活性に対する単量体バージョンのCDL(配列番号1)(A)(CDループ)およびEFL(配列番号5)(B)(EFループ)の効果を示す。本ペプチドの効果を、高濃度のKClの効果と比較する。*P<0.05、**P<0.01、対応スチューデントのt検定。
図4は、表面プラズモン共鳴(SPR)分析の手段による、“鎖−ループ−鎖”構造を有するNCAM Fn−III,1モジュールの4個の異なるフラグメントの試験した組み換えFGFR1への結合を証明する。本結合は、センサーチップと固定化FGFR1モジュールとの結合、およびブランクセンサーチップ(非特異的結合)の間の応答差(Resp. Diff.)として示す。略語:AB − A鎖−ループ−B鎖(配列番号2のABLペプチドに対応);CD − C鎖−ループ−D鎖(配列番号1のCDLペプチドに対応);EF − E鎖−ループ−F鎖(配列番号5のEFLペプチドに対応);BC − NCAMのF3,1モジュールのB鎖−ループ−C鎖;DE − NCAMのF3,1モジュールのD鎖−ループ−E鎖;FG − NCAMのF3,1モジュールのF鎖−ループ−G鎖。
図5は、ABL、CDLおよびEFLペプチドによる、FGFR−1リン酸化の定量的分析の結果を証明する。少なくとも4個の独立した実験から得られた結果を、FGFR1リン酸化パーセント±SEMとして示す。実験のために、C末端StrepIIタグを含むFGFRでトンラスフェクトしたTREX−293細胞を、異なる濃度の本ペプチドで30分刺激した。刺激後、活性化FGFRを、抗ホスホチロシン抗体により免疫精製し、次いでStrepIIタグに対して抗体をウェスタン・ブロットすることにより分析した。処置細胞からのデータを、未処置細胞(コントロール、100%と設定)の結果と比較する。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、対応スチューデントのt検定。
図6は、ラット社会的行動に対するインビボでのCDL(Cdl)、およびEFLペプチドの投与の効果を示す(社会認識試験):A 最初の会合(T)およびペプチド/媒体投与1時間後の2回目の会合(T)の、社会調査に費やす時間。8−9匹の動物の結果をパーセント±SEMとして示す。対応t検定(*P<0.05および***P<0.001);B 最初の会合(T)およびペプチド/媒体投与24時間後2回目の会合(T)の、社会調査に費やす時間。9匹の動物の結果をパーセント±SEMとして示す。対応t検定(*P<0.05)。

Claims (78)

  1. 式(I)
    K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
    〔式中、
    は任意の疎水性アミノ酸残基であり、
    はK、RまたはYであり、そして
    、xおよびxは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
    のアミノ酸モチーフを含む、11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列。
  2. がA、F、I、L、P、VまたはWから選択される、請求項1記載のペプチド配列。
  3. がA、VまたはWから選択される、請求項2記載のペプチド配列。
  4. アミノ酸モチーフが
    K/R−V/A−D/E/N/Q−W−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
    〔式中、x、x、xおよびxが請求項1で定義の通りである。〕
    である、請求項3記載のペプチド配列。
  5. がA、VまたはPから選択される、請求項2記載のペプチド配列。
  6. アミノ酸モチーフが
    K/R−V/A−D/E/N/Q−P−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
    〔式中、x、x、xおよびxが請求項1で定義の通りである。〕
    である、請求項5記載のペプチド配列。
  7. 、xおよびxが独立してA、G、L、S、T、またはEから選択される、請求項1から6のいずれかに記載のペプチド配列。
  8. ペプチド配列が11〜14個のアミノ酸残基長を有する、請求項7記載のペプチド配列。
  9. ペプチド配列が15〜18個のアミノ酸残基長を有する、請求項7記載のペプチド配列。
  10. ペプチド配列がKAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)である、請求項9記載のペプチド配列。
  11. ペプチド配列がSIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)である、請求項9記載のペプチド配列。
  12. ペプチド配列がSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)である、請求項9記載のペプチド配列。
  13. 該ペプチド配列が、該個々のペプチド配列の2個またはそれ以上のコピーを含む、多量体化合物として構築(formulated)される、請求項1から12のいずれかに記載のペプチド配列。
  14. 多量体化合物が、請求項1から12のいずれかに記載の個々のペプチド配列の2個の同じコピーを含む二量体である、請求項13記載のペプチド配列。
  15. 多量体化合物が、請求項1から12のいずれかに記載の2個の異なるペプチド配列を含む二量体である、請求項13記載のペプチド配列。
  16. 多量体化合物が、請求項1から12のいずれかに記載の配列と、EVYVVAENQQGKSKA(配列番号4)またはTIMGLKPETR/TYAVR(配列番号5)から選択される配列を含む二量体である、請求項13記載のペプチド配列。
  17. 多量体化合物が、3個のリシン残基の骨格構造に連結した請求項1から12のいずれかに記載のペプチド配列の4個の同じコピーを含むデンドリマーである、請求項13記載のペプチド配列。
  18. ペプチドフラグメントが、線維芽細胞増殖因子受容体−1(FGFR−1)、線維芽細胞増殖因子受容体−2(FGFR−2)、線維芽細胞増殖因子受容体−3(FGFR−3)、線維芽細胞増殖因子受容体−4(FGFR−4)および線維芽細胞増殖因子受容体−5(FGFR−5)を含む線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーの受容体と結合し、活性化できる、請求項1から17のいずれかに記載のペプチド配列。
  19. 受容体がFGFR−1である、請求項18記載のペプチド配列。
  20. 該配列が学習および記憶を刺激できる、請求項1から19のいずれかに記載のペプチド配列。
  21. 記憶および学習の刺激用医薬製造のための、式(I)
    K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
    〔式中、
    は任意の疎水性アミノ酸残基であり、
    はK、RまたはYであり、そして
    、xおよびxは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
    のアミノ酸モチーフを含む11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列の使用。
  22. がA、F、I、L、P、VまたはWから選択される、請求項21記載の使用。
  23. がA、VまたはWから選択される、請求項22記載の使用。
  24. アミノ酸モチーフが
    K/R−V/A−D/E/N/Q−W−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
    〔式中、x、x、xおよびxが請求項1で定義の通りである。〕
    である、請求項25記載の使用。
  25. がA、VまたはPから選択される、請求項22記載の使用。
  26. アミノ酸モチーフが
    K/R−V/A−D/E/N/Q−P−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−V/A
    〔式中、x、x、xおよびxが請求項1で定義の通りである。〕
    である、請求項25記載の使用。
  27. 、xおよびxがA、G、L、S、T、またはEから独立して選択される、請求項21から26のいずれかに記載の使用。
  28. ペプチド配列が11〜14個のアミノ酸残基長を有する、請求項27記載の使用。
  29. ペプチド配列が15〜18個のアミノ酸残基長を有する、請求項27記載の使用。
  30. ペプチド配列がKAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)である、請求項29記載の使用。
  31. ペプチド配列がSIDRVEPYSSTAQVQFD(配列番号2)である、請求項29記載の使用。
  32. ペプチド配列がSIDRVNPYSSTAQVQFD(配列番号3)である、請求項29記載の使用。
  33. 請求項21から32のいずれかに記載のペプチド配列が、該個々のペプチド配列の2個またはそれ以上のコピーを含む、多量体化合物として構築される、請求項21から32のいずれかに記載の使用。
  34. 多量体化合物が、請求項21から32のいずれかに記載の個々のペプチド配列の2個の同じコピーを含む二量体である、請求項33記載の使用。
  35. 多量体化合物が、請求項21から32のいずれかに記載の2個の異なるペプチド配列を含む二量体である、請求項33記載の使用。
  36. 多量体化合物が、請求項21から32のいずれかに記載の配列と、TIMGLKPETR/TYAVR(配列番号4)またはEVYVVAENQQGKSKA(配列番号5)から選択される配列を含む二量体である、請求項33記載の使用。
  37. 多量体化合物が、3個のリシン残基の骨格構造に連結した請求項21から32のいずれかに記載のペプチド配列の4個の同じコピーを含むデンドリマーである、請求項33記載の使用。
  38. ペプチドフラグメントが、線維芽細胞増殖因子受容体−1(FGFR−1)、線維芽細胞増殖因子受容体−2(FGFR−2)、線維芽細胞増殖因子受容体−3(FGFR−3)、線維芽細胞増殖因子受容体−4(FGFR−4)および線維芽細胞増殖因子受容体−5(FGFR−5)を含む線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーの受容体と結合し、活性化できる、請求項21から37のいずれかに記載の使用。
  39. 受容体がFGFR−1である、請求項38記載の使用。
  40. 式(II)
    K/R−x−D/E/N/Q−x−x−S−x−x−x−D/E/N/Q−x
    〔式中、
    はP以外の任意の疎水性アミノ酸残基であり、
    はK、RまたはYであり、そして
    、x、xは独立して任意のアミノ酸残基である。〕
    のアミノ酸配列を含む、11〜18個のアミノ酸残基のペプチド配列。
  41. がA、VまたはWである、請求項40記載のペプチド配列。
  42. がKまたはRである、請求項40記載のペプチド配列。
  43. 、xおよびxが独立してG、V、L、またはEから選択される、請求項40記載のペプチド配列。
  44. がLまたはVであり、xがGであり、そしてxがEである、請求項43記載のペプチド配列。
  45. 該配列が、線維芽細胞増殖因子受容体−1(FGFR−1)、線維芽細胞増殖因子受容体−2(FGFR−2)、線維芽細胞増殖因子受容体−3(FGFR−3)、線維芽細胞増殖因子受容体−4(FGFR−4)および線維芽細胞増殖因子受容体−5(FGFR−5)を含む線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリーの受容体と結合し、活性化できる、請求項40から44のいずれかに記載のペプチド配列。
  46. 受容体がFGFR−1である、請求項45記載のペプチド配列。
  47. 配列がKAEWKSLGEEAWHSK(配列番号1)、またはフラグメント、または該配列の変異体もしくは相同体である、請求項46記載のペプチド配列。
  48. 該ペプチド配列が、ニューロンの分化、ニューロンの生存および/またはニューロンの可塑性の刺激が可能である、請求項40から47のいずれかに記載のペプチド配列。
  49. ニューロンの分化が、神経前駆細胞の分化ならびに/または神経突起伸長および/もしくは該突起の分枝のようなニューロンの分化である、請求項48記載のペプチド配列。
  50. 相同体が、配列番号1の配列と少なくとも40%同一性を有し、かつ配列番号1の配列の少なくとも1個の機能的活動(該機能的活動は請求項45、48または49に定義の通りである)が可能であるペプチド配列である、請求項47記載のペプチド配列。
  51. フラグメントが、請求項45、48または49に定義の通りの配列番号1の配列の少なくとも1個の機能的活動が可能である配列番号1の配列の少なくとも3個の連続アミノ酸残基のペプチド配列である、請求項47記載のペプチド配列。
  52. 変異体が、配列番号1の配列と少なくとも60%同一性を有し、かつ配列番号1の配列の少なくとも1個の機能的活動(該機能的活動は請求項45、48または49に定義の通りである)が可能であるペプチド配列である、請求項47記載のペプチド配列。
  53. 該配列が学習および/または記憶を刺激できる、請求項40から52のいずれかに記載の単離されたペプチド配列。
  54. 医薬の製造のための、請求項40から53のいずれかに記載の化合物の使用。
  55. 該医薬が、神経細胞分化、神経細胞生存、学習および記憶の刺激ならびに/またはFGFRファミリー受容体活性の調整が処置に有益である状態または疾患の処置用である、請求項54記載の使用。
  56. 状態または疾患が、中枢および末梢神経系の状態または疾患である、請求項55記載の使用。
  57. 状態または疾患が、術後神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維のミエリン形成障害、卒中後のような虚血後損傷、真性糖尿病に関連する神経変性、概日時計または神経−筋肉伝達に影響する障害から選択される、請求項56記載の使用。
  58. 医薬が、臓器移植後、または遺伝性もしくは外傷性萎縮性筋障害のような神経−筋肉結合の機能障害を伴う状態を含む筋肉の状態または疾患から選択される状態または疾患の処置用である、請求項54記載の使用。
  59. 医薬が、血管新生(neoagiogenesis)、組織リモデリングおよび/または細胞の増加した運動性と関連する状態または疾患の処置用である、請求項54記載の使用。
  60. 疾患が癌である、請求項59記載の使用。
  61. 癌が、血管新生を伴う全ての癌である、請求項60記載の使用。
  62. 癌が神経系の癌である、請求項60記載の使用。
  63. 状態または疾患が学習能力障害および/または記憶障害である、請求項56記載の使用。
  64. 状態または疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病または脳血管性認知症のような認知症である、請求項56または63記載の使用。
  65. 状態または疾患が、思考および/または気分障害、双極性(BPD)、遺伝的に関連した単極性情動障害を含む神経精神医学的障害、妄想障害、パラフレニー、妄想性精神病、統合失調症、統合失調型障害、分裂情動性障害、分裂情動性の双極性および遺伝的に関連した単極性情動障害、心因性精神病、緊張病、周期的な双極性および遺伝的に関連した単極性情動障害、サイクロイド精神病、分裂性人格障害、妄想性人格障害、双極性および遺伝的に関連した単極性情動障害に関連した情動障害および単極性情動障害のサブタイプのような精神疾患である、請求項56記載の使用。
  66. 医薬が、アルコール消費による身体の損傷に関連する状態または疾患の処置用である、請求項54記載の使用。
  67. 医薬がプリオン病の処置用である、請求項54記載の使用。
  68. 請求項40から53のいずれかに記載のペプチド配列を含む、医薬。
  69. 請求項1から20のいずれかに記載のペプチド配列および/または請求項40から53のいずれかに記載のペプチド配列を含む、学習および/または記憶刺激用医薬。
  70. 有効量の請求項68記載の医薬を含む、医薬組成物。
  71. 有効量の請求項69記載の医薬を含む、医薬組成物。
  72. 学習能力障害および/または記憶障害に関連する状態または疾患の処置法であって、それを必要とする個体に、有効量の請求項1から20のいずれかに記載のペプチド配列および/または請求項40から53のいずれかに記載のペプチド配列、請求項68または69に記載の医薬、または請求項70または71に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
  73. 神経細胞分化、神経細胞生存、神経細胞可塑性の刺激および/またはFGFR活性の調整が処置に有益である状態の処置法であって、請求項40から53のいずれかに記載の個々のペプチド配列、請求項68記載の医薬または請求項71記載の医薬組成物の使用を含む、方法。
  74. 抗体の製造のための、請求項1から20および/または40から53のいずれかに記載のペプチド配列の使用。
  75. 請求項1から20および/または40から53のいずれかに記載のペプチド配列を含むエピトープを認識し、結合できる抗体。
  76. NCAMおよび/またはFGFRが介在する生物学的活性を調整できる、請求項75記載の抗体。
  77. 医薬の製造のための、請求項75および/または76の抗体の使用。
  78. 請求項75または76に記載の抗体を含む、医薬組成物。
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