JP2015143756A - 光学シートおよび発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光の取り出し効率の高い光学シートおよび発光装置を提供する。
【解決手段】光学シートは、入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する少なくとも1つのコアと、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、前記少なくとも1つのコアを覆う外殻部とを有し、前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記コアの長さの平均値をwとするとき、前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている。
【選択図】図50B
【解決手段】光学シートは、入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する少なくとも1つのコアと、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、前記少なくとも1つのコアを覆う外殻部とを有し、前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記コアの長さの平均値をwとするとき、前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている。
【選択図】図50B
Description
本発明は、光学シートおよびそれを用いた発光装置に関する。
図1は、一般的な有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)を用いた発光装置の断面構成と光の伝搬の様子を示している。基板101の上に電極102、発光層103、透明電極104がこの順に積層され、透明電極104の上には透明基板105が載せられている。電極102、透明電極104の間に電圧を印加することで、発光層103の内部の点Sで発光し、この光は直接、もしくは電極102において反射した後、透明電極104を透過し、透明基板105の表面上の点Pに表面の面法線に対して角度θで入射し、この点において屈折して空気層106側に出射する。
透明基板105の屈折率をn' 1とすると、入射角θが臨界角θc=sin-1(1/n' 1)より大きくなった時、全反射が発生する。例えば、θc以上の角度で透明基板105の表面上の点Qに入射する光は全反射し、空気層106側に出射することはない。
図2(a),(b)は上記発光装置において透明基板105が多層構造を有していると仮定した場合における光取り出し効率を説明する説明図である。図2(a)において、発光層103の屈折率をn' k、空気層106の屈折率をn0、発光層103と空気層106の間に介在する複数の透明層の屈折率を発光層103に近い側からn' k-1、n' k-2、…、n' 1とし、発光層3内の点Sから発光する光の伝搬方位(屈折面の面法線となす角)をθ' k、各屈折面での屈折角を順にθ' k-1、θ' k-2、…、θ' 1、θ0とすると、スネルの法則より次式が成り立つ。
n' k×sinθ' k=n' k-1×sinθ' k-1=…=n' 1×sinθ' 1=n0×sinθ0 (式1)
従って、次式が成り立つ。
sinθ' k=sinθ0×n0/n' k (式2)
n' k×sinθ' k=n' k-1×sinθ' k-1=…=n' 1×sinθ' 1=n0×sinθ0 (式1)
従って、次式が成り立つ。
sinθ' k=sinθ0×n0/n' k (式2)
結局、(式2)は発光層103が空気層106に直接接触する場合のスネルの法則に他ならず、間に介在する透明層の屈折率には関係せずに、θ' k≧θc=sin-1(n0/n' k)で全反射が発生することを表している。
図2(b)は、発光層103から取り出せる光の範囲を模式的に示したものである。取り出せる光は、発光点Sを頂点、臨界角θcの2倍を頂角とし、屈折面の面法線に沿ったz軸を中心軸とする2対の円錐体107、107'の内部に含まれる。点Sからの発光が、全方位に等強度の光を放射するものとし、屈折面での透過率が臨界角以内の入射角で100%とすれば、発光層103からの取り出し効率ηは、球面108の表面積に対する、円錐体107、107'により球面108を切り取った面積の比に等しく、次式で与えられる。
η=1−cosθc (式3)
η=1−cosθc (式3)
なお、実際の取り出し効率ηは臨界角以内の透過率が100%とはならないので、1−cosθcよりも小さくなる。また、発光素子としての全効率は、発光層の発光効率を上記取り出し効率ηに乗じた値となる。
上記のメカニズムに対して、特許文献1には、有機EL素子において、透明基板から大気へと光が出ていくときの透明基板表面での全反射を抑制する目的で、基板界面や内部の面あるいは反射面に回折格子を形成し、光取り出し面に対する光の入射角を変化させることにより光の取り出し効率を向上させるという原理に基づくものと記載されている発明が開示されている。
また、特許文献2には、光の取り出し効率のよい平面発光装置を提供するため、有機EL素子において透明基板の表面に透明の突起物を複数形成して透明基板と空気との界面における光の反射を防止することができると記載されている。
しかしながら、上述のような従来の発光装置において以下の問題があった。
図1に示す従来の有機EL素子を用いた発光装置では、発光層103からの光取り出し効率ηが最大でも1−cosθcを超えることがなく、発光層103の屈折率が決まれば、光取り出し効率の最大値が一義的に制限されていた。例えば、(式2)に於いてn0=1.0、n' k=1.457とすると、臨界角θc=sin-1(n0/n' k)=43.34度であり、光取り出し効率の最大値は1−cosθc=0.273程度と小さく、n' k=1.70では0.191程度まで下がる。
また、特許文献1に開示された技術では、確かに全反射になるべき光を取り出すことができるが、その逆もある。すなわち、回折格子層が無いと仮定したときに発光層内の点から出射した光が、透明基板の屈折面(出射面)において臨界角より小さい角度で入射して透過、屈折する場合があるが、回折格子層がありそこで回折するときは、屈折面に対する入射角が臨界角を超え、全反射する場合がある。従って、特許文献1に開示された技術は光取り出し効率の向上を保証するものではない。さらに特許文献1に開示された技術では、全ての光線に一律に所定量の方位がシフトした回折光が発生する。このような回折光を含んだ光は、方位によって光強度に分布があり、所定量のシフト幅が出射光の波長に依存することから、方位による色のアンバランスが存在する。
また、特許文献1に開示された発光装置では、外界(空気層側)から入射する光は透明基板の表面を規則的に反射し、発光層から取り出される光にとって外乱(いわゆる映り込み)となるため、透明基板の表面には反射防止膜等の光学処理が必要であり、製品コストを押し上げていた。
一方、特許文献2に開示された発光装置は屈折面における光の反射防止を目的にしたもので、この構造による光取り出し効率の改善は1、2割程度と小さいものに収まる。
本発明の実施形態は、臨界角以上の透明基板への入射光も出射させて光取り出し効率の向上を実現する。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る光学シートは、入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する少なくとも1つのコアと、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、前記少なくとも1つのコアを覆う外殻部とを有し、前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記コアの長さの平均値をwとするとき、前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている。
本発明の他の態様に係る光学シートは、入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する粒子と、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する粒子とが結合した構造を有し、前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記第1の屈折率を有する粒子の長さの平均値をwとするとき、前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている。
本発明の他の態様に係る光学シートは、入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、前記光拡散層は、各々が第1の屈折率を有する複数の粒子と、前記第1の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質と、を有し、前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質中において、他の粒子と接触しないように配置されており、前記光拡散層に平行な1つの方向についての各粒子の長さの平均値をwとするとき、前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている。
以上より、臨界角を超えた光の取り出しを繰り返し行えるため、光取り出し効率の改善が可能となる。
本願発明の実施形態を説明する前に、特許文献1や特許文献2等の先行例を踏まえて、本願発明に至るまでの検討経過を説明する。
図3は屈折面(透明層表面と空気層との界面)での透過率を説明する説明図である。屈折率1.5の透明層107の内部から紙面方向に沿って透明層107の屈折面107aに角度θで入射し、空気側(屈折率1.0)に屈折する光の透過率は光の偏光状態に関係する。通常は、屈折面107a近傍での面法線に沿った屈折率分布が図3(a)に示すようなステップ状であるので、P偏光(電界ベクトルが紙面に平行な振動成分)は曲線108a、S偏光(電界ベクトルが紙面に直交する振動成分)は曲線108bの透過率特性を示す。いずれも入射角が臨界角(=41.8度)以下での振る舞いは異なるが、臨界角を超えるとゼロになる。
一方、透明層107の表層部分を多層構造として屈折率分布が図3(b)に示すようなテーパ状になると仮定すると、P偏光は曲線108A、S偏光は曲線108Bの透過率特性を示す。いずれも臨界角を超えるとゼロになることは変わらないが、臨界角以下での透過率が100%に近づき、臨界角を境にしたステップ関数の形状に近づく。図3(b)では屈折率が1.5から1.0まで0.01の偏差をなす厚さ0.01μmの膜を50層重ねた構造として計算したが、厚さ方向の屈折率変化の勾配が緩やかな程、P偏光、S偏光の差がなくなり、いずれも入射角に対する透過率のグラフがステップ関数に近づく結果が得られる。
全反射しないようにするためには、屈折面に入射する光の入射角を臨界角以下にする工夫が必要である。そのような工夫の一つとして、特許文献1を例にとり、図4に示す、透明基板205と透明電極204との界面に回折格子209を設けた有機EL素子を用いた発光装置の検討を行った。
図4(a)に示すように基板201の上に電極202、発光層203、透明電極204、回折格子層209をこの順に積層し、回折格子層209の上には透明基板205を設けている。回折格子層209は透明基板205との間でx方向、y方向ともピッチΛの凹凸周期構造をなし、凸部の形状は図4(b)に示すような幅wの正方形であって、この凸部を千鳥格子状に並べている。電極202、透明電極204の間に電圧を印加することで、発光層203の内部の点Sで発光し、この光は直接、もしくは電極202において反射した後、透明電極204を透過し、回折格子層209を透過し、回折する。例えば、点Sを出射する光210aが回折格子層209において回折せず直進すると仮定すると、光210bのように透明基板205の屈折面205aに臨界角以上の角度で入射して全反射するが、実際には回折格子層209において回折するので、光210cのように屈折面205aに対する入射角が臨界角よりも小さくなり、これを透過できる。
上記の回折格子による回折方位を図5に従って説明する。屈折率nAの透明層207の内部から紙面方向に沿って透明層207の屈折面207a上の点Oに角度θで入射し、屈折率nBの透明層206側に回折する波長λの光を考える。屈折面207aには紙面に沿ってピッチΛをなす回折格子が形成されている。紙面上に点Oを中心にする半径nAの円211と半径nBの円212を描く。入射ベクトル210i(円211の円周上を始点として角度θで点Oに向かうベクトル)の屈折面207aへの正射影ベクトル(垂線の足Aから点Oに向かうベクトル)を210Iとし、点Oを始点として円212の円周上に終点をもつベクトル210rを、その正射影ベクトル210Rがベクトル210Iと同一になるように描く。垂線の足Cを始点として、大きさqλ/Λのベクトル(格子ベクトル)を考える。ただし、qは回折次数(整数)である。図ではq=1の場合のベクトル210Dを描いており、その終点Bを垂線の足とし、点Oを始点として円212の円周上に終点をもつベクトル210dを描く。作図の仕方から、ベクトル210rの方位角φ(屈折面法線となす角)は次式で与えられる。
nB×sinφ=nA×sinθ (式4)
nB×sinφ=nA×sinθ (式4)
これはスネルの法則そのものである。一方、回折光線の方位を与えるベクトル210dの方位角φ'(屈折面法線となす角)は次式で与えられる。
nB×sinφ'=nA×sinθ−qλ/Λ (式5)
nB×sinφ'=nA×sinθ−qλ/Λ (式5)
ただし、図5の場合の角φ'はz軸(点Oを通る屈折面法線)を跨いでいるのでマイナスで定義される。
すなわち、回折光線は屈折光線からqλ/Λの分だけ方位がずれることになる。図4において、回折しないと仮定した光線210bは屈折光線に相当し、回折する光線210cは光線210bからqλ/Λの分だけ方位がずれることで、屈折面205aでの全反射を免れていることになる。従って、全反射になるべき光を取り出すことができるので、回折格子層を持たない有機EL発光装置に比べ、光取り出し効率の向上が見込めるようにも考えられる。
しかしながら、図4(a)において点Sを出射する光210Aを考えた場合、光210Aが回折格子層209において回折せず直進すると仮定すると光210Bのように透明基板205の屈折面205aに臨界角以下の角度で入射して屈折面205aを屈折して透過していくが、実際には回折格子層209において回折するので、光210Cのように屈折面205aに対する入射角が臨界角よりも大きくなり屈折面205aに臨界角以上の角度で入射して全反射してしまう。このように、回折格子層209を設けても光取り出し効率の向上は必ずしも保証されるわけではない。
また、図4に示す有機EL素子を用いた発光装置では、全ての光線に関して一律にqλ/Λの分だけ方位がシフトした回折光が発生する。このような回折光を含んだ光は方位によって光強度に分布があり、シフト幅qλ/Λが出射光の波長λに依存するため、光が出射する方位によって色のアンバランスが存在する。即ち、見る方向によって異なる色の光が見えることになり、ディスプレイ用途にはもちろん、光源としても不都合である。
次に特許文献2を例にとり、図6に示す、透明基板305の表面に突起物315を設けた有機EL素子を用いた発光装置について検討を行った。図6(a)に示すように基板301の上に電極302、発光層303、透明電極304、透明基板305をこの順に積層し、透明基板305の表面305aに複数の突起物315を形成している。突起物315は幅w、高さhの四角柱形状のものを図6(b)に示すように透明基板表面305a上でランダムな位置に配置している。wの大きさは0.4〜20μm、hの大きさは0.4〜10μmの範囲にあり、このような突起物315を5000〜1000000個/mm2の範囲の密度で形成している。電極302、透明電極304の間に電圧を印加することで、発光層303の内部の点Sで発光し、この光310dは直接、もしくは電極302を反射した後、透明電極304を透過し、その一部が突起物315を通じて310fのように外界に取り出される。実際の突起物315はサイドエッチングにより先端に行くほど細くなるよう加工できるし、サイドエッチングが無くても実効的な屈折率が透明基板305と空気との中間付近の値を取るので、等価的に屈折率分布を緩やかに変化させられる。従って図3(b)に示す屈折率分布に近い分布となるため、突起物315により310eで示されるような光の反射を一部防止することができ、結果として光の取り出し効率を向上させることができる。また突起物315のサイズを波長以上に設定しても、突起物315がランダムに並んでいるので取り出された光の干渉を抑えることができる。
しかしながら、図6に示す構造の発光装置は、突起物の効果が特許文献2の中で主張されている反射防止にあるとすると、図3(c)の曲線108a,108bと曲線108A,108Bとの比較からわかるように、透過率の向上は臨界角以下の光によるものに限られ、光の取り出し効率の改善は1,2割程度に止まり、大きな改善は見込めない。
以上のような検討を行い、これらに基づいて本願発明者らは屈折面での全反射される光量を減らし、取り出せる光量を如何にして増すかについてさらに検討を重ねていった。さらなる検討の手始めとして屈折面での光の境界条件を検討した。
図7は屈折面に於ける光の場の境界条件を模式的に示しており、幅Wの光が屈折面Tに入射する場合を考えている。マックスウェルの方程式から、電界ベクトルまたは磁界ベクトルに関して、屈折面Tを挟んで周回する経路Aに沿った積分はゼロである。ただし周回路内部に電荷や光源がなく、屈折面Tに沿った電界ベクトルまたは磁界ベクトルの強度、位相が連続していることが前提条件である。
図7(a)のように幅Wが十分大きい場合には、屈折面に直交する幅tを屈折面に沿った幅sに比べ無視できるほど小さくでき、周回積分の内、屈折面に沿った成分しか残らない。この関係から、屈折面を挟んで電界ベクトルまたは磁界ベクトルが連続することが求められる。この連続性の関係を利用して導出されるのがフレネルの式であり、この式により反射、屈折の法則や全反射の現象等が完全に解き明かされる。
図7(b)のように、光の幅Wが波長の数十倍以下まで小さくなると幅tは無視できなくなる。この時、周回積分AをBとCに分割すると(図7(c)参照)、このうち周回積分Bは光束内に含まれるのでゼロになる。残った周回積分Cは光束外での電界ベクトルまたは磁界ベクトルがゼロなので、光束内にある経路PQの積分値だけが残る(図7(d)参照)。従って周回積分Cはゼロではなくなり、計算上周回路内で光が発光することと等価になる。さらに、光の幅Wが波長の1/10程度まで小さくなると、図7(e)に示すように、周回積分CとC'が近接し経路PQとQ'P'が重なるので、CとC'を合わせた周回積分がゼロになり、周回路内で光が発光することはなくなる。
一方、図7(f)のように、πだけ位相差がある光が屈折面に沿って並ぶ場合、これらの光束をまたがる周回積分Aを考える。この場合も光の幅Wが波長の数十倍以下まで小さくなると幅tは無視できなくなる。この時、周回積分AをBとCとB'に分割すると(図7(g)参照)、このうち周回積分B、B'は光束内に含まれるのでゼロになる。残った周回積分Cは屈折面に沿った成分が無視でき、2つの光束の境界に沿った経路PQとQ'P'の積分値だけが残る(図7(h)参照)。光束の位相がπの場の経路Q'P'での積分は光束の位相が0の場の経路P'Q'での積分に等しいので、周回積分Cは経路PQでの積分の2倍の大きさになり、計算上周回路内で光が発光することと等価になる。従って、幅の狭い光だけでなく狭い幅を介して位相が異なる光が並ぶ場合でも幅の境界付近で光が発生する(実際に発光するのではなく、実効的に発光と同じ振る舞いする現象であり、回折理論の成立前にヤングが提唱した境界回折という現象に似ているので境界回折効果と呼ぶ)。
屈折面Tにおいてどのような入射条件であろうとも屈折面上で発光があると、その光は屈折面を挟んだ両方の媒質内に伝搬する。すなわち、臨界角以上の入射光であっても、計算上屈折面で発光が生じるようにすれば全反射しないで透過光が現れると考えられる。そこで、本願発明者らはこのような考察結果から、臨界角を超えても光が透過する現象を実際に生じさせるための屈折面の構造を以下のように検討した。
境界回折効果が強く出る例として図8に示すように、発光体に載せられた透明基板の空気との境界面に(a)ピンホールを設けそれ以外は遮光してピンホール光(幅wの白い四角内のみに光が存在)としたものと、(b)幅wで仕切られた碁盤の目に180度の位相シフター18をランダムに配置したものとを取り上げた。なお最初はピンホールで検討を行ったが、ピンホールでは現実的な光の取り出しがほとんどできないので、ピンホールと同じ光取り出し特性を示すと考えたランダム配置の位相シフターも検討した。
図9は図8で示した構造での、屈折面における透過率tの入射角依存性を示す説明図であり、光の波長を0.635μmとし、屈折率1.457の透明基板内で光量1の光が空気との境界面に角θ(屈折面法線となす角)で入射し、1回目でどれだけが空気側に出射するかを幅wをパラメータ(w=0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、2.0、4.0、20.0μm)にして示している(ピンホール光も180度位相シフターも全く同じ特性を示すので180度位相シフターのもので代用する)。図7(a)の条件に近いw=20μmの特性は、臨界角(43.34度)を超えると透過率がほぼゼロになる。wが0.4〜1.0μmまで小さくなると、図7(d)、(h)で説明した境界回折効果により、臨界角を超えても大きな透過率が存在する。更にwを小さくすると(w=0.1,0.2μm)、図7(e)で説明した様に、あらゆる入射角で透過率が0に近づいてくる。なお、図9はヘルムホルツの波動方程式(いわゆるスカラー波動方程式)に基づく解析結果なので、P偏光とS偏光の差は現れていない。
図10は、P偏光入射に於ける1回目の透過率tの入射角依存性を示す実験結果である。微細な位相シフター18の作製は実際には困難であるので、位相0度の部分を透過させ、位相180度の部分を遮光膜(Cr膜)で覆ったマスク(いわゆる幅wで仕切られた碁盤の目に遮光膜をランダムに配置したもので、ピンホール光をランダムに配置したものと同じ)で代用し、実験を行った。実際に作製したマスクパターンでは幅wが0.6、0.8、1.0、2.0、5.0μmであった。実験装置は図11に示すように、半導体レーザー(波長0.635μm)、三角プリズム58(BK7)、マスク基板59(合成石英、屈折率は1.457、裏面にマスクパターン形成)、集光レンズ系50、光検出器51からなり、屈折率1.51のマッチング液52を挟んで三角プリズムをマスク基板の表面に密着させ、三角プリズム側から方位角を計測しながらレーザー光を入射し、裏面側から漏れ出る透過光を集光レンズ系50で集め、光検出器51で透過光量を測定する。マスクの場合、全体の1/2の面積に相当する遮光膜の部分が遮光され、透過光量が位相シフターを用いたものに比べ1/2となるので、透過率tとしては遮光膜のない部分に入射する光量(全体の1/2の光量)で規格化する。実験結果は図9で示した解析結果と良く一致し、臨界角(43.34度)を超えても大きな透過率が存在し、wが小さいほどその傾向が強まることが分かる。
このような結果に基づいて、本願発明者らはさらに検討を進め、全反射を防いで光の取り出し効率を飛躍的に向上させる今までにない発光装置に想到するに至った。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を図12から図19(a),(b)に基づいて説明する。
第1の実施の形態を図12から図19(a),(b)に基づいて説明する。
図12は第1の実施の形態に於ける有機EL素子を用いた発光装置の断面構成と光の伝搬の様子を示している。基板1の上に電極2、発光層3、透明電極4がこの順に積層され、透明電極4の上には透明基板(透明な保護層)5が構成されている。基板1、電極2、発光層3、透明電極4が発光体を構成している。透明基板5の表面には微小領域によって区画化され微細な凹凸を有する表面構造13が形成されている。
電極2、透明電極4の間に電圧を印加することで、発光層3の内部の点Sで発光し、この光は直接、もしくは電極2を反射した後、透明電極4を透過し、透明基板5表面の表面構造13上の点Pに、表面の面法線に対して角度θで入射し、この点において表面構造13によって回折して空気層6側に出射する。
空気層6の屈折率をn0、透明基板5の屈折率をn1とすると、入射角θが臨界角θc=sin-1(n0/n1)より大きくなった時に全反射が発生するはずである。しかし、透明基板5表面に表面構造13があるため、点Qには臨界角θc以上の角度で光が入射しても全反射することなく回折し、空気層6側に出射する(1回目の光取り出し)。なお、点Qでは光の一部が反射するがその反射する成分は、電極2を反射した後、再び表面構造13上の点Rに入射し、その一部が空気層6側に出射し(2回目の光取り出し)、残りは反射する。以上の過程を無限に繰り返す。
ここで表面構造13がない従来の有機EL素子を用いた発光装置を考えると、臨界角以上の角度で透明基板と空気層との界面に透明基板側から入射した光は全反射し、それが電極で反射しても再び透明基板と空気層との界面においては再び臨界角以上で入射するので、2回目以降の光の取り出しは起こらず、この点で本実施の形態とは異なっている。
以下に本実施形態の特徴である表面構造13について詳しく説明をする。
図13は第1の実施の形態に於ける表面構造13のパターン図を示している。図13(a)の左が上面図であり、右は上面図のA−A断面図である。図13(a)に示すように、表面構造13は透明基板5の表面を幅w(境界幅と呼ぶ)の碁盤の目(正方形の微小領域δ)に隙間無く分割し、一つ一つの目(微小領域δ)が凸(図中の13a(微小領域δ1)、灰色の目)であるか、この凸に対して相対的に凹(図中の13b(微小領域δ2)、白の目)であるかを、比率を各50%としてランダムに割り当てたもので、図13(b)にw=0.4μmの場合の例を示している(黒が凸、白が凹に対応)。凸の突出高さは凹の底部から見てdである。即ち一つの微小領域δは別の複数の微小領域δによって隣接されているとともに囲繞されており、微小領域δ1は微小領域δ2よりも透明基板5の表面の上方へ突き出している。ここで微小領域δ1と微小領域δ2との、透明基板5の表面に垂直な方向に関する中間の位置に、透明基板5表面に平行な基準面を定めると、微小領域δ1は基準面からd/2だけ上方に突き出しており、微小領域δ2は基準面からd/2だけ下方に窪んでいる。あるいは、透明基板5の空気6との境界面には複数の窪み(白の部分)が存していて窪み以外の部分の上面は同一面上に存しており、窪みの深さはそれぞれ実質的に同じdであってこの窪みの底面を第1基準面とすると、第1基準面は1.5×1.5μm2以下の同じ面積を有した複数の微小領域δに分割されており、窪みの底面は微小領域δが2つ以上接続した形状若しくは微小領域δが1つのみである形状であり、窪みは第1基準面にランダムに配置されている、ともいえる。なお、第1基準面は、上記の基準面とは別の面である。
微小領域δのそれぞれが微小領域δ1または微小領域δ2である確率は、本実施形態では例えば50%である。このため、微小領域δにおいて、微小領域δ1または微小領域δ2が2以上連続して隣接し存在し得る。この場合、連続する微小領域δ1または微小領域δ2間に境界は形成されておらず、境界は仮想的である。しかし、この場合でも、微小領域δ1または微小領域δ2が連続することにより、これらの領域の境界がなくなっただけであり、透明基板5の表面は微小領域δを基準単位として分割されていると言える。
表面構造13の形成はエッチングで凹凸の形成された金型を作製し、この形状をプレスによりシート状の樹脂に転写し、このシートを透明基板5として接着層を介して透明電極4に貼り合わせるという方法で行ってもよい。この場合は透明基板5イコール透明なシートである。また、シートの表面あるいは保護層として形成された透明基板5の表面に直接にエッチングなどによって凹凸を形成する方法で行っても構わない。
このようなランダムパターンを回折する光はその伝搬方位もランダムになるので、特許文献1に記載された発光装置のような、方位による光強度の分布が存在せず、方位による色のアンバランスもない。また、外界(空気層側)から入射する光は透明基板5表面の表面構造13において反射するが、この反射光はランダムな方位に回折するため、外界の像が映り込むことにはならず、反射防止膜等の光学処理は不要であり、製品コストを低く抑えられる。図14から図15は第1の実施形態における表面構造から出射する1回目の取り出し光の視野角依存性の解析結果を示す説明図であり、段差d=0.7μmとし、波長λと境界幅wをパラメータにして示している。図14(a)はλ=0.450μm、w=0.5μm、図14(b)はλ=0.635μm、w=0.5μm、図14(c)はλ=0.450μm、w=1.0μm、図14(d)はλ=0.635μm、w=1.0μm、図15(a)はλ=0.450μm、w=1.5μm、図15(b)はλ=0.635μm、w=1.5μm、図15(c)はλ=0.450μm、w=2.0μm、図15(d)はλ=0.635μm、w=2.0μmの条件である。原点と曲線上の点を結ぶベクトルが出射光の光強度と出射方位を表しており、ベクトルの長さが光強度、ベクトルの方位が出射方位に対応する。縦軸は面法線軸の方位、横軸は面内軸の方位に対応し、実線は面内軸が図13(b)に於けるx軸またはy軸に沿った断面(0度、90度の経度方位)、破線は面内軸がy=xまたはy=−xの直線に沿った断面(45度、135度の経度方位)での特性である(90度方位の結果は0度方位、135度方位の結果は45度方位と一致するので省略する)。境界幅w=0.5、1.0μmでは実線、破線とも偏角(緯度)に対しなめらかな変動(即ち視差に伴う強度差が少ないこと)を示し、かつ両者が一致する。wを大きくし、w=2.0μmになると面法線方向の近傍での偏角に対する強度変動が大きくなり、λ=0.450μmでは実線、破線間の乖離も大きくなる。w=1.5μmは強度変動が出始めるぎりぎりの条件である。従って、面法線方向の光強度が強く、偏角(緯度)に対する変動が緩やかで、経度方向の光強度差が少ない視野角依存性は境界幅wが1.5μm以下の条件で得られることが分かる。
図16は第1の実施の形態に於ける表面構造13の透過率tの入射角依存性を示す説明図であり、透明基板5内で光量1の光が表面構造に角θ(屈折面法線となす角)で入射し、1回目でどれだけが空気6側に出射するかを図16(a)に示している。図16(b)は表面構造13で反射し、電極2を反射した後、再び表面構造13に入射する場合、すなわち2回目に於ける透過率の入射角依存性を示している。何れの図も、透明基板5の屈折率n1=1.457、空気6の屈折率n0=1.0、光の波長λ=0.635μm、微小領域δ1の微小領域δ2に対する突出高さd=0.70μm、微小領域δ1の面積比率(即ち凸である比率)P=0.5とし、表面構造の幅wをパラメータ(w=0.1,0.2,0.4,0.6,0.8,1.0,2.0,4.0μm)にしている。なお、突出高さd=0.70μmは垂直入射に於いて凹部での透過光と凸部での透過光にπだけ位相差が発生する条件(d=λ/2(n1−n0))に相当する。
図16(a)は、w=0.1、0.2μmでの結果が異なる以外は180度位相シフターに於ける結果(図9)に近く、臨界角を超えても大きな透過率が存在する。図17はP偏光入射に於ける透過率tの入射角依存性を示す実験結果である。実際に電子線ビーム法により石英基板上に深さd=0.70μm、境界幅w=0.4μmの凹凸のランダムパターンを形成し、図11に示した測定装置を用いて実験を行った。実験結果は図16(a)で示した解析結果と良く一致し、臨界角(43.34度)を超えても大きな透過率が存在することが分かる。本実施の形態の前に説明したように、屈折面においてどのような入射条件であろうとも屈折面上で等価的な発光(いわゆる境界回折効果)があると、その光は屈折面を挟んだ両方の媒質内に伝搬する。図16で示したような臨界角を超えても光が透過する現象は、この屈折面上で等価的な発光が生じる条件にしていることから説明できる。
点発光により光は透明基板5内で球面波となって均一に拡散すると仮定すると、発光方位角θ(前述の入射角θに一致)からθ+dθの間にある光量の総和はsinθdθに比例する。従って、取り出し光量は図16(a),(b)で示した透過率tにsinθを掛けた値に比例する。図18(a)、(b)は第1の実施の形態の表面構造における取り出し光量の入射角依存性を示す説明図である。すなわち、透明基板5内の1点(実際には発光層内の点)で発光する光量1の光が表面構造に角θ(屈折面法線となす角)で入射し、1回目でどれだけが空気層6側に出射するかを図18(a)に示し、図18(b)は表面構造13において1回反射し、電極2を反射した後、再び表面構造13に入射する場合、すなわち2回目の取り出し光量の入射角依存性を示している。
取り出し光量を入射角θで積分すると光取り出し効率が得られる。図19(a)、図19(b)は第1の実施の形態に於ける表面構造13の光取り出し効率を示す説明図であり、図16におけるものと同じ条件の下、横軸に表面構造13の境界幅wをおいてまとめている。図19(a)において、表面構造13の突出高さd=0.70μmに加え、d=0.1、0.30、0.50、1.40μmの場合の光取り出し効率(1回目の光取り出し効率η1)、更には透明電極4での吸収や電極2での反射損など、往復における光減衰は無いとして、表面構造13で反射し、電極2を反射した後、再び表面構造13に入射する場合の光取り出し効率(2回目の光取り出し効率η2)も示している。曲線5a、5Aはそれぞれd=0.70μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率、曲線5b、5Bはそれぞれd=0.50μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率、曲線5c、5Cはそれぞれd=0.30μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率である。曲線5g、5Gはd=0.10μmでの1回目および2回目の光取り出し効率であり、他の深さに比べ光取り出し効率が小さくなることから突出高さdは0.20μm以上は必要である。また曲線5hに示すように、可視光波長の倍以上(d≧1.4μm)になると、幅wが1.5μm以下の領域で1回目の効率が大きく劣化するので、突出高さdは1.4μm以下が好ましい。従って、dの推奨値は0.2〜1.4μmの範囲にある。もっと一般的に言えば、透明基板5の屈折率n1、空気6の屈折率n0(ただし、透明基板5が接している媒質は空気でなくてもよく、その媒質の屈折率n0が透明基板5の屈折率n1よりも小さくなりさえすればよい)、光のスペクトルの中心波長λとして、λ/(n1−n0)≧d≧λ/6(n1−n0)の条件が段差の推奨値である。
d≦0.70μmの場合、1回目の光取り出し効率はいずれも境界幅wが0.4〜2μmで極大になり、wを小さく、または大きくしていくと0.27(いわゆる(式3)で与えられる値で表面が鏡面とした場合の光取り出し効率)に漸近する。2回目の光取り出し効率はいずれもw=0.10から2.0μmの間で極大値をなしwを大きくしていくと0.00に漸近し(図19の範囲では現れていない)、w≦0.10μmではwが小さくなるに従って0.00に収束する。
参考として図19(b)の曲線5d、5Dに、表面構造13ではなく、微小領域δ1に光の位相を180度変換させる位相シフターを置いた場合の1回目、および2回目の光取り出し効率を示す。本実施の形態の表面構造13では凹部と凸部の伝搬光がその段差分だけの距離を伝搬する間に位相差が発生するのに対し、位相シフターでは伝搬距離ゼロで位相差が発生する仮想的なものである。位相シフターの場合、境界幅wを大きくしていくと1回目、2回目の光取り出し効率がそれぞれ0.27、0.00に漸近していくことは表面構造13と同じであるが、0.3μm以下に小さくしていくと、2回目のみならず1回目の光取り出し効率もゼロになる(この理由はすでに図7(e)で説明した)。本実施の形態の表面構造13が境界幅0.4μm以下の条件で位相シフターよりも高い光取り出し効率が得られる理由の一つは、凸部が光導波路として作用していることが考えられる。
透明基板5から見た、透明基板5の表面と電極2との間の往復における光透過率をτとすると、往復における光減衰を考慮した2回目の光取り出し効率はτ×η2になる。光取り出しは1回、2回にとどまらず無限に繰り返され、その関係が等比数列と仮定して1回目がη1、2回目がτ×η2であれば、n回目はη1×(τ×η2 /η1)n-1と予想できる。従って、n回目までの光取り出しの合計は
となり、無限回ではη1/(1−τ×η2/η1)に漸近する。
図19(a)において曲線5a,5A(d=0.70μm)で見てみると、w=0.60μmの時、η1=0.318、η2=0.093であり、τ=0.88とすると、0.428の光取り出し効率が得られる。w=1.00μmの時には、η1=0.319、η2=0.102であり、0.444の光取り出し効率が得られる。一方、図1、図3(a)に示される従来の発光装置は、η1=0.274、η2=0であり、2回目以降は全てゼロとなり、合計で0.274である。従って、w=0.60μm条件では、本実施の形態の発光装置は図3(a)に示される発光装置の1.56倍、w=1.00の条件では1.62倍の光取り出し効率を実現できることが分かる。このように、wを0.2μmよりも大きくすることで(一般的に表現すれば、微小領域δに内接する円の最大のものの直径を0.2μm以上とすることで)光取り出し効率の大幅な向上を実現できる。
次に本実施の形態に於ける表面構造13の光取り出し効率が波長にどのように依存するかを考察する。
図19(a)の曲線5a'、5A'、5h'、5H'は、波長0.45μmの条件での、d=0.70、1.40μmに対する1回目、および2回目の光取り出し効率を示している。これらの特性は波長0.635μmでの結果とほぼ一致するので、可視光内の波長差に伴う取り出し効率の変化を小さくできることが分かる。
このように、本実施の形態における表面構造13は単一の形状(dとw)であっても可視光内の全波長に対して最適値に近い光取り出し効率が得られるので、この構造をディスプレイ装置の表示面に用いる場合、RGBの3種類の画素に対して個別に形状を変える必要がなく、構成や組立時の調整を大幅に簡素化できる。
また、有機EL素子では透明電極4の上に、透明基板5と電極2との間の光の往復における光透過率を調整するための透明な調整層が置かれることがある。この場合、透明基板5は調整層の上に載せられる(即ち調整層まで含んだ有機EL素子を発光体と言うことができる)が、透明基板5の屈折率n1が調整層の屈折率n1'よりも小さくなる場合、透明基板5と調整層との間に全反射が発生する境界面が存在し、特にn1'−n1>0.1の場合にはその影響が無視できなくなる。図20はその時の光の伝搬の様子を示している。
図20に於いて、屈折率n2の発光層3の内部の点Sで発光する光は直接、もしくは電極2を反射した後、透明電極4を透過し、屈折率n1'の調整層15を透過し、境界面15a上の点P'において屈折して、屈折率n1の透明基板5を透過し、透明基板5と空気6との境界面上の点Pを経て空気6側に出射する。ここではn1'≧n2>n1>1.0である。なお、n1'はn2よりも小さくても構わないが、この場合は透明電極4と調整層15との間で全反射が発生する。透明基板5において空気6との境界面には本実施の形態に係る表面構造13が形成されているので、臨界角を超えた光でも空気層6側に取り出すことが出来る。しかし、n1'>n1の関係から境界面15aでも全反射が発生する。すなわち、点P'への入射より入射角の大きい点Q'への入射では全反射し、この光は電極2との間で全反射を繰り返し、空気6側に取り出すことは出来ない。
このような場合、図21に示すように、調整層15と透明基板5との境界面にも本実施の形態に係る表面構造13'を設けることでこの面での臨界角を超えた入射光を空気6側に取り出すことが出来る。すなわち、表面構造13'により臨界角を超えた点Q'への入射でも全反射は発生せず、この面で反射する成分は電極2を反射した後、再び表面構造13'上の点R'に入射し、その一部が表面構造13を経て空気6側に出射でき、以上の過程を無限に繰り返す。図21の構成は、凹凸を有する表面構造13,13'を2重に形成する複雑さはあるが、透明基板5に屈折率の低い材料を用いることが出来、材料の選択の幅を広げられるメリットを有する。
なお、(式6)より透明基板5と電極2との間の往復における光透過率τが大きければ、光取り出し効率は増大する。実際の発光層3は電極2や透明電極4以外に、上述した調整層15等の複数の透明層等に取り囲まれるが、それらの膜設計(発光層3を含めた膜の屈折率や厚さの決定)は、前述の光透過率τが最大になるように行うべきである。この時、表面構造13での反射は位相の分布がランダムになるので、反射光の重ね合わせはインコヒーレントな扱い(振幅加算でなく強度加算)になる。すなわち透明基板5表面の反射影響は無視でき、仮想的に反射率0%、透過率100%として扱える。この条件で透明基板5から光を発光させ、この光を発光層3を含む多層膜を多重に往復させ、透明基板5に戻ってくる複素光振幅の重ね合わせ光量を最大にすることを条件にして、各膜の屈折率や厚さが決定される。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態を図22、図23に基づいて説明する。なお第2の実施の形態は表面構造13のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第2の実施の形態を図22、図23に基づいて説明する。なお第2の実施の形態は表面構造13のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第2の実施の形態は表面構造の凸である比率Pと凹である比率1−Pを0.5に固定するのではなく、P=0.4〜0.98としたものである。即ち、微小領域δ1(上方へ突出している領域)が40〜98%存在し、微小領域δ2(窪み)が60〜2%存在している。
図22(a)は本実施の形態に於ける表面構造の光取り出し効率を示す説明図であり、透明基板5の屈折率n1=1.457、空気6の屈折率n0=1.0、光の波長λ=0.635μm、表面構造の突出高さd=0.70μmとし、横軸に表面構造の境界幅wをおいて、比率P=0.2,0.4,0.6,0.8、0.9の場合の光取り出し効率(1回目、および2回目)を示している。曲線6a、6b、6c、6d、6eおよび6A、6B、6C、6D、6EはそれぞれP=0.2,0.4,0.6,0.8、0.9での光取り出し効率である。図23の曲線27a、27Aは上記の条件で境界幅w=1.0μmとし、凸である比率Pを横軸にして光取り出し効率(1回目、および2回目)をプロットしている。
図22(a)より、1回目の光取り出し効率ではwの全ての領域で比率P=0.2の特性が最小となり、w≦2μmではP=0.6の特性が最大値を与える。2回目の光取り出し効率ではw≦4μmの範囲でP=0.9の特性が最も大きく、P=0.2の特性が最小となる。
図23の曲線27aより、1回目の光取り出しでは凹凸の面積比率を支配する比率Pを0.6を中心とする0.4〜0.8の範囲に設定することで、光取り出し効率をより高められる。これはこの範囲で凸部が光導波路として効果的に作用するためであると考えられる(P≦0.2では導波路を形成する凸部の面積比が少なく、P≧0.8では凸部同士が近づきすぎて導波効果が薄まる)。一方、図23の曲線27Aより、2回目の光取り出しでは比率Pを0.9を中心とする0.5〜0.98の範囲に設定することで、光取り出し効率をより高められる。従って、1回目、2回目を含めたトータルの光取り出し効率では比率Pを0.4〜0.98の範囲に設定することが好ましい。
このように、本実施の形態では比率Pを0.5からずらすことで、第1の実施の形態よりも高い光取り出し効率が得られる。また、第1の実施の形態と同様に、方位による光強度の分布や色のアンバランスがない上、光取り出し効率の大幅な向上を実現でき、外界の像の映り込みも抑えられる等の効果を有する。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態を図22(b)に基づいて説明する。なお第3の実施の形態は表面構造13の段差条件が違うだけで、他の構成は全て第1、第2の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第3の実施の形態を図22(b)に基づいて説明する。なお第3の実施の形態は表面構造13の段差条件が違うだけで、他の構成は全て第1、第2の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第3の実施の形態は第1、第2の実施の形態に於ける表面構造の隣接する2つの微小領域δ1,δ2間の段差の量をランダムにした場合である。ランダムにする方法としては、図13(a)において、透明基板5の表面を幅w(境界幅と呼ぶ)の碁盤の目(正方形の微小領域δ)に隙間無く分割し、単一の基準面に対し一つ一つの目に−dm/2からdm/2までの間の任意の高さ(または深さ)をランダム関数に基づきランダムに設定したものである。単一の基準面としては、透明基板5の表面の面法線に平行な方向において、最も高い位置に存する微小領域δと最も低い位置に存する微小領域δとの中間に存する、透明基板5の表面に平行な面である。dmは最も高い位置にある微小領域δと最も低い値にある微小領域δとの高さ方向の位置の差である。
図22(b)は本実施の形態に於ける表面構造の光取り出し効率を示す説明図であり、透明基板5の屈折率n1=1.457、空気6の屈折率n0=1.0、光の波長λ=0.635μmとし、横軸に表面構造の境界幅(微小領域δの幅)wをおいて、最大段差dm=1.4,0.9,0.7、0.3μmの場合の1回目の光取り出し効率η1、2回目の光取り出し効率η2を示している。計算の都合から基準面からの段差量のランダム性として、dm=1.4μmでは−0.7μmから0.7μmまでの0.467μmステップで4種類の段差、dm=0.9μmでは−0.45μmから0.45μmまでの0.3μmステップで4種類の段差、dm=0.7μmでは−0.35μmから0.35μmまでの0.233μmステップの4種類の段差、dm=0.3μmでは−0.15μmから0.15μmまでの0.1μmステップの4種類の段差をそれぞれランダムに選択する条件(出現確率がそれぞれ25%の条件)で行った。なお、各ステップの出現確率は均等である必要はなく、例えば低い(深い)位置のステップの出現確率を小さく、高い(浅い)位置のステップの出現確率を大きくしてもよい。
曲線6i、6Iはそれぞれdm=1.4μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率、曲線6h、6Hはそれぞれdm=0.9μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率、曲線6g、6Gはそれぞれdm=0.7μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率、曲線6f、6Fはそれぞれdm=0.3μmでの1回目、および2回目の光取り出し効率である。第1実施例と同様に、1回目の光取り出し効率はいずれも境界幅wが0.2〜2μmで極大になり、wを小さく、または大きくしていくと0.27(いわゆる(式3)で与えられる値で表面が鏡面とした場合の光取り出し効率)に漸近する。2回目の光取り出し効率はw≦0.20μmではwが小さくなるに従って0.00に収束し、図では現れないがwを8μmより大きくしていくと0.00に漸近する。従って、境界幅wの範囲は0.2μm以上の大きさである必要があり、更に第1実施例の図14、図159で議論したように、視野角依存性の関係から1.5μm以下が好ましい。図22(b)において、dm=0.7μm、境界幅w=0.6μmの条件で計算した1回目、2回目の光取り出し効率(η1、η2)は0.331、0.141となる。従って、dm=0.7μmで得られる特性は第1の実施の形態で得られる特性(曲線5A)や第2の実施の形態で得られる特性(曲線6B,6C)に比べ、2回目の光取り出し効率が向上している。これは凸部の先端が不揃いになることで、パターンのランダム性が増し、表面構造を反射する光の伝搬方位のランダム性も増して反射光の拡散性が高まり、2回目の光取り出しでも1回目に近い状態(全方位に均一な光強度の状態)で光が入射できるためと考えられる。
なおw≧0.4μmの範囲でdm=0.70μmに比べてdm=0.30μmの一回目における特性が劣化していることから、dmはdm≧0.2〜0.3μmであることが好ましい(この範囲は第1の実施の形態と同じである)。また、dm=1.40μmはw≧1.0μmの範囲でdm=0.70μmに比べ一回目の特性が微改善するが、dmが大きすぎると加工が困難になるうえ、w≧1.5μmの条件で視野角特性が劣化するので(図14、図15参照)、1.40μmがdmの上限の目安といえる。これらの範囲は第1の実施の形態の範囲(λ/(n1−n0)≧dm≧λ/6(n1−n0))と同じである。
この様に、第3の実施の形態は段差の量をランダムにすることで、第1、第2の実施の形態よりも高い光取り出し効率が得られる。また、第1の実施の形態と同様に、方位による光強度の分布や色のアンバランスがない上、外界の像の映り込みも抑えられる等の効果を有する。
なお、段差の量をランダムにする条件として、(1)0から最大段差量dmまでの全ての値をとる場合、(2)0と最大段差量dmを含めて3段以上の段差の内のいずれかをとる場合、の2つが考えられる。このうち(2)の一例として、0、dm/3、dm×2/3、dmの4種類の段差を取る場合を考えると、このような表面構造をシート表面に形成するための形状転写用の金型は、2回の露光、エッチング工程(1回目:露光で境界幅w1のマスクパターンを用い、深さdm/3のエッチング、2回目:露光でマスクを境界幅w2のマスクパターンに変えて深さdm×2/3のエッチング)で作製することができる。このとき、不連続な境界線の出現頻度を最大にするには、w2=w1が条件となる。
さらに、0,dm/6,dm×2/6,dm×3/6,dm×4/6,dm×5/6,dmの7種類の高さ(段差)を取る場合を考えると、このような表目構造をシート表面に形成するための形状転写用の金型は、3回の露光、エッチング工程(1回目:露光で境界幅w1のマスクパターンを用い、深さdm/6のエッチング、2回目:露光でマスクを境界幅w2のマスクパターンに変えて深さdm×2/6のエッチング、3回目:露光でマスクを境界幅w3のマスクパターンに変えて深さdm×3/6のエッチング)によって作製することができる。このとき、不連続な境界線の出現頻度を最大にするには、w1=w2=w3が条件となる。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態を図24に基づいて説明する。なお第4の実施の形態は表面構造のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第4の実施の形態を図24に基づいて説明する。なお第4の実施の形態は表面構造のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
図24は第4の実施の形態に於ける表面構造のパターンを決定するまでの過程を示している。図24(a)は、透明基板5の表面を幅w1の碁盤の目(正方形の微小領域α)に分割し、一つ一つの目が黒であるか白であるかの比率を各50%として白と黒とをランダムに割り当てたもので、図ではw1=1μmの場合の例を示している(w1の最適値はもっと小さいところにあるが、図として見にくくなるのでこの値で説明する)。黒に割り当てられた微小領域αは微小領域α1であり、白に割り当てられた微小領域αは微小領域α2である。
図24(b)は、透明基板5の表面をw1の整数倍の大きさの幅w2の碁盤の目(正方形の微小領域β)に分割し、一つ一つの目が黒である比率をP2、白である比率を1−P2とし、P2=0.5として白と黒とをランダムに割り当てたもので、図ではw2=2μmの場合の例を示している。黒に割り当てられた微小領域βは微小領域β1であり、白に割り当てられた微小領域βは微小領域β2である。
図24(c)は、図24(a)、図24(b)のパターンを碁盤の目が揃うように重ね合わせ、黒(α1)と黒(β1)の重なりは白に、白(α2)と白(β2)の重なりは白に、白(α2)と黒(β1)、または黒(α1)と白(β2)の重なりは黒にするというルールで生成されたパターンである。図24(c)は結果として図24(a)のパターンと生成ルールが等しくなり、黒を凸とし、それに対して相対的に白は凹となる表面構造のパターンは第1の実施の形態で紹介しているものと同じである。
一方、図24(d)は、透明基板5の表面を幅w1の碁盤の目(正方形の微小領域α)に分割し、一つ一つの目が黒である比率をP1、白であるかの比率を1−P1としてランダムに割り当てたもので、図ではw1=1μm、P1=0.1の場合の例を示している。図24(a)と同様に、黒が微小領域α1、白が微小領域α2である。
図24(e)は、図24(d)、図24(b)のパターンを碁盤の目が揃うように重ね合わせ、黒(α1)と黒(β1)の重なりは白に、白(α2)と白(β2)の重なりは白に、白(α2)と黒(β1)、または黒(α1)と白(β2)の重なりは黒にするというルールで生成されたパターンである。図24(e)は黒、白の面積比率が1:1であり、黒マーク、白マークの最小サイズが同じになるなど、図24(c)のパターンと似た特徴をなすが、最小サイズの出現比率が低い点で違いがある。最終的な黒と白の比率(凹凸の面積比率)は比率P1、P2で決まり、黒の比率P(凸となる比率)はP=P1+P2−2P1P2で与えられる。
図23に、表面構造の凸部分の突出高さd=0.70μm、w1=0.2μm、w2=1μm、P1=0.1の条件で、凸となる比率Pを横軸にして計算した1回目、2回目の光取り出し効率(η1、η2)の特性を曲線27b,27Bとして付記する。
図23の曲線27bより、第1実施例とは異なったパターンの凹凸分布にも関わらず、1回目の光取り出しでは凹凸の面積比率を支配する比率Pを0.6を中心とする0.4〜0.8の範囲に設定することで、光取り出し効率をより高められる。一方、曲線27Bより2回目の光取り出しでは比率Pを0.5〜0.9の範囲(P1=0.1に設定しているので曲線27b、27Bは0.1以下、0.9以上をプロットできない)に設定することで、光取り出し効率をより高められる。従って、第1実施例と同様に比率P1、P2を組み合わせ最終的な凸となる比率Pを0.5〜0.98の範囲に設定することで、1回目、2回目を含めたトータルの光取り出し効率を高めることができる。なお、図23の曲線27c,27Cはw1=0.1μm、P1=0.1の条件、曲線27d,27Dはw1=0.1μm、P1=0.2の条件の1回目、2回目の光取り出し効率の特性である。w1を0.2μmより小さくすることで効率が大きく劣化するので、w1は0.2μm以上の大きさである必要がある。また、w1の上限値は第1実施例の図14、図15で議論したように、視野角依存性の関係から1.5μm以下が好ましい。
第4の実施の形態は表面構造の形成条件を第1の実施の形態とは若干変更したものであり、条件によっては光取り出し効率は第1の実施形態よりも若干劣化するが、依然として図1、図3(a)に示す従来の発光装置よりも大きな光取り出し効率を実現でき、第1の実施の形態と同様に、方位による光強度の分布や色のアンバランスがない上、光取り出し効率の大幅な向上を実現でき、外界の像の映り込みも抑えられる等の効果を有する。また第4の実施の形態は、第1の実施の形態に比べ、表面構造に関する形状の制約条件が緩いため、誤差マージンが広く取れ、加工のしやすさにメリットがある。例えば、第1の実施の形態の条件では、凹部と凹部、または凸部と凸部の間隔が近接するため、微細な凹凸形状を加工することは困難であるが、第4の実施の形態では微細な凹部、または凸部の出現比率が低いので(図24の(c)と(e)を参照)、凹部と凹部、または凸部と凸部の間隔が実効的に広がって加工の難易度のハードルは低くなる。なお、第2の実施の形態に第4の実施の形態を適用したものでも、第2の実施の形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。
(第5の実施の形態)
第4の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせたものが、第5の実施の形態である。本実施の形態では、領域の設定をわかりやすくするために各領域を色で区別して説明する。第5の実施の形態では、まず、透明基板5の表面を幅w1の碁盤の目(正方形の微小領域α)に分割し、一つ一つの目が黒である比率をP1、白である比率を1−P1としてランダムに黒と白とに割り当て、白を割り当てられた領域(微小領域α2)をd1(>0)の深さだけエッチング等の方法で彫り込む。なお黒を割り当てられた領域が微小領域α1である。
第4の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせたものが、第5の実施の形態である。本実施の形態では、領域の設定をわかりやすくするために各領域を色で区別して説明する。第5の実施の形態では、まず、透明基板5の表面を幅w1の碁盤の目(正方形の微小領域α)に分割し、一つ一つの目が黒である比率をP1、白である比率を1−P1としてランダムに黒と白とに割り当て、白を割り当てられた領域(微小領域α2)をd1(>0)の深さだけエッチング等の方法で彫り込む。なお黒を割り当てられた領域が微小領域α1である。
次に、透明基板5の表面を幅w2の碁盤の目(正方形の微小領域β)に分割し、一つ一つの目が青である比率をP2、赤である比率を1−P2としてランダムに青と赤と割り当て、赤を割り当てられた領域(微小領域β2)をd2(>0)の深さだけエッチング等の方法で彫り込む。なお、青を割り当てられた領域が微小領域β1である。ただし幅w2は幅w1の整数倍であり(w2=w1が最も好ましい)、それぞれの碁盤の目は境界線が揃うように重ね合わされている。
このようにすることで、白と赤の重なっている部分の面を基準面としたときに、この基準面に対し黒と青の重なりは高さd1+d2に、白と青の重なりは高さd2に、または黒と赤の重なりは高さd1にすることができる。従って、段差は0からd1+d2までの間の4種類の値(0、d1、d2、d1+d2)をランダムに取り得るので、第3の実施の形態と同じ効果が得られる。
しかもd1=dm×1/3、d2=dm×2/3と設定すれば、微細な構造で作製が困難な幅w1のパターンは深さを浅くできるので加工のしやすさにメリットがある。d1=dm×1/3、d2=dm×2/3の場合、比率P2はこれが彫り込み幅の深い側に対応しているので(実際には比率P2の側が2、比率P1の側が1の重みで平均深さに関係する)、凹凸の面積比率、すなわち深さの平均レベルを決定する第4の実施の形態の比率P2と似た意味合いを持つ。一方、比率P1は微細な構造(幅w1)の出現比率に関係するので、第4の実施の形態の比率P1と似た意味合いを持つ。
なお、上述の実施例は2種類の露光、エッチング工程の組み合わせであったが、3種類の露光、エッチング工程を組み合わせると、8種類の値からランダムな高さをとることができる。この場合は上述した2つのエッチング工程に以下の工程を加える。すなわち透明基板5の表面を幅w3の碁盤の目(正方形の微小領域γ)に分割し、一つ一つの目が緑である比率をP3、黄色である比率を1−P3としてランダムに緑と黄色と割り当て、黄色を割り当てられた領域(微小領域γ2)をd3(>0)の深さだけエッチング等の方法で彫り込む。なお緑を割り当てられた領域が微小領域γ1である。ただし幅w3は幅w2の整数倍であり(w3=w2が最も好ましい)、それぞれの碁盤の目は境界線が揃うように重ね合わされている。
このようにすることで、白と赤と黄色の重なっている部分の面を基準面としたときに、この基準面に対し黒と青と緑の重なりは高さd1+d2+d3に、白と青と緑の重なりは高さd2+d3に、黒と青と黄色の重なりは高さd1+d2に、黒と赤と緑の重なりは高さd1+d3に、黒と赤と黄色の重なりは高さd1に、白と青と黄色の重なりは高さd2に、白と赤と緑の重なりは高さd3にすることができる。従って、高さは0からd1+d2+d3までの間の8種類の値(0、d1、d2、d3、d1+d2、d2+d3、d3+d1、d1+d2+d3)をランダムに取り得るので、第3の実施の形態と同じ効果が得られる。
しかもd1=dm×1/6、d2=dm×2/6、d3=dm×3/6と設定すれば、微細な構造で作製が困難な幅w1やw2のパターンは深さを浅くできるので加工のしやすさにメリットがある。d1=dm×1/6、d2=dm×2/6、d3=dm×3/6の場合、比率P2やP3は彫り込み幅の深い側に対応しているので(実際には比率P3の側が3、比率P2の側が2、比率P1の側が1の重みで平均深さに関係する)、P2、P3は凹凸の面積比率、すなわち深さの平均レベルを決定する第4の実施の形態の比率P2と似た意味合いを持つ。一方、比率P1は微細な構造(幅w1)の出現比率に関係するので、第4の実施の形態の比率P1と似た意味合いを持つ。
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態を図12に基づいて説明する。なお第6の実施の形態は表面構造13のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第6の実施の形態を図12に基づいて説明する。なお第6の実施の形態は表面構造13のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第6の実施の形態は第1の実施の形態に於ける表面構造の隣接する2つの微小領域δ1,δ2を位相シフターで構成したものである。位相シフターは、例えば屈折率の異なる多層膜で形成できる。すなわち多層膜の多重反射により、透過光の位相を調整でき、多層膜の構造(膜厚や層数)を変えることで180度の領域と0度の領域をランダムに形成できる。また、偏光子を用いて2つの領域を透過する光の偏光を変えても同じ効果が得られる。この時、180度領域に対応する透過光の偏光はP偏光、または右回りの円偏光、0度領域に対応する透過光の偏光はS偏光、または左回りの円偏光となるような偏光子になるが、方位の90度異なる1/2波長板を用いれば実現できる。なお、第1実施例の様な、屈折率に差がある界面の凹凸構造も透過光の位相が凹凸間で変化するので位相シフターの一つの形態と言える。
本実施の形態に於ける表面構造13の透過率tの入射角依存性、および光取り出し効率は既に図9、図19(b)(曲線5d、5D)に示され、1回目の光取り出し効率だけでもwを0.4μm以上1μm以下の範囲で表面を鏡面とした場合の光取り出し効率を超えることができる。図19(b)には、位相差を90度にした結果も示しており、1回目、2回目の光取り出し効率がそれぞれ曲線5d'、5D'で表される。いずれも、位相差180度のもの(曲線5d、5D)より劣化するので、位相差の最適値は180度であることが分かる。
この様に、第6の実施の形態は表面構造13を位相シフターで構成することで、従来例よりも高い光取り出し効率が得られる。また、第1の実施の形態と同様に、方位による光強度の分布や色のアンバランスがない上、外界の像の映り込みも抑えられる等の効果を有する。
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態を図25に基づいて説明する。なお第7の実施の形態は表面構造のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第7の実施の形態を図25に基づいて説明する。なお第7の実施の形態は表面構造のパターンが第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
図25(a)は本実施の形態に於ける第1の表面構造23のパターン図を示している。図25(a)に示すように、表面構造23は透明基板5の表面を一辺の長さwの正三角形(微小領域δ)に分割し、一つ一つの微小領域δが凸(図中の23a(微小領域δ1)、灰色の図形)であるか凹(図中の23b(微小領域δ2)、白の図形)であるかの比率を各50%として凸と凹とをランダムに割り当てたものである。wは2.25μm以下である。
一方、図25(b)は本実施の形態に於ける第2の表面構造33のパターン図を示している。透明基板5の表面を一辺の長さwの正六角形(微小領域δ)に分割し、一つ一つの図形が凸(図中の33a(微小領域δ1)、灰色の図形)であるか凹(図中の33b(微小領域δ2)、白の図形)であるかの比率を各50%として凸と凹とをランダムに割り当てたものである。wは0.93μm以下である。
なお、一般的に表現すれば、図形の大きさはその図形に内接する円の最大のものの直径が0.2μm以上1.5μm以下であることが条件となる。
第7の実施の形態は表面構造23,33のパターン形状が第1の実施の形態とは異なるだけで、第1の実施の形態と同じ原理が作用し、同一の効果が得られる。また、正三角形や正六角形に限らず、同じ図形で隙間無く面分割が出来るのであれば、任意の多角形であってもよい。
なお、第1から第7の実施の形態では、実際の加工体での表面構造13,23,33が厳密には正方形や正三角形、正六角形にはならず角の部分が丸まったり角が丸まった微小領域の隣の微小領域の角がその分変形したりするが、特性の劣化はなく同一の効果が得られることは言うまでもない。また、第2〜第6の実施の形態に第7の実施の形態を適用したものでも、第2〜第6の実施の形態と同様の効果が得られる。
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態を説明する。なお、第8の実施の形態は表面構造が第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
第8の実施の形態を説明する。なお、第8の実施の形態は表面構造が第1の実施の形態と違うだけで、他の構成は全て第1の実施の形態と同じであり、共通の構成についてはその説明を省略する。
図26(a)は、本実施の形態における発光装置の断面図である。図26(b)は、本実施形態における発光装置の上面図である。本実施形態の発光装置は、基板101と、電極102と、発光層103と、透明電極104と、透明基板105と透明基板105上に設けられた表面構造13とを備える。である。透明基板105および表面構造13により本実施の形態にかかる光取り出しシートが構成されている。
本実施の形態では、実効的な屈折率がnaである微小体Aと、実効的な屈折率がnbである微小体Bとが、実効的な屈折率がnbである透明基板105上に隙間なく敷き詰められて配置されている。微小体Aおよび微小体Bは、厚さがdであり、上面における幅がwである。そして、図26(b)に示すように、透明基板105上にランダムに配置されている。図26では、微小体Aおよび微小体Bは共に立方体としているが、直方体や多面体柱など、透明基板105の表面に敷き詰めることのできる形状を備えておればよい。また、微小体Aと微小体Bとは、互いに異なる形状を有していてもよい。
本実施の形態は、第1実施の形態の微細な凹凸を有する表面構造において、凸部が微小体Bで構成され、凹部を微小体Aで埋めた構造を備えている。即ち、本実施の形態における微小体Aは、第1の実施の形態における凹部の空気または媒体に相当する。また、本実施の形態における微小体Bは、第1の実施の形態における透明基板表面の凸部に相当する。従って、第1の実施の形態における空気(または媒体)の屈折率noを微小体Aの屈折率naとし、透明基板の屈折率nbを微小体Bの屈折率nbとすれば、本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明した解析結果を適用できる。即ち、内接する最大の円の直径が0.2μm以上1.5μm以下となる微小体Aおよび微小体Bを、微小体Aが40%以上98%以下の割合となるように、透明基板の表面にランダムに敷き詰める。これにより、第1の実施の形態で詳細に説明したように、可視光を、臨界角を超えて一方の面から他方の面へ取り出すことが可能となる。また、微小体Aの厚さをd、実効的な屈折率をnaとし、微小体Bの厚さをd、実効的な屈折率をnbとし、λを隣接させて用いる発光体の発する光の波長とした場合に、λ/6(nb−na)<d<λ/(nb−na)となるようにdを設定することにより、光取り出し効率の大幅な改善が可能となる。
本実施の形態では、表面構造を平坦にすることができるので、第1の実施の形態のような凹凸の表面形状に比べ、表面へのゴミや汚れなどの付着を軽減でき、光取り出し効率の劣化を防ぐことができる。
次に、上記した微小体Aおよび微小体Bの一例として、ナノ粒子を用いて微小体Aおよび微小体Bを構成する例を説明する。
図27(a)は、発光装置の断面図である。図27(b)は、図27(a)のA面での断面図である。図27(a)に示すように、透明基板105上に、中空のナノ粒子aと、同じ外径dの中空でないナノ粒子(中実ナノ粒子)bとを配置している。以下、これらを中空ナノ粒子aおよび中実ナノ粒子bと呼ぶ。
中空ナノ粒子aは、中空部307および中空部307を囲んで設けられた外殻部308を含む。中空部307は空洞であり、中空部307に、例えば、空気や窒素などの気体が満たされていてもよいし、中空部307は真空であってもよい。
一方、中実ナノ粒子bは充填された構造を有する。中空ナノ粒子aおよび中実ナノ粒子bの外径はdであり、中空部307の径、つまり、外殻部308の内径はd'である。中空ナノ粒子aおよび中実ナノ粒子bには、例えば、中空シリカ粒子およびシリカ粒子を用いることができる。0.2μm以上1.5μm以下の範囲にある種々のサイズの外形を有する中空シリカ粒子およびシリカ粒子が市販されており、入手可能である。また、種々のサイズの中空部分を有する中空シリカ粒子を入手することが可能である。この他、スチレン、架橋スチレン、変性スチレン・ブタジエン等を用いた中空ポリマー粒子や、PMMA粒子等の中実ナノ粒子などの中空ナノ粒子および中実ナノ粒子を用いることができる。
中空ナノ粒子aの外殻部309の屈折率、および中実ナノ粒子bの屈折率は、透明基板305の屈折率とほぼ等しい。
これらのナノ粒子は、透明基板105の屈折率とほぼ等しい屈折率を有するバインダ308で埋没されて透明基板105上に固定されている。また、外殻部309の上端は空気層106に接触するように配置されている。このように、微小体Aは、中空ナノ粒子aの外殻部309およびバインダ308からなる外部構造と、中空ナノ粒子aの中空部307からなる内部構造とを含み、互いに屈折率の異なる2重構造を備えている。
中空ナノ粒子aを含む立方体の領域は、実効的に均質な屈折率として扱えることができる。即ち、中空ナノ粒子aを含み破線で示される領域310aは、実効的な屈折率naを有する微小体Aとみなすことができる。また、中実ナノ粒子bを含み破線で示される領域310bは、実効的な屈折率nbを有する微小体Bとみなすことができる。ここでバインダ308の屈折率をnx、中空部307の屈折率をn0とすると、実効的に屈折率na、nbは以下に示す(式7)および(式8)で示される。つまり、微小体Aの実効的な屈折率は、中空ナノ粒子aの外殻部309およびバインダ308からなる外部構造および中空部307からなる内部構造の屈折率とその体積比とによって決まる。
次に、図28に、図27に示す構造を有するシートにおける透過率tの入射角依存性を解析した結果を示す。図28は、(d−d')/2を0.1μmとし、dの値を0.3μm、0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μm、2.0μm、4.0μmとした場合の解析結果である。また、中実ナノ粒子b、中空ナノ粒子aの外殻309の屈折率、およびバインダ308の屈折率をnx =1.457とし、中空ナノ粒子aの中空部307の屈折率をn0=1.0とし、波長を635nmとした。図28より、臨界角43.3度以上の角度においても、大きな光の取出し効果があることが確認でき、境界回折効果が得られていることがわかる。
また、図29には、dを0.3μm、0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μm、2.0μm、4.0μmとした場合の光取出し効率ηを示す。1回目の光取出し効率は、d=0.6〜2.0μm付近で最大値0.32となり、第1の実施の形態に示す境界回折構造とほぼ同等の光取出し効率が得られることがわかる。また、2回目の光取出し効率は、d=0.3μmよりも小さいところで小さくなる。(d−d')/2を0.1μmとした場合には、dは少なくとも0.3μm以上は必要であることがわかる。
次に、図30に、図27に示す構造を有するシートにおいて、径比率(d−d')/d=0.1、0.3、0.5、d=0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μm、2.0μm、4.0μmとした場合の光取出し効率の解析結果を示す。図30からわかるように、径比率が大きいほど1回目の光取出し効率は小さくなり、特に径比率=0.5、d<0.6μmで1回目の光取出し効率がほぼ鏡面の値に近くなるので、径比率の上限は0.5とみてよい。以上の結果により、微小体Aの全体の体積に対して中空部の占める体積比率は1/16以上であることが必要である。また、(d−d')/d=0.1、0.3の場合において、d=0.2μmでも光取出し効率が向上していることがわかる。このことからdの値として0.2μm以上は必要である。
なお、本実施の形態においては、微小体Aおよび微小体Bの平面上での配置を図27(b)で示されるように碁盤の目状に配列したが、ランダムに配列させたり、最密充填構造に配列させてもよい。
また、ランダム性を確保するため、中空ナノ粒子aと中実ナノ粒子bとを混合して液相中に分散し、透明基板105上に塗布した後に乾燥させ、中空ナノ粒子と中実ナノ粒子とを配列させることが好ましい。中空粒子aと中実粒子bとは、液相中にランダムに分散するため、塗布後の配列もランダムとすることができる。
また、中空ナノ粒子および中実ナノ粒子をランダムに配置する方法としては、以下の方法でも良い。即ち、まず極性をもたせた中空ナノ粒子と中実ナノ粒子とを所定の比率で混合した混合体を用意する。次に、透明基板105の表面を、中空ナノ粒子および中実ナノ粒子に施した極性と反対の極性となるように処理を施す。そして、その透明基板105上に前述の混合体を塗布することにより、容易にランダムな配列を実現できる。
以上の手段によってランダムに配置した粒子を透明基板と同様な屈折率を持つバインダ(例えば透明基板の屈折率を1.457とした場合、アクリル樹脂系バインダ材料FA−125M)などで固定することで光取り出しシートを作成することができる。
なお、本実施の形態では、中空および中実の球状の物体を配列させたが、実効的な屈折率を異ならせる構造であれば、透過光の位相差を確保することができ、境界回折効果を得ることができる。例えば、互いに屈折率が異なる同一形状の中実ナノ粒子を混合して配列させてもよい。また、図31(a)および(b)に示すように、中空ナノ粒子の中空部(図においてハッチングで示されていない部分)の直径d'が互いに異なる粒子を混合しても良い。また、図32(a)および(b)に示すように、ナノ粒子の形状が立方体や多面体であっても良い。その他、レーザーを基板表面に照射することによって、表面近傍に気泡を発生させたり、表面近傍の結晶構造を変化させることで屈折率を変えるなどの方法で、実効的な屈折率が異なる微小体A、Bを作製しても良い。
(第1〜第8の実施の形態の変形例)
上述の実施の形態は本発明の例示であって、本発明はこれらの例に限定されない。第1から第7の実施の形態において、表面構造の凸部分の表面に垂直な断面形状は矩形形状に限らず、台形や円錐形状となってもよく、凸部分の斜面が曲線になってもよい。
上述の実施の形態は本発明の例示であって、本発明はこれらの例に限定されない。第1から第7の実施の形態において、表面構造の凸部分の表面に垂直な断面形状は矩形形状に限らず、台形や円錐形状となってもよく、凸部分の斜面が曲線になってもよい。
また、第1から第8の実施の形態において、透明基板5の厚さが大きい場合、光の出射位置は光取り出しの回数が増すごとに発光点Sの位置から離れてくる。この場合、ディスプレイ用のELの様に300μm程度の画素ごとに区切られた構成では、光が隣の画素に紛れ込み、画質の劣化につながる。従って、図33(a)に示すように、表面構造13の形成された透明基板5は数μm程度に薄く構成し、その上に空気層を挟んで0.2mmから0.5mm程度の保護基板14で覆う構成が考えられる。保護基板の表面14a、裏面14bでは全反射は発生しないが、AR(反射防止)コートの必要はある。このとき表面構造13の上には空気層の代わりにエアロゲル等の低屈折率で透明な材料を用いてもよく、このとき一体構成になるため装置としての安定性が高い。
さらに、第1から第8の実施の形態では、一つの面だけに表面構造13を形成したが、透明基板5の両面に同じような構造を形成することができる。また表面構造13と発光点Sの間に一般の回折格子13'を配置してもよい。この時図33(b)に示すように、透明基板5をフィルム形状にし、表面に表面構造13、裏面に回折格子13'や別仕様の表面構造13"を形成し、発光体側に接着層21を介して接着させる構造が考えられる。透明基板5の屈折率が小さく、発光層3との屈折率差が0.1以上ある場合には、接着層21の材料を発光層3の屈折率より0.1だけ小さいかそれ以上になるように選ぶと接着層21と発光層3との境界面での全反射はほとんど生じないとともに、接着層21と透明基板5の間の屈折面、および透明基板5と空気6の間の屈折面で発生する全反射を、それぞれ表面構造13"(または回折格子13')、および表面構造13で回避できる。なお、回折格子13'や表面構造13"の凹部の深さまたは凸部の高さは凹部での透過光と凸部での透過光にπだけ位相差が発生する条件が好ましいが、これよりも凹の深さや凸の高さが小さい条件であってもよい。
なお参考として、図34に表面構造が市松模様(チェッカー形状)をなすパターン図を示している。図34において、表面構造は透明基板5の表面を一辺の長さwの正方形に分割し、灰色の正方形13aと白の正方形13bがチェッカーパターンを形成し、灰色が凸となり、相対的に白が凹の形状をなす。
図35は図19(a)におけるものと同じ条件の下で、凹凸の段差d=0.70μmとして図34に示した表面構造の透過率tの入射角依存性を示す説明図であり、透明基板5内で光量1の光が表面構造に角θ(屈折面法線となす角)で入射し、1回目でどれだけが空気6側に出射するかを幅wをパラメータ(w=0.1、0.2、0.4、1.0、2.0、4.0μm)にして示している。図35をランダムパターンの特性である図16(a)と比べると、w=0.1、0.2μm(いわゆる回折光が発生しないナノ構造の領域)の曲線を除いて細かいうねりが存在することが分かる。これはチェッカーパターンによる回折で空気層側に回折光が発生したり消滅したりするためで、方位によって光強度に分布があることを示しており、周期パターン固有の問題である。
このチェッカー形状をなす表面構造と図4(b)で示した千鳥格子(幅wの四角の部分が凹となる側)をなす表面構造との、1回目、および2回目の光取り出し効率を図19(b)に付記している(d=0.70μm、それぞれ曲線5e、5f、5E、5F)。千鳥パターンの2回目の光取り出し効率が大きくなるのは図23で紹介した現象と同じで、千鳥パターンでは凸となる比率P=0.75となるためである。ランダムパターンの特性に比べ、チェッカーパターン、千鳥パターンともwの変化に伴いうねった特性を示すが、これも周期パターン固有の問題であり、方位による光強度の分布と関係している。
図36(a),(b)に、チェッカーパターンの表面構造から出射する1回目の取り出し光の視野角依存性の解析結果を付記している。段差d=0.7μm、境界幅w=0.5μmとし、図36(a)はλ=0.450μm、図36(b)はλ=0.635μmの条件である。実線(0度、90度の経度方位)、破線(45度、135度の経度方位)とも偏角に対する変動が大きく、両者の乖離も大きいうえ、波長によって形状が大きく変化することが分かる。方位による光強度の分布や色のアンバランスが発生することは、特許文献1に記載された発光装置同様、周期パターンに於ける致命的な欠点である。これらの課題は第1から8の実施の形態では全て克服出来ている。
境界回折効果は光の位相の不連続な部分を一定間隔以上隔てた場合に発生するので、この効果を極大化させるためには、限られた面積内で位相の不連続な部分の出現比率を極大化させることが必要になる。屈折面を無数の微小領域で分割し、微小領域同士の境界で位相が不連続になるとすると、2つの条件により前述の出現比率の極大化がなされる。一つ目の条件は各微小領域の面積が出来るだけ一つに揃うこと、2つ目の条件は隣り合う微小領域間にも位相差が存在することである。すなわち、微小領域の内に他のものより大きい面積のものがあれば、この大きな面積を分割した方が位相不連続の境界が増える。反対に微小領域の内に他のものより小さい面積のものがあるとすれば、これは他のものより大きい面積のものが存在することになり、この大きな面積を分割した方が位相不連続の境界が増える。この延長線として、各微小領域の面積が出来るだけ一つに揃い、少なくとも各微小領域の面積がある基準面積に対し0.5〜1.5倍の範囲(微小領域に内接する円のうち最大のものの直径が、基準になる直径に対し0.7〜1.3倍の範囲)に入ることが微小領域間の境界線の出現比率を極大化することになる。第1から第8の実施の形態はこの条件に従っている。また微小領域への分割を極大化することができても、隣り合う微小領域同士で位相が揃えば効果が薄くなる。従って隣り合う微小領域間にも位相差の存在、すなわちランダムな位相の割り当てが必要であり、第4や第5の実施の形態等はこの条件に従っている。すなわち、上記の実施形態の発光装置は、特許文献2に記載されている発光装置のような反射防止による効果ではなく境界回折効果を極大化させた効果によって取り出し効率の向上が実現されている。
なお、第1から7の実施の形態に於ける表面形状は磨りガラスや面粗し等の表面状態や特許文献2に記載された発光装置で示された表面状態とは異なる。第1や第4、第7の実施の形態では、表面を幅wの碁盤の目(または多角形の目)に分割し、一つ一つの目に凸と凹を1:1の比率で割り当てたもので、このパターンには固有の幅wというスケールと固有の微小領域の形状とが存在し、凸部の総面積と凹部の総面積の比率も1:1の関係に収まっている。これに対し、磨りガラスや面粗し等の表面状態は固有の幅wが存在せず微小領域の形状は不定形であり、凸部の総面積と凹部の総面積の比率も1:1の関係になる訳ではない。第2の実施の形態では、凸と凹の比率を50%からずらし、凹部の総面積と凸部の総面積の比率が1:1から外れるが、依然として固有の幅wが存在しており、凹部の総面積と凸部の総面積の比率も所定の値であり完全にランダムなパターンとは一線を画する。第3や第5の実施の形態でも固有の幅wが存在し、この幅wで定義される碁盤の目(または多角形の目)ごとに段差が異なっている。このように、上記実施の形態に於ける表面形状は、完全にランダムなパターンではなく、ある規則に沿ったランダムパターンと言える。
完全にランダムなパターンとの違いをもう少し考察してみる。図37(a)に示すように、幅4wのテーブル16の上に幅wのカード17を8枚ランダムに並べる。即ち8枚のカード17の総面積はテーブル16の面積の1/2である。ただし、カード17はテーブル16をはみ出さないとする。図37(b)はカード17の重なりを許して配列している。図37(c)はカード17の重なりを許さずに配列している。図37(b)ではカード17が重なった分だけ、カードの面積総和がテーブル面積の1/2より小さくなる。面積比がある比率から乖離すると光取り出し効率は劣化することは既に図23の曲線27a,27Aで示されている。図37(c)では面積比1/2を維持するものの、カード間にwよりも小さい微小な隙間jが発生し、これは図37(b)でも同じである。微小な隙間jが発生しその頻度が大きくなると、jを新たな境界幅と見ることができ、図22からわかるようにj<0.2μmの条件で光取り出し効率が大きく劣化する。また、図23で示されているように、微少な凹凸構造の比率P1が増大することで(曲線27a,27c,27dの順でw1=0.1μmの構造の比率P1が0.0,0.1,0.2と増大している)、トータルの凸となる比率が同じでも1回目、2回目の光取り出し効率がともに劣化している。このように完全にランダムなパターンだけでは、光取り出し効率を最大にする条件とはなり得ない。
上記の実施の形態で用いたランダムパターンの生成原理は図37のものとは異なる。上記の実施の形態では面積比はある比率に保たれ微小間隔j等の、幅wより小さいスケールは発生することはない。このように、上記実施の形態に於ける表面形状は、完全なランダムなパターンではなく、光取り出し効率を極大化するための規則に沿ったランダムパターンと言える。
また、第1から8の実施の形態に於ける表面形状が引き起こす現象は回折現象の一つである。図5で示したように、回折現象では表面形状を平均する平坦な基準面に対し仮想的に屈折する光線を0次回折光(全反射の場合には表れない)とし、この光を方位の基準としてシフトした方位に高次の回折光が発生する。本願のようなランダムな表面形状では0次以外の回折光の伝播方位がランダムになる。これに対し磨りガラスや面粗しは回折現象ではなく屈折現象の一つであり、デコボコした屈折面においてその面法線の方位がランダムになることで屈折の方位もランダムになっているだけである。すなわち、平行平板の上に第1から7の実施の形態に於ける表面形状を形成し、透かして見ると反対側の像の輪郭がはっきりと見える。これは表面形状で回折分離する光の中に0次回折光が必ず存在し、この光が反対側の像の輪郭を維持させている。これに対し、磨りガラスや面粗しでは0次回折光に相当する光が存在せず、透かして見ると反対側の像の輪郭がぼやけたものになる。特許文献2では表面の突起物により光が"素直に空気中に放射される"の表現があるだけで回折という表現が無く、"素直"という言葉をスネルの法則(屈折の法則)に従うと解釈でき、その意味では磨りガラスや面粗しと同じ部類に入ると理解でき、本願発明とは別のものであると言うことができる。
ちなみに、特許文献2に開示された技術の特徴は、透明絶縁基板の上に複数の透明な突起物を完全にランダムに配置することにあり、本願のように凸部と凹部とを同じ形状の微小領域の一つ以上の集合体として且つ凸部と凹部の存在比率を特定の割合にするという特徴は記載も示唆もされていない。例えば第1の実施形態において、凹部と凸部とを入れ替えた構造または微小領域の高さと深さとを入れ替えた構造は元の構造とほぼ同じ構造になるが、特許文献2に記載された発光装置ではそうはならない。このような例示的な実施形態の特徴により顕著な光取り出し効果を奏することは本願発明者らが初めて見出したものであり、特許文献2には上記実施形態のような顕著な効果は記載されていない。特許文献2に記載された発光装置では単位面積当たり5000〜106個/mm2の数で幅0.4〜20μmの突起物が完全なランダムな配置で与えられており、形式的には上記実施形態の発光装置の一部がこの発光装置の中に含有される形にはなるが、突起物とそれ以外の部分との形状の関係および存在比率の関係、さらにはそのような関係が存在して初めて奏される効果が記載も示唆もない以上、実質的には上記の実施形態は特許文献2に開示された技術には含まれず、特許文献2に開示された発明と本願発明とは全く別のものであると言うことができる。
なお、第1から6の実施の形態では凹凸形状で光の位相をシフトさせた。位相のシフトは凹凸形状以外でも実現でき、例えば凹部に対応した領域と凸部に対応した領域で多層膜の厚さや屈折率条件を変えることでも可能である。この場合でも、上記実施の形態と同じ効果が得られることは言うまでもない。また、第1から8の実施の形態はそれぞれ独立して成り立つのではなく、それぞれの一部を組み合わせて、新たな実施例とすることも考えられる。また、第1から8の実施の形態では有機エレクトロルミネセンス素子を例にとって説明したが、屈折率が1より大きい媒質内で発光する素子であれば全てに適用できる。例えば、LEDや導光板などへの適用も可能である。さらに、発光装置が光を出射する媒質は空気に限定されない。上記実施形態の表面構造は、透明基板の屈折率が、透明基板が接している媒質の屈折率より大きい、特に0.1以上大きい場合に適用できる。
(第9の実施の形態)
次に、第9の実施の形態を説明する。上述の第1〜第8の実施の形態における表面構造は、屈折率の異なる2つの領域がランダムに配置された構造を有している。これに対し、本実施の形態における表面構造は、屈折率の高い領域と低い領域とがランダムに配置されるのではなく、ある程度ランダム性が抑制された構造を有している。なお、図21に例示されているように、表面構造は必ずしも発光装置の表面に設けられる必要はなく、発光装置の内部に設けられていてもよい。このため、以下の説明では、「表面構造」の用語の代わりに、「光拡散層」の用語を用い、光拡散層を含むシートを「光学シート」と称する。
次に、第9の実施の形態を説明する。上述の第1〜第8の実施の形態における表面構造は、屈折率の異なる2つの領域がランダムに配置された構造を有している。これに対し、本実施の形態における表面構造は、屈折率の高い領域と低い領域とがランダムに配置されるのではなく、ある程度ランダム性が抑制された構造を有している。なお、図21に例示されているように、表面構造は必ずしも発光装置の表面に設けられる必要はなく、発光装置の内部に設けられていてもよい。このため、以下の説明では、「表面構造」の用語の代わりに、「光拡散層」の用語を用い、光拡散層を含むシートを「光学シート」と称する。
本実施の形態では、第8の実施の形態において説明した構成と同様、複数のナノ粒子(以下、「ビーズ」と称することがある。)と、その周囲を埋める透明媒質(バインダ)とによって光拡散層が形成されている。この光拡散層は、光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、低周波成分が抑制された構造を有している。低周波成分を抑制することにより、回折光の出射方向の中心を0次光の出射方向からずらすことができるという効果が得られる。これにより、臨界角を超える角度で入射する光を効果的に取り出し、全体的な光取り出し効率を向上させることができる。以下、この効果について、より詳細に説明する。
図38Aは、ランダムな凹凸パターンを有する光拡散層60を示す平面図である。光拡散層60は、ランダムに配置された複数の第1の微小領域601(図38Aにおいて白色の四角形で示す領域)および複数の第2の微小領域602(図38Aにおいて黒色の四角形で示す領域)によって形成されるランダムパターンを有する。複数の第1の微小領域601の各々は凹部であり、複数の第2の微小領域602の各々は凸部である。凹部と凸部の出現確率はともに1/2である。
図38Bは、図38Aの光拡散層60におけるランダムパターンをフーリエ変換し、空間周波数成分の振幅を示した図である。ここで、「パターンをフーリエ変換する」とは、第1の微小領域601および第2の微小領域602によって生じる光の位相のずれを光拡散層60の面上の座標x、yについての2次元関数として表したときのフーリエ変換を意味する。ここでは、第1の微小領域601が凹部、第2の微小領域602が凸部であるため、パターンのフーリエ変換は、光拡散層60上の平坦部の高さの2次元分布あるいは屈折率の2次元分布をフーリエ変換したものともいえる。図38Bの中心は、空間周波数が0の成分(直流成分)を表している。図38Bにおいて中心から外側に向かうに従い、空間周波数が高くなるように表示している。図38Bから理解されるように、図38Aの光拡散層60におけるランダムパターンでは、低周波成分が比較的多く存在する。
図39A、図39Bおよび図39Cはそれぞれ、光が光拡散層60に入射角度θx=0°、20°および40°で入射した場合における、光拡散層60から出射した光の拡散パターンを計算により求めた結果を示す図である。図39A、図39Bおよび図39Cから理解されるように、光拡散層60から出射する拡散光(0次以外の次数の回折光)は、光拡散層60から出射する非拡散光(0次光)の出射方向を中心として拡散する。
図40は、光拡散層60から出射する拡散光を模式的に示す図である。図40に示すように、光拡散層60は、透明基板61の表面に設けられている。発光部(図示せず)からの光は、透明基板61を透過した後、光拡散層60に到達する。上述したように、光拡散層60から出射する拡散光は、光拡散層60から出射する非拡散光(0次光)の出射方向(図40中の一点鎖線の矢印で示す方向)を中心として拡散する。そのため、光が臨界角を超える入射角度で光拡散層60に入射した場合には、光拡散層60から出射した拡散光の一部しか外部に取り出すことができない。したがって、この場合には光の取り出し効率が大きくは改善しないという問題が生じる。
この問題は、図41Aに示すような光学シート15を用いることにより、解決することができる。光学シート15は、第1の微小領域154および第2の微小領域155が配列方向(x方向またはy方向)に3個以上連続しないようにランダム性が制限された光拡散層151を有している。このような光拡散層151によれば、以下に示すように、臨界角を超えて入射する光の取り出し効率を向上させることができる。
図41Bは、図41Aの光拡散層151におけるパターンをフーリエ変換し、空間周波数成分の振幅を示した図である。図41Bの中心は、空間周波数が0の成分(直流成分)を表している。図41Bにおいて中心から外側に向かうに従い、空間周波数が高くなるように表示している。図41Bから理解されるように、このパターンでは、図38Bと比較して、低周波成分が抑制されている。
図42A、図42Bおよび図42Cは、それぞれ、光が光拡散層151に入射角度θx=0°、20°および40°で入射した場合における、光拡散層151から出射した光の拡散パターンを計算により求めた結果を示す図である。図43は、本計算において想定した発光装置1の構成を模式的に示す断面図である。発光装置1は、反射電極11と、発光装置12と、透明電極13と、透明基板14と、光拡散層151を有する光学シート15がこの順に積層された構造を有している。本計算では、第1の微小領域154(凹部)の屈折率および空気層16の屈折率をともに1.0、第2の微小領域155(凸部)の屈折率および透明基板14の屈折率をともに1.5、光拡散層151に入射する光の波長を550nm、第1の微小領域154および第2の微小領域155の各々の単位大きさwを0.6μm、第1の微小領域154と第2の微小領域155との高低差hを0.6μmとした。なお、単位大きさwとは、図41Aに示すように、平面視における第1の微小領域154および第2の微小領域155の各々の一辺の長さをいう。
図42Aから理解されるように、光が光拡散層151に入射角度θx=0°で入射した場合における拡散パターンの計算結果は、図41Bに示すフーリエ変換の結果と同様である。これは、光が光拡散層151に入射したときの光のフラウンホーファ回折像は、回折面で与えられる位相差をフーリエ変換した結果と一致するためである。すなわち、0次以外の次数の回折光(拡散光)は、0次光(非拡散光)の出射方向とは異なる方向を中心に拡散する。また、図42Bおよび図42Cから理解されるように、光拡散層151から出射する拡散光は、入射角度θx>0°の場合においても、光拡散層151から出射する非拡散光の出射方向とは異なる方向を中心に拡散する。この結果から、図41Aに示す構造のように、低い空間周波数成分を抑制することにより、どのような入射角度の光についても、0次光である非拡散光の出射方向とは異なる方向を中心に拡散させることが理解できる。
次に、光拡散層151におけるパターンについて、空間周波数に基づいたより詳細な考察を行う。図44は、光拡散層151におけるパターンをフーリエ変換することにより得られる空間周波数のうち、x方向またはy方向における1次元分布を示す図である。図44において、横軸は、パターンの空間周波数を示し、縦軸は、空間周波数の強度を任意単位で示している。図44において、太い実線のグラフは、図41Aに示すランダム性が制限されたパターンの空間周波数の1次元分布を示し、破線のグラフは、図38Aに示す完全にランダムなパターンの空間周波数の1次元分布を示している。また、細い実線のグラフは、一般に白色雑音と呼ばれるパターン(例えば、ランダムな大きさを有する構造をランダムな位置に並べたパターン)の空間周波数の1次元分布を示している。
図44に示すように、ランダム性が制限されたパターンの空間周波数は、1/(2w)付近の空間周波数においてピークを有する。さらに、このパターンの空間周波数成分では、1/w近傍における高い空間周波数および0近傍における低い空間周波数がそれぞれピークに比べて抑制されている。すなわち、1/w近傍および0近傍の空間周波数が抑制され、且つ、1/(2w)付近の空間周波数をピークとする山形の強度分布を有している。当該強度分布曲線は、例えば、半値幅が1/(2w)程度の広がりを持つ。
光拡散層151は、例えば当該強度分布曲線のピークとなる成分1/(2w)近傍で、発光素子の発光波長のスペクトル幅Δλ以上の広がりを持つように設計され得る。すなわち、当該強度分布曲線が1/(2w±Δλ/2)以上の広がりを有するように光拡散層151が設計され得る。これにより、発光素子から発する波長の異なる光を効果的に取り出すことができる。光の波長の逆数よりも大きい空間周波数は光の回折に寄与しないので、1/w近傍およびそれ以上の高い空間周波数がピークに対して抑制されることにより、光拡散層151に入射した光のうちより多くの光を拡散光に変換することができる。さらに、0近傍における低い空間周波数がピークに対して抑制されることにより、光拡散層151から出射した拡散光のうち、0次光の出射方向近傍に出射した拡散光を抑制することができる。一方、図38Aに示すランダムパターンでは、0近傍における低い空間周波数においてピークを有する。また、白色雑音のパターンでは、全ての空間周波数が一定の振幅範囲内に存在する。
以上のように、図41Aに示す光拡散層151は、例えば図38Aに示す光拡散層60とは全く異なる性質を示すことが理解される。このような光拡散層151を発光装置の表面に設けた場合、図43に示すように、光拡散層151から出射する拡散光は、光拡散層151から出射する0次光の出射方向と異なる方向を中心に拡散する。これに対し、図38Aに示すようなランダムな光拡散層60から出射する拡散光は、図40に示すように、0次光(破線)の出射方向を中心に拡散する。したがって、図41Aに示すような低周波成分が抑制された光拡散層151は、低周波成分が抑制されていない光拡散層60と比べて、臨界角を超える入射角度で光拡散層151に入射した光を、効率良く外部に取り出すことができる。
このような空間周波数の低周波成分が抑制された構造は、図41Aに限らず、様々な凹凸パターンで実現可能である。また、凹凸によらず、光を拡散させる複数の粒子を透明媒質中に分布させた構成によっても実現可能である。そのような粒子は、例えば、周囲の透明媒質とは屈折率の異なる単一の透明材料によって構成され得る。また、周囲の透明材料の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する部分と、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する部分とを有していてもよい。後者の例として、外部構造(外殻部)と、外部構造および周囲の透明媒質とは屈折率の異なる少なくとも1つの内部構造(コア)とを有する粒子が考えられる。外殻部は、例えばガラスなどの樹脂その他の透明材料によって形成され得る。一方、コアは、例えば空気や窒素などの気泡その他の透明材料によって形成され得る。上記の構成以外にも、各粒子は、第1の屈折率を有する粒子と、第2の屈折率を有する粒子とが結合した構造を有していてもよい。
各粒子が単一の透明材料によって構成される場合、光拡散層に平行な1つの方向についての各粒子の長さの平均値をwとすれば、上記の議論がそのまま適用できる。また、各粒子が屈折率の異なる外殻部および少なくとも1つのコアを含む場合、光拡散層に平行な1つの方向についてのコアの長さの平均値をwとすれば、上記の議論がそのまま適用できる。さらに、各粒子が第1の屈折率を有する粒子と、第2の屈折率を有する粒子とが結合した構造を有する場合、光拡散層に平行な1つの方向についての第1の屈折率を有する粒子の長さの平均値をwとすればよい。すなわち、本実施の形態における光拡散層では、その屈折率分布をフーリエ変換したとき、空間周波数が1/(2w)近傍の成分の振幅がピークとなり、0近傍の成分の振幅は、ピーク値よりも小さい。より具体的には、光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、空間周波数0〜1/(2w)の成分の平均値は、1/(2w)の成分の平均値よりも小さい。そのように複数の粒子の構造および分布を決定することにより、光取り出し効率を高くすることができる。以下、そのような粒子を用いた光拡散層の例を説明する。以下の説明では、光を拡散させる粒子を「ビーズ」と称することがある。
屈折率の異なる2つの媒質の界面での光の全反射を防ぐためには、上述のように、屈折率の異なる複数の領域を界面に沿って配列することが効果的である。上記の各実施の形態では、複数の領域を主に凹凸構造によって実現したが、本実施の形態では、複数のビーズを2次元または3次元的に並べた構造によってこれを実現する。ここで、例えば屈折率の異なる中空のビーズと中空でないビーズ(中実ビーズ)とを多数混ぜあわせて塗布などの方法で光拡散層を形成した場合、たとえば図45Aに示すように、それらのビーズの配列は2次元的にランダムな配列となり、同じ屈折率を有する粒子が多数連続する部分が生じる可能性がある。図45Aにおいて、黒丸は中実ビーズを、白丸は中空ビーズを表す。
図45Bは、図45Aに示すビーズによる屈折率分布をフーリエ変換し、空間周波数成分の振幅を示した図である。図45Bの中心は、空間周波数が0の成分(直流成分)を表している。図45Bにおいて中心から外側に向かうに従い、空間周波数が高くなるように表示している。図の中心部分において強度の高い部分が存在することから、図45Aに示す光拡散層では、低周波成分が抑制されないことがわかる。
一方、図46Aに示すように、周囲の媒質とは屈折率の異なる領域(図中の白丸)同士が所定の距離以下にならないように、孤立させて配置すると、そのパターンのフーリエ変換は、図46Bに示すものになる。中心付近の低周波成分が抑制されていることがわかる。そこで、本実施の形態では、図46Aに示すような中空の粒子を1層に配置した光拡散層を用いることで、低周波成分を除去し、光取り出し効率の向上を実現する。
図47Aは、屈折率が1.5のガラスからなる球状の外殻部(図中の黒い部分)と、その内部の気泡(図中の白い部分)とから構成された中空ビーズを1層に配置した例を示している。1つのビーズの直径は、例えば0.3μmから4μmであり、気泡の直径は、直径の40%から90%である。このような複数のビーズが2次元的にランダムに配列された光拡散層を用いてもよい。ここで、複数のビーズの周辺部(図中の灰色の領域)は、例えば屈折率が1.5の樹脂で埋められており、これによって各ビーズが固定される。
図47Bは、図47Aに示すパターンにおける屈折率分布をフーリエ変換して空間周波数成分の振幅を示した図である。図47Bに示されるように、このパターンでも低周波成分が抑制できていることがわかる。すなわち、複数の中空ビーズを2次元的にランダムに配列した構成でも、低周波成分を抑制した光取り出し構造を実現できていることがわかる。
図48Aは、図47Aに示す構成における中空ビーズの密度を低くした構成例を示している。図48Bは、図48Aに示すパターンにおける屈折率分布をフーリエ変換して空間周波数成分の振幅を示した図である。この構成でも低周波成分が抑制されており、光取り出し効果を高める上で有効である。
(第9の実施の形態の変形例)
続いて、第9の実施の形態の変形例を説明する。中空のビーズを最密に配置すると図49Aに示すようなパターンになり、そのパターンをフーリエ変換すると図49Bに示すように特定の周波数成分に集中したパターンとなる。このようなパターンは回折格子と同様であり、入射光の波長によって拡散方向が異なるため、色ムラを引き起こすおそれがある。そこで、本変形例では、内部の屈折率の空間分布が非対称であるビーズを多数配列したものを光拡散層として用いる。
続いて、第9の実施の形態の変形例を説明する。中空のビーズを最密に配置すると図49Aに示すようなパターンになり、そのパターンをフーリエ変換すると図49Bに示すように特定の周波数成分に集中したパターンとなる。このようなパターンは回折格子と同様であり、入射光の波長によって拡散方向が異なるため、色ムラを引き起こすおそれがある。そこで、本変形例では、内部の屈折率の空間分布が非対称であるビーズを多数配列したものを光拡散層として用いる。
図50A〜図50Cは、本変形例における光拡散層の構成例を示す図である。図50Aは、基本構造である1つのビーズを示している。このビーズは、例えば屈折率が1.5のガラスからなる球状の外殻部(図中の黒い部分)と、その内部の気泡(図中の白い部分)とから構成されており、気泡の位置は、外殻部によって囲まれる領域の中心からずれている。これにより、各粒子の内部の屈折率分布に偏りが生じている。1つのビーズの直径は、例えば0.3μmから4μmであり、気泡の直径は、直径の40%から90%である。
図50Bは、このような複数のビーズが2次元的にランダムに配列された光拡散層を示している。ここで、複数のビーズの周辺部(図中の灰色の領域)は、例えば屈折率が1.5の樹脂で埋められており、これによって各ビーズが固定される。粒子が球形である場合、図50Aに示すような粒子を用いても、3次元的に回転するので、屈折率の偏りが変化する。
図50Cは、このような屈折率分布を有するパターンをフーリエ変換によって空間周波数成分の振幅を示した図である。ビーズ同士が最密に配置された図50Bに示す構成においても、低周波成分が抑制できていることがわかる。すなわち、各ビーズの屈折率分布に偏りをもたせることにより、ビーズを最密に配置した場合でも、低周波成分を抑制した光取り出しパターンを実現できている。
図50Cに示すフーリエ変換結果に生じる強い輝点は、周囲の媒質とは屈折率の異なる部分が回折格子と同様の場所に周期的に存在する場合に生じる。これは、球場の粒子の3次元的な回転により、生じやすくなる。このような輝点は、粒子の形状を円盤状にすることにより、除去することができる。
図51Aは、円盤状のビーズの単位構造の一例を示す図である。図51Bは、図51Aに示すビーズを平面内に最密に配置した光拡散層を示す図である。図51Bに示すように、このような構造を採用することにより、屈折率の偏りを粒子内で制御する事ができる。図51Cは、このようなパターンにおける屈折率分布をフーリエ変換して空間周波数成分の振幅を示した図である。図51Cに示すように、低周波成分が抑制されるとともに、周期性に由来する輝点を低減させることができる。これにより、色ムラを低減させることが出来る。
各ビーズにおける屈折率の偏りは、粒子形状が球である場合に限らず、他の形状の粒子を用いた場合でも実現可能である。例えば、図52Aに示す長軸と短軸とを有する楕円体形状の粒子を用いてもよい。図52Bは、このような複数のビーズを2次元的に配列した光拡散層の一例を示している。図52Cは、この構成における空間周波数成分の振幅を示している。このような構成でも、低周波成分を抑制できていることがわかる。また、粒子の形状を球から変更するのではなく、例えば図52Dに示すような屈折率の異なる2つの粒子を固定したものを配列した構成によっても同様の効果を得ることが出来る。
また、1つのビーズの中に複数の気泡を設けてもよい。図53Aは、内部に2つの気泡をもつビーズを示している。図53Bは、このようなビーズが多数2次元的に配列された光拡散層を示す平面図である。図53Cは、この構成における空間周波数成分の振幅を示している。このような構成においても、低周波成分を効果的に除去することができる。
本実施の形態のような複数のビーズによる光拡散層を、例えば図54に示すように、発光装置の内部に設けることができる。図54に示す発光装置1Cは、反射電極層11と、発光層12と、透明電極層13と、高屈折率層14Cと、光拡散層151Cを有する光学シート15Cと、透明基板16Cとを備えている。光拡散層151Cは、透明電極層13と透明基板16Cとの間に設けられている。透明基板16Cの屈折率は例えば1.4〜1.65であり、高屈折率層14Cの屈折率は、例えば透明基板16Cの屈折率以上である。透明基板16Cの材料としては、例えばガラス及び樹脂等の透明材料を用いることができる。高屈折率層14Cの材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、TiO2(酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、Ta2O5(五酸化タンタル)、ZrO2(ジルコニア)及び樹脂等を用いることができる。
このような構成において、透明基板16Cを例えばガラスで構成する場合、粒子を固定する樹脂として、ガラスよりも高い屈折率の媒質が用いられ得る。この場合、粒子の気泡が密封されない開放構造でも、内部の屈折率が高くなるだけで効果は変わらない。
本実施の形態におけるビーズには、例えば中空シリカ粒子を用いることができる。種々のサイズの外径を有する中空シリカ粒子が市販されており、入手可能である。これ以外にも、例えばスチレン、架橋スチレン、変形スチレン・ブタジエンを用いた中空ポリマー粒子を用いることができる。ビーズは上記のものに限らず、屈折率n1の第1の部分と屈折率n2(<n1)の第2の部分とを含み、光の回折を生じさせる任意の粒子を用いることができる。また、上記の説明における気泡は、空気に限らず、周囲の媒質とは屈折率の異なる物質であればよい。
複数の拡散粒子を用いた光拡散層は、上記の例に限定されない。例えば、上記の各例では、構造が全く同じ多数の粒子を透明媒質内に分布させているが、異なる構造の粒子が混在していてもよい。各粒子が周囲の媒質の屈折率とは異なる屈折率の部分を含み、光拡散層に平行な方向についての各粒子における当該部分の長さの平均値をwとするとき、光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも低くなるように、複数の粒子の構造および分布が決定されていればよい。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る光学シートおよび発光装置は、光の取り出し効率を大幅に向上させる上、出射光の視野角特性も良好なので、ディスプレイや光源等として有用である。
1 基板
2 電極
3 発光層
4 透明電極
5 透明基板
6 空気
307 中空部
308 バインダ
309 外殻部
310a 実効的に屈折率naの微小体A
310b 実効的に屈折率nbの微小体B
13 表面構造
S 発光点
2 電極
3 発光層
4 透明電極
5 透明基板
6 空気
307 中空部
308 バインダ
309 外殻部
310a 実効的に屈折率naの微小体A
310b 実効的に屈折率nbの微小体B
13 表面構造
S 発光点
Claims (15)
- 入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、
前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する少なくとも1つのコアと、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、前記少なくとも1つのコアを覆う外殻部とを有し、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記コアの長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
光学シート。 - 前記複数の粒子は、前記透明媒質中に2次元的にランダムに配置されている、請求項1に記載の光学シート。
- 前記複数の粒子の各々は、非対称な屈折率分布を有している、請求項1または2に記載の光学シート。
- 各粒子において前記少なくとも1つのコアの数は1個または2個である、請求項1から3のいずれかに記載の光学シート。
- 前記外殻部はガラスであり、前記コアは空気である、請求項4に記載の光学シート。
- 前記複数の粒子の各々において、前記少なくとも1つのコアの位置は、前記外殻部で囲まれた領域の中心からずれている、請求項1から5のいずれかに記載の光学シート。
- 前記複数の粒子の各々の形状は球状であり、各粒子の直径は0.3μm〜4μmであり、前記コアの直径は、前記粒子の直径の40%〜90%である、請求項1から6のいずれかに記載の光学シート。
- 前記複数の粒子の各々の形状は円盤状である、請求項1から6のいずれかに記載の光学シート。
- 前記複数の粒子の各々の形状は楕円体状である、請求項1から6のいずれかに記載の光学シート。
- 入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、
前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する粒子と、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する粒子とが結合した構造を有し、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記第1の屈折率を有する粒子の長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
光学シート。 - 入射した光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層を備え、
前記光拡散層は、各々が第1の屈折率を有する複数の粒子と、前記第1の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質中において、他の粒子と接触しないように配置されており、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての各粒子の長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
光学シート。 - 光を発する発光層と、
前記発光層から生じた光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層と、
を備え、
前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する少なくとも1つのコアと、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有し、前記少なくとも1つのコアを覆う外殻部とを有し、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記コアの長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
発光装置。 - 光を発する発光層と、
前記発光層から生じた光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層と、
を備え、
前記光拡散層は、複数の粒子と、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質の屈折率とは異なる第1の屈折率を有する粒子と、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する粒子とが結合した構造を有し、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての前記第1の屈折率を有する粒子のコアの長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
発光装置。 - 光を発する発光層と、
前記発光層から生じた光の少なくとも一部を回折により拡散する光拡散層と、
を備え、
前記光拡散層は、各々が第1の屈折率を有する複数の粒子と、前記第1の屈折率とは異なる屈折率を有し、前記複数の粒子の周囲を埋める透明媒質とを有し、
前記複数の粒子の各々は、前記透明媒質中において、他の粒子と接触しないように配置されており、
前記光拡散層に平行な1つの方向についての各粒子の長さの平均値をwとするとき、
前記光拡散層の面内の屈折率分布の空間周波数成分のうち、0〜1/(2w)の成分の平均値が、1/(2w)の成分の値よりも小さくなるように、前記複数の粒子の構造および分布が決定されている、
発光装置。 - 透光性を有する第1の電極層と、
第2の電極層と、
透明基板と、
をさらに備え、
前記発光層は、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に設けられ、
前記光拡散層は、前記第1の電極層と前記透明基板との間に設けられている、
請求項12から14のいずれかに記載の発光装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014016831A JP2015143756A (ja) | 2014-01-31 | 2014-01-31 | 光学シートおよび発光装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014016831A JP2015143756A (ja) | 2014-01-31 | 2014-01-31 | 光学シートおよび発光装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015143756A true JP2015143756A (ja) | 2015-08-06 |
Family
ID=53888841
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014016831A Withdrawn JP2015143756A (ja) | 2014-01-31 | 2014-01-31 | 光学シートおよび発光装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2015143756A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113270468A (zh) * | 2021-05-28 | 2021-08-17 | 武汉华星光电半导体显示技术有限公司 | 显示面板 |
JP2022017240A (ja) * | 2018-07-09 | 2022-01-25 | 日本板硝子株式会社 | 画像表示装置に適したガラス板 |
-
2014
- 2014-01-31 JP JP2014016831A patent/JP2015143756A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022017240A (ja) * | 2018-07-09 | 2022-01-25 | 日本板硝子株式会社 | 画像表示装置に適したガラス板 |
JP7085051B2 (ja) | 2018-07-09 | 2022-06-15 | 日本板硝子株式会社 | 画像表示装置に適したガラス板 |
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