JP2015120704A - IL−1β抗体およびその結合断片の心血管関連の使用 - Google Patents

IL−1β抗体およびその結合断片の心血管関連の使用 Download PDF

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Abstract

【課題】急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管事象及び/又は心血管疾患の低減、予防又は処置のための方法を提供。【解決手段】心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である心血管疾患リスク因子の既往を有する対象に、有効量の抗IL-1β結合抗体又はその結合断片を該対象に投与する。更に、顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患等のリスク因子既往の患者にも使用できる。【選択図】なし

Description

関連出願
本出願は、2010年3月11日付で出願された米国仮特許出願第61/313,001号、2009年10月16日付で出願された米国仮特許出願第61/252,571号および2009年5月29日付で出願された米国仮特許出願第61/182,679号の恩典を主張するものであり、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本開示は広くは、心血管事象および/または心血管疾患(例えば、急性心血管疾患もしくは慢性心血管疾患)の低減、予防または処置のためのIL-1β結合分子(例えば、IL-1β結合抗体およびその断片)に関する。
発明の背景
炎症は過去10年間にわたって心血管疾患の発病での中心テーマとなっており、広範囲の心疾患が炎症およびサイトカイン調節と関連付けられている(Mehra et al., 2005, J. Leukocyte Biol. 78:805-818(非特許文献1))。炎症性サイトカインはさまざまな形態のストレス/損傷に反応して、心筋細胞を含む、心筋中のあらゆる有核細胞型によって分泌されうる。それらは炎症性心筋炎、同種移植の拒絶反応、心虚血状態、うっ血性心不全(CHF)および再灌流傷害といった多様な病態において上昇する。
IL-1βは、単球およびマクロファージを含むいくつかの異なる細胞型によって分泌される炎症性サイトカインである。炎症反応の一部として放出される場合、IL-1βはコルチコトロピン、血小板第4因子、プロスタグランジンE2 (PGE2)、IL-6およびIL-8のような他の炎症メディエータの誘導を通じて主に媒介される、一連の生物学的効果をもたらす。IL-1βは、ほとんど全ての細胞型に見られるIL-1受容体の活性化を通じて局所および全身の両方の炎症効果を誘導する。サイトカインのインターロイキン-1 (IL-1)ファミリーはいくつかの疾患状態に結び付けられている。IL-1ファミリーの成員にはIL-1α、IL-1βおよびIL-1Raが含まれる。これらのサイトカインの各々が、IL-1受容体(IL-1R1およびIL-1R2)に結合するその能力によって関連付けられるとはいえ、異なる遺伝子により発現され、かつ異なる一次アミノ酸配列を有し、異なっている。さらに、これらのサイトカインの生理学的活性を互いに区別することができる。
Mehra et al., 2005, J. Leukocyte Biol. 78:805-818
本開示は広くは、心血管事象および/または急性心血管疾患もしくは慢性心血管疾患を含む心血管疾患の低減、予防または処置のためのIL-1β結合分子(例えば、IL-1β結合抗体およびその断片)に関する。本開示はまた、心血管事象または疾患の低減によるなどの、心血管事象および/または心血管疾患の予防または処置のための方法に関する。
本開示は、対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、対象が、心血管事象の既往または少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象であり、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示は、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。いくつかの態様において、過去の心血管事象は初回の心血管事象である。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。いくつかの態様において、心血管事象を低減する方法は、次回または続発の心血管事象を低減する方法である。いくつかの態様において、心血管事象(例えば、次回または続発の心血管事象)は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、同じ種の心血管事象である。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、違う種の心血管事象である。
いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの態様において、対象はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。いくつかの態様において、リスク因子は肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である。いくつかの態様において、リスク因子は末期腎疾患である。いくつかの態様において、リスク因子は高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。
いくつかの態様において、対象は、上昇したC反応性タンパク質(CRP)のレベルを有する。
いくつかの態様において、対象は55歳を超える。
いくつかの態様において、対象は65歳を超える。
いくつかの態様において、対象は非高血圧性である。
いくつかの態様において、対象は管理不良高血圧を有する。
いくつかの態様において、対象は不整脈を有する。
いくつかの態様において、対象は「A型」の性格を有する。
いくつかの態様において、対象は座りがちな生活様式を有する。
いくつかの態様において、対象は糖尿病を有する。いくつかの態様において、糖尿病は2型糖尿病である。
いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である。いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの態様において、対象は2型糖尿病を持たない。
いくつかの態様において、対象は心筋梗塞または脳卒中の過去の心血管事象を生き抜いている。
いくつかの態様において、心血管事象の発生は心筋梗塞または脳卒中の心血管事象の再発である。
いくつかの態様において、対象は1つまたは複数の心血管疾患リスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。いくつかの態様において、リスク因子は肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である。いくつかの態様において、リスク因子は末期腎疾患である。いくつかの態様において、リスク因子は高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。
いくつかの態様において、対象は非高血圧性である。
いくつかの態様において、対象は管理不良高血圧を有する。
いくつかの態様において、対象は不整脈を有する。
いくつかの態様において、対象は「A型」の性格を有する。
いくつかの態様において、対象は座りがちな生活様式を有する。
いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、対象は急性心血管疾患(例えば、うっ血性心不全と関連しない)または慢性心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化心血管疾患の複数のリスク因子と関連する)を含む、心血管疾患を有する患者である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該リスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該方法を提供する。
いくつかの態様において、心血管事象は心筋梗塞、脳卒中、心停止、うっ血性心不全、心血管死、急性冠動脈症候群(例えば、診断された)、狭心症または血行再建術である。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。
いくつかの態様において、対象は、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する。
いくつかの態様において、対象は55歳を超える。
いくつかの態様において、対象は65歳を超える。
いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、対象は急性心血管疾患(例えば、うっ血性心不全と関連しない)または慢性心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化心血管疾患の複数のリスク因子と関連する)を含めて、心血管疾患を有する患者である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はコレステロール低下剤、スタチン、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、β遮断薬、降圧薬、利尿薬、アスピリン、ナイアシン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬、血管拡張薬、抗凝血薬、血小板凝集の阻害剤、血栓溶解薬またはジギタリスである。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および(例えば、併用で)血行再建術を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。
本開示はまた、対象における、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管疾患を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および(例えば、併用で)血行再建術を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、例えば、急性心血管疾患もしくは慢性心血管疾患のような、心血管疾患を有する患者における、またはアテローム性動脈硬化心血管疾患の複数のリスク因子(例えば、年齢55歳、年齢65歳、加えて以下の1つまたは複数: CABG、NSTEMI、高血圧、コレステロール上昇またはスタチン治療下、CRP上昇、6ヶ月以上の心筋梗塞/脳卒中の前歴、ACSまたはTIAの前歴、喫煙、PCI歴、2型糖尿病)を有する患者における投与を含め、MACE (主要有害心事象、例えば、心筋梗塞、脳卒中、CV死のような死および/またはその混成)の相対リスクの低下(例えば、より低いリスク、頻度、発生率、重症度)を達成するのに十分である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、最初のMACE事象、血行再建術(例えば、CABG)、あらゆる原因による死亡、末梢血管疾患、最初に確認される狭心症エンドポイント、うっ血性心不全(CHF)による入院、通院回数、入院期間、虚血性事象(例えば、狭心症および/もしくはCHF)による再入院、梗塞面積、拡張期容積、駆出率または利尿薬の使用の減少に間に合うようにするのに十分である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、プラークの退縮、プラークの安定化および/またはプラーク破綻の阻害を達成するのに十分である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベル、BNPレベル、トロポニンレベル、C-ペプチドレベル、LDLレベル、血圧または血糖(HbA1c)の減少を達成するのに十分である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、SAE、悪性腫瘍、低血糖症、重症感染率、感染率、免疫原性または心不全の減少または無増加を達成するのに十分である。
本開示はまた、血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、対象における急性高血圧を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、対象は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を有する。いくつかの他の態様において、対象は軽度から中程度の高血圧を有し、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。いくつかの態様において、降圧剤は静脈内に投与される。いくつかの態様において、降圧剤は、α/βアドレナリン遮断剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、抗アドレナリン作動剤、βアドレナリン遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿薬および血管拡張薬からなる群より選択される。いくつかの態様において、降圧剤はカルベジロール、ラベタロール、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、クロニジン、ドキサゾシン、グアナベンズ、グアナドレル、グアネチジン、グアンファシン、メカミラミン、メチルドパ、プラゾシン、レセルピン、テラゾシン、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベラパミル、アミロライド、ベンズチアジド、クロロチアジド、クロルサリドン、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メトラゾン、ポリチアジド、スピロノラクトン、トルセミド、トリクロルメチアジド、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、クレビジピンまたはミノキシジルである。いくつかの態様において、降圧剤はラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウムまたはクレビジピンである。
本開示はまた、対象における心血管事象または疾患(例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患)を低減する、予防するまたは処置する方法であって、医学的または外科的介入との組み合わせで(例えば、併用で) (例えば、その前に、間にまたは後に)抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。そのような抗体は治療有効量で投与されうる。そのような介入は治療的に有効でありうる。いくつかの態様において、医学的介入は、例えば、本明細書において記述される活性薬剤のいずれか1つまたは複数を含む、薬物または生物製剤のような、活性薬剤である。いくつかの態様において、医学的介入は、外来患者の医学的処置または手技である。いくつかの態様において、医学的介入は、入院患者の入院である。いくつかの態様において、外科的介入は、例えば、本明細書において記述される血行再建術のいずれか1つまたは複数を含む、血行再建術である。いくつかの態様において、外科的介入は、心臓弁修復術または置換術、冠動脈バイパス形成手術、心臓移植または心臓ポンプを含む。いくつかの態様において、外科的介入は両心室心臓ペースメーカー、内部除細動器(ICD)または心筋切除術を含む。いくつかの態様において、医学的介入は、禁煙薬物治療または禁煙カウンセリングである。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、(a) 心血管事象の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法を提供する。いくつかの態様において、過去の心血管事象は初回の心血管事象である。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。いくつかの態様において、心血管事象を低減する方法は、次回または続発の心血管事象を低減する方法である。いくつかの態様において、心血管事象(例えば、次回または続発の心血管事象)は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、同じ種の心血管事象である。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、違う種の心血管事象である。
本開示はまた、(a) 心血管事象を持つ対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法を提供する。いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつリスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該方法を提供する。いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置するための方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および(例えば、併用で)血行再建術を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
本開示はまた、血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、(a) 血行再建術を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
本開示はまた、対象における急性高血圧を処置する方法であって、(a) 急性高血圧を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。
上記の態様のいずれかおよび/または全てにおいて、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分でありうる。
本開示はまた、例えば、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階による、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のためなどの、上記の方法のいずれかおよび/または全てで用いるための薬学的組成物を提供する。
例えば、上記のものを含めて、さまざまな方法および薬学的組成物が本明細書において提供される。本開示はさらに、IL-1β結合抗体およびその結合断片、ならびに上記の方法および薬学的組成物のいずれかおよび/または全てでまたはそれとともに使用されうる適当な用量および投薬計画を提供する。
上記の方法および薬学的組成物のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約1 nMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約500 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約250 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約100 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約50 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約5 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約1 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約0.3 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は中和抗体である。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、結合抗体または断片がIL-1βのIL-1受容体I (IL-1RI)への結合を実質的に可能にするようなIL-1βエピトープに結合する。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1α、IL-1RまたはIL-1Raに検出可能に結合しない。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体の結合と競合する。上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体が結合するエピトープと同じものであるまたは実質的に同じものであるエピトープに結合する。上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を含む。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1βのGlu64を組み入れたエピトープに結合する。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1βのN末端のアミノ酸番号1〜34に結合する。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、ヒト化されたものまたはヒトのものである。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、3 mg/kgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、0.3 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、0.1 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、0.03 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、1回または複数回用量は少なくとも0.01 mg/kgの抗体または断片である。上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、0.03 mg/kg〜1 mg/kgの1回または複数回用量で投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、用量/対象体重比とは無関係に、固定用量として投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、100 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、25 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、10 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、少なくとも0.5 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1 mg〜100 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量は予め充填されたシリンジまたは送達装置を用いて投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、皮下注射、静脈内注射または筋肉内注射によって投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われる。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ週ごとに1度からおよそ12ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ2週ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ3ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ3ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、IL-1β結合抗体またはその結合断片の投与のための二つ以上の投薬間隔を含む、投薬計画が提供される。いくつかの態様において、投与量計画はIL-1β抗体またはその断片の投与のための少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の異なる投薬間隔を含む。いくつかの態様において、投与量計画はIL-1β抗体またはその断片の投与のための2つの異なる投薬間隔を含む。いくつかの態様において、投薬計画は、第1の投薬間隔がIL-1β抗体またはその断片の1回または複数回用量の投与を含み、かつ第2の投薬間隔がIL-1β抗体またはその断片の1回または複数回用量の投与を含み、かつ第1の投薬間隔は第2の投薬間隔よりも時間が短い、IL-1β結合抗体またはその結合断片の投与のための2つの異なる投薬間隔を含む。例えば、第1の投薬間隔は数日または数週間であってよく、かつ第2の投薬間隔は数ヶ月であってよい。いくつかの態様において、第1の投薬間隔は約5日かつ約28日、約7日かつ約21日、約12日かつ約16日または約14日である。いくつかの態様において、第2の投薬間隔は約1ヶ月かつ約3ヶ月、約1ヶ月かつ約2ヶ月または約1ヶ月である。いくつかの態様において、第1の投薬間隔は約7日であり、かつ第2の投薬間隔は約1ヶ月である。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔が約7日から約21日であり、かつここでその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月から約3ヶ月である。いくつかの態様において、初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔は約12〜16日であり、かつその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月から約2ヶ月である。いくつかの態様において、初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔は約14日であり、かつその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月である。
上記の方法、用量および/または投薬計画のいずれかおよび/または全てのいくつかの好ましい態様において、IL-1β結合抗体またはその結合断片(例えば、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片)は、心血管事象の1週間以内に、心血管事象の96時間以内に、心血管事象の72時間以内に、心血管事象の48時間以内に、心血管事象の24時間以内に、または心血管事象の12時間以内に最初に投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで該1回または複数回のその後の用量が、初回の用量とほぼ同じまたは初回の用量に満たない量である。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで少なくとも1回のその後の用量が、初回の用量よりも多い量である。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する。いくつかの態様において、IL-1β受容体アンタゴニストはアナキンラである。
いくつかの態様において、上記の方法のいずれかおよび/または全てがさらに、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を投与する段階を含むことができる。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はコレステロール低下剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はスタチンまたはHMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンもしくはその混合物またはエゼチミブ、ナイアシン、ベシル酸アムロジピンとの混合物)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はカルシウムチャンネル遮断薬(例えば、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル)またはβ遮断薬(例えば、エスモロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は降圧薬(例えば、ラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウム、クレビジピン)、利尿薬(例えば、チアジド利尿薬、クロルタリドン、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メトラゾン、塩酸アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン)またはアスピリンである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、ラミプリル、ラミプリラット、カプトプリル、リシノプリル)またはアンギオテンシンII受容体遮断薬(例えば、ロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は血管拡張薬である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は抗凝血薬(例えば、アセノクマロール、フェンプロクモン、ワルファリンヘパリン、低分子量ヘパリン)または血小板凝集の阻害剤(例えば、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、エプチフィバチド、アスピリン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は血栓溶解薬(例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はジギタリスである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はジゴキシンまたはネシリチドである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は酸素である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はトロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルジン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は硝酸塩(例えば、三硝酸グリセリン(GTN)/ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は鎮痛剤(例えば、硫酸モルヒネ)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はレニン阻害剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はエンドセリンA受容体阻害剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はアルドステロン阻害剤である。
本開示はまた、心臓事象または心血管疾患の低減、予防または処置で用いるための組成物の製造での、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の使用を提供する。
これらのIL-1β結合抗体およびその結合断片のほか、本明細書において提供される、適当な用量および投薬計画ならびに/あるいは抗IL-1β抗体またはその断片以外の活性薬剤を含む他の薬学的組成物も、例えば、以下を含め、上記の方法および/または薬学的組成物のいずれかでまたはそのいずれかとともに用いることができる。
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)うえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法および/または薬学的組成物。
心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)うえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象後の死亡を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該リスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および血行再建術を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管疾患を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および血行再建術を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
血行再建術後の対象における再狭窄を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における急性高血圧を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象または疾患(例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患)を低減する、予防するまたは処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、医学的または外科的介入との組み合わせで抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における血小板活性を阻害するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法および/または薬学的組成物。
心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 心血管事象の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象後の死亡を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 心血管事象を持つ対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつリスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における心血管事象を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および(例えば、併用で)血行再建術を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
血行再建術後の対象における再狭窄を低減するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 血行再建術を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
対象における急性高血圧を処置するうえで用いるための方法および/または薬学的組成物であって、(a) 急性高血圧を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を対象に投与する段階を含む、該方法および/または薬学的組成物。
本明細書によって、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のためになど、ある種の特性(Kd値またはIC50値のような)を有するIL-1β抗体またはその結合断片を用いる方法が提供される場合、これは同様に、これらの方法で用いるための薬物の製造でのそのような抗体またはその断片の使用を包含することを意味するものと理解されるべきである。さらに、本開示はまた、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のためになど、本明細書において提供される方法で用いるための、これらの特性を有するIL-1β抗体またはその結合断片ならびにこれらの抗体またはその断片を含む薬学的組成物を包含する。

[本発明1001]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象を低減する方法であって、 該対象が、心血管事象の既往または少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象であり、かつ 該心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、前記方法。
[本発明1002]
対象が、心血管事象の既往を有する対象であり、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、本発明1003の方法。
[本発明1005]
対象が、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往をも有する、本発明1002の方法。
[本発明1006]
リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、本発明1001または1005の方法。
[本発明1007]
リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、本発明1001または1005の方法。
[本発明1008]
リスク因子が肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である、本発明1001または1005の方法。
[本発明1009]
リスク因子が高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である、本発明1001または1005の方法。
[本発明1010]
対象が、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する、本発明1001または1002の方法。
[本発明1011]
対象が55歳を超える、本発明1001または1002の方法。
[本発明1012]
対象が非高血圧性である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1013]
対象が糖尿病を有する、本発明1001または1002の方法。
[本発明1014]
糖尿病が2型糖尿病である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1001または1002の方法。
[本発明1016]
対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1015の方法。
[本発明1017]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1018]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法。
[本発明1019]
心血管事象が心筋梗塞である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
心血管事象が脳卒中である、本発明1018の方法。
[本発明1021]
心血管事象がうっ血性心不全である、本発明1018の方法。
[本発明1022]
心血管事象が急性冠動脈症候群である、本発明1018の方法。
[本発明1023]
心血管事象が狭心症である、本発明1018の方法。
[本発明1024]
心血管事象が血行再建術である、本発明1018の方法。
[本発明1025]
血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、本発明1024の方法。
[本発明1026]
冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
対象が2型糖尿病を有さない、本発明1018の方法。
[本発明1028]
対象が心筋梗塞または脳卒中の過去の心血管事象を生き残ってきた、本発明1018の方法。
[本発明1029]
心血管事象の発生が心筋梗塞または脳卒中の心血管事象の再発である、本発明1018の方法。
[本発明1030]
対象が1つまたは複数の心血管疾患リスク因子の既往を有する、本発明1018の方法。
[本発明1031]
リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、本発明1030の方法。
[本発明1032]
リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、本発明1030の方法。
[本発明1033]
リスク因子が肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である、本発明1030の方法。
[本発明1034]
リスク因子が高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である、本発明1030の方法。
[本発明1035]
対象が非高血圧性である、本発明1018の方法。
[本発明1036]
対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1030の方法。
[本発明1037]
対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1036の方法。
[本発明1038]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、本発明1018の方法。
[本発明1039]
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該リスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、前記方法。
[本発明1040]
リスク因子が2型糖尿病ではない、本発明1039の方法。
[本発明1041]
心血管事象が心筋梗塞である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1042]
心血管事象が脳卒中である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1043]
心血管事象が心停止である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1044]
心血管事象がうっ血性心不全である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1045]
心血管事象が心血管死である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1046]
心血管事象が急性冠動脈症候群である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1047]
心血管事象が狭心症である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1048]
心血管事象が血行再建術である、本発明1039または1040の方法。
[本発明1049]
血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、本発明1048の方法。
[本発明1050]
冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、本発明1049の方法。
[本発明1051]
リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、本発明1039の方法。
[本発明1052]
リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、本発明1039の方法。
[本発明1053]
対象が、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する、本発明1039の方法。
[本発明1054]
対象が55歳を超える、本発明1039の方法。
[本発明1055]
対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1039の方法。
[本発明1056]
対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、本発明1055の方法。
[本発明1057]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、本発明1039の方法。
[本発明1058]
対象における心血管事象を処置する方法であって、 心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を該対象に投与する段階を含む、 前記方法。
[本発明1059]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がコレステロール低下剤、スタチン、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、β遮断薬、降圧薬、利尿薬、アスピリン、ナイアシン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬、血管拡張薬、抗凝血薬、血小板凝集の阻害剤、血栓溶解薬またはジギタリスである、本発明1058の方法。
[本発明1060]
対象における心血管事象を処置するための方法であって、 心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および血行再建術を該対象に投与する段階を含む、 前記方法。
[本発明1061]
血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、本発明1060の方法。
[本発明1062]
血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1063]
血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、本発明1062の方法。
[本発明1064]
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、本発明1058、1060または1062のいずれかの方法。
[本発明1065]
対象における急性高血圧を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1066]
対象が180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を有する、本発明1065の方法。
[本発明1067]
降圧剤が静脈内に投与される、本発明1065の方法。
[本発明1068]
降圧剤がラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウムまたはクレビジピンである、本発明1065の方法。
[本発明1069]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を投与する段階をさらに含む、本発明1001、1002、1018、1039、1060または1062のいずれかの方法。
[本発明1070]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がコレステロール低下剤である、本発明1069の方法。
[本発明1071]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がスタチン、またはHMG-CoA還元酵素阻害剤である、本発明1069の方法。
[本発明1072]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がカルシウムチャンネル遮断薬である、本発明1069の方法。
[本発明1073]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が降圧薬、利尿薬またはアスピリンである、本発明1069の方法。
[本発明1074]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンギオテンシンII受容体遮断薬である、本発明1069の方法。
[本発明1075]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が血管拡張薬である、本発明1069の方法。
[本発明1076]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が抗凝血薬または血小板凝集の阻害剤である、本発明1069の方法。
[本発明1077]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が血栓溶解薬である、本発明1069の方法。
[本発明1078]
少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がジギタリスである、本発明1069の方法。
[本発明1079]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約500 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約50 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、本発明1079の方法。
[本発明1081]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約5 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、本発明1080の方法。
[本発明1082]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が中和抗体である、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1083]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、結合抗体または断片がIL-1βのIL-1受容体I (IL-1RI)への結合を実質的に可能にするようなIL-1βエピトープに結合する、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1084]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1α、IL-1RまたはIL-1Raに検出可能に結合しない、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1085]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体の結合と競合する、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1086]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1βのGlu64を組み入れたエピトープに結合する、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1087]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1βのN末端のアミノ酸番号1-34に結合する、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1088]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、ヒト化されたものまたはヒトのものである、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1089]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、1 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1090]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.3 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1089の方法。
[本発明1091]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.03 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1090の方法。
[本発明1092]
1回または複数回用量が少なくとも0.01 mg/kgの抗体または断片である、本発明1089〜1091のいずれかの方法。
[本発明1093]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.03 mg/kg〜1 mg/kgの1回または複数回用量で投与される、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1094]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、用量/対象体重比とは無関係に、固定用量として投与される、本発明1001〜1078のいずれかの方法。
[本発明1095]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、100 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1094の方法。
[本発明1096]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、25 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1095の方法。
[本発明1097]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、10 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1096の方法。
[本発明1098]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、少なくとも0.5 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1094〜1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、1 mg〜100 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、本発明1094の方法。
[本発明1100]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量が予め充填されたシリンジまたは送達装置を用いて投与される、本発明1094〜1099のいずれかの方法。
[本発明1101]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、皮下注射、静脈内注射または筋肉内注射によって投与される、本発明1001〜1100のいずれかの方法。
[本発明1102]
抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われる、本発明1001〜1101のいずれかの方法。
[本発明1103]
初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ週ごとに1度からおよそ12ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、本発明1102の方法。
[本発明1104]
初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ2週ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、本発明1103の方法。
[本発明1105]
初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、本発明1104の方法。
[本発明1106]
初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ3ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、本発明1105の方法。
[本発明1107]
初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ3ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、本発明1105の方法。
ヒト対象における0.01、0.03、0.1、0.3または1.0 mg/kgの抗IL-1β抗体のIV投与後の血清濃度を示すグラフである。 ヒト対象における0.03、0.1および0.3 mg/kgの抗IL-1β抗体のSC投与後の血清濃度を示すグラフである。 ヒト対象における0.01、0.03、0.1、0.3または1.0 mg/kgの抗IL-1β抗体の投与後28日目の時点のCRPの変化率中央値を示すグラフである。 心筋梗塞動物モデルでの心エコー値の変化を示すグラフである。 無収縮セグメント(梗塞範囲の代理指標)、前壁(梗塞)の厚み、MPIまたはTeiインデックス(収縮期・拡張期複合機能不全の指標および心不全関連死の代理指標)ならびにTAPSE (右室機能の指標および心筋梗塞動物モデルでのAMI関連死の代理指標)の測定値を示すグラフである。 マクロファージによる内皮細胞からの炎症性サイトカインの放出の阻害を示すグラフである。 マクロファージによる平滑筋細胞からのサイトカインおよび分解酵素の放出の阻害を示すグラフである。 ApoEノックアウトマウスの大動脈におけるアテローム性動脈硬化病変の形成の低減を示すグラフである。 ApoEノックアウトマウスの大動脈におけるアテローム性動脈硬化病変の形成の低減を示すエンフェイス(en face)解析の写真である。
詳細な説明
本開示は、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管疾患の処置および/または予防のための方法および関連した製品に関する。これらの方法は、心血管疾患リスク因子の既往を有する対象においてなど、対象において心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術のような、心血管事象を低減する、処置するまたは予防するために用いることができる。これらの方法は、対象において心血管事象後の死亡を低減するために用いることもできる。本明細書において開示される抗IL-1β結合抗体または結合断片の使用は、例えば、いっそう高い安全性(例えば、副作用の低減)、いっそう高い効力、疾患の炎症性成分の標的化、および/または投薬頻度の低下のような、これまでに利用可能な選択肢に比べて潜在的な利点をもたらす。
インターロイキン-1(IL-1)ファミリーのサイトカインは、関節リウマチ(RA)、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、敗血症性ショック、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、移植片対宿主病、アテローム性動脈硬化、成人T細胞白血病、多発性骨髄腫、多発性硬化症、卒中発作、およびアルツハイマー病などのいくつかの疾患状態に関連づけられている。IL-1ファミリーメンバーには、IL-1α、IL-1β、およびIL-1Raが含まれる。IL-1受容体(IL-1R1、IL-1R2)に結合する能力によって関連しているが、これらのサイトカインはそれぞれ異なる遺伝子によって発現され、異なる一次アミノ酸配列を有する。さらに、これらのサイトカインの生理的活性も互いに区別され得る。
IL-1受容体シグナル伝達を破壊する化合物が、例えば上記の疾患のいくつかなどのIL-1介在性疾患を治療する治療薬として検討されてきた。これらの化合物には、組換えIL-1Ra(Amgen Inc.、カリフォルニア州、サウザンドオークス)、IL-1受容体「捕捉」ペプチド(Regeneron Inc.、ニューヨーク州、タリタウン)に加えて、動物由来IL-1β抗体および組換えIL-1β抗体ならびにそれらの断片が含まれる。IL-1βリガンドを直接の標的とする化合物は、特に、高い親和性を有するIL-1β抗体を投与する場合、上記の戦略を提供すると考えられている。
抗体、ヒト化抗体、及びヒト型に設計された抗体
本発明のIL-1(例えばIL-1β)結合抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、組換え抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、完全なヒト抗体、一本鎖抗体、および/または二重特異性抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、もしくは組換え技法を含むがこれらに限定されない公知の技法によって提供されるそれらの変種および誘導体を含む断片として提供され得る。
抗体は一般に重鎖ポリペプチド2本および軽鎖ポリペプチド2本を含むが、重鎖1本および軽鎖1本を有する単一ドメイン抗体、ならびに軽鎖を欠く重鎖抗体もまた意図される。重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと称される5種類の重鎖が存在する。これらの異なる種類の重鎖により、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む5つのクラスの抗体、それぞれIgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、およびIgMが生じる。同様に、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2種類の軽鎖が存在する。全長抗体は、定常ドメインおよび可変ドメインを含む。抗体の抗原結合断片に、定常領域が存在する必要はない。本明細書に開示する抗体の抗原結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびF(v)抗体断片が含まれ得る。以下にさらに詳述するように、IL-1β結合断片は、IL-1βと結合する抗体断片および抗原結合ポリペプチドを包含する。
抗体またはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖配列はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)および非CDRフレームワーク領域(FR)を有する可変領域を含む。本明細書で使用する「重鎖」および「軽鎖」という用語は、特記しない限り、それぞれ重鎖可変領域および軽鎖可変領域を意味する。重鎖CDRは、本明細書においてCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と称する。軽鎖CDRは、本明細書においてCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と称する。抗体配列中の可変領域およびCDRは、(i) 当技術分野において開発された一般規則に従って、または(ii) 公知の可変領域のデータベースに対して配列を整列させることによって同定することができる。これらの領域を同定する方法は、Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer, New York, NY, 2001、およびDinarello et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley and Sons Inc., Hoboken, NJ, 2000に記載されている。抗体配列のデータベースは、www.bioinf.org.uk/absの「The Kabatman」データベース(ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ、生化学&分子生物学学科、英国、ロンドンのA.C. Martinによって維持されている)、およびRetter et al., Nucl. Acids Res., 33(Database issue): D671-D674 (2005)に記載されているwww.vbase2. orgのVBASE2に記載されており、これらを通じてアクセスすることができる。「Kabatman」データベースウェブサイトはまた、CDRを同定するための一般的経験則も含んでいる。本明細書で使用する「CDR」という用語は、特記しない限り、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991において定義されるものと同様である。
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連抗原およびアジュバントを複数回皮下(sc)または腹腔内(ip)注射することによって動物で産生される。二官能性剤または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、または当技術分野で公知の他の薬剤を用いて、免疫する種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビターに関連抗原を結合させることによって、向上した抗体応答を得ることができる。
モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は一般的に高度に特異的であり、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、単一の抗原性部位に対して指向され得る。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、均一な培養により合成され、異なる特異性および特徴を有するその他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。
本発明に従って使用するモノクローナル抗体は、Kohler et al., (Nature, 256:495-7, 1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することもできるし、または組換えDNA法によって作製することもできる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。モノクローナル抗体は、例えばClackson et al., (Nature 352:624-628, 1991)およびMarks et al., (J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991)に記載されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
本開示の抗体を、当技術分野で周知であり、本明細書に記載される抗体のより小さな抗原結合断片として使用できることがさらに意図される。本発明は、全長重鎖2本および全長軽鎖2本を含むIL-1(例えばIL-1β)結合抗体を包含する。あるいは、IL-1β結合抗体は、IL-1βに対する結合活性を保持する一本鎖抗体または「ミニ」抗体のような構築物であってよい。そのような構築物は、例えば、大腸菌(E. coli)で発現させるための一本鎖抗体のPCRによるクローニングおよび組み立てなど、当技術分野において公知の方法により調製することができる(Antibody Engineering, The practical approach series, J. McCafferty, H. R. Hoogenboom, and D. J. Chiswell, editors, Oxford University Press, 1996に記載されている)。この種の構築物では、抗体分子の重鎖および軽鎖の可変部分をcDNAからPCR増幅する。次いで、得られた単位複製配列を、例えば第2PCR段階において、アミノ酸GlyおよびSerから構成される可動性のタンパク質リンカーをコードするリンカーDNAを介して組み立てる。このリンカーによって、抗原結合ポケットが再生されて、多くの場合に親の全長二量体免疫グロブリン分子に匹敵する親和性で抗原に結合するように、重鎖および軽鎖の可変部分が折りたたまれる。
IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の変種を包含する。変種には、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の1つまたは複数と同じまたは実質的に同じ親和性およびエピトープ結合の特異性を有する、1つまたは複数のアミノ酸配列置換、欠失、および/または付加を含むペプチドおよびポリペプチドが含まれる。したがって、変種には、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列に対する、親和性およびエピトープ結合の特異性に実質的な変化をもたらさない1つまたは複数のアミノ酸配列置換、欠失、および/または付加を含むペプチドおよびポリペプチドが含まれる。例えば、抗体または断片の変種は、抗体または断片に対する1つまたは複数の変化に由来してよく、この場合、変化した抗体または断片は開始配列と同じまたは実質的に同じ親和性およびエピトープ結合の特異性を有する。変種は、対立遺伝子変種もしくはスプライス変種のように天然に生じるものであってよく、または人為的に構築することもできる。変種は、そのような変種をコードする対応する核酸分子から調製することができる。本抗体およびIL-1β結合断片の変種は、軽鎖および/または重鎖アミノ酸配列中に、天然に生じた、または組換えDNA技法を用いる天然配列のインビトロ操作によって導入された変化を有し得る。天然に生じる変種には、外来抗原に対する抗体応答の生成中に、対応する生殖系列ヌクレオチド配列においてインビボで生成される「体細胞」変種が含まれる。
IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および結合断片の変種はまた、突然変異誘発技法によって調製することも可能である。例えば、抗体コード領域の至るところにアミノ酸変化を無作為に導入することができ、得られた変種をIL-1βに対する結合親和性または別の特性に関してスクリーニングすることができる。あるいは、軽鎖および/もしくは重鎖CDR、ならびに/またはフレームワーク領域などの、IL-1β抗体の選択される領域にアミノ酸変化を導入することができ、得られた抗体をIL-1βに対する結合または他の何らかの活性に関してスクリーニングすることができる。アミノ酸変化は、単一のアミノ酸相違から、CDR3のような所与のCDR内へのアミノ酸の複数置換の導入に及ぶ、CDRにおける1つまたは複数のアミノ酸置換を包含する。別の方法では、CDR内の少なくとも1つの残基をアラニンで置換することによって、CDR内の各残基のIL-1β結合に対する寄与を評価することができる。Lewis et al. (1995), Mol. Immunol. 32: 1065-72。次いで、より最適な配列を決定するために、IL-1βに対する結合に最適でない残基を変化させることができる。CDR3などのCDRの大きさを増加させるために、アミノ酸を挿入することによって作製された変種もまた包含する。例えば、大部分の軽鎖CDR3配列は9アミノ酸長である。9残基より短い抗体中の軽鎖配列は、CDRの長さを増加させるために適切なアミノ酸を挿入することによって、IL-1βに対する結合に関して最適化することができる。
軽鎖または重鎖の「鎖シャフリング」によって変種を調製することも可能である。Marks et al. (1992), Biotechnology 10: 779-83。単一の軽鎖(または重鎖)を、重鎖(または軽鎖)のレパートリーを有するライブラリーと組み合わせることができ、得られた集団を、IL-1βに対する結合などの所望の活性に関してスクリーニングする。これによって、重鎖および軽鎖両方のレパートリーを含むライブラリーで可能であるよりも、単一の軽鎖(または重鎖)と組み合わせた異なる重鎖(または軽鎖)のより多くの試料をスクリーニングすることが可能になる。
本発明のIL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の誘導体を包含する。誘導体には、化学的に修飾されたポリペプチドもしくはペプチド、またはその変種、断片、もしくは誘導体が含まれる。例には、1つもしくは複数のポリマー(水溶性ポリマーなど)、N結合型もしくはO結合型糖鎖、糖類、リン酸、および/または他のこのような分子の共有結合が含まれる。誘導体は、結合する分子の種類または位置が天然のまたは開始のペプチドまたはポリペプチドと異なるように修飾される。誘導体は、ペプチドまたはポリペプチド上に天然に存在する1つまたは複数の化学基の欠失をさらに含む。
IL-1β結合抗体および断片は二重特異性であってよい。二重特異性抗体または断片は、いくつかの立体配置のものであってよい。例えば、二重特異性抗体は、単一の抗体(または抗体断片)に似ているが、2つの異なる抗原結合部位(可変領域)を有し得る。二重特異性抗体は、化学的技法によって(Kranz et al. (1981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 5807)、「ポリドーマ(polydoma)」技法によって(米国特許第4,474,893号)、または組換えDNA技法によって作製することができる。本発明の二重特異性抗体は、その少なくとも1つがIL-1βのエピトープである、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し得る。IL-1β結合抗体および断片はまた、ヘテロ抗体であってもよい。ヘテロ抗体とは、互いに連結された、それぞれ異なる特異性を有する2つまたはそれ以上の抗体または抗体結合断片(Fab)である。
モノクローナル抗体の作製を回避して、抗体分子の抗原結合領域の組換えDNA型を作製する技法が、本IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片に関して意図される。DNAを細菌発現系にクローニングする。本開示の実施に適したこのような技法の一例では、発現されたFabタンパク質を細胞膜周辺腔(細菌細胞膜と細胞壁の間)に移行させるかまたは分泌させるリーダー配列を有するバクテリオファージλベクター系を用いる。IL-1βと結合するものに関して、多数の機能的Fab断片を迅速に作製し、スクリーニングすることができる。このようなIL-1β結合剤(IL-1βポリペプチドに対する特異性を有するFab断片)は、本開示のIL-1β結合抗体および断片の範囲内に明確に包含される。
本IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、ヒト化抗体またはヒト型に設計された抗体であってよい。本明細書で使用するヒト化抗体またはその抗原結合断片とは、非ヒト抗体に由来する抗原結合部位の部分、ならびにヒト抗体のフレームワークおよび/または定常領域の部分を含む組換えポリペプチドである。ヒト型に設計された抗体または抗体断片とは、ヒトにおける改変抗体の検出可能な免疫原性を減少させるまたは除去するために、特定の位置のアミノ酸を改変する(例えば、欠失、挿入、または置換する)ことによって操作された非ヒト(例えば、マウス)抗体である。
ヒト化抗体には、キメラ抗体およびCDR移植抗体が含まれる。キメラ抗体とは、ヒト定常領域に連結された非ヒト抗体可変領域を含む抗体である。したがってキメラ抗体では、可変領域は主に非ヒトであり、定常領域はヒトである。キメラ抗体およびそれらを作製する方法は、Morrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6841-6855 (1984)、Boulianne et al., Nature, 312: 643-646 (1984)、および国際公開公報 WO 86/01533に記載されている。キメラ抗体はマウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が低いと考えられるが、キメラ抗体の投与は、抗体の非ヒト部分に対するヒト抗マウス抗体応答(HAMA)と関連している。キメラ抗体はまた、適切な抗原結合特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子と、ヒト補体を活性化するおよびADCCを媒介する能力などの適切な生物活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子をつなぎ合わせることによって作製することもできる。Morrison et al. (1984), Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851;Neuberger et al. (1984), Nature, 312: 604。一例として、Fc領域の、異なるアイソタイプのFc領域との置換が挙げられる。
CDR移植抗体とは、ヒト「レシピエント」抗体のフレームワーク領域に連結された、非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRを含む抗体である。一般に、CDR移植抗体は、ヒト抗体に由来する定常領域配列および可変領域(フレームワーク)配列の両方を含むため、キメラ抗体よりも多くのヒト抗体配列を含む。したがって、例えば、本開示のCDR移植ヒト化抗体は、ヒト抗体のフレームワーク領域(例えば、ヒト抗体のFR-1、FR-2、またはFR-3)に由来する連続したアミノ酸配列(例えば、約5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上、またはさらには15個もしくはそれ以上の連続したアミノ酸残基)を含んでよく、任意には、ヒト抗体の全フレームワーク領域の大部分またはすべてを含み得る。CDR移植抗体およびそれらを作製する方法は、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988)、およびVerhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988)に記載されている。ヒト化抗体を作製するために使用できる方法はまた、米国特許第4,816,567号、第5,721,367号、第5,837,243号、および第6,180,377号に記載されている。CDR移植抗体は、非ヒト抗体部分に対する免疫応答を誘導する可能性がキメラ抗体よりも低いと考えられる。しかし、おそらくはこれらのフレームワーク配列がドナー抗体の抗原結合部分の折りたたみに影響するために、ドナー抗体の結合親和性および/または特異性にはドナー抗体のフレームワーク配列が必要であることが報告されている。したがって、ドナーの非ヒトCDR配列を未改変のヒトフレームワーク配列に移植すると、得られたCDR移植抗体は、場合によって元の非ヒトドナー抗体と比較して結合親和性の減少を示し得る。例えば、Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988)、およびVerhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988)を参照されたい。
ヒト型に設計された抗体には、例えば「張り合わせ(veneered)」抗体およびHUMAN ENGINEERING(商標)技術(U.S. Patent 5,869,619)を用いて調製された抗体が含まれる。HUMAN ENGINEERING(商標)技術は市販されており、これは、ヒトにおける免疫原性が低減されるが、それでもなお元の非ヒト抗体の所望の結合特性を保持する改変抗体を生じるように、抗体のアミノ酸配列に対して特定の変化をもたらすことによって、マウスもしくはキメラ抗体または抗体断片などの非ヒト抗体または抗体断片を改変する段階を含む。一般に、この技法は、非ヒト(例えば、マウス)抗体のアミノ酸残基を「低リスク」、「中程度リスク」、または「高リスク」残基に分類する段階を含む。分類は、置換が、得られた抗体の折りたたみおよび/または抗原結合特性に影響するリスクに対して、特定の置換を作製することの予測される利点(例えば、ヒトにおける免疫原性に関して)を評価する全体的なリスク/恩恵算出を用いて行う。したがって、低リスク位置とは、抗原結合特性に有意に影響することなく免疫原性が低減されることが予測されるために、置換が有利であると予測される位置である。中程度リスク位置とは、置換によって免疫原性が低減されると予測されるが、タンパク質折りたたみおよび/または抗原結合に影響する可能性がより高い位置である。高リスク位置は、適切な折りたたみまたは抗原結合に関与する可能性が最も高い残基を含む。一般に、非ヒト抗体における低リスク位置をヒト残基で置換し、高リスク位置はめったに置換することなく、中程度リスク位置におけるヒト化置換は、無差別ではないにしても行う場合もある。非ヒト抗体可変領域配列内のプロリンを有する位置は通常、少なくとも中程度リスク位置として分類される。
非ヒト(例えば、マウス)抗体配列の所与の低リスクまたは中程度リスク位置において置換する特定のヒトアミノ酸残基は、非ヒト抗体の可変領域に由来するアミノ酸配列を、特定のまたは共通のヒト抗体配列の対応する領域と整列させることによって選択することができる。非ヒト配列における低リスクまたは中程度リスク位置におけるアミノ酸残基は、整列化に従ってヒト抗体配列中の対応する残基と置換することができる。ヒト型に設計されたタンパク質を作製する技法は、Studnicka et al., Protein Engineering, 7: 805-814 (1994)、米国特許第5,766,886号、第5,770,196号、第5,821,123号、および第5,869,619号、ならびに国際公開公報 WO 93/11794にさらに詳述されている。
「張り合わせ(ベニア;veneered)」抗体とは、免疫原性をさらに減少させるまたは機能を増強するために、特定の溶媒露出アミノ酸残基を置換するよう操作された非ヒトまたはヒト化(例えば、キメラまたはCDR移植抗体)抗体である。キメラ抗体の表面残基は正確な抗体折りたたみに影響する可能性が低く、免疫応答を誘発する可能性が高いと推定されるため、キメラ抗体の張り合わせは、例えば、キメラ抗体の非ヒトフレームワーク領域における溶媒露出残基を同定する段階、およびそれらのうちの少なくとも1つをヒトフレームワーク領域に由来する対応する表面残基で置換する段階を含み得る。張り合わせは、上記のHUMAN ENGINEERING(商標)技術の使用を含む、任意の適切な操作技法によって達成することができる。
異なるアプローチでは、CDR移植抗体を「脱ヒト化(de-humanizing)」することによって、結合親和性の回復を達成することができる。脱ヒト化は、ドナー抗体のフレームワーク領域に由来する残基をCDR移植抗体に復帰させる段階を含み、それによって正確な折りたたみが復元され得る。同様の「脱ヒト化」は、(i) 「レシピエント」抗体中に「ドナー」フレームワーク領域の一部を含めるか、または(ii) レシピエント抗体に「ドナー」抗体フレームワーク領域の一部を移植する(移植するドナーCDRと共に)ことによって達成することができる。
抗体、ヒト化抗体、ヒト型に設計された、およびそれらを調製する方法のさらなる考察に関しては、Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer, New York, NY, 2001を参照されたい。
例示的なヒト化抗体またはヒト型に設計された抗体には、IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgD抗体が含まれる。本抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)またはアイソタイプのものであってよく、カッパまたはラムダ軽鎖を含み得る。例えば、ヒト抗体は、アイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のうちの少なくとも1つのような、IgG重鎖または既定の断片を含み得る。さらなる例として、本抗体または断片はIgG1重鎖およびIgG1軽鎖を含み得る。
本抗体および断片は、IL-1βポリペプチドと結合し、かつヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然体細胞変種である核酸配列によってコードされる抗体のようなヒト抗体、ならびにその断片、合成変種、誘導体、および融合物であってよい。このような抗体は、哺乳動物染色体において天然免疫グロブリンレパートリーがヒトV-遺伝子で置換されているトランスジェニック哺乳動物(トランスジェニックマウスなど)を使用するなど、当技術分野において公知である任意の方法によって産生され得る。このような哺乳動物は、正常な様式でヒト生殖系列抗体遺伝子のVDJ組換えおよび体細胞超変異を起こすと考えられ、よって完全なヒト配列を有する高親和性抗体が産生される。
標的タンパク質に対するヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生を有さず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニック動物を用いて産生させることもできる。例えば、WO 98/24893はヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示しており、この動物は内因性の重鎖および軽鎖遺伝子座の不活化のために機能的な内因性免疫グロブリンを産生しない。WO 91/00906もまた、免疫原に対する免疫応答を開始することができるトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示しており、この場合、抗体は霊長類定常領域および/または可変領域を有し、内因性免疫グロブリンをコードする遺伝子座は置換されるかまたは不活化されている。WO 96/30498および米国特許第6,091,001号は、定常領域または可変領域のすべてまたは一部を置換して改変抗体分子を形成するためなど、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を改変するためのCre/Lox系の使用を開示している。WO 94/02602号は、不活化内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、内因性重鎖を欠き、1つまたは複数の異種定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを作製する方法を開示している。米国特許第6,114,598号、同第6,657,103号、および同第6,833,268号も参照されたい。
上記のトランスジェニック動物を使用して、選択された抗原性分子に対して免疫応答を生じさせることができ、抗体産生細胞を動物から取り出して、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用することができる。免疫化プロトコール、アジュバント等は当技術分野で公知であり、例えばWO 96/33735に記載されているようにトランスジェニックマウスの免疫化において使用される。この公開は、IL-6、IL-8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39、および破傷風毒素を含む様々な抗原性分子に対するモノクローナル抗体を開示している。モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物活性または生理的効果を阻害または中和する能力について試験することができる。WO 96/33735は、IL-8で免疫したトランスジェニックマウスの免疫細胞に由来するIL-8に対するモノクローナル抗体が、好中球のIL-8誘導性機能を阻止したことを開示している。トランスジェニック動物を免疫するために使用した抗原に対する特異性を有するヒトモノクローナル抗体は、WO 96/34096および米国特許出願第20030194404号;ならびに米国特許出願第20030031667号にも開示されている。
モノクローナル抗体を作製するために有用なさらなるトランスジェニック動物には、米国特許第5,770,429号およびFishwild, et al. (Nat. Biotechnol. 14:845-851, 1996)に記載されている、ヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする非再編成ヒト抗体遺伝子に由来する遺伝子配列を含むMedarex HuMAb-MOUSE(登録商標)が含まれる。HuMAb-MOUSE(登録商標)の免疫化により、標的タンパク質に対する完全ヒトモノクローナル抗体の産生が可能になる。
また、Ishida et al. (Cloning Stem Cells. 4:91-102, 2002)は、ヒトDNAのメガ塩基サイズのセグメントを含み、ヒト免疫グロブリン(hIg)遺伝子座全体を組み入れたTransChromo Mouse (TCMOUSE(商標))を記載している。TCMOUSE(商標)は、IgGのすべてのサブクラス(IgG1〜G4)を含む、hIgの十分に多様なレパートリーを有する。種々のヒト抗原でTCMOUSE(商標)を免疫すると、ヒト抗体を含む抗体応答が生じる。
Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993);および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号;および米国特許出願公開第20020199213号も参照されたい。米国特許出願公開第20030092125号は、所望のエピトープに対する動物の免疫応答にバイアスをかける方法を記載している。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞により作製してもよい(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい)。
ヒト抗体はまた、抗体ディスプレイライブラリーのインビトロスクリーニングにより作製することもできる。Hoogenboom et al. (1991), J. Mol. Biol. 227: 381;およびMarks et al. (1991), J. Mol. Biol. 222: 581を参照されたい。種々の抗体含有ファージディスプレイライブラリーが記載されており、容易に調製することができる。ライブラリーは、適切な標的に対してスクリーニングすることができる、ヒトFab、Fv、およびscFv断片などの多様なヒト抗体配列を含み得る。ファージディスプレイライブラリーは、IL-1βの選択的結合剤を同定するためにスクリーニングすることができる抗体以外のペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製する技術の開発、およびコードされる抗体断片の糸状バクテリオファージの表面上での提示により、ヒト抗体を直接作製するための手段が提供された。ファージ技術によって作製される抗体は、細菌において抗原結合断片‐通常はFvまたはFab断片‐として産生され、したがってエフェクター機能を欠いている。エフェクター機能は、2つの戦略のうちの1つによって導入することができる:哺乳動物細胞における発現のために、断片を完全抗体になるよう操作するか、またはエフェクター機能を誘発できる第2の結合部位を用いて二重特異性抗体断片に操作することができる。
本開示は、ヒト抗体のライブラリーをファージ上で合成する段階、標的タンパク質またはその部分を用いてライブラリーをスクリーニングする段階、標的に結合するファージを単離する段階、およびファージから抗体を獲得する段階を含む、標的特異的抗体またはその抗原結合部分を作製する方法を意図する。一例として、ファージディスプレイ技法で使用するための抗体ライブラリーを調製する1つの方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物を標的抗原またはその抗原性部分で免疫して免疫応答を生じさせる段階、免疫した動物から抗体産生細胞を採取する段階;採取した細胞からRNAを単離する段階、RNAを逆転写してcDNAを作製する段階、プライマーを用いてcDNAを増幅する段階、および抗体がファージ上で発現されるようにcDNAをファージディスプレイベクターに挿入する段階を含む。本開示の組換え標的特異的抗体は、このようにして得ることができる。
ファージディスプレイ過程は、糸状バクテリオファージの表面上に抗体レパートリーを提示し、続いて選択された抗原に対するその結合によってファージを選択することにより、免疫選択を模倣する。1つのそのような技法はWO 99/10494に記載されており、これは、そのようなアプローチを使用した、MPLおよびmsk受容体に対する高親和性かつ機能的アゴニスト抗体の単離を記載している。本開示の抗体は、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製されたヒトVLおよびVHのcDNAを用いて調製したscFvファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。このようなライブラリーを調製およびスクリーニングするための方法論は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,969,108号を参照されたい。ファージディスプレイライブラリーを作製するためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングする際に使用することができる他の方法および試薬も存在する(例えば、Ladner et al. 米国特許第5,223,409号;Kang et al. WO 92/18619;Dower et al. WO 91/17271;Winter et al. WO 92/20791;Markland et al. WO 92/15679;Breitling et al. WO 93/01288;McCafferty et al. WO 92/01047;Garrard et al. WO 92/09690;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;McCafferty et al., Nature (1990) 348:552-554;Griffiths et al. (1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins et al. (1992) J. Mol. Biol. 226:889-896;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;Gram et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580;Garrad et al. (1991) Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboom et al.(1991) Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbas et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982を参照されたい)。
1つの態様では、所望の特徴を有する標的抗原に特異的なヒト抗体を単離するために、ヒトVHおよびVLライブラリーをスクリーニングして、所望の特異性を有する抗体断片を選択する。この方法で使用する抗体ライブラリーは、好ましくは、本明細書および当技術分野で記載される通りに調製およびスクリーニングされるscFvライブラリーである(McCafferty et al.、WO 92/01047、McCafferty et al., (Nature 348:552-554, 1990);およびGriffiths et al., (EMBO J 12:725-734, 1993))。scFv抗体ライブラリーは、好ましくは標的タンパク質を抗原として用いてスクリーニングする。
または、抗体のFd断片(VH-CH1)および軽鎖(VL-CL)をPCRにより別々にクローニングし、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにおいてランダムに組換え、その後特定の抗原に対する結合について選択することができる。Fab断片をファージ表面上で発現させ、すなわちそれらをコードする遺伝子に物理的に関連づける。したがって、抗原結合によりFabを選択すると、Fabコード配列も同時に選択され、続いてこれを増幅することができる。パニングと称される手順である抗原結合および再増幅を数ラウンド行うことにより、抗原に特異的なFabが濃縮され、最終的に単離される。
1994年に、「誘導選択(guided selection)」と称される、抗体をヒト化するためのアプローチが記載された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体をヒト化するためにファージディスプレイ技法の威力を利用する(Jespers, L. S., et al. Bio/Technology 12, 899-903 (1994)を参照されたい)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片をヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示することができ、次いで生じたハイブリッドFabライブラリーを抗原で選択することができる。こうして、マウスFd断片は、選択を誘導するための鋳型を提供する。その後、選択されたヒト軽鎖をヒトFd断片ライブラリーと組み合わせる。生じたライブラリーを選択することにより、完全なヒトFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を導出するための様々な手順が記載されている(例えば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991);米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号;Clackson, T., and Wells, J. A., TIBTECH 12, 173-184 (1994)を参照されたい)。特に、ファージディスプレイライブラリーに由来する抗体のインビトロでの選択および進化は、強力な手段となっている(Burton, D. R., and Barbas III, C. F., Adv. Immunol. 57, 191-280 (1994);Winter, G., et al., Annu. Rev. Immunol. 12, 433-455 (1994);米国特許出願公開第20020004215号およびWO 92/01047;米国特許出願公開第20030190317号;ならびに米国特許第6,054,287号および同第5,877,293号を参照されたい)。
Watkins, 「Screening of Phage-Expressed Antibody Libraries by Capture Lift,」 Methods in Molecular Biology, Antibody Phage Display: Methods and Protocols 178: 187-193、および2003年3月6日に公開された米国特許出願公開第20030044772号は、固体支持体への候補結合分子の固定化を含む方法である捕獲リフト(capture lift)により、ファージ発現抗体ライブラリーまたは他の結合分子をスクリーニングする方法を記載している。
Fv断片は、ファージタンパク質融合物(例えば、M13遺伝子IIIとの)として発現される1本鎖と、可溶性断片として発現される相補鎖の会合により、ファージの表面上に提示される。ファージは、クラスIファージ:fd、M13、f1、If1、1ke、ZJ/Z、Ffのうちの1つ、ならびにクラスIIファージXf、Pf1、およびPf3のうちの1つなどの糸状ファージであってよいことが意図される。ファージは、M13、またはfdもしくはその誘導体であってもよい。
最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択されたならば、「混合および適合(mix and match)」実験を行い、最初に選択されたVLおよびVHセグメントの様々な対を標的結合についてスクリーニングして、好ましいVL/VH対の組み合わせを選択する。加えて、抗体の質をさらに改善するために、天然の免疫応答において抗体の親和性成熟を担うインビボ体細胞変異過程に類似した過程で、好ましいVL/VH対のVLおよびVHセグメントを、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR1、CDR2、またはCDR3領域のいずれかの内部でランダムに変異させることができる。このインビトロ親和性成熟は、それぞれVH CDR1、CDR2、およびCDR3またはVL CDR1、CDR2、およびCDR3に相補的なPCRプライマーを用いて、VLおよびVH領域を増幅することによって達成することができる。これらのプライマーには、結果として生じるPCR産物が、VHおよび/またはVL CDR3領域中にランダムな変異が導入されたVLおよびVHセグメントをコードするように、特定の位置に4種のヌクレオチド塩基のランダムな混合物が添加してある。これらのランダムに変異させたVLおよびVHセグメントを、標的抗原への結合について再度スクリーニングすることができる。
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーから標的特異的抗体をスクリーニングおよび単離した後、選択された抗体をコードしている核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的な組換えDNA技法により他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要に応じて、後述するように核酸をさらに操作して、本開示の他の抗体形態を創出することもできる。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングにより単離した組換えヒト抗体を発現させるには、本明細書に記載するように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローニングし、哺乳動物宿主細胞に導入する。
細菌または宿主細胞の突然変異誘発株でファージディスプレイ法を実施できることが意図される。突然変異誘発株は、その内部で複製されるDNAをその親DNAに関して変異させる遺伝子欠陥を有する宿主細胞である。例示的な突然変異誘発株は、NR9046mutD5およびNR9046 mut T1である。
ヘルパーファージを用いてファージディスプレイ法を実施できることも意図される。これは、欠陥ファージゲノムを含む細胞に感染させるために用いられ、欠陥を補足するように機能するファージである。欠陥ファージゲノムは、何らかの機能をコードする遺伝子配が除去されているファージミドまたはファージであってよい。ヘルパーファージの例は、M13K07、M13K07遺伝子III no. 3;およびキャプシドタンパク質に融合された結合分子を提示またはコードするファージである。
抗体はまた、WO 92/01047に開示されているような階層的二重組み合わせアプローチを使用するファージディスプレイスクリーニング法により作製される。この方法では、H鎖またはL鎖クローンのいずれかを含む個々のコロニーを使用して、他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリーを感染させ、結果として生じた2鎖の特異的結合メンバーを、その文献に記載されているようなファージディスプレイ技法に従って選択する。この技法は、Marks et al, (Bio/Technology, 10:779-783, 1992)にも記載されている。
抗原特異的抗体を同定するために、酵母および微生物細胞の表面上にペプチドを提示させる方法も用いられている。例えば、米国特許第6,699,658号を参照されたい。抗体ライブラリーを凝集素などの酵母タンパク質に結合させて、免疫系におけるB細胞による抗体の細胞表面提示を効果的に模倣することができる。
ファージディスプレイ法に加えて、抗体は、リボソームmRNAディスプレイ法および微生物細胞ディスプレイ法を用いて単離することもできる。リボソームディスプレイを使用するポリペプチドの選択は、Hanes et al., (Proc. Natl Acad Sci USA, 94:4937-4942, 1997)、ならびにKawasakiに発行された米国特許第5,643,768号および同第5,658,754号に記載されている。リボソームディスプレイは、抗体の迅速大規模突然変異解析にも有用である。選択的突然変異誘発アプローチもまた、リボソームディスプレイ技法を用いて選択することができる活性が向上した抗体を作製する方法を提供する。
IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、IL-1βと結合しないが、代わりに循環半減期、直接的細胞毒性効果、検出可能な標識、またはレシピエントの内因性補体カスケードもしくは内因性細胞傷害性の活性化などのその他の機能に関与する1つまたは複数の部分を含み得る。抗体または断片は、抗体の定常領域のすべてまたは一部を含んでよく、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、またはIgMを含む任意のアイソタイプのものであってよい。定常領域を含むことに加えてまたはその代わりに、本発明の抗原結合化合物は、エピトープタグ、サルベージ受容体エピトープ、診断もしくは精製目的のための標識部分、または放射性核種もしくは毒素などの細胞毒性部分を含み得る。
本抗体および断片の定常領域(存在する場合)は、γ1、γ2、γ3、γ4、μ、β2、またはδ、またはε型のもであってよく、好ましくはγ型、より好ましくはy型のものであってよく、ヒト軽鎖の定常部分はκまたはλ型(λ1、λ2、およびλ3サブタイプを含む)のものであってよいが、好ましくはκ型のものである。
変種には、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含む改変されたFc領域を含む抗体または断片もまた含まれる。変種Fc領域は、野生型Fc領域を含む匹敵する分子と比較して、より高いまたはより低い親和性でFc受容体に結合するように設計することができる。
例えば、本IL-1β結合抗体および断片は、改変Fc領域を含み得る。Fc領域とは、IgGのパパイン消化によって生成される、IgG C末端ドメインと相同的な天然または合成ポリペプチドを指す。IgG Fcは、約50 kDの分子量を有する。本抗体および断片では、全Fc領域を用いることもできるし、または半減期延長部分のみを用いることもできる。さらに、天然の活性がすべての場合において必要であるとも望ましいとも限らないため、アミノ酸配列中の多くの改変も許容される。
Fc領域は、必要に応じて、補体を結合する能力およびFc受容体と高親和性で結合する能力を阻害するために、変異させることができる。マウスIgG Fcでは、Glu 318、Lys 320、およびLys 322をAla残基と置換すると、このタンパク質はADCCを引き起こすことができなくなる。Leu 235をGluに置換すると、高親和性でFc受容体に結合するこのタンパク質の能力は阻害される。ヒトIgGに関する種々の変異もまた知られている(例えば、Morrison et al., 1994, The Immunologist 2: 119 124、およびBrekke et al., 1994, The Immunologist 2: 125を参照されたい)。
いくつかの態様においては、例えば血清半減期またはインビトロアッセイによって測定される半減期といった、生物環境における抗体または断片の半減期が延長されるように天然Fc領域が改変された改変Fc領域を有する本抗体または断片が提供される。IgGのFc領域の元の形態を改変する方法もまた、米国特許第6,998,253号に記載されている。
特定の態様では、例えば、半減期を延長するためにPEGまたは多糖ポリマーを含むその他の水溶性ポリマーなどの分子を抗体断片に付加するなど、血清半減期を延長するために抗体または断片を改変することが望ましい場合がある。これはまた、例えば抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み入れることによって(例えば、抗体断片中の適切な領域の変異により、またはペプチドタグにエピトープを組み入れ、次いでこれを抗体断片のいずれかの末端または中央に融合させることにより(例えば、DNAまたはペプチド合成により))達成することができる(WO96/32478を参照されたい)。サルベージ受容体結合エピトープとは、IgG分子のインビボ血清半減期の延長に関与する、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
サルベージ受容体結合エピトープは、Fcドメインの1つまたは2つのループに由来する任意の1つまたは複数のアミノ酸残基が、抗体断片の類似の位置に移行される領域を含み得る。さらにより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループに由来する3つまたはそれ以上の残基を移行させる。さらにより好ましくは、Fc領域(例えばIgGの)のCH2ドメインからエピトープを得て、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域、または2つ以上のそのような領域に移行させる。あるいは、Fc領域のCH2ドメインからエピトープを得て、抗体断片のCL領域もしくはVL領域またはその両方に移行させる。Fc変種およびそれらのサルベージ受容体との相互作用について記載しているWO 97/34631およびWO 96/32478もまた参照されたい。
Fc受容体結合部位内の残基の変異は、ADCCもしくはCDC活性の変化または半減期の変化など、エフェクター機能の変化をもたらし得る。可能な変異には、アラニンとの置換、保存的置換、非保存的置換、または異なるIgGサブクラスに由来する同じ位置の対応するアミノ酸残基との置換(例えば、IgG1残基を、その位置の対応するIgG2残基で置換する)を含む、1つまたは複数の残基の挿入、欠失、または置換が含まれる。例えば、IgG4のアミノ酸241位におけるセリンをプロリン(IgG1およびIgG2のその位置に見出される)に変異させることによって、均一な抗体が産生され、元のキメラIgG4と比較して血清半減期が延長され、組織分布が改善されることが報告されている(Angal et al., Mol Immunol. 30:105-8, 1993)。
抗体断片とは、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域などの、無傷の全長抗体の一部である。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディ(diabody);直鎖状抗体:一本鎖抗体分子(例えば、scFv);二重特異性、三重特異性、および多特異性抗体などの多特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody));ミニボディ(minibody);キレート化組換え抗体;トリボディ(tribody)またはバイボディ(bibody);イントラボディ(intrabody);ナノボディ(nanobody);小モジュール免疫薬剤(SMIP)、アドネクチン、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成される任意の他のポリペプチドが含まれる。
本開示は、上記の重鎖または軽鎖配列のいずれかを含み、かつIL-1βと結合するIL-1β結合抗体断片を包含する。本明細書で使用する断片という用語は、抗体の任意の3個またはそれ以上の連続したアミノ酸(例えば、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、6個もしくはそれ以上、8個もしくはそれ以上、またはさらには10個もしくはそれ以上の連続したアミノ酸)を指し、Fab、Fab'、F(ab')2、およびF(v)断片、または個々の軽鎖もしくは重鎖可変領域またはその一部を包含する。IL-1β結合断片には、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、およびscFvが含まれる。これらの断片は無傷の抗体のFc断片を欠いており、無傷の抗体よりも迅速に循環から除去され、非特異的組織結合が低い可能性がある。Wahl et al. (1983), J. Nucl. Med., 24: 316-25を参照されたい。これらの断片は、例えば、パパイン(Fab断片を生成するため)またはペプシン(F(ab')2断片を生成するため)などの酵素でタンパク質切断するなど、周知の方法を用いて無傷の抗体から生成することができる。
I型IL-1受容体(IL-1R1)に対するIL-1βの結合を測定する際に用いるインビトロアッセイ法および細胞に基づくアッセイ法は、IL-1βまたはIL-1RIに結合する分子(抗体、アンタゴニスト、またはその他のインヒビターなど)の存在下で測定するアッセイ法を含め、当技術分野において十分に記載されている。(例えば、Evans et al., (1995), J. Biol. Chem. 270:11477-11483;Vigers et al., (2000), J. Biol. Chem. 275:36927-36933;Yanofsky et al., (1996), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7381-7386;Fredericks et al., (2004), Protein Eng. Des. Sel. 17:95-106;Slack et al., (1993), J. Biol. Chem. 268:2513-2524;Smith et al., (2003), Immunity 18:87-96;Vigers et al., (1997), Nature 386:190-194;Ruggiero et al., (1997), J. Immunol. 158:3881-3887;Guo et al., (1995), J. Biol. Chem. 270:27562-27568;Svenson et al., (1995), Eur. J. Immunol. 25:2842-2850;Arend et al., (1994), J. Immunol. 153:4766-4774を参照されたい)。そのようなアッセイのための、ヒトI型IL-1受容体を含む組換えI型IL-1受容体は、様々な市販供給元(例えば、R&D Systems、SIGMAを参照されたい)から容易に入手することができる。I型IL-1受容体はまた、標準的な分子生物学および当技術分野で公知のトランスフェクション技法を用いて、適切な宿主細胞に導入された発現構築物またはベクターから発現させることもできる。次いで、発現されたI型IL-1受容体を、結合アッセイにおいて使用するために単離および精製することができ、またはあるいは細胞結合型として直接使用することもできる。
例えば、I型IL-1受容体に対するIL-1βの結合は、IL-1β結合抗体を固定化し、IL-1βを固体化抗体と接触させて、IL-1βが抗体に結合したかどうかを決定し、可溶型IL-1RIを結合しているIL-1β/抗体複合体と接触させて、可溶性IL-1RIが複合体に結合したかどうかを決定することによって判定することができる。この手順はまた、可溶性IL-1RIを、IL-1βと接触させる前に固定化抗体と接触させて、可溶性IL-1RIが固定化抗体に結合しないことを確認する段階をさらに含み得る。この手順は、結合相互作用の反応速度解析用のBiacore(登録商標)装置を用いて行うことができる。このような手順を用いて、抗体またはその他の分子が、IL-1βのI型IL-1受容体への結合を許容するかまたは遮断するかを判定することもできる。
その他のIL-1β/IL-1RI結合アッセイでは、IL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片の存在下または非存在下において、IL-1RIに対するIL-1βの結合を比較することによって、I型IL-1受容体に対するIL-1β結合の許容または遮断を判定することができる。遮断は、アッセイ読み取り値において、対応する緩衝液または希釈液を含むがIL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片を含まない対照試料と比較した場合の、抗IL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片の存在下におけるI型IL-1受容体に対するIL-1β結合の減少表示として同定される。アッセイ読み取り値は、遮断の存在もしくは非存在を示して定性的と見なされてもよいし、または抗体もしくは断片の存在に起因する結合のパーセント減少もしくは減少倍率を示して定量的と見なされてもよい。
その代わりに、又はそれに加えて、IL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片がIL-1RIに対するIL-1β結合を実質的に遮断する場合、IL-1RIに対するIL-1β結合は、抗体または断片の非存在下における同濃度のIL-1βとIL-1RIの結合と比較して、少なくとも10倍、あるいは少なくとも約20倍、あるいは少なくとも約50倍、あるいは少なくとも約100倍、あるいは少なくとも約1000倍、あるいは少なくとも約10000倍、またはそれ以上減少する。別の例として、IL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片がIL-1RIに対するIL-1β結合を実質的に許容する場合、IL-1RIに対するIL-1β結合は、抗体または断片の非存在下における同濃度のIL-1βとIL-1RIの結合の少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%、あるいは少なくとも約99.9%、あるいは少なくとも約99.99%、あるいは少なくとも約99.999%、あるいは少なくとも約99.9999%、あるいはその結合と実質的に同一である。
本開示は、特定の態様において、本明細書に記載する例示的な抗体の1つまたは複数と同じエピトープまたは実質的に同じエピトープに結合するIL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片を包含し得る。その代わりに、又はそれに加えて、IL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片は、米国特許出願第11/472813号に記載されるAB7の可変領域配列(配列は以下に表示)を有する抗体の結合と競合する。あるいは、もしくはさらに、本開示は、アミノ酸配列
Figure 2015120704
中に含まれるエピトープに結合するIL-1β結合抗体および断片を包含する。本明細書において意図されるように、当技術分野におけるいくつかの公知の方法のいずれかを用いて、IL-1β結合抗体または断片が、例えばAB7と命名された抗体のような例示的な抗体の1つまたは複数と同じエピトープまたは実質的に同じエピトープに結合するかどうかを容易に判定することができる。
例えば、IL-1β結合抗体または断片が結合する重要なアミノ酸残基(エピトープ)は、例えばPepSpot(商標)ペプチドアレイ(JPT Peptide Technologies、ドイツ、ベルリン)などのペプチドアレイを用いて決定することができる。PepSpot(商標)ペプチドアレイでは、全IL-1βアミノ酸配列に及び、各ペプチドが前のペプチドと11アミノ酸重複する12アミノ酸ペプチドのスキャンが膜上に直接合成される。次いでペプチドを保有する膜を、エピトープ結合情報を探索する例えば2μg/ml濃度の抗体で、室温で2時間プロービングする。膜結合ペプチドに対する抗体の結合は、二次HRP結合ヤギ抗ヒト(またはしかるべき場合にはマウス)抗体、次いで高感度化学発光(ECL)を用いて検出することができる。抗体結合に関して陽性を表す、成熟IL-1βタンパク質の特定のアミノ酸残基または配列に対応するペプチドスポットが、特定の抗体が結合したエピトープを示す。
その代わりに、又はそれに加えて、抗体競合実験を行うことができ、このようなアッセイ法は当技術分野において周知である。例えば、抗体または断片が、成熟IL-1βタンパク質の残基83〜105に相当するアミノ酸
Figure 2015120704
を含むペプチド配列中に含まれるエピトープに結合するかどうかを判定するため、特異性が未知である抗体を、本開示の例示的な抗体(例えば、AB7)のいずれかと比較することができる。結合競合アッセイは、例えば、結合相互作用の反応速度解析用のBiacore(登録商標)装置を用いて、またはELISAによって行うことができる。そのようなアッセイ法では、エピトープ特異性が未知である抗体を、公知の比較抗体(例えば、AB7)に対する結合を競合する能力について評価する。特定のエピトープに対する結合の競合は、公知の比較抗体(例えば、AB7)のIL-1βエピトープに対する結合の少なくとも約50%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%、または約100%の減少によって決定される。
例示的な抗体におけるIL-1β結合領域および/または開示する抗体によって認識されるエピトープの本開示における同定を考慮して、本開示の態様に匹敵する、類似の結合特性および治療または診断有用性を有するさらなる抗体を作製できることが意図される。
抗体の抗原結合断片には、一般に抗体の抗原結合部分を維持することによって、抗原に特異的に結合する能力を保持する断片が含まれる。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって遂行され得ることが十分に確立されている。抗原結合部分の例には、(i) VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii) ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab')2断片;(iii) VHおよびCH1ドメインであるFd断片;(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインであるFv断片、(v) VHドメインであるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。一本鎖抗体もまた、抗体の抗原結合部分という用語の範囲内に含まれる。本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、一価もしくは多価、または単量体もしくは多量体(例えば四量体)、足場(例えば、タンパク質または炭水化物足場)を含むもしくは含まないCDR由来結合ドメインもまた包含する。
本発明のIL-1β結合抗体または断片は、抗体または抗体部分と1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成された、より大きな免疫接着分子の一部であってよい。そのような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov, S. M., et al. (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov, S. M., et al. (1994) Mol. Immunol. 31:1047-1058)が含まれる。免疫接着分子を含む抗体および断片は、本明細書に記載する標準的な組換えDNA技法を用いて得ることができる。好ましい抗原結合部分は、完全なドメインまたは完全なドメインの対である。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)を包含する。本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、ダイアボディを包含する。ここでダイアボディとは、VHおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上に発現するが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、そのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させて、2つの抗原結合部位を創出する二価抗体である(例えば、EP 404,097;WO 93/11161;Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993、およびPoljak et al., Structure 2:1121-1123, 1994を参照されたい)。ダイアボディは二重特異性または単一特異性であってよい。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、IL-1βに結合する一本鎖抗体断片(scFv)を包含する。scFvは、抗体軽鎖可変領域(VL)に機能的に連結された抗体重鎖可変領域(VH)を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は一緒にまたは個別に、IL-1βと結合する結合部位を形成する。scFvはアミノ末端にVH領域を含み、カルボキシ末端にVL領域を含み得る。あるいは、scFvはアミノ末端にVL領域を含み、カルボキシ末端にVH領域を含み得る。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされているものの、組換え法を用いて、それらをVLおよびVH領域が対形成して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖とすることのできる合成リンカーにより、それらを結合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。
scFvは任意に、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の間にポリペプチドリンカーをさらに含み得る。そのようなポリペプチドリンカーは一般に、1〜50アミノ酸、あるいは3〜12アミノ酸、あるいは2アミノ酸を含む。scFvにおける重鎖と軽鎖を連結するためのリンカーペプチドの例は、5アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(SEQ ID NO:6)を含む。その他の例は、リンカーを創出するために、この配列の1回または複数回の縦列反復(例えば、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(SEQ ID NO:6)の2〜4回の反復を含むポリペプチド)を含む。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、重鎖抗体(HCAb)を包含する。通常の抗体のH2L2構造の例外は、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマ;Hamers-Casterman et al., 1993 Nature 363: 446;Nguyen et al., 1998 J. Mol. Biol. 275: 413)、オオセザメ(wobbegong shark)(Nuttall et al., Mol Immunol. 38:313-26, 2001)、コモリザメ(nurse shark)(Greenberg et al., Nature 374:168-73, 1995;Roux et al., 1998 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95: 11804)、およびスポッテッドラットフィッシュ(spotted ratfish)(Nguyen, et al., 「Heavy-chain antibodies in Camelidae; a case of evolutionary innovation」, 2002 Immunogenetics 54 (1): 39-47)に見出される免疫グロブリンのいくつかのアイソタイプで生じる。これらの機能的抗体は重鎖のみの二量体であることから、これらの抗体は明らかに、重鎖のみを用いて抗原結合領域を形成し得る(「重鎖抗体」または「HCAb」と称される)。したがって、本IL-1β結合抗体および断片のいくつかの態様は、IL-1βに特異的に結合する重鎖抗体であってよい。例えば、IgGのクラスであり軽鎖を欠いている重鎖抗体は、ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマを含むラクダ科属の動物によって産生される(Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993))。HCAbは、通常のIgG抗体の分子量が約160 kDaである代わりに、約 95 kDaという分子量を有する。その結合ドメインは重鎖可変ドメインのみからなり、多くの場合、通常のVHと区別するためにVHHと称される。Muyldermans et al., J. Mol. Recognit. 12:131-140 (1999)。重鎖抗体の可変ドメインは、場合によってナノボディと称される(Cortez-Retamozo et al., Cancer Research 64:2853-57, 2004)。Conrath et al., (Antimicrob Agents Chemother 45: 2807-12, 2001)に記載されているように、免疫化したヒトコブラクダから、または組換え法を用いて、ナノボディライブラリーを作製することができる。
第1定常ドメイン(CH1)が存在しないため(スプライス共通シグナルがないために、mRNAプロセシング中にスプライス除去される)、可変ドメイン(VHH)の後にすぐヒンジ領域、CH2およびCH3ドメインが続く(Nguyen et al., Mol. Immunol. 36:515-524 (1999);Woolven et al., Immunogenetics 50:98-101 (1999))。報告によれば、ラクダ科動物VHHは、ヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含みCH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域と組み合わさる(Hamers-Casterman et al.、前記)。例えば、ラマIgG1は、VHがヒンジ、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含む定常領域と組み合わさる通常の(H2L2)抗体アイソタイプであるが、ラマIgG2およびIgG3は、CH1ドメインを欠き、かつ軽鎖を含まない重鎖のみのアイソタイプである。
HCAbは軽鎖を欠いているが、抗原結合レパートリーを有する。HCAbの遺伝子生成機構は、Nguyen et al. Adv. Immunol 79:261-296 (2001)、およびNguyen et al., Immunogenetics 54:39-47 (2002)に概説されている。コモリザメを含むサメも、抗原受容体を含む同様の単一の単量体Vドメインを示す。Irving et al., J. Immunol. Methods 248:31-45 (2001);Roux et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:11804 (1998)。
VHHは、小さな無傷の抗原結合断片(例えば、約15 kDa、118〜136残基である断片)を含む。ラクダ科動物VHHドメインは高親和性で抗原に結合することが認められており(Desmyter et al., J. Biol. Chem. 276:26285-90, 2001)、VHHの親和性は典型的にナノモルの範囲であり、FabおよびscFv断片に匹敵する。VHHは非常に可溶性が高く、scFvおよびFab断片の対応する誘導体よりも安定である。VH断片は可溶型として生成することが比較的難しかったが、フレームワーク残基をよりVHH様に改変することで溶解度および特異的結合が改善され得る。(例えば、Reichman et al., J Immunol Methods 1999, 231:25-38を参照されたい)。VHHは、VHHをより親水性にし、通常は折りたたみおよび会合の際に小胞体(ER)内でH鎖に結合し、その後L鎖に置き換えられるBiP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質)との相互作用の持続を妨げるアミノ酸置換を有する。VHHは親水性が高いため、ERからの分泌が改善される。
機能的なVHHは、免疫化したラクダ科動物のHCAbのタンパク質切断により、免疫化したラクダ科動物のB細胞からVHH遺伝子を直接クローニングして組換えVHHをもたらすことにより、またはナイーブもしくは合成ライブラリーから得ることができる。所望の抗原特異性を有するVHHはまた、ファージディスプレイ法によって得ることもできる。ファージディスプレイにおいてVHHを用いることは、機能的な抗原結合断片を得るために1つのドメインしかクローニングして発現させる必要がないため、FabまたはscFvと比較して非常に簡単でかつより効率的である。Muyldermans, Biotechnol. 74:277-302 (2001);Ghahroudi et al., FEBS Lett. 414:521-526 (1997);およびvan der Linden et al., J. Biotechnol. 80:261-270 (2000)。ラクダ科動物重鎖を有する抗体を作製する方法はまた、米国特許出願公開第20050136049号および第20050037421号に記載されている。
リボソームディスプレイを用いて、所望の結合活性および親和性を有するscFvおよび/またはVHH分子を同定および単離することもできる。Irving et al., J. Immunol. Methods 248:31-45 (2001)。リボソームの提示および選択は、大きなライブラリー(1014)を作製し提示する可能性を有する。
他の態様は、溶解度を改善し非特異的結合を防ぐために、ヒトVHHなどの非ラクダ科VHを改変することにより、ラクダ化の過程を通して作製されたVHH様分子を提供する。これは、VHのVL側の残基をVHH様残基で置換して、より溶解度の高いVHH断片を模倣することによって達成される。ラクダ化VH断片、特にヒトのフレームワークに基づくものは、インビボで患者に投与した場合に免疫応答が大幅に低減されると考えられ、したがって治療用途に著しく有利であると考えられる。Davies et al., FEBS Lett. 339:285-290 (1994);Davies et al., Protein Eng. 9:531-537 (1996);Tanha et al., J. Biol. Chem. 276:24774-24780 (2001);およびRiechmann et al., Immunol. Methods 231:25-38 (1999)。
Fab断片、scFv、およびVHHを含むIL-1β断片の産生には、多種多様な発現系が利用可能である。例えば、原核生物および真核生物起源の発現系を、抗体断片および抗体融合タンパク質の大量生産に用いることができる。特に有利であるのは、大量の抗体断片を培地に分泌させることができる発現系である。
二重特異性Fab-scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab-(scFv)(2)(「トリボディ」)の作製は、Schoonjans et al. (J Immunol 165:7050-57, 2000)、およびWillems et al. (J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 786:161-76, 2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディでは、scFv分子がVL-CL(L)鎖およびVH-CH1(Fd)鎖の一方または両方に融合されており、例えばトリボディを作製するには、2つのscFvをFabのC末端に融合し、バイボディの場合には、1つのscFvをFabのC末端に融合する。ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介して、またはIgGヒンジを介してCH3に融合されたscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen, et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4)315-23に記載されている。
イントラボディとは、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作できる一本鎖抗体である(Biocca, et al., EMBO J. 9:101-108, 1990;Colby et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 101:17616-21, 2004)。細胞内領域に抗体構築物を保持する細胞シグナル配列を含むイントラボディは、Mhashilkar et al (EMBO J 14:1542-51, 1995)、およびWheeler et al. (FASEB J. 17:1733-5. 2003)に記載されているように作製することができる。トランスボディとは、タンパク質導入ドメイン(PTD)を一本鎖可変断片(scFv)抗体と融合させた細胞透過性抗体である Heng et al., (Med Hypotheses. 64:1105-8, 2005)。
本発明のIL-1β結合抗体および断片はまた、標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体を包含する。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を実行するのに必要な免疫グロブリンドメインに融合された抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許出願公開第20030133939号、および米国特許出願公開第20030118592号を参照されたい。
本発明のIL-1β結合抗体および断片はまた、イムノアドヘシンを包含する。1つまたは複数のCDRを共有結合または非共有結合により分子内に組み入れることによって、その分子をイムノアドヘシンにすることができる。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み入れてもよく、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合させてもよく、または非共有結合によりCDRを組み入れてもよい。本明細書に開示するCDRによって、イムノアドヘシンがIL-1βに特異的に結合できるようになる。
本発明のIL-1β結合抗体および断片はまた、有機または分子足場(タンパク質または炭水化物足場など)上に構築された1つまたは複数のIL-1β結合部分を含む抗体模倣物を包含する。一般にタンパク質足場と称される、比較的明確な三次元構造を有するタンパク質を、抗体模倣物を設計するための試薬として用いることができる。これらの足場は典型的に、特定のまたは無作為な配列変化を受け入れる1つまたは複数の領域を含み、そのような配列の無作為化は多くの場合、そこから所望の生成物を選択することができるタンパク質のライブラリーを作製するために行われる。例えば、抗体模倣物は、各ループに挿入された親抗体由来の異なるCDRを含む2つまたはそれ以上の溶媒露出ループを有する足場を含む免疫グロブリン様ドメインを有し、かつ親抗体が結合するリガンドに対して選択的結合活性を示すキメラ非免疫グロブリン結合ポリペプチドを含み得る。非免疫グロブリンタンパク質足場は、新規結合特性を有するタンパク質を得るために提唱された。(Tramontano et al., J. Mol. Recognit. 7:9, 1994;McConnell and Hoess, J. Mol. Biol. 250:460, 1995)。他のタンパク質もフレームワークとして試験されており、αヘリックス表面上の無作為化された残基(Nord et al., Nat. Biotechnol. 15:772, 1997;Nord et al., Protein Eng. 8:601, 1995)、αヘリックス束中のαヘリックス間のループ(Ku and Schultz, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6552, 1995)、および小さいプロテアーゼインヒビターのループのようなジスルフィド架橋により拘束されたループ(Markland et al., Biochemistry 35:8045, 1996;Markland et al., Biochemistry 35:8058, 1996;Rottgen and Collins, Gene 164:243, 1995;Wang et al., J. Biol. Chem. 270:12250, 1995)を提示するために用いられている。抗体模倣物に足場を用いる方法は、米国特許第5,770,380号、ならびに米国特許出願公開第2004/0171116号、第2004/0266993号、および第2005/0038229号に開示されている。
本願記載の方法に使用するための抗IL-1β結合抗体またはその抗体断片は、一般的に、高親和性で(例えば、BIACOREで決定される)IL-1βに結合する。好ましい態様において、抗体またはその断片は、例えば約10 nMもしくはそれ未満、約5 nMもしくはそれ未満、約1 nMもしくはそれ未満、約500 pMもしくはそれ未満、約250 pMもしくはそれ未満、約100 pMもしくはそれ未満、約50 pMもしくはそれ未満、又は約25 pMもしくはそれ未満の平衡結合解離定数(KD)で、IL-1βに結合する。特に好ましい態様において、抗体又は抗体断片は、約100 pMもしくはそれ未満、約50 pMもしくはそれ未満、約10 pMもしくはそれ未満、約5 pMもしくはそれ未満、約3 pMもしくはそれ未満、約1 pMもしくはそれ未満、約0.75 pMもしくはそれ未満、約0.5 pMもしくはそれ未満、約0.3 pMもしくはそれ未満、約0.2 pMもしくはそれ未満、又は約0.1 pMもしくはそれ未満の平衡結合解離定数でヒトIL-1βに結合する。特に好ましい態様において、抗体又は抗体断片は、約10 pMもしくはそれ未満の平衡結合解離定数でヒトIL-1βに結合する。
本開示の抗体または断片は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、約10 nMもしくはそれ未満、約5 nMもしくはそれ未満、約2 nMもしくはそれ未満、約1 nMもしくはそれ未満、約0.75 nMもしくはそれ未満、約0.5 nMもしくはそれ未満、約0.4 nMもしくはそれ未満、約0.3 nMもしくはそれ未満、またはさらには約0.2 nMもしくはそれ未満のIC50でIL-1βに結合し得る。好ましくは、本開示の抗体または抗体断片は、IL-1以外のいかなる標的とも交差反応しない。例えば、本抗体および断片はIL-1βに結合し得るが、IL-1αには検出可能な程度に結合しないか、またはIL-1αのその結合に対してIL-1βのその結合において少なくとも約100倍(例えば、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、またはさらには少なくとも約250倍)高い選択性を有する。本発明に従って使用する抗体または断片は、特定の態様において、本開示の抗体または断片を投与していないIL-1β刺激動物における血清IL-6のレベルと比較して、動物における血清IL-6のIL-1β誘導性発現を少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、またはさらには少なくとも80%)阻害する。抗体はIL-1βと結合し得るが、結合したIL-1βリガンドのIL-1受容体I型(IL-1RI)への結合を許容し得るか、または実質的に許容し得る。IL-1βのIL-1RIへの結合を阻止するかまたは実質的に妨げる多くの公知のIL-1β結合抗体とは対照的に、AB5およびAB7と命名された抗体(米国特許出願第11/472813号)はIL-1βリガンドに選択的に結合するが、結合したIL-1βリガンドのIL-1RIへの結合を許容する。例えば、AB7と命名された抗体はIL-1βエピトープに結合するが、結合したIL-1βのIL-1RIに対する結合をなお許容する。特定の態様において、抗体は、結合したIL-1βのIL-1RIに結合する相互作用の親和性を減少させ得る。したがって、本開示は関連局面において、上記の特徴の少なくとも1つを有するIL-1β結合抗体またはIL-1β結合抗体断片の使用を提供する。本開示の前述の抗体、抗体断片、またはポリペプチドはいずれも、本明細書に記載するようにヒト化またはヒト型に設計できる。
例えば、以下の特許および特許出願に記述されている抗体または以下の特許および特許出願に記述されている方法を用いて導出された抗体を含む、当技術分野において公知の種々のIL-1 (例えば、IL-1β)抗体および断片を、本明細書において提供される方法により用いることができる: US 4,935,343; US 2003/0026806; US 2003/0124617 (例えば、抗体AAL160); WO 2006/081139 (例えば、抗体9.5.2); WO 03/034984; WO 95/01997 (例えば、抗体SK48-E26 VTKY); U.S. 7,446,175 (例えば、抗体ACZ 885); WO 03/010282 (例えば、抗体Hu007); WO 03/073982 (例えば、抗体N55S)、U.S. 7,541,033 (例えば、W17、U43、W13、W18、W20)、U.S. 7,491,392、WO 2004/072116、WO 2004/067568、EP 0 267 611 B1、EP 0 364 778 B1および米国特許出願第11/472813号。非限定的な例として、抗体AB5およびAB7 (米国特許出願第11/472813号、WO2007/002261)を本開示によって用いることができる。AB5およびAB7の可変領域の配列は以下のとおりである:
AB7
軽鎖
Figure 2015120704
下線の配列は(左から右に) CDR1、2および3を描く。
重鎖
Figure 2015120704
下線の配列は(左から右に) CDR1、2および3を描く。
AB5
軽鎖
Figure 2015120704
下線の配列は(左から右に) CDR1、2および3を描く。
重鎖
Figure 2015120704
下線の配列は(左から右に) CDR1、2および3を描く。
いくつかの態様において、本明細書において開示される方法のいずれかおよび/または全てで用いるためのIL-1β抗体またはその断片は、ヒトIL-1βに約1 nMまたはそれ以下の解離定数で結合することができる。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約500 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約250 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片はヒトIL-1βに約100 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約50 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約10 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約5 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約1 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。いくつかの態様において、抗体または断片はヒトIL-1βに約0.3 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は中和抗体である。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、結合抗体または断片がIL-1βのIL-1受容体I (IL-1RI)への結合を実質的に可能にするようなIL-1βエピトープに結合する。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1α、IL-1RまたはIL-1Raに検出可能に結合しない。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体の結合と競合する。上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体が結合するエピトープと同じものであるまたは実質的に同じものであるエピトープに結合する。上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1βのGlu64を組み入れたエピトープに結合する。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1βのN末端のアミノ酸番号1〜34に結合する。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、ヒト化されたものまたはヒトのものである。
本開示はまた、心臓事象または心血管疾患の低減、予防または処置で用いるための組成物の製造での、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の使用を提供する。
別の局面において、本方法は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する抗IL-1β抗体またはその断片の治療有効量を投与する段階を含む。1つの態様において、抗体または断片は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストのIC50の約90%、80%、70%、60%、50%未満であるIC50を有する。さらなる態様において、抗体または断片は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストのIC50の約40%、30%、20%、10%未満であるIC50を有する。好ましい態様において、抗体または断片は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストのIC50の約8%、5%、4%、3%、2%、1%未満であるIC50を有する。1つの態様において、IL-1β受容体アンタゴニストはアナキンラ(すなわち、Kineret(登録商標))である。
別の局面において、本明細書において提供される方法は、治療有効量の抗IL-1β抗体またはその断片を対象に投与する段階を含み、ここで抗体またはその断片が、参照により組み入れられるEconomides et al., Nature Med., 9:47-52 (2003)により記述されているアッセイ法を用いて対照抗体と比較して、マウスにおけるIL-6のIL-1β刺激性放出のインビボ阻害を提供する。1つの態様において、抗体または断片は、対照抗体と比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%の、マウスにおけるIL-6のIL-1β刺激性放出のインビボ阻害を提供する。さらなる態様において、抗体または断片は、対照抗体と比較して少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%の、マウスにおけるIL-6のIL-1β刺激性放出のインビボ阻害を提供する。1つの態様において、対照抗体はアイソタイプ対照抗体である。
別の局面において、本開示は、抗体を使用しない場合の対照と比較して、ヒト全血における表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)誘導性サイトカイン産生を阻害する、抗IL-1β抗体またはその断片の治療有効量をヒトに投与する段階を含む方法を提供する。1つの態様において、抗体または断片は、対照と比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%高いレベルの、ヒト全血における表皮ブドウ球菌誘導性サイトカイン産生の阻害を提供する。さらなる態様において、抗体または断片は、対照と比較して少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%高いレベルの、ヒト全血における表皮ブドウ球菌誘導性サイトカイン産生の阻害を提供する。1つの態様において、阻害されるサイトカインはIL-1β、IL-1a、IL-6、IL-8、IL-1Ra、TNFαまたはIFNγである。
本明細書に記載する抗体および抗体断片は、任意の適切な方法により調製することができる。そのような抗体および抗体断片を調製する適切な方法は、当技術分野において公知である。抗体および抗体断片を調製する他の方法は、本明細書の一部として本明細書に記載されている。本明細書に記載する本発明の抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、任意の程度まで単離または精製することができる。本明細書で使用する単離された化合物とは、その天然環境から取り出された化合物である。精製された化合物とは、その化合物が(i) その天然環境において、または(ii) 実験室条件下で最初に合成および/もしくは増幅された際に存在するよりも純粋な形態で存在するように、純度が増加した化合物であり、「純度」とは相対語であって、必ずしも「絶対純度」を意味する必要はない。
薬学的組成物
本発明に従って使用するためのIL-1(例えば、IL-1β)結合抗体および抗体断片は、本明細書の方法において使用するための組成物、特に薬学的組成物に製剤化することができる。
そのような組成物は、適切な担体、例えば薬学的に許容される薬剤との混合物中に、本発明のIL-1β結合抗体若しくは抗体断片の治療的または予防的有効量を含む。典型的に、本発明のIL-1β結合抗体および抗体断片は、動物への投与のために十分に精製してから薬学的組成物中に製剤化する。
薬学的に許容される薬剤には、担体、賦形剤、希釈剤(diluent)、抗酸化剤、保存剤、着色剤、香味剤、および希釈剤(diluting agent)、乳化剤、懸濁剤、溶媒、増量剤、膨張剤、緩衝液、送達媒体、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤、抗菌剤、および界面活性剤が含まれる。
中性緩衝生理食塩水またはアルブミンと混合した生理食塩水は、例示的な適切な担体である。薬学的組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはTween、プルロニック、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。同様に一例として、適切な等張化増進剤には、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸などが含まれる。過酸化水素もまた、保存剤として用いることができる。適切な共溶媒には、グリセリン、プロピレングリコール、およびPEGが含まれる。適切な錯化剤には、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、またはヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンが含まれる。適切な界面活性剤または湿潤剤には、ソルビタンエステル、ポリソルベート80などのポリソルベート、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなどが含まれる。緩衝液は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、リン酸、炭酸水素、またはTris-HClなどの従来の緩衝液であってよい。酢酸緩衝液はpH 約4〜5.5であってよく、Tris緩衝液はpH 約7〜8.5であってよい。さらなる薬学的薬剤が、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company, 1990に記載されている。
組成物は、液体形態であっても、または凍結乾燥もしくはフリーズドライ形態であってもよく、1つまたは複数の凍結乾燥保護剤、賦形剤、界面活性剤、高分子量構造添加物、および/または膨張剤を含み得る(例えば、米国特許第6,685,940号、第6,566,329号、および第6,372,716号を参照されたい)。1つの態様においては、スクロース、ラクトース、またはトレハロースなどの非還元糖である凍結保護剤を含める。一般的に含める凍結保護剤の量は、再構成した際に生じる製剤が等張になるようなものであるが、高張なまたはわずかに低張な製剤もまた適している場合がある。さらに、凍結保護剤の量は、凍結乾燥時のタンパク質の許容できない量の分解および/または凝集を防ぐのに十分であるべきである。凍結乾燥前の製剤中の糖類(例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース)の例示的な凍結保護剤濃度は、約10 mM〜約400 mMである。別の態様においては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(例えば、Triton);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、または二ナトリウムメチルオフェイル-タウレート;ならびにMONAQUAT(商標)系(Mona Industries, Inc.、ニュージャージー州、パターソン)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールの共重合体(例えば、Pluronic、PF68など)などの非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤といった界面活性剤を含める。凍結乾燥前の製剤中に存在し得る界面活性剤の例示的な量は、約0.001〜0.5%である。高分子量構造添加物(例えば、増量剤、結合剤)には、例えば、アカシア、アルブミン、アルギン酸、リン酸カルシウム(二塩基性)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストレート、スクロース、チロース、アルファ化デンプン、硫酸カルシウム、アミロース、グリシン、ベントナイト、マルトース、ソルビトール、エチルセルロース、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロ硫酸二ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、グルコース、グアーガム、液体グルコース、圧縮糖、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、トラガカント結晶セルロース、デンプン、およびゼインが含まれ得る。高分子量構造添加物の例示的な濃度は、0.1重量%〜10重量%である。他の態様においては、膨張剤(例えば、マンニトール、グリシン)を含めてもよい。
組成物は、非経口投与に適切であってよい。例示的な組成物は、関節内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、病巣内、直腸内、経皮的、経口、および吸入経路などの当業者に利用可能な任意の経路によって、動物に注射または注入するのに適している。非経口製剤は典型的に、薬学的に許容される保存剤を任意に含んで、無菌であり発熱物質を含まない等張水溶液である。
非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または生理食塩水および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内媒体には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(ブドウ糖加リンゲル液に基づくものなど)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存剤およびその他の添加剤もまた存在してよい。一般的には、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., Mack Eds., 1980を参照されたい。
本明細書に記載する薬学的組成物は、持続放出性の産物の局所濃度(例えば、ボーラス、デポー効果)、および/または特定の局所環境における安定性もしくは半減期の増加を提供する様式で、制御または持続送達用に製剤化することができる。本開示は、特定の態様において、そのような組成物は最初の貯蔵物中に有意に大量の抗体または断片を含み得るが、任意の時点で実際に放出され利用可能な抗体または断片の有効量は、本明細書の開示に従って、最初の貯蔵物よりもはるかに少ない量であることを意図する。組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物、ならびに生分解性マトリックス、注射用微粒子、マイクロカプセル粒子、マイクロカプセル、生浸食性粒子ビーズ、リポソーム、および後にデポー注射として送達することができる、活性薬剤の制御または持続放出を提供する埋め込み型送達装置のような薬剤と共に、本開示のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターの製剤を含み得る。そのような持続または制御送達手段を製剤化する技法は公知であり、種々のポリマーが開発され、薬物の制御放出および送達に用いられている。そのようなポリマーは典型的に生分解性であり、かつ生体適合性である。鏡像体ポリマーまたはポリペプチドの部分と、温度またはpH感受性特性を有するヒドロゲルとの複合体形成によって形成されるものを含むポリマーヒドロゲルは、生物活性タンパク質剤(例えば、抗体)の捕捉に関与する穏やかな水性条件に起因して、薬物デポー効果を提供するのに望ましいと考えられる。例えば、国際公開公報 WO 93/15722における薬学的組成物を送達するための制御放出多孔性ポリマー微粒子の記載を参照されたい。
この目的に適した物質には、ポリ乳酸(例えば、米国特許第3,773,919号を参照されたい)、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988A)などのポリ-(a-ヒドロキシカルボン酸)のポリマー、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman et al., Biopolymers, 22: 547-556 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリル酸)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981)、およびLanger, Chem. Tech., 12: 98-105 (1982))、エチレン酢酸ビニル、またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。その他の生分解性ポリマーには、ポリ(ラクトン)、ポリ(アセタール)、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(オルト炭酸)が含まれる。持続放出組成物はまたリポソームを含んでもよく、リポソームは当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができる(例えば、Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688-92 (1985)を参照されたい)。担体自体またはその分解産物は、標的組織において非毒性であるべきであり、状態をさらに悪化すべきでない。これは、標的疾患の動物モデルにおいて、またはそのようなモデルが利用できない場合には正常動物において、日常的なスクリーニングにより決定することができる。
持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN--)、インターロイキン-2、およびMN rgp120で行われ成功している。Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996);Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993);Hora et al., Bio/Technologv. 8:755-758 (1990);Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」, Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds, (Plenum Press: New York, 1995), pp. 439-462;WO 97/03692、WO 96/40072、WO 96/07399;および米国特許第5,654,010号。これらのタンパク質の持続放出製剤は、その生体適合性および広範囲の生物分解性特性に起因して、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)ポリマーを用いて開発された。PLGAの分解産物である乳酸およびグリコール酸は、ヒトの身体から速やかに除去され得る。さらに、このポリマーの分解性はその分子量および組成に依存する。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」, M. Chasin and R. Langer (Eds.), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。持続放出組成物のさらなる例には、例えば、EP 58,481A、米国特許第3,887,699号、EP 158,277A、カナダ特許第1176565号、U. Sidman et al., Biopolymers 22, 547 [1983]、R. Langer et al., Chem. Tech. 12, 98 [1982]、Sinha et al., J. Control. Release 90, 261 [2003]、Zhu et al., Nat. Biotechnol. 18, 24 [2000]、およびDai et al., Colloids Surf B Biointerfaces 41, 117 [2005]が含まれる。
生体接着ポリマーもまた、本開示の組成物中でのまたは組成物との使用に意図される。生体接着剤とは、長期間にわたり生体基質に接着することができる合成物質および天然物質である。例えば、カルボポールおよびポリカルボフィルはいずれも、ポリ(アクリル酸)の合成架橋誘導体である。天然物質に基づく生体接着送達系は、例えば、ヒアルロナンとしても知られるヒアルロン酸を含む。ヒアルロン酸は、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンの残基からなる天然ムコ多糖である。ヒアルロン酸は、結合組織、さらに滑液ならびに眼球の硝子体液および房水を含む、脊椎動物の細胞外組織基質に見出される。ヒアルロン酸のエステル化誘導体は、生体適合性かつ生分解性である、送達に使用するための微粒子を生成するために用いられている(例えば、Cortivo et al., Biomaterials (1991) 12:727-730;欧州特許出願公開第517,565号;WO 96/29998;Illum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい)。本開示の組成物を含む例示的なヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ポリマーに対してIL-1β結合抗体または断片が約0.1%〜約40% (w/w)という量のヒアルロン酸エステルポリマーを含む。
本開示にしたがって組成物を送達するために生分解性および非生分解性ポリマーマトリックスを用いることができ、このようなポリマーマトリックスは天然または合成ポリマーを含み得る。生分解性マトリックスが好ましい。放出が起こる時間はポリマーの選択に基づく。典型的に、数時間から3〜12ヵ月の期間にわたる放出が最も望ましい。生分解性送達系を形成するために使用できる例示的な合成ポリマーには、乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリ-ビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリ無水物、ポリウレタン、およびそれらの共重合体、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルエステルとメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ならびにポリビニルピロリドンが含まれる。例示的な天然ポリマーには、アルギン酸ならびにデキストランおよびセルロースを含むその他の多糖類、コラーゲン、その化学的誘導体(例えばアルキル、アルキレンといった化学基の置換、付加、水酸化、酸化、および当業者により日常的に行われるその他の修飾)、アルブミンおよびその他の親水性タンパク質、ゼインならびにその他のプロラミン類および疎水性タンパク質、それらの共重合体および混合物が含まれる。一般に、これらの物質は、インビボにおいて酵素的加水分解または水への曝露によって、表面浸食またはバルク浸食により分解する。ポリマーは任意に、水中でその重量の約90%まで吸収し得るヒドロゲル(例えば、WO 04/009664、WO 05/087201、Sawhney, et al., Macromolecules, 1993, 26, 581-587を参照されたい)の形態であり、さらに、任意に多価イオンまたはその他のポリマーと架橋されている。
送達系にはまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロール、ならびに脂肪酸、またはモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である非ポリマー系;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分的に融解した植込錠などが含まれる。具体例には、これらに限定されないが、(a) 米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されているような、産物がマトリックスに収まる形態で含まれている浸食系、ならびに(b) 米国特許第3,854,480号、第5,133,974号、および第5,407,686号に記載されているような、産物が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系が含まれる。産物を含むリポソームは、例えば(DE 3,218,121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688-3692 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030-4034 (1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;ならびにEP 102,324)などの公知の方法によって調製することができる。
IL-1β結合抗体または抗体断片を含む薬学的組成物は、例えば乾燥粉末としてなど、吸入用に製剤化することができる。吸入用溶液を、エアロゾル送達のための液化噴霧剤中に製剤化することもできる。さらなる別の製剤では、溶液が噴霧され得る。肺投与のためのさらなる薬学的組成物には、例えば、化学修飾されたタンパク質の肺送達について開示しているWO 94/20069に記載されているものが含まれる。肺送達するためには、粒子の大きさは、遠位肺への送達に適したものでなければならない。例えば、粒子の大きさは1μm〜5μmであってよいが、各粒子がかなり多孔性である場合には、より大きい粒子を用いることも可能である。
本発明のIL-1β結合抗体または抗体断片を含む特定の製剤は、経口投与することができる。この様式で投与する製剤は、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合に通例用いられる担体を伴いまたは伴わずに製剤化することができる。例えば、カプセルは、生物学的利用能が最大となり、全身移行前の分解が最小限に抑えられる時点で、消化管の所定の箇所において製剤の活性部分を放出するように設計することができる。選択的結合剤の吸収を促進するために、さらなる薬剤を含めることができる。希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤を用いることもできる。
別の調製物は、錠剤の製造に適した非毒性添加剤との混合物中に、本発明のIL-1β結合抗体または抗体断片の有効量を含み得る。錠剤を滅菌水または別の適切な媒体中に溶解することにより、溶液を単位剤形として調製することができる。適切な賦形剤には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;またはデンプン、ゼラチン、もしくはアカシアなどの結合剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクなどの潤滑剤が含まれる。
適切なおよび/または好ましい薬学的組成物は、意図する投与経路、送達形式、および所望の投与量に応じて、本開示および製剤化技術の一般的知識を考慮して決定することができる。投与様式にかかわらず、患者の体重、体表面積、または臓器の大きさに従って有効量を計算することもできる。本明細書中に記載の製剤をそれぞれ含む治療に適した投与量を決定するための計算のさらなる微調整は、当技術分野において日常的に行われ、これは当技術分野において日常的に行われる仕事の範囲内である。適切な用量-応答データを用いて、適切な投薬量を確認することができる。
本開示に照らしてさらなる製剤が明らかになると考えられ、これには、1つまたは複数の他の治療薬と組み合わせて、本発明のIL-1β結合抗体および断片を含む製剤が含まれる。例えば、いくつかの製剤では、本開示のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターを、IL-1シグナル伝達経路の第2のインヒビターと共に製剤化する。代表的な第2のインヒビターには、これらに限定されないが、例えばUS 6899878、US 2003022869、US 20060094663、US 20050186615、US 20030166069、WO/04022718、WO/05084696、WO/05019259に記載されているような抗体、抗体断片、ペプチド、ポリペプチド、化合物、核酸、ベクター、および薬学的組成物が含まれる。例えば、組成物は、IL-1β結合抗体、断片、またはそのような抗体もしくは断片をコードする核酸もしくはベクターと組み合わせて、本開示のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターを含み得る。
使用方法
治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管疾患の処置および/または予防のために本明細書における方法によって開示されるように用いることができる。このような方法、およびこのような方法で用いるための薬学的組成物を、心血管疾患リスク因子の既往を有する対象においてなど、対象において心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術のような、心血管事象を低減する、処置するまたは予防するために用いることができる。これらの方法および薬学的組成物を用いて、対象における心血管事象後の死亡を低減することもできる。本開示はまた、別の方法としてまたは抗IL-1β抗体もしくは断片に加えて、他のIL-1経路阻害剤の使用を企図する。
記述の方法に関して本明細書において用いられる「予防」、「予防する」、「予防すること」、「抑制」、「抑制する」、「抑制すること」、「阻害する」および「阻害」という用語は、例えば、心血管事象または疾患(例えば、急性もしくは慢性心血管疾患)のような、事象、疾患または病態の臨床症状または徴候の発生を一時的にまたは永続的に予防すること、抑制すること、または低減することをいう。そのような予防、抑制または低減は、絶対的に有用である必要はない。
記述の方法に関して本明細書において用いられる「低減する」、「低減すること」および「低減」という用語は、例えば、心血管事象または疾患(例えば、急性もしくは慢性心血管疾患)を処置することまたはその処置など、事象もしくは疾患までの時間を遅延させること、事象もしくは疾患の可能性もしくはリスクを減少させること、事象もしくは疾患の発生率(例えば、処置群における)を減少させること、事象もしくは疾患の発生を予防すること(例えば、心血管事象もしくは疾患の予防)、(事象が死である場合を除き)事象もしくは疾患の程度もしくは重症度を減少させること、および/または(事象が死である場合を除き)事象もしくは疾患からの回復までの時間を減少させることをいう。
本明細書において用いられる「心血管事象後の死亡」という語句は、心血管事象後(例えば、心血管事象の開始後)に起こる死亡(すなわち、死)をいい、かつそれは心血管事象によって直接的または間接的に引き起こされまたは影響を受けてもよいが、そうである必要はない。後のとは、直接的または間接的な因果関係を判定できるか否かにかかわらず、心血管事象と死亡との間の(例えば測定可能な)時間の近さもいう。心血管事象と死亡との間の時間の近さは、変わることがあり、同時にまで接近している時間量を含むことがある。
本明細書において記述の方法に関して用いられる「処置」、「処置する」および「処置すること」という用語は、例えば、心血管事象または疾患(例えば、急性もしくは慢性心血管疾患)のような、事象、疾患または病態の臨床症状、徴候または進行を一時的にまたは永続的に解消すること、低減すること、抑制することまたは改善することをいう。そのような処置は、絶対的に有用である必要はない。
本明細書で使用する「処置を必要とする」という用語は、患者が処置を必要とするかまたは処置から恩恵を受けるという、介護者によってなされた判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の域にあるが、本開示の方法または化合物によって治療可能な病態の結果として患者が病気であるまたは病気になるという知識を含む様々な要因に基づいてなされる。
本明細書で使用する「予防を必要とする」という用語は、患者が予防を必要とするかまたは予防から恩恵を受けるという、介護者によってなされた判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の域にあるが、本開示の方法または化合物によって予防可能な病態の結果として患者が病気になるかまたは病気になる恐れがあるという知識を含む様々な要因に基づいてなされる。
本明細書において用いられる「治療有効量」という用語は、対象に(例えば、1回または複数回用量として)投与される場合に、例えば、心血管事象もしくは疾患を低減すること、または心血管事象もしくは疾患(例えば、急性もしくは慢性心血管疾患)後の死亡を低減することを含む、疾患状態または病態の任意の症状、局面または特徴に対する任意の検出可能なプラスの効果を及ぼしうる、単独のまたは薬学的組成物の一部としての化合物(例えば、抗体)の量をいう。そのような効果は、絶対的に有益である必要はない。
本開示は、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含む、心血管疾患を有する対象を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
本開示は、対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、対象が、心血管事象の既往または少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象であり、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減する(例えば、事象までの時間を遅延する、事象の可能性またはリスクを低減する、事象を予防する、事象の重症度を低減する、回復までの時間を低減する)方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。いくつかの態様において、過去の心血管事象は初回の心血管事象である。いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。
いくつかの態様において、過去または初回の心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
いくつかの態様において、心血管事象を低減する方法は、次回または続発の心血管事象を低減する方法である。いくつかの態様において、心血管事象(例えば、次回または続発の心血管事象)は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症および血行再建術からなる群より選択される。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、同じ種の心血管事象である。いくつかの態様において、初回の心血管事象および次回の心血管事象は、違う種の心血管事象である。
いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの好ましい態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、心血管事象の1週間以内に、心血管事象の96時間以内に、心血管事象の72時間以内に、心血管事象の48時間以内に、心血管事象の24時間以内に、または心血管事象の12時間以内に最初に投与される。いくつかの態様において、対象はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、末梢血管疾患は臨床的に明らか(例えば、フォンテーヌクラスII以上の末梢動脈疾患)である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。いくつかの態様において、リスク因子は肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である。いくつかの態様において、リスク因子は末期腎疾患である。いくつかの態様において、リスク因子は高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。いくつかの態様において、対象は上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する。いくつかの態様において、対象は55歳を超える。いくつかの態様において、対象は65歳を超える。いくつかの態様において、対象は非高血圧性である。いくつかの態様において、対象は管理不良高血圧を有する。いくつかの態様において、対象は「A型」の性格を有する。いくつかの態様において、対象は座りがちな生活様式を有する。いくつかの態様において、対象は糖尿病を有する。いくつかの態様において、糖尿病は2型糖尿病である。いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法を提供する。いくつかの態様において、心血管事象は心筋梗塞、脳卒中、心停止、うっ血性心不全、心血管死、急性冠動脈症候群(例えば、診断された)、狭心症または血行再建術である。いくつかの態様において、心血管事象は、心筋梗塞または急性冠動脈症候群である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴う心筋梗塞(例えば、ST部分上昇心筋梗塞、STEMI)である。いくつかの態様において、心筋梗塞はST上昇を伴わない心筋梗塞(例えば、非ST部分上昇心筋梗塞、NSTEMI)である。いくつかの態様において、ST上昇の有無は心電図(例えば、ECG、EKG)によって判定される。
いくつかの態様において、死亡は心血管の原因による死である。他の態様において、死亡は何らかの原因による死である。いくつかの態様において、心血管事象は心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの好ましい態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、心血管事象の1週間以内に、心血管事象の96時間以内に、心血管事象の72時間以内に、心血管事象の48時間以内に、心血管事象の24時間以内に、または心血管事象の12時間以内に最初に投与される。いくつかの態様において、対象は2型糖尿病を持たない。いくつかの態様において、対象は心筋梗塞または脳卒中の過去の心血管事象を生き抜いている。いくつかの態様において、心血管事象の発生は心筋梗塞または脳卒中の心血管事象の再発である。
いくつかの態様において、対象は1つまたは複数の心血管疾患リスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、末梢血管疾患は臨床的に明らか(例えば、フォンテーヌクラスII以上の末梢動脈疾患)である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。いくつかの態様において、リスク因子は肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である。いくつかの態様において、リスク因子は高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。
いくつかの態様において、対象は非高血圧性である。いくつかの態様において、対象は管理不良高血圧を有する。いくつかの態様において、対象は「A型」の性格を有する。いくつかの態様において、対象は座りがちな生活様式を有する。いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該リスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法を提供する。
いくつかの態様において、心血管事象は心筋梗塞、脳卒中、心停止、うっ血性心不全、心血管死、急性冠動脈症候群(例えば、診断された)、狭心症または血行再建術である。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。いくつかの態様において、冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術は経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である。
いくつかの態様において、リスク因子は顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である。いくつかの態様において、リスク因子はトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである。
いくつかの態様において、対象は、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する。いくつかの態様において、対象は55歳を超える。いくつかの態様において、対象は65歳を超える。いくつかの態様において、対象は2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。いくつかの態様において、対象は3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する。
いくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はコレステロール低下剤、スタチン、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、β遮断薬、降圧薬、利尿薬、アスピリン、ナイアシン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬、血管拡張薬、抗凝血薬、血小板凝集の阻害剤、血栓溶解薬またはジギタリスである。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および血行再建術を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。
本開示はまた、血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、血行再建術は冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である。
本開示はまた、対象における急性高血圧を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、対象は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を有する。いくつかの他の態様において、対象は軽度から中程度の高血圧を有し、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。いくつかの態様において、降圧剤は静脈内に投与される。いくつかの態様において、降圧剤は、α/βアドレナリン遮断剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、抗アドレナリン作動剤、βアドレナリン遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿薬および血管拡張薬からなる群より選択される。いくつかの態様において、降圧剤はカルベジロール、ラベタロール、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、クロニジン、ドキサゾシン、グアナベンズ、グアナドレル、グアネチジン、グアンファシン、メカミラミン、メチルドパ、プラゾシン、レセルピン、テラゾシン、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベラパミル、アミロライド、ベンズチアジド、クロロチアジド、クロルサリドン、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メトラゾン、ポリチアジド、スピロノラクトン、トルセミド、トリクロルメチアジド、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、クレビジピンまたはミノキシジルである。いくつかの態様において、降圧剤はラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウムまたはクレビジピンである。
本開示はまた、対象における心血管事象または疾患を低減する、予防するまたは処置する方法であって、医学的または外科的介入との組み合わせで(例えば、その前に、間にまたは後に)抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。そのような抗体は治療有効量で投与されうる。そのような介入は治療的に有効でありうる。いくつかの態様において、医学的介入は、例えば、本明細書において記述される活性薬剤のいずれか1つまたは複数を含む、薬物または生物製剤のような、活性薬剤である。いくつかの態様において、医学的介入は、外来患者の医学的処置または手技である。いくつかの態様において、医学的介入は、入院患者の入院である。いくつかの態様において、外科的介入は、例えば、本明細書において記述される血行再建術のいずれか1つまたは複数を含む、血行再建術である。いくつかの態様において、外科的介入は、心臓弁修復術または置換術、冠動脈バイパス形成手術、心臓移植または心臓ポンプを含む。いくつかの態様において、外科的介入は両心室心臓ペースメーカー、内部除細動器(ICD)または心筋切除術を含む。いくつかの態様において、医学的介入は、禁煙薬物治療または禁煙カウンセリングである。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、心血管事象の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、(a) 心血管事象の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、該方法を提供する。
本開示はまた、(a) 心血管事象を持つ対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法を提供する。
本開示はまた、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、(a) 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含み、かつリスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、該方法を提供する。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置する方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
本開示はまた、対象における心血管事象を処置するための方法であって、心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、(a) 心血管事象を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および血行再建術を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
本開示はまた、血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、(a) 血行再建術を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階および(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。
本開示はまた、対象における急性高血圧を処置する方法であって、(a) 急性高血圧を有する対象を特定する、診断するまたは選択する段階ならびに(b) 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、高血圧は180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を呈する。いくつかの他の態様において、高血圧は軽度から中程度であり、140〜180 mm Hgの収縮期血圧(SBP)および/または90〜110 mm Hgの拡張期血圧(DBP)を有する。
本開示はまた、亜急性心筋梗塞(MI)、亜急性脳卒中(recent stroke)またはすでに罹患している末梢動脈疾患の病歴を有する対象において新たな虚血性脳梗塞(致死性もしくは非致死性)、新たなMI (致死性もしくは非致死性)および他の血管死の複合エンドポイント率を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、対象は、ST部分上昇を伴わない急性冠動脈症候群(例えば、不安定狭心症または非Q波心筋梗塞)を有する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、虚血と一致する胸部疼痛または症状のつい最近のエピソードの発症から12、24、48または72時間以内に最初に投与される。いくつかの態様において、対象は、(例えば、ST部分上昇を伴わない)新たな虚血と適合するECG変化、あるいは正常上限の少なくとも2倍までの心筋酵素またはトロポニンIもしくはTの上昇のいずれかを有する。
本開示はまた、亜急性心筋梗塞(MI)、亜急性脳卒中(recent stroke)またはすでに罹患している末梢動脈疾患の病歴を有する対象においてアテローム血栓性事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、対象は、ST部分上昇を伴わない急性冠動脈症候群(例えば、不安定狭心症または非Q波心筋梗塞)を有する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、虚血と一致する胸部疼痛または症状のつい最近のエピソードの発症から72時間、または好ましくは48時間、またはより好ましくは24、12、6もしくは3時間以内に最初に投与される。いくつかの態様において、対象は、(例えば、ST部分上昇を伴わない)新たな虚血と適合するECG変化、あるいは正常上限の少なくとも2倍までの心筋酵素またはトロポニンIもしくはTの上昇のいずれかを有する。
本開示はまた、ST部分上昇急性心筋梗塞を有する対象において全死因死亡率および死、再梗塞または脳卒中の複合エンドポイント率を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、該方法を提供する。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、心筋梗塞の症状を呈している対象で72時間、または好ましくは48時間、またはより好ましくは24、12、6もしくは3時間以内に最初に投与される。
上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、対象は、例えば、急性心血管疾患または慢性心血管疾患を含めて、心血管疾患を有する患者である。
上記の方法のいずれかのいくつかの態様において、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である。
本開示はまた、心臓事象または心血管疾患の低減、予防または処置で用いるための組成物の製造での、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の使用を提供する。
本開示はまた、心血管事象の低減(例えば、事象までの時間の遅延、事象の可能性またはリスクの低減、事象の予防、事象の重症度の低減、回復までの時間の低減)を心血管事象および/またはIL-1β結合抗体もしくはその結合断片の初回投与後2年もしくはそれ以上、3年もしくはそれ以上、4年もしくはそれ以上または5年もしくはそれ以上の期間にわたり対象において評価できることを提供する。
加えて、本開示はさらに、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がまた、C反応性タンパク質(CRP)レベルの減少を達成するのに十分でありうることを提供する。CRPレベルの低減は標準的なアッセイ法(例えば、高感度CRP、超高感度CRP)を用いて容易に測定される。本明細書において開示される方法によって提供されるように、C反応性タンパク質レベルの減少は、例えば、処置前レベルから
Figure 2015120704
の減少でありうる。あるいは、C反応性タンパク質レベルの減少は、例えば、処置前レベルから>20%、>30%、>40%、>50%、>60%、>70%、>80%、>90%、>95%の減少でありうる。
その代わりに、又はそれに加えて、本開示によって処置される対象は、脂質プロファイルの測定可能な改善を伴う血清中脂質の減少を経験することができる(例えば、血清中脂質の減少、HDLおよびLDLの割合の変化)。血清中脂質および/または脂質プロファイルのそのような測定は、例えばコレステロールの減少、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)の減少、超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL)の減少、トリグリセリドの減少、遊離脂肪酸の減少、アポリポタンパク質B (アポB)の減少、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)の増加、処置前レベルと比べて高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)のレベルを維持すること、および/またはアポリポタンパク質A (アポA)の増加を含むことができる。測定は、当技術分野で知られている標準的な技術を用いることができる。例えば、コレステロール(例えば、総コレステロール)のレベルの減少は、処置前レベルからの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%またはそれ以上の減少であることができる。低密度リポタンパク質コレステロールのレベルの減少は、処置前レベルからの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%またはそれ以上の減少であることができる。対象の血中トリグリセリドレベルの減少は、処置前レベルからの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上の減少であることができる。遊離脂肪酸のレベルの減少は、処置前レベルからの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%またはそれ以上の減少であることができる。高密度リポタンパク質コレステロールのレベルの増加は、処置前レベルからの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、12%、14%、16%またはそれ以上の増加であることができる。
上記の測定の他のものは、当技術分野において公知の種々の標準的アッセイ法のいずれか、例えばChernecky CC, Berger BJ, eds. (2004). Laboratory Tests and Diagnostic Procedures, 4th ed. Philadelphia: Saunders; Fischbach FT, Dunning MB III, eds. (2004). Manual of Laboratory and Diagnostic Tests, 7th ed. Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins; Genest J, et al. (2003). Recommendations for the management of dyslipidemia and the prevention of cardiovascular disease: Summary of the 2003 update. Canadian Medical Association Journal, 169(9): 921-924に掲載されているアッセイ法を用いて行うことができる。同様にオンラインで利用可能である: http://www.cmaj.ca/cgi/content/full/169/9/921/DC1; Handbook of Diagnostic Tests (2003). 3rd ed. Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins; およびPagana KD, Pagana TJ (2002). Mosby's Manual of Diagnostic and Laboratory Tests, 2nd ed. St. Louis: Mosby。
投薬
上記の方法のいずれかおよび/または全てで用いるための抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1回または複数回用量(例えば、初回用量および1回または複数回のその後の用量)で投与されうる。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、10 mg/kgもしくはそれ以下、5 mg/kgもしくはそれ以下、3 mg/kgもしくはそれ以下または2 mg/kgもしくはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1 mg/kgもしくはそれ以下の抗体もしくは断片の1回もしくは複数回用量、0.5 mg/kgもしくはそれ以下の抗体もしくは断片の1回もしくは複数回用量、0.3 mg/kgもしくはそれ以下の抗体もしくは断片の1回もしくは複数回用量、0.1 mg/kgもしくはそれ以下の抗体もしくは断片の1回もしくは複数回用量、または0.03 mg/kgもしくはそれ以下の抗体もしくは断片の1回もしくは複数回用量で投与される。上記の態様のいくつかにおいて、1回または複数回用量は少なくとも0.01 mg/kgの抗IL-1β結合抗体またはその結合断片である。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、約0.01 mg/kg〜1 mg/kg、約0.03 mg/kg〜1 mg/kg、約0.01 mg/kg〜0.3 mg/kg、または約0.1 mg/kg〜0.3 mg/kgの1回または複数回用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、約0.001 mg/kg〜0.3 mg/kg、約0.001 mg/kg〜0.1 mg/kg、約0.001 mg/kg〜0.03 mg/kgまたは約0.001 mg/kg〜0.01 mg/kgの1回または複数回用量で投与される。
他の態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回用量および1回または複数回のその後の用量はそれぞれ、約0.01 mg/kg〜約10 mg/kgの抗体、約0.05〜約5 mg/kgの抗体、約0.05 mg/kg〜約3 mg/kgの抗体、約0.1 mg/kg〜約3 mg/kgの抗体、約0.1 mg/kg〜約1 mg/kgの抗体、約0.1 mg/kg〜約0.5 mg/kgの抗体、約0.3 mg/kg〜約5 mg/kgの抗体、約0.3 mg/kg〜約3 mg/kgの抗体、約0.3 mg/kg〜約1 mg/kgの抗体、約0.5 mg/kg〜約5 mg/kgの抗体、約0.5 mg/kg〜約3 mg/kgの抗体、約0.5 mg/kg〜約1 mg/kgの抗体、約1 mg/kg〜約5 mg/kgの抗体または約1 mg/kg〜約3 mg/kgの抗体である。ある種の態様において、2回もしくはそれ以上、3回もしくはそれ以上、4回もしくはそれ以上、5回もしくはそれ以上、6回もしくはそれ以上、7回もしくはそれ以上、8回もしくはそれ以上、9回もしくはそれ以上、10回もしくはそれ以上または11回もしくはそれ以上のその後の用量の抗体が投与される。上記の投与量はmg (抗体または断片)/kg (処置される個体の体重)をいう。
上記の方法のいずれかおよび/または全てで用いるための抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、用量/対象体重比とは無関係に、固定用量として投与されうる。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1000 mgもしくはそれ以下、500 mgもしくはそれ以下または250 mgもしくはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回の固定用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、100 mgもしくはそれ以下、25 mgもしくはそれ以下または10 mgもしくはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回の固定用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、少なくとも0.5 mgの抗体または断片の1回または複数回の用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、少なくとも1 mgの抗体または断片の1回または複数回の用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、少なくとも10 mgの抗体または断片の1回または複数回の用量で投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、1 mg〜100 mgの抗体または断片の1回または複数回の用量で投与される。
ある種の態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量は、約1 mg〜約10 mg、約1 mg〜約25 mg、約10 mg〜約25 mg、約10 mg〜約50 mg、約10 mg〜約100 mg、約25 mg〜約50 mg、約25 mg〜約100 mg、約50 mg〜約100 mg、約50 mg〜約150 mg、約100 mg〜約150 mg、約100 mg〜約200 mg、約150 mg〜約200 mg、約150 mg〜約250 mg、約200 mg〜約250 mg、約200 mg〜約300 mg、約250 mg〜約300 mg、約250 mg〜約500 mg、約300 mg〜約400 mg、約400 mg〜約500 mg、約400 mg〜約600 mg、約500 mg〜約750 mg、約600 mg〜約750 mg、約700 mg〜約800 mgまたは約750 mg〜約1000 mgである。他の態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量は、約1 mg〜約10 mg、約1 mg〜約25 mg、約10 mg〜約25 mg、約10 mg〜約100 mg、約25 mg〜約50 mg、約50 mg〜約100 mg、約100 mg〜約150 mg、約150 mg〜約200 mgまたは約200 mg〜約250 mgである。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量は予め充填されたシリンジまたは送達装置を用いて投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射によって投与される。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われる。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ週ごとに1度からおよそ12ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ2週ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ3ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。いくつかの態様において、初回の用量および1回または複数回のその後の用量は、およそ3ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される。
本開示はまた、IL-1β結合抗体またはその結合断片の投与のための二つ以上の投薬間隔を含む、上記の方法のいずれかおよび/または全てで用いるための投薬計画を提供する。いくつかの態様において、投与量計画はIL-1β抗体またはその断片の投与のための少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の異なる投薬間隔を含む。いくつかの態様において、投与量計画はIL-1β抗体またはその断片の投与のための2つの異なる投薬間隔を含む。いくつかの態様において、投薬計画は、第1の投薬間隔がIL-1β抗体またはその断片の1回または複数回用量の投与を含み、かつ第2の投薬間隔がIL-1β抗体またはその断片の1回または複数回用量の投与を含み、かつ第1の投薬間隔は第2の投薬間隔よりも時間が短い、IL-1β結合抗体またはその結合断片の投与のための2つの異なる投薬間隔を含む。例えば、第1の投薬間隔は数日または数週間であってよく、かつ第2の投薬間隔は数ヶ月であってよい。いくつかの態様において、第1の投薬間隔は約5日〜約28日、約7日〜約21日、約12日〜約16日または約14日である。いくつかの態様において、第2の投薬間隔は約1ヶ月〜約3ヶ月、約1ヶ月〜約2ヶ月または約1ヶ月である。いくつかの態様において、第1の投薬間隔は約7日であり、かつ第2の投薬間隔は約1ヶ月である。
いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔が約7日から約21日であり、かつここでその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月から約3ヶ月である。いくつかの態様において、初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔は約12〜16日であり、かつその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月から約2ヶ月である。いくつかの態様において、初回の用量と第2の用量、および第2の用量と第3の用量の投与の間の投薬間隔は約14日であり、かつその後の用量の投与の間の投薬間隔が約1ヶ月である。上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、用量間の間隔が少なくとも約0.1 ug/mLのレベルで対象における該抗体または抗体断片の血漿濃度を維持するのに十分な時間であるように対象に投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、用量間の間隔が少なくとも約0.3 ug/mLのレベルで対象における該抗体または抗体断片の血漿濃度を維持するのに十分な時間であるように対象に投与される。いくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、用量間の間隔が少なくとも約1 ug/mLのレベルで対象における該抗体または抗体断片の血漿濃度を維持するのに十分な時間であるように対象に投与される。いくつかの態様において、これらの血漿濃度値は、本明細書での開示による抗体または断片で処置される個体に対して得られた値をいう。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで該1回または複数回のその後の用量が、初回の用量とほぼ同じまたは初回の用量に満たない量である。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつここで少なくとも1回のその後の用量が、初回の用量よりも多い量である。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、IL-1β誘発性のIL-8産生を測定するヒト全血中IL-1β阻害アッセイ法においてIL-1β受容体アンタゴニストよりも低いIC50を有する。いくつかの態様において、IL-1β受容体アンタゴニストはアナキンラである。
上記の方法のいずれかおよび/または全てのいくつかの態様において、抗体または抗体断片の初回用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われ、かつヒトにおける該抗体または抗体断片の血漿濃度が該初回用量および1回または複数回のその後の用量での処置経過中の投与間約1週超および約6ヶ月未満の期間にわたって約0.1 ug/mLのレベルより下まで減少するようにされる、抗IL-1β結合抗体または結合断片が投与される。いくつかの態様において、抗体または抗体断片の血漿濃度は、投与間約1週超および約5ヶ月、約4ヶ月、約3ヶ月、約2ヶ月、約1ヶ月、約3週、または約2週未満の期間にわたって約0.07 ug/mL、約0.05 ug/mL、約0.03 ug/mLまたは約0.01 ug/mLのレベルより下まで減少するようにされる。いくつかの態様において、血漿濃度値は、本明細書での開示による抗体または断片で処置される個体に対して得られた値をいう。
組み合わせ
本開示はまた、1つまたは複数の他の活性薬剤を含む薬学的組成物をIL-1β結合抗体または断片とともに(例えば、別に)投与でき、かつこのような投与を、例えば同じ日または別の日のような、同じ時点または別の時点で実施できることを提供する。他の活性薬剤の投与は、当技術分野において公知の標準的な医療行為(例えば、現行の標準的治療)によってもよく、または本明細書において開示されるような、IL-1β結合抗体もしくは断片の投与とともに用いられる場合には、投与が変更されてもよい(例えば、より長い間隔、より少ない投与量、開始の遅延)。以下に記載される活性薬剤は例示であって、限定することを意図するものではなく、組み合わせには2つ以上のさらなる薬剤、例えば、2つまたは3つのさらなる薬剤を含めることもできる。
本明細書において開示されるように対象に投与される抗IL-1β抗体またはその断片は、例えば本明細書において提供される活性薬剤のいずれかのような、少なくとも1つのさらなる活性薬剤による処置と組み合わせて投与することができる。1つの態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置が維持される。別の態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置が低減または中断され(例えば、対象が安定である場合)、その一方で抗IL-1β抗体または断片による処置は一定の投薬計画で維持される。別の態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置が低減または中断され(例えば、対象が安定である場合)、かつ抗IL-1β抗体または断片による処置が低減される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬、より短い処置計画)。別の態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置が低減または中断され(例えば、対象が安定である場合)、かつ抗IL-1β抗体または断片による処置が増大される(例えば、より高い用量、より高い頻度の投薬、より長い処置計画)。さらに別の態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置が維持され、かつ抗IL-1β抗体または断片による処置が低減または中断される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬、より短い処置計画)。さらに別の態様において、少なくとも1つの活性薬剤による処置および抗IL-1β抗体または断片による処置が低減または中断される(例えば、より低い用量、より低い頻度の投薬、より短い処置計画)。
いくつかの態様において、上記の方法のいずれかがさらに、抗IL-1β結合抗体またはその結合断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を投与する段階を含むことができる。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はコレステロール低下剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はスタチンまたはHMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンもしくはその混合物またはエゼチミブ、ナイアシン、ベシル酸アムロジピンとの混合物)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はカルシウムチャンネル遮断薬(例えば、アムロジピン、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル)またはβ遮断薬(例えば、エスモロール、メトプロロール、ナドロール、ペンブトロール)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は降圧薬(例えば、ラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウム、クレビジピン)、利尿薬(例えば、チアジド利尿薬、クロルタリドン、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メトラゾン、塩酸アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン)またはアスピリンである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、ラミプリル、ラミプリラット、カプトプリル、リシノプリル)またはアンギオテンシンII受容体遮断薬(例えば、ロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は血管拡張薬である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は抗凝血薬(例えば、アセノクマロール、フェンプロクモン、ワルファリンヘパリン、低分子量ヘパリン)または血小板凝集の阻害剤(例えば、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、エプチフィバチド、アスピリン、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は血栓溶解薬(例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はジギタリスである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はジゴキシンまたはネシリチドである。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は酸素である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はトロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルジン)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は硝酸塩(例えば、三硝酸グリセリン(GTN)/ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤は鎮痛剤(例えば、硫酸モルヒネ)である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はレニン阻害剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はエンドセリンA受容体阻害剤である。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤はアルドステロン阻害剤である。
別の態様において、本明細書において開示の疾患または病態を処置または予防するための(例えば、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のための)薬物の製造での、IL-1β抗体または結合断片の使用が企図される。これらの使用のいずれかにおいて、薬物を、第2の活性薬剤を使用する処置と調和させることができる。
本開示のさらに別の局面において、容器、抗IL-1β抗体またはその断片を含む容器内の組成物、および本明細書において開示されるように(例えば、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のために)対象(例えば、ヒト)に抗体または断片を投与するための使用説明書を含む添付文書を含んだ、製品が提供される。1つの態様において、容器は、薬学的に適当な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む。関連する態様において、容器内の組成物は第2の活性薬剤をさらに含む。
キットも本開示によって企図される。1つの態様において、キットは、バイアルまたは瓶などの容器中に包装された治療有効量または予防有効量の抗IL-1β抗体またはその断片を含み、また容器に貼付されるかまたは容器とともに包装されたラベルをさらに含み、ラベルは容器の内容物を記述し、また本明細書において開示されるように(例えば、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のために)容器の内容物を使用することに関する指示および/または使用説明書を提供する。1つの態様において、容器は、薬学的に適当な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む。関連する態様において、容器は第2の活性薬剤をさらに含む。
1つの態様において、製品、キットまたは薬物は本明細書において開示されるように(例えば、心血管事象および/または心血管疾患の低減、予防または処置のために)対象(例えば、ヒト)における疾患または病態の処置または予防用である。別の態様において、製品の添付文書またはキットのラベルの使用説明書は、上記の用量および/または投薬計画のいずれかによる抗体または断片の投与のための使用説明書を含む。さらに別の態様において、キットまたは製品の容器は予め充填されたシリンジである。
以下の実施例は、本開示の実践をさらに説明することを単に意図するものであり、その範囲をいかようにも限定するものと解釈されるべきではない。本明細書内で引用される全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参照により本明細書に明白に組み入れられる。
実施例1 ヒト対象へのIL-1β抗体の投与
IL-1β結合抗体またはその結合断片は、上述の用法により対象に投与してよい。具体的には、一実施例ではAB7と称するIL-1β抗体(上述)を、ヒトを対象として投与して、安全性、薬物動態およびインビボ生物活性を調べた。2型糖尿病患者を対象としてプラセボ対照二重盲検試験が行われた。対象群に対し、静注(IV)または皮下注(SC)により、単回または一定期間に複数回この抗体の投与が行われた。
この試験においてIVによる単回投与を行った処置群および対象数は、以下の表のとおりである。
Figure 2015120704
同様に、SC経路により単回投与および反復投与(2週間に3回)を行った処置群および対象数を以下の表に示す。
Figure 2015120704
第1日目に、抗体またはプラセボを一定の速度でIV点滴投与またはSC注射した(腹部、腕、大腿など)。有害事象の記録、理学的検査、バイタルサイン、臨床検査(生化学的検査、血液学的検査、尿検査など)を始めとする安全性の評価は、公知の標準的な診察方法を用いて行った。投与前および投与後の複数時点において血液サンプルを採取し、C反応性タンパク質を含めて、さまざまなパラメータの評価を行った。
上記の代わりにまたは上記に加えて、別の被験群を設定し、例えば、同間隔またはさらに長い間隔(1ヶ月間など)で追加投与したことの影響、別の投与量による影響および/または被験群の規模を大きくしたことの影響を評価してもよい。
実施例2 ヒト対象におけるIL-1β抗体の薬物動態
第0、1、2、3、4、7、9±1、11±1、14±1、21±2、28±2、42±3および56±3日目に、薬物動態解析用サンプルを採取する。0.01、0.03、0.1、0.3および1.0 mg/kgの投与量で抗体を単回IV投与した後の薬物動態データを中間解析した結果により、終末相半減期が22日、クリアランスが2.54 mL/日/kg、中央コンパートメント分布容積が41.3 mL/kgの血清濃度時間曲線が得られ、この分布容積は血清容量とほぼ同じであった(図1)。
同じようにして、単回SC投与群についてもサンプルの解析を行った。図2に示したように、抗体を0.03、0.1および0.3 mg/kgの用量レベルで投与したところ、終末相半減期が22.7日、クリアランスが2.4 mL/日/kg、中央コンパートメント分布容積が40.7 mL/kgの分布プロファイルが得られた。
実施例3 ヒト対象においてIL-1β抗体がCRPに及ぼす影響
PKサンプルと同じ時点における血清中C反応性タンパク質濃度を測定した。抗体の単回投与により、各抗体処置群では、プラセボ群と比較して、高感受性C反応性タンパク質質(usCRP)濃度が低下した。図3に示すように、抗体の単回IV投与後28日目におけるusCRP濃度低下率の中央値は、0.01、0.03、0.1、0.3および1.0 mg/kg投与群でそれぞれ33%、46%、47%、36%および26%であったのに対して、プラセボ群では4%であった。
実施例4 心血管事象(急性心筋梗塞)モデルによるIL-1β抗体の評価
IL-1β抗体またはその結合断片による心保護作用(有害な心臓リモデリング作用の抑制など)を評価するために、げっ歯類急性心筋梗塞(MI)モデルを用いてよい(例えば、Wang et al., 2006, Tex. Heart Inst. J. 33:290-293; Salloum et al., 2009, Cardiovasc. Drugs Ther. 23:129-135を参照のこと)。例えばMIモデルなどにおいて、心機能測定結果の改善は、その後の心血管事象(うっ血性心不全など)の発現しやすさと関連する。非近交系マウス(ICR(Institute of Cancer Research)マウスなど)および/またはラット(Wistarラットなど)は、げっ歯類MIモデルで用いられる。術前に、実験動物に対して、例えばVevo770イメージング装置(VisualSonics社製、カナダ、トロント)やAcuson C256などを用いて経胸壁心臓超音波検査(TTE)を行い、以下のパラメータの測定を行う。
● 左室拡張末期径(LVEDD)
● 左室収縮末期径(LVESD)
● 拡張期前壁壁厚(AWDT)
● 拡張期後壁壁厚(PWDT)
● 収縮期前壁壁厚(AWST)
● 収縮期後壁壁厚(PWST)
左室径短縮率(FS)は、次式により計算される。
(LVEDD - LVESD)/LVEDD×100
成体動物に対し、麻酔下で冠動脈結紮を実施する。開胸術により心臓を露出した後、左冠動脈下行枝近位部の周囲を絹糸で結紮して、MIを誘導する。対照動物(シャム手術)には、冠動脈結紮以外は同じ外科的手術を行う(下記表参照)。術中または術後すぐに死亡した動物は、解析に含めない。
Figure 2015120704
その後動物に対し、腹腔内または静注投与により処置抗体またはプラセボ(対照抗体など)を虚血中および/または虚血後、一回または複数回の規定の回数投与する。例えば、一群には該抗体を虚血中に投与し(t=0)、他群には虚血から24時間後に該抗体を投与する。
動物の観察を行い、実験期間中に死亡した例数を記録する。生存動物には、処置後の規定の日(24時間、7日、14日後など)に再度TTEによる評価を実施する。拡張期血圧は、例えばコンピュータ化された非侵襲テールカフシステム(BP-2000、Visitech Systems)を用いて、覚醒下で測定してもよい。この測定値は、動脈内血圧を直接測定した結果と密接な相関のあることが知られている。動物をと殺し、血清検査用に血液を採取し、梗塞部位(範囲)を測定する。心臓を摘出後、エバンスブルーまたは0.5%ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)で染色し、生理食塩水ですすぎ、写真撮影により梗塞範囲を測定する。次に、組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋し、切片を作成して、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行い、組織学的検査により組織損傷の有無を調べる。上記の別法として、または上記に加えて、組織を固定し、切片を作成して、心筋細胞死の程度を定量化する方法もある(例えば、TUNEL法によるアポトーシスの測定)。
あるいは、IL-1β抗体またはその断片が心機能および/または有害な心臓リモデリング(例えば、うっ血性心不全などの心血管事象が続発する可能性)に及ぼす作用を調べる試験には、非近交系成体雄性ICRマウス(例えば、Harlan Laboratories(インディアナ州インディアナポリス))を用いてよい。CD-1マウスに対して、既報(Abbate et al., 2008, Circulation 117:2670-2683)の手順に従い、実験的に心筋梗塞を発症させた。マウスにペントバルビタール(70 mg/kg、IP)により麻酔を行い、経口気管内挿管を施し、陽圧換気装置による換気を行った。第4肋間腔から左開胸術を施行し、心膜を切除し、心臓を露出した。次に、手術用顕微鏡(ライカF40)下で左冠動脈下行枝を特定し、7-0結紮用絹糸により結紮した。4匹のマウスからなる群には、既報の手順(Abbate、同上)に従い、シャム手術を行った。手術後マウスを抗IL-1β抗体XMA052 MG1Kの腹腔内投与による処置(用量: 0.05 mg/kg、0.5 mg/kgおよび5 mg/kg)または対照IgGによる処置に無作為に割り付け(一群当たりn=6)、術後直ちに投与を行うとともに、7日後に再投与を行った。さらに、抗体(0.5 mg/kg)を手術48時間前に投与し、抗体による前処置の効果についても調べた。
全マウスに対して、手術前ならびに冠動脈結紮第7、14および28日目に経胸壁心臓超音波検査を実施した。Vevo770イメージング装置(VisualSonics社製、カナダ、オンタリオ州トロント)によりドップラー心エコー検査を行い、30 MHzのプローブを用いた。先ず、心臓の傍胸骨部および心尖部の二次元断層画像を撮像し、アメリカ心エコー学会の提言(Gardin et al., 2002, J Am Soc Echocardiography 15:275-290)に従い測定を行った。左室(LV)拡張末期径(LVEDD)、LV収縮末期径(LVESD)、拡張期前壁壁厚(AWDT)、収縮期前壁壁厚(AWST)、拡張期後壁壁厚(PWDT)および収縮期後壁壁厚(PWST)をMモードで測定した。LV径短縮率(LVFS)は、次式により計算した: FS=(LVEDD - LVESD)/LVEDD×100。無収縮セグメント数(梗塞範囲と相関性がある)は、17セグメントマップを用いて特定した。心尖部画像を用いて駆出時間(ET)を測定した。駆出時間とは、僧帽弁血流A波とそれに続くE波との時間間隔(AE)を言う。続いて、心筋機能指数(MPIまたはTeiインデックス)を算出した(MPI=[AE-ET]/ET)。三尖弁輪収縮可動域についても、右室機能の指標として測定した。読影および心エコーを行う研究者には、処置割付を盲検化した。統計解析にはSPSS 11.0 (イリノイ州シカゴ)を用い、多重比較にはANOVAを行い、事後T検定により群間差の比較を行った。間隔変化の多群間比較には、ランダム効果のある反復測定ANOVAを用いて、時間および群による主効果の他、時間と群の交互作用を調べた。p値が<0.05の場合に統計的有意差があるとした。
心エコー検査のベースライン値は、全群で同等であった。予想されたように、ベースライン値と比較して、LV径(LVEDDおよびLVESD)は有意な増加を示し、LVFSは有意な低下を示し、これらの変化は、全群(シャム手術マウスを除く)で術後7日目の早期に認められた。XMA052 MG1K抗体を投与したマウスでは、LVEDDおよびLVESDの増加ならびにLVFSの低下は、対照と比較して小さかった(図4)。
梗塞範囲の代理指標である無収縮セグメント数は、生理食塩水処理したマウスでは3.9±0.4であり、処置による影響は見られなかった(図5)。同様に、前壁(梗塞)厚は、生理食塩水処理したマウスでは0.52±0.05 mmであり、処置による影響は認められなかった(図5)。収縮能および拡張能を合わせた機能不全の指標であり、心不全関連死亡率の代理指標であるMPIまたはTeiインデックスは、(機能低下を反映して)AMI後に有意に上昇したが、XMA052 MG1K抗体処理したマウスでは一定であった(図5)。同様に、右室機能の指標であり、AMI関連死亡率の代理指標であるTAPSEは、(機能低下を反映して)AMI後に有意に低下したが、XMA052 MG1K抗体で処理したマウスでは概ね一定であった(図5)。このように、当該抗体を用いてIL-1βを阻害することにより、マウスにおいて、梗塞範囲とは無関係に、AMI後の心臓肥大および機能不全が改善する。本動物モデルにおいては、手術48時間前にXMA052 MG1K抗体を追加投与して前処置を行っても、手術後の処置に勝る優れた効果は認められなかった(データ示さず)。
実施例5 心血管事象(脳卒中)モデルによるIL-1β抗体の評価
げっ歯類(例えば、マウス、ラット)の脳卒中モデルを用いて、IL-1β抗体またはその結合断片の効果を評価してもよい。例えば、あるモデルでは、成体雄性Fischerラットを用いる(例えば、Morales et al., 2008, Circulation 118:1450-1459を参照のこと)。別のモデルでは、C57BL/6マウスを用いる(例えば、Royl et al., 2009, Brain Res. 1265:148-157を参照のこと)。実験は、無作為化して行われ、研究者は処置群に対して盲検化される。焼灼またはモノフィラメント糸による閉塞により中大脳動脈閉塞(MCAO)を起こさせて、永久局所脳虚血を誘発する。MCAを露出したが閉塞を行わなかったラット・マウスをシャム手術対照とする。
次いで対照動物群およびMCAO群に対して、処置抗体またはプラセボ(対照抗体など)を、手術後、一回または複数回の規定の回数腹膜内または静注投与する。例えば、一群には該抗体を手術後直ちに投与し、他の群には該抗体を24時間後に投与する。
Figure 2015120704
動物の生死および体重変化の他、機能回復状況(例えば、ポール試験、ワイア・ハング[wire hanging]試験および/または神経脱落スコア[neurological deficit score]などの感覚運動検査や行動検査)やMRI (T2強調MRI画像)を用いて生存段階の脳病変範囲を測定し、と殺後(例えば、4週目)、組織学的検査(脳の冠状クリオスタット切片のHE染色およびGFAP染色)を行う。さらに、T2強調MRI画像やHE染色脳冠状クリオスタット切片に基づいて、コンピュータを用いた半球大脳体積自動測定を行ってもよい。被験群を追加し、MRI (FAIR MRIなど)を用いて大脳半球の脳血流量を測定することにより、MCAO後の急性再灌流に及ぼす影響を評価してもよい。
実施例6 末梢血管疾患モデルによるIL-1β抗体の評価
IL-1β抗体またはその結合断片が末梢血管疾患に及ぼす影響を調べるために、虚血肢動物モデルを用いてよい(例えば、Park et al., Endocrinology 149:483-491, 2008を参照)。例えば、麻酔下のC57BL/6雄性マウスの大腿動脈の一本を結紮することによって、虚血肢が誘発される。該動脈を露出したが結紮を行わないマウスをシャム手術対照とする。
次いで対照動物群および動脈結紮群に対して、処置抗体またはプラセボ(対照抗体など)を、手術後一回または複数回の規定の回数腹膜内または静注投与する。例えば、一群には、該抗体を手術後直ちに投与し、他の群には該抗体を24時間後に投与する。
Figure 2015120704
両下肢の血流をレーザードップラー流速計(LDPI, Moor Instruments社製,イギリス、デボン)により計測し、虚血肢における血流速度を正常肢における血流速度と比較することにより、血流回復の評価を行う。LDPIによる連続血流測定を一定の間隔で実施する(例えば、2週間毎日)。マウスは安楽死させ、虚血後肢を分離して、組織学的分析を行う。
4%パラホルムアルデヒドで固定の後、虚血後肢をOCTコンパウンドで包埋し、凍結してクリオスタット切片を作成する。組織標本は、ラット抗マウス血小板内皮細胞接着分子-1 (PECAM-1) (PharMingen)、マウス抗α-平滑筋アクチン抗体(SMA) (Sigma)およびラット抗マウスCD45抗体(PharMingen)、ウサギ抗cGKI抗体(Calbiochem)で染色する。毛細管密度および炎症度を調べるため、各マウスから切り出した2つの異なる切片(約3 mm間隔)から4箇所を無作為に選んで撮影し、毛細管密度をPECAM-1 (内皮細胞マーカー)およびαSMA (血管平滑筋マーカー)で染色した毛細管数の平均値としてコンピュータを用いた解析により計算する。CD45陽性の浸潤白血球数の平均値を計測し、炎症度の評価とする。
実施例7 アテローム性動脈硬化症モデルによるIL-1β抗体の評価
内皮細胞および平滑筋細胞におけるマクロファージ誘発性サイトカイン産生に対するIL-1β抗体(XOMA 052)の作用を培養系で調べた。このモデルでは、THP-1細胞を200 nMのPMAで12時間処理してマクロファージ様表現型に予め活性化させ、一度洗浄した後、指示に従い、XOMA 052の存在下および非存在下で事前に播種したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト冠動脈平滑筋細胞(CASMC)に10対1の割合で加えた(106個のTHP-1に対して105個のHUVECまたはCASMC)。あるいは、指示に従い、XOMA 052の存在下および非存在下で、細胞をrhIL-1β(R&D Systems)とインキュベートした。48時間後上澄み液を廃棄し、ELISA (R&D Systems)によりサイトカインまたは酵素含量を測定した。実験は全て3つ組で行った。データからは、XOMA 052により、内皮細胞においてIL-1βが誘発するIL-6、IL-8、MCP-1およびPAI-1などの炎症性分子の放出が抑制されることが示される(p<0.05、図6左図)。加えて、データからはXOMA 052が平滑筋細胞のIL-6およびIL-8の放出ならびにIL-1β誘発性MMP-3およびMMP-9の放出を阻害することが示される(p<0.05、図7左図)。重要なこととして、マクロファージ/ECまたはマクロファージ/SMC共培養系においてXOMA 052がこれらの因子の誘導を強力に低減することが観察されたことも挙げられる(p<0.05、図6および7の右図)。
ApoEノックアウトマウスは、ヒトのアテローム性動脈硬化症の進行パターンに類似した病変を示すモデルとして確立されたモデルである。C57BL/6系統由来の雄性ApoE-/-マウスに、アテローム誘発性食餌を6週齢から16週間投与し、IL-1β抗体XMA052 MG1K (i.p.、指示量を週2回)、対照マウスIgG (i.p.、1.0 mg/kgを週2回、Jackson ImmunoResearch)またはキナプリル(subQ、10 mg/kgを連日)を試験期間中投与した。既報(Calkin et al., 2007, Atherosclerosis 195:17-22)および以下の方法によりSudan IV染色を行い、エンフェイス解析を行った。大動脈を大動脈弓、胸部大動脈および腹部大動脈に分割し、縦方向に切開した。ワックスにピンでエンフェイスに固定した後、写真撮影し、解析した。総プラーク領域および各セグメントのプラーク領域について、Sudan IV染色で赤く染まった部分の面積割合を定量化した。続いて動脈をパラフィンに包埋し、断面解析用切片を作成した。XMA052 MG1Kは、試験に用いた3用量により、ApoEノックアウトマウスにおけるアテローム性動脈硬化病変の形成を22〜37%抑制した(p<0.05、図8、9)。
あるいは、プラークの進行およびインビボ冠動脈機能は、非侵襲的な高解像度超音波検査技法を用いて評価される(例えば、Gronros et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol. 295:H2046-53, 2008を参照)。8週齢の雄性ApoEマウスに対し、抗体処置を行うまたは行わない条件下で、高脂肪食餌を約16週間与える。処置期間を通じ、総コレステロールレベルを測定するとともに、超音波生体顕微鏡によりインビボ観察を行い、腕頭動脈における病変進行の遅延程度を測定する。組織学的分析も用いて、腕頭動脈のアテローム性動脈硬化の低減度合いを調べる。冠動脈機能についても、例えば、アデノシン静注投与前および投与中にドップラー速度信号と左冠動脈の形態とを同時に記録するなどの流量測定により測定してよい。
Figure 2015120704
IL-1βがApoEノックアウトマウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化病変の形成に対して及ぼす影響をさらに調べる方法として、大動脈洞および/または腕頭動脈の切片標本を作成し、病変の断面積および構成成分の評価を実施する方法がある(Zhou et al., 2008, Eur. J. Pharmacol. 590:297-302; Calkin et al., 2007, Atherosclerosis 195:17-22; Kirii et al., 2003, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23:656-660)。3 μm厚の連続パラフィン切片に対して、脱パラフィンおよび再水和処理を行う。3%過酸化水素とともにインキュベートして、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害する。20%(v/v)のヤギ血清を含むリン酸緩衝生理食塩水により切片のブロッキングを行った後に、切片をα-平滑筋アクチン抗体、炎症マーカー、例えばIL-6、IL-8、MCP-1、ICAM-1およびVCAM-1など、分解酵素、例えばMMP-3、MMP-9など、ならびにカテプシンSまたは血栓因子、例えば組織因子もしくはPAI-1などとあわせ一晩にわたり4℃でインキュベートする。次いで、切片を適当な二次抗体とともにインキュベートする。陽性反応を示す部位の面積を測定し、全プラーク領域に対するパーセンテージで示す。陰性対照として、一次抗体を同じ希釈率のマウスまたはラットIgGで交換した試験を含める。また、切片に対し、油溶性色素オイルレッドオー(Oil Red O)で染色して脂質含量を評価し、免疫化学法によりCD68抗体で染色することによりマクロファージの浸潤を定量化する(Kirii et al., 2003, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23:656-660)。免疫染色陽性反応を示す切片について、画像解析プログラム(Image Pro Plus, Media Cybernetics社製)を用いて盲検的に分析する。
あるいは、定量的遺伝子発現解析により、炎症反応や基質分解反応のマーカーを調べる方法がある(Calkin et al., 2007, Atherosclerosis 195:17-22)。全大動脈をホモジナイズし、トリゾールおよびDNAseで処理してRNAを抽出する。ABI Prism 7700塩基配列検出装置にTaqmanシステムを用いて、定量的リアルタイムRT-PCRを実施する。上述の遺伝子による遺伝子発現は、18S mRNAにより標準化し、未処理対照マウスの発現レベルと比較した比率で表した。統計処理に際しては、ノンパラメトリック・データの取扱いは、対数変換して行った。発現レベルの差異の比較は、スチューデントのt検定(2群)または一元配置ANOVA (3群以上)により検定した。
上述の炎症反応、分解反応および血栓形成に関わるマーカーに対するIL-1β抗体の影響は、抗体処理したApoEノックアウトマウスの血清をELISAまたはMeso Scale Discovery (MSD)プラットフォームを用いて評価することもできる。と殺時に心臓穿刺により採取した血清を既報(Warnick, 1986, Methods Enzymol. 129:101-23)の手順に従い分析し、血清脂質を測定する。脂質測定は全て、3つ組で行う。各アッセイ時には、検体濃度が既知である外部対照サンプルを同時に測定して、精度を確保する。血漿中の遊離グリセロール濃度の測定も実施して、トリグリセリド値の補正を行う。
アテローム性動脈硬化病変の安定性を定量的に評価するため、5 μm厚の切片を選んで、定量化する。心底の断面から上行大動脈が現れるまで、50 μmごとに連続的に切片を薄切する。マウス1匹当たりおよそ6枚の連続した5 μm厚切片を用いて、形態計測分析および免疫組織化学的分析を行う。プラーク内のコラーゲンおよび泡沫細胞は、モバット・ペンタクローム染色の変法により染色する。染色した切片を観察し、プラーク内に埋没した線維性被膜の有無を調べ、数を計測する。形態計測分析は、コンピュータを用いた画像解析プログラム(Image Pro Plus, Media Cybernetics社製)により行う。プラーク組成(細胞外脂質、泡沫細胞およびコラーゲンを含む)は、プラーク面積に対するパーセンテージで表す。プラーク面積は、直接測定し、内弾性板により囲まれる面積から減算して、開存する内腔面積を導出するが、内弾性板を囲む領域を分割することにより補正する。IL-1β抗体がプラークの安定性に及ぼす影響は、脆弱性指数((泡沫細胞+細胞外脂質)/(コラーゲン+平滑筋細胞))および埋没線維性被膜数の平均値を計算して評価する。
テールカフ法により収縮期および拡張期血圧を測定し、平均血圧を計算する(Chamberlain et al., 2009, PLoS ONE 4(4):e5073)。マウスのストレスレベルを最小に保つために、実験を通じて同じハンドラーが実施し、マウスに対して、解析開始前一週間訓練を施した(血圧および脈拍を測定したが、データは廃棄した)。血圧測定は、正常な日中変動による影響を回避するため、毎日同時刻に行った。加えて、血圧は、毎日尾部の同一箇所で測定した。解析期間を通じ、1日当たり10回測定を行い、各「データ日」および週について平均血圧および標準偏差を計算した(各マウス1日当たり10回、毎週計50回の測定を実施)。各測定日において、血圧が40 mmHg未満または210 mmHg超の場合、あるいは平均値から2σを超えて外れていた場合、当該データは無効とした。有効な測定値の数が4未満であった場合には、当該測定日の全データを無効とした。有効な測定日が3日未満であった場合、当該週の測定は全て無効とした。欧米風の若しくはWHCの食餌を投与する前に、各マウスに対して1週間標準食餌を与えて、ベースライン値を測定した。データ解析には、グローバル非線形回帰分析を行った。この統計解析法では、データセット間で1以上の共通変数を有する全データセットの検定を行う。グローバル非線形回帰分析では、各共通変数に対して、全データセットに適用される単一のベストフィット値が得られる。本事例では、対照条件(標準食餌)および処理条件(高コレステロール食餌)下で異なる遺伝子型のマウスに対して血圧を測定しているが、グローバル非線形回帰分析では、各血圧曲線の差が有意なものであるかどうかを判別する。この検定では、個々の時点を比較するのではなく、データを総合的に判断して、一つの比較に対して単一のp値が得られる。
以上の試験をさらに拡張して、ApoE欠損マウスアテローム性動脈硬化症モデルにおける頚動脈病変のプラーク破裂に対してIL-1β抗体またはその断片が及ぼす作用を評価できる(例えば、Nakamura et al., Atherosclerosis, 2009, Feb 21 [出版に先立つEpub]を参照のこと)。8週齢のApoE欠損マウス(C57BL/6)に麻酔を行い、左総頚動脈分岐部のすぐ近位に結紮を行う。結紮から4週間後にポリエチレン製カフを結紮部の近位に留置する。試験には対照群を含めるが、左頚動脈を露出したが結紮を行わない群の他に、結紮を行ったがポリエチレン製カフを留置しない群を設定する。
次に動物に処置抗体またはプラセボ(対照抗体など)を、手術後一回または複数回の規定の回数腹膜内または静注投与する。例えば、一群には、該抗体をカフ留置24または48時間前に投与し、別の群には該抗体をカフ留置時点で投与する。
Figure 2015120704
カフ留置直前(0日目)およびカフ留置から4日後、マウスに対して等張生理食塩水および4%パラホルムアルデヒドを含有する0.01 Mリン酸緩衝液(pH 7.4)を用いて、生理学的圧力で左心室から灌流を行う。頚動脈を採取し、組織学的分析用の処理を行う。各頚動脈のカフ内領域断面の凍結切片(6 μm)を作成し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を行い、コラーゲン用にピクロシリウスレッドで染色する。対応する切片を載せた別のスライドは、好中球に対する抗体を用いて免疫組織化学的染色を行う。
プラーク内の出血および動脈壁内血栓に伴う新生内膜の破綻の割合を抗体群および対照群で比較する。頚動脈のカフ内領域におけるプラーク破綻の組織学的分類は、各組織標本から60 μmの間隔を空けて選んだ30切片の分析に基づき、病変を三群に区分して行う。カフ内領域に裂け目(crack)や壁内血栓、閉塞性血栓が認められない場合には、分類は「破綻なし」とする。プラーク内出血が認められる場合または壁内血栓、閉塞性血栓とともにプラークに裂け目やびらんが認められる場合には、それぞれ「出血」、「破綻」と分類する。
新生内膜への好中球の浸潤およびコラーゲン成分も測定する。コラーゲン成分は、ピクロシリウスレッド染色陽性領域により評価するが、この領域は偏光を照射すると明るく見える。新生内膜への好中球の浸潤は、抗好中球抗体で染色した好中球に陽性反応を示す領域により評価する(1:50; Serotec, MCA771GA)。
実施例8 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象の低減
少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象においてIL-1β抗体またはその結合断片が心血管事象(初回事象までの時間など)を低減する作用を調べるため、臨床試験を行う。試験によっては、リスクが高い集団を対象に、心血管系病因による死亡、心筋梗塞または脳卒中からなる複合事象の他、各項目を個別に含む主要評価項目の低減(防止)を評価して、IL-1β抗体の作用を調べる。副次評価項目の低減(防止)に関する測定評価には、あらゆる原因による死亡、血行再建術の必要性、心不全、狭心症(入院を伴う狭心症、不安定狭心症など)、うっ血性心不全および急性冠動脈症候群を含めてよい。
二重盲検試験では、対象をIL-1β抗体処置用量群(0.3 mg/kg、0.1 mg/kgなど)の2群のうちのいずれか、または対応するプラセボ群に無作為に割り付ける。抗体およびプラセボによる処置は、標準的医療に準じて行う。冠動脈疾患(顕性冠動脈疾患など)、末梢動脈疾患、2型糖尿病、総コレステロールの上昇、高血圧、低HDLコレステロールレベル、喫煙、アテローム性動脈硬化症および/またはミクロアルブミン尿症の既往がある年齢55歳以上の男女を試験の対象とする。最近(登録前6ヶ月以内など)心血管事象を経験した者は、対象から除外する。各群には、試験期間中に心血管事象の相対リスク低下が十分検出可能となる例数を含める。対象は、全例文書による同意書を提出する。
対象にはIL-1β抗体またはプラセボを月間隔で投与し、試験期間中(例えば、3年の試験期間中)評価項目の観察を行う。結果の判定は、医学分野で採用されている標準的な診断方法により行う。IL-1β抗体の効果を示唆する結果としては、心血管事象発現相対リスクの低下(相対リスクの20%低下など)が含まれる。
実施例9 心血管事象の既往を有する対象における心血管事象の低減
心血管事象を以前に経験した既往を有する対象において、IL-1β抗体またはその結合断片が心血管事象(次回事象発生までの時間など)を低減する効果を調べるために、臨床試験を行う。試験によっては、心筋梗塞または急性冠動脈症候群の心血管事象が初回に記録された以降の期間について、対象におけるIL-1β抗体の評価を行う。この試験では、心血管系病因による死亡、心筋梗塞または脳卒中からなる複合事象の他、各項目を個別に含む主要評価項目の低減(防止)を評価する。副次評価項目の低減(防止)に関する測定評価には、あらゆる原因による死亡、血行再建術の必要性、心不全、狭心症(入院を伴う狭心症、不安定狭心症など)、うっ血性心不全および急性冠動脈症候群を含めてよい。
二重盲検試験では、対象をIL-1β抗体用量群(0.3 mg/kg、0.1 mg/kgなど)の2群のうちいずれか、または対応するプラセボ群に無作為に割り付ける。上述したとおり、心血管事象を最近初発した(例えば、96時間内)男女を試験の対象とする。各群には、試験期間中に続発する心血管事象の相対リスク低下が十分検出可能となる例数を含める。対象は、全例文書による同意書を提出する。
対象にはIL-1β抗体またはプラセボを月間隔で投与し、試験期間中(例えば、3年の試験期間中)評価項目の観察を行う。結果の判定は、医学分野で採用されている標準的な診断方法により行う。IL-1β抗体の効果を示唆する結果としては、続発心血管事象発現相対リスクの低下(相対リスクの20%低下など)が含まれる。
本明細書において引用した出版物、特許出願、および特許を含む参考文献はすべて、各参考文献が個別にかつ具体的に参照により組み入れられことが示され、その全体が本明細書中に記載されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
本願明細書(特に、添付の特許請求の範囲の記載において)では、「a」および「an」および「the」および類似の指示対象は、特に断りがないかぎりまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、単一および複数のいずれも含むものと解釈されるべきである。「comprising」「having」「including」および「containing」は特に指定のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含む(including )」の意味であるが、「限る(limited to)」の意味ではない)として、解釈されるべきである。オープンエンドの用語を本発明の特徴および要素を記載するために使用できる場合であれば、発明の要旨および範囲から離れることなく、オープンエンドの用語の位置にクローズドエンドの用語を使用することができることが具体的に意図される。本願明細書の値の範囲の列挙は、特に断りがない限り、その範囲内に入る個々具体的な値についてそれぞれ言及する簡便な方法とすることを単に意図し、本願明細書で個別に列挙されるように、個々の値は明細書に組み入れられる。明細書に記載する全ての方法は、特に断りがない限り、あるいは明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順で実施可能である。本願明細書の任意のまたは全ての例示、または例示の用語(例えば「例えば(such as)」の使用は、単に理解を容易にする目的であって、特に断りがない限り、本願発明の範囲を制限するものではない。明細書における用語は本願発明の実施に不可欠な、任意の非請求の要素(non-claimed element)を指すと解釈されるべきではない。
本願の好ましい態様が本願明細書に記載され、本願発明を実施するために発明者に知られる最良の態様を含む。このような好ましい態様の改変態様は、本願明細書を読めば、当業者に明らかになるだろう。このような適切な改変を当業者であれば実施しうると発明者は予測し、発明者は本願明細書に明示される以外で実施される発明を意図する。したがって、本願発明は、添付の特許請求の範囲の請求項に記載の主題の、適用される法律が許す全ての改変ならびに同等の範囲を含む。さらに、その可能な改変における上記要素の任意の組み合わせが、特に断りがない限り、または矛盾しない限り、含まれる。

Claims (107)

  1. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象を低減する方法であって、
    該対象が、心血管事象の既往または少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象であり、かつ
    該心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、心血管死、うっ血性心不全、心停止、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、前記方法。
  2. 対象が、心血管事象の既往を有する対象であり、かつ心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、急性冠動脈症候群、狭心症または血行再建術である、請求項1記載の方法。
  3. 血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、請求項1または2記載の方法。
  4. 冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、請求項3記載の方法。
  5. 対象が、少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往をも有する、請求項2記載の方法。
  6. リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、請求項1または5記載の方法。
  7. リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、請求項1または5記載の方法。
  8. リスク因子が肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である、請求項1または5記載の方法。
  9. リスク因子が高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である、請求項1または5記載の方法。
  10. 対象が、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する、請求項1または2記載の方法。
  11. 対象が55歳を超える、請求項1または2記載の方法。
  12. 対象が非高血圧性である、請求項1または2記載の方法。
  13. 対象が糖尿病を有する、請求項1または2記載の方法。
  14. 糖尿病が2型糖尿病である、請求項13記載の方法。
  15. 対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項1または2記載の方法。
  16. 対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項15記載の方法。
  17. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、請求項1または2記載の方法。
  18. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を対象に投与する段階を含む、対象における心血管事象後の死亡を低減する方法。
  19. 心血管事象が心筋梗塞である、請求項18記載の方法。
  20. 心血管事象が脳卒中である、請求項18記載の方法。
  21. 心血管事象がうっ血性心不全である、請求項18記載の方法。
  22. 心血管事象が急性冠動脈症候群である、請求項18記載の方法。
  23. 心血管事象が狭心症である、請求項18記載の方法。
  24. 心血管事象が血行再建術である、請求項18記載の方法。
  25. 血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、請求項24記載の方法。
  26. 冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、請求項25記載の方法。
  27. 対象が2型糖尿病を有さない、請求項18記載の方法。
  28. 対象が心筋梗塞または脳卒中の過去の心血管事象を生き残ってきた、請求項18記載の方法。
  29. 心血管事象の発生が心筋梗塞または脳卒中の心血管事象の再発である、請求項18記載の方法。
  30. 対象が1つまたは複数の心血管疾患リスク因子の既往を有する、請求項18記載の方法。
  31. リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、請求項30記載の方法。
  32. リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、請求項30記載の方法。
  33. リスク因子が肥満、高血糖、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患または代謝症候群である、請求項30記載の方法。
  34. リスク因子が高血圧、異脂肪血症、高脂血症、総コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、または低HDLコレステロールもしくはアテローム性動脈硬化症である、請求項30記載の方法。
  35. 対象が非高血圧性である、請求項18記載の方法。
  36. 対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項30記載の方法。
  37. 対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項36記載の方法。
  38. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、請求項18記載の方法。
  39. 少なくとも1つの心血管疾患リスク因子の既往を有する対象における心血管事象を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含み、かつ該リスク因子が2型糖尿病、肥満、高血糖、異脂肪血症、高脂血症、慢性腎不全、高血中グルコース、慢性腎疾患、高血圧、アテローム性動脈硬化症または代謝症候群ではない、前記方法。
  40. リスク因子が2型糖尿病ではない、請求項39記載の方法。
  41. 心血管事象が心筋梗塞である、請求項39または40記載の方法。
  42. 心血管事象が脳卒中である、請求項39または40記載の方法。
  43. 心血管事象が心停止である、請求項39または40記載の方法。
  44. 心血管事象がうっ血性心不全である、請求項39または40記載の方法。
  45. 心血管事象が心血管死である、請求項39または40記載の方法。
  46. 心血管事象が急性冠動脈症候群である、請求項39または40記載の方法。
  47. 心血管事象が狭心症である、請求項39または40記載の方法。
  48. 心血管事象が血行再建術である、請求項39または40記載の方法。
  49. 血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、請求項48記載の方法。
  50. 冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術が経皮冠動脈介入(PCI)、ステント移植、冠動脈バイパスグラフト術(CABG)、頸動脈血管内膜切除術、末梢血管疾患バイパス術または末梢血管形成術である、請求項49記載の方法。
  51. リスク因子が顕性冠動脈心疾患、冠動脈疾患、血栓症、一過性脳虚血発作、左室肥大、動脈硬化症、再狭窄、喫煙または末梢血管疾患である、請求項39記載の方法。
  52. リスク因子がトリグリセリドの上昇、全身性炎症、高血中リンレベル、高副甲状腺ホルモンレベル、ミクロアルブミン尿症または高ホモシステインレベルである、請求項39記載の方法。
  53. 対象が、上昇したC反応性タンパク質(CRP)レベルを有する、請求項39記載の方法。
  54. 対象が55歳を超える、請求項39記載の方法。
  55. 対象が2つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項39記載の方法。
  56. 対象が3つまたはそれ以上のリスク因子の既往を有する、請求項55記載の方法。
  57. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階が、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、請求項39記載の方法。
  58. 対象における心血管事象を処置する方法であって、
    心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、
    治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片およびIL-1β抗体または断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を該対象に投与する段階を含む、
    前記方法。
  59. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がコレステロール低下剤、スタチン、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、β遮断薬、降圧薬、利尿薬、アスピリン、ナイアシン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬、血管拡張薬、抗凝血薬、血小板凝集の阻害剤、血栓溶解薬またはジギタリスである、請求項58記載の方法。
  60. 対象における心血管事象を処置するための方法であって、
    心血管事象が心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、急性冠動脈症候群または狭心症であり、
    治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片、および血行再建術を該対象に投与する段階を含む、
    前記方法。
  61. 血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、請求項60記載の方法。
  62. 血行再建術後の対象における再狭窄を低減する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
  63. 血行再建術が冠動脈の、頸動脈のまたは末梢動脈の血行再建術である、請求項62記載の方法。
  64. 治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片を投与する段階は、CRPレベルの減少を達成するのに十分である、請求項58、60または62のいずれか一項記載の方法。
  65. 対象における急性高血圧を処置する方法であって、治療有効量の抗IL-1β結合抗体またはその結合断片および1つまたは複数の降圧剤を該対象に投与する段階を含む、前記方法。
  66. 対象が180/110 mm Hg超のまたはそれと同等の血圧を有する、請求項65記載の方法。
  67. 降圧剤が静脈内に投与される、請求項65記載の方法。
  68. 降圧剤がラベタロール、メトプロロール、ヒドララジン、ニトログリセリン、ニカルジピン、ニトロプルシドナトリウムまたはクレビジピンである、請求項65記載の方法。
  69. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片以外の活性薬剤を含む少なくとも1つの他の薬学的組成物を投与する段階をさらに含む、請求項1、2、18、39、60または62のいずれか一項記載の方法。
  70. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がコレステロール低下剤である、請求項69記載の方法。
  71. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がスタチン、またはHMG-CoA還元酵素阻害剤である、請求項69記載の方法。
  72. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がカルシウムチャンネル遮断薬である、請求項69記載の方法。
  73. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が降圧薬、利尿薬またはアスピリンである、請求項69記載の方法。
  74. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンギオテンシンII受容体遮断薬である、請求項69記載の方法。
  75. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が血管拡張薬である、請求項69記載の方法。
  76. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が抗凝血薬または血小板凝集の阻害剤である、請求項69記載の方法。
  77. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤が血栓溶解薬である、請求項69記載の方法。
  78. 少なくとも1つの他の薬学的組成物の活性薬剤がジギタリスである、請求項69記載の方法。
  79. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約500 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  80. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約50 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、請求項79記載の方法。
  81. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片がヒトIL-1βに約5 pMまたはそれ以下の解離定数で結合する、請求項80記載の方法。
  82. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が中和抗体である、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  83. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片は、結合抗体または断片がIL-1βのIL-1受容体I (IL-1RI)への結合を実質的に可能にするようなIL-1βエピトープに結合する、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  84. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1α、IL-1RまたはIL-1Raに検出可能に結合しない、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  85. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、SEQ ID NO:1の軽鎖可変領域およびSEQ ID NO:2の重鎖可変領域を有する抗体の結合と競合する、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  86. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1βのGlu64を組み入れたエピトープに結合する、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  87. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、IL-1βのN末端のアミノ酸番号1-34に結合する、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  88. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、ヒト化されたものまたはヒトのものである、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  89. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、1 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  90. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.3 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項89記載の方法。
  91. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.03 mg/kgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項90記載の方法。
  92. 1回または複数回用量が少なくとも0.01 mg/kgの抗体または断片である、請求項89〜91のいずれか一項記載の方法。
  93. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、0.03 mg/kg〜1 mg/kgの1回または複数回用量で投与される、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  94. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、用量/対象体重比とは無関係に、固定用量として投与される、請求項1〜78のいずれか一項記載の方法。
  95. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、100 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項94記載の方法。
  96. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、25 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項95記載の方法。
  97. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、10 mgまたはそれ以下の抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項96記載の方法。
  98. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、少なくとも0.5 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項94〜97のいずれか一項記載の方法。
  99. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、1 mg〜100 mgの抗体または断片の1回または複数回用量で投与される、請求項94記載の方法。
  100. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の固定用量が予め充填されたシリンジまたは送達装置を用いて投与される、請求項94〜99のいずれか一項記載の方法。
  101. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片が、皮下注射、静脈内注射または筋肉内注射によって投与される、請求項1〜100のいずれか一項記載の方法。
  102. 抗IL-1β結合抗体またはその結合断片の初回の用量の投与の後に1回または複数回のその後の用量の投与が行われる、請求項1〜101のいずれか一項記載の方法。
  103. 初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ週ごとに1度からおよそ12ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、請求項102記載の方法。
  104. 初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ2週ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、請求項103記載の方法。
  105. 初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、請求項104記載の方法。
  106. 初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ1ヶ月ごとに1度からおよそ3ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、請求項105記載の方法。
  107. 初回の用量および1回または複数回のその後の用量が、およそ3ヶ月ごとに1度からおよそ6ヶ月ごとに1度の間隔で投与される、請求項105記載の方法。
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