JP2015119914A - Icタグインレット入り非金属性人工歯とその製造方法及びicタグインレット入り入れ歯 - Google Patents
Icタグインレット入り非金属性人工歯とその製造方法及びicタグインレット入り入れ歯 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】耐久性に優れ、感度が高いICタグインレット入り非金属性人工歯を簡易かつ安価な方法で提供すること。【解決手段】個体を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレット200を、非金属性人工歯120における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯120に孔121をあけて挿入し、充填剤201で塞いでICタグインレット入り非金属性人工歯を製造する。ICタグインレット200のアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めたICタグインレット200が人工歯120の孔121に挿入される。また、ICタグインレットが人工歯120の孔121に挿入される前に、アンテナコイルが形状保持剤で固定される。【選択図】図4
Description
本発明は、個人を容易に識別することが可能となる、個人情報を登録したICタグインレットを挿入した非金属性人工歯とその製造方法及びICタグインレット入り入れ歯に関する。
入れ歯の形状は似ているものが多く、老人ホームにおいて洗浄するときなど、入れ歯の持ち主から一旦離れてしまうと、持ち主のものかどうか判断するのが難しい。そのため、入れ歯と持ち主を直接結びつける手段が必要とされている。その手段の1つとして名前や住所等を示す番号を印字した小さなテープを入れ歯に埋め込み、入れ歯の持ち主を特定する方法がある。また、特許文献1には個人情報を登録したICタグを入れ歯に埋め込み、ICタグを読取装置で読み取って、個人情報を引き出し照合することで入れ歯の持ち主を特定する方法が開示されている。
このような個人を特定する手段は、大地震などにおいて本人識別が不可能となった場合に身元確認として利用することができる。また、大地震などの被災者が入れ歯や人工歯(義歯、差し歯)を紛失するのを防止する目的でも利用される。特許文献2には、ICタグを人体の歯(歯科用構造体)の内部に設置して、患者の生体情報をモニタする発明が開示されている。
入れ歯や人工歯に使用するICタグは小型で、感度や耐久性が優れたものが、必要とされている。近年ICタグの小型化が進んでおり、例えば特許文献3では、アンテナコイルを含めた大きさで、1立方ミリメートル以下のICタグインレットが開示されている。このような小型のICタグインレットを使用することで、人工歯への埋め込みが容易かつ簡易になってきている。
上述したように、入れ歯の持ち主を特定する手段として名前や住所等を示す番号を印字した小さなテープを入れ歯に埋め込む方法があるが、テープは埋め込んでいるため、入れ歯から取り外さないと読めない。また、洗浄や長年の使用によりテープが外れてしまうことも考えられる。そのため、入れ歯に埋め込み、埋没させたまま読みとることができるICタグを使用することが望ましい。
特許文献1には個人情報を登録したICタグを埋め込んだ入れ歯が開示されているが、入れ歯の義歯床部(歯肉部)にICタグを埋め込むには、入れ歯の形成工程中に埋め込む必要がある。通常、入れ歯は模擬義歯床をベースプレートとワックスで形成した後、義歯を埋め込み、全体の模型を石膏で埋め込み、ワックスを溶かしベースプレートも取り出して、石膏で型取りした空間に合成樹脂を注入し、圧力をかけた後に熱硬化させる工程を経て形成される。ICタグは、合成樹脂を注入する際に埋め込む必要があるが、より容易にICタグを入れ歯に埋め込む方法が望まれる。また、入れ歯を使用中にも読取装置でICタグを読み取ることができるよう、読取装置を近づけやすい歯に埋め込まれることが望ましい。
特許文献2には、歯科用築造体または人工歯根(インプラント体)にICタグを封入し、歯冠修復物を被せる発明が記載されているが、歯冠修復物を被せているため、被せない場合と比べてICタグの感度が鈍くなる。また、歯冠修復物が金属の場合には、ICタグの感度が弱まり、機能しなくなる場合もある。さらに、特許文献2のICタグはアンテナコイルから長いリード線を有するため、インダクタンスが不安定となり得る。インダクタンスが不安定になると、測定の誤差が生じる。そこで、ICタグの感度を高くし、インダクタンスを安定に保つための工夫が望まれる。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、耐久性に優れ、感度が高いICタグインレット入り非金属性人工歯(入れ歯用義歯、差し歯)を簡易かつ安価な方法で提供することである。
本発明の1は、個人を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレットを、非金属性人工歯における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯に孔をあけて挿入し、充填剤で塞いだことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯である。
本発明の2は、本発明の1のICタグインレット入り非金属性人工歯において、前記ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めた前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入されることを特徴とする。
本発明の3は、本発明の1又は2のICタグインレット入り非金属性人工歯において、前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入される前に、アンテナコイルが形状保持剤で固定されることを特徴とする。
本発明の4は、本発明の1〜3のいずれかに記載のICタグインレット入り非金属性人工歯と、
前記非金属性人工歯の前記非接触部と接合する義歯床部と、
を有することを特徴とするICタグインレット入り入れ歯である。
前記非金属性人工歯の前記非接触部と接合する義歯床部と、
を有することを特徴とするICタグインレット入り入れ歯である。
本発明の5は、非金属性人工歯における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯に孔をあける工程と、
個人を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレットを挿入する工程と、
前記ICタグインレットが挿入された孔を充填剤で塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法である。
個人を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレットを挿入する工程と、
前記ICタグインレットが挿入された孔を充填剤で塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法である。
本発明の6は、本発明の5のICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法において、ICタグインレットを挿入する工程では、前記ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めた前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入されることを特徴とする。
本発明の7は、本発明の5又は6のICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法において、前記ICタグインレットを前記非金属性人工歯の孔に挿入する前に、前記ICタグインレットのアンテナコイルを形状保持剤で固定する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明の1のICタグインレット入り非金属性人工歯によれば、非金属性人工歯における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯に孔をあけてICタグインレットを挿入し、充填剤で塞ぐため、入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は口腔内の皮膚に直接触れることもなく、人体に害を及ぼさない。また、ICタグインレットが完全に非金属性人工歯に密閉されるため、口腔内の唾液や食物に含まれる酸や塩等に触れることによるICタグインレットの侵蝕を防ぐことができる。それにより耐久性の優れた非金属性人工歯を提供することができる。さらに、既存の非金属性人工歯(入れ歯用義歯、差し歯)を使用することにより、簡易かつ安価にICタグインレット入り非金属性人工歯を提供することができる。
本発明の2によれば、ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めたICタグインレットが非金属性人工歯の孔に挿入されるため、入れ歯又は差し歯を口に装着した後でも、口の正面に読取装置をあてることで感度よくICタグインレットに記録されている情報を読み取ることができる。
本発明の3によれば、ICタグインレットが非金属性人工歯の孔に挿入される前に、アンテナコイルが形状保持剤で固定されるため、ICタグインレットを非金属性人工歯の孔に挿入する際の、アンテナコイルの変形を防ぐことができる。また、このように固定することで、アンテナコイルとICチップの相対位置が変化せず、インダクタンスを安定に保つことができる。アンテナコイルは立体的であるため、ICタグインレットを非金属性人工歯の孔に挿入する際に不要な空隙が生じるような虞を回避することができる。それにより、さらに感度の高いICタグインレット入り非金属性人工歯を提供することができる。
本発明の4のICタグインレット入り入れ歯によれば、入れ歯に使用する予定の既存の歯1本にICタグインレットを挿入するだけで、容易にICタグインレット入り入れ歯を提供できる。それにより、老人ホームで入れ歯を洗浄するときなどに入れ歯を外した後、入れ歯が持ち主のものかどうか不明である場合においても、読取装置で読みとるだけで、容易に持ち主を判別することができる。また、非金属性人工歯にICタグインレットを封入しているため、入れ歯を使用中にも読取装置でICタグインレットを読み取りやすくなる。
本発明の5の製造方法によれば、既存の非金属性人工歯を使用して、ICタグインレットを非金属性人工歯に完全に封入することができるため、より簡易かつ安価にICタグインレット入り人工歯を製造することができる。また、ICタグインレットを直接、人工歯に封入しているため、歯冠修復物を被せている場合と比べて、ICタグインレットの感度が高くなる。
本発明の6の製造方法によれば、ICタグインレットを挿入する工程において、ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めているので、感度よく読み取られるICタグインレット入り非金属性人工歯を製造することができる。
本発明の7の製造方法によれば、ICタグインレットを前記非金属性人工歯の孔に挿入する前に、ICタグインレットのアンテナコイルを形状保持剤で固定するため、アンテナコイルの変形を防ぎ、インダクタンスを安定に保ち、またアンテナコイル内の余計な空隙ができることを回避できるため、更に感度よく読み取られるICタグインレット入り非金属性人工歯を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。また、以下の説明では非金属性人工歯は、入れ歯に使用する非金属性の義歯と非金属性の差し歯(クラウン)を意味する。
図1(A)は、本発明の実施例で使用するICタグインレット200の大きさを示す模式図である。図1(B)、(C)は、アンテナコイル1の軸心を活性面2に直交する向きに配置したICタグインレットの構造を示した正面図と平面図である。また、図1(D)、(E)はアンテナコイル1の軸心を活性面2と並行に向けて配置したICタグインレットの構造を示した正面図と平面図である。本実施例では、非金属性人工歯に使用する小型のICタグインレットとして、特許文献3に開示されているICタグインレットを使用するが、これに限定されず、小型であれば、いかなる種類のICタグインレットを使用してもよい。
図1(A)に示すように、ICタグインレット200の大きさは、縦1.0mm、横0.95mm、厚さ(高さ)0.65mm又は1.10mmである。ICタグインレット200は、図1(B)と(C)又は(E)と(D)に示すようにアンテナコイル1とICチップ2が一体化しているため、このような小型のサイズとなっている。
図1(B)から(D)に示すように、ICタグインレット200は、絶縁被覆銅線を巻回して複数層に積層して円筒状に構成したアンテナコイル1をICチップ2の活性面22上に配置し、その両端のリード部11をそれぞれ接続端子21に接続して構成したものである。アンテナコイル1の巻数は、13.56MHzの周波数帯に対応するインダクタンスを確保するように設定されている。このアンテナコイル1の巻数により厚さ(高さ)が異なり、ICタグインレット200の通信距離が異なる。例えば図(B)と(C)の厚さが0.65mmのICタグインレット200のアンテナコイル1のインダクタンスは2.2μH、抵抗は10.6Ω、共振周波数は14.26MHzで、ICタグインレットの通信距離は3〜5mmである。また、図(D)と(E)の厚さ(高さ)が1.10mmのICタグインレット200のアンテナコイル1のインダクタンスは2.2μH、抵抗は10.6Ω、共振周波数は14.10MHzで、ICタグインレット200の通信距離は7〜10mmである。どちらの場合も充分に小型であるため、非金属性人工歯の大きさや挿入しやすさなどを考慮して、要望に応じて使い分けることができる。
また、アンテナコイル1の絶縁被覆銅線には、ポリウレタン絶縁被覆(自己融着型)が使用されており、線径が0.025mmと非常に細いので、人工歯に挿入する際には、アンテナコイル1が変形しないように工夫する必要があり、詳細は後述するが、形状保持剤を用いてアンテナコイル1を固定する。このように固定することで、アンテナコイル1とICチップ2の相対位置が変化せず、インダクタンスを安定に保つことができる。特に、特許文献3に開示されているようなアンテナコイル1とICチップ2が一体化したICタグインレットを使用することで、インダクタンスの安定性が保たれる。さらに、感度をよくするために、アンテナコイル1の軸心が口の正面(読取装置をあてる側)を向くように、ICタグインレット200の方向を定めて、非金属性人工歯に挿入することが好ましい。
図2は、本発明の第1の実施例である入れ歯(総義歯)の上側の模式図である。入れ歯100は、義歯床部(歯肉部)102と、義歯101とから形成される。義歯101の形状は歯種により様々であるが、前歯用義歯110と臼歯用義歯111の2種に大別される。本実施例では上側の入れ歯100の義歯101を用いて説明するが、本発明の義歯を下側の入れ歯に適用することもできる。
入れ歯100の形成は複数段階の工程を経る。入れ歯100は、歯科医院において総義歯の患者の口の中を取った型(印象)を基にして、歯科技師により形成される。そのため、患者毎に入れ歯100の形状は少しずつ異なり、入れ歯100は各義歯101の噛み合わせをミクロン単位で精密に調整して形成される。
入れ歯100は、まず模擬義歯床をベースプレートとワックスで形成し、義歯101を埋め込み、全体の模型を石膏で埋め込んだ後に、ワックスを溶かしベースプレートも取り出して、石膏で型取りした空間に合成樹脂を注入し、圧力をかけた後に熱硬化させる工程を経て形成される。模擬義歯床に義歯101を埋め込む際には、各義歯101の噛み合わせ配列のバランスなどが精密に調整される。義歯床部102の材料としては、合成樹脂だけでなく金属を使用する場合もあるが、本実施例では、ICタグインレットに影響を与えない合成樹脂を使用する。
入れ歯100の形成工程中、義歯101は一般に既製品が使用される。本実施例では入れ歯に使用する既製品の義歯101を使用して、ICタグインレット入り人工歯(義歯)を製造する。特に読取装置による読み取り易さを考慮して、前歯用義歯110を使用する。
図3は、既製品である前歯用義歯110の一例である。図3に示すように、義歯は上顎前歯用(6本)、下顎前歯用(6本)、臼歯用(8本)など、歯の種類毎にセットで販売されている。また、各種類の義歯(例えば上顎前歯用)は、顔の輪郭(方型、卵型、混合型)等により、形や大きさが異なっており、色調も含めると数多くの種類がある。そのため、歯のパッケージ130には、型や色などが表示され、区別できるようになっている。
例えば上顎前歯用義歯では、図3に示す中切歯120の横幅(xで示す)は8mmから9mm程のサイズがあり、縦幅(yで示す)は9mmから12mm程のサイズがある。また、歯のxy平面直角方向(z方向)は、一番幅のある部分で3mmから4mm程度の幅を持つ。それゆえ、本実施例で使用する前述のICタグインレット200は、中切歯120に充分収まる大きさである。
例えば上顎前歯用義歯では、図3に示す中切歯120の横幅(xで示す)は8mmから9mm程のサイズがあり、縦幅(yで示す)は9mmから12mm程のサイズがある。また、歯のxy平面直角方向(z方向)は、一番幅のある部分で3mmから4mm程度の幅を持つ。それゆえ、本実施例で使用する前述のICタグインレット200は、中切歯120に充分収まる大きさである。
また、義歯101の種類としては、陶歯やレジン歯、硬質レジン歯、金属歯などがある。義歯101は一般に、衝撃に耐えうる堅さを持つこと、摩耗や変着色に耐えうる安定性を持つこと、天然歯に類似した色調を再現できることなどが求められる。さらに、本実施例では、磁力線を透過し、挿入するICタグインレットに影響を与えない非金属性の義歯101が必要である。本実施例では、上記の条件を満たす歯としてコンポジットレジン材を使用した硬質レジン歯を用いる(例えば「ベラシアSAアンテリア:(株)松風」)。
次に、義歯101にICタグインレット200を挿入する工程を図4と図5を用いて説明する。図4は、義歯101にICタグインレット200を挿入し、義歯床部102に接合させる工程を示した断面図であり、図5は、ICタグインレット入り義歯の製造工程の流れを示すブロック図である。
本実施例では、ICタグインレット200を挿入する義歯101として、図3で説明した中切歯120を採用する。中切歯120は義歯全体の中央部にあるため、口に入れ歯100を装着した状態であっても、読取装置を当てやすいからである。ICタグインレット200を挿入する義歯101は、中切歯120に限定されず、いかなる義歯101であってもよい。また、ICタグインレット200を挿入する義歯101は一本あれば、充分であるが、破損に備えて複数本の義歯にICタグインレット200を挿入してもよい。
まず、図5のステップ1(S1)で個人を識別する識別符号(ユーザーID)を保持したICタグインレット200と、個人の歯の大きさに適した義歯(ここでは中切歯120)を準備する。個人の情報(個人の名前、生年月日、住所、血液型など)はデータベースに記憶されている。外部の読取装置が、ICタグインレット200と通信することにより、この識別符号(ユーザーID)と対応する個人の情報をデータベースから参照し、情報を表示することができる。
次に、図5のステップ2(S2)で、図4(A)に示すように、中切歯120における入れ歯100の義歯床部102と接合した後は外部と接触しない非接触部から中切歯120に孔121をあける。本実施例では、この非接触部は、図に示すように中切歯120の根元部に相当する。孔121をあける道具には、例えばエアタービンが使用される。エアタービンは、回転速度が大きく、効率よく歯を切削できる道具である。本実施例で使用するICタグインレット200の大きさは1立方ミリメートル程であるため、孔121の大きさはそれが挿入できる直径1.41mmよりも大きく、1mmより深い孔が必要である。
図5のステップ3(S3)で、中切歯120に孔121をあけた後、ICタグインレット200を中切歯120に挿入する前にICタグインレット200を形状保持剤で固定する。この工程は必ずしも必要な工程ではないが、より感度を高くするために、この工程を経ることが好ましい。ICタグインレット200は、前述のように、非常に細いアンテナコイル1を有するため、形状保持剤であらかじめ固定しておくことで、アンテナコイルの変形を防ぐことができ、感度の高いICタグインレット入り義歯101を製造することができる。また、中切歯120に挿入する際には、アンテナコイルが引っ掛かることもなく、スムーズに挿入することができる。本実施例では、形状保持剤として非金属性の接着剤や被覆剤を使用する。
次に図5のステップ4(S4)で、図4(B)に示すように、ICタグインレット200を中切歯120の孔121に挿入する。このとき、アンテナコイル1の軸心が口の正面を向くようにICタグインレット200の方向を定めて、中切歯120に挿入することが好ましい。それにより、ICタグインレット200の感度を良くすることができる。
ICタグインレット200を中切歯120の孔121に挿入した後、図5のステップ5(S5)で、図4(C)に示すように、孔121に充填剤201を充填し、孔121を塞ぐ。本実施例では孔121を塞ぐ充填剤として、例えばコンポジットレジンを使用する。ICタグインレット200の機能を維持できる材料であれば、これに限定されない。孔121にコンポジットレジンを充填した後は、光を照射して硬化させて孔121を塞ぐ。コンポジットレジンは、プラズマ照射器などを用いて強度の光を照射することにより、数秒程(5〜10秒)で硬化させることができる。
以上の工程により、ICタグインレット入り義歯101を製造することができる。さらに図4(D)に示すように、入れ歯100の義歯床部102に上記のICタグインレット入り義歯101を接合させることにより、義歯101の孔121の入り口が密閉される。それにより、ICタグインレットは口腔内の皮膚に直接触れることもなく、人体に害を及ぼさない。また口腔内の唾液や食物に含まれる酸や塩等に触れることによるICタグインレットの侵蝕を防ぐことができる。
次に本実施例のICタグインレット入り入れ歯100の使用例を、図6を用いて説明する。前述のようにICタグインレット100には、固有の識別符号(ユーザーID)が含まれているため、ICタグインレット入り入れ歯100が老人ホームで洗浄するときなど、入れ歯の持ち主から離れてしまい、他人の入れ歯と区別できない場合においても図6に示すように読取装置400を近づけるだけで、読取装置400の表示から入れ歯100の持ち主を容易に判断できる。読取装置400は、入れ歯100のICタグインレット200と通信することにより、この識別符号と対応する個人の情報をデータベースから参照し、情報を表示することができる。
また、ICタグインレット入り入れ歯100を人が装着した場合においても、歯に読取装置400を近づけることにより、装着した入れ歯が自分のものかどうかを確認することができる。前述の通り、ICタグインレットの通信距離は3mmから10mm程度であるため、読取装置400で入れ歯の情報を読み取る際には、読取装置400をICタグインレット入り入れ歯100に充分に近づけて使用する必要がある。
図7は、本発明の第2の実施例である差し歯の模式図である。図7(A)に示すように、差し歯(クラウン)300は、芯となる土台部310に完全に嵌合する形状で形成されている。そのため、本実施例では、差し歯300の形状を変形しないように、ICタグインレットを挿入する。土台部310は通常、金属またはプラスチックから形成されるが、本実施例では、ICタグインレットに影響を与えないようにするために、金属製の土台部は使用せず、非金属性の土台部310だけ使用する。
また、差し歯300の材料は、実施例1の義歯101と同様に、陶材やレジン、硬質レジン、金属などがある。差し歯300においても、義歯101と同様に、衝撃に耐えうる堅さを持つこと、摩耗や変着色に耐えうる安定性を持つこと、天然歯に類似した色調を再現できることなどが求められ、また、磁力線を透過し、挿入するICタグインレットに影響を与えないことが必要である。本実施例では、非金属性の歯冠用コンポジットレジン材を使用した硬質レジン差し歯を用いる。磁力線を透過し、挿入するICタグインレットに影響を与えない非金属性の差し歯であれば、これに限定されない。
本実施例においても、実施例1で説明した工程と同様な工程で、ICタグインレット入り差し歯300を形成する。まず、差し歯300を土台から外し(図7(B))、差し歯300の土台部310と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から差し歯300に孔をあける。実施例では、この非接触部は、差し歯300の内側に相当する。孔の大きさと深さ、使用するICタグインレット200、孔をあける道具などは実施例1と同様である。
次にICタグインレット200を差し歯300の孔に挿入する。このとき、実施例1と同様にICタグインレット200のアンテナ部を予め形状保持剤で固定しておくことが好ましく、また、ICタグインレット200のアンテナの軸心が口の正面を向くようにICタグインレット200の方向を定めて差し歯300の孔に挿入することが好ましい。
ICタグインレット200を差し歯300の孔に挿入した後は、孔を充填剤で塞ぐ。このとき使用する充填剤は、実施例1と同様にコンポジットレジンを使用するが、ICタグインレット200の機能を維持できる材料であれば、これに限定されない。孔121にコンポジットレジンを充填した後は、光を照射して硬化させて孔121を塞ぐ。
以上の工程により、ICタグインレット入り差し歯300を製造することができる。さらに図7(C)の断面図に示すように、土台310に上記のICタグインレット入り差し歯300を嵌合させることにより、差し歯300の孔320の入り口が密閉される。
差し歯300が非常に薄い場合、または形状が複雑でICタグインレットを挿入するのが難しい場合には、図7(D)の断面図に示すように、土台310にICタグインレット200を挿入することも考えられる。このとき、土台310は磁力線を透過し、挿入するICタグインレットに影響を与えない材料(例えば硬質レジン)で形成されている必要がある。この場合にも土台310に上記のICタグインレット入り差し歯300を嵌合させることにより、土台310の孔320の入り口が密閉される。
上記のICタグインレット入り差し歯300は、大災害等で本人識別が不可能となり身元確認が必要となる場合等に、実施例1と同様に読取装置を差し歯に近づけるだけで、読取装置の表示から差し歯300の保持者の身元確認が容易にできる。読取装置は、差し歯300のICタグインレット200と通信することにより、識別符号と対応する個人の情報をデータベースから参照し、情報を表示する。
また、差し歯300を口腔内の土台300に嵌めた後でも、差し歯が間違っていないかどうか確認する際などに、差し歯300に読取装置をあてることで、差し歯300の持ち主を容易に判断できる。
以上、説明してきたICタグインレット入り人工歯(義歯、差し歯)は、入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は口腔内の皮膚に直接触れることもなく、人体に害を及ぼさない。また、ICタグインレットが完全に人工歯に密閉されるため、口腔内の唾液や食物に含まれる酸や塩等に触れることによるICタグインレットの侵蝕を防ぐことができる。それにより耐久性の優れた人工歯を提供することができる。さらに、既存の人工歯(入れ歯用義歯、差し歯)を使用したことにより、簡易かつ安価にICタグインレット入り人工歯を提供することができる。
また、ICタグインレット入り人工歯の製造方法は、ICタグインレットを挿入する工程において、ICタグインレットのアンテナコイルを形状保持剤で固定しているため、アンテナコイルとICチップの相対位置が変化せず、インダクタンスを安定に保つことができる。さらに、アンテナコイルが外側を向くように方向を定めているため、感度よく読み取られるICタグインレット入り人工歯を製造することができる。
ICタグインレット入り人工歯を使用した入れ歯は、老人ホームで入れ歯を洗浄するときなど、入れ歯の持ち主から離れてしまい、他人の入れ歯と区別できない場合においても読取装置を近づけるだけで、読取装置の表示から入れ歯100の持ち主を容易に判断できるので、特に老人ホームなど、入れ歯を用いることの多い施設では有用である。
1…アンテナコイル、2…ICチップ、11…リード部、21…接続端子、22…活性面、100…入れ歯、101…義歯、102…義歯床部、110…前歯用義歯、111…臼歯用義歯、120…中切歯、121…孔、130…歯のパッケージ、200…ICタグインレット、201…充填剤、300…差し歯、310…土台、320…孔、400…読取装置。
Claims (7)
- 個体を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレットを、非金属性人工歯における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯に孔をあけて挿入し、充填剤で塞いだことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯。
- 請求項1に記載のICタグインレット入り非金属性人工歯において、前記ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めた前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入されることを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯。
- 請求項1又は2に記載のICタグインレット入り非金属性人工歯において、前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入される前に、アンテナコイルが形状保持剤で固定されることを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のICタグインレット入り非金属性人工歯と、
前記非金属性人工歯の前記非接触部と接合する義歯床部と、
を有することを特徴とするICタグインレット入り入れ歯。 - 非金属性人工歯における入れ歯の義歯床部と接合又は差し歯の土台部と嵌合した後は外部と接触しない非接触部から該非金属性人工歯に孔をあける工程と、
個体を識別する識別符号を保持し、かつ非接触で外部の読取装置と該識別符号を含むデータの通信が可能なICタグインレットを挿入する工程と、
前記ICタグインレットが挿入された孔を充填剤で塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法。 - 請求項5に記載のICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法において、ICタグインレットを挿入する工程では、前記ICタグインレットのアンテナコイルの軸心が口の正面を向くように方向を定めた前記ICタグインレットが前記非金属性人工歯の孔に挿入されることを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法。
- 請求項5又は6に記載のICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法において、前記ICタグインレットを前記人工歯の孔に挿入する前に、前記ICタグインレットのアンテナコイルを形状保持剤で固定する工程をさらに含むことを特徴とするICタグインレット入り非金属性人工歯の製造方法。
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JP2013266641A JP2015119914A (ja) | 2013-12-25 | 2013-12-25 | Icタグインレット入り非金属性人工歯とその製造方法及びicタグインレット入り入れ歯 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018114247A (ja) * | 2017-01-20 | 2018-07-26 | 医療法人ファミリア | 記録媒体を収蔵可能な補綴歯及びその製造システム並びに記録媒体を収蔵した補綴歯の製造方法 |
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2013
- 2013-12-25 JP JP2013266641A patent/JP2015119914A/ja active Pending
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