JP2015116551A - リチウム回収剤用リチウムマンガン鉄複合酸化物及びそれからなるリチウム回収剤、並びに該リチウム回収剤を用いたリチウム回収方法 - Google Patents

リチウム回収剤用リチウムマンガン鉄複合酸化物及びそれからなるリチウム回収剤、並びに該リチウム回収剤を用いたリチウム回収方法 Download PDF

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苑田 晃成
Mitsunari Sonoda
晃成 苑田
チトラカー ラメシュ
Ramesh Chitorakaa
ラメシュ チトラカー
槇田 洋二
Yoji Makita
洋二 槇田
大井 健太
Kenta Oi
健太 大井
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Abstract

【課題】コストを抑えることができるLi−1.33型を採用しつつも、耐酸性が高く強酸性条件下においてもマンガンの溶出量を抑制することができ、且つ、繰り返し使用に耐えることができるリチウム吸着剤を提供する。【解決手段】リチウム吸着剤用のリチウムマンガン鉄複合酸化物であって、マンガンに対する鉄の元素比(Fe/Mn)が0.05〜0.35である、リチウムマンガン鉄複合酸化物、及びそれを用いたリチウム吸着剤。また、リチウム含有水溶液に対して、前記リチウム吸着剤を接触させてリチウムを吸着させ、その後、酸溶液を用いてリチウムを溶離させることにより、リチウムを回収することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム回収剤用リチウムマンガン鉄複合酸化物及びそれからなるリチウム回収剤、並びに該リチウム回収剤を用いたリチウム回収方法に関する。
近年のモバイル情報、通信技術、電気自動車等の発展とともに、リチウム二次電池やリチウムイオン二次電池等に使用されるリチウムはますます注目されている。なかでも、電気自動車が普及すると、安価なリチウム二次電池等の需要が増大するため、リチウム資源の安定確保が求められている。
リチウムは、主として、2種類から採取されており、そのうちの1つが海水や塩湖のかん水である。特に高濃度のリチウムを含む塩湖が、南米(チリ、アルゼンチン、ボリビア等)や、米国、中国等で発見されている。海水やこれらのかん水からリチウムを回収するための種々の手段や材料が提案されているが、世界最大のリチウム資源を有すると云われるボリビアのウユニ塩湖からは、不純物濃度が高い、雨季があるため天日濃縮に不適等の理由により、リチウムの回収は実用化に至っていない。
このような中、高性能リチウム吸着剤としては、マンガン系の吸着剤が提案されている。マンガン系酸化物は、リチウム電池活物質、リチウム吸着剤等として使用されている材料である。
例えば、Li1.33Mn1.67(Li−1.33型)や、Li1.6Mn1.6(Li−1.6型)、スピネル型の酸素過剰マンガン酸リチウム(LiMn4+b)等を前駆体として、リチウムをプロトンに変換した化合物を用いたリチウム吸着剤(特許文献1〜4)が挙げられる。これらの従来のリチウム吸着剤の中でも、Li−1.6型が最も高性能とされている。
特開平3−8443号公報 特開平6−31159号公報 特開2003−245542号公報 特開2004−2097号公報
南米のリチウム高濃度かん水(2M程度)(例えばボリビア・ウユニ塩湖等)から上記の吸着剤を用いてリチウムを回収する場合には、イオン交換により吸着剤から放出されるプロトンにより、かん水の一部が局所的に強酸性(pH<1)となってしまう。この際、マンガン等の金属イオンが溶出してしまう。
また、上記の吸着剤を用いてリチウムを吸着させた後には、酸処理によりリチウムを回収する。この際、強酸を使用しないと、回収リチウム濃度を向上させることができず、その後のリチウム濃縮コストが増大してしまうため、塩酸等の強酸が通常使用される。この場合、マンガン等の金属イオンが溶出してしまう。このため、リチウム吸着剤の組成が変化してしまい、繰り返し使用に耐えないという問題があった。例えば、1回の処理でマンガンが1%ずつ溶解する場合を想定すると、30回繰り返した際には、リチウム吸着剤中のマンガン濃度は初期の74%になってしまう。この溶出量を0.5%に低減することができれば、マンガン濃度が初期の74%になるまでに60回繰り返し使用できる計算になる。つまり、0コンマ数%でもマンガン溶出量を改善することができれば、繰り返し使用回数を飛躍的に向上させることができる。
さらに、従来のリチウム吸着剤において、Li−1.6型は高性能であるものの、2段階の合成が必要であるため、コスト的にはLi−1.33型よりも不利であるうえに、南米のリチウム高濃度かん水(2M程度)(例えばボリビア・ウユニ塩湖等)はリチウム濃度が高く、pHが6.5付近であることもあり、Li−1.6型とLi−1.33型との間に性能の優位差は見られない。
このことから、コストを抑えることができるLi−1.33型を採用しつつも、耐酸性が高く強酸性条件下においてもマンガンの溶出量を抑制することができ、且つ、繰り返し使用に耐えることができるリチウム吸着剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。そのなかで、本発明者らは、2価、3価のマンガンは酸に溶解しやすいのに対し、4価のマンガンは酸に対して安定であることに着目し、マンガンを4価で安定させるため、様々な元素を含むリチウムマンガン系酸化物の検討を行った。その結果、リチウムマンガン系酸化物中に鉄を所定の濃度で含ませた化合物を用いたリチウム吸着剤は、マンガンを4価で安定させることができ、強酸性条件においてもマンガンの溶出を大きく抑制することができ、また、繰り返し使用することができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成されたものである。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.リチウム吸着剤用のリチウムマンガン鉄複合酸化物であって、マンガンに対する鉄の元素比(Fe/Mn)が0.05〜0.35である、リチウムマンガン鉄複合酸化物。
項2.スピネル型結晶構造を有する、項1に記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
項3.マンガンの平均価数が3.5〜4.0である、項1又は2に記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
項4.一般式(1):
Lix1Fey1Mnz1
[式中、x1は1.1〜1.7;y1は0.05〜0.5;z1は1.3〜1.9;y1/z1は0.05〜0.35である。]
で示される、項1〜3のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
項5.格子定数が0.80〜0.82nmである、項1〜4のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
項6.項1〜5のいずれかに記載のリチウム吸着剤用リチウムマンガン鉄複合酸化物の製造方法であって、リチウム含有化合物、マンガン含有化合物及び鉄含有化合物の混合粉末を350〜700℃で焼成する工程を備える、製造方法。
項7.焼成温度が400〜500℃である、項6に記載の製造方法。
項8.焼成時間が1〜48時間である、項6又は7に記載の製造方法。
項9.項1〜5のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物を用いたリチウム吸着剤。
項10.項9に記載のリチウム吸着剤の製造方法であって、前記リチウムマンガン鉄複合酸化物から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させる工程を備える、製造方法。
項11.リチウム含有水溶液に対して、項9に記載のリチウム吸着剤を接触させてリチウムを吸着させる工程、及びリチウムを吸着させたリチウム吸着剤から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させる工程を備える、リチウム回収方法。
項12.前記リチウム含有水溶液が、海水又はかん水である、項11に記載のリチウム回収方法。
項13.さらに、塩基を前記リチウム含有水溶液と接触させる、項11又は12に記載のリチウム回収方法。
本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物を用いたリチウム吸着剤は、強酸性条件においてもマンガンの溶出を大きく抑制することができ、また、繰り返し使用することができる。
また、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物は、原料の混合粉末を1段階の焼成を行うという非常に簡便なプロセスで製造することができ、また、上記のとおり繰り返し使用に耐えるため、コストも低減することができる。
実施例1〜14について、粉末X線回折の結果を示すXRDパターンである。 様々なFe/Mn比の場合(焼成温度は450℃)におけるリチウム吸着量と、HCl溶液による処理中のマンガン及び鉄の溶出量を示すグラフである。(a)は1回目の吸脱着、(b)は2回目以降の吸脱着の挙動を示す。 様々な焼成温度の場合(Fe/Mn比は0.1)におけるリチウム吸着量を示すグラフである。 試験例2の結果(NaOH添加かん水中での反応時間とリチウム吸着量の関係)を示すグラフである。 試験例3の結果(NaOH添加かん水中でのNaOH添加量とリチウム吸着量、pHの関係)を示すグラフである。 試験例4の結果(NaOH添加かん水へのリチウム吸着剤添加量とリチウム吸着量の関係)を示すグラフである。 試験例5(繰り返し実験)の結果を示すグラフである。
1.リチウムマンガン鉄複合酸化物
本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物は、リチウム、マンガン及び鉄を含む複合酸化物であって、マンガンに対する鉄の元素比(Fe/Mn)が0.05〜0.35である。
本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物において、マンガンに対する鉄の組成比(Fe/Mn)は0.05〜0.35、好ましくは0.06〜0.25、さらに好ましくは0.07〜0.2である。マンガンに対する鉄の組成比(Fe/Mn)が0.05未満では、酸処理後に残存する鉄が少なくなり、鉄添加の効果(例えば、Fe(III)+Mn(III)→Fe(II)+Mn(IV)等の反応により、マンガンを4価にし、マンガン溶解度を低減する)が小さい。一方、マンガンに対する鉄の組成比(Fe/Mn)が0.35をこえると、酸処理で溶解するする鉄が増え、リチウム脱着量及びリチウム吸着量が低下する。なお、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物を合成する場合(例えば炭酸マンガン(II)と硝酸鉄(III)を原料とする場合)は、これらのマンガンに対する鉄の組成比が、上記範囲内に入るように調整すればよい。
また、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物は、特に制限されないが、コスト(密閉容器を必要とする水熱反応を用いない)の観点から、Li−1.6型よりも、Li−1.33型を採用することが好ましい。
さらに、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物は、特に制限されないが、溶出しやすいマンガン(II)やマンガン(III)の量を低減し、安定なマンガン(IV)の量を増大させる観点から、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物中のマンガンの平均価数は、3.5〜4.0が好ましく、3.7〜4.0がより好ましく、3.9〜4.0がさらに好ましい。なお、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物において、マンガンの平均価数は、理想的には4.0であり、4.0に近いほど好ましい。
本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物の結晶構造は、リチウム選択性の観点から、スピネル型結晶構造(AB2X4)を有することが好ましい。また、その格子定数は、リチウム吸着量及び脱着量、マンガン溶出量、並びに繰り返し使用耐性の観点から、0.80〜0.82nmが好ましい。
このような条件を満たす本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物としては、一般式(1):
Lix1Fey1Mnz1
[式中、x1は1.1〜1.7;y1は0.05〜0.5;z1は1.3〜1.9;y1/z1は0.05〜0.35である。]
で示される化合物が好ましい。
一般式(1)において、x1は、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物(酸素を4に規格化)中に存在するリチウムのモル数であり、上記のとおり、リチウム選択性と吸着容量の観点から、1.1〜1.7が好ましく、1.2〜1.4がより好ましく、1.25〜1.35がさらに好ましい。
一般式(1)において、y1は、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物(酸素を4に規格化)中に存在する鉄のモル数であり、リチウム選択性と吸着容量の観点から、0.05〜0.50が好ましく、0.10〜0.35がより好ましく、0.15〜0.20がさらに好ましい。
一般式(1)において、z1は、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物(酸素を4に規格化)中に存在するマンガンの総モル数であり、リチウム選択性と吸着容量の観点から、1.3〜1.9が好ましく、1.4〜1.8がより好ましく、1.5〜1.7がさらに好ましい。
一般式(1)において、y1/z1は、マンガンに対する鉄の組成比(Fe/Mn)であり、上記のとおり、マンガン溶出量低減、リチウム吸着量及び回収量向上と繰り返し使用に耐える観点から、0.05〜0.35が好ましく、0.06〜0.25がより好ましく、0.07〜0.2がさらに好ましい。
つまり、このような一般式(1)で示される本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物としては、一般式(1A):
Lix2Fey2Mnz2
[式中、x2は1.2〜1.4;y2は0.10〜0.35;z2は1.4〜1.8;y2/z2は0.06〜0.25である。]
で示される化合物がより好ましく、一般式(1B):
Lix3Fey3Mnz3
[式中、x3は1.25〜1.35;y3は0.15〜0.20;z3は1.5〜1.7;y3/z3は0.07〜0.2である。]
で示される化合物がさらに好ましい。
特に好ましい化合物は、後述の実施例において示された化合物である。
2.リチウムマンガン鉄複合酸化物の製造方法
本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物は、特に制限されないが、例えば、原料として、リチウム含有化合物、マンガン含有化合物及び鉄含有化合物を用いて、これらの混合粉末を焼成することにより得ることができる。
原料として用いるリチウム含有化合物は、特に制限されないが、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、酸化リチウム(LiO)等を使用することができる。これらは、水和されていてもよい。特に、高純度のものを用いることが好ましい。なお、後に粉砕するため、粒径等のサイズについては特に制限はない。
また、原料として用いるマンガン含有化合物は、特に制限されないが、炭酸マンガン(MnCO)、γ−酸化水酸化マンガン(MnOOH)、酸化マンガン鉱等を使用することができる。これらは、水和されていてもよい。特に、高純度のものを用いることが好ましい。なお、後に粉砕するため、粒径等のサイズについては細かい方が好ましい。
さらに、原料として用いる鉄含有化合物は、特に制限されないが、硝酸鉄(Fe(NO)、酸化鉄鉱石等を使用することができる。これらは、水和されていてもよい。特に、高純度のものを用いることが好ましい。なお、後に粉砕するため、粒径等のサイズについては細かい方が好ましい。
なお、これらの原料化合物は、公知又は市販の化合物を用いることができる。
これら原料の混合比率については、目的とするリチウムマンガン鉄複合酸化物におけるリチウム、マンガン及び鉄の元素比と同一の比率となるようにすればよい。
混合方法は、これら原料を均一に混合できる方法であれば特に制限はないが、メカニカルミリングや乳鉢混合等の方法を採用することができる。メカニカルミリングとしては、具体的には、例えば、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル、VISミル等の機械的粉砕装置を用いて混合粉砕を行うことができる。
焼成温度は、350〜700℃が好ましく、370〜550℃がより好ましく、400〜500℃がさらに好ましい。焼成温度が300℃未満では、マンガンが溶出しやすく、また、繰り返し使用に耐えない。また、焼成温度が700℃をこえると、リチウム吸着量及び回収量が低下するうえに、マンガンが溶出しやすく、また、繰り返し使用に耐えない。
焼成時間は、特に制限はなく、目的のリチウムマンガン鉄複合酸化物が得られるまで焼成すればよい。具体的には、1〜48時間が好ましく、2〜24時間がより好ましく、4〜12時間がさらに好ましい。焼成時間を多くすることにより、リチウム吸着量及び回収量を向上させることができる。なお、焼成時間を48時間より長くしてもよいが、それ以上長くしてもリチウム吸着量及び回収量の改善効果は飽和する。
焼成雰囲気は、酸化性雰囲気で、大気中、又は酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気において行えばよい。
このようにして、目的とするリチウムマンガン鉄複合酸化物を微粉末として得ることができる。
3.リチウム吸着剤及びその製造方法
本発明のリチウム吸着剤は、上記した本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物を用いて得られる。
具体的には、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させることにより、本発明のリチウム吸着剤を得ることができる。この際、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物からリチウムがプロトンに変換されるとともに、マンガン(III)が溶出する。鉄を添加することで、鉄(III)がマンガン(III)をマンガン(IV)に酸化し、安定するため、マンガンの溶出をより抑制することができる。
酸溶液としては、特に制限されないが、本発明のリチウム吸着剤のリチウム吸着量及びリチウム回収量をより向上させるためには、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物中のより多くのリチウムをプロトンに変換することが好ましいことから、強酸の溶液を用いることが好ましく、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸等を使用することが好ましい。
リチウム溶離の際には、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物と酸溶液とを接触させればよい。具体的には、過剰量の酸溶液中に本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物を浸漬させればよい。具体的には、酸の量は、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物中のリチウムに対して、1〜15当量(モル比)が好ましく、2〜10当量(モル比)がより好ましい。
酸溶液の濃度としては、特に制限はないが、0.5〜6規定が好ましく、1〜 4規定がより好ましい。酸溶液の濃度を上記範囲内とすることで、リチウム吸着量及び回収量、マンガン溶出量、並びに繰り返し使用耐性をより改善することができる。
接触時間はリチウムを十分に溶離することができれば特に制限されないが、1〜48時間が好ましく、4〜24時間がより好ましい。
これにより、本発明のリチウムマンガン鉄複合酸化物からリチウムを溶離し、一般式(I):
Lix4x5Fey4Mn(III)z7Mn(IV)z8
[式中、x4は0〜0.6(好ましくは0〜0.15);x5は0.7〜1.4(好ましくは1.25〜1.4);y4/(z7+z8)は0.05〜0.35(好ましくは0.07〜0.15)である。]
で示される化合物となり、これをリチウム吸着剤として使用することができる。
このようにして得られる本発明のリチウム吸着剤は、初回には30mg/g以上、好ましくは40mg/g以上のリチウム脱着量を有し、且つ、酸性条件下においても、マンガンの溶出量を3重量%以下、好ましくは2重量%以下とすることができる。また、炭酸水素ナトリウムでpH調整したボリビア・ウユニ塩湖かん水からの吸着においては、10mg/g以上、好ましくは20mg/g以上のリチウム吸脱着量を有し、且つ、脱着条件下においても、マンガンの溶出量を1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下とすることができる。
4.リチウム回収方法
本発明では、リチウム含有水溶液に対して、本発明のリチウム吸着剤を接触させてリチウムを吸着させ、その後、リチウムを吸着させたリチウム吸着剤から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させることにより、リチウムを回収することができる。
この際使用されるリチウム含有水溶液としては、特に制限はないが、リチウムを高度に含む海水又はかん水が好ましい。特に、リチウムを高度に含む海水又はかん水として、南米のリチウム高濃度かん水(2M程度)(例えばボリビア・ウユニ塩湖等)が好ましい。
接触方法は特に制限されず、リチウム吸着剤をリチウム含有水溶液中に浸漬すればよい。
リチウム吸着剤及びリチウム含有水溶液の接触量は特に制限されず、リチウム吸着剤に対してリチウム含有水溶液を過剰量とすればよいが、具体的には、リチウム吸着剤を、1〜500g/dmとなるように調整すればよいが、リチウム吸着量及び回収量の改善効果とコストとの観点から、10〜50g/dmとすることがより好ましい。
このように、リチウム吸着剤とリチウム含有水溶液とを接触させることにより、リチウム吸着剤にリチウムを吸着させることができるが、リチウム吸着剤へのリチウム吸着量をさらに向上させることを目的として、塩基をリチウム含有水溶液と接触させてもよい。具体的には、リチウム吸着剤をリチウム含有水溶液と接触させる際に、リチウム含有水溶液中に塩基を添加すればよい。
このような塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を使用することができる。
塩基の使用量としては、特に制限はないが、リチウム吸着量及び回収量の改善効果とコストとの観点から、0.01〜0.2mol/dmが好ましく、0.02〜0.1mol/dmがより好ましい。
この後、リチウムを吸着させたリチウム吸着剤から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させることができる。その方法は、リチウム吸着剤の製造方法と同様に行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の実施例においては、出発材料としては、和光純薬(株)より購入した試薬グレードのLiCO(99%)、MnCO(95%)及びFe(NO・9HO(98%)を使用した。
[物理分析]
粉末X線回折
各実施例及び比較例で得た粉末の物理分析(粉末X線回折分析(XRD))は、CuKαにより、40kV、24mAで、X線回折装置((株)リガク RINT2100)により行った。XRDパターンは、1°(2θ)/分で、5〜70°(2θ)の範囲で記録した。
格子定数
立方格子定数(a)は、JADE3.0パッケージを用いて決定した。
熱分析
試料の熱重量示差熱分析データ(TG−DTA)を、空気中で10℃/分の昇温速度で熱分析装置((株)リガク Thermoplus TG8110)を用いて記録した。
[化学分析]
試料(0.05g)は、30%H数滴を含むHCl溶液(5mol/dm)中に溶解させ、80℃付近まで加熱することで、Fe及びMnを完全に溶解させた。得られた溶液を、100cmにメスアップした後、適宜希釈した溶液を調製し、原子吸光分析(AAnalyst−300;パーキンエルマー社)によって、Li、Mn及びFe濃度を分析した。また、Mnの平均酸化状態(ZMn)は、標準的なシュウ酸法による活性酸素の定量後に評価した。
[塩湖のかん水]
ボリビアのウユニ塩湖のかん水は、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から得た。かん水は、Li、Na、K、Mg2+及びCa2+濃度を、原子吸光法により分析した。また、Cl、NO 及びSO 2−濃度を、イオンクロマトグラフィー(761コンパクトIC:メトローAG)により分析した。かん水中の各イオンの濃度(単位はmg/dm)は以下:
Li:1630
Na:59000
:18700
Mg2+:29000
Ca2+:230
Cl:240000
SO 2−:26000
NO :970
のとおりであった。
NaHCOはかん水中でバッファーとして働き、pHを6.3〜6.5に調整できるため、リチウム吸着実験において、NaHCO(25g)をかん水(1.0dm)に添加した。
また、pH依存性の試験においては、1mol/dmNaOHを異なる最終pH(pH:2.0〜7.2)とするためにかん水に添加した。
1.リチウムマンガン鉄複合酸化物の合成
[実施例1(FeMn−0.1−350):Li1.35Fe0.17Mn(III)0.37Mn(IV)1.26粉末の合成]
Li1.35Fe0.17Mn(III)0.37Mn(IV)1.26粉末を固相反応により(固体原料のみを用いて)合成した。
まず、LiCOをメノウ乳鉢で10分間粉砕した。また、これとは別に、Fe(NO・9HOをメノウ乳鉢で10分間粉砕した。
次に、Li:Fe:Mn=1:1.24:0.12(モル比)となるように出発材料を混合し、その後メノウ乳鉢で10分間粉砕した。その後、得られた混合物を350℃で4時間、空気中で焼成し、室温まで冷却し、実施例1のLi1.35Fe0.17Mn(III)0.37Mn(IV)1.26粉末(FeMn−0.1−350)を得た。
[実施例2(FeMn−0.1−400):Li1.32Fe0.17Mn(III)0.21Mn(IV)1.39粉末の合成]
焼成温度を350℃ではなく400℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例2のLi1.32Fe0.17Mn(III)0.21Mn(IV)1.39粉末(FeMn−0.1−400)を得た。
[実施例3(FeMn−0.1−450):Li1.32Fe0.17Mn(III)0.21Mn(IV)1.39粉末の合成]
焼成温度を350℃ではなく450℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例3のLi1.32Fe0.17Mn(III)0.21Mn(IV)1.39粉末(FeMn−0.1−450)を得た。
[実施例4(FeMn−0.2−450):Li1.20Fe0.31Mn(III)0.17Mn(IV)1.34粉末の合成]
出発材料をLi:Fe:Mn=1:1.25:0.25(モル比)となるように混合し、且つ、焼成温度を350℃ではなく450℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例4のLi1.20Fe0.31Mn(III)0.17Mn(IV)1.34粉末(FeMn−0.2−450)を得た。
[実施例5(FeMn−0.3−450):Li1.13Fe0.44Mn(III)0.17Mn(IV)1.26粉末の合成]
出発材料をLi:Fe:Mn=1:1.25:0.37(モル比)となるように混合し、且つ、焼成温度を350℃ではなく450℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例5のLi1.13Fe0.44Mn(III)0.17Mn(IV)1.26粉末(FeMn−0.3−450)を得た。
[実施例6(FeMn−0.1−550):Li1.36Fe0.18Mn(III)0.31Mn(IV)1.29粉末の合成]
焼成温度を350℃ではなく550℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例6のLi1.36Fe0.18Mn(III)0.31Mn(IV)1.29粉末(FeMn−0.1−550)を得た。
[実施例7(FeMn−0.1−650):Li1.37Fe0.18Mn(III)0.34Mn(IV)1.27粉末の合成]
焼成温度を350℃ではなく650℃としたこと以外は実施例1と同様に、固相反応により(固体原料のみを用いて)、実施例7のLi1.37Fe0.18Mn(III)0.34Mn(IV)1.27粉末(FeMn−0.1−650)を得た。
[実施例8(FeMn−0.3−Ppt):Li1.40Fe0.46Mn(III)0.18Mn(IV)1.17粉末の合成]
Li1.40Fe0.46Mn(III)0.18Mn(IV)1.17粉末を液相反応により(共沈法により)合成した。
0.3M塩化マンガン水溶液50cmと0.1M硝酸鉄水溶液50cmを混合した。そこにLiOH・HOの固体を少しずつ添加し、溶液のpHが11近くなるまで加えた。この時のLi/Mn比は、約2.5となった。懸濁液に30%過酸化水素水20cmを添加すると、Mn(II)がMn(IV)に酸化され、黒いゲル状になった。80℃に加熱し、水分を飛ばした後、150℃で乾燥し、固体を得た。得られた固体を450℃で4時間、空気中で焼成し、室温まで冷却し、比較例1のLi1.40Fe0.46Mn(III)0.18Mn(IV)1.17粉末(FeMn−0.3−Ppt)を得た。
ただし、この方法は、高性能の吸着剤を製造できるものの、コストが増大してしまうのを避けられず、大量にリチウムを回収する方法としては適さなかった。
実施例1〜8について、物理分析及び化学分析の結果を表1に示す。
Figure 2015116551
2.リチウム吸着剤の合成
[実施例9(FeMn−0.1−350(H)):Li0.071.11Fe0.05Mn(III)0.03Mn(IV)1.64粉末の合成]
200cmのHCl溶液(0.5mol/dm)が入ったビーカーに、実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末(2.5g)を添加し、混合物を室温で1日間磁気撹拌することで、実施例9のリチウム吸着剤(FeMn−0.1−350(H);Li0.071.11Fe0.05Mn(III)0.03Mn(IV)1.64粉末)を合成した。その後、得られたリチウム吸着剤をろ過し、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させた。得られた溶液について、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例10(FeMn−0.1−400(H)):Li0.051.24Fe0.11Mn(III)0.06Mn(IV)1.55粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例2で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例8と同様に、実施例10のリチウム吸着剤(FeMn−0.1−400(H);Li0.051.24Fe0.11Mn(III)0.06Mn(IV)1.55粉末)を合成した。また、実施例8と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例11(FeMn−0.1−450(H)):Li0.101.17Fe0.15Mn(III)0.05Mn(IV)1.53粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例3で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例11のリチウム吸着剤(FeMn−0.1−450(H);Li0.101.17Fe0.15Mn(III)0.05Mn(IV)1.53粉末)を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例12(FeMn−0.2−450(H)):Li0.101.21Fe0.27Mn(III)0.10Mn(IV)1.40粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例4で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例12のリチウム吸着剤(FeMn−0.2−450(H);Li0.101.21Fe0.27Mn(III)0.10Mn(IV)1.40粉末)を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例13(FeMn−0.3−450(H)):Li0.131.00Fe0.40Mn(III)0.09Mn(IV)1.35粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例5で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例13のリチウム吸着剤(FeMn−0.3−450(H);Li0.131.00Fe0.40Mn(III)0.09Mn(IV)1.35粉末)を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例14(FeMn−0.1−550(H)):Li0.190.97Fe0.15Mn(III)0.07Mn(IV)1.55粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例6で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例14のリチウム吸着剤(FeMn−0.1−550(H);Li0.190.97Fe0.15Mn(III)0.07Mn(IV)1.55粉末)を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例15(FeMn−0.1−650(H)):Li0.510.70Fe0.16Mn(III)0.05Mn(IV)1.54粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例7で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例15のリチウム吸着剤(FeMn−0.1−650(H);Li0.510.70Fe0.16Mn(III)0.05Mn(IV)1.54粉末)を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
[実施例16(FeMn−0.3−Ppt(H)): Li0.240.94Fe0.44Mn(III)0.07Mn(IV)1.32粉末の合成]
実施例1で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末ではなく、実施例8で得たリチウムマンガン鉄複合酸化物粉末を用いたこと以外は実施例9と同様に、実施例16のリチウム吸着剤(FeMn−0.3−Ppt(H)): Li0.240.94Fe0.44Mn(III)0.07Mn(IV)1.32粉末を合成した。また、実施例9と同様に、Li、Mn及びFe濃度を分析した。
実施例9〜16について、物理分析及び化学分析の結果を表1に示す。
Figure 2015116551
また、実施例1〜7及び9〜15について、粉末X線回折の結果を図1(a)及び(b)に示す(図1(a):実施例1〜7、図1(b):実施例9〜15)。
図1(a)において、全ての試料は、スピネル型の結晶構造を有していた。このうち、3つのサンプル(FeMn−0.1−350、FeMn−0.1−400、FeMn−0.1−450)においては、hklピーク(111)、(311)、(222)、(400)、(331)、(511)、(440)、及び(531)を有しており、Fd3m空間群により、LiMnのスピネル構造に帰属させることができた。
他の2つのサンプル(FeMn−0.1−550及びFeMn−0.1−650)のXRDパターンにおいては、(111)ピークの強度が若干向上しており、また、追加のピーク(図1aに、×で示されている弱いピーク)が見られており、スピネル構造には帰属しない少量の不純物を含んでいることを示唆している。この不純物はα−Feに起因している。
Fe/Mn比を0.3まで上昇させる(FeMn−0.1−450)と、全ての回折ピークは、ブロード化し、α‐Feの不純物相が出現した。
試料の格子定数(0.813〜0.819nm)は、公知のLiMnのデータ(0.824〜0.828nm)とは一致しなかった。この不一致は、Mn3+/Mn4+比と酸素空孔の濃度の変化に起因すると考えられえる。
スピネル結晶構造の一般式はABと記載することができ、細密充填構造の酸素原子配列(32e)中において、A及びBはそれぞれ四面体サイト(8a)及び八面体(16d)サイトを占有するカチオンを示す。XRDパターンの(111)ピークの強度は、スピネル結晶構造中のリチウムが閉める四面体サイト(8a)の量に直接関係する。2θ=30°付近における(220)ピークの出現は、鉄イオンが部分的にスピネル結晶構造の四面体サイト(8a)を占有することが示唆されている。(220)ピークを有しない場合は、マンガンイオンと鉄イオンが八面体サイト(16e)を占有することが示唆された。
表1は、電気的中性の条件下、マンガンの平均酸化状態(ZMn)と一緒に化学分析データの組み合わせを用いて得られた試料の組成を示している。サンプルのほとんどは、化学量論スピネルである1.33に近い酸素/カチオン比を有している。しかしながら、正確な酸素化学量論量を有し、カチオン空孔のないスピネル酸化物を製造するか制御することは非常に困難であるため、1.33より少なかったり多かったりしてもよい。
上記の結果は、表2及び図1bについても同様である。プロトン含有量は、TG曲線において100〜350℃におけるリチウム吸着剤の重量減少によって評価した。マンガンの平均酸化状態(ZMn)はFe/Mn比や焼成温度とは関係なく約4であった。
図1bでは、図1aと同様のXRDパターンが見られている。リチウム吸着剤の格子定数(a)は、リチウムマンガン鉄複合酸化物と比較すると若干低下しているものの、スピネル結晶構造を維持していることが示唆されている。また、リチウム吸着剤中の酸素/カチオン比は、スピネル結晶構造の理論値である1.33に近似していた。
実施例9〜16のリチウム吸着剤は、実施例1〜8のリチウムマンガン鉄複合酸化物を用いて、HCl溶液によるLi/H交換反応により調製することができた。
図2aは、様々なFe/Mn比(FeMn−0.1−450、FeMn−0.2−450、FeMn−0.3−450)の場合におけるリチウム吸着量と、HCl溶液による処理中のマンガン及び鉄の溶出量を示している。
Mn/Fe比が0.1である場合におけるリチウム吸着量は48mg/gであるのに対し、Fe/Mnが0.3になると39mg/gになった。Mn/Fe比が0.1である場合におけるマンガン溶出量は1.9重量%であるのに対し、鉄溶出量とは異なり、Fe/Mn比の増加とともに若干減少した。
図3aは、Fe/Mn比が0.1の場合における異なる焼成温度によるリチウム吸着量を示すグラフである。400〜450℃焼成物は高いリチウム吸着量(48〜49mg/g)を有しており、焼成温度の増加とともに低下する傾向があり、650℃では35mg/gであった。また、マンガン溶出量は、焼成温度が450℃の際に最も低くなり、鉄溶出量は、焼成温度450〜650℃で最も低かった。
3.試験例
[試験例1:リチウム吸着/脱着試験]
<リチウム吸着試験>
NaHCO添加かん水からのリチウム吸着剤の吸着能を評価するため、バッチ試験を行った。リチウム吸着速度の予備的研究では、バッチ処理は1日で吸着平衡に達するのに十分であることを見出した。
リチウム吸着試験においては、実施例8〜14で得たリチウム吸着剤(1.0g)を、NaHCO添加かん水(pHを6.3〜6.5に調整したもの)に浸漬し、室温で1日間磁気撹拌し、懸濁液をろ過し、得られたろ液について、Li、Mn及びFe濃度を分析した。吸着剤は、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させた。
<リチウム脱着試験>
リチウム吸着試験後、HCl溶液(0.5mol/dm)を用いて、リチウム脱着挙動を試験した。
リチウム脱着試験においては、上記のリチウム吸着試験においてリチウムを吸着させた実施例9〜15のリチウム吸着剤(1.0g)を80cmのHCl溶液(0.5mol/dm)に浸漬し、室温で1日間磁気撹拌した。リチウム吸着剤をろ過し、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させた。リチウム脱着量、Mn及びFeの溶出率は、ろ液のLi、Mn及びFe濃度を分析し、計算した。
結果を図2b及び3bに示す。焼成温度が450℃の3個の試料のなかでは、Fe/Mn比が0.1である試料が、最も高いリチウム吸着量31mg/gを示した。リチウム吸着量は、Fe/Mn比の増加とともに減少し、Fe/Mn比が0.3の場合は15mg/gであった。
リチウム脱着は、酸処理によってほぼ99%効果的に進行した。Fe/Mn比が0.1の場合、酸処理中のマンガン溶出量は0.40重量%であり、鉄溶出量は0.10重量%であった。
Fe/Mn比が0.1の場合の焼成温度が異なる試料について、同様の試験を行った。その結果、リチウム吸着量は400〜450℃において最大の約30mg/gであり、リチウム脱着量は吸着量のほぼ99%であった。
一方、マンガン溶出量及び鉄溶出量は、550℃及び650℃の焼成温度でそれぞれ0.4重量%及び0.1重量%未満であった。
[試験例2:NaOH添加かん水中での吸着速度]
FeMn−0.1−450(H)が最も高いリチウム吸着量を有していたため、これを用いて以下の試験を行った。
NaOH添加かん水(NaOH/かん水=0.10;体積比)に対して、種々の反応時間(0.5、1、2、4、6、8、又は24時間)におけるリチウム吸着量を以下のように測定した。
実施例10のリチウム吸着剤(0.20g)を10.0cmのNaOH添加かん水を入れた試験管に投入し、混合物を時折振盪しながら、室温で所定時間(0.5、1、2、4、6、8、又は24時間)経過させた。懸濁液をろ過し、得られた溶液について、リチウム濃度を分析した。
結果を図4に示す。リチウム吸着量は、反応時間の増加とともに向上した。吸着平衡に達するまでには、24時間程度要した。最終的なpHが7.2の場合のリチウム吸着量は28mg/gであった。
[試験例3:かん水中からのリチウム吸着量とNaOH添加量の関係]
FeMn−0.1−450(H)が最も高いリチウム吸着量を有していたため、これを用いて以下の試験を行った。
かん水に対して、1mol/dmのNaOH水溶液を種々の体積比(0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10、又は0.12cm/cm)で投入することにより、NaOH添加かん水を得た。実施例10のリチウム吸着剤(0.20g)を10.0cmのNaOH添加かん水を入れた試験管に投入し、混合物を時折振盪しながら、室温で1日間経過させた。懸濁液をろ過し、得られた溶液について、pH及びリチウム濃度を分析した。
結果を図5に示す。NaOHを添加しない場合には、当初のpHは6.5であったが、リチウム吸着後には、Li/Hイオン交換反応によるプロトンにより、最終的に2.0まで低下した。この場合、リチウム吸着量は18mg/gであり、pH2.0における既報のH1.33Mn1.67の値である12mg/gより高かった。この違いは、塩基量が少ない場合により顕著である。
NaOH溶液を添加すると、pHの増加とともに、リチウム吸着量も増加した。最も高いリチウム吸着量は、pH7.2において28mg/gであった。以下の実験においては、1mol/dmNaOH/かん水比=0.10(体積比)を最適比として採用した。
[試験例4:NaOH添加かん水へのリチウム吸着剤量の影響]
NaOH添加かん水(1mol/dmNaOH/かん水=0.10;体積比)に対するリチウム吸着剤量の影響を、以下のように試験した。
実施例10のリチウム吸着剤(0.20〜0.80g)を20.0cmのNaOH添加かん水を入れた試験管に投入し、混合物を時折振盪しながら、室温で1日間経過させた。懸濁液をろ過し、得られた溶液について、リチウム濃度を分析した。
結果を図6に示す。リチウム吸着剤(重量)とかん水(体積)の比を、10〜50g/dmまで変化させたところ、リチウム吸着剤量の増加にともない、Li/H交換反応を行うことができるサイトが増加し、リチウム回収量も増加した。しかしながら、リチウム吸着量は、50mg/dmの場合にはpHが2.9になり、リチウム吸着剤量の増加にともない減少した。この場合でも、リチウム吸着量は21mg/gであり、リチウム回収量の68%であった。
[試験例5:繰り返し試験]
上記のリチウム吸着試験においてリチウムを吸着させた実施例10のリチウム吸着剤(2.0g)を50cmのHCl溶液(0.5mol/dm)に浸漬し、室温で4時間磁気撹拌し、ろ過し、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させた。
その後、上記のようにプロトン化したリチウム吸着剤を100cmのNaOH添加かん水(1mol/dmNaOH/かん水=0.10;体積比)に浸漬させ、室温で4時間磁気撹拌し、ろ過し、脱イオン水で洗浄し、室温で乾燥させた。
この操作(吸着及び脱着)を4サイクル行い、各サイクルにおけるリチウム吸着量及びリチウム脱着時のマンガン溶出量を測定した。
結果を図7に示す。本発明のリチウム吸着剤は、そのスピネル結晶構造を維持することから、繰り返し使用が可能であった。NaOH添加かん水を用いた場合、リチウム吸着量は26〜28mg/gであり、理論値の54mg/gと比較すると、約60%のプロトンがLi/H交換反応を行ったことが示唆されている。この26〜28mg/g程度のリチウム吸着量は、4サイクル後にも維持されており、マンガン及び鉄溶出量はそれぞれ0.4重量%及び0.1重量%未満であった。
なお、FeMn−0.1−450(H)のNaOH添加かん水からのLi、Na、K、Mg2+、Ca2+の吸着量を測定したところ、Li吸着量が高く(28mg/g、4.0mmol/g)、他の金属イオンの吸着量は低かった(Na:0.74mg/g(0.03mmol/g)、K:0.65mg/g(0.02mmol/g)、Mg2+:1.66mg/g(0.07mmol/g)、Ca2+:0.85mg/g(0.02mmol/g))。

Claims (13)

  1. リチウム吸着剤用のリチウムマンガン鉄複合酸化物であって、マンガンに対する鉄の元素比(Fe/Mn)が0.05〜0.35である、リチウムマンガン鉄複合酸化物。
  2. スピネル型結晶構造を有する、請求項1に記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
  3. マンガンの平均価数が3.5〜4.0である、請求項1又は2に記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
  4. 一般式(1):
    Lix1Fey1Mnz1
    [式中、x1は1.1〜1.7;y1は0.05〜0.5;z1は1.3〜1.9;y1/z1は0.05〜0.35である。]
    で示される、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
  5. 格子定数が0.80〜0.82nmである、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム吸着剤用リチウムマンガン鉄複合酸化物の製造方法であって、
    リチウム含有化合物、マンガン含有化合物及び鉄含有化合物の混合粉末を350〜700℃で焼成する工程
    を備える、製造方法。
  7. 焼成温度が400〜500℃である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 焼成時間が1〜48時間である、請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムマンガン鉄複合酸化物を用いたリチウム吸着剤。
  10. 請求項9に記載のリチウム吸着剤の製造方法であって、前記リチウムマンガン鉄複合酸化物から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させる工程を備える、製造方法。
  11. リチウム含有水溶液に対して、請求項9に記載のリチウム吸着剤を接触させてリチウムを吸着させる工程、及び
    リチウムを吸着させたリチウム吸着剤から、酸溶液を用いてリチウムを溶離させる工程
    を備える、リチウム回収方法。
  12. 前記リチウム含有水溶液が、海水又はかん水である、請求項11に記載のリチウム回収方法。
  13. さらに、塩基を前記リチウム含有水溶液と接触させる、請求項11又は12に記載のリチウム回収方法。
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