JP2015116171A - 受容体チロシンキナーゼに対する阻害剤のスクリーニング方法 - Google Patents

受容体チロシンキナーゼに対する阻害剤のスクリーニング方法 Download PDF

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展雄 福田
真也 本田
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Abstract

【課題】 RTKに対するチロシンキナーゼ阻害剤の、迅速なハイスループット・スクリーニング系を確立すること。
【解決手段】 本発明のRTKのチロシンキナーゼ阻害剤のスクリーニング方法は、二量体化しているRTK細胞ドメインが細胞膜に局在して発現し、かつGタンパク質接合シグナル伝達経路が恒常的に活性化されている形質転換酵母を作製して、かかる酵母に被検物質を添加して、前記接合シグナル伝達の応答を指標として、チロシンキナーゼ阻害活性を評価する工程を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、受容体チロシンキナーゼの細胞内ドメインを酵母で発現させ、該キナーゼの活性を阻害する物質をスクリーニングする方法、遺伝子組換え酵母、キット及びコンビネーションに関する。
受容体チロシンキナーゼ(以降、「RTK」とも表示する)は細胞増殖、分化、生存および代謝を制御する重要な調節因子であり、リガンドと結合するための細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内チロシンキナーゼドメインからなる類似の構造を共有する、約20種の異なるRTKファミリーが同定されている(非特許文献1)。リガンドの結合は受容体二量体化を誘導または安定化し、キナーゼ活性を増大させることにより、該受容体の細胞内ドメインに存在するチロシン残基の自己リン酸化を誘導する。上記リン酸化チロシン残基はGrb2,Shc、Src、Cb1またはホスホリパーゼCγのようなSrcホモロジー2(以降、「SH2」とも表示する)ドメインなどを有するアダプタータンパク質の結合認識部位として機能する。これらのタンパク質は付加的なエフェクターを活性化受容体に動員し、それらが膜における情報伝達複合体の集合および細胞内生化学的シグナルカスケードの活性化を引き起こす。
RTKの活性およびそれらに媒介される細胞内シグナル伝達は、正常細胞では正確に調整され、厳しく制御される。一方、癌細胞の多くでは、RTKの変異または過剰発現が見出され、リガンドが存在しない場合でさえも、受容体二量体化の発生率を増大させている。多くの場合、これがRTKの恒常的な活性化を促し、異常で、制御できない細胞増殖および腫瘍形成を導くことが知られている(図1A)。
異常なRTKのシグナル伝達を阻止するための一方法は、それらの固有のチロシンキナーゼ活性を選択的に妨害し、それによって受容体自己リン酸化および下流シグナルトランスジューサーの活性化を遮断する小分子薬の開発である(非特許文献2)。効果的なチロシンキナーゼ阻害剤の選択を考慮するための1つの重要な側面は、これらの化合物が細胞膜を透過し、必要な期間、細胞内環境で機能することが可能でなければならないことである。
さらに、潜在的な薬物候補になるためには、キナーゼ阻害剤は細胞毒性効果を示してはならない。したがって、RTK活性を阻止することが可能な化合物の一次スクリーニングには生細胞を用いることが好ましい(特許文献1など)。
酵母とヒト細胞の間では、基本的な分子および細胞機序が高度に保存されているため、酵母細胞内においてヒトタンパク質の機能を再構成することがしばしば可能である。そのため酵母は、真核細胞のモデル生物として古くから利用されており(非特許文献3)、酵母を用いた「drug-target」スクリーニング系も開発されている(非特許文献4)。
また、酵母は、遺伝子操作が容易で、寒天培地・液体培地などで簡便に培養できることから、細胞機能の制御物質に対するハイスループット・スクリーニング系(以降、「HTS」とも表記する)の構築にも有用な宿主である(特許文献2、3)。
さらに、酵母細胞は内因性の受容体チロシンキナーゼを持たないため、RTKの発現およびこれらの膜結合キナーゼの特異的阻害剤のスクリーニング系に酵母細胞を用いることで、バックグラウンドノイズをほぼ無視することが可能となる。
RTKの具体的な例としては、上皮増殖因子受容体(以降、「EGFR」とも表記する。)、血小板由来増殖因子受容体(PDFGR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、ヒト上皮成長因子受容体4(HER4)、ニューロトロフィン受容体などが挙げられる。とりわけEGFRは、腎癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、乳癌など、さまざまな癌細胞で過剰発現がみられ、腫瘍形成において基礎的な役割を果たしている。
近年、遺伝子組換え酵母を用いて、RTKの細胞外ドメインに作用する、アゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングする方法(特許文献4)が開発された。この方法は、酵母のRasシグナル伝達経路を改変して利用し、酵母細胞の増殖を指標として検出するものである(非特許文献5、6)。当該手法を応用すればチロシンキナーゼ阻害剤に対しても、HTSを実現することが可能であると予想されるが、この手法では、遺伝子組換え酵母の増殖能を判定する必要があるため、酵母の培養およびスクリーニングに少なくとも7日間を要する。寒天プレートを用いる通常の酵母を用いたスクリーニング方法の場合には、培養に要する期間が2日間程度であることを考慮すると、この手法は、判定までの時間がかかりすぎる点が大きな欠点となっている。
RTKのうちでも酵母細胞内で発現させることで強い細胞毒性を誘導し得るPDFGRなど特定のRTKの場合は、RTKの発現が酵母細胞に与える毒性を利用することで、チロシンキナーゼ阻害剤を同定する技術(特許文献1)が利用できる。しかし、典型的なRTKであるEGFRのように、酵母細胞に対して明確な毒性を示さない(非特許文献5)RTKに対しては、この技術は適用できない。
以上のように、全てのRTKに適用でき、かつ迅速なRTKに対するチロシンキナーゼ阻害剤のスクリーニング法を開発することが強く望まれていた。
特表2007−508801 特開2005−176605 WO2006/104254 特開2008−245592 特開2011−155839
Ullrich A, et. al., 1990,Cell,Vol.61,203-212. Levitzki A, 1999, Pharmacol Ther. Vol.82,231-239. Botstein D, et. al., 1997, Science. Vol.277,1259-1260. Hughes TR, 2002, Funct Integr Genomics. Vol.2,199-211. Gunde T,et al.,2005,Biotechniques., Vol.39,541-549. Busti S,et al.,2008,Curr Genet.,Vol.53,153-162. N. Fukuda et al.,2009,FEBS J., Vol.276,2636-2644
本発明の課題は、異常なRTKのシグナル伝達を阻止するためのRTK阻害剤のスクリーニング系であって、EGFRなど一般的なRTKにも適用でき、かつ迅速なスクリーニング系を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、従来のRTK阻害剤スクリーニング法で利用していた、酵母由来のRasシグナル伝達経路に代えて、Gタンパク質を介した接合シグナル伝達経路を適用することに思い至った。
本発明者らは、以前、酵母細胞内のGタンパク質による接合シグナル(フェロモンシグナル)伝達経路を利用したタンパク質間相互作用の検出方法を開発している(非特許文献7、特許文献5)。具体的には、タンパク質(A)をGタンパク質のγサブユニットの細胞膜結合能を欠損させた変異型(以降、「Gγcyto」とも表記する)と融合させた融合タンパク質(A−Gγcyto)を細胞質で発現させ、タンパク質(A)と相互作用するタンパク質(B)を細胞膜に発現させる(Bmem)。タンパク質(A)とタンパク質(B)とが相互作用すると、A−GγcytoとGβからなる複合体(A−Gβγcyto)が細胞膜に局在化し接合シグナル伝達が回復することを利用する。フェロモン応答的なプロモーターの下流にレポーター遺伝子を組み込むことで、タンパク質(A)とタンパク質(B)との相互作用により回復した接合シグナル伝達をレポーター遺伝子の発現量として定量的に検出できる。非特許文献6などでは、タンパク質(A)としてヒトIgGのFc部分を用い、タンパク質(B)として、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインA由来のZドメインを用い、緑色蛍光タンパク質EGFPをレポーター遺伝子として蛍光強度をフローサイトメーター解析することで、結合定数8.0×103-3という比較的弱い相互作用まで検出できている。
そこで、本発明者らは、酵母細胞内でRTKのリン酸化チロシン残基と、Gタンパク質を融合させたアダプタータンパク質との相互作用により接合シグナル伝達経路を恒常的に活性化させた系を構築できれば、当該系に被検物質を作用させ阻害活性を測定することでRTK阻害剤候補物質をスクリーニングできると考えた。
そのために、遺伝子組換え酵母でチロシン基がリン酸化したRTKの細胞内ドメイン(RTKcyto)を細胞膜に局在化させる一方で、リン酸化チロシン残基に結合可能で、かつ単独では細胞膜に局在することができないアダプタータンパク質を、Gγcytoと結合させた融合タンパク質を同一酵母細胞内で発現させるというストラテジーを考えた。具体的には、典型的なRTKであるEGFRの細胞内ドメイン(EGFRcyto)を酵母の細胞膜に局在化させ、かつ二量体化によるチロシン残基のリン酸化を行い、変異Gγcytoを含むGrb2−Gγcyto融合タンパク質を細胞質で発現させた。しかしながら、接合シグナル経路の活性化は全く観察できなかった。本発明者らは、さらに根気よくその原因の解明に勤め検討を重ねた結果、前記ストラテジーには問題が無く、Gタンパク質からエフェクター分子へのシグナル伝達は、Gタンパク質が細胞膜近傍に存在しなくては起こらないこと、及びそのためリン酸化チロシン残基と相互作用している融合体中のGγと細胞膜との空間的距離が重要であることを解明した。
そして、結合時のGrb2−Gγcyto融合タンパク質の位置を最適に保つために、EGFRcyto配列中のリン酸化チロシンの細胞膜からの位置を調整したところ、接合能を示す遺伝子組換え酵母の系を提供することができ、既知のEGFR特異的チロシンキナーゼ阻害剤により接合能が消失することを確認した。さらに、両遺伝子を酵母ゲノムに組み込んで、安定して膜に局在するEGFRcyto及び遊離したGrb2−Gγcytoを発現する遺伝子組換え酵母を提供することもできた。
以上のことにより、酵母のGタンパク質シグナル伝達経路を利用したRTK阻害剤のスクリーニングの系を確立することができ、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
〔1〕 遺伝子組換え酵母を用いた受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるチロシンキナーゼ阻害剤をスクリーニングする方法が、
恒常的にリン酸化しているチロシン残基を細胞膜近傍領域内に有しているRTK細胞内ドメイン(RTKcyto)が細胞膜に局在して発現し、かつ同時に、前記リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質と、単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体とを含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え酵母を用いることを特徴とする方法であって、
前記遺伝子組換え酵母に被検物質を接触させる工程、及び当該酵母におけるGタンパク質シグナル伝達の応答量の減少もしくは消失を判定する工程を含む方法。
〔2〕 前記遺伝子組換え酵母が、下記(1)〜(3)の工程により調製されている遺伝子組換え酵母であることを特徴とする、前記〔1〕に記載の方法;
(1)RTK細胞内ドメインのいずれかの末端に付加されている細胞膜局在化配列、及びリン酸化し得るチロシン残基を細胞膜近傍領域に有しているRTK細胞内ドメインを含む第1の融合タンパク質を発現する第1の発現カセットを調製する工程、
(2)リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質、及び単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体を含む第2の融合タンパク質を発現可能な第2の発現カセットを調製する工程、
(3)前記第1及び第2の発現カセットを酵母宿主に導入し、得られた遺伝子組換え酵母を培養する工程。
〔3〕 前記工程(1)の「細胞膜局在化配列」が脂質修飾シグナルペプチド、細胞膜貫通ドメイン、及び細胞膜構造タンパク質結合性ペプチドから選択されたペプチドであって、
前記RTK細胞内ドメインが有しているリン酸化し得るチロシン残基の位置が、前記「細胞膜局在化配列」が付加している側の最初のアミノ酸残基から数えて300アミノ酸残基未満のいずれかの位置である、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕 前記工程(3)において、第1及び第2の発現カセットの少なくとも一方を酵母宿主に導入する方法が、相同組換えにより染色体中に導入する方法であることを特徴とする、前記〔2〕又は〔3〕に記載の方法。
〔5〕 前記遺伝子組換え酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属し、選択性マーカーを少なくとも1つ保持する一倍体酵母であって、
当該酵母における被検物質の接触後のGタンパク質シグナル伝達の応答量の減少もしくは消失を判定する工程が、以下の工程(4)及び(5)を含むことを特徴とする、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法;
(4)被検物質接触後の前記組換え酵母を、当該酵母と接合可能な型の野生型一倍体酵母と共に接合体のみが生育可能な選択培地で培養する工程、
(5)培養後の組換え酵母の増殖能の減少もしくは消失を、被検物質を接触させない場合の増殖能との比較により判定する工程。
〔6〕 前記RTKが、そのアミノ酸配列内に恒常的に二量体化を引き起こす変異を有するRTK変異体であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 前記工程(1)の第1の発現カセットが、第1の融合タンパク質をコードする遺伝子配列と共に、二量体化ドメインの一方及び他方をコードする遺伝子配列のそれぞれが含まれるように構築された2種類の発現カセットからなることを特徴とする、前記〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕 前記RTKが、上皮増殖因子受容体(EGFR)である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 前記EGFRが、そのアミノ酸配列における834位ロイシン残基がアルギニン残基に置換されており、恒常的に二量体を形成するL834R変異体である、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕 前記アダプタータンパク質がGrb2である、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕 前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のスクリーニング方法で用いることのできる遺伝子組換え酵母であって、
恒常的にリン酸化しているチロシン残基を細胞膜近傍領域内に有しているRTK細胞内ドメインが細胞膜に局在して発現しており、かつ前記リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質と、単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体とを含む融合タンパク質を発現していることを特徴とする、遺伝子組換え酵母。
〔12〕 前記遺伝子組換え酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属し、選択性マーカーを少なくとも1つ保持する一倍体酵母であることを特徴とする、前記〔11〕に記載の遺伝子組換え酵母。
〔13〕 前記遺伝子組換え酵母が、さらに、シグナル応答性のプロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現することが可能な遺伝子組換え酵母であることを特徴とする、前記〔11〕又は〔12〕に記載の遺伝子組換え酵母。
〔14〕 受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるチロシンキナーゼ阻害剤を同定、又はスクリーニングするためのキットであって、前記〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載の遺伝子組換え酵母を含むキット。
〔15〕 以下の(a)〜(c)を含む前記〔14〕に記載のキット;
(a)前記〔12〕に記載の遺伝子組換え酵母、
(b)前記酵母と異なる接合型の一倍体酵母、
(c)接合体のみが生育可能な選択用培地。
〔16〕 以下の(a)及び(b)を含む前記〔14〕に記載のキット;
(a)前記〔13〕に記載の遺伝子組換え酵母、
(b)前記酵母細胞内でのレポーター遺伝子発現量を測定するための装置。
本発明によれば、抗癌剤候補となる、RTKのチロシンキナーゼ活性の阻害物質を、簡便かつ迅速にスクリーニングすることができる。本発明により取得したRTK阻害剤候補物質は、細胞膜を透過し、必要な期間、細胞内環境で機能することが可能であると考えられる。
EGFRチロシンキナーゼ活性の評価方法の模式図:(A)ヒト細胞中でのEGFRの生理機能を示す模式図。(B)EGFRのチロシンキナーゼ活性が、酵母Gタンパク質シグナル伝達経路を活性化させる原理を示す模式図。 Gタンパク質γサブユニット(Gγ)と細胞膜の空間的距離が、シグナル伝達へ与える効果:(A)Gγを含む融合タンパク質の模式図(FPはファルネシル基とパルミトイル基が付加される配列、MPはミリストイル基とパルミトイル基が付加される配列を示す)。(B)接合体の形成数を指標とした、遺伝子組換え酵母のシグナル伝達レベルを示すグラフ。(C)C末端にGFPを付加した前記融合タンパク質、を発現する遺伝子組換え酵母の蛍光強度を示すグラフ。 リン酸化EGFRとGrb2−Gγ変異体(Gγcyto)を用いた、酵母Gタンパク質シグナル伝達経路の活性化:(A)酵母細胞で発現させるEGFR細胞内ドメインとGrb2−Gγcytoの模式図。(B)接合体の形成数を指標とした、遺伝子組換え酵母のシグナル伝達レベルを示すグラフ。 リン酸化EGFRおよびGrb2−Gγcytoを共発現する、染色体組込み型遺伝子組換え酵母の作製:(A)相同組換えを利用した染色体組込みの概略図。(B)B1L−GrG(Grb2−Gγcyto発現酵母)が形成した接合体コロニーを示す写真(OD600=0.5に調整した酵母懸濁液1mlを塗布)。(C)B1U−GL(リン酸化EGFRおよびGrb2−Gγcyto共発現酵母)が形成した接合体コロニーを示す写真(OD600=0.5に調整した酵母懸濁液1mlを塗布)。(D)リン酸化EGFRの有無による接合体形成数の差を示すグラフ。 AG1478のチロシンキナーゼ阻害活性の評価:(A)AG1478濃度と、B1U−GLが形成した接合体数の関係を示すグラフ。(B)AG1478の有無による接合体形成数の比を示すグラフ(BY4741は天然のGタンパク質シグナル伝達経路を有する酵母、B1U−GLは導入したリン酸化EGFRによりGタンパク質シグナル伝達経路を活性化する酵母)。
1.本発明の特徴について
本発明は、抗癌剤の開発を目的として、ヒトなど哺乳類の自己リン酸化型受容体である受容体チロシンキナーゼ(RTK)が有するチロシンキナーゼ活性を阻害する物質をスクリーニングする方法に関する。本発明の方法は、自己のチロシンキナーゼ活性により、恒常的にリン酸化されたチロシン残基を有するRTKの細胞内ドメインであって、当該チロシン残基の細胞膜からの距離が一定の範囲内にあるRTK細胞内ドメインを、酵母細胞の細胞膜に局在化するように発現させると共に、細胞膜結合活性能を欠失したGタンパク質γサブユニットとアダプタータンパク質との融合タンパク質を発現させることで、Gタンパク質を介したシグナル伝達経路を活性化させる工程を含むことを特徴とする。この工程を含んでいる限り、当業者に公知のもののうち技術的に適用可能な全ての工程を包含することを排除しない。本発明の実施態様では、Gタンパク質を介したシグナル伝達経路として、接合シグナル伝達経路を利用する方法を示しているが、他にもグルコース応答シグナル伝達経路を利用することもできる。
本発明においては、これらのリン酸化されたチロシン残基を有するRTK細胞内ドメインと共に、アダプタータンパク質とGγcytoとの融合タンパク質を共発現している遺伝子組換え酵母細胞を用いて、RTKのチロシンキナーゼ阻害剤をスクリーニングする。その際のスクリーニングの形態は、接合体のみが生育可能な選択圧下での増殖判定などを用いることが好適であるが、当該シグナル伝達の応答を利用する工程である限り特に制限されない。他には、シグナル応答性のプロモーターの制御下に置いたGFPなどレポーター遺伝子の発現の有無を観察する方法も簡便な判定法であり好ましい。
ここで、Gタンパク質を介した接合シグナル伝達経路は「フェロモンシグナル伝達経路」とも称される。1倍体酵母は対となる接合型の1倍体酵母に対してフェロモンを分泌し、相手のフェロモンを感知すると接合を促すシグナルを細胞内に伝達する。細胞膜上にはリガンドのフェロモンと結合するGPCR(Gタンパク質共役型受容体)が存在しており、この受容体は細胞内のGタンパク質(グアニンヌクレオチド結合タンパク質)と呼ばれるαサブユニット、βサブユニットおよびγサブユニットからなる3量体のタンパク質と共役している。フェロモンが受容体に結合すると、Gタンパク質はαサブユニットとβγ複合体に解離する。αサブユニットとγサブユニットとはそれぞれ細胞膜に結合しているため、Gタンパク質の解離後においてもαサブユニットとβγ複合体は細胞膜に局在化する。βγ複合体のβサブユニットが細胞膜を介してエフェクターに作用することでシグナルが下流に伝達される。
一方、γサブユニットの細胞膜結合能を欠損させた変異体(Gγcyto)では、Gタンパク質の解離によってβγ複合体(Gβγcyto)が細胞質中に遊離してしまい、エフェクターに作用できなくなるため、シグナルが下流に伝達されなくなることが知られている(参考文献1および2参照)。
2.受容体チロシンキナーゼ(RTK)及びその細胞内ドメインについて
(2−1)受容体チロシンキナーゼ(RTK)
本発明で対象とする受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、哺乳動物由来RTKのうちでも特にヒト由来RTKを対象とするものであり、具体的には、上皮増殖因子受容体(EGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDFGR)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ニューロトロフィン受容体などが例示できる。これらヒト由来のアミノ酸配列はいずれも既知であり、例えば、EGFR(GenBankアクセッション番号:NG007726)、PDGFR(GenBankアクセッション番号:NM002609)、VEGFR(GenBankアクセッション番号:NM002253)、HER2(GenBankアクセッション番号:NM001005862)として商用データベースから入手可能である。
(2−2)受容体チロシンキナーゼ(RTK)の細胞内ドメイン(RTKcyto)について
本発明においては、本来のリガンドとの結合活性を持たないRTKの細胞内ドメインを利用するが、必ずしもRTKの細胞内ドメイン全長を発現させる必要はない。したがって、本発明において「RTK細胞内ドメイン」というとき、天然のRTKの細胞内ドメインに由来する「チロシンキナーゼドメイン」及び「リン酸化の対象となるチロシン残基」を含む領域(以下、当該領域を含むフラグメントであって、自己のチロシンキナーゼ活性によりリン酸化チロシン残基を生成し得るフラグメントを「機能的フラグメント」ともいう。)を少なくとも含むアミノ酸配列からなるタンパク質を指し、「RTKcyto」ともいう。当該「RTKcyto」としては、前記EGFR、PDGFR、VEGFR、HER2などの細胞内ドメイン及びそれらの機能的フラグメントを好適に例示することができ、それぞれEGFRcyto、PDGFRcyto、VEGFRcyto、HER2cytoなどと表記することもある。典型的な「RTKcyto」としては、EGFRの細胞内ドメイン(EGFRcyto)を例示することができ、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するヒトEGFRを特に好適に例示することができる。なお、自己のチロシンキナーゼ活性によりリン酸化チロシン残基を生成し得るRTKcytoである限り、上記好適として例示したRTKの細胞内ドメイン及びそれらの機能的フラグメントのアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる変異体、あるいは改変体を用いることもできる。なお、本発明において「1もしくは数個」とは、1〜50個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個であり、全長の塩基配列の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有する範囲内での変異があるか、または改変が施されていることを表す。
(2−3)RTKcytoを細胞膜に局在させる方法について
本発明においては、RTKcytoを細胞膜に局在して発現させる。ここで細胞膜に局在とは、対象とする分子が、細胞膜を構成する脂質またはタンパク質と結合している状態を指す。RTKcytoを細胞膜に局在して発現させる方法としては、RTKcytoに、細胞膜への局在化を促すアミノ酸配列(以降、「細胞膜局在化配列」とも表記する)を付加して発現させる方法が挙げられる。細胞膜局在化配列としては、脂質修飾を促す配列(ファルネシル化およびパルミトイル化を誘導するシグナルペプチドであるFP配列、ミリストイル化およびパルミトイル化を誘導するシグナルペプチドであるMP配列など)や、疎水性のアミノ酸残基からなる膜貫通ドメイン、細胞膜構造中に存在するタンパク質に結合性を有するペプチド(細胞膜構造タンパク質結合性ペプチド)などが挙げられる。
したがって、例えば、本発明における典型的なRTKcytoのEGFRcytoの場合は、酵母細胞内で発現させることによって、細胞膜に局在し、かつ自己のチロシンキナーゼ活性によりリン酸化されるチロシン残基を有するEGFRcytoであって、かつ下記の(1)〜(2)のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質であると表すことができる。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号1に示されるアミノ配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、
3.RTK細胞内ドメインのリン酸化されるチロシン残基の位置について
本発明のリン酸化されたチロシン残基を有するRTKの細胞内ドメインの他の特徴として、RTKの細胞内ドメイン中での自己のチロシンキナーゼ活性によりリン酸化されたチロシン残基を有するRTKの細胞内ドメインにおいて、当該リン酸化チロシン残基の細胞膜からの距離を細胞膜近傍の一定の範囲内(細胞膜近傍領域)に設定することで、リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質と融合した膜結合能を持たないGタンパク質γサブユニットが、細胞膜から当該距離の範囲内に存在することができ、細胞膜近傍のエフェクター因子にGタンパク質シグナルを伝達することが可能となる点がある。
ここで、細胞膜近傍の一定の範囲内の距離は、細胞膜からリン酸化チロシン残基までの空間的距離によって規定され、その1つの指標としては、当該残基と、細胞膜への局在を促すアミノ酸配列との間のアミノ酸残基数を用いることができる。すなわち、RTK細胞内ドメインのリン酸化チロシン残基の位置を、細胞膜近傍の一定の範囲内の距離、具体的には細胞膜への局在を促すアミノ酸配列から1〜300アミノ酸残基未満、好ましくは1〜200アミノ酸残基、より好ましくは5〜150アミノ酸残基、さらに好ましくは10〜120アミノ酸残基、特に好ましくは20〜60アミノ酸残基の位置に存在させることが重要である。
そのための手法として、例えば、RTK細胞内ドメインのN末側に細胞膜局在化配列(MP配列など)を付加する場合には、チロシンキナーゼドメインとリン酸化チロシン残基との間の配列を除去するか、リン酸化チロシン残基の位置をN末側に変更するなどの方法で距離を調整することができる。
他のより簡便で好ましい方法としては、通常のRTK細胞内ドメイン配列中でのリン酸化され得るチロシン残基の位置が、C末側の近傍に存在することを踏まえて、細胞膜局在化配列(FP配列など)をRTK細胞内ドメインのC末側に結合させることで、細胞膜局在化配列とリン酸化チロシン残基との間の距離を短縮することができる。例えば、本発明の実施例で用いた541残基のEGFRの細胞内ドメイン(EGFRcyto)の場合、N末側からリン酸化チロシン残基までは423番目であるのに対して、C末側からは119番目であったので、C末側に細胞膜局在化配列のFP配列を付加したことでシグナル応答を検出できている。
また、RTK細胞内ドメインのC末側に細胞膜局在化配列を結合させることのメリットとして、C末側にはチロシンキナーゼドメインなどのような不可欠なドメインはない点がある。すなわち、C末側からであれば、適宜の数のアミノ酸残基を除去することが可能であるため、さらに最適な細胞膜までの距離に調整することが可能である。
4.本発明における、Gタンパク質シグナル伝達経路を活性化させる方法について
(4−1)RTKcytoのチロシン残基を恒常的にリン酸化する方法
本発明の方法では恒常的にリン酸化されたRTKcytoを酵母の細胞膜に局在して発現させることが必要である。
本発明で用いるRTKcytoは、細胞外のリガンド結合ドメインを欠失しているので、本来のリガンドの結合による二量体化は起こらない。したがって、恒常的にRTKcytoをリン酸化するためには、RTKcytoを細胞外のリガンドに依存しない方法で二量体化しておく必要がある。
そのために、RTKの1部の配列を変異させて「恒常的に二量体を形成してリン酸化チロシン残基を有する変異体」とすることができる。RTKがこのような恒常的な二量体形成性の変異を起こすことが癌化メカニズムの主要な原因の1つであることからみて、癌細胞には、それぞれのRTKに対応した前記変異体が存在している場合が多く、従来から多数の報告があるので、これら既知の変異体を用いることができる。例えば、EGFRについては、L837Q変異体、Y845E変異体(参考文献3)などが報告されており、Her4の場合もI712Q変異体、V954R変異体(参考文献4)などが知られている。本発明の実施例では、EGFR変異体のうちの「L834R変異体」(参考文献5)を用いた。「L834R変異体」は、EGFRの834位のロイシン残基がアルギニン残基に変異しており、恒常的に二量体を形成し、423位のチロシン残基がリン酸化されおり、本実施例2では、EGFR(LR)cytoと表記されている。
その他のRTKの細胞内ドメインを二量体化する方法としては、二量体化ドメイン(c−Fosロイシンジッパー、c−JunロイシンジッパーおよびGcn4ロイシンジッパーなど)を付加する方法を例示することができる。具体的には、c−Fosロイシンジッパーを付加したRTKcytoと、c−Junロイシンジッパーを付加したRTKcytoとを共発現すればよい。
(4−2)アダプタータンパク質とGタンパク質の変異γとの融合タンパク質について
本発明の方法では、リン酸化チロシン残基を細胞膜近傍に有するRTKcytoを、遺伝子組換え酵母の細胞膜に局在させることに加えて、当該チロシン残基に結合することが可能なアダプタータンパク質を、Gγcytoと融合して発現させる。すなわち、RTKcytoのリン酸化チロシン残基に依存して、Gβγcyto複合体を細胞膜に局在させることで、遺伝子組換え酵母のGタンパク質シグナルを下流へと伝達させる。
その際のアダプタータンパク質としては、単独では細胞膜に局在することができず、かつリン酸化チロシン残基を認識して、EGFRと結合し得るタンパク質、である限り特に制限されないが、SH2ドメインを有するタンパク質を好適に例示することができ、Grb2,Shc、Srcなどをさらに好適に例示することができる。それぞれの配列はいずれも既知であり、例えば、Grb2(GenBankアクセッション番号:CR541942),Shc(GenBankアクセッション番号:NM001202859)、Src(GenBankアクセッション番号:NM198291)として商用データベースから入手可能であり、それぞれの配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加された配列を有する変異体、あるいは改変体を用いることもできる。例えば、本発明の実施例でアダプタータンパク質として用いたGrb2のアミノ酸配列(配列番号2)を特に好適に例示することができ、また、配列番号2に示された配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加された配列を有する変異体、あるいは改変体を用いることもできる。
さらに、上記Gγcytoとしては、単独では細胞膜に局在することができず、かつ上述のアダプタータンパク質と融合して発現した際に、RTKcytoのリン酸化チロシン残基に依存して細胞膜近傍へと誘導されることで、下流のシグナル伝達系を活性化させ得るGγcyto、である限り特に制限されないが、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するGγcytoを好適に例示することができる。また、上記好適として例示した配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加された配列を有する変異体、あるいは改変体を用いることもできる。
5.本発明の適用可能な「酵母」及び遺伝子組換え法について
(5−1)本発明の適用可能な酵母について
本発明において、「酵母」とは、遺伝子組換えを行っていない野生型の酵母、および遺伝子組換え酵母を包含する。遺伝子組換え酵母が属する種は、宿主とした野生型の酵母の属する種と同一であるとする。
本発明に適用可能な「酵母」としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属やシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属に属する酵母を好適に例示することができ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)やシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)に属する酵母をさらに好適に用いることができ、サッカロミセス・セレビシエに属する酵母を特に好適に用いることができる。
本発明では、Gタンパク質接合シグナル伝達経路の活性化を利用し、接合体の形成を指標とした増殖判定を用いることが好ましいため、a型もしくはα型の一倍体のサッカロミセス酵母であって、かつ少なくとも1つの選択マーカー(栄養要求性マーカー)を染色体上に保持するサッカロミセス酵母を用いることが特に好ましい。
(5−2)酵母の遺伝子組換えについて
本発明の方法では、RTKcyto遺伝子およびアダプタータンパク質−Gγcyto遺伝子(例えば、EGFRcyto遺伝子およびGrb2−Gγcyto遺伝子)の発現カセットを調製して、該発現カセットを酵母細胞に導入することで、上記遺伝子を発現する遺伝子組換え酵母を作製する。ここで発現カセットとは、プロモーター、遺伝子およびターミネーターからなる配列を有するDNAであり、かつ宿主細胞に導入したとき該遺伝子を発現可能なDNAを指す。上記発現カセットを酵母へ導入する方法としては、エレクトロポレーション法、金属処理法、プロトプラスト法等の技術的に適用可能な当業者に公知の全ての方法を用いることができる。上記発現カセットの酵母への導入する方法としては、上記発現カセットをベクターに組み込んで、そのベクターを酵母へ導入する方法を用いることもできるが、安定的なスクリーニング系を提供するためには、相同組換えを利用して、上記発現カセットを酵母の染色体へ導入する方法が特に好ましい。上記ベクターとしては、酵母で自律複製可能なプラスミド(YCpタイプ、YEpタイプ、YRpタイプ)や人工染色体(YAC)を、好適に例示することができる。
6.RTK阻害剤スクリーニング
本発明のスクリーニングの対象となるRTKのチロシンキナーゼ阻害剤とは、RTK自身が有しているチロシンキナーゼ活性による自己リン酸化作用を阻害する物質を指し、単に「RTK阻害剤」ということもある。
本発明のRTK阻害剤のスクリーニングの形態は、当該シグナル伝達の応答を利用する工程である限り特に制限されないが、接合体のみが生育可能な選択圧下での増殖判定などを用いることが好適である。
具体的には、メチオニンおよびリジンを含まないSD固体培地上に酵母懸濁液を塗布することで、a型酵母(メチオニン要求性)およびα型酵母(リジン要求性)は増殖できず、かつ当該シグナル伝達の応答として形成した接合体(メチオニンおよびリジンを合成可能)のみが増殖してコロニーを形成する。ここで薬剤の添加により、接合体の形成が抑制された場合、当該薬剤がRTK阻害剤の候補となる。
他の手法としては、シグナル応答性のプロモーター(PFUS1、PFIG1、PAGA1など)の制御下に設けられたレポーター遺伝子を用い、レポーター遺伝子の発現量の変化を観察することを例示できる(参考文献6参照)。レポーター遺伝子としては、例えば、蛍光レポーター遺伝子(DsRed、GFPなど)、生育レポーター遺伝子(HIS3、ADE2、URA3、CAN1など)、発色レポーター遺伝子(lacZなど)、発光レポーター遺伝子(lucなど)などが挙げられる。
7.図1Bに示された本発明の実施の態様
具体的な本発明の態様として、図1Bを参照して説明する。ただし、本発明は当該態様には限定されない。
内在性のGγ遺伝子を破壊した1倍体の酵母を宿主として、EGFRの細胞内ドメイン(EGFRcyto)とGrb2−Gγcytoを共発現する遺伝子組換え酵母を作製する。ここで、1倍体とは、1セットのゲノムを有する酵母の個体をいう。Grb2−Gγcytoは、EGFRcytoがリン酸化チロシン残基を有する場合にのみ、細胞膜に局在して、シグナルを下流へと伝達することができる。当該シグナル伝達経路が活性化された酵母は、有性生殖のための細胞融合、すなわち接合を引き起こす。したがって、当該遺伝子組換え酵母と接合可能な1倍体の酵母(以降、「接合パートナー」とも表記する)を、当該遺伝子組換え酵母と共培養することで、2倍体の酵母が形成される。ここで、2倍体とは、2セットのゲノムを有する酵母の個体をいう。このとき、当該遺伝子組換え酵母とは異なる選択マーカー遺伝子を、接合パートナーに予め保持させておくことで、形成される2倍体(以降、「接合体」とも表記する)の酵母を、1倍体の酵母と区別して選択することができる。
上記遺伝子組換え酵母に対して、被検化合物を添加すると、チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物では、接合体の形成が起こらず、接合体のみ生育が可能な選択圧の下では、酵母の増殖が見られない(図1B、上段)。一方、当該化合物がチロシンキナーゼ活性を阻害できなければ、接合体が形成され、上述の選択圧下では、酵母の増殖が観察される(図1B、下段)。すなわち、酵母の増殖を指標として、EGFRcytoに対するチロシンキナーゼ阻害剤をスクリーニングする。
なお、本発明の方法により得られた化合物は、細胞膜を透過することができ、かつ細胞内環境で機能することが可能な化合物である。また、上述の「接合体を生成する工程」に先んじて、被検化合物の存在下で上記遺伝子組換え酵母を培養しておくことで、細胞毒性効果のない化合物のみを取得することが可能である。さらに、上述のスクリーニングによって得られた化合物を、野生型のGγ遺伝子を有する1倍体の酵母に添加して、接合体の増殖を観察すれば、当該化合物が酵母の内在性タンパク質に作用しているか否かを判別することができる。このとき、接合体の形成を阻害しない化合物を選抜すれば、EGFRcytoのチロシンキナーゼドメインに対して、特異的に作用する化合物を取得することができる。
(参考文献)
参考文献1:Manahan CL, et.al., 2000, Mol Biol Cell.,Vol.11,957-968.
参考文献2:Fukuda N, et. al., 2009, FEBS J.,Vol.276,2636-2644.
参考文献3:Shan Y, et. al., 2012, Cell, Vol.149, 860-870.
参考文献4:Monsey J, et. al., 2010, J Biol Chem., Vol. 285, 7035-7044.
参考文献5:Zhang X, et. al., 2006, Cell.,Vol.125,1137-1149.
参考文献6:MacKay VL, et.al., 2004, Mol Cell Proteomics.,Vol.3,478-489.
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実験方法)
(1)培地の調製
1%(w/v)酵母エキストラクト、2%(w/v)ペプトンおよび2%(w/v)グルコースを含むYPD培地、0.67%(w/v)アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース(Becton Dickinson社製)及び2%(w/v)グルコースを含むSD培地で酵母を培養した。SD培地には選択マーカー遺伝子に対応するアミノ酸および核酸を適宜添加した。2%(w/v)寒天をこれらの培地に添加してYPDおよびSDの固体培地を調製した。
(2)酵母の調製
酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のメチオニン要求性a型(一倍体、a型)株BY4741(参考文献7参照)、リジン要求性α型(一倍体、α型)株BY4742(参考文献7参照)、及び以下の実施例で作製した酵母株、並びに酵母株に導入したプラスミドの情報を表1に示す。
(3)蛍光測定
配列番号4に示すアミノ酸配列を有する緑色蛍光タンパク質(以降、「GFP」とも表記する)を、GγcytoおよびGγcyto融合タンパク質、のC末端に付加して発現させることで、酵母細胞内における上記タンパク質の発現量を比較するための蛍光レポーターとして用いた。遺伝子組換え酵母を、SD培地を用いて30℃で18時間培養したのち、集菌および洗浄して滅菌水で再懸濁した。菌体濃度OD600=5.0となるように調整した酵母懸濁液100μLの蛍光強度をマイクロプレートリーダーInfinite200(Tecan Japan社製)を用いて測定した。励起フィルタセンター波長を485nm(フィルタ帯域幅20nm)に、蛍光フィルタセンター波長を535nm(フィルタ帯域幅25nm)に設定し、ゲインを50に固定して測定を行った。
(4)接合体増殖アッセイ
酵母の接合能を評価するため、a型およびα型の酵母の栄養要求性の違いを利用して、接合体のみが生育可能となるよう作成した寒天培地を用いて増殖アッセイを実施した。a型及びα型酵母株をそれぞれ初期菌体濃度OD600=0.1で1mLのYPD培地に播種し、30℃にて共培養した。菌体を回収して洗浄したのち、滅菌蒸留水に再懸濁した。1mLの酵母の懸濁液を、接合体のみが生育することができる寒天培地上に塗布して、30℃で2日間培養したのち、コロニー形成の有無およびコロニー数を調べた。測定したコロニー数を、塗布した菌体懸濁液のOD600値で除することで、OD600=1の菌体懸濁液1mL中に形成された接合体の細胞数を推算した。
(5)チロシンキナーゼに対する阻害活性の評価
野生型の市販a型一倍体酵母BY4741株及び、BY4741株を宿主として染色体上に、C末側にFP配列が付加されたEGFR(LR)cyto遺伝子、及びGrb2−Gγcyto遺伝子が相同組換えにより挿入されたa型酵母B1U−GL株を、EGFR特異的なチロシンキナーゼ阻害剤AG1478(4-(3-Chloroanilino)-6,7-dimethoxyquinazoline:Wako社製)を含むYPD培地で、18時間培養した。培養したa型酵母を、初期菌体濃度OD600=0.1で、AG1478を含むYPD培地1mLのYPD培地に播種した。さらに上記の培地に、初期菌体濃度OD600=0.1で、α型酵母BY4742株を播種して、30℃にて8時間共培養した。菌体を回収して洗浄したのち、滅菌蒸留水に再懸濁した。酵母の懸濁液を、接合体のみが生育することができる固体培地上に塗布して、30℃で2日間培養したのち、形成したコロニーの数を調べた。また、使用する培地を、AG1478を含まないYPD培地に置き換えて、同様の試験を行い、AG1478の添加が、コロニーの形成数に与える影響を評価した。
Figure 2015116171
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)ミリストイル基およびパルミトイル基が付加されたGγ cyto の発現例
(1−1)Gγ cyto 遺伝子発現プラスミドの構築
図1Bに示すように、リン酸化されたEGFRcytoとGrb2の結合によって、Gγcytoは細胞膜近傍へと誘導されるが、このときGγcytoが細胞膜に局在するエフェクターと接触できなければ、Gタンパク質シグナル伝達経路を活性化することはできない。そこで、残基数の異なるEGFRcyto由来のアミノ酸配列を複数用意し、図2Aに示すGγcyto融合タンパク質を作製することにより、Gγcytoと細胞膜との距離が、Gタンパク質シグナル伝達経路の活性化に及ぼす効果を評価した。なお、全てのGγcyto融合タンパク質に対してそのN末端にMP配列(配列番号5)を設けることで、当該配列がミリストイル化およびパルミトイル化されることにより細胞膜を構成する脂質分子と結合可能に設計した。
下記の操作において、DNA断片の連結は、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて行った。PPGK1をプライマー1(配列番号6)及びプライマー2(配列番号7)を用いて、PCRによりプラスミドpHY−PGA(参考文献8参照)を鋳型として増幅し、プラスミドpUY−GGA(参考文献9参照)のSacII−NotI部位間に挿入し、プラスミドpUY−PGA(2μori,URA3,PPGK1-EGFP)とした。続いて、EGFR遺伝子をプライマー3(配列番号8)及びプライマー4(配列番号9)を用いて、PCRによりプラスミドpco12−EGFR(文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して、理研BRCから提供された;参考文献10、11、12および13参照)を鋳型として増幅し、プラスミドpUY−PGAのNotI−SalI部位間に挿入し、EGFRを含むプラスミドpUY−EGFR−Gとした。
EGFRcytoをコードする配列を、プライマー5(配列番号10)及びプライマー6(配列番号11)を用いて、PCRによりプラスミドpUY−EGFR−Gを鋳型として増幅した。次に、Gγcyto遺伝子をプライマー7(配列番号12)及びプライマー8(配列番号13)を用いて、PCRによりプラスミドpHY−Gγc(参考文献8参照)を鋳型として増幅した。上述のように増幅した2つのDNA断片を連結して、プラスミドpUY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入し、MP配列とEGFRcyto及びGγcyto(MP−EGFRcyto−Gγcyto)を含むプラスミドpUY-EC−Gγcとした。
プラスミドpUY-EC−Gγcを鋳型として、プライマー9(配列番号14)及びプライマー8、プライマー10(配列番号15)及びプライマー8、プライマー11(配列番号16)及びプライマー8、プライマー12(配列番号17)及びプライマー8、プライマー13(配列番号18)及びプライマー8、またはプライマー14(配列番号19)及びプライマー8、を用いてDNA断片を増幅し、プラスミドpHY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入し、それぞれMP配列とGγcytoとの間に長さを変えたEGFRのC末側のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を発現可能なGγcプラスミドpHY−EC22−Gγc、pHY−EC50−Gγc、pHY−EC108−Gγc、pHY−EC201−Gγc、pHY−EC300−Gγc、およびpHY−EC401−Gγcとした。
さらに、これら融合タンパク質のそれぞれに蛍光マーカーのEGFPを融合させるために、プラスミドpUY-EC−Gγcを鋳型として、プライマー9及びプライマー15(配列番号20)、プライマー10及びプライマー15、プライマー11及びプライマー15、プライマー12及びプライマー15、プライマー13及びプライマー15、またはプライマー14及びプライマー15、を用いてDNA断片を増幅し、プラスミドpHY−PGAのNotI−SalI部位間に挿入し、それぞれプラスミドpHY−EC22−GγcG、pHY−EC50−GγcG、pHY−EC108−GγcG、pHY−EC201−GγcG、pHY−EC300−GγcG、およびpHY−EC401−GγcGとした。
(1−2)遺伝子組換え酵母の接合体増殖アッセイ
宿主細胞としてa型表現型を示す一倍体酵母であるMCF−B1L(表1)を選択し、pHY−Gγc、pHY−MP−Gγc、pHY−EC22−Gγc、pHY−EC50−Gγc、pHY−EC108−Gγc、pHY−EC201−Gγc、pHY−EC300−Gγc、あるいはpHY−EC401−Gγc(表1)を酢酸リチウム法(参考文献14参照)により導入した遺伝子組換え酵母を作製した。各遺伝子組換え酵母を接合パートナーとしてα型表現型を示す一倍体酵母BY4742と1.5時間共培養して、接合体増殖アッセイを行った。各遺伝子組換え酵母から形成された接合体の数(OD600=1の菌体懸濁液1mL中に形成された接合体の細胞数)の測定結果を図2Bに示す。図中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。
Gγcytoを単独で発現すると、細胞膜に局在できないため(参考文献8参照)、接合体は全く形成されなかった。一方、MP−Gγcytoは細胞膜に局在するため(参考文献8参照)、該融合タンパク質を発現する遺伝子組換え酵母は接合体を形成した。MP配列とGγcytoとの間に、EGFR由来のアミノ酸配列を挿入した、Gγcyto融合タンパク質を発現する遺伝子組換え酵母では、挿入したアミノ酸配列の長さに応じて、接合体の形成数が変化した。EC22−GγcytoまたはEC50−Gγcytoの場合では、MP−Gγcytoの場合と比べて、6〜7倍多くの接合体を形成した。EC108−Gγcyto、あるいはEC201−Gγcytoを発現する遺伝子組換え酵母は接合体を形成したが、挿入したアミノ酸配列が長くなるにともなって、接合体の形成数が減少することが明らかとなった。EC300−GγcytoあるいはEC401−Gγcytoを発現する遺伝子組換え酵母では、接合体を全く形成しなかった。
(1−3)Gγ cyto 融合タンパク質の発現量の比較
(1−2)で用いたa型のMCF−B1Lを宿主細胞として選択し、(1−2)で用いた各ベクターとはEGFP遺伝子を含む点でのみ異なるpHY−GγcG、pHY−MP−GγcG、pHY−EC22−GγcG、pHY−EC50−GγcG、pHY−EC108−GγcG、pHY−EC201−GγcG、pHY−EC300−GγcG、あるいはpHY−EC401−GγcG(表1)を酢酸リチウム法により導入した遺伝子組換え酵母を創製した。各遺伝子組換え酵母をSD培地で18時間培養して、各遺伝子組換え酵母の蛍光強度を測定した結果を図2Cに示す。C末端に付加したGFPの蛍光を指標として、各融合タンパク質の発現量を比較した。図中の破線は、宿主細胞の自家蛍光の値を示し、エラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。
この結果、Gγcytoが最も発現量が高く、MP配列を付加することで発現量が半減することが示された。また、EC22−Gγcyto、EC50−Gγcyto、およびEC108−Gγcytoは、MP−Gγcytoと同レベルの発現量を示したが、EC201−Gγcyto、EC300−Gγcyto、およびEC401−Gγcytoでは、アミノ酸残基数が増加するにともなって発現量が低下した。ただし、EC401−Gγcytoを発現する遺伝子組換え酵母でさえも、自家蛍光に比べて明らかに高い蛍光強度を示したことから、全てのGγcyto融合タンパク質が酵母の細胞内で発現していることが示唆される。また、EC50−Gγcyto、およびEC108−Gγcytoは同レベルの発現量を示したにもかかわらず、接合体増殖アッセイにおいて、形成された接合体の数が大きく異なった(図2B)。このことより、MP配列とGγcytoの間のアミノ酸残基数の増加が、Gβとエフェクターとの接触の障害となっており、かかるアミノ酸残基数が300を超えると、Gγcytoが細胞膜へ誘導された場合でも、Gタンパク質シグナル伝達経路を活性化することができなくなることが明らかとなった。
図2Aに示すEGFRcyto(541残基)のうち、Grb2が認識するリン酸化チロシン残基は、当該タンパク質のN末端から数えて423番目の残基であり、EGFRcytoのN末端を細胞膜に結合させると、かかる残基が細胞膜から遠い位置に存在することになり、Gβγcytoとエフェクターとの接触を阻害する可能性が高い。一方、かかる残基は、C末端から数えた場合は119番目の残基であり、EGFRcytoのC末端を細胞膜に結合させれば、かかる残基を細胞膜近傍領域に配置することができ、それによってGrb2をより細胞膜近傍へと誘導して、Gβγcytoとエフェクターとの接触を円滑化できると予想された。
そこで、次の実施例2では、EGFRcytoのC末端にFP配列を付加して、かかる配列のファルネシル化およびパルミトイル化によって、EGFRcytoを細胞膜に局在させることを試みた。
(実施例2)恒常活性型変異体EGFR(LR) cyto の発現例
(2−1)EGFR cyto 遺伝子およびGRB2遺伝子発現プラスミドの構築
本実施例で遺伝子組換え酵母に発現させるEGFRcytoおよびGrb2−Gγcytoの模式図を図3Aに示す。ここで、EGFR(WT)cytoは「野生型EGFRの細胞内ドメイン」を、EGFR(LR)cytoは「恒常的に二量体を形成してリン酸化チロシン残基を有する変異体」である「L834R変異体(参考文献5)」を、EGFR(KA)cytoは「チロシンキナーゼ活性をもたない変異体」である「K721A変異体(参考文献15)」を指す。なお各タンパク質は、C末端のFP配列(配列番号21)が脂質修飾されることにより、細胞膜に局在することができる。
EGFRcyto遺伝子をプライマー16(配列番号22)及びプライマー17(配列番号23)を用いて、PCRによりプラスミドpUY-EC−Gγcを鋳型として増幅し、プラスミドpUY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入し、EGFR(WT)cytoを発現可能なプラスミドpUY−EC−WTとした。続いて、プラスミドpUY-EC−WTを鋳型として、それぞれプライマー16及びプライマー18(配列番号24)、およびプライマー19(配列番号25)及びプライマー17を用いて、EGFR遺伝子を2つのDNA断片に分けて増幅し、プラスミドpUY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入して、EGFR(LR)cytoを発現可能なプラスミドpUY−EC−LRとした。さらに、プラスミドpUY-EC−WTを鋳型として、それぞれプライマー16及びプライマー20(配列番号26)、プライマー21(配列番号27)及びプライマー17を用いて、EGFR遺伝子を2つのDNA断片に分けて増幅し、プラスミドpUY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpUY−EC−KAとした。
次に、ヒトゲノムDNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を鋳型として、それぞれプライマー22(配列番号28)及びプライマー23(配列番号29)、プライマー24(配列番号30)及びプライマー25(配列番号31)、プライマー26(配列番号32)及びプライマー27(配列番号33)、プライマー28(配列番号34)及びプライマー29(配列番号35)、プライマー30(配列番号36)及びプライマー31(配列番号37)を用いて、増幅した5つのDNA断片を結合して、GRB2遺伝子を構成し、プラスミドpHY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpHY−Grb2とした。
さらに、プラスミドpHY−Grb2を鋳型として、プライマー22及びプライマー32(配列番号38)を用いて、GRB2遺伝子を増幅した。続いて、プラスミドpHY−Gγcytoを鋳型として、プライマー7及びプライマー8を用いて、Gγcyto遺伝子を増幅した。増幅したGRB2遺伝子及びGγcyto遺伝子を連結して、プラスミドpHY−PGAのNotI−BamHI部位間に挿入して、Grb2−Gγcyto融合タンパクを発現可能なプラスミドpHY−GrGとした。
(2−2)遺伝子組換え酵母の接合体増殖アッセイ
MCF−B1Lを宿主細胞として選択し、図3Bに示す組み合わせで、EGFRcytoおよび/またはGrb2−Gγcytoを発現する遺伝子組換え酵母を創製した。各遺伝子組換え酵母を接合パートナーBY4742と1.5時間共培養して、接合体増殖アッセイを行った。各遺伝子組換え酵母から形成された接合体の数(OD600=1の菌体懸濁液1mL中に形成された接合体の細胞数)の測定結果を図3Bに示す。図中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。
この結果、EGFR(LR)cytoおよびGrb2−Gγcytoを共発現する遺伝子組換え酵母のみが接合体を形成可能であることが明らかとなった。すなわち、図1Bに示すように、EGFRcytoがリン酸化チロシン残基を有する場合にのみ、遺伝子組換え酵母のGタンパク質シグナル伝達経路を活性化させることに成功した。
上述の遺伝子組換え酵母では、EGFR(LR)cytoおよびGrb2−Gγcytoを発現させるために、2つのYEp型プラスミド、pUY−EC−LRおよびpHY−GrG、を導入している。かかる細胞は、一方または両方のプラスミドを失うと、シグナル応答が得られなくなる。YEp型プラスミドは、酵母1細胞当たりに数十コピー導入することが可能であり、導入した遺伝子を高発現させることが可能であるが、プラスミドの脱落が生じるため、長期的には、表現型の安定性の面において問題がある。そこで、上述の遺伝子を酵母の染色体に組み込むことで、EGFR(LR)cytoおよびGrb2−Gγcytoを安定的に発現する、遺伝子組換え酵母の作製を試みた。
(2−3)染色体組込み型の遺伝子組換え酵母の作製
BY4741株の染色体DNAを鋳型として、THIS3をプライマー33(配列番号39)及びプライマー34(配列番号40)を用いて、PHIS3をプライマー35(配列番号41)及びプライマー36(配列番号42)を用いて、PCRにより増幅し、プラスミドpHY−GrGのSpeI部位間に挿入して、プラスミドpHY−GrG−Hptとした。
続いて、pUY−PGAを鋳型として、URA3遺伝子をプライマー37(配列番号43)及びプライマー38(配列番号44)を用いて、PCRにより増幅した。また、BY4741株の染色体DNAを鋳型として、PSTE18をプライマー39(配列番号45)及びプライマー40(配列番号46)を用いて、TSTE18をプライマー41(配列番号47)及びプライマー42(配列番号48)を用いて、PCRにより増幅した。増幅したURA3遺伝子、PSTE18、およびTSTE18をプラスミドpK6(参考文献9参照)のPvuII−SacII部位間に挿入して、プラスミドpUG−USptとした。さらに、プラスミドpUY−EC−LRを鋳型として、PPGK1−EGFR(LR)cyto−TADH1を、プライマー43(配列番号49)及びプライマー44(配列番号50)を用いて、PCRにより増幅し、プラスミドpUG−USptのXhoI−SacII部位間に挿入して、プラスミドpUG−USpt−LRとした。
相同組換えを用いて、EGFR(LR)cyto遺伝子およびGrb2−Gγcyto遺伝子を、酵母の染色体に導入する方法の概略を図4Aに示す。
プラスミドpHY−GrG−HptをSpeIで消化して作成したDNA断片を用いて、MCF−B1L株を宿主として、酢酸リチウム法により遺伝子組換え酵母を作製した。遺伝子組換え酵母は、ヒスチジンを欠くSD培地で選択し、Grb2−Gγcytoを安定的に発現するB1L−GrG株(表1)を得た。さらに、プラスミドpUG−USpt−LRをSpeIで消化して作成したDNA断片を用いて、B1L−GrG株を酢酸リチウム法により形質転換した。遺伝子組換え酵母は、0.2mg/mLのジェネティシン(G418)を含むYPD培地で選択し、恒常的二量体化によりチロシン基がリン酸化された状態のEGFR(LR)cyto及びGrb2−Gγcytoを安定的に共発現するB1U−GL株(表1)を得た。
(2−4)染色体組込み型遺伝子組換え酵母の接合体増殖アッセイ
B1L−GrGまたはB1U−GLを、接合パートナーBY4742と、8時間共培養して、滅菌水で洗浄したのち、接合体のみが生育可能なSD固体培地に塗布して、30℃で2日間培養した。図4Bは、B1L−GrG(EGFRcytoを発現しない遺伝子組換え酵母)とBY4742を塗布して、2日間培養した固体培地の写真であり、接合体のコロニーは全く形成されなかった。一方、図4Cは、B1U−GL(EGFR(LR)cytoを発現する遺伝子組換え酵母)とBY4742を塗布して、2日間培養した固体培地の写真であり、接合体のコロニー形成が観察された。
さらに、各染色体組込み型遺伝子組換え酵母から形成された接合体の数(OD600=1の菌体懸濁液1mL中に形成された接合体の細胞数)の測定結果を図4Dに示す。図中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。この結果、プラスミドを用いた場合と同様に、EGFR(LR)cyto遺伝子およびGrb2−Gγcyto遺伝子を、酵母の染色体に導入することで、EGFRcytoのチロシンキナーゼ活性により、Gタンパク質シグナル伝達経路の活性化が可能であることを確認した。
(実施例3)AG1478を用いたEGFRチロシンキナーゼ活性の阻害例
(3−1)AG1478濃度の検討
B1U−GLを、既知のEGFR特異的チロシンキナーゼ阻害剤AG1478(4-(3-Chloroanilino)-6,7-dimethoxyquinazoline)を含む培地で、18時間培養した。培養した酵母とBY4742を、AG1478を含む新鮮培地に播種して、30℃にて8時間共培養し、固体培地上に塗布して30℃で2日間培養した。形成した接合体コロニーの数を調べた結果を図5Aに示す。この結果、AG1478の用量依存的に、接合体数が減少することを確認した。また、終濃度20μMのAG1478を添加した場合、接合体がほとんど形成されなかった。
(3−2)AG1478が酵母の内在タンパク質に及ぼす効果の判定
BY4741またはB1U−GLに対して、0または20μMのAG1478を添加して、接合体増殖アッセイを行った。各条件で形成した接合体のコロニー数を測定し、それぞれ、AG1478を添加しない場合の値を100%として、AG1478の添加が接合体形成に与える効果を調べた。測定結果を図5Bに示す。
20μMのAG1478を添加した場合、BY4741では接合体の形成が阻害されなかったが、B1U−GLでは、接合体の形成数が0.6%以下に減少した。この結果より、AG1478は、酵母の内在タンパク質に対してではなく、EGFRcytoのチロシンキナーゼに作用して、Gタンパク質シグナル伝達を阻害することが示された。
(参考文献)
参考文献7:Brachmann CB, et. al., 1998, Yeast. Vol14,115-132.
参考文献8:Fukuda N, et. al.,2013,PLoS One Vol.26,e70100.
参考文献9:Fukuda N, et. al.,2013,ACS Synth.Biol.,DOI: 10.1021/sb400016j
参考文献10:Velu TJ, et. al., 1989,J Cell Biochem.,Vol.39,153-166.
参考文献11:Shigesada K, et. al., 1985,Mol Cell Biol.,Vol.5,1735-1742.
参考文献12:Clark AJ, et. al., 1986,Biochim Biophys Acta.,Vol.867,244-251.
参考文献13:Velu TJ, et. al., 1987,Science.,Vol.238,1408-1410.
参考文献14:Gietz D, et. al., 1992, Nucleic Acids Res. Vol20,1425.
参考文献15:Honegger AM, et. al., 1989, Proc Natl Acad Sci USA. Vol 86,925-929.
本発明によれば、RTKを標的としたチロシンキナーゼ阻害剤に対する、簡便かつ迅速なハイスループット・スクリーニングが可能となる。本発明の方法により、取得された薬剤候補物質は、細胞膜を透過し、必要な期間、細胞内環境で機能することが可能であり、上記受容体を分子標的とした抗癌剤開発における、創薬シード化合物として利用することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号1 :EGFR(Homo Sapiens)
配列番号2 :Grb2(Homo Sapiens)
配列番号3 :Gγcyto(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号4 :GFP
配列番号5 :MP配列(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号6 :プライマー1(F)PPGK1増幅
配列番号7 :プライマー2(R)PPGK1増幅
配列番号8 :プライマー3(F)EGFR遺伝子増幅
配列番号9 :プライマー4(R)EGFR遺伝子増幅
配列番号10:プライマー5(F)EGFRcyto遺伝子増幅
配列番号11:プライマー6(R)EGFRcyto遺伝子増幅
配列番号12:プライマー7(F)Gγcyto遺伝子増幅
配列番号13:プライマー8(R)Gγcyto遺伝子増幅
配列番号14:プライマー9(F)EC22−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号15:プライマー10(F)EC50−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号16:プライマー11(F)EC108−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号17:プライマー12(F)EC201−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号18:プライマー13(F)EC300−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号19:プライマー14(F)EC401−Gγcyto遺伝子増幅
配列番号20:プライマー15(R)Gγcyto遺伝子増幅
配列番号21:FP配列(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号22:プライマー16(F)EGFRcyto遺伝子増幅
配列番号23:プライマー17(R)EGFRcyto遺伝子増幅
配列番号24:プライマー18(R)EGFR(LR)cyto遺伝子増幅
配列番号25:プライマー19(F)EGFR(LR)cyto遺伝子増幅
配列番号26:プライマー20(R)EGFR(KA)cyto遺伝子増幅
配列番号27:プライマー21(F)EGFR(KA)cyto遺伝子増幅
配列番号28:プライマー22(F)GRB2遺伝子エクソン1増幅
配列番号29:プライマー23(R)GRB2遺伝子エクソン1増幅
配列番号30:プライマー24(F)GRB2遺伝子エクソン2増幅
配列番号31:プライマー25(R)GRB2遺伝子エクソン2増幅
配列番号32:プライマー26(F)GRB2遺伝子エクソン3増幅
配列番号33:プライマー27(R)GRB2遺伝子エクソン3増幅
配列番号34:プライマー28(F)GRB2遺伝子エクソン4増幅
配列番号35:プライマー29(R)GRB2遺伝子エクソン4増幅
配列番号36:プライマー30(F)GRB2遺伝子エクソン5増幅
配列番号37:プライマー31(R)GRB2遺伝子エクソン5増幅
配列番号38:プライマー32(R)GRB2遺伝子増幅
配列番号39:プライマー33(F)THIS3増幅
配列番号40:プライマー34(R)THIS3増幅
配列番号41:プライマー35(F)PHIS3増幅
配列番号42:プライマー36(R)PHIS3増幅
配列番号43:プライマー37(F)URA3遺伝子増幅
配列番号44:プライマー38(R)URA3遺伝子増幅
配列番号45:プライマー39(F)PSTE18増幅
配列番号46:プライマー40(R)PSTE18増幅
配列番号47:プライマー41(F)TSTE18増幅
配列番号48:プライマー42(R)TSTE18増幅
配列番号49:プライマー43(F)PPGK1−EGFR(LR)cyto−TADH1増幅
配列番号50:プライマー44(R)PPGK1−EGFR(LR)cyto−TADH1増幅

Claims (16)

  1. 遺伝子組換え酵母を用いた受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるチロシンキナーゼ阻害剤をスクリーニングする方法が、
    恒常的にリン酸化しているチロシン残基を細胞膜近傍領域内に有しているRTK細胞内ドメイン(RTKcyto)が細胞膜に局在して発現し、かつ同時に、前記リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質と、単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体とを含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え酵母を用いることを特徴とする方法であって、
    前記遺伝子組換え酵母に被検物質を接触させる工程、及び当該酵母におけるGタンパク質シグナル伝達の応答量の減少もしくは消失を判定する工程を含む方法。
  2. 前記遺伝子組換え酵母が、下記(1)〜(3)の工程により調製されている遺伝子組換え酵母であることを特徴とする、請求項1に記載の方法;
    (1)RTK細胞内ドメインのいずれかの末端に付加されている細胞膜局在化配列、及びリン酸化し得るチロシン残基を細胞膜近傍領域に有しているRTK細胞内ドメインを含む第1の融合タンパク質を発現する第1の発現カセットを調製する工程、
    (2)リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質、及び単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体を含む第2の融合タンパク質を発現可能な第2の発現カセットを調製する工程、
    (3)前記第1及び第2の発現カセットを酵母宿主に導入し、得られた遺伝子組換え酵母を培養する工程。
  3. 前記工程(1)の「細胞膜局在化配列」が脂質修飾シグナルペプチド、細胞膜貫通ドメイン、及び細胞膜構造タンパク質結合性ペプチドから選択されたペプチドであって、前記RTK細胞内ドメインが有しているリン酸化し得るチロシン残基の位置が、前記「細胞膜局在化配列」が付加している側の最初のアミノ酸残基から数えて300アミノ酸残基未満のいずれかの位置である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(3)において、第1及び第2の発現カセットの少なくとも一方を酵母宿主に導入する方法が、相同組換えにより染色体中に導入する方法であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記遺伝子組換え酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属し、選択性マーカーを少なくとも1つ保持する一倍体酵母であって、
    当該酵母における被検物質の接触後のGタンパク質シグナル伝達の応答量の減少もしくは消失を判定する工程が、以下の工程(4)及び(5)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法;
    (4)被検物質接触後の前記組換え酵母を、当該酵母と接合可能な型の野生型一倍体酵母と共に接合体のみが生育可能な選択培地で培養する工程、
    (5)培養後の組換え酵母の増殖能の減少もしくは消失を、被検物質を接触させない場合の増殖能との比較により判定する工程。
  6. 前記RTKが、そのアミノ酸配列内に恒常的に二量体化を引き起こす変異を有するRTK変異体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記工程(1)の第1の発現カセットが、第1の融合タンパク質をコードする遺伝子配列と共に、二量体化ドメインの一方及び他方をコードする遺伝子配列のそれぞれが含まれるように構築された2種類の発現カセットからなることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
  8. 前記RTKが、上皮増殖因子受容体(EGFR)である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記EGFRが、そのアミノ酸配列における834位ロイシン残基がアルギニン残基に置換されており、恒常的に二量体を形成するL834R変異体である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記アダプタータンパク質がGrb2である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のスクリーニング方法で用いることのできる遺伝子組換え酵母であって、
    恒常的にリン酸化しているチロシン残基を細胞膜近傍領域内に有しているRTK細胞内ドメインが細胞膜に局在して発現しており、かつ前記リン酸化チロシン残基を認識するアダプタータンパク質と、単独では細胞膜に局在することができないGタンパク質γサブユニット変異体とを含む融合タンパク質を発現していることを特徴とする、遺伝子組換え酵母。
  12. 前記遺伝子組換え酵母が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属し、選択性マーカーを少なくとも1つ保持する一倍体酵母であることを特徴とする、請求項11に記載の遺伝子組換え酵母。
  13. 前記遺伝子組換え酵母が、さらに、シグナル応答性のプロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現することが可能な遺伝子組換え酵母であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の遺伝子組換え酵母。
  14. 受容体チロシンキナーゼ(RTK)におけるチロシンキナーゼ阻害剤を同定、又はスクリーニングするためのキットであって、請求項11〜13のいずれかに記載の遺伝子組換え酵母を含むキット。
  15. 以下の(a)〜(c)を含む請求項14に記載のキット;
    (a)請求項12に記載の遺伝子組換え酵母、
    (b)前記酵母と異なる接合型の一倍体酵母、
    (c)接合体のみが生育可能な選択用培地。
  16. 以下の(a)及び(b)を含む請求項14に記載のキット;
    (a)請求項13に記載の遺伝子組換え酵母、
    (b)前記酵母細胞内でのレポーター遺伝子発現量を測定するための装置。
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