JP2015105510A - 地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より確実且つ効果的に、地中免震壁構造の長期安定性を確保でき、地震時の開削トンネルなどの地中構造物の応力低減を図ることが可能な地中構造物の免震構造及びこの地中構造物の免震構造の構築方法を提供する。【解決手段】非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状または柱状で、且つ液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築された地中免震壁4を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、地震時に地中構造物の変形、浮き上がり等を防止するための地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法に関する。
従来、開削トンネルなどの地中構造物の地震時の応力低減を目的として地中構造物の免震構造(地盤変位吸収免震構造)を採用することが提案、実用化されている。
この種の地中構造物の免震構造には、地中構造物に沿って連続的に地中免震壁を設置して構成したものがある。また、この種の地中構造物の免震構造は、作用する土圧に十分に抵抗でき、長期的安定性を確保できる材料を用いて地中免震壁を構築するとともに、免震効果を発揮するために剛性が小さい材料を用いて構築することが求められ、これら相反する条件をバランスよく設定し、所望の免震性能を発揮できるようにすることが重要になる。
これに対し、本願の出願人(発明者ら)は、地中免震壁の長期安定性を確保でき、且つ確実に地震時の開削トンネルなどの地中構造物の応力低減を図ることができる地中構造物の免震構造(地盤変位吸収免震構造)についての特許出願を既に行っている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
そして、特許文献1、特許文献2では、図16に示すように、周辺地盤1と地中構造物2の間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなる壁状の免震層(地中免震壁)3を設置して地中構造物の免震構造を構成している。
また、地中免震壁を構成する粘土系材料として、ベントナイトと水の混合物、あるいはベントナイトと骨材(砂礫等の土質材料あるいはガラスビーズ等の長期変質しにくい人工材料)と水の混合物を用いる。
さらに、地中免震壁を構成する粘土系材料におけるベントナイトと水の混合物からなる材料で満たされている領域がベントナイト有効乾燥密度で300〜1200kg/m3となるようにする。
また、粘性土系材料としてベントナイトと骨材(砂礫等の土質材料あるいはガラスビーズ等の長期変質しにくい人工材料)と水の混合物を用いた場合においても、この粘土系材料におけるベントナイトと水で満たされている領域がベントナイト有効乾燥密度で300〜1200kg/m3となるようにする。
これらの本願の出願人(発明者ら)の創意工夫により、より効果的に、地中免震壁の長期安定性を確保でき、地震時の開削トンネルなどの地中構造物の応力低減を図ることが可能な地中構造物の免震構造を実現することができる。
ここで、非特許文献1には、図17に示すように、地中免震壁の材料のせん断波速度Vsの周辺地盤のせん断波速度に対する比(Vs比)が小さいほど、躯体部(地中構造物)のせん断力の低減率(対策後/対策前)が小さくなるので免震効果が大きくなることが示されている。
張至鎬、福武毅芳他、「ベントナイトを用いた地中構造物の免震壁構造の検討(その2:FEM解析による免震効果の考察)」、土木学会第65回年次学術講演会、平成22年9月
しかしながら、上記の特許文献1の地中構造物の免震構造では、トンネル状の水路や交通路の地中構造物が地震時に液状化しやすい砂地盤に構築されている場合等に対し、図18及び図19に示すような地中構造物の横ずれや浮き上りの防止効果が十分に発揮されないおそれがあることが分かった。
また、特許文献3の地中構造物の免震構造では、地中構造物の浮き上がりを効果的に抑止できるものの、地中構造物に作用する地震力の低減効果が十分でなく、横ずれなどの変位の防止効果が十分に発揮されないおそれがあることが分かった。
また、本願の発明者らによる研究により、例えば周辺地盤のせん断波速度Vsを100m/sとすると、図20に示すように、せん断波速度Vsが20m/sのベントナイト材料を作ることはできるが、図21に示すように、その乾燥密度ρdのベントナイト材料の膨張圧は0.03MPaを下回るため、周辺地盤から受ける側圧に比べて小さくなってしまうことが確認された。
このため、吸水膨張圧による地中免震壁の長期安定性を確保するため、その材料のさらなる改善が強く望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑み、より確実且つ効果的に、地中免震壁構造の長期安定性を確保でき、地震時の開削トンネルなどの地中構造物の応力低減を図ることが可能な地中構造物の免震構造及びこの地中構造物の免震構造の構築方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の地中構造物の免震構造は、非液状化層の上に液状化層を備えた地盤の前記液状化層中に構築される地中構造物と該地中構造物の周辺地盤との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状または柱状で、且つ前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築された地中免震壁を備えて構成されていることを特徴とする。
本発明の地中構造物の免震構造は、非液状化層の上に液状化層を備えた地盤の前記液状化層中に構築される地中構造物と該地中構造物の周辺地盤との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状または柱状に構築された地中免震壁と、前記地中免震壁に沿って構築されるとともに、前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築された前記地中免震壁よりも高剛性の地中仕切り壁とを備えて構成されていることを特徴とする。
また、本発明の地中構造物の免震構造においては、前記地中仕切り壁が前記地中構造物側の側面と前記免震壁との間、あるいは前記地中免震壁の外側に構築されていることが望ましい。
さらに、本発明の地中構造物の免震構造においては、前記地中仕切り壁が、少なくとも一部を前記地中免震壁の内部に埋設して構築されていてもよい。
また、本発明の地中構造物の免震構造においては、前記地中仕切り壁が、前記地中構造物側の外側側面に近接して構築される第1地中仕切り壁と、前記地中構造物の外側の第1地中仕切り壁よりも外側に構築される第2地中仕切り壁とを備え、前記第1地中仕切り壁が前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築され、前記第2地中仕切り壁が下端を前記液状化層に配し、前記第1地中仕切り壁よりも浅い深度で構築され、前記地中免震壁が前記第1地中仕切り壁と前記第2地中仕切り壁の間に配される深度で構築されていてもよい。
さらに、本発明の地中構造物の免震構造においては、前記地中免震壁に作用する側方土圧を、鉛直土圧に対する割合である側方土圧係数を用いて設定し、設定した前記側方土圧にバランスする吸水膨張圧、または、設定した前記側方土圧以上の前記粘土系材料によって前記地中免震壁が構築されていることがより望ましい。
また、本発明の地中構造物の免震構造においては、前記粘土系材料が、ベントナイトと骨材からなる混合材料であり、前記混合材料の自重及び水中重量を、ベントナイトを100%配合した材料の自重及び水中重量よりもそれぞれ大きくし、前記地中免震壁の土被り圧が前記地盤の土被り圧にバランスする前記混合材料、または、前記地中免震壁の土被り圧が前記地盤の土被り圧以上である前記混合材料からなることが望ましい。
さらに、本発明の地中構造物の免震構造においては、予め設定したベントナイト配合率を用いて前記混合材料の湿潤重量と水中重量を計算し、この水中重量を深さ方向に積分した値を前記粘土系材料の鉛直土圧として求め、前記地中免震壁が、この鉛直土圧と前記地盤の鉛直土圧の接近度合いに基づいて設計した前記混合材料からなることがより望ましい。
また、本発明の地中構造物の免震構造においては、ベントナイトに混合する骨材として粒子密度が大きい骨材を使用し、前記地中免震壁を構成する前記粘土系材料の水中重量を大きくしてもよい。
本発明の地中構造物の免震構造の構築方法は、前記地中仕切り壁を構築し、前記地中仕切り壁の間の前記液状化層の地盤を所定の深度まで開削して前記地中構造物を構築し、前記地中免震壁を構築するとともに前記地中構造物を埋設するように前記液状化層の地盤を埋め戻すことを特徴とする。
また、本発明の地中構造物の免震構造の構築方法においては、前記地中構造物側の外側側面に近接して前記第1地中仕切り壁を構築し、前記第1地中仕切り壁の外側の第1地中仕切り壁よりも外側に前記第2地中仕切り壁を構築し、前記第1地中仕切り壁と前記第2地中仕切り壁の間の前記液状化層の地盤を掘削し、吸水膨潤性を有する粘土系材料と置換して前記地中免震壁を構築することが望ましい。
本発明の地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法においては、より確実且つ効果的に、地中免震壁構造の長期安定性を確保でき、地震時の開削トンネルなどの地中構造物の応力低減を図ることが可能な地中構造物の免震構造及びこの地中構造物の免震構造の構築方法を実現することが可能になる。
[第1実施形態]
以下、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。
以下、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。
はじめに、本実施形態の地中構造物2は、図1に示すように、ボックスカルバート(開削トンネル)などの鉄筋コンクリート製の構造物であり、上層地盤の液状化層1aに埋設された状態で所定方向に延びて構築されている。地中構造物2が埋設される上層地盤の液状化層1aは、弾性波速度Vsが例えば100〜200m/sの軟弱地盤であり、弾性波速度Vsが例えば300〜500m/sの下層地盤の非液状化層1bの上に存在している。
そして、本実施形態の地中構造物の免震構造Aは、開削トンネルなどの地中構造物2に作用する地震時の応力を低減するためのものであり、非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に地中免震壁4を設けて構成されている。また、本実施形態の地中免震壁4は、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状で、且つ液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築されている。
より具体的に、本実施形態では、地中構造物2と周辺地盤1の上層地盤の液状化層1aとの間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなる略鉛直の壁状の地中免震壁4を設置する。地中免震壁4は、所定の壁幅t(図1参照)を有し、地中構造物2の左右両側に接した状態で配置され、地中構造物2の延長方向に連続する壁状に構築されている。また、この地中免震壁4は、数十cm〜数m程度、下端部分の所定の長さを下層地盤の非液状化層1bに根入れして構築されている。なお、地中免震壁4は、延設される地中構造物2の全長にわたって設けられることに限定されず、延長方向に部分的に設けられていてもよい。
また、地中免震壁4は、地震時に繰り返し応力がかかると、履歴減衰によって地震エネルギーを吸収して塑性変形し、地震が終わると元に戻る特性を有する粘土系材料を用いて構築され、この粘土系材料として、ベントナイトと水の混合物(第1混合物)、あるいはベントナイトと骨材と水との混合物(第2混合物)が用いられている。
そして、第1混合物からなる材料で満たされている領域は、ベントナイト有効乾燥密度で300〜1200kg/m3で、また、第2混合物からなる材料において、ベントナイトと水で満たされている領域は、ベントナイト有効乾燥密度(ベントナイトと骨材を混合した材料の場合で、骨材間隙を満たしているベントナイト部分の密度を乾燥密度で示した値)で300〜1200kg/m3となるようにして、地中免震壁4が構成されている。第2混合物の骨材としては、砂や砂礫などの土質材料、或いはガラスビーズなどの長期変質しにくい人工材料を採用することができる。
なお、上記の第1混合物で骨材が入っていない材料の場合は、ベントナイト密度のみなのでベントナイト乾燥密度であるが、以下「ベントナイト有効乾燥密度」と統一して表記する。
なお、上記の第1混合物で骨材が入っていない材料の場合は、ベントナイト密度のみなのでベントナイト乾燥密度であるが、以下「ベントナイト有効乾燥密度」と統一して表記する。
また、地中免震壁4の壁幅tは、0.2〜2.5mであることが好ましく、より好ましくは0.25〜1.0mである。なお、施工的には、地中免震壁4の壁幅tを一般的な施工装置の使用が可能な0.5〜1.0mにすることが好ましい。
次に、上記構成からなる本実施形態の地中構造物の免震構造Aの作用及び効果について説明する。
図1に示すように、本実施形態の地中構造物の免震構造Aでは、上記のように選定した粘性土系材料を用いて、略鉛直の壁状に構築した地中免震壁4を備えていることで、地中構造物2への応力低減効果を大きくすることができる。このとき、粘土系材料は周囲の上層地盤の液状化層1aに対し0.6倍以下の剛性にすると、地中構造物2のせん断力低減効果が効果的に得られ、これにより、地震時の地盤1の変形を緩和することができ、優れた免震効果を発揮する。
さらに、本実施形態の地中構造物の免震構造Aでは、地中免震壁4の粘土系材料がベントナイトと水の第1混合物、或いはベントナイトと骨材と水の第2混合物である場合に、ベントナイト有効乾燥密度を調整することにより、所定の膨潤圧を発揮させることができる。このため、周囲の地盤1から受ける常時の土圧に抵抗する反力を比較的容易に確保することができる。
例えば、第1混合物の場合で、ベントナイトと水で満たされている領域がベントナイト有効乾燥密度の値で300〜1200kg/m3の範囲である場合には、吸水膨潤圧が0.03〜0.3MPaとなる。これにより、地盤1(液状化層1a)の水中質量を約1g/cm3、側方土圧が土被り圧の1倍とすると、深さ30mまでの土圧に耐えることができる。
また、ベントナイトのせん断剛性においても、ベントナイト有効乾燥密度によって異なる特性を示す。これは、骨材体積が材料中に占める割合が5割以下である場合には、骨材粒子相互が接触して相互に応力を伝達する粒子構造とはならずに、骨材と骨材との間にベントナイトゲル(ベントナイトと水の混合物)が介在しているので、材料のせん断特性はベントナイトゲルの特性によって主として決まることに起因している。
したがって、ベントナイト有効乾燥密度を調整することにより、当接材料のせん断剛性を周囲の地盤より小さくすることができ、地震時の繰り返し変形により地盤変形を吸収し、躯体への悪影響を軽減して、外力を吸収する効果を期待することが可能になる。
したがって、ベントナイト有効乾燥密度を調整することにより、当接材料のせん断剛性を周囲の地盤より小さくすることができ、地震時の繰り返し変形により地盤変形を吸収し、躯体への悪影響を軽減して、外力を吸収する効果を期待することが可能になる。
さらに、本実施形態の地中構造物の免震構造A、ひいては本実施形態の地中免震壁4は、ベントナイトの吸水膨張特性を十分に活用することを特徴としている。このため、地下水位が高い地盤環境下においても容易に施工することが可能である。すなわち、周囲の地盤1が完全に乾燥していない湿潤状態であれば、ベントナイトの保水能力が維持できるので、特段、管理を要することなく、壁幅tと材料密度を長期間、好適な状態で維持することが可能になる。また、地中免震壁4として、無機系の天然鉱物である粘性土系材料を用いるため、この点からも、周囲への環境上の影響を懸念する必要がない。
また、地中免震壁4の材料は、豊浦砂の結果と比較し、剛性がかなり小さく、地震時(繰り返しせん断時)にヒステリシスを描くので、エネルギー吸収による履歴減衰材料(ダンパー材料)として適している。この履歴減衰効果は、ベントナイトに砂を混入することで大きくすることができる。
したがって、本実施形態の地中構造物の免震構造Aにおいては、ベントナイトの吸水膨張特性を十分に活用することから、地下水位が高い環境下においても施工が容易である。なお、地下水位が低くても地盤が乾燥していなければ、ベントナイトは自らの吸水膨潤性を発揮して構築時に保水した水を保持し続けるので、乾燥によって剛性が変化することはなく、地下水位が低くても機能が失われることはない。
また、ベントナイトは吸水膨張する特性を有しており、ひび割れや何らかの損傷が生じたとしても、地下水が浸透してくる条件下ではその損傷を自己修復することができる。すなわち、周囲の地盤1からの土圧によって地中免震壁4の壁幅tが減少することがない。さらに、地中免震壁4を構成する粘土系材料は天然の無機質鉱物材料であるから変質がなく、保水状態も変化し難いのでメンテンスが不要になる。
よって、本実施形態の地中構造物の免震構造Aによれば、地中免震壁4を構成する粘土系材料が吸水膨潤性を有し、周囲の地盤1から受ける常時の土圧に抵抗でき、地中免震壁4の壁幅tを一定に保つことができることから、長期安定性を確保できる。さらに、地震時の開削トンネルなどの地中構造物2への応力低減を図ることが可能になる。
そしてさらに、本実施形態の地中構造物の免震構造Aにおいては、地中免震壁4が、上記のような優れた特性を有する粘土系材料を用い、連続した壁状で構築されるとともに、液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築されている。
このため、地中に設けられた開削トンネルなどの地中構造物2の周囲の地盤1が液状化しても、地中構造物2の下部に存在する地盤1の側方移動が地中免震壁4によって抑止される。これにより、地震時に液状化が発生した場合であっても、地中免震壁4によって地中構造物2の不同沈下や浮き上がり等を確実且つ効果的に抑止することが可能になる。
[第2実施形態]
次に、図1から図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。ここで、本実施形態は、地中構造物の免震構造を構成する地中免震壁の材料に関するものである。よって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付すなどし、その詳細な説明を省略する。
次に、図1から図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。ここで、本実施形態は、地中構造物の免震構造を構成する地中免震壁の材料に関するものである。よって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付すなどし、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の地中構造物の免震構造Bは、開削トンネルなどの地中構造物2に作用する地震時の応力を低減するためのものであり、非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に地中免震壁4を設けて構成されている。
また、本実施形態の地中免震壁4は、第1実施形態と同様、図1に示すように、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状で、且つ液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築されている。すなわち、この地中免震壁4は、地震時に繰り返し応力がかかると、履歴減衰によって地震エネルギーを吸収して塑性変形し、地震が終わると元に戻る特性を有する粘土系材料を用いて構築されている。
一方、本実施形態の地中免震壁は、地中免震壁に作用する側方土圧を、鉛直土圧に対する割合である側方土圧係数を用いて設定し、設定した側方土圧にバランスする吸水膨張圧、または、設定した側方土圧以上の粘土系材料によって構築されている。
ここで、図2は、周辺地盤の側方土圧の分布を概念的に示した図である。表1は、想定した周辺地盤からの側方土圧を、側圧係数Kをパラメータとして周辺地盤の湿潤密度と側圧係数Kから深度毎に求めた結果を示している。なお、この表1での計算条件は次の通りとした。
(1)地中壁の材料はベントナイト100%配合のものとした。
(2)周辺地盤の湿潤密度(飽和状態)は2.2g/cm2とした。
(3)側圧係数Kは0.25、0.50、1.0と仮定した。
(2)周辺地盤の湿潤密度(飽和状態)は2.2g/cm2とした。
(3)側圧係数Kは0.25、0.50、1.0と仮定した。
次に、図3は、有効ベントナイト乾燥密度(単位体積の材料において骨材が占める空間を除いた空間に存在しているベントナイトの乾燥重量)と吸水膨張圧の関係を例示した図であり、回帰式を求めるために用いている。なお、この有効ベントナイト乾燥密度と休止膨張圧の関係を求める具体的な方法については、本出願人によって既に出願した特願2012−233093に記載の方法を用いればよい。
例えば、吸水膨張圧Pswell(MPa)は下記の式(1)で計算することができる。
上記の式(1)を変形することによって、下記の式(2)を得ることができ、この式(2)で膨張圧の値から有効ベントナイト乾燥密度ρdB(g/cm3)を求めることができる。
次に、式(2)を用い、周辺地盤から作用する側方土圧にバランスする地中壁材料の有効ベントナイト乾燥密度を求めた結果の一例を表2に示す。
このように、膨張圧の値と有効ベントナイト乾燥密度ρdB(g/cm3)の関係式を用いることによって、地中免震壁の材料の設計を具体的に実施することができる。
次に、本実施形態の地中免震壁は、粘土系材料がベントナイトと骨材からなる混合材料である場合、混合材料の自重及び水中重量を、ベントナイトを100%配合した材料の自重及び水中重量よりもそれぞれ大きくし、地中免震壁の土被り圧が前記地盤の土被り圧にバランスする混合材料、または、地中免震壁の土被り圧が地盤の土被り圧以上である混合材料を用いて構築されることが好ましい。
ここで、図4は、ベントナイトに骨材を均質に混合して水で湿潤(飽和状態)にしたときの顕微鏡で見たイメージを示す断面図である。骨材が直径の等しい球体からなる場合を想定すると、理論的には六方最密充てんしたときの体積百分率は74%である。したがって、体積百分率が60%以下となるように骨材を混合するならば、図4に示すように、骨材を構成する骨材粒子相互は接触することはなく、各骨材粒子は、骨材粒子と骨材粒子の間で水を吸水してゲル化したベントナイトゲルで囲まれている。ベントナイト配合率は重量比で計算するので、ベントナイト粒子と骨材粒子の粒子密度が同等であるならば、ベントナイト配合率40%以上であればこの条件を満たすことになる。骨材粒子密度がベントナイト粒子密度よりも大きいならば、ベントナイトをより多く配合することができる。
骨材粒子相互が接触しているならば、せん断波は骨材粒子を伝わっていく。その結果、混合材料のせん断波速度はベントナイト100%配合の材料に比べて大きくなる。しかし、骨材粒子が相互に接触していないならば、せん断波速度はベントナイト100%のベントナイトゲル領域を伝わるので、混合材料のせん断波速度は骨材混合の影響をそれほどには受けない。結果として、材料の水中重量は大きくできて、せん断波速度はそれほど大きくならない材料をつくることができる(疎密波速度は骨材の伝播速度の影響を受けやすいが、せん断波速度は受けにくい。)。
次に、本実施形態の地中免震壁は、予め設定したベントナイト配合率を用いて混合材料の湿潤重量と水中重量を計算し、この水中重量を深さ方向に積分した値を粘土系材料の鉛直土圧として求め、この鉛直土圧と前記地盤の鉛直土圧の接近度合いに基づいて設計した混合材料を用いて構築されていてもよい。
ここで、表3、表4は、側方土圧係数Kに応じた膨張圧を有する有効ベントナイト乾燥密度を求めた後に、ベントナイト配合率B/(B+S)をパラメータにして地中壁材料の乾燥密度、湿潤(飽和)密度、水中単位体積重量(水中重量)、地中壁の有効鉛直土圧(地中壁の土被り有効土圧)を計算した結果を示したものである。
なお、Bは単位体積当たりのベントナイトの重量、Sは単位体積当たりの骨材の重量である。
なお、Bは単位体積当たりのベントナイトの重量、Sは単位体積当たりの骨材の重量である。
また、このときの計算条件としては、下記の特性値を使用している。
(1)周辺地盤の湿潤密度(地盤密度)は2.2(g/cm3)と仮定する。
(2)ベントナイトの膨張圧にバランスする側方土圧は土圧係数K=0.5を仮定する。
(1)周辺地盤の湿潤密度(地盤密度)は2.2(g/cm3)と仮定する。
(2)ベントナイトの膨張圧にバランスする側方土圧は土圧係数K=0.5を仮定する。
上記の各表においては、周辺地盤の有効鉛直土圧の値を例示しているが、地中壁材料を骨材混合材料にした場合には、以下に示すように、ベントナイトの膨張圧にバランスする側方土圧係数0.5よりも大きな下記の地盤土圧に対応可能な材料となっている。
表3はベントナイト配合率を0.7にした場合であるが、深度20mにおいて地盤の土被り土圧(鉛直土圧)×0.89倍相当の土圧0.214MPaに相当していることが分かる。
表4はベントナイト配合率を0.6にした場合であるが、深度20mにおいて地盤の土被り土圧(鉛直土圧)×0.91倍相当の土圧0.219MPaに相当していることが分かる。
表4はベントナイト配合率を0.6にした場合であるが、深度20mにおいて地盤の土被り土圧(鉛直土圧)×0.91倍相当の土圧0.219MPaに相当していることが分かる。
以上の結果から、骨材配合を工夫することによって、地中壁材料の水中単位体積重量を重くすることができ、その結果として、周辺地盤からの土圧による変形作用に対して、より有利に地中壁の安定性を確保できることが確認された。
また、図5から図7に、地中免震壁の土質材料の設計例を示す。この設計例は、ベントナイト配合率を0.6に設定し、ベントナイトによる吸水膨張圧が周辺地盤の土被り圧以上の側圧に相当するように配合・密度を設計した例である。
図5は、図4に示したベントナイトと骨材の混合材料の重量比と体積比を模式的に示したものである。図5によれば、ベントナイトと骨材の混合材料の配合および密度の計算式は、次のようになる。
骨材の体積 VS
ベントナイトの体積 VB
水の体積 VW
骨材の重量 MS
ベントナイトの重量 MB
水の重量 MW
単位体積なので、 V=VS+VB+VW=1
混合材料の乾燥密度 ρd=(MS+MB)/V
混合材料の湿潤密度 ρsat
有効ベントナイト乾燥密度 ρdB
骨材の粒子密度 GS
ベントナイトの粒子密度 GB=2.80(g/cm3)
水の密度 ρW=MW/VW=1(g/cm3)
ベントナイト配合率を a=MB/(MB+MS)
とすると、
MS=GS×VS, MB=GB×VB,
MB=a/(1−a)×MS,M=(1−a)/a×MB
より
MB=ρdB/[1+(1−a)/a×ρdB/GS]
MS=(1−a)/a×MB
ρd=(MS+MB)/V
=MS+MB
=(ρdB×GS)/[a×GS+(1−a)×ρdB]
ρsat=ρd+1−ρdB/[a+(1−a)×ρdB/GS]×[(1−a)/GS−a/GB]
ベントナイトの体積 VB
水の体積 VW
骨材の重量 MS
ベントナイトの重量 MB
水の重量 MW
単位体積なので、 V=VS+VB+VW=1
混合材料の乾燥密度 ρd=(MS+MB)/V
混合材料の湿潤密度 ρsat
有効ベントナイト乾燥密度 ρdB
骨材の粒子密度 GS
ベントナイトの粒子密度 GB=2.80(g/cm3)
水の密度 ρW=MW/VW=1(g/cm3)
ベントナイト配合率を a=MB/(MB+MS)
とすると、
MS=GS×VS, MB=GB×VB,
MB=a/(1−a)×MS,M=(1−a)/a×MB
より
MB=ρdB/[1+(1−a)/a×ρdB/GS]
MS=(1−a)/a×MB
ρd=(MS+MB)/V
=MS+MB
=(ρdB×GS)/[a×GS+(1−a)×ρdB]
ρsat=ρd+1−ρdB/[a+(1−a)×ρdB/GS]×[(1−a)/GS−a/GB]
図6は、下記の3種類の密度値を、深さに応じて設計した例をプロットした図である。
(1)有効ベントナイト乾燥密度の値(ベントナイト100%配合で設計した場合の乾燥密度に相当する)(図中記号:ρdB)
(2)配合率60%で混合材料にした場合の有効ベントナイト乾燥密度が同等となる場合の乾燥密度(ベントナイトの粒子密度を2.80(g/cm3)、骨材として粒子密度2.60(g/cm3)の骨材を採用した場合の値)(図中記号:ρd)
(3)配合率60%の混合材料が水で飽和している場合の湿潤密度(図中記号:ρsat)
(1)有効ベントナイト乾燥密度の値(ベントナイト100%配合で設計した場合の乾燥密度に相当する)(図中記号:ρdB)
(2)配合率60%で混合材料にした場合の有効ベントナイト乾燥密度が同等となる場合の乾燥密度(ベントナイトの粒子密度を2.80(g/cm3)、骨材として粒子密度2.60(g/cm3)の骨材を採用した場合の値)(図中記号:ρd)
(3)配合率60%の混合材料が水で飽和している場合の湿潤密度(図中記号:ρsat)
図7は、深度と土圧の関係をプロットした図である。土圧は下記の4種類の値を示した。
(1)地盤から作用する側方土圧(側圧係数0.5の場合)(図中記号:K=0.5)
(2)地盤から作用する側方土圧(側圧係数1.0の場合)(図中記号:K=1.0)
(3)地中壁材料を配合率60%で混合材料にした場合の吸水膨張圧(図中記号:Pswell)。なお、図7ではPswellが側圧係数0.5の場合の側方土圧に一致するように設計した例なので、側方土圧K=0.5のプロットと膨張圧Pswellのプロットは重なっている。
(4)配合率60%で混合材料にした場合の水中単位体積重量に基づく地中壁材料の有効土被り圧(鉛直土圧)(図中記号:(ρsat−ρw)・h)
(1)地盤から作用する側方土圧(側圧係数0.5の場合)(図中記号:K=0.5)
(2)地盤から作用する側方土圧(側圧係数1.0の場合)(図中記号:K=1.0)
(3)地中壁材料を配合率60%で混合材料にした場合の吸水膨張圧(図中記号:Pswell)。なお、図7ではPswellが側圧係数0.5の場合の側方土圧に一致するように設計した例なので、側方土圧K=0.5のプロットと膨張圧Pswellのプロットは重なっている。
(4)配合率60%で混合材料にした場合の水中単位体積重量に基づく地中壁材料の有効土被り圧(鉛直土圧)(図中記号:(ρsat−ρw)・h)
図6および図7から下記のことがわかる。
(1)図7に示すように、地中壁材料の吸水膨張圧は、周辺地盤から受ける側方土圧条件において、側圧係数0.5よりも大きく、側圧係数1.0よりも小さい。
(2)一方、地中壁を構成する土質材料の有効土被り圧は、深度20mにおいて、地盤から受ける側方土圧条件において側圧係数0.89相当であり、側圧係数1.0とした場合の側方土圧にほぼ匹敵している。
(3)すなわち、このように材料設計した地中免震壁は、周辺地盤から受ける側圧に対して、吸水膨張圧に基づく圧力による耐圧性能よりも、地中壁土質材料の有効土被り圧による耐圧性能が優れている。
(1)図7に示すように、地中壁材料の吸水膨張圧は、周辺地盤から受ける側方土圧条件において、側圧係数0.5よりも大きく、側圧係数1.0よりも小さい。
(2)一方、地中壁を構成する土質材料の有効土被り圧は、深度20mにおいて、地盤から受ける側方土圧条件において側圧係数0.89相当であり、側圧係数1.0とした場合の側方土圧にほぼ匹敵している。
(3)すなわち、このように材料設計した地中免震壁は、周辺地盤から受ける側圧に対して、吸水膨張圧に基づく圧力による耐圧性能よりも、地中壁土質材料の有効土被り圧による耐圧性能が優れている。
このような材料を採用して構築した地中免震壁は、周辺地盤から受けるより側圧係数の大きい場合の土圧に対して十分に対抗できるため有効である。また、上記のようにして、地中免震壁を構成する材料を設計する方法も有効である。
次に、本実施形態の地中免震壁は、ベントナイトに混合する骨材として粒子密度が大きい骨材を使用し、地中免震壁を構成する粘土系材料の水中重量を大きくしてもよい。
ここで、図6に示した土圧バランスは、骨材として粒子密度がより大きく重い骨材を採用することで、有効ベントナイト乾燥密度をより小さく設計することができる。その結果、ベントナイト100%配合の材料に比べてより小さい剛性(柔らかさ)を有する地中壁を構築することができる。
例えば、骨材として下記の材料を想定する。
(a)クロマイト砂:密度2.81(g/cm3)。これは、クロム鉄鉱石の破砕品で鋳造型枠材として市販されている。
(b)鉄の粒子:密度7.874(g/cm3)
(c)他にも磁鉄鉱の密度は5.2(g/cm3)であり、銅金属の密度は8.96(g/cm3)であるから、密度が大きく本実施例の骨材の候補となる。
(a)クロマイト砂:密度2.81(g/cm3)。これは、クロム鉄鉱石の破砕品で鋳造型枠材として市販されている。
(b)鉄の粒子:密度7.874(g/cm3)
(c)他にも磁鉄鉱の密度は5.2(g/cm3)であり、銅金属の密度は8.96(g/cm3)であるから、密度が大きく本実施例の骨材の候補となる。
表5は、骨材にクロマイト砂2.81(g/cm3)を採用した場合の配合・密度設計結果である。ベントナイト配合率を0.7にした場合、深度20mにおいて地盤の土被り土圧(鉛直土圧)×0.933倍相当の土圧に対抗できる0.224MPaの土被り圧を有しており、これは骨材粒子密度2.60(g/cm3)の場合のベントナイト配合率0.6に匹敵する。なおかつ、有効ベントナイト乾燥密度はより小さく設計できている。すなわち、地中壁をより柔らかい材料で構成することができ、地盤土圧に十分に対抗することができる。
表6は、骨材に鉄粒子7.874(g/cm3)を採用した場合の配合・密度設計結果である。ベントナイト配合率を0.8にした場合、深度20mにおいて地盤の土被り土圧(鉛直土圧)×0.95倍相当の土圧に対抗できる0.229MPaの土被り圧を有しており、かつ、有効ベントナイト乾燥密度はより小さく設計することができている。すなわち、さらに柔らかい材料を採用し、より地盤土圧に対抗できる地中壁を構築することができる。
したがって、本実施形態の地中免震壁構造Bにおいては、第1実施形態の作用効果に加え、地中免震壁4に作用する周辺地盤1による側方土圧を、鉛直土圧に対する割合である側方土圧係数を用いて設定し、設定した側方土圧にバランスした吸水膨張圧、または、設定した側方土圧以上の吸水膨張圧を有する材料からなるので、周辺地盤1から受ける側方土圧に対して十分に対抗できる地中免震壁構造Bを提供することができる。
また、地中免震壁4を構成する材料をベントナイトと骨材とからなる混合材料とし、この混合材料の自重および水中重量を、ベントナイトを100%配合した材料の自重および水中重量よりもそれぞれ重くし、地中免震壁4の土被り圧が周辺地盤1の土被り圧にバランスした混合材料、または、地中免震壁4の土被り圧が周辺地盤1の土被り圧以上である混合材料を用いて地中免震壁4を構築すると、骨材の粒子密度がベントナイトの粒子密度よりも大きいならば、有効ベントナイト乾燥密度をより小さくすることができる。また、材料の水中重量は大きくでき、せん断波速度はそれほど大きくならない材料をつくることができる。
さらに、予め設定したベントナイト配合率を用いて混合材料の湿潤重量と水中重量を計算し、この水中重量を深さ方向に積分した値を、地中免震壁4を構成する材料の鉛直土圧として求め、この鉛直土圧と周辺地盤1の鉛直土圧の接近度合いに基づいて設計した混合材料を用いて地中免震壁4を構築すると、周辺地盤1から受けるより側圧係数の大きい場合の土圧に対して十分に対抗できる地中免震壁4(地中構造物の免震構造B)を実現することが可能になる。
また、ベントナイトに混合する骨材として粒子密度が大きい骨材を使用し、地中免震壁4を構成する材料の水中重量を大きくすると、有効ベントナイト乾燥密度をより小さくすることができる。その結果、ベントナイト100%配合の材料に比べてより小さい剛性(柔らかさ)を有する地中免震壁4を構築することが可能になる。
[第3実施形態]
次に、図8及び図9を参照し、本発明の第3実施形態に係る地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法について説明する。ここで、本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
次に、図8及び図9を参照し、本発明の第3実施形態に係る地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法について説明する。ここで、本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の地中構造物の免震構造Cは、図8に示すように、開削トンネルなどの地中構造物2に作用する地震時の応力を低減するためのものであり、非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状に構築された地中免震壁4と、地中免震壁4に沿って構築されるとともに、液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築された地中免震壁4よりも高剛性の地中仕切り壁5とを備えて構成されている。
また、本実施形態の地中構造物の免震構造Cは、地中免震壁4が第1実施形態や第2実施形態の材料を用いて構築され、地中仕切り壁5が地中免震壁4よりも高剛性の鋼矢板やセメント系(ソイルセメント系)などを用いて構築されている。
さらに、本実施形態の地中構造物の免震構造Cは、地中免震壁4が地表から地中構造物2の下端付近の深さで構築されている。また、地中免震壁4を地中構造物2の側部に隣接して構築し、この地中免震壁4の外側に、下端側を非液状化層1bに根入れし、地中免震壁4に隣接して地中仕切り壁5を構築して構成されている。
なお、図9に示すように、下端側を非液状化層1bに根入れし、地中構造物2の側部に隣接して地中仕切り壁5を構築し、この地中仕切り壁5の外側に地中免震壁4を隣接して構築してもよい。
また、このように構成した地中構造物の免震構造Cを構築する際には、図10(a)に示すように非液状化層1bに根入れして地中仕切り壁5を構築し、図10(b)及び図10(c)に示すように地中仕切り壁5の間の液状化層1aの地盤1を所定の深度まで開削して地中構造物2を構築し、さらに地盤1を埋め戻し、図10(d)に示すように地中免震壁4を構築すればよい。
そして、上記のように地中免震壁4と地中仕切り壁5を備えて構築した本実施形態の地中構造物の免震構造C及び地中構造物の免震構造の構築方法においては、第1実施形態と第2実施形態に示した地中免震壁4の作用効果に加え、地中免震壁4よりも剛性が高い地中仕切り壁5が非液状化層1bに根入れして設けられているため、地中構造物2の下方の地盤1の液状化による側方流動を地中仕切り壁5によって確実に抑止することができる。
これにより、地震時に液状化が発生した場合であっても、地中免震壁4及び地中仕切り壁5によって地中構造物2の不同沈下や浮き上がり等をより確実且つ効果的に抑止することが可能になる。
[第4実施形態]
次に、図11を参照し、本発明の第4実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。ここで、本実施形態は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
次に、図11を参照し、本発明の第4実施形態に係る地中構造物の免震構造について説明する。ここで、本実施形態は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の地中構造物の免震構造Dは、図11に示すように、開削トンネルなどの地中構造物2に作用する地震時の応力を低減するためのものであり、非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状に構築された地中免震壁4と、地中免震壁4に沿って構築されるとともに、液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築された地中免震壁4よりも高剛性の地中仕切り壁5とを備えて構成されている。
また、本実施形態の地中構造物の免震構造Dは、地中免震壁4が第1実施形態や第2実施形態の材料を用いて構築され、地中仕切り壁5が地中免震壁4よりも高剛性の鋼矢板やセメント系(ソイルセメント系)などを用いて構築されている。
さらに、本実施形態の地中構造物の免震構造Dは、地中免震壁4が地表から地中構造物2の下端付近の深さで構築されている。これとともに、地中仕切り壁5が、地中免震壁4の壁厚t方向略中央に配され、地中免震壁4の内部に埋設して構築されている。すなわち、この地中仕切り壁5は、上端から地中免震壁4の下端までの部分が地中免震壁4に埋設され、地中免震壁4の下端から非液状化層1bに根入れされる下端までの部分が地中免震壁4から露出して構築されている。
そして、上記のように地中免震壁4と地中仕切り壁5を備えて構築した本実施形態の地中構造物の免震構造Dにおいては、第1実施形態と第2実施形態に示した地中免震壁4の作用効果に加え、地中免震壁4よりも剛性が高い地中仕切り壁5が非液状化層に根入れして設けられているため、地中構造物2の下方の地盤1の液状化による側方流動を地中仕切り壁5によって確実に抑止することができる。
これにより、地震時に液状化が発生した場合であっても、地中免震壁4及び地中仕切り壁5によって地中構造物2の不同沈下や浮き上がり等をより確実且つ効果的に抑止することが可能になる。
また、柔らかい地中免震壁4の中に高剛性の地中仕切り壁5を挿入して地中構造物2の免震構造Dを構築でき、容易に施工することが可能になる。
[第5実施形態]
次に、図12及び図13を参照し、本発明の第5実施形態に係る地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法について説明する。ここで、本実施形態は、第1〜第4実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
次に、図12及び図13を参照し、本発明の第5実施形態に係る地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法について説明する。ここで、本実施形態は、第1〜第4実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の地中構造物の免震構造Eは、図12に示すように、開削トンネルなどの地中構造物2に作用する地震時の応力を低減するためのものであり、非液状化層1bの上に液状化層1aを備えた地盤1の液状化層1a中に構築される地中構造物2とこの地中構造物2の周辺地盤1との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状に構築された地中免震壁4と、地中免震壁4に沿って構築されるとともに、液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築された地中免震壁4よりも高剛性の地中仕切り壁6とを備えて構成されている。
また、本実施形態の地中構造物の免震構造Eは、地中免震壁4が第1実施形態や第2実施形態の材料を用いて構築され、地中仕切り壁6が地中免震壁4よりも高剛性の鋼矢板やセメント系(ソイルセメント系)などを用いて構築されている。
さらに、本実施形態の地中構造物の免震構造Eは、地中仕切り壁6が、地中構造物2側の内側に構築される第1地中仕切り壁6aと、第1地中仕切り壁6aよりも地中構造物2に対して外側に構築される第2地中仕切り壁6bとを備えて構成されている。第1地中仕切り壁6aは、液状化層1aから非液状化層1bに下端側を根入れして構築され、第2地中仕切り壁6bは、下端を液状化層1aに配し、第1地中仕切り壁6aよりも浅い深度で構築されている。そして、地中免震壁4は、第1地中仕切り壁6aと第2地中仕切り壁6bの間に配される深度で構築されている。
また、このように構成した地中構造物の免震構造Eを構築する際には、図13(a)、図13(b)に示すように地中構造物2側の内側に第1地中仕切り壁6aを構築し、図13(c)に示すように第1地中仕切り壁6aの外側に第2地中仕切り壁6bを構築し、図13(d)に示すように第1地中仕切り壁6aと第2地中仕切り壁6bの間の液状化層1aの地盤1を掘削し、吸水膨潤性を有する粘土系材料と置換して地中免震壁4を構築すればよい。
そして、上記のように地中免震壁4と地中仕切り壁6を備えて構築した本実施形態の地中構造物の免震構造E及び地中構造物の免震構造Eの構築方法においては、第1実施形態と第2実施形態に示した地中免震壁4の作用効果に加え、地中免震壁4よりも剛性が高い第1地中仕切り壁6aが非液状化層1bに根入れして設けられているため、地中構造物2の下方の地盤1の液状化による側方流動を第1地中仕切り壁6aによって確実に抑止することができる。
これにより、地震時に液状化が発生した場合であっても、地中免震壁4及び地中仕切り壁6によって地中構造物2の不同沈下や浮き上がり等をより確実且つ効果的に抑止することが可能になる。
さらに、地中仕切り壁6を第1地中仕切り壁6aと第2地中仕切り壁6bで構成し、これら第1及び第2地中仕切り壁6a、6bの間に吸水膨張性の粘土系材料からなる地中免震壁4を設けるようにしたことで、第1地中仕切り壁6aと第2地中仕切り壁6bの間の地盤1を粘土系材料と置換するだけで地中免震壁4を容易に構築することができる。さらに、第1地中仕切り壁6aと第2地中仕切り壁6bの間に地中免震壁4が設けられることで、地震時に局部的な変形が生じることを防止できる。
以上、本発明に係る地中構造物の免震構造及び地中構造物の免震構造の構築方法の第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は上記の第1〜第5実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、地中免震壁4は、図14に示すように1列配置の柱列状地中免震壁として構築しても、図15に示すように千鳥配置の柱列状地中免震壁として構築してもよく、特にその形状を限定する必要はない。また、地中免震壁それぞれの柱状の部分は図14、図15のように当接している必要はなく、免震効果が損なわれない範囲で間隔があってもよい。
1 地盤
1a 液状化層(液状化地盤)
1b 非液状化層(非液状化地盤)
2 地中構造物
3 従来の地中免震壁
4 地中免震壁
5 地中仕切り壁
6 地中仕切り壁
6a 第1地中仕切り壁
6b 第2地中仕切り壁
A 地中構造物の免震構造
B 地中構造物の免震構造
C 地中構造物の免震構造
D 地中構造物の免震構造
E 地中構造物の免震構造
1a 液状化層(液状化地盤)
1b 非液状化層(非液状化地盤)
2 地中構造物
3 従来の地中免震壁
4 地中免震壁
5 地中仕切り壁
6 地中仕切り壁
6a 第1地中仕切り壁
6b 第2地中仕切り壁
A 地中構造物の免震構造
B 地中構造物の免震構造
C 地中構造物の免震構造
D 地中構造物の免震構造
E 地中構造物の免震構造
Claims (11)
- 非液状化層の上に液状化層を備えた地盤の前記液状化層中に構築される地中構造物と該地中構造物の周辺地盤との間に、吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状または柱状で、且つ前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築された地中免震壁を備えて構成されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。
- 非液状化層の上に液状化層を備えた地盤の前記液状化層中に構築される地中構造物と該地中構造物の周辺地盤との間に、
吸水膨潤性を有する粘土系材料からなり、略鉛直の壁状または柱状に構築された地中免震壁と、
前記地中免震壁に沿って構築されるとともに、前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築された前記地中免震壁よりも高剛性の地中仕切り壁とを備えて構成されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項2記載の地中構造物の免震構造において、
前記地中仕切り壁が前記地中構造物側の側面と前記免震壁との間、あるいは前記地中免震壁の外側に構築されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項2記載の地中構造物の免震構造において、
前記地中仕切り壁が、少なくとも一部を前記地中免震壁の内部に埋設して構築されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項2記載の地中構造物の免震構造において、
前記地中仕切り壁が、前記地中構造物側の外側側面に近接して構築される第1地中仕切り壁と、前記地中構造物の外側の第1地中仕切り壁よりも外側に構築される第2地中仕切り壁とを備え、
前記第1地中仕切り壁が前記液状化層から前記非液状化層に下端側を根入れして構築され、
前記第2地中仕切り壁が下端を前記液状化層に配し、前記第1地中仕切り壁よりも浅い深度で構築され、
前記地中免震壁が前記第1地中仕切り壁と前記第2地中仕切り壁の間に配される深度で構築されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の地中構造物の免震構造において、
前記地中免震壁に作用する側方土圧を、鉛直土圧に対する割合である側方土圧係数を用いて設定し、設定した前記側方土圧にバランスする吸水膨張圧、または、設定した前記側方土圧以上の前記粘土系材料によって前記地中免震壁が構築されていることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の地中構造物の免震構造において、
前記粘土系材料が、ベントナイトと骨材からなる混合材料であり、
前記混合材料の自重及び水中重量を、ベントナイトを100%配合した材料の自重及び水中重量よりもそれぞれ大きくし、前記地中免震壁の土被り圧が前記地盤の土被り圧にバランスする前記混合材料、または、前記地中免震壁の土被り圧が前記地盤の土被り圧以上である前記混合材料からなることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項7記載の地中構造物の免震構造において、
予め設定したベントナイト配合率を用いて前記混合材料の湿潤重量と水中重量を計算し、この水中重量を深さ方向に積分した値を前記粘土系材料の鉛直土圧として求め、前記地中免震壁が、この鉛直土圧と前記地盤の鉛直土圧の接近度合いに基づいて設計した前記混合材料からなることを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項7または請求項8に記載の地中構造物の免震構造において、
ベントナイトに混合する骨材として粒子密度が大きい骨材を使用し、前記地中免震壁を構成する前記粘土系材料の水中重量を大きくしたことを特徴とする地中構造物の免震構造。 - 請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の地中構造物の免震構造を構築する方法であって、
前記地中仕切り壁を構築し、
前記地中仕切り壁の間の前記液状化層の地盤を所定の深度まで開削して前記地中構造物を構築し、
前記地中免震壁を構築するとともに前記地中構造物を埋設するように前記液状化層の地盤を埋め戻すことを特徴とする地中構造物の免震構造の構築方法。 - 請求項5記載の地中構造物の免震構造を構築する方法であって、
前記地中構造物側の外側側面に近接して前記第1地中仕切り壁を構築し、
前記第1地中仕切り壁の外側の第1地中仕切り壁よりも外側に前記第2地中仕切り壁を構築し、
前記第1地中仕切り壁と前記第2地中仕切り壁の間の前記液状化層の地盤を掘削し、吸水膨潤性を有する粘土系材料と置換して前記地中免震壁を構築することを特徴とする地中構造物の免震構造の構築方法。
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2013
- 2013-11-29 JP JP2013247646A patent/JP2015105510A/ja active Pending
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