JP2015096835A - 糖尿病患者の腎機能の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、糖尿病患者の腎機能をより正確に推定可能な腎機能評価手法を提供することを目的とする。
【解決手段】糖尿コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1C値及び/又は血清グルコアルブミン値を使用して推算糸球体濾過率を補正することによって、極めて高い正確性をもって糖尿病患者の腎機能評価を行うことが可能になる
【選択図】なし

Description

本発明は、糖尿病患者の腎機能を正確に評価するために使用される腎機能評価マーカーに関する。また、本発明は、糖尿病患者の腎機能を正確に評価できる腎機能検査方法に関する。更に、本発明は、糖尿病患者の腎機能を正確に評価するために使用される検査薬に関する。
糖尿病は、日本では、2,200万人の患者がいるとも推定されており、国民病ともいわれるほど患者数が増大している。また、近年、糖尿病患者の増大に伴って、その3大合併症の1つである糖尿病性腎症に罹患する患者数も著しく増加している。そのため、糖尿病患者における早期の診断及び厳格な糖尿コントロールが、糖尿病性腎症の発症を予防し、少なくともその症状の進行を遅れさせる上で重要になっている。
従来、糖尿病腎症における腎機能障害及び心血管系リスクの進行を評価する上で、クレアチンに基づいて推定される推算糸球体濾過率(eGFR)が、臨床的に有用な指標であると広く考えられている(非特許文献1及び2)。例えば、日本腎臓学会は、763人の日本人患者を対象としてインスリンクリアランス(Cin)の測定結果を行い、血清クレアチン値に基づいてeGFRを算出できる下記腎機能推算式を提案している(非特許文献3)。
Figure 2015096835
[式中、Crは、血清クレアチン値を示す]
このように、血清クレアチン値はeGFRの算出に広く使用されているが、血清クレアチンは、筋肉量、性別、及び年齢に影響されることが知られている。また、血清クレアチン値は、糖尿病患者では著しく低いことも知られている(非特許文献4及び5)。更に、非肥満中年日本人男性に関する近年の研究において、低血清クレアチン値と2型糖尿病との関連性があることが報告されており(非特許文献6)、低血清クレアチン値は、筋肉量が少ないことを反映している可能性があることも指摘されている(非特許文献7及び8)。また、本発明者は、これまでに、糖尿病の血液透析患者における筋肉中のクレアチンが減少しており、これに起因して、無尿症の糖尿病の血液透析患者における血清クレアチン値は、無尿症の非糖尿病の血液透析患者に比べて有意に低くなっていることを明らかにしている(非特許文献4)。また、血清クレアチン値によって腎機能を評価した場合や、特に腎機能が低下している時に腎機能を評価した場合には、糸球体のクレアチニン濾過に関与しない尿細管から排泄されたクレアチニンが、腎機能の過大評価につながっているとの報告もある(非特許文献5)。
このように、糖尿病患者では血清クレアチン値が低値であり、更には筋肉量、性別、体重等によって血清クレアチン値が影響を受けるため、血清クレアチン値を用いて算出されるeGFRでは糖尿病患者における実際の腎機能を正確に反映できず、正確な腎機能評価や透析導入時期の判定等に困難をきたすことが多いのが実情である。そのため、糖尿病患者によっては、血清クレアチン値を用いて推算されるeGFRが相対的に高値なり、透析基準を満たす前であっても、腎代替療法を受けることが必要とされる場合がある(非特許文献9)。
一方、シスタチンCは、糸球体によって濾過され、近位尿細管細胞の中でメガリンによってCa2+依存的に代謝されることが知られている(非特許文献10)。また、シスタチンCは、筋肉量、性別、又は年齢によって影響されないことも分かっている。そこで、近年、血清シスタチンCがGFRの新たなマーカーとして提案され、血清シスタチンC値、或いは血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づいてeGFRを推算する下記の腎機能推算式が提案されている(非特許文献11及び12)。
Figure 2015096835
[式中、CysCはシスタチンC値を示す]
Figure 2015096835
[式中、CysCはシスタチンC値を示し、血清Crは血清クレアチン値を示す]
しかしながら、血清シスタチンC値を使用した腎機能推算式でも、依然として、糖尿病患者の腎機能を十分正確に推定できていないのが現状であり、糖尿病患者の腎機能の推定手法には更なる正確性の向上が求められている。
Moe SM, Drueke TB: The KDIGO guideline on dialysate calcium and patient outcomes: need for hard evidence. Kidney Int 2011;79:478; author reply 478-479 Martirosyan L, Braspenning J, Denig P, Haaijer-Ruskamp FM: Development and validation of prescribing indicators for cardiovascular risk management in type 2 diabetis mellitus patients. Pharmacoepidem Dr S 2007;16:S101-S102 Matsuo S, Imai E, Horio M, Yasuda Y, Tomita K, Nitta K, Yamagata K, Tomino Y, Yokoyama H, Hishida A: Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan. Am J Kidney Dis 2009;53:982-992 Inaba M, Kurajoh M, Okuno S, Imanishi Y, Yamada S, Mori K, Ishimura E, Yamakawa T, Nishizawa Y: Poor muscle quality rather than reduced lean body mass is responsible for the lower serum creatinine level in hemodialysis patients with diabetes mellitus. Clin Nephrol 2010;74:266-272 Orita Y, Gejyo F, Sakatsume M, Shiigai T, Maeda Y, Imai E, Fujii T, Endoh M, Jinde K, Haneda M, Sugimoto T, Hishida A, Takahashi S, Hosoya T, Yamamoto H, Hora K, Okada Y, Hosaka S, Oguchi T, Kanno Y, Nishio Y, Yano S, Aikawa K, Yasui K: Estimation of glomerular filtration rate by inulin clearance: comparison with creatinine clearance. Nihon Jinzo Gakkai Shi 2005;47:804-812 Harita N, Hayashi T, Sato KK, Nakamura Y, Yoneda T, Endo G, Kambe H: Lower serum creatinine is a new risk factor of type 2 diabetes: the Kansai healthcare study. Diabetes Care 2009;32:424-426 Hjelmesaeth J, Roislien J, Nordstrand N, Hofso D, Hager H, Hartmann A: Low serum creatinine is associated with type 2 diabetes in morbidly obese women and men: a cross-sectional study. BMC Endocr Disord 2010;10:6 Nakao T: Characteristics of the patients with diabetic nephropathy with relatively low serum creatinine at the initiation of dialysis. Nihon Jinzo Gakkai Shi 1990;32:1025-1031 Stel VS, Tomson C, Ansell D, Casino FG, Collart F, Finne P, Ioannidis GA, De Meester J, Salomone M, Traynor JP, Zurriaga O, Jager KJ: Level of renal function in patients starting dialysis: an ERA-EDTA Registry study. Nephrol Dial Transplant 2010;25:3315-3325 Kaseda R, Iino N, Hosojima M, Takeda T, Hosaka K, Kobayashi A, Yamamoto K, Suzuki A, Kasai A, Suzuki Y, Gejyo F, Saito A: Megalin-mediated endocytosis of cystatin C in proximal tubule cells. Biochem Biophys Res Commun 2007;357:1130-1134 Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S: GFR Estimation Using Standardized Serum Cystatin C in Japan. Am J Kidney Dis 2012; Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S: Performance of GFR equations in Japanese subjects. Clin Exp Nephrol 2012;
本発明は、糖尿病患者の腎機能をより正確に推定可能な腎機能評価手法を提供することを目的とする。
GFR測定のゴールドスタンダードは、インスリンクリアランス(Cin)の実測である。従来、糖尿病患者において、糖尿コントロールと、Cin又はeGFRとの関係については明らかにされていない。そこで、本発明者は、糖尿病患者と非糖尿病患者において、3つのeGFR(即ち、血清クレアチン値に基づくeGFRcr、血清シスタチンC値に基づくeGFRcys、及び血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づくeGFRcr-cys)と、Cinとの関連について比較検討した。その結果、意外にも、従来技術における糖尿病患者の腎機能評価の不正確の主たる原因は、糖尿病患者の糖尿コントロール不良であることを突き止めた。
更に、糖尿病患者の腎機能評価の正確性を高めるべく鋭意検討を行ったところ、糖尿コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1C値及び/又は血清グルコアルブミン値を使用してeGFRを補正することによって、極めて高い正確性をもって糖尿病患者の腎機能評価を行うことが可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 糖尿病患者の腎機能を評価するために使用される腎機能評価マーカーであって、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンからなることを特徴とする、腎機能評価マーカー。
項2. 糖尿病患者の推算糸球体濾過率をより正しい値に補正するために使用される、項1に記載の腎機能評価マーカー。
項3. 補正される推算糸球体濾過率が、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値を用いて推算される推算糸球体濾過率である、項2に記載の腎機能評価マーカー。
項4. 糖尿病患者の腎機能を検査する方法であって、
糖尿病患者から採取した血液サンプルから血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を測定する第1工程、及び
前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正された推算糸球体濾過率を推算する第2工程
を含むことを特徴とする、検査方法。
項5. 前記第2工程において、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正された推算糸球体濾過率を下記1)〜6)のいずれかの式によって推算する、項4に記載の検査方法:
1) eGFRcr(HbA1c補正後)=eGFRcr / (0.428 + 0.085 ×血液HbA1c値)
[式1)中、eGFRcr(HbA1c補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
2) eGFRcr(GA補正後)=eGFRcr / (0.525 + 0.028 ×血清GA値)
[式2)中、eGFRcr(GA補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
3) eGFRcys(HbA1c補正後)=eGFRcys / (0.734 + 0.059 ×血液HbA1c値)
[式3)中、eGFRcys(HbA1c補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
4) eGFRcys(GA補正後)=eGFRcys / (0.785 + 0.020 ×血清GA値)
[式4)中、eGFRcys(GA補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
5) eGFRcr-cys(HbA1c補正後)=eGFRcr-cys / (0.490 + 0.089 ×血液HbA1c値)
[式5)中、eGFRcr-cys (HbA1c補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
6) eGFRcr-cys(GA補正後)=eGFRcr-cys / (0.633 + 0.027 ×血清GA値)
[式6)中、eGFRcr-cys (GA補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
項6. 補正される推算糸球体濾過率が、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値を用いて推算される推算糸球体濾過率である、項4又は5に記載の検査方法。
項7. 糖尿病患者の腎機能を検査するために使用される腎機能の検査薬であって、
血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを検出可能な試薬を含むことを特徴とする、検査薬。
項8. 糖尿病患者の推算糸球体濾過率をより正しい値に補正するために使用される、項7に記載の検査薬。
項9. 更に、血清クレアチン及び/又は血清シスタチンCを検出可能な試薬を含む、項7又は8に記載の検査薬。
本発明によれば、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正して算出したeGFRを使用することによって、糖尿病患者の腎機能を正確に評価することができる。従って、本発明によって得られた正確な腎機能の評価結果に基づいて、糖尿病患者(特に糖尿病腎不全患者)の薬剤処方の調節を正確に行うことが可能になり、透析治療の開始時期を的確に見極め、適切な治療方針を策定することが可能になり、糖尿病患者に福音をもたらすことができる。
Cinと各eGFR(血清クレアチン値に基づいて算出したeGFRcr、血清シスタチンC値に基づいて算出したeGFRcys、及び血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づいて算出したeGFRcr-cys)の関係を示す図である。 各eGFRcr-cys/Cin比と、血液ヘモグロビンA1c値及び血清グリコアルブミン値との関係を示す図である。
1.腎機能評価マーカー
本発明の腎機能評価マーカーは、糖尿病患者の腎機能を評価するために使用される腎機能評価マーカーであって、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンからなることを特徴とする。以下、本発明の腎機能評価マーカーについて詳述する。
本発明の腎機能評価マーカーとして、血液ヘモグロビンA1c及び血清グリコアルブミンのいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。本発明の腎機能評価マーカーの好適な例として血液ヘモグロビンA1cが挙げられる。
血液ヘモグロビンA1cの測定方法については、特に制限されず、高速液体クロマトグラフィー法、ヘモグロビンA1cに特異的な抗体を用いた免疫学的方法、酵素法等の測定方法が挙げられる。また、血清グリコアルブミンの測定方法についても、特に制限されず、高速液体クロマトグラフィー法、加水分解酵素を用いた酵素法等の測定方法が挙げられる。血液ヘモグロビンA1c及び血清グリコアルブミンを測定するための測定キットは市販されており、本発明では、市販の測定キットを使用して腎機能評価マーカーの測定を行うことができる。
本発明の腎機能評価マーカーは、糖尿病患者の腎機能を評価するために使用されるバイオマーカーである。本発明の腎機能評価マーカーにおいて、対象となる糖尿病患者は1型糖尿病又は2型糖尿病の別を問わず、糖尿病性腎症等の合併症の発症の有無も問わない。
本発明の腎機能評価マーカーは、糖尿病患者の腎機能を正確に評価するために使用される。具体的には、本発明の腎機能評価マーカーは、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値によって推算される糖尿病患者のeGFRについて、より適切に腎機能を反映させた値に補正するために使用される。本発明の腎機能評価マーカーによって前記eGFRを補正する方法については、後述する「2.腎機能の検査方法」の欄に示す通りである。
2.腎機能の検査方法
本発明の検査方法は、糖尿病患者の腎機能を検査する方法であって、糖尿病患者から採取した血液サンプルから血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を測定する第1工程、及び前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正されたeGFRを推算する第2工程を含むことを特徴とする。以下、本発明の検査方法について詳述する。
第1工程では、糖尿病患者から採取した血液サンプルから血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を測定する。本第1工程において、対象となる糖尿病患者、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値の測定方法等については、前述する「1.腎機能評価マーカー」の欄に記載の通りである。
第2工程では、前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正されたeGFRを推算する。従来、腎機能の評価には、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値によって推算されたeGFRが使用されているが、このような手法で推算されるeGFRは、糖尿病患者の腎機能を正確に反映できていないという欠点があるが、本発明では、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いてeGFRを補正することによって、高い正確性を持って糖尿病患者の腎機能を評価することが可能になっている。
第2工程は、具体的には、糖尿病患者のeGFR(補正前)を求め、当該eGFRを前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正することによって、補正後eGFRを推算する。このように推算された補正後eGFRは、糖尿病患者の腎機能を正確に反映しているので、当該補正後eGFRに基づいて糖尿病患者の腎機能を表することができる。
eGFR(補正前)の推算方法については、特に制限されないが、例えば、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値を用いてeGFR(補正前)を推算することができる。具体的には、糖尿病患者の血液サンプルから血清クレアチン値と血清シスタチンC値のいずれか一方又は双方を測定し、これをeGFRの推算式に代入することによって糖尿病患者のeGFR(補正前)を求めることができる。
例えば、血清クレアチン値を使用してeGFR(補正前)を算出する推算式として、下記式が知られており、繁用されている(非特許文献3参照)。
Figure 2015096835
[式中、Crは、血清クレアチン値(mg/dl)を示す]
また、血清シスタチンC値を使用してeGFR(補正前)を算出する推算式として、下記式が知られている(非特許文献12参照)。
Figure 2015096835
[式中、CysCは血清シスタチンC値(mg/dl)を示す]
更に、血清シスタチンC値と血清クレアチン値の双方を使用してeGFR(補正前)を算出する推算式として、下記式が知られている(非特許文献11参照)。
Figure 2015096835
[式中、CysCは血清シスタチンC値(mg/dl)を示し、Crは血清クレアチン値(mg/dl)を示す]
本発明では、eGFR(補正前)として、血清クレアチン値を用いて推算したeGFR(eGFRcr)、血清シスタチンC値を用いて推算したeGFR(eGFRcys)、及び血清シスタチンC値と血清クレアチン値の双方を用いて推算したeGFR(eGFRcr-cys)のいずれを使用してもよいが、臨床的な実用性の観点から、好ましくはeGFRcrが挙げられる。
前記eGFR(補正前)を前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正することによって、糖尿病患者の腎機能がより正確に反映されたeGFR(補正後)が得られる。なお、eGFR(補正前)の補正に使用される血液ヘモグロビンA1c値及び血清グリコアルブミン値の単位については、特に制限されないが、血液ヘモグロビンA1c値としてNGSP値(%)を使用し、血清グリコアルブミン値として血清中の全アルブミンを100%とした場合にグリコアルブミンが占める割合(%)を使用することが望ましい。
血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値でeGFR(補正前)を補正する方法については、特に制限されないが、例えば、以下の(I)〜(III)の工程を経て、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正されたeGFRの推算式を得ることができる。
(I)予め複数の糖尿病患者について、イヌリンクリアランス(Cin)、血清シスタチンC値及び/又は血清クレアチン値、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を測定しておく。
(II) 血清シスタチンC値及び/又は血清クレアチン値を用いてeGFR(補正前)を算出し、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いてeGFR(補正前)/Cin比の単回帰分析を行うことにより、回帰直線(x軸:血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値、y軸:eGFR(補正前)/Cin比)を求める。
(III) 一次関数(y=ax + c;y=各eGFR/Cin、x=血液ヘモグロビンA1c値又は血清グリコアルブミン値、a=回帰直線の傾き、及びb=intercept(回帰直線のy切片))を用いて、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正されたeGFR(eGFR(補正後))の推算式として下記式を求める。このようにして予め求めておいた下記式に、腎機能の評価対象となる糖尿病患者から測定されたeGFR(補正前)と血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を代入することによって、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正されたeGFRが推算される。
Figure 2015096835
後述する実施例では、80名の被験者(年齢56.6±15.4歳;男性35名、女性40名;糖尿病患者40名、非糖尿病患者40名)を試験対象とした試験において、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正された各eGFR(補正後)を算出する推算式として、下記1)〜6)の推算式が見出されている。従って、本第2工程において、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正された各eGFRを推算する方法の好適な例として、下記1)〜6)のいずれかの推算式に糖尿病患者のeGFR(補正前)と血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を代入する方法が挙げられる。
1) eGFRcr(HbA1c補正後)=eGFRcr / (0.428 + 0.085 ×血液HbA1c値)
[式1)中、eGFRcr(HbA1c補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
2) eGFRcr(GA補正後)=eGFRcr / (0.525 + 0.028 ×血清GA値)
[式2)中、eGFRcr(GA補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
3) eGFRcys(HbA1c補正後)=eGFRcys / (0.734 + 0.059 ×血液HbA1c値)
[式3)中、eGFRcys(HbA1c補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
4) eGFRcys(GA補正後)=eGFRcys / (0.785 + 0.020 ×血清GA値)
[式4)中、eGFRcys(GA補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
5) eGFRcr-cys(HbA1c補正後)=eGFRcr-cys / (0.490 + 0.089 ×血液HbA1c値)
[式5)中、eGFRcr-cys (HbA1c補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
6) eGFRcr-cys(GA補正後)=eGFRcr-cys / (0.633 + 0.027 ×血清GA値)
[式6)中、eGFRcr-cys (GA補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
なお、1)〜6)の推算式において、血液ヘモグロビンA1c値は「NGSP値(%)」であり、血清グリコアルブミン値は「血清中の全アルブミンを100%とした場合にグリコアルブミンが占める割合(%)」である。
斯して血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値で補正されたeGFRを使用して、糖尿病患者の腎機能を正確に判断することが可能になる。具体的には、eGFR(補正後)が高い程、腎機能が正常であり、eGFR(補正後)が低い程、腎機能が正常でないと判断できる。より具体的には、eGFR(補正後)が80以上120以下であれば腎機能が正常、eGFR(補正後)が80未満であれば腎機能が異常と診断することができる。
このようにeGFR(補正後)を利用した腎機能の評価結果は、糖尿病患者の腎機能を正確に反映できているので、糖尿病患者の治療方針、糖尿病腎不全患者への薬剤の適切処方、透析導入タイミング等を適切に判断するための判断材料として使用される。
3.腎機能の検査薬
本発明の検査薬は、前記検査方法を実施するために使用される腎機能の検査薬であって、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを検出可能な試薬を含むことを特徴とする。
血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを検出するための試薬としては、抗体、酵素等が知られており公知であり、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを定量する方法も公知である。本発明の検査薬には、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを定量できる公知の試薬を使用することができる。
また、本発明の検査薬には、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを検出するための試薬以外に、必要に応じて、eGFRを推算するために必要とされる血清シスタチンC値及び血清クレアチン値を測定するための試薬等が含まれていてもよい。血清シスタチンC値及び血清クレアチン値を測定するための試薬についても公知であるので、公知の試薬を使用することができる。
本発明の検査薬を用いて測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値は、前述する「2.腎機能の検査方法」に従って糖尿病患者の腎機能を評価するために使用される。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す血液ヘモグロビンA1c値の単位は「NGSP値(%)」であり、血清グリコアルブミン値の単位は「血清中の全アルブミンを100%とした場合にグリコアルブミンが占める割合(%)」である。
1.研究計画及び方法
1−1.被験者及び分析
本試験は、大阪市立大学医学部の倫理委員会の承認の下で実施した。また、各患者からは書面にてインフォームドコンセントを得て本試験を実施した。また、本試験は、大阪市立大学病院にて行われた単一施設(single center)での無作為試験である。80名の被験者(年齢56.6±15.4歳;男性35名、女性40名;糖尿病患者40名、非糖尿病患者40名)を試験対象とした。糖尿病の診断は、糖尿病歴、又は糖尿病の診断及び分類に関する専門委員会の報告書(Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus. Diabetes Care 1997;20:1183-1197)に従った基準に基づいて行った。患者は、透析を受けていないCKDステージ1〜5の患者に限定した。また、尿細管のクレアチン分泌に影響する恐れがある薬剤の投与を受けている患者、及びシスタチンC代謝に影響する恐れがある甲状腺機能障害がある患者については、本試験から除外した。
グリコアルブミン(Glycated albumin)は、Lucica GA-Lキット(旭化成ファーマ社)を使用して酵素法によって測定した(Kouzuma T, Uemastu Y, Usami T, Imamura S: Study of glycated amino acid elimination reaction for an improved enzymatic glycated albumin measurement method. Clin Chim Acta 2004;346:135-143)。グリコアルブミンは、同一血清サンプルにおいて、ブロモクレゾールパープル法を用いて測定された全アルブミン量に対する割合(%)として算出した(Kouzuma T, Uemastu Y, Usami T, Imamura S: Study of glycated amino acid elimination reaction for an improved enzymatic glycated albumin measurement method. Clin Chim Acta 2004;346:135-143)。
また、血清シスタチンCは、金コロイド免疫アッセイ(Alfresa Pharma社)によって測定した(Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S, Japanese CD: GFR Estimation Using Standardized Serum Cystatin C in Japan. American Journal of Kidney Diseases 2013;61:197-203)。
その他の臨床パラメータについては、市販の測定キット、測定装置等を使用して測定した。
1−2.血清クレアチン値、血清シスタチンC値、及び血清クレアチン値と血清シスタチンC値の組み合わせに基づくeGFRによる腎機能の評価
血清クレアチン値に基づくeGFR(eGFRcr)の推算式として、非特許文献3に記載されている下記式を使用した。
Figure 2015096835
[式中、Crは、血清クレアチン値(mg/dl)を示す]
血清シスタチンC値に基づくeGFR(eGFRcy)の推算式として、非特許文献12に記載されている下記式を使用した。
Figure 2015096835
[式中、CysCは血清シスタチンC値(mg/dl)を示す]
血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づくeGFR(eGFRcr-cys)の推算式として、非特許文献11に記載されている下記式を使用した。
Figure 2015096835
[式中、CysCは血清シスタチンC値(mg/dl)を示し、Crは血清クレアチン値(mg/dl)を示す]
1−2.C in の測定
Cinは、イヌリンを用いたconstant inputクリアランス試験によって測定した。Horio等の方法(Horio M, Imai E, Yasuda Y, Hishida A, Matsuo S: Simple sampling strategy for measuring inulin renal clearance. Clin Exp Nephrol 2009;13:50-54)に従って、絶食状態の朝に前腕の肘前の静脈からイヌリンを持続的に静注し、1回の採尿によってCinを測定する方法で行った。具体的な方法は以下の通りである。先ず、静注の15分前に患者に500mlの水を摂取させた。1w/v%のイヌリンを含む生理食塩水を用いて、最初の30分間は300 ml/hで静注し、その後の90分間は100 ml/minで静注した。患者は、静注開始から45分間の時点で完全に排尿した。また、それと同時に、血漿イヌリンの測定用の血液サンプルを収集した。また、積極補水のために、排尿時に180mlの水を経口的に摂取させた。血液及び尿サンプルは、クリアランス期間が終わるまで採取し、血漿及び尿中のイヌリン濃度をそれぞれ測定した。クリアランス試験の正確性を高めるために、尿の回収時間は90分に設定した。Cinは、UinV/Pin 法(Uinは尿中イヌリン濃度、Vは尿量、Pinは血漿中イヌリン濃度を示す)にとって算出した。Pinは、クリアランス期間の始まりと終わりでの血漿中イヌリン濃度の平均値である。血漿中イヌリン濃度は、N-1ナフチルエチレンジアミンとCorning 258分光光度計によるアントロン法を用いて、比色測定によって測定した(Kimata S, Mizuguchi K, Hattori S, Teshima S, Orita Y: Evaluation of a new automated, enzymatic inulin assay using D-fructose dehydrogenase. Clin Exp Nephrol 2009;13:341-349)。また、23名の糖尿病患者及び36名の非糖尿病患者からなる59名の患者において、Cin測定中にクレアチンクリアランスも同時に測定した。
1−3.統計手法
本明細書において、データは「平均値±SD」として表記する。2つの変数間の相関については、単回帰分析を用いて分析した。また、eGFR/Cinと臨床パラメータとの関係を解析するために多重回帰分析を行った。CinとeGFRの間での回帰直線のinterceptの違いは、共分散分析(ANCOVA)によって解析した。全ての分析は、StatView 5 (SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて行った。統計学的有意差はp<0.05に設定した。
ヘモグロビンA1cによる修正を備えたCin及びその修正のないCinと、各eGFRとの一致に関しては、級内相関係数(ICC)を用いて評価した。
2.結果
2−1.臨床的特徴と腎機能
本試験を行った80名の被験者のベースライン特性を表1に示す。前被験者の平均年齢は56.6±15.4歳であり、35名(43.8%)が男性である。平均血清クレアチン値、血清シスタチンC値、eGFRcr、eGFRcys、eGFRcr-cys及びCinは、それぞれ、1.0±0.5 mg/dl、1.2±0.7 mg/dl、64.1±23.7 ml/min/1.73m2、68.9±26.8ml/min/1.73m2、67.7±27.3 ml/min/1.73m2 及び65.3±23.8 ml/min/1.73m2であった。糖尿病患者の年齢は、非糖尿病患者よりも有意に高かった。Cinについては、糖尿病患者と非糖尿病患者の間で有意な差は認められなかった(p=0.2866)。糖尿病患者における血清クレアチン値は、非糖尿病患者に比べて有意に低かった(p<0.0001)。また、糖尿病患者における血清シスタチンC値も、非糖尿病患者に比べて有意に低かった(p<0.0001)。糖尿病患者におけるeGFRcr、eGFRcys、及びeGFRcr-cysは、いずれも非糖尿病患者に比べて有意に高値であった。これらのデータから、血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づき腎機能の評価は、糖尿病患者における腎機能を過大評価していることが明らかとなった。
Figure 2015096835
2−2.糖尿病患者及び非糖尿病患者における各eGFR(eGFR cr 、eGFR cys 、及びeGFR cr-cys )とC in との関連性
図1に、Cinと各eGFR(血清クレアチン値に基づいて算出したeGFRcr、血清シスタチンC値に基づいて算出したeGFRcys、及び血清クレアチン値と血清シスタチンC値に基づいて算出したeGFRcr-cys)の関係を示す。eGFRcrとCinとの間で有意且つ正の相関があることが、糖尿病患者(r=0.683, p<0.0001)及び非糖尿病患者(r=0.930, p<0.0001)の双方において認められた。また、eGFRcysとCinとの間でも有意且つ正の相関があることが、糖尿病患者(r=0.584, p<0.0001)及び非糖尿病患者(r=0.845, p<0.0001)の双方において認められた。更に、eGFRcr-cysとCinとの間でも有意且つ正の相関があることが、糖尿病患者(r=0.712, p<0.0001)及び非糖尿病患者(r=0.930, p<0.0001)の双方において認められた。
eGFRcr、eGFRcys、及びeGFRcr-cysの各eGFRの測定において、非糖尿病患者の相関係数は、糖尿病患者の場合に比べて大きく、糖尿病患者の場合の回帰直線のinterceptは、非糖尿病患者の場合に比べて有意に高値であった(eGFRcr ; p<0.0001、eGFRcys ; p=0.0027、及びeGFRcre-cys ; p<0.0001)。これらの結果から、前記3つのeGFRでは、糖尿病患者の腎機能を著しく過大評価してしまうことが示された。
2−3.eGFR cr /C in 、eGFR cys /C in 、及びeGFR cr-cys /C in と、臨床パラメータとの関連性
次いで、糖尿病患者の腎機能の過大評価と関連している要因の解明を行った。各eGFRとCinとの間での回帰直線の解離が、eGFRcr-cys/Cin比で表すことができるので、先ず、各種臨床パラメータを用いて各eGFRcr-cys/Cin比の単回帰分析を行った。各eGFRcr-cys/Cin比と、年齢、性別、体重、又は血圧との間で有意な相関は認められなかったが、図2に示すように、各eGFRcr-cys/Cin比と、血糖コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1c (eGFRcr/Cin : r=0.605, p<0.0001, eGFRcy /Cin : r=0.340, p=0.0042, eGFRcr-cys/Cin : r=0.603, p<0.0001)、血清グリコアルブミン(eGFRcr/Cin : r=0.565, p<0.0001, eGFRcys/Cin : r=0.372, p=0.0092, eGFRcr-cys/Cin : r=0.548, p <0.0001)との間で、有意かつ正の相関が認められた。
また、年齢、体重、及び血圧の違いを補正した後でも、血糖コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1c及び血清グリコアルブミンが、eGFRcr/Cin、eGFRcys/Cin、及びeGFRcr-cys/Cinの各eGFRcr-cys/Cin比と相関が認められるかを確認した。その結果、血液ヘモグロビンA1c及び血清グリコアルブミンが、補正後でも、eGFRcr/Cin (n=80)、eGFRcys/Cin (n=70)、及びeGFRcr-cys/Cin (n=70)の各eGFRcr-cys/Cin比との間で、有意且つ正の相関があることが認められた。
2−4.C cr (SF cr )の分泌成分と、血糖コントロール指標との関係
次に、59名の被験者(糖尿病患者23名、及び非糖尿病患者36名)におけるeGFRcrによって評価された腎機能の過大評価の要因を分析した。Ccr (SFcr)の分泌成分を定量するため、下記式に基づいてSFcrを算出した(Carrie BJ, Golbetz HV, Michaels AS, Myers BD: Creatinine - an Inadequate Filtration Marker in Glomerular-Diseases. Am J Med 1980;69:177-182)。
SFcr=(Ccr - Cin) / Ccr
SFcrと血液ヘモグロビンA1c及び血清グリコアルブミンとの関係を調べたところ、SFcrと血液ヘモグロビンA1cとの間(r=0.359, p=0.0053)、及びSFcrと血清グリコアルブミンとの間(r=0.536, p=0.0009)で有意な正の相関があることが分かった。
2−5.血糖コントロール指標により補正されたeGFRの推算式
図2に示す回帰直線から、各eGFRの推算式について、血糖コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1c(HbA1c)と血清グリコアルブミン(GA)によって補正することを検討した。一次関数(y=ax + c;y=各eGFR/Cin、x=HbA1c又はGA、a=傾き、及びb=intercept)を用いて、血糖コントロールの指標である血液ヘモグロビンA1c値(血液HbA1c値)と血清グリコアルブミン値(血清GA値)によって補正したeGFRを求めた。
図2に示す結果に基づいて、血液HbA1c値を使用する場合、eGFR/Cin=傾き×血液HbA1c値+ intercept;つまりCin=eGFR / (傾き×血液HbA1c値+ intercept)となり、この式で算出されるCinは、血液HbA1c値で補正されたeGFRになる。
また、図2に示す結果に基づいて、血清GA値を使用する場合、eGFR/Cin=傾き×血清GA値+ intercept;つまりCin=eGFR / (傾き×血清GA値+ intercept)となり、この式で算出されるCinは、血清GA値で補正されたeGFRになる。
前記式を使用することにより、血糖コントロールの指標である血液HbA1c値と血清GA値によって補正された各eGFRの推算式として下記1)〜6)が見出された。
1) eGFRcr(HbA1c補正後)=eGFRcr / (0.428 + 0.085 × 血液HbA1c値)
[式1)中、eGFRcr(HbA1c補正後)は、eGFRcrを血液HbA1c値によって補正した値を示す。]
2) eGFRcr(GA補正後)=eGFRcr / (0.525 + 0.028 ×血清GA値)
[式2)中、eGFRcr(GA補正後)は、eGFRcrを血清GA値によって補正した値を示す。]
3) eGFRcys(HbA1c補正後)=eGFRcys / (0.734 + 0.059 ×血液HbA1c値)
[式3)中、eGFRcys(HbA1c補正後)は、eGFRcysを血液HbA1c値によって補正した値を示す。]
4) eGFRcys(GA補正後)=eGFRcys / (0.785 + 0.020 ×血清GA値)
[式4)中、eGFRcys(GA補正後)は、eGFRcysを血清GA値によって補正した値を示す。]
5) eGFRcr-cys(HbA1c補正後)=eGFRcr-cys / (0.490 + 0.089 ×血液HbA1c値)
[式5)中、eGFRcr-cys (HbA1c補正後)は、eGFRcr-cysを血液HbA1c値によって補正した値を示す。]
6) eGFRcr-cys(GA補正後)=eGFRcr-cys / (0.633 + 0.027 ×血清GA値)
[式6)中、eGFRcr-cys (GA補正後)は、eGFRcr-cysを血清GA値によって補正した値を示す。]
2−6.糖尿病患者及び非糖尿病患者におけるC in 、eGFR cr 、eGFR cys 、eGFR cr-cys 、及びヘモグロビンA1c とグリコアルブミンによって補正された各eGFR
表1に示すように、糖尿病患者と非糖尿病患者との間でCinの実測値の点で有意な差は認められないが、補正されていないeGFRcr (p<0.0001)では有意な差がある。しかしながら、予想通り、血液ヘモグロビンA1c値又は血清グリコアルブミン値によって補正されたeGFRcrは、糖尿病患者と非糖尿病患者との間で有意な差は認められなかった(それぞれp=0.1841 及びp=0.2493)。更に、補正されていないeGFRcysは、糖尿病患者と非糖尿病患者との間で有意な差(p=0.0017)があったが、血液ヘモグロビンA1c値又は血清グリコアルブミン値によって補正されたeGFRcysでは、これらの患者間で差が認められなかった(それぞれp=0.1393及びp=0.2571)。また、最終的に、補正されていないeGFRcr-cysでは糖尿病患者と非糖尿病患者との間で有意な差(p<0.0001)があったが、血液ヘモグロビンA1c値又は血清グリコアルブミン値によって補正されたeGFRcr-cysでは、これらの患者間で差が認められなかった(それぞれp=0.0562及びp=0.1149)。
2−7.各eGFR(eGFR cr 、eGFR cys 、及びeGFR cr-cys )と、血糖コントロール指標で補正した各eGFRと、C in との関係及び一致
Cinと、補正していない各eGFR(eGFRcr、eGFRcys、及びeGFRcr-cys)と、血液ヘモグロビンA1c値で補正した各eGFRとの間の相関及び級内相関係数(ICC)を求め、前記補正の有効性を確認した。表2に示すように、全ての患者において、血液ヘモグロビンA1c値によって補正された各eGFRとCinとの間の相関係数及びICCは、補正していないeGFRとCinとの間より高くなっていた。また、糖尿病患者において、血液ヘモグロビンA1c値によって補正された各eGFRとCinとの間の相関係数及びICCは、補正していないeGFRを使用した場合よりも高くなっていた。データは具体的に示していないが、同様に、全ての患者(特に糖尿病患者)において、グルコアルブミンによって補正された各eGFRとCinとの間の相関係数及びICCは、補正していないeGFRを使用した場合よりも高くなっていた。
Figure 2015096835

Claims (9)

  1. 糖尿病患者の腎機能を評価するために使用される腎機能評価マーカーであって、血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンからなることを特徴とする、腎機能評価マーカー。
  2. 糖尿病患者の推算糸球体濾過率をより正しい値に補正するために使用される、請求項1に記載の腎機能評価マーカー。
  3. 補正される推算糸球体濾過率が、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値を用いて推算される推算糸球体濾過率である、請求項2に記載の腎機能評価マーカー。
  4. 糖尿病患者の腎機能を検査する方法であって、
    糖尿病患者から採取した血液サンプルから血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を測定する第1工程、及び
    前記第1工程で測定された血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正された推算糸球体濾過率を推算する第2工程
    を含むことを特徴とする、検査方法。
  5. 前記第2工程において、血液ヘモグロビンA1c値及び/又は血清グリコアルブミン値を用いて補正された推算糸球体濾過率を下記1)〜6)のいずれかの式によって推算する、請求項4に記載の検査方法:
    1) eGFRcr(HbA1c補正後)=eGFRcr / (0.428 + 0.085 × 血液HbA1c値)
    [式1)中、eGFRcr(HbA1c補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
    2) eGFRcr(GA補正後)=eGFRcr / (0.525 + 0.028 ×血清GA値)
    [式2)中、eGFRcr(GA補正後)は、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcrは、血清クレアチン値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
    3) eGFRcys(HbA1c補正後)=eGFRcys / (0.734 + 0.059 ×血液HbA1c値)
    [式3)中、eGFRcys(HbA1c補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
    4) eGFRcys(GA補正後)=eGFRcys / (0.785 + 0.020 ×血清GA値)
    [式4)中、eGFRcys(GA補正後)は、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcysは、血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
    5) eGFRcr-cys(HbA1c補正後)=eGFRcr-cys / (0.490 + 0.089 ×血液HbA1c値)
    [式5)中、eGFRcr-cys (HbA1c補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血液ヘモグロビンA1c値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血液HbA1c値は、血液ヘモグロビンA1c値を示す。]
    6) eGFRcr-cys(GA補正後)=eGFRcr-cys / (0.633 + 0.027 ×血清GA値)
    [式6)中、eGFRcr-cys (GA補正後)は、血清クレアチン値と血清シスタチンC値を用いて算出された推算糸球体濾過率を血清グリコアルブミン値によって補正した値を示し、eGFRcr-cysは、血清クレアチン値と血清シスタチンC値の双方を用いて算出された推算糸球体濾過率を示し、血清GA値は、血清グリコアルブミン値を示す。]
  6. 補正される推算糸球体濾過率が、血清クレアチン値及び/又は血清シスタチンC値を用いて推算される推算糸球体濾過率である、請求項4又は5に記載の検査方法。
  7. 糖尿病患者の腎機能を検査するために使用される腎機能の検査薬であって、
    血液ヘモグロビンA1c及び/又は血清グリコアルブミンを検出可能な試薬を含むことを特徴とする、検査薬。
  8. 糖尿病患者の推算糸球体濾過率をより正しい値に補正するために使用される、請求項7に記載の検査薬。
  9. 更に、血清クレアチン及び/又は血清シスタチンCを検出可能な試薬を含む、請求項7又は8に記載の検査薬。
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