JP2015087214A - 維管束植物の健全度評価方法 - Google Patents

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健介 蔭山
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Abstract

【課題】騒音や茎の振動などのノイズに起因するAE(アコースティックエミッション)とキャビテーションに起因するAEとを判別し得る、改良された維管束植物の健全度評価方法を提供する。
【解決手段】維管束植物の軸100の外面に取り付けられたAE検知手段1a、1bは、キャビテーションの発生箇所に最も近くに位置する一のAEセンサのみでキャビテーションに起因したAEの検知を行うことができる。残りのAEセンサでは前記一のAEセンサが検知したノイズに起因したAEと同一のAEの検知は行えるものの、前記一のAEセンサで検知した前記キャビテーションに起因したAEの検知は行えないような相対位置関係でそれぞれ取り付けられ、ノイズに起因したAEを取り除いて、キャビテーションに起因したAEだけを検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、草本植物、木本植物などの維管束組織を有する維管束植物の健全度評価方法に関するものである。
維管束植物には、水分の輸送経路である木部と、葉の光合成で作られた栄養分の輸送経路である師部とを有する維管束組織が存在しており、このような維管束植物は、葉の蒸散によって発生した負圧により、木部を通じて水分を根から葉へ引き上げることができる。しかしながら、このような根から葉への水分の供給が、乾燥ストレス、塩分ストレス、根の発達障害などにより妨げられると、木部への負圧が増加してしまう。これを「水ストレスが増加する」といい、この状態が続くと、ついには木部要素に空気の微小な泡が入り込んで発泡する。これを「キャビテーション」と呼び、これにより木部要素が空気で満たされた状態となることを「エンボリズム」と呼ぶ。エンボリズムが続くと、通水抵抗が増し、水分供給能力が低下していくが、エンボリズム状態の木部要素は再度の水の充填により修復される。これを「リフィリング」と呼ぶ。リフィリングは、蒸発量が大きい昼間においても行われ、これにより木部の水分供給能力が維持される。
しかしながら、さらに水ストレスが増し、キャビテーションを生じる木部要素が増えると、リフィリングできず恒久的にエンボリズム状態にある木部要素が増加してしまい、その結果、水分供給能力が大幅に低下し、これにより、植物がしおれる要因が生じる。
このようなキャビテーションを生じる木部要素の増大から起因する木部要素のエンボリズムの状態を把握する手段として、本発明者は、特許文献1に、キャビテーションにより生じるアコースティック・エミッション(AE)の測定により、維管束組織中の木部のエンボリズムが修復できないレベルに達しているか否かを判定する方法(以下「健全度評価方法」という)を提案した。
キャビテーションに起因するAEは、通常、AEセンサによって測定される。AEセンサには、圧電素子、静電容量素子、エレクトレット素子などが使用され、維管束組織を有する茎の表面に伝播したAEの応力波が電気信号に変換される。また、より安価な方法として加速度センサを用いることも可能であり、AEセンサと同様、圧電素子、静電容量素子、エレクトレット素子などが使用される(以下、これらのセンサを単に「AEセンサ」という)。
国際公開第2010/064669号
しかしながら、キャビテーションに起因するAEはエネルギーが微弱であるため、AEセンサによってキャビテーションに起因するAEを検出する際には、以下のような問題が生じうる。
まず、周波数が20kHz以下の応力波は、外部の騒音や茎の振動からセンサが受け取るエネルギーと比較して大きな差がないため、これらのノイズに起因して検出される信号と、キャビテーションに起因して検出される信号とを判別することが困難な場合がある。
また、周辺環境にある物の落下などによる衝撃音、農作業などによって生じる茎の大きな揺れなど、維管束植物に対し突発的に大きなエネルギーが与えられる可能性があり、かかる場合には、周波数が20kHz以上の超音波領域の応力波も発生し、このような応力波とキャビテーションに起因するAEとを判別することが困難な場合がある。
さらに、キャビテーションに起因するAEを測定するために使用される電気機器から発生する電磁波ノイズは、ある程度はセンサをシールドすることによって除外することは可能であるものの、センサによって、キャビテーションに起因したAEを変換した電気信号は微弱であるため、突発的な電磁パルス(例えば、灌水ポンプの駆動、エアコンの作動など)との区別が困難な場合がある。
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑み、維管束植物の軸の外面にAE検知手段を適正に取り付けることによって、ノイズに起因したAEを取り除いて、キャビテーションに起因したAEだけを検知し得るようにした、改良された維管束植物の健全度評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討を進めた結果、維管束植物の軸の外面に複数のAEセンサを近接して配置し、かつこれらのAEセンサの距離間の適正化を図ることで、騒音や茎の振動などのノイズに起因するAEとキャビテーションに起因するAEとを判別でき、これにより、従来の維管束植物の健全度評価方法よりもキャビテーションに起因するAEの検出の精度が格段に向上されることを見出した。本発明は、この知見に基づきなされるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)維管束植物の軸の外面に取り付けられたアコースティック・エミッション(AE)検知手段を用いて、維管束植物の維管束組織内で発生するキャビテーションに起因したAEを検知することを含む、維管束植物の健全度評価方法において、
前記AE検知手段は、少なくとも2つのAEセンサを有し、
該少なくとも2つのAEセンサは、前記キャビテーションの発生箇所に最も近くに位置する一のAEセンサのみで、キャビテーションに起因したAEの検知を行うことができ、残りのAEセンサでは、前記一のAEセンサが検知した、ノイズに起因したAEと同一のAEの検知は行えるものの、前記一のAEセンサで検知した前記キャビテーションに起因したAEの検知は行えないような相対位置関係でそれぞれ取り付けられ、これにより、ノイズに起因したAEを取り除いて、キャビテーションに起因したAEだけを検知することを特徴とする、維管束植物の健全度評価方法。
(2)前記少なくとも2つのAEセンサのAEセンサ間距離をd(mm)とし、一のAEセンサで検知した、前記キャビテーションに起因したAEが、前記一のAEセンサに最も近くに位置する他のAEセンサで検知できなくなるときのAEセンサ間距離をda(mm)とし、測定されるAEの周波数の最低値をfae(kHz)とし、AEセンサの測定周波数範囲の下限値をfmin(kHz)とし、かつ前記fminを前記faeよりも低い値に設定するとき、前記AEセンサ間距離dは、
下記の式(I)
da≦d≦(fae/fminda (I)
を満たすことを特徴とする、上記(1)に記載の維管束植物の健全度評価方法。
(3)前記キャビテーションに起因したAEと、前記ノイズに起因したAEとの判別は、
(a)前記少なくとも2つのAEセンサのうち、少なくとも1つのAEセンサから、予め設定したしきい値thを超える突発信号が検出されたときに、該突発信号が検出されたAEセンサの突発信号検出後から所定時間の電気信号の波形を調べ、該波形から得られる信号出力Vout(x)を算出し、
(b)前記突発信号が検出された前記少なくとも1つのAEセンサ以外の他のAEセンサの前記所定時間の電気信号の波形を調べ、該波形から得られる信号出力Vout(i)を算出し、
(c)前記突発信号を検出したAEセンサが複数ある場合には、信号出力Voutの値が最も大きい突発信号を検出した前記一のAEセンサの信号出力をVout(x)、前記一のAEセンサに最も近くに位置する他のAEセンサの信号出力をVout(i)とし、かつ
(d)前記信号出力Vout(x)の値を、前記信号出力Vout(i)の値で除した値Rout(i)が、予め設定したSN比(Rsn)以上であるか否かによって行うことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の維管束植物の健全度評価方法。
(4)前記信号出力Vout(x)およびVout(i)は、電気信号の波形の最大値、両振幅の値、振幅の絶対値の最大値、振幅の絶対値の積分値および振幅を二乗した値の積分値からなる群から選択されることを特徴とする、上記(3)に記載の維管束植物の健全度評価方法。
(5)前記所定時間は、10μ秒以上10m秒以下であることを特徴とする、上記(3)または(4)に記載の維管束植物の健全度評価方法。
(6)前記判別において、さらに、(e)前記信号出力Vout(x)およびVout(i)の値がしきい値Vthを超えているAEセンサの個数を測定することを特徴とする、上記(3)から(5)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(7)前記AEセンサ間距離dが、2da≦d≦(fae/fmindaの関係式を満たすことを特徴とする、上記(2)から(6)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(8)前記測定されるAEの周波数の最低値faeは、20kHz超であることを特徴とする、上記(2)から(7)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(9)前記AEセンサの測定周波数範囲の下限値fminは、20kHz以上であることを特徴とする、上記(2)から(8)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(10)前記少なくとも2つのAEセンサが、ともに同一の軸の外面に取り付けられていることを特徴とする、上記(1)から(9)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(11)前記少なくとも2つのAEセンサのうち、少なくとも1つのAEセンサが、同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に取り付けられていることを特徴とする、上記(1)から(9)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
(12)前記少なくとも2つのAEセンサが、ともに同一の軸の外面に取り付けられ、かつ前記少なくとも2つのAEセンサが取り付けられている軸と同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に、補助センサとして、さらに少なくとも1つの別のAEセンサを取り付けることを特徴とする、上記(1)から(9)までのいずれか1つに記載の維管束植物の健全度評価方法。
本発明によれば、騒音や茎の振動などのノイズに起因するAEとキャビテーションに起因するAEとを判別でき、これにより、従来よりもキャビテーションに起因するAEの検出の精度が格段に向上された維管束植物の健全度評価方法の提供が可能になった。
本発明に従う維管束植物の健全度評価方法に用いた代表的な装置構成の概略図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法に用いた別の装置構成の概略図であって、吸音シートを用いた実施形態を示す。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法に用いた他の装置構成の概略図であって、吸音カバーを用いた実施形態を示す。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法に用いた別の装置構成の概略図であって、吸音体を用いた実施形態を示す。 AEセンサの軸への一の取付け方法を例示的に説明するための模式図である。 AEセンサの軸への他の取り付け方法を例示的に説明するための模式図である。 フィルム状のAEセンサの軸への取り付け方法を例示的に説明するための模式図である。 AEセンサの軸への他の取り付け方法を例示的に説明するための模式図である。 AEセンサの軸への他の取り付け方法を例示的に説明するための模式図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法の原理を説明するための概念図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において、AEセンサ間の距離dがd=daである場合の概念図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法においてAEセンサ間の距離dが、d=2daである場合の概念図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において、daを決定する際に、2つのAEセンサから得られた波形を示すものである。 snを決定する際に、本発明に従う維管束植物の健全度評価方法によって測定されたRoutの値と、検出時間との関係を示したものであって、(a)はRoutの値が0〜250の範囲で測定した結果の一例を示す図であり、(b)は(a)のRoutの値の範囲のうち、0〜20の範囲だけを拡大して示した図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において、2つのAEセンサのうちの1つが、同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に取り付けられている実施形態の概略図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において、3つのAEセンサのうちの1つが、同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に取り付けられている実施形態の概略図である。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において得られたキャビテーションに起因するAEの信号波形例を示すチャートであり、(a)は一のAEセンサでAEを検出したものであって、キャビテーションに起因するAEの信号を検出した場合の例であり、(b)は他のAEセンサにおいては、突発信号は検出されていない場合の例を示す。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において得られた維管束植物の軸の振動による信号波形例を示すチャートであって、(a)は一のAEセンサでAEを検出したものであり、(b)は他のAEセンサでAEを検出したものであって、いずれもノイズ(軸の振動)に起因するAEの信号だけを検出した場合の例を示す。 本発明に従う維管束植物の健全度評価方法において得られたポンプ作動時の電磁ノイズによる信号波形例を示すチャートであって、(a)は一のAEセンサでAEを検出したものであり、(b)は他のAEセンサでAEを検出したものであって、いずれもノイズ(電磁ノイズ)に起因するAEの信号だけを検出した場合の例を示す。
次に、本発明に従う様々な維管束植物の健全度評価方法の実施形態について、図面を参照しながら以下で説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を具体的に説明するために用いた代表的な実施形態を例示したにすぎず、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
図1は、本発明に従う維管束植物の健全度評価方法に用いた代表的な装置の構成の実施形態を示したものである。図1に示す装置は、維管束植物の軸100となる部分、例えば茎の外面に、取付治具2を用いて、少なくとも2つのAEセンサ、図1では2つのAEセンサ1a、1bを有するAE検知手段1Aの2つのAEセンサ1a、1bを同軸上に取り付ける。ここで、各AEセンサ1a、1bには、信号ケーブル3が接続され、各信号ケーブル3は、固定具4を介して測定ボード5に接続されている。そして、各AEセンサ1a、1bから検出された信号は、例えば、測定ボード5からのAD変換、IIRフィルタ、レベルトリガ等により信号出力として、測定ボード5に接続されている、図1の矢印6で示されている制御用PC(図示せず)に表示される。
そして、本発明の構成上の主な特徴は、維管束植物の軸の外面にAE検知手段を適正に取り付けること、より具体的には、AE検知手段を構成する少なくとも2つのAEセンサ、図1では2つのAEセンサ1a、1bを、前記キャビテーションの発生箇所に最も近くに位置する一のAEセンサ1aまたは1bのみで、キャビテーションに起因したAEの検知を行うことができ、残りのAEセンサ1bまたは1aでは、前記一のAEセンサ1aまたは1bが検知した、ノイズに起因したAEと同一のAEの検知は行えるものの、前記一のAEセンサ1aまたは1bで検知した前記キャビテーションに起因したAEの検知は行えないような相対位置関係でそれぞれ取り付けることにある。
図1に示されている2つのAEセンサ1a、1bは、維管束植物の軸100内でキャビテーションが発生した際、AEセンサ1aまたはAEセンサ1bのうちのいずれか一方のAEセンサ1aまたは1bのみがこのキャビテーションに起因するAEを検知でき、他方のAEセンサ1bまたは1aはこのキャビテーションに起因するAEを検知できない間隔だけ離して配置される。すなわち、例えば、AEセンサ1aのみが、維管束植物の軸100内のある箇所からのキャビテーションに起因するAEを検知できる場合には、もう一方のAEセンサ1bは、AEセンサ1aで検知したこのキャビテーションに起因したAEを検知できない相対位置関係でAEセンサ1aから離れて取り付けられている。ここで、維管束植物の軸100内からのキャビテーションに起因するAEは、エネルギーが微弱である一方、ノイズに起因するAEは、エネルギーが強いため、このような相対位置関係で取り付けられている2つのAEセンサ1a、1bのいずれのAEセンサも、同一のノイズに起因するAEを検出する。なお、少なくとも2つのAEセンサ、図1では2つのAEセンサ1a、1bは、キャビテーションが生じる維管束組織の木部からの距離が等しくなるように、互いに軸100の外周面に、軸方向に沿って直線上に配置することが好ましいが、例えば、AEセンサ1bを、AEセンサ1aとは反対側に位置するように軸100の外周面に取り付けることもできる(図示せず)。
図2は、2つのAEセンサ1a、1bを有するAE検知手段1Bの2つのAEセンサ1a、1bに、さらに吸音シート7が取り付けられた維管束植物の健全度評価方法を示したものである。吸音シート7は、それぞれのAEセンサ1a、1bを軸100とともに外周を覆い、クリップ等で取り付けることができる。吸音シート7の種類は、特に限定されないが、例えば、ゴム発泡体、ウレタンフォームなど一般的に吸音に用いられるシートを用いることができる。これにより、外部の騒音から発生する空中超音波が吸収されることで、外部からのノイズを低減することができる。なお、本発明においては、通常はこのような吸音シート7により外部からのノイズを低減しなくとも、少なくとも2つのAEセンサ1a、1bの使用により外部からのノイズと判定することは可能ではあるものの、外部からのノイズが恒常的に発生していて(例えば、灌水ポンプの運転音など)、キャビテーションに起因するAEと外部からのノイズに起因するAEが重なってしまうと、キャビテーションに起因するAEを正確に判別することが困難となる場合がある。したがって、外部からのノイズは突発的な事象となるようにすることがより好ましいため、このような場合、AEセンサ1a、1bを、吸音シート7で覆うとこのような事象の調整はより効果的になる。
一方、図3に示すように、複数のAEセンサを含むセンサ群の外周全体を、吸音カバー8で覆い、例えば、輪ゴム、針金などのワイヤー、テープ、クリップ、マジックテープ(登録商標)などの留め具9で軸100に取り付けることもできる。AEセンサ1つずつを吸音シートで覆うと、2つのAEセンサ1a、1bの間の軸100に吸音シートが触れた場合、軸100の振動の吸収効果が生じ、軸100を伝わる振動ノイズが片方のAEセンサにしか伝わらないことがある。その結果、この振動ノイズがキャビテーションに起因するAEと誤判定されてしまう可能性がある。よって、このように吸音カバー8を設置すれば、2つのAEセンサ1a、1bの間に位置する軸100の部分に吸音カバー8が触れることがないため、その結果、キャビテーションに起因するAEの判別精度を向上させることができる。
また、図4に示すように、吸音シートとは別に、複数のAEセンサ1a、1bを含むセンサ群よりも軸方向外側、より好適には、図4では軸方向両外側の軸100の部分に、吸収体11を取り付けることで、軸100の振動をより効果的に低減することができる。例えば、強風などで軸100が大きく揺れる場合、恒常的に軸100の振動がAEセンサ1a、1bに到達し、キャビテーションに起因するAEと軸100の振動が重なってしまう可能性が高くなる。この場合、図2に示すように吸収体11を軸100に取り付けることにより、センサ群の振動を低減することができ、その結果、突発的に強い振動だけがAEセンサ1a、1bに到達するようになる。吸収体11は、維管束植物の音響インピーダンスに近い材料が望ましく、例えば、スポンジ、ラバーシート、結束バンド、金属板など、対象となる維管束植物に応じて使い分けることができる。また、吸音シートと併用すればさらにより効果的にノイズを低減することができる。
また、図3、図4に示されているように、AEセンサ1a、1bに接続された信号ケーブル3は、該信号ケーブル3からの振動をAEセンサ1a、1bに伝えてしまう恐れがある。そのため、AEセンサ1a、1bを含むセンサ群の信号ケーブル3は可能な限り1本にまとめた被覆ケーブル10とすることが望ましい。これにより、信号ケーブル3からの振動は全てのAEセンサ1a、1bに同程度に伝わるため、それぞれのAEセンサ1a、1bの信号出力に大きな差は生じなくなり、その結果、キャビテーションに起因するAEの区別が容易になる。
AEセンサ1a、1bのセンサ部分は、一般的にPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)などのセラミックス製の圧電素子に金属電極が取り付けられている。それ故、AEセンサ1a、1bを直接、軸100に長期間取り付けておくと、センサの電極部分の金属が腐食し、その結果、金属イオンが維管束植物の軸100内に溶出して、軸100が壊死してしまう場合ある。軸100が一部でも壊死すると、AEセンサ1a、1bの近傍ではキャビテーションが発生しなくなるため、AEセンサ1a、1bのAE検出感度が大きく低下し、また、そもそもAEセンサ1a、1bのセンサ表面が腐食してしまうと、AEセンサ自体の性能にも影響を及ぼす可能性がある。したがって、そのような金属の腐食による軸の壊死を防止するために、AEセンサ1a、1bのセンサ部分を、例えば、ポリビニル系樹脂やシリコーン系樹脂などのスプレーにより絶縁コーティングすることが望ましい。
AEセンサは、様々な固定治具を用いて軸に取り付けることができる。例えば、図5に示されているように、維管束植物の軸20の一方の側にAEセンサ1を、その反対側にゴムシート50を配置し、クリップ35の挟持力を用いてAEセンサ1およびゴムシート50を軸20に押し付けることで、AEセンサ1を軸20に取り付けることができる。
また、図6に示されているように、底部にゴムパッド39が取り付けられているバネ40を有する断面がU字型(コの字型)の基体37と、基体37の頂部の一端側に回動自在で取り付けられ、基体37の頂部の他端側の外面近傍に設けた溝部に係合する鉤部を有する蓋36と、蓋36に設けた貫通ねじ孔に係合し、ねじ込むことによって押し下げることができるネジ33と、一の表面にネジ33の先端が設けられ、他の表面にAEセンサが取り付けられた回転バッファ38とを有する固定治具を用いて、AEセンサ1を軸20に取り付けることができる。
また、図7に示されているように、フィルム状のAEセンサ1を軸20に巻き付け、フレキシブルベース41の先端に設けた面状ファスナーのような接着用テープ42で固定して、AEセンサ1を軸20の外周面に巻き付けることにより、AEセンサ1を軸20に取り付けることができる。また、AEセンサ1を軸20に接着させてもよい。また、AE測定中のAEセンサ1の受信感度を一定に保つために、AEセンサ1を、一定圧力で軸20に押し付ける(又は接着する)こともできる。このときの圧力は10kPa〜5MPaの範囲、好ましくは100kPa〜500kPaの範囲である。また、AEセンサ1と軸20との間に接触媒体としてグリース(図示省略)を塗布すれば、AEセンサ1の測定感度をさらに向上させることもできる。
さらに、図8に示されているように、ホースクランプまたは結束バンド31等を使用して、AEセンサ1を軸20に取り付けることができ、また、図9に示されているように、アルミニウム製の平板34、ネジ33、ナット32で構成される治具でAEセンサ1を軸20に押し付けることで、AEセンサ1を軸20に取り付けることができる。
AEセンサの設置に関し、図10を参照しながらより詳細に説明する。維管束植物の軸は、通常、金属などの工業材料と比較すると超音波領域のAEの減衰率が大幅に大きいため、キャビテーションに起因するAEは通常数mm〜数十mm伝播するとAEセンサで検出不可能なエネルギーとなる。なお、ここではキャビテーションに起因するAEが十分に減衰するまでの伝播距離を減衰距離と呼ぶことにする。図10中、維管束植物の軸内でキャビテーションが発生した箇所をPとすると、AEセンサ1aが、キャビテーションの発生箇所に最も近くに位置するAEセンサに相当する。それ故、2つのAEセンサ1a、1bを軸に取り付け、かつそれぞれのセンサ間の距離dをda以上にすれば、キャビテーションの発生位置からそれぞれのAEセンサ1a、1bまでの伝播距離の差がda以上になるセンサ(図10中、AEセンサ1bに相当)が存在するため、1つのAEセンサ(図10中、AEセンサ1aに相当)でしか検出できないキャビテーションが存在するようになる。したがって、2つのAEセンサ1a、1b間の距離dは、da以上に設定することが望ましい。
一方、2つのAEセンサ1a、1b間の距離dが離れ過ぎると、ノイズに起因するAEを、2つのAEセンサ1a、1bのいずれか一方のAEセンサ1aまたは1bは検知するものの、他方のAEのセンサ1bまたは1aではあまり検出されず、これにより、ノイズに起因するAEを、キャビテーションに起因するAEと誤判定する可能性があるため、2つのAEセンサ1a、1b間の距離dの最大値を設定することが望ましい。ここで、物質を伝播する超音波の減衰率は、周波数の二乗に比例して増加し、また周波数が高いほどより早く減衰する。そこで、測定されるAEの周波数の最低値をfae、AEセンサの測定周波数範囲の下限値をfminとし、かつfminの値をfaeの値よりも低く設定すれば、AEセンサの測定周波数範囲の下限値fminは、外部からの振動の周波数の下限値として特定することが可能となる。つまり、外部からのノイズには、測定されるAEの周波数の最低値よりも低い周波数の超音波もある程度含まれていることに着目すると、この低い周波数は、測定されるAEの周波数よりも遅く減衰することから、外部からの振動の減衰率は、キャビテーションに起因するAEの減衰率のfae/fminの二乗の割合で低下し、外部からの振動は、キャビテーションに起因するAEよりもfae/fminの二乗の割合の距離を同じ減衰率で伝播することが推測される。したがって、外部からの振動の減衰距離をdanとすると、danは、daにfae/fminの二乗を掛けた式、
すなわち、下記の式(II)

で表され、それ故、2つのAEセンサ1a、1b間の距離dの最大値dmaxは、danで表される距離、すなわちdaにfae/fminの二乗を掛けた距離に相当する。
よって、2つのAEセンサ1a、1b間の距離が、da以上かつdmax以下、すなわち、da≦d≦(fae/fmindaであれば、外部からの同一のノイズ(振動)は、2つのAEセンサ1a、1bのいずれのAEセンサにも伝播する一方で、単一のセンサにしか伝播しないキャビテーションによるAEが存在することとなり、ノイズに起因するAEとキャビテーションに起因するAEとの判別の精度をより向上させることができる。
このとき、AEセンサの測定周波数範囲の下限値fminは、測定対象が超音波であることから20kHz以上とし、好ましくは20〜100kHzに設定することができる。一方、測定されるAEの周波数の最低値faeは、式(II)のdanをda以上、かつfmin<faeに設定する必要があることから20kHz超とし、好ましくは40〜500kHzに設定することができる。
次に、AEセンサ間の距離dが、d=daである場合について、図11を参照しながら詳細に説明する。AEセンサ1a、1b間より軸方向外側の軸部分で発生したキャビテーションに起因するAEが、キャビテーション発生位置から遠いAEセンサへ伝播される場合、この伝播距離は、da以上となるため、このキャビテーションに起因するAEは、キャビテーション発生位置から遠いAEセンサへ到達するときには十分に減衰している。そのため、キャビテーション発生位置から遠いAEセンサでは、このキャビテーションに起因するAEからの突発信号は検出されない。一方、キャビテーション発生位置から近いAEセンサでは、このキャビテーションに起因するAEの伝播距離は、da以内となるため、キャビテーション発生位置から近いAEセンサのみが、このキャビテーションに起因するAEからの突発信号を検出することができる。つまり、da≦dとすることで、AEセンサ1a、1b間より軸方向外側の軸部分で発生したキャビテーションに起因するAEからの突発信号については、いずれか一方のAEセンサ1aまたは1bのみが検知することができる。
また、AEセンサ1a、1b間の距離dが、例えば、d=2daである場合について、図12を参照しながら説明する。この場合、AEセンサ1a、1b間より軸方向外側の軸部分で発生したキャビテーションの他に、AEセンサ1a、1b間より軸方向内側の軸部分であっても、AEセンサ1a、1bからda/2以内の位置でキャビテーションが発生すれば、このキャビテーション発生位置から遠いAEセンサへ伝播される場合、この伝播距離は、da以上となるため、このキャビテーションに起因するAEは、キャビテーション発生位置から遠いAEセンサへ到達するときには十分に減衰している。そのため、キャビテーション発生位置から遠いAEセンサでは、このキャビテーションに起因するAEからの突発信号は検出されない。一方、このキャビテーション発生位置から近いAEセンサでは、このキャビテーションに起因するAEの伝播距離は、da以内(da/2以内)であるため、キャビテーション発生位置から近いAEセンサのみが、このキャビテーションに起因するAEからの突発信号を検出することができる。したがって、AEセンサ1a、1b間の距離dをより大きくすること、例えば、2da≦dとすることで、AEセンサ1a、1b間より外側の軸で発生したキャビテーションだけでなく、AEセンサ1a、1b間より内側の軸で発生したキャビテーションについても、1つのAEセンサのみが、キャビテーションに起因するAEからの突発信号を検出することができる。なお、図11、12ともにAEセンサ1a、1b間の距離は、上記の通り、dmaxより大きくすることはできないため,d≦dmax、すなわち、d≦(fae/fmindaに設定する。
キャビテーションに起因したAEとノイズに起因したAEとの判別は、維管束植物の軸の外面に取り付けられた各AEセンサから検出される電気信号の比較によって行うことができる。以下にその具体的な手順を説明する。
(i)維管束植物の軸、例えば茎に取り付けた複数(N個)のAEセンサ1a、1b、・・・からなるセンサ群を設定する。
(ii)該センサ群のAEセンサ1a、1b、・・・からの電気信号に対してあらかじめ設定したしきい値thを越えた突発信号が検出された時、該当するx番目のAEセンサの突発信号検出後から所定時間の電気信号波形を調べ、信号出力Vout(x)を算出する。このとき、該所定時間は、10μ秒以上10m秒以下が好ましく、100μ秒以上1m秒以下がより好ましい。また、しきい値thは、電気信号の電圧値または電圧値の絶対値で示される値を意味する。
(iii)突発信号を検出したx番目のAEセンサを除いた他のセンサのVout(i)(i≠x)を算出する。
(iv)突発信号を検出したx番目のAEセンサを除いた他のAEセンサのVout(i)に対する突発信号を検出したx番目のAEセンサVout(x)の比、

(出力比)(i≠x)を算出する。
(v)Rout(i)の値が、突発信号を検出したx番目の一のAEセンサの信号出力のVout(x)と、前記一のAEセンサに最も近くに位置する他のAEセンサの信号出力のVout(i)との比較において、あらかじめ設定したSN比(Rsn)以上であれば、突発信号を検出したx番目のAEセンサは、キャビテーションに起因するAEを検出したと判定する。
信号出力Vout(x)およびVout(i)で示されるパラメータは、特に限定されるものではないが、例えば、電気信号の波形の最大値、両振幅の値、振幅の絶対値の最大値、振幅の絶対値の積分値および振幅を二乗した値の積分値からなる群から選択することができる。
上記工程(i)〜(v)に加えて、さらに、(vi)突発信号を検出したAEセンサにおいて、Vout(x)が一定のしきい値Vthを超えているAEセンサの個数が1つの場合、キャビテーションに起因するAEを検出したと判定する、との工程を加えてもよい。この工程(vi)との併用により、キャビテーションに起因したAEとノイズに起因したAEとの判別の精度をより向上させることができる。つまり、ノイズに起因したAEを複数のAEセンサが検出した場合、仮にそのうちの1つのAEセンサから、減衰したノイズに起因したAEが検出され、このAEがキャビテーションに起因するAEと同程度の強さであったとしても、複数のAEセンサにおけるVout(x)が、全て一定のしきい値Vthを超えることになるため、より精度を増して、ノイズに起因したAEを取り除くことが可能となる。それ故、工程(i)〜(vi)の全ての手順を採用する場合、Rout(i)の値が全てRsn以上であり、かつVout(x)の値がVthを超えているAEセンサの個数が1つである場合に、キャビテーションに起因するAEを検出したと判定される。
このとき、しきい値Vthは、AEセンサがバックグラウンドノイズのみを検出している時のVoutの2倍以上であることが望ましい。
次に、キャビテーションに起因するAEが十分に減衰するまでの伝播距離である減衰距離の決定の手順について説明する。まず、2つのAEセンサを同じ維管束植物の同じ軸に取り付ける。次に、2つのセンサを軸に取り付けた直後にAEセンサ直下で発生するAEを両方のAEセンサで検出し、直下でAEが発生したAEセンサの信号出力の値を他方のAEセンサの信号出力の値で除して、その比を算出する。その後、この2つのAEセンサの距離を徐々に離していき,上記の比がRsn以下となった時、この時のAEセンサ間の距離をdaとする。そして、daの値をAEセンサ間の最小距離、dminと設定する。
この具体例として、2つのAEセンサ(共振周波数 50kHz)を、同じ維管束植物(ここでは、ミニトマト)の同じ軸に15mm離して設置した直後に検出された信号波形を図13に示す。AEセンサの取り付け直後は、AEセンサからの押付力によりAEセンサ直下は大きな圧力変化が生じるため、しばらくの間キャビテーションが発生する。図13のAEセンサAにより検出されたAE波形は、AEセンサAの直下で発生したキャビテーションによるものであり、その後、そのAE波が伝播してAEセンサBで検出されている。このとき、AEセンサBの地点においては、このAE波は軸を伝播する際に徐々に減衰していき、AEセンサ間の距離を離していくほどAE波はさらに減衰し、その結果、AEセンサBで検出されるAEからの信号出力は低下していく。そして、AEセンサAの信号出力に対するAEセンサBの信号出力の比がRsn以下となるAE波形が得られるAEセンサA、B間の距離を、AEセンサ間の最小距離、dminとして設定し、この距離がdaとなる。また、AEセンサは、同じ維管束植物の同じ軸以外にも、異なる軸に複数のAEセンサを取り付けても同様の手順によって、AEセンサ間の最小距離、dminと設定することができる。
次に、Rsnの値の決定方法について説明する。ここでは、図1の測定系でミニトマトの茎のAE測定を行った例を図14に示す。図14では、AEセンサAとAEセンサBからなるセンサ群で、AEセンサAで突発信号が検出された(しきい値thを越える信号が検出された)場合、すなわちx=1(1つのAEセンサAのみが突発信号を検知)のときのRout(2)と検出時間との関係を示している。この試験は恒温室で行われ、12時間周期で照明を点灯/消灯を繰り返している。すなわち、時間軸において、0〜0.5(日)が昼、0.5〜1(日)が夜で、以降、その繰り返しとなっている。図14(a)から、Routが大きい信号は昼に顕著に現れていることが分かる。なお、この試験では、十分に水を与えた状態のミニトマトを使用しているが、その場合、キャビテーションは葉からの蒸散により活発に発生する。つまり、キャビテーションは、葉が蒸散を行う昼に多く発生するため、昼に多く発生している突発信号は、キャビテーションに起因するAEであることが予期される。図14(b)は、図14(a)のRout(2)の1〜20を拡大したものを示している。ここで、図14(b)を参照すると、夜にはRout(2)の値の大半が、2〜3付近に集中していることが読み取れる。ここで、葉からの水の蒸発は活発ではない夜に生じる突発信号の大半はノイズであることが多いことから、この測定系ではRout(2)の値が2〜3付近である突発信号は、ノイズである可能性が高い。そのため、この測定系では、Rout(2)が4以上の突発信号であれば、大半がキャビテーションに起因するAEであると判断することができる。それ故、この測定系の場合においては、Rsnは4に設定される。なお、他の維管束植物についても、同様の手順により、Rsnの値を決定することができる。
本発明に従う維管束植物の健全度評価方法の別の実施形態として、図15に示されているように、維管束植物の軸100とその軸100に結合している別の軸200にAEセンサ1bを取り付けて、キャビテーションに起因するAEを判別することもできる。この実施形態は、木本植物のように軸100の音響インピーダンスが高く、減衰率が低い維管束植物の健全度を評価する場合に効果的である。草本植物の場合、dminは10mm程度の場合が多く、図1のように、AEセンサ1a、1bは、それぞれ近接して設置することが可能である。しかしながら、木本植物の場合、通常dminは草本植物より大きく、100mmを越えるような場合もある。このように、AEセンサ間の距離を大きくすると、AEセンサ間に1つまたは複数の別の軸が結合していることが多い。また、維管束植物の軸は複雑な形状をしているため、設置しやすい場所を選択する際、1つのAEセンサだけが別の軸の結合部の近傍となることがある。その場合、別の軸に振動が発生した際、別の軸との結合部に近いAEセンサだけがその振動を検出し、キャビテーションに起因するAEと誤判定してしまう恐れがある。これを避けるために、図15に示されているように、2つのAEセンサからなるセンサ群において、1つのAEセンサ1aは軸200の結合部の近傍の軸100に取り付け、もう1つのAEセンサ1bを軸100の近傍に結合されている別の軸200に取り付ける。これにより、別の軸200からの振動を、2つのAEセンサ1a、1bの両方で検出することができる。
本発明に従う維管束植物の健全度評価方法のさらなる別の実施形態として、図16に示されているように、2つのAEセンサ1a、1bを維管束植物の同じ軸100に取り付け、さらに、その軸100に結合している別の軸200に、補助センサとして、1つのAEセンサ1cを取り付けて、キャビテーションに起因するAEを判別することができる。このとき、AEセンサ1aまたはAEセンサ1bのRsnを調べて、キャビテーションに起因するAEであるか否かを判定するが、AEセンサ1cのRsnは算出しない。これにより、軸200の振動はAEセンサ1cにより検出して排除できる上に、軸100の振動はAEセンサ1aおよびAEセンサ1bにより検出して排除できる。図15における実施形態では、軸200の揺れの方向によっては、軸200に取り付けたAEセンサ1bと軸100に取り付けたAEセンサ1aとでは軸200の揺れに対する検出感度に大きな差がでてしまう可能性がある。一方、図16における実施形態の場合、軸200で発生したキャビテーションに起因するAEは検出できないものの、軸200による揺れなどのノイズを図15における実施形態よりも高い精度で排除することができる。また、図16において、軸200にさらにAEセンサを追加して、4つのAEセンサを用いると、軸200の揺れによるノイズを、軸200に取り付けた2つのAEセンサで検出することができるので、4つのAEセンサ全てのRsnを調べることで、キャビテーションに起因するAEの検出感度をさらに向上させることができる。
また、本発明における維管束植物の健全度診断のためのキャビテーションに起因するAEの測定は長期に渡ることが多く、例えばミニトマトの場合、定植後から測定を開始すれば3〜6ヵ月程度測定を行う。その間にも維管束植物は成長するため、AEセンサを設置している軸の発達状態も変化する可能性があり、軸の発達に伴ってAEセンサ間の距離dも変化する(通常、増加する)。そのため、例えば、1週間〜1ヵ月ごとにAEセンサを軸から取り外して、daの値を測定し直し、再度AEセンサを軸に取り付け直すことが望ましい。ただし、過去に同じ種の維管束植物でdaを測定したことがある場合には、そのときのdaの値を緩用してAEセンサを軸に取り付け直してもよい。例えばミニトマトの場合、本葉の数、開花した花房の数などで発達状態を分類し、そのときのdaを測定しておくことが考えられる。
以上から、AEセンサ間の距離を一定の間隔以上、好ましくはda以上離して、維管束植物の軸に取り付けた複数のAEセンサのうち、単一のAEセンサのみ突発的な信号が検出されれば、それがキャビテーションに起因するAEであると判別することができる。
また、突発的に生じるノイズによりAEセンサが超音波信号を検出する場合がある。このような信号は、例えば茎の揺れ、突発音、電磁パルスなどにより生じ、これらのノイズはいずれも広範囲に伝播するため、突発信号を検出したAEセンサだけでなく、他のAEセンサも同程度の強度の信号が出力されうる。このような場合であっても、Rsnを適切に設定することにより、これらのノイズに起因するAEからの信号と維管束植物の軸から生じるキャビテーションに起因するAEからの信号とを判別することができる。
さらに、AEセンサの個数を増やすほどキャビテーションに起因するAEからの信号の判別精度を向上させることができ、特に、多数の維管束植物の健全度診断を行う場合、より精密な健全度診断が可能になる。そのため、少なくとも2つのAEセンサを含むセンサ群を多数設置することで、例えば、大規模栽培における維管束植物の健全度診断を適切に評価することが可能となる。
以下に、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、図1に示される測定系で、ミニトマトの茎の同軸の外周面上に、2台のヘッドアンプ内蔵型AEセンサ1a、1b(株式会社富士セラミックス社製、型番:M304A)を設置し、図14の試験結果をもとにRsnの値を4として、図13に示されるような方法でda(dmin)の値を調べたところ、da=16mmであった。ここで、使用したAEセンサは広帯域センサであるため、20kHz以下の振動も検出する。そのため、AEセンサからの出力をハイパスフィルター回路(バターワース6次)によって50kHz未満の低周波をカットした。すなわち、fmin=50kHzとした。
さらに、図13に示されるような方法において、AEセンサ直下で検出されたAEの周波数は、およそ100kHz〜500kHzであったため、測定されるAEの周波数を100kHz、すなわち、fae=100kHzとした。
よって、上記式(II)に基づき、dan(dmax)の値を計算すると、dmax=64mmとなった。
図1に示すようにミニトマトの茎の同軸100に、2つのAEセンサ1a、1bを50mm離して取り付け、ミニトマトの維管束組織内で発生するAEの測定を行った。AEセンサ1a、1bの取り付けは、図9に示す平板、ネジ、ナットで構成される治具でAEセンサ1a、1bを押し付けることで行った。AEの測定を行った結果、得られたAE波形を図17〜19に示す。
図17においては、キャビテーションに起因するAEの信号波形例を示している。図17(a)に示されている波形は、AEセンサ1aで検出された信号の波形であり、図17(b)に示されている波形は、AEセンサ1bで検出された信号である。図17に示されるように、AEセンサ1aでは、突発信号を検出しているももの、AEセンサ1bでは突発信号は観察されていない。ここで、AEセンサ1aの出力信号Voutとして、AEセンサ1aの両振幅を測定すると、77.1mVであり、また、AEセンサ1bの出力信号Voutとして、AEセンサ1bの両振幅を測定すると、16.7mVであった。したがって、AEセンサ1aで突発信号が検出されていることから、AEセンサ1aの出力信号がVout(x)、AEセンサ1bの出力信号が信号出力Vout(i)であるため、Rout(i)を求めると、AEセンサ1aの両振幅(77.1mV)/AEセンサ1bの両振幅(16.7mV)は、4.6となり、あらかじめ設定したRsn=4を超えているため、AEセンサ1aで検出された突発信号は、キャビテーションに起因するAEと判別された。
図18においては、維管束植物の軸の振動による信号波形例を示している。図18(a)に示されている波形は、AEセンサ1aで検出された信号の波形であり、図18(b)に示されている波形は、AEセンサ1bで検出された信号である。図18に示されるように、AEセンサ1a、AEセンサ1bのいずれも突発信号を検出している。ここで、AEセンサ1aの出力信号Voutとして、AEセンサ1aの両振幅を測定すると、91.7mVであり、また、AEセンサ1bの出力信号Voutとして、AEセンサ1bの両振幅を測定すると、133.0mVであった。したがって、AEセンサ1bの出力信号Voutの方が大きい値であることから、AEセンサ1bの出力信号が信号出力Vout(x)、AEセンサ1aの出力信号がVout(i)となる。よって、Rout(i)を求めると、AEセンサ1bの両振幅(133.0mV)/AEセンサAの両振幅(91.7mV)は、1.5となり、あらかじめ設定したRsn=4未満であるため、AEセンサ1a、AEセンサ1bで検出された突発信号は、いずれもノイズに起因するAEと判別された。
図19においては、ポンプ作動時の電磁ノイズによる信号波形例を示している。図19(a)に示されている波形は、AEセンサ1aで検出された信号の波形であり、図19(b)に示されている波形は、AEセンサ1bで検出された信号である。図19に示されるように、AEセンサ1a、AEセンサ1bのいずれもパルス波形が観察されていることから、AEセンサ1a、AEセンサ1bのいずれも突発信号を検出していることがわかる。ここで、AEセンサ1aの出力信号Voutとして、AEセンサ1aの両振幅を測定すると、27.1mVであり、また、AEセンサ1bの出力信号Voutとして、AEセンサ1bの両振幅を測定すると、41.7mVであった。したがって、AEセンサ1bの出力信号Voutの方が大きい値であることから、AEセンサ1bの出力信号が信号出力Vout(x)、AEセンサ1aの出力信号がVout(i)となる。よって、Rout(i)を求めると、AEセンサ1bの両振幅(41.7mV)/AEセンサ1aの両振幅(27.1mV)は1.5となり、あらかじめ設定したRsn=4未満であるため、AEセンサ1a、AEセンサ1bで検出された突発信号は、いずれもノイズに起因するAEと判別された。
本発明によれば、騒音や茎の振動などのノイズに起因するAEとキャビテーションに起因するAEとを判別でき、これにより、従来よりもキャビテーションに起因するAEの検出の精度が格別に向上された維管束植物の健全度評価方法の提供が可能になった。
1、1a、1b、1c AEセンサ
1A、1B AE検知手段
2 取付治具
3 信号ケーブル
4 固定具
5 測定ボード
7 吸音シート
8 吸音カバー
9 留め具
10 被覆ケーブル
11 吸音体
20 軸
31 ホースクランプまたは結束バンド
32 ナット
33 ネジ
34 平板
35 クリップ
36 蓋
37 基体
38 回転バッファ
39 ゴムパッド
40 バネ
41 フレキシブルベース
42 接着用テープ
50 ゴムシート
100 軸
200 軸

Claims (12)

  1. 維管束植物の軸の外面に取り付けられたアコースティック・エミッション(AE)検知手段を用いて、維管束植物の維管束組織内で発生するキャビテーションに起因したAEを検知することを含む、維管束植物の健全度評価方法において、
    前記AE検知手段は、少なくとも2つのAEセンサを有し、
    該少なくとも2つのAEセンサは、前記キャビテーションの発生箇所に最も近くに位置する一のAEセンサのみで、キャビテーションに起因したAEの検知を行うことができ、残りのAEセンサでは、前記一のAEセンサが検知した、ノイズに起因したAEと同一のAEの検知は行えるものの、前記一のAEセンサで検知した前記キャビテーションに起因したAEの検知は行えないような相対位置関係でそれぞれ取り付けられ、これにより、ノイズに起因したAEを取り除いて、キャビテーションに起因したAEだけを検知することを特徴とする、維管束植物の健全度評価方法。
  2. 前記少なくとも2つのAEセンサのAEセンサ間距離をd(mm)とし、一のAEセンサで検知した、前記キャビテーションに起因したAEが、前記一のAEセンサに最も近くに位置する他のAEセンサで検知できなくなるときのAEセンサ間距離をda(mm)とし、測定されるAEの周波数の最低値をfae(kHz)とし、AEセンサの測定周波数範囲の下限値をfmin(kHz)とし、かつ前記fminを前記faeよりも低い値に設定するとき、前記AEセンサ間距離dは、
    下記の式(I)
    da≦d≦(fae/fminda (I)
    を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  3. 前記キャビテーションに起因したAEと、前記ノイズに起因したAEとの判別は、
    (a)前記少なくとも2つのAEセンサのうち、少なくとも1つのAEセンサから、予め設定したしきい値thを超える突発信号が検出されたときに、該突発信号が検出されたAEセンサの突発信号検出後から所定時間の電気信号の波形を調べ、該波形から得られる信号出力Vout(x)を算出し、
    (b)前記突発信号が検出された前記少なくとも1つのAEセンサ以外の他のAEセンサの前記所定時間の電気信号の波形を調べ、該波形から得られる信号出力Vout(i)を算出し、
    (c)前記突発信号を検出したAEセンサが複数ある場合には、信号出力Voutの値が最も大きい突発信号を検出した前記一のAEセンサの信号出力をVout(x)、前記一のAEセンサに最も近くに位置する他のAEセンサの信号出力をVout(i)とし、かつ
    (d)前記信号出力Vout(x)の値を、前記信号出力Vout(i)の値で除した値Rout(i)が、予め設定したSN比(Rsn)以上であるか否かによって行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  4. 前記信号出力Vout(x)およびVout(i)は、電気信号の波形の最大値、両振幅の値、振幅の絶対値の最大値、振幅の絶対値の積分値および振幅を二乗した値の積分値からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  5. 前記所定時間は、10μ秒以上10m秒以下であることを特徴とする、請求項3または4に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  6. 前記判別において、さらに、(e)前記信号出力Vout(x)およびVout(i)の値がしきい値Vthを超えているAEセンサの個数を測定することを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  7. 前記AEセンサ間距離dが、2da≦d≦(fae/fmindaの関係式を満たすことを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  8. 前記測定されるAEの周波数の最低値faeは、20kHz超であることを特徴とする、請求項2から7までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  9. 前記AEセンサの測定周波数範囲の下限値fminは、20kHz以上であることを特徴とする、請求項2から8までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  10. 前記少なくとも2つのAEセンサが、ともに同一の軸の外面に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  11. 前記少なくとも2つのAEセンサのうち、少なくとも1つのAEセンサが、同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
  12. 前記少なくとも2つのAEセンサが、ともに同一の軸の外面に取り付けられ、かつ前記少なくとも2つのAEセンサが取り付けられている軸と同一の維管束植物の枝分かれした異なる軸の外面に、補助センサとして、さらに少なくとも1つの別のAEセンサを取り付けることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の維管束植物の健全度評価方法。
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