JP2013055919A - 音波検出センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】検査対象において発生する音波を検出することを可能にする。
【解決手段】入力電気信号が印加されると、液体中に縦波が照射される。縦波はダイアフラム4によって反射され、遅延電気信号として検出される。一方、入力電気信号の印加により生じる結合信号も検出される。このとき、検査対象に衝撃が加えられると、それにより発生した音波は、振動伝搬体5を介してダイアフラム4に伝搬され、ダイアフラム4が振動し、ダイアフラム4と対向電極3との離間距離が変動する。その結果、遅延電気信号と結合信号の干渉信号が生じる。このようにして、検査対象において発生する音波を干渉信号として検出することを可能にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、検査対象が振動や衝撃を受けることにより発生する音波や、検査対象としての生体などに生理的に発生する音波を検出することができる音波検出センサに関するものである。
家屋や建造物の配線、土台、柱、壁等の部材がネズミ等の小動物やシロアリ等の害虫によって侵食されることがある。金属材料が長期間にわたり繰り返し力を受けることにより亀裂が生じることがある。また、トンネル等の部材として使用されているコンクリート塊が、長期間にわたる振動、衝撃、自然破壊等により劣化して、ひび割れや落下を生じることがある。このような被害を最小限にとどめるための有効な手段として、検査対象に発生する音波を高感度で捉えるセンサを設置することが挙げられる。さらに、医学的見地から、生体などの診断の有力な手段の1つとして、生体などにおいて生理的に発生する音波を高感度で捉えるセンサの開発が嘱望される。
近年、建材におけるシロアリの食害時の弾性波を検出することにより、シロアリの食害を発見するシロアリの食害検出装置(特許文献1)が公開されている。これは、検査対象建材に金属片の一部を埋め込み、その金属片の露出部分にセンサを当接させる構成を有し、シロアリの食害時に金属片を介して伝搬する弾性波をセンサによって検出するというものである。ここでのセンサは、検出素子として圧電性セラミック等が採用されており、検出素子と金属片とを当接させている。すなわち、使用時においては、個別に検出素子と金属片とを、接着剤により固着したり、ゴムベルト、バネ等により密接したりすることを必要とする。また、検出感度を上げるためには、固着面積または密接面積を増大することを必要とする。その結果、取り付けの容易性、装置ごとの感度のばらつき、耐久性、量産性に問題を有し、装置の小型化も困難であり、狭い場所での使用は困難である。
害虫を検出する木材の側面に超音波の送波器と受波器を設け、受波器の出力データを処理することにより、木材中の害虫の存在の有無を検出する害虫検出装置(特許文献2)が公開されている。これは、シロアリが木材のセルロースを食べることにより木材内部に形成された侵食部を検出することにより、シロアリの食害を検出するものであって、侵食部という特定部位での検出に限られているため、1つの木材を対象とするだけでも、かなりの数量の装置を必要とし実用性に乏しい。また、送信器からの超音波を効率よく受信するためには、木材ごとに受信器の取り付け位置に工夫を要することとなり、取り付けコストの上昇を招くばかりでなく、装置ごとの感度のばらつきにも問題を有することとなる。
コンクリ−ト構造物の亀裂等の内部状態を診断するための非破壊検査装置(特許文献3)が公開されている。これは、亀裂等とコンクリートの表面等との間に生ずる多重反射波を超音波センサによって検出することにより、コンクリート構造物等の内部状態を診断する装置である。超音波センサは、所定の中心周波数を有する超音波を送信する送波器と、多重反射波を受信して電気信号に変換する受波器を含む。そのため、亀裂が送波伝搬路上に存在することが条件となる。従って、コンクリート表面に対し垂直方向に送信される超音波の送波伝搬路上に存在する亀裂に対しては、多重反射波を最も効率よく受信することが可能であり、広範囲な深さの亀裂に対応しうる。しかしながら、コンクリート全体の劣化状態を検出するには、コンクリート表面に対し、スキャンさせるごとくセンサを移動させるか、多量のセンサを必要とし、多大な検査労力を要することとなり、効率の面で問題があり、実用性に乏しい。
このようにして、従来の害虫検出装置や非破壊検査装置で採用されているセンサ技術は前述した問題点を有するが、その他、消費電力や、費用対効果などにおいても問題を有する。
近年、地震予知装置(特許文献4)が公開されている。これは、地震発生前に生じる微弱な磁気の異常や、極低周波音などを動物が感知して異常行動を起こすということを前提としたもので、具体的には、所定の期間内にトカゲが尾を立てたり壁などに登った回数又は時間を計測して、それらが所定の閾値に達した場合に地震が発生するものと推定している。すなわち、トカゲがセンサの役割を演じているものであり、トカゲの生態を熟知することを必要とするばかりでなく、飼育の手間や、健康管理も必要で、タイマーを利用しての画像撮影などの手段を必要とする。
このようにして、従来、地震予知装置においては動物をセンサとして利用するものが認められるものの、極低周波音の検出に有効な工学的センサの利用は今後の課題である。
特開平11−089500号公報 特開2002−186396号広報 特開2003−149214号広報 特開2010−085095号広報
解決しようとする課題は、感度が低いこと、個体ごとに感度のばらつきを生じやすいこと、部材に対する取り付け容易性に劣ること、低電圧および低消費電力駆動が困難であること、耐久性に劣ること、量産性が困難であること、規模の縮小が難しく限られたスペースのもとでの使用が困難であることである。
本発明は、検査対象が自然界の外的要因を受けることにより発生する音波や、人為的な要因を受けることにより発生する音波や、検査対象としての生体や動植物などにおいて生理的に発生する音波を検出することが可能な音波検出センサを提供することを目的とする。
検査対象が自然界の外的要因を受けるとは、たとえば、ネズミ等の小動物やシロアリ等の害虫によって、家屋や建造物の配線、土台、柱、壁等の部材が侵食されることや、地震などにより発生する極低周波音が建造物の部材に伝搬することを意味し、本発明は、そのような外的要因を受けることにより発生する音波を検出することを目的とする。
検査対象が人為的な要因を受けるとは、たとえば、部材や金属片やコンクリート塊がハンマーで叩かれるなどの人為的な衝撃を受けることを意味し、本発明は、そのような人為的要因を受けることにより発生する音波を検出することを目的とする。
検査対象としての生体や動植物などにおいて生理的に発生する音波とは、たとえば生体における心音や脈拍、樹木が水を吸い上げている音などを意味し、本発明は、そのようにして発生する音波を検出することを目的とする。
本発明は実用性を重視したもので、極小スペースのもとでの使用も可能であって、ある程度離れた場所に位置する検査対象や、狭い隙間や奥深い場所に位置する検査対象に対しても有効で、リアルタイムでの検出が可能で、複数の検査対象に対しても有効で、遠隔操作も可能で、効率に優れ、低電圧および低消費電力駆動が可能で、検査対象に対する取り付けが容易で、高感度で、個体ごとの感度のばらつきもなく安定しており、耐久性に優れ、工業的にも容易に量産可能であることを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明は、圧電基板と、第1および第2の櫛型電極で成るすだれ状電極と、対向電極と、ダイアフラムと、振動伝搬体から成り、振動伝搬体に接触される検査対象において発生する音波を検出する音波検出センサである。
すだれ状電極は圧電基板の上端面に、対向電極は圧電基板の下端面に設けられ、ダイアフラムは、対向電極と対面する位置に、液体を介して設けられていることを特徴とする。また、振動伝搬体は先端部と末端部を有し、先端部が物質との接触部とされ末端部がダイアフラムに固着されることを特徴とする。
このように構成することで、振動伝搬体は、検査対象において発生する音波をダイアフラムに伝搬してダイアフラムを振動させ、ダイアフラムと対向電極との離間距離を変動させる機能を有することとなる。
また、このように構成することで、第1の櫛型電極および対向電極は、入力電気信号を印加されることにより、圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波を液体中に照射する機能を有する。ダイアフラムはその縦波を反射する機能を有する。第2の櫛型電極および対向電極は、反射された縦波をダイアフラムと対向電極との離間距離の変動に対応して変動する遅延電気信号として検出するとともに、入力電気信号の印加により生じた結合信号を検出し、遅延電気信号と結合信号との干渉信号として出力する機能を有する。
本発明の音波検出センサは、圧電基板が圧電セラミックで成り、その分極軸の方向は厚さ方向と平行であることを特徴とする。
このように構成することで、圧電基板の厚さ方向の振動モードを有する弾性振動を圧電基板に効率よく励振することが可能となり、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく液中に照射される。
また、本発明の音波検出センサは、圧電基板が圧電性高分子フィルムで成ることを特徴とする。
このように構成することで、圧電基板に弾性振動を効率よく励振することが可能となり、圧電基板の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく液中に照射される。
また、本発明の音波検出センサは、ダイアフラムが正方形平板状または円板状の形状を有し、振動伝搬体の末端部はダイアフラムのほぼ中心に固着されていることを特徴とする。
このように構成することで、ダイアフラムを最も効率よく振動させることが可能となる。ダイアフラムの中心が振動の腹に相当する部分であり、しかも中心に固着すればダイアフラムの振動の振幅が最大となり得るからである。
また、本発明の音波検出センサは、振動伝搬体が弾性体から成ることを特徴とする。
このように構成することで、検査対象において発生する音波をダイアフラムに効率良く伝搬してダイアフラムを振動させることができるので、高感度のセンサを提供できる。
また、本発明の音波検出センサは、振動伝搬体が弾性体とそれをコーティングする膜から構成され、膜の音響インピーダンスは、弾性体の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする。
このように構成することで、検査対象において発生する音波を外部に漏洩させることなく効率よくダイアフラムに伝搬することができる。
また、本発明の音波検出センサは、振動伝搬体の先端部が集音機能を有することを特徴とする。
このように構成することで、検査対象において発生する音波を効率よくダイアフラムに伝搬することができる。
本発明によれば、害虫検出装置や非破壊検査装置などのセンサ部分への応用、地震予知装置などのセンサ部分への応用、樹木の健康診断装置などのセンサ部分への応用、聴診器など医療分野への応用など、幅広い分野への応用が可能となる。
本発明の音波検出センサの第1の実施例を示す断面図である。(実施例1) 圧電基板1に設けられたすだれ状電極2を示す斜視図である。 もう1つの振動伝搬体6の実施例を示す断面図である。 さらにもう1つの振動伝搬体7の実施例を示す断面図である。 図1の音波検出センサにおける入力電気信号の周波数と挿入損失との関係を示す特性図である。 図1の音波検出センサにおける出力信号の観測波形である。 干渉状態にある出力信号の振幅の変動と、ダイアフラム4と対向電極3との離間距離の変動との関係を示す特性図である。 ダイアフラム4が振動している場合の出力信号の観測波形である。 ダイアフラム4が振動している場合におけるAM変調された出力信号の波形である。 振動伝搬体5の長さと出力信号の遅延時間との関係を示す特性図である。 本発明の音波検出センサの第2の実施例を示す断面図である。(実施例2)
検査対象が自然界の外的要因を受けることにより発生する音波や、人為的な要因を受けることにより発生する音波や、検査対象としての生体や動植物などにおいて生理的に発生する音波を検出するという目的を、圧電基板、すだれ状電極、対向電極、ダイアフラムおよび振動伝搬体から成る簡単な構造を有するセンサを提供することにより実現した。
図1は、本発明の音波検出センサの第1の実施例を示す断面図である。本実施例は、圧電基板1、すだれ状電極2、対向電極3、ダイアフラム4および振動伝搬体5から成る。圧電基板1は、圧電セラミック薄板で成るが、圧電性高分子フィルムを用いることも可能である。すだれ状電極2および対向電極3は、ともにアルミニウム薄膜で成り、圧電基板1の上端面および下端面にそれぞれ設けられている。ダイアフラム4は、リン青銅薄板で成り、対向電極3と平行になるような位置に設けられている。対向電極3とダイアフラム4の間は、液体が満たされている。振動伝搬体5は先端部と末端部を有し、その先端部は検査対象である部材に接触され、末端部はダイアフラム4に固着されている。この際、先端部は部材の表面に接触されていれば足り、内部に固定されている必要はないものの、内部に固定された構成も可能である。また、先端部に集音器が設けられるなど、先端部が集音機能を有する構成も可能である。末端部とダイアフラム4との固着面積の大きさは問われないが、固着面積は大き過ぎないことが必要である。振動伝搬体5の材質は弾性体で成り、金属等の他、プラスチック等の高分子材料等も可能であり、長さは1m程度までは可能であり、太さは問題にならない。このようにして、本発明の音波検出センサは、小型軽量でしかも構造が簡単で製作容易である。
図2は、圧電基板1に設けられたすだれ状電極2を示す斜視図である。圧電基板1は、厚さ(t)が0.5 mmの矩形板状構造を有し、その分極軸の方向は厚さ方向と平行である。すだれ状電極2は15個の電極対を有し、5mmの電極重複幅(T)と、75μmの電極指幅(w)と、300μmの電極周期長(p)を有する。すだれ状電極2は、櫛型電極21および22から構成されている。なお、圧電基板1の形状は問われないが、製造の容易性から、矩形板状の他、円板状構造などが有効である。
図3は、もう1つの振動伝搬体6の実施例を示す断面図である。振動伝搬体6の先端部は検査対象である部材に接触され、末端部はダイアフラム4に固着されている。振動伝搬体6はコイル状を成すが、先端部をたとえば柱などの部材に巻きつけてもよい。このようにして、振動伝搬体の形状は直線状に限らず湾曲状でも可能で、長さ方向に垂直な断面の形状は問題とならない。また、ストローやチューブのような管状構造も可能である。この場合、振動伝搬体6の末端部は、ダイアフラム4に固着されることにより閉塞された構成となるが、先端部は開放された構成のみならず、閉塞された構成も可能である。
図1の音波検出センサにおいて、入力電気信号が櫛型電極21と対向電極3の間に印加されると、圧電基板1の厚さ方向の振動モードを有する弾性振動が圧電基板1に効率よく励振され、圧電基板1の下端面に対し垂直な方向の縦波が液体中に照射される。なお、液体が水の場合、圧電基板1の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく水中に照射されることが確認されている。照射された縦波はダイアフラム4によって反射され、反射された縦波は、櫛型電極22および対向電極3によって遅延電気信号として検出される。一方、櫛型電極22および対向電極3においては、入力電気信号の印加により発生する結合信号も検出される。このとき、ダイアフラム4が振動して、ダイアフラム4と対向電極3との離間距離が変動すれば、それにより、液体中の縦波の伝搬路長が変化するので、結果的に遅延電気信号と結合信号が干渉し、干渉信号が生じる。このようにして、ダイアフラム4が振動したことを、櫛型電極22および対向電極3において出力される出力信号の波形から検出することが可能となる。すなわち本発明の音波検出センサでは、時間の経過とともに干渉信号が検出されることを利用して、ダイアフラム4の振動を感知する。
もしも、家屋や建造物の配線、土台、柱、壁等の部材がネズミ等の小動物やシロアリ等の害虫によって侵食された場合、それらの部材において侵食時に発生する音波は、振動伝搬体5を介してダイアフラム4に伝搬され、その結果、ダイアフラム4が振動する。同様にして、地震などにより発生した極低周波音により建造物の部材に発生する音波は、振動伝搬体5を介してダイアフラム4に伝搬され、ダイアフラム4が振動する。ダイアフラム4の振動に伴い、ダイアフラム4と対向電極3との離間距離が変動し、遅延電気信号と結合信号が干渉し、干渉信号が生じる。このようにして、部材において侵食時に発生する音波を干渉信号として検出することが可能となる。従って、本発明の音波検出センサを利用すれば、害虫などの発見に有効なデバイスや、地震予知などに有効なデバイスを構成できる。なお、振動伝搬体5の末端部とダイアフラム4との固着面積は大き過ぎないことが必要である。ダイアフラム4の振動の腹に相当する箇所を逸脱しない範囲内の面積に収まるように固着することにより、ダイアフラム4を最も効率よく振動させることが可能となるからである。ダイアフラム4の形状は問われないが、製造の容易性から矩形平板状、円板状などが適切である。正方形平板状および円板状の場合には、振動伝搬体5の末端部はダイアフラム4のほぼ中心に固着されることが望ましい。中心が振動の腹に相当する部分であり、しかも中心に固着すればダイアフラム4の振動の振幅が最大となることが推測されるので、検出感度が増すからである。
また、コンクリート塊や金属片などの部材を検査対象とすることができる。この場合、検査対象をたとえばハンマーで叩くことにより人為的に発生させた音波は、振動伝搬体5を介してダイアフラム4に伝搬し、その結果、干渉信号が発生する。このようにして、検査対象において発生させた音波を干渉信号として検出することが可能となる。検査対象に損傷がある場合と、ない場合とでは、干渉信号の波形が相違することが推測されることから、本発明の音波検出センサを利用すれば、コンクリート塊におけるひび割れなどの劣化や、金属片における金属疲労などの亀裂の発見に有効なデバイスを構成できる。
図4は、さらにもう1つの振動伝搬体7の実施例を示す断面図である。振動伝搬体7の先端部は検査対象に接触され、末端部はダイアフラム4に固着されている。振動伝搬体7は、生体や動植物を検査対象とする場合に有効である。たとえば生体を検査対象とし、心音や脈拍を検出する場合、振動伝搬体7の先端部は聴診器のごとく板状構造にして胸部や腕などと接触させる構成を採ることにより、安全で高感度な音波検出が可能となる。このようにして、本発明の音波検出センサを利用すれば、生体や動植物の健康状態の診断が可能なデバイスを構成できる。
図1の音波検出センサは、前述したように、人為的な要因に限らず、自然的要因、生体や動植物における内的要因により発生する音波にも対処し得る。このようにして、建築部材の害虫による侵食の発見、地震の予知、コンクリート塊や金属片の損傷の発見、生体や動植物の健康状態の診断などに有効なデバイスを構成できる。このようなデバイスにおいて、出力信号の波形から検査対象の状態を精査する最も効果的な方法としては、第1に、特定の要因に基づく干渉信号と、要因が不明な場合の干渉信号とを比較解析することが挙げられる。たとえば、干渉信号の出現により建築部材が侵食されているか否かは発見されるものの、それがシロアリによるものか否かなどや、地震の前触れであるか否かなどについては、干渉信号の比較解析により判明する。第2に、検査対象が損傷を有する場合の干渉信号と、有しない場合の干渉信号とを比較解析することが挙げられる。たとえば、亀裂を有する金属と有しない金属について、人為的にハンマーなどで叩くことにより検出した干渉信号を比較解析することにより、亀裂があるか否かが、またどの程度の亀裂があるかどうかも判明する。建築部材の侵食の度合いなども、同様な手法で判明する。また、検査対象になっている人についての干渉信号を健康な人についての干渉信号と比較解析することにより、健康状態が判明する。
図5は、図1の音波検出センサにおける入力電気信号の周波数と挿入損失との関係を示す特性図である。図4によれば、周波数がほぼ13 MHzのときに挿入損失が最小となる。すなわち、このとき最も効率良く液体中に縦波が照射されることとなる。
図6は、図1の音波検出センサにおける出力信号の観測波形である。但し、入力電気信号の周波数が13 MHzの場合で、液体として水が採用されている場合を示す。図5の(a)は遅延電気信号と結合信号が干渉を生じていない状態の出力信号の波形であり、(b-1)および(b-2)は干渉を生じている状態の出力信号の波形であるが、(b-1)は両信号の位相が逆位相の場合であり、(b-2)は同位相の場合である。(b-1)の干渉領域では、干渉を生じていない領域よりも振幅が小さくなり、(b-2)の干渉領域では、干渉を生じていない領域よりも振幅が大きくなることがわかる。
図7は、干渉状態にある出力信号の振幅の変動と、ダイアフラム4と対向電極3との離間距離の変動との関係を示す特性図である。但し、ダイアフラム4が700 Hzで振動している場合を示す。実線および●印はそれぞれ理論値および測定値を示している。振幅の変動と離間距離の変動との間に良好な線形関係が存在することが認められる。このようにして、1μmの離間距離の変動に伴い振幅が100mv変動することが算出されるので、図1の音波検出センサによれば、1μmの離間距離の変動でも充分感知され得ることが分かる。
図8は、ダイアフラム4が振動している場合の出力信号の観測波形である。時間の経過とともにダイアフラム4と対向電極3との離間距離が変動し、それによって出力信号の振幅も周期的に変動していることが分かる。すなわち、観測波形の包絡線が、ダイアフラム4の振動に対応する。このようにして、出力信号の波形からダイアフラム4の振動周波数が算出され、外的要因の特定に有効な情報となり得る。なお、ダイアフラム4の振動周波数帯域には、かなりの高周波域も含まれることが確認されているので、種々の外的要因の特定に対応しうる。
図9は、ダイアフラム4が振動している場合におけるAM変調された出力信号の波形である。但し、ダイアフラム4が50 Hzで振動している場合を示す。ダイアフラム4の振動が出力信号の振幅の変動に対応していることが分かる。
図10は、振動伝搬体5の長さと出力信号の遅延時間との関係を示す特性図である。但し、振動伝搬体5は直径0.2 mmの金属線で成る場合を示す。実線および●印はそれぞれ理論値および測定値を示している。振動伝搬体5の長さと出力信号の遅延時間との間に良好な線形関係が存在することが認められる。このようにして、図1の音波検出センサは、ある程度離れた場所に位置する部材や、狭い隙間や奥深い場所に位置する部材に対しても有効に機能することが分かる。
図11は、本発明の音波検出センサの第2の実施例を示す断面図である。本実施例は圧電基板1、すだれ状電極2、対向電極3、貯液室8および振動伝搬体9から成る。貯液室8は支持板81、側壁82およびダイアフラム83から成る。貯液室7には液体が収納されている。支持板81は、シリコン樹脂で成り、対向電極3に固着されている。支持板81として、音響インピーダンスが圧電基板1よりも小さく液体よりも大きい物質を用いることにより、圧電基板1の下端面に対し垂直な方向の縦波が効率よく液中に照射されることとなる。ダイアフラム83は、リン青銅薄板で成り、対向電極3と対面する位置に設けられている。振動伝搬体9の先端部は検査対象である部材に固定され、末端部はダイアフラム83に固着されている。振動伝搬体9は弾性体と、それをコーティングする膜から構成されており、膜としては、その弾性体よりも音響インピーダンスが高い材質のものが採用されている。振動伝搬体9として、このようなコーティング構造を採用することにより、部材からの音波を外部に漏洩させることなく効率よくダイアフラム83に伝搬することができる。振動伝搬体の構造としては、枝分れ状の構造も可能であり、分岐した部分が、さらに少なくとも2つに分岐した構造も可能である。さらに、これらの形状および構造すべての組み合わせ構造も可能である。従って、同時に複数の部材に対して複数の末端部を固定させることが可能となるので、同時に複数の部材を検査対象とすることができる。また、遠隔操作も可能となる。図11の音波検出センサにおいても、図1の音波検出センサと同様にして、検査対象に発生する音波を干渉信号として検出することが可能となる。
検査対象が自然界の外的要因を受けることにより発生する音波や、人為的な要因を受けることにより発生する音波や、検査対象としての生体や動植物などにおいて生理的に発生する音波を検出することが可能であることから、害虫検出装置や非破壊検査装置などのセンサ部分への応用、地震予知装置などのセンサ部分への応用、樹木の健康診断装置などのセンサ部分への応用、聴診器など医療分野への応用など、幅広い分野への応用が可能となる。
1 圧電基板
2 すだれ状電極
3 対向電極
4 ダイアフラム
5 振動伝搬体
6 振動伝搬体
7 振動伝搬体
8 貯液室
9 振動伝搬体
21 櫛型電極
22 櫛型電極
81 支持板
82 側壁
83 ダイアフラム

Claims (8)

  1. 圧電基板と、第1および第2の櫛型電極で成るすだれ状電極と、対向電極と、ダイアフラムと、振動伝搬体から成り、前記振動伝搬体に接触される検査対象において発生する音波を検出する音波検出センサであって、
    前記すだれ状電極は、前記圧電基板の上端面に設けられ、
    前記対向電極は、前記圧電基板の下端面に設けられていて、
    前記ダイアフラムは、前記対向電極と対面する位置に、液体を介して設けられており、
    前記振動伝搬体は、先端部と末端部を有し、前記先端部が前記検査対象との接触部とされ前記末端部が前記ダイアフラムに固着されることにより、前記音波を前記ダイアフラムに伝搬して前記ダイアフラムを振動させ、前記ダイアフラムと前記対向電極との離間距離を変動させる機能を有し、
    前記第1の櫛型電極および前記対向電極は、入力電気信号を印加されることにより、前記圧電基板の下端面に垂直な方向の縦波を前記液体中に照射する機能を有し、
    前記ダイアフラムは、前記縦波を反射する機能を有し、
    前記第2の櫛型電極および前記対向電極は、反射された前記縦波を前記離間距離の変動に対応して変動する遅延電気信号として検出するとともに、前記入力電気信号の印加により生じた結合信号を検出し、前記遅延電気信号と前記結合信号との干渉信号として出力する機能を有することを特徴とする音波検出センサ。
  2. 前記圧電基板は、圧電セラミックで成り、その分極軸の方向は厚さ方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  3. 前記圧電基板は、圧電性高分子フィルムで成ることを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  4. 前記ダイアフラムは、正方形平板状の形状を有し、前記末端部は前記ダイアフラムのほぼ中心に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  5. 前記ダイアフラムは、円板状の形状を有し、前記末端部は前記ダイアフラムのほぼ中心に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  6. 前記振動伝搬体は弾性体から成ることを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  7. 前記振動伝搬体は弾性体と、それをコーティングする膜から構成され、前記膜の音響インピーダンスは、前記弾性体の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
  8. 前記振動伝搬体の前記先端部が集音機能を有することを特徴とする請求項1に記載の音波検出センサ。
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