以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態に係るボイラ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るボイラ装置の概略構成を示す断面図である。本実施形態のボイラ装置104は、ボイラ燃料として固形燃料である燃料炭C10を使用して、当該燃料炭C10に熱交換部132、134が直接接する構成とすることによって、熱交換率を向上させて、例えば1000〜1500度の過熱蒸気を効率的に生成可能としたことを特徴とする。
本実施形態では、ボイラ装置104は、図1に示すように、チャンバ130と、水蒸気生成部132と、過熱蒸気生成部134と、燃料炭供給装置138と、水予熱部140と、酸素予熱部142と、酸素供給部144とを備える。これら構成要素のうち、水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134は、チャンバ130の底部側に設けられ、水予熱部140と酸素予熱部142は、チャンバ130の頂部側に設けられる。また、ボイラ装置104のチャンバ130の頂部側には、燃焼排ガスを排出するための排出口147が設けられ、チャンバ130の底部側には、燃焼後の燃料炭C10の残渣となる燃え殻を排出するための排出口148が設けられる。
チャンバ130は、炭素鋼、モリブテン鋼等からなるボイラ鋼板やSUS等の耐熱性を有する金属で生成され、燃料としてブロック状の固形燃料の燃料炭が投入され、当該燃料炭が焼却される焼却炉となる略円筒形状の焼却空間である。本実施形態では、前述したように、炭化炉102で生成された燃料炭の一部(例えば、10%程度)を燃料に利用する。燃料炭C10は、投入口139からベルトコンベア等からなる燃料炭供給装置138によって、チャンバ130の内部に定量的に供給される。なお、チャンバ130は、材料コストの面からボイラ鋼板で生成されることが好ましい。
チャンバ130の底部側には、ボイラ鋼板から形成される水冷パイプや耐熱鋳鋼により構成される格子状のロストル131が設けられ、投入された燃料炭が当該ロストル131に載置される。チャンバ130内に投入された燃料炭C10は、ロストル131上に積層され、酸素供給部144から吹き込まれた酸素で燃焼してロストル131上にコークスベットを形成し、その燃焼熱で熱交換部132、134での水や水蒸気等の流体との熱交換が行われる。本実施形態では、各熱交換部132、134が燃焼する燃料炭C10と直接接するようにするために、燃料炭C10が少なくとも過熱蒸気生成部134に到達する位置まで投入される。
酸素供給部144は、チャンバ130内に投入された燃料炭C10を燃焼させる酸素を少なくとも含むガスを供給する。本実施形態では、図1に示すように、酸素供給部144として、ロストル131の下側には、複数の給気ノズル144a1を備えた酸素給気管144aが設けられ、チャンバ130の側壁側には、複数の給気ノズル144b1を備えた酸素ヘッダー144bが設けられている。
このように、酸素供給部144は、チャンバ130の底面側及び側面側に設けられた複数のノズルである給気ノズル144a1、144b1を介して、酸素を少なくとも含むガスを燃料炭C10に供給する。このため、よりチャンバ130内の燃料炭C10を効率的に燃焼させて、熱交換部132、134内の水や水蒸気を効率的に昇温するので、短時間で効率的に過熱蒸気を生成できる。なお、酸素供給部144から供給される酸素ガスは、チャンバ130の頂部側に設けられた酸素予熱部142で予熱されてから、チャンバ130内に供給される。なお、本実施形態では、排ガス量を抑えて燃料炭C10の燃焼温度を上げるために、空気から分離させて酸素濃度を高めたガスをチャンバ130内の燃料炭C10に供給しているが、燃料炭C10を燃焼させるためには、少なくとも酸素を含んでいればよいので、酸素供給部144は、空気を燃料炭C10に供給してもよい。
水蒸気生成部132は、図1に示すように、ロストル131よりチャンバ130の頂部側に設けられ、温水タンク146から給水された水(温水)とロストル131に載置された燃料炭C10との熱交換によって水蒸気を生成する熱交換部として機能する。本実施形態では、水蒸気生成部132は、SUS316、SUS310等の耐熱性及び伝熱性を有する金属等からなる鉛直円筒管である伝熱管となるパイプを所定の間隔で複数本、略平行に設けることにより形成される平行パネル132aが複数並設することにより構成される。水蒸気生成部132は、それぞれの平行パネル132a内に温水タンク146から供給される温水が流れる構成となっている。
そして、これら平行パネル132aの間に適度のサイズのブロック状の燃料炭C10を落下させて、酸素供給部144からの酸素ガスの供給量や供給速度の調整によって、燃料炭C10の燃焼温度を変えて、燃料炭C10と平行パネル132aを流れる温水との熱交換が行われる。このように、投入した燃料炭C10が所定間隔で設けられた平行パネル132a間に落下することによって、燃料炭C10が各平行パネル132aのぞれぞれと接触し易くなるので、燃料炭C10の燃焼熱がこれら平行パネル132aに伝導し易くなり、水蒸気生成部132の熱交換率が向上する。
なお、水蒸気生成部132は、SUS等の耐熱性及び伝熱性を有する金属等から形成され、内部に水や温水、水蒸気等の流体を流せるものであれば、鉛直円筒管である伝熱管となるパイプを所定の間隔で複数本、略平行に設けることにより形成される平行パネル132aに限定されない。すなわち、耐熱性及び伝熱性を有する金属等から形成され、内部に水や温水、水蒸気等の流体を流せるものであれば、四角柱形状のパイプから形成されるものや、管状部材のユニットでなくパネル形状等の他の態様のものを使用してもよい。
本実施形態では、ボイラ装置104の燃料として固形燃料の燃料炭C10を使用し、燃料炭供給装置138から供給された燃料炭C10がロストル131上に積層されて、当該燃料炭C10が固体のまま燃焼してコークスベットを形成している。そして、水蒸気生成部132を構成する各平行パネルがコークスベットを形成する燃料炭C10を貫通するように構成され、当該各平行パネルが当該コークスベットと接触する構成となっている。
このため、ロストル131上に固体のまま燃焼している燃料炭C10が細かく灰となって、ロストル131の格子口から排出口148に落下するまでの間、当該燃料炭C10が水蒸気生成部132と常に接触する状態となっている。すなわち、水蒸気生成部132が燃料炭C10と接触している間は、燃料炭C10から発生する燃焼熱を水蒸気生成部132に直接伝導することになる。
従って、従来のボイラで使用されている気体燃焼ガスでの熱交換と比べて、本実施形態のボイラ装置104の水蒸気生成部132は、滞留時間が長い固体燃料の燃焼熱を取り出して、加熱対象となる温水が流れる平行パネルに直接伝導するので、より高い熱伝導率が確保される。また、水蒸気生成部132内の温水に当該燃焼熱を伝達するので、より短時間で効率的に水蒸気を生成できる。さらに、ボイラ装置104の燃料となる燃料炭C10は、燃焼後の残渣となる燃え殻がわずかな灰のみとなるので、その処理も容易となる。
過熱蒸気生成部134は、水蒸気生成部132で生成された水蒸気が流れて、チャンバ130内のロストル131に積層された燃料炭C10との熱交換によって、例えば1500度と高温な過熱蒸気を生成する熱交換部として機能する。過熱蒸気生成部134は、図1に示すように、水蒸気生成部132よりチャンバ130の頂部側に設けられた略直線形状の管状部材であり、当該管状部材内に水蒸気生成部132で生成された水蒸気が流れる構成となっている。
本実施形態では、加熱蒸気生成部134は、少なくとも1000度以上の過熱蒸気を生成する高温環境下での使用に耐える態様とするために、SUS316、SUS310等の耐熱性を有する合金を主成分として形成される。特に、耐熱性能面及びコスト面から、過熱蒸気生成部134は、ハステロイ(登録商標)等の析出硬化型のニッケル基合金を主成分として形成されることが好ましい。
また、水蒸気滞留部135から加熱蒸気生成部134に供給される飽和水蒸気は、温水タンク146から水蒸気生成部132に供給される温水よりも格段に温度が高い。すなわち、水蒸気生成部132は、温水タンク146から供給される温水がせいぜい100度前後であり、その温度上昇の上限がそれ程高くならないことから、いわゆる片面加熱の状態となり、その配管が熱で溶解するリスクが少ない。これに対して、加熱蒸気生成部134は、1000度以上の超高温の過熱蒸気を通すことから、水蒸気生成部132と同じ材質で生成すると、その構成する配管が熱で溶解することが懸念される。このため、本実施形態では、加熱蒸気生成部134は、水蒸気生成部132よりも耐熱性が優れた材質で生成する必要があることからも、ハステロイ(登録商標)等の析出硬化型のニッケル基合金を主成分として形成するようにしている。
また、過熱蒸気生成部134は、上述したように1000度以上の超高温の過熱蒸気を生成する高温環境下で使用されることから摩耗し易い部位なので、例えば、3〜4か月に1回程度の定期的な交換が必要となる。このため、過熱蒸気生成部134は、取り付け・取り外しの交換を容易にするために、シンプルな略直線形状の管状部材から構成される。
管状部材から構成される過熱蒸気発生部134は、図1に示すように、チャンバ130の幅方向Xに延出して、コークスベットを形成する燃料炭C10を貫通するように設けられている。このため、ロストル131上に固体のまま燃焼している燃料炭C10から発生する燃焼熱が過熱蒸気生成部134に直接伝導することになるので、より短時間で効率的に過熱蒸気を生成できる。
水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134との間には、図1に示すように、水蒸気生成部132で生成された水蒸気を滞留させる水蒸気滞留部135が設けられている。水蒸気滞留部135では、水蒸気生成部132で生成された水蒸気が送られて、一旦、滞留される。そして、水蒸気滞留部135で滞留された水蒸気が飽和蒸気となって、過熱蒸気生成部134に供給される。
水予熱部140は、供給源となる軟水器151(後述の図2参照)を経て供給される水をボイラ装置104で発生した高温の燃焼排ガスとの熱交換によって温水にする機能を有する。本実施形態では、水予熱部140は、チャンバ130の頂部側に設けられ、軟水器151から水が給水される水予熱室140aに、チャンバ130内の燃焼排ガスを通過させる排ガス流路140bが設けられる構成となっている。水予熱部140をこのような構成とすることによって、燃焼排ガスが排ガス流路140bを通過する際に、水予熱室140a内の水を当該燃焼排ガスの熱エネルギーを伝達して熱交換が行われる。
このように、水予熱部140で水蒸気生成部132に給水する水を燃焼排ガスで事前に温めることによって、当該燃焼排ガスに含まれる熱エネルギーを有効活用しながら、過熱蒸気の元となる水蒸気をより効率的に生成できるようになる。水予熱部140で生成された温水は、図1に示すように、ウォータージャケット133に供給される。
酸素予熱部142は、酸素分離装置122から供給された酸素ガスをボイラ装置104で発生した高温の燃焼排ガスとの熱交換によって予熱する機能を有する。本実施形態では、酸素予熱部142は、チャンバ130の頂部側の水予熱部140の下側に設けられ、酸素分離装置122(後述の図2参照)から酸素ガスが給水される酸素予熱室142aに、チャンバ130内の燃焼排ガスを通過させる排ガス流路142bが設けられる構成となっている。
酸素予熱部142をこのような構成とすることによって、燃焼排ガスが排ガス流路142bを通過する際に、酸素予熱室142a内の酸素ガスを当該燃焼排ガスの熱エネルギーを伝達して熱交換が行われる。そして、酸素予熱部142で予熱された酸素ガスは、酸素供給部144からロストル131に載置された燃料炭に供給される。
このように、酸素予熱部142で水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134に供給する酸素ガスを燃焼排ガスで事前に温めることによって燃料炭をより燃焼し易くするので、当該燃焼排ガスに含まれる熱エネルギーを有効活用しながら、過熱蒸気をより効率的に生成できるようになる。なお、本実施形態では、水予熱部140の排ガス流路140bと酸素予熱部142の排ガス流路142bは、連結されて共通の流路となっている。
水予熱部140と酸素予熱部142が設けられている頂部側を除くチャンバ130の外周面側には、チャンバ130の内壁を燃料炭C10の燃焼熱から保護するために、冷却機能を有するウォータージャケット133が設けられている。ウォータージャケット133は、チャンバ130の外周面に沿って二重構造の空間となっており、当該空間に水予熱室140で生成された温水が供給される。また、本実施形態では、図1に示すように、温水タンク146や水蒸気滞留部135等のボイラ装置104のチャンバ130の外側に有する各構成要素は、グラスウール等の保温材137に覆われており、ボイラ装置104内の各構成要素の熱エネルギーが放熱されて損失することを抑制している。
なお、本実施形態では、チャンバ130の外壁等から放射するエネルギーより、チャンバ130内での燃料炭C10の燃焼により発生する排ガスから排出されるエネルギーの方が遥かに大きいので、当該排ガスは、水予熱部140で軟水器151(後述の図2参照)から供給される常温の水で冷却する。これに対して、チャンバ130の外壁は、当該外壁等からの放射熱が排ガスから排出される燃焼熱より遥かに小さいので、水予熱部140で生成された温水を使用しても、当該放射熱を抑制する効果を十分に得られる。すなわち、水予熱部140での熱交換で発生した温水も有効活用して、より少ない損失で水蒸気に熱エネルギーを供給することができる。
このように、本実施形態では、ボイラ装置104は、水や水蒸気等の水を主成分とする流体を流す熱交換部132、134がロストル131に載置された燃料炭を貫通して、燃焼する燃料炭と直接接する構成となっている。このため、燃焼する燃料炭C10に水蒸気生成部132が直接接することによって、水蒸気生成部132内に流れる水を直接加熱して熱効率よく水蒸気を生成する。
そして、燃焼する燃料炭C10に過熱蒸気生成部134が直接接することによって、過熱蒸気生成部134内に流れる水蒸気を直接加熱して熱効率よく過熱蒸気を生成できるようになる。すなわち、本実施形態のボイラ装置104は、水蒸気の生成と過熱蒸気の生成を水蒸気生成部132による水蒸気の生成と、過熱蒸気生成部134による過熱蒸気の生成の2段階に分けて、水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134のそれぞれを直接燃料炭C10と接触させることによって効率的に水蒸気及び過熱蒸気を生成可能としている。
従来のボイラ装置では、固体燃料を使用した場合も含めて、燃料を加熱して燃焼した際に発生する燃焼排ガスと水との熱交換による水蒸気生成が行われていた。燃焼用酸素を酸素濃度20重量%の空気に依存する限り、燃料と空気の供給量を増やしても、排気量が増すだけで、燃焼排ガスの温度は上がらない。また、気体と金属製の伝熱管の接触で熱を伝える従来の熱交換器では、気体の低い熱伝導率に支配され、多量の熱が大気中に無駄に排出されるので、熱交換率を高めるのに限界があった。
これに対して本実施形態では、ボイラ装置104の燃料として固形燃料の燃料炭C10を使用し、水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134が燃焼する燃料炭C10から形成されるコークスベットを貫通するように構成されている。このため、燃料炭C10の燃焼により発生した燃焼熱をそのまま直に水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134の加熱に利用するので、当該燃焼熱のロスを最小限に抑えて、より短時間で効率的に水蒸気と過熱蒸気を生成できる。
また、本実施形態では、ボイラ装置104は、少なくとも1000度以上の過熱蒸気を生成するために、1000度以上に高温加熱して、熱交換部となる水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134で熱交換している。物体間の熱移動は、物体間の温度差(差は摂氏でも絶対温度でも同じ)に比例する伝導と、絶対温度(摂氏温度+273度)の4乗に比例する放射伝達があり、放射伝達は、各物体の放射量の差が作用する。また、同じ温度でも物体によって放射強度が変わる。一般に質量の大きい物体ほど、熱電導率、放射率ともに大きい。このため、低温では伝導が効くが、273絶対温度を大きく超える状態では、放射が伝導をしのぐようになる。従って、1000度以上の高温に加熱された燃料炭C10の燃焼熱が水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134に伝導し易くなる。また、固体間の放射は、一方が高温の気体や液体の場合よりも、放熱、受熱共に大きくなるので、本実施形態の熱交換部となる水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134は、より高い熱交換率を確保できるようになる。
さらに、本実施形態のボイラ装置104は、短時間で効率的に例えば1500度と高温な過熱蒸気を生成できるので、後述する有機性廃棄物を加熱処理して再資源化する炭化システム100の炭化炉102に供給する過熱蒸気の生成ボイラとして適用できる。特に、本実施形態のボイラ装置104は、少なくとも1000度以上の過熱蒸気を生成できるので、再資源化する有機性廃棄物に放射性セシウムが含有している場合に、過熱蒸気で加熱処理する過程で当該放射性セシウムを当該有機性廃棄物から除去することができる。なお、本実施形態のボイラ装置104は、炭化システム100の炭化炉102に供給する過熱蒸気の生成用ボイラ以外にも、他の目的・用途で使用する過熱蒸気を生成するボイラとして適用可能である。
次に、本発明の一実施形態に係る炭化システムの概略構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るに係るボイラ装置を備える炭化システムの概略構成を示すブロック図である。なお、図2では、炭化システム100の各構成要素間に設けられる水や水蒸気、酸素ガス、窒素ガス等の流体を流すための管路L1〜L20に備わるポンプやバルブの表示を省略している。
本実施形態に係る炭化システム100は、炭化炉102内の酸素を絶って、高温に熱した水蒸気によって間伐材や建築廃材等の有機性廃棄物を燃焼させずに炭化する原理を利用して、当該有機性廃棄物を木炭や黒炭等の燃料炭C10(図1参照)に再資源化するシステムである。本実施形態の炭化システム100は、過熱蒸気を発生させるボイラ装置104の熱交換率を高めて、より効率的に有機性廃棄物を炭化させるために、炭化システム100で再資源化された燃料炭の一部をボイラ装置104の燃料とすることと、燃焼している当該燃料炭でボイラ装置104の熱交換部132、134を直接温めて熱交換することを特徴とする。
炭化システム100は、図2に示すように、炭化炉102と、ボイラ装置104と、コンデンサ106と、スクラバ装置108と、沈殿分離器110と、制御部112と、発電機150とを備える。当該炭化システム100は、有機性廃棄物から燃料炭C10に再資源化する過程において発生する排ガスや排水に含まれる熱を再利用して、資源やエネルギーのゼロエミッション化を図れるように構成されている。以下、炭化システム10に備わる各構成要素の構成、機能、及び動作等の詳細について説明する。
炭化炉102は、ホッパー部114から投入される間伐材や建築廃材等の有機性廃棄物を過熱蒸気で加熱処理して黒炭等の燃料炭C10を生成する。炭化炉102は、例えば10m3程度の容積を有する炉本体103内に設けられたステンレス等の耐熱性金属で形成された籠体116に有機性廃棄物を充填し、ボイラ装置104で生成された過熱蒸気をボイラ装置104と炭化炉102の間に備わる電磁加熱器124でその温度を微調整しながら、例えば1500度と少なくとも1000度以上に加熱したものを供給して、当該有機性廃棄物を加熱処理する。
電磁加熱器124による過熱蒸気の温度微調整は、炭化炉102の温度調整で飽和蒸気を生成する水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134の温度調整から調整しきれない過熱蒸気の炭化炉側オーダーが発生した場合に必要となる。電磁加熱器124は、瞬間対応に優れていることから、瞬時に水蒸気温度を変えられるので、例えば、水蒸気の温度調整の10%くらいを微調整するために使用される。電磁加熱器124では、少なくとも1000度以上の加熱が可能であり、2000度くらいまでの加熱が可能である。なお、過熱蒸気は、電磁加熱器124以外の他の加熱手段で加熱するようにしてもよい。
炭化炉102に投入された有機性廃棄物を過熱蒸気で加熱処理することによって、当該有機性廃棄物に含まれる炭化水素ガス分を除去して、残りの残留分に含まれる固形炭素分が燃料炭C10となる。すなわち、炭化炉102は、ボイラ装置104から供給された過熱蒸気が籠体116に充填された有機性廃棄物の間隙を通過して、3時間程度の加熱処理で均質な木炭や黒炭等の燃料炭C10を生成する。
このように、本実施形態では、炭化炉102への熱流媒体に高温に加熱した水蒸気を使用して、かかる高温蒸気を透過させて加熱対象を蒸す透過蒸篭方式で高速かつ均質に加熱する。水蒸気は、他の気体に比べ、重量や温度の単位(g、℃)当たりの熱輸送量が多く、熱伝導率が大きいので、当該透過蒸篭方式による高速・均質加熱に適している。
また、本実施形態では、炭化炉102で加熱処理の開始時に炭化処理対象となる有機性廃棄物への着火防止のために、炭化炉102内の空気を窒素ガスに置換する。具体的には、酸素分離装置122がボイラ装置104で燃料炭の燃焼の際に使用する酸素を空気から分離して生成した際に、窒素を主成分とする残りガスを炭化炉102に供給する。
そして、有機性廃棄物を短時間で高温加熱した後に、炉本体103の頂部側に有する流体ノズル118から微水滴を加熱処理により生成された燃料炭C10に向けて噴入して、当該微水滴の蒸発によって、生成された高温の燃料炭C10を強制冷却する。なお、炭化炉102に供給される微水滴は、貯水タンク121から供給される水が酸素分離装置122で生成された窒素ガスの一部を移動媒体にして、消火用水として噴射される。
炭化炉102で有機性廃棄物を炭化処理した際に排出される炭化水素ガス分のうち、気体の部分となる排ガスは、コンデンサ106に誘導されて、水との熱交換により液体に凝縮させる。また、炭化炉102で有機性廃棄物を炭化処理した際に排出される炭化水素ガス分の液体の部分を含む排液は、沈殿分離器110に誘導される。なお、コンデンサ106と沈殿分離器110に関しては、後述する。
このようにして本実施形態では、無酸素環境下で1000度以上の高温に加熱した水蒸気である過熱蒸気を供給することによって、短時間で効率的に有機性廃棄物を燃料炭C10に再資源化できる。なお、本実施形態では、炭化炉102で生成された燃料炭C10は、ストックヤード126に保管され、当該燃料炭の一部がボイラ装置104の燃料として利用される。
また、本実施形態では、炭化炉102では、無酸素環境下で1000度以上の高温に加熱した過熱蒸気を有機性廃棄物に供給するので、有機性廃棄物に放射性セシウムが含有されている場合に、当該放射性セシウムを除去することができる。放射性物質に汚染された廃木やバーク材等の有機性廃棄物に含まれる酸化セシウムが1000度以上の過熱蒸気に接すると、酸化セシウムが水酸化セシウムに反応する。当該水酸化セシウムは、沸点が990度と高く、水に可溶性の物質のため、1000度以上の高温に加熱された水蒸気に溶けて、過熱蒸気に取り込まれるようになる。すなわち、過熱蒸気で炭化処理される有機性廃棄物から生成される燃料炭C10は、放射性セシウムが除去された良質なものとなる。
このため、放射性セシウムに汚染された建築廃材や、廃木、バーク材を加熱処理して生成した燃料炭C10が放射性セシウムを完全に除去した良質な燃料炭C10となっているので、ユーザが本実施形態の炭化システム100により生成された燃料炭C10を燃料として安心して利用できる。また、放射性セシウムを取り込んだ過熱蒸気は、図2に示すように、後続のコンデンサ106において水との熱交換によって液化され、その廃液が沈殿分離器110に送られる。
そして、過熱蒸気に取り込まれた放射性セシウムは、廃液中のタール側に含まれるようになり、当該タール液が濃縮器162で更に濃縮されて、タール塊となって排出されるようになる。すなわち、放射性セシウムに汚染された建築廃材や、廃木、バーク材を1000度以上の過熱蒸気で加熱処理して燃料炭C10に再資源化する過程において、付随的に当該放射性セシウムを確実に除去して、効率的に回収することができる。
このようにして、本実施形態では、有機性廃棄物に含まれる酸化セシウムを過熱蒸気により水酸化セシウムにして、当該水酸化セシウムを気化させることで、再資源化の対象物となる有機性廃棄物から除去する。そして、除去された水酸化セシウムは、後述するように、コンデンサ106により液体に戻り、酢液またはタールに含有され、濃縮器162で低温濃縮することで、小さな体積のタール固形分として濃縮することができる。
従来では、放射性セシウムを濃縮した形で取り除くためには、ゼオライトやプルーシャンブルー等の吸着剤を使用していたが、当該吸着剤で放射性セシウムを除去するには、除去するセシウム量よりも何倍もの多量のゼオライト等の吸着剤を必要とされていた。このため、吸着剤自体の体積や重量も多くなるので、セシウム吸着後の処分が課題となり、また、材料コストも高くなることが課題となっていた。
これに対して、本実施形態では、炭化システム100による有機性廃棄物を加熱処理して再資源化する過程で、燃料炭C10を生成しながら放射性セシウムを除去することができる。すなわち、有機性廃棄物を加熱処理して燃料炭C10に再資源化する過程において、付随的に放射性セシウムを除去できるので、セシウム除去に向けて余分なランニングコストをかけることなく、有機性廃棄物に含まれるセシウムの除去を行える。
また、今まで炭化対象外となっていた放射性セシウムが付着した廃材も発電機150によるバイオマス発電に利用しながら、セシウムが除去された良質な燃料炭C10に再資源化することができる。さらに、除去するセシウムを過熱蒸気に吸着させてから除去するので、セシウムを吸着させる物質の体積自体もゼオライト等の吸着剤を利用する場合より小さくできる。
ボイラ装置104は、炭化炉102内に投入された炭化処理対象となる有機性廃棄物に供給する過熱蒸気を生成する。本実施形態では、ボイラ装置104は、図2に示すように、チャンバ130と、水蒸気生成部132と、過熱蒸気生成部134と、燃料炭供給装置138と、水予熱部140と、酸素予熱部142と、酸素供給部144とを備える。
チャンバ130は、炭化炉102で生成された燃料炭C10の一部がボイラ装置104の燃料として投入され、当該燃料炭C10が焼却される焼却炉となる略円筒形状の焼却空間である。すなわち、本実施形態のボイラ装置104は、炭化炉102で生成された燃料炭C10の一部(例えば、10%程度)を燃料に利用する。
炭化炉102で生成された燃料炭C10は、ストックヤード126で保管され、その一部がホッパー部136を介してベルトコンベア等の燃料炭供給装置138に供給される。そして、当該燃料炭供給装置138によって、チャンバ130の内部に定量的に供給される。チャンバ130の底部側には、格子状のロストル131が設けられ、投入された燃料炭C10が当該ロストル131に載置される。
図2に示すように、ロストル131の下側には、酸素供給部144が設けられ、ロストル131に載置された燃料炭C10を燃焼させる酸素が供給される。本実施形態では、ボイラ装置104の燃料となる燃料炭C10を燃焼させる際に、燃料炭C10の燃焼熱を上げるために、酸素分離装置122で空気から分離させて生成した酸素ガスを供給する。
一般的に、固体の燃焼温度は、通過するガス量に反比例するので、本実施形態では、排ガス量を抑えて燃料炭C10の燃焼温度を上げるために、空気から分離させて濃度を高めた酸素を直接チャンバ130内の燃料炭に供給する。その際に、酸素分離装置122から供給された酸素は、チャンバ130の頂部側に設けられた酸素予熱部142で予熱された酸素ガスが酸素供給部144から供給される。
水蒸気生成部132は、図2に示すように、ロストル131よりチャンバ130の頂部側に設けられ、給水された水とロストル131に載置された燃料炭との熱交換によって水蒸気を生成する熱交換部として機能する。水蒸気生成部132で生成された水蒸気は、水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134との間に設けられる水蒸気滞留部135に滞留される。過熱蒸気生成部134は、水蒸気生成部132よりチャンバ130の頂部側に設けられ、当該水蒸気生成部132で生成された水蒸気とロストル131に載置された燃料炭との熱交換によって過熱蒸気を生成する熱交換部として機能する。
なお、水蒸気滞留部135での水蒸気の滞留によって生成された水は、復水タービン156に送られて復水タービン発電機158に利用されてから復水タンク160に送られる。そして、再び温水タンク146に供給され、過熱蒸気の生成に再利用される。復水タービン発電機158により生成された電力は、本実施形態の炭化システム100に備わる各構成要素の制御や動作等に利用される。
本実施形態では、ボイラ装置104は、前述したように、水や水蒸気等の水を主成分とする流体を流す熱交換部132、134がロストル131に載置された燃料炭C10を貫通して、燃焼する燃料炭C10と直接接する構成となっており、当該流体と熱交換をしながら過熱蒸気を生成することを特徴とする。すなわち、熱交換させる高熱側媒体を燃焼する燃料炭C10にして、当該燃料炭C10と熱交換部132、134の固体間の高熱伝導率と高放射率を生かして、燃料炭C10の燃焼によって発生した燃焼熱を熱交換部132、134に伝導させて過熱水蒸気を発生させる。
また、チャンバ130の頂部側には、図2に示すように、熱交換部となる水蒸気生成部132に給水する水を予熱する水予熱部140と、酸素供給部144から供給する酸素を予熱する酸素予熱部142が設けられる。
水予熱部140は、水源120、貯水タンク121、軟水器151を経て供給される水をボイラ装置104で発生した高温の燃焼排ガスとの熱交換によって温水にする。すなわち、熱交換部となる水蒸気生成部132に給水する水を燃焼排ガスで事前に温めることによって、当該燃焼排ガスに含まれる熱エネルギーを有効活用しながら、過熱蒸気の元となる水蒸気をより効率的に生成できるようになる。そして、水予熱部140で生成された温水は、温水タンク146に送られて貯留されて、当該温水タンク146から水蒸気生成部132に供給される。
酸素予熱部142は、酸素分離装置122から供給された酸素ガスをボイラ装置104で発生した高温の燃焼排ガスとの熱交換によって予熱する。そして、酸素予熱部142で予熱された酸素ガスは、酸素供給部144からロストル131に載置された燃料炭に供給される。すなわち、熱交換部となる水蒸気生成部132と過熱蒸気生成部134に供給する酸素ガスを燃焼排ガスで事前に温めることによって燃料炭をより燃焼し易くするので、当該燃焼排ガスに含まれる熱エネルギーを有効活用しながら、過熱蒸気をより効率的に生成できるようになる。
ボイラ装置104の頂部側に有する排気口147側には、ボイラ装置104で発生した燃焼排ガスに含まれるCOガスを燃料ガスとして電力を発生させる発電機150が設けられる。発電機150は、ボイラ装置104を通過したCOガスを含む排ガスに酸素を追加供給して、略完全燃焼させた高温気体でディーゼルエンジンやガスタービンを駆動させることによる発電や、熱交換器152による別経路の水蒸気を使った発電により電力を発生させる。
発電機150により生成された電力は、本実施形態の炭化システム100に備わる各構成要素の制御や動作等に利用される。例えば、当該電力の一部が電磁加熱器124による加熱水蒸気の温度調整や、炭化炉102の内外の温度や圧力の監視測定とそのデータによる各構成要素の自動調整、製炭終了後の余力を冷却水滴スプレーとなる流体ノズル118のための酸素分離装置122による窒素ガスの製造等に利用される。なお、発電機150や熱交換器152から排出される二酸化炭素は、排気筒154を介して大気に放出される。
コンデンサ106は、炭化炉102で有機性廃棄物を炭化処理した際に排出される炭化水素ガス分のうち、気体の部分となる排ガスを軟水器151から供給される水との熱交換により液体に凝縮させる機能を有する。また、コンデンサ106は、当該熱交換により炭化炉102を通過した水蒸気を含む排ガスからタールや木酢を凝縮させると共に、当該排ガスとの熱交換で得られた温水をボイラ装置104に戻す。
本実施形態では、より効率的にボイラ装置104の水蒸気生成部132で水蒸気を生成するために、コンデンサ106とボイラ装置104との間には、図2に示すように、コンデンサ106での水と排ガスとの熱交換で生成された温水を水蒸気生成部132に送水するための管路L13が設けられている。このようにして、本実施形態では、コンデンサ106での熱交換で得られた熱エネルギーも、炭化炉102で使用する過熱蒸気を生成するのに有効活用している。
スクラバ装置108は、コンデンサ106からの排ガスを貯水タンク121から供給される水で洗浄する機能を有する。また、スクラバ装置108は、コンデンサ106からの排ガスを洗浄することによって、炭化炉102からの排ガスで熱交換するコンデンサ106内のガス抜きをして、炭化炉102内の温度を維持する役目も果たす。コンデンサ106からの排ガスには、タールや木酢等の炭化水素を始めとする有機性不純物の他に金属酸化物等の無機性不純物も含まれる。
スクラバ装置108は、コンデンサ106からの排ガスに含まれるこれら不純物を取り除くために、当該排ガスに水を噴射して洗浄する。スクラバ装置108で取り除かれた不純物のうち、無機性不純物は、セラミック汚染除去装置166に送られてから、誘引ファン167を経て排気される。一方、スクラバ装置108で取り除かれた不純物のうち、有機性不純物は、沈殿分離器110に送られる。
沈殿分離器110は、コンデンサ106で凝縮された凝縮液とスクラバ装置108からの廃液を回収して沈殿分離する機能を有する。沈殿分離器110は、コンデンサ106で凝縮された凝縮液とスクラバ装置108からの廃液を回収して、これらの混合液から比重分離によってタールと酢液を抽出する。比重の大きいタールは、濃縮器162で水分を除去してタール塊にしてから適宜処理される。
一方、タールより比重の小さい酢液は、沈殿分離器110で比重分離された時点では、水を含む希釈酢液となっているので、濃縮器164で水分を除去して酢液を生成し、当該酢液を工業材料等に適宜利用する。なお、沈殿分離器110で比重分離した後に濃縮器162、164で除去した水分は、図2に示すように、復水タンク160に送られてから温水タンク146に供給され、過熱蒸気の生成に再利用される。
制御部112は、CPU等で構成されており、不図示の記憶部に記憶された各種プログラムを実行することにより、炭化システム100に備わる炭化炉102やボイラ装置104を始めとする各構成要素の動作制御等を行う。また、制御部112は、炭化システム100の各構成要素間に設けられる水や水蒸気、酸素ガス、窒素ガス等の流体を流すための管路L1〜L20に備わる不図示のポンプやバルブの動作制御等を行って、当該流体の流量や流速等を調整する。
すなわち、制御部112が本実施形態の炭化システム100に係る制御プログラムを実行することによって、燃料炭C10の需要に応じて、その出力を自動調整できるようになる。また、制御部112は、過熱蒸気の逆流を防ぐために、炭化炉102の内圧を外気の圧力より常に高くする必要があるので、炭化処理対象となる有機性廃棄物の炭化の進行状態に応じて、ボイラ装置104と炭化炉102との間に有する管路L1に備わる不図示のポンプやバルブの動作制御等を行って、過熱蒸気の圧力を調整する。
さらに、過熱蒸気の圧力を調整する際に、当該圧力を上げることによって過熱蒸気の体積当たりの重量となる密度が増えるので、過熱蒸気の体積当たりの運ぶエネルギーが大きくなる。このとき、蒸発潜熱も温度と共に大きくはなるが、それ程変わらないので、過熱蒸気の圧力を調整して上げることは、エネルギー効率的に温度の上限・エネルギー量の両方の面で有利となる。
また、本実施形態では、制御部112は、ボイラ装置104から炭化炉102に供給する過熱蒸気の温度を調整する。その際に、制御部112は、炭化炉102における有機性廃棄物の加熱処理によって燃料炭C10を生成するために、過熱蒸気が少なくとも1000度以上となるように温度を調整する。なお、有機性廃棄物を過熱蒸気で炭化処理して燃料炭C10を生成するためには、過熱蒸気の温度は、少なくとも600度以上あればよいが、本実施形態では、放射性セシウムが除去された良質な燃料炭C10を生成するために、過熱蒸気の温度を少なくとも1000度以上に加熱する。
具体的には、制御部112は、ボイラ装置104と炭化炉102の間に備わる管路L1に設けられる電磁加熱器124による設定温度の調整や、酸素分離装置122への空気供給量の調整によるボイラ装置104の燃料炭の燃焼温度を変えることによって、過熱蒸気の温度を所望の温度に調整する。例えば、過熱蒸気生成部134の出口に温度差を測定する熱電対という不図示の温度センサを設けて、設定温度に対していわゆる温度調節計である不図示のポジショナを用いて、空気(酸素)量を調整すべく不図示のコントロールバルブを自動制御し、積分値の大きさ次第で電磁加熱器124を作動させる。本実施形態では、放射性セシウムが含有されるような有機性廃棄物からでも、放射性セシウムが除去された良質な燃料炭C10を生成するために、過熱蒸気を例えば1500度と少なくとも1000度以上になるように温度を調整する。
このとき、電磁加熱器124は、炭化炉102内の温度分布のモニターに従って、温度を一様にするため自動作動させるようになっている。また、電磁加熱器124は、瞬時に水蒸気温度を変えられる利点があるが、その分、電力コストが余分にかかる。このため、本実施形態では、炭化処理する過程で大半の加熱処理は、ボイラ装置104での過熱蒸気の生成に依存するが、温度が均質化された過熱蒸気に余裕があるため、過熱蒸気の加熱の10%くらいは、電磁加熱器124で微調整することにしている。このようにして、本実施形態では、電磁加熱器124で少なくとも1000度以上の温度に加熱して、2000度くらいまでの加熱を可能としている。
このように、本実施形態の炭化システム100は、炭化炉102で生成した燃料炭の一部を炭化炉102に供給する過熱蒸気を生成するボイラ装置104の燃料として利用している。そして、ボイラ装置104の熱交換部132、134がチャンバ130内で燃焼している固体燃料である燃料炭C10と直接接する構成となっているので、燃料炭の燃焼による熱エネルギーの損失を最小限に抑制して熱交換がされるようになっている。このため、ボイラ装置104の熱交換部132、134の熱効率をより向上させられるので、短時間で効率的に過熱蒸気を生成して、当該過熱蒸気による加熱処理によって有機性廃棄物の再資源化の効率が良くなる。
また、当該炭化システム100は、有機性廃棄物を過熱蒸気によって燃料炭に再資源化する過程で発生する排ガスの熱エネルギーも利用して、ボイラ装置104の熱交換率を高めることによって、燃料炭C10の生産効率を向上させている。すなわち、炭化システム100で有機性廃棄物を再資源化する過程において、排出される排ガスに含まれる熱エネルギーを有効活用して、良質な燃料炭C10を効率的に生成可能としている。このため、炭化システム100で再資源化された燃料炭C10を燃料として利用することも含めて、ボイラ装置104の燃料コストも抑制できる。
さらに、本実施形態の炭化システム100は、炭化炉102の炉本体103の容積が10m3程度の比較的中小規模のプラントとなるので、炭化システム100の各構成要素を別個に分けて移動させてから、その移動先に簡易に設置することも可能である。このため、間伐材や建築廃材等の有機性廃棄物が多く排出される山間部等の地域に、本実施形態の炭化システム100を設置することにより、当該有機性廃棄物となる原木集積の経費と時間を省いて、効率的に燃料炭C10に再資源化できるようになる。そして、燃料炭C10に再資源化する原料となる周辺の原木や建築廃材等の有機性廃棄物が尽きれば、他地域に移動して、当該他地域で有機性廃棄物を再資源化できる。このため、有機性廃棄物を燃料炭C10に再資源化する炭化システム100をニーズに応じて設置可能となるので、生成された有機性廃棄物を削減しながら燃料炭C10として有効活用できるようになる。
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ボイラ装置及び炭化システムの構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。