JP2015086146A - 化合物、および、センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】長期的にタンパク質の吸着抑制可能な化合物、さらに糖類・糖タンパク質を金属基板上で再現よく測定する方法を提供。【解決手段】チオール基と、ボロン酸基を持つベンゼン環と、前記チオール基と前記ベンゼン環の間にアルキル鎖とポリエチレングリコール鎖を有し、前記ポリエチレングリコール鎖中にアミド結合を有する、ボロン酸化合物。タンパク質がボロン酸化合物に非特異的吸着することを長期間にわたって抑制できる。これにより、例えば、ボロン酸化合物を用いて、妨害物質条件下でも糖濃度を長期的に測定できる。【選択図】図13

Description

本発明は長期的にタンパク質の吸着抑制可能な化合物に関する。さらに糖類・糖タンパク質を金属基板上で再現よく測定する事に関する。
糖類は身体の恒常性維持にとって非常に大切な物質の一つとして挙げられる。その糖類の代表例として、グルコース(D−グルコース、ブドウ糖)が挙げられる。このグルコースは、身体を構成する各種の組織細胞のエネルギー源として大切である。しかし、糖が過剰に血液に流れた状態が続くと生命の危険を伴う意識障害を促すケトアシドーシスが引き起こされかねない。そのため、生体のグルコース維持は、生体恒常性にとって非常に大切な現象である。
現在研究がよく進んでいるグルコース検出手段の一つとして、ボロン酸化合物を用いたグルコースセンサーが幅広く知られている。ここで示されるボロン酸化合物とは、例えば化1や化2で示されるようなボロン酸基を有する化合物を指す。
Figure 2015086146
Figure 2015086146
ボロン酸基は、グルコースの持つジオール基と加水分解結合できることがよく知られている。この反応過程を詳しく示したのが化3である。なお、ここではボロン酸化合物の代表としてフェニルボロン酸の反応過程について記載している。
Figure 2015086146
pHの低い状態では化3(A)のようにボロン酸基はB(OH)2状態を大多数の分子はとっているものの、pHが高い状態では、化3(B)のようにボロン酸基が遊離の水酸化物イオンと結合してB(OH)3 -の状態をとりやすくなる。なお、二種類の分子の比が1:1になるpHを本発明ではpKaと定義することとする。そして、化3(B)のようにボロン酸基がB(OH)3 -状態の時、グルコースなどが持つジオール基と結合し、化3(C)のような分子構造をとりやすいことがよく知られている。
こういったボロン酸基の性質を利用して、グルコース濃度を光学的に測定した系が特許文献1である。ボロン酸化合物をチオール基によって予め金基板と結合させた状態にしておく。彼らは、ボロン酸基がグルコースと加水分解結合することで、表面増強ラマン信号(SERS)のピーク強度またはラマンシフトが一部変化することを発見し、これらの変化量を読み取ることで、グルコース濃度を測定できたと報告した。こういった金属基板の持つ特異な現象を利用してグルコース濃度を光学的に検出する手法は、近年確立されてきた非常に有力な手法の一つである。
また、非特許文献1には、PEGを導入した化合物が開示されている。
国際公開第2011/053247号
JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE 185, 94−103 (1997)
本発明は、化合物がタンパク質と非特異的に吸着することを長期的に抑制し続けることを目的とする。
下記の一般式(化4)で表されるボロン酸化合物。なお、mはPEG鎖の鎖長を表し、m≧3であり、nは、アルキル鎖の鎖長であり、n≧1を満たすm、nの組み合わせから構造は形成される。
Figure 2015086146
(チオール基と、ボロン酸基を持つベンゼン環と、前記チオール基と前記ベンゼン環の間にアルキル鎖とポリエチレングリコール鎖を有し、前記ポリエチレングリコール鎖中にアミド結合を有する、ボロン酸化合物。)
本発明の手法によって、タンパク質が、例えば、ボロン酸化合物に非特異的吸着をすることを長期間にわたって抑制できる。これにより、例えば、ボロン酸化合物を妨害物質条件下でも糖濃度を長期的に測定できる。
金基板の二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 金基板の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 化1の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 化2の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ C6PEG2OHの二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ C11PEG6OHの二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ C16PEG6OHの二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 二ヶ月間PBS溶液保存前後の2920/cm、1130/cmのピーク強度解析グラフ C6PEG2OHの二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ C16PEG3OHの二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ C16PEG6OHの二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 二ヶ月間PBS溶液保存前後の2920/cm、1130/cmのピーク強度解析のグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化5の合成概略図 本発明に従うボロン酸化合物化5が金基板表面に結合できたことを示すFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化9が金基板表面に結合できたことを示すFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化5の二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化5の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化9の二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化9の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化9の二ヶ月間PBS溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 本発明に従うボロン酸化合物化9の二ヶ月間HSA溶液に保存前後のFT−IR(高感度反射法)変化を示すグラフ 実施の形態2におけるセンサ100を示す図 実施の形態2におけるセンサ100の使用例を示す図
(実施の形態1)
まず、金属に直接結合した化合物がタンパク質と非特異的に吸着することを長期的に抑制し続けるという本発明の課題について、本発明者らは、以下を見出した。
特許文献1のような測定手法を用いて、基板上で例えば血液中の糖濃度を長期間測定し続けるためには、タンパク質等の共雑物が含まれる中で糖濃度を測定しなければならない。このような共雑物条件下では、タンパク質がボロン酸化合物に非特異的に吸着してしまい、正しい糖濃度をボロン酸化合物によって測定しにくくなる。しかしながら、長期間にわたって再現性よく糖濃度を測定するためには、ボロン酸化合物が基板上から解離したり状態変化したりするといったボロン酸化合物の劣化が重大な課題となる。しかしながら現状長期的に状態変化することなく、タンパク質の非特異的吸着を抑制できるような化合物は全く知られていなかった。
しかし、タンパク質の非特異的吸着を抑制するためには、PEG鎖(ポリエチレングリコール鎖)に、ある程度の鎖長が必要である、ということを本発明者らは見出した。
これに基づけば、長期的にタンパク質の非特異的吸着を減らす一つの解決手段としては、PEG鎖長を適切な長さにすることでタンパク質が表面に接近することを防止することである。
以上を踏まえて、本実施の形態1における化合物の例としては、上記の一般式(化4)で表されるボロン酸化合物である。
なお、m、nは、各々PEG鎖及びアルキル鎖の鎖長であり、m≧3、n≧1を満たす、m、nの任意の整数の組み合わせから構造が形成されている。
以上のボロン酸化合物であれば、タンパク質がボロン酸化合物に非特異的吸着することを長期間にわたって抑制できる。これにより、例えば、ボロン酸化合物を用いて、妨害物質条件下でも糖濃度を長期的に測定できる。
なお、PEG鎖の鎖長mが3以上、アルキル鎖の鎖長nは1以上であれば、後述するセンサ基板上に接着できうる限り、m及びnはどれ程大きくても本発明の範疇に含まれる。
アルキル鎖がない化1に示される4MPBAが金属に直接繋がれたとしても、タンパク質水溶液中に長期間保存することによって金属基板から解離し、タンパク質の非特異的吸着が生じていた。これはアルキル鎖長がないために分子間力が弱く、ボロン酸化合物が金属基板上に稠密に結合できないことによるものだと本発明者らは見出した。
これに基づけば、長期的にタンパク質の非特異的吸着を減らす一つの解決手段としては、基板上での分子の稠密性を上昇させ分子の安定性を高めながら、PEG鎖長を適切な長さにすることでタンパク質が表面に接近することを防止することである。
一例として、上述の例で示される化合物として、m=6,n=16の化5が挙げられる。
Figure 2015086146
ただし、本発明は、この例にのみ限定されるべきものではなく、m≧3、n≧1についてm、nの任意の整数の組み合わせに対しても含まれる。
例えば、m≧3、n≧11を満たす、(化4)に示す化合物であっても良い。
または、m≧6、n≧11を満たす、(化4)に示す化合物であっても良い。
または、m≧6、n≧16を満たす、(化4)に示す化合物であっても良い。
また、ボロン酸基のベンゼン環上の置換配置は、ベンゼン環から向かってメタ位、オルト位、パラ位のいずれに配置されていても本発明の範疇に含まれる。
上述の例で示されるボロン酸化合物は、ベンゼン環が置換基を有していてもよく、そのような置換基(誘導体)付ボロン酸化合物も本発明に含まれる。置換基の例としては、メトキシ基、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、カルボキシル基、アミノ基、フェニル基が挙げられる。一例として化6に示されるボロン酸化合物が挙げられる。
Figure 2015086146
化6で示される置換基のフルオロ基は、電子吸引性の高い置換基である。従って、フルオロ基はボロン酸基の前記pKaを下げさせる効果を持つ。前記pKaが下がれば、ボロン酸基はB(OH)3 -状態によりなりやすくなる。このB(OH)3 -状態のボロン酸基が、グルコースと化学的に結合できる。そのため、化6のグルコースへの結合性が、フェニルボロン酸の結合性よりも高くなる。
このようにボロン酸基とジオール基との特異的結合性を高めさせる置換基を置くことは、糖ならびに糖タンパク質の効果的な検出においても非常に有用である。
上述の例で示されるボロン酸化合物は、ボロン酸基を有するベンゼン環の代わりに、ボロン酸基を有するベンゼン環群(複数のベンゼン環)を有していても良い。
ベンゼン環群の数は金属上に安定的に結合できる限り、いくつ連なっていても本発明の範疇に含まれる。ベンゼン環群数の例として、ベンゼンの代わりにナフタレン(化7)、アントラセン(化8)といった構造が挙げられる。
Figure 2015086146
Figure 2015086146
ボロン酸基の結合部位は、ベンゼン環群上の任意の位置で置換されていても本発明の範疇に含まれる。また、ボロン酸基が複数置換されていても本発明に含まれる。合わせて、この環上のどの位置にボロン酸基以外の置換基が含まれていても本発明の範疇に含まれる。
これらのベンゼン環の連なった化合物は、一般に蛍光特性を有するため、グルコース等の糖類が結合した際に、蛍光波長が変化する特性を持つ。そこで、この波長変化を読み取ることでグルコース濃度を定量化可能なため、有用である。
ボロン酸基を有するベンゼン環に一つ以上置換基を含むような化合物も本発明の範疇に含まれる。一例として、化12が挙げられる。ただし本発明は化9にのみ限定されるべきものではなく、任意の置換基と結合部位について本発明の範疇に含まれる。
Figure 2015086146
また、本実施の形態1における化合物の別の例は、下記の一般式(化10)で表される化合物である。
Figure 2015086146
ただし、m≧6、n≧16を満たす、m、nの任意の整数の組み合わせから構造が形成されている。
以上の化合物であれば、タンパク質が化合物に非特異的吸着することを長期間にわたって抑制できる。これにより、例えば、化合物を用いて、妨害物質条件下でも糖濃度を長期的に測定できる。
本実施の形態1のチオール基は、金属Mと特異的に結合するため用いられている。金属Mの例として、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛といったものが挙げられる。ただし、金属Mの種類はこれらの金属にのみ限定されるものではなく、チオール基が結合可能な金属であれば、どのような金属の種類でも本発明の範疇に含まれる。
保存水溶液の種類も本発明化合物の構造が著しく変化してしまうような溶液を適用しない限り、任意の水溶液でも本発明の範疇に含まれる。
本実施の形態1の最大の特徴は、タンパク質などの共雑物が存在していたとしても、その共雑物が金属と結合したボロン酸化合物に特異的に吸着しないことである。従って、この化合物はボロン酸基の持つ単糖類の検出といった機能を共雑物が含まれていたとしても金属上で安定的に実施可能である。本発明利用上の利点は、従来の電気化学的手法のみならず、金属基板の特徴を活かした光学的手法でも、タンパク質といった共雑物が含まれても長期的に安定的な糖類検出が実施できる点である。後者の好例として特許文献1が挙げられる。特許文献1では、ボロン酸化合物を予め表面増強ラマン(SERS)用金基板上に結合させておき、ボロン酸に結合したグルコース濃度をSERSスペクトラム変化により定量化できると報告されている。以上のように、グルコース濃度を安定的に定量化するためには、ボロン酸基が金基板上に存在することが必要条件である。従って、本発明はこのようなグルコース濃度検出にも非常に有用である。
本発明は、生体を傷つけることなく体内における糖濃度を測定する技術に展開できる。一例として下記のような方法が検討できる。予め生体にボロン酸化合物を吸着させた光学センサを埋め込んでおく。このセンサを生体外部から適切な光を照射することによってボロン酸基と結合した糖の濃度を測定できる。このようにして得た体内の糖に関する情報を連続的にモニターすることによって臨床学的に有用なデータを取得することもできる。また、このようなセンサにより、糖尿病患者はいつでもどこでも自身の血糖値を容易に測定可能になる。さらに、患者のQOLを高めることにも繋がりうる。また、ボロン酸基開裂を抑制する本発明手法は、所望の糖・糖タンパク質を測定可能な次世代バイオセンサにも多大な影響を与える。
(実施の形態2)
実施の形態2が、図22および図23を参照しながら説明される。
実施の形態2においては、実施の形態1で示されたボロン酸化合物または化合物を結合したセンサが提案される。
図22は、実施の形態2におけるセンサ100を示す図である。
実施の形態2におけるセンサ100は、ボロン酸化合物101と、基板103とを有する。
ボロン酸化合物101は、実施の形態1において示されたボロン酸化合物である。
基板103は、金属部102を備える。
ボロン酸化合物101のチオール基は、金属部102と結合されている。
以上の構成によれば、タンパク質含有溶液条件下であってもボロン酸化合物がタンパク質と吸着することを抑制できる。これにより、例えば、タンパク質含有溶液条件下であってもセンサ上のボロン酸化合物がタンパク質と非特異的に吸着することを抑制できる。例えば、タンパク質含有糖水溶液中または被検体の内部において、センサのボロン酸化合物によって長期的かつ安定的に糖濃度を測定できる。
ボロン酸化合物101は、例えば、図20(a)に示されるように、金属部102の上面に、膜状に設けられていても良い。
もしくは、ボロン酸化合物101は、例えば、図17(b)に示されるように、パターン化された金属部102(金属パターン)に近接するように設けられていても良い。
金属パターンとしては、例えば、粒子状に形成された金属部などが挙げられる。金属パターンとしては、表面増強ラマン散乱を生じさせる構造であっても良い。
なお、実施の形態2におけるセンサ100は、実施の形態1において示された化合物(化10)と、基板103とを有していても良い。
図23は、実施の形態2におけるセンサ100の使用例を示す図である。
実施の形態2におけるセンサ100は、被検体の内部に埋め込まれる。
検出装置200は、センサ100を用いて、被検体の内部の被検物質を検出する検出装置である。
検出装置200は、励起光を出射する発光手段201と、散乱光を検出する検出手段202と、演算手段203とを具備する。
検出装置200は、発光手段201からの励起光を、被検体内部に埋め込まれたセンサーチップ100に照射し、散乱光を発生させる。
ここで、散乱光としては、例えば、表面増強ラマン散乱光や、蛍光などが挙げられる。
検出装置200は、発生した散乱光を検出手段202で検出し、散乱光の強度を得る。
検出装置200は、得られた散乱光の強度に基づき、演算手段203により、被見物質の存在の有無を判定する。もしくは、検出装置200は、得られた散乱光の強度に基づき、演算手段203により、被見物質の濃度を測定しても良い。
なお、実施の形態2においては、被検体は、人体や動物などの生体であっても良い。
もしくは、被検体は、無生物であっても良い。すなわち、センサ100は、例えば、被検物質の中に配置されても良い。このとき、検出装置200は、被検物質の中に含有される被検物質を検出しても良い。このとき、被検溶液は、生体から摘出された液であっても良い。例えば、被検溶液は、血液、汗、涙、尿、唾液などであっても良い。
なお、被検物質としては、例えば、グルコースなどの糖類または糖タンパク質などが挙げられる。
以下、本発明の特徴を一層明らかにするため実施例に沿って本発明を説明していく。
(実施例1)
<自己集積膜吸着実験>
本実施例ではチオール系化合物を金基板へ吸着させる方法について述べる。
ここで、チオール系化合物は以下の8種類の化合物を指す。
まず、ベンゼン環からのボロン酸基の開裂を再現できるか確認するために、化1の4MPBA及び、ボロン酸基のベンゼン環上の位置が開裂にどのような影響を与えるか検証するために、化2の3MPBAの計二種類の化合物について構造安定性を検証することに決めた。そこで、まず本実施例では、前記の3MPBAと4MPBA計二種類を金基板に吸着させる方法について記載する。
次に、二ヶ月間タンパク質の非特異的吸着を抑制する材料を特定するために、6−Mercaptohexadecanol diethyleneglycol(C6PEG2OH)、11−Mercaptoundecanol triethyleneglycol(C11PEG3OH)、16−Mercaptohexadecanol triethyleneglycol(C16PEG3OH)、 16−Mercaptohexadecanol hexaethyleneglycol(C16PEG6OH)の金基板への吸着方法も本実施例に併記した。
さらに、実施例4で使用される金基盤へのボロン酸化合物の固定化に使用する際の足場となるアルキル鎖として20−(16−Mercaptohexadecanyloxy)−3,6,9,12,15,18−hexaoxaeicosane−1−amine(C16PEG6NH2と定義)の金基板への吸着方法も本実施例に併記した。
5nmのチタンと100nmの金をSiウエハー上にスパッタリング法を用いて薄膜形成させた金基板を準備した。前記金基板を2−プロパノール(IPA)溶液中で10分間超音波洗浄した。その後、前記金基板をアセトン溶液中で10分間超音波洗浄した。さらに前記金基板をアセトン溶液から取り出し、大量の超純水で洗浄した後、洗浄後の金基板を100W、5分間の条件でO2プラズマ処理をした。このように洗浄された金基板を1mMのエタノール溶液に溶かしたチオール系化合物と反応させた。以上の洗浄方法によって、金基板に自己集積膜(SAM)を吸着させた。
(実施例2)
<金基板及び4MPBAと3MPBAの長期保存によるタンパク質吸着実験>
本実施例では、金基板そのものと実施例1で金基板上に固定化された化合物、すなわち4MPBAと3MPBAの計3種類について37℃条件下で4000mg/dlのヒト血清アルブミン(HSA)を含んだリン酸(10mM)と塩化ナトリウム(154mM)を含有するリン酸生理食塩水(PBS)溶液(以下、HSA溶液と定義する)に浸した状態で二ヶ月間保管して、HSAの吸着の有無について評価した。
予め金基板そのものと実施例1で得られた2種類のボロン酸化合物、すなわち4MPBA、3MPBAが吸着された金基板の計3種類の表面状態をFT−IR(高感度反射法)の装置FRONTIER FT−IR(PerkinElmer)によって調べた。そして各々のサンプルをHSA溶液に浸した。二ヵ月保存後にその三種類の金基板を取り出して、超純水でその金基板表面をよく洗浄した後に、その金基板表面をFRONTIER FT−IR(PerkinElmer)によって再び調べた。
得られたFT−IRの吸収ピーク強度変化を定量的に検証するために、得られたスペクトラムのうち、所望のピークを吸収強度が最大である波数からみて周辺30/cm程度抽出した。抽出後のピークを一次直線でピークの傾きを補正した。その補正されたピークの強度を解析ソフトOriginPro9.0Jに含まれるローレンツ関数によって見積もった。なお、抽出ピークとローレンツ関数との相関係数がR2≧0.9であれば、正しくフィッティングなされていると判断した。その正しいフィッティングで示されるピーク強度値を本発明では解析データとして採用した。そして、初期サンプルのピーク強度に対するPBS溶液に浸けた時間毎のピーク強度比を算出してグラフ上にプロットした。なお、本発明ではこの解析手法を「ピーク強度解析手法」と定義する。
まず、金基板そのものを二ヶ月間保存した場合にどのような変化が見られるか明らかにするために、表面のIRスペクトラム変化を観察した。図1ではPBS溶液に二ヶ月保存前後のIRスペクトラム変化を示した。すると、新しいピークが顕著に生じることもなかったため、金基板表面が変化していないとみなせる。一方、図2ではHSA溶液に二ヶ月間保存前後のIRスペクトラム変化を示した。HSA溶液保存後のIRスペクトラムでは1659/cmのC=O伸縮振動、1540/cmのNH変角振動といったタンパク質由来のピークが顕著に観察された。従って、HSAが金基板へ非特異的に吸着しているとわかった。
次に、4MPBAについて二ヶ月間保存した場合にどのような変化が見られるか明らかにするために、表面のIRスペクトラム変化を観察した。1354/cmという非特許文献1の結果からBO伸縮振動だと帰属される。このピーク強度を観察すると、大きく減少していることがわかる。従って二ヶ月間HSA溶液に浸すことによって、4MPBAのボロン酸基が少なくとも減少している。次に、タンパク質の非特異的吸着が4MPBAで生じているか確認するために、タンパク質由来の代表的なピークであるC=O伸縮振動(1659/cm)について検証した。すると、HSA溶液に保存する前では全く見られなかったC=O伸縮振動のピークが二ヶ月保存後には生じていることが観察された。そこでタンパク質の吸着量を定量的に把握するために、HSA溶液に二ヶ月保存前後の1658/cm(C=O伸縮振動)のIRピーク強度変化を解析した(図12)。なお、各々のサンプルのピーク強度変化比は金基板の吸光度を100%として規格化して図示している。すると、1658/cmに対する金基板のIR強度変化に対して4MPBAのIR強度変化は78%と高い数値をとった。この結果から、4MPBAを二ヶ月間HSA溶液に保存するとHSAの非特異的吸着が生じているとみなせる。
ベンゼン環に対するボロン酸基の置換位置とボロン酸基開裂の関係を明らかにするために、3MPBAのボロン酸基開裂の有無を確認した。図4に実施例1で吸着させた直後の初期状態と1日PBS溶液に浸けた後の状態の計2種類についてIRスペクトラムを示した。まず、1348/cmは図1で示される4MPBAの帰属結果よりBO伸縮振動だと帰属される。このBO伸縮振動の吸収強度は二ヶ月間HSA溶液に保存することによって激減していることが観察される。従って、HSA溶液に保存することによって、少なくともボロン酸基の吸着数が減少している。次に、タンパク質の非特異的吸着が3MPBAでも生じているか確認するために、タンパク質由来の代表的なピークであるC=O伸縮振動(1659/cm)について検証した。すると、二ヶ月保存前には全く観察されなかったC=O伸縮振動の吸収強度が二ヶ月保存後には生じていた。そこで、タンパク質の吸着量を定量的に把握するために、HSA溶液に二ヶ月保存前後の1659/cm(C=O伸縮振動)のIRピーク強度変化を解析した(図12)。すると、金基板のIR強度変化に対して3MPBAのIR強度変化は61%であった。
従って、この結果から、3MPBAもまた二ヶ月間HSA溶液に保存するとHSAの非特異的吸着が生じていた。さらに前記4MPBAの実施例とあわせると、タンパク質の非特異的吸着現象が、ボロン酸基のベンゼン環上での置換位置には大きく依存しないことも明らかになった。
(実施例3)
<タンパク質吸着の長期保存条件下での抑制可能化合物の構造特定>
実施例3ではタンパク質吸着を長期的に抑制できる化合物の特徴を把握するために、アルキル鎖とPEG鎖を有する様々な化合物について長期タンパク質吸着実験を実施した。
まず、二ヶ月間保存しても構造が安定な化合物(SAM安定性が確保されている化合物)を特定するために、様々なアルキル鎖長を有する化合物についてPBS溶液に二ヶ月保存した場合のIRスペクトラム変化を観察した。まず、図5で示されるC6PEG2OHでは初期スペクトルと比較すると、例えばピーク強度の比較的大きな1130/cm(−C−O−C−伸縮振動)や2844/cm、2921/cm(ともにCH伸縮振動)といったピーク値が二ヶ月保存によって大きく減少した。従ってC6PEG2OHの一部が金基板から解離している。次に図6で示されるC11PEG3OHでは1130/cm(−C−O−C−伸縮振動)や、2846/cm、2915/cm(CH伸縮振動)のピーク強度が二ヶ月保存により減少していた。最後に図7で示されるC16PEG3OHでは、1130/cm (−C−O−C−伸縮振動)や2850/cm、2918/cm(CH伸縮振動)のピーク強度が二ヶ月保存後でも大きくは変化せず、その他目立ったピークも現れていないこともわかった。
従ってC16PEG3OHだと37度で二ヶ月間保存することによってSAM安定性が確保されていると定性的に考えられる。
そこで、二ヶ月間SAM安定性を有するアルキル鎖長がC16PEG6OHであるかをより定量的に検証するために、各々2920/cm(図8(A))と1130/cm(図8(B))について各々のSAMのPBS溶液に二ヶ月保存前の初期ピーク強度を100%とした時のピーク強度変化を解析した。1130/cmの場合にはC6PEG2OH、C11PEG3OH、C16PEG3OHとアルキル鎖長を伸ばすにつれて20%、38%、102%と増加していった。一方、2920/cm(CH伸縮振動)の場合にはC6PEG2OH、C11PEG3OH、C16PEG3OHになるに従って凡そ10%、38%、80%へとピーク強度が増加していった。
従って、これらの解析結果からC16PEG3OHであれば37度二ヶ月間保存に対してSAM安定性が高いと判断できる。
次に、SAM安定性の高い材料についてタンパク質の非特異的吸着を二ヶ月保存後でも抑制可能な材料を特定するために、37度HSA溶液に二ヶ月保存した前後のFT−IRスペクトラム変化を観察した。
図9に示されるC6PEG2OHでは、1659/cmや1540/cmといったアミド結合由来のピークが観察されるため、HSAが非特異的に吸着を起こしていると見なせる。
一方、SAM安定性の高い材料として知られるC16PEG3OHやC16PEG6OH(各々図10、11)では、1659/cmや1540/cmといったアミド結合由来のピークが明確には観察されないため、HSAがIRで観察できる程には非特異的に吸着していないとみなすことができる。
そこでより定量的にHSAの非特異的吸着とPEG鎖長の関係を明らかにするために、1659/cmの二ヶ月保存前後のピーク強度解析手法を実施した(図12)。C6PEG2OHのピーク強度変化は、金基板のピーク強度変化に比べると凡そ38%であった。また、C11PEG3OH及びC11PEG6OHのピーク強度変化は金基板のピーク強度に対して各々約11%、6.0%と減少していた。さらにアルキル鎖長を伸ばしたC16PEG3OH及びC16PEG6OHのピーク強度変化は金基板のピーク強度の約2%であった。
以上の結果から、PEG鎖長が3以上であれば、37度二ヶ月保存によって材料の構造が変化せずかつ、HSAの非特異的吸着を抑制し続けられるとわかった。
さらに、以上の結果から、好ましくは、アルキル鎖長が11以上でPEG鎖長が3以上であれば、37度二ヶ月保存によって材料の構造が変化せずかつ、HSAの非特異的吸着を抑制し続けられるとわかった。
(実施例4)
<EDC/NHS法によるリンカー結合実験>
本実施例では本発明に従うボロン酸化合物として前記の化合物、すなわち化5、化9を金基板上で作製する方法について以下に詳細を述べる。
化5、化9を作製するための合成ルート概略図を図13に示した。ただし化5と化9の合成方法はほぼ同じなので、図13中では化5にのみ特化して記載してある。まず、図13(A)で示されるように3−カルボキシ−フェニルボロン酸(3CPBA)を購入し、準備した。
次に100mM MESと0.1%塩化ナトリウムを加えたpH4.7の溶液中に25℃において、1mM 3CPBAを溶かした。N−ハイドロキシコハク酸イミド(NHS)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド(EDC)と2時間室温条件下で反応させた(経路(i))。前記反応溶液のpHを1Nの水酸化ナトリウム溶液によって7.0まで上昇させた。その後、実施例1で示されるC16PEG6NH2を吸着させた金基板に、前記反応溶液を加えた(経路(ii))。前記反応溶液に4時間浸けた後に、前記金基板を前記反応溶液から取り出した。未反応成分を前記金基板表面から除去するために、前記金基板表面を超純水でよく洗浄した。そして、前記金基板上に図13(C)で示される化合物を作製した。ここで便宜上、化5で示される化合物の名称をC16PEG6NHCOPBA、化9で示される化合物の名称をC16PEG6NHCOMPBAと定義する。
化5、化9の化合物が金基板上で作製できていることをFT−IR(高感度反射法)によって同定した。この同定に使用したグラフが、化5、化9の各々に対して図14、図15である。
(実施例5)
<C16PEG6NHCOPBAの構造安定性及びタンパク質非特異的吸着評価試験>
まず、本発明に従う化5で示されるC16PEG6NHCOPBAの37度二ヶ月間PBS溶液保存することによるSAM安定性を評価した。
化5をPBS溶液保存する前と二ヶ月間保存後の計二種類のFT−IRスペクトラム結果を図16に示す。ほぼ全ての種類のピーク強度がPBS溶液保存前後で大きく変化せず、新しいピークも現れていないように観察される。そこで、C16PEG6NHCOPBAが構造変化していないかを定量的に判断するために、ここでは2つのピークにのみ絞って、実施例3と同様のピーク強度解析手法を実施した。一つ目のピークとして、ボロン酸基由来のBO伸縮振動だと帰属される1390/cmに注目した。すると、ボロン酸基由来の吸収強度がPBS溶液に浸す前の状態と二ヶ月間保存後の状態とを比較して、最大で12%しか変わらなかった。二つ目のピークとして、ボロン酸を架橋するアミド結合由来のC=O伸縮振動と帰属される1658/cmに着目した。すると、アミド結合由来のピーク強度もまた二ヵ月保存によって10%しか変化していなかった。
以上の解析結果から、本発明に従うC16PEG6NHCOPBAは二ヶ月間PBS溶液に保存しても、実施例1に見られるような顕著な構造変化をしないとわかった。
次に、本発明に従うC16PEG6NHCOPBAがタンパク質と非特異的に吸着するか検証するために、37度二ヶ月間HSA溶液に保存してその金基板表面をFT−IR(高感度反射法)によって計測した。
37度二ヶ月間HSA溶液に保存したC16PEG6NHCOPBAは保存前と比べると1659/cm (C=O伸縮振動)、 1540/cm (NH変角振動)といったアミノ酸由来のピーク強度がわずかに上昇していた(図17)。この結果をより定量的に捉えるために、ピーク強度変化が最も観察しやすい1659/cmのピーク強度解析を実施した。その解析結果を図12に示した。なお、タンパク質溶液に添加せずとも1659/cmのピークが元々観察されているために、元々観察されている分のピーク強度値を減算して表記している。すると、金基板上への非特異的吸着量と比較して、C16PEG6NHCOPBAはわずか4.5%という結果を得た。
この解析結果から本発明に従うC16PEG6NHCOPBAはタンパク質の非特異的吸着を長期間に渡って抑制し続けられる。
(実施例6)
<C16PEG6NHCOMPBAの構造安定性及びタンパク質非特異的吸着評価試験>
まず、本発明に従うC16PEG6NHCOMPBAもまた37度二ヶ月間PBS溶液保存してもSAM安定性を保てるかどうか評価した。
C16PEG6NHCOMPBAをPBS溶液保存する前と二ヶ月間保存後の計二種類のFT−IRスペクトラム結果を図18に示す。ほぼ全ての種類のピーク強度がPBS溶液保存前後で大きく変化せず、新しいピークもIRスペクトラム上に現れていないように観察される。そこで、C16PEG6NHCOMPBAが構造変化しているかを定量的に判断するために、ここでは二種類のピークのみに絞って、実施例5と同様のピーク強度解析手法を実施した。一つ目のピークとして、ボロン酸基由来のBO伸縮振動だと帰属される1390/cmに注目した。すると、ボロン酸基由来の吸収強度がPBS溶液に浸す前の状態と二ヶ月間保存後の状態とを比較して、最大で5%しか変わらなかった。二つ目のピークとして、ボロン酸を架橋するアミド結合由来のC=O伸縮振動と帰属される1662/cmに着目した。すると、アミド結合由来のIR吸収強度もまた二ヵ月保存によって8%と大きく変化していなかった。
以上の解析結果から、C16PEG6NHCOMPBAは二ヶ月間PBS溶液に保存しても実施例1に見られるような顕著な構造変化をしないとわかった。
次に、本発明に従うC16PEG6NHCOMPBAがタンパク質と非特異的に吸着することを抑制できるか検証するために、37度二ヶ月間HSA溶液に保存してその金基板表面をFT−IR(高感度反射法)によって計測した。
図19によれば、37度二ヶ月間HSA溶液に保存したC16PEG6NHCOMPBAは1659/cm(C=O伸縮振動)、1540/cm(NH変角振動)といったアミノ酸由来のピーク強度が上昇していた。このピーク強度変化をより定量的に捉えるために、実施例5と同様に1659/cmのピーク強度解析を実施した。その解析結果を図12に示す。なお、アミド結合がもともと見えている化合物ではそのピーク強度を減算して表記している。金基板上への非特異的吸着量と比較して、C16PEG6NHCOMPBAはわずか4.4%という結果を得た。
この解析結果から本発明に従うC16PEG6NHCOMPBAもまたタンパク質の非特異的吸着を長期間に渡って抑制し続けられる。
(実施例7)
<C16PEG6NH2の構造安定性及びタンパク質非特異的吸着評価試験>
まず、本発明に従うC16PEG6NH2が37度二ヶ月間PBS溶液保存してもSAM安定性を保てるかどうか評価した。
C16PEG6NH2をPBS溶液保存する前と二ヶ月間保存後の計二種類のFT−IRスペクトラム結果を図20に示す。ほぼ全ての種類のピーク強度がPBS溶液保存前後で大きく変化せず、新しいピークもIRスペクトラム上に現れていないように観察される。そこで、C16PEG6NH2が構造変化しているかを定量的に判断するために、ここでは二種類のピークのみに絞って、実施例5と同様のピーク強度解析手法を実施した。一つ目のピークとして、ボロン酸基由来のBO伸縮振動だと帰属される1390/cmに注目した。すると、ボロン酸基由来の吸収強度がPBS溶液に浸す前の状態と二ヶ月間保存後の状態とを比較して、最大で5%しか変わらなかった。二つ目のピークとして、ボロン酸を架橋するアミド結合由来のC=O伸縮振動と帰属される1662/cmに着目した。すると、アミド結合由来のIR吸収強度もまた二ヵ月保存によって8%と大きく変化していなかった。
以上の解析結果から、C16PEG6NH2は二ヶ月間PBS溶液に保存しても実施例1に見られるような顕著な構造変化をしないとわかった。
次に、本発明に従うC16PEG6NH2がタンパク質と非特異的に吸着することを抑制できるか検証するために、37度二ヶ月間HSA溶液に保存してその金基板表面をFT−IR(高感度反射法)によって計測した。
図21によれば、37度二ヶ月間HSA溶液に保存したC16PEG6NH2は1659/cm(C=O伸縮振動)、1540/cm(NH変角振動)といったアミノ酸由来のピーク強度が上昇していた。このピーク強度変化をより定量的に捉えるために、実施例5と同様に1659/cmのピーク強度解析を実施した。その解析結果を図12に示す。なお、アミド結合がもともと見えている化合物ではそのピーク強度を減算して表記している。金基板上への非特異的吸着量と比較して、C16PEG6NH2はわずか3.7%という結果を得た。
この解析結果から本発明に従うC16PEG6NH2もまたタンパク質の非特異的吸着を長期間に渡って抑制し続けられる。
本発明は、例えば、ボロン酸化合物に対する妨害分子の吸着を長期的に抑制し続けられることで糖・糖タンパク質を再現よく測定可能なセンサ作製に利用できる。
本発明は、多くの用途が考えられるものの、例えば、タンパク質共雑物条件下において金属上でのボロン酸化合物を用いた糖類・糖タンパク質の再現性ある検出に好適であり、さらにはバイオセンサにも応用可能な技術である。
100 センサ
200 検出装置

Claims (9)

  1. 下記の一般式(化4)で表される化合物。
    Figure 2015086146
    ただし、m≧3、n≧1を満たす、m、nの任意の整数の組み合わせから構造が形成されている。
  2. n≧11を満たす、請求項1に記載の化合物。
  3. m≧6を満たす、請求項2に記載の化合物。
  4. n≧16を満たす、請求項2または3に記載の化合物。
  5. m=6、n=16を満たす、請求項4に記載の化合物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の化合物と、
    金属部を備える基板と、
    を有し、
    前記化合物のチオール基が、前記金属部と結合されている、
    センサ。
  7. 下記の一般式(化10)で表される化合物。
    Figure 2015086146
    ただし、m≧6、n≧16を満たす、m、nの任意の整数の組み合わせから構造が形成されている。
  8. m=6、n=16を満たす、請求項7に記載の化合物。
  9. 請求項7または8に記載の化合物と、
    金属部を備える基板と、
    を有し、
    前記化合物のチオール基が、前記金属部と結合されている、
    センサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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