JP2015080753A - セシウム吸着用ナノ繊維、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法及びセシウム吸着用製品 - Google Patents

セシウム吸着用ナノ繊維、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法及びセシウム吸着用製品 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用ナノ繊維を提供する。また、上記のようなセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を提供する。また、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維を備えるセシウム吸着用製品を提供する。【解決手段】ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルー2と、ナノ粒子化プルシアンブルー2を担持している有機ナノ繊維3とを有することを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維1。原料準備工程とセシウム吸着用ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。また、セシウム吸着用ナノ繊維1(不織布10の形態をとっている)を備えるセシウム吸着用製品20。【選択図】図1

Description

本発明は、セシウム吸着用ナノ繊維、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法及びセシウム吸着用製品に関する。
なお、本明細書における「セシウム」(「セシウム吸着用ナノ繊維」のように物の名称の一部となっている場合を含む)は、セシウムの同位体全てを含む記載である。また、「セシウム137」は、セシウムの同位体のうちセシウム137のみを指す記載である。
本明細書における「セシウム吸着用物質」は、セシウムを吸着可能な物質のことをいう。また、「セシウム吸着材」は、セシウム吸着用物質を有する部材のことをいう。本発明に係るセシウム吸着用ナノ繊維、及び、当該セシウム吸着用ナノ繊維からなる不織布は、セシウム吸着材である。また、「セシウム吸着用製品」は、セシウム吸着材を備える製品のことをいう。
近年、原子力事故が実際に発生したことにより、様々な放射性物質が人間の生活圏を含む環境中に放出され、深刻な問題が発生している。中でも懸念されているのがセシウム137の影響である。放射性のアルカリ金属であるセシウム137は、水溶性であるという特徴や、カリウムと置き換わって生体内に蓄積するという特徴や、半減期が約30年であるという特徴を有する。このため、環境中に放出されたセシウム137は、健康、生活、及び、産業(特に農業、漁業、畜産業のような生物に直接関連する産業)に対して、深刻な悪影響を、かなりの長期間にわたって及ぼすと考えられている。
以下に、環境中に放出されたセシウム137に関連して、現在求められていることを例示する。
現在、放射性物質を除去するために、土壌の表層を剥離したり、アスファルトや建造物の表面を水で洗浄したりといった除染作業が行われている。こうした作業を行った後に出る放射性廃棄物(例えば、剥離した土壌や洗浄に用いた水)は、環境中にそのまま廃棄することはできない。これら放射性廃棄物は、基本的に全量回収され、その後隔離貯蔵されることとなる。しかし、放射性廃棄物の量が膨大であるため、現状では、その貯蔵スペースが不足しがちになっている。このため、放射性廃棄物を減容化することが求められている。
また、セシウム137が水や微小物質(砂粒、塵、埃、水滴等)とともに環境中に拡散することが考えられる。このため、セシウム137の環境中への拡散を防ぐことも求められている。
さらに、セシウム137が人体に流入し、人体の健康を損なう可能性が考えられる。このため、セシウム137の人体への流入を遮断することも求められている。
上記のような要求に対応するためのものとして、従来、セシウム吸着材(セシウム吸着物質として、例えば、ゼオライトやフェロシアン化物を有するもの。)やセシウム吸着材を備えるセシウム吸着用製品が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
従来のセシウム吸着材やセシウム吸着用製品によれば、放射性物質を減容化すること、セシウム137の環境中への拡散を防ぐこと、及び、セシウム137の人体への流入を遮断することが可能となる。
特開2013−024812号公報 特開2012−223254号公報
ところで、セシウム吸着材の重要な要素として、セシウム吸着能力の高さを挙げることができる。また、セシウム吸着能力が高くても、取り扱いが困難であっては使用が難しくなってしまう。セシウム吸着材の技術分野においては、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着材が常に求められている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用ナノ繊維を提供することを目的とする。また、上記のようなセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を提供することを目的とする。さらにまた、従来のセシウム吸着用製品よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用製品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の発明者らは、まず、セシウム吸着用物質について研究及び検討を進めた。当該検討の中で、本発明の発明者らはプルシアンブルー(Prussian blue)に着目した。プルシアンブルーは染料として合成された物質であるが、セシウムを選択的に吸着する能力が高く、かつ、水に溶解しにくいという特徴があるため、セシウム吸着用物質として用いられる機会が多くなってきている。
プルシアンブルーは、主に、組成式FeIII [FeII(CN)]で表されるヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)の青色錯体からなる。
なお、本明細書においては、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)と組成がやや異なる物質であっても、例えば、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウムや、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)の鉄イオン1つが他の金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、銅、ニッケルのイオン)と置換されたもののように、一般的にプルシアンブルーとして扱われているものについては、区別することなく無くプルシアンブルーとして扱う。
プルシアンブルーによるセシウムの吸着メカニズムは未だ詳細には知られていないが、一般的に論じられているメカニズムとして、イオン交換、物理吸着、及びイオントラッピングが挙げられている。どのようなメカニズムであっても、プルシアンブルーがセシウムを吸着するには、プルシアンブルーとセシウムとが接触する必要がある。このため、プルシアンブルーの表面積を大きくすると、セシウムを吸着する効果も高くすることができる。
これらの背景から、プルシアンブルーの微細化が研究されている。最近、産業技術総合研究所が、ナノ粒子化されたプルシアンブルー(以下、ナノ粒子化プルシアンブルーという。)を開発した(大日精化工業株式会社および関東化学株式会社と共同。)。市販品のプルシアンブルー(平均直径:約10μm)のセシウムイオン吸着率は約80%であるのに対し、ナノ粒子化プルシアンブルー(平均直径:約15nm)のセシウムイオン吸着率は約100%である。このように、ナノ粒子化プルシアンブルーは卓越したセシウム吸着能力を有している。
このように、ナノ粒子化プルシアンブルーは大変有用なセシウム吸着用物質である。しかし、本発明の発明者らは、ナノ粒子化プルシアンブルーはあまりにも微小であり、そのまま使用したのでは使用後の回収が著しく困難であることに考え至った。
そこで、本発明の発明者らは、ナノ粒子化プルシアンブルーを担持する担体として、有機ナノ繊維を用いることにした。有機ナノ繊維は、高分子の有機材料(ポリマー)からなり、平均直径が数千nm程度かそれ以下の極細繊維のことをいう。有機ナノ繊維は、その細さに起因する特異な性質、特に大きな比表面積により着目されている。
有機ナノ繊維は、直径が極細で表面積が非常に大きいため、担体として用いたときに、担持している物質が外部に露出する割合が大きいという特徴がある。また、有機ナノ繊維は、繊維質で扱いやすいという特徴もある。さらに、有機ナノ繊維は、微小物質の捕集性能が高いという特徴もある。
本発明は、以下の要素からなる。
[1]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維は、ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルーと、前記ナノ粒子化プルシアンブルーを担持している有機ナノ繊維とを有することを特徴とする。
本発明のセシウム吸着用ナノ繊維によれば、上記のように、卓越したセシウム吸着能力を有しているセシウム吸着用物質であるナノ粒子化プルシアンブルーを、担持している物質が外部に露出する割合が大きい担体である有機ナノ繊維が担持しているため、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力を高くすることが可能となる。
また、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維によれば、繊維質で扱いやすい有機ナノ繊維にナノ粒子化プルシアンブルーを担持しているため、容易に取り扱うことが可能となる。
このため、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維は、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用ナノ繊維となる。
また、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維によれば、セシウム137を吸着することにより、放射性物質を減容化すること、セシウム137の環境中への拡散を防ぐこと、及び、セシウム137の人体への流入を遮断することが可能となる。
ところで、環境中のセシウムは、雨水、海水、除染処理水等の水系中にイオンや錯体として存在しているものと、乾燥した固体の表面に酸化物、水酸化物、塩等として存在しているものとがある。セシウムが付着している固体は、微小物質(砂粒や埃等)であることが多い。
本発明のセシウム吸着用ナノ繊維によれば、有機ナノ繊維の微小物質の捕集性能が高いため、セシウムが付着した固体が微小物質であっても、当該微小物質を効率よく捕集することが可能となる。
なお、プルシアンブルーは、液体中のセシウムを高い効率で吸着することはできるが、固体に付着したセシウムを高い効率で吸着することはできない。これはナノ粒子化プルシアンブルーであっても同様である。しかしながら、セシウム吸着用ナノ繊維及び捕集した固体に水分を加えてセシウムを水中に溶かし出すことにより、ナノ粒子化プルシアンブルーが、セシウムを高い効率で吸着することができるようになる。
本発明で用いるナノ粒子化プルシアンブルーの平均直径は、1000nm以下とすることができ、さらにいえば5nm〜50nmの範囲内にあることが好ましい。
本発明のセシウム吸着用ナノ繊維としては、例えば、不織布の形態をとっているものを用いることができる。当該不織布は、セシウム吸着用ナノ繊維が有する効果をそのまま有する。
当該不織布は、セシウム吸着用ナノ繊維が製造されたときに不織布の形態をとっている場合には、その形態をそのまま利用したものであってよい。具体例としては、後述する電界紡糸法でセシウム吸着用ナノ繊維を製造する場合を挙げることができる。
また、セシウム吸着用ナノ繊維からなる不織布は、一度セシウム吸着用ナノ繊維を製造した後に、当該繊維を不織布化して製造したものであってもよい。繊維を不織布化する方法については、種々の公知の方法を用いることができる。
[2]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維においては、前記有機ナノ繊維は、親水性の有機材料を主成分とする有機材料から製造されたものであることが好ましい。
ところで、ナノ粒子化プルシアンブルーは、水系溶媒中で分散しやすく、かつ、有機溶媒中で分散しにくい性質を有する。ナノ粒子化プルシアンブルーが分散しないと、ナノ粒子化プルシアンブルーが凝集してしまうため、ナノ粒子化プルシアンブルーの表面積の大きさを活かすことができず、低品質なセシウム吸着用ナノ繊維となってしまう場合がある。一方、上記のような構成とすることにより、親水性の有機材料を水系溶媒に溶解させた溶液(例えば、後述する有機材料溶液)にナノ粒子化プルシアンブルーを分散させたもの(例えば、後述するプルシアンブルー分散有機材料溶液)を用いることで、有機ナノ繊維がナノ粒子化プルシアンブルーを均一に担持している、高品質なセシウム吸着用ナノ繊維とすることが可能となる。
上記した観点からは、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維においては、有機材料の全てが親水性の有機材料からなることが好ましい。
「親水性の有機材料を主成分とする」とは、親水性の有機材料の重量が、有機材料全体の重量の半分より大きいことをいう。
[3]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維においては、前記親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、前記有機ナノ繊維は、前記ポリビニルアルコールを主成分とする有機材料から製造されたポリビニルアルコール類からなることが好ましい。
ポリビニルアルコール(PVAともいう。)は、安定して入手可能であり、かつ、比較的安価な有機材料である。このため、上記のような構成とすることにより、安定して入手可能な材料を用いた、比較的安価であるセシウム吸着用ナノ繊維とすることが可能となる。
上記した観点からは、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維においては、有機材料の全てがポリビニルアルコールからなることが好ましい。
なお、「ポリビニルアルコール類」には、ポリビニルアルコールに副成分としての他の有機材料や各種添加剤を加えたものも含まれる。また、「ポリビニルアルコール類」には、ポリビニルアルコールに後処理(例えば、後述する不溶化処理)を行ったものも含まれる。
[4]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維においては、前記ポリビニルアルコール類は、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類であることが好ましい。
このような構成とすることにより、有機材料として水溶性のポリビニルアルコールを用いる場合であっても、セシウム吸着用ナノ繊維を水中や水分の多い場所で使用することが可能となる。
不溶化処理の方法としては、ポリビニルアルコールにおけるOH基間の水素結合を強めて結晶性を向上させる方法、ポリビニルアルコールにおけるOH基を減少させる方法、ポリビニルアルコールの高分子鎖間を架橋する方法等を用いることができる。具体例としては、熱による不溶化処理や化学反応による不溶化処理を挙げることができる(後述)。化学反応による不溶化処理としては、アルデヒド類、メチノール化合物、活性化ビニル化合物、エポキシ化合物、エステル、ジイソシアネート、無機系架橋剤、放射線の照射、及び、紫外線の照射を用いる方法を挙げることができる。
[5]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルーと、有機材料及び溶媒を含有する有機材料溶液とを準備する原料準備工程と、前記ナノ粒子化プルシアンブルー及び前記有機材料溶液を用いて、前記ナノ粒子化プルシアンブルーと、前記ナノ粒子化プルシアンブルーを担持している有機ナノ繊維とを有するセシウム吸着用ナノ繊維を製造するセシウム吸着用ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、上記した原料準備工程とセシウム吸着用ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むため、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程においては、電界紡糸法を用いて有機ナノ繊維を形成することが好ましい。
電界紡糸法(エレクトロスピニング法ともいう。)は、有機材料溶液又は有機材料溶液を吐出するノズルと、有機ナノ繊維を捕集する側に配置されたコレクタとの間に高電圧を印加した状態で紡糸を行う方法である。電界紡糸法によれば、静電力により有機材料溶液、ひいては溶媒が蒸発した後に残る繊維をナノレベルまで微細化することができるため、直径が比較的均一な有機ナノ繊維を、連続的にかつ高効率で製造することができる。このため、上記のような方法とすることにより、直径が比較的均一なセシウム吸着用ナノ繊維を、連続的にかつ高効率で製造することが可能となる。
[6]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記有機材料は、親水性の有機材料を主成分として含有し、前記溶媒は、水を主成分として含有し、前記原料準備工程においては、前記有機材料溶液として、前記ナノ粒子化プルシアンブルーを前記有機材料溶液に分散させた溶液であるプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備し、前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程においては、前記ナノ粒子化プルシアンブルー及び前記有機材料溶液として、前記プルシアンブルー分散有機材料溶液を用いることが好ましい。
このような方法とすることにより、ナノ粒子化プルシアンブルーは水系溶媒中で分散しやすい性質を有することから、有機ナノ繊維がナノ粒子化プルシアンブルーを均一に担持している、高品質なセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
上記[6]の場合においては、溶媒が水を主成分として含有することから、有機材料の全てが親水性の有機材料からなることが好ましい。また、上記[6]の場合には、溶媒の全てが水からなることが好ましい。
「水を主成分とする」とは、水の重量が、溶媒全体の重量の半分より大きいことをいう。
[7]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程は、前記有機ナノ繊維として水溶性有機ナノ繊維を形成する水溶性有機ナノ繊維形成工程を含むことが好ましい。
このような方法とすることにより、安定して入手可能な材料(ポリビニルアルコール)を用いて、比較的安価であるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
上記した観点からは、上記[7]の場合には、有機材料の全てがポリビニルアルコールからなることが好ましい。
なお、水溶性有機ナノ繊維は、ポリビニルアルコールを主成分とする有機材料から製造したものであるため、ポリビニルアルコール類からなる有機ナノ繊維に含まれる。
[8]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程は、水に対する不溶化処理を行うことにより、前記水溶性有機ナノ繊維を、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類からなる有機ナノ繊維とする有機ナノ繊維不溶化工程を、前記水溶性有機ナノ繊維形成工程の後に、さらに含むことが好ましい。
このような方法とすることにより、有機材料として水溶性のポリビニルアルコールを用いる場合であっても、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
[9]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記有機ナノ繊維不溶化工程においては、前記不溶化処理として熱による不溶化処理を行い、前記熱による不溶化処理における処理温度は、140℃〜220℃の範囲内にあることが好ましい。
このような方法とすることにより、後述する実験例に示すように、熱による不溶化処理により、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、上記のような方法とすることにより、熱による不溶化処理における処理温度が140℃〜220℃の範囲内にあるため、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことが可能となり、かつ、ポリビニルアルコールが熱分解してしまうのを防ぐことが可能となる。
なお、熱による不溶化処理における処理温度が140℃〜220℃の範囲内にあることとしたのは、以下の理由による。すなわち、上記処理温度が140℃よりも低いときには、熱による不溶化処理が十分に完了しないことがあり、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことができない場合があるためである。また、上記処理温度が220℃よりも高いときには、ポリビニルアルコールが熱分解してしまう場合があるためである。
上記観点からは、熱による不溶化処理における処理温度は、160℃〜180℃の範囲内にあることが一層好ましい。
[10]本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法においては、前記原料準備工程においては、前記有機材料溶液として、グルタルアルデヒドを添加した有機材料溶液を準備し、前記グルタルアルデヒドの添加量は、前記親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上であり、前記有機ナノ繊維不溶化工程においては、前記不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を行うことが好ましい。
このような方法とすることにより、後述する実験例に示すように、化学反応による不溶化処理により、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、上記のような方法とすることにより、グルタルアルデヒドの添加量は、親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上であるため、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことが可能となる。
なお、グルタルアルデヒドの添加量は、親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上であることとしたのは、以下の理由による。すなわち、グルタルアルデヒドの添加量が2.5wt%より少ない場合には、不溶化処理が十分に完了しないことがあり、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことができない場合があるためである。
上記観点からは、グルタルアルデヒドの添加量は、親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、12.5wt%以上とすることが一層好ましい。
[11]本発明のセシウム吸着用製品は、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維を備えることを特徴とする。
本発明のセシウム吸着用製品は、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用ナノ繊維を備えるため、従来のセシウム吸着用製品よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用製品とすることが可能となる。
また、本発明のセシウム吸着用製品によれば、セシウム137を吸着することにより、放射性物質を減容化すること、セシウム137の環境中への拡散を防ぐこと、及び、セシウム137の人体への流入を遮断することが可能となる。
また、本発明のセシウム吸着用製品によれば、有機ナノ繊維の微小物質の捕集性能が高いため、セシウムが付着した固体が微小物質であっても、当該微小物質を効率よく捕集することが可能となる。
本発明のセシウム吸着用製品におけるセシウム吸着用ナノ繊維は、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法により製造されたものであることが好ましい。
本発明のセシウム吸着用製品におけるセシウム吸着用ナノ繊維としては、例えば、不織布の形態をとっているものを用いることができる。
実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1及びセシウム吸着用製品20を説明するために示す図である。 実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。 実施形態1におけるナノ繊維製造装置100及び不溶化処理装置102を説明するために示す図である。 実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。 実験例における、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。 ナノ粒子化プルシアンブルーによる有機材料溶液の特性の変化を説明するために示す図である。 比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の、SEM写真である。 ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量によるセシウム吸着用ナノ繊維の平均直径の変化を示すグラフである。 比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の、TEM写真である。 ナノ粒子化プルシアンブルー、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の、結晶構造解析結果を示すグラフである。 比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の、熱重量分析結果を示すグラフである。 熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。 不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の、結晶構造解析結果を示すグラフである。 熱による不溶化処理における分子構造の変化を示す化学反応式である。 不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の、FT−IR(フーリエ変換赤外分光)分析結果を示すグラフである。 図15のグラフのうち、950cm−1〜1250cm−1の部分を拡大して示すグラフである。 ナノ粒子化プルシアンブルーにおける熱分解の様子をみるためのグラフである。 不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を、水に浸漬したときの様子を示す写真である。 熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を水に浸漬した後のSEM写真である。 不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。 塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。 塩酸ガスによる不溶化処理における分子構造の変化を示す化学反応式である。 比較用ナノ繊維、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の、FT−IR分析結果を示すグラフである。 塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果を示すグラフである。 グルタルアルデヒドの添加量による分子構造の変化の様子をみるためのグラフである。 不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を、水に浸漬したときの様子を示す写真である。 塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を水に浸漬した後のSEM写真である。 比較用ナノ繊維及び塩素ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維における表面形態を、走査型プローブ顕微鏡により観察した結果を示す図である。 セシウム吸着用ナノ繊維の水接触角を示すグラフである。 塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のセシウム吸着特性を示すグラフである。
以下、図面に基づいて、本発明に係るセシウム吸着用ナノ繊維、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法及びセシウム吸着用製品の実施形態について説明する。
[実施形態1]
1.実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1及びセシウム吸着用製品20の構成
まず、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1及びセシウム吸着用製品20について説明する。
図1は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1及びセシウム吸着用製品20を説明するために示す図である。図1(a)は不織布10を拡大して示す模式図であり、図1(b)はセシウム吸着用製品20の斜視図である。
実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1は、図1(a)に示すように、ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルー2と、ナノ粒子化プルシアンブルー2を担持している有機ナノ繊維3とを有する。
セシウム吸着用ナノ繊維1は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法(後述)により製造されたものである。
ナノ粒子化プルシアンブルー2の平均直径は、1000nm以下とすることができ、さらにいえば5nm〜50nmの範囲内とすることが好ましく、例えば、15nmである。
有機ナノ繊維3は、親水性の有機材料を主成分とする有機材料から製造されたものである。さらにいえば、親水性の有機材料はポリビニルアルコールであり、有機ナノ繊維3は、ポリビニルアルコールを主成分とする有機材料から製造された、ポリビニルアルコール類からなる。
実施形態1におけるポリビニルアルコール類は、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類である。不溶化処理については、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法とともに後述する。
有機ナノ繊維3の平均直径は、30nm〜3000nmの範囲内とすることができ、例えば、200nmである。
不織布10は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1からなる。後述するように、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1は、不織布の形態をとって製造されるため、不織布10は、製造時の形態をそのまま利用したものである。不織布10は、セシウム吸着用ナノ繊維1からなるため、セシウム吸着用不織布10というセシウム吸着材であるともいえる。
実施形態1に係るセシウム吸着用製品20は、図1に示すように、不織布10、基材12及び芯材14を備える。
不織布10については、上記の通りであるため説明を省略する。
基材12は、長尺シートの形態を取っている。基材12は、不織布10を補強する部材である。また、基材12は、後述するように、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、セシウム吸着用ナノ繊維1を形成するための土台でもある。
基材12としては、セシウム吸着用製品20を使用する目的に応じた種々の部材を用いることができる。例えば、セシウム吸着用製品20を気体中で使用する場合には、基材12として通気性のある部材(不織布、織物、編物、紙、多孔質フィルム等)を用いることが好ましい。例えば、セシウム吸着用製品20を水中で使用する場合には、基材12として耐水性のある部材(水に溶けない材料からなる不織布、織物、編物、多孔質フィルム等)を用いることが好ましい。
基材12としては、例えば、厚さが1μm〜500μmのものを用いることができる。
芯材14は、不織布10及び基材12を巻きとるための部材である。芯材14は、円筒形状を有する。
2.実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法
図2は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。
図3は、実施形態1におけるナノ繊維製造装置100及び不溶化処理装置102を説明するために示す図である。図3(a)はナノ繊維製造装置100の模式図であり、図3(b)は不溶化処理装置102の模式図である。なお、図3(a)及び図3(b)は基本的に側面図であるが、図をわかりやすくするために、断面を表示している部材(例えば、筐体200、原料タンク232及び筐体300)もある。
実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、図2に示すように、原料準備工程S1及びセシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2をこの順序で含む。以下、各工程を説明する。
S1.原料準備工程
原料準備工程S1は、ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルー2と、有機材料及び溶媒を含有する有機材料溶液とを準備する工程である。
ナノ粒子化プルシアンブルー2は、購入することにより準備してもよいし、製造することにより準備してもよい。
有機材料は、親水性の有機材料を主成分として含有する。さらにいえば、親水性の有機材料はポリビニルアルコールであり、有機材料は、ポリビニルアルコールを主成分とする。有機材料は、溶媒への溶解性を損なわない程度であれば、主成分以外の有機材料(セルロース等)を含有していてもよい。
また、溶媒は、水を主成分として含有する。溶媒は、ナノ粒子化プルシアンブルー2の分散性を損なわない程度であれば、主成分以外の溶媒(アセトン、酢酸、アルコール類等)を含有していてもよい。
有機材料溶液は、上記した有機材料及び溶媒の他に、導電性向上剤などの各種添加剤を含有していてもよい。
実施形態1においては、有機材料溶液として、ナノ粒子化プルシアンブルー2を有機材料溶液に分散させた溶液であるプルシアンブルー分散有機材料溶液6(図3(a)参照。)を準備する。プルシアンブルー分散有機材料溶液6は、ナノ粒子化プルシアンブルー2を有機材料溶液に添加した後、各種方法により撹拌することで準備することができる。
S2.セシウム吸着用ナノ繊維製造工程
セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2は、ナノ粒子化プルシアンブルー2及び有機材料溶液を用いて、ナノ粒子化プルシアンブルー2と、ナノ粒子化プルシアンブルー2を担持している有機ナノ繊維3とを有するセシウム吸着用ナノ繊維1を製造する工程である。
セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2においては、ナノ粒子化プルシアンブルー2及び有機材料溶液として、プルシアンブルー分散有機材料溶液6を用いる(図3(a)参照。)。
セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2は、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1及び有機ナノ繊維不溶化工程S2−2をこの順序で含む。以下、各工程について説明する。
S2−1.水溶性有機ナノ繊維形成工程
水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1は、有機ナノ繊維として水溶性有機ナノ繊維を形成する工程である。つまり、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1は、水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維を製造する工程であるともいえる。水溶性有機ナノ繊維は、不織布16(図3(a)参照。)の形態で形成される。
水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1では、電界紡糸法を用いて水溶性有機ナノ繊維を形成する。
水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1における電界紡糸法は、例えば、図3(a)に示すような、ナノ繊維製造装置100により実施することができる。以下、ナノ繊維製造装置100について簡単に説明する。
ナノ繊維製造装置100は、図3(a)に示すように、搬送装置110と、電界紡糸装置120とを備える。
搬送装置110は、繰り出しローラー111、巻き取りローラー112、テンションローラー113,118及び補助ローラー114を備える。繰り出しローラー111及び巻き取りローラー112は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される。
電界紡糸装置120は、搬送装置110に搬送されている基材12の表面に、水溶性有機ナノ繊維(不織布16)を形成する装置である。
電界紡糸装置120は、筐体200、ノズルユニット210、有機材料溶液供給部230、コレクター250、電源装置260及び補助ベルト装置270を備える。
筐体200は、導電性の部材からなり、接地されている。
ノズルユニット210は、複数の上向きノズル220を有する。
上向きノズル220は、有機材料溶液供給部230から供給されるプルシアンブルー分散有機材料溶液6を吐出口から上向きに吐出する。上向きノズル220を構成する材料としては導電体を用いることができる。
なお、ノズルとして横向きノズルを用いてもよいし、下向きノズルを用いてもよい。
紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
有機材料溶液供給部230は、原料タンク232及び原料供給装置234を備える。原料タンク232は、プルシアンブルー分散有機材料溶液6の分離や凝固を防ぐための撹拌装置233を内部に有する。
原料供給装置234は、プルシアンブルー分散有機材料溶液6を通過させるパイプ236及び供給動作を制御するバルブ238を備える。
コレクター250は、ノズルユニット210の上方に配置されている。コレクター250は導電体からなり、絶縁部材252を介して筐体200に取り付けられている。
電源装置260は、上向きノズル220と、コレクター250との間に高電圧を印加する。電源装置260の正極はコレクター250に接続され、電源装置260の負極は筐体200を介してノズルユニット210に接続されている。印加する電圧は、例えば、10kV〜80kVに設定することができる。
補助ベルト装置270は、基材12の搬送速度に同期して回転する補助ベルト272と、5つの補助ベルト用ローラー274とを有する。
S2−2.有機ナノ繊維不溶化工程
有機ナノ繊維不溶化工程S2−2は、水に対する不溶化処理を行うことにより、水溶性有機ナノ繊維を、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類からなる有機ナノ繊維3とする工程である。つまり、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2は、水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維をセシウム吸着用ナノ繊維1とする工程であるともいえる。また、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2は、不織布16を不織布10とする工程であるともいえる。
有機ナノ繊維不溶化工程S2−2においては、不溶化処理として熱による不溶化処理を行う。熱による不溶化処理における処理温度は、140℃〜220℃の範囲内にあることが好ましく、160℃〜180℃の範囲内にあることが一層好ましい。
有機ナノ繊維不溶化工程S2−2は、例えば、図3(b)に示すような、不溶化処理装置102によって実施することができる。以下、不溶化処理装置102について簡単に説明する。
不溶化処理装置102は、図3(b)に示すように、筐体300と、繰り出しローラー310と、加熱部320と、巻き取りローラー330と、テンションローラー340と、補助ローラー350とを備える。
図3(b)において符号Hで示す破線は、加熱部320から放出される熱を表している。水溶性有機ナノ繊維は、繰り出しローラー310から繰り出されてから巻き取りローラー330に巻き取られるまでの間に、加熱部320から放出される熱により水に対する不溶化処理がなされ、有機ナノ繊維3となる。
このため、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2においては、水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維はセシウム吸着用ナノ繊維1となり、不織布16は不織布10となる。
なお、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2においては、水溶性の不織布16及び不織布10の熱収縮を防ぐため、これらの端部を押さえる枠やガイドレール等を用いることもできる。
以下、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1、セシウム吸着用ナノ繊維の製造方法及びセシウム吸着用製品20の効果を記載する。
実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、卓越したセシウム吸着能力を有しているセシウム吸着用物質であるナノ粒子化プルシアンブルー2を、担持している物質が外部に露出する割合が大きい担体である有機ナノ繊維3が担持しているため、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力を高くすることが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、繊維質で扱いやすい有機ナノ繊維3にナノ粒子化プルシアンブルー2を担持しているため、容易に取り扱うことが可能となる。
このため、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1は、従来のセシウム吸着材よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用ナノ繊維となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、セシウム137を吸着することにより、放射性物質を減容化すること、セシウム137の環境中への拡散を防ぐこと、及び、セシウム137の人体への流入を遮断することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、有機ナノ繊維3の微小物質の捕集性能が高いため、セシウムが付着した固体が微小物質であっても、当該微小物質を効率よく捕集することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、有機ナノ繊維3は、親水性の有機材料を主成分とする有機材料から製造されたものであるため、親水性の有機材料を水系溶媒に溶解させた溶液にナノ粒子化プルシアンブルーを分散させたものを用いることで、有機ナノ繊維がナノ粒子化プルシアンブルーを均一に担持している、高品質なセシウム吸着用ナノ繊維とすることが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、有機ナノ繊維3は、ポリビニルアルコールを主成分とする有機材料から製造されたポリビニルアルコール類からなるため、安定して入手可能な材料を用いた、比較的安価であるセシウム吸着用ナノ繊維とすることが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1によれば、ポリビニルアルコール類は、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類であるため、有機材料として水溶性のポリビニルアルコールを用いる場合であっても、セシウム吸着用ナノ繊維を水中や水分の多い場所で使用することが可能となる。
実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、原料準備工程S1と、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2とをこの順序で含むため、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2においては、電界紡糸法を用いて有機ナノ繊維3を形成するため、直径が比較的均一なセシウム吸着用ナノ繊維を、連続的にかつ高効率で製造することが可能となる。
ところで、ナノ粒子化プルシアンブルーは水系溶媒中で分散しやすい性質を有する。このため、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、有機材料は、親水性の有機材料を主成分として含有し、溶媒は、水を主成分として含有し、原料準備工程S1においては、プルシアンブルー分散有機材料溶液6を準備し、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2においては、プルシアンブルー分散有機材料溶液6を用いるため、有機ナノ繊維がナノ粒子化プルシアンブルーを均一に担持している、高品質なセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2は、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1を含むため、安定して入手可能な材料(ポリビニルアルコール)を用いて、比較的安価であるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2は、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2を、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1の後に、さらに含むため、有機材料として水溶性のポリビニルアルコールを用いる場合であっても、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2においては、不溶化処理として熱による不溶化処理を行うため、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、熱による不溶化処理における処理温度が140℃〜220℃の範囲内にあるため、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことが可能となり、かつ、ポリビニルアルコールが熱分解してしまうのを防ぐことが可能となる。
実施形態1に係るセシウム吸着用製品20は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1を備えるため、従来のセシウム吸着用製品よりもセシウム吸着能力が高いにもかかわらず、容易に取り扱うことが可能なセシウム吸着用製品とすることが可能となる。
実施形態1に係るセシウム吸着用製品20によれば、セシウム137を吸着することにより、放射性物質を減容化すること、セシウム137の環境中への拡散を防ぐこと、及び、セシウム137の人体への流入を遮断することが可能となる。
実施形態1に係るセシウム吸着用製品20によれば、有機ナノ繊維3の微小物質の捕集性能が高いため、セシウムが付着した固体が微小物質であっても、当該微小物質を効率よく捕集することが可能となる。
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図4(a)は実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法のフローチャートであり、図4(b)は実施形態2における有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aを実施するための不溶化処理装置104の模式図である。なお、図4(b)は基本的に側面図であるが、図をわかりやすくするために、断面図として表示している部材(例えば、筐体300)もある。
実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法と同様の方法であるが、不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を実施する点が実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。以下、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法との相違点を説明する。
なお、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法と同様である点については、説明を省略する。
実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、図4(a)に示すように、原料準備工程S1a及びセシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2aをこの順序で含む。また、セシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2aは、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1(プルシアンブルー含有原料溶液がグルタルアルデヒドを含有すること以外は、実施形態1における該当工程と同様の工程であるため、説明は省略する。)及び有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aをこの順序で含む。以下、実施形態1との主な相違点である原料準備工程S1a及び有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aについて説明する。なお、水溶性有機ナノ繊維形成工程S2−1で製造される不織布(グルタルアルデヒドを含有するもの)は、不織布18として説明する。
S1a.原料準備工程
原料準備工程S1aは、基本的には実施形態1における原料準備工程S1と同様の工程であるが、実施形態2では、ナノ粒子化プルシアンブルー2、ポリビニルアルコール及び水の他に、不溶化処理の補助剤としてのグルタルアルデヒドを添加したプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備する。
グルタルアルデヒドの添加量は、親水性の有機材料(ポリビニルアルコール)の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上とすることが好ましく、12.5wt%以上とすることが一層好ましい。
なお、グルタルアルデヒドの添加量は、例えば、17.5wt%以下とすることができる。
S2−2a.有機ナノ繊維不溶化工程
有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aにおいては、不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を行う。有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aは、例えば、図4(b)に示すような不溶化処理装置104によって実施することができる。以下、不溶化処理装置104について簡単に説明する。
不溶化処理装置104は、図4(b)に示すように、筐体300と、繰り出しローラー310と、塩酸ガス放出部322と、巻き取りローラー330と、テンションローラー340と、補助ローラー350とを備える。
図4(b)において符号Gで示す波線は、塩酸ガス放出部322から放出される塩酸ガスを表している。水溶性有機ナノ繊維は、繰り出しローラー310から繰り出されてから巻き取りローラー330に巻き取られるまでの間に、塩酸ガス放出部322から放出される塩酸ガスにより水に対する不溶化処理がなされ、有機ナノ繊維4(図示を省略する。)となる。
このため、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aにおいては、水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維はセシウム吸着用ナノ繊維5(図示を省略する。)となり、不織布18は不織布11となる。
セシウム吸着用ナノ繊維5は、不溶化処理の方法の違いによる分子構造の違い(後述する図14及び図22参照。)以外は、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1と同様の構成を有し、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維1が有する効果のうち該当する効果を有する。
実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を実施する点が実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法の場合とは異なるが、原料準備工程S1a及びセシウム吸着用ナノ繊維製造工程S2aをこの順序で含むため、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法と同様に、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、原料準備工程S1aにおいては、有機材料溶液として、グルタルアルデヒドを添加した有機材料溶液を準備し、有機ナノ繊維不溶化工程S2−2aにおいては、不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を行うため、化学反応による不溶化処理により、水中や水分の多い場所で使用することができるセシウム吸着用ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法によれば、グルタルアルデヒドの添加量は、親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上であるため、セシウム吸着用ナノ繊維が水に溶解してしまうのを十分に防ぐことが可能となる。
なお、実施形態2に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法は、不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を実施する点以外は実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法と同様の方法であるため、実施形態1に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
[実験例]
本発明の発明者らは、ナノ粒子化プルシアンブルーを有しないナノ繊維(以下、比較用ナノ繊維という。)と、ナノ粒子化プルシアンブルーを有するセシウム吸着用ナノ繊維(本発明に係るセシウム吸着用ナノ繊維)とを実際に製造し、様々な実験を行った。
個別の実験について説明する前に、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法においては、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維は不織布の形態で得られる。
図5は、実験例における、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図5(a)はナノ繊維製造装置106の模式図であり、図5(b)は塩酸ガスによる不溶化処理の様子を示す模式図である。
1.材料
まず、実験例で用いた材料について説明する。
有機材料としては、ポリビニルアルコール(けん化度:88%、重合度:1700。株式会社クラレ製。)を用いた。
溶媒としては、蒸留水(水道水より作製。)を用いた。
基材としては、セルロース不織布であるベンリーゼ(旭化成せんい株式会社の登録商標。小津産業株式会社より購入。)を用いた。
ナノ粒子化プルシアンブルーとしては、8wt%水分散液(関東化学株式会社より提供。)の状態のものを用いた。ナノ粒子化プルシアンブルーの平均直径は、15nmであった。
グルタルアルデヒドとしては、50wt%水溶液(米国のSigma−Aldrich社より購入。)の状態のものを用いた。
塩酸としては、純度37%のもの(和光純薬工業株式会社より購入。)を用いた。
購入した材料及び提供された材料については、入手時のまま精製せずに用いた。
2.比較用ナノ繊維
次に、比較用ナノ繊維の製造方法について説明する。比較用ナノ繊維は、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法に沿って製造した。なお、比較用ナノ繊維に関しては、不溶化処理は行わなかった。
(原料準備工程)
まず、ポリビニルアルコールを蒸留水に投入した。80℃で撹拌してポリビニルアルコールが溶解したことを確認した後、室温(約25℃)まで自然冷却し、有機材料溶液の準備を行った。有機材料溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、12wt%となるようにした。
(セシウム吸着用ナノ繊維製造工程における水溶性有機ナノ繊維形成工程)
水溶性有機ナノ繊維形成工程は、図5(a)に示すようなナノ繊維製造装置106により行った。ナノ繊維製造装置106は、シリンジ410、コレクター420及び電源装置430を備える電界紡糸装置であった。
シリンジ410はプラスチックからなり、容量は5mlである。シリンジ410の先端には、内径0.6mmのキャピラリーチップ412を取り付けた。
コレクター420は回転型のドラムコレクターであり、一定速度で回転可能に構成されている。コレクター420は、表面を基材(図示せず。)で覆って用いた。
電源装置430としては、松定プレシジョン株式会社のHAR−100*12(最高電圧出力:100kV)を用いた。電源装置430のアノード側は銅線432に接続した。また、電源装置430のカソード側はコレクター420に接続した。
準備した有機材料溶液をシリンジ410内に注入し、シリンジ410内に銅線432を差し込んで電源装置430と電気的に接続した。その後、コレクター420を回転させながら電界紡糸を行い、不織布の形態をとっている比較用ナノ繊維を得た。比較用ナノ繊維は基材上に形成され、実験では基材と比較用ナノ繊維及びその不織布を分離せずに用いた。キャピラリーチップ412の先端とコレクター420の表面と間の距離は12cmとした。印加電圧は10kVとした。
3.熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維
次に、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法について説明する。当該セシウム吸着用ナノ繊維は、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法により製造した。
(原料準備工程)
まず、比較用ナノ繊維の場合と同様に、有機材料溶液を作製した。次に、有機材料溶液にナノ粒子化プルシアンブルー水分散液を添加した。その後、12時間以上撹拌してプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備した。なお、以下の記載においては、上記した有機材料溶液とプルシアンブルー分散有機材料溶液との総称として有機材料溶液という記載を使うこともある(例えば、実験例1。)。
プルシアンブルー分散有機材料溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、12wt%となるようにした。
ナノ粒子化プルシアンブルーについては、添加量の違いによる影響を観察するために4段階の添加量を設定した。また、4段階の添加量に基づいてプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備した。具体的には、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときにおけるナノ粒子化プルシアンブルーの質量が8wt%,16wt%、24wt%及び32wt%となるようにした。これは、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときに、ナノ粒子化プルシアンブルー水分散液を、それぞれ100wt%、200wt%、300wt%及び400wt%用いることで調製した。このため、プルシアンブルー分散有機材料溶液におけるナノ粒子化プルシアンブルーの濃度は、それぞれ0.96wt%、1.92wt%、2.88wt%及び3.84wt%であったということもできる。
溶媒の大半は電界紡糸の際に蒸発してしまうため、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量は、ポリビニルアルコールの量との兼ね合いが重要になる。このため、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量については、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときの質量分率(以下の記載及び図面においては、単に「ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率」と記載する。)、つまり、8wt%,16wt%、24wt%及び32wt%で記載する。
(セシウム吸着用ナノ繊維製造工程における水溶性有機ナノ繊維形成工程)
用いた装置及び電界紡糸の方法は、有機材料溶液以外については、比較用ナノ繊維の場合と同様であるため、説明を省略する。なお、水溶性有機ナノ繊維形成工程により製造された直後のセシウム吸着用ナノ繊維も本発明のセシウム吸着用ナノ繊維に含まれるものであり(水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維である)、不溶化処理を行っていないことを強調するために、以下、当該セシウム吸着用ナノ繊維を「不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維」と記載する。
(セシウム吸着用ナノ繊維製造工程における有機ナノ繊維不溶化工程)
図示は省略するが、上記のようにして製造した不溶化を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維に、熱による不溶化処理を行った。熱による不溶化処理は、株式会社モトヤマのNHV−1515D(小型炉底昇降式電気炉)を用いて行った。熱による不溶化処理における加熱時には、熱収縮を防ぐために、セシウム吸着用ナノ繊維からなる不織布の端部をアルミナフレームで固定した。
処理温度については、温度の違いによる影響を観察するために4段階の処理温度を設定し、4種類のセシウム吸着用ナノ繊維を製造した。具体的には、140℃で不溶化処理を行ったもの、160℃で不溶化処理を行ったもの、180℃で不溶化処理を行ったもの及び200℃で不溶化処理を行ったものを製造した。いずれの場合も、昇温速度は2℃/minとした。
4.塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維
次に、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法について説明する。当該セシウム吸着用ナノ繊維も、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法により製造した。
(原料準備工程)
基本的には、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の場合と同様の方法でプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備した。ただし、本工程では、プルシアンブルー分散有機材料溶液にグルタルアルデヒドを添加した。具体的には、ナノ粒子化プルシアンブルー水分散液を加える前にグルタルアルデヒド水溶液を有機材料溶液に添加し、室温で3時間撹拌した。
グルタルアルデヒドについては、添加量の違いによる影響を観察するために4段階の添加量を設定した。また、4段階の添加量に基づいてプルシアンブルー分散有機材料溶液を作製した。具体的には、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときにおけるグルタルアルデヒドの質量が2.5wt%,7.5wt%、12.5wt%及び17.5wt%となるようにした。これは、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときに、50wt%のグルタルアルデヒド水溶液を、それぞれ5wt%、15wt%、25wt%及び35wt%用いることで調製した。このため、プルシアンブルー分散有機材料溶液におけるグルタルアルデヒドは、それぞれ0.30wt%、0.90wt%、1.50wt%及び2.10wt%であったということもできる。
溶媒の大半は電界紡糸の際に蒸発してしまうため、グルタルアルデヒドの添加量は、ポリビニルアルコールの量との兼ね合いが重要になる。このため、グルタルアルデヒドの添加量については、ポリビニルアルコールの質量を100wt%としたときの質量分率(以下の記載及び図面においては、単に「グルタルアルデヒドの質量分率」と記載する。)、つまり、2.5wt%,7.5wt%、12.5wt%及び17.5wt%で記載する。
(セシウム吸着用ナノ繊維製造工程における水溶性有機ナノ繊維形成工程)
用いた装置及び電界紡糸の方法については、有機材料溶液以外については、比較用ナノ繊維の場合と同様であるため、説明を省略する。
(セシウム吸着用ナノ繊維製造工程における有機ナノ繊維不溶化工程)
不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維に、図5(b)に示すようにして塩酸ガスを接触させ、不溶化処理を行った。
図5(b)において、符号510で示すのはデシケーターであり、符号520で示すのは塩酸であり、符号530は平型電気ヒーターであり、符号Sで示すのはセシウム吸着用ナノ繊維であり、符号Gで示すのは塩酸ガスである。
図5における符号Sの位置(デシケーターの上段)に不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維を置き、その後、デシケーター510の下段に入れた塩酸520をヒーター530で温め、塩酸ガスGを発生させた。塩酸520の温度は、30℃とした。
不溶化処理を行った時間(セシウム吸着用ナノ繊維を塩酸ガスに接触させる時間)については、時間の違いによる影響を観察するために3段階の時間を設定した。具体的には、不溶化処理の時間を10秒、30秒及び50秒として有機ナノ繊維不溶化工程を行い、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を製造した。
なお、上記のようにして製造したセシウム吸着用ナノ繊維や不織布は、いずれもプルシアンプルー特有の青色を有することが確認できた。
以下、各実験とその結果について説明する。
[実験例1]
図6は、ナノ粒子化プルシアンブルーによる有機材料溶液の特性の変化を説明するために示す図である。図6(a)はナノ粒子化プルシアンブルーの添加量による粘度の変化を示すグラフであり、図6(b)はナノ粒子化プルシアンブルーの添加量による電気伝導度の変化を示すグラフであり、図6(c)はナノ粒子化ブルシアンブルーの添加量による表面張力の変化を示すグラフである。図6におけるグラフの横軸は、いずれもナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率(単位:wt%)を表す。また、図6(a)におけるグラフの縦軸は有機材料溶液の粘度(単位:cP)を表し、図6(b)におけるグラフの縦軸は有機材料溶液の電気伝導度(単位:mS/m)を表し、図6(c)におけるグラフの縦軸は表面張力(単位:mN/m)を表す。
実験例1においては、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量による、有機材料溶液の粘度、電気伝導度及び表面張力の変化についての実験を行った。これらは、電界紡糸法によってセシウム吸着用ナノ繊維を製造するときにおいて、セシウム吸着用ナノ繊維の製造の可否、形状、太さに大きな影響を与える要素である。
有機材料溶液としては、上記比較用ナノ繊維を製造するために準備した有機材料溶液と、上記熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を製造するために準備したプルシアンブルー分散有機材料溶液(ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が異なる4種類)とを用いた。
ここで、使用した装置について説明する。
粘度の測定においては、粘度計を用いて測定を行った。粘度計としては、米国のBrookfield社のDV−1を用いた。スピンドルは63番を用い、回転速度は60rpmに設定した。
電気伝導度の測定においては、pH電極を取り付けたpHメーターを用いて測定を行った。pH電極としては、株式会社堀場製作所の9625−10Dを用い、pHメーターとしては、同社のD−54を用いた。
表面張力の測定においては、汎用の表面張力計を用いて測定を行った。
なお、実験例1における全ての測定は室温で行った。
粘度については、図6(a)に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーを添加したプルシアンブルー分散有機材料溶液においては、ナノ粒子化プルシアンブルー添加しない有機材料溶液よりも粘度が大きく減少することが確認できた。また、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率の増加に比例するように粘度が減少することも確認できた。
なお、一般的にはナノ粒子を溶液に添加すると粘度は増加する傾向がある。一方、実験例1においては、ナノ粒子化プルシアンブルーを分散液の状態で添加しているため、プルシアンブルー分散有機材料溶液中においてナノ粒子化プルシアンブルーがよく分散しており、粘度が低下するものと考えられる。
電気伝導度については、図6(b)に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率の増加に比例するように電気伝導度が増加することが確認できた。これは、プルシアンブルーの結晶構造に鉄原子が含まれているためである。
表面張力については、図6(c)に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーによっては変化しないことが確認できた。
[実験例2]
図7は、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図7(a)は比較用ナノ繊維のSEM写真であり、図7(b)はナノ粒子化プルシアンブルーを8wt%添加したセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図7(c)はナノ粒子化プルシアンブルーを16wt%添加したセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図7(d)はナノ粒子化プルシアンブルーを24wt%添加したセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図7(e)はナノ粒子化プルシアンブルーを32wt%添加したセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。
図8は、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量によるセシウム吸着用ナノ繊維の平均直径の変化を示すグラフである。図8におけるグラフの横軸はナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率(単位:wt%)を表し、縦軸はセシウム吸着用ナノ繊維の平均直径(単位:nm)を表す。プロットの上下に表示した範囲は、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の繊維径のばらつきを表す。
図9は、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のTEM写真である。図9(a)は比較用ナノ繊維のTEM写真であり、図9(b)はナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を8wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のTEM写真であり、図9(c)はナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を16wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のTEM写真であり、図9(d)はナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のTEM写真であり、図9(e)はナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を32wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のTEM写真である。
実験例2においては、セシウム吸着用ナノ繊維の繊維としての形態を観察するための実験を行った。なお、ここでは電界紡糸法により製造した後の形態を観察するため、実験には、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を施していないセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
ここで、使用した装置について説明する。
SEM写真を得るための走査型電子顕微鏡として、日本電子株式会社のJSM−6010LAを用いた。観察前には、試料に導電性を持たせるため、スパッタ装置を用いて白金バナジウムによるコーティングを行った。スパッタ装置としては、日本電子株式会社のJFC−1600を用いた。コーティングの厚さは、約30nmとした。
TEM写真を得るための透過型電位顕微鏡として、日本電子株式会社の2010 FasTEMを用いた。
まず、SEM写真による観察により、図7に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が24wt%のときまでは、1本のナノ繊維に着目したときに繊維直径の変化があまりなく(図7(a)〜図7(d)参照。)、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が36wt%のときには、1本のナノ繊維に着目したときに繊維直径の急激な変化(ビーズ状の構造)が出現することが確認できた(図7(e)参照。)。なお、セシウム吸着用ナノ繊維において、繊維直径の急激な変化があったとしても、繊維直径の変化が少ない部分もあるので、セシウム吸着のために使用することは可能である。
上記写真を元に、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を施していないセシウム吸着用ナノ繊維の平均直径を割り出して、図8に示すグラフを作成した。
その結果、ナノ粒子化プルシアンブルーを8wt%添加したときに、ナノ粒子化プルシアンブルーを添加しないとき(比較用ナノ繊維)に比べてセシウム吸着用ナノ繊維の平均直径が増大することが確認できた。一般的に、有機材料溶液の粘度は繊維径と比例関係にあり、電気伝導度は繊維径と反比例関係にある。しかし、実験例1に示したように、プルシアンブルー分散有機材料溶液の粘度は低下し、電気伝導度は増加しているため、上記観点からは繊維径は減少するのが通常であるとも考えられる。これは、後述するTEM写真にて示すように(図9(b)参照。)、有機ナノ繊維の内部にナノ粒子化プルシアンブルーが多く入り込んでいるためであると考えられる。
また、図8に示すグラフからは、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が増加するに従って、セシウム吸着用ナノ繊維の平均直径が減少していくことも確認できた。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が増加するに従って、プルシアンブルー分散有機材料溶液の粘度が低下し、電気伝導度が増加することが原因であると考えられる。
また、図8に示すグラフからは、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が24wt%以上であると、繊維径のばらつきが大きくなることが確認できた。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が増加すると、有機ナノ繊維が担持しているナノ粒子化プルシアンブルーの量のばらつきも増加するためであると考えられる。
次に、TEM写真による観察により、有機ナノ繊維中にナノ粒子化プルシアンブルーが分散している様子を確認できた(図9(b)〜図9(e)参照。)。つまり、超音波処理のような特殊な撹拌方法を用いなくても、機械的な撹拌方法を用いるだけで、ナノ粒子化プルシアンブルーを十分に分散可能であることを確認できた。これについては、ナノ粒子化プルシアンブルーを分散液の形態で添加したこと、及び、溶媒として水を用いたことが大きな理由であると考えられる。
また、図9に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量の増加に伴って繊維内部のナノ粒子化プルシアンブルーが増加していること、及び、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が16wt%以上の場合には、比較用ナノ繊維の場合(図9(a)参照。)よりも有機ナノ繊維の表面に凹凸が多くなることが確認できた。
以上の実験例2より、本発明に係るセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法で、本発明に係るセシウム吸着用ナノ繊維が製造可能であることを確認できた。
[実験例3]
図10は、ナノ粒子化プルシアンブルー、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の結晶構造解析結果を示すグラフである。図10において、符号(A)で示すのはナノ粒子化プルシアンブルーのグラフであり、符号(B)で示すのは比較用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのはナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を8wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのはナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を16wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(E)で示すのはナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(F)で示すのはナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を32wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図10におけるグラフの横軸は2θ(単位:°)を表し、縦軸は反射強度(単位:a.u.)を表す。
実験例3においては、比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の結晶構造解析を行った。なお、実験例3においては、電界紡糸法により製造した後の結晶構造を観察するため、実験には、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
ここで、使用した装置について説明する。
結晶構造解析には、広角X線回折(WAXD)装置である、株式会社リガクのRotaflex RTP300を用いた。解析条件は、CuKα放射線、40kV、150mA、スキャン範囲:2θ=5°〜30°、スキャン速度:1°/minとした。
なお、ナノ粒子化プルシアンブルーについては、乾燥後の残渣を乳鉢ですりつぶしたものを試料とした。
その結果、ナノ粒子化プルシアンブルーについては、図10のグラフ(A)に示すように、2θ=17.5°,24.8°,35.3°,39.6°,43.6°,50.7°,54.0°,57.2°においてそれぞれ(200),(220),(400),(420),(422),(440),(600),及び(620)面に起因する反射ピークを示した。このため、実験で用いたナノ粒子化プルシアンブルーが、確かにプルシアンブルーからなることが確認できた。
また、比較用ナノ繊維においては、図10のグラフ(B)に示すように、半結晶性ポリビニルアルコールの(101)面に起因する、2θ=19.3°の反射ピークが得られた。セシウム吸着用ナノ繊維においては、図10のグラフ(C)〜グラフ(F)に示すように、上記反射ピークに加えて、2θ=17.4°,24.7°,35.2°,39.6°に新たな反射ピークが得られた。ここから、ナノ粒子化プルシアンブルーがポリビニルアルコールと化学的には結合していないことが確認できた。
また、セシウム吸着用ナノ繊維においては、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が増加するに従って、上記した新たな反射ピークの強度が増加することが確認できた。これは、セシウム吸着用ナノ繊維におけるナノ粒子化プルシアンブルーの量が増加したことに起因すると考えられ、実験例2の結果とも一致する。
また、セシウム吸着用ナノ繊維においては、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が増加するに従って、半結晶性ポリビニルアルコールの(101)面に起因する、2θ=19.3°の反射ピークが減少することが確認できた。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーがポリビニルアルコールの結晶化を妨げることに起因すると考えられる。
以上の実験例1〜3により、セシウム吸着用ナノ繊維を製造する際には、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率は、例えば、8wt%〜36wt%とすることができ、実験例の条件では16wt%〜24wt%とすることが好ましいことが確認できた。
[実験例4]
図11は、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の熱重量分析結果を示すグラフである。図11におけて符号(A)で示すのは比較用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのはセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。図11におけるグラフの横軸は温度(単位:°)を表し、縦軸は比較用ナノ繊維及びセシウム吸着用ナノ繊維の重量であって、実験開始時を基準(100%)とした重量(単位:%)を表す。
実験例4からは、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維に関連する実験を行った。
実験例4においては、熱による不溶化処理を行うことを前提として、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の熱重量分析を行い、熱分解の様子を確認した。なお、実験例4においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が24wt%であって、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
ここで、使用した装置について説明する。
熱重量分析には、株式会社リガクのThermo plus TG8120(熱重量分析装置)を用いた。分析条件は、N雰囲気中、昇温速度:10℃/min、測定範囲:25℃〜600℃とした。
ポリビニルアルコール及びプルシアンブルーは、加熱により分解する性質を有している。このため、熱による不溶化処理においては、ポリビニルアルコール及びプルシアンブルーの熱分解を抑える必要がある。ポリビニルアルコールとプルシアンブルーとでは、ポリビニルアルコールの方が低温で分解するため、ポリビニルアルコールの熱分解の様子を重点的に調べる必要がある。
まず、比較用ナノ繊維については、50℃付近と275℃付近において重量が減少することが確認できた(図11のグラフ(A)参照。)。50℃付近の重量減少は、水分や水分子が失われたことに起因すると考えられる。275℃付近の重量減少は、ポリビニルアルコールそのものが分解することに起因すると考えられる。
次に、セシウム吸着用ナノ繊維については、220℃付近において質量が減少することが確認できた(図11のグラフ(B)参照。)。これはポリビニルアルコールの分解に起因すると考えられる。つまり、セシウム吸着用ナノ繊維の場合には、比較用ナノ繊維の場合よりも、ポリビニルアルコールの分解が低温側にシフトしていた。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーの影響によりポリビニルアルコールの結晶性が低下しているためであると考えられ、実験例3の結果とも一致する。
なお、600℃における比較用ナノ繊維の重量とセシウム吸着用ナノ繊維の重量との差は約22%であり、セシウム吸着用ナノ繊維におけるナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が24wt%であるため、セシウム吸着用ナノ繊維にはナノ粒子化プルシアンブルーがほぼ計算通りに含まれていることも確認できた。
以上の実験例4により、ポリビニルアルコールの熱分解を抑えるためには、およそ220℃以下の処理温度で不溶化処理を行う必要があることが確認できた。
[実験例5]
図12は、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図12(a)は140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図12(b)は160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図12(c)は180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図12(d)は200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。
実験例5においては、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の、繊維としての形態を観察するための実験を行った。
使用した装置については、上記した実験例2に記載したものと同様であるため、記載を省略する。
実験例5においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が24wt%であって、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
その結果、図12に示すように、いずれの処理温度で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維(不織布)においても、繊維径、繊維形態及び繊維密度の変化は確認できなかった。一般的には、ナノ繊維からなる不織布を加熱すると、熱収縮により繊維径及び繊維密度が増加する傾向がある。実験例5の場合においては、熱による不溶化処理における加熱時に、アルミナフレームで不織布の端部を固定したため、熱収縮を防ぐことができたと考えられる。
なお、図示は省略するが、180℃以下の処理温度で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維(不織布)では、プルシアンブルーによる青色に変化は見られなかったが、200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維(不織布)では、茶色がかった色への変色が見られた。これは、ポリビニルアルコールの熱分解が始まったことに起因すると考えられる。
[実験例6]
図13は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の結晶構造解析結果を示すグラフである。図13において符号(A)で示すのは不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのは140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのは160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのは180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(E)で示すのは200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図13におけるグラフの横軸は2θ(単位:°)を表し、縦軸は反射強度(単位:a.u.)を表す。図13における丸印はポリビニルアルコールに起因する反射ピークを示す目印であり、三角印はプルシアンブルーに起因する反射ピークを示す目印である。
実験例6においては、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の結晶構造解析を行った。
実験例6においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの添加量が24wt%であって、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
使用した装置については、上記した実験例3に記載したものと同様であるため、説明を省略する。
その結果、図13に示すように、熱による不溶化処理では、プルシアンブルーに起因する反射ピークには変化が見られないことが確認できた。
また、図13のグラフ(B)〜グラフ(E)に示すように、2θ=11.2°及び22.5°に新たな反射ピークが確認できた。180℃以下の温度で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維では、上記反射ピークを含む、ポリビニルアルコールに起因する反射ピークが大きくなっていることも確認できた。これは、不溶化処理により、ポリビニルアルコールの結晶性が増加したことに起因すると考えられる。
一方、200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維では、特に2θ=19.3°の反射ピークが大きく減少した。これは、ポリビニルアルコールの熱分解が始まったことに起因すると考えられ、実験例5の結果と一致する。
[実験例7]
図14は、熱による不溶化処理での分子構造の変化を示す化学反応式である。式(1)は不溶化処理を行っていないポリビニルアルコールの化学式であり、式(2)は熱による不溶化処理がなされたポリビニルアルコールの化学式である。なお、式(1)及び式(2)の端部にある酢酸エステル部分は、ポリビニルアルコールの原料であるポリ酢酸ビニルに由来するものである。
図15は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR(フーリエ変換赤外分光)分析結果を示すグラフである。図15(a)はセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果全体を示すグラフであり、図15(b)はO−H伸縮振動(3350cm−1)、C=O伸縮振動(1740cm−1)及びC−O伸縮振動(1090cm−1)における吸収ピーク強度を、C−H伸縮振動(2990cm−1)における吸収ピーク強度に対する比として表示したグラフである。
図15(a)において符号(A)で示すのは不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのは140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのは160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのは180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(E)で示すのは200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図15(a)におけるグラフの横軸は波数(単位:cm−1)を表し、縦軸は吸光度(単位:a.u.)を表す。図15(a)における矢印は、図面左にあるものから、O−H伸縮振動(3350cm−1)、C−H伸縮振動(2990cm−1)、C=O伸縮振動(1740cm−1)及びC−O伸縮振動(1090cm−1)を示す目印である。
図15(b)におけるグラフの横軸は不溶化処理における処理温度(単位:℃。「未処理」は不要化処理を行っていないことを表す。)であり、縦軸は各伸縮振動における吸収ピーク強度の、C−H伸縮振動における吸収ピーク強度に対する比(吸収ピーク強度比)である。図15(b)において四角印で表示するプロットはO−H伸縮振動の吸収ピーク強度比であり、丸印で表示するプロットはC=O伸縮振動の吸収ピーク強度比であり、三角印で表示するプロットはC−O伸縮振動の吸収ピーク強度比である。
図16は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果を示すグラフのうち、950cm−1〜1250cm−1の部分を拡大して示すグラフである。図16において符号(A)で示すのは不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのは140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのは160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのは180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(E)で示すのは200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。図16における矢印は、ポリビニルアルコールの結晶性に比例することが知られている、1141cm−1の吸収ピークを示す目印である。
図17は、ナノ粒子化プルシアンブルーにおける熱分解の様子をみるためのグラフである。具体的には、図17は、C−N伸縮振動(2076cm−1)における吸収ピーク強度を、C−H伸縮振動(2990cm−1)における吸収ピーク強度に対する比として表示したグラフである。図17におけるグラフの横軸は不溶化処理を行った温度(単位:℃。「未処理」は不要化処理を行っていないことを表す。)であり、縦軸はC−N伸縮振動における吸収ピーク強度の、C−H伸縮振動における吸収ピーク強度に対する比である。
実験例7においては、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析を行った。
実験例7においても、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率が24wt%であって、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
FT−IR分析には、株式会社 島津製作所のIRPrestige−21(FT−IR分析装置)を用いた。分析条件は、分解能4cm−1、測定範囲:600−1とした。
ポリビニルアルコールを不溶化するためには、ポリビニルアルコールのOH基の状態が大きく関係してくる。このため、結晶構造解析の他にFT−IR分析を行い。熱による不溶化処理が分子構造へ与える影響を詳細に調査した。
まず、熱による不溶化処理での分子構造の変化は、図14に示すようなものであると考えられる。つまり、不溶化処理によりポリビニルアルコールのOH基から水素が失われるというものである。これを念頭に、以下のFT−IR分析結果を見ていく。
FT−IR分析の結果、図15(a)に示すグラフが得られた。図15(a)に示すように、処理温度が上昇するにつれ、O−H伸縮振動(3350cm−1)における吸収ピーク強度が減少し、C=O伸縮振動(1740cm−1)における吸収ピーク強度が増加し、C−O伸縮振動(1090cm−1)における吸収ピーク強度が減少することが確認できた。
ここで、各伸縮振動における吸収ピーク強度の変化を、不溶化処理の影響がないと思われる吸収ピーク強度を基準にしてまとめ、グラフを作成した。基準としたのは、CHのC−H伸縮振動(2990cm−1)における吸収ピーク強度である。その結果、図15(b)に示すグラフが得られ、各吸収ピーク強度の増減が明確となった。
まず、O−H伸縮振動の吸収ピーク強度が減少したのは、不溶化処理によりOH基の水素結合が切断されたことに起因すると考えられる。
また、C=O伸縮振動の吸収ピーク強度が増加したのは、新たにC=O結合が形成されたことに起因すると考えられる。
さらに、C−O伸縮振動の吸収ピーク強度が減少したのは、C=O結合が形成されたことにより、C−O結合が減少したことに起因すると考えられる。
上記した3つの吸収ピーク強度が、処理温度が上昇するにつれて変化するのは、処理温度の上昇により分子構造の変化が進行するためであると考えられる。
これにより、図14に示す分子構造の変化が裏付けられた。
次に、ポリビニルアルコールの結晶性に比例することが知られている1141cm−1の吸収ピークに注目して、処理温度によるポリビニルアルコールの結晶性の変化について調査を行った。当該吸収ピークは、図16のグラフ(A)に示すように、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維においては確認できなかった。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーの影響によってポリビニルアルコールの結晶性が低下したことに起因すると考えられる。一方、当該吸収ピークは、180℃までの処理温度で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においてはほぼ一定の強度を示すが(図16のグラフ(B)〜グラフ(D)参照。)、200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては強度が減少すること(図16のグラフ(E)参照。)が確認できた。これは、熱による不溶化処理によりポリビニルアルコールの結晶性が向上するが、200℃では熱分解が始まって結晶性が減少するためであると考えられ、実験例5及び実験例6の結果と一致する。
なお、プルシアンブルーの熱分解について確認するため、C―N伸縮振動(2076cm−1)に注目した調査も行った。その結果、図17に示すように、C―N伸縮振動の吸収ピーク強度は、処理温度が高いほど減少することが判明した。このため、プルシアンブルーもある程度熱分解していたことが確認できた。
[実験例8]
図18は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を、水に浸漬したときの様子を示す写真である。図18(a)は不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の写真であり、図18(b)は140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の写真であり、図18(c)は160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の写真であり、図18(d)は180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の写真であり、図18(e)は200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の写真である。
図18においては、黒く見える部分は実際にはプルシアンブルーに起因する青色の部分である。図18は、浸漬から約1時間後の写真である。
図19は、水に浸漬した後の、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図19(a)は140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図19(b)は160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図19(c)は180℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図19(d)は200℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。
実験例8においては、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を水に浸漬し、その様子や繊維としての形態を観察するための実験を行った。
SEM写真を得るにあたって使用した装置については、上記した実験例2に記載したものと同様であるため、説明を省略する。
実験例8においては、まず、シャーレに蒸留水を入れ、当該蒸留水にセシウム吸着用ナノ繊維からなる不織布を四角形状に裁断したものを浸漬し、目視による観察を行った。その結果、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維においては、浸漬した瞬間に有機ナノ繊維が溶解し、水中にナノ粒子化プルシアンブルーを放出してしまった(図18(a)参照。)。このため、セシウム吸着用ナノ繊維が、ポリビニルアルコールから製造した有機ナノ繊維を有する場合において、当該セシウム吸着用ナノ繊維を水中で用いるためには、水に対する不溶化処理を行う必要があることが確認できた。
一方、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、1時間経過後であっても、有機ナノ繊維は目視の範囲では溶解せず、水中にナノ粒子化プルシアンブルーを放出することもなかった(図18(b)〜(e)参照。)。
次に、水に浸漬した後の、熱による不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維における繊維の形態を観察するため、SEMを用いた観察を行った。
その結果、140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、有機ナノ繊維が部分的に溶解してフィルムのような形状に変化したことが確認できた(図19(a)参照。)。一方、160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、140℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維と比較して、有機ナノ繊維の形状がより明確に残っていることが確認でき(図19(b)参照。)、180℃以上の温度で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、繊維の形状が明確に残っていることが確認できた(図19(c)及び図19(d)参照。)。
なお、140℃や160℃で不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のような状態でも、繊維形状が残っている部分があるので、セシウム吸着用ナノ繊維として使用することは可能である。
実験例4〜8により、熱による不溶化処理における処理温度は、例えば、140℃〜220℃の範囲内にあるとすることができ、実験例の条件では温度を160℃〜180℃の範囲内にあるとするのが一層好ましいことが確認できた。
[実験例9]
図20は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図20(a)はグルタルアルデヒドを含有しないセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図20(b)はグルタルアルデヒドの質量分率を2.5wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図20(c)はグルタルアルデヒドの質量分率を7.5wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図20(d)はグルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真であり、図20(e)はグルタルアルデヒドの質量分率を17.5wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。
実験例9においては、グルタルアルデヒドを添加した場合における、セシウム吸着用ナノ繊維の繊維としての形態を観察するための実験を行った。ここでは電界紡糸法により製造した後の形態を観察するため、実験には、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
使用した装置については、上記した実験例2に記載したものと同様であるため、説明を省略する。
実験例9からは、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維に関連する実験を行った。
まず、SEM写真による観察により、グルタルアルデヒドの添加の有無や、添加量の変化によっては、繊維直径、繊維直径の均一性、繊維形態及び紡糸状態の変化は確認できなかった(図20参照。)。これは、グルタルアルデヒドを添加しても、プルシアンブルー分散有機材料溶液の溶液特性があまり変化しなかったことが原因であると考えられる。つまり、実験例に用いた程度の量のグルタルアルデヒドは、電界紡糸法によるセシウム吸着用ナノ繊維の製造には影響を与えないことが確認できた。
[実験例10]
図21は、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図21においてはSEM写真が3列4行に配置されているが、紙面左側に配置されている写真のセシウム吸着用ナノ繊維ほど不溶化処理の時間が短く(紙面左から10秒、30秒、50秒)、紙面上側に配置されている写真のセシウム吸着用ナノ繊維ほどグルタルアルデヒドの添加量が少ない(上から2.5wt%、7.5wt%、12.5wt%、17.5wt%)。
実験例10においては、グルタルアルデヒドの添加量及び不溶化処理の時間が繊維の形態に及ぼす影響を調査した。
その結果、目視では明確ではないが、グルタルアルデヒドの添加量が多いほど、また、不溶化処理の時間が長くなるほど、有機ナノ繊維同士が結合する割合が増え、有機ナノ繊維間の3次元的なネットワーク構造が形成される度合いが大きくなっているように見えることが確認できた(図21参照。)。また、程度の差はあれ、いずれのセシウム吸着用ナノ繊維においても、有機ナノ繊維間の3次元的なネットワーク構造が形成されているようにみえる。3次元的なネットワーク構造は、ポリビニルアルコール及びグルタルアルデヒドからなる高分子鎖が、個々の繊維だけでなく隣接する繊維とも接合することにより形成されるものであると考えられる。
つまり、実験例10により、上記したいずれの条件においても、塩酸ガスによる不溶化処理は成功していることが確認できた。また、グルタルアルデヒドの添加量が多いほど、また、不溶化処理の時間が長くなるほど、不溶化処理の度合いが進行するらしきことが確認できた。
[実験例11]
図22は、塩酸ガスによる不溶化処理での分子構造の変化を示す化学反応式である。式(3)は不溶化処理を行っていないポリビニルアルコールの化学式であり、式(4)はグルタルアルデヒドの化学式であり、式(5)は塩酸ガスによる不溶化処理がなされたポリビニルアルコールの化学式である。
図23は、比較用ナノ繊維、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果を示すグラフである。図23(a)はセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果全体を示すグラフであり、図23(b)は図23(a)のグラフのうち、950cm−1〜1250cm−1の部分を拡大して示すグラフである。
図23(a)において符号(A)で示すのは比較用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのはグルタルアルデヒドを含有せず、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%で、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図23(a)におけるグラフの横軸は波数(単位:cm−1)を表し、縦軸は吸光度(単位:a.u.)を表す。図23(a)における矢印は、図面左にあるものから、O−H伸縮振動に起因するピーク(3350cm−1)、C−N伸縮振動に起因するピーク(2082cm−1)及び水分(HO)に起因するピーク(1631cm−1)を示す目印である。また。図23(a)における範囲を示す符号は、C−O−C伸縮振動に起因する部分(1150cm−1〜1085cm−1)を示す目印である。
図23(b)におけるグラフ(A)〜グラフ(D)は、図23(a)におけるグラフ(A)〜グラフ(D)に対応する。図23(b)における範囲を示す符号は、C−O−C伸縮振動に起因する部分(1150cm−1〜1085cm−1)を示す目印である。また、図23(b)における矢印は、ポリビニルアルコールの結晶性に比例することが知られている、1141cm−1の吸収ピークを示す矢印である。図23(b)におけるグラフの横軸は波数(単位:cm−1)を表し、縦軸は吸光度(単位:a.u.)を表す。
図24は、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果を示すグラフである。図24(a)はセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析結果全体を示すグラフであり、図24(b)は図24(a)のグラフのうち、950cm−1〜1250cm−1の部分を拡大して示すグラフである。
図24(a)において符号(A)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が2.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(B)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が7.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が17.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。図24(a)におけるグラフの横軸は波数(単位:cm−1)を表し、縦軸は吸光度(単位:a.u.)を表す。
図24(b)におけるグラフ(A)〜グラフ(D)は、図24(a)におけるグラフ(A)〜グラフ(D)に対応する。図24(b)における範囲を示す符号は、C−O−C伸縮振動に起因する部分(1150cm−1〜1085cm−1)を示す目印である。図24(b)におけるグラフの横軸は波数(単位:cm−1)を表し、縦軸は吸光度(単位:a.u.)を表す。
図25は、グルタルアルデヒドの添加量による分子構造の変化の様子をみるためのグラフである。図25は、具体的には、C−O−C伸縮振動(1025cm−1)における吸収ピーク強度を、O−H伸縮振動(3350cm−1)における吸収ピーク強度に対する比として表示したグラフである。図25におけるグラフの横軸はグルタルアルデヒドの質量分率(単位:wt%)であり、縦軸はC−O−C伸縮振動における吸収ピーク強度の、O−H伸縮振動における吸収ピーク強度に対する比である。
実験例11においては、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のFT−IR分析を行った。
実験例11においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。また、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、不溶化処理の時間を30秒とした。
使用した装置については、実験例7と同様であるため、記載を省略する。
実験例11においては、塩酸ガスによる不溶化処理が分子構造へ与える影響を詳細に調査した。
まず、塩酸ガスによる不溶化処理での分子構造の変化は、図22に示すようなものであると考えられる。つまり、不溶化処理によりポリビニルアルコールのOH基がグルタルアルデヒドのCOH基と反応し、分子鎖間の架橋が行われるというものである。これを念頭に、以下のFT−IR分析結果を見ていく。
FT−IR分析の結果、図23(a)に示すグラフが得られた。図23(a)のグラフ(B)〜グラフ(D)に示すように、ナノ粒子化プルシアンブルーの結晶格子中に含まれる水分(1631cm−1)の吸収ピークと、ナノ粒子化プルシアンブルーにおけるC−N伸縮振動(2082cm−1)の吸収ピークとが確認できた。この吸収ピークから、有機ナノ繊維がナノ粒子化プルシアンブルーを担持していることが確認できた。
一方、図23(a)のグラフ(C)に示すように、グルタルアルデヒドを添加しただけでは、図23(a)のグラフ(B)と比較して、スペクトルに変化は見られなかった。これは、グルタルアルデヒドはポリビニルアルコールと同じ波数の吸収ピークを有するためである。
塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、図23(a)及び図23(b)のグラフ(D)に示すように、O−H伸縮振動(3350cm−1)の吸収ピークの減少と、C―O―C伸縮振動(1150cm−1〜1085cm−1)の吸収ピークの増加が確認できた。これは、OH基とCOH基とが反応してエーテル結合を形成したことが原因であると考えられる。
これにより、図22に示す分子構造の変化が裏付けられた。
また、図23(b)のグラフ(C)及びグラフ(D)に示すように、グルタルアルデヒドの添加や塩酸ガスによる不溶化処理によって、1141cm−1の吸収ピークが減少したことも確認できた。これは、3次元構造の形成によりポリビニルアルコールからなる高分子鎖の自由度が減少し、その結果、結晶性も減少したことに起因すると考えられる。
なお、図示による詳しい説明は省略するが、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、C−N伸縮振動(2076cm−1)の吸収ピーク強度に変化は見られなかった。つまり、塩酸ガスによる不溶化処理では、ナノ粒子化プルシアンブルーの分解は生じないことが確認できた。
次に、図24に示すように、グルタルアルデヒドの添加量による分子構造の変化を調査した。
その結果、グルタルアルデヒドの添加量が増加するに従って、O−H伸縮振動(3350cm−1)の吸収ピークは減少していき、C―O―C伸縮振動(1150cm−1〜1085cm−1)の吸収ピークは増加していくことが確認できた。つまり、グルタルアルデヒドの添加量が多いほど、不溶化処理が進行していくことが確認できた。
2つの吸収ピークの変化を定量化するために、C−O−C伸縮振動における吸収ピーク強度の、O−H伸縮振動における吸収ピーク強度に対する比(吸収ピーク強度比)を求め、グラフにした(図25参照。)。このグラフから、グルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%になるまではグルタルアルデヒドの添加量の増加に比例するように吸収ピーク強度比が増加し、グルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%から17.5wt%になるときは、吸収ピーク強度比の増加の割合が減少することが確認できた。つまり、グルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%としたときには、不溶化処理はほとんど完了しているものと考えられる。
[実験例12]
図26は、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維及び塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を、水に浸漬したときの様子を示す写真である。図26(a)は不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の写真であり、図26(b)はグルタルアルデヒドの添加量が12.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の写真である。
図26においては、白黒で判りにくいが、黒っぽく見える部分は実際にはプルシアンブルーに起因する青色の部分である。図26は、浸漬から約1時間後の写真である。
図27は、水に浸漬した後の、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のSEM写真である。図27においてはSEM写真が3列4行に配置されているが、紙面左側に配置されている写真のセシウム吸着用ナノ繊維ほど不溶化処理の時間が短く(左から10秒、30秒、50秒)、紙面上側に配置されている写真のセシウム吸着用ナノ繊維ほどグルタルアルデヒドの質量分率が少ない(上から2.5wt%、7.5wt%、12.5wt%、17.5wt%)。
実験例12においては、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を水に浸漬し、その様子や繊維としての形態を観察するための実験を行った。
実験例12においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。また、図26に示した実験で用いたセシウム吸着用ナノ繊維においては、不溶化処理の時間を30秒とした。
SEM写真を得るにあたって使用した装置については、上記した実験例2に記載したものと同様であるため、説明を省略する。
まず、シャーレに蒸留水を入れ、当該蒸留水にセシウム吸着用ナノ繊維からなる不織布を四角形状に裁断したものを浸漬し、目視による観察を行った。その結果、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維においては、グルタルアルデヒドを添加した場合でも、浸漬した瞬間に有機ナノ繊維が溶解し、水中にナノ粒子化プルシアンブルーを放出してしまった(図26(a)参照。)。このため、セシウム吸着用ナノ繊維が、ポリビニルアルコールから製造した有機ナノ繊維を有する場合において、当該セシウム吸着用ナノ繊維を水中で用いるためには、水に対する不溶化処理を行う必要があることが再確認できた。
一方、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、1時間経過後であっても、目視の範囲では溶解せず、水中にナノ粒子化プルシアンブルーを放出することもなかった(図26(b)参照。)。
次に、水に浸漬した後の、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維における繊維の形態を観察するため、SEMを用いた観察を行った(図27参照。)。
その結果、グルタルアルデヒドの質量分率を2.5wt%としたときは、有機ナノ繊維が部分的に溶解してフィルムのような形状に変化したことが確認できた。一方、グルタルアルデヒドの添加量が増えるにつれて繊維形状が明確に残るようになり、グルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%としたときと17.5%としたときとでは、繊維の形態に差異がみられないことが確認できた。つまり、グルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%としたときには不溶化処理はほとんど完了していると考えられ、これは実験例11の結果と一致する。
一方、不溶化処理の時間による差異は、ほとんど確認できなかった。これは、塩酸ガスによる不溶化はごく短時間(1分以下)で完了することを示している。
実験例9〜12により、塩酸ガスによる不溶化処理を行うときには、例えば、グルタルアルデヒドの質量分率を2.5wt%以上とすることができ、不溶化処理の時間を10秒以上1分以下とすることができることが確認できた。また、実験例の条件では、グルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%〜17.5wt%とすることが好ましいことも確認できた。
[実験例13]
図28は、比較用ナノ繊維及び塩素ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維における表面形態を、走査型プローブ顕微鏡により観察した結果を示す図である。図28(a)比較用ナノ繊維の表面形態を示す3次元画像であり、図28(b)は比較用ナノ繊維の表面粗さ解析結果を示す図であり(表面付近の断面を示す図であるともいえる。図28(d)においても同様である。)、図28(c)はセシウム吸着用ナノ繊維の表面形態を示す3次元画像であり、図28(d)はセシウム吸着用ナノ繊維の表面粗さ解析結果を示す図である。
実験例13においては、セシウム吸着用ナノ繊維の表面形態を観察する実験を行った。
走査型プローブ顕微鏡として、セイコーインスツル株式会社のSPA400を用いた。
走査型プローブ顕微鏡は、プローブ(探針)が試料表面をなぞるように上下に動き、表面状態を測定するため、試料の微細な表面形態を観察することができる。
実験例13においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%とし、グルタルアルデヒドの質量分率を12.5wt%とし、塩酸ガスによる不溶化処理を30秒行ったセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。
測定を行った結果、比較用ナノ繊維は滑らかな表面を有していることが確認できた(図28(a)参照。)。さらに、表面粗さ解析の結果からも表面に凹凸がほとんどないことが確認できた(図28(b)参照。)。
一方、セシウム吸着用ナノ繊維については、表面に凹凸があることが確認できた(図28(c)参照。図28(c)において、白っぽい斑点のように見える部分が凹凸である。)。これを解析すると、突起部分の高さが約2nm〜3nmとなっている(図28(d)参照。)。繊維表面における微小な突起は、大きさから考えてナノ粒子化プルシアンブルーの一部であると考えられる。つまり、上記の実験の結果、ナノ粒子化プルシアンブルーが、有機ナノ繊維の表面にも存在していることが確認できた。
[実験例14]
図29は、セシウム吸着用ナノ繊維の水接触角を示すグラフである。図29(a)はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、比較用ナノ繊維及び不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の水接触角を示すグラフであり、図29(b)は塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の水接触角を示すグラフである。
図29(a)において符号(A)で示すのはPTFEシートのグラフであり、符号(B)で示すのは比較用ナノ繊維のグラフであり、符号(C)で示すのは不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図29(b)において符号(D)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が2.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(E)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が7.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(D)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフであり、符号(G)で示すのはグルタルアルデヒドの質量分率が17.5wt%で、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のグラフである。
図29のグラフにおける横軸は経過時間(単位:秒)を表し、縦軸は水接触角(単位:°)を表す。
実験例14においては、濡れ性(水との親和性)について実験を行った。水に対する濡れ性が高いと、水との親和性が高いことになる。このため、セシウム吸着用ナノ繊維を水中や水分の多い場所で用いるときには、セシウム吸着用ナノ繊維の濡れ性が高いことが好ましい。
実験例14においては、セシウム吸着用ナノ繊維として、ナノ粒子化プルシアンブルーの質量分率を24wt%としたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。また、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、不溶化処理の時間を30秒とした。
まず、使用した装置について説明する。
静的水接触角の測定には、協和界面科学株式会社のCA−VP(接触角計)を用いた。測定は、水の滴下後、1秒後、2秒後及び3秒後の写真を撮影することにより行った。
実験例14においては、比較用ナノ繊維、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維、及び、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維の試料は、全て不織布の状態で実験を行った。しかし、以下の説明においては、わかりやすさのために不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維、及び、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維という記載を用いて説明を行う。
まず、図29(a)のグラフ(A)に示すように、比較用に用いたPTFEシートの場合、水接触角は約117°で、水の滴下3秒後であっても水接触角は変化しなかった。
次に、比較用ナノ繊維の場合、図29(a)のグラフ(B)に示すように、水接触角が1秒後で93°、2秒後で25°、3秒後で20°となった。親水性の材料の場合は、水接触角が急激に減少する。
さらに、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維の場合も比較用ナノ繊維の場合と同様の傾向を有したが、1秒後の水接触角が112°であり、比較用ナノ繊維よりも増加した(図29(a)のグラフ(C)参照。)。これは、ナノ粒子化プルシアンブルーを添加したことにより、セシウム吸着用ナノ繊維の表面に微小な凹凸が生じたことに起因すると考えられる。
一方、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維においては、グルタルアルデヒドの添加量の変化による差異はあまり見られなかった(図29(b)のグラフ(D)〜グラフ(G)参照。)。全体としては、1秒後の水接触角が約30°となり、不溶化処理により濡れ性が大きく向上することが確認できた。これは、不溶化処理によって有機ナノ繊維が溶解しなくなり、繊維間に水を吸収しやすくなったことに起因すると考えられる。また、グルタルアルデヒドが親水性であることも影響していると考えられる。
結論として、不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維は、水に溶解しなくなり、かつ、不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維よりも濡れ性が向上しているため、水中や水分の多い場所で用いる(セシウムを吸着する)ために理想的な特性を有していることが確認できた。
[実験例15]
図30は、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維のセシウム吸着用特性を示すグラフである。図30における横軸は振とう時間(単位:分)を表し、縦軸はセシウム吸着率(単位:%)を表す。
実験例15においては、セシウム吸着用ナノ繊維のセシウム吸着特性について実験を行った。
まず、実験方法について説明する。
まず、超純水1Lに対して硝酸セシウム(和光純薬工業株式会社より購入。)1000mgを添加し、セシウム1ppm/超純水を作製した。このセシウム1ppm/超純水10mLに、ナノ粒子化プルシアンブルーが1mgとなるように、セシウム吸着用ナノ繊維を計算して投入し、600rpmで10分、30分及び100分振とうした。
振とう後、0.45μmのフィルターを用いてろ過し、2%HNO溶液(和光純薬株式会社より購入。)を用いて、10分後、30分後及び100分後のろ液を、それぞれ50倍、10倍及び5倍に希釈した。
その後、株式会社パーキンエルマージャパンのICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いてセシウム濃度を定量した。また、以下の式(1)及び式(2)を用いて、それぞれ、セシウム吸着率A及び分配係数Kを計算した。
式(1):A=100−{(A/A)×100}
式(2):K={(A−A)/A}×(V/m)
ただし、Aは吸着前のセシウム濃度、Aは吸着後のセシウム濃度、Vは試験水の体積(mL)、mはナノ粒子化プルシアンブルーの質量(g)である。
実験例15においては、グルタルアルデヒドの質量分率が12.5wt%であり、塩酸ガスによる不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を用いた。不溶化処理の時間は30秒とした。
実験を行った結果、試験開始から10分後のセシウム吸着率Aは86.03%、30分後のセシウム吸着率Aは90.24%、100分後のセシウム吸着率Aは95.85%となった(図30参照。)。
ここで、液−固比(mL/g)に注目した。液−固比とは、セシウムを含む試験水体積(mL)と吸着材の質量(g)との比である。実験例15においては、試験水である超純水10mLに対して吸着材(ナノ粒子化プルシアンブルー)1mgを用いたため、液−固比は10000ということになる。一般的に、市販品のプルシアンブルーにおいては、液−固比が1000のときの吸着率が約100%であり、液−固比が5000のときの吸着率が約80%となる。つまり、吸着材の材料に対して試験水体積が大きくなればなるほど、吸着材の性能が顕著に現れるということができる。実験例15においては、液−固比が10000であったにもかかわらず、95%以上の吸着率を発揮することができた。これは、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維が優れたセシウム吸着能力を有することを示している。
また、吸着性能を定量化した数値である、分配係数Kを求めた。試験開始から100分後の吸着率を基準に計算すると、K=230694という値になった。この値は、一般的な吸着材における分配係数の値であるK=1000〜6000に比べ、非常に高い値であるということができる。
上記実験例15により、本発明のセシウム吸着用ナノ繊維のセシウム吸着能力の高さが確認できた。
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記各実施形態において記載し、各図面において図示した各構成要素の寸法、個数、材質及び形状は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
(2)上記各実施形態においては、ポリビニルアルコール類からなる有機ナノ繊維3を例示して説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。ポリビニルアルコール類からなるものではない有機ナノ繊維、つまり、ポリビニルアルコール以外の有機材料(セルロース等)を主成分とする有機ナノ繊維としてもよい。原料に用いる有機材料の主成分がポリビニルアルコールではない場合でも、全体として有機材料が水溶性を示すのならば、本発明に係るセシウム吸着用有機ナノ繊維の製造方法を利用することができる。
(3)上記各実施形態においては、不溶化処理がなされたセシウム吸着用ナノ繊維を例示して説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維としてもよい。不溶化処理を行っていないセシウム吸着用ナノ繊維、つまり、水溶性のセシウム吸着用ナノ繊維は、水中や水分の多い場所で使用することはできないが、乾燥した空気中や低極性溶媒中で使用することが可能である。
1…セシウム吸着用ナノ繊維、2…ナノ粒子化プルシアンブルー、3…有機ナノ繊維、4…セシウム吸着用ナノ繊維、6…プルシアンブルー分散有機材料溶液、10,11…不織布、12…基材、14…芯材、16,18…(水溶性の)不織布、20…セシウム吸着用製品、100,106…ナノ繊維製造装置、102,104…不溶化処理装置、110…搬送装置、111,310…繰り出しローラー、112,330…巻き取りローラー、113,340…テンションローラー、114,350…補助ローラー、120…電界紡糸装置、200,300…筐体、210…ノズルユニット、220…上向きノズル、230…有機材料溶液供給部、232…原料タンク、233…撹拌装置、234…原料供給装置、236…パイプ、238…バルブ、250,420…コレクター、252…絶縁部材、260,430…電源装置、270…補助ベルト装置、272…補助ベルト、274…補助ベルト用ローラー、320…加熱部、322…塩酸ガス放出部、410…シリンジ、412…キャピラリーチップ、432…銅線、510…デシケーター、520…塩酸、530…ヒーター、G…塩酸ガス、H…熱

Claims (11)

  1. ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルーと、
    前記ナノ粒子化プルシアンブルーを担持している有機ナノ繊維とを有することを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維。
  2. 請求項1に記載のセシウム吸着用ナノ繊維において、
    前記有機ナノ繊維は、親水性の有機材料を主成分とする有機材料から製造されたものであることを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維。
  3. 請求項2に記載のセシウム吸着用ナノ繊維において、
    前記親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、
    前記有機ナノ繊維は、前記ポリビニルアルコールを主成分とする有機材料から製造されたポリビニルアルコール類からなることを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維。
  4. 請求項3に記載のセシウム吸着用ナノ繊維において、
    前記ポリビニルアルコール類は、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類であることを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維。
  5. ナノ粒子化されたプルシアンブルーであるナノ粒子化プルシアンブルーと、有機材料及び溶媒を含有する有機材料溶液とを準備する原料準備工程と、
    前記ナノ粒子化プルシアンブルー及び前記有機材料溶液を用いて、前記ナノ粒子化プルシアンブルーと、前記ナノ粒子化プルシアンブルーを担持している有機ナノ繊維とを有するセシウム吸着用ナノ繊維を製造するセシウム吸着用ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。
  6. 請求項5に記載のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、
    前記有機材料は、親水性の有機材料を主成分として含有し、
    前記溶媒は、水を主成分として含有し、
    前記原料準備工程においては、前記有機材料溶液として、前記ナノ粒子化プルシアンブルーを前記有機材料溶液に分散させた溶液であるプルシアンブルー分散有機材料溶液を準備し、
    前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程においては、前記ナノ粒子化プルシアンブルー及び前記有機材料溶液として、前記プルシアンブルー分散有機材料溶液を用いることを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。
  7. 請求項6に記載のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、
    前記親水性の有機材料は、ポリビニルアルコールであり、
    前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程は、前記有機ナノ繊維として水溶性有機ナノ繊維を形成する水溶性有機ナノ繊維形成工程を含むことを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。
  8. 請求項7に記載のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、
    前記セシウム吸着用ナノ繊維製造工程は、水に対する不溶化処理を行うことにより、前記水溶性有機ナノ繊維を、水に対する不溶化処理がなされた不溶化ポリビニルアルコール類からなる有機ナノ繊維とする有機ナノ繊維不溶化工程を、前記水溶性有機ナノ繊維形成工程の後に、さらに含むことを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。
  9. 請求項8に記載のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、
    前記有機ナノ繊維不溶化工程においては、前記不溶化処理として熱による不溶化処理を行い、
    前記熱による不溶化処理における処理温度は、140℃〜220℃の範囲内にあることを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法。
  10. 請求項8に記載のセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法において、
    前記原料準備工程においては、前記有機材料溶液として、グルタルアルデヒドを添加した有機材料溶液を準備し、
    前記グルタルアルデヒドの添加量は、前記親水性の有機材料の質量を100wt%としたときの質量分率で表したときに、2.5wt%以上であり、
    前記有機ナノ繊維不溶化工程においては、前記不溶化処理として塩酸ガスによる不溶化処理を行うことを特徴とするセシウム吸着用ナノ繊維の製造方法
  11. 請求項1〜4のいずれかに記載のセシウム吸着用ナノ繊維を備えることを特徴とするセシウム吸着用製品。
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