JP2015055494A - チーズの品質予測方法 - Google Patents

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誠 塩田
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Abstract

【課題】セミハード系チーズおよびハード系チーズのように長期間にわたる熟成期間を有するチーズの熟成中の測定結果に基づいて一定期間経過後の官能特性を予測する。【解決手段】熟成開始から第1期間経過後(第1熟月)のセミハード系チーズまたはハード系チーズに含有される複数の香気成分の各成分量を測定し、多変量解析によって求められるセミハード系チーズまたはハード系チーズの熟成開始からの期間を変数とする香気成分の各成分の関係式に第1期間(第1熟月)を代入して、複数の香気成分の各成分量を求める。そして、測定された各成分量と関係式により求められた各成分量との差を所定の範囲と比較することで、第1期間より時間の経過した熟成開始から第2期間経過後(第2熟月)におけるセミハード系チーズまたはハード系チーズの風味品質を判定する、セミハード系チーズまたはハード系チーズの風味品質の予測方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、一定期間の熟成後におけるチーズの風味品質を予測する方法に関する。
ナチュラルチーズは、その製造工程により多種多様な風味、食感、組織を有しており、風味発現の要因としては、乳質、乳処理方法、乳酸菌、酵素、細菌、カビ、熟成条件等の作用が大きなものとして挙げられる。例えば、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、グラナチーズ、パルメザンチーズ等の硬質系ナチュラルチーズは、主として熟成中に乳酸菌、酵素の作用によるタンパク質及び脂肪分解にともなって生じる呈味成分、芳香成分による特有の風味を有する(非特許文献1)。
チーズ中の香気成分については、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類、含流化合物、ラクトン類など、多くの報告がなされており、個別の香気成分の香気質についても知られている。これらは、脂肪、アミノ酸、糖質などから各種微生物中の酵素の作用により、代謝された物質である。各香気は、相互の増強効果やマスキング効果、複合効果により多様な香りとしてヒトには認識される。この認識は食経験にも関連することであり、国や地域により、感じ方は異なる場合も多い。チーズの嗜好性には食文化や食経験によるものであり、地域によってもチーズの嗜好性が変化することが報告されている(非特許文献1)。
ナチュラルチーズは、乳に乳酸菌、凝乳酵素を添加し、凝固後、加熱撹拌し、ホエー排除により低水分化したカードを型詰めし、加塩工程を経て熟成する。ナチュラルチーズ特有の風味は熟成中に緩やかに形成され、長期間の熟成条件により風味・食感が大きく変化する。
ナチュラルチーズはそのまま食されることが多いが、硬質系ナチュラルチーズであるチェダーチーズやゴーダチーズはプロセスチーズの原料として使用され、プロセスチーズとして消費されることが多い。いずれの場合においても熟成のタイミングにより風味が異なるため、熟成中の風味の変化を予測することは、望ましい風味を有する状態で商品を提供するためには非常に重要である。
最近では、ガスクロマトグラフィー等の機器分析や多変量解析運用技術の進化や多変量解析ソフトの充実により、チーズから脂肪酸やアミノ酸、香気成分を抽出した後、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどにより、成分の同定と定量を行い、成分と官能評価結果を統合解析することで、チーズの香気成分と官能特性との関係を把握する試みが増えてきた。
ケモメトリクス(計量科学)分野の多変量解析を用いることで、血中成分の分析結果から疾病を予測したり、近赤外領域における分光学的特性やクロマトグラフィーによる成分の分散から、食品の品質を予測することが行われている。主成分分析(PCA, principal component analysis)や部分最小二乗法(PLS, partial least squares analysis)によるスコアプロットやローディングプロットを用いることで、試料間の位置づけや各試料に特徴的な成分、官能項目に関連する成分の特定などを行なうことができる。例えば、チェダーチーズの油分が官能特性と香気成分との関連性を示した報告(非特許文献1)、熟度の違いが官能評価点に与える影響を解析した報告(非特許文献2)が存在する。また、チーズの熟成条件や搾乳時期などが成分に与える影響を評価した報告(非特許文献3)、乳の殺菌条件が官能特性に与える影響を評価した報告(非特許文献4)などが存在する。中でもOPLS-DA(orthogonal partial least squares project to latent structures-discriminant analysis)法は、ガン患者と正常者の血液成分データを用いたマーカー候補の探察や植物代謝物において、それらの群間の差に寄与する成分を特定すること等に用いられ、代謝物解析の進展に貢献してきた(非特許情報5)。
Journal of Dairy Science, 93, 5069-5081 (2010) Journal of Dairy Science, 87, 11-19 (2004) International Dairy Journal, 18, 801-810 (2008) International Dairy Journal, 18, 790-800 (2008) Chemometrics and Intelligent Laboratory System, 84, 82-87 (2006)
ケモメトリクス手法は、分析実施時点での熟成品質を確認する手段として適用が広がっている。しかし、セミハード系チーズおよびハード系チーズは数年間以上にも渡る熟成期間を有するため、分析実施時点から一定期間経過後の熟成中の官能特性の変化を予測する試みはない。それは、チーズの香りは多様な香気成分の複合的な効果によるものであり、香気成分分析のみでは、チーズの熟成品質を把握することは非常に困難であるからである。そこで、通常は官能評価結果が併用されるが、官能評価はヒトの感性に頼る手法であることから、評価者の体調や評価時期などが結果に影響する。しかも、評価者の確保と官能評価の実施には膨大な作業量が発生することから、特にセミハード系チーズおよびハード系チーズのように長期間にわたる熟成期間中の官能特性を熟成途中に把握することは難しく、熟成開始から時間が経過して出荷準備をする時期になってから、その都度、官能評価を実施しながら出荷するべきチーズを選別しなければならず、膨大なコストと時間を要してしまう問題があった。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行ったところ、熟成程度の異なる2点以上の時点(熟月)におけるチーズの香気成分組成と官能評価を分析し、さらには多変量解析手法としてOPLS-DAを用いることで、香気成分組成および官能評価のそれぞれと熟月との間に関連性を見出した。そして、その関連性を利用することで、熟成途中の時点でチーズに含有される香気成分組成を測定することによって、さらに熟成を進めた将来の時点における特定の風味特性の変化を予測する方法を見出した。
すなわち、本発明は、熟成開始から第1期間経過後(第1熟月)のセミハード系チーズまたはハード系チーズに含有される複数の香気成分の各成分量を測定し、セミハード系チーズまたはハード系チーズの熟成開始からの時間を変数とする香気成分の各成分に固有の計算式に第1期間(第1熟月)を代入して、複数の香気成分の各成分量を求める。そして、測定された各成分量と計算式により求められた各成分量との差と所定の範囲とを比較して、第1期間より時間の経過した熟成開始から第2期間経過後(第2熟月)におけるセミハード系チーズまたはハード系チーズの風味品質を判定する、セミハード系チーズまたはハード系チーズの風味品質の予測方法である。測定された各成分量と計算式により求められた各成分量との差が所定の範囲内にあるときは、第2熟月において好ましい風味品質のセミハード系チーズまたはハード系チーズが得られると判定してもよい。
複数の香気成分は、エタノール(Ethanol)、エチルアセテート(Ethyl acetate)、アセトイン(Acetoin)、ヘキサノイックアシッド(Hexanoic acid)、オクタノイックアシッド(Octanoic acid)、ブタノイックアシッド(Butanoic acid)であることが好ましい。
本方法はセミハード系チーズおよびハード系チーズが対象となる。これらは、ナチュラルチーズの硬さによる分類において、半硬質、硬質、超硬質に分類されるものであり、カードメーキング工程で加熱もしくは加熱せずにカードを作り、型詰後の圧搾によりチーズの水分値を48%以下にしたチーズであり、かつ、熟成期間が2ヶ月以上のものとする。チーズの種類としては、ゴーダ、サムソー、ルブローション、チェダー、エメンタール、グリュイエール、コンテ、エダム、ボォフォール、マンチェゴ、パルミジャーノ・レジャーノ、グラーナ・パダーノなどのチーズが該当する(非特許文献6)。乳は牛乳に限定されず、水牛や羊乳、山羊乳を用いて製造したチーズについても適用可能である。
香料, 222, 65-85 (2004)
本発明によれば、熟成途中に分析された香気成分の測定値をもとに、さらに熟成を進めた将来の時点における官能特性を予測することができるため、熟成開始から長期の期間を待たずにチーズの品質を管理することが可能となる。これにより、例えば、チーズの熟成の進度を管理して、さらに熟成を継続しても目的の品質が得られないと予測されるチーズを選別したり、予定される時期に出荷可能なチーズの量を見積もることが容易になる。
異なる熟月のチーズのOPLS-DAスコアプロットを行った結果を示す図。 Loadingプロットによる、各分離に関与する香気成分と官能評価項目を示す図。
以下に本発明の実施例を示して詳細に説明する。ただし、本実施例は本発明の態様の1つであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
7種類の異なるゴーダチーズ(Sample A(熟成9ヶ月), Sample B(熟成9ヶ月), Sample C(熟成6ヶ月), Sample D(熟成7ヶ月), Sample E(熟成9ヶ月), Sample F(熟成7ヶ月), Sample G(熟成9ヶ月))を用意し、ヘッドスペース-SPME-GC/MS法(以下、「SPME-GC/MS法」という。)および水蒸気蒸留抽出-GC/MS法(以下、「SDE-GC/MS法」という。)による香気成分分析、および官能評価を実施した。以下、この最初の香気成分分析および官能評価を第1回目評価という。
SPME-GC/MS法による香気成分測定は下記の方法で行なった。
フードプロセッサーにて1〜2mm程度に粉砕したチーズ1gを20mLバイアルビンに秤量、内部標準 (trans-2-methyl-2-butenal、5ppm 70mg) をチーズ上に滴下した。窒素充填後、シリコンシールで密閉し、測定試料とした。内部標準を馴染ませる為、ボルテクスミキサーで10秒程度撹拌し、37℃恒温槽にて10分間平衡、同様に37℃にて60分間SPMEファイバー(50/30 DVB/Carboxen/PDMS (SUPELCO))に吸着した後、GC/MSにて測定した。使用カラムはDB-5ms(60m×0.32mm i.d×0.5μm、J&W社製)、分析機器は Agilent 6890(GC)、5973(MSD)(アジレント・テクノロジー社製)、測定結果の解析は MSDChemiStation (アジレント・テクノロジー社製)を使用した。
SDE-GC/MS法による香気成分測定は下記の方法で行なった。
短冊状に細く刻んだチーズを50g用意し、1000mL容丸底フラスコにチーズ、イオン交換水150mL、シリコーン1滴を加えて水蒸気の吹き込みを行い、香気成分を含む凝縮液を500mL得た。得られた凝縮液と食塩10gとジクロロメタン(残留農薬用・PCB試験用5000倍濃縮品 関東化学) 100mLを1000mL容分液ろうとに入れ、香気成分をジクロロメタン層に移行させる。ジクロロメタン層を取り出し無水硫酸ナトリウムにて脱水を行った。この作業を2回繰り返し、得られた溶液を60℃の恒温槽にて加温し、0.3mLまで濃縮した。濃縮液に内部標準(Biphenyl 500ppm)を0.1mL添加し、測定試料とした。測定は各試料2回ずつ行った。使用カラムはDB-WAX(30m×0.25mm i.d×0.25 μm、J&W社製)、分析機器はVarian220-MS イオントラップ型GC/MS/MS(バリアン テクノロジー社製)を使用した。測定条件を以下に示した。スプリットモード(1:22)、注入口温度250℃、キャリアガスHe、カラム初期流量2.4mL/min、オーブン条件40℃3分保持後、230℃まで3℃/minで昇温後、24分保持した。MS条件を以下に示した。検出器はイオントラップ型(EIモード)、測定はスキャンモード、MSトラップ温度200℃、トランスファー温度250℃、質量範囲35〜500m/z、スキャン速度0.5sec/scanとした。測定結果の解析は GC/MS付属の解析ソフトおよび同定はNIST08のデータベースのマススペクトルと対応させることで行なった。
SPME-GC/MS抽出香気成分としては、Ethanol, Acetone, Dimethyl sulfide, Ethyl acetate, 3-Methyl-butanal, 2-Methyl-butanal, 2-Pentanone, Acetoin, 3-Methyl-1-butanol, Butanoic acid, 2-Heptanone, Hexanoic acid, Limonene, 2-Nonanone, Octanoicacid, Butanoic acid butyl esterの16成分を得た。
SDE-GC/MS抽出香気成分としては、2-Undecanone, 2-Tridecanone, Benzyl alcohol, δ-Octalactone, 2-Pentadecanone, δ-Decalactone, Decanoicacid, γ-Undecalactone, δ-dodecalactone, Dodecanoicacid, δ-Tetradecalactone, Tetradecanoic acid, Hexadecanoicacidの13成分を得た。
なお、香気成分分析において、SPME-GC/MS法とSDE-GC/MS法のいずれでも検出された香気成分については、SPME-GC/MS法のデータのみを用いた。
香気成分分析における香気成分の抽出には、上記以外に、Tenax樹脂を用いたダイナミックヘッドスペース吸着法、SAFE(Solvent assisted flavor extraction)法を用いることもでき、得られた香気成分抽出物をガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分離し、質量分析計(MS)、匂い嗅ぎ法、水素イオン化検出器(FID)を用いて定量することができる。
官能評価における評価項目に用いる語句は、事前に様々なゴーダチーズを試食してもらいチーズの香気質を表現する言葉出しを行い、多数の候補語句から意味が重複しないように選別を行なった結果、8種類(“乳”、 “バター”、 “フルーティー”、 “甘さ”、 “青臭さ”、 “ゴム臭”、“硫黄臭”、“獣臭”)を選定した。官能評価は、70名の日本人によるパネラーに7種のゴーダチーズを食してもらい、これらの8種類の用語の中から食後に感じた香りを3語まで選定してもらった。官能評価の値は、70名中の各官能項目を挙げた人数の割合を百分率で示した。
上記の第1回目評価を実施した後、7種類のチーズを5℃にて、さらに6ヶ月間保持して熟成を進めた。そして、各試料について、再び第1回目評価と同じ香気成分分析と官能評価を実施した。以下、このときの香気成分分析および官能評価を第2回目評価という。
第1回目評価と第2回目評価の結果をもとに多変量解析を行った。
図1に、OPLS-DAのスコアプロットを示す。OPLS-DAは判別情報を第1主成分に集約する手法であり、Loadingと併用することで、判別に寄与する要素を特定しやすくすることができる。図1は、それぞれ熟月の異なる試料である、第1回目評価の試料と第2回目評価の試料の判別を試みた結果を示している。潜在変数として4成分によるOPLSにより、両者の試料は明確に分けることができた。このモデルにおけるバリデーションはR2=0.945; Q2=0.813であった。ここで、R2はモデルの適合度を示し、Q2はモデルの予測性能を示し、両者ともモデルの精度と予測性は高いものと考える。本解析では、Umetrics社製の多変量解析ソフト SIMCA 13 を使用した。
図1に示すように、熟月の異なる第1回目評価の試料と第2回目評価の試料間とを第1成分において明確に分離できた。
図2に、Loadingプロットによる、各分離に関与する香気成分と官能評価項目を示す。図2の中では、VIP値が1以上を示す説明変数を黒棒にて表記した。VIP値はVariable importance for the projection であり、本モデルにおける説明変数の重要性を示す値である。ここで、VIP値が1以上を示す香気成分は、エタノール(Ethanol)、エチルアセテート(Ethyl acetate)、アセトイン(Acetoin)、ヘキサノイックアシッド(Hexanoic acid)、オクタノイックアシッド(Octanoic acid)、ブタノイックアシッド(Butanoic acid)の6種類であった。
以上の分析から、これらの6成分の熟成中の変化を熟成期間との関係として表すと、それぞれ下記の式となる。ここで、熟成期間は、熟成開始からの経過月(熟月)である。
(式1)
エタノール(μg/kg) = 33.6 x 熟成期間(月) − 15.2
エチルアセテート(μg/kg) = 11.2 x 熟成期間(月) − 58.5
アセトイン(μg/kg) = −28.9 x 熟成期間(月) + 1268.9
ブタノイックアシッド(μg/kg) = −16.6 x 熟成期間(月) + 675.0
ヘキサノイックアシッド(μg/kg)= 7.6 x 熟成期間(月) + 89.9
オクタノイックアシッド(μg/kg)= 4.0 x 熟成期間(月) − 10.8
さらに、図2の結果を用いて、上記で選定した官能項目のうち、チーズにおいて好ましいと評価される官能項目である「フルーティー」「甘さ」、および好ましくないと評価される官能項目である「獣臭」「ゴム臭」の項目を熟成期間との関係として表すと、それぞれ以下の式で表すことができる。
(式2)
フルーティー = 1.4 x 熟成期間(月) − 1.8
甘さ = 0.8 x 熟成期間(月) + 1.4
獣臭 = −0.9 x 熟成期間(月) + 23.2
ゴム臭 = −0.5 x 熟成期間(月) + 20.1
式2では、熟成初期は「獣臭」および「ゴム臭」が「甘さ」および「フルーティー」よりも優勢であるが、熟成が進んでくると、熟成10ヵ月後からは「フルーティー」が「獣臭」および「ゴム臭」よりも優勢となり、熟成12ヵ月後からは「甘さ」が「獣臭」および「ゴム臭」よりも優勢となることを示している。
これらの結果より、第1回目評価において測定された香気成分の量と式1に熟成期間を代入して求められる値とを比較して、両者の差が所定範囲内であれば、第1回目評価を行った時点から熟成を進めて熟成10ヶ月後からは式2にしたがって「フルーティー」および「甘さ」が優勢となることが見込まれると判定できる。よって、そのまま熟成を継続すると好ましい官能評価となるチーズが得られることが予測できる。
製造条件の異なるチーズにも上記の式で示す関係が適用されることを検証すべく、複数の異なる調製方法により得られたチーズについて香気成分分析を実施し、熟成後の官能評価結果との関連性を評価した。
スターターの異なる複数のチーズを製造し、熟成開始から数ヶ月経過した時点(第1熟月)で香気成分の分析を行うことで、さらに時間の経過した熟成10ヶ月以降(第2熟月)の風味品質を予測した。そして、第2熟月を迎えた時点で実際に官能評価を行うことで、第1熟月における予測の精度を検証した。
試験に用いたゴーダチーズの調製方法は、次の通りである。まず、脂肪分2.8 重量%に調整した原料乳をプレート型殺菌機により75℃で15秒間殺菌した後、30℃まで冷却した。そして、この原料乳100kgに対し、中温性乳酸菌スターター(Lactococcus lactis ssp. cremoris, Lactococcus lactis ssp. lactis, Lactococcus lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis, Leuconostoc sp.)、高温性乳酸菌スターター(Streptococcus thermophilus, Lactobacillus helveticus, Lactobacillus delbruekiissp. bulgaricus, Lactobacillus delbruekiissp. lactis) から選ばれる2種類以上を選定し、添加を行ない、ジャケット付のチーズバット内に静置した。1時間後に仔牛レンネットを3g添加し、さらに静置した。約30分経過した時点で乳の凝固が起こり、凝固開始から5分後にチーズナイフを使用してチーズカードを10mmの立方体に切断した。切断後、緩やかに撹拌しながらチーズカード中からホエーを流出した。ホエーの流出を促進させるために、カードとホエー混合物を1℃/2分の加熱で38℃まで加温した。撹拌を開始してから2時間後にカードとホエーを分離し、全カードを10kg容量のチーズモールドに入れ、縦型プレス機にて140kgの荷重をかけて2時間プレスした。プレス後20%食塩水中(10℃)に48時間浸漬して加塩し、加塩後、10℃熟成庫内で熟成し、ゴーダチーズを得た。
得られた試料10種類について図2に示すVIP値が1以上となる6成分の含有量を調べるため、SPME-GC/MS法による香気成分分析を行った。熟月が6ヵ月(試料1、2、5、6、7)および8ヵ月(試料3、4、8、9、10)の時点(第1熟月)で測定した香気成分分析の結果を表1に示す。
Figure 2015055494
試料1〜4について、分析された香気成分6種類すべてについて、測定された値と、式1に熟月を代入することによって得られる値とを比較したところ、両者の差は10%未満であった。本実施例では、両者の差が10%未満の場合は、OPLS-DAに基づいて得られた結果に当てはまっているものとした。本実施例では、このことから、試料1〜4を、熟月6ヶ月または8ヶ月(第1熟月)から、さらに時間の経過した時点(第2熟月)まで熟成させたときには、好ましいチーズとなると判定し、第2熟月における試料1〜4のチーズの官能評価の結果において、好ましいと評価される官能項目が高評価となることが予測された。
一方、試料5〜10は、6種類の内の1種類以上の香気成分が式1から計算される値から10%以上外れていた。外れていた香気成分は、表1中の数字に下線を施してある。本実施例では、これらの試料は、OPLS-DAに基づいて得られた結果に当てはまるといえないものとした。このため、このまま熟成を進めて第2熟月になっても好ましいチーズが得られないと判定し、第2熟月において好ましい官能評価の結果が得られにくいことが予測された。
試料1〜10について、さらに熟成を進めた熟月(第2熟月)における官能評価を実施するため、上記の分析後も試料の保存を継続した。そして、それぞれの試料の熟成開始からの熟月が12ヶ月または16ヶ月となった時点(第2熟月)で、官能評価を実施した。20名のパネラーにより、10cmの官能評価スケールを用いて、もっとも香りが強いものを5点、もっとも香りが弱いものをマイナス5点として各試料の風味の点数をつけた。20名による官能評価の平均値を表2に示す。本官能評価では、注目した4項目に加えて「好ましさ」についても調査を行なった。「好ましさ」は、もっとも好ましいものを5点とし、もっとも好ましくないものをマイナス5点とした。
Figure 2015055494
表2に示したとおり、香気成分分析を行った時点(第1熟月)における予測において、そのまま熟成を続けると好ましい評価が得られると判定された試料1〜4は、香気成分分析を行ってから数ヶ月が経過した熟成期間12または16ヶ月(第2熟月)において、「獣臭」と「ゴム臭」が低く、「甘さ」と「フルーティー」の点数が高かった。
一方で、第1熟月の時点での予測において、熟成を継続した第2熟月において好ましい評価が得られ難いと判定された試料5〜10は、「獣臭」もしくは「ゴム臭」を感じる試料が見られ、「甘さ」と「フルーティー」についても弱い傾向が見られた。また、試料1〜4は好ましさにおいても高い点数であったが、試料5〜10は好ましくないと評価された。
このように、チーズの熟成開始から時間の経過した時点(第1熟月)においてチーズに含有される香気成分を測定し、測定した時点の熟月(第1熟月)を予め得られた各成分固有の計算式に代入して得られる香気成分含有量と実際に測定された値とを比較して熟月と香気成分含有量が所定の範囲内にあるか否かを確認することで、測定した時点からさらに時間の経過した時点(第2熟月)において好ましい風味である「甘さ」と「フルーティー」が優勢となるチーズが得られる見込みを判定し、第2熟月におけるチーズの品質を予測することができることが判る。

Claims (8)

  1. 熟成開始から第1期間経過後のセミハード系チーズまたはハード系チーズに含有される複数の香気成分の各成分量を測定する工程と、
    セミハード系チーズまたはハード系チーズの熟成開始からの時間を変数とする多変量解析により求められた前記香気成分の各成分の関係式に前記第1期間を代入して、前記複数の香気成分の各成分量を求める工程と、
    前記測定された各成分量と前記関係式により求められた各成分量との差を求める工程と、
    前記測定された各成分量と前記関係式により求められた各成分量との差と所定の範囲とを比較して、前記第1期間より時間の経過した前記熟成開始から第2期間経過後における前記セミハード系チーズまたはハード系チーズの風味品質を判定する工程と
    を有することを特徴とするセミハード系またはハード系チーズの風味品質の予測方法。
  2. 前記複数の香気成分が、前記多変量解析における説明変数であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記複数の香気成分が、前記多変量解析におけるVIP値が1以上となる変数の中から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記複数の香気成分が、エタノール、エチルアセテート、アセトイン、ブタノイックアシッド、ヘキサノイックアシッド、およびオクタノイックアシッドである、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記香気成分の各成分の関係式が以下の式であることを特徴とする請求項4記載の方法。
    エタノール(μg/kg) = 33.6 x 第1期間(月) − 15.2
    エチルアセテート(μg/kg) = 11.2 x 第1期間(月) − 58.5
    アセトイン(μg/kg) = −28.9 x 第1期間(月) + 1268.9
    ブタノイックアシッド(μg/kg) = −16.6 x 第1期間(月) + 675.0
    ヘキサノイックアシッド(μg/kg)= 7.6 x 第1期間(月) + 89.9
    オクタノイックアシッド(μg/kg)= 4.0 x 第1期間(月) − 10.8
  6. 前記所定の範囲が、−10%〜+10%であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記複数の香気成分の各成分量の測定が、ヘッドスペース-SPME-GC/MS法、ダイナミックヘッドスペース-GC/MS法、水蒸気蒸留抽出-GC/MS法、またはSAFE-SPME-GC/MS法から選択されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
  8. 前記複数の香気成分の各成分量の測定が、質量分析ガスクロマトグラフィー、匂いかぎガスクロマトグラフィー、水素炎イオン化検出器から選択される機器を用いて測定される、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017005631A1 (en) * 2015-07-03 2017-01-12 Chr. Hansen A/S Bypassing curd-wash in continental cheese making
JP2017026484A (ja) * 2015-07-23 2017-02-02 日清オイリオグループ株式会社 回帰式を用いた多孔性食品の食感評価方法及び評価システム
JP2020153986A (ja) * 2019-03-22 2020-09-24 台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司Taiwan Carbon Nano Technology Corporation ガスによって食材の風味を評価するシステム及び方法

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