JP2015031993A - オペレーショナルリスクの計量方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オペレーショナルリスクの計量方法及び装置を提供する。【解決手段】本発明に係る、損失頻度分布と損失規模分布からオペレーショナルリスクを計量する方法は、損失実績データを損失金額について降順に順位を付与するステップと、順位と損失金額の関係を表す回帰曲線より、所定の金額以上の損失が発生する頻度である損失頻度を推計するステップと、損失頻度を用いて損失規模分布を生成するステップとを含む。【選択図】図4

Description

本発明は、オペレーショナルリスクの計量方法及び装置に関する。
従来、銀行及びそのグループ会社の健全性を確保するための国際的な取り決めであるバーゼル合意(いわゆるBIS自己資本比率規制)が、銀行業務の多様化やリスク管理技術の高度化に対応するためバーゼルII(新BIS規制)へと改定され、日本では2007年3月末より適用されている。
新BIS規制においては、以下の式(a)で表される自己資本比率が、8%以上であることが求められている。
Figure 2015031993
「信用リスク」とは、与信先の財務状況の悪化等のクレジットイベント(信用事由)に起因して、資産(オフ・バランス資産を含む)の価値が減少ないし滅失し、損失を被るリスクである。「市場リスク」とは、金利・為替・株式などの相場が変動することにより、金融商品の時価が変動し、損失を被るリスクである。「オペレーショナルリスク」とは、内部プロセス・人・システムが不適切であることもしくは機能しないこと、または外生的事象が生起することから生じる損失にかかるリスクである。
以下では特に、オペレーショナルリスクの計量方法について説明する。
新BIS規制においては、オペレーショナルリスクの計量に3つの手法が認められており、ここでは、要件を充足する最高度の手法である「先進的計測手法」を採用する。「先進的計測手法」とは、過去の損失実績等を基礎に各行のリスク計測手法を用いて、1年間のトータルの最大損失額(99.9%の確率で同額以下となる水準)で、オペレーショナルリスク相当額(いわゆる、所要自己資本)を算出する方法である。
先進的計測手法が認められるためには所定の定量的基準を満たす必要があり、その基準とは、内部損失データ、外部損失データ、シナリオ分析が適切に用いられ、業務環境要因及び内部統制要因が適切に反映されていることである。内部損失データとは、オペレーショナルリスクが原因で自行が損失を被る事象に関する情報であり、外部損失データとは、オペレーショナルリスクが原因で自行以外の金融機関が損失を被る事象に関する情報であり、シナリオ分析とは、専門的な知識・経験・情報に基づいて潜在的なリスクを推計する手法であり、業務環境及び内部統制要因とは、取引量、業務の複雑さ、内部管理の状況など、オペレーショナルリスクに影響を与える要因である。
図8を参照して、従来のオペレーショナルリスクの計量方法を説明する。この方法では、観測期間は5年超の期間の内部損失データを用いる。
まず、図8(a)に示すように、損失データに基づいて損失頻度分布を生成する。損失頻度分布は、損失事象が1年間に何回発生するかを分布で表したものである。図8(a)では、年間5回程度が最もよくある発生回数であり、10回以上となる場合もあることが示されている。
また、図8(b)に示すように、損失データ及びリスクコントロールアセスメント(RCA)による損失規模分布を生成する。損失規模分布は、損失事象1件当たりの損失額がどの程度であるかを分布で表したものであり、多く発生する比較的小額の損失は損失データに基づき、極めて稀に発生するとしか想定し得ない高額の損失(分布の裾の部分)はシナリオに基づいて生成される。また、損失規模分布の生成には、損失額の分布を平滑化する方法(特許文献1参照)が用いられている。
次いで、モンテカルロシミュレーションにより、図8(c)に示した損失分布を生成し、99%VaR(ヴァリューアットリスク)を算出する。モンテカルロシミュレーションとは、乱数を用いて繰り返し計算を行う手法である。ここでは、1年間の損失の合計額を100万個得るために、以下の処理(1)〜(3)を100万回繰り返す。
(1)損失頻度分布より、乱数を用いて1年間の損失事象の発生件数(例えば、5件)を抽出する。
(2)次いで、損失規模分布より、乱数を用いて上記(1)で抽出した発生件数分の損失額(例えば、50、100、80、150、70)を抽出する。
(3)1年間の損失の合計額として、上記(2)で抽出した損失額の合計を算出する(例えば、450)。
図8(c)に示した損失分布は、モンテカルロシミュレーションにより得られた100万個の損失の合計額を分布で表したものである。この損失分布より、損失額の大きい方から1万個目を最大損失額(99%VaR)を算出する。
次いで、算出した最大損失額(99%VaR)にリスク資本換算係数(Υ)を掛けて、最大損失額(99.9%VaR)を算出する。
以上説明したように、1年間の最大損失額(99.9%VaR)が算出され、オペレーショナルリスクの値が求められる。
特許第4241083号公報
ところで、オペレーショナルリスクは、過払利息返還損失などのリスクも対象となる。しかしながら、過払利息返還損失のリスク計量においては、グレーゾーン金利が明確に違法となっていなかった時期の古いデータが消失している場合が多く、過去に遡ってデータを取得することが難しい場合が多い。そのため、一顧客当たりの最大返還額(すなわち、最大損失額)の推定が難しく、過払利息返還損失額の最大値(99.9%VaR)も算出することが難しい状況にある。
また、従来の方法では、損失の発生要因が外部にある場合に、将来起こり得るシナリオを想定することが難しく、高額な取引の発生確率を合理的な手法で算出できないため、リスクを過大または過小評価してしまう可能性があるという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、過去の損失実績データのみから合理的にリスクを推定し、その最大値(99.9%VaR)を算出するリスク計量方法及び装置を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る発明は、損失頻度分布と損失規模分布からオペレーショナルリスクを計量する方法において、損失実績データを損失金額について降順に順位を付与するステップと、順位と損失金額の関係を表す回帰曲線より、所定の金額以上の損失が発生する頻度である損失頻度を推計するステップと、損失頻度を用いて損失規模分布を生成するステップとを含むことを特徴とする。損失規模分布は、推計した損失頻度と、損失実績データの損失金額を平均とする正規分布を重ね合わせたものとの誤差が最小となるように標準偏差を決定し、生成することができる。
また、本発明の一実施形態に係る発明は、損失頻度分布と損失規模分布からオペレーショナルリスクを計量する装置であって、損失実績データを損失金額について降順に順位を付与する手段と、順位と損失金額の関係を表す回帰曲線より、所定の金額以上の損失が発生する頻度である損失頻度を推計する手段と、損失頻度を用いて損失規模分布を生成する手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量装置の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量装置の機能ブロック図である。 本発明の一実施形態における損失実績データを示す図である。 本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量処理のフロー図である。 本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量方法の概要を示す図である。 本発明の一実施形態に係る高額損失頻度推定処理を説明する図である。 本発明の一実施形態に係る高額損失頻度推定処理を説明する図である。 従来のオペレーショナルリスクの計量方法の概要を示す図である。
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において同一の符号は同一物を表し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量装置のブロック図を示す。オペレーショナルリスク計量装置101は、コンピュータ装置であって、制御部102、主記憶部103、補助記憶部104、入力部105、出力部106、ネットワークインターフェース107を備え、これらが、システムバス108を介して相互に接続されている。
制御部102は、中央処理装置(CPU)とも呼ばれ、主記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムを処理することにより、各構成要素を統括的に制御する。また、補助記憶装置104に記憶されたコンピュータプログラムを主記憶装置103に読み出して実行し、本発明に係る処理を実施し、その機能を実現することができる。
入力部105は、装置101の外部からの入力を受け取り、出力部106は、装置101の処理結果を出力する。また、ネットワークインターフェース107は、通信可能に接続された他のコンピュータ装置等とのやり取りを行う。
なお、上述したコンピュータ装置101は例示のためのものであり、本発明を実施することができるコンピュータ装置を限定するものではない。また、本発明は、複数のコンピュータ装置が協働して実行することもできる。
図2は、本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量装置101の機能ブロック図を示す。各機能は、オペレーショナルリスク計量装置101の制御部102がコンピュータプログラムを読み出し、実行することによって実現される。
オペレーショナルリスク計量装置101は、データベース201を備え、過去の損失実績データを記憶する。損失実績データは、図3に示すように、損失発生時期と損失金額が関連付けられて記憶されている。損失実績データの観測期間は任意であるが、本発明の一実施形態では、2〜3年程度の損失実績データが記憶されている。
損失頻度分布生成部202は、データベース201に記憶された損失実績データを所定の期間毎にカウントし、記憶する。次いで、カウントした損失実績データ件数から年間損失発生件数を算出し、算出した年間損失発生件数を平均とするポアソン分布(損失頻度分布)を生成し、記憶する。本発明の一実施形態では、まず、四半期毎の損失実績データ件数をカウントし、記憶する。次いで、カウントした四半期毎のデータ件数からランダムに4期分(一年間分)抽出し、抽出した損失実績データ件数の合計を、年間損失発生件数とする。さらに、算出した年間損失発生件数を平均とするポアソン分布(損失頻度分布)を生成し、記憶する。また、本発明の一実施形態では、所定の期間毎にカウントした損失実績データ件数からの年間損失発生件数の算出を繰り返し行い、そのデータに基づいて損失頻度分布を生成してもよい。
高額損失頻度推定部203は、データベース201に記憶された損失実績データを損失金額の降順に並び替え、先頭から順位を付与し、記憶する。本発明の一実施形態では、上位2万件を順位付けする。次いで、損失金額と順位の関係を示す回帰曲線より、任意の高額損失の年間発生頻度を推定し、記憶する。詳細については、図6を参照して後述する。
損失規模分布生成部204は、データベース201に記憶された全ての損失実績データを抽出し、それぞれの損失金額を平均とする正規分布を生成する(標準偏差は未定)。次いで、高額損失頻度推定部203により推定された高額損失の頻度と、各損失について生成した正規分布を重ね合わせたものとの誤差が最小となるように標準偏差を決定し、損失規模分布(損失実績データ1件当たりの損失金額の分布)を生成し、記憶する。
年間損失額算出部205は、損失頻度分布生成部202により生成した損失頻度分布から年間損失発生件数を抽出し、発生件数分、損失規模分布生成部204により生成した損失規模分布からランダムに損失金額を抽出する。次いで、抽出した損失金額を合計した年間損失額を算出し、記憶する。
損失分布生成部206は、損失頻度分布生成部202による年間損失頻度の生成、及び、年間損失額算出部205による年間損失額の算出を所定の回数繰り返し、年間損失額の分布を生成し、記憶する。次いで、生成した損失分布から99.9%点(オペレーショナルリスクの値)を導出する。本発明の一実施形態では、年間損失頻度分布の生成及び年間損失額の算出を、モンテカルロシミュレーションにより100万回行い、損失分布を生成する。
図4は、本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量処理のフロー図を示し、図5は、本発明の一実施形態に係るオペレーショナルリスク計量処理の概要を示す。以下に、図4及び図5を参照して、オペレーショナルリスク計量処理の処理フローを説明する。
図4のステップ401において、損失頻度分布生成部202が、データベース201に記憶された損失実績データを所定の期間毎にカウントし、記憶する。本発明の一実施形態では、損失実績データの四半期毎の損失件数をカウントし、記憶する。
次いで、ステップ403において、高額損失頻度推定部203が、データベース201に記憶された損失実績データから任意の高額損失の年間発生頻度を推定し、記憶する。本発明の一実施形態では、損失実績データの上位2万件を順位付けし、損失金額と順位の関係を示す回帰曲線に基づいて、以下に示す回帰式(b)から任意の高額損失y(例えば、8000万円)における年間発生頻度(x)を推定し、記憶する。
Figure 2015031993
損失実績データの損失金額と順位の関係から任意の高額損失の年間発生頻度を推定する処理については、図6を参照して後述する。
次いで、ステップ405において、損失規模分布生成部204が、データベース201に記憶された全ての損失実績データを抽出し、抽出した損失実績データ及びステップ403において推定した高額損失の年間発生頻度に基いて、損失規模分布(損失データ1件当たりの損失金額の分布)を生成し、記憶する。より具体的には、まず、抽出した損失実績データのそれぞれの損失金額を平均とする正規分布を生成し(標準偏差は未定)、次いで、高額損失頻度推定部203により推定された高額損失の頻度と、各損失について生成した正規分布を重ね合わせたものとの誤差が最小となるように標準偏差を決定し、損失規模分布を生成する。図5(b)は、生成した損失規模分布を示す。
次いで、ステップ407〜411において、損失頻度分布生成部202が損失頻度分布を生成し、年間損失額算出部205が、年間損失額を算出する。より具体的には、ステップ407において、所定の期間毎にカウントした損失実績データ件数から年間損失発生件数を算出し、算出した年間損失発生件数を平均とするポアソン分布(損失頻度分布)を生成して、年間損失発生件数を抽出する。本発明の一実施形態では、四半期毎の損失件数から、重複を許してランダムに4期分(一年間分)抽出し、抽出した損失件数を合算して年間損失発生件数とする。図5(a)は、生成した損失頻度分布を示す。次いで、ステップ409において、損失頻度分布から抽出した年間損失発生件数分、損失規模分布からランダムに損失金額を抽出する。次いで、ステップ411において、抽出した損失金額を合算し、年間損失額を算出し、記憶する。
次いで、ステップ413において、年間損失額の算出を所定の回数実行したかを判定する。所定の回数実行するまで、ステップ407〜411の処理を繰り返す。本発明の一実施形態では、モンテカルロシミュレーションにより100万回、年間損失頻度分布の生成及び年間損失額の算出を繰り返す。モンテカルロシミュレーションを行うことにより、1年間の損失件数と損失実績データ1件当たりの損失額を様々なバリエーションで掛け合わせ、年間損失額を算出することができる。
年間損失額の算出を所定の回数行った後、ステップ415において、損失分布生成部206が、算出した年間損失額の分布である損失分布を生成する。図5(c)は、生成した損失分布を示す。次いで、生成した損失分布より、1年間の最大損失額(99.9%VaR)を導出する。本発明の一実施形態では、100万通り算出した年間損失額のうち、大きいほうから1000番目の年間損失額を99.9%点として、オペレーショナルリスクの値を導出する。
本発明によると、損失規模分布を生成するための高額損失頻度推定処理において、実際に発生した損失実績データのみに基づいて高額損失の発生金額を合理的に推定することができるので、従来のようなシナリオの導出やアセスメントを行わずに、損失規模分布を生成することができる。
ここで、本発明の一実施形態に係る高額損失頻度推定処理についてより詳細に説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る高額損失頻度推定処理を説明する図である。
図6(a)に示した過去の損失実績データについて、上位2万件を金額の大きいほうから並べて順位付けすると、図6(b)に示したようにグラフ化することができる。この結果、金額と順位の関係は、回帰曲線を描くことがわかる。この結果によると、
「1500万円以上の損失が、年1回起こる。」
「1400万円以上の損失が、年2回起こる。」
・・
「300万円以上の損失が、年20000回起こる。」
と考えられ、「y(金額)以上の損失が1年にx(順位)回起こる。」と考えることができる。したがって、出現頻度がk番目に大きい要素が全体に占める割合が、1/kに比例するというジップの法則に従う事象であると捉えることができ、金額と順位の関係ついて以下の回帰式(b)が得られ、図7に示すように高額のグリッド頻度を推定することができる。
Figure 2015031993
このように、本発明によると、過去一年程度の損失実績データから、任意の高額損失における年間発生頻度を推定することができる。また、推定した高額損失の頻度と、各損失実績データについて生成した正規分布を重ね合わせたものとの誤差が最小となるように標準偏差を決定し、損失規模分布(損失実績データ1件当たりの損失金額の分布)を生成することができる。なお、上記実施形態は、損失頻度の高額部分を推定するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、低額部分を推定することに用いることもできる。
以上説明したように、本発明によると、比較的少ない過去の損失実績データから合理的にリスクを推定し、その最大値(99.9%VaR)を導出し、オペレーショナルリスクを計量することができる。
101 コンピュータ装置
102 制御部
103 主記憶部
104 補助記憶部
105 入力部
106 出力部
107 ネットワークインターフェース
201 データベース
202 損失頻度分布生成部
203 高額損失頻度推定部
204 損失規模分布生成部
205 年間損失額算出部
206 損失分布生成部

Claims (4)

  1. コンピュータが、損失頻度分布と損失規模分布からオペレーショナルリスクを計量する方法において、
    損失実績データを損失金額について降順に順位を付与するステップと、
    前記順位と前記損失金額の関係を表す回帰曲線より、所定の金額以上の損失が発生する頻度である損失頻度を推計するステップと、
    前記損失頻度を用いて前記損失規模分布を生成するステップと
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記損失頻度を用いて前記損失規模分布を生成するステップは、前記損失頻度と、前記損失実績データの損失金額を平均とする正規分布を重ね合わせたものとの誤差が最小となるように標準偏差を決定して、前記損失規模分布を生成するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  4. 損失頻度分布と損失規模分布からオペレーショナルリスクを計量する装置であって、
    損失実績データを損失金額について降順に順位を付与する手段と、
    前記順位と前記損失金額の関係を表す回帰曲線より、所定の金額以上の損失が発生する頻度である損失頻度を推計する手段と、
    前記損失頻度を用いて前記損失規模分布を生成する手段と
    を備えたことを特徴とする装置。
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