発明の詳細な記載
本発明の態様によれば、治療方法、例えば痙性の治療方法;治療的有効量で移植可能組成物からチザニジンを患者に送達するための方法;リザーバ・ベースのチザニジン送達組成物;チザニジンについての皮下送達システム;及びチザニジンの皮下送達のためのキットが提供される。
本明細書において使用される場合、用語「治療的有効量」(therapeutically effective amount)とは、対象の疾病又は状態の性質及び重症度を考慮して特定の対象に投与される場合、所望する治療効果を有するであろう、それらの量、例えば標的疾患又は状態又は1つ以上のその症状を治療するか、予防するか、阻害するか、又は少なくとも部分的に阻止するか、それらの開始を遅延するか、又は部分的に予防する量を言及する。
用語「活性医薬成分」(active pharmaceutical ingredient)、「API」、「薬剤」(drug)又は「活性」(active)とは、薬剤送達組成物における医薬的活性化合物を言及するために、互換的に本明細書において使用され得る。これは、薬剤送達組成物中の他の成分、例えば実質的に又は完全に医薬的に不活性である賦形剤とは対照的である。本発明の典型的な実施形態によれば、APIはチザニジン遊離塩基である。
用語「医薬的に許容できる」(pharmaceutically acceptable)とは、本明細書において使用される場合、例えば米国連邦又は州政府の、又は動物及びより特定にはヒトへの使用のための米国薬局方又は他の一般的に認められた薬局方に列挙される規制機関により承認されることを意味する。
用語「対象」(subject)及び「患者」(patient)とは、本明細書において使用される場合、哺乳類個体、例えばヒトを言及する。
本明細書に使用される各化合物は、その化学式、化学名、省略形、等に対して互換的に論じられ得る。例えば、PTMOは、ポリ(テトラメチレンオキシド)と互換的に使用され得る。さらに、本明細書に記載される各ポリマーは、特にことわらない限り、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、等を包含する。
本明細書に及び請求項において使用される場合、用語「含む」(comprising)及び「含む」(including)とは、包括的であるか又は開放的であり、そして追加の列挙されていない要素、組成要素、又は方法段階を排除しない。従って、用語「含む」(comprising)及び「含む」(including)とは、より制限的な用語「本質的に〜から成る」(consisting essentially of)及び「〜から成る」(consisting of)を包含する。特にことわらない限り、本明細書に提供される全ての値は、所定のエンドポイントまでを含み、そして組成物の構成成分又は成分の値は、組成物中の各成分の重量%で表される。
痙性の治療
痙性は、筋肉中において自発的な動きを制御しそして増加した活性又は興奮をもたらす中枢神経系(例えば、脳又は脊髄)の一部に対する損傷に起因する、筋肉の不随意の張り、硬直又は収縮である。痙性は、ほとんどの場合、脳性まひ、多発性硬化症(MS)、身体的外傷(例えば、脳又は脊髄損傷)、脳における閉塞又は出血(例えば、脳卒中)、又は感染(例えば、髄膜炎又は脳炎)に関連する。痙性の症状、例えば、筋肉の不随意の緊張、硬直又は収縮は、わずかな筋肉の硬直から筋肉の永続的な収縮(痙縮)までの範囲でもよい。痙性のさらなる症状は、これらに限定されないが、増加した筋緊張、過敏性反射神経、痙攣を含んでもよい不随意運動(活発な及び/又は持続した不随意の筋収縮)又はクローヌス(連続した速い不随意の収縮)、疼痛、低減した機能的能力及び遅発性の運動発達、姿勢異常、及び痙縮(重度の持続する硬直及び痙攣による筋肉及び腱の永続的な収縮)が挙げられる。痙性は、常に存在するか、又はイベントトリガー型でもよく、そして日常生活活動に影響を及ぼす疼痛になるかもしれない。
チザニジンは、痙性を管理するのに効果的であるイミダゾリン中枢α2‐アドレナリン受容体アゴニストである。チザニジンは、骨格筋弛緩薬と呼ばれる薬剤のクラスであり、そして脳及び神経系における活動を遅くすることにより作用して、筋肉を弛緩させる。痙性、特に、MS、脳卒中、脳又は脊髄損傷などの状態又は損傷に関連する処置は、一般的に何ヶ月又は何年も続く。多くの現在市販のチザニジンの経口剤形(例えば、Zanaflex(登録商標))は、効果の持続性が短い(例えば、血中での半減期が2時間未満)。効果が短期間であるので、1日を通じて、痙性の緩和が必要な場合、患者は1日に数回錠剤又はカプセルを飲まなければならない。さらに、チザニジンの経口剤形を飲む患者は、その治療効果を持続させるために、特に、経口用量が、薬剤の比較的高い血漿濃度を生じるために計算される場合、1つ以上の副作用を経験するかもしれない。そのような副作用は、便秘、眩暈、眠気、ドライマウス、紅潮、疲労、虚弱、重度のアレルギー反応(発疹、蕁麻疹、掻痒、呼吸困難、胸部圧迫感、及び口、顔、唇、又は舌の腫れ)、神経症状、例えば、喜怒哀楽、気分、又は性状の変化、幻覚、筋肉痙攣の増加、筋力低下、遅い心拍、排尿困難又は膀胱制御の喪失、尿路感染、及び皮膚又は眼の黄変が挙げられる。
本発明の実施形態による痙性の1つ以上の症状の治療は、当業者に知られている1つ以上の症状の治療を包含する。上記のように痙性の症状としては、筋肉の不随意の張り、硬直又は収縮を挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない。
痙性の1つ以上の症状の治療は、しばしば何ヶ月又は何年もの間、長期続く治療を要する。本発明に係わる痙性の症状の治療は、単剤療法(すなわち、対象の唯一の痙性の薬剤として)又は補助療法(すなわち、1つ以上の他の痙性の薬剤による治療と共に又はその後、使用される)に向けられる。治療が単剤療法として使用される場合、治療は患者の初期又は「一次」(first-line)痙性療法を包含してもよい。
「治療」(treatment)とは、医薬的有効量のチザニジンが薬剤送達組成物を通して投与され、これが痙性の1つ以上の症状を阻害するか、又は少なくとも部分的に阻止するか、又は部分的に予防するか又は抑制するであろうことが意図される。例えば、治療は、筋肉の不随意の張り、硬直及び/又は収縮を制御できる治療を包含することができる。治療は、インプラントが患者に投与されるとすぐに、患者はインプラントの意図される持続期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、18ヶ月、2年、30ヶ月、又はそれ以上)、治療的有効用量を受け続けることになるという点で、特に効果的である。患者は、チザニジンが本発明の実施態様に従った薬剤送達組成物を介して投与された場合、副作用のより少ない又は低減された重症度をまた経験することができる。これは、同じ期間にわたり患者による服薬遵守および一貫した経口投与を継続する必要があり、そして望まない副作用を生じる経口剤形とは対照的である。
本発明の一態様によれば、痙性の1つ以上の症状の治療方法は、治療的有効量のチザニジンを対象に少なくとも1ヶ月の期間、全身送達するために、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物を対象に移植することを包含する。薬剤送達組成物は、少なくとも1種のポリマーを含む賦形剤により囲まれるチザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含む。
本発明の別の態様によれば、チザニジンを対象に全身送達するための方法は、少なくとも1ヶ月の一定時間、擬ゼロ次溶出速度(例えば、ゼロ次速度)で対象に提供するために、チザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含むリザーバを形成するポリマー製の速度制御賦形剤を含むリザーバ・ベースの組成物から治療的有効量のチザニジンを放出することを包含する。
別の実施形態によれば、薬剤送達組成物は、リザーバを形成するエラストマーポリマーを含む薬剤溶出速度制御賦形剤を含む。リザーバは、チザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含み、そして薬剤送達組成物は、移植可能剤形で存在する。リザーバは好ましくは、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて75−97重量%のチザニジン遊離塩基;前記少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて1−25重量%の少なくとも1つの収着促進剤;及び前記少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて0−5重量%の滑剤を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含む。組成物は好ましくは、約100〜約700μg/日の目標範囲で対象に治療的有効量のチザニジンを送達する。
チザニジンの塩形態
チザニジン塩酸塩は、現在、経口使用のための錠剤形(Zanaflex(登録商標))で市販されており、そして痙性の管理のための短期間作用型の薬剤である。短期間の効果のため、痙性の緩和が最も重要な場合、Zanaflex(登録商標)の治療は、日常活動及び時間が治療に確保される。8mgのZanaflex(登録商標)の用量が、痙性を有する患者における筋緊張を低減する。効果は、一般的に、約1〜2時間で最大であり、そして3〜6時間の間で消える。服薬は、必要に応じて、6〜8時間で繰り返すことができ、最大24時間で3回である。
本発明の開発の間、チザニジンHClが移植可能な薬剤送達組成物にAPI塩として使用される場合、インビトロでの溶出速度は、試験したすべてのポリウレタンに関して100μg/日未満であった(例えば、以下の実施例3及び図6を参照)。従って、チザニジンHClはチザニジンの経口剤形のための好ましい塩形態にされて来たが、本発明の移植可能薬剤送達組成物に配置される場合、適切な塩形であることは証明しなかった。しかしながら、出願人は、チザニジン遊離塩基がチザニジンHClの代わりに移植可能薬剤送達組成物においてAPIに使用された場合、より少ないAPI充填、例えば、250mgのチザニジン遊離塩基対380mgのチザニジンHClでさえ、インプラントからの薬剤の放出が、約10〜15倍高いことを見出した(例えば、図6及び7を参照)。従って、出願人は、チザニジン遊離塩基が、特にチザニジンHClに比較して、新規投与経路に、すなわち治療的有効量のチザニジンを送達できる移植可能薬剤送達組成物に使用され得るチザニジンの形態として、予想外に有益な特性を有することを発見した。
リザーバ・ベースの薬剤送達組成物
薬剤送達組成物は、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物である。本明細書において使用される場合、「リザーバ・ベースの組成物」(reservoir-based composition)とは、実質的に又は完全に閉塞され、包囲され、又は容器に入れられた中空空間又はリザーバを有する組成物を包含することが意図され、ここで中空空間又はリザーバは、少なくとも1つの離散性固体剤形により、少なくとも部分的に充填されている。
本発明の一実施形態によれば、薬剤送達組成物は、リザーバを形成するエスストマーポリマーを含む薬剤溶出速度制御賦形剤を含み、そしてリザーバはチザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含む。リザーバを形成するエラストマーポリマーは、少なくとも1つの離散性固体剤形が離れて形成される(すなわち、リザーバを形成するエラストマーポリマー及び少なくとも1つの離散性固体剤形は、お互い結合される2つの「層」ではなく;むしろ、リザーバを形成するエラストマーポリマーは別々に形成され、そして少なくとも1つの離散性固体剤形は、それがリザーバ中に充填される場合、エラストマーポリマーと接触して配置される)。
リザーバ・ベースの組成物は、本明細書において使用される場合、マトリックス・ベースの組成物とは対照的である。図3に示されるように、薬剤リザーバは、リザーバ部分120及び速度制御部分(賦形剤110)を含むが、一方マトリックス・ベースのインプラントは、マトリックス材料130のみからなり、薬剤はそこに包含される。言い換えると、リザーバシステムにおいては、薬剤は、あるタイプの速度制御材料(例えば、壁、膜又はケーシング)内に含まれるか、又は囲まれる。マトリックスシステムにおいては、薬剤は、しばしば、対象に活性物質を放出するために腐食するか又は分解する、あるタイプのマトリックス、しばしばポリマー内に結合される。
従って、2種のタイプのシステム間にいくつかの主要差異が存在する。リザーバ・ベースのシステムは、かなり高い薬剤の充填を可能にするが(例えば、最大98%程度)、一方、マトリックス・ベースのシステムはかなり含有量が少ない(例えば、最大25%程度)。より多くの薬剤を充填するのが有益であるが、そうすると薬剤の過剰摂取、あるいは周囲を囲んでいる材料が破損または破壊した場合、対象中へ大量放出するリスクが高まるので危険でもある。さらに、本発明のリザーバ・ベースの組成物は、活性物質の放出の擬ゼロ次速度(例えば、ゼロ次速度)を可能にする。対照的に、マトリックス・ベースのシステムは、一次放出速度を提供する。一次速度は、初期放出速度が高かったものが迅速かつ経時的に減衰または減少するという特徴があり得る。
本明細書において使用される場合、用語「擬ゼロ次」(pseudo-zero order)又は「擬ゼロ次速度」(pseudo-zero order rate)とは、APIのゼロ次、ほぼゼロ次、実質的にゼロ次、又はAPIの制御された又は持続性放出を言及する。ゼロ次放出プロフィールは、単位時間当たりの一定量のAPIの放出により特徴づけられ得る。擬ゼロ次放出プロフィールは、単位時間当たりの比較的一定量のAPIの放出(例えば、平均値の40%、30%、20%又は10%以内)に、ゼロ次放出を近似することにより特徴づけられ得る。擬ゼロ次速度下で、組成物は最初に、所望する治療効果を生成する量のAPIを放出し、そして長期間(例えば、少なくとも1ヶ月、6カ月、1年、又は1年以上)にわたって、治療効果のレベルを維持する他の量のAPIを、徐々に且つ継続的に放出する。ほぼ一定レベルのAPIを身体において維持するために、APIは、APIが代謝され、及び/又は身体から排泄される量を補充する速度で組成物から放出され得る。定常状態に到達する前、ある初期時間(例えば、ほぼ14日の前、図4、5及び7に示されるように、目標範囲に到達する前、ランプアップ(ramp up)又は初期スパイク)が存在することは、当業者により理解され、「擬ゼロ次」の定義に従うものである。
特定の理論に縛られることを望まないが、リザーバ内のAPIの濃度は「無限」である(例えば、リザーバは無限の供給源として作用するが、しかしその濃度が、所定の放出期間中、活性成分の量により実質的に制限される)ような濃度勾配が発生すると考えられ、そして薬剤送達組成物外の濃度はゼロである(例えば、対象が底なし沼のような働きをし、そこでは、常に対象の身体、例えば循環器、リンパ系、等により、活性成分が組成物から奪われる)と考えられる。さらに、賦形剤110(例えば、活性物を通過させる壁)は、定常状態で活性成分により完全に飽和するようになる。従って、この勾配により、賦形剤中へ収着し、ポリマー壁を介して溶解および拡散し、そして次に、対象へ放出するために脱着するというAPIの「無限」供給が可能になる。賦形剤110の選択が、薬剤の擬ゼロ次放出をもたらす一助となり得る。制限されることを望まないが、薬剤の放出は賦形剤からの脱着に依存しないと考えられる。
剤形
薬剤送達組成物は、少なくとも1種のAPIを含む少なくとも1つの剤形を含む。本発明の一実施形態によれば、薬剤送達組成物は、少なくとも1つのポリマーを含む賦形剤により囲まれるチザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含む。
本明細書において使用される場合、用語「離散性固体剤形」(discrete solid dosage form)とは、固体の形態で存在する任意の剤形を包含することが意図される。この固体剤形は、任意の凝集固体形態(例えば、圧縮製剤、ペレット、錠剤、等)を包含することができる。固体剤形は、当業者に公知の任意の適切な方法(例えば、圧縮、ペレット化、押出)により調製され得る、APIを含む固体又は塊状物を包含することができる。
固体剤形は、リザーバ内に1つ以上の剤形が含まれる「離散性」(discrete)である。言い換えれば、離散性固体剤形は、ポリマー製の速度制御賦形剤とは別のものである1つ以上の固体製剤を含む。典型的な実施形態によれば、離散性剤形は、全リザーバ又は空洞を満たさない(例えば、固体剤形は実質的に円筒形状であり、そしてリザーバは実質的に円筒形状である)。例えば、固体剤形を周囲の賦形剤と一緒に同時押出して固体剤形に全空洞を充満させる必要はない。
本発明の一実施形態によれば、薬剤送達組成物中の離散性固体剤形(すなわち、離散性固体剤形のすべて)は、合計約100mg〜約600mgのチザニジン遊離塩基を含む。例えば、離散性固体剤形は、約150mg〜約400mgのチザニジン遊離塩基、又は約200mg〜約300mgのチザニジン遊離塩基を含むことができる。
離散性固体剤形は、任意の適切な形状及び任意の適切な量のものであり得る。本発明の一実施形態によれば、離散性固体剤形は、円筒形状である。本発明の別の実施形態によれば、離散性固体剤形は、実質的に球状である。離散性固体剤形は、「実質的には球状」であり得、ここでその離散性剤形は、最長半径が剤形の最短半径にほぼ等しいことにおいて球状又はほぼ球状である。例えば、剤形の形状は、約10%を超えて完全な球状から逸脱できない。他の実施態様によれば、離散性固体剤形は、1つ以上のペレット(例えば、2〜12個のペレット)を含む。離散性固体剤形の数は、放出速度に比例してもよい。言い換えれば、より高い数の剤形は、より少ない数の剤形よりも、高い平均溶出速度をもたらすことができる。従って、高い溶出速度を得るためには、より多くの離散性固体剤形(例えば、7〜12個のペレット)を含むことが好ましい。
離散性固体剤形(例えば、ペレット)の数は、各固体剤形に含まれるチザニジン遊離塩基の量に依存して変化することができる。例えば、各ペレットは、約20mg〜約60mgのチザニジン遊離塩基、又は約30mg〜約55mgの間のチザニジン遊離塩基、又は約40mg〜約50mgの間のチザニジン遊離塩基を含むことができる。
離散性固体剤形は、チザニジン遊離塩基、及び任意には、他の活性医薬成分を含む。チザニジンは、イミダゾリン中枢α2アドレナリン受容体アゴニストであり、5‐クロロ‐N‐(4,5‐ジヒドロ‐1H‐イミダゾール‐2‐イル)ベンゾ[C][1,2,5、]チアジアゾール‐4‐アミンとしても知られており、そして次の一般式を有する。
本明細書におけるチザニジンの送達、放出又は溶出についての参照は、チザニジン遊離塩基及び/又はその活性代謝物を含んでもよい。本発明の組成物中のチザニジン遊離塩基の量は特に制限されるものではないが、しかし好ましくは、固体剤形の約75〜97重量%、又は固体剤形の85〜95重量%(例えば、約88重量%)の程度である。離散性固体剤形は任意には、少なくとも1つの他の活性医薬成分を含むことができる。
離散性固体剤形はまた、収着促進剤を含むことができる。本明細書において使用される場合、用語「収着促進剤」(sorption enhancer)とは、薬剤送達組成物からのAPIの放出を改善する化合物を包含することが意図される。特定の理論に縛られることを所望しないが、収着促進剤は、対象からリザーバ中に水又は他の流体を引き込み、離散性固体剤形を崩壊するか又は分解し、及び/又はAPIを賦形剤の内壁に接触させるか又は接触したままの状態にさせることにより、薬剤送達組成物からのAPIの放出を改善することができる。そのような機構は、例えば図1に示される。図1は、速度制御賦形剤110を表す。図の左側のリザーバに位置するAPIは、リザーバから賦形剤へ収着112される。次に、APIは、賦形剤110を通り抜ける。次に、APIは賦形剤から対象中に脱着114される。
任意の適切な収着促進剤が、当業者により選択され得る。特に適切な収着促進剤としては、次のものを挙げることができる:負に帯電したポリマー、例えばクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム誘導体(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、架橋されたポリアクリル酸(例えば、CARBOPOL(登録商標))、コンドロイチン硫酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、中性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びそれらの組合せ。典型的な実施形態によれば、収着促進剤は、クロスカルメロースナトリウムである。収着促進剤の量は、固体剤形の約1〜25重量%、固体剤形の約2〜20重量%、固体剤形の約2〜12、固体剤形の約5〜10重量%(例えば、固体剤形の約5重量%又は約10重量%)の程度で存在することができる。
収着促進剤の量は、溶出速度に比例する。言い換えれば、薬剤組成物におけるより高い重量%の収着促進剤は、より低い重量%の収着促進剤よりも高い平均溶出速度をもたらすことができる。従って、より高い溶出速度を得るためには、より高い重量%(例えば、8〜25重量%)の収着促進剤を含むことが好ましい。
離散性固体剤形はまた、他の成分が溶出速度に悪影響を及ぼさない限り、それらの成分も含むことができる。他の適切な成分は、例えば、滑剤、賦形剤、保存剤、等を包含することができる。滑剤は、周知のように、離散性固体剤形を形成するためにペレット化又は錠剤化工程に使用され得る。適切な滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ポリエチレングリコール及び同様のものを挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない。任意の追加の成分の量は特に制限されないが、しかし好ましくは、固体剤形の約5重量%以下、及び最も好ましくは、固体剤形の約3重量%以下、特に好ましくは、固体剤形の約2重量%又はそれ以下の程度である。
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの離散性固体剤形は、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約75〜97重量%のチザニジン遊離塩基;少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約1〜25重量%の少なくとも1つの収着促進剤;及び少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約0〜5重量%の滑剤を含むか、それらから実質的に成るか、又はそれらから成る。例えば、少なくとも1つの離散性固体剤形は、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約85〜95重量%(例えば、88重量%)のチザニジン遊離塩基;少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約5〜20重量%(例えば、10重量%)のクロスカルメロースナトリウム;及び少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて約0〜5重量%(例えば、2重量%)のステアリン酸を含むか、それらから実質的に成るか、又はそれらから成る。好ましくは、薬剤送達組成物中の各成分は、痙性の1つ以上の症状の治療のために効果的な量で供給される。
賦形剤
離散性固体剤形は、賦形剤により囲まれる。言い換えれば、離散性固体剤形は、賦形剤により、実質的に又は完全に囲まれ、包まれ、又は閉塞される。本発明によれば、APIの放出を可能にするために穴を必要とする浸透圧システムとは異なり、APIの流出又は体液の進入を可能にするためには賦形剤に穴も又は孔も存在しない。さらに、装置からAPIを強制するのに圧力を要する浸透圧システムとは異なり、本発明の薬剤送達組成物内での圧力の上昇はない(又は無視できる)。
本発明の一実施形態によれば、賦形剤は実質的に又は完全に非多孔性である。「実質的に非多孔性」(substantially nonporous)とは、約10%、約5%又は約1%以下の気孔率又は空隙率を有する材料を言及する。特に、賦形剤は、薬剤送達組成物からのAPIの流出を可能にする、物理的孔又はマクロ孔が存在しない実質的に非多孔性である。別の実施形態によれば、賦形剤は実質的に水に不溶性である。溶解性とは、溶媒が所定の温度で溶解し得る溶質のすべてを溶解した場合の溶質の濃度(例えば、平衡状態での飽和溶液における溶質の濃度)である。本明細書において使用される場合、用語「実質的に水に不溶性」(practically insoluble in water)とは、米国薬局方−国民医薬品(USP−NF)定義における定義と一致し、これは、溶質1部に対し溶媒が10,000部超(例えば、10,000ml超の水中では、1gの賦形剤)ということである。
特定の理論に縛られることを所望しないが、賦形剤(例えば、壁、膜、層)を介する濃度勾配は、APIの継続的放出を可能にすると思われる。図1に示されるように、リザーバから速度制御賦形剤110へのAPIの収着112が生じる。次に、APIは、賦形剤110中に溶解して十分に飽和し、賦形剤110中を介して拡散し、そして次にAPIは賦形剤から対象内へと脱着114する。従って、ここの勾配により、賦形剤中へ収着し、賦形剤を介して拡散し、そして対象中へ脱着するというAPIの「無限」供給が可能になり、これにより、選択される賦形剤に基づいた薬剤の擬ゼロ次放出をもたらす一助となり得る。従って、賦形剤はまた、本明細書において、薬剤溶出速度制御賦形剤または速度制御賦形剤とも呼ぶ。「速度制御賦形剤」(rate−controlling excipient)とは、APIの溶出速度を制御する材料を包含するという意図である。換言すれば、ポリマー賦形剤が薬剤送達組成物を覆うと、異なる放出速度、すなわち速度制御賦形剤を有さない同一の組成物からのAPIの放出に比べ制御された放出速度(例えば、擬ゼロ次)がもたらされるということである。
賦形剤は、リザーバの形状を形成する。リザーバは、任意の適切なサイズ及び形状のものであっても良い。典型的な実施形態によれば、賦形剤は、実質的に円筒形状である。本明細書において使用される場合、用語「円筒形状」(cylindrical)又は「円筒形状」(cylindrically shaped)とは、円筒形状を少なくとも実質的に有することを意味するために互換的に使用され得る。本明細書において使用される場合、用語「円筒」(cylinder)とは、次のものを包含し、そして言及するが、但しそれらだけには限定されない:円形の断面を有する円柱;楕円形の断面を有する楕円形円筒;任意の断面を有する一般化された円筒;端面が互いに平行でなく、及び/又は円筒の軸に対して垂直でない、斜方円筒;及びそれらの円錐及び円錐台形類似体。本発明の一態様によれば、中空管は、実質的に一定の断面積及び2つの実質的に等しいサイズの円形端を含むことができる。円筒形状は、リザーバ(例えば、薬剤送達組成物の外側部分)を形成する賦形剤の形状を決定する。円筒形状の賦形剤の実施形態が、例えば図2に示されている。好ましくは、円筒状中空管の寸法は、できるだけ正確であるべきである(例えば、管の長さに沿って一定の形状及び寸法、特に一定の円形断面)。リザーバは、活性物質及び送達の位置に依存して任意の適切なサイズのものであり得る。例えば、組成物は、約2mm〜約5mmの直径(例えば、約2.7mmの直径又は約4mmの直径)及び約6mm〜約70mmの長さ、例えば約20mm〜約50mmの長さのサイズの範囲であり得る。
賦形剤は、少なくとも1種のポリマーを含む。任意の適切なポリマーを、当該ポリマーにより、例えばインプラントが患者に存在する意図した期間の間、擬ゼロ次速度で治療的有効量のAPIの対象への送達が可能になる限り、当業者により選択されてもよい。一実施形態によれば、ポリマーは、熱可塑性エラストマーを含む。本明細書において使用される場合、「熱可塑性」(thermoplastic)、「熱可塑性エラストマー(TPE)」(thermoplastic elastomers(TPE))又は「熱可塑性ゴム」(thermoplastic rubbers)とは、熱可塑性及びエラストマー性質の両者を有する材料から成る、コポリマー、又はポリマーの物理的混合物(例えば、プラスチック及びゴム)の種類を示すために使用され得る。熱可塑性エラストマーポリマーにおける架橋は、弱双極又は水素結合を含むことができ、又は架橋は材料の相の一方で起こる。コポリマーの種類は、例えばスチレンブロックコポリマー、ポリオレフィンブレンド、エラストマーアロイ、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミドを包含する。
本明細書において使用される場合、「エラストマー」(elastomer)又は「エラストマーポリマー」(elastomeric polymer)とは、エラストマー性質(例えば、拡張してから元の形状に戻るという傾向)を有するポリマー(ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー及びそれらの混合物)を包含することを意図する。言い換えれば、ポリマー主鎖は、1つ以上のエラストマーサブユニット(例えば、エラストマー軟質セグメント又はブロック)を含むことができる。一実施形態によれば、エラストマーポリマーは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリシリコーン又はそれらのコポリマーを含む。従って、エラストマーポリマーは、ポリウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリシリコーン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、又はそれらの組合せを含むことができる。
ポリマーは、当業者に知られている任意の適切な手段又は技法により形成され得る。例えば、ポリマーは、モノマー、ポリマー前駆体、プレポリマー、ポリマー、等から形成され得る。ポリマー前駆体は、ポリマーを形成するために反応されるか又は硬化され得るモノマー及びオリゴマー物質を包含することができる。ポリマーは、任意の適切な構成成分を用いて合成され得る。
本発明の一実施形態によれば、ポリマーは、ポリウレタン(例えば、ウレタン結合、−RNHCOOR’−を含む)を含む。ポリウレタンは、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリアミド系ポリウレタン、ポリシリコーン系ポリウレタン、又は同様のものを含むことができる。ポリウレタンは例えば、ポリオール(例えば、複数のヒドロキシル又はアルコール官能基、−OHを含む)、イソシアネート(例えば、イソシアネート基、−N=C=Oを含む)、及び任意の鎖延長剤、触媒、及び他の添加物から形成される。
適切なポリオールは、例えばジオール、トリオール、等を含むことができる、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、及び同様のものを包含する。ポリエーテルポリオールは例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)ポリオール(例えば、ポリオキシエチレンジオール及びトリオール)、ポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、及び同様のものを包含することができる。他のポリオールは、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール及び同様のものを包含することができる。
例えば、ポリオールセグメントは、1つ以上の下記式により表され得る:
O−(CH2−CH2−CH2−CH2)x−O(式1)
−[O−(CH2)n]x−O−(式2)
O−[(CH2)6−CO3]n−(CH2)−O(式3)
式(1)は、TECOFLEX(登録商標)ポリウレタンを生成するためのポリオールを表すことができる適切なポリエーテル系ポリオールを表すことができる。式(2)は、TECOPHILIC(登録商標)ポリウレタンを生成するためのポリオールを表すことができる適切なポリエーテル系ポリオールを表すことができる。式(3)は、CARBOTHANE(登録商標)ポリウレタン(それらのすべては、Wickliffe, Ohioにオフィスを有するLubrizol Corporationから入手できる)を生成するためのポリオールを表すことができる適切なポリカーボネート系ポリオールを表すことができる。ポリオールはまた、1つ以上のタイプのポリオールセグメントの混合物も包含することができる。
適切なイソシアネートは、例えば、脂肪族及び脂環式イソシアネート、及び芳香族イソシアネート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)及び4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、並びにメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)を包含することができる。
適切な鎖延長剤は例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール(1,4−BDO又はBDO)、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール及びヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)を包含することができる。
本発明の一実施形態によれば、ポリマーはポリエーテル系ポリウレタンを含む。例えば、ポリマーは、ポリ(テトラメチレンオキシド)、重合された4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及び1,4−ブタンジオールを含む脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンであり得る。典型的な適切なポリエーテル系ポリウレタンは、Lubrizol Corporationから入手できるTECOFLEX(登録商標)ポリマーを包含する。例えば、TECOFLEX(登録商標)ポリマーは、重合された4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及び1,4−ブタンジオールから成る硬質セグメント、及びマクロジオールポリ(テトラメチレンオキシド)から成る軟質セグメントを有する脂肪族ブロックコポリマーを包含する。一実施形態によれば、TECOFLEX(登録商標)ポリマーは、TECOFLEX(登録商標)EG−93Aポリウレタンを含む。別の実施形態によれば、TECOFLEX(登録商標)ポリマーは、TECOFLEX(登録商標)EG−880Aポリウレタンを含む。
本発明の別の実施形態によれば、ポリマーは、ポリエーテル−アミド(例えば、熱可塑性ポリ(エーテル−ブロック−アミド)、例えばPEBA、PEB、TPE−A、及びPrussia, PAのKingに本社を置く、Arkema Chemicals Inc.から入手できるPEBAX(登録商標)ポリエーテル−アミドとして商業的には知られている)を含む。合成は例えば、ポリエーテルブロック(例えば、ジオール、例えばポリオキシアルキレングリコール)と、ポリアミドブロック(例えば、カルボン酸末端アミドブロック、例えばジカルボン酸ブロック)との間の重縮合(熱可塑性コポリマーをもたらす)により、溶融状態で実施され得る。長鎖分子は、多くのブロックから成り、ここでポリアミドがポリマーに剛性を与え、そしてポリエーテルがポリマーに柔軟性を与える。従って、ポリエーテルは、エステル基を介して軟質ポリエーテル(PE)ブロックに共有結合される直鎖硬質ポリアミド(PA)ブロックから成ることができる。ポリエーテル−アミドはまた、ポリエーテル及びポリアミドブロックの溶融重縮合を促進する触媒(例えば、金属Ti(OR)4)を介して合成され得る。それらのブロックコポリマーの一般構造式は、次の通りに示され得る:
ポリアミドブロックは、ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、等)を包含する種々のアミドを包含する。ポリエーテルブロックはまた、種々のポリエーテル、例えばポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)、ポリエチレンオキシド(PEO)及び同様のものを包含する。ポリエーテル:ポリアミドブロックの比は、80:20〜20:80(PE:PA)であり得る。ポリエーテルの量が上昇するにつれて、より柔軟でより柔らかな材料が得られる。
例えば、熱可塑性エラストマーは、TECOFLEX(登録商標)ポリウレタン、CA BORTHANE(登録商標)ポリウレタン、PEBAX(登録商標)ポリエーテル−アミド、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。例えば、エラストマーは、TECOFLEX(登録商標)EG−93A ポリウレタン、TECOFLEX(登録商標)EG−80Aポリウレタン、TECOFLEX(登録商標)EG−85A ポリウレタン、PEBAX(登録商標)2533ポリエーテル−アミド、PEBAX(登録商標)3533ポリエーテル−アミド、CARBOTHANE(登録商標)PC−3585A ポリウレタン、及びそれらの組み合わせを包含することができる。
TECOFLEX(登録商標)ポリウレタン及びCARBOTHANE(登録商標)ポリウレタンは、2011年付けのEngineered Polymers for Medical & HealthcareについてのLubrizolのパンフレットに記載されており、その開示は、その全体を参照により本明細書に組込まれる。例えば、TECOFLEX(登録商標)脂肪族ポリエーテルポリウレタンは、次の特性を有する:
CARBOTHANE(登録商標)脂肪族ポリカーボネートポリウレタンは、例えば、次の特性を有する:
ポリマーは、任意の適切な技法、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形、回転成形を用いて加工され得る。例えば、ポリマーを、押出または射出成形して2つの開放端を有する中空管を製造してもよい(例えば、図2を参照のこと)。中空管は、離散性固体剤形により充填され得る。開放端は、密封され、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物が形成される。第1の開放端は、離散性固体剤形により管を満たす前、密封され、そして管がすべての離散性固体剤形により満たされた後、第2の開放端が密封され得る。管は、当該分野において知られている任意の適切な手段又は技法を用いて密封される。例えば、端は、封止され、追加のポリマーにより満たされ、ヒートシールされるか、又は同様にされ得る。管は、離散性固形剤形が出ないよう、永久的に密封するべきである。また、端は、活性物質が移植後に流出してしまうような穴または開口がないよう、適切に密封するべきである。
賦形剤の壁厚は、所望する溶出速度をもたらすように選択され得る。壁厚は、溶出速度に反比例する。従って、壁厚が厚いほど、遅い溶出速度をもたらすことができる。賦形剤は、約0.05〜約0.5mm、又は約0.1〜約0.3mm(例えば、約0.1mm、約0.2mm又は約0.3mm)の平均厚を有する壁を形成することができる。
本発明の一実施形態によれば、薬剤送達組成物は、治療的有効量のAPIを放出するのに、インビボでの賦形剤の浸食又は分解を必要としない。他方では、賦形剤は、移植可能組成物の意図された存続期間、インビボで実質的に浸食性ではなく、及び/又は実質的に分解できない。本明細書において使用される場合、「浸食」(erosion)又は「浸食可能」(erodible)は、生物学的環境の作用により、劣化され、分解され、及び/又は消化され得ることを意味するために互換的に使用される。「実質的に浸食性ではない」(not substantially erodible)化合物は、時間と共に(例えば、インプラントの存続期間)、実質的に劣化、分解及び/又は消化されない。他方では、その材料は、APIを放出するために、「実質的に浸食性ではなく」(not substantially erodible)、又は「浸食を必要としない」(does not require erosion)。言い換えれば、化合物は時間と共に浸食するが、しかしAPIは、材料の浸食によっては、実質的に放出されない。「分解」(degradation)又は「分解可能」(degradable)に関しては、それらは、例えば生きている組織、例えばヒト組織において一部又は完全に溶解するか又は分解できることを意味することを意図している。分解可能化合物は、任意の機構、例えば加水分解、触媒及び酵素作用により分解され得る。従って、「実質的に分解できない」(not substantially degradable)化合物は、インビボで、時間と共に(例えば、インプラントの存続時間)、実質的に溶解も又は分解もしない。他方では、材料は、APIを放出するために、「実質的に分解できず」(not substantially degradable)又は「分解を必要としない」(not requiring degradation)。言い換えれば、化合物は時間と共に分解することができるが、しかしAPIは、材料の分解によっては、実質的に放出されない。
移植
痙性の1つ以上の症状を治療するための方法は、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物を対象中に移植することを包含する。用語「対象」(subject)又は「患者」(patient)とは、本明細書において使用される場合、哺乳類対象、例えばヒトを言及する。対象は好ましくは、痙性を有するとして診断され、及び/又は痙性の1つ以上の症状を示すヒトである。
薬剤送達組成物は、当業者に知られている任意の適切な手段及び技法を用いて、対象のいずれか適切な領域に移植され得る。例えば、組成物は、例えば上腕の裏側、又は上背部(例えば、肩甲骨領域における)で皮下移植され得る。本明細書において使用される場合、用語「皮下」(subcutaneous)又は「皮下的に」(subcutaneously)又は「皮下送達」(subcutaneous delivery)とは、皮膚中又は皮膚下、皮下脂肪層、又は筋肉内に直接供給することを意味する。薬剤送達組成物は、任意の適切な装置又は技法を用いて、皮下送達され得る。一実施形態によれば、薬剤送達組成物は、対象の腕の皮下に配置される。皮下投与の別の部位がまた、医薬的に許容できる量のAPIが本発明に従って対象中に放出される限り、使用され得る。好ましくは、薬剤送達組成物は、移植の部位から大きく移動すべきではない。身体中に組成物を移植するか又は他方では、位置決定するための方法は、公知である。除去及び/又は交換はまた、当該分野において知られている適切な用具及び方法を用いても達成され得る。
移植されると、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物は、長期間(例えば、少なくとも1ヶ月の期間)、擬ゼロ次速度(例えば、ゼロ次速度)で対象に治療的有効量のチザニジンを全身送達することができる。本明細書において使用される場合、用語「全身」(systemic)又は「全身的に」(systemically)とは、循環、血管及び/又はリンパ系(例えば、全身)へのAPIの導入を意味する。これは、治療が身体内の特定の、限定された、局所領域に施される局所治療とは対照的である。従って、APIは、薬剤送達組成物を対象に皮下移植することにより、対象に全身送達される。
治療的有効量のチザニジンが好ましくは、擬ゼロ次速度で対象に送達される。擬ゼロ次とは、ゼロ次、ほぼゼロ次、実質的にゼロ次、又は制御された又は持続されたチザニジンの放出を言及する。擬ゼロ次放出プロフィールは、単位時間当たり比較的一定量のチザニジンの放出(例えば、平均値の約30%以内)でゼロ次放出を近似するという特徴があり得る。従って、組成物は、最初に、所望する治療効果を生みだす量のチザニジンを放出し、そして意図される期間(例えば、約1年)にわたり、徐々に且つ継続的に、治療効果レベルを維持するための異なる量のAPIを放出してもよい。身体においてほぼ一定レベルのチザニジンを維持するために、チザニジンが、代謝され、及び/又は身体から排泄されるチザニジンの量を補充するような速度で組成物から放出され得る。
特定の理論に拘束されることを所望しないが、リザーバ・ベースの薬剤組成物は、賦形剤の膜又は壁を介して活性物質(例えば、チザニジン)を放出することにより作動すると考えられる。言い換えれば、チザニジンは、例えば図1に示されるように、賦形剤を介して拡散する。従って、リザーバから速度制御賦形剤110への活性成分の収着112が生じる。チザニジンは定常状態で賦形剤110を十分に飽和し、そしてチザニジンが賦形剤を介して拡散し、そして次に、擬ゼロ次速度で賦形剤から対象内に脱着114される。
治療的有効量のチザニジンが、APIについての1日平均溶出速度の最大値〜最小値の目標範囲で、対象に送達され得る。本明細書において使用される場合、用語「溶出速度」(elution rate)とは、経口用量の速度と比経口生物学的利用能率(fractional oral bioavailability)との乗数に基づくAPI送達速度を指し、次の通りに示され得る:
経口用量×比経口生物学的利用能率%=目標溶出速度(mg/日)
溶出速度は、例えば1日等の所定の時間の平均に基づく平均速度(すなわち、1日平均溶出速度)であり得る。従って、1日溶出速度又は1日平均溶出速度は、1日の目標経口用量と経口生体利用効率との乗数として表され得る。例えば、20〜40%のおおよその経口生物学的利用能率及び2mg/日〜12mg/日の1日の目標経口用量を有する、チザニジンHClの経口剤形の場合、チザニジンについての1日の目標溶出速度は、約400μg/日〜約4,800μg/日である。
最大及び最小値は、それぞれ、1日の最大平均溶出速度及び1日の最小平均溶出速度を言及する。医薬的有効投与量のために必要とされる最小値は、APIの経口投与バージョンについてのトラフ値(trough value)(例えば、経口製剤について、血液/血漿濃度に基づく)に相関されるか、又はそのトラフ値から決定され得る。同様に、最大値は、APIの経口投与バージョンについてのピーク値(例えば、経口投与量が最初に投与される場合、最大血液/血漿濃度、又は医薬的毒性量)に相関されるか又はピーク値から決定され得る。言い換えれば、目標範囲は、同じ活性物質を含む同等の経口剤形について血液/血漿濃度に基づいて決定され得る、それぞれ、1日の最大及び最小平均溶出速度間の範囲である。例えば、チザニジンHClの経口剤形は、100μg/日のおおよその最小溶出速度を有し、そして10,000μg/日のおおよその最大溶出速度を有する。
本発明の一実施形態によれば、チザニジンは、約100μg/日〜約10,000μg/日の目標範囲で対象に送達される。例えば、チザニジンは、約100μg/日〜約5,000μg/日、又は約200μg/日〜約4,000μg/日、又は約300μg/日〜約3,000μg/日、又は約400μg/日〜約2,000μg/日の目標範囲で対象に送達される。チザニジンを含む組成物についての溶出速度を決定するために実施例に示される試験方法は、37℃でPBS又は0.9%生理食塩水から成る溶出槽にインプラントを配置することを包含する。次に、溶出媒体を毎週交換し、所定の持続期間、HPLCにより分析される。
本発明の薬剤送達組成物は、長期持続性である。言い換えれば、チザニジンは、長期間(例えば、擬ゼロ次速度で)対象に送達される。例えば、チザニジンは、少なくとも約1ヶ月(約1ヶ月又はそれ以上)、少なくとも約3ヶ月(約3ヶ月又はそれ以上)、少なくとも約6ヶ月(約6ヶ月又はそれ以上)、少なくとも約1年(約1年又はそれ以上)、少なくとも約18ヶ月(約18ヶ月又はそれ以上)、少なくとも約2年(約2年又はそれ以上)、少なくとも約30ヶ月(約30ヶ月又はそれ以上)、又はそれらの範囲内の任意の期間、対象に送達される。図4、5及び7は、例えば、数週間にわたっての、擬ゼロ次速度でのチザニジンのインビトロ溶出速度を示す。
一実施形態によれば、痙性の1つ以上の症状の治療方法は、約1ヶ月〜約2年の期間、約100μg/日〜約10,000μg/日の平均1日溶出速度で、治療的有効量のチザニジンを対象に全身送達するために、対象中にリザーバ・ベースの薬剤送達組成物を移植することを包含し、ここで前記薬剤送達組成物は、少なくとも1種のポリマーを含む賦形剤により囲まれるチザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含み、前記少なくとも1つの離散性固体剤形は、75〜97重量%のチザニジン遊離塩基(例えば、約88%のチザニジン遊離塩基)、1〜25重量%の少なくとも1つの収着促進剤(例えば、約10%のクロスカルメロースナトリウム)、及び0〜5重量%の滑剤(例えば、約2%のステアリン酸)を含み、それらから実質的に成り、又はそれらから成る(すべては、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づく)。
移植前に、薬剤送達組成物は、任意の適切な加工、例えば殺菌(例えば、γ線による)、熱処理、成形及び同様の手段を施してもよい。さらに、薬剤送達組成物は、当該分野において知られている技法により調整されるか、又はプライミングされ得る。例えば、薬剤送達組成物は、媒体(例えば、水性媒体、例えば生理食塩水)に配置され得る。媒体、プライミング温度、及びプライミングの期間は、移植後、活性物質の放出を最適化するよう調節され得る。
痙性の治療の有効性
本明細書に記載される治療方法は、痙性の1つ以上の症状を、治療し、発症を遅延し、抑制し、又は阻害することができる。所望の治療に影響を与え又は治療効果を生み出すのに十分な医薬的有効量又は治療量のチザニジンが、投与されるべきである。例えば、痙性の1つ以上の症状(例えば、筋肉の不随意の張り、硬直又は収縮)を阻害するか又は抑制するのに効果的な量のチザニジンの放出が所望される。医師は、当業者に公知の技法を用いて、治療の有効性を決定できる(すなわち、チザニジンが痙性の症状を治療するために作動することを知ることができる)。
例えば、対象がチザニジンの治療計画を開始した後、臨床医は、例えば、Ashworth Scale又はModified Ashworth Scale(これらは、可動域に基づく筋緊張の客観的なスコアを提供する)などの評価尺度をして臨床検査を行い、強度及び反射を評価してもよい。あるいは、臨床医は、Fugl‐Meyer Assessment(これは、運動機能、バランス、感覚及び関節機能に基づく客観的なスコアを提供する)などの評価を使用して機能的測定を行ってもよい。前述の評価、又は痙性の症状を評価するために当該分野において使用される他の評価に従って、臨床医により測定される場合、対象の症状の改善が、使用されるチザニジンの量が効果的であるかどうかを示すために使用され得る。
チザニジンにより痙性の1つ以上の症状を治療するための治療計画は、種々の要因、例えば患者のタイプ、年齢、性別、食事及び医学的状態に依存することが、当業者により理解され得る。従って、実際使用される治療計画は、対象間で広く変化する。
皮下送達システム及びキット
本発明の一態様によれば、皮下送達システムは、ポリマー速度制御賦形剤により囲まれる少なくとも1つの離散性固体剤形を含むエラストマーリザーバインプラントを含む。前記少なくとも1つの離散性固体剤形は、チザニジン遊離塩基を含む。皮下送達システムは、少なくとも1ヶ月の期間、治療的有効量のチザニジンを、擬ゼロ次速度で対象にもたらすのに適切な溶出速度でチザニジンを放出させる。本発明の別の態様によれば、薬剤送達組成物を皮下配置するためのキットは、チザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含むリザーバを形成するポリマー速度制御賦形剤を含むリザーバ・ベースの薬剤送達組成物;及び皮膚の下に前記リザーバ・ベースの薬剤送達組成物を挿入するためのインプランターを含む。
薬剤送達組成物は、当業者に公知の任意の適切な手段及び技法を用いて、対象中の任意の適切な領域中に移植され得る。例えば、組成物は、皮膚中又は皮膚下、皮下脂肪層、又は筋肉内に直接配置することにより、皮下、例えば上腕の裏に移植され得る。
薬剤送達組成物は、任意の適切な装置又は技法、例えば当業者に知られているインプランターを用いて、皮下送達され得る。キットは、インプランター中に予備充填された薬剤送達組成物を含み、又は薬剤送達組成物が医師又は他の使用者により充填され得る。インプランターは、対象の送達部位で形成される切開部に挿入され得る、移植装置、例えば注射器、カニューレ、トロカール又はカテーテルであり得る。適切な移植装置及び移植方法は、米国特許第7,214,206号及び第7,510,549号(それらの開示は、それらの全体を参照により本明細書に組込まれる)に開示されるトロカール及び方法を包含する。例えば、医師により、身体中に組成物を移植するか、さもなければ位置決めするための他の適切な方法は、当該分野で公知である。除去及び/又は交換はまた、当該分野において知られている適切な用具及び方法を用いて、達成され得る。キットはまた、当該分野において良く知られている他の装置、例えばメス、クランプ、縫合ツール、水分補給水及び同様のものを包含する。
ポリマー賦形剤を含む移植可能薬剤送達組成物
特定の理論に拘束されることを所望しないが、一定含有率又は比での硬質:軟質セグメントを含む特定ポリマーを選択することにより、一定の所望する溶出速度が達成され得ると考えられる。さらに、リザーバ内の離散性固体剤形に、チザニジンと共に、一定量での収着促進剤を添加することにより、溶出速度はさらに、薬剤送達組成物から、所望する医薬的有効な値に変更されるか、又は変調され得る(例えば、「チューニング」(tuned)又は「ダイアルイン」(dialed in))。
本発明の一態様によれば、移植可能薬剤送達組成物から治療的有効量のチザニジンを送達するための方法は、治療的有効量のチザニジンを対象に少なくとも1ヶ月間、擬ゼロ次速度(例えば、ゼロ次速度)で全身に送達するために、リザーバ・ベースの薬剤送達組成物を対象に移植することを含んでなる。薬剤送達組成物は、少なくとも1種のポリマーを含む賦形剤により囲まれる少なくとも1つの離散性固体剤形を含み、そして少なくとも1つの離散性固体剤形はチザニジン遊離塩基を含む。ポリマーは、軟質及び硬質セグメントを含む実質的非多孔性のエラストマーポリマーを含み、そして軟質および硬質セグメントの相対的含有量により、活性医薬成分について所望する1日平均溶出速度の最大および最小値間で目標範囲内の溶出速度がもたらされる。
本発明に一実施形態によれば、薬剤送達組成物は、チザニジン遊離塩基を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含むリザーバを形成する速度制御賦形剤を含む。速度制御賦形剤は、チザニジンについての1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度を得るために、ポリマーの軟質及び硬質セグメントの相対含有量に基づいて選択される軟質及び硬質セグメントを含む実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを含む。少なくとも1つの離散性固体剤形は、少なくとも1ヶ月の期間、治療的有効量で、目標範囲内の擬ゼロ次でチザニジンを放出するために、チザニジンの1日平均溶出速度を調節するのに効果的な量で少なくとも1つの収着促進剤を含む。収着促進剤の量は、1日平均溶出速度に正比例することができる。
本発明の別の実施形態によれば、移植可能薬剤送達組成物の選択方法は、チザニジンについての1日平均溶出速度の目標範囲内に溶出速度を調節するために、ポリマーの軟質及び硬質セグメントの相対含有量に基づいて、リザーバを形成するための軟質及び硬質セグメントを含む実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを含む速度制御賦形剤を選択すること;及びチザニジン遊離塩基、及び少なくとも1ヶ月の期間、擬ゼロ次速度での治療的有効量のチザニジンを達成するよう溶出速度を調節するために、少なくとも1つの収着促進剤を選択し、そして調合することを包含し、ここで前記収着促進剤の量は、1日平均溶出速度に正比例することができる。
ポリマー選択
賦形剤は、軟質及び硬質セグメントを有する少なくとも1つのポリマーを含む。用語「セグメント」とは、本明細書において使用される場合、モノマー単位、又はポリマーのブロック、又はポリマーの配列、等を含むポリマーの任意の部分を言及することができる。「軟質セグメント」(soft segments)は、使用温度異化のガラス転移温度を有する非晶性(例えば、ゴム状)のポリマーの軟質相を含むことができる。「硬質セグメント」(hard segments)は、使用温度で結晶性であるか、又は使用温度以上のガラス転移温度を有する非晶性(例えば、ガラス状)であるポリマーの硬質相を含むことができる。使用温度は、室温(約20〜25℃)及び体温(約37℃)を包含する範囲の温度を包含する。特定の理論に拘束されることを所望しないが、軟質セグメントは、賦形剤上への収着に対して最大の影響を与えることができ、そして硬質セグメントは、賦形剤を通り抜ける又は介した拡散に影響を及ぼすことができる。例えば、リザーバから賦形剤110中へのAPIの収着112、及び賦形剤から対象中へのAPIの脱着114を示す図1を参照のこと。硬質及び軟質セグメントを含む任意の適切なポリマーは、そのポリマーがインプラントの意図される期間、対象に擬ゼロ次速度で治療的有効量のAPIの送達を可能にする限り、当業者により選択され得る。本発明の一実施形態によれば、選択されたポリマー賦形剤は疎水性である。
一実施形態によれば、ポリマーは、熱可塑性エラストマー、又はエラストマーポリマーであり、それらは、エラストマー性質を有し、そして1つ以上のエラストマーサブユニット(例えば、エラストマー軟質セグメント又はブロック)を含むポリマー(ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー、及びそれらの混合物)を包含する。熱可塑性エラストマーとしては、コポリマー(例えば、スチレンブロックコポリマー、ポリオレフィンブレンド、エラストマーアロイ、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル及び熱可塑性ポリアミド)、又はポリマーの物理的混合物(例えば、プラスチック及びゴム)を挙げることができ、それらは、弱双極又は水素結合を含み、又は材料の相の一方で架橋する熱可塑性及びエラストマーの両性質を有する材料から成る。エラストマーポリマーは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリシリコーン又はそれらのコポリマーを包含する。従って、ポリマーは、ポリウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリシリコーン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、又はそれらの組合せを含んで成るエラストマーポリマーを包含することができる。典型的な実施形態によれば、ポリマーは、ポリウレタン系ポリマー、又はポリエーテル−ブロック−ポリアミドポリマーを含んで成る。
ポリマー中の適切な硬質及び軟質セグメントは、当業者により選択され得る。一定タイプのポリマーが本明細書において記載されているが、硬質及び軟質セグメントはモノマー、ポリマー、ポリマーの一部、等から誘導され得ることは、当業者により理解されるであろう。言い換えれば、列挙されるポリマーは、重合の間、変更されるか又は修正され得るが、しかし重合形でのそれらのポリマー、又はそれらのポリマーの一部は、最終ポリマーの硬質及び軟質セグメントを構成する。
適切な軟質セグメントの例としては、(ポリ)エーテル、(ポリ)カーボネート、(ポリ)シリコーン又は同様のものに由来するそれらを挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない。例えば、軟質セグメントは、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)、及びそれらの組合せから成る群から選択されたアルキレンオキシドポリマーに由来することができる。軟質セグメントはまた、ポリカーボネート軟質セグメント(Lubrizolから入手できる)、又はシリコーン軟質セグメント(Aortechから入手できる)に由来できる。
適切な硬質セグメントの例としては、ポリウレタン又はポリアミド由来のそれらを挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない。例えば、硬質セグメントは、イソシアネート及びアミド、例えばナイロン、ナイロン誘導体(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、等)、カルボン酸末端アミドブロック、及び同様のものに由来することができる。
ポリマーは、当業者に公知である任意の適切な手段又は技法により形成され得る。例えば、ポリマーは、モノマー、ポリマー前駆体、プレポリマー、ポリマー、等から形成され得る。ポリマー前駆体は、ポリマーを形成するために反応され得るか又は硬化され得るモノマー及びオリゴマー物質を包含することができる。ポリマーは、任意の適切な構成成分を用いて合成され得る。
本発明の一実施形態によれば、ポリマーは、ポリウレタン(例えば、ウレタン結合、−RNHCOOR′−を含む)を含む。ポリウレタンは、上記で詳細に論じられたように、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリアミド系ポリウレタン、ポリシリコーン系ポリウレタン又は同様のものを包含する。
ポリウレタンは、軟質及び硬質の両セグメントを含むことができる。軟質セグメントは、ポリオール、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、及び同様のものに由来することができる。例えば、軟質セグメントは、ポリエーテルポリオール、例えばポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレンジオール及びトリオール)、ポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、及び同様のものに由来することができる。軟質セグメントは、他方では、ポリオール、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、12−ドデカンジオール、及び同様のものに由来することができる。ポリカーボネート軟質セグメントポリウレタンを含む組成物についての溶出速度が図12に提供される。ポリオール由来の軟質セグメントが、次の式又はそれらの混合物により表され得る:
O−(CH2−CH2−CH2−CH2)x−O(式1)
−[O−(CH2)n]x−O−(式2)
O−[(CH2)6−CO3]n−(CH2)−O(式3)
硬質セグメントは、イソシアネート、例えば脂肪族及び脂環式イソシアネート、及び芳香族イソシアネート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)及び4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、並びにメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)に由来することができる。
本発明の別の実施形態によれば、ポリマーは、ポリエーテル系ポリウレタンを含むことができる。例えば、ポリマーは、軟質セグメントとしてポリ(テトラメチレンオキシド)、及び硬質セグメントとして重合された4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及び1,4−ブタンジオールを含む脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンであり得る。適切なポリマーは、TECOFLEX(登録商標)ファミリーからのポリマー、すなわち重合された4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)及び1,4−ブタンジオールから成る硬質セグメント及びマクロジオールポリ(テトラメチレンオキシド)から成る軟質セグメントを有する脂肪族ブロックコポリマーを包含する。
本発明の別の実施形態によれば、ポリマーは、ポリエーテル−アミド(例えば、熱可塑性ポリ(エーテル−ブロック−アミド)、例えばPEBA、PEB、TPE−A、及びPEBAX(登録商標)ポリエーテル−アミドとして商業的には知られている)を含む。硬質セグメントは、ポリアミドブロック(例えば、カルボン酸末端アミドブロック、例えばジカルボンブロック)を含むことができ、そして軟質セグメントは、ポリエーテルブロック(例えば、ジオール、例えばポリオキシアルキレングリコール)を含むことができる。それらのブロックコポリマーの一般構造式は、次の通りに示され得る:
式中、PAは、硬質セグメントを表し、そしてPEは軟質セグメントを表す。ポリアミドブロックは、種々のアミド、例えばナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、等)を包含することができる。ポリエーテルブロックはまた、種々のポリエーテル、例えばポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)、ポリエチレンオキシド(PEO)及び同様のものを包含する。ポリエーテル:ポリアミドブロックの比は、80:20〜20:80(PE:PA)であり得る。ポリエーテルの量が上昇するにつれて、よりしなやかでより柔らかな材料が得られる。
一実施形態によれば、エラストマーポリマーは、TECOFLEX(登録商標)ポリウレタン、CARBOTHANE(登録商標)ポリウレタン、PEBAX(登録商標)ポリエーテル−アミド、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。例えば、エラストマーポリマーは、TECOFLEX(登録商標)EG−93A ポリウレタン、TECOFLEX(登録商標)EG−80Aポリウレタン、TECOFLEX(登録商標)EG−85A ポリウレタン、PEBAX(登録商標)2533 ポリエーテル−アミド、PEBAX(登録商標)3533ポリエーテル−アミド、CARBOTHANE(登録商標)PC−3585A ポリウレタン、及びそれらの組み合わせを包含することができる。
軟質及び硬質セグメントの相対含有量が、活性医薬成分についての1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度をもたらすことができる。軟質及び硬質セグメントの相対含有量は、ポリマーにおける硬質セグメントに対する軟質セグメントの量又は含有率を言及する。相対含有量はまた、軟質セグメント:硬質セグメントの比(例えば、少なくとも約2:1又は少なくとも4:1の軟質セグメント:硬質セグメント)としても定義され得る。例えば、軟質セグメント含有は、硬質セグメント含有に対して、50%又はそれ以上、60%又はそれ以上、70%又はそれ以上、又は80%又はそれ以上であり得る。一実施形態によれば、相対含有率は、約70%の軟質セグメント及び約30%の硬質セグメント、又は少なくとも約2.3:1(軟質:硬質)(例えば、PEBAX(登録商標)2533ポリエーテル−アミド)である。別は実施形態によれば、相対含有率は、約80%の軟質セグメント及び約20%の硬質セグメント、又は少なくとも約4:1(軟質:硬質)(例えば、PEBAX(登録商標)3533ポリエーテル−アミド)である。
軟質セグメント:硬質セグメントの比は、所望する溶出速度に依存して変化することができる。特定の理論に拘束されることを所望しないが、軟質セグメントは賦形剤中へのAPIの収着に寄与することができる、及び/又は硬質セグメントは拡散速度に寄与することができる(例えば、活性物質が賦形剤を介していかに早く拡散するか)。しかしながら、インプラントが定常状態(例えば、一定又はほぼ一定の溶出速度)に達すると、賦形剤を介しての拡散速度はおそらく、あまり重要ではない。従って、硬質セグメントに対する軟質セグメントのより高い比(例えば、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1又は少なくとも約4:1)を有することが所望される。軟質及び硬質セグメントの相対含有量はまた、軟質及び硬質両セグメントの分子量に正比例すると思われる。言い換えれば、軟質セグメントがより高い分子量のポリマーだと、軟質セグメント:硬質セグメントの相対含有率がより高いという結果になる。
各軟質及び硬質セグメントの分子量は、選択される特定の軟質及び硬質セグメントに依存して選択され得る。特に、軟質セグメントのサイズ(例えば、分子量)は、溶出速度に影響を及ぼすことができる。例えば、軟質ブロック(例えば、ポリエーテル)の分子量は、約1000−12,000ダルトン(ダルトンは、分子量についてg/モルと互換的に使用され得る)の範囲であり得る。軟質セグメントとしてのPTMOの場合、分子量は約500−3000ダルトンの範囲であり得る。いくつかの場合、約1000ダルトン以下に比べて、溶出を高めるためには、より高い分子量が好ましい(例えば、約2000−3000ダルトン)。軟質セグメントとしてのPPOの場合、分子量は約2000−12,000ダルトンの範囲であり得、そして再び、溶出速度を高めるためには、より高い分子量が好ましい。ポリエーテル−ブロックアミドの場合、ポリエーテルブロックの分子量は、約400−約3000ダルトンであり、そしてポリアミドブロックの分子量は、約500−約5000ダルトンであり得る。特定の理論に拘束されることを所望しないが、ポリマー中の軟質セグメントの分子量を高めることにより、硬質セグメントの含有量が低められ、これにより、賦形剤を介したAPIの溶解および拡散が良好になると考えられる。
ポリマーセグメントのショアD硬度又はショア硬度はまた、溶出速度に対する影響を及ぼし得る。いくつかの場合、ショア硬度は、溶出速度に反比例することができる(例えば、ショア硬度が高いと溶出速度が低くなる)。例えば、ポリエーテル−ブロックアミドの場合、35のショア硬度が、25のショア硬度に比べて、より低い溶出速度をもたらす。本発明の一実施形態によれば、賦形剤は、実質的に又は完全に非多孔性であり、そこにおけるポリマーは、例えば、約10%、約5%又は約1%以下の多孔率又は空隙率を有する。特に、賦形剤は、実質的に非多孔性であり、従って、薬剤送達組成物からのAPIの流出を可能にする物理的孔又はマクロ孔は存在しない。別の実施形態によれば、賦形剤は水に実質的に不溶性であり、これは、10,000mL超の水中での1gに相当する。本発明の別の実施形態によれば、薬剤送達組成物は、APIを治療的に有効量で放出するために、インビボでの賦形剤の浸食又は分解を必要としない。一方、賦形剤は、移植可能組成物の意図される持続期間、インビボで実質的に浸食性ではなく、及び/又は実質的に分解できない(例えば、APIは、インビボで材料の浸食又は分解によっては放出されない)。
速度制御賦形剤は、活性医薬成分について1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度を得るために、ポリマーの軟質及び硬質セグメントの相対含有量に基づいて選択される軟質及び硬質セグメントを含む実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを含むことができる。治療的有効量のAPIは、活性医薬成分についての所望する1日平均溶出速度の最大及び最小値間の目標範囲内の擬ゼロ次速度で対象に送達される。擬ゼロ次とは、APIのゼロ次、ほぼゼロ次、実質的にゼロ次、又は制御された又は持続された放出を言及する。組成物は最初に、所望する治療効果を生み出す量のAPIを放出でき、そして意図された治療期間(例えば、約1年)にわたり、徐々に且つ継続的に、治療効果レベルを維持するための異なる量のAPIを放出することができる。
前述のように、賦形剤は、任意の適切なサイズ及び形状のものであり得る、リザーバの形状を形成する。典型的な実施形態によれば、賦形剤は実施的に円筒形状である。円筒形状の賦形剤の実施形態は例えば、図2に示されている。リザーバは、活性物質及び送達の位置に依存して、任意の適切なサイズ、例えば直径:長さの比が、約1:1.5〜1:15、例えば、約1:5又は約1:10であり得る。
賦形剤の壁厚がまた、所望する溶出速度をもたらすために選択され得る。壁厚は溶出速度に反比例する。従って、より厚い壁厚は、より低い溶出速度をもたらすことができる。賦形剤は、約0.05〜約0.5mm、又は約0.1〜約0.3mm(例えば、約1.0mm、約0.2mm、又は約0.3mm)の平均厚を有する壁を形成することができる。
ポリマーは、任意の適切な技法、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形、回転成形を用いて加工され得る。一実施形態によれば、移植可能薬剤送達組成物の製造方法は、(a)チザニジンについての1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度を提供するために、ポリマーの軟質及び硬質セグメントの相対的含有量及び分子量に基づいて、軟質及び硬質セグメントを含む実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを選択し;(b)前記エラストマーポリマーから中空管を形成し(例えば、図2を参照のこと);(c)チザニジン遊離塩基、及び少なくとも1ヶ月の期間、治療的有効量のチザニジンの溶出速度を擬ゼロ次速度にするために、少なくとも1つの収着促進剤を選択し、そして調合し、ここで収着促進剤の量は、1日平均溶出速度に対して正比例し;(d)チザニジン遊離塩基及び少なくとも1つの収着促進剤を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を、前記管中に充填し;そして(e)密封された円筒形状のリザーバ・ベースの薬剤送達生成物を形成するために、管の両端を密封することを包含することを包含する。管は、当該分野において知られている任意の適切な手段又は技法を用いて密封され得る。例えば、端は、封止され、追加のポリマーにより充填され、ヒートシールされ、又は同様にされる。管は、離散性固体剤形が出ないように、永久的に密封されるべきである。また、端は、活性物質が移植後に流出してしまうような穴または開口がないよう、適切に密封するべきである。
収着促進剤及び離散性剤形
本発明の態様によれば、リザーバ内の少なくとも1つの離散性固体剤形はまた、少なくとも1ヶ月の期間、治療的有効量で目標範囲内の擬ゼロ次で医薬的活性成分を放出するために、医薬的活性成分の1日平均溶出速度を調節するのに効果的な量で少なくとも1つの収着促進剤を含むことができる。本明細書において使用される場合、用語「調節する」(modulate)又は「調節」(modulation)は、薬剤送達組成物の活性の変化を説明するために使用され得る。これは、溶出速度の変化(例えば、所定の溶出速度又は範囲での上昇又は下降)に相当することができる。
収着促進剤は、薬剤送達組成物からのAPIの放出を改善する化合物を含むことができる。特定の理論に拘束されることを所望しないが、収着促進剤は、対象からリザーバ中に水又は他の流体を引き込み、離散性固体剤形以外を崩壊するか又は破壊し、及び/又はAPIを賦形剤の内壁に接触させるか又は接触したままの状態にさせることにより、薬剤送達組成物からのAPIの放出を改善することができる。そのような機構は、例えば図1に示されている。
収着促進剤の量は特に制限されないが、しかし存在する場合、固体剤形の約1〜25重量%、より好ましくは固体剤形の約5〜20重量%、及びより好ましくは約10重量%である。収着促進剤の量は、溶出速度に正比例する。言い換えれば、組成物中のより高い重量%の収着促進剤は、より低い重量%よりも高い平均溶出速度をもたらすことができる。従って、より高い溶出速度を得るためには、より高い重量%(例えば、約8〜25重量%又は約10〜20重量%)の収着促進剤を含むことが好ましい。
任意の適切な収着促進剤が当業者により選択され得る。特に適切な収着促進剤としては、次のものを挙げることができる:負に帯電したポリマー、例えばクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム誘導体(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、架橋されたポリアクリル酸(例えば、CARBOPOL(登録商標))、コンドロイチン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、中性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びそれらの組合せ。収着促進剤の量は特別には制限されないが、しかし存在する場合、好ましくは、固体剤形の約1〜25重量%、固体剤形の約2〜20重量%、固体剤形の約2〜12重量%、固体剤形の約5〜10重量%(例えば、固体剤形の約5重量%又は約10重量%)である。特定の収着促進剤の選択が、溶出速度に対する影響を有する。
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの離散性固体剤形は、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて75〜97重量%のチザニジン遊離塩基;少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて1〜25重量%の少なくとも1つの収着促進剤;及び少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて0〜5重量%の滑剤を含む。例えば、少なくとも1つの離散性固体剤形は、少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて85〜95重量%(例えば、約88重量%)のチザニジン遊離塩基;少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて5〜20重量%(例えば、約10重量%)の少なくとも1つの収着促進剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム);及び少なくとも1つの離散性固体剤形の総重量に基づいて0〜5重量%(例えば、約2重量%)の滑剤(例えば、ステアリン酸)を含む。好ましくは、薬剤送達組成物中の各成分は、疾病又は治療される状態の治療のために効果的な量で提供される。
前述したように、治療的有効量のAPIが、APIについての1日平均溶出速度の目標範囲で対象に送達され得る。目標溶出速度(mg/日)は、経口用量速度と比経口生物学的利用率の乗数に基づく。溶出速度は、例えば所定の時間、例えば1日の平均に基づく平均速度(すなわち、1日平均溶出速度)であり得る。医薬活性成分の1日平均溶出速度は、薬剤送達組成物における収着促進剤の量に正比例して変化することができる(例えば、より多くの収着促進剤が、より高い1日平均溶出速度をもたらすことができる)。
前述したように、1日平均溶出速度についての最小値は、APIの経口投与バージョンについてのトラフ値(例えば、経口製剤について血液/血漿濃度に基づく)に相関され得る。同様に、最大値は、APIの経口投与バージョンについてのピーク値(例えば、経口用量が最初に投与されたときの最大血液/血漿濃度、または医薬的毒性量)に相関され得る。言い換えれば、目標範囲は、最大及び最小溶出速度間であり、これは、それぞれ、同じ活性物質を含む同等の経口剤形についての血液/血漿濃度に基づいて決定され得る。離散性剤形の数及び形状は、所望する溶出速度を提供するよう最適化され得る。例えば、離散性固体剤形は、リザーバの全空洞を満たさないよう適切な形状のものであり得る。一実施形態によれば、少なくとも1つの離散性剤形は、円筒形状である。別の実施形態によれば、少なくとも1つの離散性剤形は、その固体剤形が球状又はほぼ球状である点で、実質的に球形である。例えば、剤形の形状は、約10%以上、完全な球体から逸脱しなくても良い。別の実施形態によれば、少なくとも1つの離散性剤形は実質的に円筒形である。
何れの理論によっても拘束されることを所望しないが、少なくとも1つの離散性剤形の表面積が溶出速度に寄与すると思われる。一実施形態によれば、少なくとも1つの離散性剤形の総面積は、溶出速度に正比例する。従って、離散性剤形の数は、所定の溶出速度を提供するよう選択され得、ここで高められた数の剤形が高められた総表面積を提供する。離散性固体剤形は、1以上のペレット(例えば、2〜9個のペレット)を含むことができる。言い換えれば、より高い数の剤形が、より少数の剤形よりも高い平均溶出速度をもたらすことができる。従って、好ましくは、より高い溶出速度を得るためには、より多くの離散性固体投剤形(例えば、7〜9個のペレット)を含む。さらなる実施形態によれば、移植可能薬剤送達組成物に使用されるペレットの総表面積は、例えば、ペレットの形状を変えるか、それらの表面回旋を高めるか、同様にすることにより、高められ得る。
薬剤送達組成物、皮下送達システム、及びキット
前述したように、薬剤送達組成物は長期持続し、そしてチザニジンは、長期間(例えば、少なくとも約1ヶ月(約1ヶ月以上)、少なくとも約3ヶ月(約3ヶ月以上)、少なくとも6ヶ月(約6ヶ月以上)、少なくとも約1年(約1年以上)、少なくとも約2年(約2年以上)、少なくとも約30ヶ月(約30ヶ月以上)、又はそれらの範囲内の任意の期間)、擬ゼロ次速度で対象に送達され得る。
本発明の一実施形態によれば、擬ゼロ次でチザニジンを放出するための皮下送達システムは、リザーバを形成する速度制御賦形剤を含むエラストマーリザーバインプラントを含む。速度制御賦形剤は、チザニジンについての1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度を提供するために、相対含有量の硬質セグメント及び軟質セグメントを有する実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを含む。リザーバは、チザニジン遊離塩基、及び少なくとも1ヶ月の期間、擬ゼロ次の目標範囲内で治療的有効量のチザニジンの放出のためにチザニジンの溶出速度を調節するのに有効量の少なくとも1つの収着促進剤を含む少なくとも1つの離散性固体剤形を含む。収着促進剤の量は、1日の平均溶出速度に正比例することができる。
薬剤送達組成物は、当業者に公知の任意の適切な手段及び技法を用いて、対象の任意の適切な領域に移植され得る。例えば、組成物は、例えば皮膚中又は皮膚下、皮下脂肪層、又は筋肉内に直接供給することにより、上腕の裏側、又は上背部(例えば、肩甲骨領域)で皮下移植され得る。薬剤送達組成物は、任意の適切な装置又は技法を用いて、皮下送達され得る。
本発明の別の実施形態によれば、薬剤送達組成物を皮下配置するためのキットは、少なくとも1つの離散性固体剤形を含むリザーバを形成するポリマー速度制御賦形剤を含むリザーバ・ベースの薬剤送達組成物、及び皮膚の下に前記リザーバ・ベースの薬剤送達組成物を挿入するためのインプランター、並びに任意には薬剤送達組成物の移植及び外植のための説明書を包含する。速度制御賦形剤は、軟質及び硬質セグメントを含む、実質的に非多孔性のエラストマーポリマーを含み、そしてポリマー中の軟質及び硬質セグメントの相対含有量が、チザニジンについての1日平均溶出速度の目標範囲内の溶出速度を得るために選択される。少なくとも1つの離散性固体剤形は好ましくは、チザニジン遊離塩基、及び少なくとも1ヶ月の期間、治療的有効量で目標範囲内の擬ゼロ次でチザニジンを放出するためにチザニジンの溶出速度を調節するために効果的な量で、少なくとも1種の収着促進剤を含み、そして収着促進剤の量は、1日平均溶出速度に正比例することができる。
薬剤送達組成物は、任意の適切な装置又は技法、例えば当業者に公知のインプランターを用いて、皮下送達され得る。キットは、インプランター中に予備充填される薬剤送達組成物を含み、又は薬剤送達組成物は医師又は他の使用者により充填され得る。インプランターは、対象の送達部位で形成される切開部に挿入され得る、移植装置、例えば注射器、カニューレ、トロカール又はカテーテルであり得る。適切な移植装置及び移植方法は、米国特許第7,214,206号及び第7,510,549号(それらの開示は、それらの全体を参照により本明細書に組込まれる)に開示されるトロカール及び方法を包含する。例えば、医師により、身体中に組成物を移植するか、さもなければ位置決めするための他の適切な方法は、当該分野で公知である。除去及び/又は交換はまた、当該分野において知られている適切な用具及び方法を用いて、達成され得る。キットはまた、当該分野において良く知られている他の装置、例えばメス、クランプ、縫合ツール、水分補給水及び同様のものを包含する。
キット及びその使用方法の一実施形態
本明細書において使用される場合、用語「近位」(proximal)及び「遠位」(distal)とは、薬剤溶出インプラントを移植する外科医との間で近い方向を、それぞれ言及する。明確には、挿入器具の遠位部分が対象中に挿入され、そして器具の近位部分が対象の外側に残る。図中の基準粋のために、「P」として示される矢印は一般的に、近位方向を言及し、そして「D」として示される矢印は一般的に、図に示される項目の方向に対して遠位方向を言及する。
図8を参照すると、対象に薬剤溶出インプラントを皮下配置するためのキット10が、本発明の1つの典型的な実施形態に従って示されている。キット10は、薬剤溶出インプラント100、及び対象に薬剤溶出インプラントを皮下配置するための挿入器具200を含む。挿入器具200は、挿入器具200中に予備充填されるインプラント100と共にパッケージングされる。挿入器具200は単一の薬剤溶出インプラント100と共に示されているが、その器具は対象に移植されるべき複数の薬剤溶出インプラントにより予備充填され得る。さらに、1つ以上の薬剤溶出インプラント100は、挿入器具200とは別々にパッケージングされるキット10に提供され得る。
図9〜17を参照すると、挿入器具200は、中空シャフト230を有するカニューレ210を含み、ここでカニューレ210は、挿入器具200のハンドル部分224のフロントハブ部分223に連結する。カニューレ及び中空シャフト230は縦軸240を有し、そして中空シャフトを通して延伸する内部穴又は内腔232を形成する。カニューレ210は、挿入器具200が使用されていない場合、図9に示される、保護シース231により被覆され得る鋭い遠位端234を有する。挿入器具200はまた、(i)ハンドル部分224の後方ハブ部分220、(ii)ハンドル部分224、(iii)ハンドル部分のフロントハブ部分220及び(iv)中空シャフト230中に延伸できるストップロッド250を含む。カニューレ210は、より詳細に記載されるように、ストップロッド250上でスライドすることにより位置を変えることができる。
本発明の実施形態によれば、ハンドル部分224は、多くの異なった構造体により形成され得る。例えば、ハンドルに部分224は、2つの射出成形された部分220a及び220bから構成され得る。部分220a及び220bは、例えば対応する多くのソケット228(図17に示される)と対合する複数のピン(示されていない)と、お互い結合することができる。部分220a及び220bがお互い連結される場合、それらはハンドル部分224のリアハブ部分220及びフロントハブ部分223、及びハンドル部分224を集合的に形成する。当業者には容易に明らかであるように、他の構成がハンドル部分224のために可能である。フロントハブ部分223は、そこにカニューレ210及びストップロッド250を受けるようになっている。ハンドル部分224は、中空シャフト230の縦軸240の一方にオフセットされ、使用者により把持され得る横方向の延伸部分を形成する。一対のフランジ221は、使用者の指に合うようにハンドル部分224から外側に突出する。
中空通路230の遠位端234は、内腔232中に通路を提供する。内腔232は、中空シャフト230内に薬剤溶出インプラント100を受け、そして保管するようになっている。薬剤溶出インプラント100は、開放遠位端234を通してインプラントを挿入することにより、内腔232及び中空シャフト230中に充填され得る。この構造においては、薬剤溶出インプラント100は、器具200が組み立てられた後、製造業者により挿入器具200中に充填され得る。他方では、薬剤溶出インプラント100は、使用者により、挿入器具200中に充填され得る。
図17を参照すると、挿入器具200は、すぐに使用できる状態で示されており、そして薬剤溶出インプラント100はカニューレ210の中空シャフト230中に予備充填される。ストップロッド250は、近位端252及び遠位端254を含む。ストップロッド250の近位端252は、ノブ又はハンドル部分256を含む。ストップロッド250の遠位端254は、当接面259を含む。当接面259は、薬剤溶出インプラント100に近接して中空シャフト230内に配置される。
カニューレ210は、上記で示されたように、ストップロッド250上を、スライド移動できる。挿入器具200は2つの設定を有し、1つは、ストップロッド250上でのカニューレ210の軸移動を可能にし、そして他の1つは、軸移動を妨げる。設定は、カニューレ210に対して、ストップロッド250の相対的向きにより制御される。ストップロッド250は、ロック解除された方向とロックされた方向との間の中空シャフト230の縦軸240対して軸回転できる。ロック解除された方向においては、カニューレ210、フロントハブ223及びリアハブ220は、ストップロッド上での移動を可能にされる。ロックされた方向においては、カニューレ210、フロントハブ223及びリアハブ220は、ストップロッド250上での移動を妨げられる。
ストップロッド250は、図9Aに最良に見られるように、2つの縦溝236により形成される第1ロック特徴を含む。溝236は、ストップロッド250の長さの一部に沿って延伸する。ハンドル部分224は、図17に最良に見られるように、リアハブ220上に位置する1対の突起部分216により形成される第2ロック特徴を含む。各突起部分216は、中空シャフト230の横軸240に向かって半径方向内向きに延伸する。ストップロッド250がロックされた方向に回転される場合、溝236は突起部分216と半径方向に整列しない。こうすると、突起部分216はストップロッド250とかみ合い、ストップロッドの近位端252に向かってストップロッド上でのカニューレ210の移動を妨げる。ストップロッド250がロック解除された方向に回転される場合、溝236は、突起部分216と放射状に整列して位置決定される。各溝236は、突起部分216の1つを受けるような寸法にされる。従って、ロック解除された位置においては、各突起部分216は、溝236内に受容され、それにより、ストップロッド250の近位端252に向かってストップロッド250上でのカニューレ250の移動を可能にする。ストップロッド250は、その上に間隔をあけられたマーキングを含み、それらは、カニューレ210がストップロッド250の近位端252に対して近位に移動された距離を示す。
挿入器具200は、カニューレ210中に予備充填された薬剤溶出インプラント100を有するキット10にパッケージングされる。別の実施形態によれば、キットは、挿入器具200及び薬剤溶出インプラント100を提供し、そして前記インプラントは前記器具と別々にパッケージングされる(すなわち、器具はキット中の1つのパッケージに含まれ、そしてインプラントは、キット中の器具を含むパッケージ以外の別のパッケージに含まれる)。このパッケージングオプションだと、使用者は、そのパッケージングからの薬剤溶出インプラントの除去、インプラントの検査、及びインプラントを患者に挿入する直前に器具中へインプラントを充填することが可能になる。ここのオプションだと、使用者は柔軟に、キット内のインプラントを別の適切なインプラントに置換できる。別のパッケージングは、異なった性質を有する複数のインプラントを含むキットに使用され得る。そのようなキットによれば、異なったインプラントが個々にパッケージングされ、そして使用者は適切なインプラントを選択し、そして開き、そして器具中にそのインプラントを充填することができる。
本発明のキットは、それらが含む薬剤組成物、又は他の特徴の点で、お互い異なる1つ以上のインプラントを含むことができる。例えば、キット10には、単一薬剤溶出インプラント100が設けられる。インプラント100は、少なくとも1つの離散性固体剤形を含むリザーバを形成するポリマー速度制限賦形剤から成る。他のキットの実施形態は、ポリマー速度制御賦形剤から成る複数のインプラントを設けることができる。図では、挿入器具200に予備充填された単一のインプラント100を概略的に示すが、本発明の他の実施形態では、挿入器具には複数のインプラント100が予備充填されるという特徴があってもよい。本発明の実施形態によるキットには、1つ以上のインプラントが予備充填された挿入器具、及び挿入器具に予備充填されていない1つ以上の別々にパッケージされたインプラントを設けてもよい。インプラント及び器具の任意の数、タイプ又は組合せが、一緒に又は別々にパッケージングされるか否かにかかわらず、本発明の実施形態に従って、キットに提供され得る。従って、異なった治療効果を有する複数のインプラントが、単一送達手順で移植され得る。
対象中への挿入器具200を挿入する前、真皮の下に皮下腔を準備することが、ある場合、所望される。皮下腔は、カニューレの中空シャフトの全長を受けるのに十分な大きさであるポケットが設けられ、適切な位置へのインプラントの配置を容易にする。この理由のために、本発明のキットは任意には、対象に皮下腔を設けるための別の器具を含むことができる。図18を参照すると、本発明の実施形態に従っての別のキット10′が示される。キット10′は前の図に示されるように、薬剤溶出インプラント100が予備充填された同じ挿入器具200を包含する。キット10′はまた、対象に皮下腔を設けるために、トンネリング器具300として言及される第2器具を包含する。さらに、キット10′は、器具とは別にパッケージングされる別の薬剤溶出インプラント100′を包含する。
図19〜27を参照すると、トンネリング器具300は、挿入方向Iに対して平行である水平軸H、及び水平軸に対して垂直である垂直軸Vにより特徴づけられる細長い輪郭を有する。トンネリング器具300は、ブレード310及びブレードに取り付けられたハンドル350を含む。ブレード310は、近位端312及び遠位端314を有する。ハンドル350はまた、近位端352及び遠位端354も有する。本発明の実施形態によれば、ハンドル350の遠位端354は、1対のネジ311によりブレード310の近位端312に取り付けられる。当業者にとっては容易に明らかであるように、ブレード310は、当該分野において公知である任意の他の手段により、ハンドル350に取り付けられ得る。図19に示されるように、ブレード310が側面から見られる場合、垂直軸Vに関して、ブレード310の垂直高さ又は寸法は、近位端312の方に遠位端314から徐々に大きくなる。ブレード310は、上位面316、及びその上位面とは反対側に下位面318を含む。下位面318は、ブレード310の近位端312と遠位端314との間に延伸し、そして水平軸Hに対して水平に延伸する、実質的に平坦な部分322を含む。ブレード310の上位面316は、傾斜面324を形成する。傾斜面324は、平坦部分322に対して鋭角θ(図20に見られる)で延伸する。図23を参照すると、ブレード310は、近位端312で最大幅を有する先細り状の輪郭を有する。ブレード310の幅は、遠位端314で最小幅に先細くなる。ブレード310の各側面は、緩やかな曲線になる。ブレード310は、図22に示されるように、トンネリング器具300が使用されない場合、保護シース315により被覆され得る。
ハンドル350は、ベース部分356及びそのベース部分から延伸する細長いグリップ部分358を備える。ベース部分356は、上位面362及びその上位面と反対側の下位面364を有する。下位面364はブレード310の平坦部分322と実質的に同一面上に延伸し、ブレード310とベース部分356との間に、実質的に連続した表面を形成する。グリップ部分358は、垂直軸Vに対してベース部分356から上方に延伸し、そして上位面366及び下位面368を備えている。オーバーモールドグリップ372は、グリップ部分358の上位面366及びベース部分362の上位面362上で延伸する。オーバーモールドグリップ372は、ゴム、又は器具を把持するために柔らかいクッション領域を提供する他の材料から形成され得る。
本発明に従って対象中に薬剤溶出インプラントを皮下配置するための方法は、キット10′内の器具を参照して説明されるであろう。この例によれば、前記方法は、ヒト対象の腕にインプラントを皮下配置するために使用される。前記方法は、外科医が、インプラントが配置されるべき位置に接近できるよう、患者を位置決定することにより開始する。例えば、患者は背中を下に横たわって配置され、片腕は折り曲げられ、上腕の内面への外科医の接近を可能にする。1つの可能な挿入部位は、患者の肩と肘との間のほぼ中間、及び二頭筋と三頭筋との間の折り目に位置している。挿入部位が選択されると、その部位の周りの領域が消毒され、そして局所麻酔が投与される。滅菌メスを用いて、外科医は、上腕の長軸を横切る方向に挿入部位で切開を行う。切開の長さは、できるだけ短くあるべきであるが、しかし切開部に及び皮膚下にトンネリング器具300のブレード310の挿入を可能にするのに十分な長さであるべきである。別の実施形態によれば、薬剤溶出インプラントは、トンネリング器具の助けなしで配置され得る。そのような場合、切開の長さは、できるだけ短くあるべきであるが、しかし切開部に及び皮膚下に挿入器具200のカニューレ210の挿入を可能にするのに十分な長さであるべきである。
トンネリング器具300が使用される場合、トンネリング器具300がそのパッケージから取り出され(まだ行っていない場合)、そして切開部分に近接して配置され、ブレード310の平坦部分322が皮膚上に静置されるか又は皮膚のすぐ上に配置され、そしてブレードの遠位端314が切開と合わせられる。ハンドル350のベース部分356の上位面364もまた、皮膚上に静置されるか又は皮膚のすぐ上に配置され、その結果、ブレード310の平坦部分322は、患者の腕の長軸と実質的に平行である。次に、ブレート310の遠位端314が切開部分を通して挿入され、そしてブレードが、真皮直下そして皮下組織中で進められながら患者の腕中で腕の長軸と実質的に平行な方向に進められる。ブレード310が腕中に進められるにつれて、腕に侵入するブレードの部分が、上記で論じられたブレード310の輪郭のために、水平及び垂直方向に徐々に広くなり、ブレードにより創造される腔を拡張し、鈍的切開によりポケット又はトンネルを形成する。挿入の間、外科医は好ましくは、真皮のすぐ下に挿入経路を維持し、そして十分な長さ及び幅の皮下トンネルが創造されるまで、皮膚をブレード310により可視的に持ち上げる。次に、ブレード310が患者の腕から除かれる。使い捨てのキットに関しては、トンネリング器具300は廃棄され得る。
次に、挿入器具200がそのパッケージングから除かれる(まだ、行っていない場合)。上記で示されるように、挿入器具200は、カニューレ210中に予備充填された薬剤溶出インプラント100を備えたキット10′にパッケージングされる。挿入器具200は好ましくは、図8に示されるように、ハンドル部分224から引き抜かれたストップロッド250と共に及びロックされた位置でパッケージングされる。使用の前、外科医は、挿入器具200がロックされた位置まで回転されるストップロッド250に設定され、その結果、カニューレ210のストップロッド250上を不用意に進行することを防ぐことの確認を所望する。外科医は、ストップロッド250が多くの手段でロックされるかどうかを判断することができる。例えば、外科医は、ストップロッドがロックされているか又はロック解除されているかを見るために、ストップロッド250を介してカニューレ210のスライドを試みることができる。さらに、又は他方では、外科医は、ストップロッド250がロックされているか、又はロック解除されているかを判断するために、挿入器具200上の目に見えるマークを確認することができる。図示される例によれば、リアハブ部分220は、小さな水平線の形で第1目印222を有する(図13及び14において最良に見られるように)。ストップロッド250は、ストップロッドの周囲上で互いに放射状にオフセットされている2つの水平線の形で、第2目印251及び第3目印253を有する(図3において最良に見られるように)。ストップロッド250は、第1目印222と第2目印251とを整列する第1方向に、ハブ220に対して回転できる。この第1方向は、ロックされた位置に対応する。ストップロッド250はまた、第1目印と第3目印とを整列する第2方向に、ハブ220に対して回転できる。この第2方向は、ロック解除された位置に対応する。好ましい実施形態によれば、器具は、ストップロッド250がロックされた及びロック解除された位置に回転される場合、外科医に触覚フィードバックを提供する機構を包含する。例えば、器具は、ストップロッドがロックされた位置及び/又はロック解除された位置に回転した後、可聴クリックを作るために、ハブの内側の戻り止めと噛み合う内部スプリングラッチを含むことができる。第2及び第3目印はまた、カラーコードされ得(例えば、縁及び赤線)、方向がロック解除された位置であり、そして方向がロックされた位置であることを示唆する。
ロックされた位置が確認されると、カニューレ210の遠位端234が、切開部に挿入され、そして皮下組織中に進められる。カニューレ210は、ハブ220の遠位端229が切開部分に達するまで、トンネル中を進められる。この段階で、中空シャフト230及びインプラント100が、トンネル内に配置される。次に、切開部分からカニューレ210を引き抜くための準備として、ストップロッド250は、ロック解除された位置まで回転される。ロック解除された位置は、可聴クリックにより、又は第1目印222及び第3目印253を用いて目視基準により確認され得る。外科医は、患者の腕に対してストップロッドの位置を固定するために、近位端252で又はほぼ近位端252で、ストップロッド250の上部に対して弱い下方圧力を適用する。ストップロッド250が固定されると、外科医は、固定された位置で、片手でストップロッド250を保持し、そして他方の手で挿入器具200のハンドル部分224を把持する。次に、外科医は、切開部分からカニューレ210を引き抜くために、切開部分から離れる方向に、ハンドル部分224に対して引張力を適用する。これは、トンネル内の所定の位置にインプラント100を残しながら、トンネルからカニューレ210を引き抜くために単一の急速な運動で行われ得る。カニューレ210の長さに対するインプラント100の長さ、及び他の要因に依存して、インプラントは、カニューレ210が切開部分から一部除去される場合(すなわち、カニューレ210の残りの部分をトンネルに残しつつ、カニューレ210の一部をトンネルから引き抜くときに)、中空シャフト230から完全に放出され得る。他のシナリオによれば、インプラント100が、全カニューレ210が切開部分から完全に除かれた(すなわち、カニューレ210の一部がトンネルに残存しない)後でのみ、中空シャフト230から完全に放出され得る。
例えば摩擦などの要因に依存して、インプラント100は、カニューレがトンネルから引き抜かれるにつれてカニューレ210との短い距離を移動することができる。インプラント100がカニューレ210と共に移動する場合、インプラントは、ストップロッド250の当接面259と接触するのに十分移動することができる。当接面259は、カニューレ210が引き抜かれるにつれて、トンネル内部に固定され、カニューレ210が引き抜かれ、そして切開部分から除去されるにつれて、トンネルからインプラントの引き出されるのを防止する。
別の実施形態によれば、インプラント100は次の通りに送達され得る。ロックされた位置が確認されると、カニューレ210の遠位端234が切開部分中に挿入され、そして皮下組織中に前進される。カニューレ210の遠位端234がトンネル内のインプラント送達の所望する位置で存在するまで、カニューレ210はトンネル中を前進される。この段階で、ストップロッド250は、カニューレ210の遠位端234の方にインプラント100を進めるための準備として、ロック解除される位置の方に回転される。前の実施形態と同様に、ロック解除された位置は、可聴クリックにより、又は第1目印222及び第3目印253を用いての目視基準により確認され得る。次に、外科医は、遠位側にストップロッド250を押圧し、それにより、カニューレ210の遠位端234の方に、中空シャフト230においてインプラント100を進行せしめる。インプラントが遠位端234にある場合、外科医は、患者の腕に対してストップロッドの位置を固定するために、好ましくは近位端252で又はほぼ近位端252で、ストップロッド250の上部に対して弱い下方圧力を適用する。ストップロッド250が固定されると、外科医は、片方の手により固定された位置でストップロッド250を保持し、そして他方の手により、挿入器具200のハンドル部分224を把持する。次に、外科医は、切開部分からカニューレ210を引き抜くために、切開部分から離れた方向にハンドル部分に224に対して引張力を適用する。ストップロッド250そしてインプラント100を静止状態で保持しながら、ハンドル部分224そしてカニューレ210をこのように移動することにより、インプラント100が中空シャフト230を出て対象中へと送達されるようになる。
カニューレ210がトンネルから引き抜かれると、外科医は、トンネル内のインプラント100の位置を確認することができる。外科医は、触診及び切開検査によりインプラント100の正しい配置を確認することができる。正しい配置が確認された後、外科医又は他の医療専門家は、滅菌ガーゼにより挿入部位を被覆し、挿入部位に圧力を適用し、そして必要とされる任意の他の術後の手順に従うべきである。
インプラント100を除くためには、切開部をインプラントの一端に隣接させて上腕の長軸に対し横方向に形成する。切開部は、止血鉗子の先端のトンネルへの侵入を可能にするのに適切なサイズのものであるべきである。止血鉗子の先端は、切開部分中に挿入され、そしてインプラントを把握する位置にインプラント100の反対側に配置される。次に、インプラント100は、把握され、そしてポケットから注意して引き抜かれる。インプラント100が除去された後、外科医又は他の医療専門家は、滅菌ガーゼにより挿入部位を被覆し、挿入部位に圧力を適用し、そして必要とされる任意の他の術後の手順に従うべきである。
図示される実施形態に示される多くの要素は、装飾要素である。各装飾要素の外観は、特徴が実施できる何れかの機能によっては決定されない。むしろ、各装飾特徴の外観は、美的考慮に基づいて選択される。それらの装飾要素は、所望する製品外観を達成するために、個々に又は組合して選択される、広範囲の種類の形状、色、寸法及び表面テクスチャを有することができる。例えば、挿入器具200上のフランジ221の形状、輪郭及び相対的寸法は、三日月形状の要素としてフランジを示す図8−16に示される必要はない。フランジ221は、大きくても又は小さくても良く、及び/又は挿入器具200のいずれか機能的態様を変えることなく、他の形状、例えば三角形又は長方形の形状を有することができる。挿入器具200の他の装飾態様としては、次のものを挙げることができるが、但しそれらだけには限定されない:ハンドル部分224の円周部分(任意の形状でもあり得る)、ハンドル部分の円周部分と各フランジの周囲との間の共通境界部分、ハンドル部分とフロントハブ223との間の丸みを帯びた移行部、フロントハブ223に対するハンドル部分の偏心軸方向位置、及びハブ及びストップロッドの種々のパーツ間の長さ及び直径の差異。トンネリングツール300はまた、多くの次の装飾特徴を有するが、但しそれらだけには限定されない:把持部分358の上位面366上の複合曲率、把持部分の下位面368の複合曲率、把持部分の砂時計形状の輪郭(図23)、オーバーモールドグリップ372の曲面及び丸みを帯びた角(図19及び20)、ベース部分356のU形状(図21−23)、及びオーバーモールドクリップ372と把持部分358との間の対照的表面テクスチャ。実施形態に基づいて示される装飾態様の単なるいくつかである、実施形態のそれらの装飾態様は、器具、又は任意のパーツの機能的目的の実用的な態様に影響を及ぼさず、そして従って、無限の数の他の装飾デザインにより置換され得る。
本発明の実施形態は、下記に提供される実施例を参照することにより、さらに理解され得る。
実施例1:チザニジン遊離塩基+収着促進剤
インプラントの製造のために、次の一般的手順に従った。管材料を、長尺ロールに受け、そして片刃カミソリ刃(又は適切なサイズのメス)を用いて、適切な出発長に切断した。各管部の一端を、熱により密封し、管部の先端に半球状の栓を付与した。
薬剤物質及び収着促進剤をTurbulaブレンダーにより予備混合した。ステアリン酸を滑剤として添加し、そしてその混合物を再び、Turbulaブレンダーにより混合した。
薬剤ブレンドを、シングルパンチ打錠機を用いて圧縮した。薬剤ペレットを、管の各密封された部分内に手動的に配置した。各ペレット含有管部分の開放部分を、半球状シールに密封した。滅菌を、インプラントのγ線照射により達成した。
インプラントの寸法は、約40mmのインプラントの全長、4.0mmの外径(OD)、3.6mmの内径(ID)及び0.2mmの壁厚であった。活性医薬成分(「API」
)としてさまざまな濃度のチザニジン遊離塩基及びクロスカルメロース、残りが滑剤として2%のステアリン酸を混合した薬剤の9個のペレットを、ポリウレタン管材料(TECOFLEX(登録商標)EG‐80A)中に設置した。APIを、収着促進剤の増加量を適合させるために変化させた(薬剤ペレット中に5%のクロスカルメロースを含むインプラントにおいて使用される405mgのAPI、薬剤ペレット中に10%のクロスカルメロースを含むインプラントにおいて使用される385mgのAPI、及び薬剤ペレット中に15%のクロスカルメロースを含むインプラントにおいて使用される360mgのAPI)。インプラントを、γ線照射により滅菌し、そして37℃で、100mLのPBSから成る溶出槽に設置した。溶出媒体の毎週の交換を、27週間にわたって、HPLCにより分析し、そして結果を図4に示す。最も低濃度のクロスカルメロース(5%)において、溶出は、27週で約900μg/日に徐々に減少する前に2週で約1,200μg/日であり、一方、最も高濃度のクロスカルメロース(15%)は、27週で約1,250μg/日に徐々に減少する前に2週間で約1400μg/日の溶出速度を達成し、さまざまなレベルの収着促進剤の添加を介して薬物放出の制御を可能にした。
実施例2:PEBAX(登録商標)インプラント
インプラントの製造のために、次の一般的手順に従った。管材料を、長尺ロールに受け、そして片刃カミソリ刃(又は適切なサイズのメス)を用いて、適切な出発長に切断した。各管部の一端を、熱により密封し、管部の先端に半球状の栓を付与した。
API及び収着促進剤、例えばクロスカルメロースナトリウムを、Turbulaブレンダーにより予備混合した。ステアリン酸を滑剤として添加し、そしてその混合物を再び、Turbulaブレンダーにより混合した。標準最終薬剤ブレンドは、88%のAPI、10%の収着促進剤、及び2%のステアリン酸粉末であった。
APIブレンドを、シングルパンチ打錠機を用いて圧縮した。薬剤ペレットを、管の各密封された部分内に手動的に配置した。各ペレット含有管部分の開放部分を、半球状シールに密封した。滅菌を、インプラントのγ線照射により達成した。
離散固体剤形を以下のように調製した。薬剤インプラントを、管材料としてPEBAX(登録商標)2533及びPEBAX(登録商標)3533、及びAPIとしてチザニジン遊離塩基を使用して製造した。インプラントの寸法を、約50mmのインプラントの全長、4.0mmの外径(OD)、3.6mmの内径(ID)及び0.2mmの壁厚であった。全量約250mgのチザニジン遊離塩基を、10%のクロスカルメロース及び2%のステアリン酸を有するインプラント中に充填した。インプラントを、γ線照射により滅菌し、そして37℃で、200mLの0.9%生理食塩水から成る溶出槽に設置した。溶出媒体の毎週の交換を、110日にわたって、それぞれ、HPLCにより分析した。グラフを図5に示す。チザニジンの放出速度は、約1,300μg/日〜約1,700μg/日の間であった。
実施例3:チザニジン塩酸塩
インプラントの製造のために、次の一般的手順に従った。管材料を、長尺ロールに受け、そして片刃カミソリ刃(又は適切なサイズのメス)を用いて、適切な出発長に切断した。各管部の一端を、熱により密封し、管部の先端に半球状の栓を付与した。
API及び収着促進剤、例えばクロスカルメロースナトリウムを、Turbulaブレンダーにより予備混合した。滑剤を添加し、そしてその混合物を再び、Turbulaブレンダーにより混合した。標準最終薬剤ブレンドは、88%のAPI、10%の収着促進剤、及び2%の滑剤であった。
薬剤ブレンドを、シングルパンチ打錠機を用いて圧縮した。薬剤ペレットを、管の各密封された部分内に手動的に配置した。各ペレット含有管部分の開放部分を、半球状シールに密封した。滅菌を、インプラントのγ線照射により達成した。
離散固体剤形を以下のように調製した。さまざまなポリウレタンを、管材料(すなわち、TECOFLEX(登録商標)EG‐80A、TECOFLEX(登録商標)EG‐85A、TECOFLEX(登録商標)EG‐93A、TECOPHILIC(登録商標)HP‐60D‐05、及びTECOPHILIC(登録商標)HP‐60D‐10ポリウレタン)として使用し、そしてAPIとしてチザニジン塩酸塩を使用した。インプラントの寸法を、約50mmのインプラントの全長、4.0mmの外径(OD)、3.6mmの内径(ID)及び0.2mmの壁厚であった。全量約380mgのチザニジン塩酸塩を、10%のクロスカルメロース及び2%のステアリン酸を有するインプラント中に充填した。インプラントを、γ線照射により滅菌し、そして37℃で、200mLのPBSから成る溶出槽に設置した。溶出媒体の毎週の交換を、5週間にわたって、HPLCにより分析した。グラフを図6に示す。インプラントからの薬剤放出は、試験したすべてのポリウレタンについて100μg/日未満であった。
実施例4:チザニジン遊離塩基
薬剤インプラントを、チザニジン遊離塩基をチザニジンHClの代わりにAPIとして使用したことを除いて、実施例3に記載のように製造した。インプラントの寸法を、約40mmのインプラントの全長、4.0mmの外径(OD)、3.6mmの内径(ID)及び0.2mmの壁厚であった。全量約250mgのチザニジン遊離塩基を、10%のクロスカルメロース及び2%のステアリン酸を有するインプラント中に充填した。インプラントを、γ線照射により滅菌し、そして37℃で、200mLのPBSから成る溶出槽に設置した。溶出媒体の毎週の交換を、36週間にわたって、HPLCにより分析した。グラフを図7に示す。インプラントからの薬剤放出について、図7に示されたように、より低いAPIの充填(すなわち、250mgのチザニジン遊離塩基対380mgのチザニジンHCl)でさえ、チザニジンHClで使用した同じポリマーからのチザニジン遊離塩基は、約10〜15倍高かった。放出速度は、TECOFLEX(登録商標)EG‐93Aに関して約100μg/日〜TECOFLEX(登録商標)EG‐80Aに関して約900μg/日まで変化した。
本発明は特定の実施形態を参照して例示され、そして記載されているが、本発明は示される詳細に限定されるものではない。むしろ、種々の修飾が、請求項及び同等の範囲内で及び本発明から逸脱することなく、詳細に行われ得る。