JP2014514312A - 新規な低刺激性アレルゲン - Google Patents

新規な低刺激性アレルゲン Download PDF

Info

Publication number
JP2014514312A
JP2014514312A JP2014505597A JP2014505597A JP2014514312A JP 2014514312 A JP2014514312 A JP 2014514312A JP 2014505597 A JP2014505597 A JP 2014505597A JP 2014505597 A JP2014505597 A JP 2014505597A JP 2014514312 A JP2014514312 A JP 2014514312A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
seq
bet
polypeptide
wild type
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014505597A
Other languages
English (en)
Inventor
タッキネン、クリスティーナ
ラウッカネン、マルヤ―レーナ
セデルルンド、ハンス
ジルヘ、シルパ
ホルケリ、ヘイディ
ニエミ、メルヤ
ロウビネン、ジュハ
Original Assignee
テクノロジアン・トゥトキムスケスクス・ブイティティー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by テクノロジアン・トゥトキムスケスクス・ブイティティー filed Critical テクノロジアン・トゥトキムスケスクス・ブイティティー
Publication of JP2014514312A publication Critical patent/JP2014514312A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/35Allergens
    • A61K39/36Allergens from pollen
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/08Antiallergic agents

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

本発明は、低刺激性アレルゲンとして有用な突然変異体ポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、突然変異体のBet v 1タンパク質およびこのようなポリペプチドの、カバノキ花粉アレルギーに対して脱感作するための低刺激性アレルゲンとしての使用を提供する。さらに、本発明は、このようなポリペプチドを含むワクチン処方物、このような処方物の使用、およびカバノキ花粉アレルギーに対するワクチン接種の方法も提供する。

Description

発明の分野
本発明は、低刺激性アレルゲンとして有用な突然変異体ポリペプチドに関する。より具体的には、本発明は、突然変異体のBet v 1タンパク質、およびカバノキ花粉アレルギーに対して脱感作するための低刺激性アレルゲンとしての、このようなポリペプチドの使用に関する。さらに、本発明は、このようなポリペプチドを含むワクチン処方物、ワクチン接種におけるこのような処方物の使用、およびカバノキ花粉アレルギーに対するワクチン接種の方法にも関する。
発明の背景
アレルギーは、一般的には無害なタンパク質であるアレルゲンに対する免疫反応によって引き起こされる。アレルギー性疾患は、全世界で流行性といい得る比率に達しつつある。工業国における人口の25%超が、I型アレルギーを患い、その数は、着実に増大しつつある。カバノキ花粉アレルギーは、I型アレルギーの極めて一般的な形態である。Bet v 1とは、カバノキ花粉の主要なアレルゲンである。Bet v 1アレルゲン、そのイソアレルゲン、および変異体についてのより多くの情報は、WHOのウェブサイトであるwww.allergen.orgにおいて見出される。
I型アレルギーは、免疫グロブリンE(IgE)抗体の形成に基づき、アレルゲン分子が、マスト細胞または好塩基球の表面上の受容体に結合した2つのIgE抗体に結合し、IgE−FcεRI複合体の架橋形成を誘導すると、症状が発生する。これは、炎症性の反応および症状、例えば、アレルギー性喘息、鼻炎、食物および皮膚アレルギー、ならびにまたアナフィラキシーを引き起こす生物学的メディエーター、例えば、ヒスタミンおよび脂質メディエーターの脱顆粒を誘発する。
IgEは、2つの同一な軽鎖および重鎖からなる大型の分子である。IgEの重鎖には5つのドメイン:VH、Cε1、Cε2、Cε3、およびCε4が存在する。完全なIgE分子のサイズは、約200kDaである。そのFcεRI受容体へと結合したCε2〜Cε4断片およびCε2〜Cε4断片の結晶構造は、決定されている(Garmanら、Nature 2000(406):259〜266;およびWanら、Nature Immunology、2002(3):681〜686)。
過去数年間において、多数の異なるアレルゲンの三次元構造が決定されている。これらのアレルゲンは、構造的に大幅にばらつき、アレルゲンがIgE抗体の産生を引き起こす能力を説明しうる一般的な構造モチーフは同定されていない。しかし、アレルギー誘発性が少数のタンパク質ファミリーだけに制約されていることを示唆する研究がなされており、これにより、タンパク質の構造的特徴もまた、アレルギー誘発性において役割を果たすという証拠が提起されている(Rouvinenら、PloS ONE 2010(5):e9037;Raudauerら、J Allergy Clin Immunol.2008(121):847〜852)。
Niemiらによる最近の文献、Structure 2007(15):1413〜21は、β−ラクトグロブリン(BLG)と複合体化したIgEのFab断片の結晶構造について開示している。Niemiらはまた、2つのIgE/Fab分子が、二量体のBLGにいかに結合するのかについても示し、IgEのエピトープが、βシート領域内に位置する「平坦な」表面であり、既知のIgGエピトープ構造と比較すると異なることについても示した。
今日、全てのアレルギー性症状の処置における趨勢は、しばしば不可能であるか、または症状の処置に過ぎないアレルゲンの回避ではなくて、アレルゲン特異的脱感作を用いる、能動的な忍容性の誘導へと向かっている。現行の脱感作療法は、天然の供給源から精製されたアレルゲンであって、バッチ間のばらつきにより、処置の適正な用量および有効性を見出し、これを維持することと関連する問題がもたらされうるアレルゲンに基づく。これらの問題は、アナフィラキシー性の副作用および新たなアレルゲンへの感作の潜在的危険性をもたらしうる。
脱感作のために組換えアレルゲンを用いれば、バッチ間のばらつきと関連する欠点が除去されるであろうし、最初の組換えアレルゲンが臨床試験にかけられている(Valentaら、Annu Rev Immunol 2010(28):211〜41)。したがって、臨床におけるこのようなアレルゲンの有効性は、今後の課題である。いくつかの修飾組換えアレルゲンが報告されている。
国際特許公開WO02/40676および同WO03/096869は、カバノキ花粉アレルゲンであるBet v 1の多くの突然変異体形態を開示している。これらの突然変異体は、ランダム突然変異を、Bet v 1ポリペプチドの保存的表面構造の配列解析に基づく推定IgE結合部位に導入することにより作製された。WO03/096869は、アレルゲン表面上の異なる「小型基」における4つの主要な突然変異の使用について開示している。
国際特許公開WO2007/073907は、アミノ酸部位54、115、または123における3つのアミノ酸の置換または欠失を含むBet v 1ポリペプチドについて開示している。これらの突然変異体により、ヒスタミン放出能が低減されたという証拠はない。
国際特許公開WO2009/024208は、アミノ酸100〜125の領域内に少なくとも4つの突然変異を有するBet v 1突然変異体について開示している。しかし、突然変異のためにポリペプチドの三次元構造は失われており、活性も報告されていない。
国際特許公開WO2008/092992は、不連続のアレルゲン誘発性エピトープ、すなわち、アレルゲン誘発性物質上の600〜900Åの領域を伴う平面状の表面におけるアミノ酸残基を修飾することにより、I型表面におけるアレルゲン誘発性物質の相互作用を遮断する方法について開示し、これにより、低刺激性カバノキ花粉タンパク質を調製しうることを示唆している。
アレルギー治療の問題の増大に応じるための、安全で有効なワクチンおよび治療用生成物に対するニーズは、認知されており、大きなものである。現在のところ、アレルギーの安全で有効な療法のための市場は十分に開発されていない。
発明の簡単な説明[開示]
本発明は、配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、または任意の他のBet v 1野生型アイソフォームに基づく、組換えカバノキ花粉Bet v 1ポリペプチドであって、アミノ酸残基101、137、99、80、82、84、117、119、7、9、133、141、および145からなる群から選択される位置における、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むポリペプチドに関する。
好ましい態様では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、アミノ酸残基E101、K137、S99、K80、N82、S84、S117、K119、T7、T9、V133、E141、およびR145からなる群から選択される位置におけるものである。
特定の態様では、本発明によるポリペプチドが、配列番号4〜39からなる群から選択されているアミノ酸配列により表される。
一態様では、本発明によるポリペプチドが、アミノ酸101、137、または99位、好ましくはE101、K137、またはS99に位置するアミノ酸置換を有する。
本発明の一態様では、前記置換が、チロシンにより置きかえられているS99であり、別の態様では、前記置換が、チロシンにより置きかえられているK137である。さらなる態様では、前記置換が、リシンにより置きかえられているE101である。
本発明による低刺激性ポリペプチドは、ヒスタミン放出能が、Bet v 1野生型のヒスタミン放出能と比較すると、少なくとも20分の1に低減されている。一態様では、ポリペプチドのヒスタミン放出能が、少なくとも100分の1に低減されている。
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの低刺激性ポリペプチドを含むワクチンにも関する。
本発明の一態様では、前記ワクチンが、舌下投与用である。
本発明は、配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、またはその任意のBet v1野生型変異体に基づく組換えカバノキ花粉Bet v1ポリペプチドであって、アミノ酸残基E101、K137、S99、K80、N82、S84、S117、K119、T7、T9、V133、E141、およびR145からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含むポリペプチドの、単独でまたは少なくとも1つの医薬として許容可能なアジュバントと組み合わせた、ワクチンとしての使用にさらに関する。
本発明はまた、カバノキ花粉アレルギーに対してワクチン接種する方法であって、それを必要とする対象に、本発明による低刺激性ポリペプチドの少なくとも1つと、少なくとも1つの医薬として許容可能なアジュバントを含む組成物を投与することを含む方法にも関する。
本発明はまた、配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、または任意の他のBet v1野生型アイソフォームに基づく組換えカバノキ花粉Bet v 1ポリペプチドであって、アミノ酸残基101、137、99、80、82、84、117、119、7、9、133、141、および145からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、ワクチンとして用いるためのポリペプチドにも関する。
以下では、本発明が、付属の図面を参照しながら、好ましい態様を介して、より詳細に記載される。
例1において導出されるBet v1の第1の推定エピトープを例示する図。 例1において導出されるBet v1の第2の推定エピトープを例示する図。 Bet v 1の36のアイソフォームのアミノ酸配列アラインメントを示す図。 組換えアレルゲンを産生するための細菌の発現ユニットであって、Ptacがプロモーターであり、PelB SSが組換えアレルゲンのコード領域へと連結されたシグナル配列であり、星印がアミノ酸置換部位を例示する発現ユニットを概略的に示す図。 例2で用いられるBet v 1野生型ポリペプチド(A)、S99Yポリペプチド(B)、K137ポリペプチド(C)、およびE101Kポリペプチドの核酸配列(配列番号1〜3)を示す図。 血清中IgEのBet v 1への結合に対する、組換えBet v 1、Bet v 1 S99YおよびE101Kポリペプチドによる競合的阻害を示す図。 組換えBet v 1、Bet v 1 S99Y、およびK137Yポリペプチドによるヒスタミン放出実験の結果を示す図。 濃度3μMにおける組換えBet v 1野生型および組換えBet v 1突然変異体E101Kの未変性型ESI FT−ICR質量スペクトルを示す図。
発明の詳細な説明
以下の記載、例、および特許請求の範囲では、アミノ酸に3文字コードと1文字コードの両方を用いる。本発明によるポリペプチドにおけるアミノ酸部位を命名するために、以下のコードが使用される:S99とは、99位にセリンが存在することを意味するのに対し、S99Yとは、99位におけるセリンがチロシンにより置きかえられていることを意味する。
カバノキ花粉アレルギーとは、アレルギーの極めて一般的な形態であり、シラカバ(Betula verrucosa)の花粉は、欧州および北米におけるI型アレルギー反応の主要な原因の1つである。人口の約10〜15%が、カバノキ花粉アレルギーを患っている可能性があることが推測されている。さらに、対象が花粉にさらされない場合であっても、他のアレルゲン、例えば、リンゴアレルゲンが、アレルギー性反応を引き起こすカバノキ花粉に特異的なIgEと交差反応する。
Bet v 1とは、カバノキ花粉の主要なアレルゲンであり、カバノキ花粉アレルギー性対象のうちの95%超におけるIgE結合の一因である。Bet v 1とは、分子量が17kDのタンパク質である。野生型Bet v 1のアミノ酸配列を、配列番号4に示す。WHOのアレルゲンについてのウェブサイト(www.allergen.org)は、Bet v 1の36のアイソフォームを列挙しており、その配列は図3で対比されている。アラインメントは、Bet v 1が、高度に保存的であることを示す。本発明において野生型Bet v 1として用いられるアイソフォームは、アイソフォームBet v 1a(Bet v 1.0101)であるが、これらのイソアレルゲンのうちの何れか1つを用いて、本発明による低刺激性変異体を提供することができる。野生型配列(配列番号4)は、全てのBet v 1アイソフォーム配列を含むことを意図している。
合計36のBet v 1アイソフォームのアミノ酸配列は、それぞれ、配列表で以下の通りに開示される:1.0101(配列番号4)、1.0102(配列番号5)、1.0103(配列番号6)、1.2501(配列番号7)、1.1501(配列番号8)、1.1502(配列番号9)、1.2801(配列番号10)、1.3001(配列番号11)、1.2901(配列番号12)、1.2301(配列番号13)、1.0501(配列番号14)、1.0601(配列番号15)、1.0602(配列番号16)、1.0801(配列番号17)、1.1701(配列番号18)、1.0401(配列番号19)、1.0402 0801(配列番号20)、1.0701 0801(配列番号21)、1.1001 0801(配列番号22)、1.2401 0801(配列番号23)、1.2601 0801(配列番号24)、1.2701 0801(配列番号25)、1.2201 0801(配列番号26)、1.0201 0801(配列番号27)、1.0901 0801(配列番号28)、1.0301 0801(配列番号29)、1.1401 0801(配列番号30)、1.1402 0801(配列番号31)、1.1901 0801(配列番号32)、1.2001 0801(配列番号33)、1.1801 0801(配列番号34)、1.1101 0801(配列番号35)、1.1201 0801(配列番号36)、1.1601 0801(配列番号37)、1.2101 0801(配列番号38)、および1.1301 0801(配列番号39)。
Bet v 1のアイソフォームは、異なるアレルゲン誘発の可能性を有する変異体を包含する。Bet v 1のアイソフォームは、配列番号4のBet v 1野生型アミノ酸配列と少なくとも94%同一である。例えば、Bet v 1.0101に対するアミノ酸残基同一性が96%のアイソフォームであるBet v 1.0401と、残基同一性が94%のBet v 1.1001は、それらがメディエーター放出の微弱な誘導剤であるために、天然の低刺激性アレルゲンとして同定されている。
本発明は、Bet v 1の突然変異させた低刺激性変異体であって、それを必要とする対象を免疫化し、これにより、カバノキ花粉に対するアレルギーを防止および/または緩和し、カバノキ花粉に対するアレルギーを患う対象を脱感作するためのワクチンとして有用な低刺激性ポリペプチド変異体を提供する。本発明による組換えカバノキ花粉Bet v 1ポリペプチドは、アミノ酸残基E101、K137、S99、K80、N82、S84、S117、K119、T7、T9、V133、E141、およびR145からなる群から選択される位置における、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むように野生型アミノ酸配列を突然変異させる。本発明によるポリペプチドは低刺激性であり、突然変異させていないBet v 1野生型のヒスタミン放出能と比較して少なくとも20分の1、好ましくは100分の1に低減されたヒスタミン放出能を呈示する。
本発明による低刺激性ポリペプチドは、アレルギー、とりわけ、カバノキ花粉アレルギーに対するワクチンとして有用である。本発明によるポリペプチドを含むワクチンは、当業者に知られている標準的な製薬手順により調合される。本発明によるワクチンは、とりわけ、舌下投与に適する。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、本発明の少なくとも1つの組換え低刺激性Bet v 1ポリペプチドと、少なくとも1つの医薬として許容可能な希釈剤またはアジュバント、例えば、生理食塩液、緩衝液、水酸化アルミニウムなどとを含む。
本発明による低刺激性変異体は、いくつかの(1〜5)特異的なアミノ酸残基、例えば、かさ高い側鎖がBet v 1のエピトープ表面に位置する残基を突然変異させることにより得られる。選択されたアミノ酸残基は、それらの側鎖が溶媒の方へと外側を向く残基である。このような残基を突然変異させることによりアレルゲンの基本的な三次元構造に最小限の変化を引き起こす。しかし、好ましくは、変異体の全体的構造が野生型アレルゲンの全体的構造と依然として酷似している一方で、突然変異誘発により、エピトープの表面が、マスト細胞表面におけるIgE抗体の結合および架橋形成が防止されるかまたは強く低減される程度まで修飾される。このような突然変異は、野生型アレルゲンと突然変異させた変異体アレルゲンの両方に結合する能力を有するIgGおよび他の防御的抗体の誘導に好適である。突然変異の効果は、アレルゲン特異的IgE抗体の、修飾Bet v 1アレルゲンに対するアフィニティーの低下として決定される。好ましくは、突然変異は、特異的IgE抗体のアフィニティーを、少なくとも10分の1、好ましくは少なくとも20分の1、より好ましくは20から100分の1、最も好ましくは100分の1未満に減少させる。結果として得られる修飾Bet v 1アレルゲンは、アレルギー性患者におけるカバノキ花粉に対する忍容性を惹起するのに用いることができる。
アレルゲン特異的脱感作において有用な、本発明による低刺激性変異体ポリペプチドは、2つの特徴:1)IgEを介する反応を強く低減する能力;および2)野生型3Dフォールディングの保持であり、したがって、wtアレルゲンに結合することが可能なIgG抗体の産生を誘導する能力を保有する。
IgE結合エピトープの構造についての知識があれば、低刺激性変異体のデザインが大幅に簡略化されるであろう。しかし、IgE抗体と共に複合体化したBet v 1の構造は、残念ながら入手可能でない。また、エピトープ走査におけるペプチドの使用も信頼できるものではなく、実際に有用なのは直鎖状エピトープを走査する場合に限られる(Niemiら、Structure 2007(15):1413〜21)。単一のペプチドの立体配座のほか、物理的特性、例えば、可溶性は、天然のタンパク質構造の一部を形成するポリペプチド鎖の対応する部分の場合とは顕著に異なりうる。したがって、突然変異体Bet v 1アレルゲンのデザインは、突然変異体を調製し、これを調べることにより、エピトープの構造を解明し、潜在的なヒットについて調べるのに分子グラフィックスプログラム、例えば、PyMOLを用いる、分子表面解析に基づいた。
Bet v 1(タンパク質データバンクコード:1BV1)の結晶構造を用いて、Bet v 1の四次構造を規定した。PDBePISAのインターネットサーバーを、Bet v 1の対称性の二量体のための座標を創出するのに用いた。マスト細胞表面上のクラスター内のIgE抗体間の距離は、約5nmであることが推測されている(Knol,EF;Mol.Nutr.Res.50(2006):620)。Bet v 1の分子表面上では、対称軸から2.5nm以内の距離にある2回対称軸周囲のBet v 1二量体の分子表面を研究することにより、2つの推定エピトープ(図1および図2)が同定された。
推定エピトープ1が、アミノ酸残基V2〜E6;R70〜D75;N78〜S84;E96〜K103;およびK115〜H121からなるのに対し、推定エピトープ2は、アミノ酸残基F3〜V12;A130〜L152;およびT107〜D109からなる。
突然変異点として使用できるアミノ酸残基を同定するために、これらの推定エピトープを注意深く解析した。好ましい突然変異点は、アレルゲンのIgE抗体への結合を減少させるが、野生型アレルゲンの三次元構造をやはり維持する能力を有するものとする。第1の推定エピトープは、アミノ酸残基K80、N82、S84、S99、E101、S117、およびK119を包含する。第2の推定エピトープは、残基T7、T9、V133、K137、E141、およびR145を包含する。残基S99、E101KおよびK137は、それらが、2つの推定エピトープの中央部に位置するので、最も興味深い突然変異点と考えられた。
これらの3つの残基は、Bet v 1の36のアイソフォーム全てにおいて高度に保存的であり、残基99において唯一の変異があり、セリン(24のアイソフォームにおける)、またはシステイン(12のアイソフォームにおける)として存在する。図3において示される通り、残基80、84、119、141、および145が保存的であるのに対し、残基82、117、7、9、133はわずかに変異する。
次のステップは、各残基に適切な突然変異を選択することであった。例として述べると、S99(エピトープ1における)は、小型で親水性および中性のアミノ酸残基である。したがって、IgEの結合に干渉する突然変異となれば、「反対の」性質、すなわち、大型でかつ/または帯電した残基のもの、例えば、Phe、Asp、Glu、Lys、Arg、Tyr、His、またはTrpへの突然変異となるであろう。同様に、エピトープ1におけるE101も、反対の電荷を伴う残基(Lys、Arg)または疎水性残基(Tyr、Trp、Phe、Val、Ile、またはLeu)で置きかえることができる。第2の例として述べると、K137の側鎖(エピトープ2における)は、長く、可撓性であり、正に帯電している。小型の残基への突然変異であれば、自由空間により抗体への結合を防止しないために、おそらく役に立たないであろう。したがって、K137は、負に帯電した残基であるAsp、Gluで、または非可撓性で大型の残基、例えば、Trp、Tyr、Phe、Ile、もしくはMetで置換されることになろう。
したがって、残基K80、N82、S84、E101、S117、およびK119ならびに残基T7、T9、V133、E141、およびR145のそれぞれにおける置換をデザインしうるであろう。表1は、本発明によるBet v1低刺激性突然変異体をもたらす潜在的な置換を列挙する。
本発明の好ましい態様では、本発明のポリペプチドが、配列番号41〜53からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのアイソフォームを含む。好ましくは、本発明のポリペプチドが、配列番号41〜53からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのアイソフォームを有する。
さらに好ましい態様では、ポリペプチドが、アミノ酸101がKである配列番号41、アミノ酸137がKである配列番号42、アミノ酸99がKである配列番号43、アミノ酸80がYである配列番号44、アミノ酸82がKである配列番号45、アミノ酸84がKである配列番号46、アミノ酸117がKである配列番号47、アミノ酸119がEである配列番号48、アミノ酸7がEである配列番号49、アミノ酸9がEである配列番号50、アミノ酸133がYである配列番号51、アミノ酸141がKである配列番号52、およびアミノ酸145がYである配列番号53、またはそのアイソフォームからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、ポリペプチドが、それぞれ、上述の置換を伴うこれらのアミノ酸配列である配列番号41〜53のうちの何れか1つ、またはそのアイソフォームを有する。配列番号41は、Bet v 1ポリペプチド配列であって、101位におけるアミノ酸が置換されており、野生型アミノ酸EではないBet v 1ポリペプチド配列を開示している。同様に、配列番号42〜53は、Bet v 1ポリペプチドであって、137、99、80、82、84、117、119、7、9、133、141、および145位におけるアミノ酸が、それぞれ、置換されており、野生型のアミノ酸ではないBet v 1ポリペプチドを示す。
本発明のさらに好ましい態様では、Bet v 1の置換が、少なくとも、E101およびK137、E101およびS99、E101およびK80、E101およびN82、E101およびS84、E101およびS117、E101およびK119、E101およびT7、E101およびT9、E101およびV133、E101およびE141、E101およびR145、K137およびS99、K137およびK80、K137およびN82、K137およびS84、K137およびS117、K137およびK119、K137およびT7、K137およびT9、K137およびV133、K137およびE141、K137およびR145、S99およびK80、S99およびN82、S99およびS84、S99およびS117、S99およびK119、S99およびT7、S99およびT9、S99およびV133、S99およびE141、S99およびR145位にある。
本発明の好ましい一態様では、併せて少なくとも2、3、または4つのアミノ酸置換が存在する。好ましくは、本発明のポリペプチドが、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の置換を有する。より好ましくは、ポリペプチドが、2、3、または4つの置換を有する。本発明の利点の1つは、少数の(少なくとも2つの)置換だけが、所望の効果に必要とされることである。
本発明による修飾Bet v 1低刺激性アレルゲンは、ワクチンとして有用である。従来のアレルギー用ワクチン接種は、典型的に、長期間、例えば、1年から2年にわたる複数回の皮下免疫化として実行する。アナフィラキシー反応の危険性を最小化するために、免疫化スキームを初期の用量増加相および維持相の2相で適用する。用量増加相は、微量で開始し、次いで、典型的には、維持用量に達するまで16週間にわたりゆっくりと増加させる。維持相は、典型的に、6週目ごとの注射を含む。このようなワクチン接種のレジメは、患者にとって退屈であり、長期にわたる拘束が要請される。さらにこのようなワクチン接種のレジメは、安全性および再現性の点で、ワクチンの安定した品質に対して大きな影響を及ぼす。患者は、各注射後に、厳密にモニタリングされ、しばしば、入院することが必要である。
本発明による低刺激性アレルゲンのヒスタミン放出能は実質的に低減されるので、用量増加相は、従来のアレルギー用ワクチン接種の用量増加相よりかなり短いか、または、最良の場合、用量増加スキームは必要とされない可能性があるだろう。本発明による修飾組換え低刺激性アレルゲンは、バッチ間のばらつきを少しも示さない。したがって、用量応答および起こり得る副作用についての緊密なモニタリングは必要とされない。
本発明は、カバノキ花粉アレルギーに対してワクチン接種する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の少なくとも1つの低刺激性ポリペプチドと、少なくとも1つの医薬として許容可能なアジュバントとを含む組成物を投与することを含む方法にさらに関する。低刺激性ポリペプチドのワクチン接種スケジュールおよび量であって、カバノキ花粉に対する防御的抗体の産生を誘導するのに有効なワクチン接種スケジュールおよび量が用いられる。
ワクチン接種の「対象」は、ヒト(成人、小児、または青年)または動物である。好ましくは、動物は、任意の家畜動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはブタである。「それを必要とする対象」とは、カバノキ花粉アレルギーを患うヒトまたは動物を意味する。
例えば、本発明による低刺激性アレルゲンは、従来のワクチン処方物、例えば、当技術分野でよく知られた方法を用いる水酸化アルミニウム吸着ワクチンとして調合される(Niederbergerら、PNAS、101(2):14677〜82、2004年)。しかし、本発明による低刺激性アレルゲンは、当技術分野で知られた方法および処方物を用いて、他の適切なワクチン接種の経路およびスキーム、例えば、口腔粘膜または舌下投与により投与されうる。例えば、欧州特許公開EP1812059を参照されたい。
修飾Bet v 1低刺激性アレルゲンであれば、例えば、0.5μg/ml、5μg/ml、または50μg/mlの濃度で用いうるであろう。例示的な用量は、アレルギーの重症度、患者の年齢、および治療履歴に応じて、可能な用量増加相において0.05μg〜2μg、維持相において3〜15μg、好ましくは5〜15μg、最も好ましくは約10μgで変化させることができる。適切な用量は、アレルギーの処置および防止に精通した医師により容易に決定される。
国際特許公開WO04/047794は、アレルギーワクチンを舌下投与するための固体の急速分散剤形を開示しており、米国特許出願第2009/0297564号は、口腔粘膜投与するための液体のワクチン処方物を開示している。
本発明による修飾Bet v 1低刺激性アレルゲンは、舌下用ドロップを用いて舌下投与するのにも適切である。この目的で、低刺激性ポリペプチドが生理食塩液中に提供される。ポリペプチドを投与するのに安全かつ有効な用量範囲のほか、所望の免疫応答を誘発することが可能な投与レジメは、当技術分野で知られた方法およびスキームを用いる、本発明によるワクチン候補物質の臨床開発において決定される。
本発明による低刺激性アレルゲンの単回の最大耐量は、増加する舌下投与量に曝露されるアレルギー性の男性および女性対象における研究で決定される。あらかじめ規定された用量の最大耐量に達したら、研究を、毎日の投与を伴う用量決定研究であって、用量レベルの変化が2から4倍である研究へと適合させる。初期用量は、10〜100μgの範囲であり、研究は、最大20mgでありうる舌下最大耐量をもたらす。
その後、毎日または毎週投与される広範な用量範囲にわたり、用量漸増研究および用量決定研究を行う。ワクチン接種用量範囲の安全性については、複数回の投与を行う前に、皮膚プリックテストで予備的に調べる。これらの研究は、第1に、免疫学的パラメーターをもたらし、第2に、カバノキ花粉による感作後における最終的な有効性をもたらす。
本発明による低刺激性ポリペプチドワクチンは、TH2型からTH1型へのシフトとして検出可能なT細胞応答を誘発するものとする。IgG抗体の産生は、アレルゲン誘発性感作試験を開始する前に実証可能であるものとする。
最後に、アレルギー性患者における研究を、3〜6カ月間にわたり多数回の舌下投与に曝露されるアレルギー性男性および女性対象における二重盲検無作為化プラセボ対照脱感作研究として、最初の12カ月間追跡を伴って実施する。対象は、研究を開始する前のほか、その後6カ月ごとに、二重盲検式でアレルゲンにより感作される。
研究は、天然のアレルゲンへと感作されるときの、プラセボを施される群と、本発明による低刺激性アレルゲンワクチンを施される群の間で、統計学的および臨床的な有意差を示すことになる。
[実施例]
以下の例は、本発明の態様をさらに例示するために示されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者には、技法が高度になるにつれて、発明の概念を多様な形で実施しうることが明らかであろう。したがって、本発明およびその態様は、本明細書で記載される例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変化しうるものである。
例1Bet v 1突然変異のデザイン
低刺激性アレルゲンのデザインにおける目標は、マスト細胞表面におけるIgE−抗体に結合し、これを架橋する能力が強く低減されるが、野生型アレルゲンと酷似する構造を依然として維持する突然変異体アレルゲンを達成することである。これは、野生型アレルゲンと突然変異体アレルゲンの両方に結合する能力を有するIgGおよび他の抗体の誘導に好適であろう。
IgE結合エピトープについての知識があれば、デザインが大幅に簡略化されるであろう。しかし、IgE抗体と共に複合体化したBet v 1の構造は、入手可能でない。また、エピトープ走査におけるペプチドの使用も信頼できるものではない(Niemiら、2007)。エピトープについて示唆する唯一の方法は、突然変異体を調製することにより、Bet v 1アレルゲンの分子表面を研究し可能なヒットを調べることである。第1に、本発明者らは、Bet v 1の分子表面上において推定エピトープを同定した(図1および図2)。第2に、本発明者らは、これらの推定エピトープ上において、突然変異させると、野生型アレルゲンと類似する三次元構造を維持するが、それにもかかわらずIgE抗体への結合を減少させる能力を依然として有する残基を選択した。第1の推定エピトープには、アミノ酸残基K80、N82、S84、S99、E101、S117、およびK119が含まれる。第2の推定エピトープは、残基T7、T9、V133、K137、E141、およびR145を包含する。
第3のステップは、各残基について突然変異を選択することである。例として、S99(エピトープ1における)は、小型で親水性および中性の残基である。したがって、IgEの結合に干渉する突然変異となれば、「反対の」性質、大型でかつ/または帯電した、例えば、Phe、Asp、Glu、Lys、Arg、Tyr、His、Trpとなるであろう。エピトープ1におけるE101Kの場合なら、IgEの結合に干渉する突然変異が、反対の電荷を伴う残基(Lys、Arg)を用いること、または疎水性残基(Tyr、Trp、Phe、Val、Ile、Leu)を用いることを包含しうるであろう。第2の例として述べると、K137の側鎖(エピトープ2における)は、長く、可撓性であり、正に帯電している。小型の残基への突然変異であれば、自由空間により抗体への結合を防止しないために、おそらく役に立たないであろう。したがって、K137は、負に帯電した残基であるAsp、Gluで、または非可撓性で大型の残基、例えば、Trp、Tyr、Phe、Ile、およびMetで置換されることになろう。
例2 組換えBet v 1分子のクローニング
組換えBet v 1分子(rBet v 1)の野生型および突然変異体を作製するために、これらの特定のタンパク質をコードするcDNAを、細菌性の発現プラスミドへとクローニングした(図4)。まず、例1でデザインされたrBet v 1のcDNAであって、Escherichia coliによる、ベクターpUC57における産生(wt、S99Y、E101K、およびK137Y)のためのコドン最適化を伴うcDNAを、GenScript Corporation(USA)へ注文した。cDNAは、5’端におけるNcoI制限部位および3’端におけるHindIIIを含有した。cDNAを、NcoI−HindIII断片として、Ervinia carotovoraのペクチン酸リアーゼ(pelB)のシグナル配列をコードする細菌性の発現ベクターであるpKKtac(Takkinenら、Protein Eng.(4):837〜841、1991)へとクローニングし、発現プラスミドを、E.coliのXL−1 Blue株へと形質転換した。rBet v 1およびその突然変異体のDNA配列を、DNA配列決定(ABI 3100;Genetic Analyzer、Applied Biosystems)により検証し、本明細書ではこれを配列番号1〜3および配列番号40(配列番号1 野生型Bet v 1;配列番号2 Bet v 1 S99Y突然変異体;配列番号3 Bet v 1 K137Y突然変異体;配列番号40 Bet v 1 E101K突然変異体)として示す。
例3 組換えBet v 1分子の産生
細菌性発現のために、rBet v 1およびその突然変異体を、E.coli BL21DEへと形質転換した。単独のコロニーを、5mlのLB、100μg/mlのアンピシリン、および1%のブドウ糖へと接種し、220rpmで振とうしながら、+37℃で16時間培養した。培養物は、100μg/mlのアンピシリンを伴う3倍濃度のTB 300mlへと1:50に希釈し、OD600が4に達するまで+37℃で培養した。IPTGを1mMの最終濃度まで添加することによりタンパク質の発現を誘導し、170rpmで振とうしながら、RTで16時間細胞を培養した。細胞を、+4℃、5000gで、15分間にわたる遠心分離により採取し、細胞のペリプラズム画分を、Protein Expression & Purification、2007(51):216〜226においてBoerらにより記載される浸透圧ショック法を介して単離した。900ml培養物の細胞ペレット同等物を、30mMのトリス/HCl、20%のスクロース、pH8.0、および1mMのEDTAによる300ml中に再懸濁させ、氷上における振とう下で20分間インキュベートした。懸濁液は、4℃、8000gで20分間にわたり遠心分離した。この後、ペレットを、氷冷させた5mMのMgSO4 75ml中で再懸濁させ、氷上において4℃で20分間振とうし、4℃、8000gで20分間にわたる遠心分離により浸透圧ショック流体を採取した。
例4 rBet v 1分子の精製
ペリプラズム画分に1MのNaClを補充し、これを、20mMのNaH2PO4、1MのNaClと共に、pH5.0、2ml/分の流速で、フェニル−セファロースカラム(GE Healthcare)へと投入した。溶出は、7.5%のイソプロパノールを補充した20mMのトリス−HCl、pH9.3による直線勾配として実施した。組換えBet v 1E101KおよびK137Yポリペプチドを含有する画分をプールし、濃縮し、460mmの層高、および流速を0.3ml/分とする1倍濃度のPBS緩衝液を伴う200mlのカラムにおいて、Bio−Gel P60サイズ除外クロマトグラフィーにかけた。rBet v 1 S99Y突然変異体の場合は、サイズ除外クロマトグラフィーの前に、さらなるCM Sepharose(商標)Fast Flow(GE Healthcare)クロマトグラフィーステップが要請された。50mMのグリシン、pH3.8中のr Bet v 1 S99Yは、CMカラムにかけ、直線NaCl勾配(5mM〜1MのNaCl中の50mMのグリシン、pH3.8)で溶出させた。
プールされるrBet v 1画分のタンパク質濃度は、280nmで決定された。
例5 質量分析によるrBet v 1および突然変異体の解析
従来のESI供給源(Apollo−IITM)を装備した4.7 T Bruker BioAPEX−II ESI FT−ICR質量分析計(Bruker Daltonics、Billerica、Massachusetts、USA)により、質量分析実験を実施した。未変性型質量スペクトル:10mMの酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.9)中3μMの濃度の脱塩されたアレルゲン試料を、乾燥(200℃、6ミリバール)および噴霧用ガスとして用いられる乾燥窒素と共に、1.5mL/分の流速で直接的に注入した。全ての装置パラメーターを、気相における非共有結合的相互作用を維持するように、かつ、m/z2000〜3000のイオン透過を最大化するように最適化した。異なる試料間のバイアスを回避するために、同じ装置パラメーターの設定を終始使用した。典型的には、共付加された128kwordの時間ドメイン過渡信号500〜1000を記録し、512kwordのデータへと処理してから、高速フーリエ変換および大きさの計算を行った。ES Tuning Mix(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)のイオンに関しては、外部から質量較正を行った。変性型スペクトルは、典型的に、アセトニトリル/水/酢酸溶液中で測定した。全てのデータは、Bruker XMASS 7.0.8ソフトウェアを用いて収集および処理した。図8における未変性型ESI FT−ICR質量スペクトルは、組換えBet v 1突然変異体であるE101Kが、組換えBet v 1野生型と同様な形でフォールドすることを示す。
例6 競合的ELISAにより解析される、血清中IgEの、組換えBet v 1、Bet v 1 S99Y、およびE101Kポリペプチドへの結合に対する阻害
カバノキ花粉アレルギー性患者のIgE血清試料(E3)の、ストレプトアビジンウェル上に固定化されたビオチニル化rBet v 1への結合を、rBet v 1およびrBet v 1 S99Y、およびE101K突然変異体の量を増加させることにより阻害した。まず、市販されるrBet v 1(野生型;Biomay)を、製造元のプロトコールによりSulfo−NHS−LC−ビオチン(Pierce)を用いてビオチニル化した。ビオチニル化rBet v 1(ウェル1つ当たり0.5μg)を、ストレプトアビジン(SA)ウェル(Roche Diagnostics Gmbh)へと固定化した後、洗浄ステップおよびE3血清の添加を行う(1:6の希釈率)。シェーカー内、RTにおいて2時間のインキュベーションおよび洗浄ステップの後に、異なる量(4、1、0.25、0.0625、0.0156、および0.0039μg)のrBet v 1を添加し、シェーカー内、RTにおいて2時間インキュベートした。洗浄ステップの後に、希釈率1:1000のAFOSコンジュゲート抗ヒトIgE抗体(Southern Biotech Associates Inc.)を用いて、シェーカー内、RTにおいて1時間のインキュベーションにより、結合したIgE分子の検出を実施した。最後に、基質溶液であるp−ニトロフェニルホスフェート(Sigma)を添加し、405nmにおける吸光度値を測定した(Varioscan、Thermo Electron Corporation)。
競合的ELISAにより解析される、血清中IgEの、r Bet v 1ポリペプチドへの結合結果を図6に示す。rBet v 1タンパク質である、wt、S99Y、およびE101Kを、血清中IgE E3の、固定化されたrBet v 1(Biomay)への結合に対する競合に用いた。何れのrBet v 1野生型分子(Biomay製の市販品と本発明者ら独自の生成物)も、IgEの、固定化されたBet v 1への結合を阻害していた。rBet v 1対照と比較したところ、Bet v 1突然変異体である、S99YおよびE101Kが、阻害剤のとりわけ低濃度範囲で阻害の低減を示したことから、デザインされたこれらの突然変異が、Bet v 1のIgEエピトープ領域にあることが示される。
例7 ヒスタミン放出アッセイ
精製組換えBet v1タンパク質(wt、S99Y、およびK137Y)の生物学的活性を、市販の組換えBet v 1(Biomay、Austria)と並行して、ストリッピング処理された好塩基球に対する受動感作法、およびその後のアレルゲン分子による感作を介して解析した。ヒスタミン放出アッセイは、公認のヒスタミン放出アッセイ法を有する、RefLab ApS、Copenhagen、Denmarkの外注サービスとして行った。in vitroにおける、好塩基球性の白血球からのヒスタミンの放出の、市販の組換えBet v 1(Biomay)、ならびに3つの組換えBet v 1タンパク質であるwt、S99Y、およびK137Yによる誘導を測定した。4つのアレルゲンの各々について、濃度範囲20〜0.06ng/mlの用量応答研究としての受動伝達試験において調べた。各濃度を2連で調べた。
アッセイは、Bet v 1アレルギー性患者の血清および0.06〜20,000ng/mlの濃度範囲における精製アレルゲン(x軸)により、2例のドナーについて実施した。その結果を図7に示す(ドナー1:上パネル)およびドナー2(下パネル)(2連での測定の平均値を示す)。上清へと放出されたヒスタミンの百分率をy軸に示す。
3つのBet V1類似体(タンパク質2、3、および4)は異なり、rBet v 1の生物学的活性が基準抽出物と同等であったのに対し、rBet v 1 K137YおよびrBet v 1 S99Yの生物学的活性は、市販の基準組換えBet v 1(Biomay)と比較して、それぞれ、20分の1および100分の1であることを示した。
当業者には、技法が高度になるにつれて、発明の概念を多様な形で実施しうることが明らかであろう。本発明およびその態様は、上記の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変化しうるものである。
例8 皮膚プリックテスト
皮膚プリックテスト(SPT)を、Helsinki University Central Hospitalの倫理委員会による承認後、2例がカバノキ花粉アレルギーと診断され、1例が非アトピー性患者である、3例のボランティア被験者について、組換えBet v 1ポリペプチドおよび関与性の対照により実施した。組換えBet v 1ポリペプチド調製物の内毒素は、Detoxi−Gel Endotoxin Removing Gel(Thermo:型番20344)により除去し、その後、内毒素含量を、ToxinSensor Endotoxin Detection System(GenScript:型番L00350C)により解析した。組換えBet v 1ポリペプチド調製物は、Costar SPIN−X(型番8160)により濾過滅菌し、−20℃のアリコートで保管した。
SPTは、50および5μg/mlの濃度で組換えBet v 1a wt(Biomay)およびE101K突然変異体、ならびに市販のカバノキ花粉抽出物(AlkAbello)を用いて実行した。塩化ナトリウム(0.9%)およびヒスタミン二塩酸塩(AlkAbello)が、それぞれ、陰性および陽性対照として用いられた。皮膚をプリッキングする前に、ランセット(乱切刃)を、皮膚プリック試薬を含有する試験管内に入れた。15分後ならびに6および20時間後に応答を測定した。各被験個体におけるヒスタミン二塩酸塩に対する皮膚応答の直径は、15分後に5mmであり、この値を陽性(+)応答として選択した(表2)。濃度が50μg/mlまたは5μg/mlのBet v 1突然変異体E101Kにより誘導される即時的皮膚反応は、同等であった。注目すべきことに、何れのアレルギー性患者の場合も、Bet v 1 E101K突然変異体により誘導される皮膚反応は、Bet v 1 wtと比較して著しく短い時間内で消失した。

Claims (16)

  1. 配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、または任意の他のBet v 1野生型アイソフォームに基づく、組換えカバノキ花粉Bet v 1ポリペプチドであって、アミノ酸残基101、137、99、80、82、84、117、119、7、9、133、141、および145からなる群から選択される位置における、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むポリペプチド。
  2. 前記アミノ酸配列が、配列番号4〜39からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 配列番号41〜53からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのアイソフォームを含む、請求項1または2に記載のポリペプチド。
  4. アミノ酸101がKである配列番号41、
    アミノ酸137がKである配列番号42、
    アミノ酸99がKである配列番号43、
    アミノ酸80がYである配列番号44、
    アミノ酸82がKである配列番号45、
    アミノ酸84がKである配列番号46、
    アミノ酸117がKである配列番号47、
    アミノ酸119がEである配列番号48、
    アミノ酸7がEである配列番号49、
    アミノ酸9がEである配列番号50、
    アミノ酸133がYである配列番号51、
    アミノ酸141がKである配列番号52、および
    アミノ酸145がYである配列番号53
    からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはそのアイソフォーム
    を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリペプチド。
  5. 前記アミノ酸置換が、アミノ酸101、137、または99位に位置する、請求項1〜4の何れか1項に記載のポリペプチド。
  6. S99が、チロシンにより置きかえられている、請求項5に記載のポリペプチド。
  7. K137が、チロシンにより置きかえられている、請求項5に記載のポリペプチド。
  8. E101が、リシンにより置きかえられている、請求項5に記載のポリペプチド。
  9. ヒスタミン放出能が、前記野生型Bet v 1のヒスタミン放出能と比較すると、少なくとも20分の1に低減されている、請求項1〜8の何れか1項に記載のポリペプチド。
  10. ヒスタミン放出能の低減が、少なくとも100分の1である、請求項9に記載のポリペプチド。
  11. 併せて少なくとも2、3、または4つのアミノ酸置換が存在する、先行する請求項の何れか1項に記載のポリペプチド。
  12. 請求項1〜11の何れか1項に記載の少なくとも1つの低刺激性ポリペプチドと、医薬として許容可能な希釈剤またはアジュバントとを含むワクチン。
  13. 舌下投与用であることを特徴とする、請求項12に記載のワクチン。
  14. 配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、またはその任意のBet v1野生型変異体に基づく組換えカバノキ花粉Bet v1ポリペプチドであって、アミノ酸残基E101、K137、S99、K80、N82、S84、S117、K119、T7、T9、V133、E141、およびR145からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含むポリペプチドの、ワクチンとしての使用。
  15. カバノキ花粉アレルギーに対してワクチン接種する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1〜11の何れか1項に記載の少なくとも1つの低刺激性ポリペプチドと、少なくとも1つの医薬として許容可能なアジュバントとを含む組成物を投与することを含む方法。
  16. 配列番号4に示される野生型アミノ酸配列、または任意の他のBet v 1野生型アイソフォームに基づく、組換えカバノキ花粉Bet v 1ポリペプチドであって、アミノ酸残基101、137、99、80、82、84、117、119、7、9、133、141、および145からなる群から選択される位置における、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、ワクチンとして用いるためのポリペプチド。
JP2014505597A 2011-04-18 2012-04-18 新規な低刺激性アレルゲン Pending JP2014514312A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201161476455P 2011-04-18 2011-04-18
US61/476,455 2011-04-18
FI20115375A FI20115375A0 (fi) 2011-04-18 2011-04-18 Uudet hypoallergeenit
FI20115375 2011-04-18
PCT/EP2012/057047 WO2012143375A2 (en) 2011-04-18 2012-04-18 Novel hypoallergens

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014514312A true JP2014514312A (ja) 2014-06-19

Family

ID=43919694

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014505597A Pending JP2014514312A (ja) 2011-04-18 2012-04-18 新規な低刺激性アレルゲン

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20140044744A1 (ja)
EP (1) EP2699682A2 (ja)
JP (1) JP2014514312A (ja)
CN (1) CN103562388A (ja)
AU (1) AU2012244812A1 (ja)
CA (1) CA2833668A1 (ja)
FI (1) FI20115375A0 (ja)
WO (1) WO2012143375A2 (ja)

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004521618A (ja) 2000-11-16 2004-07-22 アルカベロ アクチェセルスカプ 新規変異体アレルゲン
US20040043438A1 (en) * 2002-05-16 2004-03-04 Alk-Abello A/S Allergen mutants
AU2003223934A1 (en) * 2002-05-16 2003-12-02 Alk Abello A/S Recombinant bet. v. 1. allergen mutants, methods and process thereof
MXPA05005528A (es) 2002-11-26 2006-04-05 Alk Abello As Producto farmaceutico de alergeno.
WO2006050729A2 (en) 2004-11-10 2006-05-18 Alk-Abellò A/S Method of preventive treatment of allergy by mucosal administration of an allergy vaccine
EP1814516B1 (en) 2005-11-04 2012-12-26 Alk-Abelló A/S Use of a liquid allergy vaccine formulation for oromucosal administration
ITMI20052517A1 (it) 2005-12-29 2007-06-30 Lofarma Spa Varianbtio ipoallergeniche dell'allergene maggiore bet v 1 di polline di betula verrucosa
FI20075059A0 (fi) 2007-01-29 2007-01-29 Valtion Teknillinen Allergeeniä sitovat monoklonaaliset IgE-vasta-aineet ja hypoallergeenit:tyypin l lgE:n ja allergeenin immunokompleksivuorovaikutus
EP2028188A1 (en) 2007-08-21 2009-02-25 Biomay AG Hypoallergenic molecules

Also Published As

Publication number Publication date
FI20115375A0 (fi) 2011-04-18
US20140044744A1 (en) 2014-02-13
WO2012143375A2 (en) 2012-10-26
EP2699682A2 (en) 2014-02-26
CA2833668A1 (en) 2012-10-26
WO2012143375A3 (en) 2012-12-20
CN103562388A (zh) 2014-02-05
AU2012244812A1 (en) 2013-10-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6104885B2 (ja) 低刺激性アレルゲン
US9040054B2 (en) Hypoallergenic molecules
TW201132760A (en) Pharmaceutical composition and application of detoxified recombinant escherichia coli heat-labile enterotoxin
US20090098167A1 (en) PHL P 1 Allergen Derivative
US11679152B2 (en) Recombinant hypoallergenic Equ c 1 polypeptides for use in the immunotherapy of horse allergy
JP2014514312A (ja) 新規な低刺激性アレルゲン
AU2012292060B2 (en) Hypoallergenic variants of Mal d 1, the major allergen from Malus domestica
NZ616746B2 (en) Hypoallergen
EP2281836B9 (en) Hybrid proteins from Parietaria judaica major allergens and uses thereof
WO2013092605A1 (en) Hypoallergenic variants of phl p 5, the major allergen from phleum pratense