第1の発明は、調理容器を載置するトッププレートと、調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記加熱コイルに供給する高周波電流を制御して調理容器の加熱電力を制御する加熱制御部と、前記トッププレート下面に配した複数の電極と、前記トッププレート上に被調理物が付着することで前記電極に生じる静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備え、前記静電容量検出手段によって静電容量に変化があったことを検出すると、前記加熱制御部によって加熱電力を変更させるように制御を行う誘導加熱装置であって、前記複数の電極の略近傍に金属部を配する構成とすることにより、ふきこぼれた被加熱物が電極と金属部の両方にかかるようにすることによって、静電容量検出手段の検出を容易とすることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の金属部は、電極との距離を略同等とすることにより、ふきこぼれた被加熱物が金属部にかかる割合を電極毎に同一とすることで検出の精度を同一とすることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の金属部は、加熱制御部あるいは静電容量検出手段の安定した電位と接続したことにより、静電容量検出手段の検出をより確実にすることができる。
他の発明としては、調理容器を載置するトッププレートと、調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記加熱コイルに供給する高周波電流を制御して調理容器の加熱電力を制御する加熱制御部と、前記トッププレート下面に配した複数の同一面積の電極と、前記トッププレート上に被調理物が付着することで前記電極に生じる静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備え、前記静電容量検出手段によって静電容量に変化があったことを検出すると、前記加熱制御部によって加熱電力を変更させるように制御を行う誘導加熱装置であって、前記電極と前記静電容量検出手段を接続する配線長が異なる場合、前記静電容量検出手段が静電容量の変化を検出する閾値を配線長に応じて設定することにより、配線長に依存する電界の影響度合いに応じて閾値を変更することにより、電極毎の感度を同一とすることができる。
他の発明としては、調理容器を載置するトッププレートと、調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記加熱コイルに供給する高周波電流を制御して調理容器の加熱電力を制御する加熱制御部と、前記トッププレート下面に配した複数の電極と、前記トッププレート上に被調理物が付着することで前記電極に生じる静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備え、前記静電容量検出手段によって静電容量に変化があったことを検出すると、前記加熱制御部によって加熱電力を変更させるように制御を行う誘導加熱装置であって、前記複数の電極の面積が異なる場合、前記静電容量検出手段が静電容量の変化を検出する閾値を電極面積に応じて設定することにより、電極面積に依存する電界の影響度合いに応じて閾値を変更することとなり、電極毎の感度を同一とすることができる。
他の発明としては、調理容器を載置するトッププレートと、調理容器を加熱するために
誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記加熱コイルに供給する高周波電流を制御して調理容器の加熱電力を制御する加熱制御部と、前記トッププレート下面に配した複数の同一面積の電極と、前記トッププレート上に被調理物が付着することで前記電極に生じる静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備え、前記静電容量検出手段によって静電容量に変化があったことを検出すると、前記加熱制御部によって加熱電力を変更させるように制御を行う誘導加熱装置であって、前記電極と前記静電容量検出手段を接続する配線長を略同等とすることにより、誘導加熱時に発生する電界の影響を略同等とし、検出感度の調整を不要とすることができる。
上記発明のトッププレート下面に配した複数の電極は、トッププレートに導電性材料を印刷して構成したことにより、電極とトッププレートが一体化するため、安定した検出を行うことができる。
上記発明の電極と静電容量検出手段を接続する配線は、トッププレートに導電性材料を印刷して構成することにより、機器内部の省スペース化が図れると共に、静電容量の変動を押さえることができるためにふきこぼれの検出を安定化することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置のブロック図を示す。
図1において、調理物を加熱するための調理容器1を載置するトッププレート2と、調理容器1を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイル3と、商用電源からの電力を変換して加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ回路7と、インバータ回路7を制御して調理容器1の加熱電力を制御する加熱制御部4とを構成している。
電極5は、トッププレート2の下面に構成され、電極5が他の導電体との間で構成する静電容量の変化を検出する静電容量検出手段6が加熱制御部4と接続され、加熱制御部4は静電容量検出手段6の結果に応じてインバータ回路7を制御して、加熱コイル3に供給する高周波電流を変化することにより、調理容器1への加熱電力が制御される。
調理容器1は、食材などの被調理物を入れる容器であって、鍋、フライパン、やかんなどであり、誘導加熱によって加熱が可能なものである。
調理容器1は、誘導加熱装置の外郭の一部を形成するトッププレート2上に載置される。そのとき、調理容器1は加熱コイル3と対向する位置に載置される。トッププレート2は結晶化ガラスを使用することが多いが、それに限定するものではない。
加熱コイル3は、加熱制御部4の指示に従って動作するインバータ回路7から高周波電流が供給され、その電流によって高周波磁界を発生させる。高周波磁界を受けた調理容器1には渦電流が発生し、その渦電流によって調理容器1が加熱される。
加熱制御部4は、誘導加熱装置の使用者が加熱電力などを指示するための操作部8やインバータ回路7が接続されている。加熱制御部4は、例えば操作部8によって自動調理モードを指示された場合には、その自動調理内容に応じてインバータ回路7を制御する。
また、使用者が加熱の開始や停止、あるいは加熱電力の調節を操作部8より行った場合にも、加熱制御部4はインバータ回路7を制御して所望の動作となるように制御するものである。
電極5は、トッププレート2の下面に塗布または接着などによって形成される導電体であって、トッププレート2上の導電体とでコンデンサを形成する。通常はトッププレート2上には何もない状態であるため、空気がその役割を果たす。
しかし、調理容器1、指、水、被調理物などの別の物がトッププレート2上にあると、それぞれの比誘電率が空気と異なるため静電容量が変化する。この静電容量の変化を静電容量検出手段6によって検出する。
静電容量検出手段6は、静電容量の変化を直流電圧の変化などに変換して検知するものが多いが、それに限定するものではない。
以上のように構成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
使用者が操作部8によって加熱の開始を指示すると、加熱制御部4はインバータ回路7を動作させて加熱コイル3に高周波電流を供給する。これにより、加熱コイル3から高周波磁界が発生し、調理容器1の加熱が開始される。
加熱制御部4は、操作部8を操作することによって使用者が設定した火力になるようにインバータ回路7を制御する。具体的には、例えばインバータ回路7の入力電流を検出し、その検出値を加熱制御部4に入力する。
加熱制御部4は、使用者が設定した火力とインバータ回路7の入力電流とを比較して、インバータ回路7の動作状態を変更する。このような動作を繰り返すことによって、使用者が設定した火力に制御し、その火力を維持するように加熱制御部4は動作する。
このようにして、調理容器1を加熱している際、調理容器1内の被調理物が沸点に到達するなどして被調理物が調理容器1外にふきこぼれる場合がある。
その際、加熱電力を減少させることなく加熱を継続すると、調理容器1から次々に被調理物がこぼれ、操作部8にかかって操作部8が熱くて操作できない、誘導加熱装置の吸排気口に被調理物が入って清掃することができなくなるなどの不具合が生じる可能性がある。
また、調理容器1からトッププレート2上にふきこぼれた被調理物が、熱が加わることによってトッププレート2にこびりついてしまう場合があった。
しかし、静電容量検出手段6の検出した静電容量の変化を検出した場合に加熱電力を減少あるいは加熱を停止ことによって、ふきこぼれが継続することを防止し、被調理物がトッププレート2にこびりついてしまうことがないようにすることができる。
このような誘導加熱装置を実現する際、誘導加熱時に発生する電界の影響を受けて静電容量検出手段6にエネルギーが注入され、本来検出しようとしている電極5と被調理物とで構成される静電容量を正確に検出できなくなる場合がある。
図2は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置の静電容量検出手段の静電容量検出結果を示す図である。
図2(a)は電界の影響を受けていないときの例を示したものである。Taで誘導加熱を開始しても、検出値は加熱開始前のAを維持している。そして、Tbでふきこぼれが発
生して電極5上を被加熱物が覆ったことによって静電容量が増加し、それを検出する静電容量検出手段6の検出値としては低下している。
これは、静電容量検出手段6が、電極5の静電容量増加によるインピーダンス変化を抵抗分圧で観測する構成としているためであるが、そのような構成に限定するものではない。
そして、Tc以降はふきこぼれた被加熱物が移動していくにつれて電極5上へのかかり方が異なり、静電容量が変化して検出値も徐々に変化している様子がわかる。
一方、電界の影響を受ける例が図2(b)である。加熱開始前はAであった検出値が、Taで誘導加熱を開始するとCまで上昇する。これは、電極5に形成された浮遊容量が減少したことによって静電容量検出手段6の検出が増加したのではなく、誘導加熱を開始したことによって発生した電界から電極5を介してエネルギーが注入され、結果として静電容量検出手段6の検出値が増加したものと考えられる。
そして、Tbでふきこぼれが発生してふきこぼれた被加熱物が電極5上を覆うと、ふきこぼれた被加熱物がアンテナの役割を果たして、ふきこぼれ前よりも電界の影響を大きく受け、静電容量検出手段6の検出値は大幅に上昇してDとなる。
そして、Tdで誘導加熱を停止させると静電容量検出手段6の検出値は電界の影響を受けなくなり、電極5が形成している静電容量のみの値となる。そのとき、加熱開始前にはなかった被加熱物が電極5上を覆うことによって静電容量が増加しているため、加熱開始前の検出値Aよりも値の小さいEという検出値となっている。
このように、電界の影響を受けないときは、図2(a)のように電極5の形成する静電容量の変化に対して忠実に静電容量検出手段6の検出値が変動する。
しかし、図2(b)のように電界の影響を受けるときには電極5の形成する静電容量だけではなく、電界から電極5を介して注入されるエネルギーの大きさによっても静電容量検出手段6の検出値が変動する。
なお、図2はふきこぼれの一例であり、必ず図2のような検出値の変化を示すとは限らない。
このような電界の影響の受け方は、様々な要因で決まる。その一つに、電極5と静電容量検出手段6とを接続する配線がある。配線の長さやその引き回し方によって、電界の影響が異なる。例えば、配線が円に近い形で引き回されたとすると、その配線はループアンテナとして機能することになるからである。また、配線が長い場合にもアンテナとして機能しやすい。
そこで、本発明では、電極5と静電容量検出手段6を接続する配線長を略同等とした誘導加熱装置として、電界の影響が複数の電極5で同じレベルになるようにし、ふきこぼれの検出条件を同じとすることができる。
そうすることによって、ふきこぼれを検出する電極毎に感度が異なり、使用者に違和感を与えるといったことを防止することができ、使い勝手の良い誘導加熱装置を提供することができる。
図3は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置の電極と静電容量検出手段を
接続する配線長を同じとしたときのレイアウト図である。
図3において、1つの誘導加熱部に対して3つの同一面積の電極5(5aa、5ab、5ac)を配している。そして、電極5の静電容量を検出する静電容量検出手段6(6aa、6ab、6ac)をそれぞれの電極5の近傍かつ等距離に配したものである。
このような配置では、配線長が3つの電極5で同じであるばかりでなく、配線長自体が短いために電界の影響を受けにくいという利点を有する。但し、静電容量検出手段6が点在するために機器内部のレイアウトが複雑となり、また静電容量検出手段6を別々に構成することによってコストが上がり、結果として高価なものとなってしまうなどの欠点もある。
図4は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置の静電容量検出手段を1カ所にまとめたときのレイアウト図であり、1つの誘導加熱部のみを示している。
図4では、それぞれの静電容量検出手段6を近傍に配置するようにしたものである。このような配置とすることによって、複数の静電容量検出手段6を集約することができ、機器内部のレイアウトを簡素なものとすることができ、機器内部の冷却が有利となって信頼性の高い誘導加熱装置を実現することができる。
また、安価に製造することができるため、使用者にも便益を提供するものである。
このようなレイアウトにおいて、電極5と静電容量検出手段6とを最短距離で配線してしまうと電界の影響の受け方が電極毎に異なり、使用者にとって違和感を与えてしまう。そのため、静電容量検出手段6の検出感度を電極5毎に調整する必要が出てくる。
したがって、図4のように配線長がどの電極5に対しても同じとなるようにすることで、電界の影響の受け方が同じになり、ふきこぼれの検出感度あるいは電極5が変わっても同じとすることができ、使用者が安心して利用できる誘導加熱装置を実現することができる。
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、トッププレート2下面に配した複数の電極5は、トッププレート2に導電性材料を印刷して構成したものである。
電極5としては、導電性の材料であれば電極として機能するため、例えば金属の板をトッププレート下面に配置すれば良い。しかしながら、電極5に生じる静電容量は極めて小さい。そのため、小さな要因でも静電容量の値が変化する。例えば、金属板とトッププレートの間に隙間ができただけでも静電容量の値が変化する。
したがって、静電容量の値を安定して取得するために、トッププレート2の裏面に導電性材料を印刷して電極5を構成する。そうすることによって、トッププレート2と電極5の距離が一定に保たれるため、静電容量の値が安定する。
よって、ふきこぼれの検出を安定して行うことができる。また、機器の組立が簡略化されるために安価に製造することができ、使用者に便益をもたらすものである。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、電極5と静電容量検出手段6を接続する配線は、トッププレート2に導電性材料を印刷して構成したものである。
電極5と静電容量検出手段6とを接続する配線は、電気的に接続されていれば良いため、ビニール被複線等で接続しても良い。しかし、実際には実施の形態2で説明したように、電極5に生じる静電容量は極めて小さいため、配線長が異なったりその引き回し状態が変わるだけでも静電容量に影響する場合がある。
そのような状態では、ふきこぼれの検出精度にばらつきが出る可能性がある。よって、配線は長さや引き回しが安定した状態であることが望ましい。
したがって、静電容量の値を安定して取得するため、トッププレート2の裏面に導電性材料を印刷して、電極5と静電容量検出手段6とを電気的に接続することによって静電容量の値が安定する。よって、ふきこぼれの検出を安定して行うことができる。また、機器の組立が簡略化されるために安価に製造することができ、使用者に便益をもたらすものである。
(実施の形態4)
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、電極5と静電容量検出手段6とを電気的に接続する配線長が異なる場合、静電容量検出手段6が静電容量の変化を検出する閾値を配線長に応じて設定する誘導加熱装置としたものである。
図5は本実施の形態における誘導加熱装置の電極と静電容量検出手段を接続する配線長の異なるレイアウト図を示す。図5においては、1つの誘導加熱部のみを示している。実施の形態1で説明したように、静電容量検出手段6を図3のように電極毎に点在して配置すると、配線長自体を短くすることができるために電界の影響を受けにくいという利点を有する。
しかし、静電容量検出手段6が点在するために機器内部のレイアウトが複雑となり、また静電容量検出手段6を別々に構成することによってコストが上がり、結果として高価なものとなってしまうなどの欠点がある。
したがって、静電容量検出手段6を図4や図5のようにまとめて配置した方が、機器内部のレイアウトを簡素化すると共に、製造コストを削減して安価に提供することができる。
その場合には、電極5と静電容量検出手段6との距離が異なるため、実施の形態1では配線長が同じとなるように構成した。
その場合には、電界の影響の受け方が同じとなり、静電容量検出手段6が静電容量の値の変化を検出する際にそれぞれの電極5で感度が同じであるため、判定閾値を同じとすればよい。
しかしながら、図5のように電極5と静電容量検出手段6との配線を最短距離に近い形にすると、電極毎に配線長が異なる。そうすると、電界の影響の受け方が異なり、感度がばらついてしまう。
図6は本発明の第4の実施の形態における誘導加熱装置のふきこぼれの検知例を示す図ふきこぼれの検知例を示す。図6(a)は、電界の影響を受けないときの静電容量検出手段6の検出値の変化を示す。加熱開始前、検出値はAである。そして、Taで加熱が開始され、Tbでふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うと検出値が減少し、Tcの時には検出値がBまで減少する。
そして、ふきこぼれた被加熱物が徐々に移動して電極5上の覆い方が変化すると、検出値は徐々に上昇する。このような検出値の変化において、この例ではふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うことによって静電容量が変化し、静電容量検出手段6の検出値としてはAからBまで変化しており、その変化量はEである。
したがって、ふきこぼれ前の値からE以下の変化があればふきこぼれが発生したと判定することができる。具体的には、例えば、閾値をE/2とすると、静電容量検出手段6の検出値が(A−E/2)以下になれば、ふきこぼれと判定できる。
次に、図6(b)は、電界の影響を少し受ける場合の例である。加熱開始前の検出値はAであるが、Taで加熱が開始されると検出値が電界からエネルギーを注入されてわずかに上昇する。
そしてTbでふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うと検出値が減少し、Tcの時には検出値がCまで減少する。そして、ふきこぼれた被加熱物が徐々に移動して電極5上の覆い方が変化すると、検出値は徐々に上昇する。
このような検出値の変化において、この例ではふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うことによって静電容量が変化し、静電容量検出手段6の検出値としてはCまで減少しており、その変化量はFである。
図6(b)では加熱開始後からの変化量としているが、加熱開始前の検出値(A)からの変化量としても良い。判定としては、F以下の変化があればふきこぼれが発生したと判定することができる。
図6(a)の変化量Eに比べて、図6(b)の変化量Fの方が小さい。これは、図6(b)では電界の影響を受けているためである。実施の形態1で説明したように、静電容量検出手段6が電極5の静電容量増加によるインピーダンス変化を抵抗分圧で観測する構成としている場合、ふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うと静電容量検出手段6の検出値としては減少するのに対して、電界の影響を受けるとエネルギーを注入されて検出値としては上昇する。
Taの時には電界の影響だけを受けて検出値が上昇するのに対して、Tbの時には電界の影響とふきこぼれの発生によって静電容量が増加して検出値が減少する二つの事象が重なるため、変化量としては減少する。
図6(c)は、電界の影響をさらに受ける場合で、変化量としてはさらに減少してGだけになる。このように、電界の影響の受け方によって検出値の変化量が異なるため、ふきこぼれの発生を検出する閾値を最適化しなければならない。
例えば、図6(a)に基づいて閾値をE/2としたときに、図6(c)ではGしか変化しないため、E/2>Gであれば検出できないことになる。
電界の影響の受けるレベルは、本実施の形態においては配線長によって異なる。配線長が長くなると電界の影響を受けやすくなるため、ふきこぼれた際の変化量が小さくなる。よって、配線長と変化量の関係から閾値を決定することによって、確実にふきこぼれを検出することができる。
(実施の形態5)
次に本発明の第5の実施の形態について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、複数の電極5の面積が異なる場合、静電容量検出手段6が静電容量の変化を検出する閾値を電極面積に応じて設定する誘導加熱装置としたものである。
実施の形態4では、配線長が異なることによって電界の影響の受け方が異なることを説明したが、電極の面積が異なった場合にも同様に電界の影響が異なる。したがって、電極面積と変化量の関係から閾値を決定することによって、確実にふきこぼれを検出することができる。
(実施の形態6)
次に本発明の第6の実施の形態について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、複数の電極5の略近傍に金属部を配する構成とした誘導加熱装置としたものである。
ふきこぼれが発生して被加熱物が電極5上を覆うと、電界の影響を受けて静電容量検出手段6の検出値に影響を及ぼす。その際、ふきこぼれた被加熱物が金属部を覆うと、電界の影響を軽減することができる。
図7は、本発明の第5の実施の形態における誘導加熱装置の電極の略近傍の金属部のレイアウト例を示す図であり、トッププレート2を裏面から見た図である。
図7において、誘導加熱装置の外郭を形成するトッププレート2の上面は凹凸がなく、掃除がしやすいことが誘導加熱装置の利点となっている。トッププレート2の裏面は、ガラスの固定、強度の補強などのために周囲に金属部を配している。
図8は、本発明の実施の形態6における誘導加熱装置の電極の略近傍の金属部上へのふきこぼれ例を示す図である。図8(a)は金属部9上に被加熱物がこない場合、図8(b)は金属部9上に被加熱物がきた場合である。
図8(a)では、ふきこぼれた調理容器1内の被加熱物が電極5上を覆い、調理容器1とも繋がっている。このとき、電極5とふきこぼれた被加熱物でコンデンサを形成しその静電容量を静電容量検出手段6が検出している。
このとき、誘導加熱を行うことによって電界が発生すると、電界から注入されたエネルギーが電極5を介して静電容量検出手段6の検出値に重畳され、本来検出するべき静電容量の変化がわかりにくい状態となる。
このとき、電界の影響度合いは、電極の面積や配線長、配線の引き回しなどの様々な要因によって決定される。
しかし、図8(b)は金属部9上にもふきこぼれた被加熱物が覆っている。この場合、電極5とふきこぼれた被加熱物で形成されるとコンデンサだけでなく、金属部9とふきこぼれた被加熱物とで形成されるコンデンサが存在し、さらにそれらは同じふきこぼれた被加熱物で接続された状態となる。
このような状態において、誘導加熱を行うことによって電界が発生すると、電界から注入されたエネルギーが金属部側に抜け、電極5に接続された静電容量検出手段6の検出値には影響を及ぼすことがない。
したがって、電界の影響を受けることなく静電容量の変化を検出することができ、ふきこぼれを正確に検出することができる。
さらにその効果を高めるためには、ふきこぼれた被加熱物が電極5と金属部9の両方に覆う必要があるため、金属部9は電極5の近傍である方が望ましく、さらには複数の電極において、電極5と金属部9が同じ距離に配置されることが望ましい。
また、金属部9は回路のグランド等の変動しない安定した電位と同電位である方がより効果的である。
このような構成とすることで、複数の電極で異なるレベルの電界の影響を受けるということがなくなり、より確実にふきこぼれを検出することができる。