JP2014238151A - 転がり軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高速回転時の回転精度を向上し、潤滑油の劣化や蒸発を抑制すると共に潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる転がり軸受装置を提供すること。【解決手段】 外周に軌道面3aが形成された内輪3と、内周に軌道面4aが形成された外輪4と、内輪3の軌道面3aと外輪4の軌道面4aとの間に組み込まれた複数の転動体5と、この転動体5を収容する保持器6と、内輪3の端面に当接して内輪3の軸方向の位置決めを行う内輪間座7、17とを有し、内輪3が回転軸22に嵌合された転がり軸受装置1において、回転軸22の中心に凹部23を形成し、この凹部23と回転軸22の外径部を連通する油孔22bを設け、凹部23に、潤滑油を充填した多孔質体からなる給油カートリッジ25を挿入し、回転軸22が回転する際に生じる遠心力により、給油カートリッジ25から潤滑油が吐出し、この潤滑油が油孔22bから軸受内部に供給されることを特徴とする。【選択図】図1
Description
この発明は、通常の流動性潤滑剤(例えば、グリース)が適用できない環境下で使用される転がり軸受装置に関する。
ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプなど、低温かつ高速回転の環境下で使用される軸受装置や、宇宙用機器などの真空環境下で使用される転がり軸受装置として、複列のアンギュラ玉軸受を使用する場合がある。この軸受装置は、アンギュラ玉軸受を、回転軸である主軸の外周面に複列に配置した構成であり、複列のアンギュラ玉軸受の間には、内輪および外輪の軸方向位置決め用として、内輪間座および外輪間座を組み込む場合が多い。このような低温かつ高速回転環境下や真空環境下で使用される転がり軸受装置では、グリース蒸発などの問題があり、グリース潤滑を適用することができない。
複列の転がり軸受の内輪間座内に、潤滑油を封入する空間を設け、内輪と接触する間座の端面に、回転時の吐出油量を制御する吐出溝を半径方向に設けた軸受の給油装置が提案されている(特許文献1)。この給油装置では、運転中の油量は、軸受回転数(潤滑油に作用する遠心力)と吐出溝の形状、本数によって制御される。
ところが、特許文献1の給油装置では、潤滑油を封入する内輪間座(油溜り付き間座)が回転軸の外周部に装着されるため、潤滑油の吐出等により発生するアンバランスの影響を受けやすく、高速回転における回転精度に限界があることが判明した。
また、ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプなどは、外輪間座および内輪間座を挟んだ状態で軸受を使用機器のハウジングに組み付けた後は再分解が難しく、内輪間座の油溜め室への給油が困難となり、長期間保管する場合に潤滑油の劣化や蒸発に起因して、吐出量の変化や残油量の信頼性に欠ける懸念があった。
さらに、内輪間座の強度不足と機械加工が非常に困難なことから、潤滑油を溜める空間容積には限界があり、ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプなどでは、軸受の更なる長寿命化(供給油量の増加)を図ることができないことが判明した。
本発明は、上記の問題に鑑みて提案されたものであって、高速回転時の回転精度を向上し、潤滑油の劣化や蒸発を抑制すると共に潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる転がり軸受装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するため種々検討した結果、回転軸の内部にカートリッジ式の保油部材を設けるという新たな着想により、本発明に至った。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、外周に軌道面が形成された内輪と、内周に軌道面が形成された外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に組み込まれた複数の転動体と、この転動体を保持する保持器と、前記内輪の端面に当接して内輪の軸方向の位置決めを行う内輪間座とを有し、前記内輪が回転軸に嵌合された転がり軸受装置において、前記回転軸の中心に凹部を形成し、この凹部と回転軸の外周部を連通する油孔を設け、前記凹部に、潤滑油を充填した給油カートリッジを挿入し、回転軸が回転する際に生じる遠心力により、給油カートリッジから潤滑油が吐出し、この潤滑油が前記油孔から軸受内部に供給されることを特徴とする。上記の構成の転がり軸受装置により、高速回転時の回転精度を向上し、潤滑油の劣化や蒸発を抑制すると共に潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる。
上記の給油カートリッジは多孔質体から構成され、この多孔質体は金属焼結体あるいは多孔質樹脂で形成することができる。金属焼結体として、鉄系、銅系、鉄銅系、ステンレス系、タングステン系などがあり、これらの何れも使用可能である。ただし、転がり軸受装置が幅広い雰囲気温度(−50℃以下の低温雰囲気から150℃の高温雰囲気)で使用される際には、給油カートリッジ25の線膨張係数を極力小さくするため、鉄系やステンレス系の焼結金属を使用することが好ましい。
多孔質樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、生分解性樹脂等からなるものが使用可能である。これらの多孔質樹脂を型成形して使用することが好ましい。
上記の多孔質体の空孔率は10〜40%であることが好ましい。空孔率が10%未満では充填できる潤滑油量が不足し、一方、40%を超えると強度が不足し、好ましくない。
上記の給油カートリッジの外径部に溝を形成し、この溝が金型で成形された面であることが好ましい。これにより、溝の表面開孔率は、焼結後の焼結金属体の内部の空孔率(10〜40%)が維持され、給油カートリッジに充填した潤滑油の吐出が良好となる。
上記溝の表面の少なくとも一部に、給油量を調整するための機械加工面を形成することができる。溝は金型で成形された面を使用するが、溝の表面の一部分を機械加工して開孔率を小さくすることにより、潤滑油の供給される量と吐出が完了するまでの時間を調整することが可能となる。
上記の給油カートリッジは、多孔質体の他に潤滑油を充填したタンク形式にしても良い。また、給油カートリッジから吐出した潤滑油は、回転軸の凹部と外周部を連通する油孔から、内輪間座の端部に設けた油通路を経由して、あるいは、内輪の内径面から外径面に貫通する油通路を経由して軸受内部に供給することができる。
上記の給油カートリッジを複数個挿入することができる。この場合は、潤滑油の保油量を更に増加させて軸受の長寿命化を図ることができる。
本発明の転がり軸受装置は、高速回転時の回転精度を向上し、潤滑油の劣化や蒸発を抑制すると共に潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができるので、ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプ用軸受として好適である。
本発明の転がり軸受装置によれば、高速回転時の回転精度を向上し、潤滑油の劣化や蒸発を抑制すると共に潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受装置を図1〜5に基づいて説明する。図1は、本実施形態の転がり軸受装置を示す縦断面図であり、図2はその斜視図である。図1に示す転がり軸受装置1は、低温かつ高速回転の環境下で使用されるロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプに使用されるもので、複列のアンギュラ玉軸受2、2を備える。複列のアンギュラ玉軸受2、2は、回転軸22に嵌合固定される一対の内輪3、3と、外輪間座11の内周面に嵌合される一対の外輪4、4とを備える。内輪3の軌道面3aと外輪4の軌道面4aの間に複数の転動体5が接触角をもって配置され、この転動体5を保持器6が円周方向で等間隔に保持している。
一対の内輪3、3の間に内輪間座7が設置される。内輪間座7は円筒状で、両端面が一対の内輪3、3の内側端面に当接して内輪3の軸方向の位置決めを行う。軸受回転時は、回転軸22に嵌合固定された内輪3と内輪間座7が回転軸22と一体に回転する。内輪3は、転動体5とアンギュラコンタクトしない側の肩部を切除した形態を有する。そのため、転動体5の表面が内輪間座7の両端部の外周面と半径方向に対向している。
外輪間座11の中央部には、内径方向に突出した突出部11aが設けられ、この突出部11aの両端面と両外輪4、4の端面との間に軸受予圧を付与するための弾性部材、例えば、皿ばね12が配置されている。転がり軸受装置1の軸方向両側は、図示しないシール部材によって潤滑油の軸受外部への飛散が防止される。シール部材は、その外径端を外輪4の肩部内周面の取付け溝13に嵌着される。シール部材の内径端に設けたリップと内輪3の肩部外周面に形成されたシール溝14との間に非接触シールが構成される。なお、シール部材は省略することもできる。
軸受装置1の内部空間には、グリース蒸発等の問題からグリース等の流動性潤滑剤を封入することができない。流動性潤滑剤が存在しないことで問題となる軸受の焼付き防止および起動トルクの低減を図るため、内輪軌道面3a、外輪軌道面4a、転動体5の表面および保持器6のポケット内面を含む表面全体のうち、いずれか一つ以上、もしくは全てにポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等からなる固体潤滑皮膜が形成されている。
内輪3、外輪4および転動体5は、ステンレス鋼、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼で形成することができる。なお、転動体5はセラミックスで形成することもできる。セラミックス製の転動体5であれば、軸受回転時に転動体5に作用する遠心力が軽減され、外輪4の軌道面4aの接触面圧を低減できるため、軸受の長寿命化を図ることができる。保持器6は、PEEK等にガラス繊維もしくは炭素繊維を添加した複合材料で形成される。この他、浸炭鋼、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅合金等の金属材料で保持器6を形成することもできる。
図1および図2に示すように、回転軸22の中心に円筒状の凹部23が形成されている。この凹部23に給油カートリッジ25が圧入されている。給油カートリッジ25は、金属もしくは樹脂の多孔質体からなり、互いに連通した微小な空孔を多数有する。この給油カートリッジ25に潤滑油を含浸させることで、各空孔に潤滑油が保持される。
給油カートリッジ25は、例えば焼結金属体で形成される。焼結金属体は、金属粉末を金型で成形(圧粉体成形)し、その後、所定温度で焼結することで得られる。焼結後の金属焼結体内部の多数の空孔は相互に連通しており、空孔率は約20%である。空孔率が10%未満では充填できる潤滑油量が不足し、一方、40%を超えると強度が不足し、好ましくない。そのため、空孔率が10〜40%の範囲内、望ましくは20%程度となるようにプレス圧等の成形条件を設定する。
焼結金属としては、鉄系、銅系、鉄銅系、ステンレス系、タングステン系などがあり、これらの何れも使用可能である。ただし、本実施形態の転がり軸受け装置1は、−50℃以下の低温雰囲気から150℃の高温雰囲気の範囲内で使用される。給油カートリッジ25の線膨張係数を極力小さくするため、鉄系やステンレス系の焼結金属を使用することが好ましい。
焼結後の焼結金属体の幅面25aと外径面25bを研削加工等の機械加工を施す。外径面25bに設けた溝25cは、研削加工等の機械加工を施さず圧粉体成形時の金型で成形された面(成形面)をそのまま残す。機械加工により、給油カートリッジ25の幅面25aと外径面25bの表面開孔は目潰しされて、表面開孔率は10%未満まで低下する。一方、溝25cの表面開孔率は、焼結後の焼結金属体の内部の空孔率(10〜40%)が維持され、幅面25aおよび外径面25bの表面開孔率よりも大きくなる。給油カートリッジ25の外径面25bに設けた溝25cを機械加工すると、溝25cの表面に存在する空孔が目詰まりし、充填した潤滑油が吐出する妨げとなるため好ましくないが、溝25cの表面の一部分を機械加工し、開口率を小さくすることで潤滑油の供給される量と吐出が完了するまでの時間を調整することが可能である。
給油カートリッジ25の外径部に回り止めピン26を圧入固定し、この回り止めピン26を回転軸22の凹部23の内径面23aに設けた溝23bに嵌合させて、円周方向の位相を合わせると共に回り止めを行う。給油カートリッジ25の両端面には雌ねじ25dが設けられ、給油カートリッジ25を回転軸22から引き抜く際に利用する。本実施形態では、別体の回り止めピン26を給油カートリッジ25に圧入固定したものを例示したが、これに限られず、回り止めピン26を給油カートリッジ25と一体成形としてもよい。
給油カートリッジ25には、潤滑油が含浸される。潤滑油としては、低温(−50℃以下)でも良好な潤滑性を有する合成油、例えばフッ素系油が使用される。含浸方法として、真空含浸が有効である。真空含浸は、処理時間や生産性等の面で優れる。
回転軸22の凹部23の開口側端部には雌ねじ27が形成され、蓋部材28の外径面には雄ねじ28aが形成されている。蓋部材28を凹部23の開口側端部に螺合し締め付けることにより、給油カートリッジ25が運転中に軸方向に移動するのを防止している。なお、図2の斜視図では、回転軸22の凹部23に圧入された給油カートリッジの状態を分かりやすくするために、蓋部材28を装着する前の状態を図示している。
回転軸22の凹部23の内径面23aから回転軸22の外径面22aに半径方向に連通する油孔22bが複数設けられている。この油孔22bは、給油カートリッジ25の外径面25bに設けられた溝25cと同じ位相で配置され、内輪間座7の内径面に設けた油溜り部7aへ潤滑油を供給する。油溜り部7aには、溜った潤滑油を軸受2に供給するための油孔7bが複数設けられている。油孔7bの個数と径を調整することにより、軸受2への供給量を調整できる。油溜り部7aと油孔7bにより内輪間座7の端部に油通路が形成される。この油通路は、軸受の内輪3側に設けても良い。この場合に、油溜り部を回転軸22の外周面に設け、内輪3には、その内径面から外径面に貫通する油孔を設けることにより油通路を形成しても良い。
回転軸22の凹部23の内径面23aから回転軸22の外径面22aに半径方向に連通する油孔22bを形成するためにブッシュ24が挿入されている。図3に拡大して示すように、油孔22bを形成するブッシュ24は、凹部23の内径面23a側の入口24aが潤滑油の流入をよくするためにR形状になっている。凹部23の内径面23aをR形状に面取り加工することが非常に困難であるため、予めR形状に面取りしたブッシュ24を回転軸22に圧入している。ブッシュ24の出口側には鍔部24bが設けられ、運転中の遠心力で径方向に抜け出すことを防ぐために、ブッシュ24の鍔部24bの端面が内輪間座7の内径面で押さえる構造としている。
以上のように構成された転がり軸受装置1は、その外輪間座11を液体燃料用ターボポンプのハウジング(図示省略)に組み込んで使用される。ターボポンプが運転され、回転軸22の回転に伴って、給油カートリッジ25が回転すると遠心力により、給油カートリッジ25に充填された潤滑油が溝25cの表面に滲み出し、回転軸11の油孔22b(ブッシュ24)から内輪間座7の油溜り部7a、油孔7bを通って外径側に飛散する。飛散した潤滑油は、油孔7bの半径方向に対向した転動体5の表面に達し、さらに内輪軌道面3aや外輪軌道面4aに転移して軸受内部を潤滑する。前述したように、給油カートリッジ25の溝25cの表面開孔率は、給油カートリッジ25の他の表面(幅面25a、外径面25bよりも大きくなっているので、溝25cからの潤滑油の滲み出しはスムーズに行われる。
本実施形態の転がり軸受装置1では、給油カートリッジ25を回転軸22の内部(中心に形成した凹部23)に挿入させる構造にすることにより、潤滑油の吐出等により発生するアンバランスの影響を受けにくくなり、高速回転における回転精度を向上することができる。補足説明すると、回転軸の外径部に装着する従来の油溜り付き内輪間座では、回転軸の中心から離れているので、潤滑油の吐出等により発生するアンバランスの影響が大きくなる。これに対して、本実施形態の転がり軸受装置1は、給油カートリッジ25を回転軸22の回転中心に取り付けるため、アンバランスの影響が少なくなる。
液体燃料用ターボポンプでは、転がり軸受装置1が組み付けられて長期間保管される場合がある。この場合には、図4に示すように、本実施形態の転がり軸受け装置1では、回転軸22の凹部23には給油カートリッジ25を装着しない状態でターボポンプに組み込み、ターボポンプがロケットエンジンに搭載される直前に、図5に示すように、潤滑油を充填した給油カートリッジ25を回転軸22の凹部23に挿入することができる。その後、図1で前述したように、蓋部材28を凹部23の開口側端部に螺合し締め付け、給油カートリッジ25を軸方向に固定する。これにより、潤滑油の劣化や蒸発が起こるリスクを低減できる。この点を補足説明すると、従来の油溜り付き内輪間座では、外輪間座および内輪間座を挟んで複列の軸受を回転軸に組み付け、ターボポンプに組み込んだ後は、構造上、内輪間座への給油ができないため、この状態で長期間保管されると、潤滑油の劣化や蒸発が起こることがある。
さらに、給油カートリッジ25は、回転軸22内に略円筒状で大きな容積を効率よく確保することができる。そのため、潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる。
以上の説明では、給油カートリッジ25を焼結金属体で形成する場合を例示したが、給油カートリッジ25は多孔質樹脂で形成することもできる。この種の多孔質樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、生分解性樹脂等からなるものが使用可能である。これらの多孔質樹脂を型成形して(必要に応じて、外径面や幅面を機械加工した後)から潤滑油を含浸させることで給油カートリッジ25を得ることができる。この場合も、溝25cを機械加工しない成形面のままとし、他の表面よりも表面開孔率を大きくすることで、必要量の潤滑油を軸受内部にスムーズに供給することが可能となる。
また、以上の説明では、給油カートリッジ25を多孔質体で形成した場合を例示したが、これに限られず、給油カートリッジは潤滑油を充填したタンク形式にしても良い。
次に、本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受装置を図6に基づいて説明する。本実施形態の転がり軸受装置は、給油カートリッジが複数装着されている構成が、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同じ機能を有する部位には同一の符号を付して、要点のみを説明する。
図6に示すように、転がり軸受装置1の回転軸22の中心に長寸の円筒状の凹部23が形成されている。この凹部23に2個の給油カートリッジ25が直列に圧入されている。この給油カートリッジ25も、第1の実施形態と同様に、金属もしくは樹脂の多孔質体からなり、互いに連通した微小な空孔を多数有する。この給油カートリッジ25に潤滑油を含浸させることで、各空孔に潤滑油が保持される。
この転がり軸受装置1では、複列のアンギュラ玉軸受間の軸方向の距離は、第1の実施形態と同じであるが、回転軸22の凹部23の軸方向長さと設置範囲を調整することで、2個の給油カートリッジ25を直列配置することができ、供給油量を倍増することができる。このように、潤滑油の保油量を増加させて更なる軸受の長寿命化を図ることができる。
また、給油カートリッジ25を標準化しておいて、転がり軸受装置1に要求される使用条件に応じて、給油カートリッジ25の装着個数を適宜設定することができる。この場合には、給油カートリッジ25を容易に製作することができると共に、生産管理の工数が軽減され、製造コストの抑制を図ることができる。また、軸受サイズや仕様が異なる転がり軸受装置1の場合にも、上記の標準化した給油カートリッジ25を適用することもできる。本実施形態では、2個の給油カートリッジ25を装着したものを例示したが、これに限られず、転がり軸受装置1の要求条件に応じて、2個以上のものも適宜実施することができる。
その他の構成や作用効果については、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態について前述した内容を全て準用し、重複説明を省略する。
次に、本発明の第3の実施形態に係る転がり軸受装置を図7に基づいて説明する。図7は転がり軸受装置の一部分を示す縦断面図である。本実施形態の転がり軸受装置は、内輪間座が間座と間座カバーの2部材からなる構成が、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同じ機能を有する部位には同一の符号を付して、要点のみを説明する。
図7に示すように、本実施形態の転がり軸受装置1に用いられる内輪間座17は、間座18とその外径面に嵌合した間座カバー19の2部材で構成されている。間座18は、金属もしくは樹脂の多孔質体からなり、互いに連通した微小な空孔を多数有する。
間座18は、例えば焼結金属体で形成される。間座18は、圧粉体成形の段階で、両端面の内径端に油溜り部18aと外径端に面取り部18bを形成する。焼結後における面取り部18bの傾斜角は約45°であり、面取り部18bの軸方向寸法は0.5mm以上である。焼結後の焼結金属体の内径面18c、外径面18dおよび両端面18eに後加工として研削加工等の機械加工を施し、規定寸法に仕上げることで間座18が得られる。このとき、面取り部18bには機械加工を施さず、圧粉体成形時の金型で成形された面をそのまま残す。機械加工により、間座18の内径面18c、外径面18dおよび両端面18eの表面開孔が目潰しされ、表面開孔率は10%未満まで低下する。一方、面取り部18bの表面開孔率は、焼結後の焼結金属体内部の空孔率(10〜40%)が維持され、内径面18c、外径面18dおよび両端面18eの表面開孔率よりも大きくなる。面取り部18bは、機械加工を施して表面開孔率を調整してもよい。
間座カバー19は、中実の(空孔のない)金属もしくは樹脂材料で円筒状に形成される。間座カバー19の両端面には、その円周方向の一部領域を切り欠くことで凹部19aが形成されている。この凹部19aは円周方向の複数個所に間欠的に形成され、したがって、間座カバー19の両端面には、複数の凹部19aと、隣接する凹部19aの間の凸部19bとが交互に形成される。両端面の凸部19bは内輪3の端面に当接する接触面となる。凹部19aと凸部19bとの段差は面取り部18bの軸方向寸法と同寸法、もしくは小さくするのが望ましい。
間座18および間座カバー19からなる内輪間座17を一対の内輪3、3間に介在させ、間座18の両端面および間座カバー19の両端面に形成した凸部19bの端面を内輪3の端面に当接させる。これにより、両内輪3、3が軸方向で位置決めされ、間座カバー19の両端面に形成した凹部19aと内輪3の端面との間に、間座カバー19の内径面と外径面に開口し、かつ内径側開口が間座18の面取り部18bと半径方向に対向する通路19cが形成される。この場合は、間座18の油溜り部18aと面取り部18bおよび間座カバー19の通路19cにより油通路を形成する。
本実施形態の転がり軸受装置1も、その外輪間座11を液体燃料用ターボポンプのハウジング(図示省略)に組み込んで使用される。ターボポンプが運転され、回転軸22の回転に伴って、給油カートリッジ25が回転すると遠心力により、給油カートリッジ25に充填された潤滑油が溝25cの表面に滲み出し、回転軸11の油孔22b(ブッシュ24)から間座18の油溜り部18aに入り、面取り部18bから滲み出した潤滑油が、間座カバー19の通路19cを通って外径側に飛散する。飛散した潤滑油は、油通路19cの半径方向に対向した転動体5の表面に達し、さらに内輪軌道面3aや外輪軌道面4aに転移して軸受内部を潤滑する。
本実施形態の転がり軸受装置1は、−50℃以下の低温雰囲気から150℃の高温雰囲気の範囲内で使用される。このように幅広い雰囲気温度で使用される際には、間座18の線膨張係数と間座カバー19の線膨張係数の差が大きいと、間座18の外径面と間座カバー19の内径面との間に隙間が生じたり、間座18の軸方向寸法と間座カバー19の軸方向寸法に差が生じて、内輪間座17としての機能を十分満足できない場合がある。したがって、上記のように幅広い雰囲気温度で使用する際には、間座18は、間座カバー19の線膨張係数と同等の線膨張係数を有する材料で形成するのが望ましい。したがって、間座18を鉄系やステンレス系等の焼結金属で形成する場合、間座カバー19も同種の金属で形成することが好ましい。
給油カートリッジ25を含む、その他の構成や作用効果については、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態について前述した内容を準用し、重複説明を省略する。
以上の各実施形態の転がり軸受装置1では、給油カートリッジ25を回転軸22の内部(中心に形成した凹部23)に挿入させる構造にすることにより、潤滑油の吐出等により発生するアンバランスの影響を受けにくくなり、高速回転における回転精度を向上することができる。
また、給油カートリッジ25は、転がり軸受装置1を運転する直前に回転軸22の凹部23に挿入することができるため、給油カートリッジ25を組付けた状態で長期保管されることがなく、潤滑油の劣化や蒸発が起きるリスクを低減できる。
さらに、給油カートリッジ25は、回転軸22内に挿入する構成としたので、大きな容積を効率よく確保することができる。そのため、潤滑油の保油量を増加させて軸受の長寿命化を図ることができる。加えて、軸受の軸方向寸法に関わらず、複数個の給油カートリッジ25を直列配置することができ、供給油量を大幅に増やすことができる。
以上の実施形態で説明した転がり軸受装置1は、ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプだけでなく、グリースを使用できない使用条件、例えば低温下で高速回転する軸受装置や、宇宙環境等の真空下で使用する軸受装置として広く使用することが可能である。また、軸受形式としてアンギュラ玉軸受を例示したが、他の軸受形式(例えば、深溝玉軸受、円筒ころ軸受等)を使用した転がり軸受装置にも本発明を適用することができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 転がり軸受装置
2 アンギュラ玉軸受
3 内輪
4 外輪
5 転動体
6 保持器
7 内輪間座
7a 油溜り部
7b 油孔
11 外輪間座
17 内輪間座
18 間座
18a 油溜り部
18b 面取り部
19 間座カバー
19c 油通路
22 回転軸
22b 油孔
23 凹部
25 給油カートリッジ
25c 溝
26 回り止め用突起
28 蓋部材
2 アンギュラ玉軸受
3 内輪
4 外輪
5 転動体
6 保持器
7 内輪間座
7a 油溜り部
7b 油孔
11 外輪間座
17 内輪間座
18 間座
18a 油溜り部
18b 面取り部
19 間座カバー
19c 油通路
22 回転軸
22b 油孔
23 凹部
25 給油カートリッジ
25c 溝
26 回り止め用突起
28 蓋部材
Claims (7)
- 外周に軌道面が形成された内輪と、内周に軌道面が形成された外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に組み込まれた複数の転動体と、この転動体を保持する保持器と、前記内輪の端面に当接して内輪の軸方向の位置決めを行う内輪間座とを有し、前記内輪が回転軸に嵌合された転がり軸受装置において、
前記回転軸の中心に凹部を形成し、この凹部と回転軸の外周部を連通する油孔を設け、前記凹部に、潤滑油を充填した給油カートリッジを挿入し、回転軸が回転する際に生じる遠心力により、給油カートリッジから潤滑油が吐出し、この潤滑油が前記油孔から軸受内部に供給されることを特徴とする転がり軸受装置。 - 前記給油カートリッジは多孔質体から構成されることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受装置。
- 前記多孔質体の空孔率が10〜40%であることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受装置。
- 前記給油カートリッジの外径部に溝を形成し、この溝が金型で成形された面としたことを特徴とする請求項2〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
- 前記溝の表面の少なくとも一部に給油量を調整するための機械加工面を形成したことを特徴とする請求項4に記載の転がり軸受装置。
- 前記給油カートリッジが複数個挿入されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
- ロケットエンジンの液体燃料用ターボポンプに使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013121779A JP2014238151A (ja) | 2013-06-10 | 2013-06-10 | 転がり軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013121779A JP2014238151A (ja) | 2013-06-10 | 2013-06-10 | 転がり軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2014238151A true JP2014238151A (ja) | 2014-12-18 |
Family
ID=52135448
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2013121779A Pending JP2014238151A (ja) | 2013-06-10 | 2013-06-10 | 転がり軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014238151A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN116020633A (zh) * | 2023-03-30 | 2023-04-28 | 兮然科技(江苏)股份有限公司 | 一种高温气流磨 |
-
2013
- 2013-06-10 JP JP2013121779A patent/JP2014238151A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN116020633A (zh) * | 2023-03-30 | 2023-04-28 | 兮然科技(江苏)股份有限公司 | 一种高温气流磨 |
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