JP2014236717A - 内在性cox−2アンチセンスrna阻害薬、その用途及びそのスクリーニング方法 - Google Patents

内在性cox−2アンチセンスrna阻害薬、その用途及びそのスクリーニング方法 Download PDF

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幹雄 西澤
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Abstract

【課題】シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)を選択的に阻害し得る新規なCOX-2阻害薬を提供し、炎症、疼痛、がんなどの病態に対する新規な予防・治療手段を提供すること。【解決手段】COX-2遺伝子のセンス鎖3’UTRに相補的な配列を含む内在性アンチセンス転写物に相補的な配列を含み、該遺伝子の発現を調節し得るセンスオリゴヌクレオチド。該センスオリゴヌクレオチドを含有してなる、COX-2 mRNAの発現抑制剤、COX-2介在性疾患の予防・治療剤。【選択図】なし

Description

本発明は、炎症、疼痛、がん等の病態時に特異的に発現が誘導される酵素シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)のmRNAに相補的であり、かつ該mRNAを安定化する天然(内在性)のアンチセンスRNA(asRNA)に相補的な核酸(センスヌクレオチド)、及びそのCOX-2介在性疾患に対する利用、並びにCOX-2 asRNAのmRNA安定化作用を阻害する新規COX-2抑制薬のスクリーニング方法に関する。
シクロオキシゲナーゼ(COX)は、生体内で種々の重要な機能を果たすプロスタグランジン(PG)の生合成における律速酵素であり、現在までにCOX-1〜COX-3という3種類のアイソフォームが知られている。COX-1は、生体内に恒常的に発現しており、胃粘膜保護、腎機能維持、血小板凝集に関連するPGを産生するのに対し、COX-2は、特に炎症、疼痛、がん等の病態時に特異的に発現が誘導される酵素であり、炎症や疼痛に関与するPGを産生し、これらの病態の発生・維持に関与している。
アセトアミノフェン(N-アセチル-p-アミノフェノール; APAP)は解熱薬や鎮痛薬として広く用いられており、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に分類されることもある。アスピリンやイブプロフェンなどの典型的なNSAIDは、COX-2を阻害し、前炎症メディエーターであるプロスタグランジンやトロンボキサンA2の産生を抑制することで、鎮痛や抗炎症作用を発揮する。しかし、アセトアミノフェンのCOX-2阻害能は比較的弱く、その作用機序は十分に解明されていない。
多くのNSAIDは、COX-2のみならずCOX-1も阻害する。上述のように、COX-1は細胞に恒常的に存在し、消化器等における生体機能の維持に関わっているため、鎮痛・抗炎症作用を目的としてNSAIDを使用する場合には、COX-2のみを選択性に阻害する薬剤が理想的である。実際、COX-2選択性の高いNSAIDが開発されており、胃腸障害の副作用が発現しにくいことが明らかになっているが、十分とはいえない。
ところで、最近の網羅的なcDNA解析により、比較的多くのmRNAに対して、相補的なヌクレオチド配列を持った天然のアンチセンス転写物(Natural Antisense Transcript; 以下、「NAT」ともいう)が、生体に内在することが知られるようになった(非特許文献1、2)。例えば、マウスでは約2,500対(非特許文献3)、ヒトでは約2,600対(非特許文献4)のセンス-アンチセンスRNAペアが存在することが示唆されており、それらの中にはタンパク質をコードしない非翻訳性のNATが多く含まれている。NATの生理機能については十分に解明されていないが、これまでの研究から、NATは、mRNAの安定化もしくは不安定化、mRNAからの翻訳抑制など、異なる生理機能を有する多様な制御性RNAのグループに属することがわかってきている(非特許文献5)。
本発明者らは、これまでに、もう1つの炎症メディエーターである一酸化炭素(NO)の生合成の鍵酵素である誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(特許文献1及び2、非特許文献6)mRNAの3’-非翻訳領域(3’UTR)に相補的なNATが存在し、このアンチセンスRNA(asRNA)がiNOS mRNAとハイブリダイズすることによって該mRNAが安定化されiNOSの産生量及びNOの合成量が増大すること、該NATに相補的なセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、NATのiNOS mRNAへの結合を阻害することにより該mRNAを不安定化し、iNOSの産生及びiNOSによるNO合成を抑制し得ることを報告した。本発明者らはこのセンスODNによりNATを制御する手法を「NAT-targeted REgulation(NATRE)技術」と名づけた。
さらに、本発明者らは、肝細胞において、前炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)ににより誘導されるサイトカイン・ケモカイン遺伝子の多くに3’UTRに対応する領域を含むNATが存在し、当該遺伝子の発現がNATにより正(IL-23A)又は負(CCL2、CCL20、CX3CL1、CD69、NF-κB p65)に制御されており、さらに該NATがとりうる二次構造のループ部分を含む領域に相補的な(従って、mRNAに相同な)配列を有するセンスオリゴヌクレオチドを用いて、当該遺伝子の発現制御(アップレギュレーションおよびダウンレギュレーション)が可能であることを明らかにした(特許文献3及び非特許文献7)。
WO 2007/142303号パンフレット WO 2007/142304号パンフレット WO 2012/153854号パンフレット
Cheng et al., Science, 308: 1149-1154 (2005) Katayama et al., Science, 309: 1564-1566 (2005) Kiyosawa et al., Genome Res., 13: 1324-1334 (2003) Yelin et al., Nat. Biotechnol., 21: 379-386 (2003) Faghihi and Wahlestedt, Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 10: 637-643 (2009) Matsui et al., Hepatology, 47: 686-697 (2008) Yoshigai et al., HOAJ Biology, 1: 10 (2012)
本発明の目的は、新規な作用機序によりCOX-2発現を選択的に阻害し得る薬物を提供し、該薬物を用いて、副作用の少ないCOX-2介在性疾患の治療・予防手段を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、まずアセトアミノフェンがCOX-2発現を抑制するメカニズムを明らかにしようとした。その過程で、本発明者らは、多くのNATが誘導遺伝子から転写され、mRNAの3’UTRに対応する配列を有することに着目し、COX-2遺伝子からもNATが転写され、COX-2 mRNAの安定性を制御しているのではないかと発想し、NAT(asRNA)の存在を調べた。その結果、LPS刺激されたマクロファージ細胞において、COX-2 mRNAの3’UTRに相補的な配列を有する内在性のasRNAが発現していることを見出した。このCOX-2 asRNAをマクロファージで過剰発現させると、COX-2 mRNAレベルとプロスタグランジンE2(PGE2)産生の両方が上昇した。また、COX-2 mRNAの3’UTRを融合したルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーターを用いたアッセイの結果、COX-2 asRNAの過剰発現によりルシフェラーゼ活性が増大したことから、COX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの3’UTRと相互作用して該mRNAを安定化することが確認された。アセトアミノフェンは、COX-2 asRNAとmRNAの両方の発現を低下させ、また、レポーターアッセイにおいても、COX-2 asRNAを過剰発現させたマクロファージにおけるルシフェラーゼmRNAレベルを抑制したことから、アセトアミノフェンによるCOX-2発現抑制効果の一部は、COX-2 asRNAによるmRNA安定化作用を阻害することにより、mRNAを不安定化させることによると考えられた。
そこで、本発明者らは、COX-2 mRNAがとりうる二次構造のループ部分(後述の表1を参照)を含む領域に相同な(従って、asRNAに相補的な)配列を有するセンスオリゴヌクレオチド(ODN)を合成し、マクロファージに導入して、LPS誘導性のCOX-2 mRNA発現に及ぼす効果を調べたところ、COX-2 ODNはCOX-2 mRNAレベルを顕著に低下させた。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕COX-2遺伝子のセンス鎖3’UTRに相補的な配列を含む内在性アンチセンス転写物に相補的な配列を含み、該遺伝子の発現を調節し得るセンスオリゴヌクレオチド。
〔2〕配列番号1に示されるCOX-2 mRNAの3’UTR配列中、ヌクレオチド番号203-222で示されるドメインA、ヌクレオチド番号344-363で示されるドメインB、ヌクレオチド番号556-601で示されるドメインC、ヌクレオチド番号692-731で示されるドメインD、ヌクレオチド番号769-791で示されるドメインE、ヌクレオチド番号836-894で示されるドメインFもしくはヌクレオチド番号1204-1235で示されるドメインG、又は他の哺乳動物におけるオルソログのそれらに対応するドメイン内の、1以上のループ構造の少なくとも一部を含む配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる、COX-2 mRNAの発現を抑制し得る、上記〔1〕記載のセンスオリゴヌクレオチド。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載のセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、COX-2 mRNAの発現抑制剤。
〔4〕COX-2介在性疾患の予防又は治療用である、上記〔3〕記載の剤。
〔5〕被検物質の存在下及び非存在下で、Cox-2遺伝子のmRNAとそれに対する内在性アンチセンス転写物とのハイブリダイゼーションを検出・比較することを特徴とする、該mRNAの発現抑制物質のスクリーニング方法。
〔6〕Cox-2遺伝子のmRNAとそれに対する内在性アンチセンス転写物とを発現する細胞に被検物質を接触させ、該細胞における該mRNA量及び/又はそれにコードされるタンパク質量の変化を測定することを特徴とする、上記〔5〕記載の方法。
〔7〕COX-2 mRNAの3’UTRを含むレポーター遺伝子と、該mRNAに対する内在性アンチセンス転写物とを発現する細胞に被検物質を接触させ、該細胞における該レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを特徴とする、該mRNAの発現抑制物質のスクリーニング方法。
本発明のCOX-2 asRNAに対するセンスオリゴヌクレオチドは、該asRNAと相互作用することにより、そのCOX-2 mRNA安定化作用を負に調節して、COX-2の発現を抑制することができるので、炎症性疾患、疼痛、がん等のCOX-2介在性疾患の予防及び/又は治療に有用である。
アセトアミノフェン及びNSAIDsが、マクロファージにおけるPGE2及びCOX-2タンパク質の産生を低下させることを示す図である。(A)PGE2産生に及ぼすアセトアミノフェン及びNSAIDsの効果を示す。RAW264.7細胞 (2.0 x 105 細胞/ウェル) を、各薬物(APAP: アセトアミノフェン; ASP: アスピリン; IBP: イブプロフェン; LOX: ロキソプロフェン)の存在下及び非存在下、LPS (1 μg/mL) で24時間処理し、培養液中のPGE2レベルを測定した(n=3)。結果は平均値±SDで示している。(B)COX-2タンパク質のLPS誘導に及ぼすアセトアミノフェン及びNSAIDsの効果を示す。(A)と同様にマクロファージをインキュベートし、細胞溶解液を12.5% SDS-PAGEにかけ、抗COX-2抗体又は抗β-チューブリン抗体でイムノブロットして、COX-2 (74 kDa) に相当するバンドをデンシトメトリーで定量化した。 アセトアミノフェンがLPSにより誘導されるCox-2遺伝子の発現を抑制することを示す図である。(A)マウスCox-2遺伝子(上)及びホタルルシフェラーゼ(Luc)レポーター(下)コンストラクトの模式図である。NF-κB(○)及びC/EBPβ(●)の結合部位を2.0 kbのプロモーター中に示した。2.2 kbの3’UTR中のAREモチーフを楕円で示し、AREのクラスター部分を大きな楕円で示した。ホタルルシフェラーゼ遺伝子はCox-2遺伝子プロモーターにより駆動され、COX-2 mRNAの3’UTR(pCOX2-Luc-COX2-3’UTR) 又はSV40ポリアデニレーションシグナル (pCOX2-Luc-SVpA) と連結されている。(B)マクロファージにおけるCox-2遺伝子プロモーター-ルシフェラーゼ遺伝子レポーターの活性に及ぼすアセトアミノフェンの効果を示す。Cox-2遺伝子プロモーター-ルシフェラーゼ遺伝子レポーターを、内部標準としてのpCMV-LacZとともにRAW264.7細胞に導入し、細胞をLPS及びアセトアミノフェンの存在下及び非存在下で24時間インキュベートした。ルシフェラーゼ活性はβ-ガラクトシダーゼ活性により補正した。各トランスフェクトクト細胞抽出液のルシフェラーゼ活性は、LPS及びアセトアミノフェン非添加の細胞抽出液に対するfold changeで示した。pCOX2-Luc-SVpAを細胞に導入した場合(左)、ルシフェラーゼ活性はCox-2遺伝子プロモーター活性と相関し、pCOX2-Luc-COX2-3’UTRを導入した場合(右)、ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼmRNAの安定性の影響も受ける。数値は平均値±SD (n=3) で示した。*: LPSのみに対してP<0.05; **: LPSのみに対してP<0.01 LPS処理したマクロファージにおいてCOX-2 asRNAが転写されることを示す図である。(A)マウスCox-2遺伝子のexon 10(中)、COX-2 mRNAの3’UTR(上)及びCOX-2 asRNA(下)の構造の模式図である。COX-2 mRNAの3’UTR中のAREモチーフを楕円で示している。Cox-2遺伝子は2本鎖で示しており、上がCOX-2タンパク質をコードするセンス鎖であり、下がCOX-2 asRNAに対応するアンチセンス鎖である。asRNAの転写開始点付近にキャップ部位(▲)及びTATAボックス(■)が存在する。COX-2 asRNA検出用のPCRで増幅される領域を両矢印で示し、ノーザンブロット分析に用いた[32P]標識プローブは太線で示した。(B)ノーザンブロット分析の結果を示す。RAW264.7細胞から得た全RNA(8.0 μg)及びpoly(A)+ RNA(1.0 μg)を1.5%アガロース-ホルムアルデヒドゲル電気泳動で分離し、[32P]標識したセンス及びアンチセンスプローブを用いて、COX-2 asRNA及びmRNAをそれぞれ検出した。メンブレンに転写する前に撮影したエチジウムブロマイドで染色したゲルの写真をオートラジオグラフの下に示した。矢頭は、各プローブにより検出されたCOX-2 asRNA(左)及びmRNA(右)のバンドを示す。28S及び18Sは各rRNAのバンドの位置を示す。(C)COX-2タンパク質発現及びPGE2産生の経時変化を示す。LPS処理したRAW264.7細胞中のCOX-2及びβ-チューブリンタンパク質のレベルをウェスタンブロット分析により検出し(上)、得られたバンドをデンシトメトリーにより定量化した。PGE2産生はELISAにより測定した。(D)LPS添加後のマクロファージにおけるCOX-2 mRNA発現の経時変化を示す。LPS処理したRAW264.7細胞から、オリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行い、PCR、アガロースゲル電気泳動(上)及びリアルタイムPCR(下)により、COX-2及びEF mRNAの発現を解析した。最大レベルに対するパーセンテージを平均±SDで示した。(E)LPS添加後のマクロファージにおけるCOX-2 asRNA発現の経時変化を示す。LPS処理したRAW264.7細胞から抽出した全RNAを鎖特異的に逆転写し、PCR、アガロースゲル電気泳動(上)及びリアルタイムPCR(下)により、COX-2 asRNAの発現を解析した。COX-2 asRNAの相対量は全RNA量で補正し、最大レベルに対するパーセンテージを平均±SDで示した。RT(-)は逆転写なしのネガティブPCRコントロールを示す。 COX-2 asRNAの過剰発現によりCOX-2発現が増大することを示す図である。(A)COX-2 asRNA発現ベクターの構造を示す。COX-2 asRNAを過剰発現させるために、該asRNAのcDNAをCMVエンハンサー/プロモーターの下流に連結した(pCMV-COX2-asRNA)。COX-2 mRNAの3’UTR中のAREモチーフは楕円で示した。過剰発現させたCOX-2 asRNAはAREモチーフを有するが、mRNAの3’UTRに対応する部分はAREを持たない。(B)COX-2 asRNAの過剰発現によりCOX-2 mRNAの発現が増大することを示す。RAW264.7細胞をpCMV-COX2-asRNAでトランスフェクトし、該細胞から全RNAを精製して鎖特異的なRT及びリアルタイムPCRに供し、COX-2及びEF mRNAを検出した。COX-2 mRNAレベルはEF mRNAレベルにより補正し、LPS添加のみの場合に対するパーセンテージを平均±SDで示した。**: LPSのみに対してP<0.01(C)PGE2産生に及ぼすCOX-2 asRNA過剰発現の効果を示す。(B)と同様にRAW264.7細胞をpCMV-COX2-asRNAでトランスフェクトし、LPS添加12時間後における培養液中のPGE2レベルを測定した。*: LPSのみに対してP<0.05 COX-2 asRNAは3’UTRを介してCOX-2 mRNAを安定化することを示す図である。(A)ルシフェラーゼmRNAの安定性を分析するためのコンストラクトの構造を示す。mRNA安定性アッセイに用いたプラスミドの模式図を示す。ルシフェラーゼ遺伝子(Luc)は構成的なEFプロモーター(EFp)によって駆動され、COX2-mRNAの3’UTR (pEF-Luc-COX2-3’UTR) 又はSV40 ポリアデニレーションシグナル (pEF-Luc-SVpA) に連結されている。エフェクターであるpCMV-COX2-asRNAは、CMVエンハンサー/プロモーター(CMVp)の制御下にCOX-2 asRNAを過剰発現する。内部標準として、EFpの制御下にβ-ガラクトシダーゼを発現するpEF-LacZ-SVpAを用いた。(B)COX-2 asRNA存在下でのmRNA安定性アッセイを示す。RAW264.7細胞を、レポーターであるpEF-Luc-COX2-3’UTR(左)又はpEF-Luc-SVpA(右)、pEF-LacZ-SVpA(及びpCMV-COX2-asRNA)でトランスフェクトした。細胞をLPSの存在下で12時間インキュベートし、全RNAをオリゴdTプライマーを用いて逆転写し、リアルタイムPCRに供した。ルシフェラーゼmRNAレベルはβ-ガラクトシダーゼmRNAにより補正し、LPS添加前(0時間)に対するパーセンテージを平均±SDで示した。*:0時間に対してP<0.05; **: 0時間に対してP<0.01 アセトアミノフェンがLPSにより誘導されるCOX-2 mRNA及びasRNA発現を低下させることを示す図である。(A)RAW264.7細胞にLPS及びアセトアミノフェンを添加して12時間インキュベートし、RT及びリアルタイムPCRによりCOX-2 mRNA及びasRNAを検出した。COX-2 mRNAのレベルはEF mRNAレベルにより補正し、LPS添加のみの場合のCOX-2 mRNA及びasRNA値に対するパーセンテージを平均±SDで示した。ゲノムDNAのコンタミネーションは、RTなしのコントロールPCRで検出されなかった。**: LPSのみに対してP<0.01(B)アセトアミノフェンは過剰発現したCOX-2 asRNA存在下でルシフェラーゼmRNAの安定性を低下させることを示す。レポーターpEF-Luc-COX2-3’UTR、エフェクターpCMV-COX2-asRNA及び内部標準pEF-LacZをRAW264.7細胞に導入し、LPSの存在下及び非存在下で12時間インキュベートした。全RNAをオリゴdTプライマーを用いたRT及びリアルタイムPCRに付し、β-ガラクトシダーゼレベルにより補正したルシフェラーゼmRNAレベルは、ルシフェラーゼ-3’UTR mRNAの安定性と相関する。*: LPSのみに対してP<0.05 COX-2 mRNAの3’UTR(配列番号:1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド番号548〜1347)の予測された部分的二次構造を示す図である。 COX-2 asRNAに対するセンスオリゴヌクレオチドがCOX-2 mRNAの発現を抑制することを示す図である。RAW264.7細胞にセンスオリゴヌクレオチドを導入し、LPSを添加して12時間インキュベートし、RT及びリアルタイムPCRによりCOX-2 mRNAを検出した。LPS添加のみの場合のCOX-2 mRNA値に対するパーセンテージを平均±SDで示した。
本発明は、COX-2 mRNAの安定化作用を有する、該mRNAの内在性アンチセンスRNA(asRNA)を提供する。本発明のCOX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの3’UTRに相補的な配列を含み、かつ該mRNAの3’UTRと相互作用して該mRNAを安定化することで、COX-2 mRNA及びCOX-2タンパク質レベルを増大させ、プロスタグランジン産生を亢進して、炎症、疼痛、がんなどの病態発現に関与している。5’RACEの結果から、該COX-2 asRNAのほとんどは、COX-2 mRNAのストップコドンより1,353ヌクレオチド下流から転写され、約4 kbに及ぶ。
asRNAは、対応するmRNAの熱力学的に安定でない部分と相互作用すると考えられるので、COX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの3’UTR中の熱力学的に安定でない部分に相補的な配列を介して該mRNAの安定化に寄与しているはずである。この熱力学的に安定でない部分としては、COX-2 mRNAが二次構造をとった際に一本鎖の状態にある(例えば、ステム-ループ構造のループ部分にあたる)領域が挙げられる。COX-2 mRNAの3’UTRの二次構造は、該領域のヌクレオチド配列情報をもとに、mfold(GCG Software; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 7706-10 (1989) 参照)に代表されるような既存のRNA二次構造予測プログラムを用いて予測することができる。それらのヌクレオチド配列情報はいずれも容易に入手可能である。例えば、COX-2 mRNAの3’UTR配列(但し、UはTに置き換えて記載している)を配列番号:1(exon 10のストップコドン(TAA)の直後のヌクレオチド(A)をヌクレオチド番号1としている)に示す。
図7は、配列番号:1で示されるCOX-2 mRNAの3’UTR配列中ヌクレオチド番号548〜1347の800ヌクレオチドの配列について、mfoldによる二次構造予測を行った結果の一例を示している。二次構造予測の結果、高頻度で得られたステムループ構造を表1にまとめた。COX-2 mRNAの3’UTRのより上流の約550ヌクレオチドについても、同様にして二次構造を予測し、熱力学的に安定でない部分を特定することができる、例えば、配列番号:1で示されるヌクレオチド配列中、ヌクレオチド番号203-222で示されるドメインA、ヌクレオチド番号344-363で示されるドメインBがCOX-2 mRNAと相互作用し得る領域として挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、COX-2 mRNAと相互作用し得るCOX-2 asRNAの部分配列としては、配列番号:1に示されるマウスCOX-2 mRNA 3’UTR配列にあっては、ヌクレオチド番号203-222で示されるドメインA、ヌクレオチド番号344-363で示されるドメインB、ヌクレオチド番号556-601で示されるドメインC、ヌクレオチド番号692-731で示されるドメインD、ヌクレオチド番号769-791で示されるドメインE、ヌクレオチド番号836-894で示されるドメインFもしくはヌクレオチド番号1204-1235で示されるドメインG内に存在する、また、他の哺乳動物におけるCOX-2 mRNAオルソログにあっては、前記マウスCOX-2 mRNA 3’UTRにおける各ドメインに対応するドメイン内に存在する、1以上のループ構造の少なくとも一部(例えば、3塩基以上)を含む配列に相補的なヌクレオチド配列が挙げられる。
マウス以外の哺乳動物におけるオルソログの対応するドメインとしては、複数種に共通なAREモチーフの周辺領域のヌクレオチド配列は哺乳動物種間でよく保存されており(J Biol Chem 276: 23179-23185 (2001); J Biol Chem 275: 11750-11757 (2000); J Biol Chem 275: 23012-23019 (2000))、二次構造も類似しているため、当該領域が好ましく選択され得る。
COX-2 asRNAのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド(即ち、COX-2 mRNAのセンスオリゴヌクレオチド)は、COX-2 mRNAとasRNAとの相互作用を阻害することにより、COX-2 asRNAによるmRNAの安定化作用性を抑制し、COX-2遺伝子の発現(タンパク質の産生)を負に調節することができる。したがって、本発明は、該mRNAの3’UTRに相補的な配列を含むCOX-2 asRNAに相補的な配列(従って、該3’UTRに相同な配列)を含み、COX-2 mRNAを不安定化する、センスオリゴヌクレオチドを提供する。
ここで「相補的」な配列とは、COX-2 asRNAに対して完全相補的な配列のみならず、細胞の生理的な条件下でCOX-2 asRNAとハイブリダイズして、COX-2 mRNAへのasRNAの作用を阻害し得る限り、1ないし数(2, 3, 4 もしくは 5)塩基のミスマッチを含んでもよい。好ましくは、COX-2 asRNAに相補的な配列とは、ストリンジェントな条件、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件(例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられる)下で、COX-2 asRNAとハイブリダイズし得る配列である。
COX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの熱力学的に安定でない部分と相互作用して該mRNAの安定性を調節するので、本発明のCOX-2 asRNAに相補的なセンスオリゴヌクレオチドは、COX-2 mRNA中の熱力学的に安定でない部分と相同な配列を含むことが好ましい。熱力学的に安定でない部分としては、mRNAが二次構造をとった際に一本鎖の状態にある(例えば、ステムループ構造のループ部分にあたる)領域が挙げられる。好ましくは、熱力学的に安定でない部分として、配列番号:1に示されるマウスCOX-2 mRNA 3’UTR配列にあっては、ヌクレオチド番号203-222で示されるドメインA、ヌクレオチド番号344-363で示されるドメインB、ヌクレオチド番号556-601で示されるドメインC、ヌクレオチド番号692-731で示されるドメインD、ヌクレオチド番号769-791で示されるドメインE、ヌクレオチド番号836-894で示されるドメインFもしくはヌクレオチド番号1204-1235で示されるドメインG内に存在する、また、他の哺乳動物におけるCOX-2 mRNAオルソログにあっては、前記マウスCOX-2 mRNA 3’UTRにおける各ドメインに対応するドメイン内に存在する、1以上のループ構造の少なくとも一部(例えば、3塩基以上)を含むヌクレオチド配列が挙げられる。マウス以外の哺乳動物におけるオルソログの対応するドメインとしては、上記と同様、哺乳動物間で高度に保存されているAREモチーフ及びその周辺領域を選択することができる。
尚、「相同な」配列とは、標的mRNAの特定の部分ヌクレオチド配列と完全に同一な配列のみならず、該mRNAに対するasRNAと細胞の生理的な条件下でハイブリダイズしてmRNAに対するNATの作用を阻害し得る限り、1ないし数(2, 3, 4もしくは 5)個の塩基が異なっていてもよい。より好ましくは、「相同な」配列とは、標的mRNAの標的部位の配列とセンスオリゴヌクレオチドの配列とをalignさせたときに、オーバーラップする領域において、標的mRNAに対して90%以上、好ましくは95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を意味する。
より好ましくは、例えば、COX-2 mRNA 3’UTR中のドメインAに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、CTACATAAGCCAGTGAGAAG(mCOX-SA1; 配列番号:26)、ドメインBに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、CACTGTTGGTTACAACTGTG(mCOX-SB1; 配列番号:27)、ドメインCに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、CTTACTTTCTTAAGCTGTCA(mCOX-SC1; 配列番号:28)及びTTAAGCTGTCAGGTTTGTAC(mCOX-SC2; 配列番号:29)、ドメインDに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、AAGTAGTGAAAGCTACTTAC(mCOX-SD1; 配列番号:30)、ドメインEに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、GTGCTGCTCTGTCTTAACTA(mCOX-SE1; 配列番号:31)、ドメインFに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、AAGCCTAGAGCAACAAAAGC(mCOX-SF1; 配列番号:32)及びCAACAAAAGCTTCTACAAAG(mCOX-SF2; 配列番号:33)、ドメインGに対して相同なセンスオリゴヌクレオチドとして、GTGGTCACTTTACTAC(mCOX-SG1; 配列番号:34)がそれぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、本発明のセンスオリゴヌクレオチドは、配列非特異的な反応を起こす配列(例えば、5’-CG-3’、5’-GGGG-3’、5’-GGGGG-3’等)を含まないものから選択することが好ましく、また、COX-2 mRNA以外のRNA中に類似の配列が存在しないものから選択することが好ましい。他のRNA中に類似の配列が存在しないことは、センスオリゴヌクレオチドの候補配列をクエリーとして、対象とする哺乳動物のゲノム配列に対して相同性検索をかけることにより確認することができる。ここで相同性検索手段としては、公知の核酸の相同性検索ソフトウェア(例えば、NCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)NBLAST及びXBLASTプログラム(version 2.0)、GCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラム等)を用いることができる。また、ゲノムDNAデータセットとしては、例えば、Celera社が提供する全ヒトゲノムデータを用いることができる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドの長さに特に制限はないが、配列特異性の面から、COX-2 asRNA中の標的配列に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約12塩基以上、より好ましくは約15塩基以上含むものである。また、合成の容易さ、製造コスト、投与のし易さ等の面から、50塩基以下、好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下の塩基長を有するものが挙げられる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA、一本鎖RNA、DNA/RNAキメラのいずれであってもよく、さらに公知の修飾の付加されたものであってもよい。ここで「ヌクレオチド」とは、プリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。センスオリゴヌクレオチドがDNA(ODN)の場合、COX-2 asRNAとセンスODNとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されてCOX-2 asRNAの選択的な分解を引き起こすことができる。
センスオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的及び/又は対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、上記アンチセンスヌクレオチドの場合と同様に、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどによる分解を防ぐために、センスオリゴヌクレオチドを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2'位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2'-O-Me)、CH2CH2OCH3(2'-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2'-endo(S型)とC3'-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的asRNAに対して強い結合能を付与するために、2'酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA (LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドは、COX-2のmRNA(cDNA) 3’UTR配列に基づいて、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相同な配列を合成することにより調製することができる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドは、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、ポリリジンのようなポリカチオン体、脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性物質が付加された形態で提供され得る。あるいはまた、本発明のセンスオリゴヌクレオチドを、膜透過機能を有するペプチド(例えば、ショウジョウバエ由来のAntennapediaホメオドメイン(AntP)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のTAT、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のVP22等の細胞通過ドメイン)などで修飾することにより、該オリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを促進することができる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドは、COX-2 asRNAと相互作用することにより、該asRNAによるCOX-2 mRNA安定化作用を抑制することができるので、COX-2発現がその発症及び進行に関与しているCOX-2介在性疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。COX-2は、疼痛、熱、炎症の発症及び進行と関係するプロスタグラジンの産生に深く関与しているので、COX-2介在性疾患としては、例えば、関節炎、リウマチ熱、炎症性腸疾患、気管支喘息、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、乾癬、糖尿病、高脂血症、敗血症、骨粗鬆症、インフルエンザ又は他のウイルス感染に伴う症状、月経困難症、頭痛、歯痛、変形性関節症、アルツハイマー病などを挙げることができる。
また、微生物感染に起因する慢性炎症が発がんの重要なリスクファクターとなっており、胃がんや大腸がんの腫瘍組織で誘導されるCOX-2/PGE2経路は、白血球浸潤や血管新生などにより炎症性微小環境を形成し、アポトーシス抑制や増殖シグナル亢進などの作用により発がんを促進することが明らかとなってきている。従って、COX-2介在性疾患して、各種のがん(例えば、結腸がん、胃がん、食道がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、頭部及び首部の腫瘍、肺がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、皮膚がん等)又はそれらの前がん状態を挙げることができる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドを含有する医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、又は適当な剤型の医薬組成物として、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的又は非経口的(例、吸入投与、血管内投与、皮下投与、経粘膜投与など)に投与することができる。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドを上記の各種疾患の予防・治療剤として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。該ヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することもできる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記ヌクレオチドを単独又はリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
本発明のセンスヌクレオチドは、それ自体を投与してもよいし、又は適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明のアンチセンスヌクレオチドと薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、エアロゾル剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含してもよい。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。エアロゾル製剤はジクロロジフロロメタン、プロパン、窒素などのような圧縮された許容しうる抛射薬内に入れることができる。あるいはネブライザーやアトマイザーのような非圧縮性製剤用医薬品として製剤化してもよい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記核酸を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用又は経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、エアロゾル剤、坐剤が挙げられる。本発明のセンスヌクレオチドは、例えば、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
本発明のセンスオリゴヌクレオチドを含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、本発明のセンスオリゴヌクレオチドを1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1回〜数回程度、静脈注射や吸入等により投与するのが好都合である。他の非経口投与及び経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
なお前記した医薬組成物は、本発明のセンスオリゴヌクレオチドとの配合により好ましくない相互作用を生じない限り、他の薬剤を含有してもよい。他の薬剤としては、例えば、抗ウイルス薬、抗腫瘍薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗生物質、抗セプシス薬、抗セプティックショック薬、エンドトキシン拮抗薬、免疫調節薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬、炎症性メディエーター作用抑制薬、炎症性メディエーター産生抑制薬、抗炎症性メディエーター作用抑制薬、抗炎症性メディエーター産生抑制薬などが挙げられる。
本発明はまた、COX-2 asRNAの作用を阻害することによりCOX-2遺伝子の発現(COX-2タンパク質の産生)及びプロスタグランジン産生を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、被検物質の存在下及び非存在下で、COX-2 mRNAとasRNAとのハイブリダイゼーションを検出し、その程度を比較することを特徴とする。
例えば、COX-2 mRNAとasRNAとを常法により単離し(例えば、後述の実施例に準じて行うことができる)、いずれか一方を固相化し、他方を適当な標識剤で標識して、RNAが生理的な二次構造を形成し得る条件下で、被検物質の存在下及び非存在下に両者をハイブリダイズさせ、固相に結合した標識量を両条件下で比較する方法が挙げられる。ここでCOX-2 mRNA及びasRNAとしては、それぞれその全長を用いてもよいし、あるいはmRNAの3’UTR、並びに該領域に相補的なasRNAの配列を含むそれらのフラグメントを用いてもよい。
固相の材料としては、シリコンなどの半導体、ガラス、ダイアモンドなどの無機物、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の高分子物質を主成分とするフィルムなどが挙げられ、また固相の形状としては、スライドガラス、マイクロウェルプレート、マイクロビーズ、繊維型などが挙げられるが、それらに制限されない。固相上にmRNAもしくはasRNAを固定化する方法としては、予め該RNAにアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該RNAと反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相とRNAを架橋したり、ポリアニオン性のRNAに対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用してRNAを固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。固相化RNAの調製法としては、フォトリソグラフィー法を用いてRNAを基板(ガラス、シリコンなど)上で1ヌクレオチドずつ合成するAffymetrix方式と、マイクロスポッティング法、インクジェット法、バブルジェット(登録商標)法などを用いて、予め調製されたRNAを基板上にスポッティングするStanford方式とが挙げられるが、使用するRNAの塩基長を考慮すれば、Stanford方式あるいは両者を組み合わせた手法を用いるのが好ましい。
標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート、Cy3、Cy5などが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジンを用いることもできる。
被検物質としては、いかなる公知物質及び新規物質であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分などがあげられる。添加される被検物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約1〜約24時間が挙げられる。
固相上のRNAと、標識したRNA(及び被検物質)とを接触させて、インキュベートした後、固相に結合しなかったRNAを洗い流し、固相に結合したRNAの標識量を検出する。被験物質の存在下で、非存在下に比べて固相に結合した標識量が有意に減少した場合、該被検物質を、COX-2 asRNAのmRNA安定化作用を阻害し、COX-2タンパク質及びプロスタグランジンの産生を抑制する物質、即ち、上記COX-2介在性疾患の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。
好ましい一実施態様においては、COX-2 mRNAとasRNAとを発現する細胞に被検物質を接触させ、該細胞における該mRNA量及び/又はCOX-2タンパク質量の変化を測定することにより、より直接的に標的遺伝子の発現増強又は抑制物質を選択することができる。
COX-2 mRNAとasRNAとを発現する細胞は、両RNAを生来発現し得る細胞(例えば、LPS刺激したマクロファージ等)であってもよいし、それらのいずれか一方もしくは両方を発現するDNAを導入した組換え細胞であってもよい。組換え細胞の場合、宿主細胞として、例えば、H4IIE-C3細胞、HepG2細胞、293T細胞、HEK293細胞、COS7細胞、2B4T細胞、CHO細胞、MCF-7細胞、H295R細胞などの動物細胞をあげることができる。COX-2 mRNA及びasRNAをコードするDNAは、両RNAを常法により単離し、逆転写反応等によって二本鎖DNAに変換した後、宿主細胞内で機能しうるプロモーターを有する発現ベクターに挿入して、例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより、このベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。また、被検物質が、内在のCOX-2遺伝子もしくは導入した発現ベクターに搭載されたプロモーター活性に変化をもたらすことで、COX-2 mRNA量及び/又はタンパク質量を変化させる可能性を排除する意味で、内部標準として、同一のプロモーターに駆動されるレポーターコンストラクトを細胞に導入しておくことが望ましい。
被検物質としては、前記したとおりのものが用いられる。被検物質と上記細胞との接触は、例えば、該細胞の培養に適した培地(例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地、F12培地など)や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被検物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被検物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約1〜約48時間が挙げられる。必要に応じて、インキュベーションの際に上記細胞をウイルスに感染させてもよい。
インキュベーション終了後(あるいは経時的に)、細胞からRNAを抽出してRT-PCR、リアルタイムPCRやノーザンブロット解析により標的mRNA量を測定するか、あるいは培養上清を回収して、自体公知の各種イムノアッセイやウェスタンブロッティング等により標的遺伝子にコードされるタンパク質量を測定する。被検物質の添加によりCOX-2 mRNA量及び/又はタンパク質量が有意に減少した場合、該被検物質を、COX-2 asRNAのmRNA安定化作用を阻害し、COX-2タンパク質及びプロスタグランジンの産生を抑制する物質、即ち、上記COX-2介在性疾患の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。
別の好ましい実施態様においては、レポーター遺伝子の下流にCOX-2 mRNAの3’UTRをコードする核酸を連結し、適当なプロモーターの制御下においた発現カセットを含むレポーターコンストラクトを作製して、上記と同様のCOX-2 asRNA発現ベクターとともに宿主細胞に導入し、被検物質の存在下及び非存在下で、該細胞におけるレポータータンパク質の量を測定・比較し、該レポーター遺伝子の発現を上昇させた被検物質を、COX-2 asRNAのmRNA安定化作用を阻害し、COX-2タンパク質及びプロスタグランジンの産生を抑制する物質、即ち、上記COX-2介在性疾患の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。被検物質が、レポーター遺伝子の発現を駆動するのに用いたプロモーター活性を阻害することによりレポーター遺伝子の発現を抑制する可能性を排除する意味で、内部標準として、同一のプロモーターに駆動される別のレポーター遺伝子を含むコンストラクトを細胞に導入しておくことが望ましい。
レポーター遺伝子としては、自体公知のルシフェラーゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子などを適宜用いることができる。発現ベクターとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクター、動物細胞発現プラスミド(例、pA1-11,pXT1,pRc/CMV,pRc/RSV,pcDNAI/Neo)などが用いられ得る。
発現ベクターにおいて使用されるプロモーターとしては、例えばEF1αプロモーター、CAGプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、EF1αプロモーター、CAGプロモーター、MoMuLV LTR、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
上記のスクリーニング法により選択されたCOX-2 asRNAのmRNA安定化作用を阻害し得る物質は、COX-2 asRNAに対するセンスオリゴヌクレオチドと同様に、上記の各種疾患の予防及び/又は治療用の医薬として使用することができる。
上記のスクリーニング法により選択された物質を含有する医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、又は適当な剤型の医薬組成物として、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的又は非経口的(例、吸入投与、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。投与に用いられる医薬組成物としては、選択された物質と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、エアロゾル剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含してもよい。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、選択された標的遺伝子の発現増強又は抑制物質を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、又は油性液に溶解、懸濁又は乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。エアロゾル製剤はジクロロジフロロメタン、プロパン、窒素などのような圧縮された許容しうる抛射薬内に入れることができる。あるいはネブライザーやアトマイザーのような非圧縮性製剤用医薬品として製剤化してもよい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記標的遺伝子の発現増強又は抑制物質を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用又は経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、エアロゾル剤、坐剤が挙げられる。標的遺伝子の発現増強又は抑制物質は、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
COX-2 asRNAのmRNA安定化作用阻害物質を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、該物質を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1回〜数回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与及び経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であっ
て本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(材料と方法)
1. 薬物
アセトアミノフェンはナカライテスク(京都)、アスピリンは和光純薬工業(大阪)、イブプロフェンは白鳥薬品(習志野)、ロキソプロフェンはKolon Life Science(仁川,韓国)から、それぞれ購入した。大腸菌0111:B4株由来LPS(和光純薬)は1 mg/mLの濃度となるように生理食塩水に溶解し、最終濃度1 μg/mLに希釈した。
2. 細胞培養
マウスマクロファージ細胞株RAW264.7(RBRC-RCB0535)は、理研バイオリソースセンターのセルバンク(つくば)から入手した。細胞を、100 U/mLペニシリン、100 μg/mLストレプトマイシン(Life technologies, Gaithersburg, MD, USA)及び10% 熱非働化胎仔ウシ血清(FBS; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を含有する高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃、5% CO2雰囲気下で培養した。RAW264.7細胞を35 mmディッシュ(Falcon Plastic, Oxnard, CA, USA)あたり0.2 x 106 細胞の密度で播種した。播種48時間後に、培地を、新鮮な無血清培地に交換した後、該細胞を実験に用いた。
3. PGE2レベル及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の測定
培養液中のPGE2量は、酵素免疫アッセイ(EIA)キット(Cayman Chemicals, Ann Arbor, MI, USA)を用いて測定した。PGE2産生の50%阻害濃度(IC50)は少なくとも3つの異なる薬物濃度から決定した(各ポイントあたり3ディッシュ)。薬物の細胞毒性をモニタリングするために、LDH細胞毒性検出キット(宝バイオ、大津)を用いて、培地中のLDH活性を測定した。
4. ウェスタンブロット分析
全細胞溶解液を、Shock 30: 734-739 (2008)、Nitric Oxide 28: 47-56 (2013)に記載の方法に従って調製した。即ち、2ディッシュ分のRAW264.7細胞をサンプルバッファーで溶解し、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に付し、Sequi-Blotメンブレン(Bio-Rad, Hercules, CA)に電気転写した。抗マウスCOX-2抗体(Abcam, Cambridge, MA, USA)、及び内部標準としての抗β-チューブリン抗体( Cell Signaling Technology, Danvers, MA)を1次抗体として用いて免疫染色を行い、シグナルはEnhanced Chemiluminescence Blotting Detection Reagents(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を用いて可視化した。LAS 4000mini(GE Healthcare)を用いて得た画像をデンシトメトリーに供し、タンパク質レベルを見積もった。
5. レポーター及びエフェクタープラスミドの構築
TATAボックスを含む、-1890〜+21(転写開始点を+1とする)位のCox-2遺伝子プロモーターを、下記のリンカープライマーを用いてゲノミックPCRにより単離した。
フォーワードプライマー:5’-tggcggtACCAGGGAGGCCTCAGAGATCTG-3’(配列番号:35)
リバースプライマー:5’-ttaccaagcttAGTCCTGACTGACTCCTGAAGCT-3’(配列番号:36)
得られたPCR産物をKpn I及びHind IIIで消化した後、ベクターpGL4.10(Promega,
Madison, WI, USA)に挿入して、Cox-2プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子及びSV40ポリアデニレーションシグナルを有するpCOX2-Luc-SVpAを作製した。
COX-2 mRNAの3’UTR(1758 bp)に相当するマウスゲノム断片を、下記のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
フォーワードプライマー:5’-tgctctagaTGGGAGTTTGAATCACTTTTGAAAG-3’(配列番号:37)
リバースプライマー:5’-tgcggatCCTGAATTCCCAGGTTCAATCAG-3’(配列番号:38)
得られたPCR産物をBamH IとXba Iで消化し、pCOX2-Luc-SVpAのSV40ポリアデニレーションシグナルと置換し、pCOX2-Luc-3’UTRを作製した。また、ルシフェラーゼ遺伝子が伸長因子1α(EF)プロモーターにより駆動されるpEF-Luc-SVpAのSV40ポリアデニレーションシグナルを、COX-2 mRNAの3’UTRと置換してpEF-Luc-COX2-3’UTRを作製した。
COX-2 asRNAのcDNAを、下記のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
フォーワードプライマー:5’-tgctctagaTGGGAGTTTGAATCACTTTTGAAAG-3’(配列番号:39)
リバースプライマー:5’-cctagctagcATAATTTTTCCCTCCAAAGGGGAG-3’(配列番号:40)
得られたPCR産物をXba I及びNhe Iで消化し、pCMV-AS-SVpA(Hepatology 47: 686-697 (2008))に挿入してcDNAを置換した。得られたプラスミドpCMV-COX2-asRNAは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/プロモーターの制御下にCOX-2 asRNAを発現するエフェクターである。
pCMV-LacZ(Shock 30: 734-739 (2008))及びpEF-LacZ-SVpA(Hepatology 47: 686-697 (2008))を、大腸菌由来β-ガラクトシダーゼ(LacZ)を恒常的に発現させる内部標準として用いた。
6. ルシフェラーゼレポーターアッセイ及びCOX-2過剰発現アッセイ
RAW264.7細胞を、1.0 x 105細胞/ウェルの密度で6-ウェルディッシュに播種し、DMEM/FBS中で12時間インキュベートした後、磁性ナノ粒子を用いたトランスフェクション(IBA GmbH, Gottingen, Germany)に供した。ルシフェラーゼアッセイには、RAW264.7細胞を、レポータープラスミド(pCOX2-Luc-SVpA又はpCOX2-Luc-3’UTR; 1.0 μg)及び pCMV-LacZ (1 ng)でトランスフェクトした。asRNA過剰発現アッセイには、pCMV-COX2-asRNA(0.2-0.5 μg)を用いた。mRNA安定性アッセイには、レポータープラスミド(pEF-Luc-SVpA又はpEF-Luc-3’UTR; 1.5 μg)、pCMV-COX2-asRNA(0.2 μg)及びpEF-LacZ-SvpA(0.1 μg)を用いた。トランスフェクションの翌日、細胞を1 μg/mL LPSで12時間処理し、ルシフェラーゼ活性をピッカジーンルシフェラーゼアッセイキット(東洋ビーネット,東京)、β-ガラクトシダーゼ活性をBeta-Glo kits(Promega)を、それぞれ用いて測定した。全RNAをリアルタイムRT-PCRに供して、ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼmRNAの発現量を調べた。
7. ノーザンブロット分析
Sepasol Super(ナカライテスク)を用いてRAW264.7細胞から全RNAを調製し、TURBO DNA-free kits(Applied Biosystems, Austin, TX, USA)を用いて精製し、ゲノムDNAを除いた。PolyATract mRNA Isolation System(Promega)を用いて、全RNAからPoly(A)+ RNAを精製した。ノーザンブロット分析は、Hepatology 47: 686-697 (2008) 及びCell Mol Life Sci 70: 1451-1467 (2013) に記載の方法に従って行った。RNAサンプルを1.5% アガロース-ホルムアルデヒドゲル電気泳動により分画し、Nytran Nメンブレン(Whatman, Brentford, UK)に転写し、UVクロスリンクにて固定化した後、[32P]標識した1本鎖RNAプローブと、60℃で16時間ハイブリダイズさせた。COX-2 mRNA及びasRNA検出用プローブの調製するために、T7プロモーター配列を含むCOX-2 cDNAを、下記のプライマーを用いてPCR増幅した。
(COX-2 mRNA検出プローブ(231ヌクレオチド)増幅用プライマー)
フォーワードプライマー:5’-CTGCAGAAGGCCCCATGTCAT-3’(配列番号:41)
リバースプライマー:5’-taatacgactcactatagGGAGGTACATAGTAGTCCTGAG-3’(配列番号:42)
(COX-2 asRNA検出プローブ(336ヌクレオチド)増幅用プライマー)
フォーワードプライマー:5’-taatacgactcactatagGGAGCCCGTGCTGCTCTGTCT-3’(配列番号:43)
リバースプライマー:5’-CGAGGCCACTGATACCTATTGCA-3’(配列番号:44)
得られたPCR産物を鋳型として、T7 RNAポリメラーゼ(宝バイオ)及び[α-32P]CTP(111 TBq/mmol; PerkinElmer Inc., Waltham, MI)を用いたインビトロ転写により、標識RNAプローブを調製した。
8. 逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
鎖特異的プライマー(mRNA用にはオリゴdTプライマー、asRNA用にはセンスプライマー)を用いて、全RNAからcDNAを逆転写し、ステップダウンPCR(Hepatology 47: 686-697 (2008), Genes Cells 5: 111-125 (2000), Gene 336: 47-58 (2004))に供した。COX-2 mRNAのPCR増幅には、下記のプライマー:
フォーワードプライマー:5’-GGTGTGAAGGGAAATAAGGAGCT-3’(配列番号:45)
リバースプライマー:5’-CTCTCCACCAATGACCTGATATTT-3’(配列番号:46)
EF mRNAのPCR増幅には下記のプライマー:
フォーワードプライマー:5’-TCTGGTTGGAATGGTGACAACATGC-3’(配列番号:47)
リバースプライマー:5’-CCAGGAAGAGCTTCACTCAAAGCTT-3’(配列番号:48)
をそれぞれ用いた。また、COX-2 asRNAの逆転写反応のセンスプライマーとして、
5’-ATGAGTGTGAGCTTTAAAGC-3’(配列番号:49)
を用い、PCR幅には、下記のプライマー:
フォーワードプライマー:5’-TACTTGATGAGTGGTAGCCAGCA-3’(配列番号:50)
リバースプライマー:5’-CGAGGCCACTGATACCTATTGCA-3’(配列番号:51)
をそれぞれ用いた。増幅産物を2.5% アガロースゲル電気泳動で分離し、シークエンシングして増幅されたDNA配列を確認した。mRNAレベルは、Hepatology 47: 686-697 (2008)に記載されるように、SYBR Green IとThermal Cycler Dice Real-Time System(宝バイオ)を用いたリアルタイムPCRにより評価した。COX-2 mRNAレベルをEF mRNAレベルより補正した。ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼmRNAを検出するために、トランスフェクトされた細胞の全RNAを、オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応及びリアルタイムPCRに供した。ルシフェラーゼmRNA値をβ-ガラクトシダーゼmRNA値より補正した。
9. RACE反応
cDNA PCR Library Kit(宝バイオ)と5’RACE用のセンスプライマー(5’-ATGAGTGTGAGCTTTAAAGC-3’; 配列番号:52)を用い、Proc Natl Acad Sci USA 85: 8998-9002 (1988) に記載のRACEプロトコールに従って、PCR増幅を行った。得られた、COX-2 asRNAの5’領域を含むクローンの配列を、シークエンシグにより決定し、DNA Data Bank of Japan/European Bioinformatics Institute/GenBankに、accession No. AB770483として寄託した。
10. COX-2 asRNAに対するセンスオリゴヌクレオチドのCOX-2 mRNAに及ぼす効果
表2に示すCOX-2 asRNAに相補的なセンスオリゴヌクレオチドを委託合成した。
RAW264.7細胞を、100 U/mLペニシリン、100 μg/mLストレプトマイシン及び10% 胎仔ウシ血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養し、6穴プレートに1ウェルあたり1×105細胞の密度で播種し、12時間後に、1ウェルあたり1 mLの新しいDMEM培地に交換した。オリゴ(1 μg)とDMEM(200 μL)を混合し、次に1 μLのIBA社(Gottingen, Germany)のMagnet assisted transfection法による遺伝子導入試薬キット(MATra-A Reagent)を混ぜて室温で20分間静置した後、細胞の入っているウェルに全量を滴下した。6穴プレートを磁石盤(IBA社)の上に載せ、室温で15分間静置してオリゴを細胞に導入した。培地を10% ウシ胎児血清を含むDMEM(1ウェルあたり1.5 mL)に交換してから、一晩37℃に置いた。12時間後、1 μgのLPS(Escherichia coli LPS;Sigma-Aldrich社または和光純薬株式会社)を含む1mLの培地(DMEMまたは10%ウシ胎児血清を含むDMEM)に培地交換し、12時間、37℃に置いた後、全RNAを調製した。上記8.に記載の方法に準じて、種々のセンスオリゴを導入したRAW264.7細胞におけるCOX-2 mRNA量を測定した。
11. 統計学的解析
図面に示される結果は、同様の結果が得られた少なくとも3回の独立した実験の代表的なものである。各数値は平均値±標準偏差(SD)で示している。有意差検定はStudent’s t-検定にて行い、P<0.05及びP<0.01を統計学的に有意であるとした。
(結果)
1. マクロファージにおけるPGE2産生に及ぼすアセトアミノフェンの効果
アセトアミノフェンが、典型的なNSAIDであるアスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンと比較して、LPS刺激したRAW264.7細胞におけるPGE2産生に対してどの程度の阻害効果を有するかを調べた。LPSに応答して、このマクロファージ細胞は高レベルのPGE2を産生した(図1A)。いずれの薬物も、LPS誘発性のPGE2産生を用量依存的に抑制した。各IC50値は、23.1 μM(アセトアミノフェン)、15.0 μM(アスピリン)、0.1 μM(イブプロフェン)及び0.2 μM(ロキソプロフェン)で、アセトアミノフェンのIC50値は、イブプロフェンやロキソプロフェンのIC50値よりも、2オーダー高かった。
2. LPS誘発性COX-2タンパク質発現に及ぼすアセトアミノフェンの効果
次に、COX-2タンパク質の発現に及ぼすアセトアミノフェンの効果について調べた。ウェスタンブロット分析の結果、LPSに応答して、COX-2タンパク質レベルは著明に増加していることが分かった(図1B)。アセトアミノフェンとアスピリンは用量依存的にCOX-2タンパク質発現を低下させたが、イブプロフェンとロキソプロフェンはCOX-2タンパク質レベルを変化させなかった。LDHアッセイの結果、これらの薬物はいずれも、試験した濃度で細胞毒性を示さないことが分かった。これらの結果は、LPS誘発性COX-2タンパク質発現のアセトアミノフェンによる阻害が、アセトアミノフェンによるPGE2産生の阻害と相関することを示している。さらに、アセトアミノフェンは、イブプロフェンやロキソプロフェンのように、COX-2のタンパク質レベルを変化させずにその酵素活性を直接的に阻害することはない。そこで、転写レベル及び転写後レベルでのCOX-2発現に及ぼすアセトアミノフェンの効果についてさらに分析することにした。
3. Cox-2遺伝子のプロモーター活性に及ぼすアセトアミノフェンの効果
マウスCox-2遺伝子プロモーター(2.0 kb)は、Cox-2の転写活性を調節する2つのNF-κB結合部位と2つのC/EBPβ結合部位を含んでいる(J Biol Chem 275: 6259-6266 (2000); J Immunol 177: 8111-8122 (2006); J Immunol 174: 2825-2833 (2005))。J Hepatol 48: 289-299 (2008)、Shock 30: 734-739 (2008) に基づいて、2つのCox-2プロモーター-ルシフェラーゼコンストラクト(pCOX2-Luc-SVpA及びpCOX2-Luc-3’UTR)を調製し、プロモーター活性とmRNA安定性をそれぞれモニタリングした(図2A)。pCOX2-Luc-SVpAは、Cox-2プロモーターにより駆動され、SV40ポリアデニレーションシグナルを有するルシフェラーゼ遺伝子を含むので、このプラスミドのルシフェラーゼ活性はCox-2プロモーター活性及びCOX-2 mRNAの合成と相関する。一方、COX-2 mRNAの3’UTRを有するpCOX2-Luc-3’UTRを用いると、COX-2 mRNAの安定性に及ぼす3’UTRの効果をルシフェラーゼ活性で評価することができる。
これら2つのレポータープラスミドを用いてルシフェラーゼアッセイを行い、COX-2発現に及ぼすアセトアミノフェンの効果を調べた。マクロファージRAW264.7細胞をpCOX2-Luc-SVpAでトランスフェクトすると、ルシフェラーゼ活性は顕著に増加した(図2B,左)。アセトアミノフェンを添加すると、ルシフェラーゼ活性は有意に低下した。ルシフェラーゼ活性はCox-2プロモーター活性と相関するので、これらの結果は、アセトアミノフェンがCox-2プロモーター活性を抑制することを示している。pCOX2-Luc-3’UTRの用いた場合、アセトアミノフェンはLPSにより誘導されるルシフェラーゼ活性を低下させたことから(図2B,右)、アセトアミノフェンがCOX-2 mRNAを不安定化する可能性が示唆された。
4. マクロファージにおいてCox-2遺伝子から転写されるasRNA
asRNAの多くは誘導性遺伝子から転写され、mRNAの3’UTRに対応する配列を有することから(Hepatology 47: 686-697 (2008); HOAJ Biology 1: 10 (2012); Cell Mol Life Sci 70: 1451-1467 (2013))、本発明者らは、Cox-2遺伝子からもasRNAが転写されている可能性があると予測した。そこで、COX-2 mRNAの標識したセンスプローブを用いて、RAW264.7細胞から調製したRNAサンプルのノーザンブロット分析を行った(図3A)。約4 kbの転写産物が、全RNAおよびpoly(A)+ RNAの両方から検出され(図3B)、poly(A)テールを有するCOX-2 asRNAがLPS刺激されたマクロファージ中に存在することが示された。COX-2 mRNAもまた、アンチセンスプローブを用いて、全RNAおよびpoly(A)+ RNAの両方から検出された。
次に、5’RACEを行い、このCOX-2 asRNAの転写開始点を決定した。RACE cDNAクローンの配列解析の結果、ほとんどのcDNAはエキソン10にある終止コドンより1,353ヌクレオチド下流から開始されることが分かった。5’RACEにより決定された転写開始点は、COX-2 mRNAの3’UTRの中央部に対応するアンチセンス鎖に位置していた(図3A)。TATAボックスとキャップ部位がこの予測された開始点付近に見出された。これらの結果から、COX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの3’UTRに相補的な配列の下流から開始されること確認された。
5. マクロファージにおけるCOX-2 asRNAの発現
次に、RAW264.7細胞におけるCOX-2 asRNAの発現を評価した。LPSに応答して、COX-2タンパク質及びPGE2産生のレベルは増大した(図3C)。鎖特異的RT及びリアルタイムPCRの結果、COX-2 mRNAレベルはLPS添加から4時間後には増加し、16時間後にピークに達した後、低下した(図3D)。COX-2 asRNAレベルを評価するために、図3Aに示すような鎖特異的RT-PCR用プライマーを設計した。COX-2 asRNAはLPS添加から10時間後に検出され、直線的に増加した(図3E)。これらのデータは、COX-2 asRNAの発現がCOX-2 mRNAの発現に比べて遅延することを示している。
6. COX-2 mRNAレベル及びPGE2産生に及ぼすCOX-2 asRNA過剰発現の効果
iNOSやIFN-α1、IL-23AのasRNAはmRNAを安定化する一方で、CCL2、CCL20、CX3CL1、CD69、NF-κB等のasRNAは、反対にmRNAを不安定化するので(Hepatology 47: 686-697 (2008); HOAJ Biology 1: 10 (2012); Cell Mol Life Sci 70: 1451-1467 (2013))、COX-2 asRNAがCOX-2 mRNAの安定性をどのように調節するのかを調べるべく、COX-2 asRNAを過剰発現させたマクロファージにおけるCOX-2 mRNAの発現を解析した。CMVエンハンサー/プロモーターの制御下にCOX-2 asRNAを恒常的に発現するエフェクタープラスミドpCMV-COX2-asRNAを構築し(図4A)、このプラスミドでマクロファージをトランスフェクトし、LPS存在下でインキュベートした後、リアルタイムRT-PCRに供した。図4Bに示すとおり、COX-2 mRNAレベルは、asRNA発現エフェクター量に比例して増大した。さらに、PGE2レベルは、エフェクターでトランスフェクトしたマクロファージでは、LPS単独の場合と比較して約2倍に増大した(図4C)。これらの結果は、COX-2 asRNAの過剰発現により、LPS処理したマクロファージにおけるCOX-2 mRNA、COX-2タンパク質及びPGE2が増加することを示している。
7. COX-2 asRNAによるCOX-2 mRNAの安定化
以前の報告(Hepatology 47: 686-697 (2008); HOAJ Biology 1: 10 (2012))では、asRNAは対応するmRNAの3’UTRと相互作用することが示唆されていたので、COX-2 mRNAの安定性を分析するための新たなレポーターコンストラクトを調製した。LPS誘導の効果を相殺するために、恒常的に発現するEFプロモーターを用い、レポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子を、内部標準プラスミドからはβ-ガラクトシダーゼを転写させた(図5A)。レポーターpEF-Luc-SVpAは、ルシフェラーゼ遺伝子の下流にSV40 ポリアデニレーションシグナルを有するのに対し、pEF-Luc-COX2-3’UTRはCOX-2 mRNAの3’UTRを有する。RAW264.7細胞を、いずれかのレポータープラスミドと、COX-2 asRNAを発現するエフェクターpCMV-COX2-asRNA、及びβ-ガラクトシダーゼ mRNAを発現する内部標準pEF-LacZ-SVpAとで、同時にトランスフェクトし、ルシフェラーゼmRNAの安定性をモニタリングした。レポーターから転写されたルシフェラーゼmRNAのレベルは、β-ガラクトシダーゼmRNAレベルで補正した(Hepatology 47: 686-697 (2008))。
COX-2 asRNAがCOX-2 mRNAを安定化するか否かを決定するために、pEF-Luc-COX2-3’UTRをレポーターとして用いたところ、pCMV-COX2-asRNAの存在下で、ルシフェラーゼmRNAレベルは顕著に増大した(図5B,左)。対照的に、pEF-Luc-SVpAをレポーターとして用いた場合、pCMV-COX2-asRNAが存在するか否かに関係なく、ルシフェラーゼmRNAレベルに変化はなかった(図5B,右)。これらの結果から、COX-2 asRNAは、COX-2 mRNAの3’UTRを通じて該mRNAを安定化することが示唆された。
8. COX-2 mRNA及びasRNAの発現に及ぼすアセトアミノフェンの効果
次に、COX-2 asRNAが、アセトアミノフェンによるCOX-2誘導抑制に関与しているか否かを調べた。その結果、アセトアミノフェンは、LPSにより誘導されるCOX-2 mRNA及びCOX-2 asRNAの発現を抑制した(図6A)。さらに、上記7.と同様の、レポーター、asRNA発現エフェクター及び内部標準を用いたmRNA安定性アッセイにより、アセトアミノフェンの効果を調べた。3つのプラスミド(pEF-Luc-COX2-3’UTR、pCMV-COX2-asRNA及びpEF-LacZ-SVpA)を同時にマクロファージに導入し、アセトアミノフェン及びLPSの存在下/非存在下でインキュベートした。その結果、図6Bに示すように、アセトアミノフェンは、LPSにより誘導されるルシフェラーゼmRNAのレベルを有意に低下させた。これらのデータから、アセトアミノフェンは、COX-2 asRNAを低下させることによりCOX-2 mRNAの安定性を低下させていることが示唆された。
9. COX-2 mRNAの発現に及ぼすCOX-2 asRNAに対するセンスオリゴヌクレオチドの効果
表2に記載したCOX-2 mRNAの3’UTRの配列と相同なセンスオリゴヌクレオチドをマクロファージに導入し、LPS誘導性のCOX-2 mRNA発現に及ぼす効果を調べた。その結果、いずれのセンスオリゴヌクレオチドもCOX-2 mRNAの発現を有意に抑制した(図8)。
本発明のセンスヌクレオチド及び本発明のスクリーニング方法により得られるCOX-2 asRNA阻害薬は、COX-2の発現抑制薬、プロスタグランジン産生抑制薬として、炎症性疾患、疼痛、がんなどの予防及び/又は治療に有用である。

Claims (7)

  1. COX-2遺伝子のセンス鎖3’UTRに相補的な配列を含む内在性アンチセンス転写物に相補的な配列を含み、該遺伝子の発現を調節し得るセンスオリゴヌクレオチド。
  2. 配列番号1に示されるCOX-2 mRNAの3’UTR配列中、ヌクレオチド番号203-222で示されるドメインA、ヌクレオチド番号344-363で示されるドメインB、ヌクレオチド番号556-601で示されるドメインC、ヌクレオチド番号692-731で示されるドメインD、ヌクレオチド番号769-791で示されるドメインE、ヌクレオチド番号836-894で示されるドメインFもしくはヌクレオチド番号1204-1235で示されるドメインG、又は他の哺乳動物におけるオルソログのそれらに対応するドメイン内の、1以上のループ構造の少なくとも一部を含む配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる、COX-2 mRNAの発現を抑制し得るセンスオリゴヌクレオチド、請求項1記載のセンスオリゴヌクレオチド。
  3. 請求項1又は2記載のセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、COX-2 mRNAの発現抑制剤。
  4. COX-2介在性疾患の予防又は治療用である、請求項3記載の剤。
  5. 被検物質の存在下及び非存在下で、Cox-2遺伝子のmRNAとそれに対する内在性アンチセンス転写物とのハイブリダイゼーションを検出・比較することを特徴とする、該mRNAの発現抑制物質のスクリーニング方法。
  6. Cox-2遺伝子のmRNAとそれに対する内在性アンチセンス転写物とを発現する細胞に被検物質を接触させ、該細胞における該mRNA量及び/又はそれにコードされるタンパク質量の変化を測定することを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. COX-2 mRNAの3’UTRを含むレポーター遺伝子と、該mRNAに対する内在性アンチセンス転写物とを発現する細胞に被検物質を接触させ、該細胞における該レポーター遺伝子の発現の変化を測定することを特徴とする、該mRNAの発現抑制物質のスクリーニング方法。
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