JP2014231343A - 車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動変速機と差動機構とを有する車両において自動変速機の変速を適切に進行させる。【解決手段】ECUは、変速中であって(S100にてYES)、アクセルペダルが踏み込まれた場合(S102にてYES)、変速がアップシフトであるときには(S104にてYES)、第1MG回転速度に基づいてアップシフト時に対応した出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量を決定するステップ(S108)と、変速がダウンシフトであるときには(S106にてYES)、第1MG回転速度に基づいてダウンシフト時に対応した出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量を決定するステップ(S110)と、エンジンの制御指令値を生成するステップとを含む、プログラムを実行する。【選択図】図7

Description

本発明は、エンジンと駆動輪との間に係合装置(変速機あるいはクラッチなど)を備えるとともに、エンジンと係合装置との間に少なくとも3つの回転要素を有する差動機構(遊星歯車機構など)を備える車両に関する。
特開2003−184594号公報(特許文献1)には、走行状態や運転状態に応じて適切にエンジントルクを抑制するエンジンと自動変速機との統合制御装置が開示されている。また、エンジンおよび回転電機等の複数の動力源が連結される遊星歯車機構等の差動機構を有するハイブリッド車両が公知である。
特開2003−184594号公報
ところで、上述のような差動機構を有するハイブリッド車両において、差動機構と駆動輪との間に自動変速機が連結される場合には、自動変速機の変速時に、エンジンのイナーシャエネルギに加えて他の動力源のイナーシャエネルギを考慮しないと、変速が遅延したり、変速ショックが発生するなどして、変速を適切に進行できないという問題がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、自動変速機と差動機構とを有する車両において自動変速機の変速を適切に進行させる車両を提供することである。
この発明のある局面に係る車両は、駆動輪を回転させるためのパワーを発生するエンジンと、エンジンと駆動輪との間に設けられ、係合状態、スリップ状態および解放状態のいずれかの状態に切替可能な係合装置と、第1回転電機と、第1回転電機に連結される第1回転要素と、係合装置を介して駆動輪に連結される第2回転要素と、エンジンに連結される第3回転要素とを有する差動機構と、第2回転要素に連結される第2回転電機と、エンジンを制御する制御装置とを備える。制御装置は、係合装置がスリップ状態および解放状態のうちのいずれか一方の状態であって、かつ、エンジンの出力トルクの変化が要求される場合には、係合装置の状態が一方の状態へと変化を開始してからの差動機構における回転エネルギの変化量に応じて出力トルクの変化態様を決定する。
好ましくは、車両は、アクセルペダルを含む。係合装置は、変速比を変更可能な変速機である。制御装置は、変速機の変速中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、変速前後での差動機構における回転エネルギの変化量に応じて変化態様を決定する。変化態様は、出力トルクの増加量、増加開始時期および増加勾配のうちの少なくともいずれかである。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のアップシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が大きくなるほど増加勾配が大きくなるように増加勾配を決定する。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のダウンシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が小さくなるほど増加勾配が大きくなるように増加勾配を決定する。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のアップシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が大きくなるほど増加開始時期を早めるように増加開始時期を決定する。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のダウンシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が小さくなるほど増加開始時期を早めるように増加開始時期を決定する。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のアップシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が大きくなるほど増加量が大きくなるように増加量を決定する。
さらに好ましくは、制御装置は、変速機のダウンシフト中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、第1回転電機の回転速度が小さくなるほど増加量が大きくなるように増加量を決定する。
さらに好ましくは、車両は、第1回転電機からエンジンを用いて発電された電力の供給を受けて充電される蓄電装置をさらに含む。制御装置は、蓄電装置の電力供給の許容量が大きくなるほど増加勾配が大きくなるように増加勾配を決定する。
さらに好ましくは、差動機構は、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリアとを含む遊星歯車機構である。第1回転要素は、キャリアである。第2回転要素は、リングギヤである。第3回転要素は、サンギヤである。
この発明によると、係合装置がスリップ状態および解放状態のうちのいずれか一方の状態であって、かつ、エンジンの発生パワーの変化が要求される場合には、係合装置の状態が一方の状態へと変化を開始してからの作動機構における回転エネルギの変化量に応じてエンジンの出力トルクの変化態様を決定することによって、回転エネルギの変化量が増加側に変化する場合や減少側に変化する場合に対応したエンジンの出力トルクの変化態様を適切に決定することができる。そのため、係合装置が変速機である場合には、変速の停滞や遅延の発生や、変速ショックの発生を抑制することができる。したがって、自動変速機と差動機構とを有する車両において自動変速機の変速を適切に進行させる車両を提供することができる。
車両の全体ブロック図である。 動力分割装置の共線図を示す。 自動変速機での変速時の回転変化の様子を模式的に示した図である。 動力分割装置の全体の回転エネルギの分布を示した図である。 アップシフト時のエンジンと第1および第2MGの制御を説明するための図(その1)である。 アップシフト時のエンジンと第1および第2MGの制御を説明するための図(その2)である。 ECUの処理手順の一例を示すフローチャートである。 第1MGの回転速度と増加勾配との関係を示す図である。 第1MGの回転速度と増加開始時期との関係を示す図である。 Winと増加開始時期との関係を示す図である。 変速中におけるアクセルペダルの踏み込み量とエンジンの制御指令値との変化を示すタイミングチャート(その1)である。 変速中におけるアクセルペダルの踏み込み量とエンジンの制御指令値との変化を示すタイミングチャート(その2)である。 車両の構成の変形例を示す図(その1)である。 車両の構成の変形例を示す図(その2)である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
また、本明細書において「電力」という用語は、狭義の電力(仕事率)を意味する場合と、広義の電力である電力量(仕事量)あるいは電気エネルギを意味する場合とがあり、その用語が使用される状況に応じて弾力的に解釈される。
図1は、本実施の形態による車両1の全体ブロック図である。車両1は、駆動輪82を回転させて走行する。この車両1は、エンジン(E/G)100、第1モータジェネレータ(以下「第1MG」という)200、動力分割装置300、第2モータジェネレータ(以下「第2MG」という)400、自動変速機(A/T)500、電力制御装置(Power Control Unit、以下「PCU」という)600、バッテリ700、電子制御装置(Electronic Control Unit、以下「ECU」という)1000を含む。
エンジン100は、駆動輪82を回転させるためのパワー(駆動パワーPv)を発生する。エンジン100が発生したパワーは動力分割装置300に入力される。
動力分割装置300は、エンジン100から入力されたパワーを、自動変速機500を介して駆動輪82に伝達されるパワーと、第1MG200に伝達されるパワーとに分割する。
動力分割装置300は、サンギヤ(S)310、リングギヤ(R)320、キャリア(C)330、およびピニオンギヤ(P)340を含む遊星歯車機構(差動機構)である。サンギヤ(S)310は、第1MG200のロータに連結される。リングギヤ(R)320は、自動変速機500を介して駆動輪82に連結される。ピニオンギヤ(P)340は、サンギヤ(S)310とリングギヤ(R)320とに噛合する。キャリア(C)330は、ピニオンギヤ(P)340を自転かつ公転自在に保持する。キャリア(C)330は、エンジン100のクランクシャフトに連結される。
第1MG200および第2MG400は、交流の回転電機であって、モータとしてもジェネレータとしても機能する。本実施の形態においては、第2MG400は、動力分割装置300と自動変速機500との間に設けられる。より具体的には、動力分割装置300のリングギヤ(R)320と自動変速機500の入力軸とを連結する回転軸350に第2MG400のロータが接続される。
自動変速機500は、回転軸350と駆動軸560との間に設けられる。自動変速機500は、複数の油圧式の摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキなど)を含むギヤユニットと、ECU1000からの制御信号に応じた油圧を各摩擦係合要素に供給する油圧回路とを備える。複数の摩擦係合要素の係合状態が変更されることによって、自動変速機500は、係合状態、スリップ状態および解放状態のいずれかの状態に切り替えられる。係合状態では、自動変速機500の入力軸の回転パワーの全部が自動変速機500の出力軸に伝達される。スリップ状態では、自動変速機500の入力軸の回転パワーの一部が自動変速機500の出力軸に伝達される。解放状態では、自動変速機500の入力軸と出力軸との間の動力伝達が遮断される。また、自動変速機500は、係合状態における変速比(出力軸回転速度に対する入力軸回転速度の比)を予め定められた複数の変速段(変速比)のうちのいずれかに切替可能に形成される。なお、自動変速機500は、通常は係合状態に制御されるが、変速中は一時的にスリップ状態および解放状態のうちのいずれか一方の状態となり、変速終了後に再び係合状態に戻される。
PCU600は、バッテリ700から供給される直流電力を交流電力に変換して第1MG200および/または第2MG400に出力する。これにより、第1MG200および/または第2MG400が駆動される。また、PCU600は、第1MG200および/または第2MG400によって発電される交流電力を直流電力に変換してバッテリ700へ出力する。これにより、バッテリ700が充電される。
バッテリ700は、第1MG200および/または第2MG400を駆動するための高電圧(たとえば200V程度)の直流電力を蓄える。バッテリ700は、代表的にはニッケル水素やリチウムイオンを含んで構成される。なお、バッテリ700に代えて、大容量のキャパシタも採用可能である。
さらに、車両1には、エンジン回転速度センサ10、車速センサ15、レゾルバ21,22、アクセルポジションセンサ31、監視センサ32が備えられる。エンジン回転速度センサ10は、エンジン100の回転速度(以下「エンジン回転速度ωe」という)を検出する。車速センサ15は、駆動軸560の回転速度を車速Vとして検出する。レゾルバ21は、第1MG200の回転速度(以下「第1MG回転速度ωg」という)を検出する。レゾルバ22は、第2MG400の回転速度(以下「第2MG回転速度ωm」という)を検出する。アクセルポジションセンサ31は、ユーザによるアクセルペダルの踏み込み量APを検出する。監視センサ32は、バッテリ700の状態(バッテリ電圧Vb、バッテリ電流Ib、バッテリ温度Tbなど)を検出する。これらの各センサは検出結果をECU1000に出力する。
ECU1000は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵し、当該メモリに記憶された情報や各センサからの情報に基づいて所定の演算処理を実行する。ECU1000は、演算処理の結果に基づいて車両1に搭載される各機器を制御する。
ECU1000は、アクセルペダルの踏み込み量APおよび車速Vから要求駆動パワーPvreqを決定する。ECU1000は、要求駆動パワーPvreqを満足するように所定のアルゴリズムに従ってエンジン目標パワーPetag、第1MG目標パワーPgtag、第2MG目標パワーPmtagを算出する。ECU1000は、実際のエンジンパワーがエンジン目標パワーPetagとなるようにエンジン100(具体的には点火時期、スロットル開度、燃料噴射量など)を制御する。また、ECU1000は、PCU600を制御することによって、第1MG200の実パワーが第1MG目標パワーPgtagとなるように第1MG200を流れる電流を制御する。同様に、ECU1000は、PCU600を制御することによって、第2MG400の実パワーが第2MG目標パワーPmtagとなるように第2MG400を流れる電流を制御する。
ECU1000は、監視センサ32の検出結果に基づいてバッテリ700の残存容量(State Of Charge、以下「SOC」ともいう)を算出する。ECU1000は、SOCおよびバッテリ温度Tbなどに基づいて、バッテリ出力可能電力WOUTおよびバッテリ受入可能電力WIN(単位はいずれもワット)を設定する。ECU1000は、バッテリ700の実出力電力Pboutがバッテリ出力可能電力WOUTを超えないようにPCU600を制御する。また、ECU1000は、バッテリ700の実受入電力Pbinがバッテリ受入可能電力WINを超えないようにPCU600を制御する。
ECU1000は、予め定められた変速マップを参照してアクセルペダルの踏み込み量APおよび車速Vに対応する目標変速段を決定し、実際の変速段が目標変速段となるように自動変速機500を制御する。なお、上述したように、自動変速機500は、通常は係合状態に制御されるが、変速中(アップシフト中またはダウンシフト中)は一時的にスリップ状態または解放状態となり、変速終了後に再び係合状態に戻される。
図2は、動力分割装置300の共線図を示す。図2に示すように、サンギヤ(S)310の回転速度(すなわち第1MG回転速度ωg)、キャリア(C)330の回転速度(すなわちエンジン回転速度ωe)、リングギヤ(R)320の回転速度(すなわち第2MG回転速度ωm)は、動力分割装置300の共線図上で直線で結ばれる関係(いずれか2つの回転速度が決まれば残りの回転速度も決まる関係)になる。なお、本実施の形態においては、リングギヤ(R)320と駆動軸560との間に自動変速機(A/T)500が設けられている。そのため、第2MG回転速度ωmと車速Vとの比は、自動変速機500で形成される変速段(変速比)によって決まる。なお、図2には、自動変速機500が1速〜4速のいずれかの前進変速段を形成可能な場合が例示されている。
図3は、自動変速機500での変速時の回転変化の様子を模式的に共線図上に示した図である。図3に示すように、変速時(ダウンシフト時あるいはアップシフト時)には、車速Vはほとんど変化せず固定される。そのため、ダウンシフト時(変速比を上げる時)には、一点鎖線に示すように、自動変速機500の入力軸回転速度(すなわち第2MG回転速度ωm)を上昇させる必要がある。逆に、アップシフト時(変速比を下げる時)には、二点鎖線に示すように、自動変速機500の入力軸回転速度を低下させる必要がある。
通常のエンジン車両では、エンジンと自動変速機との間に動力分割装置300に相当する装置が設けられない。そのため、エンジンパワーと自動変速機の入力軸回転変化との間には正の相関関係(一方が増加すると他方も増加し、一方が低下すると他方も低下する関係)が定常的に存在する。したがって、ダウンシフト時には、エンジンパワーの増加補正(あるいは自動変速機の伝達パワーの低下補正)を行なうことで、自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて変速を促すことが可能である。また、アップシフト時には、エンジンパワーの低下補正(あるいは自動変速機の伝達パワーの増加補正)を行なうことで、自動変速機の入力軸回転速度を低下させて変速を促すことが可能である。
ところが、本実施の形態による車両1においては、エンジン100と自動変速機500との間に動力分割装置300が設けられるため、自動変速機500の入力軸側にエンジン100に加えて動力分割装置300を介在して第1MG200および第2MG400が連結されることとなる。そのため、自動変速機500の変速時に、エンジンのイナーシャエネルギに加えて第1MG200および第2MG400の各々のイナーシャエネルギを考慮しないと、変速の停滞や遅延が生じたり、変速ショックが発生するなどして、変速を適切に進行できない場合がある。特に変速中にアクセルペダルが踏み込まれるなどしてエンジン100の出力の上昇が要求される場合にも、このような現象が生じる場合がある。この点について、図4を参照してより詳しく説明する。
図4は、動力分割装置300の全体の回転エネルギの分布を等エネルギ曲線群(エネルギが等しい点を結んだ曲線を所定エネルギ毎に示したもの)を用いて示した図である。図4においては、エンジン回転速度ωe(キャリア(C)330の回転速度)を横軸とし、第2MG回転速度ωm(リングギヤ(R)320の回転速度)を縦軸としている。上述の図2で説明したように、エンジン回転速度ωeおよび第2MG回転速度ωmが決まれば、残りの第1MG回転速度ωg(サンギヤ(S)310の回転速度)も決まり、動力分割装置300内のすべての回転要素の回転速度を特定することができる。そのため、エンジン回転速度ωeおよび第2MG回転速度ωmをパラメータとすることで、動力分割装置300の全体の回転エネルギ(以下、単に「合計エネルギEsum」ともいう)が決まることになる。各等エネルギ曲線が示す合計エネルギEsumの値E1,E2,E3,…E10,…は、原点から遠いほど高い。すなわち、E1<E2<E3<E4…<E10…の関係にある。
図4から分かるように、エンジン回転速度ωeが変化しない場合には、第2MG回転速度ωmと合計エネルギEsumとの間の相関関係が境界ラインL1よりも上側の領域と下側の領域とで反対になる。具体的には、境界ラインL1よりも上側の領域では、第2MG回転速度ωmと合計エネルギEsumとの間には正の相関関係(一方が増加すると他方も増加し、一方が低下すると他方も低下する関係)がある。そのため、以下では、境界ラインL1よりも上側の領域を「正相関領域」ともいう。一方、境界ラインL1よりも下側の領域では、第2MG回転速度ωmと合計エネルギEsumとの間には負の相関関係(一方が増加すると他方は低下し、一方が低下すると他方は増加する関係)がある。そのため、以下では、境界ラインL1よりも下側の領域を「負相関領域」ともいう。
なお、境界ラインL1は、下記の式(a)の関係式で表わすことができる。
ωm={(1+ρ)Ig/(Ig+ρ2Im)}ωe …(a)
式(a)において、「Ig」は第1MG200の慣性モーメント、「Im」は第2MG400の慣性モーメント、「ρ」は動力分割装置300のプラネタリギヤ比である。
また、図4には、アップシフト時の回転変化がパターン(1)および(2)に示されている。なお、図4のパターン(1)および(2)では、変速時にエンジン回転速度ωeがほとんど変化しない場合を想定している。また、図4のパターン(1)および(2)では、いずれも同じ車速である場合を想定している。同じ車速の場合(第2MG回転速度ωmが同じである場合)、エンジン回転速度ωeが高くなるほど、第1MG200の回転速度ωgが高くなる関係となる。
図4のパターン(1)に示すように、アップシフトを行なう場合に第2MG回転速度ωmが低下すると、これに伴って合計エネルギEsumも低下する。すなわち、このエンジン100の回転速度領域でアップシフトを行なう場合には、合計エネルギEsumを低下させる必要がある。
図5は、図4のパターン(1)に対応する、第1MG回転速度ωgと、第2MG回転速度ωmと、エンジン回転速度ωeとの関係を示す共線図である。
たとえば、第1MG回転速度ωgと、第2MG回転速度ωmと、エンジン回転速度ωeとの関係が図5の実線に示すような関係である場合に、アップシフトを行なう場合には、図5の破線に示すように、第1MG200の回転エネルギが低下させられ(第1MG回転速度ωgが引き下げられ)、第2MG400の回転エネルギが低下させられ(第2MG回転速度ωmが引き下げられ)、変速前後で合計エネルギEsumが低下させられる。
このような変速中にアクセルペダルが踏み込まれるなどしてエンジン100の出力トルクの上昇が要求される場合に、エンジン100の出力トルクを要求に応じて応答性良く上昇させると、合計エネルギEsumを速やかに低下させることができないため、変速の停滞や遅延が生じたり、変速ショックが生じたりする場合がある。
一方、図4のパターン(2)に示すように、アップシフトを行なう場合に第2MG回転速度ωmが低下すると、これに伴って合計エネルギEsumは増加する。すなわち、このエンジン100の回転速度領域でアップシフトを行なう場合には、合計エネルギEsumを増加させる必要がある。
図6は、図4のパターン(2)に対応する、第1MG回転速度ωgと、第2MG回転速度ωmと、エンジン回転速度ωeとの関係を示す共線図である。
たとえば、第1MG回転速度ωgと、第2MG回転速度ωmと、エンジン回転速度ωeとの関係が図6の実線に示すような関係である場合に、アップシフトを行なう場合には、図6の破線に示すように、第1MG200の回転エネルギが増加させられ(第1MG回転速度ωgが引き上げられ)、第2MG400の回転エネルギが低下させられ(第3MG回転速度ωmが引き下げられ)、変速前後で合計エネルギEsumが増加させられる。
このような変速中にアクセルペダルが踏み込まれるなどしてエンジン100の出力トルクの上昇が要求される場合に、エンジン100の出力トルクを要求に応じて応答性良く上昇させないと、合計エネルギEsumを速やかに増加させることができないため、やはり、変速の遅延や遅延が生じたり、変速ショックが生じたりする場合がある。
そのため、本実施の形態によるECU1000は、自動変速機500がスリップ状態および解放状態のうちのいずれか一方の状態であって、かつ、エンジン100の出力トルクの変化が要求される場合には、自動変速機500の状態が上述の一方の状態へと変化を開始してからの動力分割装置300における回転エネルギの変化量(すなわち、合計エネルギEsumの変化量)に応じて、エンジン100の出力トルクの変化態様を決定するものである。
なお、本実施の形態において、「自動変速機500がスリップ状態および解放状態のうちのいずれか一方の状態である」とは、自動変速機500が変速中であることを示す。また、「エンジン100の出力トルクの変化が要求される場合」とは、アクセルペダルが踏み込まれることによりエンジン100の出力トルクの上昇が要求される場合である。本実施の形態において「出力トルクの変化態様」は、出力トルクの変化勾配、変化開始時期および変化量である。
すなわち、本実施の形態によるECU1000は、自動変速機の変速中にアクセルペダルが踏み込まれる場合には、変速前後での動力分割装置300における合計エネルギEsumの変化量に応じて、エンジン100の出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量を決定する。
図7を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU1000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明する処理については、ECU1000のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU1000は、変速中であるか否かを判定する。
ECU1000は、たとえば、自動変速機500の変速比の変化量が予め定められた量よりも大きい場合に変速中であると判定する。ECU1000は、たとえば、自動変速機500の制御状態(たとえば、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素に供給される油圧を調整するソレノイドバルブへの制御指令値)に基づいて変速中であるか否かを判定してもよいし、シフトレバーに対してアップシフト操作あるいはダウンシフト操作が行なわれてからアップシフトまたはダウンシフト後の変速段への変速が完了するまでの間である場合に変速中であると判定してもよい。
変速中であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、この処理は終了する。
S102にて、ECU1000は、アクセルペダルが踏み込まれたか否かを判定する。ECU1000は、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量が予め定められた量を超える場合にアクセルペダルが踏み込まれたと判定する。予め定められた量は、たとえば、エンジン100の出力トルクの上昇が要求されるアクセルペダルの踏み込み量である。アクセルペダルが踏み込まれたと判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合、この処理は終了する。
S104にて、ECU1000は、変速がアップシフトであるか否かを判定する。ECU1000は、たとえば、上述した自動変速機500の変速比がアップシフト側に変化している場合や変速後の変速段がアップシフト側の変速段である場合には、変速がアップシフトであると判定する。ECU1000は、変速がアップシフトであると判定される場合(S104にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S104にてNO)、処理はS106に移される。
S106にて、ECU1000は、変速がダウンシフトであるか否かを判定する。ECU1000は、たとえば、上述した自動変速機500の変速比がダウンシフト側に変化している場合や変速後の変速段がダウンシフト側の変速段である場合には、変速がダウンシフトであると判定する。変速がダウンシフトであると判定される場合(S106にてYES)、処理はS112に移される。
S108にて、ECU1000は、第1MG回転速度ωgに基づいて、アップシフト時に対応した、エンジン100の出力トルクの増加量、増加開始時期および増加勾配の各々を決定する。
S110にて、ECU1000は、第1MG回転速度ωgに基づいて、ダウンシフト時に対応した、エンジン100の出力トルクの増加量、増加開始時期および増加勾配の各々を決定する。
ECU1000は、たとえば、図8、図9および図10を用いてアップシフト時あるいはダウンシフト時に対応した、エンジン100の出力トルクの増加開始時期Tupおよび増加勾配ΔPeの各々を決定する。
図8は、アップシフト時およびダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係を示すマップである。図8の実線がアップシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係を示し、図8の破線がダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係を示す。
図8の実線に示されるように、アップシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとは、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど(正側に増加するほど)増加勾配ΔPeが大きくなり、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど(負側に増加するほど)増加勾配ΔPeが小さくなる関係を有する。
ECU1000は、たとえば、アップシフト時において第1MG回転速度ωgがωg1(0)である場合には、図8の実線に示すマップから増加勾配ΔPe(0)を決定する。
図8の破線に示されるように、ダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとは、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど増加勾配ΔPeが大きくなり、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど増加勾配ΔPeが小さくなる関係を有する。
ECU1000は、たとえば、ダウンシフト時において第1MG回転速度ωgがωg1(0)である場合には、図8の破線に示すマップから増加勾配ΔPe(1)(<ΔPe(0))を決定する。
図9は、アップシフト時およびダウンシフト時における第1MG回転速度ωgとエンジン100の出力トルクの増加開始時期Tupとの関係を示すマップである。図9の実線がアップシフト時における第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupとの関係を示し、図9の破線がダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupとの関係を示す。
図9の実線に示されるように、アップシフト時における第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupとは、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど増加開始時期Tupが早められ、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど増加開始時期Tupが遅らせられる関係を有する。
なお、増加開始時期Tupは、アクセルペダルが踏み込まれた時点を基準とした、エンジン100の出力トルクが上昇するようにエンジン100の制御を開始するタイミングであって、図9においては、増加開始時期Tupが大きくなるほど(図9の上側になるほど)当該タイミングが遅らせられ、増加開始時期Tupが小さくなるほど(図9の下側になるほど)当該タイミングが早められることが示される。
ECU1000は、たとえば、アップシフト時において第1MG回転速度ωgがωg1(0)である場合には、図9の実線に示すマップから増加開始時期Tup(0)を決定する。
図9の破線に示されるように、ダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupとは、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど増加開始時期Tupが早められ、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど増加開始時期Tupが遅らせられる関係を有する。
ECU1000は、たとえば、ダウンシフト時において第1MG回転速度ωgがωg1(0)である場合には、図9の破線に示すマップから増加開始時期Tup(1)を決定する。
なお、アップシフト時およびダウンシフト時における第1MG回転速度ωgとエンジン100の出力トルクの増加量との関係は、図8に示されるアップシフト時およびダウンシフト時における第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係と同様の傾向を示す。
すなわち、アップシフト時において第1MG回転速度ωgと増加量とは、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど増加量が大きくなり、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど増加量が小さくなる関係を有する。
同様に、ダウンシフト時において第1MG回転速度ωgと増加量とは、第1MG回転速度ωgが小さくなるほど増加量が大きくなり、第1MG回転速度ωgが大きくなるほど増加量が小さくなる関係を有する。
なお、ECU1000は、第1MG回転速度ωgに加えてアクセルペダルの踏み込み量に基づいて増加量を決定してもよい。たとえば、ECU1000は、第1MG回転速度ωgとアクセルペダルの踏み込み量と増加量との関係を規定する3次元マップを用いて増加量を決定してもよい。なお、3次元マップは、アップシフト時に対応して設定されるアップシフト用3次元マップと、ダウンシフト時に対応すて設定されるダウンシフト用3次元マップとを含むようにしてもよい。ECU1000は、変速がアップシフトかダウンシフトかによっていずれかの3次元マップを選択して、選択された3次元マップを用いてエンジン100の出力トルクの増加量を決定してもよい。
なお、ECU1000は、第1MG回転速度ωgに加えて、バッテリ700の許容充電電力Winに基づいてエンジン100の出力トルクの増加勾配ΔPeを決定してもよい。
より具体的には、ECU1000は、図8を用いて決定される増加勾配ΔPeを、許容充電電量Winによって決定される増加勾配上限値ΔPeupによってガードしてもよい。
図10は、バッテリ700の許容充電電力Winと、増加勾配上限値ΔPeupとの関係を示すマップである。図10に示すされるように、許容充電電力Winと増加勾配上限値ΔPeupとは、許容充電電力Winが大きくなるほど増加勾配上限値ΔPeupが大きくなり、許容充電電力Winが小さくなるほど増加勾配上限値ΔPeupが小さくなる関係を有する。
ECU1000は、たとえば、許容充電電力WinがWin(0)である場合には、図10に示すマップから増加勾配上限値ΔPeup(0)を決定する。ECU1000は、たとえば、図8を用いて決定される増加勾配ΔPe(0)がΔPeup(0)以上の場合には、ΔPeup(0)を増加勾配ΔPeとして決定し、図8を用いて決定される増加勾配ΔPeがΔPeup(0)よりも小さい場合には、ΔPe(0)を増加勾配ΔPeとして決定する。
あるいは、ECU1000は、第1MG回転速度ωgと、許容充電電力Winと、増加勾配ΔPeとの関係を示す3次元マップを用いて増加勾配ΔPeを決定してもよい。なお、3次元マップは、アップシフト時に対応して設定されるアップシフト用3次元マップと、ダウンシフト時に対応して設定されるダウンシフト用3次元マップとを含むようにしてもよい。ECU1000は、変速がアップシフトかダウンシフトかによっていずれかの3次元マップを選択して、選択された3次元マップを用いてエンジン100の出力トルクの増加勾配ΔPe、増加開始時期Tupおよび増加量を決定してもよい。
図7に戻って、S112にて、ECU1000は、決定されたエンジン100の出力トルクの増加勾配ΔPe、増加開始時期Tupおよび増加量にしたがってエンジン100の出力トルクが変化するように制御指令値を生成して、エンジン100に出力する。ECU1000は、たとえば、エンジン100の出力トルクが、決定されたエンジン100の出力トルクの増加勾配ΔPe、増加開始時期Tupおよび増加量にしたがって変化するようにエンジン100のスロットル開度、燃料噴射量および点火時期のうちの少なくともいずれかを制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく車両1に搭載されるECU1000の動作について図11および図12を用いて説明する。なお、図11および図12において、短破線で示されるエンジン制御指令値の変化は、車両1が走行中であって、かつ、変速中以外のときにアクセルペダルが踏み込まれた場合におけるエンジン制御指令値(以下、変速中以外でのエンジン制御指令値と記載する)の変化を示すものとする。また、車両1が走行中であって、かつ、変速中以外のときにアクセルペダルが踏み込まれた場合においては、所定の増加勾配で、かつ、所定の増加開始時期にエンジン100の出力トルクが所定量だけ上昇するようにエンジン100が制御されるものとする。
<負相関領域内でアップシフトが行なわれる場合>
図11に示すように、たとえば、アクセルペダルが踏み込まれておらず、変速段が変速段Aであって、自動変速機500の入力軸回転速度(=ωm)がωm(0)であって、エンジン100の制御指令値がCであって、係合側の摩擦係合要素(変速段B時に係合される摩擦係合要素)に供給される油圧の指令値がゼロであって、解放側の摩擦係合要素(変速段A時に係合される摩擦係合要素)に供給される油圧の指令値が上限値である場合にアップシフトが行なわれる場合を想定する。アップシフトは、図4のパターン(2)に示したような負相関領域内で行なわれる場合を想定する。
時間t1にて、変速段Aから変速段Bへのアップシフトが開始されると、まずトルク相が開始される。このとき、図11の油圧指令値(長破線)の変化に示されるように、解放側の摩擦係合要素に供給される油圧の指令値が時間の経過とともに低下させられるとともに係合側の摩擦係合要素に供給される油圧の指令値が係合初期圧を示す指令値が所定時間だけ出力された後、係合初期圧よりも低い所定待機圧を示す指令値が継続して出力される。これにより、解放側の摩擦係合要素の解放と、係合側の摩擦係合要素の係合とが開始される。
時間t2にて、イナーシャ相が開始されると、自動変速機500の入力軸回転数(すなわち、第2MG回転速度ωm)が低下を開始する。変速比の変化により変速中であると判定されると(S100にてYES)、アクセルペダルが踏み込まれたか否かが判定される(S102)。
時間t3−t4にて、運転者によってアクセルペダルがゼロからAP(0)まで踏み込まれて、アクセルペダルが踏み込まれたと判定されると(S102にてYES)、変速がアップシフトであるため(S104にてYES)、アップシフト時に対応したエンジン100の出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量が第1MG回転速度ωgに基づいて算出される(S108)。
なお、第1MG回転速度ωgに基づく増加勾配、増加開始時期および増加量の算出については、図8および図9を用いて説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。そして、算出された増加勾配、増加開始時期および増加量にしたがってエンジン100の出力トルクが変化するようにエンジン100の制御指令値が生成される(S112)。
図4のパターン(2)で示したように負相関領域内でアップシフトが行なわれる場合には、図6を用いて説明したように、第1MG200の回転エネルギが増加させられ(第1MG回転速度ωgが引き上げられ)、第2MG400の回転エネルギが低下させられ(第2MG回転速度ωmが引き下げられ)、変速前後で合計エネルギEsumが増加させられる。
このような変速中に、アクセルペダルが踏み込まれるなどしてエンジン100の出力トルクの上昇が要求される場合には、第1MG回転速度ωgが大きいほど増加勾配が大きくなるとともに、増加開始時期が早められる。その結果、変速中以外でのエンジン制御指令値の変化に基づいてエンジン100の出力トルクが増加する場合や、後述する図4のパターン(1)に示した正相関領域内でのアップシフト中にアクセルペダルが同様に踏み込まれてエンジン100の出力トルクが増加する場合よりも応答性良くエンジン100の出力トルクが上昇されることとなる。
その結果、合計エネルギEsumが速やかに増加して動作点を変速後の位置まで速やかに移動させることができるため、第2MG回転速度ωmが、変速中以外でのエンジン制御指令値の変化に基づいてエンジン100の出力トルクが変化する場合の第2MG回転速度ωmの変化(図11の一点鎖線)よりも速やかに低下させられる。
時間t5にて、第2MG回転速度ωmは、変速後の同期回転数ωm(1)に到達する。その後に係合側の摩擦係合要素に供給される油圧の指令値が上限値まで上昇することによって変速段Bへのアップシフト変速が完了する。
<正相関領域内でアップシフトが行なわれる場合>
図12の時間t3までの変化は、図11の時間t3までの変化と同様であるため、その詳細な説明は繰り返されない。図12においてアップシフトは、図4のパターン(1)に示したような正相関領域内で行なわれる場合を想定する。
時間t3−t4にて、運転者によってアクセルペダルがゼロからAP(0)まで踏み込まれて、アクセルペダルが踏み込まれたと判定されると(S102にてYES)、変速がアップシフトであるため(S104にてYES)、アップシフト時に対応したエンジン100の出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量が第1MG回転速度ωgに基づいて算出される(S108)。
なお、第1MG回転速度ωgに基づく増加勾配、増加開始時期および増加量の算出については、図8および図9を用いて説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。そして、算出された増加勾配、増加開始時期および増加量にしたがってエンジン100の出力トルクが変化するようにエンジン100の制御指令値が生成される(S112)。
図4のパターン(1)で示したように正相関領域内でアップシフトが行なわれる場合には、図5を用いて説明したように、第1MG200の回転エネルギが低下させられ(第1MG回転速度ωgが引き上げられ)、第2MG400の回転エネルギが低下させられ(第2MG回転速度ωmが引き下げられ)、変速前後で合計エネルギEsumが減少させられる。
このような変速中に、アクセルペダルが踏み込まれるなどしてエンジン100の出力トルクの上昇が要求される場合には、第1MG回転速度ωgが小さいほど増加勾配が小さくなるとともに、増加開始時期が遅らせられる。その結果、変速中以外でのエンジン制御指令値の変化に基づいてエンジン100の出力トルクが増加する場合や、図11に示した負相関領域内でのアップシフト中にアクセルペダルが同様に踏み込まれてエンジン100の出力トルクが増加する場合よりも緩やかにエンジン100の出力トルクが上昇されることとなる。
その結果、合計エネルギEsumが速やかに減少して動作点を変速後の位置まで速やかに移動させることができるため、第2MG回転速度ωmが、変速中以外でのエンジン制御指令値の変化に基づいてエンジン100の出力トルクが変化する場合の第2MG回転速度ωmの変化(図12の一点鎖線)よりも速やかに低下させられる。
時間t5にて、第2MG回転速度ωmは、変速後の同期回転数ωm(1)に到達する。その後に係合側の摩擦係合要素に供給される油圧の指令値が上限値まで上昇することによって変速段Bへのアップシフト変速が完了する。
なお、図11および12を用いて正相関領域内および負相関領域内の各々において動作点が移動するアップシフト中にアクセルペダルが踏み込まれた場合に、第1MG回転速度ωgに基づいてエンジンの出力トルクの変化態様を決定する場合を一例として説明したが、ダウンシフト中にアクセルペダルが踏み込まれた場合のエンジンの出力トルクの変化態様の決定についても同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、変速中であって、かつ、アクセルペダルが踏み込まれた場合に、第1MG回転速度ωgに基づいてエンジン100の制御指令値の増加勾配、増加開始時期および増加量を決定することによって、第2MG回転速度ωmを変速後の同期回転数まで速やかに変化させることができる。その結果、変速の停滞や遅延が発生したり、変速ショックが発生したりすることを抑制することができる。したがって、自動変速機と差動機構とを有する車両において自動変速機の変速を適切に進行させる車両を提供することができる。
本実施の形態において、図8で示された第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係、および図9で示された第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupの関係は、いずれも線形の関係である場合を一例として説明したが、特に線形の関係に限定されるものではなく、非線形の関係であってもよい。
図8で示された第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係、および図9で示された第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupの関係の各々は、アップシフト時において第1MG回転速度ωgが第1の値である場合のエンジン100の出力トルクの増加態様が、第1MG回転速度ωgが第2の値(>第1の値)である場合のエンジン100の出力トルクの増加態様よりも出力トルクが緩やかに変化する態様となる関係であればよい。
同様に、図8で示された第1MG回転速度ωgと増加勾配ΔPeとの関係、および図9で示された第1MG回転速度ωgと増加開始時期Tupの関係の各々は、少なくともダウンシフト時において、第1MG回転速度ωgが第2の値である場合のエンジン100の出力トルクの増加態様が、第1MG回転速度ωgが第1の値である場合のエンジン100の出力トルクの増加態様よりも出力トルクが緩やかに変化する態様となる関係であればよい。
本実施の形態においては、エンジン100の出力トルクの変化態様は、増加量、増加勾配および増加開始時期である場合を一例として説明したが、たとえば、エンジン100の出力トルクの変化態様は、増加量、増加勾配および増加開始時期のうちの少なくともいずれかであってもよい。
本実施の形態においては、エンジン100の出力トルクの変化態様を決定する場合を一例として説明したが、出力トルクに代えてエンジンパワーの変化態様を決定するものとしてもよい。なお、変速中においてはエンジン回転速度ωeがほとんど変化しないため、エンジンパワーの変化態様の決定は、エンジン100の出力トルクの変化態様と実質的に同義である。
本実施の形態においては、変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合に第1MG回転速度ωgに基づいてエンジン100の出力トルクの増加態様を決定する場合を一例として説明したが、たとえば、変速中にアクセルペダルが解除された場合に第1MG回転速度ωgに基づいてエンジン100の出力トルクの減少態様を決定してもよい。減少態様とは、エンジン100の出力トルクの減少勾配、減少開始時期および減少量のうちの少なくともいずれかである。このようにしても変速の停滞や遅延や変速ショックの発生を抑制して変速を速やかに進行させることができる。
さらに、本実施の形態においては、変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合に第1MG回転速度ωgに応じてエンジン100の出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量を決定する場合を一例として説明したが、たとえば、変速中にアクセルペダルが踏み込まれた場合に、アクセルペダルの踏み込み量に基づく増加勾配、増加開始時期および増加量の基準値に対する増加勾配の補正量、増加開始時期の補正量および増加量の補正量を決定して、基準値を補正することによってエンジン100の出力トルクの増加勾配、増加開始時期および増加量を決定してもよい。基準値は、たとえば、変速中以外でのエンジン制御指令値の変化態様に基づいて設定されればよい。
本実施の形態において、合計エネルギEsumが変速前後で正側に変化するか負側に変化するか(変化量が正側か負側か)を第1MG回転速度ωgによって特定し、適切な出力トルクの変化態様を決定するものとして説明したが、たとえば、第1MG回転速度ωgに代えてエンジン回転速度ωeと第2MG回転速度ωmとに基づいてエンジン100の出力トルクの変化態様を決定してもよい。
たとえば、エンジン回転速度ωeと第2MG回転速度ωmとから第1MG回転速度ωgを算出し、図8および図9で説明したようなマップを用いてエンジン100の出力トルクの変化態様を決定してもよい。
あるいは、エンジン回転速度ωeと第2MG回転速度ωmとエンジン100の出力トルクの変化態様(たとえば、変化勾配、変化開始時期および変化量)との関係を示すマップ等を用いてエンジン100の出力トルクの変化態様を決定してもよい。
あるいは、図4を用いてエンジン回転速度ωeと第2MG回転速度ωmとから変速後の動作点に移動した場合の変速前後での合計エネルギEsumの変化量を算出し、算出された変化量とエンジン100の出力トルクの変化態様との関係を示すマップ等を用いてエンジン100の出力トルクの変化態様を決定してもよい。
たとえば、合計エネルギEsumの変化量が正側に大きくなるほど変化量がゼロ等の小さい場合(あるいは、変速中以外の場合)よりも応答性よく出力トルクが変化する変化態様を決定してもよい。また、合計エネルギEsumの変化量が負側に大きくなるほど変化量がゼロ等の小さい場合(あるいは、変速中以外の場合)よりも緩やかに出力トルクが変化する変化態様を決定してもよい。
<車両構成の変形例>
上述の実施の形態による車両1の構成は、たとえば以下のように変更することもできる。
図13は、車両1の構成の変形例を示す図(その1)である。上述の実施の形態では動力分割装置300と駆動輪82との間に自動変速機500が設けられる構成を示したが、図13に示す車両1Aのように自動変速機500に代えてクラッチ520が設けられる構成であってもよい。
図14は、車両1の構成の変形例を示す図(その2)である。上述の図13に示す車両1Aでは第2MG400のロータが回転軸350(リングギヤ(R)320とクラッチ520の入力軸との間)に接続される構成を示したが、図14に示す車両1Bのように第2MG400のロータが駆動軸560(クラッチ520の出力軸と駆動輪82との間)に接続される構成であってもよい。
また、動力分割装置300は、上述の図4に示したような正相関領域と負相関領域とが存在する差動機構、具体的にはエンジン100に連結される第1回転要素と自動変速機500(あるいはクラッチ520)を介して駆動輪82に連結される第2回転要素とを含む少なくとも3つの回転要素を有する差動機構であればよい。したがって、必ずしもエンジン100がキャリア(C)330に接続され、自動変速機500がリングギヤ(R)320に接続される必要はない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1A,1B 車両、10 エンジン回転速度センサ、15 車速センサ、21,22 レゾルバ、31 アクセルポジションセンサ、32 監視センサ、82 駆動輪、100 エンジン、200 第1MG、300 動力分割装置、350 回転軸、400 第2MG、500 自動変速機、520 クラッチ、560 駆動軸、700 バッテリ。

Claims (10)

  1. 駆動輪を回転させるためのパワーを発生するエンジンと、
    前記エンジンと前記駆動輪との間に設けられ、係合状態、スリップ状態および解放状態のいずれかの状態に切替可能な係合装置と、
    第1回転電機と、
    前記第1回転電機に連結される第1回転要素と、前記係合装置を介して前記駆動輪に連結される第2回転要素と、前記エンジンに連結される第3回転要素とを有する差動機構と、
    前記第2回転要素に連結される第2回転電機と、
    前記エンジンを制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記係合装置が前記スリップ状態および前記解放状態のうちのいずれか一方の状態であって、かつ、前記エンジンの出力トルクの変化が要求される場合には、前記係合装置の状態が前記一方の状態へと変化を開始してからの前記差動機構における回転エネルギーの変化量に応じて前記出力トルクの変化態様を決定する、車両。
  2. 前記車両は、アクセルペダルを含み、
    前記係合装置は、変速比を変更可能な変速機であって、
    前記制御装置は、前記変速機の変速中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、変速前後での前記差動機構における回転エネルギーの変化量に応じて前記変化態様を決定し、
    前記変化態様は、前記出力トルクの増加量、増加開始時期および増加勾配のうちの少なくともいずれかである、請求項1に記載の車両。
  3. 前記制御装置は、前記変速機のアップシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が大きくなるほど前記増加勾配が大きくなるように前記増加勾配を決定する、請求項2に記載の車両。
  4. 前記制御装置は、前記変速機のダウンシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が小さくなるほど前記増加勾配が大きくなるように前記増加勾配を決定する、請求項2に記載の車両。
  5. 前記制御装置は、前記変速機のアップシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が大きくなるほど前記増加開始時期を早めるように前記増加開始時期を決定する、請求項2に記載の車両。
  6. 前記制御装置は、前記変速機のダウンシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が小さくなるほど前記増加開始時期を早めるように前記増加開始時期を決定する、請求項2に記載の車両。
  7. 前記制御装置は、前記変速機のアップシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が大きくなるほど前記増加量が大きくなるように前記増加量を決定する、請求項2に記載の車両。
  8. 前記制御装置は、前記変速機のダウンシフト中に前記アクセルペダルが踏み込まれる場合には、前記第1回転電機の回転速度が小さくなるほど前記増加量が大きくなるように前記増加量を決定する、請求項2に記載の車両。
  9. 前記車両は、前記第1回転電機から前記エンジンを用いて発電された電力の供給を受けて充電される蓄電装置をさらに含み、
    前記制御装置は、前記蓄電装置の電力供給の許容量が大きくなるほど前記増加勾配が大きくなるように前記増加勾配を決定する、請求項2に記載の車両。
  10. 前記差動機構は、サンギヤと、リングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリアとを含む遊星歯車機構であって、
    前記第1回転要素は、前記キャリアであって、
    前記第2回転要素は、前記リングギヤであって、
    前記第3回転要素は、前記サンギヤである、請求項1に記載の車両。
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