JP2014228091A - 磁気軸受装置および圧縮機 - Google Patents

磁気軸受装置および圧縮機 Download PDF

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篤 阪脇
Atsushi Sakawaki
篤 阪脇
勇二 中澤
Yuji Nakazawa
勇二 中澤
裕介 入野
Yusuke Irino
裕介 入野
尚也 山下
Naoya Yamashita
尚也 山下
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Abstract

【課題】負荷の変動幅の変化に伴う磁気軸受の制御性の劣化を抑制する。
【解決手段】磁気軸受本体(21)は、少なくとも一対の制御電磁石(201,203)の合成電磁力(F)により回転軸(33)を非接触に支持する。制御部(11)は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値が予め定められた目標変動指標値に近づくように、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合を制御する。
【選択図】図5

Description

この発明は、磁気軸受に関し、特に、磁気軸受の制御に関する。
従来より、複数の電磁石の合成電磁力により回転軸を非接触に支持する磁気軸受が知られている。また、このような磁気軸受の一種として、複数のティースの各々に対して制御コイルおよびバイアスコイルを巻回することにより複数の電磁石が構成されている磁気軸受がある(例えば、特許文献1など)。このような磁気軸受では、回転軸の位置偏差に応じて変化する制御電流を制御コイルに流すとともに、バイアス電流(固定電流)をバイアスコイルに流すことにより、制御電流と合成電磁力との間の線形性を確保している。
特開2001−248639号公報
上記のような磁気軸受では、負荷の変動に伴って制御電流が変動する。そのため、負荷の変動幅が広くなって制御電流の変動幅が広くなると、制御電流の電流値が飽和値に到達して制御電流が飽和し、制御電流の波形が歪んでしまう可能性がある。このように制御電流の波形が歪むと、合成電磁力に誤差が生じてしまうので、磁気軸受の制御性(具体的には、制御電流の指令値と合成電磁力との間の線形性)が劣化してしまう。なお、この合成電磁力の誤差は、制御電流の変動量に対する波形歪み量の割合が大きくなるほど顕著になる傾向にある。また、負荷がゼロを跨いで変動する場合、制御電流もゼロを跨いで変動することになる。この場合、制御電流のゼロクロスの際にデッドタイムが発生して制御電流の波形が歪んでしまう。また、ゼロを跨いで変動する負荷の変動幅が狭くなって制御電流の変動幅が狭くなると、制御電流の変動幅に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加して合成電磁力の誤差が顕著になってしまう可能性がある。このように、上記のような磁気軸受では、負荷の変動幅の変化に伴って制御電流の変動幅が変化してしまうので、磁気軸受の制御性の劣化を抑制することが困難である。
そこで、この発明は、負荷の変動幅の変化に伴う制御性の劣化を抑制することが可能な磁気軸受装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで対向するとともに各々が制御コイル(23d)およびバイアスコイル(23b)を有する少なくとも一対の制御電磁石(201,203)を有し、該少なくとも一対の制御電磁石(201,203)の合成電磁力(F)により該回転軸(33)を非接触に支持する磁気軸受本体(21)と、上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値が予め定められた目標変動指標値に近づくように、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御する制御部(11)とを備えていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第1の発明では、制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値が目標変動指標値に近づくように制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合(以下、「変動量割合」と表記)を制御することにより、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができる。これにより、負荷(LD)の変動幅が広くなった場合に制御電流(Id)が飽和して制御電流(Id)の波形が歪んでしまう可能性を低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の飽和による波形歪みの発生を抑制することができる。また、ゼロを跨いで変動する負荷(LD)の変動幅が狭くなった場合に制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加して合成電磁力(F)の誤差が顕著になってしまう可能性を低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化を抑制することができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記変動指標値が、上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の変動幅の広さを示す変動幅値(R1)に相当し、上記目標変動指標値が、上記変動幅値(R1)に対して予め定められた目標変動幅値(R0)に相当することを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第2の発明では、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の変動幅の広さを示す変動幅値(R1)が予め定められた目標変動幅値(R0)に近づくように変動量割合を制御することにより、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができる。
第3の発明は、上記第1の発明において、上記変動指標値が、上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に印加される制御コイル電圧(Vd)の正電圧期間の時比率と負電圧期間の時比率との差と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値に相当し、上記目標変動指標値が、上記時比率相関値(DY1)に対して予め定められた目標時比率相関値(DY0)に相当することを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第3の発明では、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に印加される制御コイル電圧(Vd)の正電圧期間の時比率と負電圧期間の時比率との差と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値が予め定められた目標時比率相関値(DY0)に近づくように変動量割合を制御することにより、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができる。
第4の発明は、上記第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記一対の制御電磁石(201,203)のバイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより、該一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第4の発明では、バイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより、変動量割合を制御することができる。
第5の発明は、上記第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)の電流値と予め定められた制限値(PL,NL)との差に依存する飽和余裕度が予め定められた基準飽和余裕度よりも低い場合に、上記目標変動指標値を減少させるように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第5の発明では、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合に目標変動指標値を減少させることにより、制御電流(Id)の電流値が飽和値(PS,NS)に到達してしまう可能性をさらに低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の飽和による制御電流(Id)の波形歪みの発生をさらに抑制することができる。
第6の発明は、上記第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)の電流値とゼロとの差に依存するゼロクロス余裕度が予め定められた基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に、上記目標変動指標値を増加させるように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第6の発明では、ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に目標変動指標値を増加させることにより、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加してしまう可能性をさらに低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化をさらに抑制することができる。
第7の発明は、上記第1〜第6の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記目標変動指標値を基準とする許容範囲内に上記変動指標値が収まっている場合には、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を変更しないように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
第8の発明は、上記第1〜第7の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記変動指標値と上記目標変動指標値との差分値が大きいほど、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合の変更量を多くするように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
第9の発明は、上記第1〜第8の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合が予め定められた制限割合よりも低くならないように、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第9の発明では、変動量割合の過小化を防止することができる。
第10の発明は、上記第1〜第9の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
第11の発明は、上記第1〜第9の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の所定周波数以上の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第10および第11の発明では、制御電流(Id)の電流値が安定している状態において変動量割合を制御することができる。
第12の発明は、上記第1〜第11の発明のいずれか1つにおいて、上記制御部(11)が、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数が予め定められた正常範囲から逸脱した場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を減少させるように構成されていることを特徴とする磁気軸受装置である。
上記第12の発明では、負荷(LD)の変動幅が突発的に過大化した場合に、変動量割合を低下させて制御電流(Id)の変動幅を迅速に狭くすることができる。
第13の発明は、上記第1〜第12の発明のいずれか1つである磁気軸受装置(10)と、上記磁気軸受装置(10)によって回転軸(33)が非接触に支持される電動機(30)と、上記電動機(30)によって駆動される圧縮機構とを備えていることを特徴とする圧縮機である。
上記第13の発明では、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができる。
第1〜第3の発明によれば、制御電流(Id)の飽和による波形歪みの発生を抑制することができるとともに、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力の誤差の顕著化を抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができる。
第4の発明によれば、バイアス電流(Ib)の電流値を制御して変動量割合を制御することにより、制御電流(Id)の変動幅を制御することができる。
第5の発明によれば、制御電流(Id)の飽和による制御電流(Id)の波形歪みの発生をさらに抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化をさらに抑制することができる。
第6の発明によれば、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化をさらに抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化をさらに抑制することができる。
第7の発明によれば、変動指標値が許容範囲内に収まっている場合に変動量割合を変更しないように制御することにより、変動量割合の制御における安定性を向上させることができる。
第8の発明によれば、変動指標値と目標変動指標値との差分値が大きいほど変動量割合の変更量を多くするように制御することにより、変動量割合の制御が安定するまでに要する時間を短縮することができる。
第9の発明によれば、変動量割合の過小化を防止することができるので、位置制御の安定性を維持することができる。
第10および第11の発明によれば、制御電流(Id)の電流値が安定している状態において変動量割合を制御することができるので、変動量割合の制御における安定性を向上させることができる。
第12の発明によれば、負荷(LD)の変動幅が突発的に過大化した場合に変動量割合を低下させて制御電流(Id)の変動幅を迅速に狭くすることができるので、制御電流(Id)の飽和状態の長期化による磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができる。
第13の発明によれば、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができるので、圧縮機(1)の駆動効率を向上させることができる。
磁気軸受装置を備えた圧縮機の構成例について説明するための概略図。 磁気軸受本体の構成例について説明するための横断面図。 磁気軸受本体の構成例について説明するための縦断面図。 制御電流と合成電磁力との関係について説明するためのグラフ。 制御部の構成例について説明するためのブロック図。 制御電源回路の構成例について説明するためのブロック図。 実施形態1による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのフローチャート。 実施形態1による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態1による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態1による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 飽和余裕度の具体例について説明するための波形図。 ゼロクロス余裕度の具体例について説明するための波形図。 実施形態2による磁気軸受装置の動作(目標変動幅値の制御)について説明するためのフローチャート。 実施形態2による磁気軸受装置の動作(目標変動幅値の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態2による磁気軸受装置の動作(目標変動幅値の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態2による磁気軸受装置の動作(目標変動幅値の制御)について説明するためのタイミングチャート。 飽和余裕度の変形例1について説明するための波形図。 飽和余裕度の変形例2について説明するための波形図。 飽和余裕度の変形例3について説明するための波形図。 ゼロクロス余裕度の変形例1について説明するための波形図。 ゼロクロス余裕度の変形例2について説明するための波形図。 ゼロクロス余裕度の変形例3について説明するための波形図。 制御電圧指令値とデューティ比指令値との関係について説明するためのグラフ。 デューティ比指令値と制御コイル電圧との関係について説明するための波形図。 実施形態3による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのフローチャート。 実施形態3による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態3による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 実施形態3による磁気軸受装置の動作(バイアス電流の制御)について説明するためのタイミングチャート。 制御コイル電圧の制御方式の変形例1における制御電圧指令値とデューティ比指令値との関係について説明するためのグラフ。 制御コイル電圧の制御方式の変形例1におけるデューティ比指令値と制御コイル電圧との関係について説明するための波形図。 制御電源回路の変形例について説明するためのブロック図。 制御コイル電圧の制御方式の変形例2における制御電圧指令値とデューティ比指令値との関係について説明するためのグラフ。 制御コイル電圧の制御方式の変形例2におけるデューティ比指令値と制御コイル電圧との関係について説明するための波形図。 実施形態4による磁気軸受装置の動作(目標時比率相関値の制御)について説明するためのフローチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例1について説明するためのフローチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例2について説明するためのフローチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例3について説明するためのフローチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例4について説明するためのフローチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例4について説明するためのタイミングチャート。 磁気軸受装置の動作の変形例4について説明するためのタイミングチャート。 磁気軸受本体の変形例1について説明するための横断面図。 磁気軸受本体の変形例1について説明するための縦断面図。 磁気軸受本体の変形例2について説明するための横断面図。 磁気軸受本体の変形例2について説明するための縦断面図。
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1による磁気軸受装置(10)を備える圧縮機(1)の構成例を示している。この例では、圧縮機(1)は、ターボ圧縮機である。圧縮機(1)は、磁気軸受装置(10)の他に、電動機(30)と、ケーシング(40)と、羽根車(50)と、2つのタッチダウン軸受(60,60)とを備えている。圧縮機(1)は、例えば、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示を省略)に接続され、冷媒を圧縮するものである。
ケーシング(40)は、両端が閉塞された円筒状に形成され、円筒軸線が水平向きとなるように配置されている。ケーシング(40)内の空間は、壁部(41)によって区画されている。壁部(41)よりも右側の空間が、羽根車(50)を収容するインペラ室(42)を形成し、壁部(41)よりも左側の空間が、電動機(30)を収容する電動機空間(43)を形成している。また、インペラ室(42)の外周側には、インペラ室(42)と連通する圧縮空間(42a)が形成されている。さらに、ケーシング(40)には、外部からの気体(例えば、冷凍回路からの冷媒)をインペラ室(42)へ導くための吸入管(44)と、インペラ室(42)内で圧縮された高圧の気体を外部(例えば、冷媒回路)へ戻すための吐出管(45)とが接続されている。羽根車(50)は、複数の羽根によって外形が略円錐形状となるように形成されている。羽根車(50)は、インペラ室(42)内に収容されている。
電動機(30)は、ケーシング(40)内に収容され、羽根車(50)を駆動する。この例では、電動機(30)は、いわゆる永久磁石同期モータである。電動機(30)は、ステータ(31)と、ロータ(32)と、回転軸(33)とを備えている。ステータ(31)は、ケーシング(40)の内周壁に固定されている。ロータ(32)は、所定の距離を隔ててステータ(31)に対向するようにステータ(31)に挿入されている。回転軸(33)は、その軸心がロータ(32)の軸心と同軸となるようにロータ(32)に固定されている。羽根車(50)は、回転軸(33)の一端に固定されている。タッチダウン軸受(60,60)は、例えば、玉軸受で構成され、磁気軸受装置(10)の非通電時に回転軸(33)を支持する。
〔磁気軸受装置〕
磁気軸受装置(10)は、1または複数(この例では、2つ)の磁気軸受本体(21,21)と、制御部(11)とを備えている。磁気軸受本体(21,21)は、互いに同一の構成を有している。磁気軸受本体(21)は、後に詳述するように、回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで対向する少なくとも一対の制御電磁石を有し、それらの制御電磁石の合成電磁力により回転軸(33)を非接触に支持するように構成されている。制御部(11)は、磁気軸受本体(21,21)の動作を制御するように構成されている。
なお、以下の説明において、軸方向とは、回転軸方向であって、回転軸(33)の軸心の方向をいい、径方向とは、回転軸(33)の軸方向と直交する方向をいう。また、外周側とは、回転軸(33)の軸心からより遠い側をいい、内周側とは、回転軸(33)の軸心により近い側をいう。
〈磁気軸受本体〉
次に、図2および図3を参照して、磁気軸受本体(21)について説明する。図2は、図1に示した磁気軸受本体(21)の横断面(回転軸に垂直な方向の断面)を示し、図3は、図1に示した磁気軸受本体(21)の縦断面(回転軸方向の断面)を示している。この例では、磁気軸受本体(21)は、ヘテロポーラ型のラジアル軸受を構成している。磁気軸受本体(21)は、コア部(22)と、複数(この例では、8つ)の制御コイル(23d-1,…,23d-8)と、複数(この例では、8つ)のバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)とを備えている。
なお、以下の説明では、制御コイル(23d-1,…,23d-8)の総称を「制御コイル(23d)」と表記し、バイアスコイル(23b-1,…,23b-8)の総称を「バイアスコイル(23b)」と表記する。
《コア部》
コア部(22)は、電磁鋼板を積層して構成されている。また、コア部(22)は、バックヨーク部(22a)と、複数(この例では、8つ)のティース部(22b,…,22b)とを備えている。バックヨーク部(22a)は、略筒状に形成されている。ティース部(22b,…,22b)は、バックヨーク部(22a)と一体形成され、バックヨーク部(22a)の内周面から径方向内方へ向けて突出している。また、ティース部(22b,…,22b)は、バックヨーク部(22a)の内周に沿って45°ピッチで配置されている。ティース部(22b)の内周側の面は、所定のギャップを隔てて回転軸(33)に対向している。
《制御コイルおよびバイアスコイル》
8つの制御コイル(23d-1,…,23d-8)および8つのバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)は、8つのティース部(22b,…,22b)にそれぞれ巻回されている。これにより、8つの電磁石(24-1,…,24-8)が形成されている。また、制御コイル(23d-1,…,23d-8)およびバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)の巻回方向,制御コイル(23d-1,…,23d-8)に流れる制御電流(Id)の向き,およびバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)に流れるバイアス電流(Ib)の向きは、図2に示した矢印の方向に磁束が発生するように設定されている。
例えば、制御コイル(23d-1)は、制御コイル(23d-2)に繋がっている。また、バイアスコイル(23b-1)は、バイアスコイル(23b-2)に繋がっている。したがって、制御コイル(23d-1,23d-2)に制御電流(Id)を流すとともにバイアスコイル(23b-1,23b-2)にバイアス電流(Ib)を流すことにより、径方向の吸引力(電磁力(FL))を発生させることができる。すなわち、この例では、2つの電磁石(24-1,24-2)によって、径方向に吸引力(電磁力(FL))を発生させる制御電磁石(201)が構成されている。これと同様に、制御コイル(23d-5)は、制御コイル(23b-6)に繋がり、バイアスコイル(23b-5)は、バイアスコイル(23b-6)に繋がっている。これにより、2つの電磁石(24-5,24-6)によって、径方向に吸引力(電磁力(FU))を発生させる制御電磁石(203)が構成されている。
また、制御コイル(23d-3,23d-7)は、制御コイル(23b-4,23b-8)にそれぞれ繋がり、バイアスコイル(23b-3,23b-7)は、バイアスコイル(23b-4,23b-8)にそれぞれ繋がっている。これにより、制御電磁石(202,204)がそれぞれ構成されている。
《制御電磁石》
制御電磁石(201)は、回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで制御電磁石(203)に対向している。また、制御電磁石(201)の制御コイル(23d-1,23d-2)および制御電磁石(203)の制御コイル(23d-5,23d-6)は、電気的に直列に接続され、制御電磁石(201)のバイアスコイル(23b-1,23b-2)および制御電磁石(203)のバイアスコイル(23b-5,23b-6)は、電気的に直列に接続されている。すなわち、制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)には共通の制御電流(Id)が流れ、バイアスコイル(23b-1,23b-2,23b-5,23b-6)には共通のバイアス電流(Ib)が流れることになる。したがって、制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に流れる制御電流(Id)およびバイアスコイル(23b-1,23b-2,23b-5,23b-6)に流れるバイアス電流(Ib)を制御することにより、制御電磁石(201,203)の合成電磁力(F)を制御でき、その結果、制御電磁石(201,203)が互いに対向する方向において回転軸(33)の径方向位置を制御することが可能となる。一対の制御電磁石(202,204)についても同様である。このようにして、回転軸(33)を非接触に支持することができる。
〈制御電流およびバイアス電流〉
制御電流(Id)は、一対の制御電磁石(201,203)(または、一対の制御電磁石(202,204))の合成電磁力(F)の方向や大きさを定めるための電流である。一方、バイアス電流(Ib)は、制御電流(Id)の電流値と合成電磁力(F)との関係を線形的にするための電流である。合成電磁力(F)は、バイアス電流(Ib)および制御電流(Id)を用いて、次の数1のように表現することができる。なお、数1において、「K」は、磁気軸受本体(21)の寸法構造などによって決まる比例定数である。
Figure 2014228091
数1より、制御電流(Id)の電流値(または、バイアス電流(Ib)の電流値)が高くなるほど、合成電磁力(F)が大きくなることが分かる。
〈制御電流の変動〉
制御電流(Id)は、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)と合成電磁力(F)とが互いに釣り合うように制御される。例えば、負荷(LD)が大きくなると、制御電流(Id)の電流値が増加して合成電磁力(F)が大きくなる。このようにして、負荷(LD)と合成電磁力(F)との釣り合いが維持される。また、負荷(LD)の変動幅が広くなると、合成電磁力(F)の変動幅を広くするために、制御電流(Id)の変動幅も広くなる。このように、制御電流(Id)の変動幅は、負荷(LD)の変動幅の変化に伴って変化することになる。
また、図4のように、制御電流(Id)の変動幅が広くなるほど、合成電磁力(F)の変動幅が広くなる。制御電流(Id)と合成電磁力(F)との関係は、バイアス電流(Ib)の電流値が比較的高い場合には、図4に示した直線(L1)のような関係となり、バイアス電流(Ib)の電流値が比較的低い場合には、図4に示した直線(L2)のような関係となる。このように、バイアス電流(Ib)の電流値が高くなるほど、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合が高くなる。すなわち、バイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合を制御することができる。また、負荷(LD)の変動幅が一定である場合(すなわち、合成電磁力(F)の変動幅が一定である場合)、バイアス電流(Ib)の電流値が高くなるほど、制御電流(Id)の変動幅が狭くなることになる。
〈制御部〉
次に、制御部(11)について説明する。制御部(11)は、制御電磁石の組合せ(図2では、制御電磁石(201,203)の組合せと、制御電磁石(202,204)の組合せ)の各々に対して、以下の処理を実行する。以下では、制御電磁石(201,203)の組合せに関連する処理を例に挙げて説明する。すなわち、制御電磁石(201)および制御電磁石(203)の合成電磁力(F)によって回転軸(33)の位置(径方向における位置)を制御する場合を例に挙げて説明する。
制御部(11)は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に流れる制御電流(Id)の電流値を制御することにより、回転軸(33)の位置制御を行う。また、制御部(11)は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に流れる制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値が予め定められた目標変動指標値に近づくように、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合を制御する。この例では、制御部(11)は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に流れる制御電流(Id)と相関のある制御相関変数(この例では、制御電流(Id)の電流値)の変動幅の広さを示す変動幅値(R1)が予め定められた目標変動幅値(R0)に近づくように、一対の制御電磁石(201,203)のバイアスコイル(23b-1,23b-2,23b-5,23b-6)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を制御する。すなわち、この例では、制御電流(Id)と相関のある制御相関変数(より具体的には、制御電流(Id)の電流値)の変動幅の広さを示す変動幅値(R1)が「変動指標値」に相当し、変動幅値(R1)に対して予め定められた目標変動幅値(R0)が「目標変動指標値」に相当する。
〈制御部の詳細〉
次に、図5を参照して、制御部(11)について詳細に説明する。制御部(11)は、制御電磁石の組合せ(図2では、制御電磁石(201,203)の組合せと、制御電磁石(202,204)の組合せ)の各々に対して、ギャップセンサ(101)と、制御電流検出器(102d)と、バイアス電流検出器(102b)と、演算回路(103)と、制御電源回路(104d)と、バイアス電源回路(104b)とを備えている。
《ギャップセンサおよび電流検出器》
ギャップセンサ(101)は、回転軸(33)の径方向位置(回転軸位置(P1))を検出するように構成されている。例えば、ギャップセンサ(101)は、ケーシング(40)に取り付けられている。制御電流検出器(102d)は、制御電流(Id)の電流値を検出するように構成されている。バイアス電流検出器(102b)は、バイアス電流(Ib)の電流値を検出するように構成されている。
《演算回路》
演算回路(103)は、位置偏差演算部(111)と、制御電流指令演算部(112)と、制御電圧指令演算部(113)と、バイアス電流指令演算部(114)と、バイアス電圧指令演算部(115)とを備えている。
−位置偏差演算部−
位置偏差演算部(111)は、ギャップセンサ(101)によって検出された回転軸位置(P1)と外部からの位置指令に示された目標位置(P0)(回転軸(33)の径方向における目標位置)との差分値を位置偏差値(P2)として出力する。例えば、位置偏差演算部(111)は、目標位置(P0)から回転軸位置(P1)を減算することにより位置偏差値(P2)を算出する。
−制御電流指令演算部−
制御電流指令演算部(112)は、位置偏差演算部(111)からの位置偏差値(P2)に応じて制御電流(Id)の指令値を周期的に更新する。例えば、制御電流指令演算部(112)は、位置偏差値(P2)の正負に応じて制御電流(Id)の指令値の正負を設定し、位置偏差値(P2)の絶対値が大きくなるほど制御電流(Id)の指令値の絶対値を大きくする。
−制御電圧指令演算部−
制御電圧指令演算部(113)は、制御電流指令演算部(112)によって設定された制御電流(Id)の指令値に基づいて、制御コイル(23d)に対応する制御電圧指令値(Sd)を出力する。制御電圧指令値(Sd)は、制御コイル(23d)に印加すべき制御コイル電圧(Vd)の電圧値を示している。さらに、制御電圧指令演算部(113)は、制御電流検出器(102d)によって検出される制御電流(Id)の電流値が制御電流(Id)の指令値に近づくように、制御電圧指令値(Sd)をフィードバック制御する。
−バイアス電流指令演算部−
バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)に基づいて、制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、所定期間内において制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)の電流値の中から最大値および最小値を検出し、それらの最大値と最小値との差分値(最大値から最小値を減算して得られる値の絶対値)を、その所定期間内における制御電流(Id)の変動幅値(R1)として検出しても良い。そして、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が予め定められた目標変動幅値(R0)に近づくように、バイアス電流(Ib)の指令値を周期的に更新する。なお、バイアス電流(Ib)の更新周期は、制御電流(Id)の更新周期よりも長くても良いし短くても良い。
−バイアス電圧指令演算部−
バイアス電圧指令演算部(115)は、バイアス電流指令演算部(114)によって設定されたバイアス電流(Ib)の指令値に基づいて、バイアスコイル(23b)に対応するバイアス電圧指令値(Sb)を出力する。バイアス電圧指令値(Sb)は、バイアスコイル(23b)に印加すべきバイアスコイル電圧(Vb)の電圧値を示している。さらに、バイアス電圧指令演算部(115)は、バイアス電流検出器(102b)によって検出されるバイアス電流(Ib)の電流値がバイアス電流(Ib)の指令値に近づくように、バイアス電圧指令値(Sb)をフィードバック制御する。
《制御電源回路》
制御電源回路(104d)は、制御コイル(23d)に制御コイル電圧(Vd)を印加する。また、制御電源回路(104d)は、演算回路(103)からの制御電圧指令値(Sd)に応じて、制御コイル電圧(Vd)の電圧値を変化させる。これにより、制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の電流値を、演算回路(103)によって決定された制御電流(Id)の電流値(指令値)に設定することができる。
図6のように、制御電源回路(104d)は、スイッチング回路(120)と、デューティ比演算部(121)と、PWMアンプ(122)とを備えていても良い。すなわち、制御部(11)は、PWMスイッチング方式により制御電流(Id)およびバイアス電流(Ib)を制御するように構成されていても良い。
−スイッチング回路−
スイッチング回路(120)は、直流電源(130)と、インバータ(131,132)と、スイッチング素子(SW1,…,SW4)と、整流素子(D1,…,D4)とを備えている。スイッチング素子(SW1)のオン/オフは、L側ゲート信号(SGL)によって制御され、スイッチング素子(SW2)のオン/オフは、L側ゲート信号(SGL)の反転信号(すなわち、インバータ(131)によって反転されたL側ゲート信号(SGL))によって制御される。スイッチング素子(SW3)のオン/オフは、R側ゲート信号(SGR)によって制御され、スイッチング素子(SW4)のオン/オフは、R側ゲート信号(SGR)の反転信号(すなわち、インバータ(132)によって反転されたR側ゲート信号(SGR))によって制御される。
−デューティ比演算部−
デューティ比演算部(121)は、演算回路(103)からの制御電圧指令値(Sd)に基づいて、L側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)を出力する。L側デューティ比指令値(DYL)は、L側ゲート信号(SGL)のデューティ比を示し、R側デューティ比指令値(DYR)は、R側ゲート信号(SGR)のデューティ比を示している。
−PWMアンプ−
PWMアンプ(122)は、L側ゲート信号(SGL)およびR側ゲート信号(SGR)を出力する。また、PWMアンプ(122)は、デューティ比演算部(121)からのL側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)に基づいて、L側ゲート信号(SGL)のデューティ比およびL側ゲート信号(SGR)のデューティ比をそれぞれ制御する。
《バイアス電源回路》
バイアス電源回路(104b)は、バイアスコイル(23b)にバイアスコイル電圧(Vb)を印加する。また、バイアス電源回路(104b)は、演算回路(103)からのバイアス電圧指令値(Sb)に応じて、バイアスコイル電圧(Vb)の電圧値を変化させる。これにより、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を、演算回路(103)によって決定されたバイアス電流(Ib)の電流値(指令値)に設定することができる。なお、バイアス電源回路(104b)は、図6に示した制御電源回路(104d)と同様の構成を有していても良い。
〔位置制御系のループゲイン〕
なお、バイアス電流(Ib)の電流値が変化することにより位置制御系のループゲイン(例えば、位置偏差演算部(111)の出力(位置偏差値(P2))からギャップセンサ(101)の出力(回転軸位置(P1))までの信号増幅割合)が変化してしまう。そのため、バイアス電流(Ib)の電流値が変化しても位置制御系のループゲインが一定に維持されるように、バイアス電流(Ib)の電流値の変化に応じて位置制御系のループゲインを決定するパラメータを制御することが好ましい。
例えば、制御電流指令演算部(112)は、バイアス電流(Ib)の電流値が予め定められた初期値(例えば、初期状態のバイアス電流(Ib)の電流値)よりも大きくなるほど、位置偏差値(P2)の絶対値に対する制御電流(Id)の指令値の絶対値の割合が小さくなるように、制御電流(Id)の指令値を設定することが好ましい。逆に、制御電流指令演算部(112)は、バイアス電流(Ib)の電流値が初期値よりも小さくなるほど、位置偏差値(P2)の絶対値に対する制御電流(Id)の指令値の絶対値の割合が大きくなるように、制御電流(Id)の指令値を設定することが好ましい。このようにして制御電流(Id)の指令値を設定することにより、位置制御系のループゲインを予め定められたゲインに維持することができ、位置制御の安定性を維持することができる。
なお、この例では、位置制御系のループゲインは、位置偏差演算部(111),制御電流指令演算部(112),制御電圧指令演算部(113),制御電源回路(104d),制御コイル(23d),制御電磁石(201,203),ロータ運動系,ギャップセンサ(101)を経由する閉ループにおけるゲインに相当する。
〔磁気軸受装置の制御性〕
ここで、磁気軸受装置(10)の制御性(具体的には、制御電流(Id)の指令値と合成電磁力(F)との間の線形性)について説明する。負荷(LD)の変動幅が広くなって制御電流(Id)の変動幅が広くなると、制御電流(Id)の電流値が飽和値(正側飽和値(PS)または負側飽和値(NS))に到達して制御電流(Id)の波形が歪んでしまう可能性がある。なお、正側飽和値(PS)は、正の制御電流(Id)が飽和するときの電流値(制御電流(Id)の正側の変動限界値)であり、負側飽和値(NS)は、負の制御電流(Id)が飽和するときの電流値(制御電流(ID)の負側の変動限界値)である。このように制御電流(Id)の波形が歪むと、合成電磁力(F)に誤差が生じてしまうので、磁気軸受装置(10)の制御性が劣化してしまう。この合成電磁力(F)の誤差は、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量の割合が大きくなるほど顕著になる傾向にある。
また、負荷(LD)がゼロを跨いで変動する場合、制御電流(Id)もゼロを跨いで変動することになる。この場合(特に、PWMスイッチング方式により制御電流(Id)を制御する場合)、制御電流(Id)のゼロクロスの際にデッドタイムが発生して制御電流(Id)の波形が歪んでしまう。ここで、負荷(LD)の変動幅が狭くなって制御電流(Id)の変動幅が狭くなると、制御電流(Id)の変動幅に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が大きくなってしまうので、磁気軸受装置(10)の制御性の劣化が顕著になってしまう。
〔実施形態1による磁気軸受装置の動作〕
次に、図7を参照して、実施形態1による磁気軸受装置(10)の動作(バイアス電流(Ib)の制御)について説明する。
〈ステップ(ST101)〉
まず、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の更新タイミングが到来したか否かを判定する。更新タイミングが到来すると、ステップ(ST102)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST101)を繰り返す。
〈ステップ(ST102)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているか否かを判定する。許容範囲(RR)は、目標変動幅値(R0)を基準とする範囲(例えば、目標変動幅値(R0)を中央値とする範囲)である。制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっている場合には、ステップ(ST106)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST103)へ進む。
〈ステップ(ST103)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)よりも大きいか否かを判定する。制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)よりも大きい場合には、ステップ(ST104)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST105)へ進む。
〈ステップ(ST104)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の変動幅値(R1)と目標変動幅値(R0)との差分値(変動幅値(R1)から目標変動幅値(R0)を減算して得られる値の絶対値)が大きくなるほどバイアス電流(Ib)の増加量が多くなるように、バイアス電流(Ib)の指令値を変更しても良い。バイアス電流(Ib)の指令値の変更により、バイアス電圧指令値(Sb)が変更され、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が増加する。これにより、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。次に、ステップ(ST107)へ進む。
〈ステップ(ST105)〉
一方、ステップ(ST103)において制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)よりも小さいと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を減少させる。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の変動幅値(R1)と目標変動幅値(R0)との差分値(変動幅値(R1)から目標変動幅値(R0)を減算して得られる値の絶対値)が大きくなるほどバイアス電流(Ib)の減少量が多くなるように、バイアス電流(Ib)の指令値を変更しても良い。バイアス電流(Ib)の指令値の変更により、バイアス電圧指令値(Sb)が変更され、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が減少する。これにより、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。次に、ステップ(ST107)へ進む。
〈ステップ(ST106)〉
また、ステップ(ST102)において制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっていると判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。この場合、バイアス電圧指令値(Sb)は変更されないので、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値は、変更されずにそのまま維持される。次に、ステップ(ST107)へ進む。
〈ステップ(ST107)〉
次に、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合の制御)を継続する場合には、ステップ(ST101)へ進み、そうでない場合には、バイアス電流(Ib)の制御を終了する。
〔実施形態1による磁気軸受装置の動作の具体例〕
次に、図8,図9,図10を参照して、実施形態1におけるバイアス電流(Ib)の制御について具体的に説明する。この例では、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、時刻(t0,t1,t2,t3)の各々において、バイアス電流(Ib)の更新処理(すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合を更新するための処理)を実行するものとする。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)が到来すると、時刻(t0)から時刻(t1)までの期間において制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)の電流値に基づいて、時刻(t0)から時刻(t1)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出し、その制御電流(Id)の変動幅値(R1)に基づいて、時刻(t1)におけるバイアス電流(Ib)の指令値を制御する。
〈正の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図8のように、正の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t101)において広くなると、制御電流(Id)の変動幅も広くなる。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側飽和値(PS)に近づくことになる。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を上回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側飽和値(PS)から遠ざかることになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈負の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図9のように、負の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t102)において広くなると、制御電流(Id)の変動幅も広くなる。その結果、制御電流(Id)の最小値が負側飽和値(NS)に近づくことになる。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を上回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最小値が負側飽和値(NS)から遠ざかることになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈ゼロを跨いで変動する負荷の変動幅が狭くなる場合〉
図10のように、ゼロを跨いで変動する負荷(LD)の変動幅が時刻(t103)において狭くなると、制御電流(Id)の変動幅も狭くなる。その結果、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が大きくなる。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を下回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を減少させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が減少するので、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。その結果、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が小さくなる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〔実施形態1による効果〕
以上のように、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)に近づくようにバイアス電流(Ib)の電流値(すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)を制御することにより、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができる。これにより、負荷(LD)の変動幅が広くなった場合に制御電流(Id)が飽和して制御電流(Id)の波形が歪んでしまう可能性を低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の飽和による波形歪みの発生を抑制することができる。
また、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができるので、ゼロを跨いで変動する負荷(LD)の変動幅が狭くなった場合に制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加して合成電磁力(F)の誤差が顕著になってしまう可能性を低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化を抑制することができる。
このように、制御電流(Id)の飽和による波形歪みの発生を抑制することができるとともに、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力の誤差の顕著化を抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性(具体的には、制御電流(Id)の指令値と合成電磁力(F)との間の線形性)の劣化を抑制することができる。
また、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっている場合にバイアス電流(Ib)の電流値を変更しないように制御することにより、バイアス電流(Ib)の制御の安定性を向上させることができる。すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合(以下、「変動量割合」と表記)の制御における安定性を向上させることができる。
さらに、制御電流(Id)の変動幅値(R1)と目標変動幅値(R0)との差分値(変動幅値(R1)から目標変動幅値(R0)を減算して得られる値の絶対値)が大きいほどバイアス電流(Ib)の変更量を多くするように制御することにより、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、変動量割合の制御)が安定するまでに要する時間を短縮することができる。
また、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができるので、圧縮機(1)の駆動効率を向上させることができる。
(実施形態2)
実施形態2による磁気軸受装置(10)の構成は、実施形態1による磁気軸受装置(10)の構成(図1,図2,図3,図5,図6に示した構成)と同様であるが、制御部(11)による処理が異なっている。実施形態2における制御部(11)は、実施形態1における制御部(11)による処理(制御電流(Ib)およびバイアス電流(Ib)の制御)に加えて、次の処理を実行するように構成されている。
〈制御部〉
制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、飽和余裕度が予め定められた基準飽和余裕度よりも低い場合に、目標変動幅値(R0)を減少させるように構成されている。飽和余裕度は、制御電流(Id)の電流値と予め定められた制限値(正側制限値(PL),負側制限値(NL))との差に依存する評価値である。例えば、制御電流(Id)の電流値と制限値との差(絶対値)が小さくなるほど、飽和余裕度が低くなる。
なお、正側制限値(PL)は、正側飽和値(PS)よりも低いか同等の電流値に設定され、負側制限値(NL)は、負側飽和値(NL)よりも高いか同等の電流値に設定される。この例では、正側制限値(PL)は、正側飽和値(PS)と同一の電流値に設定され、負側制限値(NL)は、負側飽和値(NS)と同一の電流値に設定されているものとする。
また、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、ゼロクロス余裕度が予め定められた基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に、目標変動幅値(R0)を増加させるように構成されている。ゼロクロス余裕度は、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差(絶対値)に依存する評価値である。例えば、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差が小さくなるほど、ゼロクロス余裕度が低くなる。
《飽和余裕度の具体例》
例えば、図11aおよび図11bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内において制御電流(Id)と相関のある制御相関変数(この例では、制御電流(Id)の電流値)が予め定められた余裕範囲(R100)内に収まっている余裕期間(P100)の時間割合(所定期間(PPP)に対する余裕期間(P100)の時間割合)を、所定期間(PPP)内における飽和余裕度として検出しても良い。この場合、制御電流(Id)の電流値と制限値(正側制限値(PL),負側制限値(NL))との差(絶対値)が小さくなるほど、所定期間(PPP)に対する余裕期間(P100)の時間割合(すなわち、飽和余裕度)が低くなる。なお、所定期間(PPP)は、例えば、バイアス電流(Ib)の更新周期に相当する期間である。また、余裕範囲(R100)は、正側制限値(PL)と負側制限値(NL)との間の範囲内に設定される。
《ゼロクロス余裕度の具体例》
また、図12aおよび図12bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内において制御電流(Id)と相関のある制御相関変数(この例では、制御電流(Id)の電流値)が予め定められた切迫範囲(R200)から逸脱している余裕期間(P200)の時間割合(所定期間(PPP)に対する余裕期間(P200)の時間割合)を、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度として検出しても良い。この場合、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差(絶対値)が小さくなるほど、所定期間(PPP)に対する余裕期間(P200)の時間割合(すなわち、ゼロクロス余裕度)が低くなる。
〔動作〕
次に、実施形態2による磁気軸受装置(10)の動作(目標変動幅値(R0)の制御)について説明する。この磁気軸受装置(10)では、図7に示したステップ(ST101,…,ST107)に加えて、図13に示したステップ(ST201,…,ST205)が実行される。
〈ステップ(ST201)〉
更新タイミングが到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低いか否かを判定する。飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合には、ステップ(ST205)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST202)へ進む。
〈ステップ(ST202)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低いか否かを判定する。ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合には、ステップ(ST203)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST204)へ進む。
〈ステップ(ST203)〉
ステップ(ST201)において飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高いと判定され、且つ、ステップ(ST202)においてゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも高いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を変更せずにそのまま維持する。次に、ステップ(ST102)へ進む。
〈ステップ(ST204)〉
一方、ステップ(ST202)においてゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を増加させる。このとき、制御部(11)は、ゼロクロス余裕度と基準ゼロクロス余裕度との差分値(ゼロクロス余裕度から基準ゼロクロス余裕度を減算して得られた値の絶対値)が大きくなるほど目標変動幅値(R0)の増加量が多くなるように、目標変動幅値(R0)を変更しても良い。さらに、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を基準とする許容範囲(RR)を正の方向に移動させる(例えば、許容範囲(RR)の幅を変更せずに許容範囲(RR)の中央値が目標変動幅値(R0)に一致するように許容範囲(RR)を移動させる)。次に、ステップ(ST102)へ進む。
〈ステップ(ST205)〉
また、ステップ(ST201)において飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を減少させる。このとき、制御部(11)は、飽和余裕度と基準飽和余裕度との差分値(飽和余裕度から基準飽和余裕度を減算して得られる値の絶対値)が大きいほど目標変動幅値(R0)の減少量が多くなるように、目標変動幅値(R0)を変更しても良い。さらに、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を基準とする許容範囲(RR)を負の方向に移動させる(例えば、許容範囲(RR)の幅を変更せずに許容範囲(RR)の中央値が目標変動幅値(R0)に一致するように許容範囲(RR)を移動させる)。次に、ステップ(ST102)へ進む。
〔実施形態2による磁気軸受装置の動作の具体例〕
次に、図14,図15,図16を参照して、目標変動幅値(R0)の制御について具体的に説明する。この例では、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、時刻(t0,t1,t2,t3)の各々において、目標変動幅値(R0)の更新処理を実行した後にバイアス電流(Ib)の更新処理を実行するものとする。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)が到来すると、時刻(t0)から時刻(t1)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出し、それらの飽和余裕度およびゼロクロス余裕度に基づいて、時刻(t1)における目標変動幅値(R0)を制御する。
〈正の範囲内で変動している負荷の変動幅が正の方向に移動した場合〉
図14のように、正の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t201)において正の方向に移動すると、制御電流(Id)の変動幅も正の方向に移動する。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側制限値(PL)(すなわち、正側飽和値(PS))に近づくことになる。この例では、制御電流(Id)の電流値と正側制限値(PL)との差が小さくなり、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低くなる。なお、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差は十分に大きく、ゼロクロス余裕度は、基準ゼロクロス余裕度よりも高くなっている。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を減少させるとともに、許容範囲(RR)を負の方向に移動させる。これにより、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を上回ることになるので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。その結果、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。したがって、制御電流(Id)の最大値が正側制限値(PL)(すなわち、正側飽和値(PS))から遠ざかることになる。また、制御電流(Id)の最大値と正側制限値(PL)との差が大きくなることにより、飽和余裕度が高くなる(この例では、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高くなる)。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t2)から時刻(t3)までに期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を変更せずにそのまま維持する。また、時刻(t2)から時刻(t3)までの制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈負の範囲内で変動している負荷の変動幅が負の方向に移動した場合〉
図15のように、負の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t202)において負の方向に移動すると、制御電流(Id)の変動幅も負の方向に移動する。その結果、制御電流(Id)の最小値が負側制限値(NL)(すなわち、負側飽和値(NS))に近づくことになる。この例では、制御電流(Id)の電流値と負側制限値(NL)との差が小さくなり、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低くなる。なお、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差は十分に大きく、ゼロクロス余裕度は、基準ゼロクロス余裕度よりも高くなっている。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を減少させるとともに、許容範囲(RR)を負の方向に移動させる。これにより、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を上回ることになるので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。その結果、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。したがって、制御電流(Id)の最小値が負側制限値(NL)(すなわち、負側飽和値(NS))から遠ざかることになる。また、制御電流(Id)の最小値と負側制限値(NL)との差が大きくなることにより、飽和余裕度が高くなる(この例では、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高くなる)。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t2)から時刻(t3)までに期間における飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を変更せずにそのまま維持する。また、時刻(t2)から時刻(t3)までの制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈負荷の変動幅が移動して負荷がゼロを跨いで変動するようになった場合〉
図16のように、正の範囲内で変動する負荷(LD)の変動幅が時刻(t203)において負の方向に移動して負荷(LD)がゼロを跨いで変動するようになると、制御電流(Id)の変動幅も負の方向に移動して制御電流(Id)がゼロを跨いで変動するようになる。その結果、制御電流(Id)のゼロクロスの際に制御電流(Id)の波形歪み(ゼロクロスによる波形歪み)が発生することになる。この例では、制御電流(Id)の電流値とゼロとの差が小さくなり、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間におけるゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低くなる。なお、制御電流(Id)の電流値と制限値(正側制限値(PL),負側制限値(NL))との差は十分に大きく、飽和余裕度は、基準飽和余裕度よりも高くなっている。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間におけるゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を増加させるとともに、許容範囲(RR)を正の方向に移動させる。これにより、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)を下回ることになるので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を減少させる。その結果、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が減少するので、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。したがって、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量の割合が減少することになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における飽和余裕度およびゼロクロス余裕度を検出する。この例では、時刻(t2)から時刻(t3)までに期間におけるゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低くなっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、目標変動幅値(R0)を増加させるとともに、許容範囲(RR)を正の方向に移動させる。この例では、時刻(t2)から時刻(t3)までの制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〔実施形態2による効果〕
以上のように、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合に目標変動幅値(R0)を減少させることにより、制御電流(Id)の電流値が飽和値(正側飽和値(PS),負側飽和値(NS))に到達してしまう可能性をさらに低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の飽和による制御電流(Id)の波形歪みの発生をさらに抑制することができる。
また、ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に目標変動幅値(R0)を増加させることにより、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加してしまう可能性をさらに低減することができる。すなわち、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化をさらに抑制することができる。
このように、制御電流(Id)の飽和による制御電流(Id)の波形歪みの発生をさらに抑制することができるとともに、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化をさらに抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化をさらに抑制することができる。
なお、制御部(11)は、ゼロクロス余裕度に基づく制御処理(ST202,ST204)を実行した後に、飽和余裕度に基づく制御処理(ST201,ST205)を実行するように構成されていても良い。または、制御部(11)は、飽和余裕度に基づく制御処理(ST201,ST205)およびゼロクロス余裕度に基づく制御処理(ST202,ST204)のいずれか一方のみを実行するように構成されていても良い。例えば、飽和余裕度に基づく制御処理(ST201,ST205)のみを実行する場合、制御部(11)は、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合には、目標変動幅値(R0)を減少させ、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高い場合には、目標変動幅値(R0)を変更しない。
〔飽和余裕度の変形例1〕
図17aおよび図17bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D101)および差分値(D102)のうち小さい方の差分値を、所定期間(PPP)内における飽和余裕度として検出しても良い。差分値(D101)は、所定期間(PPP)内における制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値(この例では、制御電流(Id)の平均電流値(Iave))と正側制限値(PL)との差分値(平均電流値(Iave)から正側制限値(PL)を減算して得られる値の絶対値)に相当し、差分値(D102)は、所定期間(PPP)内における制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値(この例では、制御電流(Id)の平均電流値(Iave))と負側制限値(NL)との差分値(平均電流値(Iave)から負側制限値(NL)を減算して得られる値の絶対値)に相当する。
図17aのように制御電流(Id)が正の範囲内で変動している場合には、差分値(D101)が飽和余裕度して検出され、図17bのように制御電流(Id)が負の範囲内で変動している場合には、差分値(D102)が飽和余裕度として検出されることになる。
〔飽和余裕度の変形例2〕
図18aおよび図18bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D201)および差分値(D202)のうち小さい方の差分値を、所定期間(PPP)内における飽和余裕度として検出しても良い。差分値(D201)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の最大値(この例では、制御電流(Id)の最大電流値(Imax))と正側制限値(PL)との差分値(最大電流値(Imax)から正側制限値(PL)を減算して得られる値の絶対値)に相当し、差分値(D202)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の最小値(この例では、制御電流(Id)の最小電流値(Imin))と負側制限値(NL)との差分値(最小電流値(Imin)から負側制限値(NL)を減算して得られる値の絶対値)に相当する。
図18aのように制御電流(Id)が正の範囲内で変動している場合には、差分値(D201)が飽和余裕度して検出され、図18bのように制御電流(Id)が負の範囲内で変動している場合には、差分値(D202)が飽和余裕度として検出されることになる。
〔飽和余裕度の変形例3〕
図19aおよび図19bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D301)および差分値(D302)のうち小さい方の差分値を、所定期間(PPP)内における飽和余裕度として検出しても良い。差分値(D301)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の局所最大値の平均値(この例では、制御電流(Id)の局所最大電流値(図中の丸印)の平均値(I101))と正側制限値(PL)との差分値(平均値(I101)から正側制限値(PL)を減算して得られる値の絶対値)に相当する。差分値(D302)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の局所最小値の平均値(この例では、制御電流(Id)の局所最小電流値(図中の四角印)の平均値(I102))と負側制限値(NL)との差分値(平均値(I102)から負側制限値(NL)を減算して得られる値の絶対値)に相当する。
図19aのように制御電流(Id)が正の範囲内で変動している場合には、差分値(D301)が飽和余裕度して検出され、図19bのように制御電流(Id)が負の範囲内で変動している場合には、差分値(D302)が飽和余裕度として検出されることになる。
〔ゼロクロス余裕度の変形例1〕
図20aおよび図20bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D400)を、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度として検出しても良い。差分値(D400)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の平均値(この例では、制御電流(Id)の平均電流値(Iave))とゼロとの差分値(絶対値)に相当する。
〔ゼロクロス余裕度の変形例2〕
図21aおよび図21bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D501)および差分値(D502)のうち小さい方の差分値を、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度として検出しても良い。差分値(D501)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の最大値(この例では、制御電流(Id)の最大電流値(Imax))とゼロとの差分値(絶対値)に相当し、差分値(D202)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の最小値(この例では、制御電流(Id)の最小電流値(Imin))とゼロとの差分値(絶対値)に相当する。
図21aのように制御電流(Id)が正の範囲内で変動している場合には、差分値(D502)がゼロクロス余裕度して検出され、図21bのように制御電流(Id)が負の範囲内で変動している場合には、差分値(D501)がゼロクロス余裕度として検出されることになる。
なお、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における制御電流(Id)の最大電流値(Imax)と最小電流値(Imin)との間で符号(正負)が異なる場合に、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度が「ゼロ」であるものとして処理しても良い。
〔ゼロクロス余裕度の変形例3〕
図22aおよび図22bのように、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における差分値(D601)および差分値(D602)のうち小さい方の差分値を、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度として検出しても良い。差分値(D601)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の局所最大値の平均値(この例では、制御電流(Id)の局所最大電流値(図中の丸印)の平均値(I101))とゼロとの差分値(絶対値)に相当する。差分値(D602)は、所定期間(PPP)内における制御相関変数の局所最小値の平均値(この例では、制御電流(Id)の局所最小電流値(図中の四角印)の平均値(I102))とゼロとの差分値(絶対値)に相当する。
図22aのように制御電流(Id)が正の範囲内で変動している場合には、差分値(D602)がゼロクロス余裕度して検出され、図22bのように制御電流(Id)が負の範囲内で変動している場合には、差分値(D601)がゼロクロス余裕度として検出されることになる。
なお、制御部(11)は、所定期間(PPP)内における制御電流(Id)の局所最大電流値の平均値(I101)と局所最小電流値の平均値(I102)との間で符号(正負)が異なる場合に、所定期間(PPP)内におけるゼロクロス余裕度を「ゼロ」であるものとして処理しても良い。
(実施形態3)
実施形態3による磁気軸受装置(10)の構成は、実施形態1による磁気軸受装置(10)の構成(図1,図2,図3,図5,図6)と同様であるが、制御部(11)による処理が異なっている。制御部(11)については、後で詳しく説明する。なお、この例では、図6に示した制御電源回路(104d)は、次のように構成されている。
《制御電源回路》
制御電源回路(104d)のデューティ比演算部(121)は、図23に示した対応関係に基づいて、制御電圧指令値(Sd)に対応するL側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)を出力するように構成されている。図23では、制御電圧指令値(Sd)が最小値(-Vdc)から最大値(+Vdc)までの間で増加すると、L側デューティ比指令値(DYL)は、0%から100%までの間で単調に増加し、R側デューティ比指令値(DYR)は、0%から100%までの間で単調に減少している。
また、制御電源回路(104d)のPWMアンプ(122)は、三角波信号(図24a〜図24cにおいて破線で示された波形)とL側デューティ比指令値(DYL)とを比較し、三角波信号がL側デューティ比指令値(DYL)よりも低い場合には、L側ゲート信号(SGL)をハイレベルに設定し、三角波信号がL側デューティ比指令値(DYL)よりも高い場合には、L側ゲート信号(SGL)をローレベルに設定するように構成されている。これと同様に、PWMアンプ(122)は、三角波信号とR側デューティ比指令値(DYR)とを比較し、三角波信号がR側デューティ比指令値(DYR)よりも低い場合には、R側ゲート信号(SGR)をハイレベルに設定し、三角波信号がR側デューティ比指令値(DYR)よりも高い場合には、R側ゲート信号(SGR)をローレベルに設定する。
制御電源回路(104d)において上記のような処理が実行されることにより、制御コイル電圧(Vd)は、制御電圧指令値(Sd)が正の値である場合には、図24aのように変動し、制御電圧指令値(Sd)がゼロである場合には、図24bのようにゼロのまま維持され、制御電圧指令値(Sd)が負の値である場合には、図24cのように変動することになる。なお、この例では、制御コイル(23d)のL側端子からR側端子へ向かう方向を“正”としている。すなわち、制御コイル(23d)のL側端子の電位(VL)がR側端子の電位(VR)よりも高い場合に、制御コイル電圧(Vd)が“正”となる。
〈制御電流の変動と制御コイル電圧の時比率差との関係〉
次に、制御電流(Id)の変動と制御コイル電圧(Vd)の時比率差との関係について説明する。なお、制御コイル電圧(Vd)の時比率差とは、所定期間(TT)(この例では、三角波信号の周期)内における正電圧期間(TP)の時比率と負電圧期間(TN)の時比率との差(より具体的には、正電圧期間(TP)の時比率から負電圧期間(TN)の時比率を減算して得られる値)のことであり、−100%から+100%までの間の値をとる。正電圧期間(TP)の時比率とは、所定期間(TT)に対する正電圧期間(TP)(制御コイル電圧(Vd)の電圧値が正の値である期間)の時間割合のことであり、0%から100%までの間の値をとる。負電圧期間(TN)の時比率とは、所定期間(TT)に対する負電圧期間(TN)(制御コイル電圧(Vd)の電圧値が負の値である期間)の時間割合のことであり、0%から100%までの間の値をとる。
制御電流(Id)の所定時間(TT)内における変動量(増減量)は、制御コイル電圧(Vd)の所定時間(TT)内における時比率差の絶対値に依存している。例えば、制御コイル電圧(Vd)の時比率差がゼロよりも大きくなるほど、所定時間(TT)内における制御電流(Id)の増加量が大きくなり、制御コイル電圧(Vd)の時比率差がゼロよりも小さくなるほど、所定時間(TT)内における制御電流(Id)の減少量が大きくなる。また、負荷(LD)の平均値が一定である場合、制御電流(Id)の平均値も一定となる。すなわち、ある値を中心として負荷(LD)が振幅している場合、制御電流(Id)も、ある値を中心として振幅することになる。この場合、制御電流(Id)の変動幅は、制御コイル電圧(Vd)の時比率差の絶対値に依存することになる。例えば、制御コイル電圧(Vd)の時比率差の最大値(または、最小値)の絶対値が大きくなるほど、制御電流(Id)の変動幅が大きくなる。
したがって、制御コイル電圧(Vd)の時比率差(すなわち、正電圧期間の時比率と負電圧期間の時比率との差)と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値が予め定められた目標時比率相関値(DY0)に近づくようにバイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより、制御電流(Id)の変動幅を予め定められた目標変動幅に近づけることができる。
なお、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)は、所定期間(例えば、バイアス電流(Ib)の更新周期)内における制御コイル電圧(Vd)の時比率差の最大値であっても良いし、所定期間内における制御コイル電圧(Vd)の時比率差の最小値であっても良いし、これらの最大値および最小値の差分値(最大値から最小値を減算して得られる値の絶対値)であっても良いし、これらの最大値および最小値に基づいて算出される値であっても良い。
〈制御コイル電圧の時比率差の変化〉
制御コイル電圧(Vd)の時比率差の絶対値は、負荷(LD)の変動幅の変化に伴って変化することになる。例えば、負荷(LD)の変動幅が広くなると、制御電流(Id)の変動幅を広くするために(すなわち、合成電磁力(F)の変動幅を広くするために)制御コイル電圧(Vd)の時比率差の最大値(または、最小値)の絶対値が大きくなる。このようにして、負荷(LD)と合成電磁力(F)との釣り合いが維持される。また、合成電磁力(F)の変動幅が一定である場合、バイアス電流(Ib)の電流値が高くなるほど(すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合が高くなるほど)、制御コイル電圧(Vd)の時比率差の絶対値が小さくなって制御電流(Id)の変動幅が狭くなることになる。
〈制御コイル電圧の時比率差の算出方法〉
なお、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)に基づいて算出することが可能である。すなわち、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)に対応している。
例えば、制御電圧指令値(Sd)が正の値である場合(図24aの場合)、正電圧期間(TP)の時比率は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)となり、負電圧期間(TN)の時比率は、ゼロとなる。したがって、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)となる。
また、制御電圧指令値(Sd)が負の値である場合(図24cの場合)、正電圧期間(TP)の時比率は、ゼロとなり、負電圧期間(TN)の時比率は、R側デューティ比指令値(DYR)からL側デューティ比指令値(DYL)を減算して得られる値(DYR-DYL)となる。この場合も、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)となる。
なお、制御電圧指令値(Sd)がゼロである場合(図24bの場合)、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、ゼロとなる。この場合も、L側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)の両方が50%となっているので、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)となる。
〈制御部〉
次に、実施形態3による磁気軸受装置(10)における制御部(11)について説明する。この制御部(11)は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に流れる制御電流(Id)の電流値を制御することにより、回転軸(33)の位置制御を行う。また、この制御部(11)(具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d-1,23d-2,23d-5,23d-6)に印加される制御コイル電圧(Vd)の時比率差(すなわち、正電圧期間の時比率と負電圧期間の時比率との差)と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値が予め定められた目標時比率相関値(DY0)に近づくように、一対の制御電磁石(201,203)のバイアスコイル(23b-1,23b-2,23b-5,23b-6)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を制御する。すなわち、この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率差と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値が「制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値」に相当し、時比率相関値(DY1)に対して予め定められた目標時比率相関値(DY0)が「目標変動指標値」に相当する。
〔実施形態3による磁気軸受装置の動作〕
次に、図25を参照して、実施形態3による磁気軸受装置(10)の動作(バイアス電流(Ib)の制御)について説明する。
〈ステップ(ST301)〉
まず、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の更新タイミングが到来したか否かを判定する。更新タイミングが到来すると、ステップ(ST302)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST301)を繰り返す。
〈ステップ(ST302)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっているか否かを判定する。許容範囲(DR)は、目標時比率相関値(DY0)を基準とする範囲(例えば、目標時比率相関値(DY0)を中央値とする範囲)である。時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっている場合には、ステップ(ST306)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST303)へ進む。
〈ステップ(ST303)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が目標時比率相関値(DY0)よりも大きいか否かを判定する。時比率相関値(DY1)の絶対値が目標時比率相関値(DY0)よりも大きい場合には、ステップ(ST304)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST305)へ進む。
〈ステップ(ST304)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値と目標時比率相関値(DY0)との差分値(時比率相関値(DY1)の絶対値から目標時比率相関値(DY0)を減算して得られる値の絶対値)が大きくなるほどバイアス電流(Ib)の増加量が多くなるように、バイアス電流(Ib)の指令値を変更しても良い。バイアス電流(Ib)の指令値の変更により、バイアス電圧指令値(Sb)が変更され、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が増加する。これにより、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が小さくなり、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。次に、ステップ(ST307)へ進む。
〈ステップ(ST305)〉
一方、ステップ(ST303)において制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が目標時比率相関値(DY0)よりも小さいと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、時比率相関値(DY1)の絶対値と目標時比率相関値(DY0)との差分値(時比率相関値(DY1)の絶対値から目標時比率相関値(DY0)を減算して得られる値の絶対値)が大きくなるほどバイアス電流(Ib)の減少量が多くなるように、バイアス電流(Ib)の指令値を変更しても良い。バイアス電流(Ib)の指令値の変更により、バイアス電圧指令値(Sb)が変更され、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が減少する。これにより、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が大きくなり、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。次に、ステップ(ST307)へ進む。
〈ステップ(ST306)〉
また、ステップ(ST302)において制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)が許容範囲(DR)内に収まっていると判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。したがって、バイアス電圧指令値(Sb)は変更されないので、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値は、変更されずにそのまま維持される。次に、ステップ(ST307)へ進む。
〈ステップ(ST307)〉
次に、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合の制御)を継続する場合には、ステップ(ST301)へ進み、そうでない場合には、バイアス電流(Ib)の制御を終了する。
〔実施形態3による磁気軸受装置の動作の具体例〕
次に、図26,図27,図28を参照して、実施形態3におけるバイアス電流(Ib)の制御について具体的に説明する。この例では、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、時刻(t0,t1,t2,t3)の各々において、バイアス電流(Ib)の更新処理を実行するものとする。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)が到来すると、時刻(t0)から時刻(t1)までの期間において算出された制御コイル電圧(Vd)の時比率差の中から絶対値が最も大きい時比率差を、時刻(t0)から時刻(t1)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)として検出し、その制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)に基づいて、時刻(t1)におけるバイアス電流(Ib)の指令値を制御する。
〈正の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図26のように、正の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t301)において広くなると、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が大きくなり、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側飽和値(PS)に近づくことになる。
時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を算出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)を上回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側飽和値(PS)から遠ざかることになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を検出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈負の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図27のように、負の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t302)において広くなると、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)が大きくなり、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。その結果、制御電流(Id)の最小値が負側飽和値(NS)に近づくことになる。
時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を算出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)を上回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最小値が負側飽和値(NS)から遠ざかることになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を検出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈ゼロを跨いで変動している負荷の変動幅が狭くなる場合〉
図28のように、ゼロを跨いで変動している負荷(LD)の変動幅が時刻(t303)において狭くなると、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)が小さくなり、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が増加することになる。
時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を算出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)を下回っているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を減少させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が減少するので、制御電流(Id)の変動幅が広くなる。その結果、制御電流(Id)の変動量に対する波形歪み量(ゼロクロスによる波形歪み量)の割合が減少することになる。
次に、時刻(t3)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t2)から時刻(t3)までの期間における制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)を検出する。この例では、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〔実施形態3による効果〕
以上のように、制御コイル電圧(Vd)の正電圧期間(TP)の時比率と負電圧期間(TN)の時比率との差と相関のある時比率相関値(DY1)が目標時比率相関値(DY0)に近づくようにバイアス電流(Ib)の電流値(すなわち、変動量割合)を制御することにより、負荷(LD)の変動幅が変化した場合であっても制御電流(Id)の変動幅を一定に維持することができる。これにより、制御電流(Id)の飽和による波形歪みの発生を抑制することができるとともに、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力の誤差の顕著化を抑制することができるので、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができる。
また、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値が許容範囲(DR)内に収まっている場合にバイアス電流(Ib)の電流値を変更しないように制御することにより、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、変動量割合の制御)における安定性を向上させることができる。
さらに、制御コイル電圧(Vd)の時比率相関値(DY1)の絶対値と目標時比率相関値(DY0)との差分値(時比率相関値(DY1)の絶対値から目標時比率相関値(DY0)を減算して得られる値の絶対値)が大きいほどバイアス電流(Ib)の変更量を多くするように制御することにより、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、変動量割合の制御)が安定するまでに要する時間を短縮することができる。
〔制御コイル電圧の制御方式の変形例1〕
なお、デューティ比演算部(121)は、図29に示した対応関係に基づいて、制御電圧指令値(Sd)に対応するL側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)を出力するように構成されていても良い。図29では、制御電圧指令値(Sd)が最小値(-Vdc)からゼロまでの間で増加する場合、L側デューティ比指令値(DYL)は、0%から100%までの間で単調に増加し、R側デューティ比指令値(DYR)は、100%のまま維持される。また、制御電圧指令値(Sd)がゼロから最大値(+Vdc)までの間で増加する場合、L側デューティ比指令値(DYL)は、0%から100%までの間で単調に増加し、R側デューティ比指令値(DYR)は、0%のまま維持される。
この場合、制御コイル電圧(Vd)は、制御電圧指令値(Sd)が正の値である場合には、図30aのように変動し、制御電圧指令値(Sd)がゼロである場合には、図30bのようにゼロのまま維持され、制御電圧指令値(Sd)が負の値である場合には、図30cのように変動することになる。この場合も、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)に対応している。
〔制御コイル電圧の制御方式の変形例2〕
また、図31のように、制御電源回路(104d)のスイッチング回路(120)において、R側ゲート信号(SGR)を反転させるインバータ(133)がさらに設けられていても良い。この場合、デューティ比演算部(121)は、図32に示した対応関係に基づいて、制御電圧指令値(Sd)に対応するL側デューティ比指令値(DYL)およびR側デューティ比指令値(DYR)を出力するように構成されていても良い。図32では、制御電圧指令値(Sd)は最小値(-Vdc)からゼロまでの間で増加する場合、L側デューティ比指令値(DYL)は、0%よりも大きい最小値(この例では、15%程度)から100%よりも小さい最大値(この例では、95%程度)までの間で単調に増加し、R側デューティ比指令値(DYR)は、最小値のまま維持される。また、制御電圧指令値(Sd)がゼロから最大値(+Vdc)までの間で増加する場合、L側デューティ比指令値(DYL)は、最小値から最大値までの間で単調に増加し、R側デューティ比指令値(DYR)は、最大値のまま維持される。
この場合、制御コイル電圧(Vd)は、制御電圧指令値(Sd)が正の値である場合には、図33aのように変動し、制御電圧指令値(Sd)がゼロである場合には、図33bのように変動し、制御電圧指令値(Sd)が負の値である場合には、図33cのように変動することになる。この場合も、制御コイル電圧(Vd)の時比率差は、L側デューティ比指令値(DYL)からR側デューティ比指令値(DYR)を減算して得られる値(DYL-DYR)に対応している。
(実施形態4)
実施形態4による磁気軸受装置(10)の構成は、実施形態1による磁気軸受装置(10)の構成(図1,図2,図3,図5,図6に示した構成)と同様であるが、制御部(11)による処理が異なっている。実施形態4における制御部(11)は、実施形態3における制御部(11)による処理(制御電流(Id)およびバイアス電流(Ib)の制御)に加えて、次の処理を実行するように構成されている。
〈制御部〉
制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、飽和余裕度が予め定められた基準飽和余裕度よりも低い場合に、目標時比率相関値(DY0)を減少させるように構成されている。また、制御部(11)は、ゼロクロス余裕度が予め定められた基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に、目標時比率相関値(DY0)を増加させるように構成されている。
〔動作〕
次に、実施形態4による磁気軸受装置(10)の動作(目標時比率相関値(DY0)の制御)について説明する。この磁気軸受装置(10)では、図25に示したステップ(ST301,…,ST307)に加えて、図34に示したステップ(ST401,…,ST405)が実行される。
〈ステップ(ST401)〉
バイアス電流指令演算部(114)は、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低いか否かを判定する。飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合には、ステップ(ST405)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST402)へ進む。
〈ステップ(ST402)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低いか否かを判定する。ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合には、ステップ(ST403)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST404)へ進む。
〈ステップ(ST403)〉
ステップ(ST401)において飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも高いと判定され、且つ、ステップ(ST402)においてゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも高いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標時比率相関値(DY0)を変更せずにそのまま維持する。次に、ステップ(ST302)へ進む。
〈ステップ(ST404)〉
一方、ステップ(ST402)においてゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標時比率相関値(DY0)を増加させる。このとき、制御部(11)は、ゼロクロス余裕度と基準ゼロクロス余裕度との差分値(ゼロクロス余裕度から基準ゼロクロス余裕度を減算して得られる値の絶対値)が大きいほど目標時比率相関値(DY0)の増加量が多くなるように、目標時比率相関値(DY0)を変更しても良い。さらに、バイアス電流指令演算部(114)は、目標時比率相関値(DY0)を基準とする許容範囲(DR)を正の方向に移動させる。次に、ステップ(ST302)へ進む。
〈ステップ(ST405)〉
また、ステップ(ST401)において飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、目標時比率相関値(DY0)を減少させる。このとき、制御部(11)は、飽和余裕度と基準飽和余裕度との差分値(飽和余裕度から基準飽和余裕度を減算して得られる値の絶対値)が大きいほど目標時比率相関値(DY0)の減少量が多くなるように、目標時比率相関値(DY0)を変更しても良い。さらに、バイアス電流指令演算部(114)は、目標時比率相関値(DY0)を基準とする許容範囲(DR)を負の方向に移動させる。次に、ステップ(ST302)へ進む。
〔実施形態4による効果〕
以上のように、飽和余裕度が基準飽和余裕度よりも低い場合に目標時比率相関値(DY0)を減少させることにより、制御電流(Id)の飽和による制御電流(Id)の波形歪みの発生をさらに抑制することができる。また、ゼロクロス余裕度が基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に目標時比率相関値(DY0)を増加させることにより、制御電流(Id)の波形歪み割合の増加に伴う合成電磁力(F)の誤差の顕著化をさらに抑制することができる。したがって、負荷(LD)の変動幅の変化に伴う磁気軸受装置(10)の制御性の劣化をさらに抑制することができる。
なお、制御部(11)は、ゼロクロス余裕度に基づく制御処理(ST402,ST404)を実行した後に、飽和余裕度に基づく制御処理(ST401,ST405)を実行するように構成されていても良い。または、制御部(11)は、飽和余裕度に基づく制御処理(ST401,ST405)およびゼロクロス余裕度に基づく制御処理(ST402,ST404)のいずれか一方のみを実行するように構成されていても良い。
(位置制御の安定性)
なお、磁気軸受装置(10)では、何らかの原因により、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合が低くなりすぎて、その結果、回転軸(33)の位置制御が不安定になる可能性がある。例えば、バイアス電流(Ib)の電流値の減少量が多すぎてバイアス電流(Ib)の電流値が低くなりすぎると、制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合が低くなりすぎてしまい、その結果、回転軸(33)の位置制御が不安定になってしまう。
(磁気軸受装置の動作の変形例1)
そこで、制御部(11)は、変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)が予め定められた制限割合よりも低くならないように、変動量割合を制御するように構成されていても良い。例えば、制御部(11)は、バイアス電流(Ib)の電流値が予め定められた制限値よりも低くならないように、バイアス電流(Ib)の電流値を制御するように構成されていても良い。詳しく説明すると、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、図7に示したステップ(ST104,ST105,ST106)に代えて、図35に示したステップ(ST501,…,ST506)を実行するように構成されていても良い。
〈ステップ(ST501)〉
ステップ(ST103)において制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)よりも大きいと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を減少させる。次に、ステップ(ST504)へ進む。
〈ステップ(ST502)〉
一方、ステップ(ST103)において制御電流(Id)の変動幅値(R1)が目標変動幅値(R0)よりも小さいと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。次に、ステップ(ST504)へ進む。
〈ステップ(ST503)〉
また、ステップ(ST102)において制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)に収まっていると判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。次に、ステップ(ST504)へ進む。
〈ステップ(ST504)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値が予め定められた制限値よりも低いか否かを判定する。バイアス電流(Ib)の指令値が制限値よりも低い場合には、ステップ(ST505)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST506)へ進む。
〈ステップ(ST506)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値が制限値になるようにバイアス電流(Ib)の指令値を変更する。そして、バイアス電流指令演算部(114)は、変更後のバイアス電流(Ib)の指令値に基づいて、バイアス電圧指令値(Sb)を更新する。これにより、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値は、制限値になるように制御される。次に、ステップ(ST107)へ進む。
〈ステップ(ST506)〉
一方、ステップ(ST504)においてバイアス電流(Ib)の指令値が制限値よりも高いと判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、ステップ(ST501,ST502,ST503)のいずれか1つにおいて決定されたバイアス電流(Ib)の指令値に基づいて、バイアス電圧指令値(Sb)を更新する。これにより、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値は、ステップ(ST501,ST502,ST503)のいずれか1つにおいて決定されたバイアス電流(Ib)の指令値になるように制御される。次に、ステップ(ST107)へ進む。
〔磁気軸受装置の動作の変形例1による効果〕
以上のように制御することにより、バイアス電流(Ib)の電流値の過剰な低下(すなわち、変動量割合の過小化)を防止することができるので、位置制御の安定性を維持することができる。
(変動量割合の制御安定性)
制御電流(Id)の電流値が安定していない場合(例えば、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)が安定していない場合)にバイアス電流(Ib)の制御を実行すると、バイアス電流(Ib)の電流値が頻繁に変動することになるので、バイアス電流(Ib)の制御の安定性が低下してしまう。すなわち、制御電流(Id)の電流値が安定していない場合に変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)の制御を実行すると、変動量割合が頻繁に変動することになるので、変動量割合の制御における安定性が低下してしまう。また、バイアス電流(Ib)の電流値が頻繁に変動すると、異音等の原因となる懸念がある。そのため、バイアス電流(Ib)の制御は、制御電流(Id)の電流値が安定している状態で実行されることが好ましい。
(磁気軸受装置の動作の変形例2)
そこで、制御部(11)は、制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、変動量割合を制御するように構成されていても良い。更新閾値は、磁気軸受本体(21)によって非接触に支持される回転軸の運転条件(この例では、電動機(30)の運転条件)に基づいて設定されていても良い。例えば、更新閾値は、制御電流(Id)の電流値が安定しているとみなせる場合(例えば、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)が安定しているとみなせる場合)の制御相関変数の平均値の変動幅に相当する。また、更新閾値は、固定値であっても良いし、可変値であっても良い。
例えば、制御部(11)は、制御電流(Id)の平均電流値の変動幅が更新閾値よりも小さい場合に、バイアス電流(Id)の電流値を制御するように構成されていても良い。詳しく説明すると、制御部(11)(具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、図7に示したステップ(ST101,…,ST107)に加えて、図36に示したステップ(ST601)を実行するように構成されていても良い。
〈ステップ(ST601)〉
まず、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の平均電流値の変動幅が更新閾値よりも小さいか否かを判定する。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の更新周期よりも短い周期で、制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)の電流値に基づいて制御電流(Id)の平均電流値を複数回検出することにより、制御電流(Id)の平均電流値の変動幅を検出しても良い。制御電流(Id)の平均電流値の変動幅が更新閾値よりも小さい場合には、ステップ(ST101)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST601)を繰り返す。
〔磁気軸受装置の動作の変形例2による効果〕
以上のように制御することにより、制御電流(Id)の電流値が安定している状態(例えば、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)が安定している状態)において、バイアス電流(Ib)の電流値を制御することができる。これにより、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、変動量割合の制御)の安定性を向上させることができる。
(磁気軸受装置の動作の変形例3)
または、制御部(11)は、制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の所定周波数以上の変動幅(平均値の周波数成分のうち所定周波数以上の周波数成分の変動幅)が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)を制御するように構成されていても良い。更新閾値は、磁気軸受本体(21)によって非接触に支持される回転軸の運転条件(例えば、電動機(30)の運転条件)に基づいて設定されていても良い。例えば、更新閾値は、制御電流(Id)の電流値が安定しているとみなせる場合(例えば、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)が安定しているとみなせる場合)の制御相関変数の平均値の所定周波数以上の変動幅に相当する。また、更新閾値は、固定値であっても良いし、可変値であっても良い。
例えば、制御部(11)は、制御電流(Id)の平均電流値の所定周波数以上の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、バイアス電流(Ib)の電流値を制御するように構成されていても良い。詳しく説明すると、制御部(11)(具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、図7に示したステップ(ST101,…,ST107)に加えて、図37に示したステップ(ST701)を実行するように構成されていても良い。
〈ステップ(ST701)〉
まず、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の平均電流値の所定周波数以上の変動幅が更新閾値よりも低いか否かを判定する。例えば、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の更新周期よりも短い周期で、制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)の電流値に基づいて制御電流(Id)の平均電流値を複数回検出することにより、制御電流(Id)の平均電流値の所定周波数以上の変動幅を検出しても良い。制御電流(Id)の平均電流値の所定周波数以上の変動幅が更新閾値よりも小さい場合には、ステップ(ST101)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST701)を繰り返す。
〔磁気軸受装置の動作の変形例3による効果〕
以上のように制御した場合も、制御電流(Id)の電流値が安定している状態(例えば、回転軸(33)に加えられる負荷(LD)が安定している状態)において、バイアス電流(Ib)の電流値を制御することができるので、バイアス電流(Ib)の制御(すなわち、変動量割合の制御)の安定性を向上させることができる。
(負荷の変動幅の突発的な過大化)
負荷(LD)の変動幅が突発的に過大化して制御電流(Id)が飽和した場合、変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)が低下するまで、制御電流(Id)の飽和状態が継続することになる。また、制御電流(Id)の飽和状態の継続期間が長くなるほど、磁気軸受装置(10)の制御性が劣化している期間が長くなってしまう。
(磁気軸受装置の動作の変形例4)
そこで、制御部(11)は、制御電流(Id)と相関のある制御相関変数が予め定められた正常範囲から逸脱した場合に、変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)を増加させるように構成されていても良い。正常範囲は、正側正常閾値(PTH)と負側正常閾値(NTH)との間の範囲に相当する。正側正常閾値(PTH)および負側正常閾値(NTH)は、制御相関変数の変動幅が突発的に過大化したか否か(すなわち、制御電流(Id)が飽和する可能性が高くなったか否か)を判定するための基準値であり、正側正常閾値(PTH)は、制御電流(Id)の電流値が正側飽和値(PS)に到達しているときの制御相関変数の値よりも低い値が同等の値に設定され、負側正常閾値(NTH)は、制御電流の電流値が負側飽和値(NS)に到達しているときの制御相関変数の値よりも高い値か同等の値に設定される。
例えば、制御部(11)は、制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が予め定められた正常範囲から逸脱した場合に、バイアス電流(Ib)の電流値を増加させるように構成されていても良い。この場合、正側正常閾値(PTH)は、正側飽和値(PS)よりも低いか同等の電流値に設定され、負側正常閾値(NTH)は、負側飽和値(NS)よりも高いか同等の電流値に設定されることになる。詳しく説明すると、制御部(11)(具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、図7に示したステップ(ST101,…,ST107)に加えて、図38に示したステップ(ST801,ST802,ST803)を実行するように構成されていても良い。
〈ステップ(ST801)〉
まず、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が正常範囲から逸脱したか否かを判定する。制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が正常範囲から逸脱している場合には、ステップ(ST802)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST803)へ進む。
〈ステップ(ST802)〉
次に、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。このバイアス電流(Ib)の指令値の変更により、バイアス電圧指令値(Sb)が変更され、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値が増加する。これにより、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。次に、ステップ(ST101)へ進む。
〈ステップ(ST802)〉
一方、ステップ(ST801)において制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が正常範囲内に収まっていると判定された場合、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。この場合、バイアス電圧指令値(Sb)は変更されないので、バイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値は、変更されずにそのまま維持される。次に、ステップ(ST101)へ進む。
〔磁気軸受装置の動作の変形例4の具体例〕
次に、図39,図40を参照して、磁気軸受装置(10)の動作の変形例4について具体的に説明する。この例では、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、時刻(t1,t2,t3)の各々において、バイアス電流(Ib)の更新処理を実行するものとする。また、正側正常閾値(PTH)は、正側飽和値(PS)よりも低い電流値に設定され、負側正常閾値(NTH)は、負側飽和値(NS)よりも低い電流値に設定されているものとする。
〈正の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図39のように、正の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が突発的に広くなると、制御電流(Id)の変動幅も突発的に広くなる。そして、時刻(t801)において制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が正側正常閾値(PTH)(正常範囲の上限値)を上回ると、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最大値が正側正常閾値(PTH)よりも低くなる。すなわち、制御電流(Id)の電流値が正常範囲内に収まるようになる。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t801)までの期間における制御電流(Id)の電流値を無効な電流値として破棄し、時刻(t801)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を「時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)」として検出しても良い。すなわち、バイアス電流指令演算部(114)は、制御電流(Id)の電流値が正常範囲から逸脱した場合、制御電流(Id)の電流値が正常範囲から逸脱した後にバイアス電流(Ib)の更新タイミングが到来するまでの期間における制御電流(Id)の電流値に基づいて、制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出しても良い。また、この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〈負の範囲内で変動している負荷の変動幅が広くなる場合〉
図40のように、負の範囲内で変動している負荷(LD)の変動幅が突発的に広くなると、制御電流(Id)の変動幅も突発的に広くなる。そして、時刻(t802)において制御電流(Id)の電流値(瞬時値)が負側正常閾値(NTH)(正常範囲の下限値)を下回ると、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を増加させる。これにより、バイアス電流(Ib)の電流値が増加するので、制御電流(Id)の変動幅が狭くなる。その結果、制御電流(Id)の最小値が低正常閾値(LTH)よりも低くなる。すなわち、制御電流(Id)の電流値が正常範囲内に収まるようになる。
次に、時刻(t2)が到来すると、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を検出する。このとき、バイアス電流指令演算部(114)は、時刻(t1)から時刻(t802)までの期間における制御電流(Id)の電流値を無効な電流値として破棄し、時刻(t802)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)を「時刻(t1)から時刻(t2)までの期間における制御電流(Id)の変動幅値(R1)」として検出しても良い。また、この例では、制御電流(Id)の変動幅値(R1)が許容範囲(RR)内に収まっているので、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電流(Ib)の指令値を変更せずにそのまま維持する。
〔磁気軸受装置の動作の変形例4による効果〕
以上のように制御することにより、負荷(LD)の変動幅が突発的に過大化した場合に、バイアス電流(Ib)の電流値(すなわち、変動量割合)を低下させて制御電流(Id)の変動幅を迅速に狭くすることができる。これにより、制御電流(Id)の飽和状態の長期化による磁気軸受装置(10)の制御性の劣化を抑制することができる。
(磁気軸受装置の動作の変形例のまとめ)
なお、実施形態1(または、実施形態2)の制御部(11)は、図7に示した処理(または、図7および図13に示した処理)に加えて、図35〜図38に示した処理の全部または一部を実行するように構成されていても良い。これと同様に、実施形態3(または、実施形態4)の制御部(11)は、図25に示した処理(または、図25および図34に示した処理)に加えて、図35〜図38に示した処理の全部または一部を実行するように構成されていても良い。なお、実施形態3(または、実施形態4)による磁気軸受装置(10)に図35に示した処理を適用する場合、制御部(11)は、図25に示したステップ(ST304,ST305,ST306)に代えて図35に示したステップ(ST501,…,ST506)を実行することになる。
(磁気軸受本体の変形例1)
図41および図42のように、磁気軸受本体(21)は、ホモポーラ型のラジアル軸受を構成していても良い。図41は、磁気軸受本体(21)の変形例1の横断面(回転軸に垂直な方向の断面)を示し、図42は、磁気軸受本体(21)の変形例1の縦断面(回転軸方向の断面)を示している。この磁気軸受本体(21)も、図2,図3に示した磁気軸受本体(21)と同様に、コア部(22)と、複数(この例では、8つ)の制御コイル(23d-1,…,23d-8)と、複数(この例では、8つ)のバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)とを備えている。ただし、この磁気軸受本体(21)では、ティース部(22b,…,22b)は、軸方向から見て4つのティース部(22b,…,22b)がバックヨーク部(22a)の内周に沿って90°ピッチで配置されるとともに軸方向において2つのティース部(22b,22b)が並んで配置されるように、形成されている。すなわち、ティース部(22b,…,22b)は、2段構造となっている。
また、制御コイル(23d-1,23d-3,23d-5,23d-7)およびバイアスコイル(23b-1,23b-3,23b-5,23b-7)は、1段目の4つのティース部(22b,22b,22b,22b)にそれぞれ巻回され、制御コイル(23d-2,23d-4,23d-6,23d-8)およびバイアスコイル(23b-2,23b-4,23b-6,23b-8)は、2段目の4つのティース部(22b,22b,22b,22b)にそれぞれ巻回されている。このように構成することにより、8つの電磁石(24-1,…,24-8)が形成されている。
なお、制御コイル(23d-1,…,23d-8)およびバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)の巻回方向や、制御コイル(23d-1,…,23d-8)およびバイアスコイル(23b-1,…,23b-8)に流れる電流の向きは、図41および図42に示した矢印の方向に磁束が発生するように設定されている。例えば、1段目の制御コイル(23d-1,23d-3,23d-5,23d-7)は、2段目の制御コイル(23d-2,23d-4,23d-6,23d-8)とそれぞれ対となっている。1段目の制御コイル(23d-1)および2段目の制御コイル(23d-2)は、軸方向において並んで配置され、1段目の制御コイル(23d-1)は、2段目の制御コイル(23d-2)に繋がっている。その他の1段目の制御コイル(23d-3,23d-5,23d-7)およびその他の2段目の制御コイル(23d-4,23d-6,23d-8)についても同様である。また、1段目のバイアスコイル(23b-1,23b-3,23b-5,23b-7)は、2段目のバイアスコイル(23b-2,23b-4,23b-6,23b-8)とそれぞれ対となっている。1段目のバイアスコイル(23b-1)および2段目のバイアスコイル(23b-2)は、軸方向において並んで配置され、1段目のバイアスコイル(23b-1)は、2段目のバイアスコイル(23b-2)に繋がっている。その他の1段目のバイアスコイル(23b-3,23b-5,23b-7)およびその他の2段目のバイアスコイル(23b-4,23b-6,23b-8)についても同様である。このように構成することにより、4つの制御電磁石(201,…,204)が構成されている。
また、制御電磁石(201)の制御コイル(23d-1,23d-2)および制御電磁石(203)の制御コイル(23d-5,23d-6)は、電気的に直列に接続され、制御電磁石(201)のバイアスコイル(23b-1,23b-2)および制御電磁石(203)のバイアスコイル(23b-5,23b-6)は、電気的に直列に接続されている。一対の制御電磁石(202,204)についても同様である。
以上のように構成した場合も、制御電磁石(201,202)は、回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで制御電磁石(203,204)にそれぞれ対向していることになる。したがって、制御電磁石(201,…,204)の合成電磁力(F)によって回転軸(33)の径方向位置を制御することができ、回転軸(33)を非接触に支持することができる。
(磁気軸受本体の変形例2)
また、図43および図44のように、磁気軸受本体(21)は、スラスト軸受を構成していても良い。図43は、磁気軸受本体(21)の変形例2の横断面(回転軸に垂直な方向の断面)を示し、図44は、磁気軸受本体(21)の変形例2の縦断面(回転軸方向の断面)を示している。この磁気軸受本体(21)は、2つのコア部(22,22)と、2つの制御コイル(23d,23d)と、2つのバイアスコイル(23b,23b)とを備えている。また、回転軸(33)には、スラストディスク(被支持部(33a))が固定されている。コア部(22,22)は、リング状となっており、スラストディスクの軸方向両側に、所定のエアギャップを隔てて配置されている。この例では、ギャップセンサ(101)は、スラストディスクの軸方向位置を検出するように構成されている。
コア部(22,22)の面(スラストディスクに対向する面)には円周溝(22c,22c)が形成され、円周溝(22c,22c)内に制御コイル(23d,23d)およびバイアスコイル(23b,23b)がそれぞれ収容されている。これにより、回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで対向する一対の制御電磁石(201,203)が構成されている。この例では、制御電磁石(201,203)の各々は、1つの電磁石(コア部(22),制御コイル(23d),およびバイアスコイル(23b)によって形成された電磁石)によって構成されている。なお、制御コイル(23d,23d)およびバイアスコイル(23b,23b)の巻回方向や、制御コイル(23d,23d)およびバイアスコイル(23b,23b)に流れる電流の向きは、図44に示した矢印の方向に磁束が発生するように設定されている。
また、制御電磁石(201)の制御コイル(23d)および制御電磁石(203)の制御コイル(23d)は、電気的に直列に接続され、制御電磁石(201)のバイアスコイル(23b)および制御電磁石(203)のバイアスコイル(23b)は、電気的に直列に接続されている。
以上のように構成することにより、制御電磁石(201,203)の合成電磁力(F)によって回転軸(33)の軸方向位置を制御することができ、回転軸(33)を非接触に支持することができる。
(その他の実施形態)
以上の説明において、制御電流指令演算部(112)は、制御電圧指令値(Sd)から制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の電流値を逆算するように構成されていても良い。バイアス電流指令演算部(114)についても同様である。さらに、バイアス電流指令演算部(114)は、バイアス電圧指令値(Sb)からバイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を逆算するように構成されていても良い。
また、制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の一例として制御電流(Id)の電流値(より具体的には、制御電流検出器(102d)によって検出された制御電流(Id)の電流値)を例に挙げて説明したが、制御部(11)(より具体的には、バイアス電流指令演算部(114))は、制御電流指令演算部(112)によって設定された制御電流(Id)の指令値を制御相関変数として検出しても良い。また、制御部(11)は、制御電流(Id)の電流値や指令値の他に、制御コイル(23d)に発生する制御磁束の磁束量や磁束密度など、制御電流(Id)の電流値の変化に伴って変化し制御電流(Id)の電流値がゼロであるときにゼロとなる物理量(または、指令値)を制御相関変数として検出しても良い。なお、制御コイル(23d)に発生する制御磁束の磁束量(または、磁束密度)は、磁束センサ(図示を省略)によって検出された磁束量(または、磁束密度)であっても良いし、磁束量の指令値(または、磁束密度の指令値)であっても良い。
また、バイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより変動量割合(制御電流(Id)の変動量に対する合成電磁力(F)の変動量の割合)を制御する場合を例に挙げて説明したが、制御部(11)は、バイアスコイル(23b)に発生するバイアス磁束の磁束量を制御することにより変動量割合を制御するように構成されていても良い。例えば、バイアスコイル(23b)が可変コイルによって構成されている場合、制御部(11)は、バイアスコイル(23b)のインダクタンス値を変更することによってバイアスコイル(23b)の発生するバイアス磁束の磁束量を変更するように構成されていても良い。
また、目標変動指標値(目標変動幅値(R0),目標時比率相関値(DY1))は、磁気軸受装置(10)の動作条件(例えば、回転軸(33)の運転条件や、磁気軸受装置(10)の仕様など)に基づいて設定することが可能である。目標変動指標値を基準とする許容範囲(許容範囲(RR),許容範囲(DR)),飽和余裕度に関連する制限値(正側制限値(PL),負側制限値(NL)),飽和余裕度の判定基準となる基準飽和余裕度,ゼロクロス余裕度の判定基準となる基準ゼロクロス余裕度,飽和余裕度に関連する余裕範囲(R100),ゼロクロス余裕度に関連する切迫範囲(R200),変動量割合に対して予め定められた制御割合(具体的には、バイアス電流(Ib)に関連する制限値),制御電流(Ib)と相関のある制御相関変数に対して予め定められた正常範囲(具体的には、正側正常閾値(PTH)と負側正常閾値(NTH)とで規定された正常範囲)についても同様である。
また、目標変動幅値(R0)および目標時比率相関値(DY0)の更新周期(すなわち、目標変動指標値の更新周期)は、バイアス電流(Ib)の更新周期(すなわち、変動量割合の更新周期)と同一であっても良いし異なっていても良い。
また、演算回路(103)は、マイクロコンピュータ(ソフトウェア)およびマイクロコンピュータを作動させるプログラムによって実現されていても良いし、専用回路(ハードウェア)によって実現されていても良い。
また、以上の実施形態を適宜組み合わせて実施しても良い。以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、上述の磁気軸受装置は、圧縮機に備えられた電動機などに好適である。
1 圧縮機
10 磁気軸受装置
30 電動機
33 回転軸
40 ケーシング
50 羽根車
60 タッチダウン軸受
11 制御部
21 磁気軸受本体
22 コア部
23d 制御コイル
23b バイアスコイル
24 電磁石
101 ギャップセンサ
102d 制御電流検出器
102b バイアス電流検出器
103 演算回路
104d 制御電源回路
104b バイアス電源回路
201〜204 制御電磁石

Claims (13)

  1. 回転軸(33)の被支持部(33a)を挟んで対向するとともに各々が制御コイル(23d)およびバイアスコイル(23b)を有する少なくとも一対の制御電磁石(201,203)を有し、該少なくとも一対の制御電磁石(201,203)の合成電磁力(F)により該回転軸(33)を非接触に支持する磁気軸受本体(21)と、
    上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の変動幅の広さに依存する変動指標値が予め定められた目標変動指標値に近づくように、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御する制御部(11)とを備えている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  2. 請求項1において、
    上記変動指標値は、上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の変動幅の広さを示す変動幅値(R1)に相当し、
    上記目標変動指標値は、上記変動幅値(R1)に対して予め定められた目標変動幅値(R0)に相当する
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  3. 請求項1において、
    上記変動指標値は、上記一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に印加される制御コイル電圧(Vd)の正電圧期間の時比率と負電圧期間の時比率との差と相関のある時比率相関値(DY1)の絶対値に相当し、
    上記目標変動指標値は、上記時比率相関値(DY1)に対して予め定められた目標時比率相関値(DY0)に相当する
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記一対の制御電磁石(201,203)のバイアスコイル(23b)に流れるバイアス電流(Ib)の電流値を制御することにより、該一対の制御電磁石(201,203)の制御コイル(23d)に流れる制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)の電流値と予め定められた制限値(PL,NL)との差に依存する飽和余裕度が予め定められた基準飽和余裕度よりも低い場合に、上記目標変動指標値を減少させるように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)の電流値とゼロとの差に依存するゼロクロス余裕度が予め定められた基準ゼロクロス余裕度よりも低い場合に、上記目標変動指標値を増加させるように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記目標変動指標値を基準とする許容範囲内に上記変動指標値が収まっている場合には、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を変更しないように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記変動指標値と上記目標変動指標値との差分値が大きいほど、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合の変更量を多くするように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合が予め定められた制限割合よりも低くならないように、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数の平均値の所定周波数以上の変動幅が予め定められた更新閾値よりも小さい場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を制御するように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項において、
    上記制御部(11)は、上記制御電流(Id)と相関のある制御相関変数が予め定められた正常範囲から逸脱した場合に、該制御電流(Id)の変動量に対する上記合成電磁力(F)の変動量の割合を減少させるように構成されている
    ことを特徴とする磁気軸受装置。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の磁気軸受装置(10)と、
    上記磁気軸受装置(10)によって回転軸(33)が非接触に支持される電動機(30)と、
    上記電動機(30)によって駆動される圧縮機構とを備えている
    ことを特徴とする圧縮機。
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