JP2014224995A - 走査型画像表示装置および射出瞳拡大方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】網膜上に直接像を作る走査型の画像表示装置において、解像度の劣化を抑制しつつ、射出瞳を拡大する技術を提供する。【解決手段】走査型画像表示装置100において、光学系は、干渉性を持つ光を照射する光源10が照射する光をビームに変換する。走査光学系は、光学系が変換したビームを中間像位置40上に走査させて中間像を生じさせる。NA変換素子50は、中間像が生じる位置においてビームの発散角を拡大する。NA変換素子50は周期構造を持っており、当該NA変換素子50における周期構造の繰り返し周期の長さは、光学系が変換したビームがNA変換素子50に入射するときのビーム径以上である。【選択図】図1
Description
本発明は、走査型画像表示装置および射出瞳拡大方法に関する。
近年、半導体レーザー光源の光をコリメータレンズで細いビームにし、これを小型のスキャンミラーで二次元に走査して中間像を造り、その中間像を結像光学系で瞳孔に投影し、目のレンズ作用で網膜上に像を作る走査型の画像表示装置が提案されている。
このとき細いビームで作った中間像を、そのまま後段の光学系で瞳孔に入射しようとすると、光学系の射出瞳が小さいために、射出瞳と瞳孔の位置合わせが難しくなり、像が見づらくなる。これを改善するために中間像の近傍に、NA(Numerical Aperture;開口数)拡大素子または射出瞳拡大器(以下、「NA変換素子」という。)と呼ばれる、ビームの広がり角を大きくする作用を持つ素子を配置する。このNA変換素子により、中間像以降のビームが太くなるため射出瞳が拡大し、射出瞳と瞳孔の位置合わせがし易くする技術も提案されている(特許文献1参照)。
NA変換素子として、回折格子、レンチキュラーシート等の周期構造による回折作用を利用する素子が用いられることが多い。周期構造を持つNA変換素子を用いると、その回折作用によって、NA変換素子に入射した入射ビームは、入射時の収束NAと同じNAで広がりながら、入射ビームと同じ方向に射出する0次光、θ=arcsin(nλ/P;Pは周期構造のピッチ、λは入射ビームの波長、nは整数)に従い回折されて射出する±n次光に分かれる。
ここで、いわゆるヘッドアップディスプレイのように射出瞳位置が遠いディスプレイに応用した場合は、NA変換素子の回折作用で分かれた射出光は、ビーム同士が大きく分散してしまうので、ビーム同士の間隔が開く。この結果、瞳孔にビームが入る場所では画像が見えるが、入らない場所では画像が見えなくなり、結果として解像度が劣化してしまう。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、網膜上に直接像を作る走査型の画像表示装置において、解像度の劣化を抑制しつつ、射出瞳を拡大する技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の走査型画像表示装置は、干渉性を持つ光を照射する光源が照射する光をビームに変換する光学系と、光学系が変換したビームを中間像位置上に走査させて中間像を生じさせる走査光学系と、中間像が生じる位置においてビームの発散角を拡大するNA(Numerical Aperture)変換素子とを備える。NA変換素子は周期構造を持っており、当該NA変換素子における周期構造の繰り返し周期の長さは、光学系が変換したビームがNA変換素子に入射するときのビーム径以上である。
本発明の別の態様は、射出瞳拡大方法である。この方法は、干渉性を持つ光をビームに変換するステップと、変換したビームを中間像位置上に走査させて中間像を生じさせるステップと、中間像が生じる位置において、NA(Numerical Aperture)変換素子を用いてビームの発散角を拡大するステップとを含む。NA変換素子は周期構造を持っており、該NA変換素子における周期構造の繰り返し周期の長さは、変換したビームがNA変換素子に入射するときのビーム径以上である。
本発明の別の態様は、射出瞳拡大方法である。この方法は、干渉性を持つ光をビームに変換するステップと、変換したビームを中間像位置上に走査させて中間像を生じさせるステップと、中間像が生じる位置において、NA(Numerical Aperture)変換素子を用いてビームの発散角を拡大するステップとを含む。NA変換素子は周期構造を持っており、該NA変換素子における周期構造の繰り返し周期の長さは、変換したビームがNA変換素子に入射するときのビーム径以上である。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現の少なくとも一部を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、網膜上に直接像を作る走査型の画像表示装置において、解像度の劣化を抑制しつつ、射出瞳を拡大する技術を提供することができる。
(走査型画像表示装置の全体構成)
図1は、実施の形態に係る走査型画像表示装置100の全体構成を模式的に示す図である。走査型画像表示装置100は、光源10、コリメータレンズ20、スキャンミラー30、中間像位置40、NA変換素子50、および結像光学系60を含む。
図1は、実施の形態に係る走査型画像表示装置100の全体構成を模式的に示す図である。走査型画像表示装置100は、光源10、コリメータレンズ20、スキャンミラー30、中間像位置40、NA変換素子50、および結像光学系60を含む。
光源10は、例えばLD(Laser Diode;半導体レーザ)を用いて実現できる。図1は光源10としてLDをひとつ用いている場合を図示しているが、フルカラータイプでは光源10としてRGB三色のLDを用いる。光源10を出た光はコリメータレンズ20で平行光に近いビームに変換され、スキャンミラー30で反射された後、中間像面である中間像位置40に集光する。実施の形態に係る走査型画像表示装置100において、コリメータレンズ20は、干渉性を持つ光を照射する光源10が照射する光をビームに変換する光学系となる。
スキャンミラー30は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に代表される小型のミラーを用いて実現できる。図1においては、二次元走査タイプのスキャンミラー30を一つを用いている場合の例を示しているが、一次元走査タイプのスキャンミラー30を二つ用いてもよい。画像データに基づいて変調されて光源10から照射された光をスキャンミラー30を用いて二次元のビーム走査とすることで、中間像位置40に中間像が作られる。実施の形態に係る走査型画像表示装置100において、スキャンミラー30は、光学系が変換したビームを走査して中間像を生じさせる走査光学系となる。
上述したとおり、光源10を出た光はコリメータレンズ20で平行光に近いビームに変換され、最も細く絞られた位置である中間像位置40の近くに中間像ができる。仮にNA変換素子50が存在しないとすると、ビームは中間像位置40を透過した後、収束角の開口数と同じ開口数で広がる。なお、中間像位置40上に形成される中間像面は、実際にはスキャンミラー30の回転中心を中心とする球面となるが、ビームの開口数が小さいので中間像位置40近傍のビームウエスト径の変化は小さくなる。したがって、中間像面を平面で近似しても本発明の内容には差し支えない。
中間像位置40の近傍には、NA変換素子50が配置される。より具体的に、実施の形態に係る走査型画像表示装置100において、NA変換素子50は、例えばマイクロレンズアレイで構成される。マイクロレンズアレイは多数のマイクロレンズ1の集合体であるが、各マイクロレンズ1は入射ビームの開口数を拡大する。すなわち、コリメータレンズ20で決められた入射ビームの収束角の開口数を、マイクロレンズ1のレンズ作用により大きな発散角の開口数に変換して射出する。実施の形態に係る走査型画像表示装置100では、マイクロレンズアレイはNA変換素子50の入射面に設置されているが、出射面や入射面と出射面との両方に設置されていてもよい。
NA変換素子50を射出したビームは、結像光学系60に入射する。図1では、結像光学系60の作用を代表するために凸レンズ1個で表しているが、実際の光学系では、複数のレンズやミラーの組み合わせによって構成される。結像光学系60に入射したビームはほぼ平行なビームとなり、射出瞳位置70に向かう。このとき、NA変換素子50を射出したビームは発散角の開口数が拡大されているため太いビームとなる。このため、射出瞳位置70におけるビーム径、すなわち射出瞳径も拡大される。結果として、実施の形態に係る走査型画像表示装置100は、多少の瞳孔80のずれがあっても画像が消失しない見やすい光学系となる。
射出瞳位置70で瞳孔に入射したビームは、角膜や水晶体などのユーザの目における光学系で収束され、ユーザの網膜上に集光する。スキャンミラー30によるビームの走査と、画像データに連動した光源10の明暗により、ユーザの網膜上に像が作られるため、ユーザは画像を認識することができる。
図2は、実施の形態に係るNA変換素子50の一部分を拡大して示す図である。上述したとおり、NA変換素子50の前面にはマイクロレンズアレイが形成されている。NA変換素子50は中間像面となる中間像位置40の近傍に配置され、その後のビームの発散角を拡大する。このため、NA変換素子50は、中間像位置40上に形成される中間像と同じかやや大きく、数mm角から数十mm角程度の大きさである。図2はマイクロレンズ1が六方細密に並べられている場合を例示するが、マイクロレンズ1は正方配列でもその他の並べ方でもあってもよい。
(NA変換素子とビームの干渉)
ここで、NA変換素子50から射出瞳位置70までの距離と、NA変換素子50を出射したビームの干渉との関係について説明する。
ここで、NA変換素子50から射出瞳位置70までの距離と、NA変換素子50を出射したビームの干渉との関係について説明する。
図3は、レンズ間のピッチが25μmのマイクロレンズアレイに、ビームの直径がピッチの3倍である75μmのビームが入射する様子を、シミュレーションした結果を示す図である。図3に示す例においては、NA変換素子50は図2に示すものと同一である。図3では、NA変換素子50における3個程度の複数のマイクロレンズ1にビームが入射している。個々のマイクロレンズ1の射出光はレンズ作用によって発散され、射出光同士が重なり合う。
上述したとおり、実施の形態に係る光源10はLDであるため、入射ビームは位相がそろった1本のビームである。したがってこれを複数本に分けたビームも位相がそろっており、このようなビーム同士が重なると干渉が起きる。しかしながら、例えばヘッドマウントディスプレイのような用途では、NA変換素子50から射出瞳位置70までの距離が数十mm程度と近いため、仮に干渉によるドットパターンができたとしても、そのパターン同士の間隔が1mm程度となりほとんど重なり合うことになる。したがって、瞳孔80にはビームが入射するため、問題となりにくい。
一方で、例えばヘッドアップディスプレイのように、NA変換素子50から数百mm離れた位置に射出瞳位置70がある場合では、いわゆるフラウンホーファ回折となるため、ドットパターンが現れる。図4は、フラウンホーファ回折によって射出瞳位置70に形成されるドットパターンを示すシミュレーション結果を示す図である。図4に示すドットパターンにおいては、ドットの間隔は縦横とも7、8mm程度となる。
一般に、人間の瞳孔80の直径は平均で3mm、暗いところでも5mm程度の大きさとなる。したがって、図4に示すドットパターンではドットとドットとの間にユーザの瞳孔80が位置すると光が目に入射せず、画像が見えなくなる場所ができることになり問題となる。
この問題を解決するために、実施の形態に係る走査型画像表示装置100は、NA変換素子50に入射するビームに回折作用を生じさせずに、屈折作用を生じさせて発散角を拡大する。以下その原理を説明する。
上述したとおり、実施の形態に係るNA変換素子50は周期構造を持っている。ここで実施の形態に係るNA変換素子50においては、周期構造の繰り返し周期の長さは、コリメータレンズ20が変換したビームがNA変換素子50に入射するときのビーム径以上である。なお、実施の形態に係るNA変換素子50をマイクロレンズアレイで実現する場合には、NA変換素子50における周期構造の繰り返し周期の長さは、マイクロレンズ1のピッチ、すなわち中心間の間隔と同じ長さとなる。
図5は、レンズ間のピッチが25μmのマイクロレンズアレイに、ビームの直径が20μmのビームが入射する様子を、シミュレーションした結果を示す図である。図5に示すように、NA変換素子50のマイクロレンズ1個にビームが収まる関係なので、射出光はレンズの屈折作用によって発散されるだけである。このため、射出瞳位置70においても射出瞳位置70の形状に広がるだけである。
図6は、図5に示す場合において射出瞳位置70に形成される光の光量分布を示すシミュレーション結果を示す図である。光源10であるLDのビームはガウス分布を持っているため、図6において中央が明るく周辺部が暗くなる。また図5に示すように、ビームのごく一部は直径20μm以上に広がり、隣のマイクロレンズ1に入射する場合もあるが、強度的にはごく低く影響は無視できるほど小さい。このように、NA変換素子50の各マイクロレンズアレイに入射するビームの直径を、マイクロレンズアレイの周期構造のピッチ以下とすることとにより、NA変換素子50に入射するビームに回折作用を生じさせずに、屈折作用を生じさせて発散角を拡大することができる。これにより、射出瞳位置70においてビームの干渉に起因するドットパターンの発生を抑制することができる。
(ビームの走査による出射瞳位置における像の変化)
上述したとおり、実施の形態に係る走査型画像表示装置100においては、スキャンミラー30によるビームの走査と、画像データに連動した光源10の明暗により、網膜上に像が作られる。以下、マイクロレンズアレイ上をビームが走査する場合に射出瞳位置70に形成される像の変化について、NA変換素子50の例として、マイクロレンズ間のピッチが25μmのマイクロレンズアレイに、直径20μmのビームが入射するときの様子を、図7〜図10を参照して説明する。
上述したとおり、実施の形態に係る走査型画像表示装置100においては、スキャンミラー30によるビームの走査と、画像データに連動した光源10の明暗により、網膜上に像が作られる。以下、マイクロレンズアレイ上をビームが走査する場合に射出瞳位置70に形成される像の変化について、NA変換素子50の例として、マイクロレンズ間のピッチが25μmのマイクロレンズアレイに、直径20μmのビームが入射するときの様子を、図7〜図10を参照して説明する。
図7は、NA変換素子50のひとつのマイクロレンズの中心と、そのマイクロレンズに入射するビームの中心とが一致している場合のシミュレーション結果を示す図である。図7に示す例では、マイクロレンズ1個にビームが収まる関係となる。したがって、射出光はマイクロレンズの屈折作用によって発散されるだけである。
図8(a)は、図7に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図8(a)において符号80Lおよび80Rで示すふたつの円は、それぞれユーザの左目の瞳孔および右目の瞳孔の位置を示す。以下、左目の瞳孔および右目の瞳孔を特に区別する場合を除いて、両者を「瞳孔80」と総称する。なお、後述する図8(a)、図10(a)、図12(a)、図14(a)、図16(a)、図18(a)、図20(a)、および図22(a)における符号80Lおよび80Rで示すふたつの円も図8(a)で示す例と同様である。
なお、図8(c)における縦軸はincoherent irradiance(非干渉性の放射照度)であり、干渉性を考慮しない単位面積あたりの光量を意味する。また図8(c)における横軸はX coordinate value(光軸に垂直な方向)の座標値を意味する。後述する図10(c)、図12(c)、図14(c)、図16(c)、図18(c)、図20(c)、および図22(c)、における縦軸および横軸も同様である。
図8(b)は、図8(a)においてユーザの瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図8(a)および図8(b)から、図8(a)ビームはガウス形状の分布を持ち、中央が明るく周辺部が暗くなっていることがわかる。
ここで、入射ビームの直径を20μmとしてシミュレーションをしたのは、ビーム径の規定を一般的な1/e二乗強度の部分の直径としたためである。すなわち、実際のビームは1/e二乗強度を用いて規定した場合の直径よりも広がるため、シミュレーション画像において、マイクロレンズアレイのレンズ径よりも大きなビームが入射されことになり、この結果、入射目標とするマイクロレンズの隣のマイクロレンズにもビームが入射して、本実施の形態における想定とは異なるシミュレーション結果となることを避けるためである。実際にはレンズのピッチを超えなければ、ビーム径を25μmに近い値に設定しても、設定した直径の外側の光量は少ないため、影響は小さく問題はない。
図7は、基準の位置として、マイクロレンズアレイの中央のレンズの中心に、走査中のビームが当たっている状態を示している。すなわち投影画面の中央の一画素を表示している。走査方向の断面を表す図7において、入射ビーム径は20μmであり、マイクロレンズの中心間隔、すなわちマイクロレンズのピッチPは25μmである。また、中間像位置40上に形成される中間像の画素ピッチGは25μmである。
図7において、中央左の太い実線と細い波線とが交互につながっている線42は、マイクロレンズアレイ上の画素の位置の目安である。線42において、太い実線と細い波線とはそれぞれマイクロレンズアレイ上の画素の位置を示す。また、図7において線42のすぐ右に記載されているかまぼこ状の波線の連なり44は、マイクロレンズアレイの一つ一つのレンズの位置の目安である。そのすぐ右の小さな凸凹は、シミュレーション画像のマイクロレンズアレイのレンズ面である。画素の位置の目安やレンズの位置の目安は、シミュレーション画像のレンズ位置に合わせてある。なお後述する図9、図11、図13、図15、図17、図19、および図21における線42およびかまぼこ状の波線の連なり44も図7における線42およびかまぼこ状の波線の連なり44と同様である。
図9は、図7に示す例と比較して、画素ピッチGの1/2=12.5μmの距離をビームが走査された状態を示すシミュレーション結果である。なお、マイクロレンズのピッチP=画素ピッチGであるため、図9はひとつのマイクロレンズの中心とその隣のマイクロレンズの中心との中間の位置に、ビームの中心が一致している場合のシミュレーション結果を示す図となっている。
図10(a)は、図9に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図10(b)は、図10(a)においてユーザの左目の瞳孔80Lおよび右目の瞳孔80Rを含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図10(a)−(b)より、NA変換素子50を出射した射出ビームが左右に分かれて広がることが分かる。また図10(a)−(b)より、ユーザの瞳孔80に有効に光が入っていないことがわかる。図示はしないが、図9に示す例と比較して、画素ピッチGのさらに1/2=12.5μmの距離をビームが走査されると、入射ビームとマイクロレンズとの位置関係は図7に示す場合と同様の状態になるためユーザの瞳孔80に均等に光が入り、ユーザは画像を観察できるようになる。
以上の現象は、ビームの走査に伴ってビームがマイクロレンズ間をまたぐときに画像が消えることを意味する。しかしながら、実施の形態に係る走査型画像表示装置100は、例えばVGA画質で1フレームが1/30秒となるようにビームを走査する。この場合、画像は30×640×480=9.216MHzで明滅することになるが、この明滅周期は肉眼では感知が困難な周期なので問題はない。また、実施の形態に係る走査型画像表示装置100においては、画素の切替時に光源10は一瞬消灯するため、特に問題とならない。
このように、NA変換素子50における周期構造のピッチを、ビームがNA変換素子50に入射するときのビーム径以上とすることで、NA変換素子50に入射するビームに回折作用を生じさせずに屈折作用のみを生じさせて発散角を拡大することできる。この結果、ビームが分かれている状態でもビームが重なることがなく、したがって干渉によるドットパターンになることを抑制できる。
以上、NA変換素子50に入射するビームに回折作用を生じさせずに、屈折作用を生じさせて発散角を拡大する原理について説明した。これにより、干渉によるドットパターンを抑制し、良好な画像を得ることができる。
(画素のピッチとマイクロレンズアレイのレンズピッチとの関係)
しかしながら、実施の形態に係る走査型画像表示装置100を上記のように構成した場合であっても、画面解像度、すなわち画素のピッチとマイクロレンズアレイのレンズピッチとの関係によっては、左右の目に均一に光が入射しない場合があり得る。最も悪い状態では、見えない画素が生じるという現象が起こりうる。以下、この状況およびその対応方法について説明する。
しかしながら、実施の形態に係る走査型画像表示装置100を上記のように構成した場合であっても、画面解像度、すなわち画素のピッチとマイクロレンズアレイのレンズピッチとの関係によっては、左右の目に均一に光が入射しない場合があり得る。最も悪い状態では、見えない画素が生じるという現象が起こりうる。以下、この状況およびその対応方法について説明する。
図11は、基準の位置として、マイクロレンズアレイの中央に位置するマイクロレンズの中心に、走査中のビームが当たっている状態のシミュレーション結果を示す図である。すなわち、図11は、投影画面の中央の一画素を表示している状態を示す図であり、ビームの走査方向の断面を表す。図11において、マイクロレンズの中心間隔すなわちマイクロレンズのピッチPは25μm、画素ピッチGは12.5μm、入射ビーム径Sは画素ピッチと同じ12.5μmである。
図12(a)は、図11に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図12(b)は、図12(a)においてユーザの瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図12(a)−(b)より、基準位置ではユーザの両方の瞳孔80に均等に充分な光量が入ることがわかる。
図13は、基準位置からマイクロレンズのピッチPの1/4、すなわち6.25μm光源10側から見て左に向かってビームが走査されたときのシミュレーション結果を示す図である。図13に示す例では、マイクロレンズの半分にビームが入っているので、レンズ射出後は、入射した側と反対の方向にビームが広がることを示している。
図14(a)は、図13に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図14(b)は、図14(a)においてユーザの瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図14(a)−(b)は、ユーザの右側の瞳孔80Rにしか光が入射しないことを示している。
図15は、図13に示す例と比較して、さらにレンズ1/4ピッチ、トータルで12.5μm=1画素ピッチの距離を左に向かって走査したときのシミュレーション結果を示す図である。図15に示す例は、マイクロレンズの境界部分にビームの中心が位置するため、射出ビームは左右に分かれて広がっていく様子を示している。
図16(a)は、図15に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図16(b)は、図16(a)においてユーザの両方の瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図16(a)−(b)は、ユーザの左右どちらの瞳孔80にも光が入射しないことを示している。これは基準位置の隣の画素はユーザから見えないことを示している。すなわち、上述したユーザから見えない画素が生じるという現象である。
続いて、画素ピッチGがもう少し大きい場合について説明する。具体的には、マイクロレンズのピッチPは図11から図16に示す例と同じ25μmであるが、画素ピッチGは18.75μm、入射ビーム径Sは画素ピッチと同じ18.75μmの場合である。
図17は、基準の位置として、マイクロレンズアレイの中央に位置するマイクロレンズの中心に、走査中のビームが当たっている状態のシミュレーション結果を示す図である。また図18(a)は、図17に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図18(b)は、図18(a)においてユーザの瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図18(a)−(b)は、図11および図12に示す例と同様に、ユーザの瞳孔80に均等に光が入っていることを示している。
図19は、図17に示す基準位置から1画素ピッチ分の、すなわち18.75μm光源10側から見て左に向かってビームが走査されたときのシミュレーション結果を示す図である。また図20(a)は、図18に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図20(b)は、図20(a)においてユーザの両方の瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図20(a)−(b)は、ビームの中心がマイクロレンズレンズの中心とずれているので、射出光がかたより、ユーザの右の瞳孔80Rにはあまり光が入っていないことを示している。
さらに図21は、図17に示す基準位置から2画素ピッチ分の37.5μm光源10側から見て左に向かってビームが走査されたときのシミュレーション結果を示す図である。図21に示す例は、マイクロレンズの境界部分にビームの中心が入っているので、射出ビームは左右に分かれて広がっていくことを示している。
図22(a)は、図21に示す場合において、射出瞳位置70における像の明るさの光量分布のシミュレーション結果を示す図である。図22(b)は、図22(a)においてユーザの瞳孔80を含む直線における像の光量分布を示すグラフである。図22(a)−(b)は、ユーザの瞳孔80のいずれにも光が入っていないことを示している。これはユーザが観察できない画素が存在することを示している。
以上、図11から図22を参照して、ユーザの瞳孔80に均一に画像光が入射しない場合における画素のピッチGとマイクロレンズアレイのレンズピッチPとの関係を例示した。このように、画素のピッチGとマイクロレンズアレイのレンズピッチPとに差異があると、ビームの走査に伴って画素の中心とマイクロレンズアレイとの相対的な位置関係がずれることにより、画素の位置によってはユーザの瞳孔80に入射する光量が変動する場合がある。
この問題に対し、中間像位置40上に形成される中間像の画素ピッチGを、マイクロレンズアレイのレンズピッチPのn倍(nは1以上の整数)とし、かつ画素ピッチとレンズピッチの中心が、概ね一致するように構成する事により、画素の位置に関わらず画素の中心とマイクロレンズアレイとの相対的な位置関係が保たれることを本願の発明者は見いだした。
図23は、画像の画素ピッチGとマイクロレンズアレイのレンズピッチPとの関係を説明するための図である。図23において、符号90で示す直線は、説明の便宜のために設定したx軸である。図23において、x軸上の原点Oから座標Pの間に、レンズピッチがPであるマイクロレンズが置かれているとする。同様に、x軸上の座標、−P〜0、P〜2×P、2×P〜3×Pのように、Pを周期として座標mP(mは整数)までマイクロレンズが設置されている。また、図中符号91で示す破線91は、マイクロレンズの中心の位置を示す。
図23において、符号92で示す直線92は直線90と平行であり、中間像の画素ピッチG1がマイクロレンズアレイのレンズピッチPの半分であるP/2の長さである画素が並んでいる状態を示す図である。図23に示す例では、x軸上の原点Oから座標Pの間に存在するマイクロレンズの中心に画素の中心が来るように、すなわち座標P/4〜3×P/4の間に画素が設置されている。同様に−P/4〜+P/4、P/4〜3×P/4、3×P/4〜5×P/4、のように、P/2を周期として画素が並んでいる。
図23に示す例では、P/4〜3×P/4の間にある画素の中心は、隣り合うマイクロレンズの境界の位置と一致する。この場合、図15および図16を参照して上述したとおり、ユーザの両目の瞳孔80にはこの画素に由来する光は到達せず、ユーザはこの画素を観察することができない。図23に符号93で示す白丸93は、画素の中心が隣り合うマイクロレンズの境界の位置と一致している画素の中心点を示している。直線92に示すようにレンズピッチPの半分であるP/2の長さである画素を並べる場合、1画素おきに画素の中心がマイクロレンズの中心の位置と一致することになり、解像度が事実上半分に落ちてしまうことを示している。
図23において、符号94で示す直線94は直線90と平行であり、中間像の画素ピッチG2がマイクロレンズアレイのレンズピッチPの1.5倍である3P/2の長さである画素が並んでいる状態を示す図である。図23に示す例では、原点Oから座標Pの間に存在するマイクロアレイレンズの中心と一致するように、すなわち座標−P/4〜+5P/4の間に画素が設置されている。以後、5×P/4〜11×P/4、11×P/4〜17×P/4、のように、3×P/2を周期として画素が並んでいる。
図23に符号95で示す白丸95も、画素の中心が隣り合うマイクロレンズの境界の位置と一致している画素の中心点を示している。図23に示す例では、11×P/4〜17×P/4の間にある画素の中心は、隣り合うマイクロレンズの境界の位置と一致する。この場合、図15および図16を参照して上述したとおり、ユーザの両目の瞳孔80にはこの画素に由来する光は到達せず、ユーザはこの画素を観察することができない。
直線90上に示すマイクロレンズのレンズの中心の座標は、mを整数として(0.5+m)Pで表せる。画素ピッチがGである画素を、原点Oから座標Pの間に存在するマイクロレンズの中心に画素の中心が来るようにして並べた場合、画素の中心の座標はnを整数として0.5×P+n×Gとなる。いま、画素ピッチGがレンズピッチPの整数倍の場合、lを1以上の整数として、G=l×Pと表せる。このとき、画素の中心の座標は、0.5×P+n×G=0.5×P+n×l×P=(0.5+n×l)Pとなる。nおよびlは整数であるため、n×lも整数である。したがって、n×l=mとおけば、画素の中心の座標は(0.5+m)Pとなり、マイクロレンズのレンズの中心の座標と一致する。
図23に示す例において、符号96で示す直線96は直線90と平行であり、中間像の画素ピッチG3がマイクロレンズアレイのレンズピッチPと同じPの長さ、すなわち上記においてl=1である画素が並んでいる状態を示す図である。直線96上に示す画素の例では、画素の中心はマイクロレンズの中心と常に一致するため、ユーザが見えなくなる画素は存在しない。また、符号97で示す直線97も直線90と平行であり、中間像の画素ピッチG4がマイクロレンズアレイのレンズピッチPの2倍の長さ、すなわち上記においてl=2である画素が並んでいる状態を示す図である。直線97上に示す画素の例では、画素の中心はマイクロレンズの中心と常に一致するため、ユーザが見えなくなる画素は存在しない。
以上説明したように、実施の形態に係る走査型の画像表示装置によれば、NA変換素子としてマイクロレンズアレイを用い、レンズのピッチよりも入射ビーム径を小さく設定した上で、マイクロレンズアレイのレンズピッチと画素ピッチを同じに設定し、レンズの中心と画素の中心を合わせることにより、射出ビームは観測面で両目の回りに均等に広がり、画素が見えなくなることや、片目でしか画素が見えない状態になることはなく、安定した画像を観察することができる。すなわち、マイクロレンズアレイのレンズ間のピッチをP、走査型の画像表示装置で表示する画像の画素ピッチをGとすると、G=n×P(nは1以上の整数)とし、かつ画素ピッチとレンズピッチの中心が、概ね一致するように構成する事により、画素が見えなくなることや、片目でしか画素が見えない状態になる問題を解決できる。
また、以上の説明におけるビーム径とは、NA変換素子に入射するビームを、一般的にLD光源から射出されるガウス分布の光量分布を持つものとし、その場合の一般的なビーム径を表すe二乗分の一強度の直径を想定して説明した。ビーム径をe二乗分の一強度の直径で規定した場合、その外側の光量は13.5%となるが、ビーム径はこれに限るものではなく、一様分布に近いものの場合は外径で規定してもよいし、エアリーディスク光量分布の場合はエアリーディスク径で規定してもよい。しかし、ガウス分布の光量分布を持つ光源に対し、50%強度のいわゆる半値全幅(Full Width at Half Maximum;FWHM)で規定すると、そのビーム径の外側にも50%の光量が残るので、この部分が隣のレンズに入射し、中央のレンズの出射光と干渉を起こしてドットパターンができてしまうので、用いるべきでない。
以上、走査型画像表示装置100のNA変換素子50周辺の構成に的を絞って本発明に係る実施の形態を説明したが、これを搭載する走査型画像表示装置100は、画像信号に同期して走査ミラーを駆動する回路、同じく同期して光源10を駆動する回路、カラー画像の場合には複数の波長の光源10、それらの光源10を混合して概ね平行ビームにする光学系などを備えるが、これらの部分は公知の技術を用いることができ、本発明の要旨ではないので、詳細な説明を省いた。
以上説明したように、実施の形態に係る走査型画像表示装置100によれば、NA変換素子50に屈折型の素子を用い、素子のピッチよりも入射ビーム径を小さく設定することにより、回折作用を利用せず屈折作用だけにより出射ビームの発散角を広げる。このように構成することにより、ビーム同士が重ならず、光源に干渉性の強いものを用いた場合でも、干渉を防ぐことができ、視聴位置において安定した画像を視聴することができる。
さらに、RGB光源を使ったカラー画像の場合、波長による回折角は異なるので、ビームの間隔も異なり、例えば白色の一様画面を出そうとしても、RGBに色割れすることが起こりうることも防ぐことができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能である。例えば、マイクロアレイのレンズ一つ一つにフレネルレンズや、レンズ効果を持つ回折型の光学素子を用いて、そのフレネルレンズや、レンズ効果を持つ回折型の光学素子一つ一つの間隔よりも、入射ビーム径を小さく設定すれば、本実施の形態と同じ効果を得られる。そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
1 マイクロレンズ、 10 光源、 20 コリメータレンズ、 30 スキャンミラー、 40 中間像位置、 50 NA変換素子、 60 結像光学系、 70 射出瞳位置、 80 瞳孔、 90 直線、 100 走査型画像表示装置。
Claims (4)
- 干渉性を持つ光を照射する光源が照射する光をビームに変換する光学系と、
前記光学系が変換したビームを中間像位置上に走査させて中間像を生じさせる走査光学系と、
前記中間像が生じる位置において前記ビームの発散角を拡大するNA(Numerical Aperture)変換素子とを備え、
前記NA変換素子は周期構造を持っており、当該NA変換素子における周期構造の繰り返し周期の長さは、前記光学系が変換したビームが前記NA変換素子に入射するときのビーム径以上であることを特徴とする走査型画像表示装置。 - 中間像位置上に生じさせる中間像の画素のピッチは、前記NA変換素子の周期構造の繰り返し周期の長さのn倍(nは1以上の整数)であり、
前記中間像の画素の中心と、前記NA変換素子の周期構造の繰り返し周期の中心とが一致することを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。 - 前記NA変換素子はマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1または2に記載の走査型画像表示装置。
- 干渉性を持つ光をビームに変換するステップと、
変換したビームを中間像位置上に走査させて中間像を生じさせるステップと、
前記中間像が生じる位置において、NA(Numerical Aperture)変換素子を用いて前記ビームの発散角を拡大するステップとを含み、
前記NA変換素子は周期構造を持っており、該NA変換素子における周期構造の繰り返し周期の長さは、変換したビームが前記NA変換素子に入射するときのビーム径以上であることを特徴とする射出瞳拡大方法。
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