JP2014214285A - ポリプロピレン系難燃樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を含有するポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、有機系難燃剤(B)2〜40重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを射出成形してなる便器部品。
【選択図】なし
Description
本明細書において、「便器部品」とは、便座、便蓋、温水を吐出し局部を洗浄する洗浄ノズル、温水洗浄装置の本体ケース、水タンク等の便器周り一般に用いられる部品を言う。
しかし、一般的なポリプロピレン系樹脂では、ABS樹脂のような剛性や光沢等の物性、手触り肌触り感、耐傷付き特性、尿便や洗剤に起因する変色を抑制する耐変色性等において、充分満足できるものでなく、それらの改良が強く望まれていた。
例えば、上記特許文献1では、ポリプロピレン樹脂100重量部に、ヒンダードアミン系安定剤0.01〜1重量部および芳香族燐系酸化防止剤0.01〜1重量部を配合することにより、尿便、洗剤等による変色が抑制され、手触り肌触り感に優れ、剛性、耐熱老化性も良好で、且つ耐洗剤性に優れるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2では、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、ヒドロキシルアミン系化合物0.01〜1重量部およびヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1重量部を配合することにより、尿による成形体の変色が無く、加工時の焼けが少ないポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4では、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料0.2〜10重量部、分子量1500以上のヒンダードアミン系化合物0.02〜2重量部を有し、かつフェノール系酸化防止剤0.02重量部以下であることを特徴とすることにより、耐尿変色性、耐熱性及び耐候性に優れ、便座シートや便蓋等の材料に適した耐尿変色性樹脂組成物が開示されている。
ところが、難燃剤の分解ガス等の要因により、シルバーストリーク発生などの成形不良の他、焼けによる成形品表面の外観不良発生などの問題点があり、これらの難燃性ポリプロピレン系樹脂の問題点を解決する試みとして、様々な手法が提案されている(例えば、特許文献6〜9参照。)。
また、特許文献7では、特定の高結晶性プロピレン系重合体I(A)100重量部に対して、MFRが1〜20g/10分、Q値が7以上、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比(Mz/Mw)が5以上であるプロピレン系重合体II(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部、シリコンオイル(E)を0.01〜0.5重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適なポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献8では、特定の結晶性ポリプロピレン(A)100重量部に対して、MFRが0.01〜100g/10分、Q値が3.5〜10.5、分子量(M)が200万以上の成分の比率が0.4重量%以上10重量%未満、昇温溶出分別(TREF)において40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下、アイソタクチックトライアッド分率(mm)が95%以上、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が6.0以上であるプロピレン系重合体(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適な結晶性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
またさらに、特許文献9では、特定の結晶性ポリプロピレン(A)100重量部に対して、25℃でp−キシレンに不溶となる特定の成分(α)と25℃でp−キシレンに溶解する特定の成分(β)とから構成され、且つ、特定の物性を有するプロピレン系重合体(B)を1〜25重量部、有機系難燃剤(C)を3〜50重量部、アンチモン化合物(D)を1〜40重量部含有することにより、シルバーストリーク、焼け等の発生が抑えられ表面外観に優れた成形品が得られ、便座、便蓋などの用途に好適な結晶性ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、これらの従来技術による配合処方では、有機系難燃剤、例えば、ハロゲン系難燃剤を用いた際には、性能的に未だ十分でなく、例えば、エルカ酸アマイドのような脂肪酸アミド系滑剤とハロゲン系(臭素系)難燃剤との併用により、激しく褐色の変色を生じる場合があり、そのため、変色の不具合を起こさず、尿便、洗剤等による汚れ・劣化が抑制され、手触り肌触り感に優れ、また、耐傷付き特性を付与したポリプロピレン系樹脂組成物が強く望まれている。
条件(A−1)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、下記の(X−i)〜(X−iv)の特性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を含有する。
特性(X−i):メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30.0g/10分であること。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0、且つMz/Mwが2.5〜10.0であること。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)は、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
のいずれかを満たすこと。
特性(X−iv):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満であること。
条件(A−2)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)及び下記の(Y−i)〜(Y−ii)の特性を有するポリプロピレン樹脂(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂を含有する。
特性(Y−i):プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体及びプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン樹脂であり、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)に該当しない。
特性(Y−ii):ポリプロピレン樹脂(Y)は、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1.0〜200g/10分である。
条件(A−3)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)を含有し、その割合が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)10〜99重量%とポリプロピレン樹脂(Y)1〜90重量%である(但し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計を100重量%とする)。
特性(X−v):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上であること。
特性(X−vi):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’は、0.30以上1.00未満であること。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを射出成形してなる便器部品について、項目毎に詳細に説明する。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、特定の長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を含有し(条件(A−1))、更に特定のポリプロピレン樹脂(Y)との関係において条件(A−2)を満足している。好ましくは、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)とを含有し、その割合が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)10〜99重量%とポリプロピレン樹脂(Y)1〜90重量%である(但し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計を100重量%とする)(条件(A−3))。
1)長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)(成分(X))
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、以下の(X−i)〜(X−iv)の特性を有することを特徴とする。
特性(X−i):メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30.0g/10分であること。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0、且つMz/Mwが2.5〜10.0であること。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)は、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
のいずれかを満たすこと。
特性(X−iv):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満であること。
以下、本発明で規定する上記各特性要件、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の製造方法などについて、具体的に述べる。
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは0.3〜25.0g/10分、さらに好ましくは0.5〜20.0g/10分である。成分(X)のMFRをこの様な範囲とすることによって、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物が適切な流動性を保って良好な成形性を示すので、適正な成形条件で便器部品を製造することが可能となる。即ち、成分(X)のMFRがこの範囲を下回るものは、流動性不足となり、各種の成形に対して、例えば押出機の負荷が高すぎるなどの製造上の問題が生じる。一方、成分(X)のMFRがこの範囲を上回るものは、機械物性における曲げ強度が損なわれる場合がある。
なお、MFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したもので、単位はg/10分である。
また、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、分子量分布が比較的広いことが必要であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が3.0以上10.0以下であることが必要である。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の分子量分布Mw/Mnは、その好ましい範囲としては3.5〜8.0、更に好ましくは4.1〜6.0の範囲である。
さらに、分子量分布の広さをより顕著に表すパラメータとして、Mz/Mw(ここで、MzはZ平均分子量である)が2.5以上10.0以下であることが必要である。Mz/Mwの好ましい範囲は2.8〜8.0、更に好ましくは3.0〜6.0の範囲である。
分子量分布の広いものほど成形加工性が向上するが、Mw/MnおよびMz/Mwがこの範囲にあるものは、成形加工性に特に優れるものである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、同等の装置や検出器、カラム等を使用しても、GPCによる分子量分布の測定は可能である。
さらに、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、以下の条件(1)を満たす必要がある。
・条件(1)
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7
又は
MT≧15
のいずれかを満たす。
本明細書の実施例では、MTは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、温度:230℃の条件で測定したときの溶融張力を用い、単位はグラムであるが、同等の装置を用いて、測定することもできる。ただし、成分(X)のMTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。また、MFRの測定条件、単位は前述の通りである。
このように、MTをMFRとの関係式で規定する手法は、当業者にとって通常の手法であって、例えば、特開2003−25425号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
log(MS)>−0.61×log(MFR)+0.82 (230℃)
(ここでMSは、MTと同義である。)
また、特開2003−64193号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
11.32×MFR−0.7854≦MT (230℃)
さらに、特開2003−94504号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
MT≧7.52×MFR−0.576
(MTは190℃、MFRは230℃で測定した値である。)
・・条件(1)’
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9
又は
MT≧15
のいずれかを満たす。
・・条件(1)”
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1
又は
MT≧15
のいずれかを満たす。
MTの上限値については、これを特に設ける必要は無いが、MTが40gを超えるような場合には、上記測定手法では引き取り速度が著しく遅くなり、測定が困難となる。このような場合は、樹脂の延展性も悪化しているものと考えられるため、好ましくは40g以下、さらに好ましくは35g以下、より好ましくは30g以下である。
本発明で用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高い方が、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品、特に便器部品となったときに、ベタツキやブリードアウトの原因となる低結晶性成分が少なくなると共に、高い耐傷付き性や曲げ強度を保つことができるので、好ましい。この低結晶性成分は、25℃キシレン可溶成分量(CXS)によって評価され、それが成分(X)全量に対して、5.0重量%未満であることが必要であり、好ましくは3.0重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以下あり、さらに好ましくは0.5重量%以下である。下限については、特に制限されないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上である。CXSをこの様な範囲とすることによって、前記の通り、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品の耐傷付き性や曲げ強度を高くすることができると同時に、ベタツキやブリードアウトを抑えることが可能となる。
なお、CXSの測定法の詳細は、以下の通りである。
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し室温キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
なお、特性(X−iv)並びにこれから記載する(X−v)及び(X−vi)は、何れも立体規則性に関連する特性であり、特性(X−iv)に加えて、特性(X−v)及び(X−vi)の要件を同時に満たしていることが特に好ましい。
本発明に用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さは、13C−NMRによって評価することができ、13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95.0%以上の立体規則性を有するものが好ましい。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であるの上限は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度に制御されていることを意味する。mm分率を以下に示す様な範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品の耐傷付き性や曲げ強度を高くすることができる。即ち、mm分率が以下に示す値より小さいと、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品の耐傷付き性や曲げ強度が低下するなど、機械的物性が低下する傾向にある。
従って、mm分率は、95.0%以上が好ましく、より好ましくは96.0%以上であり、さらに好ましくは97.0%以上であり、前記の通り上限は100%である。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2、−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の解析は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,8卷,687頁(1975年)やPolymer,30巻,1350頁(1989年)を参考にして行う。
なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が分岐を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]lin によって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
本発明で使用する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、g’が0.30以上1.00未満であることが好ましく、より好ましくは0.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは0.78以上0.95以下である。
「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering vol.2」(John Wiley & Sons 1985 p.485)によると、櫛型ポリマーのg’値は、以下の式で表されている。
また、g’が上記の範囲にある櫛型鎖に近い構造を有する分岐状ポリマーにおいては、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さく、工業的に成形体を生産する工程で発生する、例えばシート、フィルム成形時に端部をカットすることで生じる端材であるとか、射出成形のランナー等の部材を、リサイクル材として再度成形に供する際に、物性や成形性の低下が小さくなることになり、好ましい。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technoogy社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
なお、種々の装置やカラム等は、他の同等のものを用いることも可能である。
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い同じ分子量の線状ポリマーの極限粘度([η]lin)に対する分岐ポリマーの極限粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=[η]br/[η]lin)が1より小さい値になる場合には、分岐が導入されていることを意味する。ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
本発明において、特性(X−iii)がlog(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7を満たし、かつMabsが100万において、g’<1を満たすポリプロピレン樹脂は、長鎖分岐構造を有するといえる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、上記した(X−i)〜(X−iv)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布の範囲の全ての条件を満足し、好ましくは分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の製造が可能である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで、分子量分布を広くでき、本発明に用いる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)に必要な(X−i)〜(X−iii)の特性を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を製造する好ましい方法として、プロピレン重合触媒に下記の触媒成分(A)、(B)および(C)を用いるプロピレン系重合体の製造方法が挙げられる。
(A):下記一般式(a1)で表される化合物である成分[A−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(a2)で表される化合物である成分[A−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期表第4族の遷移金属化合物。
成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
(B):イオン交換性層状珪酸塩
(C):有機アルミニウム化合物
(1)触媒成分(A)
(i)成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の炭素数6〜16の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることが出来る。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウムジクロライド、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
また、特に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−iプロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
また、上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
上記一般式(a2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
ただし、以下は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明は、これら化合物に限定して解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。また、中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も、本明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ポリプロピレン樹脂(X)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(B)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
本発明に係る触媒成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属の陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、第2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンとCl、Br、I、F、PO4、SO4、NO3、CO3、C2O4、ClO4、OOCCH3、CH3COCHCOCH3、OCl2、O(NO3)2、O(ClO4)2、O(SO4)、OH、O2Cl2、OCl3、OOCH、OOCCH2CH3、C2H4O4およびC5H5O7から成る群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。
さらに、Zn(OOCCH3)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、ZnCO3、Zn(NO3)2、Zn(ClO4)2、Zn3(PO4)2、ZnSO4、ZnF2、ZnCl2、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、Al2(SO4)3、Al2(C2O4)3、Al(CH3COCHCOCH3)3、Al(NO3)3、AlPO4、GeCl4、GeBr4、GeI4等が挙げられる。
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2などが例示される。
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(B)として使用するのが好ましい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 qZ3−q)p で示される化合物が好適である。
本発明では、この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることは言うまでもない。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムおよびアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
触媒は、上記の各触媒成分(A)〜(C)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(C)を使用する場合、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(A)と、あるいは触媒成分(B)と、または触媒成分(A)および触媒成分(B)の両方に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させるのと同時に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させた後に触媒成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(C)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[A−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
より高い歪硬化のプロピレン系重合体を製造するために、0.30以上が必要であり、好ましくは0.40以上であり、更に好ましくは0.5以上である。また、上限に関しては0.99以下であり、高い触媒活性で効率的にポリプロピレン樹脂(X)を得るためには、好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に触媒成分(C)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
重合様式は、前記触媒成分(A)、触媒成分(B)および触媒成分(C)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
そこで、本発明に用いるポリプロピレン樹脂(X)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレンおよび/又は1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、更に好ましくは7.0モル%以下である。
上記の手法にて製造される、本発明で用いられる長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)の更なる付加的特徴として、歪み速度0.1s−1での伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax(0.1))が6.0以上であることが挙げられる。
歪硬化度(λmax(0.1))は、溶融時粘度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、成形体表層において結晶が配向することにより結晶の層が厚くなり表面硬度が向上する。それにより耐傷つき性や曲げ強度を付与する事ができる。この歪硬化度は、6.0以上であると、耐傷つき性や曲げ強度を発現できるので好ましく、更に好ましくは8.0以上である。一方、この歪硬化度が高すぎると、成形性に悪影響を及ぼす場合があるので、30以下が好ましく、20以下が更に好ましい。歪硬化度をこの様な範囲とすると、耐傷つき性や曲げ強度を付与することができ、かつ、良好な成形性を保つことが可能となるので好ましい。
・λmax(0.1)算出方法
温度180℃、歪み速度=0.1s−1の場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。
具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、種々の平均法を利用する。たとえば隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法等が挙げられる。
伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ、充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。本明細書の実施例で具体的に使用した装置等は、後述の実施例項に記載の通りである。
より具体的には、示差走査熱量測定(DSC)によって得られた融点が145℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましい。融点が145℃より高いと、製品の耐熱性の観点から好ましいが、ポリプロピレン樹脂(X)の融点の上限は、通常170℃である。
なお、融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。本明細書の実施例で具体的に使用した装置等は、後述の実施例項に記載の通りである。
以下に、本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(Y)の詳細について説明する。
2)−1.特性(Y−i):ポリプロピレン樹脂(Y)について
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(Y)は、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体及びプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン樹脂であり、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)に該当しないものである。(以下、本明細書においては、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とプロピレン−α−オレフィンランダムランダム共重合体を単に「プロピレン−α−オレフィン共重合体」と称することがある。)
好ましく用いられるプロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンとプロピレンを除く炭素数2〜8のα−オレフィンをコモノマーとする共重合体、プロピレン含量が70〜99重量%(すなわちコモノマー含量が0.01〜30重量%)であり、更に好ましくはプロピレン含量が90重量%以上のプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体である。また、α−オレフィンの異なるランダム共重合体またはブロック共重合体の混合物であってもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的に、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ペンテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体のような二元共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体のような三元共重合体などが挙げられ、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体などが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン単量体の含有量は、通常は、0.01〜30重量%程度、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%程度含むことができる。
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(Y)は、JIS K7210に準拠したメルトフローレート(以下、MFRとも記す。)[測定温度230℃、荷重2.16kg(21.18N)]について、1.0〜200g/10分であり、5.0〜150g/10分であるのが好ましく、10〜100g/10分がより好ましい。MFRをこのような範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品において、良好な成形性を保つと共に、耐傷つき性や曲げ強度を発現することが可能となる。即ち、MFRが1g/10分を下回ると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形する時の負荷が増大し、成形性が悪化すると共に、成形体の変色等を生じ外観が悪化するおそれがあり、逆に、200g/10分を上回ると、耐傷つき性や曲げ強度を損なうおそれがある。
なお、上記アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、13C−NMR(核磁気共鳴法)を用いて測定される値であり、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をもってアイソタクチックペンタッド単位を測定し、例えば、日本電子社製FT−NMRの270MHzの装置が用いられる。
また、ポリプロピレン樹脂(Y)として使用可能なポリプロピレン樹脂は、種々の製品が多くの会社から市販されており、例えば日本ポリプロ社製のノバテックシリーズ等を挙げることができる。これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することも可能である。
条件(A−1)
ポリプロピレン系樹脂(A)は長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を含有することを必須とする。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品において必須成分として使用することにより、適切な流動性を保って良好な成形性を示すと共に、更に適切な溶融張力を有することとなるので良好な耐傷つき性や曲げ強度を有する効果が得られる。
更にポリプロピレン系樹脂(A)は、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂を含有することを特徴とする。特に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品において、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が有する特性を更に高めたり、新たに別の特徴を付与しようとする場合には、ポリプロピレン樹脂(Y)の使用が効果的である。
本発明においてポリプロピレン樹脂(Y)を使用する場合、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計100重量%に対して、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)10〜99重量%とポリプロピレン樹脂(Y)1〜90重量%とするのが好ましく、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)20〜80重量%とポリプロピレン樹脂(Y)20〜80重量%であるのが更に好ましい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は30〜70重量%がより好ましく、30〜70重量%が特に好ましい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との配合量をこの様な範囲とすることにより、耐傷つき性や曲げ強度を付与することが可能となり、さらに良好な成形加工性も保つことが可能となる。
本発明で用いられる有機系難燃剤(B)は、特に制限されず、ハロゲン系、リン系、グアニジン系などの種々の有機系難燃剤を使用することができるが、ハロゲン系難燃剤が好ましく、例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物、ハロゲン化ビスフェノール系化合物、ハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物、ハロゲン化フタルイミド系化合物などの有機ハロゲン化芳香族化合物が好ましく、とりわけハロゲン化ビスフェノール−ビス(アルキルエーテル)系化合物がより好ましい。
これらのハロゲン系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤は、難燃効果が高く、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造や成形に際して、熱履歴を受けても分解することが少ないので、好ましい。
これらのハロゲン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物とハロゲン化ビスフェノール系化合物を併用してもよい。
また、ハロゲン系難燃剤と共に、リン系、窒素化合物などのハロゲン系難燃剤に該当しない他の有機系難燃剤を使用することもできる。
さらに、ハロゲン系難燃剤に替えて、リン系、窒素化合物などの他の有機系難燃剤を使用することもできる。
ハロゲン系難燃剤とこれらリン系、窒素化合物などの各種の有機系難燃剤を併用する場合、有機系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物とハロゲン化ビスフェノール系化合物に、有機ハロゲン系難燃剤と有機リン系難燃剤を併用することもできる。
また、ハロゲン系難燃剤に替えて、リン系、窒素化合物などの他の有機系難燃剤を使用する場合、有機系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、所望により、用いられる難燃助剤(C)は、特に制限されず、種々の化合物を使用することができるが、中でも、アンチモン化合物が好ましい。アンチモン化合物は、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤と共に、ポリプロピレン系樹脂(A)に配合されることにより、難燃効果を増すために用いられる。
具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモンなどのハロゲン化アンチモン、三硫化アンチモン、五硫化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、酒石酸アンチモン等が代表的に挙げられる。
なお、本発明において、アンチモン化合物には、金属アンチモンが含まれるものとする。本発明で用いるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモンが好ましい。
また、これらの難燃助剤(C)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、難燃助剤(C)は、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤との組み合わせにおいて難燃効果を奏するものであり、ハロゲン系難燃剤の重量に対して、好ましくは30〜60重量%の範囲で使用される。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、用いられる成分(D)は、(i)ポリオレフィン系ワックス、(ii)アルコール類、(iii)カルボン酸類及び(iv)エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物である。
成分(D)は、融点が100℃以下であり、好ましくは、90℃以下である。
また、成分(D)は、HLB値が5以下のものである。HLB値が低いほど親油性が高く、撥水性に優れるので、耐汚染性が期待できる。そのため、HLB値の下限は、特に無く、実用としては0を超えるものであれば、好ましく使用することができる。
脂肪酸エステルの脂肪酸としては、オレイン酸(不飽和C18)、ステアリン酸(C18)、パルミチン酸(C18)、ミリスチン酸(C14)、ラウリン酸(C12)、エルカ酸(不飽和C22)、ベヘン酸(C22)など、分子量として26〜300程度の飽和または不飽和脂肪酸が使用可能であり、好ましくはC12以上の高級脂肪酸である。
また、脂肪酸エステルのアルコールとしては、プロピレングリコール(2価)などのアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール(2価)、グリセリン(3価)、トリメチロールプロパン(3価)、ソルビタン(4価)(またはソルビトール)、ペンタエリスリトール(4価)などが挙げられる。
また、脂肪酸エステルは、前記したように、HLB値が5以下のものが好ましい。HLB値が低いほど親油性が高く、撥水性に優れるので、耐汚染性が期待できる。そのため、HLB値の下限は、特に無く、実用としては0を超えるものであれば、好ましく使用することができる。脂肪酸エステル系滑剤(D)の分子量やHLB値が上記範囲であると、後述する滑剤機能、耐汚染性、耐変色性や成形体表面へのブリード効果も良好であり、好ましい。
また、これらの脂肪酸エステルは、単独又は2種以上の混合物として用いることができ、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸エステル以外の滑剤を併用することもできる。
しかしながら、本発明においては、成分(D)は、かかる滑剤機能に加えて、耐汚染性、耐傷つき性、曲げ強度、耐変色性や焼け防止効果にも寄与しており、むしろ本発明においては、耐汚染性、耐傷つき性、曲げ強度、耐変色性や焼け防止効果が一層重要である。即ち、これらの成分は、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形品において、徐々に成形品表面にブリードし、該表面に薄い皮膜を形成する。そのため、成形品表面に人が素手等で直接触れることなどを防止し、もって耐汚染性、耐変色性や焼け防止効果においても有効に作用するものである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、通常、ポリプロピレン系樹脂に用いられる任意成分である添加剤(E)を、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜配合することができる。
添加剤(E)としては、例えば、造核剤、分子量調節剤、発泡剤、顔料、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、金属不活性化剤、安定剤、抗菌剤、無機充填剤、ゴム状成分等を挙げることができる。
上記無機充填剤及びゴム状成分を単独又は併用して添加することにより、例えば、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、無機充填剤については1〜250重量部、好ましくは5〜200重量部の範囲で、ゴム状成分については1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部の範囲で添加することにより、得られる便器部品用に好適なポリプロピレン系樹脂脂組成物に剛性、重質感及び耐衝撃性を付与することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)のパウダーまたはペレットに、直接、所定量の有機系難燃剤(B)、および所望により成分(D)、難燃助剤(C)、さらに必要に応じて用いる添加剤(E)を加える方法、ポリプロピレン系樹脂のパウダー、有機系難燃剤(B)であるハロゲン系難燃剤、難燃助剤(C)および成分(D)、さらに必要に応じて用いる添加剤(E)を含有するマスターバッチをあらかじめ調製しておき、該マスターバッチを、ポリプロピレン系樹脂のペレットに、加える方法等を挙げることができる。
混合には、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダーなどの公知の方法が適用できる。溶融混練は、例えば、溶融押出機、バンバリーミキサーなどを用い、ポリプロピレン系樹脂(A)の融点以上の温度で溶融混練する方法であれば、特に限定されない。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、更に好ましくは1〜30g/10分、より好ましくは1.5〜25g/10分、特に好ましくは2〜20g/10分の範囲である。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)をこのような範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は良好な成形性を保つこととなり、特に射出成形を用いた場合にこの特性が好ましく発揮される。なお、このMFRは、JIS K6921−2の「プラスチック−ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準拠して、試験条件:230℃、荷重2.16kgにおいて測定した値である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られるポリプロピレン系樹脂成形体は、従来製品に比較して、表面外観に優れ、成形時の焼け不良発生による不良率低減が図られ、かつそれ自体充分な難燃性を有している。
なお、前記射出成形には、ガスアシスト射出成形法、二層(2色)射出成形法、サンドイッチ射出成形法等も含まれる。
(1)試験片の成形
後述する方法によって得られたペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(東芝社製IS100)にてシート試験片(120×120×3mmt)を樹脂温度200℃、金型冷却温度40℃の条件にて成形した。
JIS K6921−2の「プラスチック−ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準拠して、メルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kg)を測定した。単位はg/10分である。
射出成形機[東芝社製IS100]にてシリンダー温度200〜230℃、金型温度40℃でUL94−V規格に従い難燃性評価用試験片を成形し評価した。(厚み1.5mmt又は3.0mmt)なお判定がUL94−V規格を満たさない場合、「NG」と示した。
以下の手順で防汚性を評価した。
(i)蒸留水140mlに汚れ成分として市販のインスタントコーヒーを0.2g溶かし、試験片上に15μl滴下する。
(ii)40℃で60分乾燥させる。
(iii)乾式ロールペーパーで5回擦り、表面状態を観察する。
(判定基準)
○:汚れが全て拭き取れる。
△:汚れが部分的に拭き取れる。
×:汚れが拭き取れない。
JIS K6768−1999に準じ、以下の手順で撥水性を評価した。
(i)試験片上に2μlの蒸留水を滴下する。
(ii)1分間放置する。
(iii)液面の角度を測定した。
液面の角度が大きい程、撥水性が良好であると、判断される。
以下の手順で耐傷付き性を評価した。
(i)「ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT,INC」製を用い、5finger傷付き試験を実施した。
(ii)試験荷重0.6N、2N、3N、4.5N、6N、7N、8.5N、10Nで実施し、その後の表面観察で白化が認められない最大の荷重について、読み取り評価した。
(判定基準)
1点:全ての荷重で白化が観察された
2点:0.6N、2N及び3Nの荷重で白化が確認されなかった
3点:0.6N、2N、3N、4.5N及び6Nの荷重で白化が確認されなかった
4点:0.6N、2N、3N、4.5N、6N及び8.5Nの荷重で白化が確認されなかった
5点:10Nの荷重のみで白化が確認される、又は全ての荷重で白化が確認されなかった
以下の手順で成形時の焼け特性を評価した。
(i)成形温度が210℃の射出成形機(東芝社製IS100)のシリンダ内に30分滞留させる。
(ii)定常成形(東芝社製IS100、金型温度:40℃、射出速度:35mm/sec、充填時間:20sec、冷却時間:30sec)し、試験片を作製(1サイクル1min)する。
(iii)試験片を目視で確認する。
(判定基準)
○:変色がほとんど認められない。
△:変色がやや認められる。
×:変色が著しく認められる。
(8)曲げ強度
JIS K7203に準拠して23℃で測定した。成形品の寸法は90×10×4mmを用いた。単位はMPaである。
本発明で用いたGPCの具体的な測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行った。使用した標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとした。単位はグラムである。
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置した。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し、室温キシレン可溶成分を回収した。この回収成分の重量の、仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSとした。
13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定法の詳細は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2、−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定した。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定した。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とした。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の解析は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行った。
スペクトルの帰属は、Macromolecules,8卷,687頁(1975年)やPolymer,30巻,1350頁(1989年)を参考にして行い、mm分率の決定は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載された方法に従って行った。
分岐指数(g’)は、前記記載の方法に従い、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)のサンプルを下記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマー(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出した。
なお、示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用い、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technoogy社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続し、移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)を用いた。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用い、カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃とした。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLとした。
伸張粘度測定は以下の条件で行った。
・装置:Rheometorics社製Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作成:プレス成形(MASADA SEISAKUSYO製、AH−200、加熱温度:180℃、冷却温度:25℃)により18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成し、測定用試料片とした。
(15)融点
示差操作熱量計(DSC、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用い、サンプル5.0mgにて、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。
2.材料及び評価
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)
(1−1)長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)
(X−1):下記の製造例1で製造した長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X−1)を用いた。
<触媒成分(A)の合成例1>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体1)の合成):
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン 15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO 200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME 100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン 19.8gg(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン 9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についての1H−NMRによる同定値を以下に記す。
1H−NMR(C6D6)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)4Lを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4,000g加えた後にろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ上固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(A)の合成例1で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分(A)の合成例2で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒52.8gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.64であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。これに水素4.4リットル(標準状態の体積として)、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液470ml(0.12mol)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで、予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、16.5kgの重合体(以下、「XX」という)を得た。
触媒活性は、6880(g−XX/g−cat)であった。MFRは1.0g/10分であった。
製造例1で製造した長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(XX)100重量部に対し、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部を配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−、商品名)を用い室温下で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X−1)のペレットを得た。
これらのペレット(X−1)について、融点、MFR、パラキシレン可溶成分量(CXS)、13C−NMR、GPC(Mw/Mn及びMz/Mw)、分岐指数(mm)、溶融張力(MT)、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax(0.1))の評価を行った。評価結果を表1に示した。
Y−1:日本ポリプロ社製、ノバッテクPP BC03B(エチレン含量9.0重量%のブロック共重合体で、MFR30g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
Y−2:日本ポリプロ社製、ノバッテクPP MA1Q(ポロピレン単独重合体で、MFR20g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
Y−3:日本ポリプロ社製、ノバッテクPP MA3(ポロピレン単独重合体で、MFR10g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)0.98)
B−1:丸菱油化工業社製、ノンネン52ビス[3、5−ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン]。
(4)難燃助剤(C)
C−1:三酸化アンチモン(鈴祐化学社製、ファイヤーカットAT3)
(1)脂肪酸エステル系滑剤
D−1:理研ビタミン社製、SL800(分子構造がステアリルステアレート、融点が56℃、HLB値が1以下、分子量が550)
ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、更に、付加的添加剤として、酸化防止剤(E−1:BASF社製、イルガノックス1010)を0.15重量部、酸化防止剤(E−2:BASF社製、イルガホス168)を0.3重量部及び中和剤(E−3:日本油脂株式会社製、カルシウムステアレート)を0.1重量部それぞれ配合した。
ヘンシェルミキサーに、成分(A)のポリプロピレン系樹脂及び所定量の各成分(B)、(C)、(D)及び任意成分(E)を一括して投入し、3分間、充分に撹拌混合を行った。得られた配合組成物を、押出機(日本製鋼社製、径30mm2軸押出機)を用いて、設定温度200℃、樹脂温度200℃で溶融混練し、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
ポリプロピレン系樹脂及び各配合成分を表2に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、物性評価を行った。結果を表2に示す。
ポリプロピレン系樹脂及び各配合成分を表2に示す割合で配合し、溶融混練し、ペレット化し、物性評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1と実施例1〜3および比較例2と実施例4〜5の比較から、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の添加量が増すほど耐傷つき性が向上することがわかる。長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂添加による難燃性、撥水性、熱による変色及び防汚性の低下はみられず、良好である。ポリプロピレン単独重合体の添加により成形体表面の硬度を向上させることにより耐傷つき性を付与する手法も考えられるが比較例3と実施例4から、ポリプロピレン単独重合体の添加による耐傷つき性の向上は見られず、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂による特有の効果であることがわかる。
Claims (10)
- 下記の条件(A−1)及び(A−2)を満足するポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、有機系難燃剤(B)2〜40重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A−1)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、下記の(X−i)〜(X−iv)の特性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)を含有する。
特性(X−i):メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30.0g/10分であること。
特性(X−ii):GPCによる分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0、且つMz/Mwが2.5〜10.0であること。
特性(X−iii):溶融張力(MT)(単位:g)は、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7 または MT≧15
のいずれかを満たすこと。
特性(X−iv):25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン樹脂(X)全量に対して5.0重量%未満であること。
条件(A−2)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)及び下記の(Y−i)〜(Y−ii)の特性を有するポリプロピレン樹脂(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂を含有する。
特性(Y−i):プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体及びプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン樹脂であり、前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)に該当しない。
特性(Y−ii):ポリプロピレン樹脂(Y)は、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1.0〜200g/10分である。 - 前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、下記の条件(A−3)を満足する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A−3)
ポリプロピレン系樹脂(A)が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)及びポリプロピレン樹脂(Y)を含有し、その割合が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)10〜99重量%とポリプロピレン樹脂(Y)1〜90重量%である(但し、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計を100重量%とする)。 - 前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が下記の特性(X−v)を有する請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(X−v):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上であること。 - 前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が下記の特性(X−vi)を有する請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
特性(X−vi):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’は、0.30以上1.00未満であること。 - ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、以下の条件を満足する成分(D)0.1〜2重量部を、さらに含有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
条件:成分(D)は、ポリオレフィン系ワックス、アルコール類、カルボン酸類及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であって、融点が100℃以下であり、かつHLB値が5以下である化合物。 - 有機系難燃剤(B)がハロゲン系難燃剤であり、かつ、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、難燃助剤(C)0.1〜20重量部を、さらに含有する請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 有機系難燃剤(B)が臭素系難燃剤である請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 難燃助剤(C)がアンチモン化合物である請求項6又は7に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 成分(D)が、分子量が350〜2000の脂肪酸エステルである請求項5乃至8の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる便器部品。
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