JP2014206680A - 光取り込みシート、ならびに、それを用いた受光装置および発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】広い面積から、広い波長範囲の光を、広い入射角度で取り込むことが可能な光取り込みシートを提供する。
【解決手段】第1および第2の主面2p、2qを有する透光シート2と、透光シート2内であって、第1および第2の主面2p、2qからそれぞれ第1および第2の距離d1、d2以上隔てた内部に配置された少なくとも1つの光結合構造3とを備えた光取り込みシート51であって、少なくとも1つの光結合構造3は、第1の透光層と、第2の透光層と、これらに挟まれた第3の透光層とを含み、第1および第2の透光層の屈折率は透光シート2の屈折率よりも小さく、第3の透光層の屈折率は第1および第2の透光層の屈折率よりも大きく、第3の透光層は、透光シート2の第1および第2の主面2p、2qと平行な回折格子を有し、複数の光結合構造3の回折格子の方位は互いに一致している。
【選択図】図1
【解決手段】第1および第2の主面2p、2qを有する透光シート2と、透光シート2内であって、第1および第2の主面2p、2qからそれぞれ第1および第2の距離d1、d2以上隔てた内部に配置された少なくとも1つの光結合構造3とを備えた光取り込みシート51であって、少なくとも1つの光結合構造3は、第1の透光層と、第2の透光層と、これらに挟まれた第3の透光層とを含み、第1および第2の透光層の屈折率は透光シート2の屈折率よりも小さく、第3の透光層の屈折率は第1および第2の透光層の屈折率よりも大きく、第3の透光層は、透光シート2の第1および第2の主面2p、2qと平行な回折格子を有し、複数の光結合構造3の回折格子の方位は互いに一致している。
【選択図】図1
Description
本願は、回折を利用して光の取り込みを行う光取り込みシート、ならびに、それを用いた受光装置および発光装置に関する。
屈折率の異なる2つの光伝搬媒質の間で光を伝搬させる場合、界面において光の透過や反射が存在するため、高効率で一方の光伝播媒質から他方の光伝搬媒質に光を移し、この状態を保持することは、一般に難しい。空気などの環境媒質から、透明なシートに光を取り込む技術として、例えば、非特許文献1に示される従来のグレーティング結合法が挙げられる。図27(a)および(b)はグレーティング結合法の原理を示す説明図であって、表面にピッチΛの直線グレーティングが設けられた透光層20の断面図および平面図を示している。図27(a)に示すように、グレーティングに特定の入射角θで波長λの光23aを入射させると透光層20伝搬する導波光23Bに結合させることができる。
オーム社 光集積回路、p94,p243 西原浩ほか
本願発明者の検討によれば、従来のグレーティング結合法では、広い面積から、広い波長範囲の光を、広い入射角度で光を透明なシートに取り込むことが困難である。本願の限定的ではない、実施形態は、広い面積から、広い波長範囲の光を、広い入射角度で取り込むことが可能な光取り込みシートを提供する。また、それらを用いた受光装置および発光装置を提供する。
本願の一実施形態に係る光取り込みシートは、第1および第2の主面を有する透光シートと、前記透光シート内であって、前記第1および第2の主面からそれぞれ第1および第2の距離以上隔てた内部に配置された複数の光結合構造とを備え、前記複数の光結合構造は、第1の透光層と、第2の透光層と、これらに挟まれた第3の透光層とを含み、前記第1および第2の透光層の屈折率は前記透光シートの屈折率よりも小さく、前記第3の透光層の屈折率は前記第1および第2の透光層の屈折率よりも大きく、前記第3の透光層は、前記透光シートの前記第1および第2の主面と平行な回折格子を有し、前記複数の光結合構造の前記回折格子の方位は互いに一致している。
本願の一実施形態に係る受光装置は上記に規定される光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面、またはそれらの主面に隣接する側面に設けられた光電変換部とを備える。
また、本願の一実施形態に係る受光装置は上記に規定される光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面に設けられた凹凸構造またはプリズムシートと、前記凹凸構造または前記プリズムシートから出射する光を受光する光電変換部とを備える。
本願の一実施形態に係る光取り込みシートによれば、透光シートに入射した光は内部に配置された光結合構造に入射し、光結合構造内の第3の透光層の回折格子により、第3の透光層に沿った方向に伝搬する光に変換され、光結合構造の端面から放射される。光結合構造は透光シート表面と平行な位置関係にあり、光結合構造の表面は空気などの低屈折率の環境媒質に覆われているので、一度放射された光は透光シートの表面、および他の光結合構造の表面の間で全反射を繰り返し、透光シート内に閉じ込められる。回折格子に様々なピッチが含まれるので、広い領域、広い波長範囲、例えば可視光全域に渡って、全ての入射角で光を取り込むことが可能になる。このような透光シートを複数枚重ねることで光取り込みシートが構成される、この光取り込みシートの表面に光電変換部を設けることで、取り込まれた光を損失なく効率的に光電変換することが可能になる。また、複数の光結合構造における回折格子のグレーティングの方位が一致しているため、光取り込みシートに入射する光の入射面の方向が、回折格子の方位と一致する場合、高い効率で光を取り込むことができる。
本願発明者は、非特許文献1に開示された方法を詳細に検討した。検討結果によれば、透光層20には、決められた条件を満たす光のみを取り込むことができ、条件からずれた光は取り込まれない。図27(c)は、透光層20に設けられたグレーティングに入射する光のベクトルダイアグラムを示している。図27(c)において、円21、22は点Oを中心とし、円21の半径は透光層20を取り巻く環境媒質1の屈折率n0に等しく、円22の半径は導波光23Bの等価屈折率neffに等しい。等価屈折率neffは透光層20の膜厚に依存し、導波モードに応じて環境媒質1の屈折率n0から透光層20の屈折率n1までの間の特定の値をとる。図27(d)は、透光層20をTEモードで光が伝搬する場合における実効的な膜厚teffと等価屈折率neffとの関係を示す。実効的な膜厚とは、グレーティングがない場合には透光層20の膜厚そのものであり、グレーティングがある場合には、透光層20の膜厚にグレーティングの平均高さを加えたものである。励起される導波光には、0次、1次、2次などのモードが存在し、図27(d)に示すように、それぞれ特性カーブが異なる。図27(c)において、点Pは点Oから入射角θに沿って線を引き、円21と交わる点であり、点P’は点Pのx軸への垂線の足、点Q、Q’は円22とx軸との交点である。x軸正方向への光の結合条件はP’Qの長さがλ/Λの整数倍に等しいこと、負方向への光の結合条件はP’Q’の長さがλ/Λの整数倍に等しいことで表される。ただし、λは光の波長、Λはグレーティングのピッチである。すなわち、光の結合条件は式(1)で表される。
ここで、qは整数で表わされる回折次数である。式(1)で定まるθ以外の入射角では、光は透光層20内に結合しない。また同じ入射角θであっても、波長が異なれば、やはり光は結合しない。
なお、図27(b)に示すように、光23aの入射方向から角度φだけシフトした方位角φで透光層20に入射する光23aaに対する、透光層20のグレーティングの実質的なピッチはΛ/cosφとなる。このため、異なる方位で入射する光23aは、式(1)で規定される条件とは異なる入射角θおよび波長でも光の結合条件を満たし得る。つまり、透光層20に入射する光の方位の変化を許容する場合には、式(1)で示される光の結合条件は、ある程度広くなる。しかし、広い波長範囲および全ての入射角で入射光を導波光23Bに結合させることはできない。
また導波光23Bはグレーティングの領域を伝搬する間に、入射光23aに対する反射光と同じ方向に光23b’を放射する。このため、グレーティングの端部20aから遠い位置で入射し、導波光23Bとして透光層20を伝搬することができても、グレーティングの端部20aに至る時には減衰してしまう。したがって、グレーティングの端部20aに近い位置で入射する光23aのみが放射による減衰を受けることなく、導波光23Bとして透光層20内を伝搬することができる。つまり、多くの光を結合させるため、グレーティングの面積を大きくしても、グレーティングに入射する光の全てを導波光23Bとして伝搬させることはできない。このような課題に鑑み、本願発明者は新規な光取り込みシートを想到した。本願の光取り込みシート、受光装置および発光装置の一態様は以下の通りである。
本発明の一態様に係る光取り込みシートは、第1および第2の主面を有する透光シートと、前記透光シート内であって、前記第1および第2の主面からそれぞれ第1および第2の距離以上隔てた内部に配置された複数の光結合構造とを備え、前記複数の光結合構造のそれぞれは、第1の透光層と、第2の透光層と、これらに挟まれた第3の透光層とを含み、前記第1および第2の透光層の屈折率は前記透光シートの屈折率よりも小さく、前記第3の透光層の屈折率は前記第1および第2の透光層の屈折率よりも大きく、前記第3の透光層は、前記透光シートの前記第1および第2の主面と平行な回折格子を有し、前記複数の光結合構造の前記回折格子の方位は互いに一致している。
前記複数の光結合構造は、前記透光シート内であって、前記第1および第2の主面からそれぞれ前記第1および第2の距離以上隔てた内部において、三次元に配置されていてもよい。
前記複数の透光シートの内、最表面に位置する透光シートの第1または第2の主面は隙間を挟んで透明カバーシートで覆われていてもよい。
前記回折格子のピッチは0.1μm以上3μm以下であってもよい。
前記第1および第2の透光層の表面は、100μm以下の直径の円に外接する大きさを有し、前記複数の光結合構造のそれぞれの厚さは3μm以下であってもよい。
前記光取り込みシートには太陽光が入射し、前記複数の光結合構造の前記回折光の方位は、前記太陽光の黄道と平行であってもよい。
前記複数の光結合構造のうち少なくとも2つにおいて、前記回折格子のピッチは互いに異なっていてもよい。
前記透光シートは、前記第1の主面と接し、前記第1の距離を厚さに有する第1の領域と、前記第2の主面と接し、前記第2の距離を厚さに有する第2の領域と、前記第1および第2の領域に挟まれた第3の領域と、前記第3の領域内に設けられており、前記第1の領域および前記第2の領域を接続する少なくとも1つの第4の領域とを含み、前記複数の光結合構造は、前記少なくとも1つの第4の領域以外の前記第3の領域内にのみ配置されており、前記第4の領域を貫通する任意の直線は、前記透光シートの厚さ方向に対して、前記透光シートの屈折率と前記透光シートの周囲の環境媒質の屈折率とで規定される臨界角よりも大きな角度に沿って伸びていてもよい。
前記複数の光結合構造の少なくとも1つにおいて、前記第1および第2の透光層の膜厚は、前記光結合構造の中心から外縁側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
前記複数の光結合構造の少なくとも1つにおいて、前記第1および第2の透光層の、前記透光シートと接する面、及び前記第1の主面、前記第2の主面のいずれかには、ピッチ及び高さが設計波長の1/3以下の凹凸構造が形成されていてもよい。
前記第1および第2の透光層の屈折率は、前記環境媒質の屈折率と等しくてもよい。
本発明の一態様に係る受光装置は、上記いずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面、前記第2の主面および前記第1の主面と前記第2の主面に隣接する端面のいずれかに設けられた光電変換部とを備える。
上記に記載の他の光取り込みシートをさらに備え、前記光取り込みシートの前記第1の主面に前記光電変換部が設けられ、前記光取り込みシートの前記第2の主面に前記他の光取り込みシートの端面が接続されていてもよい。
本発明の他の一態様に係る受光装置は、上記いずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面に設けられた凹凸構造またはプリズムシート、前記凹凸構造または前記プリズムシートから出射する光を受光する光電変換部とを備える。
前記光電変換部は太陽電池であってもよい。
本発明の他の一態様に係る受光装置は、上記いずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の一部に設けられた凹凸構造とを備える。
本発明の一態様に係る発光装置は、上記いずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の一方に近接して設けられた光源と、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の他方に設けられた凹凸構造と、前記凹凸構造から出射する光が入射するように配置されたプリズムシートとを備える。
発光装置は、前記第1の主面または前記第2の主面の前記一方と前記光源との間に位置する少なくとも1つのレンチキュラーレンズをさらに備え、前記レンチキュラーレンズは第1の方向に伸びており、前記第1の方向と垂直な断面において、前記第1の主面または前記第2の主面の前記一方側に凸状の曲面を有し、前記複数の光結合構造の前記回折格子の方位は前記第1の方向と平行であってもよい。
以下、本発明による光取り込みシート、受光装置および発光装置の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明による光取り込みシートの第1の実施形態を説明する。図1(a)は、光取り込みシート51の模式的な断面図である。光取り込みシート51は、第1の主面2pおよび第2の主面2qを有する透光シート2と透光シート2内に配設された少なくとも1つの光結合構造3を備え、このような透光シート2を複数枚重ね合わせることで、光取り込みシート51が構成される。
本発明による光取り込みシートの第1の実施形態を説明する。図1(a)は、光取り込みシート51の模式的な断面図である。光取り込みシート51は、第1の主面2pおよび第2の主面2qを有する透光シート2と透光シート2内に配設された少なくとも1つの光結合構造3を備え、このような透光シート2を複数枚重ね合わせることで、光取り込みシート51が構成される。
透光シート2は、用途に応じた所望の波長、あるいは、所望の波長域内の光を透過する透明な材料によって構成されている。例えば、可視光(波長0.4μm以上0.7μm以下)を透過する材料によって構成されている。透光シート2の厚さは例えば0.03mm〜1mm程度である。第1の主面2pおよび第2の主面2qの大きさに特に制限はなく、用途に応じた面積を有している。この透光シート2の内、最表面に位置するものの上にはスペーサ2dを挟んで、カバーシート2eが接着されていてもよい。従って、透光シート2の第1の主面2p(または第2の主面2q)のほとんどはバッファー層2fに接している。スペーサ2dはエアロゲルのような屈折率が低い材料から構成されている。
図1(a)に示すように、透光シート2内において、光結合構造3は、第1の主面2pおよび第2の主面2qからそれぞれ第1の距離d1および第2の距離d2以上隔てた内部に配置されている。このため、透光シート2において、第1の主面2pと接し、第1の距離d1を厚さに有する第1の領域2aおよび第2の主面2qと接し、第2の距離d2を厚さに有する第2の領域2bには光結合構造3は配設されておらず、第1の領域2aおよび第2の領域2bに挟まれた第3の領域2cに光結合構造3は配設されている。
光結合構造3は、透光シート2の第3の領域2cにおいて、3次元に配列されている。好ましくは、光結合構造3は、第1の主面2pおよび第2の主面2qに平行な面において、2次元に配列され、かつ、2次元に配列された複数の光結合構造3が透光シート2の厚さ方向に複数積層されている。
光結合構造3はx、y軸方向(面内方向)およびz軸方向(厚さ方向)に所定の密度で配置されている。例えば、その密度は例えばx軸方向に1mm当たり10〜103個、y軸方向に1mm当たり10〜103個、z軸方向に1mm当たり10〜103個程度である。透光シート2の第1の主面2pおよび第2の主面2q全体に照射される光を効率よく取り込むためには、透光シート2のx軸方向、y軸方向およびz軸方向における光結合構造3の配置密度はそれぞれ独立して均一であることが好ましい。ただし、用途や、透光シート2の第1の主面2pおよび第2の主面2qに照射する光の分布によっては、透光シート2中の光結合構造3の配置は均一でなくてもよく、所定の分布を有していてもよい。
図2(a)および(b)は、光結合構造3の厚さ方向に沿った断面図およびそれに直交する平面図である。光結合構造3は、第1の透光層3aと第2の透光層3bとこれらに挟まれた第3の透光層3cとを含む。第3の透光層3cは、基準平面に配設されたピッチΛの直線格子を有する回折格子3dを含む。回折格子3dの直線格子は、第3の透光層3cと第1の透光層3aまたは第2の透光層3bとの界面に設けられた凹凸によって構成されていてもよいし、図2(e)に示すように、第3の透光層3c内部に設けられていてもよい。また、凹凸による格子ではなく、屈折率差による格子であってもよい。光結合構造3は、第3の透光層3cの回折格子3dが光取り込みシート51の第1の主面2pおよび第2の主面2qと平行になるように、透光シート2内に配置されている。ここで、回折格子が第1の主面2pおよび第2の主面2qと平行であるとは、格子が配設されている基準平面が第1の主面2pおよび第2の主面2qと平行であることを意味する。
第1の透光層3a、第2の透光層3bおよび第3の透光層3cの厚さはそれぞれa、b、tであり、第3の透光層3cの直線回折格子の段差(深さ)はdである。第3の透光層3cの表面は透光シート2の第1の主面2p、第2の主面2qと平行であり、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの、第3の透光層3cと反対側に位置する表面3p、3qも透光シート2の第1の主面2p、第2の主面2qと平行である。
以下において説明するように、複数の光結合構造3において、回折格子3dの方位は互いに一致している。ここで、回折格子の方位とは、回折格子の直線格子が伸びる方向をいい、図2(a)および(b)では、回折格子3dの方位は、y方向である。また、複数の光結合構造3の回折格子3dの方位が互いに一致しているとは、複数の光結合構造3の回折格子3dの方位が完全に一致している場合および±5度程度の範囲内にある場合をいう。
回折格子3dの方位が一致していることにより、特定の方位の入射光をより効率的に光取り込みシート51に取り込むことができる。このため、光取り込みシート51に含まれる光結合構造3のうち少なくとも50%よりも多くの光結合構造3の回折格子3dにおいて方位が一致していることが好ましい。より好ましくは、シート51に含まれる光結合構造3の90%以上の光結合構造3の回折格子3dにおいて方位が一致している。つまり、全光結合構造3のうち、50%以下あるいは10%より少ない割合で、方位が他の回折格子と一致ない回折格子3dを含んでいてもよい。言い換えれば、光取り込みシート51は、回折格子の方位が一致している複数の光結合構造3に加えて、回折格子の方位が一致していない他の1以上の光結合構造3を含んでいてもよい。
複数の光結合構造3のうち少なくとも2つにおいては、回折格子3dのピッチΛが互いに異なっていることが好ましい。
第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率は透光シート2の屈折率よりも小さく、第3の透光層3cの屈折率は第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率よりも大きい。以下では、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bは空気であり、屈折率が1であるとする。また、第3の透光層3cは透光シート2と同じ媒質から構成されており、屈折率は互いに等しいとする。
光結合構造3の第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの表面3p、3qは、例えば、長さWおよびLを2辺とする矩形であり、WおよびLは3μm以上100μm以下である。つまり、光結合構造3の第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの表面は3μm以上、100μm以下の直径の円に外接する大きさを有している。また、光結合構造3の厚さ(a+t+d+b)は3μm以下である。図2(b)に示すように、本実施形態では光結合構造3の表面(平面)は矩形を有しているが、他の形状、例えば、多角形や円や楕円形状を有していてもよい。
光取り込みシート51は、環境媒質に囲まれて使用される。例えば、光取り込みシート51は空気中で使用される。この場合環境媒質の屈折率は1である。以下、透光シート2の屈折率をnsとする。環境媒質からの光4はカバーシート2eとバッファー層2fを透過し、最表面にある透光シート2の第1の主面2pや第2の主面2qから透光シート2の内部に入射する。バッファー層2fは環境媒質と同じ媒質で構成され、その屈折率は1である。また、スペーサ2dの屈折率もほとんど1に等しい。カバーシート2eの両面や第1の主面2pや第2の主面2qには入射した光4の透過率を高めるため、ARコートや無反射ナノ構造が形成されていてもよい。無反射ナノ構造には、モスアイ構造等、ピッチおよび高さが設計波長の1/3以下の微細な凹凸構造が含まれる。設計波長は、光取り込みシート51が所定の機能を発揮するように各要素を設計する際に用いる光の波長である。なお、無反射ナノ構造では、フレネル反射は低減するが、全反射は存在する。複数の透光シート2の間は、各表面がほとんど平行をなしながら、部分的に接触する部分が存在する。この接触面を介し、相互に臨界角外の光の遣り取りがなされる。従って透光シート2の重ね合わせは、光結合構造3の個数や密度を増やすことと等価な効果があり、光の閉じ込め効果が増大する。
以下、透光シート2の内部に存在する光のうち、その伝搬方位と透光シート2の法線(第1の主面2pおよび第2の主面2qに垂直な線)とのなす角θ(以下、伝搬角と呼ぶ)がsinθ<1/nsを満たす光を臨界角内の光、sinθ≧1/nsを満たす光を臨界角外の光と呼ぶ。図1(a)において透光シート2の内部に臨界角内の光5aがある場合、その一部は光結合構造3により、臨界角外の光5bに変換され、この光は第1の主面2pを全反射して、シート内部にとどまる臨界角外の光5cとなる。また、臨界角内の光5aの残りの臨界角内の光5a’のうちの一部は別の光結合構造3により臨界角外の光5b’に変換され、この光は第2の主面2qを全反射して、シート内部にとどまる臨界角外の光5c’となる。このようにして臨界角内の光5aの全てが、光結合構造3が配置された第3の領域2c内で臨界角外の光5bや5b’に変換される。
一方、透光シート2に臨界角外の光6aがある場合、その一部は光結合構造3の表面を全反射して臨界角外の光6bとなり、この光は第1の主面2pを全反射して、シート内部にとどまる臨界角外の光6cとなる。また、光6aの残りの光の一部は光結合構造3が設けられた第3の領域2cを透過する臨界角外の光6b’となり、この光は第2の主面2qにおいて全反射し、透光シート2内部にとどまる臨界角外の光6c’となる。また図に示していないが、異なる光結合構造3の間と第1の主面2p、第2の主面2qの間を全反射しながらシート内部にとどまる臨界角外の光、つまり、第1の領域2a、第2の領域2b、あるいは第3の領域2cに止まって伝搬する光も存在する。この場合、第1の領域2a、および第2の領域2bを伝搬する光の分布に偏りが生じる可能性がある。透光シート2における光の分布の偏りが問題となる場合には、図1(a)に示すように、透光シート2内の第3の領域2cにおいて、光結合構造3が配設されていない第4の領域2hを1つ以上設けることが好ましい。つまり、光結合構造3は、第4の領域2hを除く第3の領域2c内にのみ配置されている。透光シート2において、第4の領域2hは第1の領域2aと第2の領域2bとを接続している。第4の領域2hは、第1の領域2aから第2の領域2bへまたは逆の方向に沿って伸びており、第4の領域2hを貫通する任意の直線の方位は透光シートの屈折率と透光シートの周囲の環境媒質の屈折率とで規定される臨界角よりも大きな角度に沿っている。すなわち、環境媒質の屈折率が1であり、透光シート2の屈折率をneとすれば、第4の領域2hを貫く任意の直線の延びる方向2hxが透光シート2の法線となす角度θ’は、sinθ’≧1/nsを満たしている。ここで、直線が第4の領域2hを貫通するとは、第4の領域2hの第1の領域2aと接する面と、第4の領域2hの第2の領域2bとを直線が貫くことを言う。
図1(b)は、光取り込みシート51の平面図であって、第4の領域2hの配置を示している。図1(b)に示すように、第4の領域2hは、好ましくは、透光シート2内に複数設けられている。第4の領域2hは、臨界角よりも大きな角度で第1の領域2aから第2の領域2bへまたは逆の方向に伸びているため、透光シート2の第1の領域2aおよび第2の領域2bを伝搬する光のうち、臨界角外の光のみが、第4の領域2hを透過し、第1の領域2aから第2の領域2bへまたは逆に透過し得る。このため、光取り込みシート51内での光分布の偏りを防ぐことができる。
図2(a)に示すように、臨界角内の光5aは、第2の透光層3bの表面3qを透過し、その一部は回折格子3dの作用で第3の透光層3c内を伝搬する導波光5Bに変換される。残りは透過光や回折光として、主に臨界角内の光5a’となって光結合構造3を透過するか、または、反射光として、臨界角内の光5rとなり、光結合構造3を通過する。第2の透光層3bへの入射の際、表面3qを反射する臨界角外の光6bもあるが、表面3q、3pに無反射ナノ構造を形成しておけば、ほとんどの光を透過させることができる。
導波光5Bへの結合は、従来のグレーティング結合法の原理と同じである。導波光5Bは第3の透光層3cの端面3Sに至るまでにその一部が臨界角内の光5rと同じ方向に放射されて臨界角内の光5r’となり、残りは導波して第3の透光層3cの端面3Sから放射され、臨界角外の光5cとなる。一方、臨界角外の光6aは、第2の透光層3bの表面3qにおいて全反射し、その全てが臨界角外の光6bとなる。このように、光結合構造3の表面(第1の透光層3aの表面3pおよび第2の透光層3bの表面3q)に入射する臨界角外の光は臨界角外の光としてそのまま反射され、臨界角内の光はその一部が臨界角外の光に変換される。
なお、第3の透光層3cの回折格子3dの長さが長すぎると、導波光5Bはその端面3Sに到達する前に全て放射される。また短すぎると導波光5Bへの結合効率が十分でない。導波光5Bの放射しやすさは放射損失係数αで表され、伝搬距離Lで導波光5Bの強度はexp(−2αL)倍になる。仮にαの値を10(1/mm)とすると、10μmの伝搬で0.8倍の光強度となる。放射損失係数αは回折格子3dの深さdに関係し、d≦dcの範囲では単調増加し、d>dcの範囲では飽和する。光の波長をλ、導波光5Bの等価屈折率neff、透光層3cの屈折率をn1、回折格子3dのデューティ(凸部の幅のピッチに対する比)を0.5とするとdcは以下の式(2)で与えられる。
例えば、λ=0.55μm、neff=1.25、n1=1.5とすると、dc=0.107μmとなる。単調増加領域では放射損失係数αはdの2乗に比例する。したがって、回折格子3dの長さ、すなわち第3の透光層3cの長さ(寸法WとL)は、放射損失係数αにより決まり、回折格子3dの深さdに依存する。仮に、深さdを調整してαの値を2〜100(1/mm)の範囲に設定し、減衰比を0.5とすると、WおよびLは3μmから170μm程度となる。このため、上述したようにWおよびLが3μm以上100μm以下であれば、深さdの調整で放射損失を抑制し、高い結合効率を得ることができる。
導波光5Bの等価屈折率neffを1.25とした場合において、式(1)よりピッチΛ、入射角θに対して、どの可視光の波長(λ=0.4〜0.7μm)の光が結合するかを(表1)に示す。点線の区間が結合の範囲である。例えば、ピッチ0.4μmの場合、θ=−14度で波長0.4μmの光、θ=30度で波長0.7μmの光が結合し、θ=−14度からθ=30度までが可視光の結合範囲となる。
入射角θの極性は光の結合方向に関係する。したがって、光の結合方向を無視して結合の有無のみに注目すると、入射角の範囲が0から90度、または、−90から0度のいずれかをカバーできれば、全ての入射角度に対する結合がなされたことになる。したがって、表1から、全ての可視光波長、全ての入射角度に対し、光が結合するためには、0.18μmから0.56μm(0度から90度)、または、0.30μmから2.80μm(−90度から0度)までのピッチΛの回折格子3dを有する光結合構造3を組み合わせて用いることが好ましいことが分かる。等価屈折率の変化や導波層や回折格子を形成する際に生じ得る製造誤差を考慮すると、回折格子3dのピッチは概ね0.1μm以上3μm以下であればよい。
また、図2(b)に示すように、例えば、回折格子3dが伸びる方向と垂直な方向に入射する臨界角内の光5aに対する回折格子3dのピッチはΛであるが、xy平面上において、x軸に対して方位角φで入射する光5aaに対する回折格子3dの実効的なピッチはΛ/cosφとなる。例えば、光5aaの入射方位角φが0〜87度である場合、実効的なピッチはΛ〜19Λとなる。このため、Λ=0.18μmに設定すると、同一の回折格子3dでも入射する光の方位によって0.18から2.80μmまでの実効的なピッチΛが実現でき、Λ=0.30μmに設定すると、0.30から2.80μmまでのピッチΛが実現できる。
次に、光結合構造3の表面3p、3qと垂直な端面3r、3s(透光層3bの法線方向に沿った面)における光を検討する。図2(c)に示すように、光結合構造3の端面3rに入射する光は、端面3rで反射する場合、端面3rを回折する場合、端面3rを透過して屈折する場合、端面3rを経て第3の透光層3cを導波する場合が考えられる。例えば、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの端面に入射しこれを透過する臨界角外の光6aは屈折して、臨界角内の光6a’となる。また、第3の透光層3cの端面に入射しこれを透過する光6Aの一部は、第3の透光層3c内を伝搬する導波光6Bに変換される。
参考として、図2(d)は光結合構造3から第3の透光層3cを抜き取り、抜き取った後の空間を第1の透光層3aおよび第2の透光層3bと同じ空気で埋めた場合の光路を示している。臨界角内の光5aが光結合構造3の表面3qに入射する場合、その入射位置が端面3sに近ければ、屈折の結果、端面3sで臨界角外の光5a’として出射する。また、臨界角内の光5aが光結合構造3の端面3rに入射する場合、端面3rで全反射する。臨界角外の光6aが光結合構造3の端面3rに入射する場合、その入射位置に寄らず、屈折の結果、表面3pから臨界角内の光6a’として出射する。また、臨界角外の光6aが光結合構造3の表面3qに入射する場合、表面3qで全反射する。
このように、光結合構造3の端面3r、3sに入射する光の場合は振る舞いが複雑で、臨界角外の光が端面に入射しても臨界角外の光として出射するとは限らない。しかし、表面の大きさ(W、L)を端面の大きさ(a+t+d+b)よりも十分(例えば4倍以上に)大きくしておけば、端面での影響は十分小さくなり、表面3p、3qにおける光の透過あるいは反射が光結合構造3全体における光の透過や反射の振る舞いとみなすことができる。具体的には、第1の透光層3aの表面3pおよび第2の透光層3bの表面3qの大きさが、光結合構造3の厚さの4倍以上であれば、十分に光結合構造3の端面3r、3sにおける光の影響を無視することができる。したがって、光結合構造3は臨界角外の光を臨界角外の光として保持する一方、臨界角内の光を非可逆的に臨界角外の光に変換する機能を発揮し、光結合構造3の密度を十分に設定しておけば、光取り込みシート51に入射した全ての光を臨界角外の光(すなわちシート内に閉じ込められた光)に変換できる。
図3は光取り込みシート51における光閉じ込めの効果を確認するための解析に用いた光取り込みシートの断面構造を示している。解析には、光結合構造を1つ含む光取り込みシートを用いた。図3に示すように、透光シート2の第2の主面2qから1.7μmの位置に平行に幅5μmの光源S(破線で表示)を設定し、その上方に0.5μmの距離をおいて幅6μmの第2の透光層3bを平行に配置し、この上に同じ幅の第3の透光層3cおよび第1の透光層3aを配置した。透光シート2の第1の主面2pは第1の透光層3aの表面から2.5μmの位置にある。光源Sから、第2の主面2qの法線に対しθの角をなす方位に、紙面に対し45度の角度をなす偏光の平面波が出射し、入射光の中心が第2の透光層3bの表面の中心を透過するように、角θに応じて第1の透光層3a、第2の透光層3bおよび第3の透光層3cの位置を横にシフトさせた。また、第1の透光層3aの厚さaを0.3μm、第2の透光層3bの厚さcを0.3μm、第3の透光層3cの厚さtを0.4μm、回折格子の深さdを0.18μm、回折格子のピッチΛを0.36μmとした。透光シート2および第3の透光層3cの屈折率を1.5とし、環境媒質、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率を1.0とした。
図4(a)から(c)は図3に示す構造の光取り込みシートにおいて、光源Sから光結合構造3へ入射した光の入射角θと、光取り込みシート外へ出射した光の透過率との関係を示す解析結果である。解析に用いた構造は上述したとおりである。解析には2次元の時間領域差分法(FDTD)を用いた。したがって、図3に示す断面が紙面垂直方向に無限に続いている構造による解析結果である。透過率は安定時での計測であり、光源を取り巻く閉曲面を通過するPoynting Vectorの積分値に対する、解析領域最下面(z=0μm)、および最上面(z≒8μm)を通過するPoynting Vectorの積分値の比で定義した。一部に100%を超える計算結果があるが、これは光源のPoynting Vectorの計測に若干の誤差があるためである。図4(a)は光源の波長λが0.45μmの場合、図4(b)は波長λが0.55μmの場合、図4(c)は波長λが0.65μmの場合の計算結果を示している。それぞれ回折格子の深さdをパラメータにするとともに、光結合構造3がない条件(透光シート2と光源Sだけの構成)での結果もプロットしている。
光結合構造3はあるが回折格子の深さd=0の場合の結果を、光結合構造がない場合の結果(Nothing)と比較すると、前者は後者より臨界角(41.8度)以内の範囲で透過率が小さくなり、それ以上の角度ではどちらもほぼゼロになる。臨界角以内で前者における透過率が小さくなるのは、図2(d)を参照して説明したように、第2の透光層3bの表面3qに入射する光が屈折し、その一部が臨界角外の光として端面3sから出射するためである。ただし、前者の場合、同じく図2(c)、(d)を参照して説明したように、光結合構造3の端面3rから入射する臨界角外の光はこの面を屈折した後、第1の透光層3aの表面3pを屈折して、透光シート2内で臨界角内の光になる。したがって、d=0の場合の構造には、臨界角外の光への変換がある一方、臨界角内の光への変換もあり、全体として光を閉じ込める効果は小さいといえる。
一方、グレーティングの深さd=0.18μmの場合の結果をd=0の場合の結果と比較すると、前者の透過率は後者のそれにほぼ近接しているが、矢印a、b、c、d、eの位置で透過率が落ち込んでいる。図4(d)は、図4(a)、(b)、(c)の曲線を入射角θに関して積分した値の規格値(90で割った値)を、回折格子の深さdをパラメータにして示している。解析モデルが2次元であるため、この積分値は光閉じ込めシート内の光がシート外に取り出される効率に等しい。いずれの波長でも、dの増大に伴い(少なくともd=0、d=0.18の比較では)、取り出し効率は低減する。これは、単一の光結合構造による光閉じ込めの効果を現している。この効果は累積でき、光結合構造の数を増やせば、最終的に全ての光を閉じ込めることができる。
図5は、図4の矢印a、b、c、d、eに示す条件における光取り込みシート内での光強度分布図を示している。具体的には、図5(a)は波長λ=0.45μm、θ=5度における結果、図5(b)は波長λ=0.55μm、θ=0度における結果、図5(c)は波長λ=0.55μm、θ=10度における結果、図5(d)は波長λ=0.65μm、θ=10度における結果、図5(e)は波長λ=0.65μm、θ=20度における結果を示している。
図5(a)、(b)に示す条件および入射角の場合、第3の透光層3cの屈折率がそれを取り巻く第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率よりも高いため、第3の透光層3cは導波層として機能し、入射光が回折格子の作用で第3の透光層3c内を伝搬する導波光に結合し、この光が第3の透光層3cの端面3r、3sから透光シート2内に放射されている。この放射光は臨界角外の光であり、透光シート2の第1の主面2pおよび第2の主面2qで全反射し、透光シート2内に閉じ込められている。図5(c)、(d)、(e)に示す条件および入射角の場合も、入射光が回折格子の作用で第3の透光層3c内を伝搬する導波光に結合し、この光が第3の透光層3cの端面3rからシート内に放射されている。この放射光は臨界角外の光であり、透光シート2の第1の主面2pおよび第2の主面2qで全反射し、透光シート2内に閉じ込められている。なお、図5(a)、(c)、(e)では、放射光が二股に分かれており、結合した光は導波層断面の上下で位相が反転する1次モードの導波光である。一方、図5(b)、(d)では放射光がひとまとまりの状態にあり、結合した光は0次モードの導波光である。
図6は、図3に示す構造において第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率を透光シート2の屈折率と一致させ、第3の透光層3cの屈折率を2.0に変更した場合における解析結果を示している。他の条件は図4に示す解析結果が得られた場合の条件と同じである。図6(a)は光源の波長λ=0.45μmの場合、図6(b)は波長λ=0.55μmの場合、図6(c)は波長λ=0.65μmの場合の結果を示している。グレーティングの深さd=0.18μmの場合の結果をd=0の場合の結果と比較すると、前者の透過率は後者のそれに比べ、矢印a、b、c、d、e、fの位置で落ち込んでいる。これは、図4を参照して説明したのと同じ理由による。しかし臨界角以上の領域において、後者がゼロ近傍になるのに比べ、前者は大きく浮き上がってしまう。これは臨界角以上の入射角の光が光結合構造3の回折格子により回折し、その一部がシート内で臨界角内の光に変換されるためである。図6(d)は、図6(a)、(b)、(c)の曲線を入射角θに関して積分した値の規格値(90で割った値)を、溝深さdをパラメータにして示している。いくつかの条件で、dの増大に伴い取り出し効率はかえって増大しており、光閉じ込めの効果が得られない。これは臨界角以上の領域での特性が矢印a、b、c、d、e、fの位置における効果を打ち消していることを示す。
図4および図6に示す解析結果を比較してみると、図4では臨界角以上で、透過率をゼロにできている。グレーティングの深さd=0.18μmの場合の結果をd=0の場合の結果と比較しても、臨界角以上での領域で差はなく、どちらもほぼゼロである。これは、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率を透光シート2の屈折率よりも小さくしたため、第2の透光層3bと透光シート2との界面である表面3qで全反射が発生し、入射角の大きい光が光結合構造3内の回折格子に入射できず、回折格子による回折光が発生しないためである。このように、光結合構造3として、第3の透光層3cが導光層となるためにはその屈折率が第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率よりも大きく、臨界角外の光が第3の透光層3cに入射しないためには、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率が透光シート2の屈折率より小さいことが好ましいことが分かる。また、透光シート2と光結合構造との間の全反射に対する臨界角を小さくするためには、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率と透光シートの屈折率の差が大きいことが好ましく、例えば、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの屈折率が1であることが好ましいことが分かる。
次に、光結合構造3に入射する光の入射方位φと光閉じ込め効率との関係を説明する。図28A(a)および(b)は光取り込みシート51における光閉じ込めの効果を確認するための解析に用いた光取り込みシートのxz平面における断面構造およびxy平面における平面構造を示している。解析には、光結合構造を1つ含む光取り込みシートを用いた。
図28A(a)に示すように、解析境界の最下面から0.1μmの位置に平行に幅8μmの光源S(破線で表示)を設定し、その上方に0.1μmの距離をおいて幅9μmの正方形の第2の透光層3bを平行に配置し、この上に同じ形状の第3の透光層3cおよび第1の透光層3aを配置した。解析境界の最上面は第1の透光層3aの表面から0.2μmの位置にある。透光シート2の第1の主面2p、第2の主面2qは解析領域の上下面に平行である(図28Aには示されていない)。これらの主面、および透光シート2を取り囲む外部(空気)は図28A(a)には示されておらず、光は解析領域を囲む6つの面(解析境界面)を透過するものとする。
光源Sからは、xz平面において、第2の主面2qの法線に対しθの角度をなし、xy平面において、x軸に対して偏角φの角度をなす方位に、図28A(a)における紙面に対し45度の角度をなす偏光の平面波が出射する。また、透光シート2、第2の透光層3bはSiN、第1の透光層3a、第2の透光層3bはSiO2、環境媒質は空気(屈折率1.0)で形成されている。また、第1の透光層3aの厚さaを0.5μm、第2の透光層3bの厚さcを0.5μm、第3の透光層3cの厚さtを0.5μm、回折格子の深さdを0.1μm、回折格子のピッチΛを0.32μmとする。なお、主面2p、2qでは屈折率が不連続に変化するため、主面2p、2qにおける反射を考慮する必要がある。解析では主面2p、2qが十分離れた位置にあるとして反射による影響を無視し、その代わりに6つの解析境界面での光の伝搬角を計測し、主面2p、2qを透過するか全反射するかを判定した。
なお、太陽光の偏光方向はランダムであり、たとえば、紙面に対しする偏光方向のなす角度が0度から90度までの偏光を同じ比率で含む。したがって、紙面に対し45度の偏光の角度を成す偏光を用いた計算結果は、実質的に0度から90度までの偏光方向での結果を平均したもの、つまり太陽光を用いた結果に一致する。
図28B(a)は光の入射角θとシート外への透過率との関係を示し、xy平面における入射角φをパラメータにした(波長455nm)。ただし、d=0.0はグレーティングの深さをゼロ、他の条件は深さ0.1μmの場合の結果を示している。図28B(b)は光のxy平面における入射角φとシート外への透過率との関係を示し、yz平面における入射角θをパラメータにした(波長455nm)。
図28(a)における、d=0.0の曲線と他の3つの曲線との比較から分かるように、回折格子3dを形成することで透過率は低下する。第1の透光層3a、第2の透光層3bの屈折率を環境媒質より高くしても、第1の透光層3a、第2の透光層3bの屈折率は透光シート2の屈折率よりは低いので、光の閉じ込め効果があることが分かる。さらに、φ=90度の場合(すなわち回折格子3dの直線格子の伸びる方位が光の入射方位と一致している場合)、0度から30度の入射角θの範囲で透過率は大きく減少する。つまり、偏角φが90度である場合、最も光閉じ込めの効果が高い。また、図28B(b)に示すように、偏角φが50度を超えるとほとんどの入射角θに対し透過率は、低下し、φ=90度でほぼ極小となることが分かる。このように、光取り込み構造3の回折格子の方位と光の入射偏角φとが一致している場合、光の閉じ込め効率は最も高くなる。本実施形態において、光シート2は、複数の光学結合構造3を含み、複数の光学結合構造3の回折格子の方位は一致している。このため、光シート2における複数の光学結合構造3のすべてにおいて、高い光閉じ込め効果を得ることができる。
したがって本実施形態の光取り込みシート51は、第1の主面2pおよび第2の主面2qに平行な面、つまり、図1(a)におけるxy平面における入射偏角φが一定である光源に対して高い効率で光を取り込むことができる。またこの場合、偏角φが90度であり、光結合構造3の回折格子3dの方位と一致する方向に光が入射するように、光源に対して光取り込みシート51が配置される場合、最も高効率で光を取り込むことができる。
例えば、太陽は、地球から見た場合、黄道に沿って移動する。図29は、北緯35度付近における太陽の黄道を模式的に示している。太陽は、夏には黄道ob1に沿って、春及び秋には黄道ob2に沿って、冬には黄道ob3に沿って移動する。太陽の高度は1日の時刻および季節によって変化するが、地球上の観測位置から太陽を見た場合、太陽光の入射方向は、南中時を除き、東西方向に一致している。つまり、季節によらず黄道ob1、ob2、ob3(黄道が形成する平面)は、東西方向と平行である。したがって、光取り込みシート51における光結合構造3の回折格子3dの方位を東西方向に一致させることにより、光結合構造3の回折格子3dの方位と太陽光が光結合構造3に入射する方向とが一致し、上述したように、光取り込みシート51は、最も高効率で光を取り込むことができる。
このように本実施形態の光取り込みシートによれば、透光シートの第1の主面および第2の主面に種々の角度で入射する光は、臨界角内の光となって透光シートの内部に配置された光結合構造に入射し、光結合構造内の回折格子によって、その一部が、第3の透光層内を伝搬する導波光に変換され、光結合構造の端面から放射されて、臨界角外の光となる。光結合構造によってその回折格子のピッチが異なっているため、この変換は広い波長範囲、例えば可視光全域に渡って行われる。また回折格子の長さが短いため、導波光の放射損失を少なくできる。したがって、透光シート内に存在する臨界角内の光は、複数の光結合構造によって全て臨界角外の光に変換される。光結合構造の第1および第2の透過層の屈折率は透光シートの屈折率より小さいため、臨界角外の光は光結合構造の表面を全反射し、この光は他の光結合構造の表面や透光シートの表面の間で全反射を繰り返し、透光シート内に閉じ込められる。このように、光結合構造は臨界角内の光を非可逆的に臨界角外の光に変換する一方、臨界角外の光を臨界角外の状態のまま保持する。したがって、光結合構造の密度を十分に設定しておけば、光取り込みシートに入射した全ての光を臨界角外の光、すなわちシート内に閉じ込められた光に変換できる。仮に、1枚の透光シートでの閉じ込め効果が小さい場合には、透光シートを複数枚重ね合わせることで、容易に所定の効果を達成することができる。
また、複数の光結合構造における回折格子の方位が一致しているため、第1の主面2pまたは第2の主面2qに平行な面における入射方向が、回折格子の方位と一致する場合、最も高い効率で光を取り込むことができる。このため、方位の決まった光源を用いる場合、その方位に沿って、回折格子を配置することによって、効果的に光を取込むことができる。
なお図1(a)に示すように、最表面にある透光シート2の第1の主面2pは、スペーサ2dによ バッファー層2fを介してカバーシート2eで覆ってもよい。これにより、水滴などの異物2gがカバーシート2eの表面に付着し、第1の主面2pに接触するのを防ぐことができる。これに対して、異物2gが第1の主面2pと接触すれば、その接触面で全反射の関係が崩れ、透光シート2内に閉じ込められた臨界角外の光が異物2gを介して外部に漏れ出る場合がある。スペーサ2dも第1の主面2pと接するが、その屈折率が環境媒質の屈折率とほとんど変わらないので、その接触面で全反射の関係は維持され、臨界角外の光がスペーサ2dを介して外部に漏れ出ることはない。また、透光シートの表面積が小さい場合は、スペーサ2dを挟まずにカバーシート2eと第1の主面2pの間にバッファー層2fを形成する構成も考えられる。
光取り込みシート51は例えば、以下の方法によって製造することができる。図7(a)から(e)は、光取り込みシート51の製造手順を示す模式的な断面構成図であり、図8(a)、(b)はシートを作成するための金型表面のパターンを示す模式的な平面図である。
図8(a)、(b)において、金型25a、25bの表面には、例えば、同じ寸法の矩形の微小構造25A、25Bが二次元に配列されている。金型25aにおける微小構造25Aの配置と金型25bにおける微小構造25Bの配置は等しい。微小構造25A、25Bは本実施形態では、突起である。微小構造25Aの高さは、図2(a)の寸法bであり、微小構造25Bの高さは寸法aに相当する。微小構造25Bの表面は平面だが、微小構造25Aの表面の上には高さd、ピッチΛの直線回折格子が形成されており、微小構造25Aの回折格子の方位(凹部または凸部の伸びる方向)は互いに一致している。
図7(a)に示すように、金型25bの表面に離間剤を薄く塗布した状態で透明な樹脂シート24を敷き、このシート上に金型25aを配置し、互いの微小構造25Bと微小構造25Aの位置を揃えた状態で金型25bと金型25bとに挟まれた樹脂シート24をプレスする。
図7(b)に示すように、金型25aを持ち上げて、樹脂シート24を金型25bから引き剥がし、図7(c)に示すように、表面に接着剤が薄く塗布された樹脂シート24aに押し当て、樹脂シート24と樹脂シート24aを接着する。図7(d)に示すように、接着剤を樹脂シート24aの底面に薄く塗布し、これを同様の方法により形成した樹脂シート24’、24’aの上にアライメントを無視して押し当て、これらを接着する。
図7(e)に示すように、樹脂シート24’aを固定した状態で、金型25aを持ち上げ、樹脂シート24、24a、24’、24’aの全体を金型25aから引き剥がす。
以降、樹脂シート24、24a、24’、24’aを図7(d)の樹脂シート24’、24’aに置き換え、これらの手順を繰り返すことで、図1(a)に示す透光シート2の第3の領域2cが作製される。透光シート2の第3の領域2cの表面および裏面に、透光シート2の第1の領域2aおよび第2の領域2bとなる樹脂シートを接着することにより図1(a)に示す光取り込みシート51が完成する。本実施形態では、樹脂シートの接着に接着剤を用いているが、接着剤を用いず、樹脂シートの表面を加熱することによって、樹脂シート同士を融着させてもよい。また、樹脂シート24aや第1の領域2aおよび第2の領域2bとなる樹脂シートの表面には予め無反射ナノ構造が形成されていても良い。
(第2の実施形態)
本発明による光取り込みシートの第2の実施形態を説明する。本実施形態の光取り込みシート52は、光結合構造の端面における構造が第1の実施形態の光結合構造と異なっている。このため、以下、本実施形態における光結合構造を中心に説明する。
本発明による光取り込みシートの第2の実施形態を説明する。本実施形態の光取り込みシート52は、光結合構造の端面における構造が第1の実施形態の光結合構造と異なっている。このため、以下、本実施形態における光結合構造を中心に説明する。
図9(a)および(b)は、光取り込みシート52の厚さ方向に沿った光結合構造3’の断面構造および平面構造を模式的に示している。図9(a)および(b)に示すように、光結合構造3’において、端面3r、3sには深さeの凹部3tが設けられている。凹部3tの断面は、内部に向かうにつれて幅が狭くなっている。このため、光結合構造3’において、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの厚さが、光結合構造3’の中心から外縁側に向かうにつれて小さくなっている。表面3p、3qは第1の実施形態と同様、平坦である。
図10は光結合構造3’を備えた光取り込みシート52における光閉じ込めの効果を確認するための解析に用いた光取り込みシートの断面構造を示している。光結合構造や光源は、第1の実施形態の解析に用いた構造(図3)における対応する要素と全く同じ位置に設置されている。
図11(a)から(c)は図10に示す構造の光取り込みシートにおいて、光源Sから光結合構造3’へ入射した光の入射角θと、光取り込みシート外へ出射した光の透過率との関係を示す解析結果である。解析には、第1の実施形態と同じ手法を用いた。図11(a)は光源の波長λ=0.45μmの場合、図11(b)は波長λ=0.55μmの場合、図11(c)は波長λ=0.65μmの場合の結果を示している。それぞれにおいて、回折格子の深さdをパラメータにするとともに、光結合構造がない条件(透光シート2と光源Sだけの構成)での結果もプロットしている。
光結合構造3’はあるが回折格子の深さd=0の場合の結果を、光結合構造がない場合の結果(Nothing)と比較すると、前者は後者より臨界角(41.8度)以内の範囲で小さくなり、それ以上の角度では両者ともゼロになる。臨界角以内で前者が小さくなるのは、図2(d)を参照して説明したように、第2の透光層3bの表面3qに入射する光が屈折し、その一部が臨界角外の光として右側面(第3の透光層3cの右側面)から出射するためである。
一方、グレーティングの深さd=0.18μmの場合の結果をd=0の場合の結果と比較すると、前者の透過率は後者のそれにほぼ近接しているが、矢印a、b、c、d、eの位置では透過率が落ち込んでいる。これらの位置は光が導波光に結合する条件に相当する。図11(d)は、図11(a)、(b)、(c)の曲線を入射角θに関して積分した値の規格値(90で割った値)を、溝深さdをパラメータにして示している。この積分値は、解析モデルが2次元なので、シート内の光がシート外に取り出される効率に等しい。いずれの波長でも、dの増大に伴い(少なくともd=0、d=0.18の比較では)、取り出し効率は低減する。これは、単一の光結合構造による光閉じ込めの効果を表しており、第1の実施形態における解析結果と同様である。この効果は累積でき、光結合構造の数を増やせば、全ての光を閉じ込めることができる。なお、第1の実施形態の解析結果に比べ矢印b、c、d、eの位置での落ち込みが小さくなっているのは、グレーティングの長さ(結合長)を本実施例の解析モデルでは小さくしているためである。
図12は第2の実施形態における、単一の光結合構造の端面への光の入射による、入射角θと光取り込みシート外への透過率との関係を示す解析結果である。解析条件には図10や図3において光源Sの位置だけをx軸のマイナス側に5μmだけシフトさせたものを用いている。図12(a)は光源の波長λ=0.45μmの場合、図12(b)は波長λ=0.55μmの場合、図12(c)は波長λ=0.65μmの場合であり、それぞれ本実施例のモデルを第1の実施形態のモデルと比較するとともに、光結合構造がない条件(透光シート2と光源Sだけの構成)での結果もプロットしている。
第2の実施形態のモデルの結果を光結合構造がない場合の結果(Nothing)と比較すると、両方とも臨界角内(41.8度以下)ではほぼ一致するが、臨界角外(41.8度以上)の範囲では、後者がほぼゼロになるのに対し、前者はゼロから大きく浮き上がる。前者が臨界角外で浮き上がるのは、図2(c)、(d)を参照して説明したように、光結合構造の第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの端面に入射する光が屈折の後、臨界角内の光となって第1の主面2pから出射するためである。これに対し、第2の実施形態のモデルの解析結果は、臨界角外の範囲における浮き上がりが部分的に抑制されている。これは、第2の実施形態における端面において、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bが占める領域がなく、端面での屈折がある程度抑えられるためである。したがって、第2の実施形態は第1の実施形態以上に端面での影響(臨界角外の光が臨界角内の光に変換される現象)を無視できる構成であり、光を閉じ込める効果がより強い構成といえる。なお、図12では光源の長さを5μmに設定した。この長さを長くすると、光結合構造の端面からそれて、第1の主面2pに直接入射して全反射するか、光結合構造の表面3qを全反射するかの成分の比率が増すので、臨界角外での浮き上がりは緩和する。仮に光源の長さを4倍の20μmにし、光結合構造を21μm程度に設定すれば、他の特性は維持しつつ、端面入射の特性の臨界角外での浮き上がりだけが1/4程度に低下する。
図13は本実施形態の光取り込みシート52の作製手順の一例を示す模式的な断面である。金型25a、25bの微小構造25A、25Bの外縁部に傾斜25A’、25B’を設け、第1の実施形態と同様の手順を用いれば、光取り込みシート52を製造することができる。金型25a、25bの形状が異なる点を除けば、第1の実施形態の光取り込みシート51と同様にして本実施形態の光取り込みシート52を製造することができるため、具体的な製造手順の説明を省略する。
(第3の実施形態)
本発明による光取り込みシートの第3の実施形態を説明する。本実施形態の光取り込みシート53は、光結合構造の端面における構造が第2の実施形態の光結合構造と異なっている。このため、以下、本実施形態における光結合構造を中心に説明する。
本発明による光取り込みシートの第3の実施形態を説明する。本実施形態の光取り込みシート53は、光結合構造の端面における構造が第2の実施形態の光結合構造と異なっている。このため、以下、本実施形態における光結合構造を中心に説明する。
図14(a)および(b)は、光取り込みシート53の厚さ方向に沿った光結合構造3’’の断面構造および平面構造を模式的に示している。図14(a)および(b)に示すように、光結合構造3’’の表面3p、3qにおいて、端面3r、3sに隣接する幅eの領域にテーパ3u、3vが設けられている。このため、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bは、第3の透光層3cとの界面の平坦性を維持したまま、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの厚さが、光結合構造3’’の中心から外縁側に向かうにつれて小さくなっている。
図15は光結合構造3’’を備えた光取り込みシート53における光閉じ込めの効果を確認するための解析に用いた光取り込みシートの断面構造を示している。光結合構造や光源は、第1の実施形態の解析に用いた構造(図3)と全く同じ位置に設置されている。
図16(a)から(c)は図15に示す構造の光取り込みシートにおいて、光源Sから光結合構造3’側へ入射した光の入射角θと、光取り込みシート外へ出射した光の透過率との関係を示す解析結果である。解析には、第1の実施形態と同じ手法を用いた。図16(a)は光源の波長λ=0.45μmの場合、図16(b)は波長λ=0.55μmの場合、図16(c)は波長λ=0.65μmの場合であり、それぞれ回折格子の深さdをパラメータにするとともに、光結合構造がない条件(透光シート2と光源Sだけの構成)での結果もプロットしている。
光結合構造はあるがグレーティングの深さd=0の場合の結果を、光結合構造がない場合の結果(Nothing)と比較すると、前者は後者より臨界角(41.8度)以内の範囲で小さくなり、それ以上の角度では後者がゼロになるのに対し、前者は55度までの範囲で浮き上がりが残る。臨界角以内で前者が小さくなるのは、図2(d)を参照して説明したように、第2の透光層3bの表面3qに入射する光が屈折し、その一部が臨界角外の光として右側面(第3の透光層3cの右側面)から出射するためである。臨界角以上で前者が浮き上がる理由は2つ考えられる。1つ目は、第2の透光層3bの表面3qが外縁部に向かって傾斜していることで、臨界角を超えた光の一部が第2の透光層3bの表面3qに臨界角以内で入射でき、この光が光結合構造内部のグレーティングを回折して臨界角内の光になるためである。2つ目は、第2の透光層3bの膜厚が外縁部で薄くなりすぎて、臨界角を超えた光の一部がエバネッセント光の状態で光結合構造内部まで透過し、この光がグレーティングを回折して臨界角内の光になるためである。
一方、回折格子の深さd=0.18μmの場合の結果をd=0の場合の結果と比較すると、前者の透過率は後者のそれにほぼ近接しているが、矢印a、b、c、d、eの位置では透過率が落ち込んでいる。これらの位置は光が導波光に結合する条件に相当し、導波した後、第3の透光層3cの端面から放射されて、臨界角外の光となる。この放射光は、伝搬角90度(x軸方向)を中心に±35度程度の範囲に収まる(図5参照)。
図16において、透過光の浮き上がりは入射角55度以上では収まり、ほぼゼロとなるので、一度、導波光となって放射される光は全反射を繰り返してシート内部にとどまる臨界角外の光(伝搬角55度以上の光)となることが分かる。なお、第1の透光層3aの表面3p、および第2の透光層3bの表面3qが外縁部に向かって傾斜することで、これらの面を全反射する光の伝搬角は傾斜方向に応じて大きくなったり、小さくなったりするが、これらの発生確率は同じであるので、全体としてはほとんど同じ伝搬角を維持できる。
図16(d)は、図16(a)、(b)、(c)の曲線を入射角θに関して積分した値の規格値(90で割った値)を、溝深さdをパラメータにして示している。この積分値は、解析モデルが2次元なので、シート内の光がシート外に取り出される効率に等しい。いずれの波長でも、dの増大に伴い(少なくともd=0、d=0.18の比較では)、取り出し効率は低減する。これは、単一の光結合構造による光閉じ込めの効果を現しており、第1実施形態における解析結果と同様である。この効果は累積でき、光結合構造の数を増やせば、全ての光を閉じ込めることができる。
図17は第3の実施形態のシートに於ける、単一の光結合構造の端面への入射による、入射角θとシート外への透過率の関係を示す解析結果である。解析条件は図15や図3において光源Sの位置だけをx軸のマイナス側に5μmだけシフトさせたものを用いている。図17(a)は光源の波長λ=0.45μmの場合、図17(b)は波長λ=0.55μmの場合、図17(c)は波長λ=0.65μmの場合であり、それぞれ本実施例のモデルを実施例1のモデルと比較するとともに、光結合構造がない条件(透光シート2と光源Sだけの構成)での結果もプロットしている。実施例1のモデルの結果を光結合構造がない場合の結果(Nothing)と比較すると、両方とも臨界角内(41.8度以下)ではほぼ一致するが、臨界角外(41.8度以上)の範囲では、後者がほぼゼロになるのに対し、前者は大きく浮き上がる。前者が臨界角外で浮き上がるのは、図2(c)、(d)を参照して説明したように、光結合構造の第1の透光層3aおよび第2の透光層3bの端面に入射する光が屈折の後、臨界角内の光となって上面から出射するためである。これに対し、第3の実施形態のモデルの結果は、入射角55度以上の範囲で浮き上がりが大きく抑制され、ほとんどゼロになっている。これは、第3の実施形態における端面において、第1の透光層3aおよび第2の透光層3bが占める領域がなく、本来端面を屈折する成分が、第2の透光層3bの傾斜した表面3qを全反射するためである。したがって、第3の実施形態は第1の実施形態や第2の実施形態以上に、端面での影響(臨界角外の光が臨界角内の光に変換される現象)を抑制できる構成であり、光を閉じ込める効果がより強い構成といえる。
光取り込みシート53は例えば、以下の方法によって製造することができる。図18(a)から(f)は、光取り込みシート53の製造手順を示す模式的な断面構成図であり、図19(a),(b)はシートを作成するための金型表面のパターンを示す模式的な平面図である。図19(a)において、金型25aの表面は平面であり、金型25aの表面には、例えば、同じ寸法の矩形の微小構造25Aが二次元に配列されている。矩形の微小構造25Aは、高さd、ピッチΛの回折格子である。微小構造25Aの回折格子の方位は互いに一致している。図19(b)の金型25b、25b’の表面にも、矩形の微小構造25B、25B’が二次元に配列されている。微小構造25B、25B’の配置のピッチは、微小構造25Aの配置のピッチと等しい。微小構造25B、25B’は、凹部であり、その底は平面である。凹部の深さは図14の寸法aまたはbに相当する。金型25aの微小構造25Aはその方形がほとんど接するほどの大きさだが(接していても良い)、金型25b,25b’の微小構造25B、25B’の方形は小さい。
図18(a)に示すように、平坦な表面を持つ金型25cの上に透明な樹脂シート24を敷き、この上に離間剤を薄く塗布した状態で、金型25aでプレスする。図18(b)に示すように、金型25aを持ち上げて、金型25aを樹脂シートから引き剥がし、回折格子の転写された樹脂シート24の上に平坦な樹脂シート24aを敷く。
図18(c)に示すように、樹脂シート24、樹脂シート24aを加熱しながら金型25bでプレスし、金型25bの凹み25Bの領域で樹脂シート24aを浮き上がらせ、それ以外の領域で樹脂シート24、樹脂シート24aを接合する。この時、回折格子は接合部では全て埋滅し、樹脂シート24aが浮き上がった領域にだけ残る。樹脂シート24aの浮き上がりが、樹脂シート24との間に空気層(または真空層)を形成する。図18(d)に示すように、金型25cを持ち下げて樹脂シート24から引き剥がし、樹脂シート24の下に樹脂シート24a’を敷く。図18(e)に示すように、樹脂シート24、樹脂シート24a’を加熱しながら金型25b’でプレスし、金型25b’の凹み25B‘の領域で樹脂シート24a’を浮き上がらせ、それ以外の領域で樹脂シート24、樹脂シート24a’を接合する。樹脂シート24a’の浮き上がりが、樹脂シート24との間に空気層(または真空層)を形成する。図18(f)に示すように、金型25b、25b’を引き剥がし、樹脂シート24a、樹脂シート24、樹脂シート24a’の接合シートが完成する。以降、これらの接合シートを、接着層を介して貼り合わせ、これを繰り返すことで図1(a)に示す透光シート2の第3の領域2cが作製される。透光シート2の第3の領域2cの表面および裏面に、透光シート2の第1の領域2aおよび第2の領域2bとなる樹脂シートを接着することにより光取り込みシート53が完成する。なお、樹脂シート24a、24a‘や第1の領域2aおよび第2の領域2bとなる樹脂シートの表面には予め無反射ナノ構造が形成されていても良い。
以降の実施形態では、カバーシート2eに関する説明は第1の実施形態と同じであり、重複するので省略する。また簡単のため透光シート2が一層の例で説明するが、実際には第1の実施形態と同様、重ね合わされた構成であり、この場合、光電変換部や凹凸構造などは、重ね合わされた透光シート2の内の、最表面側に位置する透光シート2の表面上に形成される。
(第4の実施形態)
本発明による受光装置の実施形態を説明する。図20は、本実施形態の受光装置54の断面構造を模式的に示している。受光装置54は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
本発明による受光装置の実施形態を説明する。図20は、本実施形態の受光装置54の断面構造を模式的に示している。受光装置54は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
光取り込みシート51の端面2s、2rには、好ましくは、反射膜11が設けられている。光取り込みシート51の第2の主面2qに隣接して光電変換部7が設けられている。透光シート2に端面が複数ある場合には、全ての端面に反射膜11が設けられていることが好ましい。本実施形態では、第2の主面2qの一部と光電変換部7の受光部とが接している。光電変換部7は光取り込みシート51の第1の主面2pの一部に設けられてもよい。
光取り込みシート51の端面2r、2sを反射膜11で覆うことで、光取り込みシート51内に取り込まれ、封止された光は光取り込みシート51内を循環することになる。
光電変換部7は、例えば、シリコンによって構成される太陽電池である。1枚の光取り込みシート51に複数の光電変換部7を取り付けても良い。シリコンの屈折率は5程度であるため、通常、太陽電池の受光面に垂直に光を入射させた場合でも、入射の光のうち、40%前後の光が光電変換部7に取り込まれずに反射で失われる。斜めに光が入射する場合、さらにこの反射損失は増大する。この反射量を小さくするために、市販の太陽電池の表面にはARコートや無反射ナノ構造が形成されているが、十分な性能が得られていない。さらに、太陽電池内部には金属層が存在し、これを反射する光のかなりの部分が、外部に放出される。ARコートや無反射ナノ構造があると、反射光は高効率で外部に放出される。
これに対し、本発明の光取り込みシートは全ての可視光波長の光を、全ての入射角度で光取り込みシート内に取り込み、封止する。このため、受光装置54において、光取り込みシート51の第1の主面2pから入射する光は、光取り込みシート51に取り込まれ、光取り込みシート51内を循環する。シリコンの屈折率は透光シート2の屈折率より大きいので、第2の主面2qに入射する臨界角外の光5b’、6b’は全反射せず、その一部が屈折光5d’、6d’として光電変換部7へ透過し、光電変換部において電流に変換される。反射した臨界角外の光5c’、6c’はシート内を伝搬したあと、再び光電変換部7に入射し、全ての封止光がなくなるまで、光電変換に利用される。透過シート2の屈折率を1.5とすると、第1の主面2pに垂直に入射する光の反射率は4%程度であるが、この面にはARコートや無反射ナノ構造が形成されていれば、波長依存性や角度依存性を含めて、反射率を1〜2%以下に抑制できる。これ以外の光は光取り込みシート51に入射して閉じ込められ、光電変換に利用される。また、入射光が太陽光の場合、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように光取り込みシートを配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。
本実施形態の受光装置によれば、入射光のほとんどをシート内に閉じ込め、そのほとんどを光電変換に利用することができる。したがって、光電変換部のエネルギー変換効率を大幅に改善できる。また、受光面積は第1の主面pの面積で決まり、この面で受光された光は全て光電変換部7へ入射する。このため、光電変換部7の面積を小さくしたり、光電変換部7の数を少なくでき、受光装置の大幅な低コスト化が実現できる。
(第5の実施形態)
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図21は、本実施形態の受光装置55の断面構造を模式的に示している。受光装置55は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図21は、本実施形態の受光装置55の断面構造を模式的に示している。受光装置55は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
受光装置55は、第2の主面2qに凹凸構造を8が設けられ、光電変換部7との間に隙間が設けられている点で第4の実施形態の受光装置54と異なる。第2の主面2qに設けられた凹凸構造8は凹部および凸部の幅が0.1μm以上あり、周期パターンであってもランダムパターンであってもよい。この凹凸構造8により、第2の主面2qへ入射する臨界角外の光5b’、6b’は全反射せず、その一部が出射光5d’、6d’として光電変換部7に向かう光となり、光電変換される。光電変換部7の表面を反射する光は、光取り込みシート51の第2の主面2qから内部に取り込まれ、光取り込みシート51内を伝搬したあと、再び再び出射光5d’、6d’として光電変換部7に向かう光となる。したがって、本実施形態の受光装置においても、入射光のほとんどを光取り込みシート内に閉じ込め、そのほとんどを光電変換に利用することができる。また、入射光が太陽光の場合、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように光取り込みシートを配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。また、第4実施例と同様に、光電変換部7の面積を小さくしたり、光電変換部7の数を少なくできる。したがって、エネルギー変換効率が大幅に改善された、低コスト化の受光装置を実現できる。
(第6の実施形態)
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図22は、本実施形態の受光装置56の断面構造を模式的に示している。受光装置56は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とプリズムシート9とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図22は、本実施形態の受光装置56の断面構造を模式的に示している。受光装置56は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とプリズムシート9とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
受光装置56は、第2の主面2qと光電変換部7との間にプリズムシート9が設けられている点で第4の実施形態の受光装置54と異なる。プリズムシート9の内部には4面体状のプリズム10が互いに隣接して配置されている。2枚の3角柱プリズム列のシートを直交して積層することで、プリズムシート9を構成してもよい。プリズム10の屈折率はプリズムシート9の屈折率より大きく設定されているため、プリズムシート9の表面に入射する臨界角外光5b’、6b’はプリズム表面で屈折して5d’、6d’となり、光電変換部7に向かう。光電変換部7への光の入射角が垂直に近くなるので、光電変換部7の受光面での反射を小さくでき、第4の実施形態に比べ光取り込みシート51内における光の循環数を少なくできる。また、入射光が太陽光の場合、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように光取り込みシートを配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。
本実施形態の受光装置においても、入射光のほとんどを光取り込みシート内に閉じ込め、そのほとんどを光電変換に利用することができる。また、第4実施例と同様に、光電変換部7の面積を小さくしたり、光電変換部7の数を少なくできる。したがって、エネルギー変換効率が大幅に改善された、低コスト化の受光装置を実現できる。また、第4の実施形態に比べ、シート内の光の循環数が少ないので、光取り込みシートの光封止性能の影響を受けにくい。
(第7の実施形態)
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図23は、本実施形態の受光装置57の断面構造を模式的に示している。受光装置57は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図23は、本実施形態の受光装置57の断面構造を模式的に示している。受光装置57は、第1の実施系形態の光取り込みシート51と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。
受光装置57は、反射膜11に替えて光電変換部7が端面2s、2rを覆っている点で第4の実施形態の受光装置54と異なる。透光シート2の端面が複数ある場合には、全ての端面に光電変換部7を設けることが好ましい。本実施形態の場合、光取り込みシート51には第4の領域2hを設けなくてもよい。
端面2s、2rに光電変換部7を設ける場合、第4の実施形態とは異なり、臨界角外の光5c、6c、5c’、6c’は光電変換部7の受光面の法線に沿って光電変換部7に入射する。このため光電変換部7の表面での反射が小さく、光取り込みシート51内における光の循環数を少なくできる。また、入射光が太陽光の場合、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように光取り込みシートを配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。
本実施形態の受光装置においても、入射光のほとんどを光取り込みシート内に閉じ込め、そのほとんどを光電変換に利用することができる。したがって、エネルギー変換効率が大幅に改善された受光装置を実現できる。また、第4の実施形態に比べ、光電変換部7の面積を小さくできるため大幅な低コスト化が実現できる。また、第4の実施形態に比べ、シート内の光の循環数が少ないので、光取り込みシートの光封止性能の影響を受けにくい。
(第8の実施形態)
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図24は、本実施形態の受光装置58の断面構造を模式的に示している。受光装置58は、光取り込みシート51、51’と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51、51’に替えて、それぞれ独立に、第1の光取り込みシート51、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。本実施形態の場合、光取り込みシート51’には第4の領域2hを設けなくてもよい。
本発明による受光装置の他の実施形態を説明する。図24は、本実施形態の受光装置58の断面構造を模式的に示している。受光装置58は、光取り込みシート51、51’と光電変換部7とを備える。光取り込みシート51、51’に替えて、それぞれ独立に、第1の光取り込みシート51、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。本実施形態の場合、光取り込みシート51’には第4の領域2hを設けなくてもよい。
受光装置58は、第4の実施形態の受光装置54の第1の主面2pに光取り込みシート51の端面2sが接するように接合されている点で、第4の実施形態と異なる。光取り込みシート51’は光取り込みシート51と直交に接合されていることが好ましい。また、光取り込みシート51’において、端面2rには反射膜11が設けられ、光取り込みシート51と接合された端面2s近傍の第1の主面2p’および第2の主面2q’には反射膜11’が設けられていることが好ましい。反射膜11’は、光取り込みシート51からの臨界角外の光6bが光取り込みシート51’外に漏れ出さないよう光6bを反射する働きがある。
光取り込みシート51の第1の主面2pに入射する光4は光取り込みシート51内に取り込まれる。一方、光取り込みシート51’の第1の主面2p’および第2の主面2q’に入射する光4’は光取り込みシート51’内に取り込まれる。光取り込みシート51’内に取り込まれた光は、端面2rが反射膜11で覆われているため、端面2s側に伝搬する導波光12となり、光取り込みシート51内の光に合流する。光取り込みシート51内の第2の主面2qの一部は光電変換部7の表面と接触しており、シリコンの屈折率が透光シート2の屈折率より大きいため、第2の主面2qに入射する臨界角外の光5b’、6b’は全反射せず、その一部が屈折光5d’、6d’として光電変換部7へ入射し、光電変換部7において電流に変換される。反射した臨界角外の光5c’、6c’は光取り込みシート51内を伝搬し、再び光電変換部7の受光面に入射し、ほとんどの封止光がなくなるまで、光電変換に利用され続ける。
本実施形態の受光装置は光電変換部7の受光面に対して垂直な光取り込みシート51’を備えているため、光取り込みシート51の第1の主面2pに対し斜めに入射する光であっても、光取り込みシート51’の第1の主面2p’および第2の主面2q’には、垂直に近い角度で入射する。このため、全ての方位の光をより取り込みやすくなっている。また、入射光が太陽光の場合、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように光取り込みシートを配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。
本実施形態の受光装置においても、入射光のほとんどを光取り込みシート内に閉じ込め、そのほとんどを光電変換に利用することができる。また、第4実施例と同様に、光電変換部7の面積を小さくしたり、光電変換部7の数を少なくできる。したがって、エネルギー変換効率が大幅に改善された、低コスト化の受光装置を実現できる。
(第9の実施形態)
本発明による採光板の実施形態を説明する。図25は、本実施形態の採光板59の断面構造を模式的に示している。採光板59は、第1の実施形態の光取り込みシート51と、光取り込みシート51の第1の主面2pおよび第2の主面2qの一部に設けられた凹凸構造8とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。光取り込みシート51において、端面2r、2sには反射膜11が設けられている。
本発明による採光板の実施形態を説明する。図25は、本実施形態の採光板59の断面構造を模式的に示している。採光板59は、第1の実施形態の光取り込みシート51と、光取り込みシート51の第1の主面2pおよび第2の主面2qの一部に設けられた凹凸構造8とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。光取り込みシート51において、端面2r、2sには反射膜11が設けられている。
凹凸構造8は第1の主面2pの一部に形成され、その凹部および凸部の幅が0.1μm以上あるランダムパターンをなす。光取り込みシート51に取り込まれた光は光取り込みシート51の内部を伝搬し、この凹凸構造8により、伝搬光の一部が出射光5d’、6d’として、外部に放射される。
採光板59は、住宅などの建物の採光用窓に、凹凸構造8が設けられた第1の主面2pが室内側に位置するように設けられる。昼間、採光板59は、太陽13aの光を第2の主面2qから取り込み、この光を凹凸構造8から室内に放射する。これにより凹凸構造8から光が放射する室内照明として用いることができる。入射光が太陽光なので、回折格子の方位が太陽の黄道と平行になるように採光板を配置すれば、閉じ込め効率はさらに高まる。また、夜間、採光板59は、室内照明13bの光を第1の主面2pから取り込み、この光を凹凸構造8から放射する。これにより、採光板59を室内照明の補助にすることができる。このように本実施形態による採光板によれば、入射光のほとんどをシート内に閉じ込め、これを照明として再利用でき、エネルギーの有効利用を実現できる。
(第10の実施形態)
本発明による発光装置の実施形態を説明する。図26(a)は、本実施形態の発光装置60のxz断面の構造を模式的に示している。発光装置60は、光取り込みシート51と、光源14と、プリズムシート9と、少なくとも1つのレンチキュラーレンズ51とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。光取り込みシート51の光結合構造3における回折格子の方位は、x方向に一致している。
本発明による発光装置の実施形態を説明する。図26(a)は、本実施形態の発光装置60のxz断面の構造を模式的に示している。発光装置60は、光取り込みシート51と、光源14と、プリズムシート9と、少なくとも1つのレンチキュラーレンズ51とを備える。光取り込みシート51に替えて、第2の実施形態の光取り込みシート52または第3の実施形態の光取り込みシート53を用いてもよい。光取り込みシート51の光結合構造3における回折格子の方位は、x方向に一致している。
レンチキュラーレンズ51は、光取り込みシート51の第1の主面2pまたは第2の主面2qの一方に隣接して設けられ、他方には凹凸構造8が設けられている。本実施形態では、レンチキュラーレンズ51が第1の主面2pに隣接して配置されて、第2の主面2qに凹凸構造8が設けられている。また、光取り込みシート51の端面2s、2rには反射膜11が設けられている。凹凸構造8は凹部および凸部の幅が0.1μm以上あり、周期パターンであってもランダムパターンであってもよい。
図26(b)および(c)は、レンチキュラーレンズ51ならびに光源14のxy平面およびyz平面における配置を模式的に示している。レンチキュラーレンズ51は、yz平面において、第1の主面2p側に凸状の曲面を有し、x方向に伸びている。つまり、レンチキュラーレンズ51の伸びる方向と、回折格子の方位とは平行である。本実施形態では、複数のレンチキュラーレンズ51がy方向に配列されている。光源14は、複数の発光素子、例えば、LEDを含み、各レンチキュラーレンズ51の第1の主面2pと反対側には、複数のLEDがx方向に配列されている。
プリズムシート9は、第2の主面2qに凹凸構造8に対向するように間隙を隔てて配置されている。プリズムシート9の内部には4面体状のプリズム10が互いに隣接して配置されている。2枚の3角柱プリズム列のシートを直交して積層することで、プリズムシート9を構成してもよい。
光源14の各LEDから出射する光4は、xz平面では発散光のままであるが、yz平面においてはレンチキュラーレンズ15によって主に、平行な光に変換され、光取り込みシート51の第1の主面2pから取り込まれる。光4の入射面の方向は、光結合構造3における回折格子の方位と一致するため、光4は高い取り込み効率で光取り込みシート51内を伝搬する光12となる。この光は凹凸構造8により、その一部が出射光5d’、6d’として、外部に放射される。放射された光はプリズムシート9内のプリズム10により集光され、ほぼ平行な波面の光4aとなる。
本実施形態の発光素子によれば、簡単で薄い構成で、点光源から出射する光を光取り込みシート内に閉じ込め、その光を面光源として取り出すことができる。また、入射光を包含する面(入射面)の方位が回折格子の方位と一致しているため、高い閉じ込め効率を実現し得る。
本発明のシートは広い領域、広い波長範囲(例えば可視光全域)に渡って、全ての入射角で光の取り込むことが可能であり、それらを用いた受光装置および発光装置は高変換効率の太陽電池に有用である一方、それらを用いた受光および発光装置は、新たな照明や光源の形態を提供し、太陽光や照明光を利用したリサイクル照明、高効率のバックライトとして有用である。
2 透光シート
2p 第1の主面
2q 第2の主面
3、3’、3’’ 光結合構造
3a 第1の透光層
3b 第2の透光層
3c 第3の透光層
3d 回折格子
4 入射光
5a、5a’ 臨界角内の光
5b、5c、5b’、5c’ 臨界角外の光
6a、6b、6c、6b’、6c’ 臨界角外の光
9 プリズムシート
10 プリズム
11 反射膜
14 光源
2p 第1の主面
2q 第2の主面
3、3’、3’’ 光結合構造
3a 第1の透光層
3b 第2の透光層
3c 第3の透光層
3d 回折格子
4 入射光
5a、5a’ 臨界角内の光
5b、5c、5b’、5c’ 臨界角外の光
6a、6b、6c、6b’、6c’ 臨界角外の光
9 プリズムシート
10 プリズム
11 反射膜
14 光源
Claims (18)
- 第1および第2の主面を有する透光シートと、
前記透光シート内であって、前記第1および第2の主面からそれぞれ第1および第2の距離以上隔てた内部に配置された複数の光結合構造と
を備え、
前記複数の光結合構造のそれぞれは、第1の透光層と、第2の透光層と、これらに挟まれた第3の透光層とを含み、前記第1および第2の透光層の屈折率は前記透光シートの屈折率よりも小さく、前記第3の透光層の屈折率は前記第1および第2の透光層の屈折率よりも大きく、前記第3の透光層は、前記透光シートの前記第1および第2の主面と平行な回折格子を有し、前記複数の光結合構造の前記回折格子の方位は互いに一致している、光取り込みシート。 - 前記複数の光結合構造は、前記透光シート内であって、前記第1および第2の主面からそれぞれ前記第1および第2の距離以上隔てた内部において、三次元に配置されている請求項1に記載の光取り込みシート。
- 前記複数の透光シートの内、最表面に位置する透光シートの第1または第2の主面は隙間を挟んで透明カバーシートで覆われる請求項1または2のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記回折格子のピッチが0.1μm以上3μm以下である請求項1から3のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記第1および第2の透光層の表面は、100μm以下の直径の円に外接する大きさを有し、
前記複数の光結合構造のそれぞれの厚さは3μm以下である請求項4に記載の光取り込みシート。 - 前記光取り込みシートには太陽光が入射し、
前記複数の光結合構造の前記回折光の方位は、前記太陽光の黄道と平行である請求項1から5のいずれかに記載の光取り込みシート。 - 前記複数の光結合構造のうち少なくとも2つにおいて、前記回折格子のピッチは互いに異なっている請求項1から6のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記透光シートは、前記第1の主面と接し、前記第1の距離を厚さに有する第1の領域と、前記第2の主面と接し、前記第2の距離を厚さに有する第2の領域と、前記第1および第2の領域に挟まれた第3の領域と、前記第3の領域内に設けられており、前記第1の領域および前記第2の領域を接続する少なくとも1つの第4の領域とを含み、前記複数の光結合構造は、前記少なくとも1つの第4の領域以外の前記第3の領域内にのみ配置されており、前記第4の領域を貫通する任意の直線は、前記透光シートの厚さ方向に対して、前記透光シートの屈折率と前記透光シートの周囲の環境媒質の屈折率とで規定される臨界角よりも大きな角度に沿って伸びている請求項1から7のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記複数の光結合構造の少なくとも1つにおいて、前記第1および第2の透光層の膜厚は、前記光結合構造の中心から外縁側に向かうにつれて小さくなっている請求項1から7のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記複数の光結合構造の少なくとも1つにおいて、前記第1および第2の透光層の、前記透光シートと接する面、及び前記第1の主面、前記第2の主面のいずれかには、ピッチ及び高さが設計波長の1/3以下の凹凸構造が形成されている請求項1から7のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 前記第1および第2の透光層の屈折率は、前記環境媒質の屈折率と等しい請求項1から7のいずれかに記載の光取り込みシート。
- 請求項1から11のいずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面、前記第2の主面および前記第1の主面と前記第2の主面に隣接する端面のいずれかに設けられた光電変換部と、を備える受光装置。
- 請求項1から11のいずれかに記載の他の光取り込みシートをさらに備え、
前記光取り込みシートの前記第1の主面に前記光電変換部が設けられ、前記光取り込みシートの前記第2の主面に前記他の光取り込みシートの端面が接続された請求項12に記載の受光装置。 - 請求項1から11のいずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面に設けられた凹凸構造またはプリズムシート、前記凹凸構造または前記プリズムシートから出射する光を受光する光電変換部とを備えた受光装置。
- 前記光電変換部は太陽電池である請求項12から14のいずれかに記載の受光装置。
- 請求項1から11のいずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の一部に設けられた凹凸構造とを備える受光装置。
- 請求項1から5および7から11のいずれかに記載の光取り込みシートと、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の一方に近接して設けられた光源と、前記光取り込みシートの前記第1の主面または前記第2の主面の他方に設けられた凹凸構造と、前記凹凸構造から出射する光が入射するように配置されたプリズムシートとを備える発光装置。
- 前記第1の主面または前記第2の主面の前記一方と前記光源との間に位置する少なくとも1つのレンチキュラーレンズをさらに備え、
前記レンチキュラーレンズは第1の方向に伸びており、前記第1の方向と垂直な断面において、前記第1の主面または前記第2の主面の前記一方側に凸状の曲面を有し、
前記複数の光結合構造の前記回折格子の方位は前記第1の方向と平行である、請求項17に記載の発光装置。
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JP2016179009A (ja) * | 2015-03-24 | 2016-10-13 | Hoya株式会社 | 光源光学系及び光源装置 |
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-
2013
- 2013-04-15 JP JP2013084765A patent/JP2014206680A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016179009A (ja) * | 2015-03-24 | 2016-10-13 | Hoya株式会社 | 光源光学系及び光源装置 |
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