JP2014185267A - 竪型乾留炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】 竪型乾留炉を用いてコークス或いはフェロコークスを製造するにあたり、長期間に亘って安定して使用することのできる、十分な耐用性を有する耐火物が施工された竪型乾留炉を提供する。
【解決手段】 本発明に係る竪型乾留炉は、上部に、被乾留物を加熱用乾留ガスによって乾留する乾留室2を有し、且つ、下部に、前記被乾留物から製造された乾留物を冷却ガスによって冷却する冷却室3を有する、内壁に耐火物が施工された竪型乾留炉1において、原料配合中のAl23含有量が40〜85質量%、SiO2含有量が1〜50質量%、炭素含有量が6〜15質量%であり、金属Si添加量が配合原料の合計に対して外掛けで1〜5質量%である、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が、前記冷却ガスを吹き込むための羽口9及び/または該羽口の周囲の内張りに施工されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、上部に乾留室、下部に冷却室を有し、コークス或いはフェロコークスを製造する竪型乾留炉に関し、詳しくは、施工する耐火物材料を特定することで、冷却室に設置される冷却ガス吹き込み羽口自体及び/またはその周囲の内張り耐火物の寿命を大幅に向上させた竪型乾留炉に関する。
地球環境保護を目的として世界的規模での温暖化防止対策が要求される今日、鉄鋼業においては、CO2ガス排出量を抑制可能なプロセスの開発が鍵となっている。製銑分野では、CO2ガス排出量を抑制するプロセスとして、フェロコークスに関する検討が行われてきた。ここで、フェロコークスとは、石炭と鉄鉱石などの酸化鉄とを事前に混合、成型し、この成型体を乾留炉で加熱することにより製造される鉄含有コークスである。フェロコークスは、高炉内に装入された際には、高炉内で、より低温から反応して熱保存帯の温度を低下させ、室炉式コークス炉で製造されたコークスの反応劣化を防ぎ、還元材比を低減させ、且つ、塊コークス比を低下させる効果があり、CO2ガス排出量の削減にも効果がある。このように、CO2ガスの排出量削減に効果のあるフェロコークスを安定して製造するためには、製造設備を安定した状態で稼動させることが重要となる。
フェロコークスの製造設備は、主に、石炭の粉砕及び酸化鉄との混合、乾燥、加熱を行う原料設備と、結合剤(バインダー)の添加後に混練、成型を行う成型設備と、循環ガスによってガス加熱を行う乾留設備との3つからなる。特に、乾留設備の主たる構成設備である乾留炉では、操業時には常に高温の循環ガスが循環して流れ、操業停止期間は循環ガスが止まるために、多大な熱負荷が加わり、これにより、乾留炉内に施工した耐火物が損傷する。従って、フェロコークスの製造設備を安定した状態で稼動し続けるためには、乾留炉の耐火物損傷状況を把握し、高温ガスに曝されても且つ多大な熱負荷が加わっても、損傷しない耐火物を施工することが必要となる。
特許文献1及び特許文献2には、フェロコークスを室式コークス炉で製造する際に、室式コークス炉を構成する珪石質煉瓦とフェロコークスの原料である酸化鉄との反応を防止するために、炭化室上に石炭用貯留ホッパーと、石炭と酸化鉄との混合物用貯留ホッパーとを設け、先行して、炭化室炉幅方向の両炉壁側に設けた石炭用貯留ホッパーから石炭を装入し、その後、炭化室炉幅方向の中心部に設けた混合物用貯留ホッパーから石炭と酸化鉄との混合物を装入し、その後、乾留してフェロコークスを製造する方法が提案されている。
特許文献1及び特許文献2によれば、炉幅方向炉壁側に石炭が装入され、炉幅方向中心部に石炭と酸化鉄との混合物が装入されることから、珪石質煉瓦からなる炉壁煉瓦と酸化鉄とが非接触状態となり、ファイアライト(Fayalite:2FeO・SiO2)の生成が抑制され、炉壁煉瓦の損傷が回避されるとしている。
特許文献3には、上部に石炭と酸化鉄との成型体を乾留してフェロコークスを製造する乾留室を有し、下部に製造されたフェロコークスを冷却する冷却室を有する竪型乾留炉を用い、乾留室内に高温の乾留ガスを供給してフェロコークスを製造する方法において、乾留室の下部に設置された第1のガス吹き込み羽口から800〜1000℃の乾留ガスを吹き込むとともに、乾留室の中段部に設置された第2のガス吹き込み羽口から400〜700℃の乾留ガスを吹き込み、且つ、冷却室の下部に設置された冷却ガス吹き込み羽口からフェロコークスを冷却するための冷却ガスを吹き込み、冷却室にてフェロコークスと熱交換した後の冷却ガスを乾留室に上昇させ、熱交換した後の冷却ガスと第1のガス吹き込み羽口及び第2のガス吹き込み羽口から吹き込まれる乾留ガスとを混合させ、この混合させたガスを乾留室の上部で回収するフェロコークスの製造方法が提案されている。また、特許文献3には、フェロコークスを製造する竪型乾留炉で使用される耐火物組成は、ファイアライトの生成を防止する観点から、室式コークス炉で使用される珪石質煉瓦ではなく、粘土質煉瓦(「シャモット煉瓦」ともいう)が最適である旨が記載されている。
特許文献3によれば、フェロコークスと熱交換した後の冷却ガスを乾留ガスと混合するので、竪型乾留炉の構造が簡素化されるとともに、エネルギー消費量を低減することができ、フェロコークスの製造コストの削減が達成されるとしている。
また、特許文献4には、加熱した乾留ガスを竪型乾留炉内に吹き込んで、石炭と酸化鉄との成型体を乾留してフェロコークスを製造する製造装置において、竪型乾留炉の炉頂ガスの少なくとも一部を加熱して乾留ガスとして吹き込むための乾留ガス加熱装置が、蓄熱体が充填された蓄熱室と燃焼用バーナーが設置された燃焼室とを備え、この乾留ガス加熱装置と竪型乾留炉とが羽口を介して接続されているフェロコークス製造装置が提案されている。
特許文献4によれば、乾留ガス加熱装置は、蓄熱体が充填された蓄熱室と、燃焼用バーナーが設置された燃焼室と、を備えているので、回収した炉頂ガスをフェロコークス製造に必要な900℃以上に容易に加熱することができるとともに、乾留ガス成分中の炭化水素の熱分解による供給流路の閉塞を防止することができ、且つ、酸化鉄を十分に還元することができ、高強度のフェロコークスを安定して製造することが実現されるとしている。
特開平10−287883公報 特開2004−292692号公報 特開2011−57970号公報 特開2012−167156号公報
しかしながら、フェロコークスを製造するための竪型乾留炉を長期間に亘って安定して使用するという観点から上記従来技術を検証すれば、上記従来技術には以下の問題点がある。
特許文献1及び特許文献2は、珪石質煉瓦を内張り煉瓦(ワーク煉瓦)とする室式コークス炉でフェロコークスを製造しており、珪石質煉瓦は、酸化鉄と反応して低融点のファイアライトを生成することから、基本的に、フェロコークスを製造する竪型乾留炉用の内張り煉瓦としては適していない。特許文献1及び特許文献2に提案される方法を採用すれば、ファイアライトの生成を防止することはできるが、極めて煩雑な操業を余儀なくされ、定常的に行うことは困難といわざるを得ない。
特許文献3は、竪型乾留炉用の内張り煉瓦として、粘土質煉瓦が最適であることを記載しているが、本発明者らは、粘土質煉瓦が施工された竪型乾留炉では、数百日間の運転後、冷却室の下部に設置される冷却ガス吹き込み羽口を構成する粘土質煉瓦及び冷却ガス吹き込み羽口の周囲の内張りに施工された粘土質煉瓦で、大きな割れや欠損が見られ、更に長期間に亘って炉を継続して使用することは問題であることを経験している。
特許文献4は、竪型乾留炉を構成する煉瓦材質について全く記載していない。
即ち、上記特許文献1〜4は、竪型乾留炉において、損傷が少なく、長期間の使用が可能となる最適な煉瓦組成を開示しておらず、従来、十分な耐用性を有する耐火物の施工された竪型乾留炉が得られていないのが実情であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、竪型乾留炉を用いてコークス或いはフェロコークスを製造するにあたり、長期間に亘って安定して使用することのできる、十分な耐用性を有する耐火物が施工された竪型乾留炉を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]上部に、被乾留物を加熱用乾留ガスによって乾留する乾留室を有し、且つ、下部に、前記被乾留物から製造された乾留物を冷却ガスによって冷却する冷却室を有する、内壁に耐火物が施工された竪型乾留炉において、原料配合中のAl23含有量が40〜85質量%、SiO2含有量が1〜50質量%、炭素含有量が6〜15質量%であり、金属Si添加量が配合原料の合計に対して外掛けで1〜5質量%である、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が、前記冷却ガスを吹き込むための羽口及び/または該羽口の周囲の内張りに施工されていることを特徴とする竪型乾留炉。
[2]前記Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の1000℃での圧縮強度が50MPa以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の竪型乾留炉。
[3]前記被乾留物は石炭と酸化鉄との混合物であり、前記乾留物はフェロコークスであることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の竪型乾留炉。
本発明によれば、上部に乾留室、下部に冷却室を有する竪型乾留炉において、少なくとも冷却室の冷却ガス吹き込み羽口及び/またはその周囲の内張りは、耐磨耗性が高く、且つ、耐スポール性に優れる、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が施工されているので、熱流速が大きいことから、発生する熱応力の大きい冷却ガス吹き込み羽口及び/またはその周囲であっても、施工された煉瓦に割れや欠損が発生せず、長期間に亘って安定して乾留操業を行うことが実現される。
本発明で対象とする竪型乾留炉の概略側面図である。 図1に示す竪型乾留炉の冷却ガス吹き込み羽口部分の耐火物施工構造を示す概略断面図である。 Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の製造工程を示す図である。 試験1〜5の各煉瓦での耐スポール性の測定結果を示す図である。 試験1〜5の各煉瓦での損耗速度の測定結果を示す図である。 Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、炭素含有量と1000℃での圧縮強度との関係を示す図である。 試験6〜10のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性の測定結果を示す図である。 炭素含有量を6質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での耐スポール性の測定結果を示す図である。 炭素含有量を15質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での耐スポール性の測定結果を示す図である。 炭素含有量を6質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での1000℃における圧縮強度の測定結果を示す図である。 炭素含有量を15質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での1000℃における圧縮強度の測定結果を示す図である。
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明で対象とする竪型乾留炉の概略側面図である。竪型乾留炉は、図1の紙面に垂直な方向を広幅面とする、紙面に垂直な方向に長く延びた直方体状の形状を有しており、図1は直方体状の形状の狭幅面側から見た図であり、図1の左右両側の炉壁で囲まれた範囲に充填された被乾留物に対して、左右両側の炉壁に設置された各種羽口から乾留用のガスを吹き込んで熱交換を行う構造である。図1では、各種羽口を右側の炉壁のみに記載しているが、実際には、各種羽口は左右の炉壁の対称な位置に配置されている。
図1において、石炭粉を塊成化した成型炭を乾留してコークスを製造するか、或いは、石炭粉と酸化鉄粉との混合物を塊成化した成型体を乾留してフェロコークスを製造するための竪型乾留炉1は、その上部に、前記成型炭や前記成型体を被乾留物として乾留する乾留室2を有し、また、その下部に、製造された乾留物を冷却ガスで冷却する冷却室3を有している。乾留室2と冷却室3とは連続しており、その境界を隔てるものは存在しない。乾留室2の上端は、被乾留物装入装置4と連結され、一方、冷却室3の下端は、乾留物排出装置5と連結されている。
乾留室2には、高温の乾留ガスを乾留室2に供給するための第1のガス吹き込み羽口7と、中温の乾留ガスを乾留室2に供給するための第2のガス吹き込み羽口8と、乾留室内の炉内ガスを抜き出すための循環ガス抜き出しダクト6と、が設けられている。第1のガス吹き込み羽口7は乾留室2の下部に設けられ、第2のガス吹き込み羽口8は乾留室2の中段部に設けられ、循環ガス抜き出しダクト6は乾留室2の上端部に設けられている。第1のガス吹き込み羽口7からは、第1の乾留ガス加熱装置11で加熱された乾留ガスが吹き込まれ、第2のガス吹き込み羽口8からは、第2の乾留ガス加熱装置12で加熱された乾留ガスが吹き込まれるように構成されている。
冷却室3には、冷却ガスを冷却室3に供給するための冷却ガス吹き込み羽口9が、冷却室3の下部に設けられている。
循環ガス抜き出しダクト6から抜き出された炉内ガスは、循環ガス冷却装置10で冷却されてガス中のタールが除去され、その後、第1の乾留ガス加熱装置11を経由して第1のガス吹き込み羽口7を介して乾留室2に供給され、また、第2の乾留ガス加熱装置12を経由して第2のガス吹き込み羽口8を介して乾留室2に供給され、また更に、冷却ガス吹き込み羽口9を介して冷却室3に供給されている。つまり、乾留室2から排出する炉内ガスは、乾留室2及び冷却室3に循環使用されており、余剰のガスは系外のガスホルダー(図示せず)などに燃料ガスとして回収される。
石炭の乾留によって生成するガスは、COガス、CH4ガス及びH2ガスであり、燃料ガスとして機能する。第1の乾留ガス加熱装置11及び第2の乾留ガス加熱装置12では、熱交換器による間接加熱を基本としており、この場合にはガス成分は変化しない。但し、乾留室2に乾留ガスとして供給するガスの温度を上昇させるために、特に、第1の乾留ガス加熱装置11では、ガス中のCOガス、CH4ガス及びH2ガスの一部を燃焼させることがある。この場合には、乾留ガス中に少量のCO2ガス及びH2Oガス(水蒸気)が含まれるが、これらは、乾留室内の石炭や乾留物と反応してCOガス及びH2ガスとなる。従って、循環ガス抜き出しダクト6から抜き出された炉内ガスは、O2ガスを実質的に含まず、COガス、CH4ガス及びH2ガスを主成分とする。第1の乾留ガス加熱装置11などで燃焼ガスとして空気を使用することから、炉内ガスは窒素ガスを含有している。
この竪型乾留炉1を用いて、コークスまたはフェロコークスを製造する際には、石炭粉を塊成化した成型炭、或いは、石炭粉と酸化鉄粉との混合物を塊成化した成型体を被乾留物装入装置4から乾留室2に装入する。装入時の被乾留物は常温(20〜30℃)から100℃程度の乾燥温度までの範囲である。循環ガスを、第1の乾留ガス加熱装置11で800〜1100℃程度に加熱し、且つ、第2の乾留ガス加熱装置12で400〜700℃程度に加熱した後、この加熱した乾留ガスを、第1のガス吹き込み羽口7及び第2のガス吹き込み羽口8を介して乾留室2に吹き込む。乾留室内の被乾留物は加熱されて乾留され、石炭のコークス化が起こる。被乾留物が、酸化鉄を含有する成型体の場合には、石炭のコークス化に併せて、酸化鉄の還元反応も起こる。これにより、乾留物としてコークスまたはフェロコークスが生成する。
生成した乾留物は、乾留物排出装置5からの系外への乾留物の排出に伴って冷却室3に順次降下し、冷却室3において、冷却ガス吹き込み羽口9から吹き込まれる冷却ガスによって約100〜150℃まで冷却され、その後、乾留物排出装置5から系外に排出される。冷却室3にてフェロコークスと熱交換した後の冷却ガスは、乾留室2に上昇し、第1のガス吹き込み羽口7及び第2のガス吹き込み羽口8から吹き込まれる乾留ガスと乾留室内で混合して温度上昇し、被乾留物を乾留するための乾留ガスとして機能する。
図2に、図1に示す竪型乾留炉の冷却ガス吹き込み羽口部分9の耐火物施工構造を、概略断面図で示す。図2において、符号21はワーク煉瓦、22は永久煉瓦、23は断熱キャスタブル、24は、内部に羽口孔を有する羽口用円筒型キャスタブル、25及び26は、炉内側の羽口孔を形成する羽口煉瓦、27は、羽口煉瓦26の直下に配置され、炉内側の羽口孔の一部を形成する羽口煉瓦、28は羽口部の背面を形成する羽口部バックアップ煉瓦、29は、羽口用円筒型キャスタブル24と羽口煉瓦25、26とを接続するキャスタブル、30は羽口孔である。キャスタブル29には羽口孔30が設けられている。
羽口用円筒型キャスタブル24の羽口孔30は横断面が円形であるが、羽口煉瓦25と羽口煉瓦26とで形成される羽口孔30は、水平方向を長辺とする長方形となっている。羽口煉瓦25と羽口煉瓦26とは、別の煉瓦であり、それぞれ複数の羽口煉瓦25及び羽口煉瓦26によって羽口孔30が形成されている。
つまり、竪型乾留炉1における冷却ガス吹き込み羽口9は、乾留物と吹き込みガスとの熱交換をできるだけ均一に行うようにするために、羽口孔30が、炉の水平方向に長く延びた長方形形状となっている。尚、第1のガス吹き込み羽口7及び第2のガス吹き込み羽口8も同様の構造となっている。長方形の羽口孔30の上面を形成する羽口煉瓦25は、下側から支持することができないため、上端側の幅(図2の紙面に垂直な方向)を下端側の幅よりも大きくして、側面(図2の紙面に平行な方向)からの拘束により支持する構造としている。各羽口でのこのような耐火物構造を「ジャックアーチ構造」と称している。
但し、羽口孔30の上部を構成する羽口煉瓦25などの耐火物を支持する観点から、炉の水平方向(紙面の奥行き方向)全長に亘って羽口孔30を形成することはできず、結局、炉の広幅面幅方向1〜1.5mのピッチで、そのピッチの半分程度の幅を水平方向幅とする羽口孔30を有する冷却ガス吹き込み羽口9が複数個設置される。これは、第1のガス吹き込み羽口7及び第2のガス吹き込み羽口8も同様である。従って、竪型乾留炉1の鉛直方向において、各種羽口の配置された位置では、炉の水平方向に沿って羽口が存在する箇所と存在しない箇所とが交互に並ぶことになり、炉の水平方向に沿って周期的な温度分布が生じることから、羽口周辺には大きな熱応力が発生する。
大きな熱応力が発生すると、「煉瓦内に亀裂が生じて割れる」というスポーリングが起こり、煉瓦に大きな割れや欠損が発生し、その範囲を徐々に拡大する虞があることから、長期間に亘って炉の運転を継続するうえで問題となる。また、ガスの熱伝達係数は高流速の部分ほど高いため、ガス吹き込み羽口の内面を形成する耐火物には、大きな熱流束が生じて熱応力が増大する。
このようなことから、装置設計上、特にガス流量が大きくなる冷却ガス吹込み羽口9において、上記の問題が顕在化し、羽口煉瓦25及び羽口煉瓦26に割れや亀裂が発生しやすい。実際、実機においては、羽口煉瓦25、羽口煉瓦26及び羽口煉瓦27の損傷が激しく、特に、炉内の降下物及び炉壁の温度がより高温である上側の羽口煉瓦25の損傷が著しい。更に、竪型乾留炉1では被乾留物の降下に伴って、被乾留物との摩擦で羽口部分も含めて炉壁耐火物が損耗し、特に乾留が進んで被乾留物の硬度が増す炉の下部で損耗速度が大きくなる。損耗速度は小さくても長期間の連続稼動によって損耗量は次第に増大し、やがては使用限界損耗量に到達する。
従って、使用限界損耗量に到達するまでの時間を長くできるか否かは、その煉瓦の耐磨耗性に影響される。
フェロコークスなどを製造する竪型乾留炉1の冷却ガス吹き込み羽口9の羽口孔30を構成する耐火物及び羽口孔30の周囲の内張りに施工される耐火物には、十分な耐用年数を得るために、高耐スポール性及び高耐摩耗性が必要である。
本発明者らは、高耐スポール性及び高耐摩耗性を兼ね備えた耐火物材料として、炭素含有量が6〜15質量%で、金属Si添加量が配合原料の合計に対して外掛けで1〜5質量%である、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が竪型乾留炉1の冷却ガス吹き込み羽口9及び/またはその周囲を構成する内張り耐火物として最適であることを見出した。この場合、冷却ガス吹き込み羽口9を構成する内張り耐火物とは、羽口煉瓦25、羽口煉瓦26及び羽口煉瓦27を意味し、冷却ガス吹き込み羽口9の周囲を構成する内張り耐火物とは、羽口煉瓦25、羽口煉瓦26及び羽口煉瓦27の周囲に施工される耐火物という意味である。上記の構成のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を、これらの何れの部位に配設することも、耐火物の損傷を防止するうえで効果があるが、特に応力負荷の大きい羽口煉瓦25の部位は、少なくとも上記の構成のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦で構成することが望ましい。
Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦は、炭素含有量を増大させると、耐スポール性は向上するが、耐磨耗性が低下することが懸念される。従って、耐摩耗性の要求を満足しつつ、高耐スポール性を得られる炭素含有量を明らかにしなければならない。そこで、炭素含有量の異なるAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦について、炭素含有量と耐摩耗性の指標となる圧縮強度との関係を調査した。その結果、炭素含有量が15質量%以下、より望ましくは12質量%以下とすることにより、圧縮強度の大幅な低下を招くことはなく、耐摩耗性への影響が小さいことが分かった。
一方、炭素含有量が15質量%以下のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性を調査した結果、炭素含有量が6〜15質量%の範囲は耐スポール性がほとんど同等であったが、炭素含有量が6質量%未満になると、耐スポール性が大幅に低下した。
これらの結果から、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、高耐摩耗性と高耐スポール性とを両立させるためには、炭素含有量を6〜15質量%の範囲に制御する必要のあることが明らかとなった。
また、一般的に1200℃以上といった高温環境で使用されるAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦では、強度の改善、及び、炭素の酸化抑制を目的として金属Si粉末などの金属が添加される場合がある。金属Si粉末の添加量が増加すると強度は上昇し耐磨耗性が向上することが期待される。
そこで、金属Si粉末の添加量が異なるAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の強度及び耐摩耗性を調査した。その結果、金属Si粉末の添加量を1質量%以上とした還元焼成煉瓦により、他の酸化物系の焼成煉瓦と同程度の高い耐摩耗性が得られることがわかった。更に、金属Si粉末の添加量が1質量%以上のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性を調査した。その結果、金属Si粉末の添加量が1〜5質量%の範囲では耐スポール性はほとんど同等であったが、金属Si粉末の含有量が6質量%を超えると、耐スポール性は大幅に低下した。
これらの結果から、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、高耐磨耗性と高耐スポール性とを両立させるためには、金属Si粉末の添加量を1〜5質量%の範囲に制御する必要のあることが明らかとなった。
即ち、本発明において竪型乾留炉1の内張り煉瓦(ワーク煉瓦)として使用するAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦は、主に、Al23、SiO2、SiC、Cで構成され、原料配合中の成分範囲は、Al23が40〜85質量%、SiO2が1〜50質量%、炭素が6〜15質量%であり、金属Si添加量が配合原料の合計に対して外掛けで1〜5質量%であり、更に、結合剤(バインダー)として、フェノールレジン及びヘキサミンなどが使用されたものである。上記Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦を、冷却ガス吹き込み羽口9の羽口孔30を構成する内張り耐火物または羽口孔30の周囲に施工される内張り耐火物として使用した際に、その効果が顕著である。
Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦に用いる酸化物原料、SiC原料及びC(炭素)原料のうちで、酸化物原料については特に規定する必要はなく、耐火性、化学的安定性、熱膨張特性、耐摩耗性、価格などを考慮したうえで一般的に用いられる酸化物原料を使用すればよいが、原料配合中のAl23含有量は40〜85質量%、SiO2含有量は1〜50質量%の範囲の化学成分のものが好適である。但し、SiO2源となる鉱物のうちクリストバライト或いはトリジマイトは、数百℃の比較的低温において大きな体積変化を伴う変態を生起するので、これらの含有量は数質量%以下の少量に留めることが好ましい。また、SiC原料についても特に規定する必要はないが、SiCは炭素と異なり耐摩耗性を犠牲にすることなく熱伝導率を増大して耐スポール性を向上する効果が得られるので、1質量%以上配合することが望ましい。SiC含有量が増大するとコストの増大を招くことから、SiC含有量は1〜20質量%の範囲とすることが望ましい。
Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦のAl23原料には、粒径5〜3mm及び粒径3〜1mmのバン頁、並びに、粒径3〜1mm、粒径1〜0.15mm、粒径0.075mm以下のブラウンアルミナが使用される。SiO2原料には、粒径3〜1mmのろう石が使用され、炭素原料には、粒径0.15〜0.075mmの鱗状黒鉛が使用される。その他の原料としては、粒径0.075mm以下のSiC微粉、及び、粒径0.075mm以下の金属Si粉末が使用される。添加された金属Si粉末は、還元焼成により耐火物成分中の炭素原料と反応し、β−SiCボンドを生成し、熱間曲げ強度の向上及び耐酸化磨耗性の向上に寄与している。
Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の製造工程は、図3に示すように、混練、プレス成型、キュアリング(乾燥)、還元焼成(コーキング処理)の4つの工程からなる。混練では、バン頁、ブラウンアルミナ、ろう石の表面に結合剤がなじむように混合した後、鱗状黒鉛、SiC微粉、金属Si粉末を投入し、高速で混合する。次に、混練後の原料を金型に入れて1.5〜2.0t/cm2の圧力を数回加えながらプレス成型する。成型後、成型体を200℃前半で1日間程度キュアリングして熱硬化処理し、熱硬化処理後の成型体を還元雰囲気下において1400℃で還元焼成する。尚、図3に示す処理温度及び処理時間は一例であり、図3に示す処理温度及び処理時間に限定されるものではない。
上記組成範囲のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を、フェロコークスを製造する竪型乾留炉1の冷却室3の内壁全体に施工し、580日間の操業期間中の損耗量を測定した。損耗量は、特に損耗量が大きいことを経験的に把握している、冷却ガス吹き込み羽口9の羽口煉瓦25の直上位置で測定した。その結果、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の損耗量は、従来品である粘土質煉瓦(シャモット煉瓦)の損耗量と比較して6〜40%程度であることが確認された。
即ち、本発明においては、少なくとも、竪型乾留炉1の冷却室3の冷却ガス吹き込み羽口9を構成する羽口煉瓦25、羽口煉瓦26、羽口煉瓦27、または、これらに隣り合う内張り煉瓦として、上記組成範囲の、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を施工する。このAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が施工された以外の部分は、特許文献3と同様に粘土質煉瓦(シャモット煉瓦)で構成してもよいし、ハイアルミナ質煉瓦など他の焼成煉瓦で構成してもよい。また、適当な断熱材を使用して放熱ロスを抑制する対策を行えば、冷却ガス吹き込み羽口9の周囲と同様にAl23−SiO2−SiC−C質の煉瓦を施工してもよい。
以上説明したように、本発明によれば、上部に乾留室2、下部に冷却室3を有する竪型乾留炉1において、少なくとも冷却室3の冷却ガス吹き込み羽口9及び/またはその周囲の内張りには、耐磨耗性及び耐スポール性に優れる、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が施工されているので、高熱流束のために発生応力の大きい冷却ガス吹き込み羽口9の周囲であっても施工された煉瓦に割れや欠損が発生せず、長期間に亘って安定した乾留操業を行うことが実現される。
尚、竪型乾留炉1の構成は上記に限るものではなく、冷却ガス吹き込み羽口9から冷却ガスが吹き込まれ、この冷却ガスで乾留物を冷却する型式の竪型乾留炉である限り、例えば、特許文献3或いは特許文献4に開示される竪型乾留炉であっても、本発明を適用することができる。
本発明者らは、フェロコークスを製造する竪型乾留炉において、冷却ガス吹き込み羽口を構成する煉瓦及びその周囲の内張り煉瓦(ワーク煉瓦)として施工された場合に、補修することなく長期間の使用を可能とする煉瓦材質を見出すことを目的として試験・研究を行った。竪型乾留炉における冷却ガス吹き込み羽口周囲を構成する煉瓦及びその内張り煉瓦は、前述したように、高耐スポール性、高耐摩耗性が必要である。
先ず、ハイアルミナ質煉瓦、粘土質煉瓦、炭化珪素質煉瓦、珪石質煉瓦、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦を用い、煉瓦種類別の耐スポール性を評価した。表1に、試験した各煉瓦の化学組成を示す。合計して100質量%に満たない残部はその他の不純物成分からなる。尚、表1には、耐スポール性の試験結果、圧縮強度、損耗速度なども併せて記載している。
Figure 2014185267
耐スポール性の評価方法は、以下に示すとおりである。
先ず、スポーリング試験を行う前に、各煉瓦の長手方向の動弾性率E0を測定した。次に、スポーリング試験条件を設定した。フェロコークスを製造する竪型乾留炉内での最高温度域は約1000℃であることから、スポーリング試験温度を1000℃に設定し、加熱時間を10分間/回、冷却時間を水冷5分/回と大気冷却10分/回との合計15分/回とし、加熱と冷却とを交互に繰り返した。加熱と冷却との繰り返し回数は、1回、3回、5回とした。1回、3回、5回の加熱と冷却との繰り返しを終えた後、各煉瓦の長手方向の動弾性率Ei(i=1、3、5:加熱と冷却との繰り返し回数、「スポーリング回数」という)を測定し、試験前後での動弾性率の変化率Ei/E0を算出した。Ei/E0が高いほど耐スポール性に優れることを示す。動弾性率の測定方法はJIS R 1605に示された超音波パルス法に準じた。
耐スポール性の測定結果を表1及び図4に示す。スポーリング回数毎のEi/E0の結果から、試験5のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性が最も高いことがわかった。つまり、耐スポール性の観点からは、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦が最適であることがわかった。
次に、表1に示すハイアルミナ質煉瓦、粘土質煉瓦、炭化珪素質煉瓦、珪石質煉瓦、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐磨耗性を評価した。耐摩耗性の評価方法は以下に示すとおりである。
前述したように、フェロコークス製造用竪型乾留炉内での最高温度域は約1000℃であり、煉瓦の耐摩耗性は圧縮強度と相関が高いことから、1000℃での圧縮強度を測定した。20mm×20mm×20mmサイズの試験片を各煉瓦から切り出して試験装置に設置し、その後、昇温速度5℃/minで1000℃になるまで昇温し、1000℃に到達した後10分間の保持時間を設け、その後、圧縮強度を測定した。荷重降下速度は0.5mm/minとした。
測定結果を表1に示す。1000℃での圧縮強度は、試験5のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が最も低かった。
更に、フェロコークス製造用竪型乾留炉において、煉瓦張り分け試験(同一の領域に試験煉瓦を施工し、各々の煉瓦の損耗量を比較調査する試験)を行い、竪型乾留炉の操業期間中における煉瓦の損耗量を測定した。煉瓦張り分け試験は、図2に示した冷却ガス吹き込み羽口を構成する羽口煉瓦25の直上位置にそれぞれの煉瓦を設置し、操業雰囲気にそれぞれの煉瓦を曝して行った。100日間の竪型乾留炉での操業を終えた後にそれぞれの煉瓦を回収し、煉瓦の厚さを測定した。操業前後での煉瓦厚さの差を損耗量とし、損耗量と操業期間とから、1日あたりの損耗量(以下「損耗速度」という)を算出した。
調査結果を表1及び図5に示す。損耗速度は、試験5のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が最も大きかった。尚、図5に示すように、1000℃での圧縮強度が高いほど、損耗速度が低下することが確認できたことから、これを耐摩耗性の指標として使用できることがわかった。
これらの試験結果から、試験5のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦は、耐スポール性に最も優れるが、耐摩耗性に最も劣っていることが明らかとなった。
但し、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦は、その他の煉瓦に比較して突出して耐スポール性に優れている。従って、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、圧縮強度を例えばハイアルミナ質煉瓦のレベルまで高め、これによって耐摩耗性を高めることができれば、フェロコークス製造用竪型乾留炉の冷却ガス吹き込み羽口自体及びその周囲の内張りに施工する耐火物として最適な耐火物となり得る。
また、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦は炭素を含有することで、煉瓦自体の硬度が低下し、これが耐摩耗性劣化の原因の1つとなっており、炭素含有量を制限することが、耐摩耗性を高めるための有効な手段の一つである。
そこで、竪型乾留炉での煉瓦の損耗量を少なくすることを目的として、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性を維持しつつ、耐摩耗性を高めることを試みた。
Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐摩耗性は炭素含有量に大きく影響される。そこで、7種類の炭素含有量の異なるAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を試作し(試験6〜12)、炭素含有量と耐摩耗性の指標となる圧縮強度との関係を調査した。表2に炭素含有量と圧縮強度との関係を調査した7種類のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の原料配合を示す。
Figure 2014185267
表2に示すAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の製造方法を以下に示す。
表1に示す試験5のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦には、結合剤と金属Si粉末とを除いて9種類の原料が使用されている。この試験5での原料配合を基本とし、炭素含有量の異なるAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の配合を検討した。炭素原料となる鱗状黒鉛の含有量は1質量%、3質量%、5質量%、6質量%、12質量%、15質量%、18質量%の7種類とした。
また、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の圧縮強度に及ぼす炭素含有量の影響を調査することから、機能材においては鱗状黒鉛含有量だけを変更し、SiC粉末量は一定とし、金属Si粉末添加量は、配合原料(骨材原料及び機能材原料)の合計量100質量部に対して1質量部の一定とした。金属Si粉末は、後述するように、還元焼成後の強度を増大して、耐摩耗性を向上する効果があることから、一定量を添加した条件で比較を行った。骨材においては粒径1mm以下のブラウンアルミナだけを変更し、他の骨材原料は一定とした。即ち、鱗状黒鉛の増減量を粒径1mm以下のブラウンアルミナの増減量と置換した。尚、骨材原料にろう石を配合した理由は、原料コストを低減するためである。
表2に示すように配合を決めた後、図3に示す製造工程に沿って、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を製造し、1000℃の不活性ガス雰囲気において圧縮強度を測定した。
炭素含有量と1000℃での圧縮強度との関係の調査結果を図6に示す。炭素含有量が増大すると、次第に圧縮強度は低下した。しかし、炭素含有量が15質量%以下では、他の酸化物系の焼成煉瓦と同程度の50MPa以上の1000℃での圧縮強度が得られており、更に、炭素含有量を12質量%以下とすることにより、60MPa以上の1000℃での圧縮強度が得られた。
この結果から、炭素含有量を15質量%以下、より望ましくは12質量%以下とすることにより、フェロコークス用などの竪型乾留炉の内張り煉瓦に適用可能なレベルの耐摩耗性が期待できることがわかった。
次に、表2に示すAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦のなかで、炭素含有量が12質量%以下である試験6〜10のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性を調査した。耐スポール性の評価方法は上記と同一の方法とした。耐スポール性の測定結果を図7に示す。
図7に示すように、炭素含有量が1〜5質量%の煉瓦(試験6〜8)の耐スポール性は、試験9の炭素含有量が6質量%の煉瓦よりも大幅に低かった。炭素含有量が12質量%の煉瓦(試験10)の耐スポール性は、試験9の煉瓦よりも若干優れていたが、大きな差はなく、炭素含有量を6質量%以上とすることにより、良好な耐スポール性が得られると考えられた。
図6及び図7に示す結果から、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、耐摩耗性と高耐スポール性とを両立できる炭素含有量は6〜15質量%であることが明らかとなった。
以上の結果に基づき、炭素含有量を6質量%に固定し、金属Si粉末を0〜6質量%に変更したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を、図3に示す製造工程に沿って試作し、金属Si含有量の耐スポール性及び耐磨耗性に及ぼす影響を調査する試験(試験5、試験13〜18)を行った。同様に、炭素含有量を15質量%に固定し、金属Si粉末を0〜6質量%に変更したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を、図3に示す製造工程に沿って試作し、金属Si含有量の耐スポール性及び耐磨耗性に及ぼす影響を調査する試験(試験19〜25)を行った。
表3に、炭素含有量を6質量%に固定して金属Si含有量を変更したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の原料配合を示し、表4に、炭素含有量を15質量%に固定して金属Si含有量を変更したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の原料配合を示す。
Figure 2014185267
Figure 2014185267
炭素含有量を6質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での耐スポール性の測定結果を図8に示し、また、炭素含有量を15質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での耐スポール性の測定結果を図9に示す。
図8及び図9に示すように、炭素含有量が6質量%及び15質量%のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の耐スポール性は、金属Si粉末の含有量が0〜5質量%の範囲ではほとんど同等であったが、金属Si粉末の含有量が6質量%の煉瓦では大幅に低下した。つまり、耐スポール性を確保するためには金属Si粉末の含有量を5質量%以下にする必要があることがわかった。
一方、炭素含有量を6質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での1000℃における圧縮強度の測定結果を図10に示し、また、炭素含有量を15質量%に固定したAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦での1000℃における圧縮強度の測定結果を図11に示す。
図10及び図11に示すように、炭素含有量が6質量%及び15質量%のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の圧縮強度は、金属Si粉末の添加量を1質量%以上とすることにより、1000℃での圧縮強度を効果的に増大することが可能であり、炭素含有量が6質量%のAl23−SiO2−SiC−C質の還元焼成煉瓦の1000℃での圧縮強度は60MPa以上に増大し、炭素含有量が15質量%のAl23−SiO2−SiC−C質の還元焼成煉瓦の1000℃での圧縮強度は55MPa以上に増大した。つまり、1000℃での圧縮強度を確保するためには、金属Si粉末の含有量を1質量%以上にする必要があることがわかった。
即ち、図8〜図11に示す結果から、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の高耐スポール性と高耐磨耗性とを両立できる金属Si粉末の含有量は1〜5質量%であることが明らかとなった。
これらの結果から、Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦において、高耐スポーリング性、高耐摩耗性を両立するためには、炭素含有量を6〜15質量%の範囲とし、且つ、金属Si粉末の添加量を1〜5質量%の範囲に制御することが必要であることが明らかとなった。
そこで、炭素含有量が6〜15質量%、且つ、金属Si粉末の含有量が1〜5質量%である試験13〜17及び試験20〜24の、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を用いて、フェロコークス製造用竪型乾留炉で煉瓦張り分け試験を580日間行い、竪型乾留炉の操業期間中における煉瓦の損耗量を測定した。試験煉瓦の施工位置、試験方法、損耗速度の算出方法は前述した煉瓦張り分け試験と同一とした。
更に、図2に示した冷却ガス吹き込み羽口を構成する羽口煉瓦25そのものに、本発明例のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の原料配合のうち、定性的に最も耐スポール性に劣ると考えられる試験17のAl23−SiO2−SiC−C質の還元焼成煉瓦を使用して、同じ試験期間における耐用性を評価した。
表5に、試験13〜17及び試験20〜24のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の化学成分、耐スポール性、1000℃での圧縮強度、並びに、煉瓦張り分け試験による損耗速度の調査結果を示す。
Figure 2014185267
表5に示すとおり、試験13〜17及び試験20〜24のAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦の損耗速度は、表1の各種煉瓦の損耗速度と比較して大幅に低下した。
即ち、竪型乾留炉試験を含めた今回の試験結果から、炭素含有量を6〜15質量%とし、且つ、金属Si粉末の添加量を1〜5質量%とする、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦をフェロコークス製造用竪型乾留炉の冷却ガス吹き込み羽口の周囲の内張り耐火物として施工した場合、損耗を最小限まで抑制できることが確認できた。また、試験17のAl23−SiO2−SiC−C質の還元焼成煉瓦を羽口煉瓦25として構成した冷却ガス吹き込み羽口では、580日間の運転後でも全く亀裂が認められなかった。
これらの結果から、炭素含有量を6〜15質量%とし、且つ、金属Si粉末の含有量を1〜5質量%とする、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦を用いて、羽口煉瓦25、26、27及び/またはその周囲の内張り煉瓦の耐スポール性を改善することにより、冷却ガス吹き込み羽口部分の耐火物、ひいてはこれが設置される竪型乾留炉の耐用年数を大幅に延長可能であることが確認できた。
1 竪型乾留炉
2 乾留室
3 冷却室
4 被乾留物装入装置
5 乾留物排出装置
6 循環ガス抜き出しダクト
7 第1のガス吹き込み羽口
8 第2のガス吹き込み羽口
9 冷却ガス吹き込み羽口
10 循環ガス冷却装置
11 第1の乾留ガス加熱装置
12 第2の乾留ガス加熱装置
21 ワーク煉瓦
22 永久煉瓦
23 断熱キャスタブル
24 羽口用円筒型キャスタブル
25 羽口煉瓦
26 羽口煉瓦
27 羽口煉瓦
28 羽口部バックアップ煉瓦
29 キャスタブル
30 羽口孔

Claims (3)

  1. 上部に、被乾留物を加熱用乾留ガスによって乾留する乾留室を有し、且つ、下部に、前記被乾留物から製造された乾留物を冷却ガスによって冷却する冷却室を有する、内壁に耐火物が施工された竪型乾留炉において、
    原料配合中のAl23含有量が40〜85質量%、SiO2含有量が1〜50質量%、炭素含有量が6〜15質量%であり、金属Si添加量が配合原料の合計に対して外掛けで1〜5質量%である、還元焼成されたAl23−SiO2−SiC−C質煉瓦が、前記冷却ガスを吹き込むための羽口及び/または該羽口の周囲の内張りに施工されていることを特徴とする竪型乾留炉。
  2. 前記Al23−SiO2−SiC−C質煉瓦の1000℃での圧縮強度が50MPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載の竪型乾留炉。
  3. 前記被乾留物は石炭と酸化鉄との混合物であり、前記乾留物はフェロコークスであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の竪型乾留炉。
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JP2016180043A (ja) * 2015-03-24 2016-10-13 Jfeスチール株式会社 フェロコークス製造用竪型乾留炉
CN109929579A (zh) * 2019-03-14 2019-06-25 上海新佑能源科技有限公司 一种利用气体热载体为热源的颗粒煤立式干馏炉

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