JP2014183768A - 海馬または嗅球由来の成体神経幹細胞を用いた神経・精神疾患および糖尿病のモニタリング方法 - Google Patents

海馬または嗅球由来の成体神経幹細胞を用いた神経・精神疾患および糖尿病のモニタリング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
鬱病や神経変性疾患を伴う糖尿病などの神経精神疾患の進行を、患者の自家細胞を用いて、生体に与える影響を最小限にとどめて、モニタリングする方法を提供すること。
【解決手段】
患者の海馬または嗅球から採取され、樹立された成体神経幹細胞、または、これを分化させたニューロンにおける、神経新生に関係する遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールの成体神経幹細胞またはこれを分化させたニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経精神疾患の病態をモニターする。
特に嗅球から患者の自家細胞を採取する場合は、開頭手術を要さず、内視鏡手術などにより比較的容易に収集することができるため、患者に与える影響を最小限にとどめることができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、鬱病や神経変性疾患を伴う糖尿病などの神経精神疾患の進行を、生体に与える影響を最小限にとどめて、モニタリングする方法に関するものである。
海馬は、われわれの記憶や学習能力に関わる脳内の器官である。アルツハイマー病では、海馬の神経細胞が破壊されて萎縮する。鬱病の患者の脳でも、海馬の萎縮が確認される。糖尿病でも神経系に悪影響が出る事が明らかになっており、海馬の神経新生の低下や神経機能の悪化を伴う。このように、海馬は、多くの神経精神疾患の進行過程で重要な役割を担っている。海馬は、脳のほぼ中心に存在する小さな器官で、神経幹細胞の基礎研究や再生医療に応用する研究に多く用いられている。
この海馬では、生涯にわたり新しい神経細胞が日々産み出されている。しかしその頻度は年齢とともに減少し、ストレスや疾患など個人が置かれた環境によって変化する。これは、海馬の「神経新生(新しく神経を作りだす)」現象が、外的刺激によって容易に変化し得る分子メカニズムで調節されていることを示唆している。この「外的刺激」には、海馬での新しい神経細胞のネットワーク形成を上昇するもの(ex.運動、豊かな環境など)もあれば、減少させるもの(ex.ストレス、疾患、老化など)もあり、それらに応答して数多くの遺伝子群の発現様式が多様に変化することが判っている。
本発明者らは、成体の神経新生を大きく左右するWntシグナルの下流で、ゲノム上のレトロエレメント近隣の遺伝子の活性化が、それぞれの環境や個人の状態に応じて引き起こされることをこれまでに明らかにした(非特許文献3)。図1は非特許文献3のNews and Viewsで、本発明者らが発見した制御機構を紹介した図である。成体神経幹細胞から新しく神経が産み出される際、ゲノムノンコーディング領域のレトロエレメント(レトロトランスポゾン)とその近隣遺伝子が活性化される。するとレトロエレメント配列の差異により、遺伝子発現の様式が異なった「多様性”diversity”」をもつ神経細胞が産み出されるという新知見である。レトロトランスポゾンは、RNAの逆転写を介して自分自身をゲノム上の別の場所に埋め込む「動く遺伝子(Jumping gene)」である。
本発明者らの発見した上述の神経新生の制御機構は、多くの精神疾患や、糖尿病によって引き起こされる神経変性疾患にも、深く関係していると考えられる。
しかしながら、神経変性疾患に際し、個々の神経細胞で、異なった遺伝子が、レトロエレメントを介して活性化・不活性化(On/Off)の影響をどのように受けるのかを調べた研究は、今まで全くなされていない。
疾患の進行段階で、診断の指標や薬効評価の指標となる遺伝子を同定することは、医療創薬研究の要であり、多くの神経精神疾患に深く関わる海馬でそういった指標となる遺伝子の発現がどう変容するかを生きたままモニタリングできる仕組みを、既存の治療に組み合わせるシステムが待望されていた。
また、上述のとおり、糖尿病に多くの神経変性疾患が伴うことが知られている。糖尿病患者は、アルツハイマー病、パーキンソン病、鬱病、およびハンチントン病のような神経変性疾患および精神障害にかかるリスクが大きいばかりではなく、糖尿病は、海馬(HPC)における神経回路の機能に対し大きな影響を与える。しかしながら、糖尿病の進行期間中に、生きた状態で、実験によりHPCの細胞の機能を直接モニターし、および/または、研究することは困難であった。
Gage,F. H. et al.,Survival and differentiation of adult neuronal progenitor cells transplanted to the adult brain. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 92,11879-11883 (1995) Kuwabara T,Kagalwala MN,Onuma Y,Ito Y,Warashina M,Terashima K,Sanosaka T,Nakashima K,Gage FH,Asashima M (2011) Insulin biosynthesis in neuronal progenitors derived from adult hippocampus and the olfactory bulb. EMBO Mol. Med.,3,742-754 Kuwabara T,Hsieh J,Muotri A,Yeo G,Warashina M,Lie DC,Moore L,Nakashima K,Asashima M,Gage FH:Wnt-mediated activation of NeuroD1 and retro-elements during adult neurogenesis. Nature Neuroscience 2009,12(9):1097-U1096. Kim JJ,Diamond DM. (2002) The stressed hippocampus,synaptic plasticity and lost memories. Nat Rev Neurosci.,3(6):453-62. Njie eG,Kantorovich S,Astary GW,Green C,Zheng T,Semple-Rowland SL,Steindler DA,Sarntinoranont M,Streit WJ,Borchelt DR.(2012) A preclinical assessment of neural stem cells as delivery vehicles foranti-amyloid therapeutics. PLoS One. 2012;7(4):e34097 Samuvel DJ,Jayanthi LD,Bhat NR,Ramamoorthy S. (2005)A role for p38 mitogen-activated protein kinase in the regulation of the serotonin transporter:evidence for distinct cellular mechanisms involved in transporter surface expression. J Neurosci. 25(1):29-41. Suh H,Consiglio A,Ray J,Sawai T,D'Amour KA,Gage FH:In vivo fate analysis reveals the multipotent and self-renewal capacities of Sox2(+) neural stem cells in the adult hippocampus. Cell Stem Cell 2007,1(5):515-528. Arsenijevic,Y.,Weiss,S.,Schneider,B.,et al. (2001) Insulin-like growth factor-I is necessary for neural stem cell proliferation and demonstrates distinct actions of epidermal growth factor and fibroblast growth factor-2. J. Neurosci. 21,7194-7202.
本発明は、鬱病や神経変性疾患を伴う糖尿病などの神経精神疾患の進行を、患者の自家細胞を用いて、生体に与える影響を最小限にとどめて、モニタリングする方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、上述のレトロエレメント近隣遺伝子の中に、海馬の神経回路の形成と機能を調節する遺伝子が含まれており、その活性化がシグナルを受け取る神経細胞によって、また、疾病状態と正常な状態によって、一様ではないことを、初めて明らかにした。個人の状態によって生じるこのような大幅なシグナル変動は、神経細胞のゲノム上のレトロエレメント領域を介して、海馬の樹状突起スパインのミトコンドリア・キャリアー遺伝子、神経突起の形成を促進する遺伝子、シナプスの可塑性を制御する遺伝子等の発現に影響を与える。
本発明者らは、さらに、疾病状態と正常な状態における神経回路の形成と機能を調節する遺伝子の活性化の相異が、海馬の成体神経幹細胞およびこれをインビトロで分化させた海馬ニューロンにおいても、海馬組織と同様に観察することができ、さらに、嗅球の成体神経幹細胞およびこれをインビトロで分化させた嗅球ニューロンにおいても、同様に観察することができることを見出し、本発明を完成した。
われわれの脳内で機能的な神経細胞を生み出す源となる成体神経幹細胞(NSC)は、学習および記憶を司る海馬(HPC)に存在し、新しい神経が成体の脳においてさえも絶え間なく生成されている(非特許文献1)。成体NSCsは、自己複製能力を保持し、3つの分化系統、神経、星状膠細胞および乏突起膠細胞を生成させる(非特許文献1)。成体NSCsは、困難な手術を必要とする脳内の海馬(hippocampus,HPC)からの収集ばかりでなく、採取が比較的容易である嗅球(Olfactory bulb:OB)からも収集し、樹立、培養することができる(非特許文献2)。
また、成体神経幹細胞と膵臓細胞の間には、ある類似点が存在することが知られている。すなわち、成体のOBおよびHPCのNSCsを糖尿病のラットから収集し、培養細胞として樹立し、膵臓に自家移植して、インスリン生産の準備ができると、糖尿病ラットの膵臓に減少した血中のグルコースレベルを維持することができることが確認されている(非特許文献2)。このような再生医療の戦略は、(i)中枢神経系(CNS)におけるインスリンを介する制御システムと膵臓の内分泌系の間には非常に強い相互関係がある(非特許文献2)、(ii)CNSおよび膵臓におけるインスリン発現に必要な遺伝子は同じNeuroD1である(非特許文献2)、および、(iii)インスリンの発現を促す幹細胞が両方の器官に存在し、それらはNeuroD1の発現を引き起こすWnt3神経因子を分泌する(非特許文献2、3)、という科学的背景に依るものである。
本発明者らは、幼少時のストレス(母子単離法)によって作成した鬱病のモデルラットにおいて、海馬と嗅球から成体神経幹細胞(NSC)をそれぞれ樹立培養し、その遺伝子発現のパターンを健常体(コントロール;母子単離を施してしない通常飼育のラット)のHPC NSC(海馬由来の成体神経幹細胞)およびOB NSC(嗅球由来の成体神経幹細胞)と比較した。
その結果、鬱病の進行に伴って、
(1)海馬の神経新生初期段階に必要となる遺伝子NeuroD1,Doublecortin(DCX)、
(2)レトロトランスポゾンLINE-1、
(3)神経新生促進遺伝子Wnt3およびWnt3a、
(4)神経新生に必要となるWntシグナルの阻害因子、IGFBP4
の発現が、HPC NSCとOB NSCで、同様に変化する傾向を確認した。
本発明者らはさらに、神経特異的遺伝子である、
(5)セロトニントランスポーター
(6)SLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子
の発現レベルが、鬱病進行下のOB NSCとHPC NSCの両方において、同様に大幅に変化することを確認した。
海馬におけるセロトニン神経伝達の機能不全は、HPA系(ストレスに応答して神経内分泌反応を媒介する主要なシステム)の活動の機能障害とうつ病の病態に深く関与することが知られている(非特許文献4)。
これらの結果から、OB NSCは、鬱病時の中枢神経系(CNS)における神経変性を引き起こす神経・精神疾患の進行をモニタリングするために、HPC組織ないしHPC NSCに代えて、使用できることが見出された。
OB NSCはHPCよりも低侵襲な方法(内視鏡手術など)で、簡単に収集でき、樹立することができる(非特許文献5)。そのため、OB NSCは、中枢神経系の機能に悪性の損害を引き起こす神経変性疾患などの神経精神疾患の診断や、これらの疾患に有効な薬剤スクリーニングなどを行う、モニタリング用の自家神経幹細胞として使用することができる。
また、本発明者らは、ラットにおける実験的な糖尿病(ストレプトゾトシンによって誘導された糖尿病)の進行の比較的早い時期におけるHPCおよびOBに由来する成体NSCの神経への分化に必要とされる遺伝子の発現およびインスリンの発現の変化を調べ、HPCおよびOBのNSCsにおいて同様に発現が増加し、または、減少する遺伝子を見出した。これらの遺伝子の動向をモニタリングすることにより、神経変性を伴う糖尿病の病態をモニターすることが可能である。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSC またはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経精神疾患の病態をモニターする方法。
〈2〉患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する以下の(1)〜(6)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSC またはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の鬱病の病態をモニターする方法。
(1)海馬の神経新生初期段階に必要となる遺伝子NeuroD1,Doublecortin (DCX)、
(2)レトロトランスポゾンLINE-1、
(3)神経新生促進遺伝子Wnt3、Wnt3a、
(4)神経新生に必要となるWntシグナルの阻害因子IGFBP4
(5)セロトニントランスポーター
(6)SLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子
〈3〉患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する以下の(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSC またはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経変性を伴う糖尿病の病態をモニターする方法。
(1)Fzd3
(2)LRP5
(3)Nrxn1
(4)EAAT
(5)Scn1b
(6)Scn4b
(7)Nupr1
〈4〉期間をおいて採取され、樹立されたHPC NSCまたはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量を比較することにより、発現量の経時的変化をモニターすることを特徴とする、〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の方法。
〈5〉患者の嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(OB NSC)、または、これをニューロン分化させたOBニューロンにおける、神経新生に関係する遺伝子の発現量を、正常者の嗅球から採取され、樹立されたコントロールのOB NSCまたはこれをニューロン分化させたOBニューロンにおける発現量と比較することを特徴とする、〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の方法。
鬱病などを初めとする神経精神疾患は個人差が非常に大きいため、有効な治療法や薬効の評価は、患者の自家細胞を用いてモニタリングすることにより行うことが適切である。
本発明によれば、患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSC またはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する特定の遺伝子の発現量を、正常者の嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSC またはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経精神疾患の病態をモニターすることができる。これにより、個々の患者に有効な治療法や薬効の評価を行うことが可能となる。
また、患者の自家神経細胞として嗅球細胞を用いる場合は、海馬などのように脳内の神経細胞を取り出すための開頭手術を要することなく、患者の自家細胞を、内視鏡手術などにより比較的容易に収集することができるため、患者の病態のモニタリングに際し、患者に与える影響を最小限にとどめることができる。
成体神経幹細胞から多様性を持つ神経細胞が生み出される機構の説明図。 幼少時ストレスによる鬱病動物モデルの説明図。 鬱病モデルの海馬由来と嗅球由来の成体神経幹細胞培養系の比較写真。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、神経新生初期段階に必要となる遺伝子の発現の変化を示す図。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、レトロトランスポゾン遺伝子の発現の変化を示す図。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、神経新生促進遺伝子Wnt3およびWnt3aの発現の変化を示す図。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、Wntシグナルの阻害因子IGFBP4遺伝子の発現の変化を示す図。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、セロトニントランスポーター遺伝子の発現の変化を示す図。 鬱病vsコントロール群ラット間での、海馬由来および嗅球由来神経幹細胞培養系における、樹状突起スパインのミトコンドリア・キャリアーSLC遺伝子、神経突起の形成を促進するneureglin遺伝子、シナプスの可塑性を制御するRnf39遺伝子の発現の変化を示す図。 糖尿病進行期間中における、成体海馬の神経新生を制御する遺伝子の歯状回(DG)発現の変化を示す図(STZ誘導5日後)。 糖尿病進行期間中における、成体海馬の神経新生を制御する遺伝子の歯状回(DG)発現の変化を示す図(STZ誘導2週後)。 糖尿病進行期間中における、成体海馬の神経新生を制御する遺伝子の歯状回(DG)発現の変化を示す図(STZ誘導2月後)。 糖尿病ラットおよびコントロールの海馬および嗅球由来の成体神経幹細胞培養系の比較写真。 成体嗅球および海馬ニューロンにおける糖尿病応答遺伝子のQPCR分析結果を示す図(Wntシグナル伝達に関係する遺伝子)。 成体嗅球および海馬ニューロンにおける糖尿病応答遺伝子のQPCR分析結果を示す図。
[実施例1.鬱病モデル動物を用いた遺伝子の発現解析(図2参照)]
ヒトでは、幼少時の逆境は、脳に長期的な悪影響を及ぼすことが分かっている。母子単離法(Maternal separation:MS)はネグレクト/児童虐待を模倣する手法として動物実験に使用されている方法であり、HPA系の障害を引き起こすことがサル及びげっ歯類の研究で明らかになっていることから、鬱病のモデル動物を作成する方法として多用されている。本発明者らもその方法を用いて、鬱病の動物(ラット)を作製した。
未経産のFischer 344 rat雌とFischer 344 rat雄を繁殖のために使用した。生まれたラット仔は出生後1日目から、雌6匹、雄6匹をそれぞれの実験に使用した。各腹雌雄10匹を、鬱病群(MSグループ)またはコントロール群のいずれかに割り当てて使用した。鬱病群(MSグループ)のラット仔は、母ラットがいるホームケージから外し、紙片チップで敷き詰められた新しいケージの中に個別で隔離した。
隔離(母子単離,MS)は出生後20日間を通して、出生後一日齢から毎日2時間(9時〜11時)、離乳期まで行われた。
離乳期までの連日2時間のMS(母子単離)処置によって、実験動物の鬱病(MS)群は通常飼育のコントロール群に比べ、明らかに顕著なCRH(corticotropin-releasing hormone)遺伝子の発現上昇をもたらした。図2に、MS群およびコントロール群から摘出した海馬の歯状回におけるCRHの発現量の比較結果を示す。
CRHはストレスに反応して生じる自律神経系,免疫機能,行動,情動等の変化の発現に重要な役割を担っている「ストレス応答遺伝子」であり、海馬で発現が上昇したという事は、ストレス脆弱性を誘起した鬱病ラットが、想定通りに作成できた事を示す実験的根拠である。MS直後のAnalysis1でも、6ヶ月後のAnalysis2でも鬱病(MS)群におけるCRH遺伝子の発現上昇が引き続いており、鬱病状態が成長期以降、成体期に渡って長期的に定着した状態を示す。
離乳日(21日目;MSの最終日、解析1)と6ヵ月後(解析2)にラットの海馬及び嗅球からNSCを採取し、樹立、培養し(HPC NSCとOB NSC)、これらの各培養系からRNAサンプルを調整し、各遺伝子の発現解析を行った。
幹細胞を樹立するために顕微鏡下で収集されたHPCまたはOBは、StemPro Accutase(Invitrogen社製)で酵素消化して、解離した。解離した細胞混合物から単一な細胞懸濁液を得るために、40μmのセルストレーナー(BDファルコン)に通し、分離した。得られた細胞懸濁液を遠心分離した後、上清を捨てて数回洗浄した。この洗浄は、抗生物質抗真菌剤(WAKO社製)および100ng/mL FGF2(WAKO社製)を含むDMEM/F12培地(WAKO社製)により行った。精製されたHPCまたはOB NSCは、予めポリオルニチンラミニンでコートされたディッシュに、100ng/mLのFGF2およびN2サプリメント(WAKO社製)を含むDMEM/F12培地(WAKO社製)を用い、5% CO2インキュベーター内で培養した。
各遺伝子の発現を見るために、リアルタイムPCR解析法を用いた。細胞からのRNA抽出および遺伝子の発現解析の方法については、まずTotal RNAをISOGEN(WAKO社製)を用いて単離、精製した。Total RNAはRNaseフリーのDNase I(Ambion社製)で処理した。Firststrand cDNA合成は、キットに添付されているプロトコル(Invitrogenまたは宝酒造社製)に従って行った。定量PCRは、SYBRグリーン法(Applied Biosystems社#4309155)およびABI定量PCR機を用いて標準的な35から40サイクル内で行った。GAPDHを内部コントロールとして用いた。
この実験系において、Analysis1期および6ヶ月後のAnalysis2期の実験動物の海馬および嗅球から樹立した成体神経幹細胞培養系の写真を図3に示す。
(1)海馬の神経新生初期段階に必要となる遺伝子の発現解析)
発現量を解析した結果を図4に示す。Wntシグナルのレセプター(受容体)遺伝子やシグナルに関わる遺伝子(Fzd1,Fzd3,LRP1,Dvl1,Dvl2,beta-cetenin)などの発現は、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現はコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とほとんど変化がなかった。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。しかし、海馬の神経新生初期段階に必要となる遺伝子NeuroD1は、Analysis1期において約20〜30%減少、Analysis2期において約50%減少した。重要な事は嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向を特異的に示した、ということである。同様に、Doublecortin(DCX)は、Analysis1期において20〜35%減少、Analysis2期において約50〜55%減少した。
嗅球由来の成体神経幹細胞における、これらのNeuroD1、DCX遺伝子の鬱病進行時に伴う発現変化の挙動は、海馬由来の成体神経幹細胞と同様の傾向を示す事から、海馬での動態を反映したものであると見る事が可能である。
(2)レトロトランスポゾン
ゲノム内をジャンプして、近隣の遺伝子の発現に変化を及ぼすレトロトランスポゾンの発現量を解析した結果を図5に示す。
インターナルコントロールとなるリボソーマルRNAの発現については、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現はコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とほとんど変化がなかった。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
しかし、海馬の神経新生初期段階に発現する事が分かっている長鎖散在反復配列LINE-1の解析を行ったところ、GeneBank No. X03095.1(Rat LINE1 sequence RL1.3 (random genomic fragment)) (long interspersed middle repetitive DNA)、GeneBank No. M13100 (Rat long interspersed repetitive DNA sequence LINE3 (L1Rn))、U87606.1(Rattus norvegicus L1 retrotransposon mlvi2-rn56,5'UTR and putative RNA binding protein 1 gene,partial cds)の3つのLINE-1は、共にAnalysis1期において、約1.5倍から2倍の増加が認められた。また短鎖散在反復配列として知られるSINE(short interspersed nuclear element)もAnalysis1期において150〜220%の上昇を示した。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
Analysis2期においては、L1は対極的に約50%に減少した。一方、SINE(B1 SINEおよびB2 SINE)は共に、200%程度の上昇傾向を維持しているという興味深い動向が明らかになった。
重要な事は嗅球由来でも海馬由来でも、増加、減少への一転などの現象など、それぞれのレトロトランスポゾンで、同様の発現変化を特異的に示した、ということである。
嗅球由来の成体神経幹細胞における、これらのレトロトランスポゾン遺伝子の鬱病進行時に伴う発現変化の挙動は、海馬由来の成体神経幹細胞と同様の傾向を示す事から、海馬での動態を反映したものであると見る事ができる。
(3)神経新生促進遺伝子(細胞外分泌)Wnt3およびWnt3a
発現量を解析した結果を図6に示す。GFAP、S100betaなどグリア系発現遺伝子の発現については、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現はコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とほとんど変化がなかった。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
しかし、海馬の神経新生を調節する促進力となるWnt3およびWnt3a遺伝子は、Analysis1期において約200%まで増加し、Analysis2期においても約140%の増加傾向を依然として示している事が分かった。
嗅球由来でも海馬由来でも同じ傾向を特異的に示しており、神経新生を促進する役割を持つ細胞外分泌Wnt3/Wnt3a遺伝子もこれまでの解析と同様、その鬱病進行時に伴う発現変化の挙動は、嗅球由来の成体神経幹細胞を用いて、海馬での動態をモニタリングできることを示している。
(4)神経新生に必要となるWntシグナルの阻害因子、IGFBP4
発現量を解析した結果を図7に示す。GFAP、S100betaなどグリア系発現遺伝子の発現については、図6でも示したとおり、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現はコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とほとんど変化がない。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
しかし、海馬の神経新生を促進するWnt3およびWnt3a遺伝子の働きを阻害するIGFBP4は、Analysis1期において約230%まで増加、Analysis2期においても約230%の増加傾向を示しており、鬱病進行時に於ける神経新生を大きく阻害している事実が明らかになった。
嗅球由来でも海馬由来でも同じ傾向を示しており、鬱病進行時に伴うIGFBP4の発現変化の挙動は、嗅球由来の成体神経幹細胞を用いて、海馬での動態をモニタリングできることをここでも示している。
(5)セロトニントランスポーター
セロトニントランスポーター(5-HTT)は、セロトニン前神経終末に存在し、再取りこみ機構によってシナプス間隙のセロトニン濃度を調節している。5-HTTの発現量を解析した結果を図8に示す。これまでにセロトニントランスポーター遺伝子の発現に影響を与えると報告されているP38 MapKおよびGSK3beta遺伝子の発現は(非特許文献6)、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現とコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とでほとんど変化がなかった。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
しかし、鬱病時のセロトニン量の調節に関わる5-HTT遺伝子の発現は、Analysis1期において約180%まで増加、Analysis2期においては約200%の増加傾向を示しており、鬱病進行時に於けるセロトニン量の調節系の制御に大きな影響を与えている事実が明らかになった。
嗅球由来でも海馬由来でも同じ傾向を示しており、鬱病進行時に伴う5-HTT遺伝子の発現変化の挙動は、嗅球由来の成体神経幹細胞を用いて、海馬での動態をモニタリングできることを示している。
(6)SLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子
個人の状態によって生じる大幅な中枢神経系でのシグナル変動は、神経細胞のゲノム上のレトロエレメント領域を介して、海馬の樹状突起スパインのミトコンドリア・キャリアーSLC遺伝子、神経突起の形成を促進するneureglin遺伝子、シナプスの可塑性を制御するRnf39遺伝子等の発現に影響を与えることが、本発明者らの研究から明らかになった。これらはレトロエレメントの近隣に存在する神経特異的な遺伝子である。レトロトランスポゾン部位を介して活性化・不活性化(On/Off)の影響を近隣の神経特異的遺伝子がどのように受けるのか、鬱病などの疾患に絡めて調べた研究例はこれまでに報告されていない。
SLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子の発現量を解析した結果を図9に示す。
神経細胞のコントロールとなるFox3遺伝子の発現は、鬱病(MS)群の成体神経幹細胞培養系での発現とコントロール群の成体神経幹細胞培養系での発現とでほとんど変化がなかった。これは嗅球由来でも海馬由来でも同様の傾向である。
しかし、海馬の神経機能を調節する役割を持つSLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子の発現は、Analysis1期において約40〜60%まで減少、Analysis2期において約50%の減少傾向を示す事が分かった。
この傾向は、嗅球由来でも海馬由来でも同様に検出されており、嗅球由来の成体神経幹細胞を用いて、鬱病進行時に伴う海馬での発現変化の挙動をモニタリングできることを示している。
[実施例2.真性糖尿病モデル動物を用いた遺伝子の発現解析]
材料および方法
動物
実験は、〜4月齢の体重120から160gのFisher344ラットのオス30匹について行われた。真性糖尿病は、14匹のラットにおいて、0.5mlのクエン酸緩衝溶液(0.1M,pH4.5)に溶解された50mg/kgのストレプトゾトシン(Wako,Japan)の1回の腹腔内注射によって誘導された。血中グルコースレベルは、1〜2日毎に計測され、300mg/dlより大きい血中グルコースレベルのラットは糖尿病と見なされた。ある同一の1日に、実験群のラットはストレプトゾトシンを注射され、コントロール群の動物(nは7匹)は同様の体積のクエン酸緩衝液を注射された。
発現プロファイルの研究のための組織サンプルは、ストレプトゾトシンによる糖尿病誘導の5日、2週および2月後に収集された。ラットは、ペントバルビタール・ナトリウム(70-100mg/kg)により麻酔され、続いて噴門経由でリン酸緩衝液(0.1M)および4%PFA溶液で灌流された。すべてのラットについての手順は、産業技術総合研究所のInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のプロトコルに従って実施された。
調製細胞および培養物
ストレプトゾトシン誘導10日後の体重100-150gのオスのFisher344ラットが使用された(Charles River Japan,inc)。成体海馬NSCsは以前記述されたように調製され(非特許文献2)、維持された。ラットは麻酔され、頭部が定位固定枠に固定された。嗅球(OB)(AP4.4;L1.0;U2.5)および海馬歯状回{かいば しじょうかい}(DG)(AP-3.6;-L2.8;U3.0)が採取された。組織サンプルは、氷冷したPBS溶液(Wako,Japan)に移された。収集されたHPCおよびOBは、顕微解剖され、パパイン(Worthington)、ディスパーゼ(Worthington)、デオキシリボヌクレアーゼ(Worthington)およびステムプロ・アキュターゼ(Invitrogen)の混合物による消化により解離された。細胞混合物は、単細胞の懸濁液を得るために、40μmの細胞濾過器(BD Falcon)を通過させた。得られた細胞懸濁液を、遠心分離の後、数回、抗菌−抗真菌剤およびFGF2を含有するDMEM/F12培地(Invitrogen)により洗浄した。精製したHPCまたはOB細胞を、OBのNSCsおよびHPCのNSCsの双方の培養に適していることが見出されている(非特許文献2)、ポリオルニチンラミニンで被覆された皿上の100ng/mlのFGF2およびN2サプルメント(Wako)を含有するダルベッコの調整イーグル培地/F-12培地(DME/F12)中で、インキュベートした。培地は、ステムプロ・アキュターゼを用いた第1代継代前の最初の培養期間において、高いレベルのFGF2(100ng/ml)を含んでいた。安定に増殖するNSCsが、20ng/mlのFGF2(Wako)、1%のN2サプルメント(Wako)、抗菌−抗真菌剤(Invitrogen)および2mMのL-グルタミン(Wako)を含有するDME/F12を用いて、5%CO2のインキュベーター中、37℃で培養された。本研究でなされたすべての実験において、我々は、成体HPCおよびOBのNSCsをFGFのもとで同時に培養した。神経の分化については、細胞はレチノイン酸(RA)(1μM、Sigma)、フォルスコリン(5μM、Sigma)およびKCl(40mM、Wako)を含有するDMEM/F12培地中で培養された。
RNAの抽出およびQ-PCRによる分析
全細胞RNAは、ISOGEN(Wako)を用いることにより単離された。HPCの切断された歯状回(DG)に由来するRNAは、ホモゲナイズ(Microson,Heat Systems)した後、ISOGENにより精製された。全RNAは、RNaseを含まないDNase I(Ambion)により処理された。第1鎖cDNAの合成は、製造プロトコル(InvitrogenまたはTakara)に従って行われた。定量PCRは、SyBR Green Method(Applied Biosystems #4309155)により、ABIqPCRmachineを用いて標準35-40サイクルで行われた。GAPDHが内部コントロールとして用いられた。
すべてのインビボおよびインビトロの実験は、ステューデントt検定を用いて、統計的有意性について分析した。すべての誤差バーは、±標準誤差として表わした。p<0.05またはp<0.001の値は、有意とみなした。
(1)HPC組織に対する糖尿病の影響:ストレプトゾトシンによる誘導後のインスリン発現および神経分化に必要とされる遺伝子の発現の経時的分析
ストレプトゾトシン(STZ)の腹腔内注射は、実験動物において、明確な高血糖症の進行を引き起こした。STZ誘導ラットの血中グルコースレベルは、注射後3日目において300mg/dlよりも高かった。STZ誘導の高血糖の5日目において、脳が速やかに取り出され、歯状回(DG)領域が全RNAを抽出するために顕微解剖された。定量PCR(QPCR)分析のために、コントロール(n=6)および糖尿病ラット(n=6)のDG由来のRNAが抽出され、Sox2およびNestin(幹細胞マーカー遺伝子)、NeuroD1(インスリン活性化遺伝子)、インスリン(プロインスリン1)、beta-tubulinIII(TUBB3:未成熟ニューロン・マーカー遺伝子)、SYN1(成熟ニューロン・マーカー遺伝子)、GFAP、GLIT1、SC1およびBYSL(星状膠細胞マーカー遺伝子)の遺伝子発現についてQPCR分析に賦された。RNAサンプルは、STZ誘導後、2週目および2月目のラットからも調製された。
Sox2およびNestinのmRNAの発現は、5日目において、コントロール(Cont)とSTZ誘導糖尿病ラット(DB)との間でほとんど同じレベルであることが観察された(図10)。星状膠細胞性の遺伝子の発現レベルも変化がなかった(GFAP、GLIT1、SC1およびBYSL)。
しかしながら、海馬DGにおけるNeuroD1およびインスリンの発現レベルには、糖尿病進行の早い時期(STZ誘導後、5日目、図10)に、減少が観察された。NeuroD1およびインスリンの発現の下落は、2週目(図11)、および2月目(図12)にも進行しており、このことは、糖尿病の進行が海馬DGにおけるインスリンの発現の下落を伴うことを示している。
DBラットのDGにおいて、NeuroD1およびインスリンの発現に次いで、TUBB3やSYN1などのニューロン遺伝子の発現もまた減少した(図10〜12)。しかしながら、星状膠細胞性の遺伝子の発現は変化のないままであり(図10〜12)、このことは、DBがニューロン系統への分化への特異的な阻害効果を引き起こすことを示唆している。
NeuroD1は成体海馬のNSCsの神経分化に欠くことができないものである(非特許文献3)から、NeuroD1の発現の減少は神経分化に直接的に影響を与える。更に、NeuroD1は成体のNSCsにおけるインスリンの発現に必要である(非特許文献2)から、インスリン発現の減少が同時に引き起こされるであろう。
Sox2およびNestin(幹細胞マーカー遺伝子)の発現は、2月目の時点で下方制御されており(図12)、このことは、DBが、以前の研究(非特許文献2)と一致して、最終的に成体の神経新生における機能障害を引き起こすことを示唆している。Sox2は、増殖および自己複製能力の両方におけるNSCsの機能を維持する上で重要である(非特許文献7)。
インスリンは、線維芽細胞成長因子2(FGF2)の機能を促進する。このことは、NSCsを未分化の状態に維持するのに重要な役割をもっている。そして、このことは、幹細胞の自己複製段階においても重要な役割を果たしている。すなわち、それは幹細胞の増殖を強く活性化させる(非特許文献8)。それゆえ、早い時期(STZ誘導後5日目、および2週間目)におけるDBにおけるインスリン発現の減少が、間接的に幹細胞群の機能を阻害しているのかもしれない。
(2)OBおよびHPCのNSCs培養物に対する糖尿病の影響:糖尿病の進行の早期時点における動物のOBおよびHPC由来の成体NSCsの樹立
上述のとおり、神経分化における主要な不都合が、早期時点(STZ誘導後5日目〜2週間目、図10、11)での糖尿病の進行の期間中の海馬のDGサンプルを用いたQPCR分析において観察された。本発明者らは、次に、コントロール・ラット(WT:野生型)および誘導後10日目のSTZ誘導糖尿病ラット(DB)の海馬のDGから、成体NSC培養物を樹立した。また、同時に、CNSにおける糖尿病を介する神経変性を反映する潜在的な変化をモニタリングすることに対するOB由来の成体NSCsの有用性を調べるため、本発明者らは、WTおよび誘導後10日目のDBラットのOBから、成体NSC培養物を樹立した。
成体HPCおよびOBに由来するNSC培養物が、20ng/mlのFGF2中にそれぞれ維持された(図13)。WTおよびDBの動物のHPCのDGから樹立された成体NSC培養物は、どちらもほとんど同じ形態を示した(図13Aの上図(NSC))。両方のHPCのNSCsは丸く、単一層に展開してもその形を維持した。
培養物をニューロンへの神経分化の条件下(RA+FSK+KCl)に曝すと、細胞の形態は伸長した神経突起を有するように大きく変化した(図13Aの下図(Neuron))。WT動物からのHPCのニューロン(WT HPCニューロン)培養物においては、多重の神経突起が細胞体から生成し、多様な方向に、より複雑な仕方で伸長した(図13Aの左下図)。一方、DBの動物に由来するHPCのNSCsから分化したHPCのニューロンは、作り出す神経突起の接続がWT HPCニューロンよりも少なかった(図13Aの右下図)。
WTおよびDBラット由来のOB NSCsは、接着特性および神経球の形態を有する不均一の形体に成長した(図13Bの上図(NSC))。DBの動物由来のOB NSCs(DB OB NSC)においては、神経球がその形と大きさに一貫性なく形成され、死にそうな細胞(単細胞)が、コントロール動物に由来するOB NSCs培養物(WT OB NSC)よりも、より多く観察された。DB OB NSCの接着特性は、WT OB NSCよりも弱いように見えた。
WT動物のOBニューロン培養物においては、多重の、延長された神経突起が、細胞の集団から生成された(図13Bの左下図、WT OB・Neuron)。一方、DBの動物に由来するOBのNSCsから分化したニューロンは、細胞体から作り出す神経突起がWT OBニューロンよりも細く、短かった(図13Bの右下図)。
これらの結果は、DBが成体NSCsの神経新生に対して、インビボにおいてのみならず、DB動物のHPCおよびOBに由来するインビトロの培養物においても、阻害効果を引き起こすことを示唆する。これらの成体NSCs培養物は、DBの進行期間の早い時期(STZ誘導後10日目)に樹立された。この早期の段階は、WTとDBの間における成体NSCsの機能の相異を検出するのに十分であり、この相異は、HPCおよびOBの両者のケースにおいて、DBのNSCsが神経系統に分化されたとき、より明らかとなった(図13)。
(3)糖尿病の進行の早期時点に由来する成体OBおよびHPCのNSCsにおける糖尿病応答性の遺伝子の同定:Wntシグナル伝達関連分子
DBのNSCsとWTのNSCsの神経への分化における相異を作り出している特異的な遺伝子を決定するために、次に、QPCRによる対比分析を行った。WT HPC NSCs、DB HPC NSCs、WT OB NSCsおよびDB OB NSCsは、同時に神経系統へ分化され、全RNAが、神経への誘導(NP:神経前駆体段階)24時間後に抽出された。以前の本発明者らのマイクロアレイによる研究では、成体NSCs/NPsにおける神経への誘導において上方制御または下方制御される遺伝子のプロファイルを提示している(非特許文献2)。我々は、特にDBの進行の早期の時点においてHPCおよびOBのNSCsの両者で同様に増加しまたは減少する遺伝子に焦点を当てた(図14、15)。
NeuroD1およびインスリンの発現は、期待されたとおり、OBおよびHPCのNSC培養物のDBサンプルにおいて、神経分化の条件下で、下方制御(〜50%減少)された。
NeuroD1の活性化にはWntのシグナル伝達が必要である(非特許文献3)ため、Wnt関連分子の細胞内発現を調べた。Frizzled(Fzd)受容体は、Wntシグナル伝達において、低密度リポプロテイン受容体関連タンパク(LRP)と称する膜タンパク質と関連している。FzdとLRP受容体のペアーを介するWntのシグナル伝達がDishevelled(Dvl)を活性化し、GSK3βを阻害し、そして、β−カテニンを安定化する。
Fzd1、LRP1、Dvl1、Dvl2、β−カテニンおよびGSK3βの発現レベルは、OBおよびHPCの両NSC培養物のDBおよびWTサンプル間において、神経分化の条件下で、ほとんど変化しなかった(図14)。
しかしながら、本発明者らは、Fzd3およびLRP5の発現が、OBおよびHPCの両培養物において、DB由来のサンプルに特異的に、協調して下方制御されることを突き止めた。
Fzd3は、Wntシグナル伝達のカスケードに関与する、分泌されたWnt糖タンパク質に対する膜受容体である。本発明者らによるデータは、この分子が、DBの進行中の成体NSCsにおいて、ある種の役割を示すかもしれないことを示唆する。
LRP5は、1型糖尿病に遺伝的に関連する、LRP受容体ファミリーの新たなメンバーであり、糖尿病に関連するLRP5の多型は、遺伝子のプロモーター領域にあり、LRP5の発現の変化は、糖尿病の影響を受けやすいことのためかもしれない。DB動物由来のOBおよびHPC NSCの両培養物におけるLRP5の発現の減少を検出したこと(図14)は、LRP5が糖尿病の条件下でのCNSにおける神経変性の表現型に対して影響を与えているかもしれないことを暗示している。
(4)神経分化期間中の成体OBおよびHPCのNSCsにおける糖尿病応答性遺伝子:OBに由来する成体NSCsを用いることによりCNS機能の悪性度を検出するための見込みあるマーカー遺伝子
海馬ニューロンにおいて発現されている多くの神経系統に特異的な遺伝子のほとんどが、OBニューロンにおいても等しく発現されている。Cask(カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ)、SSH(ソニック・ヘッジホグ)、Snai1(snailホモログ、亜鉛フィンガープロテイン)およびNid2(nidogen2;基底膜タンパク質)は、インビトロでOB およびHPCの両ニューロンにおいて高度に発現され、OBおよびHPCニューロンのインビトロ培養物のマイクロアレイ分析(非特許文献2)と一致した。また、発現レベルは、DBおよびWTサンプルの間でほとんど同じであった(図15)。
本発明者らは、成体NSCsの分析において、OBおよびHPCの両インビトロ培養物において神経分化の期間中に同様に反応(増加または減少)する5つの糖尿病応答性遺伝子を突き止めた。
Nrxn1(neurexin1)、Scn1b(ナトリウム・チャンネル、電位ゲート、1型、βサブユニット)、Scn4B(ナトリウム・チャンネル、電位ゲート、4型、βサブユニット)およびNupr1(nuclear protein 1)は、OBおよびHPCの両ニューロンにおいて、DBサンプルにおいてのみ下方制御された。Nrxn1は、脊椎動物の神経系において細胞接着分子および受容体として機能するタンパク質のニューレキシンのファミリーに属する。成体CNS(ニューロン)および内分泌系(β細胞)は、インスリン発現に必要とされるNeuroD1のような共通の転写因子を共有している(非特許文献2)。それらは、また、それらのニッチからのWnt3の分泌を経由する(星状膠細胞{せいじょう こう さいぼう}およびα細胞)細胞のシグナル伝達(NeuroD1遺伝子の活性化に必要とされるWntのシグナル伝達)に似ていることを利用している。
糖尿病進行の早期時点での成体OBおよびHPCニューロンにおける糖尿病に特異的な下方制御は、Nupr1が神経変性疾患の発症に向かうCNSにおけるインスリンを介する細胞内および細胞間のネットワークの調節異常に影響を与えることを示唆している。
対照的にグルタミン酸輸送体(ソルートキャリアーファミリーのナトリウムおよびカリウム依存性のメンバー)としても知られる、EAAT(興奮性アミノ酸輸送体)は、インビトロのOBおよびHPCのニューロンのDBサンプルにおいて、高度に上方制御された(図15)。グルタミン酸輸送体の機能には、興奮性神経伝達の調節、神経毒性から保護するための低い細胞外周囲のグルタミン酸濃度の維持、および、グルタミン酸−グルタミン・サイクルによる代謝のためにグルタミン酸を供給することが含まれる。EAATはpHおよび微小体の膜電位を調節する。糖尿病の進行の下、成体OBおよびHPCニューロンにおいて増加するEAATの発現(図15)は、CNSにおける不安定なグルタミン酸を介する伝達ばかりでなく、ニューロンからのインスリン分泌の調節異常をも引き起こしているかもしれない。
本発明者らによるデータは、それゆえ、CNSにおける糖尿病に関連する神経変性疾患に関連することを本発明者らがつきとめた遺伝子の新たな機能を理解するための後続する研究にとって重要であろう。
以上のとおり、糖尿病進行の早期の時点におけるDBラットのOBおよびHPCから抽出した成体NSCsは、インビトロ培養物に展開することができる。以上の実験結果が示すように、OB NSCは、糖尿病に対しHPC NSCと同様に反応し、DBラットのOBのニューロンは、いくつかの遺伝子群の発現の変化について、DBラットのHPCのニューロンの能力を同様に反映した。このことは、CNSの神経の機能を究明し、スクリーニングにより潜在的な医薬を開発するという臨床および薬理学的な用途において有用な道具であることを示している。
将来、糖尿病を介する神経変性疾患のみならず、糖尿病の症状が進行するにつれてその危険性が増加する神経系の疾患および精神疾患についても、その病理を解明すること、あるいは、糖尿病自体を治療するための新しい治療剤の探索および治療技術の開発に寄与することも可能であろうと思われる。

Claims (5)

  1. 患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSCまたはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経精神疾患の病態をモニターする方法。
  2. 患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する以下の(1)〜(6)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSCまたはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の鬱病の病態をモニターする方法。
    (1)海馬の神経新生初期段階に必要となる遺伝子NeuroD1、Doublecortin (DCX)、
    (2)レトロトランスポゾンLINE-1、
    (3)神経新生促進遺伝子Wnt3、Wnt3a、
    (4)神経新生に必要となるWntシグナルの阻害因子IGFBP4
    (5)セロトニントランスポーター
    (6)SLC遺伝子、neureglin遺伝子、Rnf39遺伝子
  3. 患者の海馬(HPC)または嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(HPC NSCまたはOB NSC)、または、これをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける、神経新生に関係する以下の(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を、正常者の海馬または嗅球から採取され、樹立されたコントロールのHPC NSCまたはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量と比較することにより、患者の神経変性を伴う糖尿病の病態をモニターする方法。
    (1)Fzd3
    (2)LRP5
    (3)Nrxn1
    (4)EAAT
    (5)Scn1b
    (6)Scn4b
    (7)Nupr1
  4. 期間をおいて採取され、樹立されたHPC NSCまたはOB NSCまたはこれをニューロン分化させたHPCニューロンまたはOBニューロンにおける発現量を比較することにより、発現量の経時的変化をモニターすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 患者の嗅球(OB)から採取され、樹立された成体神経幹細胞(OB NSC)、または、これをニューロン分化させたOBニューロンにおける、神経新生に関係する遺伝子の発現量を、正常者の嗅球から採取され、樹立されたコントロールのOB NSCまたはこれをニューロン分化させたOBニューロンにおける発現量と比較することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
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