JP2014178155A - 近赤外プローブ,及び近赤外プローブを用いた分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 長波長の光を放射でき,しかも生体組織に大きな影響を及ぼさないプローブを提供する
【解決手段】 本発明は,1000nm以上1500nm以下の波長を放射できる蛍光プローブに関する。具体的には,本発明は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む蛍光プローブなどに関する。この蛍光プローブの好ましい例は,M1X1から構成される内芯とM2X2から構成され外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む。
【選択図】図1
【解決手段】 本発明は,1000nm以上1500nm以下の波長を放射できる蛍光プローブに関する。具体的には,本発明は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む蛍光プローブなどに関する。この蛍光プローブの好ましい例は,M1X1から構成される内芯とM2X2から構成され外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む。
【選択図】図1
Description
本発明は,長波長領域の近赤外光を放射する近赤外プローブ,及びその近赤外プローブを用いた分析方法に関する。
蛍光検出技術は,基礎生命科学研究や医療の分野で用いられている。一般に,蛍光検出技術は,可視光(例えば,波長が400nm〜700nmの光)や比較的短波長の近赤外光(たとえば900nm以下の光)を用いられていた。このため,従来の蛍光検出技術では,これらの光を放射するプローブが用いられていた。
可視光は,生体組織での散乱特性が高い。このため,可視光に反応するプローブを用いると生体の深部における情報を取得することが困難である。例えば,有機色素であるインドシアニングリーン(ICG)は,比較的短波長の近赤外光(たとえば900nm以下の光)を放出する。このため,ICGを用いることで,可視光を放射するプローブに比べて,生体の深部における情報を取得できる。
神隆「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」生産と技術第63巻第2号(2011)58頁〜65頁(非特許文献1)には,半導体量子ドットを用いた蛍光プローブが提案されている。
特表2010−523557号公報(特許文献1)には,両親媒性ポリマーでカプセル化された半導体量子ドットを用いた蛍光プローブが提案されている。この文献には,CdSeを内芯とし,ZnSを外殻とした量子ドットを蛍光プローブとした実施例が開示されている。
神隆「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」生産と技術第63巻第2号(2011)58頁〜65頁
上記のとおり,長波長の光を放出するプローブを用いると,生体組織の影響を受けにくい蛍光分析を行うことができる。一方,プローブによっては,生体組織へ影響を及ぼすものがある。このため,長波長の光(長波長領域の近赤外光:例えば1000nm以上1500nm以下の光)を放射でき,しかも生体組織に大きな影響を及ぼさないプローブの開発が望まれる。上記被特許文献1においても,近赤外波長領域900−1500nmで高輝度に発行する近赤外量子ドットの合成法の開発と生体イメージングへの応用が期待される旨が開示されている。そこで,本発明は,長波長の光(長波長領域の近赤外光:例えば1000nm以上1500nm以下の光)を高輝度に放射でき,しかも生体組織に大きな影響を及ぼさないプローブを提供することを第1の目的とする。
さらに,プローブを生体組織において用いるためには,プローブが水にある程度溶ける性質であることが望まれる。このため,本発明は,高い水溶性を示すプローブを提供することを目的とする。
本発明の第1の側面は,蛍光プローブに関する。この蛍光プローブは,1000nm以上1500nm以下の波長を放射できる。そして,この蛍光プローブの好ましいものは,水への溶解度が g/l以上 g/l以下である。本発明は,通常の蛍光プローブに比べて長波長領域の蛍光を放射できる。また,本発明は,水への溶解性が高いため,蛍光プローブとして容易に用いることができる。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,M1X1から構成される内芯とM2X2から構成され外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含むものである。
M1及びM2は,同一でも異なっても良く,Cd,Zn,Mg,Ga,Hg,Ca,Sr,Ba,In,Al,Ge,Si,Zn,及びPdのいずれか又は2種以上である。
X1は及びX2は,同一でも異なってもよく,O,S,Se,及びTeのいずれか又は2種以上である。
M1及びM2は,同一でも異なっても良く,Cd,Zn,Mg,Ga,Hg,Ca,Sr,Ba,In,Al,Ge,Si,Zn,及びPdのいずれか又は2種以上である。
X1は及びX2は,同一でも異なってもよく,O,S,Se,及びTeのいずれか又は2種以上である。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む。実施例により実証されたとおり,この量子ドットを含む蛍光プローブは,蛍光領域や溶解性の面できわめて優れたものである。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,さらに量子ドットの表面に結合した有機分子を含む。この量子ドットの表面に結合した有機分子により,溶解性や,蛍光特性を調整することができる。有機分子の例は,グルタチオン又はグルタチオンの誘導体である。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,有機化合物又は無機化合物を含む蛍光プローブ。有機化合物又は無機化合物は,溶解性が高く,しかも好ましい蛍光特性を有するものであれば特に限定されない。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,PbSの内芯とCdSのPbSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む蛍光プローブである。この蛍光プローブの好ましい用途は,血管造影剤である。
本発明の第2の側面は,蛍光分析方法に関する。この蛍光分析方法は,先に説明した蛍光プローブを用いた蛍光分析方法であり。蛍光プローブとして上記したものを用い,測定する蛍光の波長領域を1000nm以上1500nm以下の所定の領域とする以外は,通常の蛍光分析と同様の方法を用いることができる。
本発明の蛍光分析方法の好ましい態様は,2つ又はそれ以上の種類の量子ドットを用いて複数段階蛍光分析を行うものである。この方法は,少なくとも第1の蛍光分析工程,第2の蛍光分析工程,及び第3の蛍光分析工程を含む。第1の蛍光分析工程は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する第1の量子ドットを含む第1の蛍光プローブを用いて第1の蛍光分析を行い第1の蛍光分析結果を得る工程である。第2の蛍光分析工程は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有し,第1の量子ドットとはPbSの内芯に対するCdSの外殻の割合が異なる第2の量子ドットを含む第2の量子ポロー部を用いて第2の蛍光分析を行い第2の蛍光分析結果を得る工程である。第3の蛍光分析工程は,第1の蛍光分析結果及び第2の蛍光分析結果を用いて対象の蛍光分析を行う工程である。
本発明によれば,長波長の光(長波長領域の近赤外光:例えば1000nm以上1500nm以下の光)を高輝度に放射でき,しかも生体組織に大きな影響を及ぼさないプローブを提供することができる。
さらに本発明は,高い水溶性を示すプローブを提供することができる。
本発明の第1の側面は,蛍光プローブに関する。この蛍光プローブは,1000nm以上1500nm以下の波長を放射できるものである。この蛍光プローブの好ましいものは,水への溶解度が g/l以上 g/l以下である。蛍光プローブは,先に説明した特許文献に開示されるとおり公知である。所定のポンプ光が蛍光プローブ又は蛍光プローブを含む試料に照射すると,蛍光プローブに特有の波長領域に蛍光を放射する。この蛍光を放射する部位を測定することで,様々な試料を観測できる。水への溶解度は,公知の方法を用いて測定できる。
蛍光プローブの励起光(ポンプ光)の波長,放出する蛍光の波長は,様々な方法を用いて制御できる。例えば蛍光プローブが量子ドットを含む場合,量子ドットを構成する化合物の種類や割合を変化させることで上記の波長を制御できる。また,量子ドットの大きさを制御することでも,上記の波長を制御できる。さらに,量子ドットに付加する化合物の大きさを変化させることでも,上記の波長を制御できる。また,蛍光プローブが,有機化合物又は無機化合物を含みこの化合物から蛍光が放射される場合,化合物のエネルギー順位を求めることで,好ましい化合物の候補を求めることができる。
蛍光プローブの溶解性は,公知の方法を用いて適宜調整すればよい。例えば蛍光プローブが量子ドットを含む場合,先に説明したように量子ドット自体を調整しても良いし,量子ドットに結合する化合物を調整しても良い。また,量子ドットをカプセル化してもよい(例えば,特表2010−523557号公報)。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,コア−シェル構造を有する量子ドットを含む。具体的に説明するとこの態様の例は,M1X1から構成される内芯とM2X2から構成され外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含むものである。M1及びM2は,同一でも異なっても良く,Cd,Zn,Mg,Ga,Hg,Ca,Sr,Ba,In,Al,Ge,Si,Zn,及びPdのいずれか又は2種以上である。X1は及びX2は,同一でも異なってもよく,O,S,Se,及びTeのいずれか又は2種以上である。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む。実施例により実証されたとおり,この量子ドットを含む蛍光プローブは,蛍光領域や溶解性の面できわめて優れたものである。さらに実施例において実証されたとおり,内芯に対する外殻の割合が変わると,放出する蛍光の波長が変化する。すなわち,この態様の量子ドットは,製造工程を修正するだけで,発光の周波数を制御することができる。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,さらに量子ドットの表面に結合した有機分子を含む。この量子ドットの表面に結合した有機分子により,溶解性や,蛍光特性を調整することができる。 有機分子の例は,グルタチオン又はグルタチオンの誘導体である。グルタチオンの誘導体には,グルタチオンの塩,溶媒和物のほか,グルタチオンの置換基が低級(C1−3)アルキル等で置換されたものも含む。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,有機化合物又は無機化合物を含む蛍光プローブ。有機化合物又は無機化合物は,溶解性が高く,しかも好ましい蛍光特性を有するものが好ましい。
本発明の蛍光プローブの好ましい態様は,PbSの内芯とCdSのPbSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む蛍光プローブである。量子ドットの製造方法は,例えば先に説明した文献に開示されるとおり公知である。本発明でも組成等を調整する他は公知の方法を適宜用いることで量子ドットを製造できる。
本発明の蛍光プローブの好ましい用途は,血管造影剤である。すなわち,本発明は,上記したいずれかの蛍光プローブを含む血管造影剤をも提供する。実施例により実証されたとおり,本発明は,従来の血管造影剤に比べて格段に優れた造影効果を有する。
本発明の第2の側面は,蛍光分析方法に関する。この蛍光分析方法は,先に説明した蛍光プローブを用いた蛍光分析方法であり。蛍光プローブとして上記したものを用い,測定する蛍光の波長領域を1000nm以上1500nm以下の所定の領域とする以外は,通常の蛍光分析と同様の方法を用いることができる。蛍光分析方法の例は,本発明の蛍光プローブを対象に投与等した後に,対象に所定の波長の励起光を照射し,発生する蛍光を測定するものである。蛍光分析方法に用いられる蛍光分析系は,観測する蛍光の波長領域を適宜修正するほかは,公知の蛍光分析系を用いることができる。
本発明の蛍光分析方法の好ましい態様は,2つ又はそれ以上の種類の量子ドットを用いて複数段階蛍光分析を行うものである。この方法は,少なくとも第1の蛍光分析工程,第2の蛍光分析工程,及び第3の蛍光分析工程を含む。第1の蛍光分析工程は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する第1の量子ドットを含む第1の蛍光プローブを用いて第1の蛍光分析を行い第1の蛍光分析結果を得る工程である。第2の蛍光分析工程は,PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有し,第1の量子ドットとはPbSの内芯に対するCdSの外殻の割合が異なる第2の量子ドットを含む第2の量子ポロー部を用いて第2の蛍光分析を行い第2の蛍光分析結果を得る工程である。第3の蛍光分析工程は,第1の蛍光分析結果及び第2の蛍光分析結果を用いて対象の蛍光分析を行う工程である。
先に説明したとおり,PbS/CdSコア−シェル量子ドットは,CdSの割合を変化させることで発光する光の波長を変化させることができる。この性質を利用して,2つの異なる波長についての蛍光を測定する。そしてそれらの差分を求める。このようにすることで,ノイズを軽減した蛍光分析を行うことができる。
PbS/CdS量子ドットの合成
図1は,コア・シェル構造を有する近赤外(2nd)量子ドットの合成に関し,コア・シェル構造を有する近赤外量子ドット合成過程の模式図である。オレイルアミン(OLA)の表面修飾を受けたPbSコアは,CdSに覆われ,シェルを形成する。メルカプトウンデカン酸を用いた配位子置換によって,シェル表面は親水性になる。
図1は,コア・シェル構造を有する近赤外(2nd)量子ドットの合成に関し,コア・シェル構造を有する近赤外量子ドット合成過程の模式図である。オレイルアミン(OLA)の表面修飾を受けたPbSコアは,CdSに覆われ,シェルを形成する。メルカプトウンデカン酸を用いた配位子置換によって,シェル表面は親水性になる。
塩化鉛(II)(278mg)(和光純薬工業)を,室温下で三つ口フラスコを用い,5mlオレイルアミン(和光純薬工業)と1mlオレイン酸(和光純薬工業)の混合物に溶かした。アルゴン大気中で溶液を130℃まで加熱したのち,激しく撹拌しながら,トルエンを溶媒とした0.5mlのジメチルカドミウム溶液(質量濃度10%)(Strem Chemicals),0.5mlのヘキサメチルジシラチアン(東京化成工業),および9.5mlのトリブチルホスフィン(東京化成工業)の混合物を加えた。溶液の蛍光スペクトルを測定することで,PbS量子ドットの発光ピークが,反応時間の増大とともに長波長側にシフトする,PbS量子ドットの成長を観察した。望ましい発光ピークを有するPbS量子ドットが得られ次第,溶液を速やかに室温まで冷却した。PbS量子ドットを沈殿させるため,溶液にメタノールを加えた。反応時間を制御することで,発光ピークがそれぞれ1000nm,1200nm,および1400nmであるPbS量子ドットが得られた。得られたPbS量子ドットを,室温下,アルゴン大気中で50mlのトルエンに溶解した。溶液を90℃まで加熱したのち,約0.25mlのCd−S前駆体溶液(2.5mlのジメチルカドミウム溶液,および0.5mlのヘキサメチルジシラチアン)を滴下しつつ加えた。溶液の蛍光スペクトルを測定し,CdSのシェル構造を観察した。望ましいPbS/CdS量子ドットが得られ次第,溶液を速やかに室温まで冷却した。PbS/CdS量子ドットを沈殿させるため,溶液にエタノールを加えた。沈殿した量子ドットをクロロホルムに溶解させた。シェル構造を形成するCd−S前駆体溶液の量を制御することで,発光ピークがそれぞれ1000nm,1200nm,および1400nmであるPbS量子ドットから,発光ピークがそれぞれ1000nm,1200nm,および1400nmであるPbS/CdS量子ドットが得られた。
PbS/CdS量子ドットの親水化
PbS/CdS量子ドットのクロロホルム溶液を,ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で完全に除去した。PbS/CdS量子ドットの沈殿に,ボルテックスで撹拌しながらテトラヒドロフランを加えた。PbS/CdS量子ドットのテトラヒドロフラン溶液1Mに対して,等量の50mg/mlメルカプトウンデカン酸(MUA)(Sigma−Aldrich)のテトラヒドロフラン溶液を撹拌しつつ加えた。その後,MUA被覆PbS/CdS量子ドットの沈殿に対し,その半分の量の100mg/mlカリウムtert−ブトキシド(和光純薬工業)水溶液を加えた。PbS/CdS量子ドットの沈殿を遠心分離により取り除き,取り除いた沈殿は水に溶解した。PbS/CdS量子ドット水溶液を,0.22μm膜フィルターを用いて濾過したのち,15,000gで5分間遠心し,集まったPbS/CdS量子ドットを除去した。
PbS/CdS量子ドットのクロロホルム溶液を,ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で完全に除去した。PbS/CdS量子ドットの沈殿に,ボルテックスで撹拌しながらテトラヒドロフランを加えた。PbS/CdS量子ドットのテトラヒドロフラン溶液1Mに対して,等量の50mg/mlメルカプトウンデカン酸(MUA)(Sigma−Aldrich)のテトラヒドロフラン溶液を撹拌しつつ加えた。その後,MUA被覆PbS/CdS量子ドットの沈殿に対し,その半分の量の100mg/mlカリウムtert−ブトキシド(和光純薬工業)水溶液を加えた。PbS/CdS量子ドットの沈殿を遠心分離により取り除き,取り除いた沈殿は水に溶解した。PbS/CdS量子ドット水溶液を,0.22μm膜フィルターを用いて濾過したのち,15,000gで5分間遠心し,集まったPbS/CdS量子ドットを除去した。
量子ドットに対するBSAの抱合
発光ピーク520nmのCdSe/ZnS量子ドット,および発光ピーク720nmのCdSeTe/CdS量子ドットを文献“T. Jin, F. Fujii, H. Sakata, M. Tamura, M. Kinjo, Chem Commun
(Camb),2829-31 (Jun 14, 2005).及び文献 M. Hasegawa, Y.
Tsukasaki, T. Ohyanagi, T. Jin, *Chem Commun (Camb)*49, 228-30 (Jan 11, 2013).に記載の方法にしたがって合成した。CdSe/ZnS量子ドット,およびCdSeTe/CdS量子ドットの表面を前述のようにMUAで覆い,親水化した。MUA被覆量子ドットのPBSバッファー溶液(pH 8.0)1Mに対して,10−2倍量の1mM 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(Sigma−Aldrich)のPBSバッファー溶液(pH 8.0)を撹拌しつつ加えた。30分後,10−1倍量の1mM BSA(Sigma−Aldrich)のPBSバッファー溶液(pH 8.0)を加え,室温で1時間反応させた。抱合していないBSAおよびEDCは,PBSバッファー(pH 7.4)を用い,100kDaまでの分子を取り除く限外濾過膜(GE Healthcare)を通じて除去した。
発光ピーク520nmのCdSe/ZnS量子ドット,および発光ピーク720nmのCdSeTe/CdS量子ドットを文献“T. Jin, F. Fujii, H. Sakata, M. Tamura, M. Kinjo, Chem Commun
(Camb),2829-31 (Jun 14, 2005).及び文献 M. Hasegawa, Y.
Tsukasaki, T. Ohyanagi, T. Jin, *Chem Commun (Camb)*49, 228-30 (Jan 11, 2013).に記載の方法にしたがって合成した。CdSe/ZnS量子ドット,およびCdSeTe/CdS量子ドットの表面を前述のようにMUAで覆い,親水化した。MUA被覆量子ドットのPBSバッファー溶液(pH 8.0)1Mに対して,10−2倍量の1mM 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(Sigma−Aldrich)のPBSバッファー溶液(pH 8.0)を撹拌しつつ加えた。30分後,10−1倍量の1mM BSA(Sigma−Aldrich)のPBSバッファー溶液(pH 8.0)を加え,室温で1時間反応させた。抱合していないBSAおよびEDCは,PBSバッファー(pH 7.4)を用い,100kDaまでの分子を取り除く限外濾過膜(GE Healthcare)を通じて除去した。
量子ドットの特定
488nmの励起光におけるInGaAsフォトダイオードアレイ(Symphony; HORIBA)を用いたナノログスペクトルメーターシステムにより,量子ドットの蛍光スペクトルを測定した。量子ドットの吸収スペクトルを,V−670分光光度計(JASCO Corporation)を用いて測定した。
BSA抱合PbS/CdS量子ドットの流体力学的サイズを,633nmのHe/Neレーザーを備えたゼータナイザーナノ(Malvern)を用い,動的光散乱により測定した。Cuκα(λ=1.5406Å)X線n源を備えたD2 PHASER回折計(BRUKER)を用いて,粉末X線回析(XRD)パターンを測定した。XRDサンプルは透明なシリコンスライド上に載せた。データは,回析角10〜90°,サンプリング幅0.1oおよび1sの継続スキャンモードで,2.5mmソーラースリットおよび1.0mm発散スリットにおいて収集した。200kVのHitachi H−800(日立ハイテクノロジーズ)を用いて,PbS/CdS量子ドットの透過型電子顕微鏡写真を撮影した。サンプル溶液2μlをカーボン蒸着電子顕微鏡用グリッド上に滴下し,溶媒を蒸発させるため一晩放置した。誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)スペクトルは,Agilent 7700x(Agilent technologies)のヘリウム衝突モードにおいて採取された。すべてのサンプルは,5%HNO3に溶解したのち,石灰化された。実験器具は標準サンプルとして,1μg/lのLi,Mg,Co,Y,Ce,Tlを用いて調整した。発光ピークがそれぞれ1000nm,1300nm,および1500nmであるPbS/CdS量子ドットの蛍光量子収率を,発光ピークが1000nmである標準的PbS量子ドットを用いた類似の方法によって測定した。絶対PL量子収率測定装置
(C10027,浜松ホトニクス)を用いて,PbS量子ドットの量子収率は0.6と測定された。発光ピークが1000nmであるPbS量子ドット,および488nmにおける吸光度が0.1であるPbS/CdS量子ドットの蛍光強度との比較により,PbS/CdS量子ドットの量子収率を計算した。後述のように,蛍光相関分光法を補助的に用いて,PbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)を求めた。PbS/CdS量子ドットの表面は,FITCラベルされたポリエチレンイミン(MW 250000)で覆った。そして,FITCラベルされたポリエチレンイミン被覆PbS/CdS量子ドットの水中濃度を,蛍光相関分光法によって,10−8M ローダミン6G規定液を用いて測定した。ランベルト・ベールの法則(吸光度=εcl,cは溶液の濃度,lは光路長)に基づき,水中におけるPbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)をそれぞれ求めた。吸収波長488nmにおいて,発光ピークがそれぞれ1000nm,1300nm,および1500nmであるPbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)は,それぞれ,6.3x105M−1cm−1,16.6x105M−1cm−1,および22.4x105M−1cm−1である。
488nmの励起光におけるInGaAsフォトダイオードアレイ(Symphony; HORIBA)を用いたナノログスペクトルメーターシステムにより,量子ドットの蛍光スペクトルを測定した。量子ドットの吸収スペクトルを,V−670分光光度計(JASCO Corporation)を用いて測定した。
BSA抱合PbS/CdS量子ドットの流体力学的サイズを,633nmのHe/Neレーザーを備えたゼータナイザーナノ(Malvern)を用い,動的光散乱により測定した。Cuκα(λ=1.5406Å)X線n源を備えたD2 PHASER回折計(BRUKER)を用いて,粉末X線回析(XRD)パターンを測定した。XRDサンプルは透明なシリコンスライド上に載せた。データは,回析角10〜90°,サンプリング幅0.1oおよび1sの継続スキャンモードで,2.5mmソーラースリットおよび1.0mm発散スリットにおいて収集した。200kVのHitachi H−800(日立ハイテクノロジーズ)を用いて,PbS/CdS量子ドットの透過型電子顕微鏡写真を撮影した。サンプル溶液2μlをカーボン蒸着電子顕微鏡用グリッド上に滴下し,溶媒を蒸発させるため一晩放置した。誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)スペクトルは,Agilent 7700x(Agilent technologies)のヘリウム衝突モードにおいて採取された。すべてのサンプルは,5%HNO3に溶解したのち,石灰化された。実験器具は標準サンプルとして,1μg/lのLi,Mg,Co,Y,Ce,Tlを用いて調整した。発光ピークがそれぞれ1000nm,1300nm,および1500nmであるPbS/CdS量子ドットの蛍光量子収率を,発光ピークが1000nmである標準的PbS量子ドットを用いた類似の方法によって測定した。絶対PL量子収率測定装置
(C10027,浜松ホトニクス)を用いて,PbS量子ドットの量子収率は0.6と測定された。発光ピークが1000nmであるPbS量子ドット,および488nmにおける吸光度が0.1であるPbS/CdS量子ドットの蛍光強度との比較により,PbS/CdS量子ドットの量子収率を計算した。後述のように,蛍光相関分光法を補助的に用いて,PbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)を求めた。PbS/CdS量子ドットの表面は,FITCラベルされたポリエチレンイミン(MW 250000)で覆った。そして,FITCラベルされたポリエチレンイミン被覆PbS/CdS量子ドットの水中濃度を,蛍光相関分光法によって,10−8M ローダミン6G規定液を用いて測定した。ランベルト・ベールの法則(吸光度=εcl,cは溶液の濃度,lは光路長)に基づき,水中におけるPbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)をそれぞれ求めた。吸収波長488nmにおいて,発光ピークがそれぞれ1000nm,1300nm,および1500nmであるPbS/CdS量子ドットのモル吸光係数(ε)は,それぞれ,6.3x105M−1cm−1,16.6x105M−1cm−1,および22.4x105M−1cm−1である。
可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングシステム
イメージングシステムは,0.63xから6.3xのズーム機能を持つマクロズームシステム(MVX,オリンパス)を用いて構築した。可視,近赤外(1st),および近赤外(2nd)領域におけるマルチスペクトル画像を入手するために,カスタマイズされた対物およびイメージングチューブレンズを通じて,光学収差を可視化した。レンズおよび鏡の透過性および反射性は,可視,近赤外(1st),および近赤外(2nd)領域を通じて調節された。可視および近赤外(1st)イメージングには,GFPフィルターセット(Semrock)およびCy5.5フィルターセット(Semrock)がそれぞれ用いられた。785nmレーザーのための励起フィルター,785nmレーザーを反射し,800nm以上のレーザーを透過するダイクロイックミラー,および遮断波長が800nmである長距離発光フィルターを含む,カスタマイズされたフィルターセットを,近赤外(2nd)イメージングに用いた。
イメージングシステムは,0.63xから6.3xのズーム機能を持つマクロズームシステム(MVX,オリンパス)を用いて構築した。可視,近赤外(1st),および近赤外(2nd)領域におけるマルチスペクトル画像を入手するために,カスタマイズされた対物およびイメージングチューブレンズを通じて,光学収差を可視化した。レンズおよび鏡の透過性および反射性は,可視,近赤外(1st),および近赤外(2nd)領域を通じて調節された。可視および近赤外(1st)イメージングには,GFPフィルターセット(Semrock)およびCy5.5フィルターセット(Semrock)がそれぞれ用いられた。785nmレーザーのための励起フィルター,785nmレーザーを反射し,800nm以上のレーザーを透過するダイクロイックミラー,および遮断波長が800nmである長距離発光フィルターを含む,カスタマイズされたフィルターセットを,近赤外(2nd)イメージングに用いた。
カスタマイズされたフィルターセットに次いで,それぞれ,1100±25nm,1300±25nm,および1500±25nmにカスタマイズされた発光フィルターを用いて,近赤外(2nd)領域におけるマルチスペクトラルイメージングを行った。可視イメージングにおいて,光波長が482nmであるキセノンランプを励起光源として用いた。近赤外(1st),および近赤外(2nd)イメージングにおいては,670nmおよび785nmのレーザー光源(BWF1シリーズ,B&W TEK)をそれぞれ励起光源として用いた。サンプルステージにおける最大励起力は,482nm励起において5.0mW/cm2,670nm励起において25.1mW/cm2,および0.63xにおいて25.5mW/cm2である。可視および近赤外(1st)イメージングにおいては,iXon3 Si CCDカメラ(Andor)を用いた。近赤外(2nd)イメージングにおいては,InGaAs CMOSカメラ(C10633‐34,浜松ホトニクス)を用いた。タイリング処理した広視野画像を得るため,電気ステージを用いた。コントロールおよびデータ取得は,IQ2(Andor)およびHCImage(浜松ホトニクス)といったソフトウェア,およびLabVIEW(National Instruments)を用いてカスタマイズされたプログラムによって行った。
図2は,CdSシェル形成を通じたPbS近赤外量子ドットのスペクトル変化を示す。図3は,クロロホルム中におけるPbS/CdS量子ドットの蛍光スペクトルを示す。ピーク波長が1100nm,1300nm,及び1500nmのPbS/CdS量子ドット蛍光スペクトルを示す。図4は,ピーク波長が1300nmにおけるPbS/CdS量子ドットの透過型電子顕微鏡写真である。スケールバーは上の図が20nm,下の図が5nmである。図5は,クロロホルム中における,PbS量子ドットおよびPbS/CdS量子ドットのスペクトル半値幅を示す。黒および赤の曲線は,各発光ピーク波長に対するPbS量子ドットおよびPbS/CdS量子ドットのスペクトル半値幅をそれぞれ示す。図6は,水中,およびクロロホルム中における,ピーク波長1100nmの時のPbS量子ドットおよびPbS/CdS量子ドットの蛍光スペクトルおよび量子収率(QY)を示す。黒および赤の曲線は,水中,およびクロロホルム中におけるPbS量子ドットおよびPbS/CdS量子ドットの蛍光スペクトルを,それぞれ示す。
可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングシステムを用いた組織切片の光学特性測定
図7は,光学特性測定実験の模式図である。組織切片は図の上と下,2枚のカバーガラスに挟まれた形で存在する。粒子は,量子ドットに浸した15μm多孔質ビーズを示す。矢印は励起光,多孔質ビーズから放出され,それぞれ透過,吸収,後方散乱した光の標準的な経路の例を示す。
図7は,光学特性測定実験の模式図である。組織切片は図の上と下,2枚のカバーガラスに挟まれた形で存在する。粒子は,量子ドットに浸した15μm多孔質ビーズを示す。矢印は励起光,多孔質ビーズから放出され,それぞれ透過,吸収,後方散乱した光の標準的な経路の例を示す。
15μm多孔質ビーズ(SOUCE 15ISO,GEヘルスケア)溶液を脱水し,イソプロピルアルコールに置換した。発光ピークがそれぞれ520,720,1100,1300,および1500nmである,クロロホルムを溶媒とした量子ドット混合液を,多孔質ビーズ溶液に加えた。一時間のローテーション撹拌ののち,多孔質ビーズ溶液を遠心し,エタノールを10mg/ml BSAのPBS(pH7.4)溶液に徐々に置換した。皮膚,脳,および心臓の組織片をHOS:HR‐1マウス(星野試験動物飼育所)から得たのち,自家蛍光測定のため2枚のカバーガラスで挟んだ。厚みの異なる脳および心臓の組織切片は,マイクロスライサー(DTK−1000 DosakaEM)を用いて作成し,15μm多孔質ビーズと共に,あるいはビーズを加えずに,2枚のカバーガラスで挟んだ。光学特性測定のための顕微鏡写真を,6.3xの可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングシステムを用いて取得した。可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングにおける自家蛍光顕微鏡写真の量的比較のために,単位励起力,あるいは単位バンド幅あたりの光子数を画像強度として測定した。光学特性分析は,G−track(G−angstrom),G−count(G−angstrom),image J,およびOrigin(OriginLab)といったソフトウェア,およびLabVIEW(National Instruments)を用いてカスタマイズされたプログラムによって行った。
分光計を用いた光学特性スぺクトル測定
850nm以下のためには光電子増倍管(R2658P,浜松ホトニクス),850nm以上のためにはInGaAsフォトダイオードアレイ(シンフォニー,堀場製作所)を伴うナノログ分光計システム(堀場製作所)を用いて,482nm,670nm,および785nmの励起光,および遮断波長がそれぞれ510nm,710nm,および810nmである長距離発光フィルターにおける,マウス全身の自家蛍光スペクトルを測定した。自家蛍光強度の標準化のため,励起力をモニターした。マウスは回転型チャンバーに入れ,背側および腹側から励起光を照射した。サンプル角度は,マウスから放たれた拡散反射光が直接検出領域に入らないように調整した。光学特性パラメータスペクトル測定のため,皮膚,脳,および心臓の組織片をHOS:HR‐1マウス(星野試験動物飼育所)から得たのち,自家蛍光測定のため2枚のカバーガラスで挟んだ。拡散透過率および平行透過率測定のため,サンプルは平行透過率の光路を覆う球形カバーを除去した積分級の入り口に置いた。拡散反射率測定のため,サンプルは積分級の出口に置いた。拡散透過率,平行透過率,および拡散反射率スペクトルはJasco V‐670分光光度計(ジャスコインターナショナル)を用いて測定した。減衰係数は平行透過率をもとに計算した。吸光係数は拡散透過率および拡散反射率をもとに計算した。散乱係数は,減衰係数をもとに求めた減算吸光係数をもとに計算した(R. Splinter, B. A. Hooper, *An introduction to biomedical
optics*(2007))。
850nm以下のためには光電子増倍管(R2658P,浜松ホトニクス),850nm以上のためにはInGaAsフォトダイオードアレイ(シンフォニー,堀場製作所)を伴うナノログ分光計システム(堀場製作所)を用いて,482nm,670nm,および785nmの励起光,および遮断波長がそれぞれ510nm,710nm,および810nmである長距離発光フィルターにおける,マウス全身の自家蛍光スペクトルを測定した。自家蛍光強度の標準化のため,励起力をモニターした。マウスは回転型チャンバーに入れ,背側および腹側から励起光を照射した。サンプル角度は,マウスから放たれた拡散反射光が直接検出領域に入らないように調整した。光学特性パラメータスペクトル測定のため,皮膚,脳,および心臓の組織片をHOS:HR‐1マウス(星野試験動物飼育所)から得たのち,自家蛍光測定のため2枚のカバーガラスで挟んだ。拡散透過率および平行透過率測定のため,サンプルは平行透過率の光路を覆う球形カバーを除去した積分級の入り口に置いた。拡散反射率測定のため,サンプルは積分級の出口に置いた。拡散透過率,平行透過率,および拡散反射率スペクトルはJasco V‐670分光光度計(ジャスコインターナショナル)を用いて測定した。減衰係数は平行透過率をもとに計算した。吸光係数は拡散透過率および拡散反射率をもとに計算した。散乱係数は,減衰係数をもとに求めた減算吸光係数をもとに計算した(R. Splinter, B. A. Hooper, *An introduction to biomedical
optics*(2007))。
図8は,組織切片からの自己蛍光の顕微鏡写真を示す。520は,482nm励起光に対する可視領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。720は,670nm励起光に対する近赤外(1st)領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。1100,1300,および1500は,785nm励起光に対する近赤外(2nd)領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。スケールバーは200μmを示す。グラデーションバーは,毎秒あたりカウントされた光子を示す。
図9は,可視光,近赤外(1st),および近赤外(2nd)蛍光イメージングを用いた,量子ドットに浸した15μm多孔質ビーズの,組織切片を通じた顕微鏡写真である。最上段は,多孔質ビーズが組織切片の上部に接したカバーガラス側にある場合の顕微鏡写真である。それより下段は,多孔質ビーズが組織切片下部のカバーガラス側にある場合の顕微鏡写真である。脳および心臓由来の組織切片の厚みは,それぞれ120μm,100μm,200μmである。標準化された強度の図において,蛍光強度は最上段の図に示された最大強度に対して標準化されている。また,コントラスト調整された図において,コントラストは最大振幅に合わせられている。スケールバーは30μmを示す
図10は,脳および心臓の組織切片における,標準化された蛍光強度と切片の厚みとの関係を示すグラフである。線形曲線は指数関数を用いた近似の結果を示す。線はそれぞれ,520,720,1100,1300,および1500nmのイメージング波長を示す。縦軸のバーは標準誤差を示す。
図11は,脳および心臓の組織切片における,半値全幅と切片の厚みとの関係を示すグラフである。曲線はスプライン近似の結果を示す。縦軸のバーは標準誤差を示す。
図12は,皮膚におけるシグナル背景比を示すグラフである。棒グラフは,それぞれ,多孔質ビーズが組織切片の上部または下部に接したカバーガラス側にある場合のシグナル背景比を示す。バーは標準誤差を示す。
図13は,脳および心臓の組織切片における,シグナル背景比と切片の厚みとの関係を示すグラフである。バーは標準誤差を示す。
マウス生体におけるリンパ管造影および非侵襲的イメージング
図14は,リンパ管造影を目的とした,BSA抱合型量子ドットの模式図である。BSAはMUAリンカーを通じて量子ドットの表面に共有結合している。
図14は,リンパ管造影を目的とした,BSA抱合型量子ドットの模式図である。BSAはMUAリンカーを通じて量子ドットの表面に共有結合している。
マウスは顕微鏡ステージの上で麻酔する。発光ピークがそれぞれ520nm,720nm,1100nm,1300nm,および1500nmであるBSA被覆量子ドットの輝度を,溶液を露光時間や蛍光波長に関するカメラ調整を通じて標準化し,また,複数のμM濃度における領域当たりの平均光子量で示される,量子ドット濃度に関しても同様の操作を行った。リンパ管造影のため,等量の,発光ピークがそれぞれ520nm,720nm,1100nm,1300nm,および1500nmである,BSA被覆量子ドットのPBS(pH7.4)混合液を,100μl/minの速度で150μl,マウス後足に注射した。標準化された設定を用いて,マウス全身を0.63xで観察した。タイリング処理しつつ,電気ステージを用いてホールボディーイメージングを行い,image Jのプラグインに切り替えた。
イメージ解析は,IQ2(Andor)およびHCImage(浜松ホトニクス),image JおよびOrigin(OriginLab)といったソフトウェア,およびLabVIEW(National Instruments)を用いてカスタマイズされたプログラムによって行った。3mlのNP‐9(Sigma−Aldrich),200μl酸化鉄(II,III)イオンの磁気ナノ粒子溶液,および640μlのオルトケイ酸テトラエチル(Sigma−Aldrich)を,それぞれ15mlシクロヘキサンで希釈した。30分後,100μlの10%アンモニア(和光純薬工業)を加えた。24時間撹拌しつつ,ケイ酸組成物の反応を継続した。10μM ローダミン6G(和光純薬工業)の50μlクロロホルム溶液,発光ピークが1300nmである5μM PbS/CdS量子ドットの200μlクロロホルム溶液,および,オルトケイ酸テトラエチル(Sigma−Aldrich)640μlを,加え,24時間撹拌しつつ,ケイ酸組成物の反応を継続した。反応プロセスは2ないし3回繰り返した。反応液はアセトンおよびエタノールを用いて3回洗浄し,エタノールに置換した。最終的に,エタノールを10mg/ml BSAのPBS(pH7.4)溶液に徐々に置換した。ケイ素粒子の流体力学的大きさは,Zetasizer Nano ZS(Malvern)による動的光散乱を通じ,633He/Neレーザーを用いて測定した。溶液を1時間静置したのち,数回にわたり容器を傾けて上清を除去し,1〜2μlの大きさのケイ素粒子を分離した。0.1mg/mlのリポ多糖(Sigma−Aldrich)500μlを後足に注入したのち6時間後,酸化鉄を含む50μlケイ素粒子溶液,近赤外(2nd)量子ドット,およびローダミン6Gを注入した。
自作の12mm表面型RFコイルを用い,中心磁場が11.7Tである室温ボアBruker Avance II イメージングシステム(Bruker)によって,ケイ素粒子溶液の注入前および注入後のMR画像を得た。2次元取得モードにおいて,FRASHパルスシーケンスを用いて,MRIを取得した(TR/TE,400/3ms;flip angle,30;matrix size,256x192;field of view,12.8mmx9.6mm;slice thickness,300μm;voxel size,50μmx50μmx300μm;number of average,16)。免疫染色を行ったマウスは,ケイ素粒子注入後24時間後に処分した。左膝窩リンパ節を固定,封入し,5μlの連続組織切片を得た。切片はマウスマクロファージで処理し,食細胞マーカーF4/80抗体(Biolegend)およびDAPI(Biolegend)で染色した。
BSA被覆PbS/CdS量子ドットにおける細胞生死判別試験
HeLa細胞における,BSA被覆PbS/CdS量子ドットの細胞毒性を,セルカウンターを用いて測定した。細胞は,それぞれ異なるBSA被覆PbS/CdS量子ドット濃度下,異なる時間培養した。培養後,細胞を洗浄し,再び培地にサスペンドした。細胞懸濁液10μlを,10μlトリパンブルー溶液と混合した。細胞の生死はセルカウンター(Couuntess;Invitrogen)を用いて測定した。
HeLa細胞における,BSA被覆PbS/CdS量子ドットの細胞毒性を,セルカウンターを用いて測定した。細胞は,それぞれ異なるBSA被覆PbS/CdS量子ドット濃度下,異なる時間培養した。培養後,細胞を洗浄し,再び培地にサスペンドした。細胞懸濁液10μlを,10μlトリパンブルー溶液と混合した。細胞の生死はセルカウンター(Couuntess;Invitrogen)を用いて測定した。
可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングにおけるモンテカルロシミュレーション
モンテカルロシミュレーションを用いて,微粒子の蛍光イメージをシミュレートした。シミュレーションにおけるアルゴリズムは,最も広く,様々な出願(28)において用いられる方法である,ワング法と同等のものを用いた。本シミュレーションにおいて,粒子光源は蛍光微粒子に設置し,モンテカルロ法を用いて組織中における粒子の軌道を計算した。微粒子の顕微鏡イメージは,簡単な方法により生成した。微粒子の中心部が位置する,焦点を合わせられた面における光子の位置を,復帰方向および出射された光子の位置を用いて計算した。したがって,本シミュレーションにおける焦点を合わせられた面は,無限正確解像度を持つ面に焦点を合わせる点において常に正確である。本シミュレーションにおいて,光子は,生/死二つの状態に離散化された。シミュレーション幾何学は図S8に示される。シミュレーションは,2枚の0.17mmカバーガラス(G1,G2)に挟まれた組織サンプルに対して行われた。光子は,深さzを持つxy平面の原点に位置し,15mmの直径を持つ球形蛍光物体(O)の任意の位置で生成される。光子の初期方向は等方的である。本シミュレーションにおいて,5×109個の光子が生成された。光子の軌道は,組織に吸収されるまで,境界線から飛び出すまで,あるいは20cm以上移動するまでトレースされた。出射された光子は,焦点距離および直径がそれぞれ28.57mmおよび14.28mmである対物レンズを通じて集められた。光子がレンズの外に到達した場合,あるいは,レンズに対する標準方向に対し大きな方向角,すなわち関口数のアークタンジェント(0.259)より大きな角を有した場合,光子は廃棄される。レンズは対物面に焦点を合わせる,と事前に推測したように,イメージは焦点面(op)において再構築される。焦点面の2.5mm四方の各領域における光子の量をカウントした。カバーガラスの光学パラメータは次のとおりである。散乱係数0.001mm−1,吸光係数0.001mm−1,異方性パラメータ 1.0,反射係数 1.52。組織の光学パラメータ,msおよびma,は,積分球を伴う分光計測定で得られた標準値(表S2)より用いられ,反射係数および異方性はそれぞれ1.34および0.9に固定された。プログラムコードは,Lund groupにより独自に開発されたコード,すなわちCUDAMCML(http:/www.atomic.physics.lu.se/fleadmin/atomfysik/Biophotonics/Software/CUDAMCML.zip )に由来し,用途に合うようカスタマイズした。
モンテカルロシミュレーションを用いて,微粒子の蛍光イメージをシミュレートした。シミュレーションにおけるアルゴリズムは,最も広く,様々な出願(28)において用いられる方法である,ワング法と同等のものを用いた。本シミュレーションにおいて,粒子光源は蛍光微粒子に設置し,モンテカルロ法を用いて組織中における粒子の軌道を計算した。微粒子の顕微鏡イメージは,簡単な方法により生成した。微粒子の中心部が位置する,焦点を合わせられた面における光子の位置を,復帰方向および出射された光子の位置を用いて計算した。したがって,本シミュレーションにおける焦点を合わせられた面は,無限正確解像度を持つ面に焦点を合わせる点において常に正確である。本シミュレーションにおいて,光子は,生/死二つの状態に離散化された。シミュレーション幾何学は図S8に示される。シミュレーションは,2枚の0.17mmカバーガラス(G1,G2)に挟まれた組織サンプルに対して行われた。光子は,深さzを持つxy平面の原点に位置し,15mmの直径を持つ球形蛍光物体(O)の任意の位置で生成される。光子の初期方向は等方的である。本シミュレーションにおいて,5×109個の光子が生成された。光子の軌道は,組織に吸収されるまで,境界線から飛び出すまで,あるいは20cm以上移動するまでトレースされた。出射された光子は,焦点距離および直径がそれぞれ28.57mmおよび14.28mmである対物レンズを通じて集められた。光子がレンズの外に到達した場合,あるいは,レンズに対する標準方向に対し大きな方向角,すなわち関口数のアークタンジェント(0.259)より大きな角を有した場合,光子は廃棄される。レンズは対物面に焦点を合わせる,と事前に推測したように,イメージは焦点面(op)において再構築される。焦点面の2.5mm四方の各領域における光子の量をカウントした。カバーガラスの光学パラメータは次のとおりである。散乱係数0.001mm−1,吸光係数0.001mm−1,異方性パラメータ 1.0,反射係数 1.52。組織の光学パラメータ,msおよびma,は,積分球を伴う分光計測定で得られた標準値(表S2)より用いられ,反射係数および異方性はそれぞれ1.34および0.9に固定された。プログラムコードは,Lund groupにより独自に開発されたコード,すなわちCUDAMCML(http:/www.atomic.physics.lu.se/fleadmin/atomfysik/Biophotonics/Software/CUDAMCML.zip )に由来し,用途に合うようカスタマイズした。
図15は,標準化された量子ドット溶液の輝度を示す。520は,482nm励起光に対する可視領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。720は,670nm励起光に対する近赤外領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。1100,1300,および1500は,785nm励起光に対する近赤外(2nd)領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。ウェル領域は0.3cm2である。グラデーションバーは,毎秒あたりカウントされた光子を示す。
図16は,マウスの全身画像を示す。白線で囲んだ領域はリンパ管造影領域を示す。量子ドットは,白矢印で示した後足から注入した。スケールバーは10mmを示す。
図17は,可視光,近赤外(1st),および近赤外(2nd)蛍光イメージングを用いたリンパ管造影図を示す。白線はプロファイル解析に用いた線を示す。スケールバーは2mmを示す。
図18は,可視光,近赤外(1st),および近赤外(2nd)蛍光イメージングを用いたプロファイル解析を示す。
図19は,貪食細胞が,抹消組織からリンパ管に外来性物質を輸送する模式図である。ケイ素粒子が末梢組織に注入されると,貪食細胞はそれを外来性の異物と認識して取り込み,輸入リンパ管およびリンパ管に移動して,T細胞に異物を光源として提示する。
図20は,酸化鉄,近赤外(2nd)量子ドット,およびローダミン6Gを含むケイ素粒子の模式図である。酸化鉄粒子は,MRI画像のコントラストを確保するため,粒子内層に埋め込まれている。近赤外(2nd)量子ドットおよびローダミン6Gは,可視光よび近赤外(2nd)蛍光イメージングのため,粒子の外層に埋め込まれている。ケイ素粒子の直径は1−2μmである。
図21は,BSA抱合1100nm量子ドット,および1300nm量子ドットを含むケイ素粒子をマウス後足に注入し,タイムラプス撮影によって後足からリンパ管への輸送を可視化した際のマウス後足撮影写真である。スケールバーは4mmを示す。
図22は,BSA抱合1100nm量子ドット(黄色),および1300nm量子ドットを含むケイ素粒子(青色)による,リンパ管および血管のマルチスペクトル近赤外(2nd)イメージング。スケールバーは4mmを示す。
図23は,酸化鉄を含むケイ素粒子注入前,および注入後24時間におけるリンパ管のMRI画像を示す。白い点線はリンパ管を示す。矢印は蛍光観察の方向を示す。矢じりは,リンパ管内に見られる,後足から注入されたケイ素粒子を示す。スケールバーは1mmを示す。
図24は,リンパ管切片の免疫染色画像を示す。矢じりは,ローダミン6Gを含むケイ素粒子と結合したF4/80抗体で標識された貪食細胞を示す。線で囲まれた領域の拡大図は左上に示される。スケールバーは50μmを示す。
図25は,ケイ素粒子とともにリンパ管へと移動する貪食細胞のマルチスペクトル近赤外(2nd)タイムラプス画像である。スケールバーは500μmを示す。
以下,実施例1〜3におけるデータ等の基となるスペクトル等について簡単に説明する。
図26は,ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットの,水中における流体力学的大きさを示すグラフである。ヒストグラムは,それぞれ,ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットを指し示す。ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットの流体力学的大きさは,それぞれ,4.5,7.5,10.5nmである。曲線はガウス曲線である。
図26は,ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットの,水中における流体力学的大きさを示すグラフである。ヒストグラムは,それぞれ,ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットを指し示す。ピーク波長が1100nm,1300nm,1500nmであるPbS/CdS量子ドットの流体力学的大きさは,それぞれ,4.5,7.5,10.5nmである。曲線はガウス曲線である。
図27は,1300nmPbS/CdSおよびPbs量子ドットのX線回折パターンを示すグラフである。曲線は,PbS/CdS,およびPbs量子ドットのX線回析パターンを示す。バーは粗PbSおよびCdSのX線回析シミュレーション結果をそれぞれ示す。
図28は,1300nmPbS/CdSおよびPbs量子ドットの誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)分析を示すグラフである。上および下のグラフは,それぞれ,PbS/CdSおよびPbs量子ドットの分析結果である。青および赤は,それぞれCd,Pbのピークを示す。Cdのピークは,PbS/CdSPbs量子ドット分析の場合にのみ検出される。
図29は,イメージングシステムの写真である。図30は,イメージングシステムの模式図を示す。
図31は,背側から見たマウスの自家蛍光スペクトルを示す。図32は,腹側から見たマウスの自家蛍光スペクトルを示す。緑,可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングシステムに備えられた520,720.1100,1300,および1500nmの発光フィルターの範囲,482,670,および785nmにおける励起波長を示す。近赤外(2nd)領域における自家蛍光は,すべての励起波長において,ほとんど検出されない。一方,1000nm以下の自己蛍光は,近赤外(2nd)領域における482,および670nmにおけるそれに比べ明白である。自家蛍光の様子は,身体の部位によって異なる。
図33は,顕微鏡画像における自家蛍光の量的比較のためのグラフである。肌,脳,および心臓における自家蛍光の結果を示す。バーは標準誤差を示す。520は,482nm励起光に対する可視領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。720は,670nm励起光に対する近赤外(1st)領域での標準的な蛍光イメージング波長を示す。1100,1300,および1500は,785nm励起光に対する近赤外(2nd)領域での標準的な蛍光イメージング波長をそれぞれ示す。自家蛍光スペクトルと同様,可視光領域および近赤外(1st)領域での蛍光イメージングは,近赤外(2nd)領域における蛍光イメージングに比べ明白である。
図34は,積分球を用いた,皮膚,脳,および心臓における光学特性の分光学的分析に関し,減衰係数mtのスペクトルを示す。図35は,積分球を用いた,皮膚,脳,および心臓における光学特性の分光学的分析に関し,吸光係数maのスペクトルを示す。
図36は,モンテカルロシミュレーションの模式図を示す。光子源(O)は2枚のカバーガラス(G1,G2)に挟まれた組織サンプル(T)に位置し,光子のランダム軌道はモンテカルロシミュレーションで追跡された。脱出した光子はレンズ(L)で集められ,図像面に焦点を合わせられた。opは焦点面である。
図37−1は,モンテカルロシミュレーションによりシミュレートされた,異なる光学パラメータ,および組織厚における組織イメージを示す。図37−2は,モンテカルロシミュレーションによりシミュレートされた,異なる光学パラメータ,および組織厚における組織イメージを示す。イメージは,組織厚0.1,0.2,0.5,および1.0mm,かつ3セットの光学パラメータにおけるシミュレーション結果である。それぞれ,(A)ms=15mm−1,ma=0.9mm−1。(B)ms=10mm−1,ma=0.268mm−1。(C)ms=5mm−1,ma=0.5mm−1,における,520,720,および1300nmにおける脳組織の標準値である。標準化されたイメージ中の囲み図は,y=0mmにおける組織断面を示す。各シミュレーションは2つのイメージ,粗イメージとピーク密度により標準化されたイメージが付属する。粗イメージにおけるオブジェクトの輝度は,拡散および培地の吸収により密度が失われるため,その深さは急速に減衰していく。しかしながら,標準化されたイメージにおけるオブジェクトの形状は,イメージの組織断面に示されたように,比較的保持されている。(A)において,オブジェクト外側の密度は,組織厚の増加につれ,ピーク密度に比べて著しく増加している。これは,焦点外の光子および弾道上の光子により励起された,オブジェクトイメージを形成する複数の拡散プロセスが,培地の高度な拡散に伴い著しく減衰しているためである。これらのイメージは質的に実験イメージを説明している。1・3mmにおけるイメージは最も明確である。
図38は,酸化鉄,近赤外(2nd)量子ドット,およびローダミン6Gを含む水中のケイ素粒子の水力学的大きさを示す。曲線はガウス曲線である。ケイ素粒子の水力学的大きさは1.4mmである。
図39は,細胞生死判別分析を示すグラフである。100nMの濃度までは,細胞生存率は一定であることがわかる。
表1は,可視‐近赤外(1st)‐近赤外(2nd)イメージングシステムにより測定した,組織切片光学特性パラメータを示す。
表2は,積分球を備えた分光計により測定された組織光学特性パラメータを示す。
図40は,グルタチオン被覆PbS量子ドットの模式図である。
グルタチオンおよび酸化カリウムは和光純薬工業から購入した。ウシ血清アルブミン,酢酸鉛,および硫化カリウムはSigma−Aldrichより購入した。N‐ヒドロキシスルホスクシンイミド,および1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩は,それぞれ,同仁堂およびMolecular BioSciencesから購入した。すべての化学物質は研究室規格である。抗HER2抗体は中外製薬より購入した。
合成したPbS量子ドットの特徴
蛍光および吸収スペクトルはSPEX NanoLog(堀場製作所)およびV‐670(JASCO)を用いて,それぞれ測定した。合成したPbS量子ドットの形態は,高分解能透過電子顕微鏡2200‐FX(JEOL)を用い,加速電圧200kVにおいて測定した。合成したPbS量子ドットのX線回折および流体力学的直径は,それぞれ,D2 Phaser(Brucker AXS)およびZeta sizer nano‐ZS(Malvern Instruments)を用いて測定した。図2(b)における蛍光スペクトルは,各スペクトルのピーク値を用いて標準化した。
蛍光および吸収スペクトルはSPEX NanoLog(堀場製作所)およびV‐670(JASCO)を用いて,それぞれ測定した。合成したPbS量子ドットの形態は,高分解能透過電子顕微鏡2200‐FX(JEOL)を用い,加速電圧200kVにおいて測定した。合成したPbS量子ドットのX線回折および流体力学的直径は,それぞれ,D2 Phaser(Brucker AXS)およびZeta sizer nano‐ZS(Malvern Instruments)を用いて測定した。図2(b)における蛍光スペクトルは,各スペクトルのピーク値を用いて標準化した。
HER2‐PbS量子ドットの調整
2mg/molのEDC水溶液10μlを,合成したPbS量子ドット溶液1mlに加えた。ただちに20μlのN‐ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム(Sulfo‐NHS)を加え,撹拌した。2時間後,1mg/mlの抗HER2抗体100μlをゆっくり加えた。溶液は一晩4℃に保ち静置した。
2mg/molのEDC水溶液10μlを,合成したPbS量子ドット溶液1mlに加えた。ただちに20μlのN‐ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム(Sulfo‐NHS)を加え,撹拌した。2時間後,1mg/mlの抗HER2抗体100μlをゆっくり加えた。溶液は一晩4℃に保ち静置した。
細胞培養および生体内イメージング
KPL‐4 GFPおよびHeLa細胞培養のため,10%ウシ血清に浸したダルベッコ変法イーグル培地に,100mg/mlペニシリンおよび10mg/mlストレプトマイシンを用いた。調整されたHER2‐PbS量子ドットを,各培養皿に,280μg/mlの濃度になるように加えた。エンドサイト―シスを除く特異的結合を評価するために,4℃で一時間,細胞を培養した。非結合HER2‐PbS量子ドットはPBSで3回洗浄した。調整された培養皿は,自作の近赤外−2双眼立体顕微鏡を用いて撮影した。量的比較のため,イメージはImage Jを用いて分析し,近赤外−2シグナルを数えた。
PbS量子ドットおよびHER2‐PbS量子ドットの細胞毒性を評価するため,異なる濃度のPbS量子ドットおよびHER2‐PbS量子ドットを培地に加え,培養環境(37℃,5% CO2,および加湿環境)で24時間培養した。その後,細胞をPBSで洗浄し,PBS内に懸濁した。懸濁細胞はトリパンブルー溶液で染色し,細胞数をCountess細胞カウンター(Invitrogen)で数えた。サンプルの生存率はコントロールにより標準化され,コントロールにはHER2‐PbS量子ドットの代わりに等量の水が加えられた。
KPL‐4 GFPおよびHeLa細胞培養のため,10%ウシ血清に浸したダルベッコ変法イーグル培地に,100mg/mlペニシリンおよび10mg/mlストレプトマイシンを用いた。調整されたHER2‐PbS量子ドットを,各培養皿に,280μg/mlの濃度になるように加えた。エンドサイト―シスを除く特異的結合を評価するために,4℃で一時間,細胞を培養した。非結合HER2‐PbS量子ドットはPBSで3回洗浄した。調整された培養皿は,自作の近赤外−2双眼立体顕微鏡を用いて撮影した。量的比較のため,イメージはImage Jを用いて分析し,近赤外−2シグナルを数えた。
PbS量子ドットおよびHER2‐PbS量子ドットの細胞毒性を評価するため,異なる濃度のPbS量子ドットおよびHER2‐PbS量子ドットを培地に加え,培養環境(37℃,5% CO2,および加湿環境)で24時間培養した。その後,細胞をPBSで洗浄し,PBS内に懸濁した。懸濁細胞はトリパンブルー溶液で染色し,細胞数をCountess細胞カウンター(Invitrogen)で数えた。サンプルの生存率はコントロールにより標準化され,コントロールにはHER2‐PbS量子ドットの代わりに等量の水が加えられた。
生体内イメージング
KPL4‐GFP細胞(マウス一個体あたり0.5×107個)懸濁液を,5週令の雌BALB/c nu/nuマウス(日本チャールスリバー)の背側皮膚組織に植え付けた。数週間後,直径10mm以下の腫瘍をもつマウスを選んだ。2.8mg/mlのHER2‐PbS量子ドット溶液200μlを,移植マウスの尾静脈に注入した。
近赤外‐2生体イメージは,近赤外−2双眼立体顕微鏡を用いて,注入後0時間および48時間後に観察した。明視野および近赤外‐2領域における全身生体イメージングは,低解像度(×0.86)で行われ,個々のフレームが小さかった(mm×mm)ため,一個体あたり6×5フレームを要した。
KPL4‐GFP細胞(マウス一個体あたり0.5×107個)懸濁液を,5週令の雌BALB/c nu/nuマウス(日本チャールスリバー)の背側皮膚組織に植え付けた。数週間後,直径10mm以下の腫瘍をもつマウスを選んだ。2.8mg/mlのHER2‐PbS量子ドット溶液200μlを,移植マウスの尾静脈に注入した。
近赤外‐2生体イメージは,近赤外−2双眼立体顕微鏡を用いて,注入後0時間および48時間後に観察した。明視野および近赤外‐2領域における全身生体イメージングは,低解像度(×0.86)で行われ,個々のフレームが小さかった(mm×mm)ため,一個体あたり6×5フレームを要した。
腫瘍における詳細なイメージングは,高解像度(×2.0)で得られた。全ての近赤外‐2イメージは,Image Jにおいてガウス点広がり関数を求めるのに用いられた。48時間後,マウスは深麻酔により安楽死させた。腫瘍および他の器官は分離された。生体外近赤外‐2およびGFPイメージは,低解像度の近赤外−2双眼立体顕微鏡,および,510nm励起フィルターおよび535nm発光フィルターを備えたMS‐FX‐Pro生体内イメージングシステム(Carestream Health,Toronto,CA)を用いて得られた。
図41は,溶液の明視野写真を示す。図42は,4℃(900nm付近にピーク),25℃(1100nm付近にピーク),50℃(1200nm付近にピーク)における標準吸光度,および標準化された蛍光スペクトルを示す。図43は,異なる反応pHにおける各温度の蛍光スペクトルを示す。図44は,発光ピーク波長の概要プロットである。
図45は,合成したPbS量子ドットの透過電子顕微鏡写真である。図46は,PbS量子ドットのX線回折パターンを示すグラフである。図47は,流体力学的直径のヒストグラムである。
図48は,HER2‐PbS量子ドットの模式図である。図49は,HER2‐PbS量子ドット処置後のディッシュの近赤外‐2イメージである。スケールバーは100μmである。図50は,BSA‐PbS量子ドット処置後のディッシュの近赤外‐2イメージである。スケールバーは100μmである。図51は,HER2‐PbS量子ドットにおける,近赤外‐2蛍光密度のヒストグラムである。図52は,BSA‐PbS量子ドットにおける,近赤外‐2蛍光密度のヒストグラムである。図53は,様々な濃度のHER2‐PbS量子ドット存在下において24時間培養したのち,トリパンブルーを用いて染色した,KPL4およびHeLa細胞の細胞生存率を示す。
図54は,生体外および生体内における活性型免疫反応を示す写真である。図54(a)は,マウスにおける異種移植したKPL‐4 GFP乳腫瘍細胞の明視野写真である。図54(b)は,200mlの2.8mg/mlHER2‐PbS量子ドットを10秒間注入した直後の近赤外‐2生体イメージである。図54(c)は,200mlの2.8mg/mlHER2‐PbS量子ドットを10秒間注入後,48時間経過後の近赤外‐2生体イメージである。白矢印は腫瘍細胞シグナルを示す。図54(d)は,90秒間注入後48時間経過後の近赤外‐2イメージを示す。図54(e)は,赤い四角内の拡大図を示す。図54(f)は,100mmスケールバーと図54(e)のクローズアップ画像を示す。図54(g)は,腫瘍および他の主要器官の生体外イメージを示す。明視野(左),近赤外‐2(中央),およびGFP(右)。スケールバーは5mmを示す。
本発明は,蛍光プローブや蛍光プローブを用いた蛍光分析,及び血管造影剤に関する。したがって,本発明は化学産業で利用されうるほか,製薬業においても利用されうる。
Claims (10)
- 1000nm以上1500nm以下の波長を放射できる蛍光プローブ。
- 請求項1に記載の蛍光プローブであって,
水への溶解度が g/l以上 g/l以下である蛍光プローブ。 - 請求項1に記載の蛍光プローブであって,
量子ドットを含む蛍光プローブ。 - 請求項1に記載の蛍光プローブであって,
M1X1から構成される内芯とM2X2から構成され外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含み,
前記M1は,Cd,Zn,Mg,Ga,Hg,Ca,Sr,Ba,In,Al,Ge,Si,Zn,及びPdのいずれか又は2種以上であり,
前記X1は,O,S,Se,及びTeのいずれか又は2種以上であり,
前記M2は,Cd,Zn,Mg,Ga,Hg,Ca,Sr,Ba,In,Al,Ge,Si,Zn,及びPdのいずれか又は2種以上であり,
前記X2は,O,S,Se,及びTeのいずれか又は2種以上である,
蛍光プローブ。 - 請求項1に記載の蛍光プローブであって,
PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する量子ドットを含む蛍光プローブ。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光プローブであって,
さらに前記量子ドットの表面に結合した有機分子を含む,
蛍光プローブ。 - 請求項6に記載の蛍光プローブであって,
前記有機分子は,グルタチオン又はグルタチオンの誘導体である,
蛍光プローブ。 - 請求項1に記載の蛍光プローブであって,
有機化合物又は無機化合物を含む蛍光プローブ。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光プローブを含む,血管造影剤。
- PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有する第1の量子ドットを含む第1の蛍光プローブを用いて第1の蛍光分析を行い第1の蛍光分析結果を得る第1の蛍光分析工程と,
PbSの内芯とCdSの外殻とを有するコア−シェル構造を有し,第1の量子ドットとはPbSの内芯に対するCdSの外殻の割合が異なる第2の量子ドットを含む第2の量子ポロー部を用いて第2の蛍光分析を行い第2の蛍光分析結果を得る第2の蛍光分析工程と,
第1の蛍光分析結果及び第2の蛍光分析結果を用いて対象の蛍光分析を行う第3の蛍光分析工程と,
を含む,蛍光分析方法。
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---|---|---|---|---|
CN105067577A (zh) * | 2015-07-14 | 2015-11-18 | 天津大学 | 一种可视化检测汞离子的碳点-金纳米团簇双发射比率型荧光探针及制备方法 |
CN107411707A (zh) * | 2017-05-08 | 2017-12-01 | 武汉大学 | 一种肿瘤微血管成像仪及肿瘤微血管成像方法 |
JP2019513229A (ja) * | 2016-03-14 | 2019-05-23 | マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー | 短波赤外線蛍光を撮像するためのデバイスおよび方法 |
CN114692368A (zh) * | 2020-12-29 | 2022-07-01 | 哈尔滨工业大学 | 一种飞机尾焰红外图像光线跟踪优化仿真方法 |
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2013
- 2013-03-13 JP JP2013051102A patent/JP2014178155A/ja active Pending
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