JP2014176605A - キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤 - Google Patents

キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤 Download PDF

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斎本  博之
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伸介 伊福
Saburo Minami
三郎 南
Tomohiro Osaki
智弘 大崎
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Abstract

【課題】キチン系生体接着剤の接着強度及び接着速度を明らかにし、接着強度及び接着速度が制御されたキチン系生体接着剤を提供する。
【解決手段】(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤の接着強度及び接着速度を、二枚のコラーゲンフィルムを接着して接着面に平行な引っ張りせん断荷重を加えることで、測定して評価することができた。本発明の生体接着剤は、(A)キチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含むので、キチン系誘導体の種類、置換度、分子量及びキチン系ナノファイバーの種類等を制御することで、種々の接着強度を有する生体接着剤を、簡単、かつ容易に得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤に関する。
創傷及び外科手術部位を処置するために、縫合糸を使用することなく、生体の部位と生体の部位を結合するために、生体接着剤が使用されることがある。そのような生体接着剤として、キチン系接着剤が検討されている。キチン系接着剤は、カニ殻及びエビ殻由来のキチン及び/又はキトサンを原料とするので、ウィルス感染などの危険性が無いこと、及びキチン及びキトサンは創傷治癒剤や生体内充填剤として有用であること(特許文献1及び特許文献2参照)から、生体適合性の高い材料と考えられている。
キチンは、N−アセチルグルコサミンを繰り返し単位とする天然由来のムコ多糖の一種である(下記式(1)参照)。一方、キトサンも天然由来のムコ多糖の一種であるが、工業的にはキチンの脱アセチル化により製造されている。キチンとキトサンの相違点は、N−アセチル化の有無であり、N−アセチル化及び脱N−アセチル化は任意の割合で行うことが可能なので、キチンとキトサンは相互に変換可能であり、かつ、N−アセチル化の程度に応じて、キチンとキトサンの間に種々の化合物を製造し得る。従って、本明細書では、キチン、キトサン及びそれらの間の化合物(N−アセチル化の程度のみ異なる)を合わせてキチン系化合物という。このようなキチン系化合物の生体適合性及び含水性は、分子量分布、N−アセチル基の置換度、及び導入した官能基により制御可能であることが知られている。尚、本明細書では、キチン、キトサン及びそれらの間の化合物の誘導体を合わせて、キチン系誘導体という。
例えば、種々の位置に光反応性官能基等が導入されたキチン系誘導体は、紫外線照射により自己架橋して、生体組織の接合等に使用できることが報告されている。更に、他の官能基を導入することで、細胞接着性、遺伝子導入性及び水溶性の向上が可能なことも報告されている(特許文献3〜7及び非特許文献1〜3参照)。
しかし、これらのキチン系誘導体を含む生体接着剤(「キチン系生体接着剤」ともいう)の接着強度及び接着速度等を制御すること、特に、簡単かつ容易に制御することは、学術的のみならず、実際の医療の観点からも興味深い。
特許第2714621号公報 特許第2579610号公報 特許第4606586号公報 特開2005−154477号公報 特許第4955007号公報 特開2010−180377号公報 特開2011−160959号公報
Biomacromol., 6, 2385-2388, 2005. Trends Glycosci. Glycotechnol., 14, 331-341, 2002. Bioconjug. Chem. 17, 2, 309-316, 2006
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その課題は、キチン系生体接着剤の接着強度及び接着速度を明らかにすることで、接着強度及び接着速度が制御されたキチン系生体接着剤、その製造方法、及びその接着強度及び接着速度を制御する方法を提供することである。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、キチン系ナノファイバーを使用することで、キチン系生体接着剤の接着強度及び接着速度を制御することができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、一の要旨において、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤を提供する。
本発明は、一の態様において、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含む水性組成物と、ラジカル重合開始剤を組み合わせた、上述の二成分型生体接着剤を提供する。
本発明は他の態様において、ラジカル重合開始剤は、過酸化水素を含む上述の生体接着剤を提供する。
本発明に係る生体接着剤は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含むので、接着強度及び接着速度を制御することができる。
本発明に係る生体接着剤は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを含む水性組成物と、ラジカル重合開始剤を組み合わせた、二成分型である場合、より容易で簡単に使用することができる。
本発明に係る生体接着剤は、ラジカル重合開始剤が、過酸化水素を含む場合、更により容易で簡単に使用することができる。
図1は、試料作製方法及び測定方法を模式的に示す。 図2(a)は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体を含むが、(B)キチン系ナノファイバーを含まない生体接着剤を、ラットの肝臓に適用した後、1週間後の患部を示す。図2(b)は、本発明の生体接着剤を、ラットの肝臓に適用した後、1週間後の患部を示す。
本発明に係る生体接着剤は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体(以下「(A)キチン系誘導体」ともいう);及び(B)キチン系ナノファイバーを含む。
本発明に係る「(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体」とは、キチン、キトサン及びそれらの間の化合物(N−アセチル化の程度のみ異なる)の誘導体であって、ラジカル重合性基を有する化合物をいう。「ラジカル重合性基」とは、炭素原子間二重結合を有しラジカル重合可能な官能基をいう。より具体的には、可視光線、紫外線等の光線、X線等の電磁波、及びラジカル重合開始剤によって硬化する性質を有する官能基をいう。
本発明に係る(A)キチン系誘導体は、本発明が目的とする生体接着剤を得ることができる限り、特に制限されることはないが、例えば、下記式(I)で示されるキチン系誘導体を例示することができる。
式(I):
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、親水性基、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を有する親水性基を示し、m及びnは、m+n=1を満たし、かつ、0≦m≦1、0≦n≦1である:但し、
、R、R、R及びRの少なくともいずれか1つはラジカル重合性基又はラジカル重合性基を有する親水性基であり、かつ
n個のR、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、m個のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)
で表わされるキチン系誘導体、及び
上述の式(I)で表されるユニットがR、R、R、R及びRの少なくともいずれか1つに導入された分岐型のキチン系誘導体である。
式(I)のキチン誘導体は、N−アセチルグルコサミンのユニット(以下、キチンユニットともいう)及びグルコサミンのユニット(以下、キトサンユニットともいう)を構成単位として含む。これらのユニットの3位及び6位の水酸基と、キトサンユニットの2位のアミノ基の少なくともいずれか1つに、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性を有する親水基を含むことが好ましい。
式(I)で示されるキチン系誘導体は、好ましくは、
(1) R、R、R及びRの少なくともいずれか1つは親水性基であり、残りの基の少なくともいずれか1つはラジカル重合性基であり;
(2) R、R、R及びRの少なくともいずれか1つは親水性基であり、残りの基の少なくともいずれか1つはラジカル重合性基を有する親水性基であり;又は
(3) R、R、R及びRの少なくともいずれか1つはラジカル重合性基を有する親水性基である
上述のキチン系誘導体、及び
式(I)で表されるユニットがR、R、R、R及びRの少なくともいずれか1つに導入された分岐型のキチン系誘導体である。
式(I)のキチン系誘導体は、ラジカル重合性を有し、更に、水溶性も有することが好ましい。「水溶性」とは、水、生理食塩水、希DMSO水溶液等の生体に適した溶媒への溶解性を意味する。式(I)のキチン系誘導体は、例えば、25℃の水に対して、好ましくは10mg/mL以上の溶解性を有する。
前記式(I)で表されるキチン系誘導体において、キトサンユニット及びキチンユニットは、ユニット比率の合計が1となる割合であれば、それぞれ独立した構成単位として存在することができる。ユニットの配列は限定されず、末端単位となるユニットも特に限定されるものではない。従って、式(I)のキチン系誘導体には、キトサンユニットを含む誘導体も含まれる。なお、末端単位になりうるユニットのうち、グルコサミンの1位にヒドロキシ基が結合する残基は、6員環状態と開環した状態の平衡状態をとることから、還元末端残基として、キトサンユニットのアミノ基と反応することができる。
式(I)の「アルキル基」は、分子全体の親水性を損なわないという観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、及びジエチルアミノエチル基等を例示できる。
式(I)の「親水性基」として、糖類、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等を有する官能基及び極性基(カルボキシアルキル基等)を有する官能基が例示できる。優れた水溶性を付与する観点から、カルボキシアルキル基が好ましい。
「カルボキシアルキル基」として、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びそれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩)等を例示できる。優れた水溶性を付与する観点から、カルボキシメチル基が好ましい。
なお、式(I)のキチン系誘導体では、アミノ糖を構成成分とする多糖類のキチン及びキトサン自身も糖類として用いることができる。式(I)のキチン系誘導体が、式(I)のR、R、R、R及びRの少なくともいずれか1つに導入されることによって、式(I)で表わされるキチン系誘導体は、前記位置で分岐した構造を有する。なお、導入されるキチン系誘導体自身も、前記のキチンユニットとキトサンユニットを構成単位とするため、R、R、R、R及びRの少なくともいずれか1つに別のキチン系誘導体が導入される等によって、式(I)で表わされるキチン系誘導体が網目状の構造を有し得る。このような構造のキチン系誘導体を、分岐型キチン系誘導体ともいう。
式(I)の「ラジカル重合性基」として、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、シンナモイル基、アジド基、及びマレイミド基等を有する官能基を例示できる。キチンユニット及びキトサンユニットとの反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基を有する官能基が好ましい。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基を意味する。
そのような「ラジカル重合性基」として、具体的に、例えば、式(II):
で表わされる2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル基、及び3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基を例示できる。
更に、例えば、式(III):
で表わされる2−メタクリロイルオキシエチル基、(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)カルボニルメチル基、(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)カルボニルメチル基、(2−メタクリロイルオキシエトキシ)カルボニルメチル基等を例示できる。なかでも、式(II)及び式(III)で表わされる官能基は、前記キチン及びキトサンの3位及び6位の水酸基に導入可能であり、かつ、重合反応することにより硬化性を示す。更に、反応原料が市販されているので、大量合成が容易であり、好ましい。
また、他のラジカル重合性基として、例えば、3,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンジル基、3,5−ビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンジル基、3−メトキシ−4−メタクリロイルオキシベンジル基、4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)−3−メトキシベンジル基、3,4−ジメタクリロイルオキシベンジル基、3,5−ジメタクリロイルオキシベンジル基等が例示できる。
「ラジカル重合性基を有する親水性基」として、例えば、前記親水性基に、前記ラジカル重合性基が結合した官能基を例示できる。例えば、後述の式(IV)の右端のC6位の置換基を例示できる。
また、式(I)のキチン系誘導体の一つの態様として、上記の親水性基とラジカル重合性基を有するユニットを含有する形態を例示できる。前記2位のアミノ基がアセチル基に置換されたキチンユニットは取り扱い性を良好にすることから、キチンユニットがキトサンユニットと等量又はより多く含有される場合には水溶性を増大することができる。
式(I)中のm及びnは、各々、式(I)中の全繰り返し単位数(即ち、キチンユニットとキトサンユニットの総数)におけるキチンユニットの割合とキトサンユニットの割合を示し、同時に、mはキチン誘導体のアセチル基置換度〔N−アセチル化度(DSAC)〕を意味する。mは、0.60≦m≦1であることが好ましく、0.80≦m≦1であることがより好ましく、0.90≦m≦1であることが特に好ましい。nは、0≦n≦0.40であることが好ましく、0≦n≦0.20であることがより好ましく、0≦n≦0.10であることが特に好ましい。mとnの値は、キチン系誘導体のアセチル化反応及び脱アセチル化反応を行うことにより変えることができる。なお、m及びnそれぞれの値は、プロトン核磁気共鳴分析及び元素分析を利用して、例えば、特許文献7の実施例等に記載の方法を参照して、算出することができる。
式(I)で示されるキチン系誘導体の例として、例えば、親水性基としてカルボキシメチル基、ラジカル重合性基として2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル基が導入されたキチン系誘導体を好ましく例示できる。
そのようなキチン系誘導体として、
例えば、式(IV):
で示される化合物、及び
式(V):
で示される化合物、及び
式(VI):
で示される化合物(Kはカリウムであり、式(VI)中のx、y及びzは、0.5≦x≦0.6、0≦y≦0.4、0.1≦z≦0.4、x+y+z=1)及び
式(VII):
で示される化合物(式(VII)中のx、y及びzは、0.5≦x≦0.6、0.4≦y≦0.2、0.1≦z≦0.2、x+y+z=1)を例示できる。
キチン系誘導体の親水性基の置換度(DSCM)は、50%〜90%であることが好ましく、50%〜80%であることがより好ましく、60%〜70%であることが特に好ましい。
キチン系誘導体のラジカル重合性基置換度(DSPS)は、10%〜40%であることが好ましく、20%〜40%であることがより好ましく、25%〜30%であることが特に好ましい。
キチン系誘導体は、そのキチン系主鎖部分(より具体的には、キチン系出発原料)の重量平均分子量(Mw)が、100,000〜1,000,000であることが好ましく、270,000〜730,000であることがより好ましく、570,000〜730,000であることが特に好ましい。
このようなキチン系誘導体の製造方法は、目的とするキチン系誘導体を得られる限り特に制限されることはないが、例えば、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物と、親水性基を有する化合物及びラジカル重合性基を有する化合物を反応させて得ることができる。反応は、公知の方法を使用することができる。キチン系誘導体の製造方法として、特許文献3及び7等を参照することができる。キチン系誘導体は、赤外吸収スペクトル及びプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することによって同定することができる。
本発明に係る「(B)キチン系ナノファイバー」とは、キチン、キトサン及びそれらの間の化合物(N−アセチル化の程度のみ異なる)に基づくナノファイバーであって、ナノオーダーの繊維の幅(または径)を有するファイバーをいい、本発明が目的とする生体接着剤を得られる限り特に制限されることはない。
キチン系ナノファイバーの幅(または径)は、約1nm〜約700nmであることが好ましく、約1nm〜約300nmであることがより好ましく、約1nm〜約100nmであることが更に好ましく、約1nm〜約60nmであることが更により好ましく、約2nm〜約30nmであることが特に好ましく、約2nm〜約20nmであることが特により好ましく、5nm〜20nmであることが特に更に好ましい。ここで、例えば、「キチンナノファイバーの幅(または径)は約1nm〜約300nm」とは、電子顕微鏡観察にて観察した場合に,幅(または径)が約1nm〜約300nmのファイバーが全体の約50%以上を占める状態をいう。好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上を占める状態をいう。
キチン系ナノファイバーは、細くて均質であることが好ましく、長いことが好ましく、分子が伸びきり鎖結晶であることが好ましく、強度が高いことが好ましい。「伸びきり鎖結晶」とは、剛直性の高分子が伸びきった状態で規則正しく配列し、束になった繊維状の結晶のことであり、欠陥が少ないため強靭な物性を発揮することが可能である。さらに、水性媒体において高い分散安定性を有する。
このようなキチン系ナノファイバーの製造方法は、目的とするキチン系ナノファイバーを得られる限り特に制限されることはないが、一般的には、キチン含有生物由来の材料から製造することができる。キチン含有生物として、甲殻類、昆虫類またはオキアミなどが例示される。キチン系ナノファイバーの原料となるキチン含有生物由来の材料は、例えば、昆虫類の外皮、オキアミなどの殻、甲殻類の殻および外皮などが挙げられる。キチン含有生物由来の材料としては、キチン含量の多い生物、例えば、エビ、カニなどの甲殻類の殻および外皮が好ましい。
キチン系ナノファイバーは、公知の製造方法を用いて製造することができる。そのような製造方法として、WO2010/073758パンフレット及びそれに引用された特許文献等に記載された方法を参照することができる。
キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付してよく、次に、解繊工程に付すことを特徴とする、キチン系ナノファイバーの製造方法が好ましい。
本発明の生体接着剤は、上述の「(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体」;及び「(B)キチン系ナノファイバー」を含む。かかる生体接着剤は、適宜、適切な形態で保存し、使用することができる。例えば、粉末の形態で保存してよく、水性組成物の形態で使用することが好ましい。本発明の生体接着剤は、チューブに入れて保存し、使用してもよい。本発明の医療用接着剤は、ラジカル重合性であるため、遮光性の密封容器に入れて保存し、使用することが好ましい。
(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体と(B)キチン系ナノファイバーの重量比((A)/(B))は、0.5/1〜50/1であることが好ましく、1/1〜30/1であることがより好ましく、5/1〜25/1であることが特に好ましく、10/1〜20/1であることが最も好ましい。
本発明の生体接着剤が水性組成物の場合、(A)及び(B)を含む水性組成物(ラジカル重合開始剤と未混合)中の(A)の濃度は、0.1〜25重量%であることが好ましく、0.5〜22重量%であることが更に好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、2.5〜15重量%であることが特に好ましく、5〜10重量%であることが最も好ましい。
本発明の生体接着剤が水性組成物の場合、(A)及び(B)を含む水性組成物(ラジカル重合開始剤と未混合)中の(B)の濃度は、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましく、0.3〜3重量%であることが特に好ましく、0.4〜1重量%であることが最も好ましい。
「水性組成物」とは、「(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体」及び「(B)キチン系ナノファイバー」が、水性媒体中に存在することを意味し、溶解していても、溶解していなくてもよい。本発明の生体接着剤では、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体は、水性媒体に溶解することが好ましい。(B)キチン系ナノファイバーは、一般的に、水性媒体中に、分散することが好ましい。従って、本発明の生体接着剤は、水性分散物の形態を有することが好ましい。
「水性媒体」とは、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水等の水、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液などの緩衝液、及び生理食塩水等をいう。生体と本発明の生体接着剤に悪影響を与えない限り、ジメチルスルホキシド、アルコール等の他の溶媒等を含んでよい。更に、水性媒体は、pH調整剤、塩等を含んでも良い。
本発明の生体接着剤は、光及び電磁波等を照射することで、硬化させることができる。更に、ラジカル重合開始剤と混合することで、硬化させることもできる。従って、本発明の生体接着剤は、(1)(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体と(B)キチン系ナノファイバーを含む成分と、(2)ラジカル重合開始剤を含む成分の、2成分型接着剤として、使用することができる。
ラジカル重合開始剤とは、一般的にラジカル種を発生して、重合性化合物のラジカル重合を開始させることができる化合物をいい、例えば、光、電磁波及び熱等によってラジカル種が発生してもよい。ラジカル重合開始剤とは、そのような化合物であれば特に制限されるものではない。例えば、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系、ビスアシルホスフィンオキシド系及び過酸化物等を例示できる。具体的には、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を例示できる。また、例えば、エオジンY、クマリン、ローズベンガル、エリスロシン、カンファーキノン、9−フルオレノン、メタロセン系化合物、チタノセン化合物〔例えば、ビスシクロペンタジエニル−ビス(ジフルオロ−ピリル−フェニル)チタニウム〕等の可視光線による重合開始剤を例示できる。更に、過酸化水素、過硫酸
塩、ヒドロペルオキシドと塩化鉄、アスコルビン酸等の酸化還元開始剤を例示できる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ラジカル重合開始剤の含有量は、適宜決定されるが、生体接着剤中、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましく、1〜3重量%であることが特に好ましい。
また、本発明の生体接着剤に悪影響を与えない限り、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体以外の他のラジカル重合性化合物(例えば、ラジカル重合性樹脂等)を、本発明の生体接着剤は含むことができる。他のラジカル重合性化合物の種類及び添加量等は、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。本発明のキチン系誘導体の含有量は、接着剤中、特に限定はない。
本発明の生体接着剤は、水性組成物の形態で、注射器等を用いて使用部位に注入して使用することができる。その後、注入された接着剤に可視光線や紫外線等を照射してラジカル重合反応を開始させることができる。ラジカル重合反応開始の条件は公知の方法によることができる。
本発明の生体接着剤は、外科手術の際の組織接着に使用しても良く、例えば、皮膚、血管及び臓器等の組織を接合するための接着剤として使用することもできる。
更に本発明は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体を準備する工程;及び(B)キチン系ナノファイバーを準備する工程を有する生体接着剤の製造方法を提供する。本発明は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーを準備する工程、及びラジカル重合開始剤を組み合わせる工程を含む、二成分型生体接着剤の製造方法を提供する。
また本発明は、生体接着剤を製造するための、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーの組み合わせを提供する。本発明は、生体接着剤を製造するための、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;(B)キチン系ナノファイバー;及びラジカル重合開始剤の組み合わせを提供する。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例及び比較例で使用した生体接着剤を以下説明する。
実施例及び比較例の生体接着剤を製造するために使用した成分を説明する。
(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体
(A1)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:14%、Mw:570,000、下記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.61、y=0.25、z=0.14)後述する方法で合成した。(A1)キチン系誘導体ともいう。
(A2)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:97%、DSPS:22%、Mw:570,000、下記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.61、y=0.17、z=0.22)後述する方法で合成した。(A2)キチン系誘導体ともいう。
(A3)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:39%、Mw:570,000、下記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.61、y=0.0、z=0.39)後述する方法で合成した。(A3)キチン系誘導体ともいう。
(A4)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:68%、DSAC:95%、DSPS:25%、Mw:270,000、下記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.68、y=0.07、z=0.25)後述する方法で合成した。(A4)キチン系誘導体ともいう。
(A5)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM: 55%、DSAC:93%、DSPS:22%、Mw:730,000、下記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.55、y=0.23、z=0.22)後述する方法で合成した。(A5)キチン系誘導体ともいう。
(A6)3−メトキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)ベンジル カルボキシメチル キチン(DSCM:61%、DSAC:78%、DSPS:14%、Mw:570,000、下記式(VII)において、x+y+z=1とすると、x=0.61、y=0.25、z=0.14)後述する方法で合成した。(A6)キチン系誘導体ともいう。
(A7)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM: 61%、DSAC:100%、DSPS:26%、Mw:570,000、上記式(VI)において、x+y+z=1とすると、x=0.61、y=0.13、z=0.26)後述する方法で合成した。(A7)キチン系誘導体ともいう。
(B)キチン系ナノファイバー
(B1)キチン系ナノファイバー 後述する方法で合成した。
(B2)表面脱アセチル化キチン系ナノファイバー(又は表面キトサン化キチンナノファイバーともいう)後述する方法で合成した。
(X)添加剤
(x1)L(+)−アスコルビン酸(ナカライテスク製)
水:純水
(A)ラジカル重合性キチン誘導体の合成
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:97%、Mw:570,000)の合成
100mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.30123RY、カルボキシメチル化度(DSCM):61%、アセチル化度(DSAC):67%、重量平均分子量(Mw):570,000、数平均分子量(Mn):190,000)5.02gを加え、室温で溶解するまで撹拌した。反応溶液に105mLのメタノールを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.99g(9.69mmol、アミノ基(NH)に対して1.3当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を300mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)して、沈殿物を得た。沈殿物を150mLの純水に溶解させ、4.21gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で12時間撹拌した。反応溶液を400mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(4.32g、DSCM:61%、DSAC:97%、Mw:570,000)を得た。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、Mw:570,000)の合成
90mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.30123RY、DSCM:61%、DSAC:67%、Mw:570,000、Mn:190,000)4.07gを加え、室温で溶解するまで撹拌した。反応溶液に130mLのメタノールを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.8g(7.84mmol、アミノ基(NH)に対して1.3当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を300mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)して、沈殿物を得た。沈殿物を200mLの純水に溶解させ、6.05gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で19時間撹拌した。反応溶液を800mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(3.79g、DSCM:61%、DSAC:92%、Mw:570,000)を得た。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:55%、DSAC:93%、Mw:730,000)の合成
50mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.30203AS、DSCM:55%、DSAC:70%、Mw:730,000、Mn:192,000)3.08gを加え、室温で溶解するまで撹拌した。反応溶液に140mLのメタノールを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.87g(8.54mmol、アミノ基(NH)に対して2.1当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を300mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)して、沈殿物を得た。沈殿物を150mLの純水に溶解させ、4.46gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で19時間撹拌した。反応溶液を600mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(2.95g、DSCM:55%、DSAC:93%、Mw:730,000)を得た。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:68%、DSAC:95%、Mw:270,000)の合成
60mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.0522−15、DSCM:68%、DSAC:58%、Mw:270,000、Mn:89,000)2.00gを加え、室温で溶解するまで撹拌した。反応溶液に120mLのメタノールを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.76g(7.45mmol、アミノ基(NH)に対して2.0当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を300mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)して、沈殿物を得た。沈殿物を200mLの純水に溶解させ、5.6gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で19時間撹拌した。反応溶液を800mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(1.79g、DSCM:68%、DSAC:95%、Mw:270,000)を得た。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:78%、Mw:570,000)の合成
60mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.30123RY、DSCM:61%、DSAC:67%、Mw:570,000、Mn:190,000)3.03gを加え、室温で溶解するまで撹拌した。反応溶液に60mLのメタノールを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.59g(5.78mmol、アミノ基(NH)に対して1.3当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を400mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、10分)して、沈殿物を得た。沈殿物を100mLの純水に溶解させ、2.9gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で28時間撹拌した。反応溶液を600mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(2.71g、DSCM:61%、DSAC:78%、Mw:570,000)を得た。
尚、N−アセチル化カルボキシメチルキチンの合成は、文献11:Carbohydr. Res., 47, 315-320, 1976. を参照することができる。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:100%、Mw:570、000)の合成
60mLの純水に脱アセチル化カルボキシメチルキチン(甲陽ケミカル製 Lot.No.30123RY、DSCM:61%、DSAC:67%、Mw:570、000、Mn:190、000)4.08gを加え、室温で一晩撹拌し、さらに0.79g(7.50mmol、アミノ基(NH)に対して2.0当量)の無水酢酸を滴下し、室温で撹拌した。反応溶液を600mLのアセトンに加えることで沈殿させ、遠心分離(3、500rpm、5分)して、沈殿物を得た。沈殿物を200mLの純水に溶解させ、6.05gの0.5M水酸化カリウム水溶液を加えて、室温で12時間撹拌した。反応溶液を400mLのメタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3、500rpm、5分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を水に溶解させた後、凍結乾燥を行うことで白色綿状のN−アセチル化カルボキシメチルキチン(3.04g、DSCM:61%、DSAC:88%、Mw:570、000)を得た。
得られたN−アセチル化カルボキシメチルキチンを、同様の操作を用いて、更に再アセチル化した(第1ロット)。
また、同じ脱アセチル化カルボキシメチルキチンを使用して、同様の操作を用いて、アセチル化後、更に再アセチル化した(第2ロット)
第1ロットと第2ロットを併せて、更に再々アセチル化を行った。
N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:100%、Mw:570、000)を得た。
(A1)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:14%、Mw:570,000)の合成
20mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、Mw:570,000、563.2mg)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、135.2mg(0.951mmol、6位の水酸基(OH基)に対して1.0当量)のグリシジルメタクリレートを加え、40℃で24時間撹拌した。反応溶液をエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で10時間乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3,500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A1)キチン誘導体(563.0mg、DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:14%、Mw:570,000)を得た。
(A2)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:97%、DSPS:22%、Mw:570,000)の合成
60mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:97%、Mw:570,000、2.02g)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、0.94g(6.62mmol、6位の水酸基(OH基)に対して2.0当量)のグリシジルメタクリレートを加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液を500mLのエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で一晩乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3,500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A2)キチン誘導体(1.1g、DSCM:0.61%、DSAC:97%、DSPS:22%、Mw:570,000)を得た。
(A3)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:39%、Mw:570,000)の合成
15mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:92%、Mw:570,000、592.4mg)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、424.7mg(2.99mmol、6位の水酸基(OH基)に対して3.0当量)のグリシジルメタクリレートを加え、40℃で96時間撹拌した。反応溶液をエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で10時間乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3,500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A3)キチン誘導体(461mg、DSCM:61%、DSAC:92%、DSPS:39%、Mw:570,000)を得た。
(A4)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:68%、DSAC:95%、DSPS:25%、Mw:270,000)の合成
20mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:68%、DSAC:95%、Mw:270,000、753.3mg)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、302.0mg(1.75mmol、6位の水酸基(OH基)に対して2.1当量)のグリシジルメタクリレートを加え、60℃で25時間撹拌した。反応溶液をエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、2分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で3時間乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3,500rpm、2分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A4)キチン誘導体(333.9mg、DSCM:68%、DSAC:95%、DSPS:25%、Mw:270,000)を得た。
(A5)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:55%、DSAC:93%、DSPS:22%、Mw:730,000)の合成
20mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:55%、DSAC:93%、Mw:730,000、535mg)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、295mg(2.06mmol、6位の水酸基(OH基)に対して2.0当量)のグリシジルメタクリレートを加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液をエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3,500rpm、5分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で10時間乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3,500rpm、5分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A5)キチン誘導体(407mg、DSCM:55%、DSAC:93%、DSPS:22%、Mw:730,000)を得た。
(A6)3−メトキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)ベンジルカルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:78%、DSPS:14%、Mw:570,000)の合成
50mLのDMFに16.72g(0.11mol)のバニリン、13.1mL(0.10mol)のグリシジルメタクリレート、および0.37g(1.00mmol)の塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムを加え、85℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、300mLの酢酸エチルを加え、有機層を冷10%水酸化カリウム(50ml)で3回洗浄し、さらに冷蒸留水(50mL)で3回洗浄した。その後、有機層を飽和食塩水(50mL)で1回洗浄した。洗浄した有機層を減圧下で濃縮し、1mLのTHFを加えて冷蔵庫で一晩放置し再結晶し、バニリン誘導体を得た(10.38g)。
130mLの0.2M酢酸緩衝液(pH4.8)に、N−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:78%、Mw:570,000)2.71gを溶解するまで撹拌した。同時に40mLのTHFに上記で合成したバニリン誘導体0.77g(2位のアミノ基に対して2当量)を溶解するまで撹拌した。これらの溶液を混ぜ合わせ、さらに6時間撹拌した。そこに、0.33gのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(バニリン誘導体に対して2当量)を10mLの純水に溶解させた溶液を0℃で滴下した。その溶液のpHを10wt%水酸化ナトリウム水溶液で7.0に調整した。さらに、4時間撹拌した後、600mLのエタノールを加え、遠心分離(3,500rpm、5分)により沈殿物を回収した。沈殿物は、1週間透析した後、凍結乾燥することで白色綿状生成物を得た。生成物を50mLの2−プロパノール中で一晩撹拌洗浄した後、さらに50mLのジエチルエーテル中で一晩撹拌洗浄し、乾燥することで(A6)キチン誘導体(0.86mg、DSCM:61%、DSAC:78%、DSPS:14%、Mw:570,000)を得た。尚、(A6)キチン誘導体の合成は、文献12:Carbohydr Polym. 69, 697-706, 2007 を参照することができる。
(A7)2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:100%、DSPS:26%、Mw:570,000)の合成
80mLの純水に合成したN−アセチル化カルボキシメチルキチン(DSCM:61%、DSAC:100%、Mw:570,000、1.96g)を加え、室温で溶解するまで撹拌した。その後、1.27g(7.96mmol、6位の水酸基(OH基)に対して2.5当量)のグリシジルメタクリレートを加え、40℃で24時間撹拌した。反応溶液をエタノールに加えることで沈殿させ、遠心分離(3、500rpm、3分)を行い、沈殿物を得た。沈殿物を真空下で5時間乾燥させた。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、粉末状にした後、ジエチルエーテルで洗浄を行い、遠心分離(3、500rpm、10分)を行い、沈殿物を得た。乾燥した沈殿物を乳鉢ですり潰し、白色粉末の(A7)キチン誘導体(563mg、DSCM:61%、DSAC:100%、DSPS:26%、Mw:570,000)を得た。
カルボキシメチル化度(DSCM)は、滴定法により算出した。
アセチル化度(DSAC)は、元素分析法による炭素/窒素比より算出した。
ラジカル重合性基置換度(DSPS)は、プロトン核磁気共鳴スペクトルの積分値より算出した。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC:Gel Filtration Chromatography)を用いて測定して、単分散分子量のプルラン(昭和電工製 STANDARD P−82)を用いて換算した重量平均分子量をいう。より具体的には、高速液体クロマトグラフ用送液ユニット(島津社製 LC−10AT)、カラムオーブン(島津製 CTO−6A)、RI検出器(島津社製 RID−6A)を用い、カラムは、東ソー製のAsahipak GS−520HQ(φ7.6mm×30cm)、GS−320HQ(φ7.6mm×30cm)、GS−220HQ(φ7.6mm×30cm)を3本連結して用いた。溶離液は、0.15M NaClを含む0.1M 酢酸ナトリウム水溶液を用いた。2mgの試料に1mlの溶離液を加えて、室温で24時間緩やかに撹拌後、0.45μmのフィルターを用いて濾過した試料を用いた。カラム温度は、40℃で、同様の溶媒を用いた。流量は、0.5ml/分であった。試料の秤量から繰り返し2回測定を行い、得られた数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の平均値を、Mn及びMwとした。
尚、本明細書において、Mn及びMwとは、キチン系主鎖部分(より具体的には、キチン系出発原料)のMn及びMwをいう。
(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体の水溶液の調製
80mgの合成した(A1)キチン系誘導体を、10mLサンプル管にとり、688mgの水、及び32mgのL(+)−アスコルビン酸の10wt%水溶液(メタクリル基に対し1/4当量)を加え、室温で30分撹拌して、(A1)キチン系誘導体濃度が10wt%の(1)比較水溶液を得た。
(A1)キチン系誘導体の代わりに、(A2)〜(A7)キチン系誘導体の各々を用いて、同様の方法を使用して、(A2)〜(A7)キチン系誘導体の各々の濃度が、10wt%の(2)〜(7)比較水溶液を得た。(後述する[0087][表3]参照)
(B)キチン系ナノファイバーの製造
(B1)キチン系ナノファイバーの製造
カニ殻由来乾燥キチン粉末(ナカライテスク)20gを2,000mLの純水中に分散させ、そこに20mLの酢酸を加え、よく撹拌した後、濾過した。回収した沈殿物に1%酢酸を加え全量を2,000mLとし、よく撹拌した。キチン分散液を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6−2))を用いて、繊維に解離させて、(B1)キチン系ナノファイバー(収率:93%、DSAC:95%)を得た。
(B2)表面脱アセチル化キチン系ナノファイバーの製造
カニ殻由来乾燥キチン粉末(ナカライテスク)20gを2,000mLの20%水酸化ナトリウム中、アルゴン雰囲気下、100℃で6時間撹拌を行うことによって繊維表面を脱アセチル化した。その後、遠心分離(10,000rpm、10分)を6回行うことで分散液を中性に戻した後、ろ過した。沈殿物を1,500mLの1%酢酸中に入れ、1晩室温で撹拌した。表面脱アセチル化キチン分散液を石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6−2))を用いて、繊維に解離させて、(B2)表面脱アセチル化キチン系ナノファイバー(又は表面キトサン化キチンナノファイバー)を得た(収率:53%、DSAC:72%)。
(B3)脱アセチル化キチン系ナノファイバー(キトサンナノファイバー)の製造
カニ殻由来乾燥キトサン(東京化成)23gを1、800mLの純水中に分散させた後、石臼式摩砕機(スーパーマスコロイダー(MKCA 6−2))を用いて粗破砕した。その後、スターバースト(スギノマシン製)により30回解繊処理を行うことで、1wt%の(B3)脱アセチル化キチン系ナノファイバー(又はキトサンナノファイバー)を得た(DSAC:22%)。
(A)キチン系誘導体及び(B)キチン系ナノファイバーを含む水性組成物の製造
(A1)キチン系誘導体と(B1)キチン系ナノファイバーを含む(1)水性組成物の製造
80mgの上述の(A1)キチン系誘導体を10mLサンプル管に量りとった。688mgの0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液((B1)キチン系ナノファイバーの含有量:4.1mg)、及び32mgの10重量%L(+)−アスコルビン酸水溶液(メタクリル基に対し1/4当量)を加え、室温で30分撹拌して、(1)水性組成物((A1)キチン系誘導体濃度:10重量%)を得た。(A1)キチン系誘導体は、水に溶解したが、(B1)キチン系ナノファイバーは、水に懸濁したので、(1)水性組成物は、全体は水性懸濁物であった。
(A1)キチン系誘導体の代わりに、(A2)キチン系誘導体〜(A5)キチン系誘導体を用いた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて、(2)水性組成物〜(6)水性組成物を得た。いずれの水性組成物も、キチン系誘導体濃度は、10重量%であった。
引き続いて、(A1)キチン系誘導体の代わりに、(A6)キチン系誘導体を用い、0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液の代わりに、0.93重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液((B1)キチン系ナノファイバーの含有量:6.4mg)を用いた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて水性組成物を得た。
更に、80mgの(A1)キチン系誘導体の代わりに、8mg、40mg及び160mgの(A2)キチン系誘導体を用い、0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液の代わりに、0.93重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液の量を、760mg、728mg及び608mgに各々変えた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて、(9)〜(11)水性組成物を得た。これらの各水性組成物の(A2)キチン系誘導体の濃度は、1重量%、5重量%及び20重量%であった。
更に、(A1)キチン系誘導体、又は(A1)キチン系誘導体の代わりに(A2)キチン系誘導体〜(A6)キチン系誘導体を用い、0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液の代わりに、0.60重量%の(B2)キチン系ナノファイバー水懸濁液((B2)キチン系ナノファイバーの含有量:4.1mg)を用いた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて、(12)〜(17)水性組成物(キチン系誘導体濃度:10wt%)を得た。
尚、(2)〜(17)水性組成物は、いずれも水分散物の形態であった。
さらに引き続いて、(A1)キチン系誘導体の代わりに、(A7)キチン系誘導体を用い、0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液、0.60重量%の(B2)キチン系ナノファイバー水懸濁液及び1重量%の(B3)キチン系ナノファイバー水懸濁液を用いた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて、(18)〜(20)水性組成物を得た。
更にまた、(A1)キチン系誘導体の代わりに、(A2)キチン系誘導体を用い、0.60重量%の(B1)キチン系ナノファイバー水懸濁液の代わりに、0.6重量%の(B3)キチン系ナノファイバー水懸濁液((B3)キトサンナノファイバーの含有量:4.1mg)を用いた以外は、(1)水性組成物の製造と同様の方法を用いて、(21)水性組成物(キチン系誘導体濃度:10重量%)を得た。
尚、(18)〜(21)水性組成物は、いずれも水分散物の形態であった。
接着強度測定
試料作製方法及び測定方法を、図1を参照しながら説明する。40〜43mgの上述の(1)〜(21)水性組成物及び(1)〜(7)比較水溶液の各々1を、薬さじで、コラーゲンフィルム2(日東電工製)に薄く塗布した。コラーゲンフィルム2を、生体組織モデルとして用いた。
(1)〜(17)及び(21)水性組成物及び(1)〜(6)比較水溶液の各々1に、0.01wt%の過酸化水素水3を一滴(32〜39mg)滴下し、直ちにもう一枚のコラーゲンフィルム2を被せた。(18)〜(20)水性組成物及び(7)比較水溶液を用いた場合、0.01wt%の過酸化水素水の代わりに、3wt%の過酸化水素水を使用した。
(1)〜(17)及び(21)水性組成物及び(1)〜(6)比較水溶液を使用した場合、2枚のコラーゲンフィルム2の接着部分4の上に20gの錘5を乗せ、1時間圧着させた。錘5を取り除き、室温で12時間風乾した。(18)〜(20)水性組成物及び(7)比較水溶液を用いた場合、2枚のコラーゲンフィルム2の接着部分4の上に20gの錘5を乗せ、5分間圧着させた。錘5を取り除き、室温で5分間風乾した。
接着したコラーゲンフィルム2を40℃の温水に1分間浸漬した後、水気をキムタオルにより取り除き、コラーゲンフィルムにダンプロンテープ(OPPテープ)6を張り付けることで補強した。
接着強度試験は、精密万能試験機(島津製、AGS−10KNX)を用いて、接着面に平行な引っ張りせん断荷重により測定する方法(JIS K 6850−1999)を参考にして行った。接着強度は、5回測定して平均値(試験力(N)及び試験力(N)をキチン誘導体溶液の乾燥塗布量(mg)で除した値)で示した。
使用した(1)〜(21)水性組成物及び(1)〜(7)比較水溶液の組成(成分は、水性組成物全体を100重量%とする重量%で示す)と、それらを0.01wt%又は3wt%の過酸化水素水を用いて硬化させた場合の接着強度の測定結果を表1〜3に示した。
表1〜3に示すように、実施例の生体接着剤は、(B)を含まない対応する比較例の生体接着剤より接着強度に優れる。例えば、実施例1〜6、10〜15及び19を、(B)を含まない対応する比較例1〜6と比べると、接着強度に優れる。更に、実施例16〜18を、比較例7と比べると、接着強度に優れる。従って、キチン系ナノファイバーを含むことで接着強度が増加する。接着強度及び接着強度の増加量は、キチン系誘導体の種類、置換度、分子量及びキチン系ナノファイバーの種類等に依存するので、本発明の生体接着剤は、これらを制御することで、種々の接着強度を有する生体接着剤を、簡単、かつ容易に得ることができる。
ラット肝臓への適用
(2)比較水溶液、及び(11)水性組成物をオートクレーブにより滅菌(120℃、5分)した。
2匹のラットの各々を開腹し、各々の肝臓にデルマパンチを用いて直径3mmの穴を開けた。一方に、(11)水性組成物を塗布した後、3wt%過酸化水素水を2滴滴下し、開腹部を縫合した。他方に、(2)比較水溶液を塗布した後、同様に、3wt%過酸化水素水を2滴滴下し、開腹部を縫合した。1週間後、両方を再度開腹し、各々の患部を観察した。それらを図2に示す。
図2(a)は、(2)比較水溶液を塗布した肝臓である。患部は塞がり、白色になっていた。図2(b)は、(11)水性組成物を塗布した肝臓である。患部は塞がり、更に、患部と大網膜がしっかりと接着していた。患部と大網膜のしっかりとした接着が認められたことから、(11)水性組成物の方が、(2)比較水溶液より、接着力が強いと考えられる。即ち、キチン系ナノファイバーを含むことで、接着力が向上したと考えられる。
本発明は、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体と、(B)キチン系ナノファイバーを含む生体接着剤を提供する。本発明に係る生体接着剤は、接着強度及び接着速度を、簡単かつ容易に制御することができる。
1 水性組成物、2 コラーゲンフィルム、3 0.01重量%過酸化水素水、4 塗布部分(又は接着部分)、5 錘、6 テープ

Claims (5)

  1. (A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び
    (B)キチン系ナノファイバー
    を含む生体接着剤。
  2. (A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバー
    を含む水性組成物と、ラジカル重合開始剤を組み合わせた、請求項1に記載の二成分型生体接着剤。
  3. ラジカル重合開始剤は、過酸化水素を含む請求項2に記載の生体接着剤。
  4. 生体接着剤を製造するための、(A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体;及び(B)キチン系ナノファイバーの組み合わせ。
  5. (A)ラジカル重合性基を有するキチン系誘導体を準備する工程;及び
    (B)キチン系ナノファイバーを準備する工程
    を有する生体接着剤の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016117679A (ja) * 2014-12-19 2016-06-30 国立大学法人鳥取大学 創傷治癒促進剤
JP2017210512A (ja) * 2016-05-24 2017-11-30 シャープ化学工業株式会社 水系接着剤組成物

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