JP2014173264A - 触覚誘導部材付き手摺 - Google Patents

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Abstract

【課題】災害暗転時等に避難口方向を迅速に把握でき、意匠性にもすぐれた触覚誘導部材付き手摺を提供することを目的とする。
【解決手段】手摺と触覚誘導部材とを備え、触覚誘導部材は手摺の下面に備えられており、連続する複数の触覚誘導ブロックを有し、触覚誘導ブロックは、手摺の進行方向に略平行な面と、略平行な面に連続する傾斜面とを有し、一の触覚誘導ブロックと、それに隣接する他の触覚誘導ブロックとの間に立ち上がり面を有する。これにより、災害暗転時等にも容易に避難するべき方向を認識することができ、また、触覚誘導ブロックが手摺の下面に設けられているため、意匠的にもすぐれたものとなる。
【選択図】図4

Description

本発明は、ビル、病院、地下道等の公共施設内で用いられる触覚誘導部材付き手摺に関する。
従来、ビル、病院、地下道等の公共施設内において用いられている手摺に、目の不自由な人を対象としたり、火災等で建築物の内部に煙が充満して視界が確保できない時に、避難方向を容易に確認しうる部材を備えた手摺が用いられることがある。
特許文献1には、手摺に、軟質または半硬質の合成樹脂製シートを矢印等の避難誘導表示部を膨出部として打ち出して、シートの外周が傾斜面となるように面取りする技術が開示されている。
また、特許文献2には、手摺に、方向を示すための非対称の凸形状部もしくは凹形状部を連続して備えることによって、通路や道路の進行方向等を確認することができる技術が開示されている。
特開2008−75431号公報 特開2007−239298号公報
特許文献1に開示されている技術は、触覚による案内に加えて、視覚によっても案内することを目的としているために、手摺から膨出している部分が矢印の形をしている。そのため、触覚によって避難すべき方向を認識する際には、触ってすぐに直感的に把握することはできず、認識するのに時間がかかるという問題点がある。また、矢印の誘導部材は手摺の上面に設けられているため、意匠性が悪いという問題点もある。
特許文献2に開示されている技術は、手摺に設けられる非対称の凸形状部もしくは凹形状部が、連続して備えられて絶えず変化を感じる形状となっているため、避難時に不安感を生じるおそれがあり、避難方向の認識にも時間がかかるという問題点がある。また、凸形状部もしくは凹形状部が、手摺の全面に設けられているため、意匠性が悪いという問題点もある。
そこで本発明は、災害暗転時等に避難口方向を迅速に把握でき、意匠性にもすぐれた触覚誘導部材付き手摺を提供することを目的とする。
本願の請求項1に係る発明では、手摺と、触覚誘導部材と、を備え、触覚誘導部材は、手摺の下面に備えられており、連続する複数の触覚誘導ブロックを有し、触覚誘導ブロックは、手摺の進行方向に略平行な面と、略平行な面に連続する傾斜面と、を有し、一の触覚誘導ブロックと、一の触覚誘導ブロックに隣接する他の触覚誘導ブロックとの間に立ち上がり面を有する、ことを特徴とする触覚誘導部材付き手摺が提供される。
すなわち、請求項1に係る発明では、災害暗転時においても手摺に触覚誘導部材が備えられていることによって、避難するべき方向を認識することができる。また、形状が触覚誘導ブロックであることによって、晴眼者、視覚障害者のいずれも利用することができる。さらに、触覚誘導部材を手摺の下面に配置したことによって、普段手摺を使用する際の障害となることがなく、意匠性を損なうこともない。また、一の触覚誘導ブロックと、それに隣接する他の触覚誘導ブロックとの間に立ち上がり面によって段差を設けることによって、避難口方向と逆側に進んだ場合に引っかかりを感じさせることで進みにくくさせることができ、効果的に避難口方向に誘導することもできる。ここで、触覚誘導部材を構成する個々の触覚誘導ブロックが、傾斜面だけで構成された場合には、傾斜面と立ち上がり面との間の角度が鋭角となるため、本来なめらかな動きとなるべき避難口方向への移動の際にも、この鋭角部分において強い刺激を感じてしまい、歩行の妨げになったり、避難口方向を間違える可能性があり、進行方向に滑らせる際に、傾斜による変化を絶えず感じることで、不安感が生じて移動に時間がかかるところ、傾斜面と平行面とから構成されていることによって、斜面と平行面との間の角が鋭角ではなくなるため角の刺激が少なくなり、握りやすく短時間で避難するべき方向を認識することができる。また、複数の触覚誘導ブロックを連続して配置することで、進行方向に一定の間隔の変化を感じることができ、確実に避難口方向へ誘導することができる。さらに、手摺に触覚誘導ブロックを貼るだけで誘導することができるため、誘導のために電源や動力源等を設ける必要がない。
本発明により、災害暗転時等に避難口方向を迅速に把握でき、意匠性にもすぐれた触覚誘導部材付き手摺を提供することが可能となる。
本発明の触覚誘導部材付き手摺が用いられている様子を示した図である。 本発明の触覚誘導部材付き手摺を握った様子を示した図である。 本発明の触覚誘導部材付き手摺の握った部分を拡大した図である。 平坦な廊下に設置された触覚誘導部材付き手摺を模式的に拡大した正面図である。 触覚誘導部材付き手摺の断面図である。 触覚誘導ブロックの一例を示した図である。 階段に設定された触覚誘導部材付き手摺を模式的に拡大した正面図である。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件A)。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件B)。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件C)。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件D)。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件E)。 実験1において用いられる触覚誘導部材付き手摺である(条件F)。 実験1の結果を示した図である。 実験2の所要時間の結果を示した図である。 実験2の主観申告の結果を示した図である。 実験2の成功率の結果を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の触覚誘導部材付き手摺10が用いられている様子を示した図である。図1に示されているように、ビル、病院、地下道等の公共施設内における平坦な廊下や階段において、触覚誘導部材付き手摺10が設置されている。
図2は本発明の触覚誘導部材付き手摺10を人が握っている様子を示した図であり、図3は図2において触覚誘導部材付き手摺10を握っている部分を拡大した図である。なお、図2及び図3においては、わかりやすくするために、触覚誘導部材の高さを若干大きく表している。後述するように、本発明の触覚誘導部材付き手摺10は、手摺の下面に触覚誘導部材が取り付けられており、誘導するべき方向に滑りやすく、その逆方向には抵抗を感じて滑りにくく構成されている。実際に使用する際には、図2のように触覚誘導部材付き手摺10を上から握り、指先を手摺下面の触覚誘導部材に触れながら滑らせるようにして使用する。
図4は、図1に示されている触覚誘導部材付き手摺10のうち、平坦な廊下に設置されている触覚誘導部材付き手摺10を模式的に拡大した正面図、図5は、触覚誘導部材付き手摺10の断面図である。図5に示されているように、触覚誘導部材付き手摺10は、径40mmの断面円形状で内部に空洞部14を有する手摺12の下面の溝部16に、硬質樹脂からなる触覚誘導部材20をはめ込み、図示しないビスや、両面テープ等で固定している。また、図4に示されているように、触覚誘導部材20は、複数の触覚誘導ブロック21が連続して配置されて構成されている。このように複数の触覚誘導ブロック21を連続して配置することによって、誘導されるべき進行方向に常に一定の変化を感じることができ、確実な誘導を行うことができる。
図6は、図4に示されている個々の触覚誘導ブロック21の一例を示した図であり、図6(a)は下面図、図6(b)は正面図である。図6(a)に示されているように、本実施の形態の触覚誘導ブロック21は全体長Lが90mm、奥行きWが21mmで構成されている。また、図6(b)に示されているように、触覚誘導ブロック21は、傾斜面22と、傾斜面22に連続して、手摺の進行方向と略平行となる平行面24と、一の触覚誘導ブロック21の平行面と隣接する触覚誘導ブロック21の傾斜面との間の立ち上がり面26とから構成されており、立ち上がり面26によって、一の触覚誘導ブロック21と隣接する触覚誘導ブロック21との間に段差が形成されている。また、傾斜面22は、直線傾斜面22aと、曲線傾斜面22bとからなり、間に曲線傾斜面22bをはさんで直線傾斜面22aと平行面24とを接続することによって、触覚誘導ブロック21がなめらかに形成されている。また、本実施の形態においては、触覚誘導ブロック21の全体長90mmのうち、平行面24の長さL1が65mm、直線傾斜面22aの長さL3が15mm、曲線傾斜面22bの長さL2が10mm、曲率半径が200mmであり、高さHは2mmで構成されている。
ここで、本実施の形態の触覚誘導ブロック21の形状の作用及び効果について説明する。
触覚誘導ブロック21が、平行面24なしに傾斜面22からのみ構成された場合には、傾斜面22と立ち上がり面26との間の角度が鋭角となるため、本来なめらかな動きとなるべき避難口方向への移動の際にも、この鋭角部分において強い刺激を感じてしまい、歩行の妨げになったり、避難口方向を間違える可能性があり、また、高さが常に変化するために移動している間に絶えず変化を感じることとなって、移動の際に不安を感じることがあり、正しい誘導方向を把握するのに時間がかかるが、傾斜面22と平行面24とから構成されていることによって、傾斜面22と立ち上がり面26との間の角が鋭角ではなくなるため角の刺激が少なくなり、握りやすく短時間で避難するべき方向を認識することができる。そのため、平行面24なしに傾斜面22からのみで構成された場合と比較して、不安感を防止して、短時間で正しい誘導方向を把握することが可能となる。このことは、後述の実験例によっても示されている(効果1)。また、平行面24を備えたことにより、手摺12をしっかり握らなくとも、手摺12の下面に指を滑らせながらの移動も可能となる(効果2)。
触覚誘導ブロック21が傾斜面22からのみ構成されている場合は、特に触覚誘導ブロック21の高さHが高くなった場合などに、傾斜面22の厚みが厚い部分から、厚みが薄い部分に向けた矢印のように見えてしまう場合があり、視覚的に、実際の誘導方向と逆方向に進むような印象を与えてしまうおそれがあるが、本実施の形態のように平行面24を備えている場合には、矢印のように見えることを防止することができ、視覚的に誤解を与えるといったことがない(効果3)。
触覚誘導ブロックの平行面24の長さがあまり長くなりすぎると、変化のない区間が長くなるため、腕を大きく動かさなければ進むべき方向を判断できず誘導に時間がかかったり、正しい方向に誘導できない場合があるが、適切な長さに設定することにより、そのような誘導ミスを避けることができる。このことは後述の実験例によっても示されている(効果4)。
本実施の形態において、立ち上がり面26と隣接する触覚誘導ブロック21の傾斜面22との間をなめらかな角度で接続することもできる。その場合には、一の触覚誘導ブロック21から隣接する触覚誘導ブロック21へと移行する際に過度な刺激を与えることが少なく、歩行スピードを上げることも可能となる(効果5)。
また、本実施の形態においては、前記のとおり傾斜面22の長さを25mmとし、そのうち直線傾斜面22aの長さL3を15mm、曲線傾斜面22bの長さL2を10mm、曲率半径を200mmとしている。傾斜面22の長さについても、短くしすぎると変化に気づきにくく適切な誘導が行えない場合もある一方、逆に長くしすぎると絶えず変化を感じることで不安感が生じて移動に時間がかることがある。現在の、傾斜面22全体の長さを25mmとした場合には、進行方向を示す変化を感じながら不安感を生じさせることがない。また、曲線傾斜面22bの長さも、現在の10mm程度が平行面24から直線傾斜面22aへと滑らかに移動させることが可能となる(効果6)。
図7は別の実施の形態を説明する図であり、階段に設定された触覚誘導部材付き手摺を模式的に拡大した正面図であり、基本的な構成は平坦な廊下の手摺として設置した実施の形態と同様である。本実施形態においても、平坦な廊下の手摺として設置した場合と同様に、左右非対称の触覚誘導ブロック21により、触覚によって正しい誘導方向を把握することができるなど、効果1〜効果6と同様の効果を奏することができる。また、それに加えて本実施の形態の場合は、誘導方向が階段の上方に向かう方向の場合に、バランスを崩しやすい階段において、上昇中にバランスを崩した場合など、触覚誘導ブロック21によって引っかかりが生じて転倒を防止するという効果も奏することができる(効果7)。
次に、本発明の評価のための実験を行ったので、その内容及び結果を図面を参照して説明する。
(実験1)
実験1は、図8〜図13に示した6種類の条件の触覚誘導部材付き手摺10を作成し、一対比較法による測定及び評価を行った。具体的には、6種類の触覚誘導部材付き手摺10のうちから2種類の触覚誘導部材付き手摺10を抽出して設置し、アイマスクをした被験者が、抽出された2種類の触覚誘導部材付き手摺10を続けて触り、避難行動のための手摺による誘導として、どちらの触覚誘導部材付き手摺10がわかりやすかったかの評価を行う。評価は、先に触った触覚誘導部材付き手摺10(先攻)を基準として、後に触った触覚誘導部材付き手摺10(後攻)が、どの程度わかりやすいか、又はわかりにくいかを+3(非常にわかりやすい)〜0(同じ)〜−3(非常にわかりにくい)の間の整数値で評価を行った。
被験者は大学生11名であり、その内訳は女性9名、男性2名であった。
6種類の触覚誘導部材付き手摺10について以下に説明する。触覚誘導ブロック21の奥行きWは、6種類のいずれも21mmに設定されている。
・条件A(図8)
図8(a)に下面図、図8(b)に正面図として示したように、触覚誘導ブロック21に平行面24を備えず、傾斜面22のみを備え、全体長Lが20mmである。また、一の触覚誘導ブロック21と、隣接する触覚誘導ブロック21との間の立ち上がり面26の高さHは5mmである。
・条件B(図9)
図9(a)に下面図、図9(b)に正面図として示したように、一の触覚誘導ブロック21と、隣接する触覚誘導ブロック21との間の立ち上がり面26の高さHを2mmとし、その他の条件は条件Aと同じである。
・条件C(図10)
図10(a)に下面図、図10(b)に正面図として示したように、触覚誘導ブロック21を、平行面24と傾斜面22とから構成して、全体長Lを60mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを35mmとする。また、一の触覚誘導ブロック21と、隣接する触覚誘導ブロック21との間の立ち上がり面26の高さHは2mmである。
・条件D(図11)
図11(a)に下面図、図11(b)に正面図として示したように、一の触覚誘導ブロック21と、隣接する触覚誘導ブロック21との間の立ち上がり面26の高さHを5mmとし、その他の条件は条件Cと同じである。
・条件E(図12)
図12(a)に下面図、図12(b)に正面図として示したように、触覚誘導ブロック21の全体長Lを100mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを75mmとし、その他の条件は条件Dと同じである。
・条件F(図13)
図13(a)に下面図、図13(b)に正面図として示したように、それぞれの触覚誘導ブロック21を離間的に配置し、個々の触覚誘導ブロック21が、下面から見て、互いに並行となる半径26mmの円弧状の辺からなる。また、正面から見て、平行面と曲線面とからなり全体長Lは10.5mmであり、高さHは5mmである。
6種類の条件から2つの条件を抽出して、それらの2つの条件の手摺を連続して触れて、先攻側の条件と比較して、後攻側の条件のわかりやすさを評価する。11名の被験者に条件A〜条件Fのうちのすべての2つの組み合わせについて2回ずつ行った。図14はその結果を示した図であり、図14(a)は、評価の数値を一対比較法によって評価した評価値の一覧であり、図14(b)は、それらの評価値を数直線上に配置した図である。
これらの結果から、触覚誘導ブロック21を離間的に配置した条件Fが、非常にわかりにくく、それよりも、平行面24を備えずに傾斜面22のみから構成される条件A、条件Bがわかりやすく、条件Aと条件Bとでは、立ち上がり面26の高さを低くした条件Bの方がわかりやすいという結果となった。また、これらの条件A、条件Bよりも、平行面24と傾斜面22とによって構成される条件C、条件D、条件Eの方がわかりやすいという結果となった。これらのことから、触覚誘導ブロックは離間的にではなく連続的に設け、個々の触覚誘導ブロックは、傾斜面のみから構成されるものではなく、傾斜面と平行面とから構成されるものの方がわかりやすいことが把握できる。これは、触覚誘導ブロック21を離間的に設けたものは、誘導方向を示唆する部材が点在しているために誘導方向の把握がしにくくなること、また、触覚誘導ブロック21を連続的に設けた場合であっても、触覚誘導ブロックが傾斜面22からのみで構成されている場合には、傾斜面22と立ち上がり面26との間の角が鋭角となり、避難口方向にも強い刺激を感じることで歩行の妨げになったり、避難口方向を間違える可能性もある。また、高さが常に変化するために移動している間に絶えず変化を感じることとなって、移動の際に不安を感じることがあり、正しい誘導方向を把握するのに時間がかかるためである。
本実験の結果においては、触覚誘導ブロック21の高さが低い条件Cより、触覚誘導ブロック21の高さが高い条件D及び条件Eの方がわかりやすいという結果が得られたが、実際の使用時には、視覚によって感じる方向を考慮する必要がある。高さが高くなると、個々の触覚誘導ブロック21が視覚的には矢印状に見えてしまうことがあり、触覚的に誘導するべき方向と、視覚的に矢印のように見えてしまう方向とが逆の関係となってしまうことがある。触覚誘導ブロック21の高さを5mmとすると、場合によっては視覚的に矢印状に見えてしまうことがあるが、高さ2mmでは矢印状に見えることはほとんどない。
(実験2)
実験2は、図6に示した形状の触覚誘導部材付き手摺10において、触覚誘導ブロック21の全体長Lを変化させて、所要時間、主観評価、成功率の測定及び評価を行った。
具体的な実験方法は以下のとおりである。図2に示されたような触覚誘導部材付き手摺10において、手摺の高さ800mm、全長1060mmとし、840mmの間隔を開けて2か所のゴールを設定し、両ゴールの中間地点をスタートラインとして設定した。スタート時には、スタートラインに中指を合わせ、「用意、スタート」の合図で、左右どちらかにあるゴールを目指すこととした。触覚誘導ブロック21は、後述するような種々の条件で、同一方向に形成されているため、手摺の中間地点をスタートラインとして左右いずれかのゴールを目指す場合には、一方向にはなめらかで進みやすく、多方向には抵抗があって進みにくい構成となる。進みやすい正しいゴールを左右のいずれに設けるかについては、ランダムに決定する。
被験者は大学生20名(内訳は男性5名、女性15名)であり、被験者への指示は、「できるだけ速く、正確にゴールまでたどり着いてください。」であった。所要時間については、実験者の「スタート」の合図から被験者がゴールに触れる瞬間までの所要時間を計測した。また、主観評価については、試行ごとに、わかりやすい、どちらでもない、わかりにくいの3択で主観を回答し、わかりやすい=1点、どちらでもない=0点、わかりにくい=−1点として、合計して平均値を取った。成功率については、正しいゴールにたどり着いた割合を算出した。
以下の6つの条件を、それぞれ4試行ずつ行った。
・条件G
触覚誘導ブロック21を、平行面24と傾斜面22とから構成して、全体長Lを30mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを5mmとする。また、一の触覚誘導ブロック21と、隣接する触覚誘導ブロック21との間の立ち上がり面26の高さは2mmである。
・条件H
触覚誘導ブロック21の全体長Lを60mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを35mmとした以外は、条件Gと同様に構成する。
・条件I
触覚誘導ブロック21の全体長Lを90mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを65mmとした以外は、条件Gと同様に構成する。
・条件J
触覚誘導ブロック21の全体長Lを120mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを95mmとした以外は、条件Gと同様に構成する。
・条件K
触覚誘導ブロック21の全体長Lを150mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを125mmとした以外は、条件Gと同様に構成する。
・条件L
触覚誘導ブロック21の全体長Lを270mmとし、そのうち傾斜面22の長さを25mm、平行面24の長さを245mmとした以外は、条件Gと同様に構成する。
図15に所要時間の結果を、図16に主観申告の結果を、図17に成功率の結果を示す。図15における棒グラフが、所要時間の平均値を示し、棒グラフの上の縦線分の長さが標準偏差の大きさを表している。また、図16においては、ひし形の位置が主観申告の値を示し、上下に伸びる線分の長さが、それぞれ標準偏差の大きさを表している。これらの結果から、所要時間では全体長60mm、90mmがほぼ変わらず平均値で最も短く、被験者ごとのばらつきも少ないという結果となった。主観評価では全体長60mmが一番わかりやすく、次に全体長90mmがわかりやすく、被験者ごとのばらつきも少ないという結果となった。成功率では、全体長が120mmまでは間違いは発生しないが、長くなって150mm、270mmとなると、わずかながら間違いが発生するという結果となった。これらの結果から、全体長30mmの場合には、全体長のうち傾斜面22の占める割合が大きくなるため、変化を感じる時間が相対的に長くなり、全体長60mmの場合や90mmの場合と比較して、正しい誘導方向を把握するのに多少時間がかかることがある。また、逆に全体長が120mm、150mm、270mmと長くなるにつれ、触覚誘導ブロック21における平行面24の占める長さが95mm、125mm、245mmと長くなっていくため、全体長60mmの場合や90mmの場合と比較して、触覚誘導ブロック21の変化が少なくなり、正しい誘導方向を把握するのに多少時間がかかることがある。傾斜面の長さは、長すぎると絶えず変化を感じることで不安感が生じて移動に時間がかかることや、短すぎると変化に気づきにくいことから、進行方向を示す変化を感じながら、不安感が生じない適度な長さの25mmに設定している。これらのことから、触覚誘導ブロックの全体長は、傾斜面の長さ25mmに、不安感が生じない適度な長さの平行面35mm〜65mmを合わせた60〜90mmが適切である。そして、60〜90mmの触覚誘導ブロックを連続して配置することで、進行方向に一定の間隔の変化を感じることができるので、確実に避難口方向に誘導することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、触覚誘導部材付き手摺10の設置場所は、屋内の廊下や階段に限定されるものではなく、屋外の公園や公共空間に設置することもできる。また、触覚誘導部材付き手摺10を構成する部材の、手摺12や触覚誘導ブロック21の材質も限定されるものではない。さらに、触覚誘導ブロック21を構成する平行面24、傾斜面22、立ち上がり面26等の各部材の長さや高さについても適宜好ましい範囲を設定することができる。
10 触覚誘導部材付き手摺
12 手摺
14 空洞部
16 溝部
20 触覚誘導部材
21 触覚誘導ブロック
22 傾斜面
22a 直線傾斜面
22b 曲線傾斜面
24 平行面
26 立ち上がり面

Claims (1)

  1. 手摺と、触覚誘導部材と、を備え、
    触覚誘導部材は、手摺の下面に備えられており、連続する複数の触覚誘導ブロックを有し、
    触覚誘導ブロックは、手摺の進行方向に略平行な面と、略平行な面に連続する傾斜面と、を有し、
    一の触覚誘導ブロックと、一の触覚誘導ブロックに隣接する他の触覚誘導ブロックとの間に立ち上がり面を有する、
    ことを特徴とする触覚誘導部材付き手摺。
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