JP2014156410A - 組織形成用組成物及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】組織形成を効果的に促進するサイトカイン組成物を提供する。
【解決手段】インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を有効成分として含有する組成物とする。
【選択図】なし

Description

本明細書は、組織形成用組成物及びその利用に関する。
再生医療分野においては、幹細胞移植が有効であることが知られている。一方、幹細胞移植には、コストや品質などの管理を考慮すると、現状、広く適用できる医療技術とはいえない。骨再生医療においては、幹細胞移植のほか、自家骨移植、骨補填材の移植等が行われているが、これらは、それぞれ患者の侵襲等を伴う点及び時間を有する点等の問題があった。
例えば、骨再生医療においては、骨形成タンパク質−2(BMP−2)、血小板由来成長因子(PDGF)、ベータ線維芽細胞増殖因子(bFGF)などのサイトカインを単一の有効成分として含有する製剤が骨再生促進剤として供給されている。これらのサイトカインは、いずれも、骨格形成過程に作用して骨格再生を促進する働きを担っている。
骨形成過程には種々の段階があるが、単一のサイトカインを用いる場合には、一部の段階にしか作用しない。このため、一定の骨再生を実現するには、サイトカインの濃度を生理的濃度を超えた高濃度にする必要があった。高濃度サイトカインの投与は、移植部位における強い炎症反応が起こることが知られている。例えば、脊椎管狭窄症に対する脊椎固定でBMP−2を使用した場合には、呼吸不全といった重篤な炎症反応が起こることが報告されている(非特許文献1)。
一方、骨形成過程に関与し、骨形成を促進しうるサイトカインは、極めて多数が知られている。例えば、骨形成材料において、骨形成過程に関与しうる複数のサイトカインから1種又は複数のサイトカインを選択して用いることも開示されている(特許文献1)。
特開2012−16517号公報
Perri B, Cooper M, Laurysen C and Anad N. "Adverse swelling associated with use of rh-BMP-2 in anterior cervical discectomy and fusion: a case study" The Spine Journal, vol.7, p235-239, 2007
非特許文献1に開示されるように、骨形成など組織過程における単一サイトカインの利用は、投与濃度を制限することが必要な場合もあった。このため、単一のサイトカインでは十分な組織形成を実現することが困難であった。また、複数のサイトカインを組み合わせて使用するには、可能性あるサイトカインが多いため、多様な組み合わせが存在し得る。このため、組織形成を効果的に促進できる有効な組み合わせは、未だ提供されていない。
本明細書は、組織形成を効果的に促進するサイトカイン組成物及びその利用を提供する。
本発明者らは、骨形成に関わるサイトカインにつき種々検討したところ、インスリン様成長因子(IGF)及びトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、さらには血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を組み合わせて用いることが、骨形成などの組織形成に効果的に作用するという知見を得た。また、こうした組み合わせによれば、従来に比較して低濃度であっても有効な組織形成を実現できるという知見も得た。本明細書は、これらの知見に基づき以下の手段を提供する。
(1)インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を有効成分として含有する、組織形成用組成物。
(2)さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を有効成分として含有する、(1)に記載の組成物。
(3)前記有効成分は、組換えタンパク質である、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)前記組織は、歯周組織である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記組織は、骨である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)前記有効成分を、総濃度を5ng/ml以下で含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)インスリン様成長因子−1と、
トランスフォーミング成長因子−β1と、
を別個にあるいは同時に備える、組織形成用キット。
(8)さらに、血管内皮細胞増殖因子を備える、(7)に記載のキット。
(9)さらに、スキャホールドを備える、(7)又は(8)に記載のキット。
(10)組織形成用材料であって、(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物とスキャホールドとを備える、材料。
(11)組織形成用組成物の製造方法であって、有効成分として、インスリン様成長因子−1及びトランスフォーミング成長因子−β1を混合する工程、を備える、方法。
(12)前記混合工程は、追加の有効成分として、血管内皮細胞増殖因子を混合する工程である、(11)に記載の方法。
(13)前記有効成分を、総濃度で5ng/ml以下の溶液に調製する、(11)又は(12)に記載の方法。
(14)インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含有する、幹細胞用培地
(15)さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有する、(14)に記載の培地。
(16)インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含有する、幹細胞用添加剤
(17)さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有する、(16)に記載の添加剤。
(18)(14)又は(15)に記載の培地を用いて幹細胞を培養する工程を備える、幹細胞の培養方法。
(19)(14)又は(15)に記載の培地を用いて幹細胞を培養する工程と、
培養された前記幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能からなる群から選択される1又は2以上を評価する工程と、を備える幹細胞の評価方法。
(20)組織形成方法であって、
標的組織に対して(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物を供給する工程を備える、方法。
(21)組織形成用組成物のための有効成分のスクリーニング方法であって、
インスリン様成長因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物と、1種又は2種以上の被検化合物と、を標的組織の細胞に供給して、前記細胞の増殖能、遊走能及び分化能のいずれか又は2種以上を評価する工程を備える、方法。
組織形成に関するこれら3種の成分の作用に関する可能性ある概念の一例を示す図である。 (a)はMSC−CMにて培養したrMSCsのマイグレーション・アッセイ結果を示し、(b)は、BrdU染色の結果を示す図である。 MSC−CMにて培養したrMSCsの骨形成関連遺伝子発現をリアルタイムPCR法で測定した結果を示す図である。 ELISAにてMSC−CMに含まれる成長因子を測定した結果を示す図である。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の培養上清(MSC−CM)のラット頭蓋骨骨欠損モデルに対する影響のμCT測定結果を示す図である。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の培養上清(MSC−CM)のラット頭蓋骨骨欠損モデルに対する影響の組織学的手法による評価結果を示す図である。 ラベル化rMSC移植後の蛍光イメージング結果を示す図である。 GFP発現ラットへのMSC−CM投与後の再生骨の免疫組織学的染色結果を示す図である。 MSC−CMによるイヌMSC及びPDLCのマイグレーションアッセイの結果を示す図である。 MSC−CMによるイヌMSC及びPDLCのBrdU染色の結果を示す図である。 MSC−CMによるイヌ歯周組織再生組織の組織学的およびX線学的評価を示す図である。 MSC−CMによるイヌ歯周組織再生組織の組織学的およびX線学的評価を示す図である。 MSC−CMによるイヌ歯周組織再生組織の組織学的およびX線学的評価を示す図である。 MSC−CMによるイヌ歯周組織再生組織の歯根表面の基準点からの再生セメント質の高さ、歯槽骨の高さおよび面積の測定結果示す図である。 特定サイトカインの組み合わせによる処置から4週後のμCT画像を示す図である。 特定サイトカインの組み合わせによる処置から4週後の再生骨占有率を示す図である。
本明細書の開示は、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を少なくとも含有し、さらには、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有する組織形成用組成物に関する。図1に組織形成に関するこれら3種の成分の作用に関する可能性ある概念の一例を示す。IGF−1及びTGF−β1は、内在性幹細胞の遊走及び増殖を促進するとともに、内在性幹細胞の各種芽細胞への分化を促進する。さらに、VEGFは、血管新生を促進する。こうした結果、IGF−1及びTGF−β1は、骨等の組織を効果的に形成し、さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を加えることで、一層効果的に組織を形成することができる、と考えられる。なお、図1に示す概念は推論であり、本明細書の開示を拘束するものではない。なお、本明細書において、「組織の形成」とは、生体における組織の再形成(再生)を含む概念である。以下、本明細書の開示について詳細に説明する。
(組織形成用組成物)
本明細書に開示される組成物は、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を有効成分として含有する。さらに、好ましくは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有している。
(IGF−1)
IGF−1は、組換えタンパク質であってもよいし、天然から取得されたものであってもよい。特に限定するものではないが、IGF−1は、本組成物が対象とする動物個体と同種の動物由来であることが好ましい。例えば、本組成物がヒトを対象とする場合には、ヒトIGF−1のアミノ酸配列あるいは当該アミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を有するIGF−1であることが好ましい。各種動物由来のIGF−1は、組換えタンパク質として商業的に入手することができる。また、各種動物由来のIGF−1は、当該動物の間葉系幹細胞を無血清培地で培養した培養上清中から取得することもできる。
(TGF−β1)
TGF−β1は、組換えタンパク質であってもよいし、天然から取得されたものであってもよい。特に限定するものではないが、TGF−β1は、本組成物が対象とする動物個体と同種の動物由来であることが好ましい。例えば、本組成物がヒトを対象とする場合には、ヒトTGF−β1のアミノ酸配列あるいは当該アミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を有するTGF−β1であることが好ましい。各種動物由来のTGF−β1は、組換えタンパク質として商業的に入手することができる。また、各種動物由来のTGF−β1は、当該動物の間葉系幹細胞を無血清培地で培養した培養上清中から取得することもできる。
(VEGF)
VEGFも、組換えタンパク質であってもよいし、天然から取得されたものであってもよい。特に限定するものではないが、VEGFは、本組成物が対象とする動物個体と同種の動物由来であることが好ましい。例えば、本組成物がヒトを対象とする場合には、ヒトVEGFのアミノ酸配列あるいは当該アミノ酸配列と同等のアミノ酸配列を有するVEGFであることが好ましい。各種動物由来のVEGFは、組換えタンパク質として商業的に入手することができる。また、各種動物由来のVEGFは、当該動物の間葉系幹細胞を無血清培地で培養した培養上清中から取得することもできる。
上記有効成分に関し、組換え体を用いる場合には、本組成物においてその活性を維持する限度において各種の改変(例えばアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加や糖鎖の付加など)が可能である。改変体についての活性の評価は、改変体を適用した本組成物に関し、間葉系幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能等を評価することによって実施できる。ヒトなどにおけるIGF−1、TGF−β1及びVEGFのアミノ酸配列及び当該アミノ酸配列をコードする塩基配列については、NCBI(National Center for Biotechnology Information)等の公共のデータベースを参照して必要に応じて取得できる。また、アミノ酸配列への変異導入によるタンパク質の改変法や変異体の取得方法は、当業者において周知であり、当業者であれば必要に応じて改変体を取得できる。
本組成物が他の媒体、例えば、液体、固体及び流動体などの基材に分散されているときの有効成分の濃度は、特に限定されないが、全有効成分の濃度として、5ng/ml(5g/l)以下であることが好ましい。こうした低濃度で有成分を含有する本組成物をそのまま標的組織に適用することで、有効に組織形成を促進することができる。より好ましくは、総濃度で4ng/ml(4μg/l)であり、さらに好ましくは3ng/ml(3μg/l)であり、一層好ましくは2ng/ml(2μg/l)である。
本組成物におけるIGF−1濃度は、例えば、1000〜2000pg/mlとすることができ、TGF−β1濃度は、例えば、100〜600pg/mlとすることができ、VEGF濃度は、例えば、150〜750pg/mlとすることができる。
本組成物におけるIGF−1、TGF−β1及びVEGFの含有量比(質量比)は、特に限定されないが、例えば、IGF−1が約100質量部以上200質量部に対してTGF−β1及びVEGFがそれぞれ約10質量部以上100質量部以下程度とすることができる。こうした比率は、ヒト間葉系幹細胞の培養上清におけるこれらサイトカインの濃度比に基づいている。
また、本組成物におけるIGF−1及びTGF−β1の配合比としては質量比で約100:約30以上約50以下であることが好ましい。より好ましくは、約100:約40である。また、本組成物におけるIGF−1:TGF−β1:VEGFの配合比は、質量比で100:約30以上約50以下:約20以上約40以下であることが好ましい。より好ましくは、100:約40:約30である。
なお、上記濃度に単位中のmlは、「g」に置換して適用してもよい。
本組成物が液性媒体を含むとき、水系の媒体が好ましく、より好ましくは本組成物を生理的塩濃度及びpHを有するように調製できる媒体である。例えば、滅菌水、生理食塩水、リン酸塩溶液等の緩衝液等を用いることができる。
なお、上記した本組成物の濃度は、いずれも、投与時の濃度として好ましい濃度でもある。したがって、上記濃度となるように、有効成分の総量や各個別の有効成分が配合されていることが好ましい。
なお、上記した本組成物の有効成分の含有量又は濃度は、例えば、純度が既知の精製物を標準物質として用いた化学的あるいはELIZAなどの生化学的な定量方法等によって取得することができる。
本組成物は、他に、生体内においてスキャホールドとなる他の成分を含んでいてもよい。スキャホールドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコシド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトンなどの合成高分子材料、またはコラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどの蛋白質材料、あるいはヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、象牙、サンゴなどの天然由来材料が挙げられる。さらに、リン酸三カルシウム(β−TCP)などの無機材料が挙げられる。
本組成物は、他に薬学的に許容される各種成分を含むことができる。例えば、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、細胞保護剤(例えばジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン)、抗生物質、pH調整剤、ビタミン類及びステロイド類を含んでいても良い。
(本組成物の製造方法)
本組成物は、例えば、以下の方法によって製造されうる。例えば、一つの製造方法は、有効成分として、IGF−1及びTGF−β1を混合する工程を備える工程、を備えることができる。また、追加の有効成分として、VEGFをさらに混合してもよい。なお、IGF−1、TGF−β1及びVEGFの3種を有効成分とする場合には、これらを特定されない順序で混合してもよいし、同時に混合してもよい。
本組成物は、例えば、組換えタンパク質等として取得できるIGF−1及びTGF−β1を混合してもよい。また、同様に組換えタンパク質等として取得できるVEGFを、適宜混合して調製してもよい。なお、有効成分の濃度は、既に述べた範囲で設定することが好ましい。
本組成物は、また、骨髄由来の間葉系幹細胞の幹細胞の培養上清液、その濃縮液あるいはその凍結乾燥等による乾燥体として取得することもできる。例えば、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清は、以下のプロセスで取得できる。
(1)10%FBS含有DMEMで培養して70〜80%コンフルエント後にPBSで洗浄し、無血清DMEMで培地を置換後、さらに48時間培養して培養液を回収する。
(2)この培養液を、細胞を沈降させる程度に遠心分離(例えば、1500rpm)し、さらに、上清を取得できる程度に遠心(例えば、15000rpm)する。
(3)必要に応じて取得した培養上清を凍結乾燥等で乾燥する。
本組成物が、上記した他の成分を含む場合には、1又は2以上の有効成分と他の成分とを適宜混合する。混合順序や配合量等は、特に限定されない。当業者であれば、有効成分又は製剤形態に応じて適宜決定することができる。
本組成物は、内在性幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能を促進することから、組織形成用として、ヒトあるいは非ヒト動物の各種の組織や臓器の形成に広く利用できる。組織としては、例えば、歯周組織及び骨組織が挙げられる。歯周組織には、骨組織、セメント質組織及びエナメル質組織を含むことができる。骨組織の部位は特に限定されない。
本組成物は、例えば、骨組織の修復、再建に利用される。例えば、外傷性骨折、疲労骨折、骨変形、骨粗鬆症、唇顎口蓋裂、小下顎症、Treacher Collins症候群、Crouzon症候群、鎖骨頭蓋異骨症、小下顎症、下顎後退症、Hemifacial microsomia(半側小顔症)、骨軟化症、先天性骨形成不全等の治療、骨増生(例えば人工歯根の植立を行うためのもの)、歯槽骨の形成等に本物を適用することができる。
本組成物は、各種形態で動物に投与されうる。特に限定されないが、例えば、投与のための製剤形態としては、液体状(液状、ゲル状など)及び固体状(粉状、細粒、顆粒状など)等が挙げられる。本組成物は、組織欠損部に注入、埋入、填入、又は塗布によって標的部位に投与される。標的部位への投与に際しては、本組成物を含浸などにより担持させたスキャホールドとともに、あるいはスキャホールドを予め配置しておき、当該スキャホールドに対して本組成物を供給してもよい。
本組成物は、また、投与対象となる動物種、年齢、性別、体重、組織欠損程度に応じて、適宜投与量が設定される。特に限定されないが、例えば、当業者であれば、治療対象、標的部位などを考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、本組成物について既に説明した総濃度等となるように欠損部位等に投与することができる。また、例えば、組織1cm3あたり、前期有効成分の濃度として、例えば、300pg以上、あるいは400pg以上、あるいは500pg以上としてもよい。また、上限も特に限定しないが、好ましくは600pg以下、より好ましくは500pg以下、さらに好ましくは400pg以下としてもよい。
(キット)
本明細書に開示される組織形成用キットは、IGF−1と、TGF−β1とを別個にあるいは同時に備えることができる。本キットがIGF−1とTGF−β1とが別個に備えているとは、それぞれが単一の製剤として分離されていること意味している。典型的には、これらが用時までは分離され用時に混合等できるように分離して収納ないし包装されている形態が挙げられる。また、本キットが、IGF−1とTGF−β1とを同時に備えているとは、それぞれを含む合剤として収納ないし包装されている形態が挙げられる。
また、本明細書に開示されるキットがVEGFを備える形態とは、上記した形態に加えて、さらに別個にVEGFを備える形態、さらに、IGF−1とTGF−β1とVEGFとを合剤等として同時に備える形態、VEGFとIGF−1とを同時に備え、TGF−β1を別個に備える形態、VEGFとTGF−β1とを同時に備え、IGF−1を別個に備える形態が挙げられる。
さらに、本キットは、本組成物に含めることができる他の成分の1種又は2種以上を、上記有効性分と別個に又は同時に備えることができる。また、本キットは、既に説明した投与時の濃度に調製されているかあるいは投与時の濃度に調製されるのに適した所定量のPBS等の媒体が含まれていてもよい。
さらに、本キットには、組織形成に用いるためのスキャホールドを別に備えていてもよい。
(幹細胞用培地及び幹細胞用培地添加剤)
本明細書に開示される幹細胞用培地及び幹細胞用培地添加剤は、インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含有することができる。さらに、本培地及び本添加剤は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有することができる。本培地及び本添加剤は組織形成用途あるいはその評価のためなどに用いることができる。例えば、生体外において自家又は他家から取得した幹細胞を培養して増殖能、遊走能及び分化能を高めて治療用に培養したり、あるいは幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能等の評価をするために用いることができる。
本培地には、上記した有効成分のほか、公知の培地として要請される成分を含有することができる。一般的には炭素源、アミノ酸等の窒素源、無機塩類、ビタミン類、有機酸類等を含むことができる。こうした培地成分は当業者において周知である。例えば、DMEMなどの動物細胞用培養液に用いられる組成を適宜参照して成分及び含有量を決定できる。本培地は、好ましくは無血清培地である。すなわち、ウシ、ウマ等、公知の胎児血清や仔血清が添加されていないことが好ましい。
本添加剤は、公知の培地に対する添加剤として用いることができる。本添加剤には、公知の培地添加剤に含まれうる他の成分を含めることもできる。
本培地及び本添加剤は、本組成物と同様の濃度で前記有効成分を含有することができる。本培地及び本添加剤は、上記有効成分を混合して調製してもよいし、幹細胞の培養上清等から取得してもよい。例えば、幹細胞を無血清DMEMなどの無血清培地で培養した培養上清を、本培地又は本添加剤とすることもできる。こうした培養上清は、そのままで本培地として用いることができる。
本培地及び本添加剤は、幹細胞の初代培養及び継代培養のいずれにも用いることができるが、増殖、遊走及び分化の促進あるいは評価のためには、血清含有培地等で初代培養後、あるいは血清含有あるいは非含有培地での1又は2以上の継代培養後の無血清培養に用いられることが好ましい。
本培地及び本添加剤を適用する幹細胞としては、特に限定されない。本明細書において、幹細胞とは、外胚葉(歯髄細胞(歯髄線維芽細胞を含む)、上皮細胞(歯)、エナメル上皮基底膜細胞、神経細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞など)、中胚葉(骨芽細胞、軟骨細胞、骨細胞、腎基底膜細胞、血液系細胞)、内胚葉(消化管上皮細胞、消化管実質細胞)などの細胞へと分化しうる又はそれらの修復を促進しうる多能性を有する未分化な細胞である。本発明で用いる間葉系幹細胞は、骨髄および/または骨膜由来あるいは末梢血由来であり、且つ間充織組織系の組織、例えば脂肪組織、軟骨組織または骨組織に分化しうる多能性を有する未分化な細胞である。
例えば、間葉系幹細胞は、当該細胞を有する任意の骨髄または骨膜あるいは末梢血から採取することができるが、多量の細胞が採取可能であること及び採取が容易であるという観点から、大腿骨、脛骨又は骨盤(腸骨)から採取することが好ましい。ヒト以外の哺乳動物の場合は、腸骨および脛骨から間葉系幹細胞を採取することもできる。骨髄由来の間葉系幹細胞の採取方法は当業者に公知であり、例えば医療において用いられている通常の採取方法を用いることができる。口腔組織から分離した間葉系幹細胞を利用することもできる。
自家又は他家の幹細胞を取得するには、例えば、ヒトに対しては、患者に対するインフォームドコンセントのもとに、ヒト大腿骨、腸骨、顎骨、末梢血管等のMSCが存在する組織および器官より、注射器や穿刺針などを用いて骨髄や末梢血を無菌的に必要量採取し、そのまま、培養容器に播種し浮遊系細胞と接着系細胞を分離することで使用するか、フローサイトメトリー、または密度勾配遠心法などの手法を用いることで、MSCを採取分離する。
ヒト以外の哺乳動物の骨髄から間葉系幹細胞を採取する際には、例えば骨(大腿骨、脛骨)の両端を切断し、間葉系幹細胞の培養に適する培地で骨内を洗浄して、洗い出された該培養液から間葉系幹細胞を取得することができる。
間葉系幹細胞の初代培養及び/又は継代培養を行うには、採取分離した細胞を適当な培地(例えば、DMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地)を用い、組織培養用培養皿に細胞を播種して初代培養及び継代培養する。培養に用いる血清としては、ウシ胎児血清(FBS)を用いることができる。
細胞の培養は、動物細胞の培養に用いる通常の血清入り培地や無血清培地を用いて、通常の動物細胞の培養条件(例えば、室温から37℃の温度;5%CO2インキュベーター内など)の下で行なうことができる。培養の形態は特に限定されないが、例えば、静置培養で行なうことができる。
(幹細胞の培養方法及び評価方法)
本明細書に開示される幹細胞の培養方法は、本培地で幹細胞を培養する工程を備えることができる。本培養方法によれば、幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能を高めることができ、組織形成に適した細胞を取得することができる。また、本明細書に開示される評価方法によれば、前記培養工程により培養した前記幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能からなる群から選択される1又は2以上を評価する工程と、を備えることができる。本評価方法によれば、培養した幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能を評価することで培地の組成や幹細胞の状態や性質を知ることができる。状態の優れた幹細胞を取得できる。
(組織形成用材料)
本明細書に開示される組織形成用材料は、本組成物とスキャホールドとを備えることができる。本組成物は、内在性の間葉系幹細胞の増殖、遊走及び分化等を促進できるため、スキャホールドと組み合わせることで、容易に標的組織において所望の3次元部位を充填ないし形成することができる。
本組成物に用いうるスキャホールドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコシド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトンなどの合成高分子材料、またはコラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどの蛋白質材料、あるいはヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、象牙、サンゴなどの天然由来材料が挙げられる。さらに、リン酸三カルシウム(β−TCP)などの無機材料が挙げられる。
(組織形成方法)
本明細書に開示される組織形成方法は、標的組織に対して本組成物を供給する工程を備えることができる。本形成方法によれば、生体の組織を細胞移植することなく効果的に形成することができる。
(組織形成用組成物のための有効性分のスクリーニング方法)
本明細書に開示されるスクリーニング方法は、IGF−1、TGF−β1及びVEGFからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物と、1種又は2種以上の被検化合物と、を標的組織の細胞に供給して、前記細胞の増殖能、遊走能及び分化能のいずれか又は2種以上を評価する工程を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、さらに一層効果的な組織形成用組成物のための有効成分をスクリーニングすることができる。
本スクリーニング方法に用いる被検化合物は、サイトカインなどを含む各種タンパク質ペプチド、核酸等の生体由来ポリマー、低分子有機化合物等、特に限定しない。また、標的組織の細胞としては、ヒト及び非ヒト動物の生体外の組織やその細胞であってもよいし、ヒト及び非ヒト動物の生体内における組織又はその細胞であってもよい。細胞は、間葉系幹細胞を含むことができる。
細胞の増殖能、遊走能及び分化能は、公知の方法で評価することができる。例えば、増殖能に関しては、細胞密度、増殖速度、あるいは増殖因子の発現量や標的細胞の染色を用いた画像解析等で評価することができる。遊走能に関しては、公知のマイグレーションアッセイ等で評価することができる。また、分化能は、組織の形成速度や組織の状態やサイトカイン等の発現状態などで評価できる。
細胞は、幹細胞であることが好ましい。幹細胞については既に説明した態様で本スクリーニング方法にも適用できる。
以下、本明細書の開示の具体例について説明する。
(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の培養上清(MSC−CM)のラット骨髄由来間葉系幹細胞に対する影響の評価)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSCs)はLonza社より購入したものを使用し、ラット骨髄由来間葉系幹細胞(rMSCs)は、7週齢オスWistar/STラット大腿骨より採取した骨髄液から分離培養した。hMSCsを専用培地(Lonza社製間葉系幹細胞基本培地、Mesenchymal Stem Cells Basal Medium (PT-3238))にて70〜80%コンフルエントになるまで培養し、その後48時間の無血清培養を行った。得られた培養上清から遠心分離により死細胞を除去したものをMSC−CMとして以下の実験に供した。
MSC−CMがrMSCsに与える影響を評価するため、rMSCsの遊走能をマイグレーション・アッセイ、増殖能をBrdU(bromodeoxyuridine)染色にて検討した。
また、MSC−CM中の成長因子(IGF−1、VEGF、FGF−2、PDGF−BB、BMP−2、SDF−1)の定量解析を、Human Quantikine ELISA kit(R&D)を用いて行なった。
さらに、MSC−CMにて培養したrMSCsの骨形成関連遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて測定した。なお、リアルタイムPCR法で用いたプライマー及びプローブを以下に示す。
これらの結果を図2に示す。なお、rMSCsをMSC−CM及び通常培地(10%FBS含有DMEM(EM))でそれぞれ48時間培養した後、各細胞を全RNAを回収するために破砕した。各遺伝子のmRNA発現レベルは、各試料中のGAPDHのmRNA量を基準に決定するとともに、それぞれについて標準曲線を作製して定量した。
図2(a)に示すように、マイグレーション・アッセイでは、MSC−CM群は無血清培地(DMEM(-))群に比べ有意に多い遊走細胞数を認め、MSC−CMがrMSCsの遊走能を上昇させることが明らかになった。また、図2(b)に示すように、BrdU染色の結果、MSC−CM群は無血清培地(DMEM(-))群と比較し有意に多いBrdU陽性細胞数を認め、MSC−CMはrMSCsの増殖能を上昇させることが明らかになった。
また、図3に示すように、MSC−CMで48時間培養したrMSCsにおける骨形成関連遺伝子の発現をリアルタイムPCR法にて測定したところ、通常培地(10%FBS含有DMEM(EM))で培養したrMSCsと比べOsteocalcinとRunx−2の発現が有意に上昇していることが明らかになった。
さらに、図4に示すように、ELISAにてMSC−CMに含まれる成長因子を測定した結果、IGF−1、VEGFを異なる濃度で含有していることがわかった。また、線維芽細胞成長因子−2(FGF−2)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、骨形成因子−2(BMP−2)及びSDF−1を含有していないことがわかった。
(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の培養上清(MSC−CM)のラット頭蓋骨骨欠損モデルに対する影響の評価)
40匹の10週齢オスWistar/STラット頭蓋骨に、トレフィンバーにて直径5mmの骨欠損を作製した。移植群を、(1)MSC−CM/アガロースゲル(MSC−CM群)、(2)PBS/アガロースゲル(PBS群)、(3)無血清DMEM/アガロースゲル(DMEM(−)群)、(4)hMSCs(1×10個)/アガロースゲル(細胞移植群)、(5)移植なし(Defect群)の5群とし移植実験を行い、4週後、8週後にμCTと組織学的手法により評価を行った。さらに、MSC−CM移植後の、生体内でのrMSCsの動態を評価するためインビボイメージングおよび免疫組織学染色を行った。これらの結果を図5及び図6に示す。
また、MSC−CM移植部位への内在性幹細胞の遊走を確認するため、あらかじめDiRで蛍光標識したrMSCsをMSC−CM移植と同時にラットの尾静脈より注入し、経時的に撮影を行うインビボイメージングを行った。さらに、内在性幹細胞のMSC−CM移植部位への集積を評価するために、GFPラットへMSC−CMを移植し、4週後に幹細胞の表面抗原であるCD44での免疫組織染色を行った。これらの結果を図7及び図8に示す。
図5のAには、処置から4週後及び8週後のμCT画像を示し、同Bには、欠損部において再生した骨部の占有面積%を示す。図5のA及びBに示すように、MSC−CM群における移植4週後の再生骨占有率は、49.5%±2.7%と他の群と比較して有意に高かった。移植8週後になるとMSC−CM群における再生骨占有率は64.4%±19.7%に達し、他の群に比較して高い骨再生が認められた。
図6には、組織学的検討の結果を示す。図6における実線の矢印は、宿主骨の端部を示し、点線の矢印及びアスタリスクを伴う点線の再生骨を示している。図6に示すように、骨欠損中央部のHE染色像ではDefect群、PBS群、DMEM(−)群では欠損内は結合組織が多く、新生骨はごくわずかしか認められなかった。これに対して細胞移植群では欠損の辺縁部に多くの新生骨が認められ、MSCCM移植群では欠損ほぼ全体を覆う幼弱な骨組織が認められた。また、いずれの群においても炎症反応は観察されなかった。これらの結果は、μCTの結果をサポートするものであった。
図7には、ラベル化rMSC移植後1時間後、24時間後、48時間後及び1週間後におけるrMSCの蛍光イメージング結果を示す。図7に示すように、標識されたrMSCのMSC−CM移植部(頭蓋骨部)への集積は48時間後から観察され、1週間後にはその集積がさらに増強することが確認された。1週間後にいては、MSC−CM移植部において最も強い蛍光を観察した。これらの結果から、MSC−CMには、内在性の間葉系幹細胞の欠損部への集積/遊走作用があることがわかった。
図8には、GFP発現ラットへのMSC−CM投与後の再生骨の免疫組織学的染色結果を示す。CD44検出結果及びDAPI検出結果における矢印は、CD44陽性細胞(赤)及び核(青)を示す。図8示すように、MSC−CM移植部にはGFP/CD44共陽性の内在性幹細胞が数多く認められたが、PBS移植部ではGFP/CD44共陽性の内在性幹細胞はほとんど認められなかった。以上のことから、MSC−CMは、骨欠損部において新たな間葉系幹細胞が形成されていることがわかった。
以上の実施例から、MSC−CMが幹細胞の遊走を促すことが示された。また、またラット頭蓋骨骨欠損モデルへの移植実験では、移植4週後ですでにMSC−CM群における良好な骨再生が確認され、これは驚くべきことに細胞移植群と比較しても有意に高いものであった。移植8週後においてもMSC−CM群の再生骨面積は細胞移植群と同等かそれ以上であった。これらの結果から、幹細胞の培養上清においては、幹細胞が分泌するパラクライン因子が多く含まれており、MSC−CMの移植自体で幹細胞の移植を要しないで、早期に骨再生を促進できることがわかった。
実施例1と同様にしてMSC-CMを取得した。本実施例では、MSC−CMを用いて以下の実験を行った。
(1)MSC−CM中の成長因子の定量
hMSC−CM中の歯周組織再生に関与するとされる成長因子(IGF−1、VEGF、TGF−β1、HGF、FGF−2、PDGF−BB、BMP−2、SDF−1)をHuman Quantikine ELISA kit (R&D)を用いて定量解析を行なった。
(2)MSC−CMによるイヌMSC等の遊走能への影響
MSC−CMのイヌ骨髄由来間葉系幹細胞(dMSCs)およびイヌ歯根膜細胞(dPDLCs)への影響について、遊走能をマイグレーション・アッセイ、増殖能をBrdU(bromodeoxyuridine)染色にて検討を行なった。
マイグレーション・アッセイは二層構造のチャンバーの上層底部メンブレンに8μmの小孔の開いたトランスウェルディッシュ(BD BioCoatTM Control Inserts)を使用した。上層チャンバーにdMSCsまたはdPDLCsを細胞数5×10cells/cmにDMEMで調整した細胞懸濁液を、下層チャンバーにはMSC−CMを加えた。コントロールとして30%FBSまたは無血清培地(DMEM)を使用し、48時間後に小孔を通過してメンブレンの裏面に移動した細胞数をカウントした。結果を図9に示す。
(3)MSC−CMによるイヌMSC等の増殖能への影響
BrdU染色はZymed BrdU staining kit(Invitrogen)を用いて、70%コンフルエントのdMSCsとdPDLCsにBrdUを添加し24時間培養後の陽性細胞数をカウントした。結果を図10に示す。
(4)MSC−CMによるイヌ歯周組織再生への影響
5匹のハイブリッド犬(18−36月齢、体重15〜25kg)を用いてイヌ歯周組織1壁性骨欠損モデルを作成し、MSC−CMの局所投与の効果について、組織学的評価を行った。ペントバルビタール(ソムノペンチル(商品名):20mg/体重kg)を用いて全身麻酔下で、歯肉に切開を加えて粘膜骨膜弁を剥離し、下顎臼歯の歯周組織に幅4mm、深さ5mmの骨欠損を作製した。さらに、歯根表面の歯根膜およびセメント質を機械的に掻爬し除去した。そして欠損底部の歯根表面にラウンドバーにて基準点を作成し、300μLのMSC−CMを含有させたアテロコラーゲンスポンジを移植した。比較群として、PBSを含有させたアテロコラーゲンスポンジを移植した対照群(PBS)と、欠損のみの群とした。その4週後に屠殺し、組織学的およびX線学的評価を行った。また、歯根表面の基準点からの再生セメント質の高さ、歯槽骨の高さおよび面積を評価項目とした。これらの結果を図11及び図12に示す。
(1)MSC−CM中の成長因子の定量結果
MSC−CMに含まれる成長因子をELISAで定量した結果は、IGF−1、VEGF、TGF−β1、HGFがそれぞれ1515.6±211.8pg/ml、465.8±108.8pg/ml、339.8±14.4pg/ml、20.3±7.9pg/mlであった。他の成長因子は検出されなかった。
(2)イヌMSC等の遊走能の評価結果
図9に示すように、dMSCsとdPDLCsのマイグレーション・アッセイではMSC−CM群はコントロールとした無血清培地群と比較し、有意に高い遊走細胞数を認めたことからMSC−CMはdMSCsとdPDLCsの遊走能を上昇させることが明らかになった。
(3)イヌMSC等の増殖能の評価結果
図10に示すように、BrdU染色の結果もMSC−CM群は無血清培地群と比較し優位に高いBrdU陽性細胞数を認めたことから、MSC−CMはdMSCsとdPDLCsの増殖能を上昇させることが明らかになった。
(4)イヌ歯周組織再生への影響
図11A〜図11Cには、それぞれ投与部位の顕微鏡写真とX線写真とを示す。また、左側図には、歯周欠損部位の全体を示し(×12.5)、中央図には、それぞれ左側図の1つの枠内を拡大して示す(×100)。また、右側図には、左側に欠損部位の開始時におけるX線像を示し、右側に4週後のX線像を示す。図中、白い矢印及び黒い矢印は、それぞれ骨芽細胞及びセメント質を指している。
図11Aに示すように、イヌ歯周組織1壁性骨欠損モデルにおけるMSC−CM局所投与後4週の組織染色像とX線写真の所見としては、MSC−CM群はPBS群、欠損のみの群に比べ著明な新生骨が認められ、歯根表面の厚いセメント質や、歯根膜内にセメント質と歯槽骨を結ぶような線維組織も認められた。また新生骨表面に配列した骨芽細胞も多く認められた。X線的にも他の群より高い歯槽骨の上昇を認めた。これに対して、図11Bに示すように、PBS群でも薄いセメント質や歯槽骨の再生を認めたが著明ではなかった。一方、図11Cに示すように、欠損のみの群では自然治癒に伴う軽度な歯槽骨の上昇を認めるのみで、歯根表面に殆どセメント質を認めなかった。
また、図12には、再生セメント質の高さ、歯槽骨の高さおよび面積の評価結果を示す。図12に示すように、これらの組織学的評価の結果はセメント質の高さ、歯槽骨の高さ、面積いずれにおいても、MSC−CM群は他群に比べ有意に高い値となった。
(特定のサイトカインの組み合わせの評価)
実施例2におけるのと同様にしてラット頭蓋骨に直径5mmの骨欠損を作製した。MSC−CMの上清に含まれるIGF−1、TGF−β1に関し、それぞれヒト組換えタンパク質を用いて1300pg/ml、340pg/mlを含む溶液AをPBSにて調製した。また、IGF−1、TGF−β1及びVEGFに関し、それぞれヒト組換えタンパク質を用いて1300pg/ml、340pg/ml及び460pg/mlを含む溶液BをPBSにて調製した。
移植群を、(1)PBS/アガロースゲル(PBS群)、(2)溶液A/アガロースゲル(溶液A群)、(3)溶液B/アガロースゲル(溶液B群)、(4)hMSC−CM/アガロースゲル(MSC−CM群)、(5)移植なし(Defect群)の5群とし移植実験を行い、4週後にμCTと組織学的手法により評価を行った。これらの結果を図13及び図14に示す。
図13には、処置から4週後のμCT画像を示し、図14には、欠損部において再生した骨部の占有面積%を示す。図13及び図14に示すように、溶液A群における移植4週後の再生骨占有率は、約45%であり、溶液Bのそれは、約50%であった。MSC−CMは、約65%であった。以上の結果から、MSC−CMに含まれる特定の個別成分を2種又は3種組み合わせることで、MSC−CMのような生物由来の多種多様な成分を含んでいない、いわゆる混合製剤であっても、サイトカインの複合的な効果により効果的な組織再生能を発揮することがわかった。
また、溶液A及び溶液Bに含まれるサイトカイン濃度は最大の成分(IGF−1)でも1μG/L程度であり、全体でも約2μg/Lであり、極めて低濃度で、効果的な再生能を発揮することがわかった。
以上の結果から、MSC−CM及びそれに含有される成長因子群は、歯周組織欠損部での血管新生、細胞遊走・増殖、そして骨芽細胞やセメント芽細胞への分化といった歯周組織再生の各段階に作用し、再生を促進すると考えられる。また、MSC−CMは、同様の歯周組織欠損モデルを用いたこれまでの報告と比較してみても、早期からの歯周組織再生を認めた。
歯周組織を再生させるには、歯槽骨と、歯根面のセメント質を再生させ歯根膜線維が強固に付着する必要がある。MSC−CM中の成長因子は歯周組織再生にも関与するものであった。歯周組織再生にあっては、成長因子は、以下の作用を奏することが考えられる。すなわち、IGF−1は骨芽細胞の増殖と遊走を促進し、歯根膜細胞の石灰化組織形成能を増強する。TGF−β1は骨前駆細胞を動員し骨形成を増加させる。また、歯根膜細胞も刺激し骨やセメント質再生を促進する。VEGFは骨芽細胞前駆細胞の分化を促進するだけではなく、血管内皮細胞の分化を促進し、血管新生に寄与する。
また、MSC−CMに含まれる成長因子のなかでもIGF−1及びTGF−β1、さらにVEGFは、これらを複合化することで相乗効果により効果的に組織再生能を発揮することがわかった。これらの各成分の合剤は、従来知られている細胞を発揮することがわかっている公知の製剤(BMP−2(1.5mg/ml、PDGF及びFGF−2)に比べて1000000倍程度薄い濃度でも有効であることがわかった。
以上の全ての開示によれば、MSC−CMまたはいくつかの特定のサイトカインの組み合わせは、内在性の幹細胞を遊走させるという新たな概念に基づいた新たな組織再生方を提供することができることがわかる。また、MSC−CM及び特定のサイトカインの組み合わせは、幹細胞移植等に代わる新たな組織再生法を提供する。このため、MSC−CM及び特定のサイトカインの組み合わせは、細胞移植、単一製剤の利用等に関わる様々な問題点を回避することができる。
配列番号 1,2,4,5,7,8:プライマー
配列番号 3,6,9:プルーブ

Claims (21)

  1. インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を有効成分として含有する、組織再生用組成物。
  2. さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を有効成分として含有する、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記有効成分は、組換えタンパク質である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記組織は、歯周組織である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 前記組織は、骨である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 前記有効成分を、総濃度を5ng/ml以下で含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. インスリン様成長因子−1と、
    トランスフォーミング成長因子−β1と、
    を別個にあるいは同時に備える、組織再生用キット。
  8. さらに、血管内皮細胞増殖因子を備える、請求項7に記載のキット。
  9. さらに、スキャホールドを備える、請求項7又は8に記載のキット。
  10. 組織再生用材料であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の組成物とスキャホールドとを備える、材料。
  11. 組織再生用組成物の製造方法であって、
    有効成分として、インスリン様成長因子−1及びトランスフォーミング成長因子−β1を混合する工程、を備える、方法。
  12. 前記混合工程は、追加の有効成分として、血管内皮細胞増殖因子を混合する工程である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記有効成分を、総濃度で5ng/ml以下の溶液に調製する、請求項11又は12に記載の方法。
  14. インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含有する、幹細胞用培地
  15. さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有する、請求項14に記載の培地。
  16. インスリン様成長因子−1(IGF−1)及びトランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)を含有する、幹細胞用添加剤
  17. さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含有する、請求項16に記載の添加剤。
  18. 請求項14又は15に記載の培地を用いて幹細胞を培養する工程を備える、幹細胞の培養方法。
  19. 請求項14又は15に記載の培地を用いて幹細胞を培養する工程と、
    培養された前記幹細胞の増殖能、遊走能及び分化能からなる群から選択される1又は2以上を評価する工程と、を備える幹細胞の評価方法。
  20. 組織再生方法であって、
    標的組織に対して請求項1〜6のいずれかに記載の組成物を供給する工程を備える、方法。
  21. 組織再生用組成物のための有効成分のスクリーニング方法であって、
    インスリン様成長因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング成長因子−β1(TGF−β1)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物と、1種又は2種以上の被検化合物と、を標的組織の細胞に供給して、前記細胞の増殖能、遊走能及び分化能のいずれか又は2種以上を評価する工程を備える、方法。
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