JP2014145746A - 温度検出回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度検出対象の素子が増加しても、温度検出回路の規模の増加を抑制しつつ、精度良く当該素子の温度を検出する。
【解決手段】複数の温度検出用ダイオード2と、互いに異なる値の定電流を出力する複数の電源であって、温度検出用ダイオード2の数以下備えられる複数の定電流源5と、定電流源5のそれぞれを、互いに異なる1つの温度検出用ダイオード2に電気的に接続すると共に、定電流源5と温度検出用ダイオード2との電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部8と、定電流源5のそれぞれに接続する温度検出用ダイオード2を、全ての温度検出用ダイオード2の中から、予め規定された周期で順番に選択して組み合わせを切り替えるように接続切替部8を制御する切替制御部6と、を備える。
【選択図】図9
【解決手段】複数の温度検出用ダイオード2と、互いに異なる値の定電流を出力する複数の電源であって、温度検出用ダイオード2の数以下備えられる複数の定電流源5と、定電流源5のそれぞれを、互いに異なる1つの温度検出用ダイオード2に電気的に接続すると共に、定電流源5と温度検出用ダイオード2との電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部8と、定電流源5のそれぞれに接続する温度検出用ダイオード2を、全ての温度検出用ダイオード2の中から、予め規定された周期で順番に選択して組み合わせを切り替えるように接続切替部8を制御する切替制御部6と、を備える。
【選択図】図9
Description
本発明は、ダイオードに定電流を流して順方向電圧を検出し、当該順方向電圧に基づいて温度を検出する温度検出回路に関する。
ハイブリッド自動車や電気自動車の普及や、スマートグリッド型の電力網への期待などにも関連し、近年、パワー系回路及びその制御回路の需要が高まっている。パワー系回路には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やパワーMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)などのパワー半導体が利用されている。このようなパワー半導体には大電流が流れ、素子自体も発熱する。パワー半導体を定格温度の範囲内で使用するために、制御回路は、パワー半導体の温度の検出結果に基づく制御を実施する。パワー半導体の温度の検出には種々の方法を用いることができる。1つの方法として、ダイオードの順方向電圧が温度によって異なるという、ダイオードの温度特性を利用したものがある。つまり、パワー半導体の近傍に配置されたダイオードに、定電流源より定電流を与えて、ダイオードの順方向電圧を検出する。この電圧値は、ダイオードの温度によって異なるので、電圧値によりダイオードの近傍のパワー半導体の温度が演算できる。
Ronnie D Hughesのレポート(非特許文献1)には、ダイオードの個体ばらつきに鑑みてより高い精度で温度を検出する手法が紹介されている。即ち、値の異なる定電流を異なるタイミングで1つのダイオードに流し、それぞれの順方向電圧を検出し、その差分を取ることでダイオードの個体ばらつきの影響を抑制する(非特許文献1:Figure 2, 式(1)〜(4)等)。この手法を利用すれば、定電流源は複数必要となるものの、検出精度を向上させることができる。
ところで、パワー系回路に求められる出力が大きくなると、単一の素子で回路の一要素を構成することが現実的ではなくなる。このため、例えば、複数のパワー半導体を並列接続して、電気的に大容量の1つの回路要素を構成するようなことも行われる。実際には、この回路要素には複数の素子が含まれるため、このような場合には、複数のパワー半導体の温度をそれぞれ検出する必要が生じる。この際、各パワー半導体に対して複数の定電流源を割り当てると、定電流源の数が増大する。その結果、回路規模の増加や、消費電流の増加による電源規模の拡大などを招く可能性がある。
Ronnie D Hughes, "Remote diode yield accurate temperature measurements", July 10, 2003, EDN, p.59-62
上記背景に鑑みて、温度検出対象の素子が増加しても、温度検出回路の規模の増加を抑制しつつ、精度良く当該素子の温度を検出することができる技術が望まれる。
上記課題に鑑みた本発明に係る温度検出回路の特徴構成は、
ダイオードに定電流を流して順方向電圧を検出し、当該順方向電圧に基づいて検出対象物の温度を検出する温度検出回路であって、
複数の温度検出用ダイオードと、
互いに異なる値の定電流を出力する複数の電源であって、前記温度検出用ダイオードの数以下備えられる複数の定電流源と、
前記定電流源のそれぞれを、互いに異なる1つの前記温度検出用ダイオードに電気的に接続すると共に、前記定電流源と前記温度検出用ダイオードとの電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部と、
前記定電流源のそれぞれに接続する前記温度検出用ダイオードを、全ての前記温度検出用ダイオードの中から、予め規定された周期で順番に選択して前記組み合わせを切り替えるように前記接続切替部を制御する切替制御部と、を備えた点にある。
ダイオードに定電流を流して順方向電圧を検出し、当該順方向電圧に基づいて検出対象物の温度を検出する温度検出回路であって、
複数の温度検出用ダイオードと、
互いに異なる値の定電流を出力する複数の電源であって、前記温度検出用ダイオードの数以下備えられる複数の定電流源と、
前記定電流源のそれぞれを、互いに異なる1つの前記温度検出用ダイオードに電気的に接続すると共に、前記定電流源と前記温度検出用ダイオードとの電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部と、
前記定電流源のそれぞれに接続する前記温度検出用ダイオードを、全ての前記温度検出用ダイオードの中から、予め規定された周期で順番に選択して前記組み合わせを切り替えるように前記接続切替部を制御する切替制御部と、を備えた点にある。
この構成によれば、定電流源と温度検出用ダイオードとの接続を切り替えることによって定電流源の数を抑制しながら、精度のよい温度検出回路が構成される。また、接続を切り替えることによって、定電流源から供給される順方向電流が平準化されるので、温度検出回路において温度検出用ダイオードに印可する定電流の脈動も抑制される。その結果、温度検出回路の消費電流の脈動が抑制され、回路に生じるノイズも抑制される。従ってノイズフィルタなどの付加回路の規模を小さくしたり、或いは無くしたりすることができ、温度検出回路を小規模化、低コスト化することができる。また、脈動を考慮すると最大電流に対応した回路設計が必要となるが、消費電流が安定することによって最大電流も小さくなり、温度検出回路を小規模化、低コスト化することができる。即ち、本特徴構成によれば、温度検出対象の素子が増加しても、温度検出回路の規模の増加を抑制しつつ、精度良く当該素子の温度を検出することができる。
温度検出回路は、温度検出用ダイオードの順方向電圧の温度特性を利用して検出対象物の温度を検出する。従って、温度検出用ダイオードは、検出対象物の近傍に配置されることが好ましい。1つの態様として、前記温度検出ダイオードが、前記検出対象物である半導体素子と同一のチップに形成されていると好適である。
ところで、本発明に係る温度検出回路は、直流電源の正極側の正極電源ラインに接続される上段側スイッチング素子と、前記直流電源の負極側の負極電源ラインに接続される下段側スイッチング素子とが直列接続されたアームが、多相交流の相数に応じた複数相並列接続されたブリッジ回路により構成され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータ回路において、上段側スイッチング素子或いは下段側スイッチング素子の温度を検出するために利用することができる。この際、上段側スイッチング素子のエミッタ端子側は、それぞれ異なる電位となるが、下段側スイッチング素子のエミッタ端子は全て負極電源ラインに接続される。つまり、下段側スイッチング素子はグラウンドが共通するものとして扱うことができる。1つの態様として、負極電源ラインが共通する複数の下段側スイッチング素子の温度を検出するための複数の温度検出用ダイオードは、複数の定電流源から、予め規定された周期で順番に順方向電流を印可されると好適である。また、温度検出回路は、温度検出用ダイオードの順方向電圧の温度特性を利用して検出対象物の温度を検出するので、温度検出用ダイオードは、検出対象物の近傍に配置されることが好ましい。よって、1つの態様として、複数の前記温度検出用ダイオードのそれぞれは、前記負極電源ラインが共通する複数の前記下段側スイッチング素子のそれぞれと同一のチップに形成されていると好適である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、ハイブリッド車両や電動車両等に用いられる回転電機駆動装置に搭載されるインバータ装置に本発明の温度検出回路を適用する場合を例として説明する。本実施形態の車両は、例えば駆動力源として不図示の内燃機関と回転電機とを備える。回転電機MGは、必要に応じて電動機としても発電機としても機能する。つまり、回転電機MGは、力行作動及び回生作動の双方が可能である。
図1は、回転電機駆動装置のシステム構成を示している。図1に示すように、回転電機駆動装置には、インバータ回路10が備えられている。バッテリ11は、インバータ回路10を介して回転電機MGに電力を供給可能であると共に、回転電機MGが発電して得られた電力を蓄電可能である。このようなバッテリ11としては、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池、キャパシタ、或いはこれらの組合せ等が用いられる。また、回転電機駆動装置には、インバータ回路10の直流側の電圧であるシステム電圧Vdcを平滑化する平滑コンデンサ40が備えられている。
ところで、図1に例示するように、回転電機駆動装置には、コンバータ回路18が備えられる場合がある。このコンバータ回路18は、システム電圧Vdcとバッテリ11の電圧との間で直流電力(直流電圧)を変換する。この場合、システム電圧Vdcは、コンバータ回路18の出力電圧(昇圧側出力電圧)となる。昇圧率が“1”の場合には、コンバータ回路18の出力電圧は、バッテリ11の端子間電圧にほぼ一致する。図1に例示する構成においては、バッテリ11及びコンバータ回路18が、回転電機駆動装置の「直流電源」として機能する。一方、コンバータ回路18が備えられない場合には、バッテリ11が「直流電源」として機能する。
平滑コンデンサ40は、コンバータ回路18の有無に拘わらず、このように定義される「直流電源」の正極と負極との間に接続され、「直流電源」の正負両極間電圧(システム電圧Vdc)を平滑化する。尚、平滑コンデンサ40には、回転電機駆動装置のシャットダウン時に残存電荷を放電させるために、平滑コンデンサ40に並列に放電抵抗が設けられている。
インバータ回路10は、システム電圧Vdcを有する直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機MGに供給すると共に、回転電機MGが発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源に供給する回路である。インバータ回路10は、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やパワーMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)などのパワー半導体素子を適用すると好適である。図1に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBT30が用いられる。
例えば直流と多相交流(ここでは3相交流)との間で電力変換するインバータ回路10は、よく知られているように多相(ここでは3相)のそれぞれに対応する数のアームを有するブリッジ回路により構成される。つまり、図1に示すように、インバータ回路10の直流正極側(直流電源の正極側の正極電源ラインP)と直流負極側(直流電源の負極側の負極電源ラインN)との間に2つのIGBT30が直列に接続されて1つのアーム10Lが構成される。そして、3相の場合には、この直列回路(1つのアーム10L)が3回線(3相:10U,10V,10W)並列接続される。つまり、回転電機MGのU相、V相、W相に対応するステータコイルのそれぞれに一組の直列回路(アーム10L)が対応したブリッジ回路が構成される。各相の上段側のIGBT30のコレクタ端子は正極電源ラインPに接続され、エミッタ端子は各相の下段側のIGBT30のコレクタ端子に接続される。また、各相の下段側のIGBT30のエミッタ端子は、負極電源ラインN(例えば、グラウンド)に接続される。対となる各相のIGBT30による直列回路(アーム10L)の中間点、つまり、IGBT30の接続点は、回転電機MGのステータコイルにそれぞれ接続される。
尚、IGBT30には、それぞれフリーホイールダイオード39(回生ダイオード)が並列に接続される。フリーホイールダイオード39は、カソード端子がIGBT30のコレクタ端子に接続され、アノード端子がIGBT30のエミッタ端子に接続される形で、IGBT30に対して並列に接続される。
図1に示すように、インバータ回路10は、制御装置80により制御される。制御装置80は、ECU(electronic control unit)やドライバ回路を有して構成されている。制御装置80に搭載されるECUは、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。本実施形態では、ECUは、図示しない車両制御装置等の他の制御装置等からの要求信号として制御装置80に提供される回転電機MGの目標トルクTMに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路10を介して回転電機MGを制御する。ECUは、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
インバータ回路10を構成する各IGBT30のゲート端子は、ドライバ回路を介してECUに接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。一般的に、回転電機MGを駆動するためのパワー系の電気回路と、マイクロコンピュータなどを中核とするECUなどの電子回路とは、動作電圧(回路の電源電圧)が大きく異なる。このため、相対的に低電圧のECUにより生成されたIGBT30の制御信号は、ドライバ回路を介して高電圧のゲート駆動信号Sとしてインバータ回路10に供給される。尚、回転電機駆動装置にコンバータ回路18が搭載されている場合には、同様に制御装置80からドライバ回路を介して高電圧のコンバータ用ゲート駆動信号SCがコンバータ回路18に供給される。
回転電機MGの各相のステータコイルを流れる実電流は電流センサ12により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。図1には、バスバーなどに近接配置されて非接触で電流を検出する非接触型の電流センサ12に3相各相の実電流が検出される形態を模式的に示している。尚、本実施形態では、3相全ての電流を検出する構成を示しているが、3相は平衡状態にあり、電流の瞬時値の総和は零であるので2相のみの電流を電流センサ12で検出し、制御装置80において残りの1相の電流を演算により求めてもよい。また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置は、回転センサ13により検出され、制御装置80はその検出結果を取得する。回転センサ13は、例えばレゾルバ等により構成される。ここで、磁極位置は、電気角上でのロータの回転角度を表している。回転センサ13は、図1に示すように回転電機MGの近傍に設置されている。
ところで、IGBT30のようなパワー半導体素子には大電流が流れ、素子自体も発熱する。IGBT30を定格温度の範囲内で使用するために、制御装置80は、IGBT30の温度の検出結果に基づく制御を実施する。IGBT30のようなパワー半導体素子の温度の検出には種々の方法を用いることができる。1つの方法として、ダイオードの順方向電圧が温度によって異なるという、ダイオードの温度特性を利用したものがある。つまり、IGBT30の近傍に配置された温度検出用ダイオードに、定電流源より定電流を与えて、このダイオードの順方向電圧を検出する。この電圧値は、このダイオードの温度によって異なるので、電圧値により温度検出用ダイオードの近傍のIGBT30の温度が演算できる。
本実施形態では、IGBT30は、温度検出用ダイオードと同一のシリコンチップ50に形成されている。つまり、図2に示すように、IGBT30は、検出対象物である半導体素子(IGBT素子3)と温度検出用ダイオード(ダイオード2)とが同一チップ上に形成されて構成されている。図2において、符号3cはIGBT30(IGBT素子3)のコレクタ端子を示し、符号3eはエミッタ端子を示し、符号3gはゲート端子を示している。また、符号2aは温度検出用ダイオード(ダイオード2)のアノード端子を示し、符号2kはカソード端子を示している。図3は、IGBT30のチップレイアウトを模式的に示している。大電流が流れるエミッタ端子3eは、複数の領域に分割され、全体として大きな面積を占めるように構成されている。不図示の裏面側には、エミッタ端子3eと同様の面積を有するようにコレクタ端子3cが構成されている。IGBT素子3のゲート端子3g、ダイオード2のアノード端子2a及びカソード端子2kは、IGBT素子3のコレクタ−エミッタ間電流よりも遥かに小さい電流しか流れないため、コレクタ端子3c及びエミッタ端子3eよりも小さい面積で形成されている。
図4は、温度検出回路1の一例を模式的に示している。温度検出回路1は、定電流源5を備えて構成され、この定電流源5よりダイオード2(温度検出用ダイオード)に定電流“If”が供給される。これにより、ダイオード2には順方向の端子間電圧(順方向電圧)“Vf”が生じる。順方向電圧“Vf”は、コンデンサやインダクタなどにより構成されたフィルタ回路1f、及びアンプ1aを介して制御装置80の温度演算部7に検出される。温度演算部7は検出した順方向電圧“Vf”に基づいてダイオード2の温度を演算する。例えば、温度演算部7は、ダイオード2の順方向電圧−温度特性を参照し、順方向電圧“Vf”を引数としてダイオード2の周囲温度(動作温度)を演算する。
上述したように、本実施形態では、ダイオード2はIGBT素子3と同一チップ上に形成されているから、ダイオード2の温度はIGBT素子3の温度(動作温度)とほぼ等価である。尚、ダイオード2とIGBT素子3とが同一チップ上に形成されていない場合でも、ダイオード2がIGBT素子3の近傍に配置されていれば、IGBT3の温度(動作温度)によってダイオード2の周囲温度やダイオード2自体の温度も上昇するから、ダイオード2の温度に基づいてIGBT3の温度を検出することができる。
以下、このような温度検出原理を利用した本発明に係る温度検出回路1について詳細に説明する。尚、以下では、説明を容易にするために、図4に示す回路図を模式的に示す回路ブロック図である図5に基づいて説明する。図5では、フィルタ回路1f及びアンプ1aが省略されている。フィルタ回路1fは、例えばノイズを除去するローパスフィルタであり、温度検出には直接関与しないので、以下の説明においては省略する。また、インピーダンス変換や順方向電圧の増幅に利用されるアンプ1aも、原理的には温度検出に直接関与しないので、以下の説明においては省略する。尚、アンプ1aの入力インピーダンスは非常に大きく(理想的には無限大)、定電流源5から供給される定電流“If”の全てがダイオード2の順方向電流となる。図5の回路ブロック図においては、制御装置80の入力インピーダンスは非常に大きく(理想的には無限大)、定電流源5から供給される定電流“If”の全てがダイオード2の順方向電流となるものとする。
ところで、上記においては、温度演算部7が、ダイオード2の順方向電圧−温度特性を参照し、順方向電圧“Vf”を引数としてダイオード2の周囲温度(動作温度)を演算することができると説明した。しかし、ダイオード2の特性には個体ばらつき(個体誤差)が存在する。このため、同じ順方向電流“If”を与えても、順方向電圧“Vf”の値が異なり、その結果演算される動作温度も異なる場合がある。このような個体ばらつきに鑑みて、より高い精度で温度を検出する手法が知られている。
図6に示すように、値の異なる定電流“If”及び“N・If”を異なるタイミングで1つのダイオード2に流し、それぞれの順方向電圧“Vf”及び“Vf’”を検出し、その差分を取ることでダイオード2の個体バラツキ(オフセット成分)の影響を抑制する。ここで、“N”は定数である。この手法を利用すれば、定電流源5は、第1定電流源51及び第2定電流源52の複数が必要となるものの、検出精度を向上させることができる。第1定電流源51及び第2定電流源52から供給される電流は、アナログマルチプレクサなどにより構成される接続切替部8により切り替えられる。接続切替部8は、制御装置80の切替制御部6によって切り替え制御される。
図7は、ダイオード2の順方向電圧と順方向電流との特性を模式的に示している。特性“L1”と“L2”とは、ダイオード2の特性の個体ばらつきを過大に模擬している。例えば、順方向電流“If”をダイオード2に印可した場合、順方向電圧“Vf”は個体ばらつきの影響により異なる値となる。しかし、順方向電流“If”と“N・If”とを印可した場合の順方向電圧“Vf”と“Vf’”との差分である“ΔVf”は、特性“L1”と“L2”とで、ほとんど同じである。例えば、k:ボルツマン定数、T:ケルビン温度、q:電荷、If:順方向電流、Is:逆方向電流、η:固有定数、として、順方向電圧“Vf”は下記の式(1)で表される。
尚、逆方向電流“Is”は、概ね“1×10−15[A]”程度の大きさであり、個体ばらつきは大きい。固有定数“η”は半導体特性であり、その値は概ね“1”である。固有定数“η”の個体ばらつきは、逆方向電流“Is”や順方向電流“If”よりも小さい。ここで、順方向電流“If”を“N”倍とすると、順方向電“Vf’”は、下記の式(2)で表され、差分“ΔVf”は下記式(3)で表される。
上述したように、逆方向電流“Is”や順方向電流“If”は個体ばらつきが大きいが、これらは、差分“ΔVf”においては相殺されている。これらに比べて、個体ばらつきの小さい固有定数“η”のみが個体ばらつきに影響する因子となるので、ケルビン温度“T”に対する個体ばらつきの影響は、差分“ΔVf”を利用することによって大きく抑制される。
ところで、パワー系回路に求められる出力が大きくなると、単一の素子で回路の一要素を構成することが現実的ではなくなる。例えば、図1に示すインバータ回路10において、複数のIGBT30を並列接続して、より出力の大きいIGBTを形成するようなことも行われる。図8は、そのようなインバータ回路10の1つのアーム10Lを例示している。回路を構成する要素としては、このような並列回路を電気的に1つのスイッチング素子として扱うことができるが、実際の素子は別個に存在する。従って、このような場合、複数のIGBT30の温度をそれぞれ検出する必要が生じる。この際、各IGBT30に複数の定電流源5を割り当てると、定電流源5の数が増大する。その結果、回路規模の増加や、消費電流の増加による電源規模の拡大などを招く可能性がある。
そこで、本実施形態においては、図9に示すように、2つの定電流源5を交互に切り替えることによって定電流源5の数を抑制しながら、精度のよい温度検出回路1が構成される。温度検出回路1は、互いに異なる値の定電流(“If”及び“N・If”)を出力する複数の電源であって、複数の検出対象物(IGBT30)にそれぞれ対応する複数のダイオード2(第1ダイオード21及び第2ダイオード22)の数以下備えられる複数の定電流源5(第1定電流源51及び第2定電流源52)を備えて構成される。また、温度検出回路1は、定電流源5(51,52)のそれぞれを、互いに異なる1つのダイオード2(21,22)に電気的に接続すると共に、定電流源5(51,52)とダイオード2(21,22)との電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部8(第1接続切替部81及び第2接続切替部82)を備えて構成される。
制御装置80の切替制御部6は、定電流源5(51,52)のそれぞれに接続するダイオード2(21,22)を、全てのダイオード2の中から、図10に示すように、予め規定された周期Tで順番に選択して、その組み合わせを切り替えるように接続切替部8(81,82)を制御する。即ち、切替制御部6は、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御する周期Tにおいては、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御する。ここでは、この接続状態を第1接続状態と称する。一方、切替制御部6は、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御する周期Tにおいては、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御する。ここでは、この接続状態を第2接続状態と称する。即ち、切替制御部6は、第1制御状態と第2制御状態とを周期Tで交互に切り替える制御を行う。
図10に示す波形図は、例えば上段が第1ダイオード21に印可される順方向電流を示し、中段が第2ダイオード22に印可される順方向電流を例示している。図10の下段は、第1ダイオード21及び第2ダイオード22に印可される順方向電流の合計を例示している。つまり、図10の下段の波形図は、温度検出回路1において温度検出用のダイオード2に印可する定電流の合計値を表している。図10に示すように、2つの定電流源5を交互に切り替えることによって定電流源5の数を抑制しながら、精度のよい温度検出回路1が構成されると共に、温度検出回路1においてダイオード2に印可する定電流の脈動も抑制される。その結果、温度検出回路1の消費電流の脈動が抑制され、回路に生じるノイズも抑制される。従って、図4に示したようなフィルタ回路1fの規模を小さくしたり、或いは無くしたりすることができ、温度検出回路1を小規模化、低コスト化することができる。また、脈動を考慮すると最大電流に対応した回路設計が必要となるが、消費電流が安定することによって最大電流も小さくなり、温度検出回路1を小規模化、低コスト化することができる。
図11及び図12は、比較のため、各IGBT30に対応するダイオード2(21,22)に対してそれぞれ複数の定電流源5(51,52のペアと53,54のペア)を割り当てた場合の構成例及び電流波形例を示している。図9に示す温度検出回路1では定電流源5が2つであったが、図11では定電流源5が4つ必要となり、温度検出回路1の規模が大きくなる。一方、図9に示したように、定電流源5(51,52)とダイオード2(21,22)との電気的接続の組み合わせを切り替えるように構成すれば、定電流源5の総数をダイオード2の数以下に減じることができ、回路規模をより小さくすることができる。
ところで、図11のように、ダイオード2に対してそれぞれ複数の定電流源5を割り当てた場合には、各ダイオード2に対して次のように順方向電流を印可することができる。例えば、制御装置80は、同じ周期Tにおいて、定電流“If”を第1ダイオード21に印可しつつ、第2ダイオード22にも定電流“If”を印可することができる。また、制御装置80は、同じ周期Tにおいて、定電流“N・If”を第1ダイオード21に印可しつつ、第2ダイオード22にも定電流“N・If”を印可することができる。この場合には、図12に示すように、ある周期Tにおいては、印可される定電流の合計は“2×If”であるが、別の周期Tでは“2×N・If”となり、定電流の合計に脈動が生じる。その結果、温度検出回路1の消費電流の脈動が大きくなり、ノイズの発生や、最大電流に対応した回路設計などが必要となる可能性がある。
尚、図11の回路構成においても、切替制御部6は、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御する周期Tにおいて、定電流“N・If”を供給する第4定電流源54と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御することができる。また、切替制御部6は、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御する周期Tにおいて、定電流“If”を供給する第3定電流源53と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御することができる。切替制御部6がこのように制御することで、図10に示した波形図と同様に、脈動を抑制することは可能である。しかし、依然として図11に示す構成では定電流源5が4つ必要であり、図9に示す構成に比べて温度検出回路1の規模が大きくなる点に変わりはない。
本発明に係る温度検出回路1においては、定電流源5は、ダイオード2の数以下に抑制されている。図9及び図10を参照して上述した例では、ダイオード2の数“2”以下の2個の定電流源5が備えられている。しかし、この例に限らず、例えばインバータ回路10の1つのアーム10Lの上段側(ハイサイドスイッチ)又は下段側(ローサイドスイッチ)が3つのスイッチング素子を並列接続して構成され、それぞれに温度検出用のダイオード2が備えられている場合に、2種類の定電流源5を切り替えて使用することも好適な態様である。つまり、定電流源5を、ダイオード2の数“3”以下の“2”に抑えて温度検出回路1を構成することも好適な態様である。或いは、以下に説明するように、インバータ回路10のU,V,W相のIGBT30の温度検出用の3つのダイオード2に対して、2種類の定電流源5を切り替えて使用することも好適な態様である。
直流と交流との間で電力変換を行うインバータ回路10は、バッテリ11(直流電源)の正極側の正極電源ラインPに接続される上段側スイッチング素子(IGBT30)と、負極電源ラインNに接続される下段側スイッチング素子(IGBT30)とが直列接続されたアーム10Lが、多相交流の相数に応じた複数相並列接続されたブリッジ回路により構成されている。本実施形態では、図1に示すように、多相交流は3相交流であり、アーム10Lは、3相分が並列に接続されている。ここで、上段側スイッチング素子のエミッタ端子3e側は、それぞれ異なる電位となるが、下段側スイッチング素子のエミッタ端子3eは全て負極電源ラインNに接続される。つまり、下段側スイッチング素子はグラウンドが共通するものとして扱うことができる。1つの態様として、負極電源ラインNが共通する複数の下段側スイッチング素子の温度を検出するための複数のダイオード2は、共通する2種類の定電流源5から、予め規定された周期で順番に順方向電流を印可されると好適である。
図13及び図14は、そのような回路構成及び順方向電流の波形を例示している。図13に示すように、温度検出回路1は、互いに異なる値の定電流(“If”及び“N・If”)を出力する複数の電源であって、3相の検出対象物(U,V,W各相の下段側のIGBT30)にそれぞれ対応する3つのダイオード2(第1ダイオード21、第2ダイオード22、第3ダイオード23)の数以下の2つの定電流源5(51,52)を備えて構成される。また、温度検出回路1は、定電流源5(51,52)のそれぞれを、互いに異なる1つのダイオード2(21,22,23)に電気的に接続すると共に、定電流源5(51,52)とダイオード2(21,22,23)との電気的接続の組み合わせを切り替え可能な3つの接続切替部8(第1接続切替部81、第2接続切替部82、第3接続切替部83)を備えて構成される。図9に示す構成では、2状態を切り替え可能であったが、図13に示す接続切替部8(81,82,83)は、3状態に切り替え可能である。
制御装置80の切替制御部6は、定電流源5(51,52)のそれぞれに接続するダイオード2(21,22,23)を、全てのダイオード2の中から、図14に示すように、予め規定された周期Tで順番に選択して、その組み合わせを切り替えるように接続切替部8(81,82,83)を制御する。例えば、切替制御部6は、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御する周期Tにおいては、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御し、第3ダイオード23とグラウンドとが接続されて第3ダイオード23に順方向電流が流れないように第3接続切替部83を制御する。ここでは、この接続状態を第1接続状態と称する。
また、切替制御部6は、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第2ダイオード22とが接続されるように第2接続切替部82を制御する周期Tにおいては、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第3ダイオード23とが接続されるように第3接続切替部83を制御し、第1ダイオード21とグラウンドとが接続されて第1ダイオード21に順方向電流が流れないように第1接続切替部81を制御する。ここでは、この接続状態を第2接続状態と称する。さらに、切替制御部6は、定電流“N・If”を供給する第2定電流源52と第3ダイオード23とが接続されるように第3接続切替部83を制御する周期Tにおいては、定電流“If”を供給する第1定電流源51と第1ダイオード21とが接続されるように第1接続切替部81を制御し、第2ダイオード22とグラウンドとが接続されて第2ダイオード22に順方向電流が流れないように第2接続切替部82を制御する。ここでは、この接続状態を第3接続状態と称する。
即ち、この例では、切替制御部6は、第1制御状態、第2制御状態、第3制御状態の順に、周期Tごとに接続状態を切り替える制御を行う。図14に示すように、2つの定電流源5とダイオード2との接続を順次切り替えることによって定電流源5の数を抑制しながら、精度のよい温度検出回路1が構成されると共に、温度検出回路1においてダイオード2に印可する定電流の脈動も抑制される。
このように、制御装置80は、負極電源ラインNが共通する複数の下段側スイッチング素子の温度を検出するための複数のダイオード2に対しては、共通する2種類の定電流源5から、予め規定された周期で順番に順方向電流を印可することができる。ここで、図2及び図3に示したように、複数のダイオード2のそれぞれは、負極電源ラインNが共通する複数の下段側スイッチング素子のそれぞれと同一のチップに形成されていると好適である。
本発明は、ダイオードに定電流を流して順方向電圧を検出し、当該順方向電圧に基づいて温度を検出する温度検出回路に利用することができる。
2:ダイオード(温度検出用ダイオード)
3:IGBT素子(半導体素子)
5:定電流源
6:切替制御部
8:接続切替部
10:インバータ回路
10L:アーム
21:第1ダイオード(温度検出用ダイオード)
22:第2ダイオード(温度検出用ダイオード)
23:第3ダイオード(温度検出用ダイオード)
30:IGBT(検出対象物)
81:第1接続切替部(接続切替部)
82:第2接続切替部(接続切替部)
83:第3接続切替部(接続切替部)
N:負極電源ライン
P:正極電源ライン
3:IGBT素子(半導体素子)
5:定電流源
6:切替制御部
8:接続切替部
10:インバータ回路
10L:アーム
21:第1ダイオード(温度検出用ダイオード)
22:第2ダイオード(温度検出用ダイオード)
23:第3ダイオード(温度検出用ダイオード)
30:IGBT(検出対象物)
81:第1接続切替部(接続切替部)
82:第2接続切替部(接続切替部)
83:第3接続切替部(接続切替部)
N:負極電源ライン
P:正極電源ライン
Claims (3)
- ダイオードに定電流を流して順方向電圧を検出し、当該順方向電圧に基づいて検出対象物の温度を検出する温度検出回路であって、
複数の温度検出用ダイオードと、
互いに異なる値の定電流を出力する複数の電源であって、前記温度検出用ダイオードの数以下備えられる複数の定電流源と、
前記定電流源のそれぞれを、互いに異なる1つの前記温度検出用ダイオードに電気的に接続すると共に、前記定電流源と前記温度検出用ダイオードとの電気的接続の組み合わせを切り替え可能な接続切替部と、
前記定電流源のそれぞれに接続する前記温度検出用ダイオードを、全ての前記温度検出用ダイオードの中から、予め規定された周期で順番に選択して前記組み合わせを切り替えるように前記接続切替部を制御する切替制御部と、を備えた温度検出回路。 - 前記温度検出用ダイオードは、前記検出対象物である半導体素子と同一のチップに形成されている請求項1に記載の温度検出回路。
- 直流電源の正極側の正極電源ラインに接続される上段側スイッチング素子と、前記直流電源の負極側の負極電源ラインに接続される下段側スイッチング素子とが直列接続されたアームが、多相交流の相数に応じた複数相並列接続されたブリッジ回路により構成され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータ回路において、
複数の前記温度検出用ダイオードのそれぞれは、前記負極電源ラインが共通する複数の前記下段側スイッチング素子のそれぞれと同一のチップに形成されている請求項1又は2に記載の温度検出回路。
Priority Applications (1)
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US11740137B2 (en) | 2020-09-29 | 2023-08-29 | AyDeeKay LLC | Multi-sensing PTAT for multiple-location temperature sensing |
-
2013
- 2013-01-30 JP JP2013016052A patent/JP2014145746A/ja active Pending
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