JP2014139235A - 核酸移送担体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 より毒性の低い、局所投与および全身投与可能で、核酸医薬品の治療患部への到達効率と導入効率を高める臨床応用可能な核酸移送担体を提供する。
【解決手段】 ペプチド界面活性剤を含む核酸移送担体
【選択図】図1

Description

本発明は、ペプチド界面活性剤を含む核酸の移送担体に関する。
RNA干渉(RNAi)は、短い2本鎖RNAによって特定遺伝子の発現が抑制される現象で、疾患の治療への応用が期待されている。現在の技術では、small interfering RNA(siRNA)やmicro RNA(miRNA)を核酸医薬として用いる際の移送担体は、カチオン性のリン脂質が主体であるが、その毒性が指摘されている。また、アテロコラーゲンを移送担体に用いる研究も行われているが、その治療効果の向上にはさらなる改善が必要である。
siRNAをはじめとする核酸医薬の臨床における応用を考慮すると、核酸医薬品の患部への移送担体は、限りなく毒性が低いことが望まれ、また同時に患部までの到達効率や標的遺伝子の抑制効率が高く、かつ全身投与可能な担体の開発が待たれている。
本発明のペプチド界面活性剤は、Gタンパク質結合レセプターウシロドプシンなどの膜タンパク質を安定させる作用やセルフアセンブリングする性質を有することが知られている(非特許文献1及び2)。しかし、核酸の移送担体としての用途はこれまで知られていなかった。
X Zhao et al.,PNAS,Vol.103,No.47,17707−17712 A Nagai et al.,J.Nanosci.Nanotechnol.Vol.7,No.7,1−7
本発明が解決しようとする課題は、より毒性の低く、患部への到達効率と標的遺伝子の抑制効率が高い臨床応用可能な核酸移送担体を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ペプチド界面活性剤が核酸の移送担体として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、下記のとおりである。
[1]ペプチド界面活性剤を含む核酸の移送担体。
[2]ペプチド界面活性剤が、4〜10の親水性アミノ酸からなる頭部及び1又は2の疎水性アミノ酸からなる尾部からなる、[1]に記載の核酸の移送担体。
[3]核酸の移送担体が、AAAAAAD又はAAAAAAKである、[1]に記載の核酸の移送担体。
[4]上記[1]−[3]のいずれか1に記載の核酸の移送担体及び核酸を含む、局所投与又は全身投与用医薬品。
本発明の核酸移送担体は、より毒性が低く、局所投与及び全身投与が可能であり、核酸医薬品の治療患部への到達効率と導入効率を高めることができるという効果を有する。
ペプチド界面活性剤によるsiRNAの局所投与における遺伝子発現抑制効果の確認である。「si−」はペプチド界面活性剤にsiRNAを加えなかった実験群を意味し、その他の群にはペプチド界面活性剤にsiRNAを添加している。 ペプチド界面活性剤によるsiRNAの全身投与における遺伝子発現抑制効果の確認である。「si−」はペプチド界面活性剤にsiRNAを加えなかった実験群を意味し、その他の群にはペプチド界面活性剤にsiRNAを添加している。 ペプチド界面活性剤によるsiRNAの局所投与における腫瘍細胞増殖抑制効果の確認である。 ペプチド界面活性剤によるsiRNAの局所投与における腫瘍細胞増殖遺伝子の抑制効果の確認である。 ペプチド界面活性剤によるsiRNAの全身投与における腫瘍細胞増殖抑制効果の確認である。 血清中GOT濃度である。 血清中GPT濃度である。 血清中インターフェロンアルファ濃度である。 血清中インターフェロンガンマ濃度である。 血清中MCP−1濃度である。 血清中インターロイキン12濃度である。 血清中インターロイキン6濃度である。 血清中ケモカイン濃度である。
本発明において、ペプチド界面活性剤とは、6〜10個のアミノ酸残基を含むものであり、その長さは、約2〜3nmであり、従来の界面活性剤、たとえば、n−ドデシル−β−D−マルトシド(DM)やオクチル−D−グルコシド(OG)と同様の特性を示す。
本発明のペプチド界面活性剤は、好ましくは、4〜10の親水性アミノ酸からなる頭部及び1又は2の疎水性アミノ酸からなる尾部からなる。
より具体的には、GGGGDD(G4D2)、GGGGGGD(G6D)、GGGGGGDD(G6D2)、GGGGGGGGD(G8D)、GGGGGGGGDD(G8D2)、GGGGGGGGGGD(G10D)、GGGGKK(G4K2)、GGGGGGK(G6K)、GGGGGGKK(G6K2)、GGGGGGGGK(G8K)、GGGGGGGGKK(G8K2)、GGGGGGGGGGGK(G10K)、GGGGGGGGGGKK(G10K2)、GGGGGGGGGGDD(G10D2)、AAAADD(A4D2)、AAAAAAD(A6D)、AAAAAADD(A6D2)、AAAAAAAAD(A8D)、AAAAAAAADD(A8D2)、AAAAAAAAAAD(A10D)、AAAAAAAAAADD(A10D2)、AAAAKK(A4K2)、AAAAAAK(A6K)、AAAAAAKK(A6K2)、AAAAAAAAK(A8K)、AAAAAAAAKK(A8K2)、AAAAAAAAAAK(A10K)、AAAAAAAAAAKK(A10K2)、VVVVDD(V4D2)、VVVVVVD(V6D)、VVVVVVDD(V6D2)、VVVVVVVVD(V8D)、VVVVVVVVDD(V8D2)、VVVVVVVVVVD(V10D)、VVVVVVVVVVDD(V10D2)、VVVVKK(V4K2)、VVVVVVK(V6K)、VVVVVVKK(V6K2)、VVVVVVVVK(V8K)、VVVVVVVVKK(V8K2)、VVVVVVVVVVK(V10K)、VVVVVVVVVVKK(V10K2)、LLLLDD(L4D2)、LLLLLLD(L6D)、LLLLLLDD(L6D2)、LLLLLLLLD(L8D)、LLLLLLLLDD(L8D2)、LLLLLLLLLLDD(L10D2)、LLLLKK(L4K2)、LLLLLLK(L6K)、又はLLLLLLKK(L6K2)、LLLLLLLLK(L8K)、LLLLLLLLKK(L8K2)、LLLLLLLLLK(L10K)、LLLLLLLLLLKK(L10K2)を挙げることができるが、中でも、AAAAAAD(A6D)又はAAAAAAK(A6K)が好ましく、AAAAAAK(A6K)が特に好ましい。
ペプチド界面活性剤の製造法は、固相合成法もしくは液層合成法によって合成される。当該ペプチドは人工合成可能であるため、生体由来物質を含まず、感染リスクの心配がない。
本発明において、核酸移送担体とは、siRNA等のポリヌクレオチドや遺伝子を、生体の意図する組織への移送、遺伝子導入する際に用い、その到達効率と導入効率を高めることができる組成物をいう。
マウス局所投与モデルにおけるRNAi効果の検討
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍細胞を持つマウスにルシフェラーゼ遺伝子に対するsiRNAとペプチド界面活性剤を混合した溶液を腫瘍へ直接注射し、siRNAの導入と遺伝子抑制効果をルシフェラーゼ発光のイメージングで解析したところ、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液による遺伝子抑制効果を確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH2、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
2濃度:50μg/mL、500μg/mL
・ルシフェラーゼ遺伝子抑制siRNA
Luciferase GL3 siRNA(B−Bridge International,Inc社製
・ルシフェリン
ルシフェリン1g(Wako)をダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)66.7mLに溶解し、0.2μmシリンジフィルター(Minisart)を通して滅菌した。シリンジフィルターを通して直接遮光チューブに分注し、−80℃(−20℃)で保存した。
・ルシフェラーゼ遺伝子発現腫瘍細胞
PC−3M−luc−C6(Xenogen,Alameda社)
<方法>
・腫瘍モデルマウスの作成
PC−3M−luc−C6細胞を10%FBS(Equitech−Bio,Kerrville)含有Eagle’s MEM培地(Invitrogen)にて37℃、5%CO下で培養した。PC−3M−luc−C6細胞をトリプシン処理で回収し、ダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)に懸濁、9週齢の雄ヌードマウス(CLEA Japan,Osaka)の皮下に3×10細胞/200μlを26G注射針にて移植し、腫瘍マウスを作成した。
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
Luciferase GL3 siRNA50μg(PBS(−)100μLに溶解)とペプチド界面活性剤を等量混合し(最終投与量が1匹あたり200μLになるよう調製)、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・投与
試験群には、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を腫瘍部位あたりに200μl投与した。一方、コントロール群はペプチド界面活性剤(50μg/mLと500μg/mL)のみを200μl投与した。
・In vivoイメージング
ルシフェリン投与前に動物の体重を測定し、ルシフェリン溶液(15mg/mL)を150mg/kgで26G注射針(テルモ社)にて腹腔内投与した。ルシフェリン投与から10分後、IVIS Imaging System(Xenogen)にてイメージングした。イメージングデータはLIVINGIMAGE2.51ソフトウェア(Xenogen)にて解析した。ルシフェラーゼ発光イメージングは、siRNA投与直前をday0として、day0よりday2までを行い、発光量の変化をsiRNAの抑制効果とした。
<結果>
結果を図1に示した。コントロール群(ペプチド界面活性剤のみ)では投与後にルシフェラーゼ発光量が増加しているが、試験群では発光量が減弱していた。このことから、siRNAをペプチド界面活性剤と混合することで腫瘍細胞へのsiRNA導入が促進され、遺伝子発現が抑制されると考えられた。
マウス全身投与モデルにおけるRNAi効果の検討
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍を持つマウスにルシフェラーゼ遺伝子抑制siRNAとペプチド界面活性剤を混合した溶液を尾静脈から投与し、siRNAの導入と遺伝子抑制効果をルシフェラーゼ発光のイメージングで解析したところ、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液による遺伝子抑制効果を確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH2、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
2濃度:50.0、500.0μg/mL
・ルシフェラーゼ遺伝子抑制siRNA
Luciferase GL3 siRNA(B−Bridge International,Inc社製)
・ルシフェリン
ルシフェリン1g(Wako)をダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)66.7mLに溶解し、0.2μmシリンジフィルター(Minisart)を通して滅菌した。シリンジフィルターを通して直接遮光チューブに分注し、−80℃(−20℃)で保存した。
・ルシフェラーゼ遺伝子発現腫瘍細胞
PC−3M−luc−C6(Xenogen,Alameda社)
<方法>
・腫瘍モデルマウスの作成
PC−3M−luc−C6細胞を10%FBS(Equitech−Bio,Kerrville)含有Eagle’ s MEM培地(Invitrogen)にて37℃、5%CO下で培養。PC−3M−luc−C6細胞をトリプシン処理で回収し、ダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)に懸濁、9週齢の雄ヌードマウス(CLEA Japan,Osaka)の皮下に1.25×10細胞/200μlで26G注射針にて移植。
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
Luciferase GL3 siRNA 50μg(PBS(−)100μLに溶解)とペプチド界面活性剤を等量混合し(最終投与量が1匹あたり200μLになるよう調製)、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・投与
試験群はsiRNA/ペプチド界面活性剤混合液をマウス尾静脈より27G注射針(テルモ社製)にて200μl投与した。コントロール群はペプチド界面活性剤(500μ/mL)のみを200μl投与した。
・In vivoイメージング
ルシフェリン投与前に動物の体重を測定し、ルシフェリン溶液(15mg/mL)を150mg/kgで26G注射針(テルモ社)にて腹腔内投与した。ルシフェリン投与から10分後、IVIS Imaging System(Xenogen)にてイメージングした。イメージングデータはLIVINGIMAGE2.51ソフトウェア(Xenogen)にて解析した。ルシフェラーゼ発光イメージングは、siRNA投与直前をday0として、day0よりday2までを行い、発光量の変化をsiRNAの抑制効果とした。
<結果>
結果を図2に示した。コントロール群(界面活性剤のみ)では投与後2日目でルシフェラーゼ発光量が増加しているが、試験群では発行量が減弱した。このことから、siRNAをペプチド界面活性剤に混合して全身投与すると、腫瘍細胞へのsiRNA導入がペプチド界面活性剤によって促進され、遺伝子発現が抑制されると考えられた。
マウス局所投与モデルにおけるRNAi効果の検討
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍細胞を持つマウスに細胞増殖抑制効果をもつsiRNAとペプチド界面活性剤を混合した溶液を腫瘍へ直接注射し、細胞増殖抑制効果を腫瘍サイズ計測により解析したところ、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液による細胞増殖抑制効果を確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
500μg/mL
・腫瘍細胞抑制siRNA
EZH2 siRNA(Sigma社製)
・ネガティブコントロールsiRNA
AllStars Negative Control siRNA(QIAGEN社製)
・ルシフェリン
ルシフェリン1g (Wako)をダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)66.7mLに溶解し、0.2μmシリンジフィルター(Minisart)を通して滅菌した。シリンジフィルターを通して直接遮光チューブに分注し、−80℃(−20℃)で保存。
・ルシフェラーゼ遺伝子発現腫瘍細胞
PC−3M−luc−C6(Xenogen,Alameda社)
<方法>
・腫瘍モデルマウスの作成
PC−3M−luc−C6細胞を10%FBS(Equitech−Bio,Kerrville)含有Eagle’s MEM培地(Invitrogen)にて37℃、5%CO2下で培養する。PC−3M−luc−C6細胞をトリプシン処理で回収し、ダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)に懸濁、9週齢の雄ヌードマウス(CLEA Japan,Osaka)の皮下に2×10細胞/200μlを26G注射針にて移植し、腫瘍マウスを作成する。
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
siRNA 25μgとペプチド界面活性剤を等量ずつ混合(最終量を1匹あたり200μL)し、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・投与
試験群には、EZH2 siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を腫瘍部位あたりに200μl投与した。一方、コントロール群はAllStars Negative Control siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を腫瘍あたり200μl投与した。投与はday0,day4,day8の3回投与とした。
・腫瘍サイズの計測
デジタルノギスによる短径、長径、高さ計測をsiRNA投与直前をday0として、day0,day4,day8に行い、腫瘍サイズ(三辺の積)の変化を腫瘍細胞増殖抑制効果とした。
<結果>
結果を図3に示した。コントロール群では投与後day4,day8と腫瘍サイズが増加しているが、試験群では腫瘍サイズが減少していた。このことから、siRNAをペプチド界面活性剤と混合することで腫瘍細胞へのsiRNA導入が促進され、腫瘍細胞の増殖が抑制されると考えられた。
マウス局所投与モデルにおけるRNAi効果の検討
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍細胞を持つマウスに腫瘍成長抑制効果をもつsiRNAとペプチド界面活性剤を混合した溶液を腫瘍へ直接注射し、標的遺伝子のmRNA量を定量PCRにより解析したところ、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液による標的遺伝子の抑制効果が確認された。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
500μg/mL
・腫瘍成長抑制siRNA
EZH2 siRNA(Sigma社製)
・ネガティブコントロールsiRNA
AllStars Negative Control siRNA(QIAGEN社製)
・ルシフェラーゼ遺伝子発現腫瘍細胞
PC−3M−luc−C6(Xenogen,Alameda社)
<方法>
・腫瘍モデルマウスの作成
PC−3M−luc−C6細胞を10%FBS(Equitech−Bio,Kerrville)含有Eagie’s MEM培地(Invitrogen)にて37℃、5%CO2下で培養する。PC−3M−luc−C6細胞をトリプシン処理で回収し、ダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)に懸濁、9週齢の雄ヌードマウス(CLEA Japan,Osaka)の皮下に2×10細胞/200μlを26G注射針にて移植し、腫瘍マウスを作成する。
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
siRNA 25μgとペプチド界面活性剤を等量ずつ混合(最終量を1匹あたり200μL)し、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・投与
試験群には、EZH2 siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を腫瘍部位あたりに200μl投与した。一方、コントロール群はAllStars Negative Control siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を腫瘍あたり200μl投与した。投与は3日間の連続投与とした。
・組織の固定・保存
試験群及びコントロール群の腫瘍はday6に摘出し、液体窒素にて保存し、使用時まで−80℃にて冷凍保存した。
・RNA抽出
腫瘍をホモジナイズし、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてRNAを抽出した。
・cDNAの合成
High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kits with RNAse Inhibitor(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてsiRNAをcDNAに逆転写した。
・リアルタイムPCR
Platinum Quantitative PCR SuperMix−UDG(インビロトジェン社製)とTaqman Probe(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてEZH2を標的とし、GAPDHを内部標準としてApplied Biosystems 7700リアルタイムPCRシステムによって定量解析を行った。
<結果>
結果を図4に示した。コントロール群のEZH2 mRNA発現量を1とした際の試験群のEZH2 mRNA発現量が0.53であった。このことから、siRNAをペプチド界面活性剤と混合することで腫瘍細胞における標的遺伝子抑制効果が確認された。
マウス全身投与モデルにおけるRNAi効果の検討
ルシフェラーゼ遺伝子を発現する腫瘍を尾静脈投与したマウスに腫瘍成長抑制効果をもつsiRNAとペプチド界面活性剤を混合した溶液を尾静脈から投与し、全身性のがん転移抑制効果をルシフェラーゼ発光のイメージングにより解析したところ、siRNA/ペプチド界面活性剤混合液による全身性のがん転移抑制効果を確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
500.0μg/mL
・腫瘍増殖抑制siRNA
EZH2 siRNA(Sigma社製)
KIF11 siRNA(Ambion社製)
・ネガティブコントロールsiRNA
AllStars Negative Control siRNA(QIAGEN社製)
・ルシフェリン
ルシフェリン1g (Wako)をダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)66.7mLに溶解し、0.2umシリンジフィルター(Minisart)を通して滅菌した。シリンジフィルターを通して直接遮光チューブに分注し、−80℃(−20℃)で保存。
・ルシフェラーゼ遺伝子発現腫瘍細胞
PC−3M−luc−C6(Xenogen,Alameda社)
<方法>
・腫瘍モデルマウスの作成
PC−3M−luc−C6細胞を10%FBS(Equitech−Bio,Kerrville)含有Eagle’s MEM培地(Invitrogen)にて37℃、5%CO2下で培養。PC−3M−luc−C6細胞をトリプシン処理で回収し、ダルベッコPBS(Mg2+,Ca2+不含)に懸濁、9週齢の雄スキッドマウス(CLEA Japan,Osaka)の尾静脈に2×10細胞/200μlで26G注射針にて移植。
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
各siRNA50μgとペプチド界面活性剤を等量ずつ混合(最終量を1匹あたり200μL)し、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・投与
試験群はEZH2 siRNAまたはKIF11 siRNA/ペプチド界面活性剤混合液をマウス尾静脈より27G注射針(テルモ社製)にて200μl投与した。コントロール群はAllStars Negative Control siRNA/ペプチド界面活性剤混合液を尾静脈より27G注射針(テルモ社製)にて200μl投与した。
・In vivoイメージング
ルシフェリン投与前に動物の体重を測定し、ルシフェリン溶液(15mg/mL)を150mg/kgで26G注射針(テルモ社)にて腹腔内投与した。ルシフェリン投与から10分後、IVISImaging System(Xenogen)にてイメージングした。イメージングデータはLIVINGIMAGE2.51ソフトウェア(Xenogen)にて解析した。ルシフェラーゼ発光イメージングは、siRNA投与直前をday0として、day0,day9,day12,day15までを行い、発光量の変化を腫瘍細胞抑制とした。
<結果>
結果を図5に示した。コントロール群(界面活性剤のみ)では投与後6日目よりルシフェラーゼ発光量の増加が確認されるが、試験群ではルシフェラーゼ発光量の増加は確認されなかった。このことから、siRNAをペプチド界面活性剤に混合して全身投与すると、腫瘍細胞へのsiRNA導入がペプチド界面活性剤によって促進され、全身性のがん転移が抑制されると考えられた。
界面活性剤ペプチドの肝機能に与える影響についての検討
正常マウスにsiRNA/界面活性剤ペプチド混合液を尾静脈投与し、血清中のGOT,GPT濃度を測定し、肝毒性がないことを確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
500.0μg/mL
・siRNA
AllStars Negative Control siRNA(QIAGEN社製)
Poly(I:C)(Sigma社製)
<方法>
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
各siRNA 50μgとペプチド界面活性剤を等量ずつ混合(最終量を1匹あたり200μL)し、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・サンプル調整
9週齢の雄ICRマウス(CLEA Japan,Osaka)の尾静脈にsiRNA/ペプチド界面活性剤混合27G注射針(テルモ社製)にて200μl投与し、6時間後に腹部大静脈より採血した。1000×gで15分間の遠心分離により血清を分離した。
・測定
富士ドライケム(富士フィルム社製)によりGOT,GPTを測定した。
<結果>
結果を図6、図7に示した。試験群では血清中GOT値とGPT値は正常値を示した。このことからsiRNAとペプチド界面活性剤の混合液を全身投与しても肝機能は変わらず、肝毒性がないことが明らかとなった。
界面活性剤ペプチドによる免疫応答性の検討
正常マウスにsiRNA/界面活性剤ペプチド混合液を尾静脈投与し、ELISA法により血清中のインターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、MCP−1、インターロイキン12、インターロイキン6、ケモカイン濃度を測定し、免疫応答性がないことを確認した。
<材料>
・ペプチド界面活性剤
配列:Ac−AAAAAAK−NH、Celtek社製
・ペプチド界面活性剤濃度
500.0μg/mL
・siRNA
AllStars Negative Control siRNA(QIAGEN社製)
<方法>
・siRNA/ペプチド界面活性剤の調製
各siRNA 50μgとペプチド界面活性剤を等量ずつ混合(最終量を1匹あたり200μL)し、室温にて20分間、低速で回転混和した。
・サンプル調整
9週齢の雄ICRマウス(CLEA Japan,Osaka)の尾静脈にsiRNA/ペプチド界面活性剤混合27G注射針(テルモ社製)にて200μl投与し、6時間後に腹部大静脈より採血した。1000×gで15分間の遠心分離により血清を分離した。
・測定
Procarta Cytokine Assay(Panomics)によりインターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、MCP−1、インターロイキン12、インターロイキン6、ケモカイン濃度を測定した。
<結果>
結果を図8、図9、図10、図11、図12、図13に示した。コントロール群(非投与群)と試験群を比較し血清中ンターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、MCP−1、インターロイキン12、インターロイキン6、ケモカイン濃度に差は認められなかった。このことからsiRNAとペプチド界面活性剤の混合液を全身投与しても免疫応答反応が惹起されないことが明らかとなった。
<総合考察>
実施例1と実施例2と結果を併せ、ペプチド界面活性剤が、局所投与及び全身投与の両方でsiRNAによる遺伝子発現抑制に有用であると考えられた。
実施例3と実施例4、実施例5の結果を併せ、ペプチド界面活性剤が、局所投与及び全身投与の両方でsiRNAによる腫瘍細胞増殖抑制に有用であると考えられた。
実施例6と実施例7の結果を併せ、ペプチド界面活性剤は肝毒性がなく、免疫反応を惹起しないことから生体に安全な核酸移送担体であると考えられた。

Claims (4)

  1. ペプチド界面活性剤を含む核酸の移送担体。
  2. ペプチド界面活性剤が、4〜10の親水性アミノ酸からなる頭部及び1又は2の疎水性アミノ酸からなる尾部からなる、請求項1に記載の核酸の移送担体。
  3. 核酸の移送担体が、AAAAAAD又はAAAAAAKである、請求項1に記載の核酸の移送担体。
  4. 請求項1−3のいずれか1項に記載の核酸の移送担体及び核酸を含む、局所投与又は全身投与用医薬品。
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