JP2014138573A - イネ栽培における倒伏軽減及び収量を増加させる方法 - Google Patents

イネ栽培における倒伏軽減及び収量を増加させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 収量を増やし利益を増加したい米生産者が、収量を増加させようとする場合、直裁的かつ効果的な行為は施肥量を増やすことである。しかし従来農法において施肥量を許容以上に増やした場合、イネは成長過多となり、倒伏しやすくなる。倒伏したイネは、収穫の際、多くの労力を必要とするばかりか収量も低下せざるを得ない。この様に米生産者は、倒伏防止のために成長を抑制したい一方で、収量を増大させたいとするジレンマを常に抱えている。
【解決手段】 イネの栽培において、圃場水として圃場に与える水を電気分解した後、分離器によって分離する事で、陽イオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陰イオンを含んだ水の全部、または主要な一部とし、稲作での田植え直後、及び、それ以降、圃場で給水が必要となる際、上記の処理を施した水を圃場水として与える事を特徴とする方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明はイネ栽培における倒伏軽減及び収量を増加させる方法に関する
農業を営む生産者にとって、単位面積あたりの収量を増大させることは、限られた土地資源の有効利用につながると同時に、生産高・利益をもたらす点で常に課題となってきた。これはイネも同様であるが、イネの場合、栽培するにあたり、「倒伏」とういう問題が常についてまわる。
倒伏とは、イネ栽培の場合、茎(以下、「稈」という)が地ぎわで折れ、倒れ伏す現象である。イネが発育して草丈が増加し、その上方に穂が形成されるようになると、稈の頂端部にかかる荷重が次第に大きなものとなる。これに外的要因として風や雨が加わると、穂重と外力とに抗し切れず、倒伏するイネが見受けられる。
倒伏によってイネの稈の破生通気口や組織が損傷すると、養水分の移行が妨げられ、米の成熟は抑えられる。また地面に接する穂の部分は土壌に汚染されたり病虫害におかされたり、場合によっては籾が発芽を開始したりする。最近では、強い台風などが繰り返し発生し易いなど、近年の温暖化の影響を踏まえた環境下での倒伏防止の観点から、倒伏を軽減する栽培方法を確立することは喫緊の課題となっている。生産者はこのようなリスクを抱えながら、倒伏を防止しつつ、且つ収量を増加させる方法を常に求めている。
こうした課題に対し、従来栽培でイネの倒伏を抑制しようとする場合、生長の抑制をすることが一般的、かつ、有効とされている。生産者にとって、イネの生長を抑えようとする際に最も有効かつ利用しやすい方法は、株に与えられる単位あたりの施肥量を減らすことである。その一方で、生産者には、収量を増やし、売上・利益を増加したいという強い思惑が常に働いている。この生産者が収量を増加させようとする場合にもっとも直裁的かつ効果的な行為は株に与えられる単位あたりの施肥量を増やすことである。ところが、上述したように従来栽培において株に与えられる単位あたりの施肥量を増やすと、結果としてイネの草丈も生長させることから、自然に倒伏しやすいこととなる。このように生産者は、生長を抑制したい一方で、収量を増大させたいとするジレンマを常に抱えているのである。
成長を抑制する以外の方法で倒伏を防止する方法として、粒状肥料を用いる方法が生産者に知られている。しかしながら、同方法は、施肥をする量をピンポイントで管理することを可能とする技術であり、施肥を効率的にするに留まり、かつ、全体的な施肥量が増加すれば、草丈が伸び倒伏しやすくなる傾向にあるコシヒカリなどに使うことが困難であることから、コシヒカリ系のイネを使う場合には抜本的な解決策にならない。ちなみに、我が国における品種別収穫量はコシヒカリ系列が7割以上を占めているから、その意味でも我が国の大多数の農家にとって抜本的な解決策たり得ない。
他にも倒伏を軽減させる方法はいくつか存在する。それらの方法は、いずれも稈を短くすることで倒伏を軽減させることにその本質がある。具体的には、倒伏軽減剤を使用する、品種改良によるイネを栽培する、強電解水を交互散布するなどがこれに該当する。しかし、これらの方法では、稈を短くすることによって倒伏は軽減できるものの、新たな問題を招いてしまう。すなわち、収量が低下するのである。
というのも、稈は短くなると穂も短くなり、穂が短くなるとそれに伴い籾数も必然的に減少するのである。こうして収量が減少してしまう。このことは、「稈長+穂長の大きさ別の穂に着生した米の食味および理化学的特性」(松江ら1999)の研究からも明らかとなっている。
なお、強電解水を予め生成したものを作物に散布する手法として、強電解水農法が知られる(以下、「強電解水農法」という。)。上述したとおり、同農法においてもまた、稈を短くする事で倒伏が軽減されるとしている。しかしながら、そもそも、強電解水の散布の基本目的は、強酸性水による殺菌を行う点にある。作物を殺菌する為に極度の酸性水を散布する事で雑菌による悪影響を排除して生長が促進され、結果的に倒伏防止にも効果があるというものである。しかも、強酸性水を散布したまま放置しておくと作物が酸化してしまい酸焼けを起こすなどの危険性があるため、これを防止する為に強還元水で中和させるという交互散布により実施することが不可欠となっている。このように強電解水農法は非常に煩瑣である。また、強電解水農法によれば、強還元水散布の効果として、作物の強酸化を中和させる目的の他に作物の発根促進、収量向上などの育成効果があるとされるが、イネの倒伏を抑制したり、倒伏を抑制した事により、収量を増加させたりする為の具体的な生長に関する説明や根拠はなんら明記されておらず、不明のままである。
以上のことから、生長を一定の範囲に抑制し、かつ、収量を増加させるという従来方法及び倒伏を軽減させるという改善策とされる手法からすると一見矛盾をはらむ方法の開発が課題となっている。
特許公開2004−24255 特許公開2004−50962 特許公開第3695454 特許開示平7−147819 特許開示平3−196079 特許開示平2−154624
特許開示平1−258605 特許開示昭63−141904 特許開示昭50−87862 特許公開2000−14257 特許公開2000−262147 特許公開2000−23565
河野弘著 強電解水農法 農文協 1996
発明が解決しようとする課題
本発明が解決しようとする課題は、イネの倒伏を軽減させつつ、収量の増加を達成することである。そこで、まず倒伏とは何かについて具体的に明らかにする。そもそも倒伏とは作物が生育中に倒れることをいう。
イネの場合、そのプロポーションバランスが倒伏と大きく関係しているとされる。ここで、イネのプロポーションバランスとは、主に▲1▼穂の重量、▲2▼イネの草丈または稈長、▲3▼稈の地ぎわの強度の3つの要素からなり、各要素にマイナス的要素を含むと、3つの要素によるもたらされるバランスが崩れ、倒伏の原因になるとされる。
イネのプロポーションバランスに於けるマイナス的要素とは、穂が重すぎる事、草丈が長過ぎる事、地ぎわの稈が柔らかいことをいい、何れかの要素が著しく助長された場合、イネはプロポーションバランスを失って倒伏する。例えば、イネ栽培において窒素肥料を通常より多く入れると、その効果として穂が多く付くものの、その分穂の先端が重くなり、また肥料の効果により地ぎわの稈長も通常よりも伸びることから、プロポーションバランスが崩れ、倒伏し易くなる。
さらに、実際にイネが倒伏するか否かは、生育中の雨や風などの外的障害によっても大きく左右される。例えば、通常の自然環境であれば倒伏しないプロポーションバランスのイネであったとしても、想定外の外的障害が加わった場合、倒伏することがある。このことは、近年増加しているとされるゲリラ豪雨、台風や長雨等の異常気象によりイネの倒伏による被害について報道などされている点に現れている。
いったん倒伏すると、コンバインなどの機械を利用した収穫が困難となるばかりか、収穫自体も困難となって必然的に収量の低下といった悪影響が出るばかりか、仮に収穫し得たとしても、倒伏時に稈からの栄養供給が不可能となって品質が劣化し、食味が低下することも否めない。こうしていったんイネが倒伏すると、収穫に際し、倒伏しなかった場合と比較して多くの労力・費用を要することになることから、イネの倒伏をできる限り軽減する方法の開発は稲作農家にとって喫緊の課題である。
前述したとおり、倒伏防止のために用いられていた従来方法としては、被覆素材で被覆した粒状肥料または液状肥料を圃場全体に均一に施用する方法がある。しかし、当該方法を採用した場合、肥料取り扱いガイドの施肥量の指示はあるものの、その施肥量や対象となる圃場の栽培履歴、(例えば休耕田、耕作放棄田、輪作田、転作田など)による地力のばらつきが大きいことから、上述の各要素の組み合わせ如何によっては、指示された施肥量にも拘わらずイネが栄養過多になる、草丈が伸びすぎる、穂が付き過ぎてその重量に稈が耐えられなくなるなどにより倒伏する割合が増加するなど、施肥を実施する際に生産者の経験則による調整が不可欠である。特に、休耕田において粒状肥料または液状肥料を利用しようとする場合、休耕田は、田植えの段階において当該圃場の地力が回復または増加している傾向にあることから、仮に施肥を抑えたとしても、指示とおりの施肥量を施した場合、施肥量による栄養投入が過大となり、イネが倒伏する傾向にある。このように、粒状または液状の肥料の使用は、課題解決を現実的に容易にする手段とは言い難い。
倒伏軽減剤については、「水稲倒伏軽減剤使用上の注意」(多田 1987)によれば、倒伏軽減剤の効果は、稈長が短縮し、倒伏が軽減される。しかしながら、倒伏軽減剤の使用の結果、穂長もまた短くなり、一穂籾数は減少するとされるから、その結果、収穫能率が低下すると説明がされている。また土壌吸着が大きい火山灰土などでは、薬剤の効果は期待できないなどの問題点も含んでいるほか、さらには、例え倒伏しない場合でも、本当に倒伏軽減剤の処理によって倒伏しなかったのか本当のところはわからないと結論づけている。こうして、同軽減剤に仮に倒伏軽減の効果があるにせよ、穂が短くなり、収量が減少する時点で、前述した生産者のジレンマを解消するものではないと言える。
品種改良によって開発された短稈種も同様の問題を有している。無論、その形状から倒伏は抑えられるが、品種改良による短稈種には、食味やさらに市場に関しての解決もなされていない。例えば、タイ米などは代表的な短稈種でアミロースが多く含まれているインディカ米の一種であり、稈の長さとアミロース含有量の高低の相関関係は認められている。そのほか、追肥や穂肥など、栽培中期で窒素肥料を多投すると食味が低下する事が知られているが、これも窒素肥料が非構造性炭水化物に変化したのち玄米中で飽和状態になり、稈に転流できないという同様のメカニズムが原因であるとされる。倒伏し難いとされる短稈米は、これまで主に家畜用の飼料米として栽培されており、その栽培目的の関係で、もともと食味の問題は解決されていない。
一定の稈の長さが好食味を維持する為には必要である事は、前述した「稈長+穂長の大きさ別の穂に着生した米の食味および理化学的特性」(松江ら1999)の研究からも明らかであり、品種改良によって単純に稈を短くしたイネを開発しただけでは日本人の好む柔らかく粘りのあるという食味が損なわれる事は言うまでもない。こうして、品種改良による短稈種によっても、生産者の現実的な課題を解決できない。
各都道府県の農業専門機関において様々な品種改良種が開発されており、その結果、現在開発されたその数は数千ともいわれている。しかし現状は、ある特定の品種に焦点を当てるにもその種類の多さから絞り込みが困難である上、各都道府県での奨励品種決定試験も必要であり、結果、選定もままならない状態である。つまり、品種改良の為の掛け合わせが行われただけでは、市場には出回らず、生産者の課題の解決に直接につながらない。
一般消費者にはコシヒカリが一番美味であるという観念が根強く、また価格もそれに沿って設定されている。当然、中間業者や種苗業者は一般消費者の需要に沿って準備を行う為、市場に出回る種や苗は限られたものになる。市場のニーズを無視して少量多種ロットを取り揃える事自体、合理的ではない。更に国の買取制度である供出米はコシヒカリと各都道府県の指定する品種のみを買い上げの対象としたり、国の制度としてはその指定品種を生産した事による補填金制度も存在する。この様に生産者はいわばコシヒカリを作らざるを得ない市場環境に置かれており、品種選択という観点から倒伏を軽減させる方法として利用可能なものは存在せず、倒伏を軽減できない状態にある。
さらに、強還元水の散布による場合、そもそも当該方法自体、イネの発根促進、収量向上などの育成効果について不明な点が多く存在するばかりでなく、強電解水農法を実施するにあたっては厳守しなければならない制約が以下のとおり多く、こうした制約により、当該方法が一般化するのは困難を伴う。
まず、強電解水農法では、事前準備の点と、作業工程の点で問題があり、ために実用性の点で疑問が残る。
まず、同農法は、様々な種類の作物に効果があるとされているものの、同農法によれば、作物に強酸性水を散布する際は、事前に小規模でテストしてから散布する必要があるとされる。この理由は、作物種別に必要とされる散布量が様々であり、しかも、強酸性水に対する作物の耐性の程度が不明であることから、耐性の程度を判断する為、酸焼けを防ぐために予め診断を行わなければならない。同農法ではこうした事前の準備作業が不可欠である。
しかも、同農法によれば、植え付け直後は強酸性水を散布してはいけないとされる。この理由について、同農法によれば、植え付け直後は苗が土壌に活着していない為、pH2.7の強酸性水を与えると葉や苗が酸焼けを起こすからとされる。更に強酸化水の連続散布も禁止事項としてあげられている。つまり、連続散布は作物の葉などを酸化させてしまうため、強還元水との交互散布が原則となり、この点でも散布するだけで煩瑣である。更に、強電解水の散布のタイミングについても、原則として晴天の時に行わなくてはならないという制約が存する。これは、雨天、曇天、夕方、夜間に散布した場合、強酸化水が葉上で蒸発しにくくなり、葉にいつまでも付着していることで葉に酸焼けを起こすばかりでなく、強酸性水が葉から吸収され根にまで達した場合根の生育停止など、根にも大きな障害を起こしてしまうことが指摘されている。
次の同農法の作業工程の問題は以下のとおりである。同農法における水の生成工程は、作付け場所とは別の場所で強酸性水、強アルカリ水を生成し、作付け現場へ運搬したのち、目的の圃場に散布する方法を取るのが通常である。仮に、圃場の現場で散布作業を使用とする場合、給水ホースを圃場に引き込む必要があり、その際にホースでイネを傷つけたり、倒したりする危険性がある。さらに、同農法では出穂までに8回程度の散布が必要であり、1反あたりの1回の散布で最低100リットルが必要となることから、強酸性水、強アルカリ水の交互散布をもって1工程と仮定すると、1反当たり1,600リットルの強電解水を圃場水とは別に必要とすることになる。したがって、平均農家規模(10反程度)で考えた場合、圃場水に加えて16,000リットルの水が圃場水とは別途に必要となる。作業時間としては、圃場への散布自体は10分〜20分程度で終了するとされが、まず強電解水を生成する準備などの所要時間を勘案すると、最短でも1反あたり1時間近くの準備が必要となり、とうてい実用に耐えない。
こうした強酸化水が与える影響は作物だけに止まらず、使用する機器や、作業とは直接関係のない周囲にも影響を及ぼす。たとえば、強酸化水を扱う機器の洗浄とメンテナンスを必ず行う必要があるとされるが、これは強酸化水の酸化力が非常に強力であるため、散布機材や運搬機材などの周辺機材の洗浄は重要となるのである。すなわち、強酸化水を散布した後は、使用した周辺器具や機械に強還元水を通して中和するか、水道水でよく洗浄しなければならない。また、強酸性水の運搬に際してはトラックの荷台などが酸化する可能性があるなど、使用にあたり酸化防止のための手段が必要である。更に作業に直接関係する事に留まらず、それ以外、例えば、散布場所が道路沿いであるとか、作物を害獣から守る為の駆除対策として電柵等が設置された場所では更なる問題を引き起こすため、配慮が必要となる。すなわち、散布場所が道路沿いの場合、ガードレールや標識などの公共物が強酸性水の散布により酸化し、また電柵や電柵を支える柱などが酸化した場合、通電障害を起こすほか、柵自体が急激に劣化してその役割を果たさなくなる可能性がある。
加えて強酸性水の生成、保存の際にも注意が必要である。その中でも特に塩素発生に対する注意が必要である。強電解水生成にあたっては、塩化ナトリウムなどを用いることから、生成中は陽極側に塩素ガスが常温で発生・気化し、その濃度によっては目、鼻、喉に強い刺激を与え頭痛を招く。塩素ガスは、更に濃度が増した状態の中で30分〜60分吸引すると生命に危害を及ぼすか、最悪の場合、生命が危険にもなるため、設置場所には排気設備が必要である。生成後についても、強酸性水を貯蔵するにあたり、生成水が太陽光線に直接当たって中和が進まない様に遮光の工夫が必要となる。
そのほか、強還元水の使用にあたっては、酸性農薬を混入させてはいけないなどの制約もある。例えば強還元水の残留したホースなどを使用して酸性農薬を散布すると薬害が発生してしまう危険性が指摘される。また強電解水は、浸透性の強い水になっていることから、農薬を通常倍率で添加すると薬害が発生しかねないため、農薬については、その濃度の希釈が不可欠となる。
この様に強電解水の使用に際し、生成、保存、輸送に伴う機材の酸化やその環境での塩素ガス発生についての配慮が不可欠であり、また散布の際してはその方法、タイミングなどを考慮しなければならず、散布後の使用機器の洗浄や併用して使用する農薬との兼ね合いについてなど強酸化水が及ぼす影響について相当な考慮が必要となる。
こうして、強電解水の交互散布方式を採用する場合、イネの作付け現場に於いて必要となる配慮が多いことから、育成効果があるとしても、結果としてコストにも反映するため、これが普及を妨げる理由となっている。最後に強電解水農法の効果としてイネの稈を短くして倒伏を軽減させる点が挙げられているが、本発明者の実験によれば、稈を短くする要因は、電解水を与える点ではなく、寧ろ中干しなどによる断水による効果であることが明らかになっており、このように効果の点でも疑問が存する。
この様に倒伏を抑制する効果や収量が増加するという手法は存在するものの、施肥方法が難しかったり、作業がより煩雑化してしまったり、従来の市場環境に適応していないという問題があり、課題の解決にはつながっていない。
課題を解決するための手段
本発明者は上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。本発明は、課題の解決を圃場水の水質改変を通じた生育への影響を与える事により実現するものであり、作付けの現場で圃場水を電気分解し、陰極側周辺に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場にできる限り入れること無く、陽極側周辺に生成した負電荷を有するイオンを含んだ水を所定の方法で栽培に使用する事で諸問題を解決する。
具体的には、1.水田の圃場水を電気的にイオン化させ栽培に使用する、2.正と負の電極を持った本装置の電極間に水を通過させ圃場水として使用する、3.大小2つの筒型電極の間に水を通過させイオン化させたものを、分離器を利用して効率的に酸性水及びアルカリ水を流水の力によって自然に、またはポンプモーターなどの動力手段を分離器の後部に取り付け強制的に水流を分離し、圃場で栽培水として使用する((図1)(図2))を参照)。
ちなみに本発明に使用する電解水生成機と従来の強電解水生成機では、大きく3つ相違点がある。
一つ目は、上述したとおり、従来機を採用した場合に起こる水資源の無駄使いである。従来の強電解方法では、圃場とは別の場所で平均1農家あたり1シーズンにつき、16トン程度の水を確保する必要がある。一方、本栽培法で採用した生成機の場合、圃場水として与える水は圃場水そのものである。圃場水とは別に改めて電解水を生成するのではなく、給水のついでに電極を水路に置き、イオン化させ、圃場に流し込むため、水資源を別途確保する必要がなく、元々の圃場水を無駄なく使用している。
つぎに、本発明に採用する電解水生成機は、水の電気分解の際、添加物を加えることなく、無隔膜の筒型電極で分離器によって陽イオンを含んだ水と陰イオンを含んだ水に分離を行う点で、従来の電解水生成機とは特徴が異なる。従来利用されている強電解水生成機では、極めて狭い電極板の間に隔膜を設けること、また添加物を加えることで、水を分離する仕組みになっている。この仕組みは家庭用の水道水など、もともと不純物の含まれていない水を対象に電気分解することを考えられた仕様である。このため、圃場水のように不純物や濁りなどのある自然水を使う環境において電気分解、分離を行うことを、全く想定していない。ちなみに圃場水の場合、その供給源は、自然の池や川の水であり、葉、泥、小石、砂などの不純物が含まれていることから、従来機での使用は不可能である。というのも、強電解水生成機における隔膜とは、いわばフィルターであり、仮にこのような圃場水の環境において使用したとすれば、上述の不純物などでたちまちフィルターが目詰まりをおこし、期待していた性能を発揮できなくなってしまう。
3つ目は電気分解処理能力である。上述したとおり、従来機は、家庭用の水道水を原水として利用することを前提としているため、圃場水のような大量の水量を処理することは事実上不可能である。例えば、雨の降った翌日など、時には用水路に流れる圃場水は、遊泳プールに給水する程度の水量、流速になることがある。これを適時電気分解処理する必要があるが、仮に従来機に何らかの方法で圃場水を汲み入れたとしてもこのような相当量を処理することは到底できない。この様に、不純物を含んだ大量の水量を処理するためには、そのような環境下でも十分な電解水を確保するために電極間の距離(ギャップ)をとること、その距離も不純物が葉、石といったものであることを踏まえて、そうした不純物が電極間に詰まって効果を阻害しないようにするには不純物のサイズを考慮し、10ミリ以上必要となってくる。しかも、このようにギャップが大きくならざるを得ないことにより、従来機と同程度の電流を流すためには、より高い電圧が必要となる。
このように、水環境、水質、水量や流速に対応するためには、本生成機の電極は、隔膜を有するとかえって効果を阻害するし、また電極間の距離(ギャップ)も数ミリでは効果が阻害される。隔膜の目詰まりを回避するために隔膜の使用をせずに電解水を生成した場合、生成した直後から、陽イオンを多く含んだ水と陰イオンを多く含んだ水とが混和してしまうことになる。これでは、狙ったイオンを含む水を十分に供給できないことから、効率的に水を分離する必要がある。発明者はこの課題にも取り組み、試行錯誤を経て、専用の分離器を開発した。こうして、大量の水量を処理するための電極間のギャップ、隔膜を設けることができない、という課題を克服した電解水の生成、分離が可能となったものである。
このことから、本件発明で採用される電解水生成機については、処理能力を確保するために一定の電極間の距離を設けることや隔膜の代わりに分離器を利用すること、その他の後述する仕様も、圃場水に使用する上では、効率的且つ適切となるよう編み出されたものであり、電流と電圧についても、まさに、そうした環境を前提として適切な設定を見いだしたものである。
本機で用いられるべき筒型電極の概要は以下のとおりである。まず大小2つの直径の筒型の電極があり、ここでは便宜的に大きい方の電極を陽極、小さい方の電極を陰極と呼称する。陽極の内側に陰極を差し込むことで陽極と陰極の間に空間を確保することができ、当該空間に水を通過させた際に電極に通電して電気分解を行う。用水路の流水で電極が水没している状態で、直流電源により電気を加えることで、陽極の円筒内側の側面付近は陰イオンを含んだ水が多くなり、陰極の円筒型電極の外側側面付近には陽イオンを含んだ水が多くなる。そして2つの電極間を通過した水は電気分解された後に陽極と陰極の隙間の空間から外に流れ出る。この際、物理的に水を分離する分離器が必要となる。
分離器の口径は円筒型陽極の内側直径よりも小さく、円筒型陰極の外径よりも大きいものとし、分離器の形状は、両極の間で水を二分する漏斗のようなかたちとすることから、陽極付近の陰イオンを含んだ水はそのまま圃場へと導かれ、陰極付近の陽イオンを含んだ水は分離器の内部の漏斗形状の部位に沿って流れて分離され、圃場へ入れられることなく用水路の下流へと流される。
この際、陽極側に生成された陰イオンを含む水は自然の流れによって導出することも可能であるが、陰極側の陽イオンを含む水は分離器により分離後、ホースなどで下流へ導く必要があり、ために、自然の流速に依拠した場合、ホースを経由して元々の水位よりも高い位置まで上昇させることは容易ではない。こうした場合、陽イオンを含んだ水を意図した方向へ導出するべく、分離器の直後にモーターなどにより作り出された負圧により強制的に導出することが望ましい。一定の水位まで水を持ち上げる力を揚程高と表現する場合、当該揚程高が大きくなれば、持ち上げる事のできる高さも大きくなるが、本機使用の際の動力の揚程高は1メートル以上あることが好ましい。
具体的な本筒型電極の仕様は、電解筒の陽極の内径を57.2ミリメートル、陰極の外径を34ミリメートル、陽極と陰極のギャップを11.2ミリメートル、有効電極長を375ミリメートル、陽極の有効面積を67,353ミリメートル平米、陰極の有効面積を40,035ミリメートル平米とした。上述したようにゴミや不純物を避けるためには、10ミリ程度のギャップが電極間には必要であり、且つ、上記の仕様の電極で2アンペアーの電流を確保しようとすると、およそ60ボルト程度の電圧が必要となることから、当該電圧を確保するために、電極の面積が上記仕様程度必要となった。電流の設定については、1.2〜1.5アンペアーのものと2アンペアー以上の電流を与えてイネの栽培実験を行ったところ、前者のアンペアーの範囲では、イネの生長に著しい成果が認められなかった為、以降、イネに与える電流を2アンペアー以上としたものであり、その際、2アンペアーの電流を本件の環境下の同電極で確保するために必要となった電圧が63.5ボルトであったものである。
同電極によって63.5ボルトの電圧と2アンペアーの電流を加えた際の成果物のpH計測を行うと、原水のときに計測されたpH7.8が、分離器による分離時に陽極側ではpH4.8〜5.8(弱酸性)、および、陰極側はpH9.5〜pH10.8(弱アルカリ性)となり、大よそpHにおいて2〜3の差違を作りだすことができた。このうち、分離器を利用することで陰極側に生じた正電荷を有するイオンを含んだ水をできる限り圃場に入れること無く、陽極側に生じた負電荷を有するイオンを含んだ水を圃場水として使用する。
以上の様に、本電極を掌る最低構成要素を考える場合、1.無隔膜である事、2.電極間のギャップが10mm程度あること、3.分離器を利用して最終的に水を分離する事、4.添加物を添加しない事、となる。ここで、電極の形状が筒型であることは、最低要素には含まれないとしたが、強度、効率、経済性などを考慮した結果、この形状が適していると判断して採用した。
板状の電極においても、その電極板の後方に分離器を装着することで、水を分離することは理論上可能である。しかし、電極板に対して長方形の口型をした分離器を用いることには大きく2つの問題が生じる。まず、その固定方法の問題である。長方形の口型をした分離器に電極板を固定するには、ボルトなどで固定する方法が考えられるが、そもそも固定されている接地面積が、筒型電極及び円形分離器とは異なってくる。すなわち、電極が板である故に水圧を面で受けるので、その結果、圧力が電極板と分離器の接点に局所的に集中することが考えられる。一方で、筒型の電極では、円形の分離器を固定するので、その接地面は多く、また、電極の形状が円形であることが、水圧を周りに拡散させ、且つ、流れを分離器の後方の方向に向ける効果がある((図1)(図2)参照)。こうして電極は、用水路に設置した際、大雨、突然の出水など、大量の水が供給されることもありえ、そうなった場合、水の圧力で電極が押される事もあるから、圧力が局所的に集中しかねない方法では、到底実用に耐えないのである。
2つ目の問題は、水が分離器に入ったあとの水の流れ具合である。ここでは、参考までに漏斗の形状をイメージすると理解しやすい。漏斗とは、円錐形で、細い先を瓶などの口に差し込み、上から液体を流し入れる用具であるが、液体を注いだ際、渦を巻いて中心の穴に向って液体が流れ、円滑に水が排出できる構造になっている。これに対して、長方形の口型をもった分離器に、電極板が挟み込まれている形状では、分離器内で対流が起こる可能性が高く分離した水が分離器の外側に流れ出し、その効力を半減させかねないのである。
もちろん分離器の口径を長方形にしつつも、対流の問題、強度の問題を解決させることは可能ではあると思われるが、分離器の形状が複雑になればなるほど、固定させるための部品点数などが増加して、コストに跳ね返るし、一般的に複雑な構造は強度的には軟弱になる傾向にあるため、できるだけ、簡素で、且つ、合理的な形状を生み出す必要があった。
さらに、通電の時期については、期間を通じて通電し続けるのではなく、圃場の水位が、圃場の底面から目視によって2センチメートルを大きく下回らないよう、また圃場の底面から目視によって5センチメートルを大きく上回らないよう所謂慣行栽培の環境において圃場に水が必要となった際に給水を行い課題の解決をした。
ちなみに使用の時期については、その使用を明確にするために水位を基準として地面から概ね2センチメートル以上5センチメートル以下とした。これを回数や時期に換算すると概ね10日から2週間に1回程度となるが、水田はその栽培構造上、水が抜けにくい状態することにはなっているものの、実際の水位は様々な要因に左右されるため、時期によって使用の頻度を特定するのは適当ではない。例えば、モグラのような生物によって穴があけられ、土壌が歪んでそこから地面へ水が漏れ出す事も多々あるからである。そのほかにも、気温による水の蒸発とイネによる吸収とがあり、このような状況にある圃場に定期的に水を給水する必要がある。もっとも、圃場の水は減少するだけではなく、例えば降水によって増加することもある。こうして、水の減少と増加を上述した条件を踏まえ勘案すると、経験則上、上記の期間に1度給水しており、そのメルクマールとなるのが、水位を概ね2センチメートル以上、概ね5センチメートル以下で維持するというものとなる。
なお、給水の時期について付言すると、本田での栽培では、田植えをした直後にまず圃場へ最初の給水を行い、その後、2週間に1回給水し、以降、出穂期の時期までに4回程度給水を行ったところ、本栽培方法における効果は期待できる結果となっている。ちなみに、このような給水の頻度は、本栽培方法を採用するとしないとに拘わらず、通常の栽培においても生産者が行う頻度である。
発明の効果
発明者が考案した方法によれば、圃場に所定の範囲で電解水を与えることで、稈の地ぎわの強度を増加させ、かつ、草丈を保持、または伸ばすことで、穂長を確保し、一穂あたりの収量を増やすことが可能である。具体的な効果・効能としては、1.出穂期及び登熟期においてイネの第I〜第V節間のうち、第IV節間の強度を相対的に増加させる、2.登熟期において第IV節間を相対的に短くする、3.登熟期において第V節間の発現率を相対的に抑える4.登熟期において第V節間を相対的に短くする、5.出穂期から登熟期にかけて第I、II、III節間が相対的に伸びることで穂長、草丈を確保し、登熟期に一穂あたりの収量が増加する、である。
左側面図 2本の電極の間を通過した水が電気分解されたのち、分離器によって酸性水とアルカリ水に分離した図。 斜視図 筒型電解槽の陽極と陰極及び分離器の構成が確認出来る図。 正面図 イネの部位の名称、倒伏部位が確認できる図。 立面図 水槽を東西に6個、南北に3列並べている事が確認出来る図。 正面図 葉鞘が稈のまわりを取り巻いている事が確認出来る図。 上図 従来栽培用、新栽培用の水槽を交互に並べ付番が確認できる図。 上図 株間、条間、移植位置、施肥位置が確認出来る図。 上図 水の流れと電解水の汲み上げ場所が確認出来る図。 表図 給水後3時間経過した後の従来栽培と新栽培のpHが確認出来る図。 斜視図 滑らかな治具を使用することで、計測時の抵抗を極力抑えている事が確認出来る図。 上図 出穂期における葉鞘付き稈の短経、長径の比較で確認出来る図。 表図 強度順位別平均強度の計算方法が確認出来る図。 表図 出穂期における第IV・III節間の(葉鞘付き稈の)強度順位別平均強度の比較が出来る図。 表図 出穂期における第IV・III節間の(稈のみの)強度順位別平均強度の比較が出来る図。 表図 出穂期における第IV・III節間の(葉鞘の)強度順位別平均強度の比較が出来る図。 表図 出穂期における第V節間発現率の比較が確認出来る図。 表図 登熟期における第IV・III節間の(葉鞘付き稈の)強度順位別平均強度の比較が出来る図。 表図 登熟期における第V節間発現率の比較が確認出来る図。 正面図 登熟期における従来栽培と新栽培でのイネの特徴が比較出来る図 正面図 登熟期における従来栽培と新栽培の第III、IV、V節間の葉鞘付き稈の形状が比較、確認出来る図。 表図 出穂期から登熟期にかけて各栽培間の第IV・III節間の強度推移の推定を確認出来る図。 表図 各栽培での第IV節間の強度の許容範囲が確認出来る図。 表図 登熟期における第IV節間の強度を偏差値によって比較、確認出来る図。 表図 登熟期における株中の第IV節間の強度順位14位までの比較が確認出来る図。 表図 登熟期における従来栽培と新栽培の倒伏程度が確認出来る図。
本発明について説明する。本発明は、1.水田の圃場水を電気的にイオン化させ栽培に使用する、2.正と負の電極を持った装置の電極間に水を通過させ圃場水として使用する、3.大小2つの筒型電極の間に水を通過させイオン化させたものを、分離器を利用して効率的に酸性水及びアルカリ水を流水の力によって自然に、またはポンプモーターなどの動力手段を分離器の後部に取り付け強制的に水流を分離し、圃場で栽培水として使用する。ちなみに無隔膜電極で調整剤添加食塩などの添加物を使用せずに流水の力或いは動力を使用して強制的に分離し、弱電解水を生成する方法は未だ考案されていない。そもそも淡水で生長する植物に対して食塩などを用いて弱電解水を生成したものを圃場水として使用した場合、塩害をもたらす危険性も払拭できないなどの懸念が残る。
水田に電解生成水を使用する時期については、通電し続けるのではなく、圃場の水位が、圃場の底面から目視によって2センチメートルを大きく下回らないよう、また圃場の底面から目視によって5センチメートルを大きく上回らないよう所謂慣行栽培の環境において圃場に水が必要となった際に給水を行う。田植え後30日以上経過した圃場に電解生成水を施したとしても著しい効果が確認できなかったことから、田植え後、より早期に確実に電解生成水を使用する事が有効である。ちなみに供給水をイオン化させるにあたっては、電極に2アンペアー以上の電流を与える事が望ましい。
引用特許発明は、手撒きでは撒き斑が生じる事で局所的に栄養過多になることを防止するべく、ピンポイントで施肥する事で撒き斑をなくし、倒伏を軽減させた結果、作業効率が上がり、また収量が期待されるとするが、当該特許発明は、単位面積でも施肥量については従来通りであり、ただ単に施肥の均一化を図るものであるため、イネが効率的に生長しているかどうか、例えば、節間強度や節間長、稈長の生長については、不明確なままに留まる点で欠点が残る。他方で本栽培方法は、イネの倒伏の軽減を主目的にしているものの、本栽培方法を採用する場合、施肥の方法、量は、倒伏防止と無関係となる。こうして、引用特許発明と本栽培方法は、倒伏軽減方法という点は共通しているが本栽培方法においては圃場の状態が施肥によって栄養過多となった場合でも、倒伏を軽減させる事ができるという点で、全く異なる新規な技術である。
すなわち、▲1▼撒き斑をなくすだけではその圃場の地力との兼ね合いによっては倒伏が生じ、▲2▼複雑な機材の導入により、逆に作業が煩雑化或いは危険を伴う作業が付随し、▲3▼一般に出回っていない種を各生産者がリスクを負って選択、作付するなど現実的ではない。更に、最近では種を購入し育苗を行うという工程を省いて直接苗を購入する農家も増加しており、苗の保存には水が必要な事もあり、近距離の搬送が基本とならざるを得ないため、地元の種苗業者がある特定品種の苗を育成させておく必要がある。また地域によって指定品種ではない場合、育成や病気の対策相談もできないなどのデメリットがある。
結局のところ、生産者がこの様な▲1▼▲2▼▲3▼のリスクを取り、現状を大きく変えるものは、受け入れがたい状況にあると言える。当発明は現状の作業の中で、圃場に給水するという部分があるが、給水自体、イネの栽培には必要不可欠な作業であり、その一般的な給水工程において、当機器を水路に置くという行為が追加的に必要とされる点で生産者の負担が少ない。その機器を通過した水は電気分解により正電荷を有するイオンを含んだ水と、負電荷を有するイオンを含んだ水が生成され、そのうち、負電荷を有するイオンを含んだ水(弱酸性水)が圃場に給水されるという点で極めて容易である。
その結果として、イネにおいて、1.出穂期及び登熟期において第IV節間の強度が増加する、2.登熟期において第IV節間が短くなる、3.登熟期において第V節間の発現率が抑えられる、4.登熟期において第V節間が短くなる、5.出穂期から登熟期にかけて第I、II、III節間が相対的に伸びることで穂長、草丈を確保し、登熟期に一穂あたりの収量が増加するのである。
ちなみに、平成23年9月に台風12号が実験田のある圃場一帯を直撃した。従来栽培の実験田ではイネが倒伏し、収穫するにあたり多くの労力を必要とした。新栽培の実験田では、倒伏もなく、機械で問題なく刈り取りを行うことができた。
イネの場合、通常その背丈は、100センチメートル〜115センチメートルの範囲となるが、上記の台風において背丈が115センチメートルとなったものは殆ど倒伏していた。背丈が115センチメートルを超えるものであれば、生産者の経験則上、台風などの外的障害がなくとも倒伏しやすいことが知られているが、温暖化の影響などにより、従前と比較して強力な台風などが発生し易い環境になっている現在、少なくとも背丈を平均で110センチメートル以下として栽培することは喫緊の課題である。ところが、上述したとおり、収量を増やしたいという生産者の思惑から、肥料の多投を誘発し、その結果倒伏を招いてしまう例が後を絶たない。
その点、新栽培方法を利用すると、上述したような第IV節間の強度が増し、かつ、地ぎわの稈長が短くなることから倒れにくくなるため、肥料を増加させて背丈が伸びたとしても収量増加の手段としても利用することができる。
なお、本発明は、予め直流電気を供給することのできる電源装置、円筒型電極、及び電解水を効率的に分離する分離器を備えた装置を用意することによって実施することもできる。
<条件>
本実験における重要な要因は「水の性質」にあると考えられることから、実験にあたっては、与える水以外の要因である日照、風、雨、土壌、肥料の環境を可能な限り一律として、与える水以外の要因による影響を低減させるよう試みた。具体的な実験方法、計測方法に関しては、日本作物学会紀事の過去の実験事例を踏まえて計画及び実行した。以降、実施例について言及するが、まず前提として、本特許発明が前提としている倒伏とは何かにつき、改めて以下で詳説する。
「解剖図説イネの生長」を著した星川清親は、同書151〜153頁において、稈と倒伏の機構について以下のように述べている。すなわち、「稈の倒伏はたいてい登熟期、つまり稈がすっかり伸びきったのちにおこる。倒伏は地ぎわのあたりで、稈が折れ曲がることであり、稈の上部が折れることは比較的少ない。折れる部分は、節部ではなくて上からVまたはIV番目の節間である。」<中略>「つまり倒伏イネはIV、V節間が長くしかも細いので、曲げの力に抵抗力が弱い構造になっていることがわかる。」<中略>「稈の倒伏抵抗力には、稈だけでなく、それを包む葉鞘の強さも関係している…」
このようにイネの倒伏は、地ぎわに近い部分で稈が折れ曲がる事をいうとされる。以下、稈、葉鞘などの名称を含めイネの構造の解説補助の為にイラストを設けた。((図3)参照)
実験の準備
本実験には、我が国において生産されるイネの7割以上を占め、また倒伏し易い品種に鑑み、コシヒカリを品種として選択した。
実験についての概要は以下のとおりである。まず、実験場にはビニール天幕を張り、雨を遮った(瀬古ら1959)。そうして整備した実験場に、400L容器の樹脂製水槽を用いて栽培した(神田ら2007)。水槽は3試験区設け、1区3反復で合計18個用意した(上地2006 石川2012)。3試験の時期は出穂期に2回、登熟期に1回行った。3種類の試験を行うにあたり試験毎に付番した。出穂期に行った最初の試験を第1試験とし、第1試験に使用する6個の水槽を第1水槽群、2回目に行った試験を第2試験とし、第2試験に使用する6個の水槽を第2水槽群、登熟期に行った3回目の試験を第3試験とし、第3試験に使用する6個の水槽を第3水槽群とした。水槽は試験場で交互に配置し、水槽には下地に川砂利、その上面に土壌を盛り、模倣本田にした(上地2006)。植付け条方向は南北とし、22.2株/m(30センチメートル×15センチメートル)、1株2本の裁植密度で移植した(大川ら1992 楠田 1990)。肥料は基肥として化成肥料(17−17−17)1株あたり2.7gを施肥した(大川ら1992)。肥料の施肥方法は、施肥位置を苗毎に特定し、水位は移植してから登熟期まで灌水状態を保つこととした(津田ら1992 神田ら2007)。
倒伏について、実験水槽における計測にあたっては、倒伏した株の垂直面に対する角度を写真撮影により画像から分度器で測定することとし、傾斜程度で表現することとした(大川ら1992)。より詳細に述べると、直立している株を倒伏程度0,0°から18°を1、18°から36°を2、36°から54°の倒伏を3として、これを中程度の倒伏とし、54°から72°を4、72°から90°の倒伏を5として、これを著しい倒伏とした(大川ら1992)。標本の選択の基準としては、水槽の樹脂枠と直接接していない株を選択し、株ごとに草丈が上位となる5本を計測した(松崎ら1970)。試験時期は出穂期に2回と出穂後35日目(所謂登熟期)に1回とし、主に出穂期には葉鞘付き稈(第1試験)稈のみ(第2試験)を測定し、出穂後35日(登熟期)には葉鞘付き稈(第3試験)の測定をした。なお、採取後は直ちに以下の測定に供試した(大川ら1992)。倒伏と関係が深いと認められる第IV節間(節間は、穂、第I、II、III、IVの順番で数えている。)を支点間距離5センチメートルの支点上に支え、節間の中央部に荷重して、第IV節間が挫折した時の最大荷重をプルプッシュゲージで測定すると同時に、穂長、第I、II、III、IV、V節間長、第III、IV節間の中心横断面を併せて計測、比較した(松崎ら1970 大川ら1992 大川ら1993 林ら1978)。
水槽の準備
日本作物学会紀事の過去の実験事例、実験計画法に基づき実験を計画した。
(1)実験場所
実験場は兵庫県川辺郡猪名川町の山間の200坪程度の休耕田を利用した。
(2)実験用ビニールハウスと実験用水槽
平成24年6月初旬、まずこの休耕田内に東西10m×南北5.5mのエリアを確保し、重機で地盤を踏み固めて平らにし、上記面積を覆う事のできるビニールハウスを用意した。本実験では、雨による影響を排除することを目的としている事から、ビニールを施すのは天面のみとし、側面にビニールは施さなかった。
次に400リットルの樹脂製水槽(横860×縦1295×高457:単位はmm)で、3種類の実験を3反複で行う為、当該水槽を合計18個用意し、水槽の長辺側を東西方向として平行して6個を1セットとし、そのセットを南北方向に3列配置した(図4)。ちなみに、それぞれの試験では、強度の計測のほか、節間長や断面経の計測を行ったが、試験ごとに計測項目は異なるが、その主たる目的は、倒伏を左右するという第IV節間の強度計測にある。出穂期の第1試験では、第IV節間の葉鞘付き稈の強度を計測した。さらに出穂期における第2試験では、第IV節間の稈のみの強度を葉鞘付きの稈から葉鞘を剥がしたのちに計測を行った。登熟期における第3試験では、第IV節間の葉鞘付きの稈の計測を行った。葉鞘付き稈と稈のみの違いについては、(図5)を参照。
水槽の配置の方向については実験計画法のひとつで日照による影響の均等化を考慮する観点から苗を移植する際、株間がちょうど東西、条間が南北に向く為の準備として行った((図7)参照)。水槽を所定の位置、方向に配置したところで、川砂利を18個の水槽それぞれに深さ5センチメートルまで敷き詰め、その上面に土壌を敷きつめた。その際、18個の水槽中の実験土壌の成分が均一になるように以下の点を留意した。
まず、実験休耕圃場内の水槽を配置した実験場以外の土壌をトラクターで耕起作業を行い大まかにした撹拌した後、耕起された土200キログラム程度を1単位として土壌から作業用のバケットに取り出し、その中から植物体残渣やゴミを取り除き、また土の塊などがあった場合は手で粉砕し、更に篩にかけ粉々にしたあと、最後に10キログラムずつの小分けにして18個の水槽にそれぞれ分配を行った。当該作業を各水槽の土壌の深さが、水槽中に敷き詰めた川砂利の上面から20センチメートルに達するまで繰り返し行った。
水槽の土壌が砂利上20センチメートルに達したところで、それぞれの水槽の土壌を更に満遍なく撹拌し、18個の均一な土壌環境を確立させた。
給水と移植の準備
18個の水槽内に均一な土壌環境を整えたところで、各水槽の底面から上方に向かって25センチメートルのところまで給水を行い、土壌をなじませた。給水の際には新栽培用の水、従来栽培用の水を区別して水槽に給水する必要があり、更に各水槽の日照及び風の影響による統計誤差を発生させない為、新栽培に使用する水槽と従来栽培に使用する水槽を交互に配置し、各々の水を給水した。水槽には予め付番し、実験場の一番東南に設置した水槽を1としそこから西に向かって1から6、中央の列は7から12、北側の列を13から18とし、具体的には新栽培用の水を水槽番号1、3、5、8、10、12、13、15、17に給水し、従来栽培用の水を水槽番号2、4、6、7、9、11、14、16、18に給水することで、水の管理を行った((図6)参照)。給水方法は、本田で使用可能な用水路に流れる水を、水中ポンプによって汲み上げ、水槽へ給水を行うこととしたが、新栽培用の場合、電気分解された水を電極の直後から汲み上げ水槽へ給水を行った((図8)参照)。
施肥、苗の移植と給水のタイミング
給水の翌日である平成24年6月16日に施肥と苗の移植を行った。まず、苗の移植位置を確定し、さらに確定した移植位置から3センチメートル西側となる場所に南北方向に深さが3センチメートルとなる溝を作り、その溝に沿って1株あたり2.7gの元肥(元肥は化成肥料エムコート777を使用)を施した後、土を覆い被せて元肥を埋設した。この作業を一つの水槽あたり4列設ける方法で行い18個の水槽全てに同様の準備を行った(図7参照)。
次に、苗の移植では、計測及び特定した移植位置に苗を2本ずつ摘み移植した。苗の移植が終了後、水中ポンプを用いて汲み上げ給水の要領で土壌面から5センチメートルの高さまで給水を行った。それ以降については、土壌面からの水深が2センチメートルを下回らない様に留意して給水を施し、水深を土壌面から2センチメートルから5センチメートルの間に維持した。また、本実験では途中、中干しは行わず、イネが登熟に至る刈り取り時の9月15日までこの状況を保持した。ちなみに中干しとは、栽培技術の一つであり、栽培中に一旦圃場の水を抜く行為をいう。中干しの効果は、主に根を丈夫にすることなどが挙げられる。今回の実験において中干しを行わなかった理由は、中干しを行うことによりイネの根に酸素が供給され、その影響でイネの発育が促進されるのを防止する必要があったからである。すなわち、中干しを実施しないことにより、中干しの影響でイネが生長したのか、または、水質の違いによってイネが生長したか、より客観的な判断が可能となる。
ちなみに給水を実施した具体的な日時は、初回の6月16日以降、6月29日、7月13日、7月23日、7月29日、8月4日、8月10日、8月18日、8月28日、9月10日の合計10回となった。
給水後の水質の変化
(図9)は従来栽培と新栽培おいて、それぞれの水質を給水後3時間が経過した際に、従来栽培として水槽番号4、新栽培として水槽番号5を用いて計測したものである。8月4日の、10日、18日で計測を行った結果、従来栽培のpHはpH7.94、pH7.85、pH7.98と弱アルカリ性であるのに対して、新栽培のpHは、pH5.62、pH5.89、pH5.74と弱酸性であった。ちなみにpHの値がpH7.8である原水を電気分解した際に、陽極側に発生した成果物を空の容器に入れ、生成直後に計測した際のpHの値は、pH4.8〜5.8であった。
実験にあたって重要なフィッシャーの3原則
誤差を管理して、実験を精度よく評価するためには、実験にあたって反復、無作為化、局所管理を3つの原則に従って計画する事が望まれる。まず本実験においては、新栽培用の水槽と従来栽培用の水槽を交互に置く事で、日照及び風の影響による統計誤差を発生させないよう、要因以外のすべての要因を可能な限り一定にするという趣旨で配置における局所管理を行った。
次に1つの実験を行うにあたり、反復(複数回実験)の原則に沿って同一の計測を3回行った。具体的には、まず1つの水槽に20本の苗を植えた際、株間30センチメートル、条間15センチメートルという条件を確保することができ、かつ、水槽の樹脂側面と直接接していない中央の6株を試験の対象とした。樹脂側面と接している株を標本として採用しなかった理由は、その環境が模倣本田としては適合していないからである。本田を再現するには、標本の前後左右に株間と条間が確保されていることが日照条件意外にも根の発育環境の観点からも求められる。
水槽単位での標本の抽出方法であるが、対象とした6株から、一株毎にイネの草丈の高い順に5本を選択し、計測を行った。試験としては第1試験から第3試験まで行い、それぞれ、第1試験では、葉鞘付きの稈の計測を行い、第2試験では稈のみの計測を行い、第3試験では、第1試験同様、葉鞘付き稈の計測を行った。それぞれの水槽では、同一手順により計測することで推定の精度を高めた。今回の試験では、各試験に使用する水槽の選択の際、恣意的に選択したということをないようにするべく、無作為に抽出した。すなわち、紙袋を2つ用意し、ひとつ目の紙袋には1、3、5、8、10、12、13、15、17の数字がそれぞれ書かれた9枚の紙を入れ、もうひとつの紙袋には2、4、6、7、9、11、14、16、18の紙を同様に紙袋に入れた状態で、無作為にそれぞれの紙袋から番号の書いた紙を取り出す事で計測する水槽を確定した。その結果、第1試験として、出穂期の葉鞘付きの稈の強度、穂長、節間長、第IV節間の断面径、第V節間の発現の有無の計測には、新栽培は水槽番号1、8、13、従来栽培は水槽番号2、7、14を使用し、これらを第1水槽群とした。第2試験として、稈のみの強度の計測には新栽培は水槽番号3、15、17、従来栽培には水槽番号9、16、18を使用し、これらを第2水槽群とした。第3試験は、登熟期の葉鞘付きの稈の強度、穂長、節間長、第IV、第III節間の断面径、第V節間の発現の有無、そして第V節間が発現していた場合にはその節間長の計測を行うが、新栽培には必然的に残った水槽番号4、6、11、従来栽培には水槽番号5、10、12を使用し、これらを第3水槽群とした。最後に計測に際し、水槽内での株の切り取りは対象株の中で一番東南の株(株番号7)から園芸用のハサミを使用して地ぎわから1株ずつ切断し、イネの草丈の高い方から順に5本を選択したのち、草丈の高い方から順に1本単位で、断面径の計測、強度計測、穂長の計測、節間長の計測、草丈の計測の順番で行った(具体的な計測の手順)。以後、株番号8、9、12、13、14の順番で切断し、採取後は乾燥などによる影響を避けるべく直ちに計測を行った((図7)参照)。
検証する内容は、水質の変化により、第IV節間、第V節間の葉鞘付きの稈の強度及び長さの違いに有意な変化が生じるか否かである。従来から、登熟期の第IV、V節間の葉鞘付きの稈の強度及び長さがイネの倒伏を左右するとされていることに鑑み、今回の出穂期と登熟期の実験では、第IV節間に対しては強度計測、節間長及び節間中間の断面の短・長径の計測を実施した。なお、第V節間は登熟期に至っても発現していない場合があり、また発現しても節間が極端に短いものもあるため、出穂期においては、まず第V節間の発現の有無を記録した。他方で、登熟期における第V節間の計測は、発現の有無、更に仮に発現している場合は、節間長の計測を行った。
次に、イネの対倒伏性を証明するには、イネの地ぎわの挫折強度を計測することが求められるが、第V節間は発現しない場合もあるため、実質的には第IV節間の計測が最も重要であり、出穂期、登熟期の両期に第IV節間の強度及びそれらの詳細の計測を行う事が必須である。そこで出穂期における計測内容としては、第1試験で第IV節間の葉鞘付きの稈の強度を計測するほか、第2試験では稈(稈とは葉鞘付きの稈から葉鞘付きの稈を巻く葉(葉鞘)を取り除いたもので中心がストローの様に空間になっている。)の強度計測も実施した。また、葉鞘の直接的な強度を算出する事は困難である((図5)参照)ことから第1試験での葉鞘付きの稈の強度から第2試験の稈のみの強度を算出してこれを控除する事で、葉鞘の強度の数値とした。そのほか、第IV節間よりも上方の節間に関しては全て発現しており計測が可能であった事から第III節間の強度計測や節間長測定などは行った。実際に計測を行った内容は下記の((表1)(表2))の通りである。
<結果>
出穂期編
出穂期における従来栽培と新栽培間の相違を検証するべく主に第IV節間(1.葉鞘付きの稈、2.稈のみ、3.葉鞘)の単純強度、4.葉鞘付きの稈の短・長径、更に(5.葉鞘付きの稈、6.稈のみ、7.葉鞘)の強度順位別平均強度、8.第V節間(の発現率)、9.各部位の単純平均長について計測及び比較を実施した((表2)参照)。ちなみに強度計測はアイコーエンジニアリング製のデジタルプルプッシュゲージRX−10と専用架台MODEL−1349を使用した。また、強度の計測の際、稈を置く支点に極力抵抗が発生しないよう滑らかな治具を用いて計測した((図10)参照)。葉鞘付きの稈の短・長径の計測には、シンワ製のデジタルマイクロメーター0〜25mmを使用した。
その結果、第1、第2試験より倒伏に影響を与える第IV節間の葉鞘付きの稈、稈のみ、葉鞘の強度、葉鞘付きの稈の短・長径について、新栽培のイネにおいて従来栽培と比較して明らかに増大しており、また、各部位の平均長については、従来栽培のイネの方が全部位で長い事がわかった。つまり、倒伏に影響を与える第IV節間において、新栽培のイネの場合、葉鞘付きの稈が太く強く短くなる一方で、従来栽培のイネの葉鞘付きの稈は相対的に細く弱く長いという計測結果が得られた。詳細は以下の通りである。
強度を表す用語の定義であるが、全標本の節間毎の強度の合計を標本数で単純に割ったものを単純平均強度とする。強度順位別平均強度は、強度順位別に平均を取ったものだが、その計算方法については後述する。なお、第III節間の強度は、倒伏の原因にはあまり関係がないとされているものの、イネの機構を総合的に説明する観点から、以降では記載を行うこととした。
出穂期/第IV、III節間の葉鞘付きの稈の単純平均強度の比較
出穂期の葉鞘付きの稈の単純平均強度を算出する為、8月16日に第1試験では、第1水槽群から新栽培用として水槽番号1、8、13及び従来栽培用として水槽番号2、7、14の標本の計測を行った。計測の手順はP.5に示したとおりである。
上記の標本における単純平均強度の結果は(表3)の通りとなった。従来栽培と新栽培において、第IV、III節間の強度を単純平均強度にて比較した結果、新栽培の第IV節間で+13.94%、第III節間で+7.94%、と強度が従来栽培よりも増加した。
出穂期/第IV、III節間の稈のみの単純平均強度比較
出穂期の第IV、III節間の強度を更に分析する為、第2試験によって、稈のみの強度計測を実施し、単純平均強度比較を行った。当該実験では第IV、第III節間の葉鞘を取り除き、稈のみの単純平均強度の計測を実施した。計測に使用した水槽は、第2水槽群から、新栽培用として水槽番号3、15、17、従来栽培用として水槽番号9、16、18の標本の計測を行った。(計測の手順はP.5に示したとおりである。)
出穂期の稈のみの単純平均強度は(表4)の通りである。従来栽培と新栽培において、第IV、III節間の強度を、単純平均強度について比較した結果、新栽培の第IV節間で+10.20%、第III節間で+10.97%、と強度が従来栽培よりも増加した。
出穂期/第IV・III節間の葉鞘の単純平均強度での比較
倒伏に対する抵抗力(「倒伏抵抗力」)に葉鞘の強さも関係している事は、「解剖図説イネの生長」にも示されている。しかし、葉鞘の強度は直接測定することが困難であることから、第1試験の結果にある葉鞘付きの稈の強度から第2試験の結果にある稈のみの強度を差し引き得られた数値をもって葉鞘の強度と定義している。ちなみに、葉鞘の強度を直接測定する事が困難である理由は、葉鞘と稈との構造の関係にある。葉鞘は稈の周りで層になっており、仮に葉鞘付き稈から葉鞘を剥がそうとすると必然的に葉鞘を破損させてしまい、その結果、葉鞘の持つ本来の強度をも失ってしまうのであることから、葉鞘単体の強度計測をするという方法は一般的にも採用されていない((図5)参照)。
(表5)は出穂期における従来栽培と新栽培について、第IV、III節間の葉鞘の強度を相対的な単純平均強度で比較を行ったものである。その結果、新栽培の強度は第IV節間で+20.29%、第III節間で+4.34%と第IV節間の葉鞘の強度の増加が著しく、葉鞘の重要性が改めて明らかとなった。上述したように、葉鞘付き稈と稈のみの標本はそれぞれ第1水槽群及び第2水槽群からそれぞれ抽出したものであり、同一の標本ではない。しかし、同一環境の下において成長過程を踏んでいることから、両者は同等であると推測される。また、この比較方法は葉鞘の強度を算出するにあたり、ごく一般的な手法であることから誤差については問題がないものと考えられる。
出穂期/第IV節間の葉鞘付きの稈の短径、長径の比較
(図11)は、出穂期の第IV節間の短・長径の単純平均長(mm)及びその比率を第1試験により算出し、表したものである。従来栽培における第IV節間の葉鞘付きの稈の短・長径をそれぞれ100%とした場合、新栽培の葉鞘付きの稈の径は、短径で105%、長径で107%とそれぞれ従来栽培と比較すると増加している。この様に、第IV節間における葉鞘付きの稈の強度は、短径と長径の比率に比例しているといえ、強度が増加した要因については、葉鞘付きの稈の太さの点からも確認する事ができた。
出穂期/強度順位別平均強度による比較
出穂期における新栽培及び従来栽培の第IV、第III節間の単純平均強度については、第1、第2試験より得たデータをもとに、標本の節間毎の強度の合計を標本数で単純に割ったもので算出を行った事は上述したとおりである。この単純平均強度の計測の際、各株の中から標本を選ぶ方法として、イネの草丈の長い順から5本を抜き出して強度計測を実施したが、強度順位別平均強度の測定にあたっては、この各株の草丈の上位5本の節間強度の結果を強度の高い順に並べ替えを行い、各株の節間強度順位別に合計を出し、それを標本数で割り平均強度を算出した。数値の算出方法は(図12)の通りである。
出穂期/第IV、III節間の葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度の比較
(図13)のグラフは、第1試験での出穂期における新栽培と従来栽培の第IV、III節間の葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度の比較である。新栽培と従来栽培の第IV節間の強度順位別平均強度で比較を実施したところ、一方が他方の上方に常に位置する結果となった。これは、新栽培の葉鞘付きの稈が、強度五位まで全て従来栽培の葉鞘付きの稈の強度を上回っている事実を示すものであり、この事実から、葉鞘付きの稈の単純平均強度に関しては、新栽培における強度の平均を取っているものの、上位数本が平均強度を上げ、強度的に平均を下回るものが含まれるということはなく、標本全体の強度五位までの強度が従来栽培のものと比較していずれも増大していることが、結果から明らかとなっている。
出穂期/第IV、III節間の稈のみの強度順位別平均強度の比較
出穂期における第2試験での新栽培と従来栽培の第IV、III節間の稈のみの強度を、葉鞘付きの稈と同様の評価方法である強度順位別平均強度によって分析した。別紙のグラフ(図14)は出穂期の稈のみの強度順位別平均強度を示したものであるが、稈のみの強度の比較においても、葉鞘付きの稈と同様、一方が他方の上方に常に位置する結果となり、新栽培の稈のみの強度が強度五位まで全体的に従来栽培の稈のみの強度と比較して増している事がわかる。
出穂期/第IV、III節間の葉鞘の強度順位別平均強度の比較
出穂期における新栽培と従来栽培の第IV、III節間の葉鞘付きの稈の強度(第1試験の結果)から稈のみの強度(第2試験の結果)を差し引く方法で葉鞘の強度を算出する方法で葉鞘の強度順位別平均強度をグラフ(図15)にまとめた。出穂期の葉鞘の強度においては、新栽培の第III、IV節間の葉鞘が従来栽培の第IV節間の葉鞘より強度三位までは上回っており、強度四、五位の強度については、新栽培、従来栽培共に同等であると分析出来る。つまり、上記で比較した新栽培における葉鞘付き稈の強度が強度五位まで常に上回っている理由は、新栽培の稈のみの強度が第四位以降、著しく増加していると分析できる。ちなみに、葉鞘の強度を直接測定する事が困難である理由は、既に上述したとおりである。葉鞘付き稈と稈のみの標本はそれぞれ第1水槽群及び第2水槽群からそれぞれ抽出したものであり、同一の標本ではない。しかし、同一環境の下において成長過程を踏んでいることから、両者は同等であると推測され、また、この比較方法は葉鞘の強度を算出するにあたり、ごく一般的な手法であることから誤差については問題がないものと考えられる。
出穂期/第V節間の発現率の比較
出穂期における新栽培と従来栽培の第V節間については、第1試験では、出穂期の段階で発現していなものも存在した為、地上に発現していたか否かについての確認を行った。使用した水槽及び標本は、出穂期における単純平均強度の標本と同様の第1水槽群のもので、従来栽培用に水槽番号2、7、14を、新栽培用に1、8、13を用いた。各株から5本の標本で、1つの水槽につき水槽の外壁と接していない中央の6株を対象とし、それを3つの水槽で行ったことから、新栽培、従来栽培の各々の標本90本ずつにおいて、試験を行った結果、出穂期の時点では発現率はほぼ同等であった((図16)を参照)。
出穂期/第IV、III、II、I節間、穂の単純平均長の比較
出穂期における新栽培と従来栽培の各部位の平均長を第1試験の計測から得た数値をもとに単純平均の計算方法によって算出した。(表6)の様に出穂期の段階では、第IV、III、II、I節間及び穂長は、従来栽培の部位の方が何れも長い結果となった。計測は出穂期における単純平均強度の標本と同様の第1水槽群のもので、従来栽培に水槽番号2、7、14、新栽培に1、8、13を使用した。
登熟期編
登熟期における第3試験では、従来栽培と新栽培間の計測について、主に第IV、第III節間の(1.葉鞘付きの稈の単純強度、2.葉鞘付きの稈の短・長径、3.葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度、4.第V節間の発現率、各部位の単純平均長について比較を実施した(表6・表7参照)。その結果、倒伏に影響を与えるとされる第IV節間の強度及び断面径について、新栽培のイネの方が、出穂期と同様、従来栽培に比べて増化しており、また、各部位の平均長については、穂長、第I、II、III節間は新栽培のイネの方が長くなっている一方で、下位節間である第IV・第V節間については従来栽培の方が、長くなっている事が判明した。このことは、倒伏に影響を及ぼす第IV・第V節間の葉鞘付きの稈について、新栽培の場合は、太く、強く、また短くなっているに対し、従来栽培の場合、同部位は、相対的に細く、弱く、かつ、長くなっているということが計測結果から明らかになった。詳細は以下の通りである。第3試験は第3水槽群を使用し従来栽培に水槽番号4、6、11、新栽培に5、10、12を使用した。
登熟期/第IV、III節間の葉鞘付きの稈の単純平均強度の比較
9月18日、移植から95日が経過したいわゆる登熟期に第3試験として、新栽培と従来栽培の第IV、第III節間の葉鞘付きの稈の強度を計測し、単純平均強度を算出した。増加率は下記の(表7)の通りである。新栽培と従来栽培の第IV節間における強度は14.44%増加し、また第III節間は11.08%増加していることから、第III、第IV節間と共に新栽培の葉鞘付きの稈の強度は増加しており、さらに付言すれば、地ぎわに向かうほど新栽培のイネの方が従来栽培より強度が増加している事が明らかである。
登熟期/第IV、III節間の短径、長径の比較
登熟期の第3試験においては、新栽培と従来栽培の第IV節間の断面径に加え、第III節間の断面径の計測を実施した。その結果、新栽培において、短・長径が、第III、IV節間の何れについても従来栽培の同節間と比較して増加していた。具体的には、新栽培と従来栽培の第III節間の比較については、新栽培の第III節間の断面短径が4.08%、長径は1.78%、第IV節間の断面短径が6.43%、長径は5.29%増加している。これにより新栽培の第III、IV節間は、挫折強度のみならず、外形も発達している事がわかる。また、注目すべき点として、新栽培の葉鞘付き稈の第III、IV節間ともに短径の増加率が長径の増加率を上回っている事があげられる。これは従来栽培の葉鞘付きの稈の形状が楕円傾向にあるのに対して、新栽培の第III、IV節間の葉鞘付きの稈は、より真円に近付いている事を意味する。また、同栽培法どうしでの第IIIから第IV節間にかけての増加率では、従来栽培において短・長径の比較をすると、増加率が短径で1.63%、長径で1.11%と1%台となる一方、新栽培の場合、短径で3.92%、長径で4.60%と概ね4%増加していることがわかった((表8)を参照)。端的に言えば、従来栽培の葉鞘付きの稈は楕円傾向で、かつ、下位節間に向かって太さの変化がない。一方で、新栽培の葉鞘付きの稈の場合、真円に近付き、かつ、下位節間に向かうにつれて太くなり、その結果安定しているといえる。
登熟期/第IV、III節間の葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度の比較
(図17)のグラフは登熟期の第3試験での新栽培と従来栽培における葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度を示すものである。出穂期の時と同様の算出方法で計算し、登熟期における強度順位別平均強度による従来栽培と新栽培との第IV節間の強度を比較すると、新栽培の葉鞘付きの稈が強度五位まで全て従来栽培のそれを上回った。出穂期のみならず登熟期においても2本の折れ線グラフは交差していないことから、標本全体の強度五位までの平均強度が従来栽培のものと比較していずれも増大していることが、結果から明らかとなっている。
登熟期/第V節間の発現率及び節間長の比較
出穂期に、第1試験で第1水槽群(従来栽培用として2、7、14、新栽培用として水槽番号1、8、13)を用い、第V節間の発現率を計測した際、両者の発現率はほぼ同じで50%程度であった。登熟期の第3試験では、第3水槽群を用い、従来栽培用として5、10、12、新栽培用として水槽番号4、6、11で同様の計測を行い、更に第V節間が発現している場合は、節間長の計測を実施した。
登熟期の計測においては、新栽培の葉鞘付きの稈の発現率が50%であるのに対して従来栽培では発現率が58%であった((図18)参照)。更に第V節間が発現した場合の節間長は平均で新栽培で3.00センチメートル、従来栽培では3.26センチメートルであることから、新栽培の平均第V節間長と比べ8.6%ほど長くなっていることが判明した。
ちなみに出穂期に計測に使用した水槽の標本は、第1水槽群であり、計測の際に地ぎわから切断しているため、登熟期には別の水槽、つまり第3水槽群(従来栽培用として5、10、12、新栽培用として水槽番号4、6、11)の葉鞘付きの稈を使用しており、同じ標本同士の比較ではない。ただし、環境は同一であることから、同一環境において継続して生長過程を踏んでいることを考慮すれば、両者は同等であると推定される。
(図18)は、登熟期における第V節間の発現率を、異なる標本で直接比較したものであるが、上述した理由から、計測誤差については問題がないものと考えられる。
登熟期/第V、第V、IV、III、II、I節間長及び穂長の単純平均による比較
(表9)は登熟期の第3試験から従来栽培と新栽培の第V、IV、III、II、I節間及び穂長の長さの単純平均で算出し比較したものである。出穂期の第1試験では全部位の長さにおいて従来栽培が上回っていたが、登熟期の第3試験では穂から第III節間までは新栽培が長くなっている。従来栽培は前項の第V節間の発現率が増加している事に加え、倒伏に関係している第IV・V節間が長く構造上不安定であるといえる。
登熟期/イネの平均値による概略比較図
(図19)、(図20)は登熟期における第3試験での従来栽培と新栽培の計測データに基づいたイネの各部位の平均的詳細である。
その他の比較・分析
以下は、その他の方法で分析を行った結果である。出穂期及び登熟期における第1、第2、第3試験での計測データを基に、比較対象を2つの栽培方法間で行うのではなく、それぞれの出穂期、登熟期間で比較を行う方法や構造力学、偏差値の概念を応用、また強度の計測範囲を1株につき強度順位上位14位まで広げる事で株全体の強度の優位性について比較するなど様々な角度から検証した。
出穂期・登熟期/従来栽培と新栽培でのそれぞれの生長経緯
出穂期の第1試験及び登熟期における第3試験での従来栽培と新栽培間の強度の比較では新栽培の葉鞘付きの稈が増している事は前述した通りである。更に前項で算出した第1試験及び第3試験での葉鞘付きの稈の強度順位別平均強度を使用し、従来栽培と新栽培でのそれぞれの生長経緯を栽培毎に出穂期から登熟期にかけて比較する事とした(図21参照)。ただし、出穂期と登熟期の葉鞘付きの稈の強度を直接的に比較する際に留意しなければならない事がある。出穂期の際に採取した標本は第1水槽群のものであり、採取後、直ちに計測されのち廃棄された事から、登熟期に採取した第3水槽群の標本とは同一ではない。もっとも、それぞれの生育環境は同一であり、出穂期後、標本がその同一の環境下で生長しているから、同じイネを継続的に計測したものと推定しても差し支えないと考えられる。ちなみに、葉鞘の強度を計測する際、標本が同一ではない葉鞘付き稈から稈のみの強度差し引くことで葉鞘の強度を算出するという事が一般的な算出、比較方法であり、今回の比較の結果は推定であるとしても、その信憑性は高いデータであるといえる。
実際の比較の結果については、従来栽培の第IV節間の強度は、出穂期から登熟期にかけてほぼ横ばい状態で変化に乏しいのに対して、新栽培の第IV節間は出穂期以降更に強度が増していると推定される。
登熟期/構造力学による評価
(図22)は、登熟期における第3試験の平均データをもとに構造力学を応用して地ぎわの強度を算出した結果である。すなわち、イネの草丈を各部位の平均長の合計から算出し地ぎわに係る荷重を計算したものである。また、稈横断組織面積は稈の横断面を中空楕円とみなして計算した。仮想(P)はイネの先端にかかる集中荷重を指し、従来栽培では1.47の荷重を加える事で倒伏するのに対し、新栽培では1.98の荷重まで耐える事が計算によって明らかになった。これによって、同一の環境において、新栽培のイネは、穂の付く量が従来栽培と比較して3割程度増したとしても、倒伏せず耐えるという事が分かる。
登熟期/偏差値による評価
(図23)は登熟期における第3試験のデータをもとに従来栽培と新栽培の第IV節間の強度を偏差値によって求め比較したものである。新栽培の分布及びそのピークが左(上方向)にシフトしている事を確認することができる。
葉鞘付きの稈の強度を検討する場合、葉鞘付きの稈1本ごとに比較する方法もあるが、イネを株単位で検討する方法も有効である。それは、イネの生長構造が、株が生長するにつれて互いの葉が網の目状に互いに絡み合い言わばひとつの個体として強度を保つ、という特性を有するからである。この葉の絡みによって強い葉鞘付きの稈が弱い葉鞘付きの稈を保護する機構になっていることから、株単位で強度の比較をすることが重要となる。また、ある一定の強度を保つ事ができれば、連鎖的な倒伏は回避できるが、逆に株単位で一定の強度を保持できない場合、株単位で倒伏するという負のスパイラルに陥り、結果、この生長機構が仇となって一つの株の倒伏が、更なる株の倒伏を招くことにもつながると考えられる。この様に、イネの株全体の強度を底上げすることは、圃場全体の倒伏を軽減させる為に大きな役割を果たしているのである。
登熟期/株全体での葉鞘付きの稈の強度の比較評価
(図24)は登熟期における従来栽培と新栽培の葉鞘付きの稈の強度を株単位で比較したものである。用いた水槽番号は、従来栽培として4、新栽培として5を使用、計測し、各株あたりの計測葉鞘付きの稈数を、上位5本ではなく、上位14本までを対象として比較を実施した。計測によれば、強度6位以下であっても、新栽培による葉鞘付きの稈の強度が、常に従来栽培のものの強度を上回った。このことは、グラフで見た場合、強度が14本目まで全く交差することがなかった事実から確認することができる。この事実から、イネの強度を、株単位でみたとき、強度順では下位の葉鞘付きの稈についても、新栽培による葉鞘付きの稈の強度が従来栽培のものと比較して、いずれも上回っている事が明らかとなった。ちなみに従来栽培と新栽培の葉鞘付き稈の強度をそれぞれ1位から14位まで加算した場合、新栽培の葉鞘付き稈の強度は47.33Nで新栽培の葉鞘付き稈の強度は67.42Nであった。株単位での強度の差は従来栽培の稈の強度を100%とした場合、新栽培の稈の強度は142%になる。また、株中の葉鞘付きの稈の本数は大よそ14本から18本であり、統計学的なバラツキはないと考えられる。
登熟期/従来栽培と新栽培での倒伏程度の比較
(図25)は登熟期における従来栽培と新栽培の株の倒伏程度を水槽番号4、5を用い比較したものである。計測方法は直立している株を倒伏程度0とし、以降、18°毎に1単位を加算し表現することとした。従来栽培においては、垂直方向からの角度を計測すると50°と70°である。これは倒伏程度「3」と「4」に該当する。一方、新栽培の株については、垂直方向から角度を計測すると35°と45°である。これは、倒伏程度「2」と「3」に該当する。(図25)ではその強度の差を視覚的に明らかにしたものであり、付言すると、新栽培の株は、登熟期において穂長が約1センチメートル程度、従来栽培した場合の穂長に比べて長くなっており((表8)参照)、これにより必然的に穂重も増していることから、実際の倒伏程度は、その傾き以上に差が生じていると考えられる。
登熟期/従来栽培と新栽培での収量の比較
((表10)(表11))は、登熟期における従来栽培と新栽培の収量の比較を第三水槽群の検体を用いて行ったものである。計測方法は検体を自然乾燥によって、玄米の水分を15.5%まで下げたあと、ケット科学研究所製のもみすり器を用いてもみすりを行い、そこから有効玄米を取り出し、試供した。まず、第三水槽群における従来栽培中の1水槽あたりの株の穂数の平均は、96.33本で、玄米重量が124.40グラムであるのに対して新栽培の穂数の平均は、101本で、玄米重量が140.36グラムであった。また、従来栽培の1穂での玄米の重量の平均は1.29グラムであるのに対して新栽培の玄米の平均重量は1.39グラムであった。この結果から、新栽培の株は、一株あたりの穂数が多いだけでなく、1穂に着床した玄米の数も多い事が明らかとなり、「登熟期/第V、第V、IV、III、II、I節間長及び穂長の単純平均による比較」で明らかとなった穂長の長さの違いとも整合性が取れていると言える。1株あたりの玄米重量の比較では、新栽培の株が従来栽培と比較して平均で約12%増加した。
<条件>
平成24年、実施例1と同時期に、本田A、B、Cにおいて窒素施肥量と第IV節間長、第IV節間強度及び全長の関連性について実験を行った。水槽実験に使用した化成肥料エムコート777を使って本田A、B、Cに、それぞれ一株あたりで元肥3.97グラム、4.76グラム、6.35グラムの施肥を行った。水槽実験では、同一肥料を1株あたり2.7グラム施肥したことから、本田Cでの実験では、その2倍以上の肥料を施肥した。本田A、B、Cでは、水槽実験とは異なり、中干しを行った。
<結果>
草丈について、倒伏の目安となる115センチメートル以上になる事はなく、また全長における第IV節間の占める割合も8%台、または、それ以下となって安定していた。第IV節間の強度であるが、本田Bが7.78Nで最も強度が増加していた。また着目すべき点は、本田Bの第IV節間長、全長においても一番短いことである。これによって、施肥量と第IV節間長、第IV節間強度、草丈には、相関関係がないことが明らかとなった。このことから、新栽培方法を採用した場合、イネが生長に併せて第IV節間や全長の抑制が本田においても可能である事が明らかとなった(表12)。
まとめ
新栽培の効果をまとめると下記のとおりである。新栽培に用いられた水を使用して、対倒伏性及び収量性に長けているか否かについての検証を様々な観点から実施した。新栽培を採用したイネの葉鞘付きの稈は、従来栽培したものと比較して、その地ぎわが硬く、短く、太くなっている為、対倒伏性に優れている。また収量においても、新栽培の株の方が、一株あたりの穂数が増加しただけではなく、一穂あたりの玄米の着床量も多く収量性にも長けていた。下記はその根拠をまとめたものである。
1.出穂期における第IV節間の平均強度は、葉鞘付きの稈、稈のみ、葉鞘の全てにおいて新栽培を採用したものの方が優位であり、登熟期における葉鞘付き稈についても新栽培を採用したものの方が優位であった。
2.従来栽培を採用したものの葉鞘付きの稈は第III、第IV節間ともに、短径方向に歪む傾向にあるのに対し、新栽培を採用した葉鞘付きの稈は、登熟期に向かってよりゆがみの少ない形状(真円)に近付いている事が明確になった。
3.従来栽培と新栽培のそれぞれの第III節間から第IV節間に向かっての葉鞘付きの稈の太さの比較を行ったところ、従来栽培の葉鞘付きの稈では、短・長径共に1%台の増加率であったのに対し、新栽培を採用した場合、増加率が4%台と、新栽培の葉鞘付きの稈は、下節間に向かうにつれて太く、安定した形状に生長している事が明らかになった。
4.強度の増加について、従来栽培と新栽培の葉鞘付きの稈の強度順に、株単位で比較したところ、上位14位までにおいても、常に新栽培を採用した方が優位である事が明らかになった(ちなみに本実験における1株あたりの平均葉鞘付きの稈数は16.16本であった。)。
5.出穂期から登熟期にかけての第IV節間の葉鞘付きの稈の強度は、新栽培を採用した場合に増加したのに対し、従来栽培では、増加は認められなかった。
6.倒伏の程度について、従来栽培の場合、その評価が倒伏程度「3」と「4」であったのに対し、新栽培の株の倒伏程度は「2」と「3」であった。
7.収量の差については、新栽培の収量が従来栽培よりも一株あたりの約12%増加した。
8.本田での実験では、ガイドラインで示された許容量の2倍以上の窒素肥料を施肥したにもかかわらず、第IV節間の強度は寧ろ増加し、草丈は平均で103.73センチメートル、本田ごとの最長平均でも105.20センチメートルであった。
引用文献
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Claims (12)

  1. イネの栽培において、圃場水として圃場に与える水につき、水の直流電流による電気分解により陰極側に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陽極側周辺に生成した負電荷を有するイオンを含んだ水をその全部、または主要な一部とし、稲作における田植え直後、および、田植え時以降、圃場で給水が必要となる都度、上記の処理を施した水を圃場水として与える事を特徴とする方法
  2. 水の電気分解により陰極側に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陽極側周辺に生成した生じた負電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に給水する時期を、稲作における田植え直後から出穂期までとする請求項1の栽培方法
  3. 水の電気分解により生じた陰極側に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陽極側周辺に生成した負電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に給水する時期を、稲作における田植え直後から登熟期までとする請求項1の栽培方法
  4. 水の電気分解により陰極側に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陽極側周辺に生成した生じた負電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に給水するに際し、圃場の水位が、その最低水位で、圃場の底面から目視によって2センチメートルを大きく下回らず、かつ、最高水位が圃場の底面から目視によって5センチメートルを大きく上回ることの無いよう維持する事を特徴とする請求項1の栽培方法
  5. 水の電気分解により陰極側に生成した正電荷を有するイオンを含んだ水を圃場に出来るだけ入れることなく、陽極側周辺に生成した負電荷を有するイオンを含んだ水の生成にあたり、電極に与える電圧を20ボルト以上、且つ、電流を2アンペア以上とする事を特徴とする請求項1の栽培方法
  6. 水の電気分解により生じる電荷を有するイオンを含んだ水の生成にあたり、陽極側周辺に生成される負電荷を有するイオンを含んだ水を、負電荷を有するイオンを含まない水と効率よく分離するために、分離器を組み込んだ器具を使用することを特徴とする請求項1の栽培方法
  7. 水の電気分解により生じる負電荷を有するイオンを含んだ水の生成にあたり、電解筒の陽極の内径を57.2ミリメートル、陰極の外径を34ミリメートル、陽極と陰極のギャップを11.2ミリメートル、有効電極長を375ミリメートル、陽極の有効面積を67,353ミリメートル平米、陰極の有効面積を40,035ミリメートル平米とする事を特徴とする請求項1の栽培方法
  8. 電解水生成にあたり、電極の素材をチタニウム、ステンレス、カーボンまたはそれぞれの合金を使用する事を特徴とする請求項1の栽培方法
  9. 電解水生成にあたり、電極の素材の表面に白金などによるコーティング、メッキ、焼成等の加工を施す事を特徴とする請求項1の栽培方法
  10. 水の電気分解により生じる負電荷を有するイオンを含んだ水の生成にあたり、水のphを弱酸性(おおむねph4.0以上かつph6.0以下)とする事を特徴とする請求項1の栽培方法
  11. 施肥を行うにあたり、1株あたりの施肥量に含まれる窒素含有量を1.08グラム以下、または、従来施肥量の235%以下にする事を特徴とする請求項1の栽培方法
  12. 直流の電気を供給する電源装置、電気分解用の電極、及び電解水を効率的に分離する分離器を備えた、請求項1〜11に記載した方法に用いられる装置
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