JP2014136265A - 被覆工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】被覆層の耐摩耗性、耐酸化性および耐熱性を向上させ、寿命の長い被覆工具の提供を目的とする。
【解決手段】基材と被覆層からなり、被覆層はA層とB層とが交互に2層以上積層された交互積層を含み、A層は、(MAl1c)N[MはTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を表し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、a、b、cは、0.5<a<0.8、0.2<b<0.5、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、B層は、(Al2y)N[LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、x、yは、0.5≦x<0.8、0.2<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなり、A層の厚みが1〜10nmで、B層の厚みが1〜10nmであり、被覆層全体の結晶構造が立方晶である被覆工具。
【選択図】なし

Description

本発明は被覆工具に関するものである。
近年、地球環境保全の観点からクーラントを使用しない乾式切削加工が求められていること、および切削加工の加工能率の向上させるために切削速度が高速になってきていることなどの事情があり、従来よりも切削工具の刃先の温度はますます高温になる傾向がある。その結果、被覆工具の寿命が短くなることから、工具材料に要求される特性は一段と厳しくなっている。
そこで、例えば、特許文献1においては、表面被覆切削工具における刃先のチッピングによる基材の露出を抑制する目的で、基材の表面上に、AlとCrとを含む窒化物からなるA層(但し、Crの原子数の比が0<Cr≦0.4である)と、TiとAlとSiとを含む窒化物からなるB層(但し、Alの原子数の比が0<Al≦0.7であり、Siの原子数の比が0<Si≦0.2である)とを交互にそれぞれ1層以上積層した交互積層を含む被覆層を形成した表面被覆切削工具が開示されている。
国際公開第2006/070730号
乾式切削加工を高能率で行うといった過酷な切削条件においては、被覆層の耐チッピング性を向上するたけでは不十分であって、切削工具の刃先が高温になっても、被覆層の耐摩耗性が低下しないこと、被覆層の耐酸化性が優れることが被覆工具の寿命を長くするために非常に重要であると考えられる。
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、切削工程における被覆工具の刃先温度が高温になっても、被覆層の耐摩耗性、耐酸化性および耐熱性を向上させることで工具寿命の長い被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は被覆工具の工具寿命の延長について研究を重ねたところ、被覆層の構成および組成を工夫することによって、高い耐摩耗性を低下させずに、耐酸化性および耐熱性を向上させることができ、さらに刃先温度が高温になっても、それらの特性を維持する熱安定性を向上させることができ、その結果、工具寿命を延長することができるという知見が得られた。
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)基材と、前記基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆工具であって、
前記被覆層は、A層とB層とが交互に2層以上積層された交互積層を含み、
前記A層は、(MAl1c)N[但し、MはTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を表し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、aはM元素とAl元素とL元素の合計に対するM元素の原子比を表し、bはM元素とAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、cはM元素とAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、a、b、cは、0.5<a<0.8、0.2<b<0.5、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、
前記B層は、(Al2y)N[但し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、xはAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<0.8、0.2<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなり、
前記A層の厚みが1〜10nmで、前記B層の厚みが1〜10nmであり、
前記被覆層全体の結晶構造が立方晶である被覆工具。
(2)前記A層と前記B層との間に、A層とB層が混在した混在領域が含まれる(1)の被覆工具。
(3)前記被覆層全体の層厚は、1.5〜10μmである(1)または(2)の被覆工具。
(4)前記被覆層の前記A層の厚みの合計は0.75〜5μmであり、前記B層の厚みの合計は0.75〜5μmである(1)〜(3)のいずれかの被覆工具。
(5)前記A層の前記MはTiである(1)〜(4)のいずれかの被覆工具。
(6)前記A層の前記LはCrであり、前記B層の前記LはSiである(1)〜(5)のいずれかの被覆工具。
(7)前記A層の前記LはSiであり、前記B層の前記LはCrである(1)〜(5)のいずれかの被覆工具。
(8)前記被覆層の硬さが、25〜40GPaである(1)〜(7)のいずれかの被覆工具。
(9)前記A層は、(AlTiCr)N[但し、aはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、bはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するTi元素の原子比を表し、cはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するCr元素の原子比を表し、a、b、cは、0<a<0.5、0.5<b<1、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、
前記B層は、(AlSi)N[但し、xはAl元素とSi元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とSi元素の合計に対するSi元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<1、0<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなる(1)〜(6)、(8)のいずれかの被覆工具。
(10)前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化ホウ素焼結体、ダイヤモンド焼結体および高速度鋼からなる群から選択された少なくとも1種からなる(1)〜(9)のいずれかの被覆工具。
<被覆工具>
本発明の被覆工具は、基材とその表面に形成された被覆層とからなる。被覆工具の種類として具体的には、切削インサート、ドリル、エンドミルなどを挙げることができる。
<基材>
本発明の基材は、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化ホウ素焼結体、ダイヤモンド焼結体および高速度鋼からなる群から選択された少なくとも1種からなる。その中でも、基材が超硬合金であると、耐摩耗性および耐欠損性に優れるので、さらに好ましい。
<被覆層>
本発明の被覆工具は、基材と、前記基材の表面に形成された被覆層とを含み、被覆層は、A層とB層とが交互に2層以上積層された交互積層を含み、A層は、(MAl1c)N[但し、MはTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を表し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、aはM元素とAl元素とL元素の合計に対するM元素の原子比を表し、bはM元素とAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、cはM元素とAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、a、b、cは、0.5<a<0.8、0.2<b<0.5、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、B層は、(Al2y)N[但し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、xはAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<0.8、0.2<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなり、
前記A層の厚みが1〜10nmで、前記B層の厚みが1〜10nmであり、被覆層全体の結晶構造が立方晶であることを特徴としている。
本発明の被覆層は刃先温度が高温になっても、耐摩耗性および耐酸化性に優れるA層と耐酸化性および耐熱性に優れるB層とが交互に2層以上積層された交互積層を含む。本発明の被覆層は、A層およびB層よりも表面側に上部層を含んでもよい。本発明の被覆層は、A層およびB層よりも基材側に下部層を含んでもよい。A層とB層の位置関係については、基材側がA層であり表面側がB層であっても、基材側がB層であり表面側がA層であっても、いずれでもよい。被覆層の耐熱性が向上すると、切削時に刃先の温度が高温になっても、被覆層の耐摩耗性および耐酸化性を維持することができる。
本発明の被覆層全体の層厚が1.5μm未満であると耐摩耗性が低下し、10μmを超えて厚くなると耐剥離性が低下するため、1.5〜10μmであると好ましい。その中でも、3〜6μmであるとさらに好ましい。
<A層>
本発明の被覆工具のA層は、(MAl1c)N[但し、MはTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を表し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、aはM元素とAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、bはM元素とAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、cはM元素とAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、a、b、cは、0.5<a<0.8、0.2<b<0.5、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなることを特徴とする。
本発明のA層に含まれるMは、Ti、ZrまたはHfのいずれか1種の元素であることを特徴とする。A層はTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を主成分とすると高温における硬さに優れるので、刃先が高温になっても、高い耐摩耗性を有する。その中でも、MはTi元素であるとさらに好ましい。Mの原子比aは、0.5以下であるとA層の耐摩耗性が低下し、0.8以上であると相対的にAl量が減少して、A層の耐酸化性が低下するので、0.5<a<0.8とした。A層にAl元素を添加することでA層の耐酸化性が向上する。Mの原子比bが0.2以下であるとA層の耐酸化性が低下し、原子比bが0.5以上であるとA層の耐摩耗性が低下するので、0.2<b<0.5とした。Lは、CrまたはSiのいずれか1種の元素である。A層がCrまたはSiのいずれか1種の元素を含有すると、A層の組織が微細化し、MおよびAl元素を含有することによる耐摩耗性および耐酸化性がさらに向上する。また、Lを含有すると耐熱性が向上する。Lの原子比cは、0であると組織が微細化せず耐摩耗性および耐酸化性が向上しないため、A層の耐摩耗性、耐酸化性および耐熱性が低下し、0.2を超えて大きくなるとA層が脆くなり、耐摩耗性が低下するので、0<c≦0.2とした。
<B層>
本発明の被覆工具のB層は、(Al2y)N[但し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、xはAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<0.8、0.2<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなることを特徴とする。
本発明のB層はAl元素を主成分とすることで耐酸化性が向上する。Al元素の原子比xは、0.5未満であるとB層の耐酸化性が低下し、0.8以上であると相対的にLが減少して、B層の耐酸化性および耐熱性が低下するので、0.5≦x<0.8とした。Lは、CrまたはSiのいずれか1種の元素である。LのCrまたはSiのいずれか1種の元素を含有すると、B層の組織が微細化し、Alを含有することによる耐酸化性がさらに向上する。また、B層はLを含有すると耐熱性も向上する。Lの原子比yが、0.2以下であると組織が微細化せずB層の耐酸化性および耐熱性が低下し、原子比yが0.5を超えて多くなるとB層の耐酸化性が低下するので、0.2<y≦0.5とした。
本発明の被覆層のA層とB層との間に、A層とB層が混在した混在領域が含まれると被覆層の組織がさらに緻密化して、耐摩耗性および耐酸化性が向上するので好ましい。A層とB層が混在した混在領域とは、被覆層の断面組織を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した場合に、A層とB層との間にみられる、A層の格子縞とB層の格子縞とが重なり合っている領域のことを指す。
本発明のA層に含まれるLはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、本発明のB層に含まれるLはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表す。SiおよびCrは被覆層の組織を微細化する作用および被覆層の耐熱性を向上させる作用がある。その中でも、Siは被覆層の組織を微細化する作用が強く、Crは被覆層の耐熱性を向上させる作用が強い。そのため、A層に含まれるLがCrで、B層に含まれるLがSiであるか、A層に含まれるLがSiで、B層に含まれるLがCrであると、組織が微細化し、耐熱性が向上して、耐摩耗性が向上するので、さらに好ましい。その中でも、A層に含まれるLがCrであり、B層に含まれるLがSiであると、被覆層の耐摩耗性と耐熱性のバランスが優れるため、さらに好ましい。
本発明の被覆層の結晶構造が立方晶であるので、被覆層の硬さが高く、耐摩耗性に優れる。
本発明の被覆層の硬さは、25GPa未満であると耐摩耗性が低下する傾向を示し、40GPaを超えて高い硬さにすることは技術的に困難なため、25〜40GPaであると好ましい。その中でも、30〜40GPaであるとさらに好ましい。
本発明のA層の厚みが、1nm未満になると均一な厚みの被覆層を形成することが困難となり、10nmを超えて厚くなると被覆層の硬さが低下するため、1〜10nmであることを特徴とする。本発明のB層の厚みが、1nm未満になると均一な厚みの被覆層を形成することが困難となり、10nmを超えて厚くなると被覆層の硬さが低下するため、1〜10nmであることを特徴とする。本発明のA層の厚みが1〜10nmであり、本発明のB層の厚みが1〜10nmであると、被覆層の熱安定性が向上する。ここで、被覆層の熱安定性とは、切削時に刃先の温度が高温になっても、被覆層の結晶構造は立方晶を維持し、被覆層の微細化した組織を維持する性質のことである。
本発明の被覆層において、A層の厚みの合計は0.75μm未満であると耐摩耗性および耐酸化性が低下し、5μmを超えて厚くなると耐酸化性および耐熱性が低下するため、0.75〜5μmでると好ましい。その中でも、1.5〜3μmであるとさらに好ましい。B層の厚みの合計は0.75μm未満であると耐酸化性および耐熱性が低下し、5μmを超えて厚くなると耐摩耗性および耐酸化性が低下するため、0.75〜5μmであると好ましい。その中でも、1.5〜3μmであるとさらに好ましい。
なお、A層の厚みの合計とは、交互積層を構成するA層の厚みの合計を意味する。また、B層の厚みの合計とは、交互積層を構成するB層の厚みの合計を意味する。
本発明の被覆層の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法、イオンミキシング法などの物理蒸着法を挙げることができる。その中でもアークイオンプレーティング法は被覆層と基材との密着性に優れるので、さらに好ましい。
本発明の被覆工具は、基材の表面に従来の被覆方法で被覆層を形成することで得られるが、例えば、以下の製造方法を挙げることができる。工具形状に加工した基材を物理蒸着装置の反応容器内に入れ、反応容器内を圧力1×10−2Pa以下の真空になるまで真空引きする。真空引きした後、反応容器内のヒーターで基材の温度が200〜800℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にArガスを導入して圧力を0.5〜5.0Paとする。圧力0.5〜5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−200〜−1000Vのバイアス電圧を印加し、反応容器内のタングステンフィラメントに5〜20Aの電流を流して、基材の表面をArガスによるイオンボンバードメント処理をする。基材の表面をイオンボンバードメント処理した後、圧力1×10−2Pa以下の真空になるまで真空引きする。次いで、窒素ガスなどの反応ガスを反応容器内に導入し、反応容器内の圧力を0.5〜5.0Paにして、基材に−10〜−150Vのバイアス電圧を印加し、被覆層の金属成分に応じた金属蒸発源をアーク放電により蒸発させて基材の表面に被覆層を形成することができる。なお、離れた位置に置かれた2種類以上の金属蒸発源を同時にアーク放電により蒸発させ、基材を固定した回転テーブルを回転して交互積層を形成する場合は、反応容器内の基材を固定した回転テーブルの回転数を調整することによって、交互積層のA層およびB層の厚みを制御するとよく、2種類以上の金属蒸発源を交互にアーク放電により蒸発させて交互積層を形成する場合は、それぞれの金属蒸発源のアーク放電時間を調整することによって交互積層のA層およびB層の厚みを制御するとよい。
被覆層中の各層の厚みは、被覆工具の断面組織から光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定することができる。なお、被覆工具の被覆層の層厚は、金属蒸発源に対向する面の刃先から被覆工具の中心部に向かって50μmの位置で、被覆層の層厚を3箇所以上測定し、その平均値を求めるとよい。各層の組成は、本発明の被覆工具の断面組織からエネルギー分散型X線分析装置(EDS)や波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
被覆層全体の結晶構造は、X線回折法(XRD)またはTEMの回析パターンにより同定することができる。
被覆層の硬さは、ナノインデンターを用いて測定することができる。
本発明の被覆工具は、被覆層の構成および組成を工夫することによって、高い耐摩耗性を低下させずに、耐酸化性および耐熱性を向上させることができ、さらに刃先温度が高温になっても、それらの特性を維持する熱安定性を向上させることができ、その結果、工具寿命を延長することができるという効果を奏する。
基材として、ISO規格SPGN1203インサート形状のP30相当の超硬合金とISO規格SNMN1204インサート形状のP30相当の超硬合金を用意する。アークイオンプレーティング装置の反応容器内に表1に示す被覆層の目的の組成となる金属成分の金属蒸発源を配置する。用意した基材を反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定する。その後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きする。真空引き後、反応容器内のヒーターで基材の温度が500℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内の圧力が5.0PaになるようにArガスを導入する。圧力5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−1000Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のフィラメントに10Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間行う。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きする。次に、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にする。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて被覆層を形成する。なお、A層とB層を形成するときは、A層の金属蒸発源とB層の金属蒸発源とを同時にアーク放電により蒸発させてA層とB層を形成する。このときA層とB層の厚みは回転テーブルの回転数を1〜4min−1の範囲で調整することで制御する。基材の表面に所定の層厚まで被覆層を形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出す。
得られた試料の層厚は、被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面組織をTEMで3箇所測定し、各層の1層の厚みおよび被覆層全体の層厚の平均値をそれぞれ求める。得られた試料の各層の組成は被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面でEDSを用いて測定する。それらの結果は、表1に示す。なお、表1の各層の金属成分の組成比は、金属元素全体に対する各金属元素の原子比を示す。被覆層全体の結晶構造は、XRDおよびTEMの回折パターンにより同定した。被覆層の硬さは、MTS社製ナノインデンターを用いて測定した。得られた試料を用いて、耐酸化性および耐摩耗性を評価する。
Figure 2014136265
表1におけるA層の厚みとは、交互積層を構成するA層の1層当たりの厚みのことを意味する。同様にB層の厚みとは、交互積層を構成するB層の1層当たりの厚みのことを意味する。また、表1における、積層数とは、A層およびB層が1層ずつ交互に積層されている交互積層中におけるA層およびB層のそれぞれの層数のことを意味する。
表1における混在領域の有無については、被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面組織をTEMで3箇所観察し、A層とB層との間にA層の格子縞とB層の格子縞が重なり合った領域を確認できた場合は混在領域が有りとした。
[酸化試験]
ISO規格SNMN1204インサート形状 の超硬合金基材の被覆工具を用いて、酸化試験を行い、被覆層の耐酸化性を評価した。酸化試験では、被覆工具を大気中で1100℃に所定時間保持した後、冷却し、被覆工具の断面組織をSEMで観察して被覆層の表面にできた酸化層の厚さを測定した。酸化層の厚さが厚い程、被覆層の表面から内部へ酸素が拡散していることを示し、耐酸化性に劣ることを意味する。大気中で1100℃に1時間保持した場合と5時間保持した場合の各被覆層の酸化層の厚さを表2に示す。
Figure 2014136265
表2より、比較品は発明品よりも被覆層の酸化層の厚さが厚く、比較品は発明品よりも被覆層の表面から内部へ酸素が拡散していることが確認された。以上の結果から、発明品は比較品よりも耐酸化性に優れていることが確認された。
[切削試験]
発明品1〜18、比較品1〜12のISO規格SPGN1203インサート形状の被覆工具を用いて、被削材:SCM440、切削速度:300m/min、切り込み:2.0mm、送り:0.3mm/revの条件で乾式旋削加工試験を行った。切削性能を評価するため、切削時間40min時点の平均逃げ面摩耗幅を測定した。これらの結果を表3に示す。
Figure 2014136265
表2に示されるように、発明品1〜18は、切削時間40minまでの切削加工でも平均逃げ面摩耗幅が0.095mm以下であり、優れた耐摩耗性を有する。一方、比較品1〜12は切削時間40min時点の平均逃げ面摩耗幅が0.146mm以上となっている。平均逃げ面摩耗幅が小さい試料は、さらに加工することができる。すなわち、平均逃げ面摩耗幅が小さい試料ほど長い工具寿命が得られる。また、A層にLが含まれていない比較品6とB層にLが含まれていない比較品11を加工試験後にXRDを用いて被覆層の結晶構造を解析したところ、立方晶と六方晶とからなることが確認された。このことから、LまたはLを含まない被覆層は耐熱性に劣ることが分かった。
基材としてISO規格SPGN1203インサート形状のP30相当の超硬合金を用意する。アークイオンプレーティング装置の反応容器内に表4に示す各被覆層の目的の組成となる金属成分の金属蒸発源を配置する。用意した基材を反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定する。その後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きする。真空引き後、反応容器内のヒーターで基材の温度が500℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内の圧力が5.0PaになるようにArガスを導入する。圧力5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−1000Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のフィラメントに10Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間行う。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きする。次に、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にする。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて被覆層を形成する。A層とB層を形成するときは、A層の金属蒸発源とB層の金属蒸発源を交互にアーク放電により蒸発させてA層とB層を形成する。このときA層の厚みとB層の厚みは回転テーブルの回転数を1〜4min−1の範囲で調整することで制御する。基材の表面に所定の層厚まで被覆層を形成した後に、ヒーターの電源を切り、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出す。
得られた試料の層厚は、被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面組織をTEMで3箇所測定し、厚みおよび被覆層全体の層厚の平均値をそれぞれ求める。得られた試料の各層の組成は被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面でEDSを用いて測定する。それらの結果は、表4に示す。なお、表4の各層の金属成分の組成比は、金属元素全体に対する各金属元素の原子比を示す。被覆層全体の結晶構造は、XRDおよびTEMの回折パターンにより同定した。被覆層の硬さは、MTS社製ナノインデンターを用いて測定した。得られた試料を用いて、耐酸化性および耐摩耗性を評価する。

Figure 2014136265
表4におけるA層の厚みとは、交互積層を構成するA層の1層当たりの厚みのことを意味する。同様にB層の厚みとは、交互積層を構成するB層の1層当たりの厚みのことを意味する。また、表1における、積層数とは、A層およびB層が1層ずつ交互に積層されている交互積層中におけるA層およびB層のそれぞれの層数のことを意味する。
表4における混在領域の有無については、被覆工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から中心部に向かって50μmの位置の断面組織をTEMで3箇所観察し、A層とB層との間にA層の格子縞とB層の格子縞が重なり合った領域を確認できた場合は混在領域が有りとした。
[切削試験]
発明品19〜23のISO規格SPGN1203インサート形状の被覆工具を用いて、実施例1の切削試験と同一条件で乾式旋削加工試験を行った。切削性能を評価するため、切削時間40min時点の平均逃げ面摩耗幅を測定した。これらの結果を表5に示す。
Figure 2014136265
表5に示されるように、発明品19〜23は、切削時間40minまでの切削加工でも平均逃げ面摩耗幅が0.088mm以下であり、同一の切削試験条件で加工した比較品よりも優れた耐摩耗性を有している。平均逃げ面摩耗幅が小さい試料は、さらに加工することができる。すなわち、平均逃げ面摩耗幅が小さい試料ほど長い工具寿命が得られる。発明品の被覆層はA層およびB層よりも表面側および基材側に上部層または下部層を含んでも表3に示した比較品よりも著しく長い工具寿命が得られる。

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材の表面に形成された被覆層とを含む被覆工具であって、
    前記被覆層は、A層とB層とが交互に2層以上積層された交互積層を含み、
    前記A層は、(MAl1c)N[但し、MはTi、ZrまたはHfのいずれか1種の元素を表し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、aはM元素とAl元素とL元素の合計に対するM元素の原子比を表し、bはM元素とAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、cはM元素とAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、a、b、cは、0.5<a<0.8、0.2<b<0.5、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、
    前記B層は、(Al2y)N[但し、LはCrまたはSiのいずれか1種の元素を表し、xはAl元素とL元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とL元素の合計に対するL元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<0.8、0.2<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなり、
    前記A層の厚みが1〜10nmで、前記B層の厚みが1〜10nmであり、
    前記被覆層全体の結晶構造が立方晶である被覆工具。
  2. 前記A層と前記B層との間に、A層とB層が混在した混在領域が含まれる請求項1に記載の被覆工具。
  3. 前記被覆層全体の層厚は、1.5〜10μmである請求項1または2に記載の被覆工具。
  4. 前記被覆層の前記A層の厚みの合計は0.75〜5μmであり、前記B層の厚みの合計は0.75〜5μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆工具。
  5. 前記A層の前記MはTiである請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆工具。
  6. 前記A層の前記LはCrであり、前記B層の前記LはSiである請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆工具。
  7. 前記A層の前記LはSiであり、前記B層の前記LはCrである請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆工具。
  8. 前記被覆層の硬さが、25〜40GPaである請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆工具。
  9. 前記A層は、(AlTiCr)N[但し、aはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、bはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するTi元素の原子比を表し、cはAl元素とTi元素とCr元素の合計に対するCr元素の原子比を表し、a、b、cは、0<a<0.5、0.5<b<1、0<c≦0.2、a+b+c=1を満足する。]からなり、
    前記B層は、(AlSi)N[但し、xはAl元素とSi元素の合計に対するAl元素の原子比を表し、yはAl元素とSi元素の合計に対するSi元素の原子比を表し、x、yは、0.5≦x<1、0<y≦0.5、x+y=1を満足する。]からなる請求項1〜6または8のいずれか1項に記載の被覆工具。
  10. 前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化ホウ素焼結体、ダイヤモンド焼結体および高速度鋼からなる群から選択された少なくとも1種からなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆工具。
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