JP2014132287A - フォトニックバンドギャップファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】光ファイバとの接続が容易で、紫外光による感受性がないフォトニックバンドギャップファイバを提供する。
【解決手段】固体であるバックグラウンド材料11の中に、バックグラウンド材料11と異なる屈折率の固体材料からなるコア13が存在し、かつ、コア13の周囲に、バックグラウンド材料11と異なる屈折率の固体材料からなる微細構造部12,12,・・が離散的に複数存在する断面構造を有し、微細構造部12,12,・・は、いずれもバックグラウンド材料11よりも低屈折率の固体材料のみからなり、フォトニックバンドギャップの効果によってコア13中を長手方向にモードが伝搬可能なフォトニックバンドギャップファイバ10。
【選択図】図1

Description

本発明は、フォトニックバンドギャップファイバに関する。
フォトニックバンドギャップ(Photonic Band Gap:PBG)ファイバとは、光の干渉や共鳴といった現象を導波原理とする光ファイバのことである。PBGファイバは、全反射(Total Internal Reflection:TIR)を導波原理とする従来型の光ファイバとは異なる、特徴的な光学特性を有することから、近年大きな注目を集めている。
PBGファイバの特徴的な光学特性の一つに、ファイバ型波長フィルタとしての機能がある。PBGファイバの導波原理が光の干渉や共鳴といった現象であることは前述したが、これらの現象は、本質的に波長に大きく依存する。そのため、PBGファイバは透過波長帯域と遮断波長帯域をもち、これらの境界で透過特性が大きく変化する。したがって、PBGファイバは、透過波長と遮断波長を適切に設計することにより、急峻な波長特性と高い遮断効果を持つファイバ型波長フィルタとして機能する。
ファイバ型波長フィルタの適用分野は多数存在するが、特に重要なのは、ファイバレーザやファイバパワーアンプといったファイバ増幅器の分野である。希土類添加ファイバ増幅器は、ファイバ増幅器の代表であり、特に近年高出力化がめざましい。そのような高出力のファイバ増幅器において、信号光と異なる波長の不要な光が増幅器の内部に蓄積することで、増幅器の動作が不安定になることが問題になっている。信号光と異なる波長の光を発生させる代表的な現象には、自然放出光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)や、誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering:SRS)等が挙げられる。
ASEやSRSは、いずれも誘導放出に起因した現象であるから、増幅器の不安定性を解消するためには、増幅器の内部にファイバ型波長フィルタを挿入して、誘導放出によって発生した不要な波長を除去したり、誘導放出自体を抑えたりすることが有効である。そのための実施形態は、大きく分けて2つある。
(1)増幅機能を持つ光ファイバ(増幅用光ファイバ)に、増幅機能を持たないファイバ型波長フィルタを接続する。
(2)増幅用光ファイバ自身に、波長フィルタの機能を持たせる。
(1)の実施形態の光ファイバは比較的製造が容易であるため、簡便で実施が容易であるという利点がある。(2)の実施形態は、増幅用光ファイバでの誘導放出自体を抑えることが可能なため、(1)と比べて増幅器を安定化する効果が高いという利点がある。PBGファイバは、急峻な波長特性と高い遮断効果を持つファイバ型波長フィルタであるため、(1)と(2)のいずれの用途にも優れた効果を発揮する。
PBGファイバはいくつかの種類に分類される。歴史的に最初に注目を浴びたのは、コアが気体または真空からなるhollow−core PBGファイバである。しかしながら、PBGファイバを上記(1)の目的に使用する場合には、増幅用光ファイバとの接続が必要であるから、接続を容易にするためにはコアが固体材料からなることが好ましい。また、PBGファイバを上記(2)の目的に使用する場合にも、コアに希土類を添加したり、ラマン利得を大きくしたりするために、コアが固体材料からなることが好ましい。したがって、上記(1)や(2)の目的には、固体のコアを持つsolid−core PBG(SC−PBG)ファイバがしばしば使用される。
SC−PBGファイバには、例えば特許文献1,2や非特許文献1,2に記載のような、低屈折率のバックグラウンド材料に高屈折率部を離散的に埋め込んだ構造(以降「高屈折率部埋め込み型」と呼ぶ。)が従来技術として存在する。
ここまでは、光ファイバの透過波長特性がファイバ増幅器にとって重要であること、そして、SC−PBGファイバを用いて光ファイバの透過波長特性を変化させることは、ファイバ増幅器にとって有用であることを述べた。
一方、光ファイバの偏波保持特性もまた、ファイバ増幅器にとって重要な特性の一つである。ファイバ増幅器の適用分野の一部、特に非線形現象を利用した波長変換の分野においては、単一直線偏波出力が求められることが一般的である。そのためには、ファイバ増幅器をすべて、直線偏波を保持可能な光ファイバ(偏波保持ファイバ)で構成することが必要である。
高屈折率部埋め込み型のSC−PBGファイバを偏波保持ファイバとする場合は、コア近傍の高屈折率部の一部を、空孔、バックグラウンド材料よりも低屈折率の固体、または応力付与部で置換し、ファイバ断面の屈折率分布や応力分布に2回以下の回転対称性(2回回転対称と1回回転対称のことを指す。1回回転対称はすなわち回転対称性なし)のみを持たせる方法がしばしば用いられる。この方法を用いると、応力複屈折や構造複屈折によって、コアを伝搬する2つの直線偏波モードの縮退が解け、偏波保持ファイバとして機能する。このようなSC−PBGファイバは、例えば特許文献3,4や非特許文献3〜5などで知られるように、透過波長特性と偏波保持特性がともに優れたファイバ増幅器を実現することができる。
また、非特許文献6には、高屈折率部を、リン(P)が添加された石英ガラスとすることで、紫外光に対する感光性を低減し、高屈折率部の屈折率変化を抑制する方法が報告されている。
米国特許第7349611号明細書 米国特許第8045259号明細書 特許第4243327号公報 米国特許第6404966号明細書
A.Wang et al., "Three−level neodymium fiber laser incorporating photonic bandgap fiber", Optics Letters、2006年、第31巻、第10号、p.1388−1390 V.Pureur et al., "Ytterbium−doped solid core photonic bandgap fiber for laser operation around 980 nm", Applied Physics Letters、2008年、第92巻、第6号、p.061113 T.T.Alkeskjold, "Large−mode−area ytterbium−doped fiber amplifier with distributed narrow spectral filtering and reduced bend sensitivity", Optics Express、2009年、第17巻、第19号、p.16394−16405 J.K.Lyngso et al., "Stress induced birefringence in hybrid TIR/PBG guiding solid photonic crystal fibers", Optics Express、2010年、第18巻、第13号、p.14031−14040 C.B.Olausson et al., "167 W, power scalable ytterbium−doped photonic bandgap fiber amplifier at 1178 nm", Optics Express、2010年、第18巻、第16号、p.16345−16352000−000 L.Bigot et al., "Efficient fiber Bragg gratings in 2D all−solid photonic bandgap fiber", Optics Express、2009年、第17巻、第12号、p.10105−10112
多くの場合において、高屈折率部埋め込み型のSC−PBGファイバのバックグラウンド材料は純粋石英であり、高屈折率部の材料はゲルマニウム(Ge)が添加された石英ガラスである。Geは、石英中に高濃度に添加して屈折率を大幅に上昇させても光ファイバの損失を低く保つことができる点で優れたドーパントである。しかし、SC−PBGファイバの高屈折率部に用いる場合、Geが紫外光に対して大きな感光性を持つという点が問題となる場合がある。この場合の感光性とは、紫外線の照射によって屈折率が変化する性質のことを指す。紫外光の照射によってSC−PBGファイバの高屈折率部の屈折率が変化すると、干渉や共鳴が発生する条件が変化するために、透過波長と遮断波長が変化する。これは、紫外光の伝送や、ファイバ側面からの紫外光照射によってコアにファイバブラッググレーティングを描画する場合に、大きな問題となる。
上記の非特許文献6のように、高屈折率部にPを添加する場合、Pを高濃度に添加するにあたっての技術的課題により、低損失のPBGファイバを作製することは困難である。アルミニウム(Al)についても同様である。
また、前述の方法によって偏波保持ファイバとした高屈折率部埋め込み型のSC−PBGファイバにおいては、別の問題が発生する。バックグラウンド材料に純粋石英を用いて偏波保持型のSC−PBGファイバを作製する場合、コアの周囲に、空孔、フッ素(F)が添加された石英ガラス、またはホウ素(B)が添加された石英ガラスを配置することによって断面の屈折率分布や応力分布に2回以下の回転対称性のみを持たせ、応力複屈折や構造複屈折によって偏波保持ファイバとする方法が一般的であるが、上記の3つの材料はすべて純粋石英よりも低屈折率の材料である。高屈折率部埋め込み型のSC−PBGファイバにおいては、これらの低屈折率部はPBGではなくTIRによる導波を与える。TIRによる導波はPBGによる導波と異なり、波長依存性がほとんどないために、断面中TIRによる導波が起こっている箇所では波長フィルタとしての機能が失われる。したがって、遮断波長における光の遮断量が減少し、波長フィルタの機能が低下する。
加えて、断面屈折率分布が2回以下の回転対称性のみを有するSC−PBGファイバにおいては、さらに別の問題が発生する。断面円形の光ファイバをコイル状に巻いて収納する場合、曲げる方向と光ファイバの断面屈折率分布とはあらゆる角度をとり得る(すなわちランダムである)。そのため、断面屈折率分布が2回以下の回転対称性のみを有するSC−PBGファイバをコイル状に収納すると、光ファイバを曲げる方向によって曲げ損失の波長依存性が大きく変化する。その結果、光ファイバがランダムに巻かれると、長手方向に波長フィルタ特性が大きく変化してしまうという問題が発生する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決することが可能なフォトニックバンドギャップファイバを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、固体であるバックグラウンド材料の中に、前記バックグラウンド材料と異なる屈折率の固体材料からなるコアが存在し、かつ、前記コアの周囲に、前記バックグラウンド材料と異なる屈折率の固体材料からなる微細構造部が離散的に複数存在する断面構造を有し、前記微細構造部は、いずれも前記バックグラウンド材料よりも低屈折率の固体材料のみからなり、フォトニックバンドギャップの効果によって前記コア中を長手方向にモードが伝搬可能な光ファイバであることを特徴とするフォトニックバンドギャップファイバを提供する。
前記断面構造において離散的に存在する微細構造部の中心間距離が、前記コア中を長手方向に伝搬可能な光の波長の長さよりも長いことが好ましい。
前記バックグラウンド材料の屈折率nと、前記微細構造部の屈折率nrodとの比屈折率差Δrod=(nrod−n)/nが、−0.04<Δrod<0.00の関係を満たすことが好ましい。
前記微細構造部が、少なくともフッ素が添加された石英ガラスからなることが好ましい。
前記微細構造部が、少なくともホウ素が添加された石英ガラスからなることが好ましい。
前記微細構造部が、少なくともフッ素が添加された石英ガラスからなる第1の微細構造部と、少なくともホウ素が添加された石英ガラスからなる第2の微細構造部とからなり、前記第1の微細構造部と前記第2の微細構造部との熱膨張係数の差に起因して、2回以下の回転対称性のみをもつ断面応力分布が発生し、偏波保持光ファイバとして機能することが好ましい。
本発明によれば、低屈折率部として空孔を有する場合に比べて、光ファイバの接続などの取り扱いが容易である。また、Geを添加した高屈折率部を有する場合に比べて、紫外光に対する感光性の問題を抑制できる。
特に、フッ素が添加された石英ガラスを低屈折率部に用いた場合には、材料による損失が低く、かつ、クラッド部の微細構造部の紫外光による感受性がなく、ファイバグレーティングの描画に適している。
低屈折率の応力付与部を設けて、偏波保持光ファイバを構成する場合には、微細構造部も低屈折率であるのでPBG導波が阻害されず、波長フィルタの遮断特性が悪化しない。また、応力分布の回転対称性は減少しても、屈折率分布の回転対称性は減少しないので、曲げる方向によって曲げ損失の波長依存性が変化しにくい。
本発明のPBGファイバの一例を示す断面図である。 クラッド部の微細構造部の構造を示す部分拡大図である。 コアに接する箇所の構造を示す部分拡大図である。 実施例1のPBGファイバの透過特性を示すグラフである。 実施例1のPBGファイバの伝送損失を示すグラフである。 応力付与部を有するPBGファイバの一例を示す断面図である。
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に、本発明のPBGファイバの一例を示す。このPBGファイバ10は、固体であるバックグラウンド材料11の中に、バックグラウンド材料11よりも低屈折率の固体材料からなる微細構造部12,12,・・が離散的に複数存在する断面構造を有する。微細構造部12,12,・・は、固体のコア13の周囲(クラッド部)に配置され、これによりクラッド部に生じるPBGを用いて、固体のコアを持つSC−PBGファイバを構成する。
従来、低屈折率材料を離散的に埋め込むことでPBGを形成し、コア中にモードを伝播させる場合、低屈折率材料としては空孔(気体または真空)が用いられてきた。空孔とバックグラウンド材料との屈折率差は、バックグラウンド材料が石英系ガラスの場合、40%以上あり、PBGを形成することが可能であることは実証されている。また、バックグラウンド材料との比屈折率差Δが−0.04<Δ<0.00といった程度の微細構造を離散的に埋め込むことでTIRによる導波が可能であることも実証されている。しかしながら、−0.04<Δ<0.00といった程度の比屈折率差ΔでPBGが形成され、PBGによるモードの導波が可能であることは知られていなかった。実際、SC−PBGファイバを、空孔を用いずに作製する場合は、高屈折率材料を離散的に埋め込む構造のPBGファイバが実証されているのみである。ここで、バックグラウンド材料の屈折率nと、微細構造部の屈折率nrodとの比屈折率差Δrodは、Δrod=(nrod−n)/nと定義する。
PBGファイバ10は、PBGの効果によってコア13中を長手方向にモードが伝搬可能である。光ファイバの断面構造において離散的に存在する微細構造部12,12,・・・の中心間距離が、コア13中を長手方向に伝搬可能な光の波長の長さよりも長いことが好ましい。また、バックグラウンド材料11に対する微細構造部12,12,・・の比屈折率差Δrodは、−0.04<Δrod<0.00の関係を満たすことが好ましい。微細構造部は、バックグラウンド材料よりも低屈折率であることから、Δrodは負(Δrod<0.00)とされる。Δrodが−0.04程度、又はそれ以下でもよいが、一般的にフッ素やホウ素を添加した石英ガラスの屈折率の範囲内であることが好ましい。
複数の微細構造部12を構成する固体材料としては、少なくともフッ素が添加された石英ガラスや、少なくともホウ素が添加された石英ガラスが挙げられる。フッ素のみが添加された石英ガラスや、ホウ素のみが添加された石英ガラスであってもよい。
複数の微細構造部12は、一次元周期構造、三角格子構造、ハニカム格子構造、正方格子構造、長方格子構造などのいずれか1つの周期構造を含むことが好ましい。微細構造部12の断面形状は、特に限定されるものではないが、三角形、四角形、六角形の多角形や、円形等が挙げられる。隣接する微細構造部12の間には、バックグラウンド材料11が配置される。微細構造部12の断面形状が多角形の場合、多角形の辺に沿ってバックグラウンド材料11の支柱部が配置され、多角形の頂点にはバックグラウンド材料11の交点部が配置されてもよい。
コア13は、バックグラウンド材料11より高屈折率でもよいが、低屈折率であることが好ましい。コア13の屈折率がバックグラウンド材料11の屈折率以下の場合、コア13を通る光は、周期構造に囲まれた方向には純粋にフォトニックバンドギャップの効果により導波されるため、コアを伝搬するモードの電界が周期構造を伝搬するモードと結合して伝搬した後、コアを伝搬するモードと再結合する現象が原理的に発生せず、高い遮断波長のフィルタリング効果を得ることができる。
コア13を構成する固体材料としては、少なくともフッ素が添加された石英ガラスや、少なくともホウ素が添加された石英ガラスが挙げられる。フッ素のみが添加された石英ガラスや、ホウ素のみが添加された石英ガラスであってもよい。
また、増幅用光ファイバを構成するため、希土類元素が添加されたガラスをコアに用いることもできる。
コアには、ファイバブラッググレーティングが形成されてもよい。
バックグラウンド材料11は、フッ素やホウ素等のドーパントが添加された石英ガラスであってもよく、純粋石英であってもよく、フッ素のみが添加された石英ガラスや、ホウ素のみが添加された石英ガラスであってもよい。
また、複数の微細構造部12,12,・・が、少なくともフッ素が添加された石英ガラスからなる、1つまたは2つ以上の第1の微細構造部と、少なくともホウ素が添加された石英ガラスからなる、1つまたは2つ以上の第2の微細構造部とからなってもよい。第1の微細構造部と第2の微細構造部との熱膨張係数の差に起因して、2回以下の回転対称性のみをもつ断面応力分布を発生させることにより、偏波保持光ファイバとして機能する。「2回以下の回転対称性のみをもつ」とは、「3回以上の回転対称性を有しない」ことを意味する。
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
作製したPBGファイバの断面図を図1に示す。純粋石英(屈折率n)のバックグラウンド材料11中に、純粋石英にフッ素を添加することで屈折率を低下させた石英ガラス(屈折率nrod)を三角格子状に離散的に配置し、クラッド部の微細構造を形成した。離散的に配置された低屈折率の微細構造部12によってバックグラウンド材料11は網目構造(Web構造)となる。nrodのnに対する比屈折率差Δrodは、Δrod=(nrod−n)/n=−0.6%=−0.006であった。
コア13も同様に、純粋石英にフッ素を添加することで屈折率を低下された石英ガラス(屈折率ncore)を使用した。ncoreのnに対する比屈折率差Δcoreは、Δcore=(ncore−n)/n=−0.5%=−0.005であった。
図1では、コア13の周囲に6個の微細構造部12を配置し、その外側に12個の微細構造部12を配置し、その外側に18個の微細構造部12を配置し、その外側に24個の微細構造部12を配置した。
図2に、クラッド部のWeb構造を模式的に示す。Web構造の周期(微細構造部の中心間距離。各微細構造部12の中心12cの位置を「×」で示す。)はΛである。また、2つの微細構造部12に挟まれる支柱(strut)12sの厚さはDstrutであり、3つの微細構造部12に囲まれる交点(apex)12aの厚さはDapexであり、それぞれの微細構造部12の厚さはDrodである。そして、次の関係が成立している。
Λ=Drod+Dstrut
作製したPBGファイバにおいては、Λ=21.3μm、Dstrut/Λ=0.06、Dapex/Λ=0.18、Drod/Λ=0.94であった。一般的に、DapexがDstrutよりも大きい方がPBGによる閉じ込め効果が大きくなり、曲げ損失の低減や、伝送損失の低減、透過波長帯域の広帯域化にとっては好ましい。
図3に、コア13に接する箇所のWeb構造を模式的に示す。Web構造の周期(コアと隣接する微細構造部との中心間距離。微細構造部12及びコア13の中心12c,13cの位置を「×」で示す。)は、クラッド部と同じく、Λである。また、コア13と隣接する1つの微細構造部12とに挟まれる支柱13sの厚さはDstrut−coreであり、コア13と隣接する2つの微細構造部12に囲まれる交点(apex)13aの厚さはDapex−coreであり、コア13の厚さはDcoreである。Dstrut−core、Dapex−core、Dcoreは、クラッド部と若干異なる。作製したPBGファイバにおいては、
strut−core=Dstrut/2,
apex−core=Dapex−Dstrut/2,
core=Drod+Dstrut
であった。ただし、この差異は、本発明にとって本質的なことではなく、例えばコア部とクラッド部のWeb構造を同様にして、
strut−core=Dstrut
apex−core=Dapex
core=Drod
としても、本発明の効果は何ら変わることはない。なお、コア部におけるΛでは、DcoreがDrodと等しいかどうかにかかわらず、次の関係が成立している。
Λ=Drod/2+Dstrut−core+Dcore/2=Drod+Dstrut
図4に、実施例1で作製したPBGファイバの透過特性(長さ1.7m)を示す。本PBGファイバは、波長1200〜2100nmの範囲で光を透過させ、急峻な波長特性と高い遮断効果を持つファイバ型バンドパス波長フィルタとして機能する。
図5に、実施例1で作製したPBGファイバの伝送損失の測定結果を示す。1500〜1550nmにおいて伝送損失が最低となり、その値は6〜7dB/kmと低かった。
なお、ここで光の波長は、媒質内の波長ではなく、真空中の波長を意味する。
なお、特許文献4には、バックグラウンド材料に低屈折率の固体材料を埋め込むことでPBG構造を実現する光ファイバについての記載がある。しかし、PBGによる導波が可能なパラメータについては「a grating period equal to 1/2 the optical wavelength」(波長の1/2に等しい回折周期)以上の具体的な教唆がない。特許文献4に記載の「grating period」とは本明細書中の「Web構造の周期Λ」に相当するが、本実施例においてΛ(21.3μm)は透過波長(1200〜2100nm)のおよそ10〜18倍となっている。このことから、本実施例のPBGファイバは、特許文献4において示されている「Λが波長の1/2倍」である構造とは全く異なるものである。すなわち、本実施例は、特許文献4では全く予期されていない構造を用いてPBG導波が可能であることを示している。
(実施例2)
作製したPBGファイバの断面図を図6に示す。本実施例のPBGファイバは、実施例1において、コア13の左右両脇にある2つの低屈折率の微細構造部12を、Fの代わりにBをドープすることで同じ屈折率とした石英ガラスで置換した構造を有する。すなわち、コア13の左右両脇にある2つの応力付与部14は、純粋石英にホウ素を添加することで屈折率を低下させた石英ガラスからなり、コア13及び微細構造部12は、実施例1と同じく、純粋石英にフッ素を添加することで屈折率を低下させた石英ガラスからなる。
本実施例のPBGファイバは、Fを添加した石英ガラスとBを添加した石英ガラスの熱膨張係数が大きく異なることに起因して、2回以下の回転対称性のみをもつ断面応力分布が発生し、偏波保持光ファイバとして機能する。その一方で、屈折率分布に変化はないために、コアの全周においてPBG導波が実現されており、波長フィルタの消光比は、実施例1と同様の大きな値を得ることができる。また、屈折率分布の6回回転対称性も保たれることにより、曲げ損失の曲げ方向依存性も、屈折率分布が2回以下の回転対称性を持つ従来の偏波保持型SC−PBGファイバと比較して小さい。
なお、実施例2のPBGファイバでは、2回以下の回転対称性のみをもつ大きな断面応力分布によって屈折率分布が変化しているため、厳密には屈折率分布の6回回転対称性が失われている。しかしながら、断面応力分布による屈折率変化は、ファイバに偏波保持特性を与えるには十分であるが、PBGに大きな変化を与えて波長フィルタ特性に変化を与えたり、曲げ損失の曲げ方向依存性に変化を与えたりするには不十分である。したがって、本実施例では、偏波保持特性に言及する場合を除いては、屈折率分布の6回回転対称性が保たれているとみなしている。そして、本明細書では、一般的に、「応力を考慮しない場合の屈折率分布」を単に「屈折率分布」としている。
10,10A…PBG(フォトニックバンドギャップ)ファイバ、11…バックグラウンド材料、12…微細構造部、12a…交点、12c…中心、12s…支柱、13…コア、13a…交点、13c…中心、13s…支柱、14…応力付与部。

Claims (6)

  1. 固体であるバックグラウンド材料の中に、前記バックグラウンド材料と異なる屈折率の固体材料からなるコアが存在し、かつ、前記コアの周囲に、前記バックグラウンド材料と異なる屈折率の固体材料からなる微細構造部が離散的に複数存在する断面構造を有し、前記微細構造部は、いずれも前記バックグラウンド材料よりも低屈折率の固体材料のみからなり、フォトニックバンドギャップの効果によって前記コア中を長手方向にモードが伝搬可能な光ファイバであることを特徴とするフォトニックバンドギャップファイバ。
  2. 前記断面構造において離散的に存在する微細構造部の中心間距離が、前記コア中を長手方向に伝搬可能な光の波長の長さよりも長いことを特徴とする、請求項1に記載のフォトニックバンドギャップファイバ。
  3. 前記バックグラウンド材料の屈折率nと、前記微細構造部の屈折率nrodとの比屈折率差Δrod=(nrod−n)/nが、−0.04<Δrod<0.00の関係を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフォトニックバンドギャップファイバ。
  4. 前記微細構造部が、少なくともフッ素が添加された石英ガラスからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトニックバンドギャップファイバ。
  5. 前記微細構造部が、少なくともホウ素が添加された石英ガラスからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトニックバンドギャップファイバ。
  6. 前記微細構造部が、少なくともフッ素が添加された石英ガラスからなる第1の微細構造部と、少なくともホウ素が添加された石英ガラスからなる第2の微細構造部とからなり、前記第1の微細構造部と前記第2の微細構造部との熱膨張係数の差に起因して、2回以下の回転対称性のみをもつ断面応力分布が発生し、偏波保持光ファイバとして機能することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトニックバンドギャップファイバ。
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