JP2014130892A - 放射線吸収材料、放射線検出器、および放射線検出装置 - Google Patents

放射線吸収材料、放射線検出器、および放射線検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高い電子移動度を維持しつつ、キャリア寿命が伸張され、これにより、放射線の検出能を向上させたGaAs系の放射線吸収材料およびこれを用いた放射線検出器を提供する。
【解決手段】AlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)で表され、アンドープの際の比抵抗が107Ωcm以上である化合物を含む放射線吸収材料24である。
【選択図】図1

Description

本発明は、放射線吸収材料、放射線検出器、および放射線検出装置に関する。
近年、放射線計測技術は、病気の診断、治療に欠かすことができないものとなっており、X線診断装置、X線CT装置、核医学診断装置(陽電子放出型断層撮像装置(PET撮像装置)、単光子放射断層撮像装置(SPECT撮像装置)、ガンマカメラ装置等)、およびマンモグラフィー撮像装置などの放射線信号を画像化して診断・治療に利用する装置が広く普及している。
これらの装置で使用される放射線検出器(放射線検出素子)は、主に、シンチレーション検出器と半導体放射線検出器とに分類される。シンチレーション検出器は、シンチレータと光電子倍増管とを組み合わせて構成され、放射線を受けたシンチレータから出た蛍光を光電子増倍管が増幅して測定することにより、放射線を測定するというものである。シンチレーション検出器は、安価で計数効率が良いため、広く使用されている。
一方、半導体放射線検出器は、放射線と半導体結晶との相互作用で生じた電荷(電子−正孔対)を、外部の電子回路により電気信号として取り出すことのできる検出素子である。半導体放射線検出器は、放射線を直接電気信号に変換する(直接検出器)ため、シンチレーション検出器などの他の間接変換方式の放射線検出器に比べエネルギー分解能に極めて優れており、放射線のもつエネルギーを精密に測定でき、かつ、小型化が可能である。このため、半導体放射線検出器は近年注目を集めており、医療分野での応用はもちろん、高エネルギー物理学分野における放射線エネルギーの精密測定実験、個人の被曝量を測定するための線量計、γ線スペクトルを解析することによる核種の同定などにも用いられている。
半導体放射線検出器は、一般に、半導体結晶(放射線吸収材料)と、半導体結晶を挟持する一対の電極から構成され、当該電極対にバイアス電圧を印加することにより、X線、γ線などの放射線が半導体結晶に入射したときに生成する電荷(電子−正孔対)によるパルス電流を計数回路で検出することにより、放射線の有無、強度、エネルギー入射時間などを測定する。
当該半導体放射線検出器の性能は、放射線と半導体結晶との相互作用によるイオン化電荷キャリア(イオン化電流)すなわち電子−正孔対の生成(光電変換過程)と、生成した電子と正孔との再結合・対消滅(再結合過程)とによって支配される。
このうち、半導体結晶における電子−正孔対の生成過程は、(1)半導体結晶を構成する組成元素の価電子数、(2)その結合状態(軌道)および原子核の配置、すなわち、電子密度、(3)原子核に依存した結晶固有の原子状態に依存する。このため、半導体結晶における放射線の吸収長を短くする、すなわち、放射線の検出効率を向上するためには、半導体結晶を構成する元素として、Cd、In、Sn、Sb、Te、さらに重い元素などの重くて価電子数の多い重金属を用いることが有効である。一方、半導体としての特性(例えば耐電圧特性)は半導体の結晶性にも大きく依存する。しかし、元素が重く、価電子数が多くなるほど、完全結晶に近い良質な結晶を得ることは困難である。したがって、工業的に大きな高純度単結晶の製作が可能で半導体の諸特性がバランスよくかつ優れるSi、Geや、良質な結晶が得られ、比較的重く価電子数の多い元素を含むCdTe、CdZnTe、GaAs、GaP、GaN等の化合物半導体などの半導体結晶が用いられている(例えば、特許文献1)。
また、放射線の吸収によって生成した電子および正孔(電荷キャリア)の一部または全部は、寿命に従って半導体結晶内においてそれぞれ正孔および電子と再結合して消滅する(再結合過程)。したがって、外部回路での高強度の出力信号を得るためには、キャリアの再結合を抑制して電極まで電荷キャリアを高効率で輸送することが重要であり、このため、キャリアの寿命とキャリアの移動度の積の値の伸長を図るべく、盛んに研究が行われている。
特開2009−259859号公報
中でも、GaAsは結晶性が良質で、常温下において8000[cm2/V/s]もの高い電子移動度を有する。しかし、GaAsは2〜4[ns]という非常に短い電子寿命を有し、キャリアの寿命とキャリアの移動度の積の値すなわち所謂タウミュー積は、10-5[cm2/V]程度の小さな値にとどまる。
これに対して短いキャリア寿命の欠点を補うにはキャリアとしての電子の走行時間を短縮すればよく、半導体結晶の厚みを薄くして電子の走行距離を短縮する手段や走行速度を向上させる手段が有効である。しかし、電子の走行経路は一般に放射線の吸収経路(放射線の厚さ)と概ね同様であるため、電子の走行距離を短縮させた場合には、電子の走行距離の短縮に伴い放射線の吸収率が低下するという問題が生じる。また、電子の走行速度を向上させるために放射線吸収材料に印加する電界強度を増大させる場合であっても、材料に印加できる電界は絶縁破壊強度や漏洩電流に依存して、106[V/cm]程度が限界であり、再結合を十分に抑制することは困難であった。
そこで本発明は、高い電子移動度を維持しつつ、キャリア寿命が伸張され、これにより、放射線の検出能を向上させたGaAs系の放射線吸収材料およびこれを用いた放射線検出器を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、GaAs系の化合物半導体として価電子数の多いAlとGaAsとの混晶を用い、そのバンド構造を間接遷移型に近い直接遷移型として半導体内を走行する電子と正孔との再結合確率を低下させ、これによりキャリア寿命を伸張することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一形態は、AlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)で表され、アンドープの際の比抵抗が107Ωcm以上である化合物を含む放射線吸収材料である。
本発明によれば、高い電子移動度を維持しつつ、電子と正孔との再結合が抑制されることによりキャリア寿命が伸張され、これにより優れた放射線の検出能を有する放射線吸収材料が得られる。
本発明の一実施形態である放射線検出装置の基本構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態である放射線検出器を示す斜視図である。 GaAsの電子のエネルギーバンド構造を説明する図面である。 AlxGa1-xAs(0.25≦x≦0.35)の電子のエネルギーバンド構造を説明する図面である。 AlxGa1-xAs(x>0.45)の電子のエネルギーバンド構造を説明する図面である。 Gaについての放射線の質量減衰係数曲線を示す図面である。 Alについての放射線の質量減衰係数曲線を示す図面である。 Asについての放射線の質量減衰係数曲線を示す図面である。
本発明の一形態によれば、AlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)で表され、アンドープの際の比抵抗が107Ωcm以上である化合物を含む放射線吸収材料が提供される。
まず、添付した図面を参照しながら、本形態の放射線吸収材料が適用され得る放射線検出装置の基本的な構成を説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は本発明の一実施形態である放射線検出装置の基本構成を示す模式断面図である。図1に示すように、本実施形態の放射線検出装置100は、放射線検出器10と、放射線検出器10から出力される放射線検出信号を出力する出力部60と、を有する。
放射線検出器10は、放射線吸収材料24を含む検出部20と、放射線吸収材料24と電気的に接続されたカソード30と、放射線吸収材料24と電気的に接続されたアノード40と、カソード30とアノード40との間に電圧を印加するための電源50と、を有する。より詳細には、本実施形態の放射線検出器10は、カソード30と、n+層21、n-層22、p層23、放射線吸収材料24、およびp+層25が順に積層されてなる検出部20と、アノード40と、電源50とを有し、放射線吸収材料24の一方の面はn+層21、n-層22およびp層23を介してカソード30に接続されており、他方の面はp+層25を介してアノード40に接続されている。すなわち、放射線検出器10は、検出部20がn+層21、n-層22、p層23、放射線吸収材料24、およびp+層25が順に積層された構成を有する、アバランシェ・フォトダイオード(APD)による半導体検出器である。
なお、本発明の放射線検出器は、放射線吸収材料24と、カソード30と、アノード40と、を必須に含み、電源50、n+層21、n-層22、p層23、およびp+層25は必要に応じて設けられる任意の層である。すなわち、本発明の一実施形態に係る放射線検出器は、放射線吸収材料を含む検出部と、放射線吸収材料と電気的に接続されたカソードと、放射線吸収材料と電気的に接続されたアノードと、を有する。
p層およびn層はそれぞれ真性半導体にp型不純物またはn型不純物をドープしたp型半導体またはn型半導体から構成される層であり、p+層およびn+層もp型半導体またはn型半導体から構成される層であって、p型不純物またはn型不純物のドープ量の多い層である。本実施形態において、n+層21、n-層22、p層23、およびp+層25はそれぞれ、GaAsにシリコンをドープしたn+−GaAs層、GaAsにアンドープのn-−GaAs層、GaAsに炭素をドープしたp−GaAs層、およびGaAsに炭素をドープしたp+−GaAs層である。
放射線検出器10における電極(カソード30およびアノード40)の配置は放射線吸収材料24およびカソード30、放射線吸収材料24およびアノード40がそれぞれ電気的に接続され、放射線吸収材料24で生じた電子および正孔がカソード30およびアノード40へと移動可能な形態であれば特に制限されない。例えば、検出部20が平板状の放射線吸収材料24から構成され、当該放射線吸収材料24の一方の面(上面)の上部にカソード30が形成され、他方の面(下面)の下部にアノード40が形成された構成、すなわち、放射線吸収材料24が一対の電極(カソード30およびアノード40)によって挟持される構成であってもよいし、平板状の放射線吸収材料24の一方の面(上面)の上部に距離を隔てて、カソード30およびアノード40がともに形成され、カソード30の下部に放射線吸収材料24と挟持される形態でn+層21、n-層22、p層23の積層構造を有し、アノード40の下部に放射線吸収材料24と挟持される形態でp+層を有するような片面上の構成であってもよい。
図1に示す放射線検出器10は、電圧をカソード30とアノード40との間にバイアスを印加するための電源50をさらに有する。より具体的には、アノード40が電源50に接続され、電源50の対極が接地され(図示は省略)、カソード30が抵抗を介して接地されており、カソード30とアノード40との間にはバイアス電圧が印加される構成を有する。カソード30とアノード40との間に電源50により電圧が印加されることにより、放射線との相互作用により発生した電荷(電子、正孔)をそれぞれカソード30とアノード40とで収集することができる。
電源50は、カソード30とアノード40との間に電圧を印加する構成であれば特に制限されず、カソード30およびアノード40の少なくとも一方に接続されていればよい。例えば、アノード40を抵抗を介して接地し、カソード30に電源50を接続し、電源50の対極を接地する構成でもよいし、カソード30とアノード40とに電源50を接続し、電源50の対極を接地する構成としてもよい。
また、カソード30とアノード40との間に電位差が生じる構成、例えば、検出部20がフォトダイオード構造を有する場合には、放射線吸収材料24で生じた電子および正孔がカソード30およびアノード40へと移動可能であり、放射線検出器10は電源50を含まなくてもよい。
ただし、検出部20がフォトダイオード構造を有する場合であっても、放射線検出器10が電源50を有することが好ましい。図1に示すように電源50によってカソード30およびアノード40の間に電圧が印加されると、放射線吸収材料24で生じた電子および正孔を高速走行させることができ、これにより、材料内での正孔−電子の再結合を抑制してキャリア寿命に抗して、外部回路への放射線検出信号の出力強度を伸張することができる。
放射線検出器10は出力部60に接続され、放射線検出器10から出力される放射線検出信号が出力部60に出力される。図1に示す放射線検出装置100においては、出力部60はデータ処理装置61と表示装置62とを含んで構成されている。放射線検出装置100においては、カソード30に収集された電荷(電子)の信号がデータ処理装置61によりデータ処理され、例えば、波高値(放射線のエネルギー)に対するカウント数の情報等を作成される。そして、データ処理装置61において作成された情報が表示装置62により表示される。
ここで、放射線検出器10の作用について説明する。X線やγ線などの放射線は通常アノード40側から入射する。アノード40側から入射する場合には放射線吸収材料24に検出対象の放射線に対する十分な吸収係数を付与あるいは十分な吸収距離を付与することで、相対的に移動度の遅い正孔をより短時間にアノードに到達させしめ、実効的に相対的に移動度の早い電子によって構成される電子電流が出力されるようにでき、素子としての高速動作が実現できるため好ましい。ただし、放射線吸収材料24の側面側から入射してもよいし、本発明のカソード30側から入射してももちろんよい。X線やγ線などの放射線が放射線検出器10の放射線吸収材料24に入射すると、材料中の束縛電子と相互作用(光電吸収、コンプトン散乱、レイリー散乱、制動放射、電子陽電子対生成など)することによってエネルギーを得た電子が、電子−正孔対を生成する。生成された電子および正孔は、カソード30とアノード40との間の電位差(例えば、電源50により電圧が印加されることによって生じる電位差)によって、それぞれカソード30およびアノード40へと運ばれる。ここで、放射線の入射がなければ放射線検出器10には熱励起キャリアによるいわゆる暗電流や漏れ電流がわずかに流れるだけであり、放射線の入射された場合にのみ生成された電子−正孔対に対応する電流(電荷)が流れることとなる。そして、生成された電子−正孔対の数は放射線から受け取ったエネルギーに比例するため、電極(カソード30)に収集された電子の量(電荷の大きさ)がそのまま放射線エネルギー損失(放射線エネルギー吸収量)を表す。したがって、電極(カソード30)に収集された電子の量(電荷の大きさ)を信号(パルス電流)として出力することで、放射線吸収材料24に入射した放射線のエネルギーの大きさ(放射線エネルギー吸収量)を測定することができる。
放射線の検出特性を向上するためには、生成された電子−正孔対が再結合する前に効率良く分離・収集する必要がある。しかし、放射線吸収材料は通常、結晶内に不純物や格子欠陥を含むために熱励起されたキャリアを有しており、この熱励起キャリアが検出特性に悪影響(暗電流など)を及ぼす。したがって、このようなキャリアの影響を除去すべく、放射線検出器における検出部をフォトダイオード構造とすることが好ましい。これにより、放射線吸収材料を空乏化し、結晶内から熱励起キャリアが除去されうる。
すなわち、本発明の一実施形態に係る放射線検出器は、PINフォトダイオードによる放射線検出器であり、放射線吸収材料24がp型半導体とn型半導体との間に挟持された構成である。具体的には、放射線吸収材料24をn+層21とp+層25とで挟んだ構造、すなわち、カソード30と、n+層21と、放射線吸収材料24と、p+層25と、アノード40とが順に積層された、PINフォトダイオードの構造とする。なお、検出部をダイオード構造とした場合には、電源50が存在しなくてもキャリア(電子・正孔)の収集が可能である。ただし、カソード30およびアノード40間に逆バイアス電圧を印加することによって、キャリアを高速走行でき、これにより電子−正孔対の再結合を低減させることができる。また、ダイオード構造とすることにより、放射線吸収材料24に高いバイアス電圧を印加することが可能となり、電子をより一層高速走行させて、材料内での正孔−電子の再結合を一層抑制しうる。
さらに、図1に示すように、n+層21と放射線吸収材料24との間に、さらにn-層22およびp層23を有する、アバランシェ・フォトダイオード(APD)の構成が好ましい。n+層21と放射線吸収材料24との間にpn-接合(n-層22およびp層23)が挿入されることにより実効的なpin接合構造を形成、放射線吸収材料24に接合させ、カソード30と放射線吸収材料24との間に急勾配の電場を生じさせることができる。このAPD内部の急勾配の電場によってキャリア(電子)が加速されてなだれ増幅され(アバランシェ増幅)、多数のキャリアを電極に到達させることができる。このようにAPDタイプの放射線検出器は信号が検出器内部で増幅させて回路内で発生する雑音を相対的に小さく抑えることができるため、優れた出力信号おおびS/N比(雑音に対する信号の比)が得られる。
カソード30とアノード40との間に印加される電圧は放射線吸収材料と放射線との相互作用により生成した電子および正孔が電極(カソード30およびアノード40)へと輸送できる限り特に制限されない。例えば、医療機器等の用途に使用する場合に特殊な耐圧構造等を必要としない−1kV〜1kVである。より好ましくは電子の走行時間の低減すなわち電子の走行速度の向上と同時に絶縁破壊の防止の観点から、−800〜−5Vの逆バイアス電圧、または+800〜+5Vの順バイアス電圧を印加することが好ましく、さらに好ましくは低暗電流の実現および十分な電子増倍率の獲得の観点から、−600〜−30Vとすることが好ましい。また、上述したPINフォトダイオード型の場合には、電子の走行時間の低減の点から−1kV〜1kV、さらには−800〜−5Vとすることが好ましい。
上記放射線検出器1はアバランシェフォトダイオードの検出器であるが、この他、放射線吸収材料を、例えば、電荷結合素子(CCD)などに結合させて構成した放射線検出器を用いてもよい。
図1に示す放射線検出器10はディスクリートタイプの素子構造を有しているが、放射線検出器10は、多数の素子を集積させた構造を有していてもよい。例えば、図2に示すように、素子が2次元平面状に配列されたピクセルタイプの構造を有してもよい。なお、図2に示す放射線検出器10においても、アノード40が電源50に接続され電源の対極が接地され(図示は省略)、カソード30が抵抗を介して接地(図示は省略)されている。ただし、本実施形態の放射線検出器10も、アノード40とカソード30との間に電位差が存在する限り、電源50を含まない構成であってもよい。
以下、本実施形態の放射線検出装置100を構成する部材について、詳細に説明する。
《放射線検出器》
放射線検出器10は、放射線吸収材料24を含む検出部20と、放射線吸収材料24と電気的に接続されたカソード30と、放射線吸収材料24と電気的に接続されたアノード40と、カソード30とアノード40との間に電圧を印加するための電源50と、を有する。
〈検出部〉
検出部は放射線吸収材料を含んで構成され、必要に応じてn+層、n-層、p層、およびp+層25を含む。
(放射線吸収材料)
放射線吸収材料は、放射線を吸収し、放射線との相互作用により電荷(電子−正孔対)を生成する。本発明は、放射線吸収材料がAlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)で表され、比抵抗が107Ωcm以上である化合物を含む点を特徴とする。
放射線吸収材料と放射線との相互作用により生成した電子および正孔(電荷キャリア)の一部または全部は、寿命に従って半導体結晶内においてそれぞれ正孔および電子と再結合して消滅する(再結合過程)。したがって、高強度の出力信号を得るためには、キャリアの再結合を抑制して電極まで電荷キャリアを高効率で輸送することが重要である。このため、キャリアの寿命(τ)とキャリアの移動度(μ)の積の値(τ・μ)は放射線検出性能を向上させるうえで非常に重要なパラメータであり、この値を最大とすることが望ましい。
GaAsの半導体結晶は、結晶性が良質で、放射線吸収能が比較的高く、さらに、常温下において8000[cm2/V・s]もの高い電子移動度を有するため、潜在的な優れた放射線吸収材料である。しかしながら、GaAsは2〜4[ns]という非常に短いドリフト伝導電子寿命(τe)を有し、電子と正孔との再結合確率を支配する電子寿命(τe)および電子移動度(μe)の積の値(τe・μe)は、2×10-5〜3×10-5[cm2/V]という小さな値にとどまる。これに対して、放射線吸収材料(半導体結晶)の厚みを薄くしたり、印加する電界強度を高めたりすることにより電子の走行時間を短縮することができる。しかし、厚みを薄くすると放射線の吸収率が低下して出力信号強度が低下してしまうという問題がある。また、高電界とするには単位厚みあたりの印加電圧を向上させ得るようにする必要があり、すなわち比抵抗を向上させるために結晶性を向上させる必要があるが、通常得られるGaAsの単結晶は十分に結晶性がよく、比抵抗を決定する主な要因は熱励起キャリアによる所謂暗電流である。つまり、GaAsにおいて十分な電子の走行時間の短縮を達成しうる耐電圧特性を有する結晶を得ることは困難である。したがって、これらの方法によっても、電子と正孔との再結合を有意に抑制することは困難であった。
本発明者は、放射線吸収材料として、GaAsと価電子数の多いAlを含むAlAsとの混晶を用い、かつ、その組成を制御することにより、高い電子移動度を維持しつつ、キャリア寿命を向上させ、これにより放射線の検出能を向上させることができることを見出した。すなわち、本発明者は、AlxGa1-xAsにおいて、Alの組成比xを0.25〜0.35の範囲とすることで、(1)半導体材料のエネルギーバンド構造を間接遷移型に近付け、材料内を走行する伝導電子と正孔との再結合確率を低下させ、かつ、(2)電子の移動度(μe)を高く保持して伝導電子を高速走行させることで、フォノンとの相互作用を介して伝導帯端よりも高いエネルギー状態を占有させ、正孔との再結合確率を低下させることにより、放射線検出能を向上させることができることを見出したのである。
GaAsの短い電子寿命の一因はGaAsが直接遷移型のエネルギーバンド構造を有するためである。図3はGaAsの電子のエネルギーバンド構造を示す図面である。図3に示すように、GaAsは伝導帯の底および価電子帯の頂上の位置が同一点(Γ点;Γ−valley)にある直接遷移型のエネルギーバンド構造を有しており、伝導電子は価電子帯の上端にいる正孔と運動量のやり取りなしに再結合(垂直遷移)することができるため、再結合確率が高い。このような直接遷移型のエネルギーバンド構造を間接遷移型に近づけることができれば、半導体中を走行する伝導電子の直接遷移による正孔との再結合確率を低下させることが可能となる。
そこで、まず、本発明では、当該GaAsをAlAsとの混晶とすることにより、エネルギーバンド構造を間接遷移型へと近づける。すなわち、GaAsおよびAlAsの混晶(AlxGa1-xAs)は、Alの組成比(x)が増加するにつれて、バンド構造が直接遷移型から間接遷移型へと近づき、x>0.45では間接遷移型となる。図4に、AlxGa1-xAs(0.25≦x≦0.35)の電子のエネルギーバンド構造を示す。また、図5にAlxGa1-xAs(x>0.45)の電子のエネルギーバンド構造を示す。図4に示すように、Alの組成比が増加するにつれ、Γ点のエネルギー準位が上昇するとともに、X点のエネルギー準位が低下し、Γ点のみならずX点付近にも電子が存在しやすくなる。そして、図5に示すように、AlxGa1-xAs(x>0.45)においては、X点(X−valley)が伝導帯の底となり、間接遷移型となることがわかる。このような間接遷移型のエネルギーバンド構造を有する場合には、X点付近の伝導帯にいる電子が価電子帯の上端(Γ点付近)にいる正孔と結合するには格子振動の運動量のやりとりが必要であるため、電子と正孔との再結合が起こりにくく、キャリア寿命が長くなる。
一方、AlAsは、伝導帯端の電子の移動度が200[cm2/V・s]程度と低く、Alの組成比xが増加するにつれて、AlxGa1-xAsの電子の移動度が低下してしまう。また、GaAsのX点での電子の有効質量は約0.85m0(ここで、m0は電子の静止質量を表す)であり、Γ点での電子の有効質量約0.067m0と比べて10倍以上大きい。有効質量が大きいほどキャリア移動度は小さくなる。より具体的には、AlxGa1-xAsにおけるX点での電子の有効質量は、近似的に(0.85−0.14x)m0となる。0<x<0.45の場合、電子移動度は近似的に1×1042−2.2x+8×103[cm2/V・s]と表せる。このように、間接遷移型へのシフトは電子移動度の低下をもたらすため、Alの組成比xが大きくなりすぎると、電子移動度の低下により、電子と正孔との再結合が生じやすくなる。また、素子の高速動作の観点からは一般的に移動度の絶対値は早いほうが好ましいので、GaAsに比べて一桁も小さい移動度を呈するAlAsよりの組成は好ましくない。
本発明者は、上記知見に基づき、間接遷移型へのシフトに伴う電子および正孔の再結合確率の低下と電子移動度の低下とを考慮し、電子移動度の低下を抑制しつつ電子寿命を増大させる組成を検討したところ、Alの組成比xが0.25〜0.35であるAlxGa1-xAs化合物半導体において、電子の寿命(τe)および電子移動度(μe)の積(τe・μe)が最大となることを見出した。AlxGa1-xAs(x=0.25〜0.35)は、電子寿命(τe)が約20〜30[ns]であり、電子移動度(μe)が約2000[cm2/V・s]である。すなわち、本発明は、AlxGa1-xAs(x=0.25〜0.35)の半導体結晶を用いる点を特徴とし、これにより、放射線検出能、すなわち、放射線の吸収特性および検出出力を向上させることができる。AlxGa1-xAsのxが0.25未満である場合には、電子寿命が短いため、放射線の検出出力が低下する。一方、xが0.35を超えると、電子移動度の低下による影響が大きくなり、射線の検出出力が低下するため好ましくない。より好ましくは、タウ・ミュー積の最大値を与える点で、xは0.27〜0.33である。
下記表1にAlxGa1-xAsおよびGaAsの放射線検出特性を示す。表1に示されるように、本発明の放射線検出材料は従来材料であるGaAsに比べて極めて優れた放射線の検出特性を有することがわかる。
なお、AlxGa1-xAsの組成は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)や二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy;SIMS)などの分光学的組成分析法により確認することができる。
AlxGa1-xAs(0.25≦x≦0.35)はX線、γ線のような高エネルギー光子やα線、β線、中性子線、等と相互作用(吸収)することができる。放射線の吸収特性は半導体材料の密度が重要であり、材料を構成する元素の種類および比率に依存する。図6〜図8に、それぞれ、Ga、Al、Asについての放射線の質量減衰曲線(NIST;X−Ray Attenuation Databases)を示す。AlxGa1-xAsの質量密度は5.32−1.56x[g/cm-3]であり、すなわちx=0.0、0.3、1.0のとき5.32、4.85、3.76[g/cm-3]である。また、構成元素Al、Ga,Asの各々の質量数は26.98,69.72、74.92[amu]であるので、各々の組成について構成元素Al、Ga、Asの質量密度は:x=0.0の時0.0、2.56、2.76[g/cm-3]、x=0.3の時0.30、1.79、2.76[g/cm-3]、x=1.0の時1.00、0.0、2.76[g/cm-3]である。これらの各元素の質量密度と質量減衰係数を乗じ、和を求めることで、化合物の各エネルギーに対応した質量減衰係数スペクトルが求まる。これらから、Ga、Al、Asが放射線(一般に10keV〜5MeV)を十分に吸収可能であり、特に10keV〜0.5MeVの放射線の吸収特性に優れることがわかる。すなわち、本発明の放射線吸収材料は10keV〜0.5MeVの放射線の吸収特性に優れ、当該領域の放射線検出に好適に用いられる。
また、放射線の検出能を支配する因子として、上述したキャリア移動度およびキャリア寿命が支配的なパラメータであるが、この他の因子として、放射線吸収材料(半導体結晶)の比抵抗(絶縁強度)の値がある。放射線吸収材料の比抵抗の値が小さいと、材料に印加できる電圧(耐電圧特性)が小さいため、キャリアの走行速度が低下し、キャリアの再結合によるキャリア寿命の低下を招くおそれがある。したがって、上記AlxGa1-xAsは、比抵抗が107Ωcm以上であることが好ましい。また、比抵抗を低下させている要因となっているドナーあるいはアクセプター不純物を補償する目的で、アクセプターあるいはドナー不純物をドープして比抵抗を向上させると、一般的に、この導入されたドーパントが伝導電子(あるいは正孔)の散乱要因となって移動度が低下する可能性があるため、上述の比抵抗はアンドープの状態で実現されることがより好ましい。当該アンドープの際の比抵抗の値は、より好ましくは移動度の保持の点で5×107Ωcm以上であり、さらに好ましくは108Ωcm以上である。なお、比抵抗の値の上限は特に制限されず、大きいほど好ましいが、AlAsにおけるイントリンジックの熱励起キャリアのみの伝導による1×1014Ωcm以下であり、0.25≦x≦0.35の時のAlxGa1-xAsにおいては、イントリンジックの熱励起キャリアのみの伝導に対応する比抵抗の値は1×1012Ωcm以下である。当該アンドープの際の比抵抗値は4端子法により行うことができる。
なお、放射線吸収材料は上記比抵抗の値を満足できるものであれば、その結晶構造は特に制限されない。ただし、一般に非晶構造を有する場合には比抵抗の値が小さくなり上記範囲を満足することができないため、放射線吸収材料は結晶質であることが好ましい。AlxGa1-xAs(0.25≦x≦0.35)は一般に閃亜鉛鉱型結晶構造を有するが、当該結晶構造以外の構造であってももちろんよい。また、放射線吸収材料はAlxGa1-xAsの多結晶を含んで構成されていても、AlxGa1-xAsの単結晶を含んで構成されていてもよいが、結晶性が良いほど、耐電圧特性が向上しうるため、放射線の検出特性を向上する観点では、単結晶から構成されることが好ましい。ただし、高純度の単結晶の製造は製造コストの増大を招くため、コスト面からは放射線吸収材料が多結晶から構成される形態も好ましい。
比抵抗の値は、材料の製造プロセスに主に依存する。本発明において、AlxGa1-xAsの製造方法は、上記比抵抗の範囲を満足できるものであれば特に制限されない。例えば、液体封止引上げ(Liquid Encapsulated Czochralski;LEC)法、水平ブリッジマン(HB)法、液相エピタキシャル(LPE)法、気相エピタキシャル(VPE)法などが挙げられる。中でも、格子欠陥あるいは転位や不純物の比較的少ないバルク結晶が得られ、製造コスト面で有利なLEC法が好ましい。LEC法は、高圧容器内に設けられたるつぼ内に、原料融液とその表面を覆う液体封止剤を投入し、その上から不活性ガスにより融液の解離及び蒸発を防止するための圧力を印加しつつ、種結晶を融液に接触させた後、種結晶を徐々に引き上げて種結晶に続く結晶を成長させる単結晶の製造方法である。LEC法は比較的高純度結晶を得ることができ、また、結晶成長後、製造された結晶をそのまま円筒研削・スライス等の加工を実施して使用できる。LEC法を用いた具体的な製造方法は、例えば、特開第2012−201541号、特開第2006−347865号、特開第2004−315269号、特開第2003−2798などに記載されており、これらを適宜参照することができる。なお、製造の際に、原料融液の組成比(AlAsおよびGaAsの比率)を調整することで、製造する結晶の組成を制御することができる。この他、上記比抵抗の値を満足できる限り、スパッタ、化学気相成長法(CVD法)等を用いてもよい。スパッタ等の方法により得られた結晶はアモルファス的な多結晶体から構成され、結晶性にやや劣るため耐電圧特性は低下するものの、製造コスト面では有利である。
本形態の放射線吸収材料は、上述したAlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)以外に、放射線吸収特性を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。
かかる他の添加剤としては、例えば、C(炭素原子)、Be(ベリリウム原子)、Zn(亜鉛原子)等のp型不純物や、Si(珪素原子)等のn型不純物などが挙げられる。これらのp型不純物および/またはn型不純物を添加することで、比抵抗値を制御することができる。例えば、AlxGa1-xAsの結晶には通常、微量のC(炭素原子)が含まれうる。これを補償するために、Zn(亜鉛原子)等のn型不純物を添加しうる。
放射線吸収材料の厚さは、所望の放射線吸収強度およびキャリア移動度が確保される範囲であれば特に制限されない。放射線吸収材料の厚さを薄くするほど、キャリア(電子、正孔)の走行距離を短くすることができ、このため電子と正孔との再結合を抑制しうる。一方、放射線吸収材料の厚さを厚くするほど、放射線の吸収率を増加させることができる。かかる観点から、放射線吸収材料の厚さは10〜10000μmが好ましく、高エネルギーの光子に対する十分な吸収率を付与するという観点から100〜10000μmがより好ましく、通常工業的医療診断用に使用される放射線に対する吸収率の点から350〜1000μmがさらに好ましい。
(p層、p+層、n層、n+層)
放射線検出器10は必要に応じてn+層21、n-層22、p層23、またはp+層25を含む。なお、図1および図2に示す放射線検出器10は、n+層21、n-層22、p層23、およびp+層25の全てを含む(APD)が、放射線検出器はn+層21、n-層22、p層23、およびp+層25からなる群の少なくとも1つの層を含みうる。例えば、上記のようなn+層21、放射線吸収材料24およびp+層25が順に積層された形態(PIN)であってもよいし、n+層21、放射線吸収材料24、n-層22、およびp+層25が順に積層された形態(APD)であってもよいし、n+層21またはp+層25の一方のみが含まれる形態や、n-層22またはp層23の一方のみが含まれる形態や、電子増倍層n-層がp-層で置き換えられた形態であってもよい。これらは所謂リーチスルー型と呼ばれるAPDの派生形あるいはPIN型APDの派生形であるが、さらには、フォトコンダクション型ダイオードの放射線吸収材料24の単層構造であってもよい。また、当業者に知られるフォトダイオードおよびその類型、派生形であってもよい。
p層およびn層はそれぞれ真性半導体にp型不純物またはn型不純物をドープしたp型半導体またはn型半導体から構成される層である。また、p+層およびn+層もp型半導体またはn型半導体から構成される層であって、p型不純物またはn型不純物のドープ量の多い層である。より具体的には、n+層は、キャリア濃度(n−type σ)が1018〜1019cm-3である化合物半導体から構成される。n-層は、キャリア濃度(n−type σ)が1014〜1016cm-3である化合物半導体から構成される。p層は、キャリア濃度(p−type σ)が1016〜1017cm-3である化合物半導体から構成される。p+層は、キャリア濃度(p−type σ)が1017〜1019cm-3である化合物半導体から構成される。より好ましくは、n+層は、キャリア濃度(n−type σ)が1018〜1019cm-3であり、n-層は、キャリア濃度(n−type σ)が5×1014〜5×1015cm-3であり、p層は、キャリア濃度(p−type σ)が1×1016〜5×1016cm-3であり、p+層は、キャリア濃度(p−type σ)が1018〜1019cm-3である。
p層、p+層、n-層、n+層を構成する半導体材料としては特に制限されないが、GaAs、AlxGa1-xAs、AlAs、InxGa1-xAsy1-y、AlAsxSb1-x等が挙げられ、中でも、半導体吸収材料AlxGa1-xAsと母材が同一であり、製造工程が簡便となる点、コスト面、および格子整合の点からGaAsが好ましい。なお、放射線検出器がp層、p+層、n-層、n+層のうちの複数層を含む場合、これらの層を構成する半導体材料の種類は同一であっても異なっていてもよいが、各層間の格子整合、欠陥密度の低減の点から同一であることが好ましく、特に好ましくはAlxGa1-xAs放射線吸収層とも格子定数が整合する点、さらに、AlxGa1-xAs放射線吸収層で生成した電子および正孔の引き出し経路にポテンシャル障壁を形成しないという点からいずれもGaAsから構成されることが好ましい。なお、p層、p+層、n-層、n+層は単一の半導体材料から構成されていてもよいし、複数の材料を併用してもよい。
キャリア濃度を調整するための、p層またはp+層において用いられるp型不純物やn層またはn+層において用いられるn型不純物としては特に制限されず、母材である半導体材料の種類によって適宜選択される。例えば、GaAsのようなIII−V族化合物半導体の場合には、p型不純物としては、C(炭素原子)、Be(ベリリウム原子)、Zn(亜鉛原子)等が挙げられ、n型不純物としては、Si(珪素原子)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を併用して用いてもよい。また、p層およびp+層の両方を含む場合やn層およびn+層の両方を含む場合において、各層で用いるp型不純物またはn型不純物は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
+層21、n-層22、p層23、またはp+層25を有することにより、放射線の検出特性を向上させることができる。GaAsおよびAlAsの混晶(AlxGa1-xAs)には、通常、不純物や格子欠陥が存在する。このような不純物や格子欠陥に由来するキャリア、熱励起キャリアの影響を除去し、放射線検出特性を向上させる目的で、放射線吸収材料をp+層およびn+層で挟持したPINフォトダイオードの構成とすることが好ましい。また、PINフォトダイオードの構成とすることで、放射線吸収材料24に高いバイアス電圧を印加することが可能となり、電子を高速走行させて、材料内での正孔−電子の再結合を抑制しうる。これにより、放射線検出特性を向上させることができる。
さらに、n+層12と放射線吸収材料24との間に、さらにn層13およびp層14を有する、アバランシェ・フォトダイオード(APD)の構成(図1および図2に示す形態)とした場合には、n層13およびp層14によって生じるAPD内部の急勾配の電場によって電子−正孔対を一層高速走行させることができ、材料内での正孔−電子の再結合を一層抑制しうる。したがって、多数のキャリアを電極に到達させることができ、放射線の検出特性が一層向上する。
なお、上記ではp層、p+層、n-層、n+層を構成する材料として真性半導体にp型不純物またはn型不純物をドープしたp型半導体またはn型半導体を例に挙げて説明したが、キャリア伝導性を示す材料であれば特に制限されず、
芳香族アミン誘導体、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸:PEDOT/PSS,オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体等の有機材料も使用可能である。
p層、p+層、n層、n+層の厚さは特に制限されない。p+層は通常0.1〜10μmであり、組成分布やモフォロジーに由来する印加電界の均一性の点および放射線の透過性の観点から1〜2μmが好ましい。p層は通常0.01〜10μmであり、p層中を通過する電子の再結合抑制の点から0.1〜0.5μmが好ましい。n層は通常0.01〜10μmであり、十分な電子の増倍率の確保の点から1〜10μmが好ましい。n+層は通常0.1〜10μmであり、組成分布やモフォロジーに由来する印加電界の均一性の点からの点から1〜2μmが好ましい。
〈電極〉
電極(カソード30およびアノード40)の材質としては、集電機能を奏する電極材であれば特に制限されない。例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン、銅、クロム、タンタル、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金、金、銀、白金等が挙げられる。電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、チタン/ニッケル/金のように各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。電極の厚さは特に制限されないが、通常0.1〜10μmである。
また、電極として電極板上に電荷注入阻止層を形成してなるバリア付電極を用いてもよい。電荷注入阻止層としては、SiOx、SiNx等から形成される抵抗層や絶縁層が用いられる場合もある。また、電子に対しては導電体でありながら正孔の注入を阻止する正孔注入阻止層や、正孔に対しては導電体でありながら電子の注入を阻止する電子注入阻止層が用いられる。正孔注入阻止層はカソード30に、電子注入阻止層はアノード40に設けられる。正孔注入阻止層としては、例えば、CeO2、ZnS、Sb23等を用いることができる。電子注入阻止層としては、Sb23、CdS、TeドープSe、CdTe、有機物系の化合物等がある。
〈電源〉
放射線検出器10は、電圧をカソード30とアノード40との間に印加するための電源50をさらに有してもよい。電源50は、カソード30とアノード40との間に電圧を印加できるものであれば特に制限されない。電源50は、例えば直流電圧源である。好ましくはバイアス電圧を発生させるための電源であり、通常、その一端が接地され、その他端がスイッチ素子や抵抗を介してカソード30およびアノード40に接続される。また、電源50は例えば、パルスを生じる交流電源であってもよい。
《出力部》
出力部60は放射線検出器10から出力される放射線検出信号を出力する。出力部60は、放射線検出器10から出力される放射線信号を出力(確認)できる形態であれば特に制限されず、放射線検出器10から出力される信号を視覚的、聴覚的、または触覚的に確認できるものであればよい。
一実施形態において、出力部60はデータ処理装置61および表示装置62を含んで構成され、放射線検出器10に出力される信号(例えば、カソード30における電子の信号、すなわち、パルス電流)を、データ処理装置61により所望の情報(例えば、波高値(放射線のエネルギー)に対するカウント数の情報等)へと変換され、表示装置62により視覚的に表示される。
なお、出力部60は、データ処理装置61および表示装置62以外にも、例えば、放射線検出器10から出力される放射線検出信号を増幅処理したり、分析したりするための信号処理回路、アナログ信号をデジタル信号へと変換するためのアナログ・デジタル変換基(ADC)、データ処理装置により作製した情報を記憶するための記憶装置、等を有しうる。
(放射線検出装置の応用)
放射線検出装置100(放射線検出器10)の測定対象としては特に制限されず、放射線検出装置100はX線、γ線のような高エネルギー光子やα線、β線、中性子線、等の放射線の検出に用いることができ、特に、10keV〜0.5MeVの放射線の検出に用いる場合に優れた検出特性が得られるため好ましい。かかる10keV〜0.5MeVの放射線は医療用途において広く利用されており、例えば、10〜30keVの放射線はマンモグラフィー撮像装置に、50〜100keVの放射線はX線CT装置に、100〜500keVの放射線は陽電子放出型断層撮像装置(PET撮像装置)、単光子放射断層撮像装置(SPECT撮像装置)、ガンマカメラ装置等に、好適に使用される。
例えば、本発明の放射線検出装置を用いる応用分野としては、X線診断装置、X線CT装置、核医学診断装置(陽電子放出型断層撮像装置(PET撮像装置)、単光子放射断層撮像装置(SPECT撮像装置)、ガンマカメラ装置等)、およびマンモグラフィー撮像装置などの医療分野における装置のみならず、核医学、原子力、天文学、宇宙線物理学の分野で利用される放射線検出素子、画像診断装置、イメージング装置など、広い範囲の放射線検出装置に用いることができる。
10 放射線検出器、
20 検出部、
21 n+層、
22 n-層、
23 p層、
24 放射線吸収材料、
25 p+層、
30 カソード、
40 アノード、
50 電源、
60 出力部、
61 データ処理装置、
62 表示装置、
100 放射線検出装置。

Claims (6)

  1. AlxGa1-xAs(式中x=0.25〜0.35)で表され、アンドープの際の比抵抗が107Ωcm以上である化合物を含む放射線吸収材料。
  2. 10keV〜0.5MeVの放射線を吸収する、請求項1に記載の放射線吸収材料。
  3. 請求項1または2に記載の放射線吸収材料を含む検出部と、
    前記放射線吸収材料と電気的に接続されたカソードと、
    前記放射線吸収材料と電気的に接続されたアノードと、
    を有する、放射線検出器。
  4. 前記検出部がフォトダイオード構造を有する、請求項3に記載の放射線検出器。
  5. 電圧を前記カソードと前記アノードとの間に印加するための電源をさらに有する、請求項3または4に記載の放射線検出器。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の放射線検出器と、
    前記放射線検出器から出力される放射線検出信号を出力する出力部と、
    を有する、放射線検出装置。
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JP2021523374A (ja) * 2018-05-07 2021-09-02 ケイエイ イメージング インコーポレイテッド 高解像度、高速照射イメージングのための方法と装置

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