JP2014098032A - リポソーム化バンコマイシン製剤 - Google Patents

リポソーム化バンコマイシン製剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2014098032A
JP2014098032A JP2014033713A JP2014033713A JP2014098032A JP 2014098032 A JP2014098032 A JP 2014098032A JP 2014033713 A JP2014033713 A JP 2014033713A JP 2014033713 A JP2014033713 A JP 2014033713A JP 2014098032 A JP2014098032 A JP 2014098032A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vancomycin
lipid
mice
liposome
liposomal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2014033713A
Other languages
English (en)
Inventor
Xingong Li
シンオン リー
R Perkins Walter
アール. パーキンス ウォルター
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Insmed Inc
Original Assignee
Insmed Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Insmed Inc filed Critical Insmed Inc
Publication of JP2014098032A publication Critical patent/JP2014098032A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/04Peptides having up to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
    • A61K38/14Peptides containing saccharide radicals; Derivatives thereof, e.g. bleomycin, phleomycin, muramylpeptides or vancomycin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/0012Galenical forms characterised by the site of application
    • A61K9/007Pulmonary tract; Aromatherapy
    • A61K9/0073Sprays or powders for inhalation; Aerolised or nebulised preparations generated by other means than thermal energy
    • A61K9/0078Sprays or powders for inhalation; Aerolised or nebulised preparations generated by other means than thermal energy for inhalation via a nebulizer such as a jet nebulizer, ultrasonic nebulizer, e.g. in the form of aqueous drug solutions or dispersions
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • A61K9/1277Processes for preparing; Proliposomes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system
    • A61P11/08Bronchodilators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/04Antibacterial agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/30Against vector-borne diseases, e.g. mosquito-borne, fly-borne, tick-borne or waterborne diseases whose impact is exacerbated by climate change

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Otolaryngology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】リポソーム化バンコマイシン製剤の提供。
【解決手段】本開示は、1つには薬剤に対する脂質の比率が低くバンコマイシン濃度が高いリポソーム化バンコマイシン組成物に関する。さらに、本開示は、1つにはこうした組成物の製造方法に関する。本発明は、薬剤に対する脂質の比率が低い、脂質ベースのバンコマイシン製剤を提供することを目的とする。一実施形態では、本発明は、リポソームおよびバンコマイシンを含むリポソーム化バンコマイシンに関する。いくつかの実施形態では、バンコマイシンをリポソームに封入する。他の実施形態では、バンコマイシンはリポソーム内に封入された水性媒体中にあり、たとえば、水性媒体は水性ゲルまたは粘稠懸濁液である。
【選択図】なし

Description

関連出願への相互参照
本願は、2007年10月23日に出願された米国仮特許出願第60/981,990号、および2008年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/103,725号の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の双方は、本明細書中に参考として援用される。
発明の背景
バンコマイシンは枝分かれした三環系の非リボソーム型グリコペプチド抗生物質であり、Actinobacteria種Amycolaopsis orientalisの発酵作用により産生される。バンコマイシンは、グラム陽性菌本来の細胞壁合成を阻害することで作用すると考えられている。さらに、バンコマイシンは細胞膜の透過性およびRNAの合成も変化させる。したがって、バンコマイシンは一般に、他の種類の抗生物質に無反応なグラム陽性菌が引き起こす感染症の防止および処置に使用される。バンコマイシンは一般に、他の一次抗生物質に抵抗性がある感染症に対する最後の手段の処置剤として使用されてきた。これは、ほとんどの適応症に対してバンコマイシンが静脈内投与されるためである。加えて、バンコマイシンには毒性が懸念されており、その毒性の懸念のため半合成ペンシリンが開発され、好んで使用されている。それでも、特に70年代から始まった多耐性Staphylococcus aureus(MRSA:multiple−resistant Staphylococcus aureus)の広がりに伴い、バンコマイシンの使用は増加している。
バンコマイシンは通常、腸管粘膜を通過できないため静脈内投与される。投与は疼痛および血栓性静脈炎を伴うため、希薄溶液を用い少なくとも約60分にわたるゆっくりとしたものでなければならない。バンコマイシンの作用は時間依存性である。したがって、その抗菌活性は、薬剤レベルが標的生体の最小発育阻止濃度(MIC:minimum inhibitory concentration)を超えている時間に左右される。たとえば、バンコマイシンは通常、血中レベルが約10〜20mcg/mLにとどまるように投与される。成人にバンコマイシンを静脈内投与する場合、典型的には6時間かけて約500mgまたは12時間かけて約1gをIV注入する。小児には約10mg/kgの量で6時間かけてバンコマイシンを静脈内投与する。乳児および新生児には最初に約15mg/kgの量で、続いて生後1週目には12時間かけて、生後1ヶ月までは8時間ごとに10mg/kgの量でバンコマイシンを静脈内投与すればよい。成人にバンコマイシンを経口投与する場合は、典型的には1日約500mg〜2gの量で約7〜10日間3または4回に分けて投与する。小児には、約40mg/kg/日(最大(up top)2g/日)の量で約7〜10日間3または4回に分けて投与するのが一般的である。
バンコマイシンは偽膜性大腸炎の処置に使用されており、この場合、感染の部位に到達するように経口投与される。バンコマイシンはさらに、気道感染の処置のためネブライザーを用いて吸入により適応外使用されている。
嚢胞性線維症(CF:cystic fibrosis)患者は肺の粘膜分泌物および/または痰の粘度が高いため、感染症が頻繁に起こり、細菌のコロニー形成が原因のバイオフィルムが形成される。こうした液体および物質はどれも、抗感染薬が効果的に感染を標的にする際の障害となる。本開示の一態様はこうした障害を解決し、さらには投与(量または頻度)を減らすことで、患者に対する薬剤負荷を抑制すると共に患者のコンプライアンスを強力に高める。肺感染症(lung infection)では、本発明により提供される投与スケジュールが薬剤負荷を抑制する手段になるのが一般的である。
また、嚢胞性線維症は気管支拡張症を来す恐れがある。気管支拡張症は粘液閉塞が原因で気道(respiratory passage)が異常拡張する。体が粘液を取り除くことができない場合、粘液は粘着になり、気道に貯留する。この閉塞とそれに伴う感染が炎症を引き起こし、この通路は脆弱化し、かつ拡大する。この脆弱化した通路には瘢痕および変形が認められ、さらに粘液および細菌が貯留し、感染および気道の閉塞のサイクルを引き起こすことがある。気管支拡張症は気管支樹の一部が不可逆性に拡張する限局性の疾患である。病変した気管支は拡張し、炎症を起こして閉塞しやすくなり、気流閉塞が起こり、分泌物の除去が障害される。気管支拡張症は種々の障害と関連があるが、通常はStaphylococcusもしくはKlebsiella種またはBordatella pertussisが原因の感染症などの壊死部の細菌感染に起因する。
気管支拡張症は慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)の1つであり、気腫および気管支炎が合併することがある。この疾患は喘息または肺炎とよく誤診される。気管支拡張症は年齢を問わず発症するが、ほとんどの場合、小児期から発症し始める。ただし、症状が現れるのはずっと後になってからである場合がある。気管支拡張症は原発性線毛機能不全または嚢胞性線維症などの先天性欠損の一部として発症する可能性がある。米国では気管支拡張症の全症例の約50%が嚢胞性線維症に起因する。また、傷害、または結核、肺炎およびインフルエンザのような他の疾患によって生後発症する場合もある。
気管支壁が拡張すると、拡張した領域により気管支の通常の空気圧が遮断され、痰が押し上げられずに拡張した領域内にたまるため、気流閉塞が起こり、分泌物の除去が阻害される。たまった痰により感染性病原体が増殖しやすい環境ができるため、そうした肺の領域は感染症が非常に起こりやすくなる。肺に起こる感染症が多いほど、肺組織および肺胞の損傷は大きくなる。こうしたことが起きると、気管支はさらに弾力性を失い拡張するため、その疾患に永続的な破壊サイクルが生まれることになる。
気管支拡張症には重症度のレベルに応じて3つのタイプがある。紡錘状(円柱状)気管支拡張症(最も多いタイプ)は、気管支が先細りにならずに軽度の炎症を起こしている状態をいう。静脈瘤気管支拡張症の場合は、拡張領域が収縮領域と混在しているため、気管支壁が数珠状を呈する。嚢状(嚢胞状)気管支拡張症は、鏡面像に関わりなく気管支の末端が不可逆性に風船のように膨らむ重度の症状を特徴とする。慢性の湿性咳が顕著に見られ、気管支拡張症患者の最大90%で起こる。患者の76%で毎日痰が出る。
気管支拡張症の原因には先天性のものと後天性のものとがある。よく見られる遺伝性の原因の1つとして嚢胞性線維症があり、患者数は少ないが重度の限局性気管支拡張症を発症する患者もいる。他の遺伝性の原因または寄与因子としては、カルタゲナー症候群、ヤング症候群、α1アンチトリプシン欠損症および原発性免疫不全症が挙げられる。
後天性の気管支拡張症の方が起こりやすく、主因の1つは結核である。この疾患の小児に特によく見られる原因はヒト免疫不全ウイルスによる後天性免疫不全症候群である。気管支拡張症の他の原因としては、呼吸器感染、閉塞、アンモニアおよび他の有毒ガスの吸入および吸引、誤嚥、アルコール依存症、ヘロインの使用およびアレルギーが挙げられる。また、喫煙も気管支拡張症に関係している。
気管支拡張症の診断は、病歴と高解像度CTスキャンの所見における特徴的なパターンとの検討が基本となる。こうしたパターンには、「tree−in−bud」異常および境界明瞭な嚢胞がある。また、気管支拡張症は、血液検査および痰培養サンプルにより基礎疾患が十分に確認されるように、病歴から頻回の呼吸器感染症が明らかにされれば、CTスキャンで確認しなくても診断することもできる。
症状としては、咳嗽(横になると悪化する)、息切れ、肺音異常、脱力、体重減少および疲労が挙げられる。感染症の場合、粘液が変色し、悪臭を放つことがあり、血液を含む場合もある。症状の重症度は患者間で大きく異なり、症状を伴わない患者もある。
気管支拡張症の処置は感染症および気管支分泌物の制御、気道閉塞の軽減およびを合併症の防止を目的とする。これには、有害な感染症を防止するための抗生物質の長期間の使用、さらには体位ドレナージによる貯留液の除去および胸部理学療法が含まれる。さらに、限局性気管支拡張症の処置には手術を用いて、疾患の進行を引き起こす恐れがある閉塞を取り除くこともある。
吸入ステロイド療法を一貫して遵守すれば痰の生成が抑えられる可能があり、一定期間にわたって気道狭窄が改善されると気管支拡張症が防止される。よく使用される治療剤として喘息の処置にも使用されるベクロメタゾンジプロピオナートがある。アルブテロール(サルブタモール)、フルチカソン(フローベント/フリキソタイド)およびイプラトロピウム(アトロベント)などの吸入薬を使用すると、気道から異物を除去して炎症を抑えることで感染症を起こりにくくするのに役立つ。
FDAにより気管支拡張症を伴う嚢胞性線維症患者への使用が承認されているものにマンニトールの吸入用ドライパウダー、商品名Bronchitolがある。この最初のオーファンドラッグの適応は2005年2月に承認され、気管支拡張症の処置に使用できるようになった。最初の承認は、第2相臨床試験の結果から、この製品が安全で忍容性が良好であるうえ、粘液を薄め/排除しやすくするのに効果があることで、気管支拡張症のような慢性閉塞性肺疾患の患者の生活の質を改善することが示されたことに基づくものであった。2007年時点で処置の安全性および有効性を確認するための長期試験が進行中である。
気管支拡張症の患者には感染症用の抗生物質、および通路を広げる気管支拡張剤が投与されることが多い。特に嚢胞性線維症の人には感染症の再発を防止するため、抗生物質が長期にわたり処方されることも珍しくない。また、粘液の排出に役立つ理学療法技術もある。重度の症例の場合、肺移植も選択肢になる。死亡は稀であるが、大量出血が死亡につながることもある。肺感染症(lung infection)をすぐに処置すれば、気管支拡張症が発症する可能性は低い。
肺炎は、肺胞(空気で満たされた微細な肺嚢で大気から酸素を吸収する役割を担う)が炎症を起こして液体で充満した、肺および呼吸器系の疾病である。肺炎は、細菌、ウイルス、真菌または寄生虫の感染および肺の化学的または物理的損傷など、様々な原因によって引き起こされる可能性がある。肺炎の典型的な症状には、咳、胸痛、発熱および呼吸困難がある。診断手段としてX線検査および痰の検査がある。
たとえば、吸入により、バンコマイシンなどの薬を患者の肺に投与することで上述の疾患を処置することは特に望ましい。薬剤の吸入は薬剤の疾患部位への直接的な送達を促し、薬剤の全身曝露が最小限に抑えられる。
吸入投与に好適なある種の徐放技術はリポソームなどの脂質ベースの製剤を用いて、徐放により肺および全身における薬剤の治療効果を長時間持続させると共に、疾患部位を標的として薬剤の取り込みを促進することができる。リポソームの薬物送達システムでは、多くの場合、体内での飽和効果を避けるため薬剤に対する脂質(L/D)の割合を低くして脂質付加を可能な限り最低限に抑えることが望ましい。吸入による肺送達では、これが特に当てはまる場合がある。長期的に使用する場合、リポソームの投与が肺からの脂質のクリアランスを上回ることから投与に限界があり、したがって、医薬品の有効性が限定される恐れがあるためである。L/D比を低くすれば、投与/クリアランス閾値に到達するまでより多くの薬剤を投与できる。加えて、L/D比を低くすると、薬剤濃度が上がるため被検体が吸入処置を受けるのに要する時間を最小限に抑えることもできる。このように、L/D比を低くすれば、投与が簡単になり、患者の快適性およびコンプライアンスも向上する。
発明の要旨
本発明は、薬剤に対する脂質の比率が低い、脂質ベースのバンコマイシン製剤を提供することを目的とする。一実施形態では、本発明は、リポソームおよびバンコマイシンを含むリポソーム化バンコマイシンに関する。いくつかの実施形態では、バンコマイシンをリポソームに封入する。他の実施形態では、バンコマイシンはリポソーム内に封入された水性媒体中にあり、たとえば、水性媒体は水性ゲルまたは粘稠懸濁液である。
いくつかの実施形態では、水性媒体中のバンコマイシンの濃度は約25〜400mg/mL、約25〜200mg/mL、約30〜175mg/mL、約40〜150mg/mL、約40〜125mg/mL、約40〜100mg/mL、約40〜80mg/mL、約45〜80mg/mL、約50〜75mg/mL、約50〜65mg/mL、約40〜70mg/mL、約40〜60mg/mLまたは約45〜55mg/mLである。
いくつかの実施形態では、リポソームは少なくとも1種の脂質を含み、この組成物の脂質とバンコマイシンの比率は約3:1またはそれ未満である。いくつかの実施形態では、脂質とバンコマイシンの比率は約0.1:1〜3:1である。他の実施形態では、脂質とバンコマイシンの比率は約、約0.1〜1である。
いくつかの実施形態では、リポソームの平均粒子サイズは約0.1〜5ミクロン、約0.1〜2ミクロン、約0.1〜2.5ミクロン、約0.5〜3ミクロン、約0.5〜2ミクロン、約1〜3ミクロン、約1.25〜3ミクロンまたは約1.5〜2.5ミクロンである。
いくつかの実施形態では、リポソームは、ホスファチジルコリン(PC:phosphatidyl choline)、ホスファチジルグリセロール(PG:phosphatidyl−glycerol)、ホスファチジン酸(PA:phosphatidic
acid)、ホスファチジルイノシトール(PI:phosphatidylinositol)、ホスファチジルセリン(PS:phosphatidyl serine)およびその混合物からなる群から選択される脂質を含む。他の実施形態では、リポソームは、卵ホスファチジルコリン(EPC:egg phosphatidylcholine)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG:egg phosphatidylglycerol)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI:egg phosphatidylinositol)、卵ホスファチジルセリン(EPS:egg phosphatidylserine)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE:phosphatidylethanolamine)、ホスファチジン酸(EPA:phosphatidic acid)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG:soy phosphatidylglycerol)、大豆ホスファチジルセリン(SPS:soy phosphatidylserine)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI:soy phosphatidylinositol)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE:soy phosphatidylethanolamine)、大豆ホスファチジン酸(SPA:soy phosphatidic acid)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC:hydrogenated egg phosphatidylcholine)、水素化卵ホスファチジルグリセロール(HEPG:hydrogenated egg phosphatidylglycerol)、水素化卵ホスファチジルイノシトール(HEPI:hydrogenated egg phosphatidylinositol)、水素化卵ホスファチジルセリン(HEPS:hydrogenated egg phosphatidylserine)、水素化ホスファチジルエタノールアミン(HEPE:hydrogenated phosphatidylethanolamine)、水素化ホスファチジン酸(HEPA:hydrogenated phosphatidic acid)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC:hydrogenated soy
phosphatidylcholine)、水素化大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG:hydrogenated soy phosphatidylglycerol)、水素化大豆ホスファチジルセリン(HSPS:hydrogenated soy phosphatidylserine)、水素化大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI:hydrogenated soy phosphatidylinositol)、水素化大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE:hydrogenated soy phosphatidylethanolamine)、水素化大豆ホスファチジン酸(HSPA:hydrogenated soy phosphatidic acid)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC:dipalmitoylphosphatidylcholine)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC:dimyristoylphosphatidylcholine)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG:dimyristoylphosphatidylglycerol)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG:dipalmitoylphosphatidylglycerol)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC:distearoylphosphatidylcholine)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG:distearoylphosphatidylglycerol)、ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE:dioleylphosphatidyl−ethanolamine)、パルミトイルステアロイルホスファチジル−コリン(PSPC:palmitoylstearoylphosphatidyl−choline)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG:palmitoylstearolphosphatidylglycerol)、モノ−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(MOPE:mono−oleoyl−phosphatidylethanolamine)、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセリドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP:dilauroyl ethylphosphocholine)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP:dimyristoyl ethylphosphocholine)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP:dipalmitoyl ethylphosphocholine)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP:distearoyl ethylphosphocholine)、N−(2,3−ジ−(9−(Z)−オクタデセニルオキシ)−プロプ−1−イル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA:dimyristoylphosphatidylacid)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA:dipalmitoylphosphatidylacid)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA:distearoylphosphatidylacid)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI:dimyristoylphosphatidylinositol)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI:dipalmitoylphosphatidylinositol)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI:distearoylphospatidylinositol)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS:dimyristoylphosphatidylserine)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS:dipalmitoylphosphatidylserine)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS:distearoylphosphatidylserine)およびその混合物からなる群から選択される脂質を含む。他の実施形態では、脂質はホスファチジルコリンである。他の実施形態では、脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)などの飽和ホスファチジルコリンである。
いくつかの実施形態では、リポソームはステロールを含まない。他の実施形態では、リポソームは、ホスファチジルコリンから本質的になる脂質を含む。他の実施形態では、脂質はDPPCから本質的になる。
いくつかの実施形態では、噴霧プロセスの間、バンコマイシンの少なくとも約50%はがリポソーム内にとどまる。
本発明の別の態様は、バンコマイシンリポソーム製剤を調製する方法であって:
a)アルコール性脂質溶液を水性/アルコール性バンコマイシン溶液に注入して最初のバンコマイシンリポソーム製剤を形成すること;および
b)アルコールを除去してバンコマイシンリポソーム製剤を形成すること
を含む、方法に関する。
いくつかの実施形態では、ステップb)は、バンコマイシンリポソーム製剤から封入されていないバンコマイシンを除去することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、アルコールはエタノールである。
いくつかの実施形態では、透析またはダイアフィルトレーションまたは遠心分離によりアルコールを除去する。
他の実施形態では、水性/アルコール性バンコマイシン溶液はバンコマイシン濃度が約100〜500mg/mLである。
他の実施形態では、アルコール性脂質溶液は脂質濃度が約50〜250mg/mLである。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
リポソームおよびバンコマイシンを含む、リポソーム化バンコマイシン。
(項目2)
上記バンコマイシンは上記リポソームに封入されている、項目1に記載の組成物。
(項目3)
上記バンコマイシンは、リポソーム内に封入されている水性媒体中にある、項目2に記載の組成物。
(項目4)
上記水性媒体は水性ゲルまたは粘稠懸濁液である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
上記水性媒体中の上記バンコマイシン濃度は約25〜400mg/mL、約25〜200mg/mL、約30〜175mg/mL、約40〜150mg/mL、約40〜125mg/mL、約40〜100mg/mL、約40〜80mg/mL、約45〜80mg/mL、約50〜75mg/mL、約50〜65mg/mL、約40〜70mg/mL、約40〜60mg/mLまたは約45〜55mg/mLである、項目3に記載の組成物。
(項目6)
上記リポソームは少なくとも1種の脂質を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
上記組成物は脂質とバンコマイシンの比率が約3:1またはそれ未満である、項目6に記載の組成物。
(項目8)
上記脂質とバンコマイシンの比率は約0.1:1〜3:1である、項目7に記載の組成物。
(項目9)
上記脂質とバンコマイシンの比率は約、約0.1〜1である、項目7に記載の組成物。(項目10)
上記リポソームは平均粒子サイズが約0.1〜5ミクロンである、項目1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
リポソームは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)およびそれらの混合物からなる群から選択される脂質を含む、項目1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
上記リポソームは、
卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)、水素化卵ホスファチジルイノシトール(HEPI)、水素化卵ホスファチジルセリン(HEPS)、水素化ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水素化ホスファチジン酸(HEPA)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素化大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素化大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水素化大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水素化大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水素化大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル−コリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセリドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N−(2,3−ジ−(9−(Z)−オクタデセニルオキシ)−プロプ−1−イル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)およびそれらの混合物
からなる群から選択される脂質を含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
(項目13)
上記脂質はホスファチジルコリンである、項目11に記載の組成物。
(項目14)
上記脂質は飽和ホスファチジルコリンである、項目13に記載の組成物。
(項目15)
上記ホスファチジルコリンはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である、項目14に記載の組成物。
(項目16)
上記リポソームはステロールを含まない、項目1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
(項目17)
上記リポソームはホスファチジルコリンから本質的になる脂質を含む、項目1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
(項目18)
上記脂質はDPPCから本質的になる、項目17に記載の組成物。
(項目19)
噴霧プロセスの間、上記バンコマイシンの少なくとも50%が上記リポソーム内にとどまる、項目1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
(項目20)
バンコマイシンリポソーム製剤を調製する方法であって:
a)アルコール性脂質溶液を水性/アルコール性バンコマイシン溶液に注入して最初のバンコマイシンリポソーム製剤を形成すること;および
b)上記アルコールを除去して上記バンコマイシンリポソーム製剤を形成すること
を含む、方法。
(項目21)
ステップb)は封入されていないバンコマイシンを上記バンコマイシンリポソーム製剤から除去することをさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
上記アルコールはエタノールである、項目20または21に記載の方法。
(項目23)
上記アルコールは透析またはダイアフィルトレーションまたは遠心分離により除去される、項目20〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
上記水性/アルコール性バンコマイシン溶液はバンコマイシン濃度が約100〜500mg/mLである、項目20〜23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
上記アルコール性脂質溶液は脂質濃度が約50〜250mg/mLである、項目20〜24のいずれか1項に記載の方法。
本発明のこうした実施形態、他の実施形態ならびにその特色および特徴については、以下に記載される説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
生理的条件下で2種類のリポソーム製剤から放出されるバンコマイシンを示すグラフである。 様々な保存温度下で代表的なリポソーム化バンコマイシン製剤から漏出するバンコマイシンを示す。 密度勾配で分画された代表的なリポソーム製剤を示す。このリポソーム集団は均一であり、集団全体の脂質/薬剤比も均一であった。 吸入リポソーム化バンコマイシンおよび吸入可溶性バンコマイシンによる処置後の、肺炎および敗血症のSwiss Websterマウスの生存率のグラフを示す。 吸入リポソーム化バンコマイシンおよび吸入可溶性バンコマイシンによる処置後の、肺炎および敗血症のSwiss Websterマウスの生存率のグラフを示す。 食塩水、吸入リポソーム化バンコマイシンおよび腹腔内注射バンコマイシンで処置したマウス肺内のLog10CFU/肺のグラフを示す。 処置から3日後にマウス肺内のバンコマイシンレベルが用量依存的に上昇することを示すグラフである。 様々な条件下でのバンコマイシン曝露後に肺内で検出されたコロニー形成単位(CFU:colony−forming unit)のグラフを示す。
I.定義
便宜上、本発明をさらに説明する前に本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に用いるいくつかの用語をここにまとめてある。こうした定義についてはこれ以降の開示内容に照らして読み、当業者が理解するように理解するものとする。他に記載がない限り、本明細書に用いる技術用語および科学用語はすべて当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持つ。
「肺窮迫」という用語は、ヒトの気道に関係した任意の疾患、病気または他の不健康な状態をいう。一般に、肺窮迫になると呼吸困難を起こす。
「処置する」という用語は当該技術分野で知られており、任意の状態または疾患の少なくとも1つの症状を治療および軽減することをいう。
「防止する」という用語は当該技術分野で知られており、本組成物の1つまたは複数を被検体投与することをいう。本組成物が望ましくない状態(たとえば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状の前に投与されれば、その処置は予防的処置、すなわち、宿主に望ましくない状態が起こるのを防ぐことになるのに対して、望ましくない状態の発現後に投与されれば、その処置は治療処置になる(すなわち、既にある望ましくない状態またはその副作用の緩和、軽減または維持を目的とする)。
「治療有効用量」および「治療有効量」という用語は、患者の症状の防止または軽減が得られる、または、たとえば、臨床徴候の改善、疾患発現の遅延、細菌レベルの低下など所望の生物学的結果が得られる化合物の量をいう。
本方法により処置しようとする「患者」、「被検体」または「宿主」はヒトを意味しても、または非ヒト動物を意味してもよい。
「哺乳動物」という用語は当該技術分野において公知であり、例示的な哺乳動物としては、ヒト、霊長類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよび齧歯動物(たとえば、マウスおよびラット)が挙げられる。
「生分解性」という用語は当該技術分野で知られており、本発明または投与された量の一部が、ある形態で投与対象の被検体または患者に吸収される、取り込まれる、あるいは生理学的に利用可能になることをいう。
「薬学的に許容される塩」という用語は当該技術分野で知られており、化合物のほぼ無毒の無機および有機酸付加塩、たとえば、本発明の組成物に含まれる塩をいう。
「薬学的に許容されるキャリア」という用語は当該技術分野で知られており、任意の本組成物またはその成分を身体のある器官または部分から身体の別の器官または部分への運搬または輸送に関わる液体もしくは固体充填剤、希釈液、賦形剤、溶媒もしくは封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルをいう。キャリアはそれぞれ本組成物およびその成分に適合するという意味で「許容可能」であり、患者に害があるものであってはならない。
バンコマイシンという用語は、以下の式の化合物または薬学的に許容される塩をいう:
たとえば、塩はヒドロクロリド塩であってもよい。
一実施形態では、本発明はバンコマイシンおよびリポソームを含むリポソーム化バンコマイシン組成物を対象とし、たとえば、バンコマイシンはリポソーム内に封入されている。いくつかの実施形態では、バンコマイシンはリポソーム内に封入されている水性媒体中にある。いくつかの実施形態では、リポソーム内の水性バンコマイシンはバンコマイシン濃度が高いため、粘稠懸濁液またはゲルを形成する。このため、この組成物は脂質膜で封入された水性バンコマイシンのゲルまたは懸濁液を含む。
本発明の組成物はバンコマイシンに対して脂質の比率が低いと都合がよい。リポソームの薬物送達システムでは、多くの場合、体内での飽和効果を避けるため薬剤に対する脂質(L/D)の割合を低くして脂質付加を可能な限り最低限に抑えることが望ましい。一実施形態では、前述の組成物の脂質とバンコマイシンの比率は重量比で約3:1またはそれ未満、たとえば、約0.1:1〜3:1、約0.1:1〜1:1:、約0.1:1〜0.9:1、約0.1:1〜0.8:1、約0.2:1〜0.75:1、約0.25:1〜0.7:1または約0.35:1〜0.65:1である。他の実施形態では、L/D比は重量比で約0.50、約0.55、約0.60、約0.65または約0.70である。
一実施形態では、前述の組成物は水性媒体中のバンコマイシンの濃度が約25〜200mg/mL、約30〜175mg/mL、約40〜150mg/mL、約40〜125mg/mL、約40〜100mg/mL、約40〜80mg/mL、約45〜80mg/mL、約50〜75mg/mL、約50〜65mg/mL、約40〜70mg/mL、約40〜60mg/mLまたは約45〜55mg/mLである。他の実施形態では、バンコマイシン濃度は約0.40mg/mL、約0.45mg/mL、約0.5mg/mL、約0.55mg/mLまたは約0.60mg/mLである。
別の実施形態では、前述の組成物のリポソームは平均粒子サイズが約0.1〜5ミクロン、約1.0〜5.0ミクロン、約1.0〜3.0ミクロン、約1.0〜2.0ミクロン、約1.25〜3.0ミクロン、約1.5〜2.5ミクロン、約1.0〜2.0ミクロンまたは約1.25〜1.75ミクロンである。他の実施形態では、具体的な平均サイズが約1.0ミクロン、約1.1ミクロン、約1.2ミクロン、約1.3ミクロン、約1.4ミクロン、約1.5ミクロン、約1.6ミクロン、約1.7ミクロン、約1.8ミクロン、約1.9ミクロンまたは約2.0ミクロンである。
本発明の脂質バンコマイシン製剤はリポソームの水分散液を含んでもよい。この製剤は、リポソームを形成するための脂質賦形剤および適切な重量オスモル濃度およびpHを与える塩/緩衝液を含んでも構わない。製剤は医薬品賦形剤を含んでもよい。医薬品賦形剤は、任意の本組成物またはその成分を身体のある器官または部分から身体の別の器官または部分への運搬または輸送に関わる液体、希釈液、溶媒または封入材料であってもよい。賦形剤はそれぞれ本組成物およびその成分に適合するという意味で「許容可能」であり、患者に害があるものであってはならない。好適な賦形剤として、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、スクロース、ロイシン、トリロイシンおよび塩化カルシウムが挙げられる。他の好適な賦形剤の例としては、(1)ラクトースおよびグルコースなどの糖;(2)コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびエチルラウラートなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸塩緩衝溶液;および(21)医薬製剤に用いられる他の無毒で適合性がある物質が挙げられる。
脂質およびリポソーム
本発明の組成物に用いる脂質は、リン脂質、トコフェロール、ステロイド、脂肪酸、アルブミンなどの糖タンパク質、アニオン性脂質およびカチオン性脂質など合成脂質でも、半合成脂質でも、天然脂質でもよい。脂質はアニオン性でも、カチオン性でも、中性でもよい。一実施形態では、この脂質製剤は実質的にアニオン性脂質を含まないか、実質的にカチオン性脂質を含まないか、またはそのどちらも含まない。一実施形態では、脂質製剤は、中性脂質しか含まない。別の実施形態では、脂質製剤はアニオン性脂質を含まないか、カチオン性脂質を含まないか、またはそのどちらも含まない。別の実施形態では、脂質はリン脂質である。リン脂質は、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)および卵ホスファチジン酸(EPA);その大豆対応物である大豆ホスファチジルコリン(SPC);SPG、SPS、SPI、SPEおよびSPA;その水素化卵および水素化大豆対応物(たとえば、HEPC、HSPC)、グリセロールの2および3位に12〜26個の炭素原子の鎖を含む脂肪酸のエステル結合およびコリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンなどグリセロールの1位における異なる頭部基からなる他のリン脂質、ならびにそれに対応するホスファチジン酸である。こうした脂肪酸の鎖は飽和でも不飽和でもよく、リン脂質は鎖長および不飽和の程度が異なる脂肪酸からなってもよい。特に、この製剤の組成物は、天然由来肺サーファクタントの主な構成要素ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:dioleoylphosphatidylcholine)を含んでもよい。他の例としては、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)ジパルミトイルホスファチドコリン(DPPC)およびジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびパルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、およびパルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール(PSPG)のような混合リン脂質、ドリアシルグリセリン、ジアシルグリセロール、セラニド、スフィンゴシン、スフィンゴミエリンおよびモノ−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)のような単一アシル化リン脂質がある。
使用する脂質は、脂肪酸、リン脂質およびグリセリドのアンモニウム塩、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスホチジルコリン(PC:phosphotidylcholine)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)を含んでもよい。脂肪酸は、飽和または不飽和の炭素原子12〜26個の炭素鎖長を持つ脂肪酸を含む。いくつかの具体的な例として:ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミンおよびステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N−(2,3−ジ−(9(Z)−オクタデセニルオキシ)−プロプ−1−イル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)および1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)が挙げられる。PG、PA、PI、PCおよびPSの例としては、DMPG、DPPG、DSPG、DMPA、DPPA、DSPA、DMPI、DPPI、DSPI、DMPS、DPPSおよびDSPS、DSPC、DPPG、DMPC、DOPC、卵PCがある。
別の実施形態では、リポソームは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)からなる群から選択される脂質を含む。
別の実施形態では、脂質は、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、ホスファチジン酸(EPA)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジン酸(SPA)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、水素化卵ホスファチジルグリセロール(HEPG)、水素化卵ホスファチジルイノシトール(HEPI)、水素化卵ホスファチジルセリン(HEPS)、水素化ホスファチジルエタノールアミン(HEPE)、水素化ホスファチジン酸(HEPA)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素化大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、水素化大豆ホスファチジルセリン(HSPS)、水素化大豆ホスファチジルイノシトール(HSPI)、水素化大豆ホスファチジルエタノールアミン(HSPE)、水素化大豆ホスファチジン酸(HSPA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジル−コリン(PSPC)、パルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノ−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、トコフェロール、脂肪酸のアンモニウム塩、リン脂質のアンモニウム塩、グリセリドのアンモニウム塩、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジラウロイルエチルホスホコリン(DLEP)、ジミリストイルエチルホスホコリン(DMEP)、ジパルミトイルエチルホスホコリン(DPEP)およびジステアロイルエチルホスホコリン(DSEP)、N−(2,3−ジ−(9−(Z)−オクタデセニルオキシ)−プロプ−1−イル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジル酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジル酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)およびその混合物からなる群から選択される。
別の実施形態では、リポソームはホスファチジルコリンを含む。ホスファチジルコリンはDOPCまたはPOPCなど不飽和であってもよいし、またはDPPCなど不飽和であってもよい。いくつかの実施形態では、ホスファチジルコリンは(DPPC)である。別の実施形態では、リポソームはステロールを含まない。一実施形態では、リポソームはホスファチジルコリンから本質的になる。別の実施形態では、リポソームはDPPCから本質的になる。
DPPCなどのホスファチジルコリンからなるリポソームまたは抗感染脂質製剤は、肺胞マクロファージなど肺内の細胞による取り込みを助け、肺における抗感染症薬の放出を持続させる働きをする(Gonzales−Rothi et al.(1991))。PG、PA、PSおよびPIなどの負に荷電した脂質は粒子凝集を抑えるだけでなく、吸入製剤の徐放性、さらには全身取り込みできるような、肺を通過する製剤の運搬(トランスサイトーシス)をも促進することができる。
どのような特定の理論にも拘束されるわけではないが、脂質が中性脂質を含み、負または正に荷電したリン脂質を含まない場合、リポソーム製剤は肺による取り込みが高まると考えられる。たとえば、脂質が中性脂質しか含まない場合、リポソームはバイオフィルムまたは粘液層に浸透しやすくなる場合がある。例示的な中性脂質にはDPPCなどのホスファチジルコリンがある。
リポソームは、水相を内包する完全に閉鎖した脂質二分子膜である。リポソームは単膜小胞(単一の膜二重層を有する)でも、または多重膜小胞(いくつもの膜二重層がそれぞれ水層で隔てられたタマネギ状の構造を特徴とする)でもよい。二重層は、疎水性の「尾部」領域および親水性の「頭部」領域を持つ2つの脂質単層からなる。膜二重層の構造は、脂質単層の疎水性(無極性)「尾部」が二重層の中心の方を向くのに対して、親水性の「頭部」は水相の方を向くような構造になっている。抗感染脂質製剤は脂質および抗感染症薬が結合したものである。この結合は共有結合でも、イオン結合でも、静電結合でも、非共有結合でも、または立体結合でもよい。こうした複合体は非リポソームであり、水溶性の溶質を新たに内包することができない。こうした複合体の例として、アンホテンシンBの脂質複合体(Janoff et al.,Proc.Nat Acad.Sci,85:6122 6126,1988)およびドキソルビシンとカルジオリピンの複合体が挙げられる。
1つまたは複数の脂質を用いた三次元のケージ状構造のものに脂質クラスレートがあり、この構造には生理活性剤が内包される。こうしたクラスレートは本発明の範囲に含まれる。
水性液体に接触するとリポソームまたは脂質複合体になることができる製剤としてプロリポソームがある。撹拌または他の混合が必要な場合がある。こうしたリポソームは本発明の範囲に含まれる。
肺障害を処置および防止する方法
本発明の組成物は肺障害の処置または防止に有用である。特に、本発明のバンコマイシン組成物は嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺炎、COPDまたは肺感染症の処置に使用することができる。肺感染症はグラム陽性感染症であってもよい。本発明の方法で処置できる肺感染症には、シュードモナス(たとえば、P.aeruginosa、P.paucimobilis、P.putida、P.fluorescensおよびP.acidovorans)、ブドウ球菌、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、連鎖球菌(Streptococcus pneumoniaeを含む)、Escherichia coli、Klebsiella、Enterobacter、Serratia、Haemophilus、Yersinia pesos、Burkholderia pseudomallei、B.cepacia、B.gladioli、B.multivorans、B.vietnamiensis、Mycobacterium tuberculosis、M.avium complex(MAC)(M.aviumおよびM.intracellulare)、M.kansasii、M.xenopi、M.marinum、M.ulceransまたはM.fortuitum complex(M.fortuitumおよびM.chelonei)感染症がある。
いくつかの実施形態では、本発明は、肺障害または感染症を防止する方法であって、前述の組成物のいずれか1つを被検体に投与することを含む方法を対象とする。別の実施形態では、本発明は、気管支拡張症を防止することを対象とする。いくつかの実施形態では、投与は、たとえば、気管内投与または吸入装置によるなど経肺投与である。いくつかの実施形態では、投与はネブライザーによる。
嚢胞性線維症の被検体は特に前述の肺感染症に罹りやすい。加えて、前述の肺感染症は気管支拡張症を引き起こす恐れもあり、以下に限定されるものではないが、嚢胞性線維症患者に影響を及ぼすことが多い。
感染症を処置する抗感染薬の有効量は臨床医であれば分かるであろうが、処置しようとする疾患あるいは回避または処置しようとする状態の1つまたは複数の症状を処置、緩和、軽減、除去または防止するか、そうでない場合はその疾患または状態の病態に臨床的に認識可能な変化を起こすのに有効な量を含む。軽減には、予防的に処置する動物の感染症の発生率または重症度を抑えることが含まれる。ある種の実施形態では、有効量は、肺感染症(lung infection)の症状が現れた後、処置または軽減するに有効な量である。他のある種の実施形態では、有効量は、予防的に処置する動物の感染症の平均的な発生率または重症度を処置または軽減するのに有効な量である(統計学的試験によって測定)。いくつかの実施形態では、有効量は肺感染症を根絶するのに十分な量である。「根絶する」とは、当該技術分野の技術の通常の方法により患者で感染症を検出できないことを意味する。たとえば、肺内CFUが検出できない場合、感染症は根絶している可能性がある。
一実施形態では、噴霧後、バンコマイシンの少なくとも約25%はリポソームから遊離していない。別の実施形態では、噴霧後、バンコマイシンの少なくとも約50%または少なくとも約60%はリポソームから遊離していない。別の実施形態では、噴霧後、バンコマイシンの約50〜95%、約50〜80%または約60〜75%はリポソームから遊離していない。
別の実施形態では、約50〜1000mg/日、100〜500mg/日または250〜500mg/日のバンコマイシン用量で、この組成物を投与する。
別の実施形態では、組成物を1日1〜4回投与する。他の実施形態では、組成物を1日1回、1日2回、1日3回または1日4回投与する。他の実施形態では、組成物を、一定期間にわたり1日の処置サイクルで投与してもよいし、または1日おき、3日おき、4日おき、5日おき、6日おきまたは週1回のサイクルで一定期間投与してもよい。その期間は1週間から数ヶ月、たとえば、1、2、3または4週間あるいは1、2、3、4、5または6ヶ月としてもよい。
一実施形態では、肺障害は嚢胞性線維症、気管支拡張症または前述の肺感染症などの肺感染症である。
いくつかの実施形態では、肺感染症の最小発育阻止濃度(MIC)を超える量でバンコマイシンを投与する。いくつかの実施形態では、肺感染症のMICは少なくとも約0.10マイクログラム/mLである。他の実施形態では、MICは約0.10マイクログラム/mL〜25マイクログラム/mL、約0.10〜10マイクログラム/mLまたは約0.10〜5マイクログラム/mLである。
いくつかの実施形態では、被検体の肺内Log10CFUが低下する。たとえば、Log10CFUは少なくとも約0.5、約1.0、約1.5、約2.0または約2.5低下する場合がある。いくつかの実施形態では、リポソーム化バンコマイシン製剤の投与後、肺内総CFUは約1.0未満、約0.75未満、約0.5未満または約0.25未満である。他の実施形態では、被検体の肺における肺感染症を根絶する。他の実施形態では、同じ用量の遊離型バンコマイシンの吸入処置に比べて肺感染症が減少する。たとえば、リポソーム化バンコマイシンによる処置の場合、同じ用量の吸入遊離型バンコマイシンで処置した集団に比べて被検体集団の肺感染症の減少率または根絶率が高くなる。いくつかの実施形態では、吸入リポソーム化バンコマイシンで処置した集団全体の減少率は、吸入遊離型バンコマイシンによる処置に比べて少なくとも約20、約30、約40、約50、約70、約80または約90%高くなる。他の実施形態では、肺感染症は同じ用量の吸入遊離型バンコマイシンによる処置に比べて短期間で減少する。
一実施形態では、本発明によりリポソーム化バンコマイシンの送達が肺に向かうことで、薬剤の全身曝露を抑制または回避できる。さらに、本発明の一実施形態ではバンコマイシン投与の量および/または頻度を低下させることで、患者への薬剤負荷も抑制することもできる。嚢胞性線維症患者は肺の粘膜分泌物および/または痰の粘度が高いため、感染症が頻繁に起こり、細菌のコロニー形成が原因のバイオフィルムが形成される。また、嚢胞性線維症に関連していない肺感染症(lung infection)もバイオフィルムまたは粘液に関連していることがある。こうした粘液およびバイオフィルムは抗菌薬により感染症を効果的に標的する際の障壁になる。
リポソームまたは他の脂質送達システムについては、吸入のため噴霧スプレー剤、粉末またはエアロゾルとして投与しても、あるいは気管内投与により投与してもよい。好ましいのは吸入投与である。いくつかの実施形態では、遊離型薬剤の吸入または非経口型の薬剤と比較して投与の頻度が少なくなり、および/または治療係数が向上する。加えて、遊離型薬剤の吸入と比較して所望の治療用量でのバンコマイシンの投与時間も短縮される。このため、いくつかの実施形態では、リポソーム化バンコマイシン製剤は同じ量の遊離型薬剤の吸入よりも効果的である。リポソームまたは他の脂質製剤は、肺粘膜または肺サーファクタントと適合性がありながら薬剤を保護できるため特に都合がよい。どのような特定の理論にも拘束されるわけではないが、リポソーム化バンコマイシンには肺内で貯蔵作用があると考えられる。このため、リポソーム化バンコマイシンは吸入投与の終了後も一定期間その治療バイオアベイラビリティーを維持する。いくつかの実施形態では、この期間は、遊離型バンコマイシンが治療上有用であり続ける時間よりも長い。たとえば、この薬剤の治療バイオアベイラビリティーは処置後3、4、5、6、7、8、9または10日間、または投与後2週間も長い。
別の実施形態では、バンコマイシンの用量を約50〜1000mg/日、約100〜500mg/日または約250〜500mg/日としてこの組成物を投与する。たとえば、用量は1日約100mg、約200mg、約300mg、約400mgまたは約500mgとしてもよい。
調製の方法
リポソームまたは抗感染脂質製剤を形成するプロセスは「溶媒注入」プロセスを含む。これは、1つまたは複数の脂質を少量、好ましくは最小量のプロセスに適合した溶媒に溶解して脂質懸濁液または溶液を形成し、次いでこの溶液をバンコマイシンを含む水性媒体に注入するプロセスである。典型的には、プロセスに適合した溶媒は、透析またはダイアフィルトレーションなどの水性プロセスで洗い流せる溶媒である。適合した溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、プロパノールおよびブタノールなどのアルコールが挙げられる。溶媒注入の一種「エタノール注入」は、1つまたは複数の脂質を少量、好ましくは最小量のエタノールに溶解して脂質溶液を形成し、次いでこの溶液をバンコマイシンを含む含水エタノール媒体に注入することを含むプロセスである。溶媒の「少」量とは、注入プロセスにおいてリポソームまたは脂質複合体の形成に適合した量である。
本発明の方法は、リポソーム内で極めて高濃度のバンコマイシンを提供する。得られたリポソーム懸濁液はバンコマイシン濃度が5mg/mLを超える。いくつかの実施形態では、リポソーム懸濁液のバンコマイシン濃度は10、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/mL、最大250mg/mLである。ある種の実施形態では、リポソーム製剤のバンコマイシン濃度は約40mg/mL〜約200mLの範囲である。他の実施形態では、バンコマイシン濃度は約40〜150mg/mL、約50〜125mg/mLまたは約50〜100mg/mLの範囲である。
どのような特定の理論にも拘束されるわけではないが、高いバンコマイシン濃度は、リポソーム製剤の調製におけるアルコール注入ステップで高濃度のバンコマイシン原液を用いることで得られると考えられる。高濃度の原液を得るには、水を単独で用いるのではなくアルコール、たとえばエタノールおよび水の混合物にバンコマイシンを溶解する。水/アルコール混合物により、水単独と比較してより高濃度のバンコマイシン溶液が得られる。加えて、高濃度のバンコマイシン水溶液は非常に粘稠でもある。再びどのような特定の理論にも拘束されるわけではないが、粘度が高いと、原液の無菌化濾過が困難になるか、不可能になると考えられる。加えて、脂質/エタノール溶液をバンコマイシン/水溶液に注入するステップでは粘度による問題が生じて、リポソームの好ましい特徴が弱くなる恐れがある。アルコールと水の混合物をバンコマイシン原液に溶かして使用すれば、原液の無菌化濾過が可能になり、脂質/アルコール原液の注入時にリポソームの特徴の好ましさが増す。
一実施形態では、本発明は、バンコマイシンリポソーム製剤を調製する方法であって:
a)アルコール性脂質溶液を水性/アルコール性バンコマイシン溶液に注入して最初のバンコマイシンリポソーム製剤を形成すること;および
b)アルコールおよび内包されていないバンコマイシンを除去してバンコマイシンリポソーム製剤を形成すること
を含む方法を対象とする。
一実施形態では、ダイアフィルトレーションによりアルコールを除去する。別の実施形態では、アルコールを除去する別の実施形態では、アルコールはエタノールである。
一実施形態では、水性/アルコール性バンコマイシン原液のバンコマイシン濃度は約100〜500、200〜400または250〜350mg/mLである。
一実施形態では、アルコール脂質原液の脂質濃度は約50〜250、50〜200または75〜125mg/mLである。
脂質−アルコール溶液をバンコマイシンを含む水溶液に注入するステップは、バンコマイシンを含む水溶液の液面上で行っても、液面下で行ってもよい。好ましくは、このステップは溶液の液面上で行う。
リポソームまたは脂質製剤のサイズ測定は、当業者によく知られていて実施しやすい押出技法、超音波処理技法および均質化技法などいくつかの方法で行うことができる。押出は、リポソームを加圧下で細孔サイズが規定されたフィルターに1回または複数回通すことを含む。フィルターは一般にポリカルボナートでできているが、リポソームと相互作用せずに、かつ十分な圧力下で押出が行えるだけの強度があれば、どのような耐久材料でできていてもよい。一般に本発明の好ましい押出プロセスにおいて高圧力に耐えられるため、好ましいフィルターとして「ストレート」フィルターが挙げられる。また、「蛇行状」フィルターを用いてもよい。押出にはさらにAnopore(商標)フィルターなどの非対称フィルターを用いてもよい。Anopore(商標)フィルターでは、細孔が蜂の巣状の酸化アルミニウム多孔性フィルターを通してリポソームが押し出される。
また、リポソームまたは脂質製剤は超音波処理で細かくすることもできる。超音波処理で音波エネルギーを利用してリポソームを破壊または剪断すると、より小型のリポソームとして自然に再形成される。超音波処理を行うには、浴型ソニケーター内に作られた音波発生源に、リポソーム懸濁液を含むガラスチューブを浸す。あるいは、リポソーム懸濁液と直接接触したチタンプローブの振動により音波エネルギーが発生するプローブ型ソニケーターを用いてもよい。Gifford Woodホモジナイザー、Polytron(商標)またはMicrofluidizerなどの均質化および粉砕装置を用いて大きなリポソームまたは脂質製剤を小さなリポソームまたは脂質製剤に破壊してもよい。
得られたリポソーム製剤は、タンジェンシャルフロー濾過などの当該技術分野において周知の方法を用いて均一な集団に分離することができる。この手順では、不均一なサイズのリポソームまたは脂質製剤の集団をタンジェンシャルフローフィルターに通すことで、サイズの上限および/または下限のリポソーム集団が得られる。サイズの異なる、すなわち、孔径の異なる2つのフィルターを用いると、第1の細孔直径よりも小さいリポソームがフィルターを通過する。この濾液を、細孔サイズが第1のフィルターよりも小さい第2のフィルターでタンジェンシャルフロー濾過にかければよい。このフィルターの保持液は、第1および第2のフィルターの細孔サイズによりそれぞれサイズの上限と下限が規定されたリポソーム/複合体集団である。
肺は、肺サーファクタントにより呼吸時に膨張収縮が可能になる。これは、脂質とタンパク質の組み合わせで肺をコーティングすることで達成される。脂質は、疎水鎖を外に向けた単層として存在している。脂質は肺サーファクタントの80%に相当し、脂質の大半はホスファチジルコリンで、その50%がジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である(Veldhuizen et al.,1998)。サーファクタントタンパク質(SP:surfactant protein)の方は構造を維持し、呼吸時に起こる肺サーファクタントの膨張と収縮を共に促進するする働きをしている。サーファクタントタンパク質のうちSP−BおよびSP−Cは特に溶解作用があり、リポソームを溶解することができる(Hagwood et al.,1998;Johansson,1998)。この溶解作用は、リポソームの破壊を徐々に促進し得る。さらに、リポソームは、食作用によりマクロファージに直接消化される場合もある(Couveur et
al.,1991;Gonzales−Roth et al.,1991;Swenson et al.,1991)。肺胞マクロファージによるリポソームの取り込みは、薬剤の病変部位への送達を可能にするもう1つの手段である。
吸入用のリポソームあるいは脂質製剤の形成に使用するのに好ましい脂質は、肺サーファクタントに認められる内在性脂質によく見られる。リポソームは、所望の医薬品を内包する二重層からなる。これは、医薬品を脂質の各層内にまたは層間の水相部分に閉じこめた二重層の同心円状の多重膜小胞として形成できる。本発明の独特のプロセスを用いれば、独自のリポソームまたは脂質の抗感染製剤が製造される。このプロセスおよびこのプロセスの生成物は本発明の一部である。
本発明のこうした実施形態、他の実施形態ならびにその特色および特徴については、以下に記載される説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
(実施例1)
リポソーム化バンコマイシン製剤
上述の方法を用いてリポソーム化バンコマイシン製剤を調製した。具体的には、脂質原液に使用したアルコールはエタノールであった。水性/アルコール性バンコマイシン原液に使用したアルコールもエタノールであった。製剤はDPPC、DPPC/CHOL、DOPC/CHOLおよびPOPC/CHOLを用いて調製した。こうした方法により製造されるバンコマイシン薬剤に対する脂質の比率は、表1に示すように非常に低かった。表1にバンコマイシンの濃度も示す。
一部のリポソーム化バンコマイシン製剤の他の特徴(平均粒子直径およびpH)および製剤の調製に使用した原液の濃度を表2に示す。
(実施例2)
生体条件下での分解試験
本発明のリポソーム製剤は生体環境でバンコマイシンの分解を防止する。バンコマイシンは、CDP−mおよびCDP−Mと呼ばれる2つの結晶分解産物(CDP:Crystal Degradation Product)に分解することが知られている。リポソーム化バンコマイシン製剤の安定性を評価するため、2種の製剤(AおよびB)を10%ラット血清に希釈し、37℃でインキュベートし、HPLCにより漏出およびCDPへの分解を試験した。例示的製剤Aは、上記のようなDPPCリポソーム内にバンコマイシンを含む。製剤Bは、DPPC/CHOLリポソーム内にバンコマイシンを含む。
どちらの製剤も、リポソームに封入されたバンコマイシンの分解がリポソームの外側にあるバンコマイシンと比較して抑制された。(表3)。したがって、リポソーム製剤のリポソームはバンコマイシンからCDPへの分解を抑制すると思われ、それは特にインキュベーションの最初の4日間において顕著なようだ。DPPCを含む製剤Aのリポソームは、DPPCおよびコレステロールを含む製剤Bよりも効率的にCDPの形成を防止する。
(実施例3)
製剤AおよびBの薬剤放出プロファイル
ラット血清中で式AおよびBをインビボ温度(37℃)でインキュベートした。製剤Aは150時間にわたるインキュベーションにおいて薬剤放出が速いのに対して、製剤Bは薬剤の放出がごくわずかであることが示された。(図1)
(実施例4)
製剤Aの漏出
リポソーム化バンコマイシンの漏出を様々な保存温度でモニターした。製剤Aは4℃で安定であった。リポソーム組成物は、温度の上昇に伴い、特に温度がDPPCリポソームの相転移温度に近づくとかなりの量のバンコマイシンを放出した。(図2)。したがって、本発明のリポソーム製剤は、約2〜8℃の温度、たとえば、冷蔵庫での保存であれば有効期間が長いはずである。リポソーム化バンコマイシン組成物は、インビボでの放出プロファイルが良好であると予想される。このため、こうした特徴はインビボ温度での標的化薬剤放出に有用である。
(実施例5)
リポソーム化バンコマイシンの噴霧
代表的なリポソーム製剤、製剤AをPARI LC starネブライザーで20分間噴霧した。このリポソームは、噴霧後リポソーム内にバンコマイシンの63%を保持した。
(実施例6)
リポソーム製剤の均一性
代表的なリポソーム製剤、製剤Aを0〜40%ヨージアキサノールの密度勾配で分画した。リポソーム集団は均一で、集団全体の脂質/薬剤比率も均一であった(図3)。
(実施例7)
蛍光異方性
水溶性の蛍光色素(カルセイン、1mg/ml)を2種類のリポソーム化バンコマイシンに内包させた。1つは高濃度のバンコマイシンを含み、もう1つは低濃度のバンコマイシンを含む。エタノール注射によりDPPCを加えて50℃で約5mg/mlのリポソームを作製した。MWカットオフ20Kのチューブを用い0.9%食塩水に対して透析して、遊離型バンコマイシンおよび色素を洗浄した。励起波長495nmおよび発光波長520nmの蛍光異方性を測定した。蛍光異方性はオーダーパラメーターであり、水溶液中では0〜0.4の範囲であった。値が高くなると、溶液の粘性が高いことが示される。
高濃度のバンコマイシンを含むリポソーム内で調べた異方性の方が、低濃度のバンコマイシンの場合よりも大きかった(より粘稠)。このことから、本出願に開示するリポソーム化バンコマイシンはリポソーム内のバンコマイシン濃度が高く(200〜300mg/ml)、非常に粘稠な内容物を含むことが示唆される。
(実施例8)
マウスのS.pneumoniaeモデルを用いた吸入リポソーム化バンコマイシンと吸入可溶性バンコマイシンとの比較
60匹36匹の雌マウス(Swiss Webster,Charles River)を動物施設から入手し、プロトコルの開始前に少なくとも7日間馴化させた。ケタミン/キシラジン溶液(80mg/kgおよび10mg/kg)で麻酔してから経鼻吹送法により全マウスにS.pneumoniae(ATCC,6303、4.1×10CFU/マウス)を注入した。注入は、チップが装着したマイクロピペット(Gilson,Femt Scientificによる較正)により鼻孔経路を介して行った。マウスの耳を持ち、マイクロピペットを用いて20μlの細菌を鼻孔(各鼻孔に10μl)に徐々に(一呼吸当たり2μl)を放出する。マウスが麻酔から十分に回復するまで10分ごとに観察した。
マウスには1日目、2日目および3日目に投与した。5つの群に分け、各群をマウス12匹とした。群1のマウスにはリポソーム化バンコマイシン(6mg/kg/日、製剤A)を吸入投与した。群2のマウスにはリポソーム化バンコマイシン(3.8mg/kg/日、製剤A)を吸入投与した。群3のマウスには遊離型可溶性バンコマイシン(6mg/kg/日、無菌バンコマイシンヒドロクロリド)を吸入投与した。群4のマウスには遊離型可溶性バンコマイシン(3.8mg/kg/日、無菌バンコマイシンヒドロクロリド)を吸入投与した。群5のマウスには無菌生理食塩水(0.9%NaCl)を吸入投与した。
安楽死の基準:Raynger MX4高性能赤外線温度走査計(Raytek,Santa Cruz,CA)を用いて腹部の体表面温度を毎日測定した。マウスを垂直に持ち上げ腹部を露出させた。体表面温度を3回計った。3つの測定値は体温計により自動的に平均される。体温が28℃未満に低下したら、マウスを安楽死させた。体重は7日間毎日測定し、データシート(SOP−19)に記録した。当初体重の20%を超えて減少したマウスを安楽死させた。上述の基準を満たしていないが、瀕死状態のマウスも、試験責任者の裁量により安楽死させた。
マウスの肺内および血中における細菌コロニー数の判定。7日目以前に安楽死させたマウスおよび7日目まで生存したマウスについては、CO窒息により安楽死させた。安楽死後、心臓穿刺で血液を採取した。BHIブロスで直ちに血液の1/10希釈を作製した。肺を無菌で除去し、秤量し、5mlの無菌ポリプロピレン丸底チューブ内の1mlのBHIブロスに入れた。
Polytron(Brinkmann,Rexdale,Ontario,Canada)を用いて最高速度により5mlのポリプロピレン丸底チューブ内で肺を無菌でホモジナイズした。この組織が平滑になるまでホモジナイズした。10ug/mlのコリスチン(C)5ug/mlのオキソリニン酸(O)を補充したBHIブロスを用いて肺ホモジネートの10倍希釈を作製した。100ulの各希釈肺ホモジネートをCBO寒天プレートに蒔いて広げた。プレートを37℃で24時間インキュベートしてから、コロニー数をカウントした。
図4は、S pneumoniae(ATCC 6303)に感染したマウスの生存率を示す。吸入バンコマイシンの製剤のいずれかで処置したマウスの生存率(100%)は、食塩水を吸入投与したマウスの生存率(25%)よりも有意に高かった(p<.0001)(図4)。食塩水群のマウスの生存率の中央値は5日目であった。各群のマウスは12匹であった。食塩水、リポソーム化バンコマイシンおよびバンコマイシンによる吸入治療は試験の1日目2日目および3日目に行った。統計(ログランクマンテルコックス検定)はGraphPadのPrism(登録商標)により実施した。
7日目まで生存したマウスの肺内および血中の細菌コロニー数は古典的な寒天プレートスプレッド法で判定した(表5)。吸入可溶性バンコマイシン(6mg/kgおよび3.8mg/kg)はそれぞれマウスの100および92%で肺内のS.pneumoniaeを根絶できなかった(表5)。こうしたマウスの血液に細菌は認められなかった。これに対して、リポソーム化バンコマイシン(6mg/kg)を吸入したマウスの100%で、肺からも血液からも細菌が根絶された。さらに、低用量(3.8mg/kg)のリポソーム化バンコマイシンでも、マウスの58%で肺からも血液からも細菌が根絶された。食塩水群で7日目まで生存した3匹のマウスの100%で肺内に細菌が認められ、こうしたマウスの約66%で血中にも細菌が認められた(データなし)。こうした結果から、リポソーム化バンコマイシンは感染性の肺から細菌を根絶するうえで可溶性バンコマイシンよりも有効であることが明らかにされる。
表6は、最後の吸入治療から4日後のマウス肺内のバンコマイシン濃度を示す。リポソーム化バンコマイシンを吸入したマウスは、可溶性バンコマイシンを吸入したマウスに比べてどちらの用量(6および3.8mg/kg)も肺内のバンコマイシンの濃度が著しく高かった(表6)。S pneumoniae(ATCC 6303)はバンコマイシンに対する感受性が非常に高い(MIC=0.25μg/ml)。どちらのバンコマイシン製剤も肺内のピーク濃度/MICが200を上回った。このようにリポソーム化バンコマイシンを吸入したマウス肺内のバンコマイシン濃度が高いため、こうしたマウスの肺から細菌が排除された可能性がある(表5)。

(実施例9)
S.pneumoniaeマウスモデルにおけるリポソーム化バンコマイシンの吸入とバンコマイシンの腹腔内注射との比較
36匹の雌マウス(Swiss Webster,Charles River)を動物施設から入手し、プロトコルの開始前に少なくとも7日間馴化させた。実施例8に記載されているように経鼻吹送法により全マウスにS.pneumoniaeを注入した。マウスには1日目、2日目および3日目に投与した。群1のマウスには、リポソーム化バンコマイシン(12mg/kg/日、製剤A)を20分吸入投与した。群2のマウスには、バンコマイシン(6mg/kg/日、BID、無菌バンコマイシンヒドロクロリド、ロット#NDC0409−6509−010)を腹腔内注射で投与した。群3のマウスには、無菌0.9%NaCl(Cardinal、ロット#WBA194)を20分吸入投与した。実施例8に記載されているように安楽死と血中および肺内の細菌コロニー数の判定とを行った。
図5は、S.pneumoniae(ATCC 6303)に感染させ、食塩水、可溶性バンコマイシンまたはリポソーム化バンコマイシンで処置したマウスの生存率を示す。7日目まで生存したのは吸入食塩水を投与したマウス(n=12)の16%に過ぎず、生存率の中央値は4日間であった。バンコマイシンを腹腔内注射により投与したマウス(n=12)は100%が7日目まで生存したのに対し、リポソーム化バンコマイシンを投与したマウス(n=12)のうち7日目まで生存したのは58%であった。リポソーム化バンコマイシンおよび可溶性バンコマイシンで処置したマウスと食塩水による処置群とには生存率に統計学的な差が認められた(それぞれp=.049およびp=.0009)。可溶性バンコマイシンで処置したマウスと吸入リポソーム化バンコマイシンを投与したマウスとにも生存率に有意(p=.013)差が認められた。各群はマウス12匹とした。食塩水、吸入リポソーム化バンコマイシンおよび注射(IP)バンコマイシンによる処置は、試験の1日目2日目および3日目に行った。統計(ログランクマンテルコックス検定)はGraphPadのPrism(登録商標)により実施した。
安楽死させたマウスおよび7日目まで生存したマウスの肺内および血中の細菌コロニー数は古典的な寒天プレートスプレッド法で判定した(図6)。バンコマイシンをIP処置すると、より多くのマウスが生存したしたものの、この処置ではマウスの25%で肺内のS.pneumoniaeが根絶されず、マウスの42%で血液からS.pneumoniaeが根絶されなかった。これに対し、リポソーム化バンコマイシンの吸入後に生存したマウスはすべて肺からも血液からも細菌が根絶された。
表7は、吸入リポソーム化バンコマイシンまたは腹腔内可溶性バンコマイシンにより治療の終了から4日後のマウス肺内のバンコマイシン濃度を示す。IP注射によりバンコマイシンを投与したマウスの肺内では検出可能なバンコマイシン濃度が検出されなかった。リポソーム化バンコマイシンを吸入投与したマウス肺内では、著しいバンコマイシン濃度(44±13μg/肺1g)が検出された(表7)。リポソーム化バンコマイシンの吸入から20分後すぐのマウス肺内の最初の平均バンコマイシン濃度は58±6μg/肺1gであった。正常肺を持つマウスにおいて注入量の沈着率が4.5%であることから、可溶性バンコマイシン(6mg/kg)のIP注射から30分後のマウス肺内の最初の平均バンコマイシン濃度は48μg/肺1gと計算されたが、感染肺を持つマウスではこの割合がさらに高かったかもしれない。この結果から、可溶性バンコマイシンのIP注射では1日の肺用量が吸入リポソーム化バンコマイシンよりも多くなるため、総送達量が同じでも肺への送達量が同じであるとは見なせない。
S pneumoniaeに感染させ、エアロゾル化リポソーム化バンコマイシン(12mg/kg)の1日3回投与で処置したマウス(n=12)は試験7日目の生存率が58%であった。腹腔内注射によるバンコマイシン(6mg/kg、BID)で処置したマウスは試験7日目の生存率が100%であった。これに対し、S pneumoniaeに感染させ、エアロゾル化食塩水の1日3回投与で処置したマウス(n=12)は、7日目に生存したマウスの16%に過ぎず、生存率の中央値は4日目であった。リポソーム化バンコマイシンおよび可溶性バンコマイシンで処置したマウスと食塩水による処置群には生存率に統計学的な差が認められた(それぞれp=.049およびp=.0009)。可溶性バンコマイシンで処置したマウスと吸入リポソーム化バンコマイシンを投与したマウスとにも生存率に有意(p=.013)差が認められた。バンコマイシンをIP処置すると、より多くのマウスが生存したものの、この処置ではマウスの25%で肺内のS pneumoniaeが根絶されず、マウスの42%で血液からS pneumoniaeが根絶されなかった。これに対し、リポソーム化バンコマイシンの吸入後に生存したマウスはすべて肺からも血液からも細菌が根絶された。さらに、リポソーム化バンコマイシンおよび可溶性バンコマイシンの最初の1日の肺用量は類似していた(それぞれバンコマイシン10ug/肺およびバンコマイシン15ug/肺)。可溶性バンコマイシン濃度は、IP注射から30分後の肺内のバンコマイシン送達量が4%であることに基づいた。こうした結果から、Swiss Websterマウスにおいてエアロゾル化リポソーム化バンコマイシンの1日3回投与が敗血症の防止および肺炎の排除に極めて有効であることが明らかにされる。一方、可溶性バンコマイシンはそれぞれマウスの42%で血液から、マウスの25%の肺から感染症を根絶できなかった。このリポソーム化バンコマイシンの有益な特徴は、吸入後の肺内の残留性(最後の吸入治療から4日後に6ug/肺)によるものかもしれない。これに対して可溶性バンコマイシンは肺内の半減期が非常に短い。Swiss WebsterマウスではIP注射から6時間後に検出可能なバンコマイシンが観察されなかった。
表8に、上述の結果と共に吸入リポソーム化バンコマイシンの1.2mg/kg/日の試験結果をまとめてある。表は、リポソーム化バンコマイシンの1日1回投与の方が、2倍用量の遊離型バンコマイシンよりも肺沈着が非常に良好であることを示す(2用量レジメン;3.8および6)。6mg/kg/日の場合で前に示したようにIP投与では、1日2回投与の12mg/kg/日でも、処置終了から7日後にバンコマイシンの肺沈着は検出されなかった。
*平均値の計算には7日目まで生存した動物のデータを含めた。7日目以前に死亡した動物のデータは検討対象から除外した。
**7日目に血中で>1×10細菌および肺内で>4.69Log CFUのマウスが1匹だけいた。この用量群の他のマウスはすべて7日目の血中にCFUが認められなかった
図7に、表7に記載したS.pneumoniaeの導入から7日目の、用量依存的に上昇するマウス肺内のバンコマイシンレベルをまとめてある。1.2mg/kg/日、3.8mg/kg/日および6mg/kg/日の量で投与した吸入リポソーム化バンコマイシンから、肺内の濃度が7日目に上昇することが明らかになった。この濃度は、3.8および6.0mg/kg/日で投与した吸入遊離型バンコマイシンよりも高かった。12mg/kg/日の遊離型バンコマイシンをIP注射してから7日目の肺内ではバンコマイシンが検出されなかった。
図8では、各処置から7日後の肺内の細菌レベルをCFU(コロニー形成単位)換算で推計した。6.0mg/kg/日用量のリポソーム化バンコマイシンでは細菌が完全に根絶されたのに対し、同じ用量の遊離型バンコマイシンで処置した12匹のマウスでは依然としてかなりの細菌レベルが確認された。低用量(3.8mg/kg/日)においても、リポソーム化バンコマイシンおよび遊離型バンコマイシンの細菌レベルはどちらも似たレベルではあるが、遊離型バンコマイシン処置後になおマウスの90%もが感染しているのと比較して、リポソーム化バンコマイシンでは細菌レベルが確認されたのはマウスの50%に満たなかった。
文献の引用
本明細書に引用する米国特許および公開された米国特許出願については、参照によって本明細書に援用する。
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を用いるのみで、本明細書に記載した本発明の具体的な実施例に対する等価物を数多く認識するか、あるいは確認することができることであろう。そのような等価物は以下の請求の範囲の包含するところとして意図されている。

Claims (1)

  1. 本願明細書に記載された発明。
JP2014033713A 2007-10-23 2014-02-25 リポソーム化バンコマイシン製剤 Withdrawn JP2014098032A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US98199007P 2007-10-23 2007-10-23
US60/981,990 2007-10-23
US10372508P 2008-10-08 2008-10-08
US61/103,725 2008-10-08

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010531241A Division JP5855829B2 (ja) 2007-10-23 2008-10-23 リポソーム化バンコマイシン製剤

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016082745A Division JP2016130262A (ja) 2007-10-23 2016-04-18 リポソーム化バンコマイシン製剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014098032A true JP2014098032A (ja) 2014-05-29

Family

ID=40563728

Family Applications (3)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010531241A Expired - Fee Related JP5855829B2 (ja) 2007-10-23 2008-10-23 リポソーム化バンコマイシン製剤
JP2014033713A Withdrawn JP2014098032A (ja) 2007-10-23 2014-02-25 リポソーム化バンコマイシン製剤
JP2016082745A Pending JP2016130262A (ja) 2007-10-23 2016-04-18 リポソーム化バンコマイシン製剤

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010531241A Expired - Fee Related JP5855829B2 (ja) 2007-10-23 2008-10-23 リポソーム化バンコマイシン製剤

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016082745A Pending JP2016130262A (ja) 2007-10-23 2016-04-18 リポソーム化バンコマイシン製剤

Country Status (8)

Country Link
US (2) US20090104257A1 (ja)
EP (1) EP2214645A4 (ja)
JP (3) JP5855829B2 (ja)
CN (2) CN103860469A (ja)
AU (2) AU2008316841B2 (ja)
CA (1) CA2703179C (ja)
MX (1) MX2010004389A (ja)
WO (2) WO2009055571A2 (ja)

Families Citing this family (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3718532A1 (en) 2005-12-08 2020-10-07 Insmed Incorporated Lipid-based compositions of antiinfectives for treating pulmonary infections
US9119783B2 (en) 2007-05-07 2015-09-01 Insmed Incorporated Method of treating pulmonary disorders with liposomal amikacin formulations
DK2571506T3 (en) * 2010-05-20 2017-08-28 Cempra Pharmaceuticals Inc PROCEDURES FOR THE MANUFACTURE OF MACROLIDES AND KETOLIDES AND INTERMEDIATES
CN103153283B (zh) * 2010-06-19 2017-05-17 健康科学西部大学 Peg化脂质体包封的糖肽抗生素的新制剂
WO2012020790A1 (ja) * 2010-08-11 2012-02-16 学校法人慶應義塾 感染症治療薬
KR101957177B1 (ko) * 2010-10-22 2019-03-12 닥터 레디스 래보러토리즈 에스에이 상처를 치료하기 위한 저장 안정한 점성 인지질 데포의 용도
CN104159571A (zh) * 2011-04-26 2014-11-19 席德-西奈医疗中心 用于治疗mrsa感染的脂质体万古霉素
US9572774B2 (en) 2011-05-19 2017-02-21 Savara Inc. Dry powder vancomycin compositions and associated methods
PE20180414A1 (es) * 2011-06-17 2018-03-01 Berg Llc Composiciones farmaceuticas inhalables
RU2018135921A (ru) 2012-11-29 2019-02-05 Инсмед Инкорпорейтед Стабилизированные составы ванкомицина
ES2755941T3 (es) 2014-05-15 2020-04-24 Insmed Inc Métodos para tratar infecciones pulmonares micobacterianas no tuberculosas
WO2017083403A1 (en) * 2015-11-10 2017-05-18 Children's Research Institute, Children's National Medical Center Echinomycin formulation, method of making and method of use thereof
CN108601730B (zh) * 2016-01-15 2021-10-26 赛多斯制药有限责任公司 万古霉素的制剂
GB2577419B (en) 2017-05-22 2022-08-17 Insmed Inc Lipo-glycopeptide cleavable derivatives and uses thereof
WO2019133916A1 (en) * 2017-12-29 2019-07-04 Wayne State University Drug delivery systems for treatment of infections
WO2019191627A1 (en) 2018-03-30 2019-10-03 Insmed Incorporated Methods for continuous manufacture of liposomal drug products
CN109078001B (zh) * 2018-09-21 2021-05-07 深圳浦瑞健康科技有限公司 一种万古霉素纳米脂质体组合物及其制备方法
US20220296515A1 (en) * 2019-05-28 2022-09-22 Nevakar Injectables Inc. Vancomycin Liposome Compositions and Methods

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06345663A (ja) * 1993-06-08 1994-12-20 Sumitomo Pharmaceut Co Ltd バンコマイシン含有リポソーム製剤
JP2006514016A (ja) * 2002-11-26 2006-04-27 ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド リポソーム処方物
JP2006514682A (ja) * 2002-10-29 2006-05-11 トランセイブ, インク. 抗感染剤の徐放

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
MX9203504A (es) * 1988-04-20 1992-07-01 Liposome Co Inc Complejo agente: lipido activo de alta proporcion.
US7718189B2 (en) * 2002-10-29 2010-05-18 Transave, Inc. Sustained release of antiinfectives
US7879351B2 (en) * 2002-10-29 2011-02-01 Transave, Inc. High delivery rates for lipid based drug formulations, and methods of treatment thereof
US20070105757A1 (en) * 2005-10-31 2007-05-10 May Thomas B Vancomycin formulations having reduced amount of histamine

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06345663A (ja) * 1993-06-08 1994-12-20 Sumitomo Pharmaceut Co Ltd バンコマイシン含有リポソーム製剤
JP2006514682A (ja) * 2002-10-29 2006-05-11 トランセイブ, インク. 抗感染剤の徐放
JP2006514016A (ja) * 2002-11-26 2006-04-27 ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド リポソーム処方物

Also Published As

Publication number Publication date
CA2703179C (en) 2016-06-07
EP2214645A4 (en) 2013-09-25
JP2016130262A (ja) 2016-07-21
JP2011500836A (ja) 2011-01-06
CN101917972A (zh) 2010-12-15
AU2008316841B2 (en) 2014-04-17
MX2010004389A (es) 2010-05-20
US20090104257A1 (en) 2009-04-23
AU2014202745A1 (en) 2014-06-12
CA2703179A1 (en) 2009-04-30
JP5855829B2 (ja) 2016-02-09
US20090105126A1 (en) 2009-04-23
EP2214645A2 (en) 2010-08-11
CN103860469A (zh) 2014-06-18
AU2008316841A1 (en) 2009-04-30
WO2009055571A2 (en) 2009-04-30
WO2009055568A2 (en) 2009-04-30
WO2009055568A3 (en) 2009-09-24
AU2014202745B2 (en) 2016-11-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5855829B2 (ja) リポソーム化バンコマイシン製剤
JP6087862B2 (ja) リポソームアミカシン処方物による肺疾患の治療方法
US10064882B2 (en) Methods of treating pulmonary disorders with liposomal amikacin formulations
US9333214B2 (en) Method for treating pulmonary disorders with liposomal amikacin formulations
PT2079443E (pt) Formulações de inalação com dupla ação que proporcionam um perfil de libertação imediata e sustentada.
JP2016534155A (ja) 即時放出と持続放出の両方のプロファイルを提供する界面活性剤改変吸入リポソーム製剤
CA3027668A1 (en) Encochleated antifungal compounds for central nervous system delivery and treatment of cryptococcus infections
AU2014201765B2 (en) Methods of treating pulmonary disorders with liposomal amikacin formulations

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140225

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150213

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20150427

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20151216

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20161208