JP2014095714A - 前頭側頭葉変性の鑑別診断のための生体外の方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】血管性認知症および/または前頭側頭葉変性を含む認知症を鑑別診断するための生体外の方法において、Aβ1−38、Aβ1−37およびAβ1−39から成る群から選択された少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチドが、患者の体液中でバイオマーカーとして使用される。
【選択図】図8
Description
この記載の中で、以下の省略形が使用される:Aβペプチド=アミロイド−ベータペプチド;Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法=ウエスタンブロット法によるアミロイド−ベータ−ナトリウム−ドデシル−硫酸塩−ポリアクリルアミド−ゲル−電気泳動;AD=アルツハイマー病;APP=ベータ−アミロイド前駆体タンパク;CCDカメラ=電荷結合素子デバイスカメラ;CSF=脳脊髄液;DC=抑うつ;DGN=神経学に関するドイツゲゼルシャフト(Deutsche Gesellschaft fur Neurologie);FTD=前頭側頭型認知症;FTLD=前頭側頭葉変性;MMSE=ミニメンタルステート検査;NINCDS−ADRDA=国立神経学、コミュニケーション障害、脳卒中アルツハイマー病および関連疾患協会;SDS=ドデシル硫酸ナトリウム;%T=アクリルドのパーセンテージ;VAD=血管性認知症。
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、
−全アミロイドβペプチド濃度の一部として測定された少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度と、
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、別のカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種Aβ1−40の絶対濃度の比として測定された、少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度とから成る濃度の群から選択され、
それぞれ1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の閾値を超えると、患者に血管性認知症がないことを示すものと見なされる。
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、
−全アミロイドβペプチド濃度の一部として測定された少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度と、
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、Aβ1−40およびAβ1−42から成る群から選択された少なくとも1つの別のアミロイドβペプチド種の絶対濃度の比として測定された、少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度とで構成される濃度の群から選択され、
それぞれ1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の閾値を超えると、患者に前頭側頭葉変性がないことを示すものと見なされる。
より特定の実施形態において、本発明の方法は、哺乳類(例えば、ヒト)から体液(例えば、血液またはCSF)検体を採取するステップと、カルボキシ末端切断AβペプチドAβ1−37と、Aβ1−40の比を測定するステップとを含み、0.125を下回る比は、その哺乳類が、FTLDにかかりやすい、またはFTLDを有することを示す。
別のより特定の実施形態において、本発明の方法は、哺乳類(例えば、ヒト)から体液(例えば、血液またはCSF)検体を採取するステップと、カルボキシ末端切断AβペプチドAβ1−38と、Aβ1−40の比を測定するステップとを含み、0.22を下回る比は、その哺乳類が、FTLDにかかりやすい、またはFTLDを有することを示す。
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、
−全アミロイドβペプチド濃度の一部として測定された少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度と、
−少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、別のカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種Aβ1−40の絶対濃度の比として測定された、少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度とで構成される濃度の群から選択され、
それぞれ1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の閾値を下回ると、患者の血管性認知症または前頭側頭葉変性を示すものと見なされる。
本記載において、用語、血管性認知症およびアルツハイマー病の使用は、NINCDS−AIRENおよびNINCDS−ARDA診断基準にそれぞれ基づく。他の診断基準、例えば、ADDTC診断基準なども可能であり、同様の結果を導く。
考察
ADおよびうつ抑制と比較してVADの血漿中のAβペプチド種の詳細な特徴付けに対して提示された結果は、Aβ1−40およびAβ1−42に関する先の研究(Irizarry、2004)と一致する。最も興味深いことには、Gurol等(2006)による最近の刊行物は、MCI、ADおよびCAAにおいて、増加したAβ1−40と白質病変の負荷の相関関係を報告した。この結果は、年齢、性別、高血圧、糖尿病、APO−E状態、ホモシステイン、葉酸およびB12など潜在的交絡因子から独立することがわかった。増加したAβ1−40は、潜在的な脳血管危険因子として解釈され、我々の結果と組み合わされ、これは、AD/VADが混じった認知症または真性VADそれぞれから真性ADを区別するための潜在的バイオマーカーとなり得る。VADにおけるAβ1−40の特有の役割は、このペプチドが、血管のアミロイドプラークの主要な成分を構成するが、老年ADプラークではそれほど多くない(Gravina等、1995)という事実によって強調される。Aβ1−40以外の血漿Aβペプチドの低下が、脳血管性のアミロイド病変に密接に関連し得るかどうかについては、依然として未解決の問題である。しかしながら、Aβ1−40が、血漿中の他のAβペプチドに関連して評価される際、この作用の診断力を高めることができる。
このグループの30人の患者(21人の男性と9人の女性)は、精神障害の診断および統計学的マニュアル、第4版診断基準(DSM IV)、および最新のFTLDに関する共通見解の診断基準(McKhann等、2001)を満たした。Neary等(Neary等、1998)の共通見解の診断基準は、FTD(n=24)、初期の進行性失語症((PPA(n=5)および意味認知症(SD、n=1)の臨床診断にそれぞれ適用された。24人の患者に対して、MMSE、時計描写、アルツハイマー病の記録を確立するためのコンソーシアム神経心理学統合テスト(CERAD)、および熟練した神経生理学者によるより詳細な検査を含めた神経心理学テストが行われた。MMSEは、26人の患者に利用可能であり、平均MMSEスコアは、20.7±8.9(平均±SD標準偏差))であった。神経心理学評価は、重い言語に関する欠陥または失語症により、4人の患者で妨げられた。このグループの年齢は、61.6±11.5歳(平均±SD)であった。
このグループの30人の患者(13人の男性と17人の女性)は全て、ADに関するDSM IV診断基準およびADの可能性の臨床診断に関するNINCDS−ADRDA診断基準(McKhann等、1984)を満たした。このグループの平均年齢は、65.4±7.3歳(平均±SD)であった。29人の患者に対して、神経心理学テスト、MMSE、時計描写、CERAD、および熟練した神経生理学者によるより詳細な検査を含めた神経心理学テストが行われた。MMSEは、重い認識障害により、1人の患者で不可能であった。平均MMSEスコアは、このグループでは、19.3±5.4(平均±SD)であった。全ての患者は、構造的CTまたはMRI脳撮像を受けた。含まれた患者は、広範囲の皮質の萎縮、または側頭、頭頂側頭、前頭側頭病巣萎縮を示した、またはこれらの領域の目立った代謝低下が、27人の患者で観察された。3人の患者の脳撮像に関する結果はなかった。Aβ1−42ELISAおよび全tauの結果は、26人の患者で利用可能であった。
30人の認知症以外の患者(10人の男性と20人の女性)で構成されたこのグループは、認知症の鑑別診断または他の鑑別診断理由のために腰椎穿刺を受けた。6ヶ月を超える期間の継続する認知衰退、26を下回るMMSEスコア、または脳撮像(CTまたはMRI)で明確な病巣萎縮を有する患者は、研究から除外された。
SDS−PAGEによるAβペプチドの分析の前に、10μLの分量のCSFが、検体緩衝液中で煮沸された。他に記載されたように(Wiltfang等、2002,Bibl等、2004)、Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法が行われた。
Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法から独立してCSFAβ1−38のレベルを測定するために、新規の電気化学発光検出技法(MSD)が適用された。これは、製造元(Meso Scale Discovery社、ゲイサーズバーグ、メリーランド州、米国)の希望によって行われた。簡潔にすると、N末端特有の抗Aβ抗体6E10でプレコートされた、マルチ−スポット4、96−ウェルプレート(Meso Scale Discovery社、ゲイサーズバーグ、メリーランド州、米国)が、溶液Aによって1時間の間遮断された。プレートは次いで、ペプチド希釈系列または100μLのCSF検体によって、続いてc末端SULFO−TAGAβ1−38検出抗体(Meso Scale Discovery社、ゲイサーズバーグ、メリーランド州、米国)およびリードバッファ(read buffer)でインキュベートされた。全てのインキュベートステップの間に、1xトリス緩衝液による洗浄が行われた。放射光は、−620nmの波長で読み取られた。
CSF中のtauタンパクおよびAβ1−42レベルをそれぞれ定量化するために、商業的に利用可能なアッセイINNOTEST(登録商標)hTAU抗原およびINNOTEST(登録商標)β−アミロイド(1−42)、lnnogenetics社(ゲント、ベルギー)がそれぞれ使用された。アッセイは、先に公開された標準的方法(Hulstaert等、1999)に従って行われた。
Aβペプチドレベルは、絶対値(ng/mL)として表された。ペプチドレベルのデータは、各患者の検体の個別のブロットから取得された。患者のグループは、平均および標準偏差(SD)によって特徴付けられた。
診断グループの平均年齢は、有意に異ならなかった(p>0.05)。
尿素の存在下で、Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法により、Aβ1−42に加えて、Aβ1−37、Aβ1−38、Aβ1−39およびAβ1−40の電気泳動分離およびその後の分析が可能であった。またはそうでなければ、変化しない分離ゲル内に尿素がない場合、全てのAβペプチドは、単一の帯として移動する(図3)。
tauタンパクは、NDCと比較して、ADグループ(p=3.6x10−7)では有意に上昇したが、FTLD(p>0.05)ではわずかに上昇しただけであった。このアッセイは、FTLDおよびADの識別に関して、91%の感度および81%の特異度を実現した。NDCからのFTLD検出の感度および特異度はそれぞれ、50%と61%であった。
Aβ1−42は、商業的に利用可能なELISAおよびAβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法の両方によって測定された。値の比較は、Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法によって測定される際、より高レベルのAβ1−42を明らかにした。71人の患者の検体の全体において、差は、極めて有意であった(p=2.8x10−12)。診断グループごとの差の度合いは、以下であることがわかった:NDCグループに関して(n=23)p=4.6x10−6、AD(n=26)に関して2.1x10−5およびFTLD(n=22)に関して1.2x10−4(n=22)。
6ヶ月を超える期間の継続する認知衰退の病歴、26を下回るMMSEスコア、または脳撮像で明確な病巣萎縮を有する患者は除外された。
器質性の脳障害のない末梢神経疾患(PND):
20人の患者(13人の男性および7人の女性)が、多発ニューロパシー(n=11)、末梢神経顔面麻痺(n=3)、良性発作性頭位目眩(n=2)、椎間板ヘルニア形成(n=1)、顔面片側けいれん(n=1)、常染色優性遺伝性痙性脊柱麻痺(hereditary spastic spinal palsy)(n=1)、および中枢神経障害を伴わないライム病(n=1)の場合、中枢神経障害を除外するために、腰椎穿刺を受けた。このサブグループの平均年齢は、63.0±10.3歳(平均±SD)であった。
遺伝学的に確認されたハンチントン病(n=10)、パーキンソン病(n=7)、多系統萎縮症(n=5)、脊髄小脳失調(n=2)および筋萎縮性側索硬化症(n=1)の場合、慢性炎症性中枢神経疾患を除外するために、25人の患者(14人の男性および11人の女性)が腰椎穿刺を受けた。認知に関する症状を伴う患者(n=9)のMMSEスコアは、28.2±1.6(平均±SD)であった。これらの患者で、認知症の臨床的特徴を示すものはいなかった。このサブグループの平均年齢は、62.3±9.5歳(平均±SD)であった。
疾病の経過中の認知に関する症状を鑑別診断するために、26人のうつ病患者(8人の男性および18人の女性)が腰椎穿刺を受けた。DSM IV診断基準に従ってうつ病の診断が行われ、認知障害は、最低でもMMSEによって評価された。平均MMSEスコアは、28.6±1.4(平均±SD)であった。このサブグループの平均年齢は、62.9±10.3歳(平均±SD)であった。
AD9の臨床的診断のために71人の患者(29人の男性および42人の女性)がDSM IV診断基準およびNINCDS−ADRDA診断基準を満たした。構造的(CTまたはMRI)または機能的(SPECTまたはPET)脳撮像はそれぞれ、広範囲の皮質の萎縮、または側頭、頭頂側頭、前頭側頭病巣の萎縮、またはこれらの領域の目立った代謝低下を示した。
認知症に関するDSM IV診断基準およびDLB10の臨床的診断のために、32人の患者(19人の男性および13人の女性)が、McKeith診断基準を満たした。
このグループの36人の患者(22の男性および14人の女性)の全てが、DSM IVおよびFTDに関する共通見解の診断基準を満たした。23人の患者に対して、MMSEの他に、時計描写およびCERADを含めた詳細な神経心理学的テストが行われた。重篤な言語または認識欠陥により、5人の患者で神経心理学的評価が妨げられた。構造的(CTまたはMRI)または機能的(SPECTまたはPET)脳撮像は、前頭部または前頭側頭病巣の萎縮、またはこれらの領域の目立った代謝低下を明らかにした。
93人の患者(57人の男性および36人の女性)が、認知症に関するDSM IV診断基準を満たした。
CSF検体の事前解析的処理の後に、先に公開されたデータに従って標準化された手順が行われた。
Aβペプチドを分析するために、10μlのCSFがSDS−PAGE検体緩衝液中で煮沸され、尿素含有N,N_2−ヒドロキシエチル)−グリシン/ビス−トリス/トリス/硫酸塩SDS−PAGEゲル上で分離され、他で公開されたように、Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法が実施された。
Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法から独立してCSFAβ1−38レベルを測定するために、新規の電気化学発光技法(MSD)が適用された。これは、製造元(Meso Scale Discovery社)の希望によって行われた。簡潔にすると、N末端特有の抗Aβ抗体6E10でプレコートされたマルチ−スポット4、96−ウェルプレートが、溶液Aによって1時間遮断された。プレートは次いで、ペプチド希釈系列または100μLのCSF検体、続いてc末端SULFO−TAG Aβ1−38検出抗体およびリードバッファによってそれぞれ一時間インキュベートされた。インキュベートステップの間に、1xトリス緩衝液での洗浄が行われた。放射光の測定は、−620nmで行われた。
患者グループは、平均および標準偏差によって特徴づけられた。Aβペプチド値は、全検査済みのAβペプチドの総数に対する絶対値(ng/mL)およびパーセンテージ値(Aβ1−X%)で示された。診断グループ(対になっていない検体)の有意な差を測定するために、マンホイットニーU検定が採用された。複数のグループ(年齢、MMSE)の比較は、クラスカル・ワリス検定によって評価された。測定値の相関関係は、スピアマンの順位相関係数(Spearman’s Rho)によって推定された。両側有意水準は、p<0.05とみなされた。受信者作動固有曲線(ROC)の曲線下面積(AUC)によって、包括的診断精度が評価された。最大ヨーデン指標でカットオフ地点が決定され、≧85%の感度をもたらした。計算には、統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン10.0およびSAS、バージョン8.2が役立った。
FTDおよびNDCの平均年齢は、他の患者グループより有意に若かった。平均MMSEスコアは、認知症グループの間で有意に異ならなかった。Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法は、6つのペプチド:Aβ1−40、Aβ1−38、Aβ1−42、Aβ1−39、Aβ1−37およびAβ1−40 OXの通常の量パターンを明らかにした。
PNDとNDの間には有意な差はなかった。対照的に、DCCは、PNDとNDを結合したグループより、Aβ1−37(p=1.3x10−3)、Aβ1−38(p=4.9x10−2)およびAβ1−42(p=4.0x10−3)のより高い絶対レベルを呈示した。パーセント数字においては、Aβ1−37%(p=2.9x10−4)およびAβ1−42%(p=1.5x10−3)が増加し、DCCにおける減少したAβ1−40%(p=3.3x10−3)およびAβ1−40 OX%(p=1.4x10−2)値に対応した。
ADとNDC:
ADは、絶対数字(p=7.4x10−19)およびパーセント数字(p=3.8x10−24)におけるAβ1−42レベルの明確な低下を提示し、Aβ1−40 OXレベルは、絶対数字(p=1.1x10−2)およびパーセント数字(p=1.8x10−5)において増加した。付加的に、Aβ1−42より短いc末端が切断された全てのペプチドのパーセンテージが上昇し、これは、Aβ1−37%およびAβ1−38%に関して有意なレベルには足りなかった。Aβ1−38%の上昇は、NDグループ(p=4.6x10−3)と比較して極めて有意であった。
Aβ1−42の固有の低下は、ADで明らかであり、Aβ1−42レベルが低い他の認知症は、全てのAβペプチドの全体の低下を示した。したがって、Aβ1−42は、絶対数字(p=4.1x10−7)およびパーセント数字(p=7.6x10−22)で減少した。対照的に、Aβ1−37(p=2.5x10−2)、Aβ(p=5.0x10−5)、Aβ(p=2.4x10−3)およびAβ(p=6.3x10−3)は上昇した。パーセント数字において、上記の変化は、Aβ1−38%、Aβ1−39%およびAβ1−42%それぞれに関してのみ提示された。
FTDとNDC
FTDは、より低いレベルのAβ1−37(p=2.3x10−4)、Aβ1−38(p=9.6x10−7)およびAβ1−42(p=6x10−5)を示した。パーセント数字において、Aβ%値(p=7x10−10)の付加的増加があった。
FTDは、より低いAβ(p=2.1x10−2)およびAβOX(p=5.0x10−3)レベルを提示し、Aβレベルは、上昇した(p=3.8x10−3)。パーセント数字において、Aβ1−37%(p=2.5x10−4)、Aβ1−38%(p=3.5x10−15)、Aβ1−39%(p=1.0x10−2)およびAβ1−40 OX%(p=2.6x10−4)が降下し、上昇したAβ1−40%(p=1.9x10−5)およびAβ1−42%(p=6.2x10−4)のレベルに対応した。PPAと比較すると、FTDでは、絶対Aβ1−37(p=1.1x10−2)、Aβ1−38(p=1x10−2)およびAβ1−39(p=1.8x10−2)レベルが低下した。レベルの有意性は以下の通りである(Aβ1−38%に関しては、図7も参照のこと)。
Aβ1−37(ng/ml) Aβ1−38 (ng/ml) Aβ1−37% Aβ1−38%
p−値 .043 .003 .011 .010
付加的に、FTDにおいて、Aβ1−40%は上昇した(p=1.8x10−3)。
新規の電気化学発光検出検出(MSD)を使用して、150人の患者全員が再評価された。診断は、NDC(n=37)、AD(n=31)、DLB(n=2)、OD(n=47)およびFTD(n=33)であった。MSDを使用して観察されたペプチド濃度の絶対レベルは、Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法と比較して著しく低かった(表7を参照)。逆に、2つの独立した測定方法には強固な相関関係があった(スピアマンの順位相関係数=0.45、p=7.9x10−9)(図4を参照)。
神経化学的に支持された鑑別診断
ADの診断
Aβ1−42の顕著な降下により、全ての検査された患者全体の中からADを識別するのに85%を超える対比が可能になった。85%の感度により、全てのアルツハイマー以外の認知症を除外するのに81%の特異度を与えた。AD以外の認知症でのAβ1−38の値の低下、およびAβ1−42のより目立たない降下により、Aβ1−38と、Aβ1−42の比(Aβ1−42/Aβ1−38)が、全ての検査済みの鑑別診断の問題に対して、85%以上の対比までテストをわずかに向上させた。そうでなければ、AD検出の感度が、85%の最小値に設定される際、アルツハイマー以外の認知症を除外するのに、Aβ1−42の絶対値単独で、50%の特異度をもたらした。
FTDにおけるAβ1−38%の断言されたパーセンテージの減少は、全ての他の認知症とNDCとを識別するのに85%を超える十分な精度を呈示した。Aβ1−38と上昇したAβ1−40(Aβ1−38/Aβ1−40)レベルの組み合わせは、FTDと他の認知症を鑑別する要件を満たすには不十分であったが、依然として、NDCからFTDを鑑別するのに85%を超える対比を呈示していた。Aβ1−38%と比較して、Aβ1−38/Aβ1−40比の精度のロスは、主として個々のAD、DLBおよびPPA患者における上昇したAβ1−40レベルに起因した。
うつ病を有する7人の患者(2人の男性および5人の女性)は、疾病の経過中の認知に関する症状を鑑別診断するために腰椎穿刺を受けた。うつ病の診断は、DSM IV診断基準に従って行われ、認知障害は、最低でもMMSEによって評価された。6ヶ月を超える期間の継続する認知衰退の病歴、MMSEスコアが26を下回る、明確な病巣萎縮または脳撮像における関連する血管疾患の兆候を有する患者は除外された。
ADの臨床診断のために、これら7人の患者(2人の男性および5人の女性)は、DSM IV診断基準およびNINCDS−ADRDA診断基準を満たした(McKhann等、1984)。AD患者は、CTまたはMRIのいずれにおいても、関連する脳血管疾患の兆候を示さなかった。
我々は、DSM VおよびNINDS−AIREN診断基準(Roman等、1993)に従って、VADを有する7人の患者(3人の男性および4人の女性)を検査した。患者はさらに、Fischer等(1991)による改変バージョンのHachinskiの虚血性スケールによって特徴付けられ、6点を下回るスコアを有する患者は除外された。含まれる患者は全て、神経画像検査(コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴映像法)で、関連する脳血管疾患の典型的兆候を呈した。表10は、各患者グループの患者の特徴を示す。
このグループの7人の全ての患者(5人の男性および2人の女性)は、DSM IVおよびFTDに関する共通見解の診断基準(Neary等、1998)を満たした。構造的(CTまたはMRI)または機能的(SPECTまたはPET)脳撮像は、前頭または前頭側頭病巣の萎縮、またはこれらの領域の目立った代謝低下を明らかにした。
CSFおよび血漿はそれぞれ、同日に、腰椎および静脈穿刺によって患者から取り出された。血漿が凍結するまでの一定の時間が、12時間に及ぶこと(Lewczuk等、2004)を除いて、検体の事前解析処理の後に、先に公開されたデータに従って標準手順が行われた。
免疫沈降に関して、磁気ヒツジ由来の抗マウスIgG磁気ビーズ(Dynabeads)M−280(Dynal社、ハンブルグ、ドイツ)が、製造元の手順に従って、モノクロナールAβアミノ末端選択的抗体、1E8(Schering社、ベルリン、ドイツによって提供された)によって+4℃で一晩インキュベートされた。500μLの血漿が、5倍に濃縮されたRIPA洗浄緩衝液(Wiltfang等、2002)200μl、活性磁気ビーズ(1μg mAb 1E8/1.68x107ビーズ)25μLおよびのH2O300μLに添加された。検体は次いで、回転しながら、+4℃で一晩インキュベートされ、次に、PBS/0.1%のウシ血清アルブミンで4回、および10mMトリス/HCI、pH7.4で一回ビーズの洗浄が行われた。Aβ−SDS−PAGE/免疫ブロット法に関して、25μlのSDS−PAGE検体緩衝液(Wiltfang等、2002)を使用して、95℃で5分間で加熱することによって、結合Aβペプチドが溶出された。
患者グループは、平均および標準偏差により特徴付けられた。CSFペプチドレベルは、絶対値(pg/ml)で示された。血漿ペプチド値は、絶対値(pg/ml)またはパーセンテージ値(全ての単一の検査済みAβペプチドの総数に対する各ペプチドの量)でそれぞれ示された。有意なグループ差は、マンホイットニーU検定によって求められた。複数のグループの比較は、クラスカル・ワリス検定によって評価された。相関関係の分析には、スピアマンの順位相関係数(Spearman’s Rho)が使用された。我々は、臨床診断と神経化学的テストとの関係を判断するために、双列相関係数を使用した。双列相関係数を比較するのに、フィッシャーz変換が役に立った。両側有意水準は、p<0.05として採用された。受信者作動固有曲線(ROC)の曲線下面積(AUC)によって、包括的診断精度が評価された。最大ヨーデン指標でカットオフ地点が決定され、≧85%の感度をもたらした。計算には、統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン10.0が使用された。
グループ差
年齢は、診断グループ中で有意に異ならなかった。凍結までの平均時間およびMMSEスコアはそれぞれ、AD、FTDまたはVAD(平均±SD)の間でそれぞれ有意に異ならなかった。
DCおよびADにおける血漿Aβペプチドは、有意に異ならなかった。
VADの、DCおよびADを組み合わせたグループとの比較は、VADにおけるAβ1−40(p=5.6x10−3)およびAβ1−39(p=3.1x10−3)のより高い絶対値を明らかにした。その結果、VADにおいて、検査されたAβ全ての総数は、より高かった(p=4.2x10−3)。パーセント数字で、これは、Aβ1−38(p=1x10−2)、Aβ1−42(p=1.6x10−3)およびAβ2−40(p=4.6x10−2)の低下によって表され、VADにおけるAβ1−40(p=1.6x10−2)の上昇量に対応した。
FTDの、DCおよびADを組み合わせたグループとの比較は、絶対数字において、検査されたAβペプチドのいずれにおいても有意な差を明らかにしなかった。逆に、Aβ1−37(p=5.6x10−3)およびAβ1−38(p=1.1x10−3)のパーセンテージ量は、FTDにおいて有意に低下し、Aβ1−40のパーセンテージレベルは、FTDにおいて増加した(p=4.6x10−2)。
興味深いことには、DCとADと比較すると、FTDおよびVADは、上昇したAβ1−40のパーセンテージレベル、および低下したAβ1−38のパーセンテージレベルにおいて類似点を示した。逆に、Aβ1−42およびAβ2−40のパーセンテージレベルは、FTDにおいてではなく、VADでのみ減少した。
VADの診断
DCおよびADの中でのVADの陽性診断は、Aβ1−38およびAβ1−42それぞれのレベルの低下を伴う、Aβ1−40のレベルの上昇によって最も有効に支持され得る。Aβ1−38/Aβ1−40およびAβ1−40/Aβ1−42の比は共に、0.92のAUCをもたらした。
DCおよびADの中でのFTDの陽性診断は、Aβ1−38およびAβ1−37のそれぞれレベルの低下を伴う、Aβ1−40のレベルの上昇によって最も有効に支持され得る。Aβ1−38/Aβ1−40およびAβ1−37/Aβ1−40の比はそれぞれ、0.95および0.90のAUCをもたらした。
VADの中でのFTDの陽性診断は、Aβ1−38およびAβ1−37それぞれのレベルの低下を伴う、より高いレベルのAβ1−42によって最も有効に支持され得る。Aβ1−38/Aβ1−42およびAβ1−37/Aβ1−42の比はそれぞれ、0.96および0.90のAUCをもたらした。興味深いことには、VADにおけるAβ1−42の減少した値を、Aβ1−40レベル(Aβ1−40/Aβ1−42)と組み合わせた際、0.94のAUCを実現することができた。
FTDおよびVADの診断における血漿Aβペプチド
VAD、ADおよびうつ抑制(DC)の比較における、FTDの血漿中のAβペプチド種の詳細な特徴付けが提示される。ADにおけるAβ1−40およびAβ1−42に関して、結果は、他者の先の研究(Irizarry 2004、MehtaおよびPirttila 2005)と一致している。実施例Iと一致して、ADおよびCDと比較して、VADにおける血漿Aβ1−40の顕著なパーセンテージ(Aβ1−40%)増加が見いだされ、これは、Aβ1−38%、Aβ1−42%およびAβ2−40%の低下に対応した。最も興味深いことには、FTDは、Aβ1−40%およびAβ1−38%に関して、VADと同様の変化を明らかにした。対照的に、FTDは、VADと比べてより低いAβ1−37の絶対レベルのAβ1−37、およびより高いAβ1−42のパーセンテージレベルを示した。
結論を日常的診断テストに適用するために、血漿検体は、以下の標準化された前処理手順に従って、検査される必要がある。特に、分析前の異なる条件(例えば、保管時間および温度)の元での検体保管の効果に、焦点があるべきである。
全血漿Aβペプチドパターンの一部として、選択されたカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチドは、FTDおよびVADの改良された鑑別診断に関するバイオマーカーである。FTDおよびVADは共に、Aβ1−40、Aβ1−38およびAβ1−37の血漿濃度によって、他の認知症以外の患者およびADなどの他の認知症から鑑別することができる。しかしながら、FTDとVADの識別は、付加的に血漿Aβ1−42レベルを考慮すべきである。
2 全ての検査されたAβペプチドの総数に対するAβペプチドのパーセンテージ量
2 全ての検査されたAβペプチドの総数によって測定された全Aβペプチド濃度
3 全ての検査されたAβペプチドの総数に対するAβペプチドのパーセンテージ量
2 全Aβペプチド濃度; 3全Aβペプチド濃度に対するAβペプチドのパーセンテージ量
2 全ての検査されたAβペプチドの総数に対するAβペプチドのパーセンテージ量
(*)および(**)は、DCと比較して、有意な(P<0.05)および極めて有意な(p<0.01)変異を示す。
Claims (14)
- 患者から採取された体液中で、少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチドをバイオマーカーとして使用する、前頭側頭葉変性の鑑別診断のための生体外の方法であって、前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種が、Aβ1−38、Aβ1−37およびAβ1−39から成る群から選択されることを特徴とする方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチドの濃度が、前記体液中で測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチドの濃度が、前記患者から採取された血液検体中で測定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 前記血液検体が、血漿検体であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- アミロイドβペプチドが、アミロイドβペプチドに対する抗体を使用して、前記体液から濃縮されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の濃度が、相対濃度として測定されることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度が、前記体液中の全アミロイドβペプチド濃度に対する比として測定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度が、前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、Aβ1−40およびAβ1−42から成る群から選択された少なくとも1つの別のアミロイドβペプチド種の絶対濃度の比として測定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の濃度が、前記それぞれ少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の閾値と比較されることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の濃度が、
−前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、
−全アミロイドβペプチド濃度に対する比として測定された前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度と、
−前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、Aβ1−40およびAβ1−42から成る群から選択された少なくとも1つの別のアミロイドβペプチド種の絶対濃度の比として測定された前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度とから成る濃度の群から選択され、
前記それぞれ1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種の閾値を超えると、前記患者に前頭側頭葉変性がないことを示すものと見なされることを特徴とする、請求項9に記載の方法。 - 前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の濃度が、
−前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、
−全アミロイドβペプチド濃度に対する比として測定された前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度と、
−前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の絶対濃度と、別のカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種Aβ1−40の絶対濃度に対する比として測定された前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の相対濃度とから成る濃度の群から選択され、
前記少なくとも1つのカルボキシ−末端切断アミロイドβペプチド種の閾値を下回ると、前記患者に前頭側頭葉変性があることを示すものと見なされることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。 - 前記Aβ1−38の絶対濃度と、別のアミロイドβペプチド種Aβ1−42の絶対濃度に対する比として測定された前記カルボキシ末端切断アミロイドβペプチド種Aβ1−38の相対濃度が、前記患者の血管性認知症と、前頭側頭葉変性とを鑑別するのに使用され、前記Aβ1−38の閾値を下回る相対濃度が、前記患者に前頭側頭葉変性があることを示すことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
- 全アミロイドβペプチド濃度に対する比として測定された前記Aβ1−38の閾値を下回る前記Aβ1−38の相対濃度が、前記患者の前頭側頭葉変性を示すものと見なされることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって前頭側頭葉変性を鑑別診断するための新規のキットであって、患者から採取された体液中のAβ1−38、Aβ1−37およびAβ1−39から成る群から選択された少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチドの濃度を測定するために、前記少なくとも1つのカルボキシ末端切断アミロイドβペプチドに対する抗体を備えるキット。
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