JP2014093206A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】長期にわたり燃料電池の性能を維持することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むコアと、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるコアシェル触媒粒子を含む酸化剤極を備えるセル部20、コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する、被覆率定量手段180、前記酸化剤極の電位を制御することによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第1の再生手段120、前記被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲内にあることを判定する、判定手段190、及び、前記判定手段において前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあると判定されたときに前記第1の再生手段を実行させる、再生処理制御手段200、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。そのため、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。
燃料電池において、水素が供給された燃料極(アノード電極)では下記(1)式の反応が進行する。
→ 2H + 2e ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、酸化剤極(カソード電極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内を燃料極側から酸化剤極側に移動する。
一方、酸化剤極では下記(2)式の反応が進行する。
4H +O + 4e → 2HO ・・・(2)
従来、上記電極反応を促進させるための電極触媒としては、触媒活性の高い白金及び白金合金が採用されてきた。しかし、白金は価格が高く、資源量も少ないという問題があり、白金量の低減が求められている。
一方、白金を用いた触媒は非常に高価であるにもかかわらず、触媒反応は粒子表面のみで生じ、粒子内部は触媒反応にほとんど関与しない。したがって、白金を用いた触媒における、材料コストに対する触媒活性は、必ずしも高くなかった。
上記課題の解決を目的とした技術の1つとして、担体に高分散担持された白金以外の金属からなるコアと、白金又は白金合金からなるシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるコアシェル触媒粒子が注目されている。
例えば、特許文献1では、面心立方結晶構造を有するルテニウムからなるコアと、面心立方結晶構造を有する白金からなるシェルと、を有するコアシェル触媒粒子を用いることにより、白金量を低減し、触媒活性を向上させている。
特開2012−041581号公報
しかしながら、コアシェル触媒粒子は、コアがシェルで十分に被覆されていない場合、白金に比べ溶出し易いコアが触媒粒子表面に露出することとなる。このような状態のコアシェル触媒粒子を用いて燃料電池の運転を行うと、コアが溶出してしまうため、触媒劣化が加速し、燃料電池の性能が著しく低下するという問題がある。
本発明は、上記実情を鑑み成し遂げられたものであり、長期にわたり燃料電池の性能を維持することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むコアと、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるコアシェル触媒粒子を含む酸化剤極を備えるセル部、
前記コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する、被覆率定量手段、
前記酸化剤極の電位を制御することによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第1の再生手段、
前記被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲内にあることを判定する、判定手段、及び、
前記判定手段において前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあると判定されたときに前記第1の再生手段を実行させる、再生処理制御手段、
を備えることを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
本発明においては、前記判定手段における第1の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲であることが好ましい。
本発明においては、前記第1の再生手段が、前記酸化剤極の電位を0.7V(vs.RHE)以上、0.9V(vs.RHE)以下の範囲に保持するものであることが好ましい。
本発明においては、前記再生処理制御手段は、前記第1の再生手段を実行させる工程を繰り返して行う繰返し実行モードを備え、
前記第1の再生手段は、前記繰返し実行モードにより実行されるとき、初回の実行時において、前記酸化剤極に印加する電位を0.7V(vs.RHE)に保持し、2回目以降の実行時において、実行回数を重ねる毎に前記酸化剤極に印加し保持する電位を段階的に大きくしていくものであることが好ましい。
本発明においては、前記第1の再生手段の2回目以降の実行時において、前記酸化剤極に印加する電位を段階的に大きくしていく際の、実行回数を重ねる毎の電位の上昇値が10〜50mVであることが好ましい。
本発明においては、前記第1の再生手段に加え、前記シェル金属を構成する金属を含む再生処理用溶液を前記酸化剤極のコアシェル触媒粒子と接触させることによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第2の再生手段をさらに備え、
前記判定手段が、前記被覆率定量手段により定量されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲又は前記第1の数値範囲よりも小さい所定の第2の数値範囲内にあることを判定し、
前記再生処理制御手段が、前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあるときに前記第1の再生手段を選択し実行させ、前記被覆率が前記第2の数値範囲内にあるときに前記第2の再生手段を選択し実行させるものであることが好ましい。
本発明においては、前記判定手段における第1の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲であり、第2の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%未満の範囲であることが好ましい。
本発明においては、前記再生処理制御手段は、第1又は第2の再生手段を選択し実行させる工程を繰り返して行う繰返し実行モードを備えるものであることが好ましい。
本発明においては、前記第2の再生手段は、前記再生処理用溶液が貯蔵された溶液貯蔵部を有し、当該貯蔵部から酸化剤極のガス流路に前記再生処理用溶液を供給するものであることが好ましい。
本発明においては、前記被覆率定量手段が、前記コアシェル触媒粒子の開回路電位を測定する、電位測定手段を有し、前記開回路電位に基づいて被覆率を定量するものであることが好ましい。
本発明においては、前記被覆率定量手段が、前記コアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定する、電気化学表面積測定手段と、
前記コアシェル触媒粒子の過酸化水素生成量を測定する、過酸化水素生成量測定手段と、を有し、前記電気化学表面積、及び、前記過酸化水素生成量に基づいて被覆率を定量するものであることが好ましい。
本発明によれば、長期にわたり燃料電池の性能を維持することができる。
燃料電池システムの一実施形態を模式的に示す構成図である。 燃料電池システムの運転方法の典型例を示したフローチャートである。 燃料電池のセル部の一例を示す図である。 開回路電位測定を行う電気化学装置を示した斜視模式図である。 コアシェル触媒粒子の開回路電位と被覆率との関係を示す図である。 コアシェル触媒粒子の過酸化水素生成量と被覆率との関係を示す図である。 コアシェル触媒粒子のECSA変化と被覆率との関係を示す図である。 コアシェル触媒粒子の電位制御前後のサイクリックボルタモグラムである。 コアシェル触媒粒子の電位制御前後の酸素還元波である。 コアシェル触媒粒子の再生処理用溶液接触前後のPd溶出量を示す図である。 コアシェル触媒粒子の再生処理用溶液接触前後の耐久試験結果である。 被覆率の異なるコアシェル触媒粒子を用いた燃料電池の耐久試験結果である。
本発明においては、パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むコアと、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるコアシェル触媒粒子を含む酸化剤極を備えるセル部、
前記コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する、被覆率定量手段、
前記酸化剤極の電位を制御することによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第1の再生手段、
前記被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲内にあることを判定する、判定手段、及び、
前記判定手段において前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあると判定されたときに前記第1の再生手段を実行させる、再生処理制御手段、
を備えることを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
燃料電池のセル部に含まれるコアシェル触媒は、長期間の使用によってシェルの被覆率が低下すると、性能が劣化する。コアシェル触媒の劣化状態がそれほど進行していない場合には、燃料電池からセル部を取り出し、当該セル部に存在するコアシェル触媒の被覆率を上げることでコアシェル触媒を再生(性能回復)した後、セル部を再び燃料電池内へ組み込むことができる。このようなメンテナンスを行うことによって燃料電池の寿命を延ばすことができる。しかし、燃料電池からセル部を取り出して再び組み立てる作業は手間、時間、コストがかかる。
また、セル部の取出しと組み立てが面倒なためメンテナンスを怠ると、コアシェル触媒は、被覆率の低下がある程度まで進行した段階でコアが溶出しやすくなり、劣化の進行が加速する。劣化の加速によってコアの損傷やコアサイズの縮小が著しい場合には、シェルの被覆率を上げるような再生処理を施しても、もはやコアシェル触媒は再生しない。この場合、新しいセルに交換しなければならない時期が早期に訪れるため、再生によるメンテナンス以上にコストがかかる。
本発明者らは、上記問題を解決するべく、鋭意検討した。
コアシェル触媒粒子の被覆率の定量に関して、コアシェル触媒粒子の開回路電位と被覆率には、相間があることを見出した(図5参照)。また、コアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量と被覆率にも、相間があることを見出した(図6参照)。
コアシェル触媒粒子の第1の再生手段として、コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いた被覆率が高いコアシェル触媒粒子を、パラジウムが優先的に溶出する電位で保持することにより、露出したパラジウムのみが溶出し、コアが小さくなることでコアがシェルに再被覆される、コアシェル触媒粒子特有のセルフヒーリング効果が得られ、電気化学表面積は減少するが、触媒活性は向上することを見出した(後述の参考実験例2、図8、図9及び表1参照)。
一方で、被覆率が低いコアシェル触媒粒子を、パラジウムが優先的に溶出する電位で保持すると、セルフヒーリング効果が得られず、電気化学表面積が大幅に減少し、触媒劣化が優先的に生じることを見出した(後述の参考実験例1及び図7参照)。
コアシェル触媒粒子の第2の再生手段として、コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いたコアシェル触媒粒子に再生処理用溶液として白金溶液を接触させることで、イオン化傾向の差を利用して、露出したパラジウムと白金イオンを置換させることでコアをシェルで被覆することができることを見出した(後述の参考実験例3及び表2参照)。当該手段は、イオン化傾向の差を利用しているため電位制御が不要であり、パラジウムと白金イオンを置換させるため白金が単独析出せず、簡易な方法で無駄なく再生処理を行うことができる。
そして、白金溶液接触前後のコアシェル触媒粒子のパラジウム溶出量を比較すると、白金溶液接触後のコアシェル触媒粒子の方がパラジウム溶出量を低減することができるという結果が得られた(後述の参考実験例3及び図10参照)。
また、白金溶液接触前後のコアシェル触媒粒子について、それぞれ耐久試験を行ったところ、白金溶液接触後のコアシェル触媒粒子と比較して、白金溶液接触前のコアシェル触媒粒子は、電気化学表面積(ECSA)維持率、及び、白金の単位質量あたりの触媒活性維持率が低く、触媒の耐久性が悪いという結果が得られた(後述の参考実験例3及び図11参照)。これは、露出したパラジウムが多いと、パラジウムは白金ほどの活性を有していないため触媒活性が低くなり、露出したパラジウムの溶出により電気化学表面積の低下が早まるためである。
さらに、被覆率の異なるコアシェル触媒粒子を用いた燃料電池について耐久試験を行うと、被覆率の低いコアシェル触媒粒子を用いた燃料電池の方が、耐久性が悪いという結果が得られた(後述の参考実験例4及び図12参照)。
そこで、本発明者らは、本発明者らによって得られた上記の知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、燃料電池をシステムから取り出してセル部を交換、修理するのではなく、燃料電池がシステムに搭載された状態、例えば、車載されたままの状態で、自動的にメンテナンスを行うことができ、燃料電池の触媒劣化の進行を阻止し、長期にわたり燃料電池の性能を維持することができ、燃料電池のセル部の取り出し、交換、修理が必要になる回数を減らすことができる。
図1は、本発明の燃料電池システムの一実施形態を模式的に示す構成図である。
燃料電池システム100は、燃料電池110、第1の再生手段120、第2の再生手段130、酸化剤ガス供給手段140、燃料ガス供給手段150、負荷160、スイッチ170、被覆率定量手段180、判定手段190、及び、再生処理制御手段200を備える。
燃料電池110は、多数のセル部20を積層したスタック構造からなり、空気や酸化剤等の酸化剤ガス及び燃料ガスとしての水素ガスの供給を受けて電力を発生する。セル部20についての詳細は後述する。
酸化剤ガス供給手段140は、燃料電池110の酸化剤極に酸素を含有する酸化剤ガスを供給するための装置である。酸化剤ガス供給手段140は、酸化剤ガスを燃料電池110の酸化剤極に供給するためのガス流路141と、酸化剤ガスを燃料電池110の酸化剤極から排出するためのガス流路142を有する。酸化剤ガス供給手段140としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。
燃料ガス供給手段150は、燃料電池110の燃料極に水素を含有する燃料ガスを供給するための装置である。燃料ガス供給手段150は、燃料ガスを燃料電池110の燃料極に供給するためのガス流路151、及び、燃料ガスを燃料電池110の燃料極から排出するためのガス流路152を有する。燃料ガス供給手段150としては、例えば、液体水素タンク、圧縮水素タンク等を用いることができる。
負荷160は、燃料電池110において発生した電力を消費する装置である。負荷160は、電動機、補機、バッテリー等である。発電によって発生した電力は、負荷160において消費される。
スイッチ170は、燃料電池110から負荷160への電力供給を制御する。
第1の再生手段120は、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子を再生するための装置である。第1の再生手段120は、酸化剤ガス供給手段140、燃料ガス供給手段150、及び、再生処理制御手段200と入出力インターフェースを介して接続されている。第1の再生手段120は、再生処理制御手段200の指示に従って、酸化剤ガス供給手段140、及び、燃料ガス供給手段150から燃料電池110に供給される酸化剤ガス、及び、燃料ガスの供給量を調節し、燃料電池110の酸化剤極の電位が所定値(例えば、0.7V(vs.RHE))になるように制御する。尚、第1の再生手段120を再生処理制御手段200の繰り返し実行モードにより複数回実行する場合、第1の再生手段120は、2回目以降の実行時における実行回数を重ねる毎の酸化剤極に印加し保持する電位を、初回の実行時における酸化剤極に印加し保持する電位よりも、段階的に大きくしていくことが好ましい。
第2の再生手段130は、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子を再生するための装置である。第2の再生手段130は、演算記憶部131、溶液貯蔵部132、溶液供給配管133、溶液循環配管134、ポンプ135、気液分離器136、及び、溶液回収配管137を備える。
演算記憶部131は、ポンプ135、切替弁138、139、及び、再生処理制御手段200と入出力インターフェースを介して接続されている。
溶液供給配管133は、酸化剤極のガス流路142と切替弁138を介して連結され、溶液循環配管134は、酸化剤極のガス流路141と切替弁139を介して連結され、演算記憶部131が、溶液供給配管133に設けられたポンプ135を駆動させることにより、再生処理用溶液が溶液貯蔵部132と燃料電池110の酸化剤極とを循環するようになっている。そして、演算記憶部131が、所定の時間経過後に切替弁138、139を切り替えることにより、酸化剤極のガス流路142から再生処理用溶液が排液として排出される。
酸化剤極のガス流路142の下流端には、酸化剤極のガス流路142を流れる酸化剤ガスと再生処理用溶液を分離させる気液分離器136が設置されている。気液分離器136で分離された酸化剤ガスは大気中に排出される。一方、気液分離器136で分離された再生処理用溶液は、溶液回収配管137から溶液貯蔵部132に回収され、再利用される。
尚、第1の再生手段120は、第2の再生手段130と比較して、再生処理用溶液を必要とせず、電位制御のみであるため、第2の再生手段130よりも簡易的にコアシェル触媒粒子を再生することができる。従って、判定手段190において、第1の数値範囲を、第1の再生手段120によるコアシェル触媒粒子のセルフヒーリング効果が得られる数値範囲(例えば、被覆率が70%以上、90%未満)に設定し、コアシェル触媒粒子の被覆率が第1の数値範囲内にあると判断された場合は、再生処理制御手段200において、第1の再生手段120を優先的に実行させるように設定してもよい。
被覆率定量手段180は、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の被覆率を定量するための装置である。被覆率定量手段180は、演算記憶部181、電位測定手段182を備える。演算記憶部181は、電位測定手段182、判定手段190、及び、再生処理制御手段200と入出力インターフェースを介して接続されている。再生処理制御手段200は、被覆率定量手段180を作動させ、電位測定手段182は、演算記憶部181の指示に従って、燃料電池110のセル部20の発電終了後の電圧(開回路電圧)を測定し、その測定結果を演算記憶部181に与える。そして、演算記憶部181は、電位測定手段182によるセル部の開回路電圧の測定値を、セル部の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値とみなし、当該開回路電位の測定値と同じ開回路電位を有するコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子を含む混合試料を、予め用意された被覆率を定量することのできるデータ群(図5参照)から特定し、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の被覆率を定量し、その定量結果を判定手段190に与える。
判定手段190は、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の数値範囲内であるか否か判定するための装置である。判定手段190は、被覆率定量手段180の演算記憶部181、及び、再生処理制御手段200と入出力インターフェースを介して接続されていて、演算記憶部181の定量結果に基づいて、所定の数値範囲に当該被覆率が属するか否か判定し、その結果を再生処理制御手段200に与える。
再生処理制御手段200は、燃料電池110の酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の再生処理を制御するための装置である。再生処理制御手段200は、被覆率定量手段180の演算記憶部181、判定手段190、第1の再生手段120、及び、第2の再生手段130の演算記憶部131と入出力インターフェースを介して接続されていて、判定手段190の判定結果に基づいて、再生処理を制御する。
尚、第1の再生手段120、第2の再生手段130の演算記憶部131、被覆率定量手段180の演算記憶部181、判定手段190、及び、再生処理制御手段200は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラムや制御データを記憶するROM(リードオンリーメモリー)、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。
図2は、図1に示す燃料電池システムの運転方法の典型例を示したフローチャートである。なお、本発明は、必ずしも本典型例のみに限定されるものではない。
まず、再生処理制御手段200は、燃料電池110と負荷160との接続が断たれた後(燃料電池の作動停止後)、被覆率定量手段180を実行させ、被覆率定量手段180はコアシェル触媒粒子の被覆率を定量する(手順1)。
そして、判定手段190は、所定の数値範囲に当該被覆率が属するか否か判定する。
再生処理制御手段200は、判定手段190において被覆率N(%)がN≧90であると判定された場合には、再生処理を行わない(手順7)。
一方、再生処理制御手段200は、判定手段190において被覆率N(%)がN<90であると判定された場合には、再生手段を実行させる(手順2〜3又は4〜6)。
具体的には、判定手段190においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)が70≦N<90(第1の数値範囲)であると判定された場合には、第1の再生手段120を実行させ、酸化剤ガス供給手段140、及び、燃料ガス供給手段150から燃料電池110に供給される酸化剤ガス、及び、燃料ガスの供給量を調節し、燃料電池110の酸化剤極の電位が所定値になるように制御し(手順2)、コアシェル触媒粒子を再生する。第1の再生手段120は、所定時間経過後に電位制御を終了させ(手順3)、再生処理制御手段200は、繰り返し実行モードにより、再度被覆率定量手段180を実行させ、被覆率定量手段180は、コアシェル触媒粒子の被覆率を再び定量する(手順1)。
一方、判定手段190においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)が70<N(第2の数値範囲)であると判定された場合には、再生処理制御手段200は、第2の再生手段130を実行させ、第2の再生手段130の演算記憶部131は、被覆率N(%)に応じて溶液貯蔵部132から燃料電池110の酸化剤極へ再生処理用溶液を供給する供給量を算出し(手順4)、ポンプ135を駆動させることにより、溶液貯蔵部132から燃料電池110の酸化剤極へ再生処理用溶液を供給し(手順5)、コアシェル触媒粒子を再生する。演算記憶部131は、所定の時間経過後にポンプ135を停止させ、切替弁138、139を切り替えて燃料電池110の酸化剤極に供給した再生処理用溶液を酸化剤極のガス流路142から排出し(手順6)、再生処理制御手段200は、繰り返し実行モードにより、再度被覆率定量手段180を実行させ、被覆率定量手段180は、コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する(手順1)。
再生処理制御手段200は、手順1においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)がN≧90であると判定されるまで、繰り返し実行モードにより、上記第1の再生手段120又は第2の再生手段130を繰り返す。具体的には、手順1においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)が70<N(第2の数値範囲)であると判定された場合には、再度、第2の再生手段130を実行させる(手順4〜6)。一方、手順1においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)が70≦N<90(第1の数値範囲)であると判定された場合には、再度、第1の再生手段120を実行させる(手順2〜3)。
そして、手順1においてコアシェル触媒粒子の被覆率N(%)がN≧90であると判定されると、再生処理を終了する(手順7)。
本発明の燃料電池システムは、少なくとも、セル部、被覆率定量手段、再生手段、判定手段、及び、再生処理制御手段を備える。
以下、本発明に用いることのできるセル部、被覆率定量手段、再生手段、判定手段、及び、再生処理制御手段について説明する。
(セル部)
図3は、本発明に用いられる燃料電池のセル部の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。
セル部20は、電解質膜1と、電解質膜1を挟持する一対の酸化剤極6及び燃料極7とを有する膜電極接合体8を含み、さらに膜電極接合体8を電極6、7の外側から挟持する一対のセパレータ9及び10とを有する。セパレータ9、10と電極6、7の境界にはガス流路11及び12が確保されている。
電極6、7は、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とが積層した構造を有している。すなわち、燃料極7は燃料極触媒層3とガス拡散層5とが積層した構造を有し、酸化剤極6は酸化剤極触媒層2とガス拡散層4とを積層した構造を有する。
セル部は、少なくとも電解質膜と、該電解質膜の一方の面に設けられた燃料極と、該電解質膜の他方の面に設けられた酸化剤極を有する膜電極接合体を備える。
酸化剤極は、少なくともコアシェル触媒粒子を含む酸化剤極触媒層を有する。
本発明に用いられるコアシェル触媒粒子は、パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むコアと、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるものである。コアシェル触媒粒子は、市販のものであってもよいし、予め製造したものであってもよい。
コアシェル触媒粒子のコアを構成する金属(以下、コア金属材料と称する場合がある)は、パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むものであれば、特に限定されない。パラジウム合金としては、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び、銀からなる群より選ばれる金属材料との合金等が挙げられ、パラジウム合金を構成するパラジウム以外の金属は1種でも2種以上でもよい。
パラジウム合金を使用する場合には、合金全体の質量を100質量%としたときのパラジウムの含有割合が80質量%以上100質量%未満であることが好ましい。パラジウムの含有割合が80質量%未満であるとすると、白金の原子サイズとの差が大きくなり、均一な白金シェルが得られないからである。
コア金属材料の粒子の平均粒径は、後述するコアシェル触媒粒子の平均粒径以下であれば、特に限定されない。コア金属材料の粒子の平均粒径は、好ましくは10nm以下、より好ましくは3〜6nmである。
なお、本発明に用いられる粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の個々の粒径の平均値を平均粒径とする。
本発明に用いるコア金属材料は、コアシェル触媒粒子を燃料電池の触媒層に使用した際、触媒層に導電性を付与するという観点から、導電性担体に担持されているものであることが好ましい。
ここで、コア金属材料が導電性担体に担持されているとは、コア金属材料が導電性担体の表面に化学的又は物理的に吸着している状態をいう。
導電性担体としては、特に限定されないが、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン(CNH)等の炭素繊維の炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
担体へのコア金属材料の担持方法には、従来から用いられている方法を採用することができる。
コアシェル触媒粒子のシェル金属を構成する金属(以下、シェル金属材料と称する場合がある)は、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むものであれば特に限定されない。白金合金としては、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、及び、金からなる群より選ばれる金属材料との合金等が挙げられ、白金合金を構成する白金以外の金属は1種でも2種以上でもよい。
白金合金を使用する場合には、合金全体の質量を100質量%としたときの白金の含有割合が80質量%以上100質量%未満であることが好ましい。白金の含有割合が80質量%未満であるとすると、十分な触媒活性及び耐久性が得られないからである。
シェルの厚さは、単原子層以上、3原子層以下であることが好ましい。このような厚さのシェルを備えるコアシェル触媒粒子は、4原子層以上のシェルを備えるコアシェル触媒粒子と比較して、白金1g当たりの電気化学表面積が高いという利点、及び、白金の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
白金の電気化学表面積を可能な限り広く確保できるという点、及び、電子伝導性の観点から孤立した白金原子がなく、被覆された白金原子が全て有効に触媒能を発揮するという観点から、シェルは連続層であることが好ましい。
このように安定性及び触媒活性の確保のためにはシェルが連続層であり、3原子層以下であることが好ましい。ただし、シェルは必ずしもコアの全表面を覆う必要はない。
コアシェル触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm以下であることが好ましく、3〜6nmであることがさらに好ましい。
コアシェル触媒粒子のシェルは上述したように好ましくは3原子層以下であるため、コアシェル触媒粒子の平均粒径に対し、シェルの厚さがほぼ無視でき、コア金属材料の粒子の平均粒径と、コアシェル触媒粒子の平均粒径とがほぼ等しいことが好ましい。
コアにシェルを被覆する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
コアへのシェルの被覆は、一段階の反応を経て行われてもよいし、多段階の反応を経て行われてもよい。
以下、2段階の反応を経てコアにシェルが被覆される例について主に説明する。
2段階の反応を経てコアにシェルが被覆される例としては、少なくとも、コアに単原子層を被覆する工程、及び、当該単原子層を所望のシェルに置換する工程を有する例が挙げられる。
2段階の反応を経てコアにシェルが被覆される具体例としては、アンダーポテンシャル析出法により予めコアに単原子層を形成した後、当該単原子層を所望のシェルに置換する方法が挙げられる。アンダーポテンシャル析出法としては、Cu−UPD法を用いることが好ましい。
酸化剤極触媒層の形成方法は、特に限定されない。例えば、電解質膜表面にコアシェル触媒粒子を含む触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜表面に酸化剤極触媒層を形成することができる。
触媒インクは、上記のコアシェル触媒粒子に、少なくとも分散媒、電解質を加え、分散させることで得られる。
触媒インクの分散媒としては、特に限定されず、使用される高分子電解質等によって適宜選択すればよい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等、或いは、これらの混合物や水との混合物を用いることができるが、これに限定されない。
触媒インクの電解質としては、後述する電解質膜同様の材料を用いることができる。
本発明に用いられる燃料極は、少なくとも燃料極触媒層を有する。
燃料極触媒層の材料、構成、形成方法、及び、厚みは、特に限定されず、前述した酸化剤極触媒層と同様の材料、構成、形成方法、及び、厚みであっても良い。
燃料極は、必要に応じてガス拡散層を有していても良い。ガス拡散層を有する場合の燃料極の構造、及び、材料は、特に限定されず、前述した酸化剤極と同様の構造、及び、材料を用いることができる。
電解質膜としては、Nafion(登録商標:デュポン株式会社製)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー系電解質膜のようなフッ素系高分子電解質を含むフッ素系高分子電解質膜の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレン等のエンジニアリングプラスチックや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用プラスチック等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基等のプロトン酸基(プロトン伝導性基)を導入した炭化水素系高分子電解質を含む炭化水素系高分子電解質膜等が挙げられる。
セパレータとしては、導電性及びガスシール性を有し、集電体及びガスシール体として機能しうるもの、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。
(被覆率定量手段)
被覆率定量手段は、燃料電池の酸化剤極に用いられるコアシェル触媒粒子の被覆率を定量する手段である。
被覆率定量手段としては、コアシェル触媒粒子の被覆率を定量することができる手段であれば、特に限定されない。例えば、コアシェル触媒粒子の開回路電位を測定する、電位測定手段を有し、当該開回路電位に基づいて被覆率を定量する手段(以下、第1の被覆率定量手段と称する)、コアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定する、電気化学表面積測定手段と、コアシェル触媒粒子の過酸化水素生成量を測定する、過酸化水素生成量測定手段とを有し、当該電気化学表面積、及び、過酸化水素生成量に基づいて被覆率を定量する手段(以下、第2の被覆率定量手段と称する)等が挙げられ、燃料電池システム内で簡易的に被覆率を定量する観点から、第1の被覆率定量手段が好ましい。
(第1の被覆率定量手段)
第1の被覆率定量手段は、電位測定手段によりコアシェル触媒粒子の開回路電位を測定し、当該コアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値と同じ開回路電位を有するコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子を含む混合試料を特定し、当該混合試料に含まれる、コア金属材料の粒子及びシェル金属材料の粒子の表面積の合計に対するシェル金属材料の粒子の表面積の割合を計算し、得られた計算値を、コアシェル触媒粒子のシェルによる被覆率と判断する手段である。
電位測定手段としては、特に限定されず、電圧計、電流電圧計等が挙げられる。
本発明において、燃料極の電位は、燃料に水素含有ガスを使う場合には、標準水素電極の電位とほぼ等しくなる。このため、酸化剤極の電位(対燃料極)は、ほぼセル部の電圧と等しくなる。よって燃料電池と負荷とが切断された状態のセル部の電圧(開回路電圧)を測定することによって、酸化剤極の開回路電位を把握することができ、酸化剤極の開回路電位をコアシェル触媒粒子の開回路電位とみなし、当該開回路電位からコアシェル触媒粒子の被覆率を定量することができる。
従って、第1の被覆率定量手段においては、酸化剤極の電位を測定するための電位測定手段を、セル部に接続することによって、後述するデータ群と電位測定手段によって測定された電位とを照合することでコアシェル触媒粒子の被覆率を定量することができる。
本発明の燃料電池システムに第1の被覆率定量手段を用いる場合は、測定ターゲットであるコアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値と同じ開回路電位の値を有する混合試料を容易に特定するために、コア金属材料の粒子及びシェル金属材料の粒子の混合比が異なる複数の混合試料からなる混合試料群を作成し、当該混合試料群に含まれる個々の混合試料について開回路電位を測定し、コアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値を照合することによって、対応する混合試料を特定することが可能なデータ群を予め準備しておくことが好ましい。
第1の被覆率定量手段に用いられるデータ群は、コアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値と同一の開回路電位を有する混合試料を特定することができ、混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の表面積とシェル金属材料の粒子の表面積の合計に対するシェル金属材料の粒子の表面積の割合を求めるために用いることができるものであれば、いかなるデータ群であってもよい。
第1の被覆率定量手段に用いられるデータ群は、例えば、(a)コア金属材料の粒子における開回路電位のデータ、(b)シェル金属材料の粒子における開回路電位のデータ、及び、(c)コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の混合比が異なる複数の混合試料群における開回路電位のデータを少なくとも含むデータ群であってもよい。
当該(a)におけるコア金属材料の粒子、及び当該(b)におけるシェル金属材料の粒子は、それぞれ、被覆率を定量すべきコアシェル触媒粒子のコア及びシェルと同じ材料からなる。また、当該(c)における混合試料群とは、前記コア金属材料の粒子、及び、前記シェル金属材料の粒子を任意の割合で含む混合試料群を指す。
第1の被覆率定量手段に用いるデータ群について具体的に説明する。まず、コア金属材料の粒子の開回路電位V、シェル金属材料の粒子の開回路電位V100、コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の混合比が異なる複数の混合試料群の開回路電位Vを、それぞれ測定する。
次に、混合試料に含まれるコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の合計に対するシェル金属材料の粒子の割合n(質量%)をx軸にとり、混合試料群の開回路電位(V)をy軸にとれば、(x,y)=(0,V)、(n,V)、(100,V100)のデータからなるデータ群が得られる。
混合試料に用いるコア金属材料の粒子は、測定ターゲットであるコアシェル触媒粒子のコアと同じ材料を用いることができる。また、混合試料に用いるシェル金属材料の粒子は、測定ターゲットであるコアシェル触媒粒子のシェルと同じ材料を用いることができる。
混合試料に用いるコア金属材料の粒子及びシェル金属材料の粒子の平均粒径は特に限定されないが、測定ターゲットであるコアシェル触媒粒子の平均粒径と同様の大きさであれば、混合試料の開回路電位を問題なく測定することができる。
ここで、平均粒径は、X線回折法の定義に従う平均粒径の測定値を採用することができる。かかる定義に従う平均粒径は、例えば、次の方法で測定できる。
金属粒子にX線を照射し、その回折像から、結晶子サイズを次のScherrerの式(3)から求め、得られた結晶子サイズを平均粒径とする。
[式(3)]
D=(Kλ)/(βcosΘ)
上記式(3)において各符号の意味は次の通りである。
D:結晶子サイズ(nm)
K:Scherrer定数
λ:測定X線波長(nm)
β:半価幅(rad)
Θ:回折線のブラッグ角度(rad)
尚、混合試料の混合比は、当該混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の表面積及びシェル金属材料の粒子の表面積を計算するために用いられるものであり、質量基準(通常はグラム単位)の混合比で表される。
また、コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の混合比とは、混合物に含まれるコア金属材料の粒子の量とシェル金属材料の粒子の量を直接対比し、「a:b」のように表記される狭義の混合比に限定されず、コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の合計量に対するシェル金属材料の粒子の量の割合、例えば「質量%」で表記される比率を包含する広義の混合比である。
混合試料の開回路電位測定方法は、特に限定されない。開回路電位測定方法としては、例えば、回転ディスク電極(Rotating Disk Electrode;以下、RDEと称する場合がある。)、回転リングディスク電極(Rotating Ring Disk Electrode;以下、RRDEと称する場合がある。)等を作用極に用いた電気化学装置により行われる。
なお、混合試料の開回路電位は、電気化学測定において、電流を流さない状態で測定される作用極と参照極との間の電位差(単位mV等)を測定した値である。
以下、混合試料の開回路電位を測定する方法の具体例について説明する。
先ず、混合試料の粉末を、少なくとも水を含む溶媒に加え、分散させる。この分散液を、電気化学セルの作用極に塗布し、自然乾燥させる。
なお、分散液は、電解質、例えば、Nafion(登録商標:デュポン株式会社製)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー系電解質をバインダーにして、作用極上に接着してもよい。分散液には、適宜、水やアルコール等の溶媒を加えてもよい。
作用極としては、グラッシーカーボン等の、導電性が担保できる材料を用いることができる。
参照極としては、白金に水素を吹き込み使用する可逆水素電極(reversible hydrogen electrode;以下RHEと称することがある)、あるいは銀−塩化銀電極が用いられる。銀−塩化銀電極の測定値を可逆水素電極へ変換する場合は、事前にRHEと銀−塩化銀電極の電位差を測定しておき、あとで補正する。
図4は、開回路電位測定を行う電気化学装置を示した斜視模式図である。ガラスセル21に、電解液22を加え、さらに分散液23が塗布された作用極24を設ける。ガラスセル21中には、作用極24、参照極25、対極26を電解液22に十分に浸かるように配置し、作用極24と参照極25をデュアル電気化学アナライザーと電気的に接続する。また、気体の導入管27を電解液22に浸かるように配置し、セル外部に設置された酸素供給源(図示せず)から酸素を一定時間電解液22に室温下でバブリングさせ、電解液22中に酸素を飽和させた状態とする。気泡28は酸素の気泡を示す。そして、作用極24と参照極25との間の開回路電位を測定する。
作用極としてRDEを用いて混合試料の開回路電位を測定する場合、電位の安定性の観点から、RDEを電解液に浸漬させ、電解液中でRDEを回転させ、浸漬から数分後に開回路電位を測定することが好ましい。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液(酸素をバブリングさせる)
・雰囲気:酸素雰囲気下
・参照極:RHE
混合試料中のコア金属材料の粒子の表面積は、当該混合試料の質量と、当該混合試料に含まれるコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の質量で表される混合比と、コア金属材料の粒子の単位質量当たり面積から計算される。
また、混合試料中のシェル金属材料の粒子の表面積は、当該混合試料の質量と、当該混合試料に含まれるコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の質量で表される混合比と、シェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積から計算される。
ここで、混合試料の質量は、使用した混合試料全体を秤量することで知ることができる。また、混合試料に含まれるコア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の質量で表される混合比は、混合試料を調製する段階で決定される値であるから、既知である。
コア金属材料の粒子及びシェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積は、サイクリックボルタンメトリー(CV)、CO吸着、X線小角散乱(Small Angle X−ray Scattering;以下、SAXSと称する。)、TEM等の適切な測定結果から算出する。SAXSの測定結果及びTEMの観察結果からは、金属材料の粒子の平均粒径が算出できるので、当該平均粒径から粒子の単位質量当たり面積を計算できる。単位質量当たり面積は、同じ材料からなる粒子であっても粒径によって異なるから、混合試料の調製に実際に使用するコア金属材料の粒子及びシェル金属材料の粒子について測定した結果から計算する必要がある。
サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定結果から計算されるコア金属材料の粒子の電気化学表面積及びシェル金属材料の粒子の電気化学表面積は、それぞれの粒子の単位質量当たり面積として採用することができる。コア金属材料の粒子の電気化学表面積は、コア金属材料の粒子についてCV測定を行うことでサイクリックボルタモグラムを取得し、得られたサイクリックボルタモグラムに含まれる水素吸着波の面積から水素吸着電荷量を算出し、この水素吸着電荷量を用いて次の式(4)から求めることができる。また、シェル金属材料の粒子の電気化学表面積も、同様に式(4)から求めることができる。
[式(4)]
電気化学表面積(cm/g)=粒子の水素吸着電荷量(μC)/[粒子を構成する金属材料の単位活性表面積当たりの吸着電荷量(μC/cm)×粒子の質量(g)]
なお、金属材料の単位活性表面積当たりの吸着電荷量としては、既知の値を用いることができる。
電気化学表面積の測定は、例えば、回転ディスク電極(RDE)、回転リングディスク電極(RRDE)等を作用極に用いた電気化学装置により行われる。RDE及びRRDEを用いる対流ボルタンメトリーは、物質輸送速度を回転数で再現よく制御でき、且つ、電極への物質輸送を均一にできる観点から好ましい。
RDEを備える装置としては、例えば、上述した図4に示す電気化学装置が挙げられる。当該電気化学装置においては、作用極24として回転計が付属したRDEを用いる。
RDEを用いたCVの具体的な条件の一例を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液(窒素をバブリングさせる)
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:10〜100mV/秒
・電位:0.05〜1.2V(vs.RHE)
混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の表面積と、シェル金属材料の粒子の表面積を計算した後、混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の表面積とシェル金属材料の粒子の表面積の合計に対する、シェル金属材料の粒子の表面積の割合を計算し、得られた計算値を、当該混合試料に対応するコアシェル触媒粒子の被覆率であると判断する。
コアシェル触媒粒子の被覆率をN、コア金属材料の粒子の表面積をA、シェル金属材料の粒子の表面積をBとすると、被覆率Nは次の式で表される。
[式(5)]
コアシェル触媒粒子の被覆率N(単位%)
={シェル金属材料の粒子の表面積B(単位cm)/(コア金属材料の粒子の表面積A(単位cm)+シェル金属材料の粒子の表面積B(単位cm))}×100
また、混合試料の質量をM、当該混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の質量をMa、当該混合試料に含まれるシェル金属材料の粒子の質量をMb、コア金属材料の粒子の単位質量当たり面積をSa、シェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積をSbとすると、混合試料の質量M、コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の質量で表される混合比R、コア金属材料の粒子の表面積A、シェル金属材料の粒子の表面積Bは、それぞれ次の式で表される。
[式(6)]
混合試料の質量M(単位g)
=コア金属材料の粒子の質量Ma(単位g)+シェル金属材料の粒子の質量Mb(単位g)
[式(7)]
コア金属材料の粒子とシェル金属材料の粒子の質量で表される混合比R
=コア金属材料の粒子の質量Ma(単位g):シェル金属材料の粒子の質量Mb(単位g)
[式(8)]
コア金属材料の粒子の表面積A(単位cm
=コア金属材料の粒子の単位質量当たり面積Sa(単位cm/g)×〔混合試料の質量M(単位g)×{Ma(単位g)/(Ma+Mb(単位g))}〕
上記式(8)に、上記式(6)を代入すると、
[式(9)]
コア金属材料の粒子の表面積A(単位cm
=コア金属材料の粒子の単位質量当たり面積Sa(単位cm/g)×コア金属材料の粒子の質量Ma(単位g)
[式(10)]
シェル金属材料の粒子の表面積B(単位cm
=シェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積Sb(単位cm/g)×〔混合試料の質量M(単位g)×{Mb(単位g)/(Ma+Mb(単位g))}〕
上記式(10)に、上記式(6)を代入すると、
[式(11)]
シェル金属材料の粒子の表面積B(単位cm
=シェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積Sb(単位cm/g)×シェル金属材料の粒子の質量Mb(単位g)
そして、上記式(5)に、上記式(9)及び上記式(11)を代入すると、
[式(12)]
コアシェル触媒粒子の被覆率N
={B/(A+B)}×100
={Sb×Mb/(Sa×Ma+Sb×Mb)}×100(単位%)
上記式(12)において各符号の意味は次の通りである。
N:測定ターゲットであるコアシェル触媒粒子の被覆率(単位%)
A:混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の表面積(単位cm
B:混合試料に含まれるシェル金属材料の粒子の表面積(単位cm
Sa:コア金属材料の粒子の単位質量当たり面積(単位cm/g)
Sb:シェル金属材料の粒子の単位質量当たり面積(単位cm/g)
Ma:混合試料に含まれるコア金属材料の粒子の質量(単位g)
Mb:混合試料に含まれるシェル金属材料の粒子の質量(単位g)
以下に、データ群の作製方法の一例を示す。
平均粒径4.5nmのパラジウム粒子及び平均粒径5.4nmの白金粒子を、それぞれ同種のカーボンに担持させ、パラジウム粒子担持カーボン及び白金粒子担持カーボンを用意する。
これらの担持体を、白金粒子の表面積とパラジウム粒子の表面積の合計に対する白金粒子の表面積の割合(被覆率)が20%、40%、60%、80%、100%となるように混合し、それぞれの混合試料を作用極であるグラッシーカーボン電極(RDE)上に塗布し、酸素飽和の0.1M過塩素酸水溶液中にて1600rpmで回転させながらそれぞれの混合試料についての作用極と参照極(RHE)との間の開回路電位を測定する。
図5は、それぞれの混合試料に含まれる白金粒子の表面積とパラジウム粒子の表面積の合計に対する白金粒子の表面積の割合(被覆率)に対するそれぞれの混合試料についての開回路電位(mV)の関係を示した検量線である。図5に示すように、開回路電位と被覆率との間に相関関係があることがわかる。
コアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値を、このようなデータ群と照合することによって、コアシェル触媒粒子の開回路電位の測定値と同一の開回路電位を有する混合試料を特定し、当該コアシェル触媒粒子の被覆率を知ることができる。
(第2の被覆率定量手段)
第2の被覆率定量手段は、電気化学表面積測定手段により、コアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定し、過酸化水素生成量測定手段により、コアシェル触媒微子について酸素還元反応(ORR)測定を行い、当該測定により生成した過酸化水素生成量を測定し、過酸化水素生成量の値を電気化学表面積の値で除することにより、コアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を算出し、当該単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量と同じ単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を有する被覆率が既知のコアシェル触媒粒子サンプルを特定することにより、コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する手段である。
電気化学表面積測定手段としては、特に限定されず、例えば、ポテンショスタット、ポテンショガルバノスタット等が挙げられる。
過酸化水素生成量測定手段としては、特に限定されず、例えば、ポテンショスタット、ポテンショガルバノスタット等が挙げられる。
これらの測定のための手段は、システムに搭載されていてもよいし、必要に応じて外部から接続してもよい。
本発明においては、燃料電池のセル部に電気化学表面積測定手段、及び、過酸化水素生成量測定手段を接続し、電流電圧測定、及び、CV測定を行うことにより、セル部に流れる電流値、及び、サイクリックボルタモグラムを検出し、セル部に流れる電流値をコアシェル触媒粒子の過酸化水素生成量とみなし、サイクリックボルタモグラムから酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の電気化学表面積を算出し、セル部に流れる電流値を酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の電気化学表面積で除することによって、コアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を算出し、後述するデータ群と照合することにより、コアシェル触媒粒子の被覆率を定量することができる。
本発明の燃料電池システムに第2の被覆率定量手段を用いる場合は、測定ターゲットである被覆率が未知のコアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量の値と同じ単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を有する被覆率が既知のコアシェル触媒粒子サンプルを容易に特定し、被覆率が未知のコアシェル触媒粒子の被覆率を定量することが可能なデータ群を準備しておくことが好ましい。
第2の被覆率定量手段に用いられるデータ群は、被覆率が未知のコアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量の値と同じ単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を有する被覆率が既知のコアシェル触媒粒子サンプルを特定することができるものであれば、いかなるデータ群であってもよい。
第2の被覆率定量手段で用いられるデータ群としては、例えば、コア金属材料の粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量P、シェル金属材料の粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量P100、被覆率がN%のコアシェル触媒粒子サンプルの単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量Pを、それぞれ算出する。
次に、コア金属材料の粒子を被覆率0%のコアシェル触媒粒子とし、シェル金属材料の粒子を被覆率100%のコアシェル触媒粒子とすると、前記Pは被覆率0%のコアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量、前記P100は被覆率100%のコアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量とそれぞれみなすことができる。したがって、コアシェル触媒粒子の被覆率(%)をx軸にとり、コアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量(A/cm−1)をy軸にとれば、(x,y)=(0,P)、(N,P)、(100,P100)のデータ群が得られる。
過酸化水素生成量はORR測定時の電位に依存する。したがって、ORR測定時の電位V(V)をz軸にとれば、上記データは、(x,y,z)=(0,P,V)、(N,P,V)、(100,P100,V)となる。ORR測定時の電位を変数とすることにより、3次元のデータ群も得られる。
上述したように、被覆率がN%のコアシェル触媒粒子サンプルとは、測定ターゲットである被覆率が未知のコアシェル触媒粒子とは別の、被覆率が既知のコアシェル触媒粒子のことである。例えば、コアシェル触媒粒子サンプルがCu−UPDによりコアにシェルを被覆させたコアシェル触媒粒子のサンプルである場合には、前記被覆率N%は下記式(13)により得られる。
被覆率N(%)={CCu/(2×C)}×100 式(13)
上記式(13)中、CCuはCu−UPD時におけるコアへの銅吸着電荷量(C)であり、Cはコアへの水素吸着電荷量(C)である。また、0<N<100である。
尚、上記式(13)において分母に2を乗じる理由は、銅(II)イオンとプロトンとではカチオンの価数が異なるため、その価数の違いを是正するためである。また、当該銅吸着電荷量の値及び水素吸着電荷量の値は、いずれも、コアシェル触媒粒子の製造時にのみ算出できる値である。従って、本発明において、式(13)はコアシェル触媒粒子サンプルの被覆率を算出するためのものである。
コアシェル触媒粒子サンプルのORR測定方法は、特に限定されない。
ORR測定は、例えば、RRDE等を作用極に用いた電気化学装置により行われる。RRDEを用いる対流ボルタンメトリーは、上述したRDEを用いる利点に加えて、ディスク電極において生成した生成物を、リング電極で検出できるという利点がある。リング電極においては、検出される電流(A)から、過酸化水素生成量を定量できる。また、RRDEにおいては、酸素還元電流をディスク電極で検出すると同時に、生成した過酸化水素をリング電極で定量することができる。
RRDEを備える装置としては、例えば、上述した図4に示す電気化学装置が挙げられる。当該電気化学装置においては、作用極24として回転計が付属したRRDEを用いる。RRDEとしては、例えば、ディスク電極としてグラッシーカーボン電極を、リング電極として白金電極を備えるものが使用できる。
RRDEを用いたORR測定の具体的な条件の一例を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液(酸素をバブリングさせる)
・雰囲気:酸素雰囲気下
・掃引速度:10〜100mV/秒
・電位:0.05〜1.1V(vs.RHE)
・回転数:400〜3,000rpm
過酸化水素の発生を示す電流値は、電気化学表面積の大きさや、コアシェル触媒粒子の表面に現れる元素の組成に依存する。例えば、互いに電気化学表面積がほぼ等しいパラジウム粒子と白金粒子とを比較すると、パラジウム粒子の方が白金粒子よりも2電子還元反応が進行しやすいため、過酸化水素生成量が多い。
従って、検出された過酸化水素に由来する電流値(A)を過酸化水素生成量とみなして、各触媒粒子間で相対的に比較することもできる。
尚、コアシェル触媒粒子サンプルの電気化学表面積は、上述した第1の被覆率定量手段と同様の方法で算出することができる。
被覆率とコアシェル触媒粒子の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量との関係を表すデータ群の作製方法の具体例を以下に示す。
パラジウム粒子担持カーボン、白金粒子担持カーボン、及び、互いに異なる被覆率(5〜95%)を有する4種類のコアシェル触媒粒子サンプルを準備する。尚、当該4種類のコアシェル触媒粒子サンプルは、Cu−UPDを用いて互いに異なる条件で作製されたコアシェル触媒粒子であり、被覆率は上述した式(13)により予め算出された値である。
パラジウム粒子担持カーボン、白金粒子担持カーボン、及び上記4種類のコアシェル触媒粒子サンプル(以下、これら6種類の粒子を、6種類の触媒と称する場合がある。)について、それぞれ触媒インクを調製する。具体的には、触媒粉末0.5g、及びナフィオン(登録商標)0.2gをアルコール水溶液に分散させ、その濾過物を触媒インクとする。
次に、当該触媒インクを作用極に塗工し、図4に示した電気化学装置に設置する。装置の詳細は、酸素バブリングを窒素バブリングに替えたこと以外は、図4に示した装置と同様である。
続いて、窒素雰囲気下、0.05〜1.2V(vs.RHE)の範囲で、掃引速度50mV/sで電位を掃引してCVを行う。当該CVにより得られたサイクリックボルタモグラムから電気化学表面積を算出する。
次に、電気化学表面積の算出に用いた触媒インクを、白金リング電極を備えた作用極(RRDE)のディスク電極部分に塗工する。当該RRDEを、図4に示した電気化学装置に設置する。
そして、酸素雰囲気下、RRDEを1600rpmで回転させながらORR測定を行い、電圧0.1Vにおける過酸化水素生成量の値を算出する。
続いて、被覆率と、単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量との関係を表すデータ群を作成する。上記過酸化水素生成量の値を、上記電気化学表面積の値で除した値を、その触媒の単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量Pとする。なお、パラジウム粒子担持カーボンの単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量をPとし、白金粒子担持カーボンの単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量をP100とする。
図6は、上記6種類の触媒のデータを基に、縦軸に単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量P(A/cm−1)を、横軸に被覆率N(%)をとった検量線である。なお、図6中においては、パラジウム粒子担持カーボンの被覆率を0%とし、白金粒子担持カーボンの被覆率を100%とした。
図6に示すように、上記6種類の触媒のデータは、ほぼ一直線上に並び、コアシェル触媒粒子における単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量と、当該コアシェル触媒粒子の被覆率とは相関を示すことが分かる。したがって、予め既知の被覆率を有するコアシェル触媒粒子を用いて、コアシェル触媒粒子の被覆率と単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量との関係を示すデータ群を準備することにより、被覆率が未知のコアシェル触媒粒子についても、その単位電気化学表面積あたりの過酸化水素生成量を算出し、データ群と照合することで、被覆率を定量できることが分かる。
(再生手段)
再生手段は、燃料電池の酸化剤極に用いられるコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる1又は2以上の再生手段であって、少なくとも、前記酸化剤極の電位を制御することによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第1の再生手段を含むものであれば特に限定されない。
再生手段は、前記第1の再生手段に加え、シェル金属を構成する金属を含む再生処理用溶液を前記酸化剤極のコアシェル触媒粒子と接触させることによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第2の再生手段をさらに備えていることが好ましい。
第1の再生手段は、酸化剤極の電位を制御することのできるものであれば、特に限定されず、例えば、酸化剤ガス供給手段及び燃料ガス供給手段の燃料電池へのガス供給量を制御することにより、酸化剤極の電位を制御する手段、ポテンショスタット等の電位印加装置を備え、酸化剤極に電位を印加し、酸化剤極の電位を制御する手段等が挙げられる。
酸化剤極の電位を制御する際の電位値は、特に限定されないが、コアシェル触媒粒子に含まれるコアを構成する金属が溶出し、かつ、シェル金属を構成する金属が溶出しにくい電位値であることが好ましく、具体的には0.7V(vs.RHE)以上、0.9V(vs.RHE)以下となるように電位を制御することが好ましい。
第1の再生手段は、後述する再生処理制御手段が備える繰返し実行モードにより実行される場合の初回の実行時と2回目以降の実行時における酸化剤極に印加し保持する電位値は、特に限定されず、同じ電位値であっても、異なる電位値であってもよいが、シェル金属を構成する金属の溶出を抑制する観点から、初回の実行時においては、酸化剤極に印加し保持する電位を0.7V(vs.RHE)にして、2回目以降の実行時において、実行回数を重ねる毎に酸化剤極に印加し保持する電位を段階的に大きくしていくことが好ましい。
また、第1の再生手段の2回目以降の実行時において、酸化剤極に印加し保持する電位を段階的に大きくしていく際の、実行回数を重ねる毎の電位の上昇値は、特に限定されないが、急激な設定電位上昇による、コアを構成する金属の過剰溶出の防止の観点から10〜50mVであることが好ましい。
酸化剤極の電位を制御する時間は、特に限定されないが、15〜60分が好ましい。
第2の再生手段は、シェル金属を構成する金属を含む再生処理用溶液を酸化剤極のコアシェル触媒粒子と接触させることのできるものであれば、特に限定されず、例えば、前記再生処理用溶液が貯蔵された溶液貯蔵部を有し、当該貯蔵部から酸化剤極のガス流路に前記再生処理用溶液を供給するもの等が挙げられる。
シェル金属を構成する金属を含む再生処理用溶液としては、例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラクロロ白金(II)酸、それらの塩、テトラアンミン白金(II)塩化物、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、ジニトロジアンミン白金(II)、塩化白金(II)等の溶液が挙げられる。
再生処理用溶液の濃度は、特に限定されないが、0.1〜3mmol/Lが好ましい。
酸化剤極のガス流路に再生処理用溶液を供給する手段を用いる場合、通常、酸化剤極に再生処理用溶液を供給するための溶液供給配管を有し、溶液供給配管を酸化剤極のガス流路と連結させることで、酸化剤極に再生処理用溶液を供給することができる。また、必要に応じて、再生処理用溶液を溶液貯蔵部と酸化剤極との間で循環させるための溶液循環配管を設け、酸化剤極のガス流路と連結させることで、再生処理用溶液を溶液貯蔵部と酸化剤極との間で循環させてもよい。さらに、再生処理後に酸化剤極のガス流路から排出される再生処理用溶液に含まれるシェル金属を構成する金属及びシェル金属を構成する金属と置換したコアを構成する金属を回収するための回収手段を有していてもよい。回収手段としては、特に限定されないが、フィルター等が挙げられる。
尚、本発明の燃料電池システムを自動車等に搭載して用いる場合には、フィルターは、定期点検時に回収し、水素を注入して、コアを構成する金属、及び、シェル金属を構成する金属を還元し、当該金属を回収しても良い。
また、酸化剤極のガス流路から排出された再生処理用溶液を再利用するための手段を有していてもよい。再生処理用溶液を再利用するための手段としては、特に限定されないが、酸化剤極から排出されるガスと再生処理用溶液とを分離することが可能な気液分離器、及び、気液分離器から溶液貯蔵部へ再生処理用溶液を回収するための溶液回収配管を有していてもよい。
溶液貯蔵部としては、再生処理用溶液を貯蔵することができるものであれば、特に限定されず、例えば、タンク等が挙げられる。
溶液貯蔵部から酸化剤極のガス流路に再生処理用溶液を供給する方法は、特に限定されず、再生処理用溶液の自重により供給する方法や、溶液供給配管にポンプを設置して、ポンプにより供給する方法等が挙げられる。
酸化剤極のガス流路に再生処理用溶液を供給し、酸化剤極のガス流路から再生処理用溶液を排出するまでの時間は、特に限定されないが、30〜60分が好ましい。
(判定手段)
判定手段は、上述した被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が、所定の1或いは2以上の数値範囲のいずれかにあること又はいずれの数値範囲内にもないことを判定する判定手段であって、少なくとも当該被覆率が所定の第1の数値範囲内にあることを判定するものであれば、特に限定されない。
判定手段は、必要に応じて、被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲又は前記第1の数値範囲よりも小さい所定の第2の数値範囲内にあることを判定するものであってもよい。
判定手段における第1の数値範囲は、特に限定されない。例えば、後述する再生処理制御手段における第1の再生手段を実行させる数値範囲として設定することができ、第1の再生手段によるコアシェル触媒粒子のセルフヒーリング効果を有効に活用する観点から、コアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲であることが好ましい。
判定手段における第2の数値範囲は、第1の数値範囲よりも小さい所定の数値範囲であれば特に限定されない。例えば、上述した再生手段として、第1の再生手段に加え、第2の再生手段をさらに備えるものを用いる場合、第1の数値範囲は、後述する再生処理制御手段における第1の再生手段を選択し実行させる数値範囲として設定し、第2の数値範囲は、後述する再生処理制御手段における第2の再生手段を選択し実行させる数値範囲として設定することができ、第1の再生手段によるコアシェル触媒粒子のセルフヒーリング効果を有効に活用し、第2の再生手段によるシェル金属を構成する金属の使用量を低減する観点から、第1の数値範囲は、コアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲であり、第2の数値範囲は、コアシェル触媒粒子の被覆率が70%未満の範囲であることが好ましい。
(再生処理制御手段)
再生処理制御手段は、上述した判定手段の判定結果に基づいて、1又は2以上ある再生手段の中から1又は2以上の再生手段を選択し実行させるものであれば、特に限定されない。例えば、判定手段においてコアシェル触媒粒子の被覆率が第1の数値範囲内にあると判定されたときに第1の再生手段を実行させるものであることが好ましい。また、再生手段として、第1の再生手段に加え、第2の再生手段をさらに備えるものを用いる場合、判定手段においてコアシェル触媒粒子の被覆率が第1の数値範囲内にあると判定されたときに第1の再生手段を選択し実行させ、判定手段においてコアシェル触媒粒子の被覆率が第2の数値範囲内にあると判定されたときに第2の再生手段を選択し実行させるものであることが好ましい。
再生処理制御手段は、コアシェル触媒粒子の被覆率を高い状態に維持する観点から、判定手段の判定結果に基づいて、1又は2以上ある再生手段の中から1又は2以上の再生手段を選択し実行させた後、再度、被覆率定量手段を実行させ、判定手段の判定結果に基づいて、1又は2以上ある再生手段の中から1又は2以上の再生手段を選択し実行させる工程を連続的に繰り返して行う、繰返し実行モードを備えるものであることが好ましい。
繰返し実行モードは、再生手段として、第1の再生手段を備えるものを用いる場合、判定手段においてコアシェル触媒粒子の被覆率が第1の数値範囲内にあると判定された場合に、第1の再生手段を実行させる工程を連続的に繰り返して行うものであることが好ましい。
また、繰返し実行モードは、再生手段として、第1の再生手段に加え、第2の再生手段をさらに備えるものを用いる場合は、判定手段においてコアシェル触媒粒子の被覆率が第1の数値範囲内にあると判定された場合に、第1の再生手段を選択し実行させる工程を連続的に繰り返して行い、第2の数値範囲内にあると判定された場合に、第2の再生手段を選択し実行させる工程を連続的に繰り返して行うものであることが好ましい。
尚、再生処理制御手段は、コアシェル触媒粒子の被覆率が、判定手段において設定した所定の1或いは2以上の数値範囲のいずれの数値範囲内にもない場合は、1又は2以上ある再生手段のいずれの再生手段も実行しないものである。
[参考実験例1]
(被覆率と電気化学表面積変化との関係)
コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いた被覆率87%のコアシェル触媒粒子と被覆率56%のコアシェル触媒粒子を準備し、それぞれのコアシェル触媒粒子粉末10mgとナフィオン(商品名)3mgをアルコール水溶液に分散させ、触媒インクを作製した。
次に、それぞれの触媒インクをグラッシーカーボン電極(RDE)に塗工し、当該グラッシーカーボン電極を、図4に示した電気化学装置に設置し、電位制御を行った。
電位制御条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:酸素雰囲気下
・電位:0.85V(vs.RHE)
電位制御開始から、0分後、5分後、15分後、45分後、105分後のそれぞれのコアシェル触媒粒子についてCV測定を行い、当該CV測定により得られたサイクリックボルタモグラムから電気化学表面積を測定した。
CV測定条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:50mV/秒
・電位:0〜1.2V(vs.RHE)
図7は、コアシェル触媒粒子の被覆率の違いによる、電位制御時間と電気化学表面積の関係を示したものである。
図7に示すように、被覆率が高い(被覆率87%)と、電位制御による電気化学表面積の減少が少なく、セルフヒーリングがコアシェル触媒粒子の劣化よりも優先的に発生することがわかる。
一方、被覆率が低い(被覆率56%)と、電位制御によって電気化学表面積が大幅に減少し、コアシェル触媒粒子の劣化が、セルフヒーリングよりも優先的に発生することがわかる。
[参考実験例2]
(電位制御の効果の検証)
コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いた被覆率72%のコアシェル触媒粒子を準備し、上記参考実験例1と同様の方法で触媒インクを作製した。
次に、当該触媒インクをグラッシーカーボン電極(RDE)に塗工し、当該グラッシーカーボン電極を、図4に示した電気化学装置に設置し、電位制御を行った。
電位制御条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:酸素雰囲気下
・電位:0.85V(vs.RHE)
電位制御開始から、0分後、15分後のそれぞれのコアシェル触媒粒子についてCV測定及びORR測定を行った。
CV測定条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:50mV/秒
・電位:0.05〜1.2V(vs.RHE)
ORR測定条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:酸素雰囲気下
・掃引速度:10mV/秒
・電位:0.1〜1.1V(vs.RHE)
・回転数:1000rpm
CV測定により得られたサイクリックボルタモグラムを図8に、ORR測定により得られた酸素還元波を図9に示す。
また、図8のサイクリックボルタモグラムから電位制御前後のコアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定し、電位制御前後のコアシェル触媒粒子の電気化学表面積の変化率を算出した。
さらに、図9の酸素還元波から電位制御前後のコアシェル触媒粒子における白金の単位質量当たりの触媒活性(MA)を測定し、電位制御前後のコアシェル触媒粒子における白金の単位質量当たりの触媒活性の変化率を算出した。
尚、コアシェル触媒粒子における白金の単位質量当たりの触媒活性は、図9の酸素還元波において、0.9V(vs.RHE)の電流値を酸素還元電流(I0.9)、0.2V(vs.RHE)の電流値を拡散限界電流(Ilim)とし、次式(14)から活性化支配電流(Ik)を求め、グラッシーカーボン電極上に塗布したコアシェル触媒粒子に含まれる白金量(g)でIk(A)を除して白金の単位質量当たりの触媒活性(A/g−Pt)を測定した。
[式(14)]
Ik=(Ilim×I0.9)/(Ilim−I0.9
上記式(14)において各符号の意味は次の通りである。
Ik:活性化支配電流(A)
lim:拡散限界電流(A)
0.9:酸素還元電流(A)
電気化学表面積(ECSA)及び白金の単位質量当たりの触媒活性(MA)の測定結果を表1に示す。
表1に示すように、電位制御によって
電気化学表面積は、176.5cm/gから131.7cm/gとなり、25%減少している。
一方、表1に示すように、電位制御によって白金の単位質量当たりの触媒活性は、296A/g−Ptから407A/g−Ptとなり、38%向上している。
以上の結果から、電気化学表面積が小さくなったのは、露出したコアであるパラジウムが溶出し、コアシェル触媒粒子のコアが縮小したためと考えられる。
また、白金の単位質量当たりの触媒活性が向上したのは、コア全体が白金で被覆されたためと考えられる。
従って、電位制御をすることで、コアシェル触媒粒子のセルフヒーリング効果が得られることがわかる。
[参考実験例3]
(再生処理用溶液の接触の効果の検証)
コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いた被覆率64%のコアシェル触媒粒子を準備し、再生処理用溶液として0.5mmol/Lの白金溶液に接触させた。
再生処理用溶液の接触前、再生処理用溶液の接触後60分後のコアシェル触媒粒子について、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectroscopy:ICP−MS)により、コアシェル触媒粒子に含まれるパラジウム及び白金の質量%を定量した。結果を表2に示す。表2に示すように、接触後は、接触前と比較して、パラジウムが24.4質量%から22.1質量%に減少し、白金は15.8質量%から18.3質量%に増加していることから、パラジウムと白金が置換していることがわかる。
尚、再生処理用溶液接触後のコアシェル触媒粒子の被覆率は81%であった。
従って、再生処理用溶液を接触させることによって、コアシェル触媒粒子の被覆率を向上させることができることがわかる。
(パラジウム溶出試験)
また、再生処理用溶液接触前後のコアシェル触媒粒子について、パラジウムの溶出量(質量%)を測定した。
それぞれのコアシェル触媒粒子を80℃の0.1mol/L硫酸に浸漬させた。1時間後、硫酸を濾過し、濾液についてICP−MSにより、硫酸に溶出したパラジウム元素を定量した。溶出量は、パラジウム全量に対する1時間当たりの溶出質量(質量%/hr)として表した。結果を図10に示す。図10に示すように、再生処理用溶液の接触前のコアシェル触媒粒子のパラジウム溶出量は、10.6質量%であり、再生処理用溶液の接触後のコアシェル触媒粒子のパラジウム溶出量は、4.4質量%であることから、再生処理用溶液の接触によってコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させることにより、パラジウムの溶出量を大幅に低減できることができる。
(コアシェル触媒粒子の耐久試験)
さらに、再生処理用溶液の接触前後のコアシェル触媒粒子について、上記参考実験例1と同様の方法で触媒インクを作製し、当該触媒インクをグラッシーカーボン電極(RDE)に塗工し、当該グラッシーカーボン電極を、図4に示した電気化学装置に設置し、コアシェル触媒粒子の耐久試験を行った。
耐久条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:50mV/秒
・電位:0〜1.0V(vs.RHE)
・サイクル数:1200サイクル
耐久試験前後のコアシェル触媒粒子について、参考実験例2と同様の条件でCV測定を行い、CV測定結果から、耐久試験前後の電気化学表面積を測定し、耐久試験後の電気化学表面積維持率を算出した。結果を図11に示す。
また、耐久試験前後のコアシェル触媒粒子について、参考実験例2と同様の条件でORR測定を行い、ORR測定結果から白金の単位質量当たりの触媒活性を算出し、耐久試験後の白金の単位質量当たりの触媒活性維持率を算出した。結果を図11に示す。
図11に示すように、再生処理用溶液の接触前の被覆率の低いコアシェル触媒粒子の耐久試験後の電気化学表面積維持率は81.7%、白金の単位質量当たりの触媒活性維持率は64.4%であるのに対し、再生処理用溶液の接触後の被覆率の高いコアシェル触媒粒子の耐久試験後の電気化学表面積維持率は87.3%、白金の単位質量当たりの触媒活性維持率は75.7%であることから、被覆率が低いとコアシェル触媒粒子の耐久性が悪くなることがわかる。
従って、図10及び図11に示すように、コアシェル触媒粒子は、被覆率が低いとパラジウム溶出量が多くなり耐久性が悪く、被覆率が高いとパラジウム溶出量が減少し耐久性が良くなることがわかる。
[参考実験例4]
(燃料電池の耐久試験)
コアを構成する金属にパラジウム、シェル金属を構成する金属に白金を用いた被覆率92%のコアシェル触媒粒子と被覆率78%のコアシェル触媒粒子を準備し、それぞれのコアシェル触媒粒子を燃料電池の酸化剤極に用いて、燃料電池の耐久試験を行った。
耐久条件を下記に示す。
・電解液:0.1M 過塩素酸水溶液
・雰囲気:窒素雰囲気下
・電圧:0.65V−0.9V(各4秒)
0サイクル後、5000サイクル後、10000サイクル後の燃料電池の酸化剤極についてCV測定を行い、酸化剤極に含まれるコアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定し、電気化学表面積維持率を算出した。結果を図12に示す。図12に示すように、被覆率の高い(被覆率92%)のコアシェル触媒粒子の電気化学表面積維持率は、5000サイクル後99.7%、10000サイクル後89.2%であるのに対し、被覆率の低い(被覆率78%)のコアシェル触媒粒子の電気化学表面積維持率は、5000サイクル後95.3%、10000サイクル後71.0%であった。
従って、コアシェル触媒粒子の被覆率が低下すると、耐久後のコアシェル触媒粒子の電気化学表面積維持率が低くなり、燃料電池の性能が悪くなることがわかる。
以上の実験結果から、コアシェル触媒粒子の被覆率を高い状態に維持することによって、長期間にわたって燃料電池の性能を維持することが可能となることがわかる。
また、コアシェル触媒粒子の被覆率を高い状態に維持するためには、電位制御又は再生処理用溶液の接触を行うことが有効であることがわかる。
また、図7に示すようにコアシェル触媒粒子の被覆率が低い(被覆率70%未満)場合に電位制御を行うと、コアシェル触媒粒子の劣化が優先的に生じるため、コアシェル触媒粒子の被覆率に応じて電位制御と再生処理用溶液の接触を使い分けることが好ましいことがわかる。具体的には、電位制御は、再生処理用溶液を必要とせず、再生処理用溶液の接触よりも簡易的にコアシェル触媒粒子を再生することができ、再生処理用溶液の使用量を抑えることができることから、コアシェル触媒粒子の被覆率が高い(被覆率70%以上、90%未満)場合は、コアシェル触媒粒子のセルフヒーリング効果が得られるため、電位制御を優先的に行い、コアシェル触媒粒子の被覆率が低い(被覆率70%未満)場合にのみ、再生処理用溶液の接触を行うことが効果的であることがわかる。
1 電解質膜
2 酸化剤極触媒層
3 燃料極触媒層
4,5 ガス拡散層
6 酸化剤極
7 燃料極
8 膜電極接合体
9,10 セパレータ
11,12 ガス流路
20 セル部
21 ガラスセル
22 電解液
23 分散液
24 作用極
25 参照極
26 対極
27 気体の導入管
28 気泡
100 燃料電池システム
110 燃料電池
120 第1の再生手段
130 第2の再生手段
131 演算記憶部
132 溶液貯蔵部
133 溶液供給配管
134 溶液循環配管
135 ポンプ
136 気液分離器
137 溶液回収配管
138、139 切替弁
140 酸化剤ガス供給手段
141、142 酸化剤極のガス流路
150 燃料ガス供給手段
151、152 燃料極のガス流路
160 負荷
170 スイッチ
180 被覆率定量手段
181 演算記憶部
182 電位測定手段
190 判定手段
200 再生処理制御手段

Claims (11)

  1. パラジウム及びパラジウム合金から選ばれる少なくとも一方を含むコアと、白金及び白金合金から選ばれる少なくとも一方を含むシェル金属からなり且つ前記コアを被覆するシェルと、を備えるコアシェル触媒粒子を含む酸化剤極を備えるセル部、
    前記コアシェル触媒粒子の被覆率を定量する、被覆率定量手段、
    前記酸化剤極の電位を制御することによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第1の再生手段、
    前記被覆率定量手段により測定されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲内にあることを判定する、判定手段、及び、
    前記判定手段において前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあると判定されたときに前記第1の再生手段を実行させる、再生処理制御手段、
    を備えることを特徴とする、燃料電池システム。
  2. 前記判定手段における第1の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲である、請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記第1の再生手段が、前記酸化剤極の電位を0.7V(vs.RHE)以上、0.9V(vs.RHE)以下の範囲に保持する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記再生処理制御手段は、前記第1の再生手段を実行させる工程を繰り返して行う繰返し実行モードを備え、
    前記第1の再生手段は、前記繰返し実行モードにより実行されるとき、初回の実行時において、前記酸化剤極に印加する電位を0.7V(vs.RHE)に保持し、2回目以降の実行時において、作動回数を重ねる毎に前記酸化剤極に印加し保持する電位を段階的に大きくしていく、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記第1の再生手段の2回目以降の作動時において、前記酸化剤極に印加する電位を段階的に大きくしていく際の、作動回数を重ねる毎の電位の上昇値が10〜50mVである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記第1の再生手段に加え、前記シェル金属を構成する金属を含む再生処理用溶液を前記酸化剤極のコアシェル触媒粒子と接触させることによりコアシェル触媒粒子の被覆率を向上させる、第2の再生手段をさらに備え、
    前記判定手段が、前記被覆率定量手段により定量されるコアシェル触媒粒子の被覆率が所定の第1の数値範囲又は前記第1の数値範囲よりも小さい所定の第2の数値範囲内にあることを判定し、
    前記再生処理制御手段が、前記被覆率が前記第1の数値範囲内にあるときに前記第1の再生手段を選択し実行させ、前記被覆率が前記第2の数値範囲内にあるときに前記第2の再生手段を選択し実行させる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  7. 前記判定手段における第1の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%以上、90%未満の範囲であり、第2の数値範囲はコアシェル触媒粒子の被覆率が70%未満の範囲である、請求項6に記載の燃料電池システム。
  8. 前記再生処理制御手段は、第1又は第2の再生手段を選択し実行させる工程を繰り返して行う繰返し実行モードを備える、請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
  9. 前記第2の再生手段は、前記再生処理用溶液が貯蔵された溶液貯蔵部を有し、当該貯蔵部から酸化剤極のガス流路に前記再生処理用溶液を供給するものである、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記被覆率定量手段が、前記コアシェル触媒粒子の開回路電位を測定する、電位測定手段を有し、前記開回路電位に基づいて被覆率を定量するものである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  11. 前記被覆率定量手段が、前記コアシェル触媒粒子の電気化学表面積を測定する、電気化学表面積測定手段と、
    前記コアシェル触媒粒子の過酸化水素生成量を測定する、過酸化水素生成量測定手段と、を有し、前記電気化学表面積、及び、前記過酸化水素生成量に基づいて被覆率を定量するものである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
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