JP2014086597A - 鉄損に優れた変圧器鉄心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】斜角加工が施された方向性電磁鋼板を鉄心材料として積層させる、積み変圧器用鉄心の製造方法において、前記斜角加工後の鋼板の形状が、下記(1)式及び(2)式を満足することを特徴とする。
記
(設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°))≦0.5°−(鋼板反り量(mm))×0.02(°/mm) ・・・(1)
(設計長辺長さに対する加工後長辺長さのずれ量(mm))≦(接合部ラップ代(mm))×0.1−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(2)
【選択図】図1
Description
低鉄損を実現するには、鋼板中の二次再結晶粒を(110)[001]方位(ゴス方位)に高度に揃えることや、製品中の不純物を低減することが重要である。
さらに、結晶方位制御を不純物低減には限界があることから、鋼板の表面に対して物理的な手法で不均一性を導入し、磁区の幅を細分化して鉄損を低減する技術、すなわち磁区細分化技術が開発されている。
また、特許文献2には、方向性珪素鋼板に対して、特定方向に電子ビームの照射を行うことにより磁区幅を制御する技術が提案されている。
図1は、三相三脚型の変圧器鉄心の概略図を示したものである。図1に示すように、三相三脚型の変圧器鉄心は、主脚、側脚、ヨークの部位からなり、各部位は、方向性電磁鋼板の圧延方向、つまり磁化容易軸方向が鉄心内で作る閉磁路と平行となるよう斜角切断された鋼板からなる。そして、斜角切断された各鋼板は、ステップラップ積みや交互積みといった方法により、磁束の流れを妨げないように積層され、接合される(この鋼板同士が接合されている部分を、以後「接合部」と称する。)。この接合部は、鉄心内磁路において抵抗となる部分であり、変圧器の励磁特性を大きく左右する重要な部分である。
ここで、斜角加工された鋼板の寸法公差が大きな場合には、鋼板同士の接合部に隙間ができ、磁気抵抗が大幅に増加するため、変圧器内の漏れ磁束の増加や、鉄損、励磁電流、騒音の大幅な増加といった励磁特性の劣化を招くという問題がある。
また、特許文献4には、鋼板両面のついになる位置にレーザービームを照射し、鋼板のそりを改善する技術が開示されている。
I.斜角加工が施された鋼板の寸法公差は、鋼板反りが大きいほど、大きくなる。
II.鋼板反りが大きい場合、同じ斜角寸法公差の鋼板であっても、変圧器鉄心にした時の励磁特性は劣化する。
III.励磁特性が劣化した場合、変圧器鉄心の接合部における漏れ磁束が増加する。
そのため、本発明者らは、鋼板反りが発生した場合でも、接合部における鋼板積み精度が十分に確保される条件を模索した結果、斜角加工後の形状が特定の条件を満たす場合には、磁性劣化を抑えられることを見出した。さらに、この技術は、鋼板反りを矯正するための追加的な工程を必要としないため、作業の煩雑性や製造コストの観点からもメリットがある。
1.斜角加工が施された方向性電磁鋼板を鉄心材料として積層させる、積み変圧器用鉄心の製造方法において、前記斜角加工後の鋼板の形状が、下記(1)式及び(2)式を満足することを特徴とする鉄損に優れた変圧器鉄心の製造方法。
記
(設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°))≦0.5°−(鋼板反り量(mm))×0.02(°/mm) ・・・(1)
(設計長辺長さに対する加工後長辺長さのずれ量(mm))≦(接合部ラップ代(mm))×0.1−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(2)
ここで、鋼板反り量とは、圧延方向長さが280mmの鋼板のサンプルについて、該鋼板面を地面と垂直に載置し、圧延方向片端30mmを挟んで固定した際の、固定した端(0mm)に対する反対端の変位量(mm)のことをいう。また、接合部ラップ代とは、鉄心の鋼板接合部において各鋼板をずらして積層した際の、鉄心の中での最大のずらし量(mm)のことをいう。
記
(スリット横曲がり量(mm))≦1.0−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(3)
ここで、前記スリット横曲がり量とは、スリット加工された圧延方向長さ2000mmの鋼板のサンプルについて、スリット加工した辺を定盤に押し当てた際、該鋼板と定盤との間に生じる隙間の中で最大の隙間量(mm)のことをいう。
本発明は、斜角加工が施された方向性電磁鋼板を鉄心材料として積層させる、積み変圧器用鉄心の製造方法である。
そして、前記斜角加工後の鋼板の形状が、下記(1)式及び(2)式を満足することを特徴とする。
記
(設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°))≦0.5°−(鋼板反り量(mm))×0.02(°/mm) ・・・(1)
(設計長辺長さに対する加工後長辺長さのずれ量(mm))≦(接合部ラップ代(mm))×0.1−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(2)
(鋼板反り量)
前記鋼板反りは、図2(a)に示すように、圧延方向長さ280mmの鋼板サンプルを準備し、図2(b)に示すように、該鋼板面を地面に垂直に載置し、圧延方向片端30mmを挟んで固定した際の、固定した端に対する反対端の変位量(mm)にて定義する。この変位量は、レーザーや電子ビームを照射した面側を正とする。サンプルの鋼板の幅が30mmより小さいと鋼板エッジの歪みによる影響が顕著となるため、鋼板幅は30mmで測定することとする。また、1つの試料につき10枚をサンプリングし、平均した値を試料の反り量(mm)とする。
図3に、本発明の積み変圧器用鉄心を構成する各部材、並びに、それらの斜辺角度及び長辺を示す。なお、三相三脚内鉄型以外の形状の斜角材でも、各部材の圧延方向と平行な辺で最も長い辺を長辺と定義する。また、前記斜辺を鋼板同士の接合部をなす辺とし、その辺と圧延方向がなす角度を斜辺角度α1〜α4とする。主脚(六角形)については、斜辺同士がなす角度を斜辺角度α5、α6とする。
本発明では、斜辺角度α1〜α6は読み取り顕微鏡による3点間の変位測定を行い、三角法によって角度を求めた。また、長辺長さは直尺を用いて測定した。1つの試料につき30枚をサンプリングし、平均した値を、試料の加工後斜辺角度(°)、加工後長辺長さ(mm)とする。設計値に対する測定値(加工後斜辺角度、加工後長辺長さ)の値をずれ量として定義する。
変圧器鉄心は、交互積みやステップラップ積みなど様々な積み方式を取るが、鋼板接合部において各鋼板が積層方向においてラップするよう、一層(又は二層など複数層)ごとに、鋼板をずらして積層することが一般的である。そして、本発明のラップ代とは、鉄心の鋼板接合部において各鋼板をずらして積層した際の、鉄心の中での最大のずらし量(mm)と定義する。例えば、図4に示すように、3段のステップラップ積みにおいて、1段につき2mm圧延方向(ヨークの長辺方向)にずらして積んだとすると、接合部ラップ代は6mmとなる。
(式(1)について)
前記設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°)が大きくなると、積層した鋼板同士の接合がうまくできず、接合部に隙間ができる。その結果、漏れ磁束が増加し、変圧器鉄心の励磁特性が劣化する。さらに、前記鋼板反りが生じている場合、積層させて鉄心を組んだ際に積層不良が起こる可能性があり、励磁特性が劣化しやすくなる。そのため、ずれ量が励磁特性に及ぼさない範囲を実験的に調査し、関係式(1)を導出した。
図5から、角度のずれ量が0.5°を超える範囲では、得られた小型変圧器鉄心の鉄損が5%以上増加することがわかった。そのため、低鉄損を確保するためには、前記設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量を0.5°以下とする必要がある。
図6から、鋼板反りが大きくなる程、鉄損が5%以上増加しない角度のずれ量は小さくなり(許容される角度のずれ量が小さくなり)、プロット結果から導出された近似直線の傾きは、およそ0.02(°/mm)となる。
以上のことから、変圧器鉄心の励磁特性を高く維持するためには、設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°)が、0.5°−(鋼板反り量(mm))×0.02(°/mm)以下となる関係(式(1))を満足する必要がある。
前記斜角加工が施された方向性電磁鋼板の設計長辺長さからのずれ量が大きくなると、鋼板同士の接合が上手くできず、接合部に隙間ができる。その結果、漏れ磁束が増加し、変圧器鉄心の励磁特性が劣化する。この励起特性の劣化は、特に鋼板ラップ代に対し、そのずれ量が大きい場合に顕著となる。さらに、前記鋼板反りが生じている場合、積層させて鉄心を組んだ際に積層不良が起こる可能性があり、励磁特性が劣化しやすくなる。そのため、ずれ量が励磁特性に及ぼさない範囲を実験的に調査し、関係式(2)を導出した。
図7から、ラップ代が大きくなる程、鉄損が5%以上増加しない長辺長さからのずれ量は小さくなり(許容される長辺長さからのずれ量が小さくなり)、プロット結果から導出された近似直線の傾きは、およそ0.1となる。
図8から、鋼板反り量(mm)が大きいほど、鉄損が5%以上増加しない設計長辺長さからのずれ量の上限値(mm)は小さくなり(許容される設計長辺長さからのずれ量(mm)が小さくなり)、プロット結果から導出された近似直線の傾きは、およそ0.05となる。
以上のことから、変圧器鉄心の励磁特性を高く維持するためには、設計長辺長さに対する加工後長辺長さのずれ量(mm)が、(接合部ラップ代(mm))×0.1−(鋼板反り量(mm))×0.05以下となる関係(式(2))を満足する必要がある。
記
(スリット横曲がり量(mm))≦1.0−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(3)
前記スリット横曲がり量とは、図9に示すように、スリット加工された圧延方向長さ2000mmの鋼板のサンプルについて、スリット加工した辺を定盤に押し当てた際、該鋼板と定盤との間に生じる隙間の中で最大の隙間量(mm)のことをいう。より具体的には、1つの試料につき10枚をサンプリングし、その両スリット辺を測定した平均値を、サンプルのスリット横曲がり量とする。
図10に示すように、鋼板を鉄心斜角形状に加工する場合、所定の幅にスリットしたコイルをシャーにより剪断を行う。その際、鋼板がコイル進行方向に対しずれている場合、シャー加工後の斜辺角度や長さにすれが生じるため、横曲がりが生じたスリットコイルを加工すると、斜辺角度や長辺長さにずれが生じることがある。
斜角加工を行うコイルスリットと斜角材形状の調査を行ったところ、所望の斜角形状の公差を得るためには、上記式(3)を満たすことが好ましいことがわかった。
その結果、スリット横曲がり量(mm)は、1.0−(鋼板反り量(mm))×0.05の関係(式(3))を満足することが好ましい。
前記スリット時の張力を上げると、スリット時の鋼板が安定し、横曲がり量は小さくなる。ただし、張力を大きくし過ぎると鋼板内に歪みが導入され、磁気特性が劣化する。そのため、張力は3.0kg/mm2より小さくすることが望ましい。前記スリット条の両端に捨て条を作ると、捨て条の部分がコイルエッジから伝わる振動のバッファーとなり、スリット時の鋼板が安定し、横曲がり量が小さくなる。
また、本発明の変圧器鉄心の製造に用いられる方向性電磁鋼板に磁区細分化を施す手法としては、大きなエネルギーを、ビーム径を絞って導入することができるレーザー照射や電子ビーム照射が適している。
レーザー発振の形態としては、ファイバー、CO2、YAGなど問わない。また、連続照射タイプのレーザー、Qスイッチ型などパルス発振タイプのレーザー照射いずれも、形状が本発明の範囲式を満たす限り適する。レーザー照射の際の、平均レーザー出力P(W)、ビームの走査速度V(m/s)ビーム径d(mm)は、本発明の範囲を満たす限り、特に制限しない。ただし、磁区細分化効果を十分に得られることが必要となるので、単位長さ当たりのエネルギー入熱量P/Vは10 W・s/mより大きいことが好ましい。また、レーザー照射は鋼板に連続状に照射しても、点列状に照射しても良い。点列に歪みを導入する方法は、ビームを素早く走査しながら所定の時間間隔で停止し、本発明に適合する時間、その点でビームを照射しつづけた後、また走査を開始するというプロセスを繰り返すことにより実現する。点列状に照射する際の、点間の間隔は、広すぎると磁区細分化効果が小さくなるので、0.40mm以下が好ましい。
本発明の変圧器鉄心の製造に用いられる方向性電磁鋼板を製造する方法については、上述した以外の事項については特に限定されないが、推奨される方向性電磁鋼板の成分組成及び製造方法について述べる。
C:0.08質量%以下
C量が0.08質量%を超えると製造工程中に磁気時効の起こらない50質量ppm以下までCを低減することが困難になるため、0.08質量%以下とすることが好ましい。なお、下限に関しては、Cを含まない素材でも二次再結晶が可能であるので特に設ける必要はない。
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素であるが、含有量が2.0質量%に満たないと十分な鉄損低減効果が達成できず、一方、8.0質量%を超えると加工性が著しく低下し、また磁束密度も低下するため、Si量は2.0〜8.0質量%の範囲とすることが好ましい。
Mnは、熱間加工性を良好にする上で必要な元素であるが、含有量が0.005質量%未満ではその添加効果に乏しく、一方1.0質量%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、 Mn量は0.005〜1.0質量%の範囲とすることが好ましい。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために有用な元素である。しかしながら、含有量が0.03質量%未満では磁気特性の向上効果が小さく、一方1.5質量%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化する。そのため、Ni量は0.03〜1.5質量%の範囲とするのが好ましい。
(サンプル1〜24)
最終板厚0.23mmに圧延された、Si:3%を含有する冷延板を、脱炭、一次再結晶焼鈍した後、MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶過程と純化過程を含む最終焼鈍を施し、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を得た。その後、60%のコロイダルシリカとリン酸アルミニウムからなる絶縁コートを塗布、800℃にて焼付けた。次いで、圧延方向と直角に圧延方向に3mm間隔で、ファイバーレーザにて線状に連続レーザー照射、若しくは0.32mmの点間隔で点列状に電子ビーム照射を行い(表1を参照。)、磁区細分化処理を行った。
その結果、磁束密度B8値で1.92T〜1.94T、W17/50で0.68〜0.71 W/kgの鋼板材料が得られた。この材料について、鋼板反り(mm)の測定を行った(表1)。
さらに、スリットを行ったコイルを2種類の変圧器鉄心設計(接合部ラップ代が24mmとなる交互積み、接合部ラップ代が16mmとなるステップラッブ積み)にて斜角加工を行った。両設計共に、外形約800mm、鉄心重量900kgの三相三脚内鉄型である。この加工材について、形状測定(斜辺角度、長辺長さの測定)を行った。測定結果を表1に示す。
Claims (3)
- 斜角加工が施された方向性電磁鋼板を鉄心材料として積層させる、積み変圧器用鉄心の製造方法において、
前記斜角加工後の鋼板の形状が、下記(1)式及び(2)式を満足することを特徴とする鉄損に優れた変圧器鉄心の製造方法。
記
(設計斜辺角度に対する加工後斜辺角度のずれ量(°))≦0.5°−(鋼板反り量(mm))×0.02(°/mm) ・・・(1)
(設計長辺長さに対する加工後長辺長さのずれ量(mm))≦(接合部ラップ代(mm))×0.1−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(2)
ここで、鋼板反り量とは、圧延方向長さが280mmの鋼板のサンプルについて、該鋼板面を地面と垂直に載置し、圧延方向片端30mmを挟んで固定した際の、固定した端(0mm)に対する反対端の変位量(mm)のことをいう。また、接合部ラップ代とは、鉄心の鋼板接合部において各鋼板をずらして積層した際の、鉄心の中での最大のずらし量(mm)のことをいう。 - 前記斜角加工が施された電磁鋼板は、スリット加工されたスリットコイルであり、該スリットコイルの形状が、下記(3)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の鉄損に優れた変圧器鉄心の製造方法。
記
(スリット横曲がり量(mm))≦1.0−(鋼板反り量(mm))×0.05 ・・・(3)
ここで、前記スリット横曲がり量とは、スリット加工された圧延方向長さ2000mmの鋼板のサンプルについて、スリット加工した辺を定盤に押し当てた際、該鋼板と定盤との間に生じる隙間の中で最大の隙間量(mm)のことをいう。 - 前記方向性電磁鋼板は、線状若しくは点列状のレーザー照射又は電子ビーム照射によって磁区細分化を施したものであり、該線状又は点列状の方向が、鋼板の板幅方向に対して30°以内の角度をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄損に優れた変圧器鉄心の製造方法。
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