JP2014060147A - 光害防止用の照明方法及び照明装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物への光害防止に優れ、かつ通行、歩行や交通の安全性と円滑性の確保、犯罪の防止、人の活動や作業の安全性と確実性の向上に必要な照度と高い演色性を有し、照明地域を一様な照度で照らすことができるため、安心感のある視環境を整えることができ、さらに仕組みが複雑ではなくコスト的にも安価な光害防止用の照明方法及び照明装置を提供すること。
【解決手段】照明装置から照射される光が、植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、光を照射することを特徴とする光害防止用の照明方法及び前記積算光量子束密度の比を満たすように、光源が制御されていることを特徴とする光害防止用の照明装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、植物が生育する域内の照明に適した、植物への光害を防止することができる光害防止用の照明方法及び照明装置に関する。
近年、都市化や交通網の発達等により屋外照明や照明の過剰な使用が増加し、照明からの光が環境に悪影響を与えている。これは、「光害(ひかりがい)」と呼ばれ、環境省の「光害対策ガイドライン(平成18年12月改訂版)」では、「光害とは、良好な光環境の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、又はそれによる悪影響」と定義され、悪影響を与える対象として、農作物、樹木、花木等の植物が挙げられている。最近では、水田や畑、果樹園等、又はこれらに隣接する道路や宅地に、道路照明灯、街路灯、防犯灯、コンビニエンスストア等の夜間営業の店舗や住宅等が設置されるようになってきており、そこで使われる照明装置からの光が、農作物等にも照射され、農作物等の適切な成長を阻害するという悪影響を与えている。植物は、日長に対する反応により、イネ、ダイズ等の短日植物と、ホウレンソウ、ブロッコリ等の長日植物に分類される。短日植物は、一日の日長が一定時間より短くなると花芽が形成され、長日植物は、一日の日長が一定時間より長くなると花芽が形成される。そのため、夜間に照明の光を受けると、短日植物では開花が遅れ、逆に長日植物では開花が早まる。例えば、短日植物であるイネの場合、水田付近の道路に照明灯が設置されると、照明灯からの光を受けた部分では開花(出穂)が遅れ、収穫量の減少や品質等級の低下を招く。また、長日植物であるホウレンソウの場合、畑やビニールハウスの近くに照明灯が設置されると、照明灯からの光により開花、成育が早まり、とうがたってしまい商品価値が損なわれる。このように、農作物等に対する光害により農業生産者に多大な被害が生じており、農作物等の植物が生育する域内においては、光害をおこさない照明方法や照明装置が望まれている。そして、従来、いくつかの提案がなされてきた。
例えば、道路用照明器具において、灯体の後方への照射光の一部を遮光する遮光壁を灯体と一体的に形成し、遮光壁により漏光を防止して、周辺住民、田畑の稲や野菜等が光害を受けないようにすることが提案されている。そして、イネが光害を受ける照度は水平面照度で5ルックス以上といわれているため、この道路用照明器具を用いて、車道の路肩端部付近の水平面照度を2ルックス以下としている(特許文献1)。
また、光源として植物に対して光害を与えない緑色(波長500〜580nm)の光源のみを用いる街路灯や、緑色(波長500〜580nm)の光源と白色系等の通常の光源とを組み合わせ、植生地側には緑色の光源からの光のみが照射されるようにした街路灯が提案されている(特許文献2)。そして、夜蛾の防除のために使用される防蛾灯においても光害の防止効果を有した照明器具が提案されている。夜蛾は、果実を穿孔、吸汁したり、夜蛾の幼虫が野菜や花卉の花芽や葉を食い荒らすため、防除が必要になるが、提案されているのは、植物の花芽形成への影響が強い波長域560〜700nmの下限560nmと、防蛾効果が高い波長域460〜580nmの下限460nmとの間、つまり波長域460〜560nmの間に分光放射エネルギーのピークを有し、分光放射エネルギーΦe(λ)とフィトクロムの分光吸収度Pr(λ)の積を560〜700nmの区間で積分した値と、460〜580nmの波長域に含まれる放射束との比が0.05以下となる光源を備えた照明器具である。ただし、この条件を満たす光源から照射される光もやはり緑色光となり、一般照明としては好ましくない。そのため、植物の花芽形成への影響が問題になる時期には、緑色光源を点灯し、それ以外の時期は白色光源を点灯するものである(特許文献3)。
別の方法としては、近赤外線光を照射し、かつ水稲の出穂の遅延を引き起こす赤色光を遮断した近赤外線光蛍光灯(特許文献4)や、自然の太陽光が照射されるまで水稲に対して近赤外線光を照射する水稲出穂遅延防止方法(特許文献5)が提案されている。これらは、植物の有するフィトクロムという光受容体に対する近赤外線光の効果を利用するものである。フィトクロムは、赤色光を吸収すると赤色光吸収型(Pr)から近赤外線光吸収型(Pfr)に変化し、近赤外線光吸収型(Pfr)は、暗所に放置するか近赤外線光を吸収すると赤色光吸収型(Pr)に変化する。水稲の出穂は、フィトクロムの変化に影響されるが、水稲が照明光を受け続けると、夜間に赤色光吸収型(Pr)への変化が起こらないため、近赤外線光を照射して赤色光吸収型(Pr)へ変化させ、照明光の影響のない状態に疑似させるものである。
また、本発明者らは、パルス駆動装置により所定のパルス発光周波数およびデューティ比で駆動されるようにした特定色成分のパルス発光光源や異なる色成分を有した複数種類のパルス発光光源を用いた光害回避照明装置を提案している(特許文献6)。
しかしながら、照射光の一部を遮光壁により物理的に遮光する方法(特許文献1)では、照明灯がある程度以上の高さになると光は遮光壁を回りこむため、稲や野菜等への光害を防止するには不十分なものとなる。また、農地側に対して光害を十分に軽減できる程度に遮光した場合には、道路の路肩部分の照度も低くなり、歩行者の安全上問題がある。さらに、遮光した側と道路上の照射面側との明暗差が大きくなり、明るい場所から暗い場所に対する視認性が低下し、犯罪者が身を隠しやすい暗がりができるため防犯の面でも問題が生じる。
また、緑色(波長500〜580nm)の光源を用いる方法(特許文献2、3)は、光源の演色性が低いため、一般の照明には適さない。そのため、一般照明として使用する場合には、通常の白色光と組み合わせて用いる必要があるが、植生地側に緑色の光源からの光のみが照射されるようにすることは実際には難しく、白色光が植生地側に影響を与えてしまう。さらに、演色性が低い光源で照らされた植生地側では、色の識別が難しく、明るさも暗く感じられるため安全上問題がある。光の色は個人個人によって好き嫌いがあり、色彩を帯びた光は人に対して不快感を与えることがある。また、植物の花芽形成への影響が問題になる時期には、緑色光源を点灯し、それ以外の時期は白色光源を点灯する方法では、緑色光源のみを点灯している時期は、一般照明として使えない。そして、これらの方法では複数種類の光源が必要となるためコストアップにつながる。
近赤外線光蛍光灯を用いる方法(特許文献4、5)は、夜間照明により攪乱されたフィトクロムが近赤外線光の照射により正常に戻る性質を利用するものであり、そもそも光が植物に与える影響自体を防ぐものではない。また、近赤外線光の照射範囲が肉眼では確認できないため、設置時の照射方向、角度、出力等の調整が難しい。さらに、近赤外光の照射量を適切に制御しなければならず、そうでないと効果が得られないばかりか、逆に品質を低下させることになる。また、通常の夜間照明の他に近赤外線光蛍光灯を設置する必要があり、設備にかかる費用が多大となる。
パルス発光光源を用いる方法(特許文献6)は、パルス発光光源を所定のパルス発光周波数やデューティ比で駆動させることにより、出穂の遅延を少なくしているが、連続発光光源を用いた場合は出穂遅延の防止効果はない。そのため、パルス発光制御の構造や部品が必要であり、照明装置にかかる費用を小さくするうえでの障壁となる。
特開2000−222911号公報 特開2008−226567号公報 特開2004−121217号公報 特開2006−244910号公報 特開2006−271374号公報 国際公開2011−052462号パンフレット
近年、都市化や交通網の整備が進み、植物に対する光害の防止はますます重要になってきている。しかし、植物への光害を効果的に防止しながら、一般照明としての要求を満たす照明方法や照明装置は得られていなかった。一般の夜間照明には、通行、歩行や交通の安全性と円滑性を確保すること、犯罪を防止すること、人の活動や作業の安全性と確実性を高めること、安心感のある視環境を整えることが要求されている。通行、歩行、交通の安全性と円滑性、犯罪の防止及び人の活動や作業の安全性と確実性の要求を満たすには、通行や作業等及び防犯上に必要な照度を確保する必要があり、さらに色が識別できるように自然な白色光に近い高い演色性が必要である。加えて、照明される場所の明暗差が大きくなると、明るい場所から暗い場所に対する視認性が低下し暗がりができ、防犯上や安全上問題となるため、照明地域が一様な照度であることが必要である。また、演色性の高い照明で、照明地域が一様な照度で照らされることは、安心感のある視環境を整えるためにも必要となる。従来は、これら一般照明として必要とされる特性を満足しながら、植物への光害を防止できる照明方法及び照明装置は得られていなかった。本発明の課題は、上記の問題点を解決し、植物への光害防止に優れ、かつ通行、歩行や交通の安全性と円滑性の確保、犯罪の防止、人の活動や作業の安全性と確実性の向上に必要な照度と高い演色性を有し、照明地域を一様な照度で照らすことができるため、安心感のある視環境を整えることができ、さらに仕組みが複雑ではなくコスト的にも安価な光害防止用の照明方法及び照明装置を提供することにある。
本発明者らは、植物への光害防止効果に優れ、必要な照度と自然な白色光に近い高い演色性を有し、照明地域を一様な照度で照らすことのできる照明方法や照明装置の検討を行った。しかし、植物に照射される光を物理的に遮光するか、植物に影響を与えない波長の光のみを使用するという従来の方法の延長では、ある程度の植物への光害防止効果は得られるものの十分ではなく、さらに一般照明に必要な照度、高い演色性や照度の一様性を得ることはできなかった。検討の過程で、パルス発光光源を用い所定のパルス発光条件で照明を行う方法を見出したが(特許文献6)、これはパルス発光の制御にコストがかかる分、照明の低価格化には適さないものであった。そこで、本発明者らは、全く異なった角度からの検討を開始し、植物の有する他の光受容体であるクリプトクロムに着目した。クリプトクロムは、可視光の紫から青の光である390〜500nm の波長の光を吸収する光受容体であり、この領域の光を吸収することにより短日植物では開花を促進する。従来技術では、550〜700nmの波長の光を吸収すると、短日植物では花芽の形成を送らせるフィトクロムにばかり注目し、この範囲の波長の光を照射しないことで光害を防止しようとしていた。そのため、可視光のうち一部波長領域の光が欠けることになり、自然な白色光に近い光を得ることはできなかった。本発明者らは、フィトクロムの作用する波長領域の光を除くのではなく、クリプトクロムを作用させてフィトクロムの作用との釣り合いをとることにより、植物への光害を防止することを目指して実験を重ねた。その結果、フィトクロム感応域の積算光量子束密度と、クリプトクロム感応域の積算光量子束密度との比を所定の範囲にすることにより、植物への光害防止効果に優れ、かつ通行、歩行や交通の安全性と円滑性を確保し、犯罪を防止し、人の活動や作業の安全性と確実性を高め、安心感のある視環境を整えるのに必要な照度と高い演色性を有する照明が行えることを見出した。さらに、この方法や装置によれば、照明地域を一様な照度や演色性で照らすことができ、照明方法や装置の仕組みが複雑ではなくコスト的にも安価であることを見出した。以上の知見に基づき、本発明の光害防止用の照明方法及び照明装置は完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、(1)植物が生育する域内における光害防止用の照明方法であって、照明装置から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光を照射することを特徴とする光害防止用の照明方法や、(2)照明装置から照射される光が、植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.90〜1.40を満たすように、前記光を照射することを特徴とする上記(1)記載の光害防止用の照明方法や、(3)照明装置から照射される光が、平均演色評価数が40以上を満たすように、前記光を照射することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の光害防止用の照明方法や、(4)植物が生育する域内に設置される光害防止用の照明装置であって、少なくとも390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有する光を照射する光源を備え、前記光源から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光源が制御されていることを特徴とする光害防止用の照明装置に関する。
本発明によると、植物が生育する域内に適した、植物への光害防止効果に優れた光害防止用の照明方法及び照明装置を提供することができる。また、本発明の照明方法及び照明装置によれば、設置環境や目的に必要な照度と、自然な白色光に近い高い演色性を得ることができ、照明地域を一様な照度や演色性で照らすことができる。そのため、植物への光害を防止しながら、通行、歩行や交通の安全性と円滑性を確保し、犯罪を防止し、人の活動や作業の安全性と確実性を高め、安心感のある視環境を整えることができる。さらに、これまで植物への光害の影響のために照明装置を設置できなかった場所でも照明を行うことができ、仕組みが複雑ではなくコスト的にも安価な光害防止用の照明方法及び照明装置を提供することができる。
照明1〜7から照射された光の照度5ルクスでの波長別光量子束密度を示すグラフ。 実施例1、3及び比較例1〜5の光害阻止率と波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度(Cry)に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度(Phy)の比との関係を示すグラフ。 照明1、照明6及び水銀灯を用いた圃場試験において、各照明の照度とイネの出穂遅延日数との関係を示すグラフ。
本発明の光害防止用の照明方法は、植物が生育する域内における照明方法であって、照明装置から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光を照射することを特徴とする光害防止用の照明方法である。植物が生育する域内とは、水田や畑等の農地、果樹園、街路樹や生け垣等の植込み及び野生植物の植生地等の植物が生育している区域、及び前記区域に隣接する道路、公園、宅地等であって、そこに照明装置が設置されると照明装置からの光が前記区域の植物を照射してしまう区域を含む。
光の光量子束密度とは、1秒あたり、1平方メートルあたりに受光する光子の数のことであり、本発明の照明方法は、照明装置から照射される光の植物の受光面における波長別の光量子束密度を、波長が390〜500nmの範囲で積算した値(積算光量子束密度)と波長が550〜700nmの範囲で積算した値(積算光量子束密度)とを求め、両者の相対的割合を一定の範囲にしたものである。つまり、照明装置から照射される光が植物にまで届いてしまう場合、照射光を受ける植物の受光面において、照射光の波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43となるように、光を照射する方法である。本発明の照明方法においては、植物が照明光を受ける受光面の全てで積算光量子束密度が上記範囲にある必要はなく、植物への光害の影響が許容できる範囲で、受光面の積算光量子束密度が上記範囲にあればよい。
波長390〜500nmの範囲は、植物の光受容体であるクリプトクロムが吸収する光の波長領域であり、波長550〜700nmの範囲は、植物の他の光受容体であるフィトクロムが吸収する光の波長領域である。クリプトクロムが作用する波長範囲の積算光量子束密度とフィトクロムが作用する波長範囲の積算光量子束密度を調整することにより、クリプトクロムの作用とフィトクロムの作用の釣り合いをとり、照明光による植物の生育への影響を低減する。例えば、イネ等の短日植物の場合、光の照射を受けると、フィトクロムは開花遅延の作用を有し、クリプトクロムは開花促進の作用を有する。この両者の作用をうまく釣り合わせることにより、フィトクロムの作用のために、イネ等が開花遅延を起こすことを防ぐ。長日植物の場合は、この逆の機構で光害を防止する。クリプトクロムとフィトクロムが植物に作用する影響の度合いは、それぞれ異なっているが、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比を0.80〜1.43とすることにより、光害を防止することができる。前記積算光量子束密度の比が1.43を超えると、フィトクロムの影響が過大となり光害を防止することはできない。また、0.80を下回ると、クリプトクロムの影響が過大となり開花促進による逆の光害を発生し光害防止効果が低下する。かかる積算光量子束密度の比は、植物に対する光害防止効果を更に向上させ、自然な白色光に近い光を得る観点から、0.90〜1.40を満たすことが好ましく、1.00〜1.40を満たすことがより好ましく、1.20〜1.40を満たすことがさらに好ましい。この範囲を満たすように光を照射すると、植物に対する光害防止効果が更に向上する。本発明の照明方法において、対象となる植物は特に限定されるものではないが、例えば、短日植物では、イネ、ダイズ、シソ、オナモミ、キク、コスモス、アサガオ等を挙げることができ、長日植物では、ホウレンソウ、ブロッコリ、コムギ、ユリ、バラ、カーネーション、トルコギキョウ等を挙げることができる。
従来の照明方法では、植物への光害防止のために、フィトクロムが吸収して作用する550〜700nmの波長範囲を除いた光を用いていた。そのため、可視光の波長領域である380〜780nmの一部が欠けた光となり、自然な白色光ではなく、色味がついた演色性の低い照明光となっていた。一方、本発明の照明方法によれば、可視光の一部の波長領域を除くことなく、植物への光害防止が行えるため、自然な白色光に近い高い演色性のある光で照明を行うことができる。本発明の照明方法では、照明装置から照射する光が、平均演色評価数が40以上を満たすように、光を照射することが好ましく、60以上を満たすようすることがより好ましい。CIE(国際照明委員会)の定める推奨基準(CIE,1986)によれば、平均演色評価数が、道路については40≦Ra<60、一般作業の工場で60≦Ra<80であるため、平均演色評価数(Ra)が40以上であれば、道路用照明として十分に用いることができ、60以上であれば、作業を行う環境の照明としても用いることができるからである。
また、従来の照明方法では、照度を上げると植物への光害が生じるため、照度を下げることによる光害防止策も取られていた。例えば、イネの場合、品種によって異なるが、数ルクスの照度でも出穂遅延が生じ、照度の増加に伴い遅延日数が増え、不出穂も発生する。本発明の照明方法によれば、照度を調整して光害防止効果を得るものではないため、環境や目的に合った照度の照明を行うことができる。本発明の照明方法では、照度が、路面での水平面照度で5ルクス以上となるように光を照射することが好ましく、10ルクス以上となるようにすることがより好ましい。社団法人日本防犯設備協会の防犯灯の照度基準(SES E1901-3)によれば、道路面上での水平面照度がクラスAで5ルクス、クラスBで3ルクスであり、日本工業規格(JIS Z9110-2010)の照明設計基準によれば、屋外での歩行者の交通において、路面での水平面照度が、活動量の少ない場合で5ルクス、活動量が中程度の場合で10ルクスである。したがって、照度が5ルクス以上であれば、防犯上や歩行者の交通の基準を満たすことができ、10ルクス以上であれば、更に防犯効果を向上させ、通行や歩行の安全性等を向上することができるからである。
本発明の光害防止用の照明方法によれば、例えば、水田や畑に隣接する道路に照明灯を設置する場合、水田や畑など農作物の生えている側を遮光したり、農作物側と道路側とを別々の光源や照明方法を用いて照明する必要がない。したがって、場所によって、照度や演色性が異なることなく、照明地域全体に一様な照明が行える。このため、明暗や色合いの差が生じないので、犯罪を防止し、人の活動や作業の安全性と確実性を高め、安心感のある視環境を整えることができる。さらに、照明用と光害防止用の別々の光源や照明装置を用いる必要がないので、仕組みが複雑ではなくコスト的にも安価に照明が行える。
本発明の照明方法を実施する方法として、例えば以下の方法を挙げることができる。本発明の照明方法では、照明用の光源を用意し、この光源から照射される光を制御することにより、植物の受光面での波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすようにする。照明用光源を調整し、照明用光源から照射される光を調整することにより、植物の受光面において、照射された光の積算光量子束密度が所定の範囲となるように調整してもよく、フィルター等の光の制御部を用いて調整してもよい。照明用光源は、1種類の光源を用いても、複数の光源を組み合わせて用いてもよく、光源で光の調整を行う場合には、調整した1種類の光源を用いても、複数の光源を組み合わせることにより、各光源からの光が合わさった状態で調整してもよい。照明を行う場所で必要とされる照度や演色性、照明装置が設置される場所、高さ等を考慮しながら、光が照射される範囲、照明装置から植物までの距離等を勘案し、適宜出力や光源等を調整する。光源は特に限定されるものではないが、例えば、白熱電球、蛍光灯、水銀灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、HIDランプ、発光ダイオード、有機EL等を挙げることができる。なかでも、光源の調整により所定の光を得やすく、消費電力も低いことから、発光ダイオードが好ましい。
発光ダイオードは、近紫外発光ダイオードに青、緑、赤色などの蛍光体を組み合わせた光源あるいは青色発光ダイオードに黄色などの蛍光体を組み合わせた光源とすると白色光を得ることができるが、蛍光体の種類を調整することにより、本発明の波長範囲390〜500nmに対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすようにすることができる。また、赤色、緑色、青色の発光ダイオードを合わせて光源として用いても白色光を得ることができるが、各ダイオードの発光割合を調整することにより、また蛍光体と組み合わせることにより、本発明の積算光量子束密度の比を満たすようにすることができる。
本発明の光害防止用の照明装置は、植物が生育する域内に設置される照明装置であって、少なくとも390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有する光を照射する光源を備え、前記光源から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光源が制御されたことを特徴とする光害防止用の照明装置である。本発明の照明装置は夜間照明用として設置されるものであり、例えば、道路照明灯、街路灯、防犯灯、又はコンビニエンスストア等の夜間営業の店舗や住宅等の照明に使用される。
本発明の照明装置では、少なくとも390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有する光が光源から照射され、この照射光が、植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように前記光源が制御されており、かかる照明装置を用いると植物への光害を防止できる。波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比は、0.90〜1.40を満たすように制御されていることが好ましい。この範囲を満たすように制御された照明装置は、植物に対する光害防止効果が更に向上する。
光源から照射される光を制御する手段は特に限定されないが、照明装置が設置される環境で必要とされる照度や演色性、照明装置が設置される場所、高さ等を考慮しながら、光が照射される範囲、照明装置から植物までの距離等に合わせて、光源を制御し適宜出力等を設定する。例えば、上記条件に合わせて、制御回路により光源や設定電力を調整し、他の制御手段を設けなくても光源から照射される光が植物の受光面での条件を満たすようにしてもよく、光源から照射された光の変換を行うフィルター等の制御部をさらに設けてもよい。光源は、1種類の光源を用いても、複数の光源を組み合わせて用いてもよく、複数の光源を組み合わせることにより、光源から照射される光が390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有するようにしてもよい。
また、本発明の照明装置に用いられる光源は、少なくとも390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有する光を照射できれば特に限定されないが、上記以外の可視光領域の波長も有する光を照射する光源であると、より自然な白色光に近い演色性を有することができるため好ましい。光源の演色性については、平均演色評価数が40以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。CIE(国際照明委員会)の定める推奨基準(CIE,1986)によれば、平均演色評価数が、道路については40≦Ra<60、一般作業の工場で60≦Ra<80であるため、平均演色評価数(Ra)が40以上であれば、道路用照明として十分に用いることができ、60以上であれば、作業を行う環境の照明としても用いることができるからである。
さらに、本発明の照明装置は、照度が、路面での水平面照度で5ルクス以上となるように設定されていることが好ましく、10ルクス以上となるように設定されていることがより好ましい。社団法人日本防犯設備協会の防犯灯の照度基準(SES E1901-3)によれば、道路面上での水平面照度がクラスAで5ルクス、クラスBで3ルクスであり、日本工業規格(JIS Z9110-2010)の照明設計基準によれば、屋外での歩行者の交通において、路面での水平面照度が、活動量の少ない場合で5ルクス、活動量が中程度の場合で10ルクスである。したがって、照度が5ルクス以上であれば、防犯上や歩行者の交通の基準を満たすことができ、10ルクス以上であれば、更に防犯効果を向上させ、通行や歩行の安全性等を向上することができるからである。かかる照明装置に用いられる光源としては、特に限定されるものではないが、例えば、白熱電球、蛍光灯、冷陰極管、水銀灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、HIDランプ、発光ダイオード、有機EL等を挙げることができる。光源の調整により所定の光を得やすく、消費電力も低いことから発光ダイオードが好ましい。また、本発明の照明装置は、各光源の点灯装置を備え、その他必要に応じて、安定器、インバータ等の通常照明装置に用いられる部品を備えていてもよい。電力の供給は、電力線から供給を受ける方法でも、装置に電源を備え、備えた電源から供給を受ける方法でもよい。電源としては、例えば、太陽電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池などを挙げることができる。
発光ダイオードは、近紫外発光ダイオードに青、緑、赤色などの蛍光体を組み合わせた光源あるいは青色発光ダイオードに黄色などの蛍光体を組み合わせた光源とすると白色光を得ることができるが、蛍光体の種類を調整することにより本発明の波長範囲390〜500nmに対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように制御することができる。また、赤色、緑色、青色の発光ダイオードを合わせて光源として用いても白色光を得ることができるが、各ダイオードの発光割合を調整することにより、また蛍光体と組み合わせることにより、本発明の積算光量子束密度の比を満たすように制御することができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。まず、発光ダイオードの光源を用いた照明装置を7種類用意した(照明1〜7)。照明1、7は近紫外発光ダイオードに青、緑、赤色などの蛍光体を組み合わせた白色発光ダイオードを光源として用い、照明2〜6は青色発光ダイオードに黄色などの蛍光体を組み合わせた白色発光ダイオードを光源として用いた。そして、これらの照明装置からの光が、イネの開花に与える影響を調べた。
(1)イネ試料の育成、処理、採取
イネを人工気象器内において、イネの開花を促進する短日条件(昼間8時間/夜間16時間)で、開花誘導遺伝子の発現が確認される状態(出芽後約5週間)まで育成した。イネ品種にはコシヒカリを用いた。コシヒカリは平成21年度の全国水稲収穫量の36%を占める生産量第1位の品種であり、光害を特に生じやすい特性を持つ。次に、照明1を設置し、夜間照明時の照度が、イネの上部での平均水平面照度が5ルクスとなるように設定した人工気象器と、夜間照明装置を設置しない人工気象器とを用意した。開花誘導遺伝子が確認されたイネを2組に分け、照明1を設置した人工気象器に一方の組のイネを入れ、照明装置を設置していない人工気象器に他方の組のイネを入れ、それぞれ最低1回の夜間に遭遇させるようにし、照明1を夜間点灯した。1回目の夜間終了の直前にそれぞれの人工気象器からイネの葉身を採取して液体窒素で凍結し、50mLサンプルチューブに採取し、液体窒素で冷却した解剖鋏で数mm角程度に破砕し−80℃で保存した。
(2)RNA抽出
冷凍保存しておいた葉身を2mLサンプルチューブに50〜65mg秤量し、液体窒素で凍結した状態で粉砕機(株式会社トッケン製「オートミル」)を用いて粉砕した。RNA抽出にはRNイージープラント・ミニキット(株式会社キアゲン製「RNeasy Plant Mini Kit」)を用い、自動抽出装置(株式会社キアゲン製「QIAcube」)により試薬および装置のプロトコルにしたがって全RNAの抽出を行った。抽出したRNAは吸光度計(サーモ・フィッシャー・サイアンティフィク社製「Nanodrop ND−1000」)により純度および濃度を測定した。
(3)cDNA合成
(2)より得られたRNAからクァンティテクト・リバース・トランスクリプション・キット(株式会社キアゲン製「Quantitect Reverse Transcription Kit」)を用い、試薬のプロトコルに従いゲノム由来のDNAの除去とcDNAの合成を行った。合成したcDNAは上記の吸光度計により純度および濃度を測定した。
(4)リアルタイムPCR
(3)により得られたcDNAおよびローター・ジーンSYBRグリーン・キット(株式会社キアゲン製「Rotor−Gene SYBR Green Kit」)と以下のプライマーセットを用いて3ローター・ジーンQ(株式会社キアゲン製「Rotor−Gene Q」)によりリアルタイムPCRを行い、イネ開花誘導遺伝子(Hd3a)のmRNA(メッセンジャーRNA)の発現量を定量した。
フォワードプライマー 5’−GCTCACTATCATCATCCAGCATG−3’(配列番号1)
リバースプライマー 5’−CCTTGCTCAGCTATTTAATTGCATAA−3’(配列番号2)
その際、Hd3aのmRNAの発現量は、ユビキチン(ubq)のmRNAを内部標準遺伝子として使用し、相対定量法で示した。ユビキチンのmRNAの発現量を定量するためのプライマーセットは、以下に示した通りであった。
フォワードプライマー 5’−AACCAGCTGAGGCCCAAGA−3’(配列番号3)
リバースプライマー 5’−ACGATTGATTTAACCAGTCCATGA−3’(配列番号4)
以上から、ubq−mRNA発現量に対するHd3a−mRNA発現量の比をHd3a−mRNAの相対発現量とした。
上述の(1)〜(4)の過程で求められた遺伝子発現量について、照明1を設置して夜間照明を行った人工気象器内のイネの遺伝子発現量をA、照明装置を設置せず夜間照明を行わなかった人工気象器内のイネの遺伝子発現量をBとし、A/Bを光害阻止率とした。光害阻止率は、1に近いほど光害を生じにくいことを示している。本発明らのこれまでの研究によると、光害阻止率が、0.8以上であれば光害防止効果が認められ、0.85以上であれば、さらに高い光害防止効果が認められる。
人工気象器内のイネの上部での照度は、照度計(横河メータ&インスツルメンツ株式会社製「51002ディジタル照度計」)を用いて測定し、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度、波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度、平均演色評価数は、分光放射計(株式会社相馬光学製「ひだまりmini-duo」)を用いて測定した。光量子束密度は、イネの上部の照度を測定した面と同じ高さの面の中央で、前記分光放射計を用いて波長別放射照度(Wm-2)を測定し、以下の式により算出した。
光量子束密度(molm-2-1)=放射照度(Wm-2)÷アボガドロ数(mol-1)÷プランク定数(Js)÷光速度(ms-1)×波長(m)(アボガドロ数は6.0221367×1023mol-1、プランク定数は6.62606957×10-34Js、光速度は299792458ms-1
照明1を用いて、イネの上部での平均水平面照度が10ルクスとなるように設定した以外は、実施例1と同様に、イネ試料の育成、処理、採取、RNA抽出、cDNA合成、リアルタイムPCRを行い、光害阻止率を求めた。
照明7を用いた以外は、実施例1と同様に、イネ試料の育成、処理、採取、RNA抽出、cDNA合成、リアルタイムPCRを行い、光害阻止率を求めた。
[比較例1〜5]
比較例1〜5は、照明1の代わりにそれぞれ照明2〜6を用いた以外は、実施例1と同様に、イネ試料の育成、処理、採取、RNA抽出、cDNA合成、リアルタイムPCRを行い、光害阻止率を求めた。
実施例1〜3、比較例1〜5での、光害阻止率、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度(Cry)、波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度(Phy)、390〜500nmの波長範囲の積算光量子束密度(Cry)に対する550〜700nmの波長範囲の積算光量子束密度(Phy)の比(Phy/Cry)、及び平均演色評価数を[表1]に示す。また、図1に各照明装置から照射された光の照度5ルクスでの波長別光量子束密度のグラフを示す。図2には実施例1、3、比較例1〜5の光害阻止率と積算光量子束密度の比(Phy/Cry)との関係を示す。
照明1を用いた実施例1では、防犯灯のクラスAの照度基準(社団法人日本防犯設備協会「SES E1901-3」)を満たす照度5ルクスという明るさで、平均演色評価数73という演色性の高い照明を行いながらも、Phy/Cryを1.38としたところ光害阻止率0.954という高い値が得られた。また、同じ照明1を用いて照度を10ルクスとした実施例2でも、光害阻止率0.937という高い値が得られた。照明7を用いた実施例3では、Phy/Cryを1.04としたところ、照度5ルクスという明るさで、平均演色評価数70という演色性の高い照明を行いながらも、光害阻止率1.000という高い値が得られた。一方、照明6を用いた比較例5は、Phy/Cryを1.44としたところ光害阻止率は0.623となり、Phy/Cry値のわずかな増加により、光害阻止率が急激に低下した。比較例1〜4は、Phy/Cryの値が、1.71〜3.12と本発明の範囲を大きくはずれているため、光害阻止率の値も0.246〜0.359と非常に低いものになった。
さらに、実施例1の発光ダイオード(照明1)を用いた屋外照明装置、比較例5の発光ダイオード(照明6)を用いた屋外照明装置を作製し、これら2種類の発光ダイオード照明に加え、通常街路照明に利用される水銀灯を用いて、圃場試験を実施した(山口大学の一般立ち入り禁止の研究用農場内)。圃場試験では、各照明の照度を変化させ、各照明の照度とイネの出穂が通常より遅れた日数(出穂遅延日数)との関係を調べた。照度と積算光量子束密度はイネの上部で測定した。水銀灯の場合のPhy/Cry値は1.98であり、照明1及び照明6の場合のPhy/Cry値は、それぞれ実施例1、比較例5と同じになるようにした。イネの品種はヒノヒカリを用いた。ヒノヒカリは平成21年度の全国水稲収穫量の約10%を占める生産量第3位の品種であり、コシヒカリ同様に光害を特に生じやすい特性を持つ。その結果を図3に示すが、照度5ルクスの各照明下における光害による出穂遅延日数が、水銀灯下で6.4日、照明6下で5.0日であったのに対し、照明1下では3.3日であった。照明6下では、水銀灯下に比べ出穂遅延日数が減少はするものの大きな差は認められないのに対し、照明1を用いた場合、通常照明の約半分に遅延日数が減少した。ヒノヒカリの場合、出穂の遅延日数が4日程度であれば、イネの品質、収量に影響がないとされていることから、照明1による照明は、照明光の影響がほとんどない程度に光害を防止できることが確認された。また、照明1下では、照度が5ルクスを越えても出穂遅延日数の増加が緩やかであり、照度が10ルクスの場合でも出穂遅延日数が4.5日と、光害の影響のない4日程度の範囲にあり、水銀灯下の出穂遅延日数9.8日に対して約半分となり光害防止効果が得られた。これらの結果から、実施例1では、照明装置からの照射光を受ける植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.8〜1.43を満たすように、光を照射する方法で照明を行うことにより、光害防止効果に優れた照明を行うことができた。
本発明の照明方法や照明装置は、植物への光害防止効果に優れ、自然な白色光に近い高い演色性の光を提供できるので、水田や畑、果樹園等、又はこれらに隣接する道路や宅地などの植物が生育する域内に設置される道路照明灯、街路灯、防犯灯、コンビニエンスストア等の夜間営業の店舗の照明、駐車場灯、看板証明などに好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 植物が生育する域内における光害防止用の照明方法であって、照明装置から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光を照射することを特徴とする光害防止用の照明方法。
  2. 照明装置から照射される光が、植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.90〜1.40を満たすように、前記光を照射することを特徴とする請求項1記載の光害防止用の照明方法。
  3. 照明装置から照射される光が、平均演色評価数が40以上を満たすように、前記光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載の光害防止用の照明方法。
  4. 植物が生育する域内に設置される光害防止用の照明装置であって、少なくとも390〜500nmの範囲の波長及び550〜700nmの範囲の波長を有する光を照射する光源を備え、前記光源から照射される光が、前記植物の受光面において、波長範囲390〜500nmの積算光量子束密度に対する波長範囲550〜700nmの積算光量子束密度の比が0.80〜1.43を満たすように、前記光源が制御されていることを特徴とする光害防止用の照明装置。
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