JP2014055998A - ヒータユニット、定着装置、及び、画像形成装置 - Google Patents

ヒータユニット、定着装置、及び、画像形成装置 Download PDF

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Shuntaro Tamaki
俊太郎 田巻
Takayuki Seki
貴之 関
Yuji Arai
裕司 荒井
Yoshinori Yamaguchi
嘉紀 山口
Yutaka Ikefuchi
豊 池淵
Kazuya Saito
一哉 齋藤
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Abstract

【課題】比較的簡易な機構で、装置を比較的小型化することができて、定着ベルト等の定着回転体における非通紙領域が過昇温してしまうことのない、ヒータユニット、定着装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】周方向の一部にヒータ25A、25Bが露呈する開口部50aが形成されるように、周方向に分割して一対の遮蔽板51、52を配設している。この開口部50aは、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さR1〜R3が段階的に大きくなるように形成されている。さらに、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部をそれぞれ支持する支持部材53は、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで開口部50aにおける開口長さR1〜Rが可変されるように、一対の遮蔽板51、52を移動させる。
【選択図】図7

Description

この発明は、ヒータが設置されたヒータユニットと、それを備えた定着装置と、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、幅方向のサイズが小さな記録媒体(小サイズ紙)が連続的に通紙される場合等に、定着ベルト等の定着回転体の非通紙領域が過昇温してしまう問題を解決するために、定着回転体を加熱するヒータの幅方向両端部に遮蔽板(リフレクタ)を移動可能に設置する定着装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
詳しくは、特許文献1には、定着ベルトとヒータ(熱源)との間に遮蔽板を設置して、通紙される記録媒体の幅方向のサイズに合わせて遮蔽板を幅方向にスライド移動させることで、定着ベルトの非通紙領域が遮蔽板で遮られてヒータによって加熱されないようにする技術が開示されている。
また、特許文献2には、定着ベルトとヒータ(熱源)との間に、開口部が形成されて回転可能な遮蔽板(リフレクタ)を半径方向の異なる位置に複数設置して、その遮蔽板をギア駆動によって回転させて互いの開口部の位置を、通紙される記録媒体の幅方向のサイズに合わせて変化させることによって、定着ベルトの非通紙領域が遮蔽板で遮られてヒータによって加熱されないようにする技術が開示されている。
上述した従来の定着装置は、遮蔽板の移動範囲が幅方向や幅方向に直交する断面において大きくて装置が大型化してしまう問題や、遮蔽板を移動させる機構が複雑であるという問題があった。
特に、このような問題は、省スペース化や低コスト化を重視した定着装置(画像形成装置)では無視できないものになっていた。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、比較的簡易な機構で、装置を比較的小型化することができて、定着ベルト等の定着回転体における非通紙領域が過昇温してしまうことのない、ヒータユニット、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
この発明の請求項1記載の発明にかかるヒータユニットは、幅方向に延在するように棒状に形成されたヒータと、前記ヒータに対向するように幅方向に直交する断面が略円弧状に形成されて、前記ヒータから発せられる光を遮断するとともに、周方向の一部に前記ヒータが露呈する開口部が形成されるように周方向に分割して配置された一対の遮蔽板と、を備え、前記一対の遮蔽板によって形成される前記開口部は、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さが段階的又は連続的に大きくなるように形成され、前記一対の遮蔽板の幅方向端部をそれぞれ支持するとともに、前記一対の遮蔽板の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで前記開口部における周方向の開口長さが可変されるように前記一対の遮蔽板を移動させる支持部材をさらに備えたものである。
本発明は、周方向の一部にヒータが露呈する開口部が形成されるように周方向に分割して一対の遮蔽板を配置して、その開口部が幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さが大きくなるように形成して、一対の遮蔽板の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで周方向の開口長さが可変されるように一対の遮蔽板を移動させる支持部材を設けている。これにより、比較的簡易な機構で、装置を比較的小型化することができて、定着ベルト等の定着回転体における非通紙領域が過昇温してしまうことのない、ヒータユニット、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。 定着装置を示す構成図である。 (A)定着装置を幅方向にみた側面図と、(B)ヒータを幅方向にみた概略図と、である。 ニップ部の近傍を示す拡大図である。 定着ベルトが保持部材に保持された状態を示す断面側面図である。 定着ベルトが保持部材に保持された状態を示す概略正面図である。 ヒータユニットを示す斜視図である。 ヒータユニットの幅方向端部を示す概略断面図である。 ヒータユニットにおける遮蔽板の動作を示す概略図である。 別形態のヒータユニットの幅方向端部を示す概略断面図である。 図11のヒータユニットにおける遮蔽板の動作を示す概略図である。 さらに別形態の定着装置を示す構成図である。
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱可能(交換可能)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98(タイミングローラ対)等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
次に、図2〜図9にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2〜図4等を参照して、定着装置20は、定着回転体としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26(ニップ部形成部材)、補強部材23、加熱手段としてのヒータ25A、25B(熱源)や遮蔽板51、52が一体的に設置されたヒーターユニット50(加熱手段保持ユニット)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40(温度検知手段)、シート状部材22(潤滑剤供給部材)、板状部材28(固定板)、保持部材としてのフランジ29、等で構成される。
ここで、定着回転体としての定着ベルト21(定着部材)は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、内周面21a(固定部材26との摺接面である。)側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ステンレス、ニッケル等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が5〜50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmになるように設定されている。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータユニット50(2つのヒータ(第1ヒータ25Aと第2ヒータ25Bとである。)や遮蔽板51、52が設置されている。)、補強部材23、シート状部材22、両面テープ49(貼着手段)、ネジ24、板状部材28(固定板)、等が固設されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面21aに摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3及び図5を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が、定着装置20の側板43に固定支持されたフランジ29(保持部材)に回転可能に保持されている。なお、固定部材26やフランジ29の構成については、後でさらに詳しく説明する。
そして、定着ベルト21は、その内部に設置されたヒータ25A、25B(加熱手段)の輻射熱(赤外粋光)により直接的に加熱される。
加熱手段としての2つのヒータ25A、25Bは、いずれも、幅方向(図2の紙面垂直方向であって、図3の左右方向である。)に延在するように略棒状に形成されたハロゲンヒータ(赤外線ヒータ)であって、それぞれの両端部が定着装置20の側板43に固定されている(図3を参照できる。)。そして、装置本体1の電源部により出力制御されたヒータ25A、25B(加熱手段)の輻射熱によって、定着ベルト21において主としてニップ部を除く部分であってヒータ25A、25Bに対向する対向面(定着ベルト21の周方向の一部である。)が加熱される。さらに、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、ヒータ25A、25Bの出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーモパイル等の温度センサ40(温度検知手段)によるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25A、25Bの出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
なお、本実施の形態では、ヒータ25A、25B、一対の遮蔽板51、52(遮蔽部材)、支持部材53、等の部材がヒータユニット50として構成され、定着装置20に対して着脱可能(交換可能)に構成されているが、これについては後で詳しく説明する。
ここで、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面側に2本のヒータ25A、25Bを並設している。
詳しくは、図3(B)に示すように、第1ヒータ25Aは、ヒータ部となる発光部25A1が、幅方向(図3の左右方向であって、図2の紙面垂直方向である。)の中央部の範囲Mに設置されている。この中央部の範囲Mは、210mm程度であって、A4縦サイズの記録媒体Pが通紙される領域に対応するものである。これに対して、第2ヒータ25Bは、ヒータ部となる発光部25B1が、幅方向両端部(最大加熱幅Nにおいて上述した中央部の範囲を除く範囲にほぼ一致する範囲である。)にそれぞれ設置されている。ここで、最大加熱幅Nは、320mm程度であって、本実施の形態における装置本体1で通紙可能な最大サイズであるA3縦サイズの記録媒体Pの通紙領域に両端11.5mm程度の余裕度を付加したものである。このような2つのヒータ25A、25Bは、それぞれ別々に出力制御することができて、A3縦サイズの記録媒体Pが通紙(搬送)される場合には2つのヒータ25A、25Bを点灯して、A4縦サイズの記録媒体Pが通紙(搬送)される場合には第1ヒータ25Aのみを点灯するように制御して、定着ベルト21における両端部(通紙されない領域)の過昇温を防止することができる。
なお、本実施の形態では、定着ベルト21の内周面側に2本のヒータ25A、25Bを設置したが、定着ベルト21の内周面側に1本のヒータのみを設置することもできるし3本以上のヒータを設置することもできる。
また、本実施の形態では、定着ベルト21における幅方向中央部の表面温度を検知する温度センサ40(温度検知手段)が設置されている。そして、温度センサ40の検知温度に基いてヒータ25A、25Bをオン・オフ制御する。
なお、本実施の形態では、幅方向中央部にのみ温度センサ40を設置したが、さらに幅方向端部(第2ヒータ25Bが設置された範囲である。)にさらに温度センサを設置することもできる。その場合、幅方向中央部に設置された温度センサ40の検知温度に基いて第1ヒータ25Aをオン・オフ制御して、幅方向端部の温度センサの検知温度に基いて第2ヒータ25Bをオン・オフ制御することができる。
このように、本実施の形態における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されるのではなく、定着ベルト21が周方向の比較的広い範囲にわたって加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
特に、本実施の形態における定着装置20は、定着ベルト21がヒータ25A、25B(加熱手段)によって直接的に加熱されるように構成されているため、定着ベルト21の加熱効率がさらに向上するとともに、定着装置21をさらに低コスト化・小型化することができる。
図5及び図6を参照して、保持部材としての2つのフランジ29は、耐熱性樹脂材料等で形成されていて、定着装置20の幅方向両端部の側板43にそれぞれ嵌め込まれている。フランジ29には、定着ベルト21の円形姿勢を維持しながら定着ベルト21を保持するためのガイド部29aや、定着ベルト21の幅方向の移動(ベルト寄り)を規制するためのストッパ部29b、等が設けられている。
なお、本実施の形態における定着装置20において、フランジ29のストッパ部29bの位置に、定着ベルト21の端部の磨耗を軽減するために、PEEK、PPS、PAI、PTFE等の低摩擦性・耐熱性材料からなるスリッピング部材(リング状部材)を、フランジ29とは別部材として設置することもできる。
ここで、定着ベルト21の幅方向両端部はフランジ29によって保持されているため、定着ベルト21の円形姿勢がある程度維持されるものの、定着ベルト21の剛性によっては走行時に幅方向中央部においてある程度のバタツキが発生する可能性がある。したがって、定着ベルト21のバタツキが生じても定着ベルト21が他の構成部材(補強部材23やヒータユニット50等である。)に当接しないように、定着ベルト21の剛性が比較的高い場合には他の構成部材との離間距離を0.02mm以上確保して、定着ベルト21の剛性が比較的低い場合には他の構成部材との離間距離を3mm以上確保するように設定することが好ましい。
また、定着ベルト21の内周面21aには、その幅方向(図5の左右方向である。)の両端部に、フランジ29のガイド部29aとの摺動部(図5中、破線で囲んだ部分である。)における摺動抵抗を減ずるための、低摩擦部21a1が形成されている。具体的に、低摩擦部21a1は、基材層の表面にフッ素樹脂等の低摩擦材料をコーティングして形成されたものである。このような構成により、定着ベルト21の回転(走行)によって定着ベルト21とフランジ29(ガイド部29a)とが摺接しても、定着ベルト21やフランジ29(ガイド部29a)が磨耗劣化しにくくなる。
なお、本実施の形態において、定着ベルト21の内周面21aに接触する部材は、主に、幅方向両端のフランジ29と、固定部材26と、であって、それ以外に内周面21aに接触して定着ベルト21の回転をガイドするような部材(ベルトガイド)は存在しない。
このように、本実施の形態における定着装置20は、従来の定着装置(例えば、特許2010−96782号公報参照。)に比べて、定着ベルト21のさらなる加熱効率の向上や装置の低コスト化・小型化等を目的として、パイプ状の加熱部材を取り外して、パイプ状の加熱部材を介することなく定着ベルト21を加熱手段(ヒータ25A、25B)によって直接的に加熱する構成を採用している。具体的に、定着ベルト21の内周面21aをフランジ29で保持する構成を採用している。
ここで、本実施の形態では、ニップ部を形成する固定部材26の強度を補強する補強部材23が、定着ベルト21の内周面側に固設されている。図3を参照して、補強部材23は、幅方向の長さが固定部材26と同等になるように形成されている。また、図示は省略するが、補強部材23は、側板43に当接して保持されている。
そして、補強部材23が固定部材26及び定着ベルト21を介して加圧ローラ31に当接することで、ニップ部において固定部材26が加圧ローラ31の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。本実施の形態において、補強部材23は、ヒータ25A、25Bが位置する側に凹部が対向するように形成された略コの字状の板状部材(板厚が2mm程度のものである。)である。この補強部材23は、上述した機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。
図2を参照して、加圧ローラ31(ニップ部の位置で定着ベルト21の外周面に当接する加圧回転体である。)は、直径が25mmであって、中空構造の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31(加圧回転体)の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。また、図3を参照して、加圧ローラ31には不図示の駆動部(駆動機構)の駆動ギアに噛合するギア45が設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に軸受42を介して回転可能に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
ここで、本実施の形態では、加圧ローラ31の外周面に接触するようにサーミスタ等の温度センサ41が設置されている。そして、装置の立ち上げ時において温度センサ41によって検知される加圧ローラ31の表面温度が所定値に達しないときにプリントを開始しないようにするような制御をおこなうことができる。また、加圧ローラ31の内部にハロゲンヒータ等の熱源を設ける場合には、温度センサ41によって検知される温度に基いてその熱源を稼働制御(例えば、ヒータのオン・オフ制御である。)することができる。
また、図示は省略するが、本実施の形態における定着装置20に、定着ベルト21に対して離間する方向に加圧ローラ31を移動させて定着ベルト21に対する加圧ローラ31の圧接力を減圧する減圧機構(接離機構)を設置することができる。
そのような場合、非通紙時に、制御部によって減圧機構が制御されて、加圧ローラ31が離間方向に移動してニップ部における圧接力が減圧される。これにより、長時間にわたって圧接状態が続いて、ニップ部における圧接力によって定着ベルト21や加圧ローラ31に歪みが生じてしまう不具合が軽減されることになる。
さらに、ニップ部において記録媒体Pの紙詰まり(ジャム)が発生した場合には、制御部によって減圧機構が制御されて(又は、手動で減圧機構を操作して)、加圧ローラ31が離間方向に移動してニップ部における圧接力が減圧される。これにより、ニップ部において紙詰まりした記録媒体Pを除去する作業を容易におこなうことができることになる。
なお、加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、固定部材26に生じる負荷を軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、本実施の形態では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径とほぼ同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
図4を参照して、定着ベルト21の内周面21aに摺接する固定部材26は、加圧ローラ31との対向面(摺接面)が、加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態では、ニップ部を形成する固定部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材26の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
また、固定部材26を形成する材料としては、樹脂材料や金属材料を用いることができるが、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがない程度の剛性があり、熱性と断熱性とを有する樹脂材料(液晶ポリマー(LCP)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等である。)が好適である。本実施の形態では、固定部材26の材料として、液晶ポリマー(LCP)を用いている。
また、固定部材26には、定着ベルト21との摺動抵抗を減ずるために、PTFE等の低摩擦材料からなるシート状部材22が覆設されている。詳しくは、シート状部材22は、ニップ部の位置で固定部材26と定着ベルト21との間に幅方向にわたって介在されるように、固定部材26の周囲(図4に示すような断面でみた固定部材26の周囲である。)を覆うように設置されている。また、本実施の形態におけるシート状部材22は、シリコーンオイル等の潤滑剤が含浸された繊維材料(PTFE等のフッ素樹脂からなる布部材である。)で形成されている。これにより、固定部材26と定着ベルト21とが当接する面に潤滑剤が保持された状態になる。したがって、固定部材26と定着ベルト21との摺接によって双方の部材21、26が磨耗する不具合が軽減される。
ここで、図4等を参照して、シート状部材22は、ニップ部の位置と、周方向上流側(ニップ部の位置に対して定着ベルト21の走行方向上流側に対応した位置である。)の位置と、が両面テープ49を介して固定部材26に幅方向にわたって固定(貼着)されている。これにより、定着ベルト21が図4の反時計方向に回転しても、その回転に沿うようにシート状部材22が固定部材26から剥離する不具合が確実に防止される。
ここで、本実施の形態では、固定部材26とヒータ25A、25B(ヒータユニット50)との間の空間を隔絶するように、補強部材23を設置している。
本実施の形態では、定着ベルト21(内周面21a)の周方向の比較的広い範囲に対向するようにヒータ25A、25Bが設置されているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態では、固定部材26とヒータ25A、25Bとの間に、ヒータ25A、25Bの熱を遮るように補強部材23が設置されているために、加熱待機時に熱が固定部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
さらに、固定部材26と定着ベルト21との摩擦抵抗を低減するために双方の部材間に塗布された潤滑剤は、ニップ部における高圧条件に加えて高温条件による使用によって劣化して、定着ベルト21のスリップ等の不具合が生じてしまう可能性がある。
これに対して、本実施の形態では、固定部材26とヒータ25A、25Bとの間に、ヒータ25A、25Bの熱を遮るように補強部材23が設置されているために、ヒータ25A、25Bの熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
また、本実施の形態では、固定部材26とヒータ25A、25Bとの間に、ヒータ25A、25Bの熱を遮るように補強部材23が設置されているために、固定部材26が断熱されて、ニップ部では積極的に定着ベルト21は加熱されないことになる。そのため、ニップ部に送入された記録媒体Pの温度がニップ部から送出されるときには低くなる。すなわち、ニップ部出口では、記録媒体P上に定着されたトナー像の温度が低くなって、トナーの粘性が低下して、定着ベルト21に対するトナー接着力が小さくなった状態で、記録媒体Pは定着ベルト21から分離される。したがって、定着工程直後の記録媒体Pが定着ベルト21に巻き付いてジャムになる不具合が防止されるとともに、定着ベルト21に対するトナー固着も抑制される。
さらに、本実施の形態では、図4に示すように、固定部材26に、補強部材23に当接するように補強部材23の対向面23aに向けて突出する突出部26a、26bが、記録媒体Pの搬送方向(又は、定着ベルト21の回転方向)に沿って複数列設けられている。具体的に、複数列の突出部として、記録媒体Pの搬送方向に対する上流側において補強部材23に当接するように補強部材23の対向面23aに向けて突出する上流側突出部26aと、記録媒体Pの搬送方向に対する下流側において補強部材23に当接するように補強部材23の対向面23aに向けて突出する下流側突出部26bと、が形成されている。すなわち、固定部材26には、補強部材23に対向する側において搬送方向に離間した2列の突出部26a、26b(上流側端部と下流側端部との距離がBに設定されている。)が設けられていて、これらの2列の突出部26a、26bが補強部材23の対向面23aにそれぞれ面接触することになる。
このような構成により、固定部材26を嵌め込んで固定するパイプ状の加熱部材を設置しない場合であっても、補強部材23が圧接した状態の固定部材26がバランスよく保持されるため、固定部材26に倒れが生じてしまう不具合が抑止される。そして、所望のニップが精度よく形成されて、出力画像に定着不良が生じてしまったり記録媒体の搬送不良が生じてしまったり不具合が防止されることになる。
すなわち、固定部材26が搬送方向上流側や搬送方向下流側に偏って補強部材23に当接する場合や、補強部材23に当接する固定部材26の当接幅(距離B)が狭小である場合などには、ニップ部で圧接力を受けた固定部材26が補強部材23との当接部を支点として、図4の時計方向又は反時計方向に回転しやすく(倒れやすく)なってしまうことになる。これに対して、本実施の形態では、固定部材26が搬送方向上流側や搬送方向下流側に偏って補強部材23に当接することなく、補強部材23に当接する固定部材26の当接幅(距離B)が充分大きく設定されているため、ニップ部で圧接力を受けた固定部材26が補強部材23によってバランスよく支持されて、補強部材23との当接部を支点として固定部材26が倒れにくくなる。
さらに、本実施の形態では、固定部材26において上流側突出部26aと下流側突出部26bとに分割した部分のみが補強部材23に当接するように構成しているため、固定部材26における上流側から下流側にかけて広範囲に形成された1つの平面が補強部材23に当接するように構成した場合に比べて、補強部材23と固定部材26との接触面積を減ずることができるため、固定部材26に熱が伝達されにくくなる。すなわち、ニップ部において定着ベルト21から固定部材26を通って補強部材26に向けて伝達される熱を少なくすることができる(定着ベルト21から固定部材26を介して補強部材23に向けて逃げる熱量を低減することができる。)。特に、定着ベルト21の厚みを薄くした場合(例えば、厚みを160μm以下に設定した場合である。)やニップ幅を広く設定した場合には、定着ベルト21から固定部材26へ熱量が移動しやすくなるため、本実施の形態のように補強部材23と固定部材26との接触面積を減ずる構成が有用になる。
また、本実施の形態では、シート状部材22に、複数列の突出部(上流側突出部26aと下流側突出部26bとである。)に嵌合する複数の穴部が形成されている。そして、シート状部材22は、複数列の突出部26a、26bを除く位置で周方向に沿って固定部材26に密着するように設置される。
詳しくは、シート状部材22は、単独の部品として展開したときの形状が矩形である。そして、矩形のシート状部材22の両端には、それぞれ、複数の穴部(突出部26a、26bに嵌合する穴部である。)と、ネジ用穴部(ネジ24のネジ部を挿通させるための穴部である。)と、が形成されている。
そして、シート状部材22は、固定部材26に覆設されるときに、矩形の両端が上流側突出部26aと下流側突出部26bとの間で折り重なって重合部が形成されることになる。
そして、シート状部材22の重合部を挟み込むように固定部材26に対して板状部材28(固定板)が複数のネジ24によって固定される。詳しくは、シート状部材22の重合部を挟み込むように固定部材26上に重合部を介して板状部材28が載置され、板状部材28のネジ用穴部と、シート状部材22のネジ用穴部と、を挿通させて固定部材26の雌ネジ部にネジ24のネジ部が螺合される。ここで、複数のネジ24は、そのネジ頭の高さが突出部26a、26bの高さを超えて補強部材23に接触しないように形成されている。
このように、シート状部材22は、展開時における、搬送方向上流側に相当する端部と、搬送方向下流側に相当する端部と、が固定部材26上にて固定保持されている。そのため、シート状部材22が下流側に向けて走行する定着ベルト21との間に摩擦力を受けた場合(通常の定着工程時である。)に加えて、シート状部材22が上流側に向けて走行する定着ベルト21との間に摩擦力を受けた場合(ジャム処理時に定着ベルト21や加圧ローラ31が手動で逆回転される場合等である。)であっても、シート状部材22がずれて固定部材26との間に隙間ができたりシワが生じたりしてしまう不具合が生じにくくなる。
以下、上述のように構成された定着装置20の通常時の動作について簡単に説明する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25A、25Bに電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、ニップ部における加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、ヒータ25A、25Bによって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
以下、本実施の形態における定着装置20において特徴的な、ヒータユニット50の構成・動作について、詳しく説明する。
先に図2等を用いて説明したように、本実施の形態では、定着装置20に対してヒータユニット50が着脱可能(交換可能)に構成されている。そのため、定着装置20におけるヒータ25A、25Bのメンテナンスが容易になる。具体的に、ヒータ25A、25Bが寿命に達したり故障したりしたときに、定着装置20のヒータユニット50が交換されることになる。
図7を参照して、ヒータユニット50は、ヒータ25A、25B、一対の遮蔽板51、52(遮蔽部材)、支持部材53、等で構成されている。
一対の遮蔽板51、52は、ヒータ25A、25Bに対向するように幅方向に直交する断面が略円弧状に形成されている(図9をも参照できる)。遮蔽板51、52は、内部に設置されたヒータ25A、25Bから発せられる光が外部に向けて直接的に照射されないように遮断するものであって、板厚が100〜500μm程度の高融点の金属材料で形成されている。そして、一対の遮蔽板51、52は、周方向の一部にヒータ25A、25Bが露呈する開口部50aが形成されるように、周方向に分割して配置されている。
さらに、一対の遮蔽板51、52によって形成される開口部50aは、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さRが段階的に大きくなるように形成されている。
詳しくは、図7(A)を参照して、幅方向中央部の範囲(開口幅S1の範囲である。)における開口長さR1は隣接する範囲(開口幅S2において開口幅S1を除く範囲である)における開口長さR2より大きく形成され、その開口長さR2は幅方向両端部の範囲(開口幅S3において開口幅S2を除く範囲である)における開口長さR3より大きく形成されている(R1>R2>R3)。すなわち、遮蔽板51、52は、相手の遮蔽板に対向する側が、幅方向両端部から幅方向中央部に向けて対向距離が大きくなるように階段状に形成されている。なお、本実施の形態では、図7(A)に示す開口幅S1〜S3が、それぞれ、100mm、257mm、300mmに設定されている。
また、支持部材53は、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部をそれぞれ支持するものであって、一対の遮蔽板51、52を挟み込むように幅方向両端部にそれぞれ設置されている。この支持部材53は、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで開口部50aにおける周方向の開口長さRが可変されるように、一対の遮蔽板51、52を移動させるものである。
詳しくは、図8を参照して、支持部材53は、その幅方向端部側からカム部材54によって押動されるとともに、付勢部材(第1の付勢部材)としての第1圧縮スプリング55によってカム部材54に向けて付勢されるように構成されていて、不図示のガイド部(支持部材53が回転しないで幅方向にスライド移動できるように幅方向に延在する溝部であって、フランジ29に形成されている。)に案内されながら非回転で幅方向に移動する(図7、図8の破線両矢印方向の移動である)。また、支持部材53は、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部における端面が当接する部分(図8の破線で囲んだ部分である。)が、幅方向にテーパ状に形成されている(テーパ部53aが形成されている)。さらに、図9を参照して、開口部50aにおける周方向の開口長さRが広がる方向に一対の遮蔽板51、52を付勢する第2の付勢部材としての第2圧縮スプリング56が設置されている。
このような構成により、不図示の駆動モータによってカム部材54が、図8の状態から回転軸54a(偏心軸)を中心にして回転すると、第1圧縮スプリング55の付勢力に抗するように支持部材53が幅方向中央部に向けて移動する(図8の右方への移動である。)。これにより、遮蔽板51、52は、第2圧縮スプリング56の付勢力に抗するように、支持部材53との当接部がテーパ部53aに沿うように押動されて、開口長さRを狭める方向に移動することになる(図9(B)に示すように実線矢印で示すように少し回転しながら白矢印方向に移動する。)。すなわち、ヒータユニット50は、図7(A)の状態(又は、図9(A)の状態)から図7(B)の状態(図9(B)の状態)になって、その開口長さRがそれよりも小さな開口長さR´に変化する(R>R´)。換言すると、開口部50aにおける全体的な開口面積が小さくなる。このとき、図8に示す、一対の遮蔽板51、52のみかけの外径Dも小さくなる。
これに対して、不図示の駆動モータによってカム部材54が、図8の状態になるように回転軸54a(偏心軸)を中心にして回転すると、第1圧縮スプリング55の付勢力によって支持部材53が幅方向端部に向けて移動する(図8の左方への移動である。)。これにより、遮蔽板51、52は、第2圧縮スプリング56の付勢力によって、支持部材53との当接部がテーパ部53aに沿うように移動して、開口長さRを広げる方向に移動することになる。すなわち、ヒータユニット50は、図7(B)の状態(又は、図9(B)の状態)から図7(A)の状態(図9(A)の状態)になって、その開口長さR´がそれよりも大きな開口長さRに変化する。換言すると、開口部50aにおける全体的な開口面積が大きくなる。このとき、図8に示す、一対の遮蔽板51、52のみかけの外径Dも大きくなる。なお、本実施の形態では、図8に示すように、遮蔽板51、52が第2圧縮スプリング56に付勢されて無制限に移動するのを防止するために、支持部材23に、遮蔽板51、52の移動を規制するストッパ部53bが形成されている。
このように、本実施の形態では、比較的簡易な機構で、定着装置20を大型化することなく、支持部材53を幅方向の任意の位置に移動させることで、開口部50aの開口長さR(開口面積)を任意の大きさに調整することができる。そして、本実施の形態において、支持部材53は、通紙される記録媒体Pの幅方向の大きさ(サイズ)に応じて、開口部50aにおける開口長さRを可変させるように一対の遮蔽板51、52を移動させる。
具体的に、先に図3を用いて説明したように、A4縦サイズの記録媒体Pが通紙される場合には、第1ヒータ25Aのみを点灯するように制御して、定着ベルト21における非通紙領域の過昇温を防止している。また、A3縦サイズの記録媒体Pが通紙される場合には、2つのヒータ25A、25Bを点灯するように制御している。これらのときは、一対の遮蔽板51、52は、開口長さR(開口面積)が最大となるように、その位置が調整されている(図7(A)の状態である。)。
また、B4縦サイズ(幅方向サイズ:257mm)の記録媒体Pが通紙される場合には、2つのヒータ25A、25Bを点灯するように制御している。このとき、一対の遮蔽板51、52は、開口幅S3の両端部における開口長さR3が最小となるように、その位置が調整されている(図7(B)の状態である。)。これにより、B4縦サイズの記録媒体Pが通紙されたときの、定着ベルト21における非通紙領域に相当する範囲に達する光を遮蔽板51、52によって少なくとも50%程度は遮断できるため、定着ベルト21における非通紙領域の過昇温を防止することができる。
また、はがきサイズ(幅方向サイズ:100mm)の記録媒体Pが通紙される場合には、第1ヒータ25Aのみを点灯するように制御している。このとき、一対の遮蔽板51、52は、開口幅S3の両端部における開口長さR3が最小となるように、その位置が調整されている(図7(B)の状態である。)。これにより、はがきサイズの記録媒体Pが通紙されたときの、定着ベルト21における非通紙領域に相当する範囲に達する光を遮蔽板51、52によって少なくとも50%程度は遮断できるため、定着ベルト21における非通紙領域の過昇温を防止することができる。
なお、通紙される記録媒体Pのサイズに応じて調整する開口部50aの開口長さR(一対の遮蔽部材51、52の位置)は、上述したものに限定されることなく、定着ベルト21の非通紙領域の温度上昇の状態に応じて最適化することもできる。
なお、本実施の形態では、一対の遮蔽板51、52によって形成される開口部50aが、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さRが段階的に大きくなるように形成した。これに対して、一対の遮蔽板51、52によって形成される開口部50aが、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さRが連続的に大きくなるように形成することもできる。
また、遮蔽板51、52の内周面(ヒータ25A、25Bに対向する対向面である。)を、ヒータ光に対する反射率が90%以上の鏡面にすることもできる。これにより、遮蔽板51、52によって遮られるヒータ光が遮蔽板51、52で反射した後に開口部50aから発せられて、定着ベルト21の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21の加熱効率が向上することになる。
また、本実施の形態において、カム部材54や第1圧縮スプリング55や第2圧縮スプリング56は、それぞれ、ヒータユニット50の構成部品としてもよいし、定着装置20においてヒータユニット50に組み込まれない独立した部品としてもよい。
なお、支持部材53を幅方向に移動させることによって開口長さRが変化するように一対の遮蔽板51、52を移動させる移動手段の構成は、上述した本実施の形態のものに限定されることなく、他に種々の形態のものを用いることができる。
具体的に、図10に示すヒータユニット50は、一対の遮蔽板51、52に、それぞれ、幅方向端部における外周面において、幅方向に延在する螺旋状突起部51b、52bが形成されている。これに対して、支持部材53には、一対の遮蔽板51、52の螺旋状突起部51b、52bにそれぞれ螺合する螺旋状溝部53cが形成されている。また、支持部材53には、駆動モータ60(正逆双方向に回転可能なモータであって、定着装置20の側板43に固設されている。)によって回転駆動される駆動軸61に形成された雄ネジ部に螺合する雌ネジ部(図10中、一点鎖線で示す部分である。)と、ガイド部としてのガイド軸62(定着装置20の側板43に固設されている。)に嵌合する貫通穴と、が形成されている。
このような構成により、駆動モータ60によって駆動軸61が回転駆動されると、支持部材53は、ガイド軸62(ガイド部)によって非回転で案内されながら、ネジ作用によって幅方向に移動することになる。そして、支持部材53が幅方向に移動することにより、螺旋状溝部53cと螺旋状突起部51b、52bとの螺合によって、遮蔽板51、52が周方向に沿うように回転移動することになる。このときの、遮蔽板51、52の回転移動は、図11に示すように、遮蔽板51、52の円弧形状に沿った軌跡を描いたものになる。
そして、このようにヒータユニット50を構成した場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を奏することになる。
また、本実施の形態において、図12に示すように、一対の遮蔽板51、52を、定着ベルト21の内周面の曲率に沿うように形成することもできる。
その場合、ヒータユニット50の内部に固定部材26や補強部材23などの構成部材が内設されることになるため、支持部材23に固定部材26や補強部材23などの部材を設置するための貫通穴を形成することが好ましい。これにより、本実施の形態のものと同様に、定着装置20に対してヒータユニット50のみを着脱することが可能になる。また、図12のように、定着ベルト21の内周面に対向するように遮蔽板51、52を設置することで、定着ベルト21の加熱範囲が明確になり、ヒータ25A、25Bによって定着ベルト21を効率的に加熱することができる。
以上説明したように、本実施の形態では、周方向の一部にヒータ25A、25Bが露呈する開口部50aが形成されるように周方向に分割して一対の遮蔽板51、52を配置して、その開口部50aが幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さRが大きくなるように形成して、一対の遮蔽板51、52の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで周方向の開口長さRが可変されるように一対の遮蔽板51、52を移動させる支持部材53を設けている。これにより、比較的簡易な機構で、定着装置20を比較的小型化することができて、定着ベルト21(定着回転体)における非通紙領域が過昇温してしまう不具合を軽減することができる。
なお、本実施の形態では、定着ベルトとして複層構造の定着ベルト21を用いたが、定着ベルトとしてポリイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、金属等からなる無端状の定着フィルムを用いることもできる。そして、その場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、定着回転体として定着ベルト21を用いて、定着ベルト21の内部に設置されたヒータユニット50に対して、本発明を適用した。これに対して、定着ベルト21の外部に設置されたヒータユニットに対して、本発明を適用することもできる。さらには、定着回転体として定着ローラや、複数のローラ部材に張架された定着ベルトを用いて、それらの定着回転体の内部や外部に設置されたヒータユニットに対して、本発明を適用することもできる。
また、本実施の形態では、加圧回転体として加圧ローラ31を用いたが、加圧回転体として無端状の加圧ベルトを用いることもできる。また、加圧ローラの内部にヒータユニットを設置して、そのヒータユニットに対して本発明を適用することもできる。
そして、それらの場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、ヒータ25A、25Bや、一対の遮蔽板51、52や、支持部材53などを、ヒータユニット25として一体的に構成したが、これらの構成部材をユニット化することなく、定着装置20の構成部材として直接的に組み込むこともできる。
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
なお、本願において、「通紙領域」とは、定着装置(画像形成装置)にて通紙される記録媒体の幅方向の範囲であるものと定義し、「非通紙領域」とは「通紙領域」の範囲外の領域であるものと定義する。したがって、通紙領域と非通紙領域とは、通紙される記録媒体Pの幅方向の大きさによって変動することになる。
また、本願において、「幅方向」とは、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向であるものと定義する。
また、本願において、固定部材や補強部材が「固設」された状態とは、固定部材や補強部材が回転駆動されることなく非回転で保持されている状態であるものと定義する。したがって、例えば、固定部材がスプリング等の付勢手段によってニップ部に向けて付勢されている場合であっても固定部材が非回転で保持されていれば、固定部材が「固設」された状態となる。
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着回転体)、
23 補強部材、
25A 第1ヒータ(加熱手段)、
25B 第2ヒータ(加熱手段)、
25A1、25B1 発光部、
26 固定部材、
29 フランジ(保持部材)、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
50 ヒータユニット(加熱手段保持ユニット)、
50a 開口部、
51、52 遮蔽板(遮蔽部材)、
51b、52b 螺旋状突起部、
53 支持部材、
53a テーパ部、 53b ストッパ部、 53c 螺旋状溝部、
54 カム部材(移動手段)、
55 第1圧縮スプリング(付勢部材、第1の付勢部材)、
56 第2圧縮スプリング(第2の付勢部材)、
60 駆動モータ、
61 駆動軸、
62 ガイド軸(ガイド部)、
R、R´、R1〜R3 開口長さ、 S1〜S3 開口幅。
特開2010−66583号公報 特許第4130898号公報

Claims (9)

  1. 幅方向に延在するように略棒状に形成されたヒータと、
    前記ヒータに対向するように幅方向に直交する断面が略円弧状に形成されて、前記ヒータから発せられる光を遮断するとともに、周方向の一部に前記ヒータが露呈する開口部が形成されるように周方向に分割して配置された一対の遮蔽板と、
    を備え、
    前記一対の遮蔽板によって形成される前記開口部は、幅方向端部から幅方向中央部に向けて周方向の開口長さが段階的又は連続的に大きくなるように形成され、
    前記一対の遮蔽板の幅方向端部をそれぞれ支持するとともに、前記一対の遮蔽板の幅方向端部を当接させた状態で幅方向に移動することで前記開口部における周方向の開口長さが可変されるように前記一対の遮蔽板を移動させる支持部材をさらに備えたことを特徴とするヒータユニット。
  2. 前記支持部材は、その幅方向端部側からカム部材によって押動されるとともに、付勢部材によって前記カム部材に向けて付勢されるように構成されて、ガイド部に案内されながら非回転で幅方向に移動することを特徴とする請求項1に記載のヒータユニット。
  3. 前記支持部材は、前記一対の遮蔽板の幅方向端部における端面が当接する部分が幅方向にテーパ状に形成され、
    前記開口部における周方向の開口長さが広がる方向に前記一対の遮蔽板を付勢する第2の付勢部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載のヒータユニット。
  4. 前記一対の遮蔽板は、それぞれ、幅方向端部における外周面に幅方向に延在する螺旋状の突起部を具備し、
    前記支持部材は、前記一対の遮蔽板の前記突起部にそれぞれ螺合する螺旋状の溝部を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒータユニット。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のヒータユニットを備えたことを特徴とする定着装置。
  6. トナー像を加熱して溶融する無端状の定着ベルトと、
    前記定着ベルトの内周面側に固設されて、当該定着ベルトを介して加圧回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する固定部材と、
    前記定着ベルトの内周面側に固設されて、前記定着ベルトの内側から前記固定部材に当接して当該固定部材を補強する補強部材と、
    前記定着ベルトの幅方向両端部を保持する保持部材と、
    を備え、
    前記ヒータユニットは、前記開口部が前記定着ベルトの内周面に対向するように前記定着ベルトの内周面側に設置されて、前記開口部を介して前記ヒータによって前記定着ベルトを加熱することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
  7. 前記一対の遮蔽板は、前記定着ベルトの内周面の曲率に沿うように形成されたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の定着装置。
  8. 前記支持部材は、通紙される記録媒体の幅方向の大きさに応じて、前記開口部における周方向の開口長さを可変させるように前記一対の遮蔽板を移動させることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の定着装置。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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