JP2014050811A - 油を含む水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大量に取り出される随伴水などの含油水に対して広いスペースを使うことなく低コストで簡便に油分を分離する方法を提供する。
【解決手段】 随伴水に代表される油分を濃度1〜5000mg/L含む含油水を好適には孔径0.01〜1.0μmのセラミック製多孔質膜で膜処理する方法であって、該含油水を1.6m/秒以上の流速で膜面に平行に流すと共に、30秒〜5分おきに例えば透過側配管系を液満状態にしてパルス状に高圧をかけて逆洗を行うことにより油分が除去された透過水を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、油を含む水の処理方法に関する。
原油や天然ガスの採掘では、産出量を増やすために油層に注入した海水や元々地中に存在する地下水が「随伴水」として取り出される。この随伴水は年々取り出される量が増加する傾向にあるが、随伴水には油分や難分解性物質等が含まれているため、適切な処理を施した後でないと河川や海洋に投棄することができない。また、随伴水は一般に水源に乏しい地域で大量に発生するため、処理を施した後に灌漑用水として有効利用することが検討されている。
従来、かかる油分を含む随伴水の処理方法としては、例えば相分離法などによる物理的分離手段で固形分やフリーオイルを分離した後、特許文献1に示すように凝集剤を添加してエマルジョンオイルを凝集沈殿させて清澄な随伴水を得ることが行われてきた。
国際公開第2005/092469号パンフレット
しかしながら、凝集剤を使用する凝集沈殿法は、随伴水の処理量が膨大になると薬剤の使用量やそれに伴う廃棄物の発生量が多くなって処理費用が嵩むことが問題になっていた。また、随伴水の処理は、産油国や産ガス国などのいわゆるインフラ設備の不十分な地域で行われることが多く、更には採掘の難しい井戸の出現などによって、船舶や海洋リグ等のスペースに制限のある場所で処理することが求められることもあるため、沈殿槽のみならず薬剤等の保管のために広いスペースを必要とする凝集沈殿法では採算がとれないことがあった。
本発明は上記した従来の状況に鑑みてなされたものであり、インフラ設備の不十分な場所やスペースに制約がある場所であっても、大量に取り出される随伴水などの油分を含む水(以降、含油水とも称する)に対して低コストで簡便に処理できる油分の分離方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明が提供する油分を含む含油水の処理方法は、油分を濃度1〜5000mg/L含む含油水を多孔質膜で膜処理する方法であって、該含油水を1.6m/秒以上の流速で膜面に平行に流すと共に、30秒〜5分おきに逆洗を行うことにより油分が除去された透過水を得ることを特徴としている。
本発明によれば、大量に取り出される随伴水などの含油水に対して低コスト且つ省スペースの処理方法で油分が除去された透過液を簡便に得ることが可能となる。
本発明の含油水の処理方法の一具体例を示すブロックフロー図である。 本発明の含油水の処理方法を好適に実施可能な処理装置の一具体例を示す模式的フロー図である。 多孔質膜で固液分離するときの様子を模式的に示す断面図である。 多孔質膜で油分を含む水を膜処理するときの様子を模式的に示す断面図である。 本発明の含油水の処理方法を好適に実施可能な処理装置の他の具体例を示す模式的フロー図である。 実施例2の試料7の膜処理の運転データのグラフである。 実施例2の試料8の膜処理の運転データのグラフである。
以下、本発明に係る油分を含む水の処理方法の一具体例について、油分を含む水が随伴水である場合を例に挙げて説明する。この一具体例の処理方法は、図1に示すように、井戸元から送られてくる随伴ガスと随伴水とを含む原油を処理して原油(オイル)と随伴ガスと随伴水とに分離する3相分離手段1と、該3相分離手段1から排出される随伴水に含まれるフリーオイルを除去する相分離手段2と、該フリーオイルが除去された随伴水を後述する膜分離手段4との間で循環させる供給液循環手段3と、該フリーオイルが除去された随伴水に依然として含まれるエマルジョンオイルなどの油分を除去して該油分をほとんど含まない清澄な随伴水だけを透過させる膜分離手段4と、膜分離手段4を逆洗する逆洗手段5とからなる。なお、膜分離手段4によって得られた透過液は、必要に応じて更に活性炭等で処理して難分解性物質や重金属等が除去された後、灌漑水等の各種用途に使用されたり海洋等に投棄されたりする。
各手段について、図2に示す本発明に係る処理方法を好適に実施できる処理装置の模式的フロー図をも参照しながら具体的に説明する。3相分離手段1は一般に横型槽10で構成されており、井戸元から送られてくる随伴ガスと随伴水とを含む原油を該横型槽10の一端部に受け入れる。受け入れられた該流体は、槽内を横方向に流れる間に比重差でオイルと随伴水とがそれぞれ上側相と下側相に分離し、同時に随伴ガスが頂部から排出される。分離したオイルは堰11を越えて取り出される一方、随伴水は底部から抜き出される。
上記横型槽10の底部から抜き出された随伴水にはまだ目視確認できる程度のフリーオイルが含まれており、このフリーオイルが相分離手段2で分離除去される。相分離手段2は比重差を利用して随伴水からフリーオイルを分離するものであり、例えばAPI(American Petroleum Institute)オイルセパレータや、シェル社の技術で波型平行坂の採用によりオイルを効率よく重力分離できるCPI(Corrugated Plate Interceptor)セパレータなどを挙げることができる。
図2では、CPIオイルセパレータ20を用いて油分を含む随伴水からフリーオイルを分離する例が示されている。CPIオイルセパレータ20は上下方向に積み重ねられた複数の波型平行板からなり、互いに隣接する1次槽21及び2次槽22を仕切る仕切り板23の開口部に2次槽22側が下方となるように傾斜して設けられている。かかる構成により、油分を含む随伴水が1次槽21からCPIオイルセパレータ20を経て2次槽22に流れ込む際、重力の作用を受けて水分より比重の軽い油分は随伴水の流れに逆行しながら波型平行板の下面に沿って上昇し、1次槽21側に戻る。これにより油分が水分から分離する。尚、1次槽21側に戻った油分は、その液面部に設けられたオイルスキマー24を介して抜き取られる。
2次槽22に流れ込んだ随伴水は、移送ポンプ25を経て供給液循環手段3に送られる。この供給液循環手段3は、相分離手段2で処理された随伴水を受け入れる循環槽30と、循環槽30に受け入れた液が膜分離手段4との間を循環するように構成された循環配管系31と、該循環配管系31を循環させるべく循環槽30から抜き出された随伴水の昇圧を行う循環ポンプ32とで構成される。
相分離手段2で処理された随伴水にはフリーオイルがほとんど含まれていないが、依然として油分がノルマルヘキサン抽出物質濃度基準で1〜5000mg/L程度含まれている。この油分には、例えば、容易には目視確認できないサイズで液中に分散しているエマルジョンオイル(乳化オイル)が含まれる。また、前段の3相分離手段1や相分離手段2での処理が良好に機能しない場合やこれら手段が設けられていない場合に油層として分離可能なフリーオイルなどの油分が含まれることもある。これらの油分を含む随伴水を膜分離手段4で膜処理することにより、油分をほとんど含まない随伴水を透過液として取り出すことができる。
膜分離手段4は多孔質膜40で構成され、循環ポンプ32によって送られる油分を含んだ随伴水をいわゆるクロスフロー方式で膜処理する。クロスフロー方式では、油分を含んだ随伴水(含油水)は、多孔質膜40の膜表面に沿って一定方向に流れるように供給され、これにより含油水の一部は膜処理されて油分が分離された透過液となり、残りは膜処理されずにそのまま多孔質膜40の膜表面を通過する。膜表面を通過した含油水には上記分離された油分が含まれ得るため、濃縮液と称されることがある。
多孔質膜40は、孔径が0.01〜1.0μmであるのが好ましく、0.1〜0.5μmであるのがより好ましい。この孔径が0.01μm未満では膜の目詰まりが起こりやすくなり、安定な運転が継続できなくなる。一方、1.0μmを超えると油分が透過水側に流出しやすくなる。
また、多孔質膜40は、アルミナ、シリカ、チタニアなどのセラミックで形成されているのが好ましい。セラミックの多孔質膜は、有機膜に比べて一般に高い強度を有しているので、後述する逆洗の際の高差圧に耐えることができるからである。また、セラミックの多孔質膜は親水性が強いため、膜上や孔内に油分が付着しにくく、付着しても容易に洗い流すことができる。
この多孔質膜40には、循環ポンプ32によって送られる油分を含んだ随伴水が、1.6m/秒以上、好ましくは2.0m/秒以上の流速で膜面に平行に流れるようにする。この流速が1.6m/秒未満では油分からなる油膜(ケーキ層と称されることもある)が膜面上に形成するのを防止できなくなる。なお、流速の上限は特に限定するものではないが、経済的な理由により4.0m/秒以下にすることが好ましい。
上記膜分離手段4の透過液側には逆洗手段5が設けられている。逆洗手段5は、上記した膜分離手段4を定期的に逆洗する装置であり、例えば、通常の膜処理時は開けられ、逆洗時において透過側(二次側とも称する)の配管系を液満状態に維持するために閉じられる第1バルブ50Aと、この液満状態の透過側から供給側(一次側とも称する)に向けてパルス状に圧力をかけることが可能な、透過側配管系の分岐ラインに設けた高圧エアコンプレッサなどの加圧装置51とで構成される。なお、この分岐ライン上の分岐点近傍には、通常の膜処理時は閉じられ、逆洗時に開けられる第2バルブ50Bが設けられている。
かかる構成により、30秒〜5分おきに第1バルブ50Aを閉じて透過側配管系を液満状態に維持すると共に第2バルブ50Bを開くことにより、事前に作動させておいた加圧装置51によって加圧状態が保たれている該加圧装置51から第2バルブ50Bまでの配管系内の加圧水の圧力がパルス状に多孔質膜40にかかり、これにより膜分離手段4を逆洗することができる。なお、逆洗とは多孔質膜40のろ過方向とは逆方向に流体を流して膜の洗浄を行う操作であり、これにより多孔質膜40の孔を目詰まりさせる物質を除去することができる。
この逆洗の間隔が30秒未満では逆洗の頻度が頻繁になりすぎ、十分なろ過時間を確保することができなくなって効率が低下する。一方、5分を超えると膜面上に油分からなる油膜が形成され、これによる膜差圧の上昇が激しくなってろ過を継続するのが困難になる。なお、上記逆洗の際の加圧源はエアの圧力に限定されるものではなく、ポンプなどの駆動によって生じる水の圧力でもよい。
上記構成により、油分が多孔質膜の孔を透過して二次側に漏れ出すのを抑えることができ、油分がほとんど除去された清澄な透過液を得ることが可能となる。ところで、膜による固液分離の場合は、図3に示すように多孔質膜Fを用いて固体Sを含む流体から固体Sのみを除去することが行われるが、かかる膜分離技術を、上記のように油分を含んだ含油水における油分の分離にも良好に利用できる理由としては、発明者は以下のように考えている。
すなわち、多孔質膜を用いてその孔径よりも大きな油滴を含んだ水を膜処理する場合は、通常は時間の経過に伴って先ず図4(a)のように多孔質膜Fの膜表面に油膜Oが形成され、次に図4(b)に示すように、油膜Oを形成する油分が徐々に孔Pに侵入していき、最終的に透過側に油滴Oとなって漏出すると考えられる。
これに対して、本発明では所定の流速で膜面に平行に循環液を流すと共に、比較的短い時間間隔で逆洗を行うことにより、膜表面上の油膜の形成や孔内への油滴の侵入を抑制しながら油分が孔に侵入した場合は該油分が透過側(二次側)に漏れ出す前に一次側に押し戻し、膜表面に形成された油膜と共に洗い流すことができ、よって油分がほとんど除去された清澄な液のみを透過させることが可能になると考えられる。このように、本発明は積極的に逆洗の頻度を高めることにより油分が除去された清澄な液を得るものであるが、一般的な固液分離では逆洗の頻度を高めると十分なろ過時間を確保することができなくなって処理効率が低下するので実施されることはなかった。
上記したように、循環槽30に受け入れた含油水をクロスフロー方式で膜処理する場合は、処理が進むに従って、循環槽30及び循環系31を循環する液中の油分濃度が上昇していくことになる。この油分濃度の上昇により、多孔質膜40での膜処理の効率が低下するので油分濃度の上昇を防止する対策を施すのが望ましい。この対策法としては、限定するものではないが、多孔質膜40で膜処理されずにそのまま膜表面を通過した含油水の少なくとも一部を比重差を用いて油分と水分とを分離する装置に移送して濃縮液から油分を分離する方法が考えられる。
例えば、図2に示すように循環系31における多孔質膜40の下流側に浮上分離槽33を設けて、循環系31から油分を抜き出すのが望ましい。なお、浮上分離槽33には上記多孔質膜40の膜表面を通過した含油水の一部を抜き出して供給する。この浮上分離槽33への供給は、循環系31内を循環する液の濃縮倍率が所定の値以上になった時に抜き出しバルブ33Aを開いて供給してもよいし、多孔質膜40の逆洗時だけ抜き出しバルブ33Aを開いて供給してもよい。
あるいは、上記浮上分離槽33による分離法に代えて又は該分離法に加えて、図5に示すように多孔質膜40の膜表面を通過した含油水の少なくとも一部の液を前段の3相分離手段1や相分離手段2に戻してもよい。この場合は、膜表面を通過した含油水の処理方法の選択肢が増えることになるので、原水の性状や逆洗のタイミングに応じて多孔質膜40の膜表面を通過した含油水の供給先を適宜切り替えることにより効率よく含油水から油分を回収することが可能となる。
以上、本発明の油分を含む水の処理方法の一具体例を、油分を含む水として随伴水を例に挙げて説明したが、本発明はかかる一具体例に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲の種々の態様で実施することができる。例えば、本発明の処理方法が対象とする油分を含む水は、随伴水に限定されるものではなく、オイルタンカーや海洋リグの事故で漏出したオイルを含む海水や、石油精製プラントなどの各種プラントから排出される油分を含んだ排水などにも好適に適用することができる。
[実施例1]
油分濃度等の組成が互いに異なる試料1〜4の随伴水(原水)に対して多孔質膜の孔径と膜面での流速(線速)をそれぞれ変えて膜処理し、油分を含まない清澄な随伴水を透過させる実験を行った。具体的には、図2に示すような循環槽30に原水を供給すると共に、循環槽30から抜き出した液を循環ポンプ32で昇圧して循環系31を循環させながら、循環系31に設けた多孔質膜40としての日本ガイシ株式会社製のセラミックス製多孔質膜(孔径0.1μm)で透過流束が4m/(m×day)となるように膜処理した。
多孔質膜の透過側の配管系の分岐ラインには、逆洗用の加圧装置51としてエアコンプレッサを接続して5分おきに約3〜5秒の逆洗を行った。逆洗の際、循環系31はそのまま運転を継続したが、透過側は第1バルブ50Aを閉じて液満状態にすると共に第2バルブ50Bを開くことにより、予め作動しておいたエアコンプレッサにより加圧状態が保たれていた該エアコンプレッサと第2バルブ50との間の加圧水の圧力により多孔質膜にパルス状に圧がかかるようにした。これら試料1〜4の膜処理の結果を膜処理条件と共に下記表1に示す。
Figure 2014050811
上記表1の結果から、いずれの試料の膜処理においても、油分濃度の指標となるノルマルヘキサン抽出物質濃度(以下、n−Hexと称する)の値に関して、透過液は原水に比べて著しく低くなっていることが分かる。すなわち、所定の運転条件の下、油を含む水を多孔質膜で処理することにより油分が除去された液が透過液として得られることが分かった。
[実施例2]
逆洗の時間間隔が透過液の性状に及ぼす影響を調べるため、油分濃度等の組成が多少異なるものの実施例1と同じ井戸元の試料5〜8の随伴水(原水)を用いて、逆洗の時間間隔を試料5では2分、試料6では53秒、試料7では90秒、試料8では20〜45分にして実施例1と同様の実験を行った。これら試料5〜8の膜処理の結果を膜処理条件と共に下記表2に示す。
Figure 2014050811
上記表2の結果から分かるように、試料5〜7の膜処理ではいずれも透過液のn−Hexの値が原水に比べて著しく低下しており、油分の除去された水を透過させることができた。特に、試料7の膜処理では、図6に示すように膜差圧が安定し、透過水の水質は清澄であった。
一方、試料8の膜処理では、逆洗の時間間隔を20〜45分と長くし、且つ線速度を1.5m/秒と遅くしたので、図7に示すように膜差圧が徐々に上昇して約220kPa程度まで増加した。これは、膜に油分が詰まったことにより膜差圧が激しく上昇したものであり、実験を継続することができなかった。
1 3相分離手段
2 相分離手段
3 供給液循環手段
4 膜分離手段
5 逆洗手段

Claims (8)

  1. 油分を濃度1〜5000mg/L含む含油水を多孔質膜で膜処理する方法であって、該含油水を1.6m/秒以上の流速で膜面に平行に流すと共に、30秒〜5分おきに逆洗を行うことにより油分が除去された透過液を得ることを特徴とする含油水の処理方法。
  2. 前記多孔質膜がセラミック製であることを特徴とする、請求項1に記載の含油水の処理方法。
  3. 前記多孔質膜の透過側配管系を液満状態にしてパルス状に高圧をかけることにより前記逆洗を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の含油水の処理方法。
  4. 前記多孔質膜の孔径が0.01〜1.0μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の含油水の処理方法。
  5. 前記含油水が随伴水であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の含油水の処理方法。
  6. 前記多孔質膜で膜処理されずにそのまま膜表面を通過した前記含油水の少なくとも一部を油分と水分とを分離する手段に供給することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の含油水の処理方法。
  7. 前記油分と水分とを分離する手段が浮上分離槽であることを特徴とする、請求項6に記載の含油水の処理方法。
  8. 前記多孔質膜での膜処理の前処理として相分離手段が設けられており、前記油分と水分とを分離する手段が該相分離手段であることを特徴とする、請求項6に記載の含油水の処理方法。
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