JP2014050681A - 超音波測定装置及び血管径算出方法 - Google Patents

超音波測定装置及び血管径算出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】血管内径を正しく測定するための新しい手法の提案。
【解決手段】超音波測定装置1において、加算平均期間設定部140は、一心拍期間のうちの血管径が安定した状態にある血管径安定期間を判定して加算平均期間とする。加算平均部150は、加算平均期間設定部140によって設定された加算平均期間内に計測された反射波計測データ820を加算平均する。そして、血管径算出部170は、加算平均部150の加算平均により得られた合成データ830を用いて血管の血管径を算出する。
【選択図】図4

Description

本発明は、血管内径を測定することを目的とした超音波測定装置等に関するものである。
従来より、超音波を用いて血流や血管径、血圧を計測する装置や、血管の弾性率を計測する装置が考案されている。これらの装置は、被検者に痛みや不快感を与えることのない非侵襲式の計測ができることを特徴としている。例えば、特許文献1には、超音波を測定対象血管に照射した場合のその反射波を利用して、血管径を測定する技術が開示されている。
特開2006−51285号公報
測定対象血管の血管径を測定する場合には、超音波ビームを測定対象血管の長軸に対して垂直に照射し、その反射波を検出することで測定を行う。血管壁は大きく分けて内膜、中膜及び外膜の3つの膜を有してなる。通常、血管径といった場合は、外膜間距離が用いられることが多い。しかし、外膜からの反射波には、その構造上、外膜から中膜に至る複数の反射位置からの反射成分が含まれており、高い血管径精度が得られないという問題がある。
例えば、血管径と血圧との相関特性を用いて血圧を推定することを考えた場合、血管径の測定精度としては20〜30μm程度の精度が必要となる。この精度を得るには、外膜間距離では十分ではなく、血管内径を測定することが必要となる。血管内径を測定するには内腔内膜境界間の距離を求める必要がある。しかし、この内腔内膜境界からの反射波は、外膜からの反射波と比べて相対的に小さく、ノイズに埋もれやすい傾向がある。そのため、高精度に血管内径を計測することは難しい。
特許文献1には、多重反射等のノイズの影響を低減し、外膜間距離を高精度に求める手法が開示されているが、内腔内膜境界を正しく検出し、血管内径を高精度に求める手法については開示されていない。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、血管内径を正しく測定するための新しい手法を提案することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる超音波測定装置は、超音波を血管へ射出し前記血管からの反射波の計測を実行して計測データを用いて血管径を算出する超音波測定装置であって、心拍期間のうち、前記血管径の変動量が閾値以下となる血管径安定期間に計測された複数の前記計測データを合成する合成部と、前記合成部により合成されたデータを用いて前記血管径を算出する血管径算出部と、を備えたことを特徴とする。
本適用例によれば、超音波測定装置は超音波の射出と血管からの反射波の計測とを実行して計測データを得る。心拍期間のうち血管径の変動量が閾値以下となる期間を血管径安定期間とする。合成部は血管径安定期間に計測された複数の計測データを合成する。そして、血管径算出部が合成部により合成されたデータを用いて血管径を算出する。
血管径安定期間では血管壁の位置が安定している。血管径安定期間の複数の計測データを合成部が合成することで計測データからノイズ成分を低減させ、相対的に信号成分を明確化させることができる。これにより、血管径を算出するために必要な内腔内膜境界からの反射波のピークが鮮明となり、ピーク検出の正確性が向上する。従って、合成されたデータを用いることにより血管径算出部は血管の血管径を正しく算出することができる。
[適用例2]
上記適用例にかかる超音波測定装置において、前記合成部は、前記血管径安定期間に計測された前記計測データを加算平均することを特徴とする。
本適用例によれば、合成部が血管径安定期間内に計測された計測データを加算平均している。これにより、計測データ中のノイズ成分を効果的に低減させることができる。その結果、内腔内膜境界からの反射波のピークを鮮明にすることができる。
[適用例3]
上記適用例にかかる超音波測定装置において、前記計測データに基づいて、前記血管径安定期間を判定する判定部を備え、前記判定部は、心拡張期から前記血管径安定期間を判定することを特徴とする。
本適用例によれば、判定部が計測データに基づいて、血管径安定期間を判定する。一心拍期間のうち心拡張期には血管径が安定する期間が存在する。判定部は心拡張期から血管径安定期間を判定することで、計測データの合成に適した期間を容易に選択することができる。
[適用例4]
上記適用例にかかる超音波測定装置において、前記血管径算出部は、前記合成されたデータから、前記血管の内腔と内膜との境界の反射波ピークを検出するピーク検出部を有し、当該反射波ピークに基づいて前記血管径を算出することを特徴とする。
本適用例によれば、血管径算出部はピーク検出部を有している。ピーク検出部は合成部により合成されたデータから内腔と内膜との境界の反射波ピークを検出する。そして、当該反射波ピークに基づいて血管径を算出する為、血管径算出部は血管径の算出を精度良く行うことができる。
[適用例5]
上記適用例にかかる超音波測定装置において、前記血管径安定期間における前記血管の内腔と内膜との境界が存在し得る深度範囲を前記計測データに基づいて設定する範囲設定部を更に備え、前記ピーク検出部は、前記深度範囲を用いて前記反射波ピークを検出することを特徴とする。
本適用例によれば、範囲設定部が血管径安定期間における血管の内腔と内膜との境界が存在し得る深度範囲を計測データに基づいて設定する。血管の収縮及び拡張により、内腔内膜境界の位置は変動する。このため、内腔内膜境界が存在し得る深度範囲は血管径安定期間が血管の拡縮に係る周期のいつの時点かによって変化し得る。
血管の内腔と内膜との境界が存在し得る深度範囲を範囲設定部が計測データに基づいて設定する。そして、設定した深度範囲を用いてピーク検出部が反射波ピークを検出する。従って、ピーク検出部が内腔内膜境界からの反射波のピーク検出の確度を向上させることができる。
[適用例6]
上記適用例にかかる超音波測定装置において、前記ピーク検出部により検出された前記反射波ピークの前記計測データ中の位置を追跡対象とし、連続する前記計測データ中の前記反射波ピークの位置を追跡して、前記血管径の変動を算出する血管径変動算出部、を更に備えたことを特徴とする。
本適用例によれば、血管径変動算出部はピーク検出部により検出された反射波ピークの計測データ中の位置を追跡対象とする。そして、血管径変動算出部は連続する計測データ中の反射波ピークの位置を追跡する為、血管内径の変動を正しく算出することができる。
[適用例7]
本適用例にかかる血管径算出方法は、超音波の射出と血管からの反射波の計測とを実行し、計測データを用いて血管径の変動を検出する超音波測定装置による血管径算出方法であって、心拍期間のうち、前記血管径の変動量が閾値以下となる血管径安定期間に計測された複数の前記計測データを合成することと、前記合成されたデータを用いて前記血管径を算出することと、を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、超音波測定装置は超音波の射出と血管からの反射波の計測とを実行して計測データを得る。心拍期間のうち血管径の変動量が閾値以下となる期間を血管径安定期間とする。血管径安定期間に計測された複数の計測データが合成される。そして、合成部により合成されたデータを用いて血管径が算出される。
血管径安定期間では血管壁の位置が安定している。血管径安定期間の複数の計測データが合成されることで計測データからノイズ成分が低減され、相対的に信号成分を明確にすることができる。これにより、血管径を算出するために必要な内腔内膜境界からの反射波のピークが鮮明となり、ピーク検出の正確性が向上する。従って、合成されたデータを用いることにより血管の血管径を正しく算出することができる。
(1)超音波測定装置の概略構成図。(2)内腔内膜境界の説明図。 (1)計測データの一例を示す図。(2)合成データの一例を示す図。 (1)一心拍期間における血管径変動の一例を示す図。(2)拡張期終期の部分拡大図。 超音波測定装置の機能構成の一例を示すブロック図。 基準測定データのデータ構成の一例を示す図。 血管径測定データのデータ構成の一例を示す図。 血管内径測定処理の流れを示すフローチャート。 一心拍期間における血管径変動の一例を示す図。 第2の血管内径測定処理の一部分のステップを抜き出したフローチャート。
以下、図面を参照して好適な実施形態の一例について説明する。但し、実施形態が以下説明する実施形態に限定されるわけでないことは勿論である。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(実施形態)
1.装置構成
図1(1)は、本実施形態における超音波測定装置1の概略構成図である。超音波測定装置1は、超音波プローブ10と、本体装置20とを有して構成される。被検者は、貼付テープ15を用いて頸動脈上に超音波プローブ10が位置するように装着し、測定対象血管を頸動脈として、頸動脈の血管内径を測定する。超音波測定装置1は、血管内径を測定する血管内径測定装置とも言える。
超音波プローブ10は、送信部から数MHz〜数十MHzの超音波のパルス信号或いはバースト信号を頸動脈に向けて送信する。そして、頸動脈からの反射波を受信部で受信し、その受信信号を本体装置20に出力する。
本体装置20は、超音波測定装置1の装置本体であり、ケーブルを介して超音波プローブ10と有線接続されている。本体装置20には、被検者が本体装置20を首からぶら下げて使用するための首掛けストラップ23が取り付けられている。
本体装置20の前面には、操作ボタン24と、液晶表示器25と、スピーカー26とが設けられている。また、図示を省略しているが、本体装置20には、機器を統合的に制御するための制御基板が内蔵されている。制御基板には、マイクロプロセッサーやメモリー、超音波の送受信に係る回路、バッテリー等が実装されている。
操作ボタン24は、血管内径の計測開始指示や、血管内径の計測に係る各種諸量をユーザーが操作入力するために用いられる。
液晶表示器25には、超音波測定装置1による血管内径の計測結果が表示される。表示方法としては、血管内径の計測値を数値で表示することとしてもよいし、グラフなどで表示することとしてもよい。
また、スピーカー26からは、血管内径の計測に係る各種の音声ガイダンス等が音出力される。
2.原理
図1(2)は、超音波プローブ10と測定対象血管との位置関係を模式的に示す頸部の横断面図であり、1つの超音波振動子アレイ11に着目した図を示している。また、血管は、内腔と、内膜と、中膜と、外膜とを有して構成されるが、簡明化のために中膜の図示を省略している。
超音波プローブ10には、超音波を送受信する複数の超音波振動子12(12−a,12−b,・・・)を有する超音波振動子アレイ11を列状に配して構成される。超音波プローブ10は、超音波ビームを送信する超音波振動子アレイ11を切り替えたり、送信する超音波ビームの送信方向を変化させたり、いわゆるフォーカス位置を変化させることが可能に構成されている。これらの制御自体は公知であるため、詳細な説明は割愛する。
超音波振動子アレイ11を構成する超音波振動子からの超音波の送信を後述する処理部100が制御することによって、超音波ビーム(走査線)が形成される。この図では、超音波振動子アレイの中央部から超音波ビームが測定対象血管(本実施形態では頸動脈)に送出されている様子を示している。
超音波ビームは、音響インピーダンスの差がある部分において反射する性質を有する。外膜を透過した超音波ビームは中膜から内膜へと進行し、内膜と内腔との境界(以下、「内腔内膜境界」と称す。)において反射する。本実施形態では、この反射波の計測データを時系列に連続して取得していき、得られた計測データを用いて血管内径を測定する。
内腔内膜境界には、超音波プローブ10から見て前壁側及び後壁側それぞれの内腔内膜境界が存在する。本実施形態では、前壁側の内腔内膜境界のことを「前壁側内腔内膜境界」と称し、後壁側の内腔内膜境界のことを「後壁側内腔内膜境界」と称する。超音波ビームは、前壁側内腔内膜境界及び後壁側内腔内膜境界においてそれぞれ反射し、その反射波は超音波振動子によって受信(検出)される。
なお、図1(2)では図示を省略しているが、超音波は、中膜と外膜との境界(以下、「中外膜境界」と称す。)においても大きく反射する。本実施形態では、前壁側の中外膜境界のことを「前壁側中外膜境界」と称し、後壁側の中外膜境界のことを「後壁側中外膜境界」と称して説明する。
図2(1)は、生体内の深度に対する、超音波プローブ10で受信された反射波の強さを振幅に変換した結果の一例を示す図である。図の左側が超音波の送信側(プローブ側)であり、横軸は深度を示し、縦軸は振幅を示す。このデータは、1回分の反射波の計測データである。1秒間に数十〜数百程度の計測データが得られる。1回の計測を1フレームと定義すると、各計測データをフレームデータと言うこともできる。
この図を見ると、超音波の送信側において大きなピークを有するピーク群が現れていることがわかる。このピーク群のうち、深度d5において観測されるピークPa1が、前壁側中外膜境界に相当するピーク(以下、「前壁側中外膜境界ピーク」と称す。)である。
次に、深度d5よりも僅かに深い深度d10において、ピークPa1と比べて低いピークPb1が観測されている。このピークPb1が、前壁側内腔内膜境界に相当するピーク(以下、「前壁側内腔内膜境界ピーク」と称す。)である。
測定対象血管の内腔部分では超音波の反射がほとんど起こらない。そのため、深度d10〜深度d20の範囲では、反射波の振幅は比較的小さくなっている。深度d20において、僅かに高いピークPb2が観測されている。このピークPb2が、後壁側内腔内膜境界に相当するピーク(以下、「後壁側内腔内膜境界ピーク」と称す。)である。そして、深度d20よりも深い領域において、再び大きなピーク群が観測されている。このピーク群のうち、深度d25において観測されるピークPa2が、後壁側中外膜境界に相当するピーク(以下、「後壁側中外膜境界ピーク」と称す。)である。
なお、前壁側よりも後壁側のピークの方が相対的に振幅が小さくなっているのは、超音波の送信位置からの距離が長くなるほど、超音波信号が減衰して強度が弱まり、その反射波も送信位置まで伝搬する間に減衰するためである。
このように、超音波ビームを測定対象血管に照射すると、深度の浅い順に、前壁側中外膜境界ピークPa1、前壁側内腔内膜境界ピークPb1、後壁側内腔内膜境界ピークPb2及び後壁側中外膜境界ピークPa2の4つのピークがあることがわかる。
しかし、上記の4つのピークのうち、特に後壁側内腔内膜境界ピークPb2はピークの位置が判別しにくく、その正確な位置を特定することは難しい。それでも図2(1)は比較的分かり易い方であるが、一般に後壁側内腔内膜境界ピークPb2の振幅はノイズに埋もれるレベルである。従って、図2(1)に示すような反射波の計測データそのものから内腔内膜境界ピーク(特に後壁側内腔内膜境界ピーク)を検出しようとすると誤検出する可能性が高い。そこで、本実施形態では、以下の手順で内腔内膜境界ピークを検出し、その結果を用いて測定対象血管の血管内径を算出する。
2−1.血管径変動の検出
最初に、超音波プローブ10による超音波の射出と血管からの反射波の計測とを繰り返し実行し、後述する本体装置20に設けた径変動検出部130がその計測データを用いて血管径の変動を検出する。図2(1)の計測データを見ると、中外膜境界ピークは明瞭であり、その位置を特定することは容易である。
そこで、ある時刻において得られた反射波の計測データの中から、中外膜境界ピーク(前壁側中外膜境界ピーク及び後壁側中外膜境界ピーク)をそれぞれ検出する。中外膜境界ピークの検出は、例えば、計測データに対して所定の閾値と比較する処理や値の微分を求めて閾値と比較する処理等を行うことで検出することができる。そして、検出した中外膜境界ピークに対応する深度からの反射波の位相変化から血管径の変動を検出する。
図3(1)は、上記のようにして検出した血管径変動のうち、一心拍期間における血管径の変動を図示したものである。図3(1)において、横軸は時間であり、縦軸は血管径である。1つ1つのプロットは、血管径のサンプルタイミングを示す。各サンプルタイミングにおいて、図2(1)に示したような反射波の計測データが得られている。
一心拍期間における血管径の変動は、一心拍期間における血圧の変動と略同一の傾向を示す。大動脈弁の開放に伴い心臓から駆出波が送出されることで血圧が上昇し、これに伴い血管径も増加する。時刻t1における血管径A1は、最小血圧(拡張期血圧)に対応する血管径(拡張期血管径)である。
大動脈弁の開放とともに心臓から血液が駆出され、血管径が拡張期血管径A1から急峻に立ち上がる。そして、時刻t2において駆出波(ejection wave)のピークE1が観測される。その後、血管径は僅かに低下した後、再び増加し、動脈分岐部からの反射波である潮浪波の影響によって、時刻t3において潮浪波(tidal wave)のピークT1が観測される。
その後、血管径は低下し、大動脈弁の閉鎖に伴い、時刻t4において切痕N1が観測される。切痕N1は収縮期の終期に相当する。その後、大動脈圧によって大動脈弁に血流が押し寄せた結果として反射振動波である重拍波が生じ、これにより血管径が一時的に増加し、時刻t5において重拍波(dicrotic wave)のピークD1が観測される。その後は、血管径は緩やかに低下し、時刻t6において次拍の拡張期血管径A2に至る。
一般的な定義によれば、大動脈弁の開放から大動脈弁の閉鎖までの期間が「収縮期」であり、大動脈弁の閉鎖から次の大動脈弁の開放までの期間が「心拡張期」である。そこで、図3(1)では、血管径の変動に対応させて収縮期と心拡張期とを図示している。収縮期と心拡張期とで一心拍期間が構成される。
2−2.計測データの合成
次に、上記のようにして検出された血管径の変動に基づき、後述する本体装置20に設けた処理部100が、一心拍期間のうちの血管径が安定した状態にある血管径安定期間を判定する。血管径安定期間では、血管径にほとんど差がないため、血管壁の体表面からの位置変化はほとんど無い。この期間に含まれる各サンプルタイミングでの反射波の計測データ(図2(1)のようなデータ)は似通ったデータとなる。そこで、血管径安定期間内に計測された計測データを合成する。
本実施形態では、心拡張期の終期(以下、「拡張期終期」と称す。)に着目する。図3(1)に点線で囲った部分P1が拡張期終期であり、この期間では血管径の変化は微小である。そこで、後述する処理部100が、例えば、血管径が最小となるサンプルタイミング、つまり拡張期血管径(最小血管径)が得られたサンプルタイミングから遡って、この拡張期血管径からの血管径の変動量、例えば、後述する超音波プローブ10で計測した拡張期血管径の最大値と後述する超音波プローブ10で計測した拡張期血管径の相加平均または相乗平均との差分が所定の閾値(例えば10μm)以下の期間を判定する。そして、判定した期間を血管径安定期間とする。そして、後述する本体装置20に設けた加算平均部150が、血管径安定期間内の計測データを合成する。具体的には、血管径安定期間内の各サンプルタイミングでの計測データを加算平均する。
図2(2)は、上記の拡張期終期の計測データを加算平均することで得られる合成データの一例を示す図である。図2(2)の合成データと、図2(1)の計測データとを対比すると、合成データでは、計測データと比べて内腔内膜境界ピークが鮮明になっていることがわかる。
図2(1)の計測データでは、後壁側内腔内膜境界ピークと同程度の振幅のノイズが深度d10〜深度d20の領域に多数観測されているが、図2(2)の合成データでは、これらのノイズの振幅が小さくなっている。これは、深度d10〜深度d20で観測されるノイズはランダムノイズであるため、合成によってノイズが平均化され、その振幅がゼロに近付いたことによるものである。これは、フレームレートを高くし、加算平均する計測データ数を多くするほど顕著となる。これにより、ノイズ成分に比べて相対的に内腔内膜境界ピークが鮮明となり、ピーク検出が容易となる。
ピーク検出では、前壁側及び後壁側のそれぞれについて、内腔内膜境界が存在し得る深度範囲をサーチ範囲とし、後述する本体装置20に設けたピーク検出部160がこのサーチ範囲内でピーク探索を行って、内腔内膜境界ピークを検出する。拡張期終期では血管径がほぼ最小となるが、血管の膜厚がどの程度になるかは、生理学的な知見や実測に基づき、予め概算しておくことができる。血管径は図3で説明した通り判明しているため、血管径外形から膜厚の長さ分だけ内側の位置辺りに、内腔内膜境界が存在し得る。また、膜厚は長さでなく、血管径に対する割合であってもよい。
これにより、拡張期終期に対応して、前壁側及び後壁側のそれぞれについて、内腔内膜境界ピークを探索するサーチ範囲を設定することができる。そして、このサーチ範囲内でピーク探索を行って、内腔内膜境界ピークを検出する。
図2(2)では、前壁側のサーチ範囲(以下、「前壁側サーチ範囲」と称す。)と、後壁側のサーチ範囲(以下、「後壁側サーチ範囲」と称す。)とを、グラフ上に概略的に図示している。ピーク探索では、これらのサーチ範囲内で、例えば反射波の振幅に対する閾値判定を行い、閾値を超えている振幅のうち最大の振幅を内腔内膜境界ピークと判定する。なお、振幅の微分値を求め、その微分値に対して閾値判定を行ってピークを検出してもよい。
図2(2)では、深度d10と深度d20との間の深度d15に、後壁側内腔内膜境界ピークPb2と同程度の高さのピークPcが現れている。これは、測定対象血管の内腔での多重反射の影響によるものである。ピークPcは、一見すると前壁側内腔内膜境界ピークであるかのようにも思える。しかし、ピークPcの深度は前壁側サーチ範囲から外れている。このため、ピークPcは内腔内膜境界ピークではないと判断できる。
2−3.血管内径の算出
上記のようにして内腔内膜境界ピークを検出できたならば、後述する本体装置20に設けた血管径算出部170が、前壁側内腔内膜境界ピークに対応する深度と、後壁側内腔内膜境界ピークに対応する深度との差から、血管内径を算出する。血管内径の瞬時値はこのようにして求めることができる。
また、用途によっては、後述する本体装置20に設けた血管径変動算出部180が、血管内径の変動を算出することもできる。例えば血管内径を用いて血圧を推定する用途を考えた場合に、血圧の変動を推定するために、血管内径の変動を算出する必要があるような場合である。この場合は、例えば位相差トラッキング法を用いて血管径を連続的に算出すればよい。
具体的には、前壁側及び後壁側のそれぞれについて、上記のようにして検出した内腔内膜境界ピークを中心とする所定の深度範囲をトラッキング範囲として指定する。そして、このトラッキング範囲内で反射波の位相をトラッキングすることで、血管内径を連続的に算出する。これは、内腔内膜境界からの反射波ピークの計測データ中の位置を追跡対象とし、連続する計測データ中の反射波ピークの位置を追跡して、血管内径の変動を算出する処理に相当する。
3.機能構成
図4は、超音波測定装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。超音波測定装置1は、超音波プローブ10と、本体装置20とを有する。
超音波プローブ10は、処理部100からの制御信号に従って、超音波の送信モードと受信モードとを時分割方式で切り替えて超音波を送受信する小型の接触子である。超音波の反射波の受信信号は処理部100に出力される。
本体装置20は、処理部100と、操作部200と、表示部300と、音出力部400と、通信部500と、時計部600と、記憶部800とを有して構成される。
処理部100は、超音波測定装置1の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のマイクロプロセッサーや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を有して構成される。
処理部100は、主要な機能部として、反射波計測部120と、径変動検出部130と、加算平均期間設定部140と、加算平均部150と、ピーク検出部160と、血管径算出部170と、血管径変動算出部180とを有する。但し、これらの機能部は一実施例として記載したものに過ぎず、必ずしもこれら全ての機能部を必須構成要素としなければならないわけではない。また、これら以外の機能部を必須構成要素としてもよいことは勿論である。
反射波計測部120は、超音波プローブ10から出力される反射波の受信信号に基づいて、例えば深度別の反射波の振幅を算出した反射波計測データ820を演算する。
径変動検出部130は、反射波計測部120によって演算された計測タイミング毎(フレーム毎)の反射波計測データ820を用いて、中外膜境界間距離の変動を径変動として検出する。
加算平均期間設定部140は、径変動検出部130によって検出された径変動に基づいて、加算平均部150が加算平均を行う期間(以下、「加算平均期間」と称す。)を設定する。加算平均期間設定部140は、径変動の検出の結果に基づいて、一心拍期間のうちの血管径が安定した状態にある血管径安定期間を判定する判定部に相当する。
加算平均部150は、加算平均期間設定部140によって設定された加算平均期間内の計測タイミングでの反射波計測データ820を加算平均処理する。加算平均部150は、血管径安定期間内に計測された計測データを合成する合成部に相当する。
ピーク検出部160は、加算平均部150によって演算された合成データ830の中から、上記の原理に従って、内腔内膜境界ピーク(前壁側内腔内膜境界ピーク及び後壁側内腔内膜境界ピーク)を検出する。
血管径算出部170は、ピーク検出部160によって検出された内腔内膜境界ピークに相当する深度の差から血管内径を算出する。
血管径変動算出部180は、血管径算出部170によって算出された血管内径を基準値とし、例えば位相差トラッキング法を用いて血管内径の変動を算出する。
操作部200は、ボタンスイッチ等を有して構成される入力装置であり、押下されたボタンの信号を処理部100に出力する。この操作部200の操作により、血管内径の計測開始指示等の各種指示入力がなされる。操作部200は、図1の操作ボタン24に相当する。
表示部300は、LCD(Liquid Crystal Display)等を有して構成され、処理部100から入力される表示信号に基づく各種表示を行う表示装置である。表示部300には、血管径算出部170や血管径変動算出部180によって算出される血管内径等の情報が表示される。表示部300は、図1の液晶表示器25に相当する。
音出力部400は、処理部100から入力される音出力信号に基づく各種音出力を行う音出力装置である。例えば、計測開始や計測終了、エラー発生等の報知音を出力する。音出力部400は、図1のスピーカー26に相当する。
通信部500は、処理部100の制御に従って、装置内部で利用される情報を外部の情報処理装置との間で送受するための通信装置である。通信部500の通信方式としては、所定の通信規格に準拠したケーブルを介して有線接続する形式や、クレイドルと呼ばれる充電器と兼用の中間装置を介して接続する形式、近距離無線通信を利用して無線接続する形式等、種々の方式を適用可能である。
時計部600は、水晶振動子及び発振回路でなる水晶発振器等を有して構成され、時刻を計時する計時装置である。時計部600の計時時刻は、処理部100に随時出力される。
記憶部800は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置を有して構成される。記憶部800は、超音波測定装置1のシステムプログラムや、血管内径測定機能等の各種機能を実現するための各種プログラム、データ等を記憶している。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
記憶部800には、プログラムとして、例えば、処理部100によって読み出され、血管内径測定処理(図7参照)として実行される血管径測定プログラム810が記憶されている。この処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
また、記憶部800には、データとして、反射波計測データ820と、合成データ830と、径変動検出データ840と、基準測定データ850と、血管径測定データ860とが記憶される。
反射波計測データ820は、反射波計測部120によって計測された反射波の計測データであり、例えば深度と反射波の振幅との関係を示す計測データである。例えば、図2(1)に示すようなデータがこれに相当し、1つの計測データが1フレーム分のデータ(フレームデータ)に相当する。
合成データ830は、加算平均部150が反射波計測データ820を加算平均したデータであり、例えば図2(2)に示すようなデータがこれに相当する。
径変動検出データ840は、時系列に連続する計測データに基づいて径変動検出部130が検出した径変動のデータであり、例えば図3に示すようなデータがこれに相当する。
基準測定データ850は、血管内径測定を行うための基準となるデータであり、そのデータ構成例を図5に示す。基準測定データ850には、加算平均期間850Aと、ピーク深度850Bと、基準血管径850Cとが対応付けて記憶される。
加算平均期間850Aは、加算平均期間設定部140によって設定された加算平均期間であり、径変動検出データ840に対応付けられた時刻に基づき設定される加算平均期間が記憶される。
ピーク深度850Bは、内腔内膜境界ピークに対応する深度であり、前壁側と後壁側とのそれぞれについてピーク深度が記憶される。
基準血管径850Cは、ピーク深度850Bの差から算出される血管内径である。この血管内径は、血管内径の基準値となる。
血管径測定データ860は、血管内径の測定結果が記憶されたデータであり、そのデータ構成例を図6に示す。血管径測定データ860には、位相差トラッキング法を用いて連続的に測定された血管径860Bが、測定時刻860Aと対応付けて時系列に記憶される。
4.処理の流れ
図7は、処理部100が、記憶部800に記憶されている血管径測定プログラム810に従って実行する血管内径測定処理の流れを示すフローチャートである。
処理部100は、超音波プローブ10に超音波の送受信を開始させるように制御する(ステップA1)。そして、反射波計測部120が、超音波の反射波の受信信号に基づいて反射波の計測を開始し、その計測データを反射波計測データ820として記憶部800に記憶させる(ステップA3)。
次いで、径変動検出部130が、径変動検出処理を行う(ステップA5)。具体的には、記憶部800に記憶された反射波計測データ820のうちの最新のデータの中から、中外膜境界ピーク(前壁側中外膜境界ピーク及び後壁側中外膜境界ピーク)を検出する。そして、検出した中外膜境界ピークに相当する深度からの反射波の位相変化に基づいて所定の径変動解析処理を行って、血管径の変動を解析する。そして、その解析結果を径変動検出データ840として記憶部800に記憶させる。
その後、加算平均期間設定部140が、加算平均期間を設定する(ステップA7)。具体的には、径変動検出部130によって検出された径変動に基づき、一心拍期間において血管径が最小となるタイミングから遡って血管径の変動量が所定の閾値(例えば10μm)以下となる期間を判定して加算平均期間とする。
次いで、加算平均部150が、加算平均期間に含まれる各計測タイミングの反射波計測データ820を加算平均し、その結果を合成データ830として記憶部800に記憶させる(ステップA9)。
次いで、ピーク検出部160が、合成データ830の中から、前壁側及び後壁側のそれぞれについて、所定のサーチ範囲(前壁側サーチ範囲及び後壁側サーチ範囲)内で所定の閾値判定を行って内腔内膜境界ピークを検出する(ステップA11)。血管径算出部170は、内腔内膜境界ピークの深度の差から血管内径の基準値を算出し、その算出結果を記憶部800の基準測定データ850に記憶させる(ステップA13)。
その後、血管径変動算出部180は、ステップA11で検出された内腔内膜境界ピークに対応する深度を中心とする所定幅の位相差トラッキング範囲を設定する。そして、この位相差トラッキング範囲内で反射波の位相を追尾することで、血管内径の変動を算出し、その算出結果を記憶部800の血管径測定データ860に記憶させる(ステップA15)。
次いで、血管径算出部170は、血管内径の出力タイミングか否かを判定し(ステップA17)、出力タイミングではないと判定したならば(ステップA17;No)、ステップA21へと移行する。また、出力タイミングと判定したならば(ステップA17;Yes)、最新の血管内径を表示部300に表示させる制御を行う(ステップA19)。
その後、処理部100は、処理を終了するか否かを判定する(ステップA21)。例えば、操作部200を介してユーザーによって血管内径の測定終了の指示操作がなされたか否かを判定する。処理を継続すると判定した場合は(ステップA21;No)、ステップA17に戻る。また、処理を終了すると判定した場合は(ステップA21;Yes)、血管内径測定処理を終了する。
5.作用効果
超音波測定装置1において、径変動検出部130は、超音波プローブ10からの超音波の射出と血管からの反射波の計測とを繰り返し実行し、計測データを用いて血管径の変動を検出する。加算平均期間設定部140は、血管径の変動の検出結果に基づいて、一心拍期間のうちの血管径が安定した状態にある血管径安定期間を判定して加算平均期間として設定する。そして、加算平均部150は、加算平均期間内に計測された計測データを加算平均する。そして、血管径算出部170は、加算平均部150により合成されたデータを用いて血管の血管内径を算出する。
一心拍期間のうちの血管径が安定した状態にある期間内の計測データを加算平均することで、ノイズ成分を減衰させ、内腔内膜境界ピークを高精度に検出することが可能となる。特に、本実施形態では、心拡張期のうちの拡張期終期を血管径安定期間とし、この拡張期終期の計測データを合成する。一心拍期間のうちの拡張期終期は、血管径が安定した状態にあり、この期間に得られる反射波の計測データは互いに似通ったデータとなる。このため、これらの計測データを重ね合わせることで、内腔内膜境界ピークを顕出させることができる。
加算平均に適した期間について検討する。例えば、7.5MHzの周波数の超音波信号を繰り返し送受信するとする。波の干渉を考慮すると、同一部位からの反射波が1/4波長(距離換算25.5μm:音速1530m/s)分ずれるまでの時間内であれば、反射波の重ね合わせによって、反射波を強め合わせることができる。1/4波長は距離換算で25.5μmであるため、血管径の変動が25.5μm以下となる期間であれば、当該期間内の計測データを加算平均することで、SN(Signal Noise)比を向上させることができる。本実施形態では、血管径安定期間を判定する際の血管径の変動量の閾値を10μmとしており、これは1/4波長よりも短い。このため、十分にSN比率の向上が見込める。
6.変形例
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。
6−1.測定対象血管
上記の実施形態では、頸動脈を測定対象血管として頸動脈の血管内径を測定する場合を例に挙げて説明したが、測定対象血管はこれに限られない。他には、例えば、橈骨動脈や上腕動脈といった四肢の動脈を測定対象血管としてもよい。
6−2.超音波測定装置
上記の実施例では、血管内径を測定する超音波測定装置を、被検者の首からぶら下げて使用するタイプの測定装置として図示・説明したが、この構成は一例に過ぎない。他には、例えば被検者の上腕部に巻き付けて使用する本体装置を構成してもよいし、被検者の手首部に装着して使用する本体装置を構成してもよい。また、超音波プローブと本体装置とは必ずしも別体である必要はなく、超音波プローブと本体装置とを同一筐体内に設けた測定装置を構成してもよい。
また、上記の実施形態は、自由行動下にある被検者が、個人で血管内径を測定することを目的とした測定装置の実施形態として説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られない。例えば、医療用の超音波測定装置として、横たわった状態の被検者に対して技師が超音波プローブを用いて超音波検査を行う超音波検査装置に適用することも可能である。
また、上記の実施形態の血管内径を測定する超音波測定装置を、血圧を測定する血圧測定装置に具備させてもよい。血管内径と血圧とは、線形又は非線形の公知の相関特性によって結び付けることができる。つまり、血管内径を変数とする公知の演算式に従って、血管内径から血圧を推定することができる。
6−3.加算平均期間
上記の実施形態では、一心拍期間の中から拡張期終期を検出し、この拡張期終期を加算平均期間として設定することとして説明したが、これは一例に過ぎない。心拡張期には、拡張期終期以外にも、血管径が安定した状態となる期間が存在する。このため、心拡張期から血管径安定期間を判定すればよく、加算平均の対象とする期間は拡張期終期でなくともよい。
図8は、図3(1)と同じ血管径変動の図を示している。この図において、例えば、心拡張期中期の点線で囲った部分P2や部分P3に相当する期間では、血管径が安定した状態にある。このため、血管径変動の中からこれらの部分を検出して加算平均期間に設定することとしてもよい。
一心拍期間において血管壁の体表面からの位置は変動するため、図2(2)で説明した内腔内膜境界ピークのサーチ範囲は、一心拍期間内のどの範囲を加算平均期間とするかによって異なり得る。そこで、加算平均期間に応じてサーチ範囲を可変に設定すると効果的である。この場合は、上記の超音波測定装置1において、処理部100の機能部としてサーチ範囲設定部を構成し、このサーチ範囲設定部が、加算平均期間設定部140によって設定された加算平均期間に応じたサーチ範囲を設定するようにする。サーチ範囲設定部が範囲設定部に対応する。
図9は、本変形例において、上記の実施形態の超音波測定装置1の処理部100が実行する第2の血管内径測定処理の処理フローのうち、一部分のステップを抜き出して記載したフローチャートである。第2の血管内径測定処理は、図7の血管内径測定処理と略同一の処理であり、血管内径測定処理のステップA5とA9との間に、図9に示す3つのステップを追加して構成される。
図7のステップA5において径変動検出処理を行った後、加算平均期間設定部140は、血管径の変動が所定の安定条件を満たす期間を抽出する(ステップB1)。具体的には、例えば、図3(1)のように得られる血管径変動の中から、血管径の最大値と血管径の相加平均または相乗平均との差分が所定の閾値(例えば10μm)以下の期間を抽出する。
次いで、加算平均期間設定部140は、ステップB1で抽出した期間のうち、サンプル数が最多の期間を選択して加算平均期間に設定する(ステップB3)。サンプル数が最多の期間を選択するのは、サンプル数が多い方が、計測データを合成した場合にノイズを効果的に減衰させることができるためである。
その後、サーチ範囲設定部が、ステップB3で選択した期間に対応する深度に基づいてサーチ範囲を設定する(ステップB5)。具体的には、ステップB3で選択した期間のうちの中央の時刻を判定する。そして、その中央の時刻に対応する反射波計測データ820を参照し、前壁側及び後壁側のそれぞれについて中外膜境界ピークに対応する深度を判定する。中外膜境界ピークに対応する深度がわかれば、血管を構成する膜(外膜、中膜及び内膜)の厚み等の情報に基づいて、内腔内膜境界ピークが存在する大凡の深度範囲(つまりサーチ範囲)を推定することができる。
6−4.計測データの合成
反射波そのものの計測データを加算平均するのではなく、反射波を全波整流することで得られる波形のデータや、対数圧縮を行うことで得られる波形のデータを合成することにしても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
1…超音波測定装置、140…判定部としての加算平均期間設定部、150…合成部としての加算平均部、160…ピーク検出部、170…血管径算出部、180…血管径変動算出部。

Claims (7)

  1. 超音波を血管へ射出し前記血管からの反射波の計測を実行して計測データを用いて血管径を算出する超音波測定装置であって、
    心拍期間のうち、前記血管径の変動量が閾値以下となる血管径安定期間に計測された複数の前記計測データを合成する合成部と、
    前記合成部により合成されたデータを用いて前記血管径を算出する血管径算出部と、を備えたことを特徴とする超音波測定装置。
  2. 請求項1に記載の超音波測定装置であって、
    前記合成部は、前記血管径安定期間に計測された前記計測データを加算平均することを特徴とする超音波測定装置。
  3. 請求項1又は2に記載の超音波測定装置であって、
    前記計測データに基づいて、前記血管径安定期間を判定する判定部を備え、
    前記判定部は、心拡張期から前記血管径安定期間を判定することを特徴とする超音波測定装置。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波測定装置であって、
    前記血管径算出部は、前記合成されたデータから、前記血管の内腔と内膜との境界の反射波ピークを検出するピーク検出部を有し、当該反射波ピークに基づいて前記血管径を算出することを特徴とする超音波測定装置。
  5. 請求項4に記載の超音波測定装置であって、
    前記血管径安定期間における前記血管の内腔と内膜との境界が存在し得る深度範囲を前記計測データに基づいて設定する範囲設定部を更に備え、
    前記ピーク検出部は、前記深度範囲を用いて前記反射波ピークを検出することを特徴とする超音波測定装置。
  6. 請求項4又は5に記載の超音波測定装置であって、
    前記ピーク検出部により検出された前記反射波ピークの前記計測データ中の位置を追跡対象とし、連続する前記計測データ中の前記反射波ピークの位置を追跡して、前記血管径の変動を算出する血管径変動算出部、を更に備えたことを特徴とする超音波測定装置。
  7. 超音波の射出と血管からの反射波の計測とを実行し、計測データを用いて血管径の変動を検出する超音波測定装置による血管径算出方法であって、
    心拍期間のうち、前記血管径の変動量が閾値以下となる血管径安定期間に計測された複数の前記計測データを合成することと、
    前記合成されたデータを用いて前記血管径を算出することと、を含むことを特徴とする血管径算出方法。
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